説明

把持装置

【課題】 耐久性があり、ぐらつきが無く、小型で確実に把持できるペットボトルの搬送に適した把持装置を提供する。
【解決手段】 円筒状ボディの下方に径方向に貫通したガイド穴を形成したボディケース1と、内周円筒面と下方に傾斜面のあるスライドケース2をボディケースの同軸外周に配置し、ピストン3とプッシャー4および連結棒5を該スライドケースと連結し、ボディケースのガイド穴7にボールを配置してスライドケースの傾斜面13および円筒面12によりボールが中心方向に突出する把持装置を構成するとともに、ピストンの上下動に伴ってペットボトル9のネック部の凸部11下方にボールが突出したあとで、ペットボトルの上方からプッシャーが下降してペットボトルの上方を圧接することにより、上下方向に把持して搬送するものである。また、ガイド穴の角度を、中心側に対して外周側を低く構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペットボトルを搬送するための把持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ボトルの搬送装置として下記の文献の方法が知られている。
【特許文献1】特開平7−53174号公報
【特許文献2】特許第3614848号公報
【0003】
特許文献1の方法は、円筒状のフランジと膜状体の弾性体の間に加圧室を形成し、空気圧により膜状体の弾性体を変形させてボトルのネック部を把持して搬送する方法である。
【0004】
この方法は、主にゴムで構成される膜状体の弾性体を変形させているため、耐久性に乏しく、すぐに破れてしまう問題があった。
【0005】
また、弾性体で把持しているので搬送途中に慣性力によりボトルがぐらつき、ボトル同士がぶつかり傷ついてしまうため、搬送速度を落としてぐらつきをおさえるなどの対策を行う必要がある。
【0006】
特許文献2の方法は、ボトルのネック部に嵌合する保持部を形成し、ボトルの上部周縁を当接するとともに、ボトルのくびれ部に樹脂製のボールなどの接触部材を押し付けて把持する方法である。
【0007】
この方法によれば、ボトルの上部およびくびれ部をボトルの径方向より固定するため、ぐらつきはなくなるが、ボトルの形状および寸法が変わることでボトル毎に専用の保持部またはアタッチメントを用意し、組み換えて使用しなければならない。
【0008】
また、ガラス瓶の様な硬質の材料では有効であるが、ペットボトルの様な軟質の材料ではくびれ部に接触部材を押し当てることによりペットボトルが変形してしまい、ペットボトルが把持できないことがある。
【0009】
さらに、ペットボトルのようなくびれ部の高低差が大きなボトルに対しては、接触部材をボトルのくびれ部に押し当てるために接触部材の移動量を大きくとる必要があるため、本体の大きさが大きくなってしまう。
【0010】
また、ペットボトルのキャップ部にはインクジェットプリンターなどで文字が印刷されているものもあるが、印字部に接触部材が接触することにより文字が部分的に消えてしまい、識別できないことがあるという問題も発生している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、耐久性があり、ぐらつきが無く、小型で確実に把持できるペットボトルの搬送に適した把持装置を提供することを目的とする。
【0012】
また、ペットボトルのキャップ部に印刷された文字が消えない構成の把持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、前記した課題を解決する手段として、下方が開放された円筒状ボディの下方に径方向に貫通したガイド穴を形成したボディケースと、ボディケースの外周よりもわずかに大きな内周円筒面と下方に傾斜面のあるスライドケースをボディケースの同軸外周に配置し、ボディケースの上方中心にピストンを配置し、ピストンの下方に固定したプッシャーおよび連結棒により該スライドケースと連結し、ボディケースのガイド穴にボールを配置してスライドケースの傾斜面および円筒面によりボールが中心方向に突出する把持装置を構成するとともに、ピストンの上下動に伴って下降するスライドケースの傾斜面および円筒面によりペットボトルのネック部の凸部下方にボールが突出したあとで、ペットボトルの上方からピストンに固定されたプッシャーが下降してペットボトルの上方を圧接することにより、ペットボトルを上下方向に把持して搬送するものである。
【0014】
また、ボディケースに配設されたガイド穴の角度を、中心側に対して外周側を低く構成することで、ボールが自重により常に外周方向に移動しようとする力が発生するように構成するものである。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、ボールが突出した後で、ペットボトルの上方からプッシャーが下降してペットボトルの上方を圧接することによりペットボトルを上下方向に把持して搬送する構成にしたので、しっかりと固定でき、ペットボトルがぐらつかなくなった。
【0016】
また、ペットボトルのネック部の凸部下方にボールが一定の移動量で突出するだけで把持できるので、大きさが大きくなることが無く、小型の把持装置を構成することができる。
【0017】
さらに、ペットボトルの種類が変わればネック部の形状や大きさが少しずつ違うため、種類にあわせてボディケースやアタッチメントを用意して組み換える必要が無いので、ほとんどの種類およびキャップの有無に左右されずに把持することができる。
【0018】
さらに、ボディケースに配設されたガイド穴の角度を、中心側に対して外周側を低く構成することで、接触部材の自重で常に接触部材が下方に移動しようとする働きがあるので、スライドボディが上方に移動した開放位置ではボールが把持装置外周側に移動し、ペットボトルを搬送するために挿入したときでもボールとペットボトルが接触することが無いので、ペットボトルの側面に印字された文字が消えることが無くなった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0020】
図1に示すように本実施例の把持装置は、下方が開放された円筒状ボディの下方に径方向に貫通したガイド穴を形成したボディケース1と、ボディケース1の外周よりもわずかに大きな内周円筒面12と下方に傾斜面13のあるスライドケース2をボディケース1の同軸外周に配置する。
【0021】
ボディケース1の上方中心にピストン3を配置し、ピストン3の下方に固定したプッシャー4および連結棒5により該スライドケース2と連結してピストン3の上下動作に一体で上下する。
【0022】
ボディケース1の下方にはガイド穴7を同軸上に複数配置し、ガイド穴7にはボール6を挿入するとともに、ガイド穴の中心方向端面にはボール6の脱落防止の出っ張りを形成してボール6が落ちないようにする。
【0023】
また、ボディケース1の側面には連結棒5が貫通し、上下動作を行ったときに干渉しないような長穴を設ける。
【0024】
本実施例では、ピストン3はシリンダ8とともに空気室を形成し、空気圧力シリンダによる作動でピストン3を上下動作する構成であるが、ピストンを上下させる構成であればスプリングやカム駆動の様な他の方法でも良い。
【0025】
さらに、第2の実施例として、図4に示すように、ボディケース1に設けられたガイド穴7の角度を、中心側に対して外周側を低く構成する。
【0026】
このように構成することで、ボール6が自重により常に外周方向に移動しようとする力が発生するので、ピストン3が上昇しているときには、ボール6がボディケース1の中心側に出っ張ることがない。
【0027】
次に動作について説明する。
【0028】
図1は、ピストン3が上方に上がった状態でペットボトル9の上方で待機している図である。
【0029】
ペットボトル9のネック部には凸部が形成されており、ペットボトルねじ部にはキャップ10が付いている場合と付いていない場合があるが、本動作説明ではキャップが付いている場合に対して説明する。
【0030】
ペットボトル9の上方から、搬送装置が下降してきてネック部の凸部11の下側までボール6が来た位置で下降を停止させる。
【0031】
その位置で空気圧力を切り替えてピストンを下降させると、ピストン3に連結したプッシャー4と連結棒5およびスライドケース2が下降し、ボール6の接触しているスライドケース2の傾斜面13が下降してくることにより、ボール6がボディケース1の中心側ににげて出っ張ってくる。
【0032】
図2に示すようにボール6がスライドボディ2の傾斜面13と円筒面12の境界まで来たときにボール6は最大に出っ張った位置にあり、これ以上は円筒面12がボール6に接触するため、ボール6を中心側に移動させようとする力は発生しない。
【0033】
このとき、プッシャー4はまだペットボトルに接触しない位置にあるように設定する。
【0034】
この後、ピストン3の下降に伴い、プッシャー4およびスライドボディ2が下降し、プッシャー4がペットボトルの上面に接触し、さらに押し込むようにピストン3の長さを設定してあるので、ペットボトルのネック部の凸部11の下側を出っ張ったボール6で受け、上側をプッシャー4で押し込むことにより、ペットボトルを上下方向に把持する。
【産業上の利用可能性】
【0035】
上記把持装置は、ペットボトルを搬送するのに適した搬送装置であるが、把持位置が円柱状で凸部があり、上下方向に把持が可能な部品であれば搬送装置および固定装置としても有効である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本実施例の開放状態を示す断面図
【図2】本実施例の動作途中を示す断面図
【図3】本実施例の把持状態を示す断面図
【図4】第2の実施例を示す部分断面図
【符号の説明】
【0037】
1 ボディケース
2 スライドケース
3 ピストン
4 プッシャー
5 連結棒
6 ボール
7 ガイド穴
8 シリンダ
9 ペットボトル
10 キャップ
11 凸部
12 円筒面
13 傾斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本発明は、下方が開放された円筒状ボディの下方に径方向に貫通したガイド穴を形成したボディケースと、ボディケースの外周よりもわずかに大きな内周円筒面と下方に傾斜面のあるスライドケースをボディケースの同軸外周に配置し、ボディケースの上方中心にピストンを配置し、ピストンの下方に固定したプッシャーおよび連結棒により該スライドケースと連結し、ボディケースのガイド穴にボールを配置してスライドケースの傾斜面および円筒面によりボールが中心方向に突出する把持装置を構成するとともに、ピストンの上下動に伴って下降するスライドケースの傾斜面および円筒面によりペットボトルのネック部の凸部下方にボールが突出したあとで、ペットボトルの上方からピストンに固定されたプッシャーが下降してペットボトルの上方を圧接することにより、ペットボトルを上下方向に把持して搬送することを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
ボディケースに配設されたガイド穴の角度を、中心側に対して外周側を低く構成することで、ボールが自重により常に外周方向に移動しようとする力が発生するように構成したことを特徴とする請求項1の把持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−321570(P2006−321570A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−143504(P2005−143504)
【出願日】平成17年5月17日(2005.5.17)
【出願人】(591113024)株式会社近藤製作所 (33)
【Fターム(参考)】