説明

把持装置

【課題】簡単な機構で、把持部を高速で駆動し、かつ大きな把持力を得ることができる、把持装置を提供する。
【解決手段】第1の回転アクチュエータと、第1の回転アクチュエータによって回転駆動される第1の動力伝達機構と、第1の動力伝達機構によって駆動される第1の指と、第2の回転アクチュエータと、第2の回転アクチュエータの回転速度を減速する減速機と、減速機によって回転駆動される第2の動力伝達機構と、第2の動力伝達機構によって駆動される台車とを備え、第1の回転アクチュエータと第1の動力伝達機構と第1の指のうち少なくとも1つを、台車に載置し、第2の回転アクチュエータと減速機と第2の動力伝達機構と台車とを、台座に載置し、第1の回転アクチュエータを作動させて、第1の指を高速で駆動し、第2の回転アクチュエータを作動させて、第1の指を把持対象物に強い力で押し付け、第1の指と第2の指とによって物体を把持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、把持装置、特に少なくとも2つの指で物体を把持する把持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
産業用マニピュレータの先端等に取り付け、物体を把持する把持装置においては、高速で作動するとともに、大きな把持力を有し、物体を確実に把持することが要求される。
【0003】
従来の把持装置は、1つの把持部(2つの指等)を1つの回転アクチュエータ(電動モータ等)で駆動して、把持動作を行なっている。一般的な産業用ロボットアームの先端に取り付けられた把持装置の例を図4に示す。図4(a)の把持装置の把持部を駆動する機構は、ラック・ピニオンで構成され、回転アクチュエータがピニオンギアを回転させると、ラックギアに取り付けられた指が同時に開閉して把持対象物を把持する。図4(b)の把持装置では、回転アクチュエータの駆動軸に取り付けられた指が回転して把持対象物を把持する。
【0004】
これらの方式では、把持部の速度は回転アクチュエータの回転数に依存し、把持力は回転アクチュエータの発生するトルクに依存する。回転アクチュエータの出力(動力)は、回転数とトルクの積であるから、回転アクチュエータから把持部に動力を伝達する減速機の減速比を大きくし、出力側の速度を小さくすると、大きな把持力を得ることができるが、指の動作が遅くなる。一方、減速比を小さくして、出力側の速度を大きくすると、指を素早く動かすことができるが、把持力は小さい。
【0005】
把持装置の把持速度と把持力とを大きくするためには、簡単には、回転アクチュエータの出力を大きくすればよい。しかし、本発明者の調査では、電動モータの出力(動力)は、電動モータの重量とほぼ比例関係にあるため、2倍の出力を得ようとすると、電動モータの重量がほぼ2倍となる関係にあり、サイズも大きくなる。したがって、軽量化が要求され、取り付けスペースに制約のある把持装置においては、単純に出力を増加させることはできない。
【0006】
そこで、特許文献1、2には、把持部の動きの速度を高めつつ把持力を増大させる把持装置が提案されている。
【0007】
【特許文献1】特開平2007−50460号公報
【特許文献2】特開平2008−18489号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の把持装置では、1つの回転アクチュエータで1つの把持部を駆動する把持装置において、把持部の動きの速度を高めつつ把持力を増大させるために、回転アクチュエータと把持部との間の機構を切り替えるように構成しており、機構が複雑となっている。また、特許文献2の把持装置では、ワイヤーを介して把持部を駆動するものであるため、機構が複雑であるとともに、ワイヤーが伸びるという問題がある。
【0009】
本発明は、簡単な機構で、把持部を高速で駆動し、かつ大きな把持力を得ることができる、把持装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
把持装置において、指を高速で動かす必要があるのは、指が把持対象物に接触するまでの間であり、この間は、回転アクチュエータは、把持力を発生する必要がない。一方、指が把持対象物に接触した後は、大きな把持力を必要とするが、指の動きは遅くてよい。
【0011】
そこで、回転アクチュエータとして、2つの電動モータを利用し、例えば第1の電動モータは2倍以上の高速で駆動し、第2の電動モータは2倍以上の減速比で駆動すると、重量は2倍であるが、把持速度と把持力との積は、4倍以上とすることができる。言い換えれば、2つの電動モータを利用することにより、把持速度と把持力の両方を従来よりも大きくしつつ、電動モータの合計重量を従来の電動モータの重量と同等とし、あるいは従来よりも小さくすることが可能となる。回転アクチュエータを2つとすることにより、駆動機構は簡単となり、スペース的にも取り付け容易となる。
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、少なくとも2つの指で物体を把持する把持装置であって、第1の回転アクチュエータと、第1の回転アクチュエータによって回転駆動される第1の動力伝達機構と、第1の動力伝達機構によって駆動される第1の指と、第2の回転アクチュエータと、第2の回転アクチュエータの回転速度を減速する減速機と、減速機によって回転駆動される第2の動力伝達機構と、第2の動力伝達機構によって駆動される台車と、第1の指と共に物体を把持する、第2の指と、を備え、第1の回転アクチュエータと第1の動力伝達機構と第1の指のうち少なくとも1つを、台車に載置し、第2の回転アクチュエータと減速機と第2の動力伝達機構と台車とを、台座に載置し、把持装置が、第1の指と第2の指とによって物体を把持する場合には、第1の指と第2の指とが物体に接触するまでは、第1の回転アクチュエータを作動させ、第1の指と第2の指とが物体に接触した後は、第2の回転アクチュエータを作動させ、台車を駆動して、第1の指をさらに物体を押し付ける方向に駆動し、第1の指と第2の指とによって物体を把持する、把持装置が提供される。
【0013】
すなわち、請求項1の発明では、1つの把持部について、2つの回転アクチュエータを利用することにより、第1の動力伝達機構を、高速低把持力で駆動し、第2の動力伝達機構を、低速高把持力で駆動する。このように構成することにより、把持部が把持対象物に接触するまでは高速で駆動し、把持対象物に接触してからは、高把持力を得ることができる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、第1の動力伝達機構が送りねじである、請求項1に記載の把持装置が提供される。
【0015】
すなわち、請求項2の発明では、請求項1に記載の把持装置において、第1の回転アクチュエータによって指を高速で駆動する第1の動力伝達機構として、送りねじを利用する。
【0016】
図4(a)、(b)に示すような従来の方式では、いずれも指の動作は、出力側(指側)から入力側(回転アクチュエータ側)を動かすこと(バックドライブ)が可能であり、力を出し続ける場合、常に回転アクチュエータにエネルギー(電力等)を供給し続けなければならず、消費されるエネルギーが大きい。
【0017】
そこで、指の駆動機構として、バックドライブしない機構を利用することができれば、指が物体を把持している間、エネルギーを消費することがなく、有利である。請求項2の発明では、第1の動力伝達機構に、バックドライブしない動力伝達機構である送りねじを利用し、送りねじに第1の指部を取り付ける。したがって、第1の回転アクチュエータを停止させて、第2の回転アクチュエータを駆動するときには、第1の回転アクチュエータはエネルギーを消費せずにその位置を保持することができる。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、第1の動力伝達機構がウォームギアである、請求項1に記載の把持装置が提供される。
【0019】
すなわち、請求項3の発明では、請求項1に記載の把持装置において、第1の回転アクチュエータによって指を高速で駆動する第1の動力伝達機構として、バックドライブしない機構であるウォームギアを利用する。この場合においても、第1の回転アクチュエータの駆動を停止させて、第2の回転アクチュエータを駆動するときには、第1の回転アクチュエータはエネルギーを消費せずにその位置を保持することができ、有利である。
【0020】
請求項4に記載の発明によれば、第2の動力伝達機構が送りねじである、請求項1から3のいずれか1項に記載の把持装置が提供される。
【0021】
すなわち、請求項4の発明では、請求項1から3に記載の把持装置において、第2の回転アクチュエータによって台車を駆動する第2の動力伝達機構として、バックドライブしない機構である送りねじを利用する。したがって、第2の回転アクチュエータを駆動して、指が把持対象物を大きな力で把持した場合、第2の回転アクチュエータを停止し、エネルギーを消費せずに把持力を保持することができる。
【0022】
請求項5に記載の発明によれば、第2の動力伝達機構がトグル機構である、請求項1から3のいずれか1項に記載の把持装置が提供される。
【0023】
すなわち、請求項1から3の把持装置において、指が把持対象物に接触した後、第2の回転アクチュエータによって大きな把持力で指を駆動する場合、速度は遅く、作動距離は僅かである。そこで、速度は遅く、作動距離が僅かで、作動の終期に向って把持力が増大する機構であるトグル機構を利用すると、把持対象物を確実に把持することができ、有利である。トグル機構については、後述により、図面を用いて詳しく説明するが、リンクを利用して増力する動力伝達機構である。トグル機構はまた、リンクが軸方向に伸びきった状態では、エネルギーを消費せずに大きな力を保持することができ、有利である。
【0024】
請求項6に記載の発明によれば、2枚の板材と、2枚の板材の間に配置された1以上の支柱とを備える動力伝達機構であって、支柱の各端部を、それぞれ2枚の板材の、互いにほぼ平行に対向する各面上の、2枚の板材の回転中心から偏心した位置に、回転自在に取り付ける手段を備え、2枚の板材を、2枚の板材の回転中心を通る軸の周りに互いに対して相対的に回転させた場合には、2枚の板材の間の距離が増減する、動力伝達機構が提供される。
【0025】
すなわち、請求項6の発明では、作動速度は遅く、作動距離も僅かで、作動の終期に向って把持力が増大するトグル機構であって、回転軸の方向と出力軸の方向とが同軸となる動力伝達機構が提供される。
【0026】
すなわち、通常のトグル機構では、リンクの連結部の強度を十分大きくする必要があり、また、駆動する回転軸と力を出す方向とが直交しているため、機構の占めるスペースが大きくなる。そこで、本発明の第2の回転アクチュエータによって指を駆動する動力伝達機構として、回転軸の方向と出力軸の方向とが同軸となるトグル機構を発明した(「立体トグル機構」という)。
【0027】
請求項7に記載の発明によれば、第2の動力伝達機構が請求項6に記載の動力伝達機構である、請求項1から3のいずれか1項に記載の把持装置が提供される。
【0028】
すなわち、請求項7の発明では、請求項1から3のいずれか1項に記載の把持装置に対して、第2の動力伝達機構として、請求項6の立体トグル機構を用いることにより、指の作動の終期に向って把持力が増大するように構成することができる。立体トグル機構は、第2の回転アクチュエータの回転軸と一軸に配置することができるので、コンパクトに配置することができ、有利である。更に、立体トグル機構は、軸方向に伸びきった状態では、エネルギーを消費せずに大きな力を保持することができる。
【0029】
請求項8に記載の発明によれば、回転自在に取り付ける手段が、支柱に形成された球状の軸端部と、2枚の板材の互いにほぼ平行に対向する各面上に形成された球面座とから成る、請求項6に記載の動力伝達機構が提供される。
【0030】
すなわち、請求項8の発明では、請求項6の立体トグル機構において、支柱と板材との取り付け手段を、球と球面座との組合せとすることにより、支柱が板材に対して回転自在であるようにすることができる。
【0031】
請求項9に記載の発明によれば、回転自在に取り付ける手段が、ユニバーサルジョイントである、請求項6に記載の動力伝達機構が提供される。
【0032】
すなわち、請求項9の発明では、請求項6の立体トグル機構において、支柱と板材との取り付け手段を、ユニバーサルジョイントとすることにより、支柱が板材に対して回転自在であるようにすることができる。
【発明の効果】
【0033】
各請求項に記載の発明によれば、簡単な機構で、把持部を高速で駆動し、かつ大きな把持力を得ることができる、把持装置を提供するという共通の効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、添付図面を用いて本発明の実施形態について説明する。なお、複数の添付図面において、同一又は相当する部材、部分には、同一の符号を付している。
【0035】
図4(a)、(b)に、一般的な産業用ロボットアームの先端に取り付けられる把持装置の例を示す。
【0036】
図5に、本発明の基本的な実施形態を示す。すなわち、第1の回転アクチュエータ20には、第1の動力伝達機構として送りねじ22が取り付けられており、第1の指23を駆動する。第2の回転アクチュエータ30には、減速機31を介して、第2の動力伝達機構としての送りねじ32が取り付けられており、第2の回転アクチュエータ30と減速機31と第2の送りねじ32と台車とは、台座10に載置されている。本実施形態においては、第1の回転アクチュエータ20が、台車33に載置されているが、第1の回転アクチュエータ20、第1の動力伝達機構、第1の指23、のうち少なくとも1つが台車33に載置され、第2の回転アクチュエータを駆動することにより、台車33が第2の動力伝達機構を介して駆動され、台車33によって第1の指33が駆動される構成は、全て本発明に含まれる。本実施形態においては、第2の指10aは、台座10に固定されているが、第2の指10aは、別の支持物に固定されていてもよい。第2の回転アクチュエータ30は、減速機31を介して送りねじ32を駆動し、送りねじ32は、台車送り部33aを介して台車33を駆動する。
【0037】
すなわち、まず、図5(a)のように、第1の指23と第2の指10aとが把持対象物100に接触するまでは、第1の回転アクチュエータ20が高速で送りねじ22を駆動し、第1の指23と第2の指10aとを把持対象物100に接触させる。第1の指23と第2の指10aとが把持対象物100に接触したら、図5(b)のように、第2の回転アクチュエータ30を駆動する。送りねじ22はバックドライブしないので、第1の回転アクチュエータ20を停止しても、第1の指23は、台車33に対する位置を保持する。
送りねじ32は、減速機31を介して回転駆動され、低速度ではあるが、大きな力で台車33を押し、その結果、第1の指23が把持対象物100を第2の指10aに強く押し付け、把持対象物100を大きな把持力で把持する。本実施形態では、送りねじ32もバックドライブしないので、第1の指23が把持対象物100を第2の指10aに押し付け、強い力で把持した状態で、第2の回転アクチュエータの駆動を停止し、エネルギーを消費せずに把持状態を保持することができる。
【0038】
ところで、図5に示す実施形態において、第1の指23と第2の指10aとが把持対象物100に接触した後、第2の回転アクチュエータ30によって大きな把持力で第1の指23を駆動する場合、速度は遅く、作動距離も僅かである。そこで、速度は遅く、作動距離も僅かで、作動の終期に向って把持力が増大する機構、例えばトグル機構を利用すると有利である。
【0039】
図6に、第2の回転アクチュエータによって駆動され、大きな把持力を発生する機構として、トグル機構を利用した実施形態を示す。トグル機構とは、図6(a)の符号40に示すように、2つのリンクを「く」の字状に連結し、一方のリンクの端を台車33に回転可能に取り付け、他方のリンクを回転アクチュエータ30の軸に固定したもので、回転アクチュエータ30が回転し、「く」の字の山が低くなり、リンクが伸びていくと、台車33側に強力な力を発生する。トグル機構は、図6(b)のようにリンクが伸びきった状態では、台車側から回転アクチュエータ側を駆動することがなく、第2のアクチュエータを停止しても、エネルギーを消費しないで把持力を維持することができ、有利である。また、トグル機構には、本実施形態に示した形状以外にも、上述のリンク部分をカムに置き換えたもの等、様々な実施形態があり、それらは全て、本発明に含まれる。
【0040】
しかし、図6のトグル機構では、リンクの連結部の強度を十分大きくする必要があり、また、駆動する回転軸と、力を発生する方向とが、直交しているため、機構の占めるスペースが大きくなる。
【0041】
そこで、本発明の第2の動力伝達機構に利用する動力伝達機構として、回転軸の方向と出力軸の方向とが同軸となる、立体トグル機構を発明した。
【0042】
図2に、本発明の立体トグル機構の、一実施形態を示す。図2の立体トグル機構は、同軸上に配置された2枚の受け皿51、52と、2枚の受け皿の間に配置された支柱53とから構成される。受け皿は板材であり、受け皿の形状は、通常は円形、又は正方形等の回転対称な多角形形状であるが、回転対称でない、他の様々な形状を採用することもできる。また、図2の実施形態では、支柱53は、3つの支柱53a、53b、53cで構成されているが、支柱の数は3つに限定せず、他の複数の支柱で本機構を構成することもでき、1つの支柱で本機構を構成することもできる。支柱53の先端は球状に形成され、各受け皿51、52の、互いにほぼ平行に対向する各面上には、この球を受け入れるために、支柱の数に対応する数の球面座が、受け皿の回転中心から偏心した位置に形成されており、球面座に、支柱先端の球を、回転自在に収容する。
【0043】
図2(a)のように、支柱53が受け皿に対して傾斜した状態で配置されている受け皿51、52を、受け皿51が回転しないように拘束しつつ、受け皿52をC方向に回転すると、図2(b)のように、支柱53が受け皿に対して起立し、2枚の受け皿の間隔が増加し、受け皿51が、矢印Dの方向に駆動される。また、受け皿51と52との間隔が増加するに従い、矢印Dの方向に発生する力は大きくなる。図2(b)は、このようにして、2枚の受け皿51、52の間隔が伸びきった状態を示している。
【0044】
図3には、本発明の立体トグル機構の、他の実施形態を示す。図3の実施形態では、支柱53a、53b、53c、53dと、受け皿51、52とはユニバーサルジョイントによって回転自在に取り付けられている。すなわち、受け皿51、52と、支柱53とが回転自在に取り付けられた機構は、全て、本発明の範囲に属し、同一の作用効果を奏する。
【0045】
図1には、上述の立体トグル機構を利用した実施形態を示す。この場合には、図5の実施形態と同様、図1(a)のように、第1の指23と第2の指10aとが把持対象物100に接触するまでは、第1の回転アクチュエータ20が高速で第1の動力伝達機構である送りねじ22を駆動し、第1の指23と第2の指10aとを把持対象物100に接触させる。第1の指23と第2の指10aとが把持対象物100に接触したら、図1(b)のように、第2の回転アクチュエータ30を駆動する。第2の回転アクチュエータ30は、減速機31’を介して、低速で第2の動力伝達機構である立体トグル機構50を駆動し、立体トグル機構50の支柱53が、大きな力で台車33をDの方向に押し、台車33は、第1の指23を強く押す。その結果、第1の指23が把持対象物100を第2の指10aに強く押し付け、把持対象物100を大きな把持力で把持する。立体トグル機構50は、伸びきった状態では、台車33の側から回転アクチュエータ側を駆動することがなく、第2のアクチュエータを停止しても、エネルギーを消費しないで把持力を維持することができ、有利である。
【0046】
図7は、本発明の他の実施形態を示す。図1の送りねじ22によって駆動する第1の指23の構成を、リンク機構を介して、回転運動をする関節を有する指24として構成したものである。本実施形態においては、関節を台座10に回転可能に取付け、指24を関節の周りに回転運動させ、相対する第2の指(図示せず)との間で、把持対象物(図示せず)を把持することができる、すなわち、指の形状や動きには、様々な変形が存在するが、これらの変形は全て、本発明の範囲に含まれる。
【0047】
図8は、図7の構成を更に発展させた実施形態を示し、図7の構成を2組備え、関節25を有する指24に、関節26を追加して、2つの関節を有する指として駆動するように構成したものである。
【0048】
図9は、本発明の別の実施形態を示す。図9は、第1の動力伝達機構として、図7の送りねじ22に代えて、ウォームギアを採用し、第1の回転アクチュエータ20にウォームスクリュー27を取付け、台座10にウォームホイール28を回転可能に取付け、ウォームホイール28に第1の指29を取付け、第1の指29を高速で駆動するものである。ウォームギアは、送りねじ同様にバックドライブしない機構であるので、第1の指29が把持対象物に接触するまでは、第1の指29を第1の回転アクチュエータ20によって高速で駆動し、第1の指29と相対する第2の指(図示せず)とが把持対象物(図示せず)に接触したときには、第1の回転アクチュエータを停止しても、電力を消費せずに第1の指29の位置を保持することができる。次に第2の回転アクチュエータ30を駆動し、立体トグル機構50を駆動して、台車33を押す。立体トグル機構50の軸方向移動量は僅かであるので、ウォームスクリュー27が軸方向に僅かに押され、ウォームホイール28が僅かに回転し、第1の指29が、相対する第2の指との間の把持対象物を、強い力で把持する。
【0049】
図10は、本発明の更に別の実施形態を示す。この構成は、図4(a)に示した従来のラック・ピニオンによる駆動に、本発明の、回転アクチュエータを2台使用する構成を取り入れ、更に、第1の回転アクチュエータによって駆動する第1の動力伝達機構には、図9のウォームギアを採用し、第2の回転アクチュエータによって駆動する第2の動力伝達機構には立体トグル機構を採用したものである。このように構成すると、把持部の構造は図4(a)と同様のものを用い、駆動速度を高速化し、大きな把持力を得ることができるので、有利である。
【0050】
図11は、本発明の更に別の実施形態を示す。この構成は、図5に示した本発明の基本的な実施形態において、第2の回転アクチュエータ30を台車33に載置して構成したものである。すなわち、第2の回転アクチュエータ30によって台車33が第2の動力伝達機構を介して駆動され、台車33によって第1の指23が駆動される構成は、すべて本発明に含まれる。
【0051】
図12は、本発明の更に別の実施形態を示す。この構成は、図5に示した本発明の基本的な実施形態において、第1の指23と第2の指10a’との間を広げることにより、物体を把持するように構成したものである。すなわち、第1の指と第2の指とによって物体を把持する構成は、第1の指と第2の指との間に物体を把持する場合のみならず、第1の指と第2の指との間を広げることによっても実現することができ、これらはすべて本発明に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明を把持装置に適用した場合の、一実施形態の概略構成を説明する図である。
【図2】本発明を把持装置に適用した場合の、動力伝達機構の一実施形態の概略構成を説明する図である。
【図3】本発明を把持装置に適用した場合の、動力伝達機構の他の実施形態の概略構成を説明する図である。
【図4】従来の把持装置の、把持部を駆動する機構の実施形態の概略構成を説明する図である。
【図5】本発明を把持装置に適用した場合の、他の実施形態の概略構成を説明する図である。
【図6】本発明を把持装置に適用した場合の、更に他の実施形態の概略構成を説明する図である。
【図7】本発明を把持装置に適用した場合の、別の実施形態の概略構成を説明する図である。
【図8】本発明を把持装置に適用した場合の、更に別の実施形態の概略構成を説明する図である。
【図9】本発明を把持装置に適用した場合の、更に別の実施形態の概略構成を説明する図である。
【図10】本発明を把持装置に適用した場合の、更に別の実施形態の概略構成を説明する図である。
【図11】本発明を把持装置に適用した場合の、更に別の実施形態の概略構成を説明する図である。
【図12】本発明を把持装置に適用した場合の、更に別の実施形態の概略構成を説明する図である。
【符号の説明】
【0053】
10 台座
10a、10a’ 第2の指
20 第1の回転アクチュエータ
22 送りねじ
23 第1の指
23’、23” 指
24 第1の指
25 関節
26 関節
27 ウォームスクリュー
28 ウォームホイール
29 第1の指
30 第2の回転アクチュエータ
31、31’ 減速機
32 送りねじ
33 台車
33a 台車送り部
40 トグル機構
41 ラックギア
42 ピニオンギア
50 立体トグル機構
51 受け皿
52 受け皿
53、53a、53b、53c、53d 支柱
100 把持対象物
200 第3の回転アクチュエータ
300 第4の回転アクチュエータ
A 回転方向
B1、B2 移動方向
C 回転方向
D 移動方向
E 移動方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの指で物体を把持する把持装置であって、
第1の回転アクチュエータと、
前記第1の回転アクチュエータによって回転駆動される第1の動力伝達機構と、
前記第1の動力伝達機構によって駆動される第1の指と、
第2の回転アクチュエータと、
前記第2の回転アクチュエータの回転速度を減速する減速機と、
前記減速機によって回転駆動される第2の動力伝達機構と、
前記第2の動力伝達機構によって駆動される台車と、
前記第1の指と共に物体を把持する、第2の指と、を備え、
前記第1の回転アクチュエータと前記第1の動力伝達機構と前記第1の指のうち少なくとも1つを、前記台車に載置し、
前記第2の回転アクチュエータと前記減速機と前記第2の動力伝達機構と前記台車とを、台座に載置し、
前記把持装置が、前記第1の指と前記第2の指とによって物体を把持する場合には、
前記第1の指と前記第2の指とが前記物体に接触するまでは、前記第1の回転アクチュエータを作動させ、前記第1の指と前記第2の指とが前記物体に接触した後は、前記第2の回転アクチュエータを作動させ、前記台車を駆動して、前記第1の指をさらに前記物体を押し付ける方向に駆動し、前記第1の指と前記第2の指とによって前記物体を把持する、
把持装置。
【請求項2】
前記第1の動力伝達機構が送りねじである、請求項1に記載の把持装置。
【請求項3】
前記第1の動力伝達機構がウォームギアである、請求項1に記載の把持装置。
【請求項4】
前記第2の動力伝達機構が送りねじである、請求項1から3のいずれか1項に記載の把持装置。
【請求項5】
前記第2の動力伝達機構がトグル機構である、請求項1から3のいずれか1項に記載の把持装置。
【請求項6】
2枚の板材と、前記2枚の板材の間に配置された1以上の支柱とを備える動力伝達機構であって、
前記支柱の各端部を、それぞれ前記2枚の板材の、互いにほぼ平行に対向する各面上の、前記2枚の板材の回転中心から偏心した位置に、回転自在に取り付ける手段を備え、
前記2枚の板材を、前記2枚の板材の回転中心を通る軸の周りに互いに対して相対的に回転させた場合には、前記2枚の板材の間の距離が増減する、
動力伝達機構。
【請求項7】
前記第2の動力伝達機構が請求項6に記載の動力伝達機構である、請求項1から3のいずれか1項に記載の把持装置。
【請求項8】
前記回転自在に取り付ける手段が、前記支柱に形成された球状の軸端部と、前記2枚の板材の互いにほぼ平行に対向する各面上に形成された球面座とから成る、請求項6に記載の動力伝達機構。
【請求項9】
前記回転自在に取り付ける手段が、ユニバーサルジョイントである、請求項6に記載の動力伝達機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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