説明

把持部材移動方法及び装置

【課題】線状柔軟リンクの巻き取りとロボットアームの振りを協調的に行わせることにより、装置を大型化することなく把持部材に大きな瞬発力を与え、把持部材が床を引きずられることなく物体を移動させる方法及び装置を提供すること、ならびにリンクの剛性を可変にできる機構を提供する。
【解決手段】線状柔軟リンクの引っ張り動作と線状柔軟リンクの巻き取り動作を協調して行うことにより、線状柔軟リンクの先端の把持部材に把握された物体を移動させる。また、ロボット本体に設置された駆動関節に剛体アームを装着し、該剛体アームには線状柔軟リンクの巻き取り手段及び案内手段を設け、剛体アームの揺動と線状柔軟リンクの巻き取りとを協調して行う制御手段を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ひもやロープ、ワイヤのような柔らかい連鎖(以下「線状柔軟リンク」という。)とその先端に装着された把持部材を持つロボット機構を用いて、線状柔軟リンクの張力により把持部材を移動させる方法及び装置に関するものである。この方法及び装置により、物体を把握した把持部材の運動を制御して物体を移動させることが可能となる。
【背景技術】
【0002】
機械システムを用いて対象物体をある任意の位置から他の目標位置まで自動的に移動させる有効な手段としてロボットを用いる方法が注目されている。また、ロボットが対象物体を操作することのできる幾何学的な領域(作業領域)の大きさは、ロボットの性能を示す基本的な指標の一つと考えられ、とりわけ野外作業などの大空間における作業では、作業領域のより広いロボットが求められている。
【0003】
ロボットの到達領域をできるだけ広くするために、まずアームを構成するリンクの長さをできるだけ長くした機構が考えられる。しかし、従来技術では剛体のリンクを用いているため、リンクが長くなる程、アーム重量の増加が駆動源の出力に対してより大きな負荷となる。したがって、リンクの長さを長くするほどより大きな駆動源が必要になりロボット全体の重量がより大きくなったり、リンクの慣性が大きくなるためにアームの運動速度がより低く制限されたり、作業に対するエネルギー効率がより低下するという問題が生ずる。現在、野外で作業するために開発されたロボットアームの長さは高々数メートルである(図1のa参照。)。
【0004】
次に、ロボットアームを移動機構に搭載してロボットの到達領域を拡大する方法がある。移動機構として、地表に接して移動する車輪、クローラ、脚などの機構が開発され、これらの移動機構にロボットアームを搭載した従来技術がある(図1のb及びc参照。)。 しかし、地表に接する移動機構は地表面の形状や性質に影響されるため、急斜面、窪地、沼地などの荒れ地における移動は従来技術では非常に困難であるという問題がある。
【0005】
また、地表に接しないで移動するヘリコプター、飛行機、飛行船などの無人機を代表とする移動機構が開発されているが、この移動機構にロボットアームを搭載した実用機は存在しない。地表に接しないで移動する機構にロボットアームを搭載しても、この移動機構では可搬重量が小さいこと、機体の姿勢制御が困難なこと、墜落などに代表されるように環境との接触によりシステム全体が容易にダウンしてしまうことなどの問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、ロボットアーム機構において、一部の剛体アームの代わりに線状で可変長の軽量・柔軟なリンクを用いる方法が考えられる。これは、例えば図1のd及び図2に示すように、剛体アーム14を繰り返しスイングして運動エネルギーを蓄積した後に、ロボット本体10から線状柔軟リンク11の長さを伸ばしながら、その先にある把持部材12を対象物体13へ投射(キャスティング)し、線状のリンク11の張力によって空中で把持部材12の運動を制御し、対象物体13を把持する方法である(本明細書において、この種の方法を実現する機械システムのタイプを「キャスティングマニピュレータ」という。)。この方法を用いると、簡便な機構かつコンパクトなサイズで、非常に広い到達領域をもつことができるうえに、エネルギー効率が高く、高速な搬送作業を繰り返し行うことが可能で、耐故障性に優れているという利点がある。
【0007】
今、図3に示す従来のキャスティングマニピュレータに装着された線状柔軟リンク繰り出し・巻き取り機構を用いて、可変長の線状柔軟リンクの先端に装着された把持部材によって把握された物体を回収する場合、以下の問題が生ずることが考えられる。
(1)把持部材を引きずった状態で線状柔軟リンクを巻き取ると、把持部材や線状柔軟リンクが環境と接触する問題が生じる。例えば、床に穴や段差がある場合、把持部材が引っかかったり、線状柔軟リンクが段差の角などで擦れて切れてしまったりする。
(2)遠方の物体13を把握した把持部材12を回収するとき、把持部材12が床に接しないように空中を移動させるためには、床に接することのない十分な上向きの速度ならびに把持部材12が遠方からロボット本体まで到達できる十分な運動エネルギーを把持部材12に与える必要がある。したがって、線状柔軟リンク巻き取り装置のみで回収を行う場合、その巻き取り装置には短時間で非常に大きな力を発生できることが要求されるため、装置の大規模化、重量・サイズの増加、エネルギー消費の増加などの問題がある。また、ロボット本体10に装着される線状柔軟リンク巻き取り装置では把持部材12に十分な上向きの速度を与えることが難しい。
(3)剛体アーム14を振ることによって線状柔軟リンク11を引き、物体を把握した把持部材12を移動させる場合、物体の重さや剛体アームの姿勢により剛体アームを駆動する駆動源の出力が飽和する問題が生ずる。
(4)伸縮の小さい線状柔軟リンクを介して把持部材を瞬間的な力で引く場合、線状柔軟リンクの粘性特性による減衰効果によってエネルギー損失が生ずるため、線状柔軟リンクを介して把持部材に効果的にエネルギーを与えられない。
【0008】
本発明は、従来の技術によると、把持部材を床の段差等に引っかからないようにするためには線状柔軟リンク巻き取り駆動装置に大きな力(瞬発力)を発生させる必要があり、そのため装置の大規模化につながることに鑑み、線状柔軟リンクの巻き取りと剛体アームの振りを協調して動作させることにより、装置を大型化することなく把持部材に大きな瞬発力を与えることのでき、さらに把持部材の落下を抑制する上向きの速度を把持部材に与えることのできる把持部材移動方法及び装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、線状柔軟リンクの見かけ上の剛性を可変とする装置を提供することを目的とする。なお、線状柔軟リンクを引くとき、線状柔軟リンクそのものの剛性を変えずに、弾性を有する機構を用いて線状柔軟リンクの運動を操作することによって、線状柔軟リンクがあたかも弾性体のように伸びるようになる場合、線状柔軟リンクの外から見た剛性を「見かけ上の剛性」と呼ぶ。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記目的を達成するため本発明の把持部材移動方法は、線状柔軟リンクとその先端に装着された把持部材を持つロボット機構を用いて線状柔軟リンクの張力により把持部材を移動させる把持部材移動方法において、線状柔軟リンクの引っ張り動作と線状柔軟リンクの巻き取り動作を協調して行うことにより、先端の把持部材や把持部材で把握された物体を移動させることを特徴としている。
(2)また、上記(1)の線状柔軟リンクの引っ張り動作を効果的に行うために、引っ張り動作を行う前に線状柔軟リンクが弛んだ状態で剛体アームのスイング動作を行い、剛体アームの十分な運動エネルギーを生成した後のスイング動作中に、急に線状柔軟リンクを引くことによって剛体アームの慣性を利用して線状柔軟リンクを介した撃力を把持部材や把持部材で把握された物体に与えることを特徴としている。
(3)また、本発明の把持部材移動方法は、線状柔軟リンクとその先端に装着された把持部材を持つロボット機構を用いて線状柔軟リンクの張力により把持部材を移動させる把持部材移動方法において、線状柔軟リンクの引っ張り動作と線状柔軟リンクの巻き取り動作の協調動作を繰り返すことにより、線状柔軟リンクの先端の把持部材や把持部材に把握された物体を移動させることを特徴としている。
(4)また、本発明の把持部材移動装置は、線状柔軟リンクとその先端に装着された把持部材を持つロボット機構を用いて線状柔軟リンクの張力により把持部材を移動させる把持部材移動装置において、ロボット本体に設置された駆動関節に剛体アームを装着し、該剛体アームには線状柔軟リンクの繰り出し・巻き取り手段及び案内手段を設け、剛体アームの揺動と線状柔軟リンクの巻き取りとを協調して行う制御手段を設けたことを特徴としている。
(5)また、本発明の把持部材移動装置は、上記(4)において、剛体アームに対して相対運動可能となるように装着されたブレーキ台座スライダーと剛体アームに固定された固定支柱との間にバネ等の弾性部材を装着し、ブレーキ台座スライダーには剛体アームとの相対運動を停止するスライド停止手段及び線状柔軟リンクの運動を停止させる繰り出し停止手段を装着することにより、線状柔軟リンクの見かけ上の剛性を段階的に可変とすることを特徴としている。
(6)また、本発明の把持部材移動装置は、上記(4)において、剛体アームに対して相対的に自由にスライド運動するブレーキ台座スライダーと剛体アームに対して相対的にスライド運動する並進駆動部を装着し、並進駆動部に固定された支柱とブレーキ台座スライダーとの間にバネ等の弾性部材を装着し、ブレーキ台座スライダーには剛体アームとの相対運動を停止するスライド停止手段及び線状柔軟リンクの運動を停止させる繰り出し停止手段を装着し、並進駆動部を用いて弾性部材の変位を制御することによって、線状柔軟リンクの見かけ上の剛性を連続的に可変とすることを特徴としている。
(7)また、本発明の把持部材移動装置は、上記(4)において、剛体アームに対して相対的にスライド運動可能なブレーキ台座スライダーを装着し、ブレーキ台座スライダーには剛体アームとの相対運動を停止するスライド停止手段及び線状柔軟リンクの運動を停止させる繰り出し停止手段を装着し、剛体アームに設けられた固定支柱と回転関節を有する回転支柱に対して各支柱上をスライドするように駆動される支持点を設け該支持点間をバネ等の弾性部材で結合し、回転支柱とブレーキ台座スライダーとを伸縮しないリンクで結合し、該支持点同士の相対位置を変えて弾性部材の変位を制御することによって、てこの原理により線状柔軟リンクの見かけ上の剛性を連続的に可変とすることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、以下のような優れた効果を奏する。
(1)把持部材を対象物体へ投射し、把握した対象物体を回収するにあたり、線状柔軟リンクを巻き取る際に、把持部材が確実に空中を移動可能としたため、把持部材と環境との接触を回避することが可能となる。例えば、床面を引きずるように把持部材を移動させる方法に比べると、床に穴や段差などがある場合に対して、把持部材が引っかかったり線状柔軟リンクが擦り切れたりしてしまうという問題を解消できる。
(2)把持部材を対象物体へ投射し、把握した対象物体を回収するにあたり、線状柔軟リンクの巻き取りと剛体アームの振りの協調動作を繰り返し、断続的に把持部材に瞬発力を与え続けることにより、装置の大規模化、重量・サイズの増加、エネルギー消費の増加を招くことなく把持部材に大きな運動エネルギーを与えることができ、把持部材の空中移動を確実なものとすることができる。
(3)上記(2)において線状柔軟リンクを引っ張ることにより把持部材を空中移動させるにあたり、線状柔軟リンクの見かけ上の剛性を可変とすることによって、把持部材に効率よく運動エネルギーを与えることができる。
(4)上記(2)における線状柔軟リンクの見かけ上の剛性の切り替えを、剛体アームにバネ等の弾性部材を介して線状柔軟リンクの繰り出し・巻き取り方向にスライド可能なブレーキ台座スライダーを設けるという簡便な手段で実現することができる。
(5)上記(2)における線状柔軟リンクの見かけ上の剛性を、剛体アームに固定支柱と回転支柱を設け、固定支柱と線状柔軟リンクに繋がる回転支柱との間にバネ等の弾性部材を各支柱のそれぞれの弾性部材結合点がスライド可能となるように設けるという簡便な手段で可変にすることができる。
(6)ロボットにより重量物体を静的に持ち上げる際、アクチュエータの出力が限界に達してしまう出力飽和領域が存在する場合がある。キャスティングマニピュレータで重量物体を静的に持ち上げる際も、図4(a)に示すように駆動関節18の出力が飽和する領域である出力飽和領域ならびに出力が飽和しない領域である出力非飽和領域が存在する場合がある。しかし、キャスティングマニピュレータでは同図(b)のように、出力非飽和領域Aにおいて線状柔軟リンクの張力を零にした負荷の小さい状態で剛体アームをスイングして運動エネルギーを蓄積することができるので、その後に、出力飽和領域との境界付近において線状柔軟リンクの張力を正となるようにすることによって、線状柔軟リンクを介して重量物体に撃力を与えることができる。したがって、同図(c)に示すように撃力により生じた把持部材の速度・角速度によって出力非飽和領域Aから出力飽和領域を越えて他の出力非飽和領域Bまで剛体アームを持ち上げることが可能となる。このような効果は把持部材が空中移動する上記(2)においても応用可能で、線状柔軟リンクを引く前に線状柔軟リンクを弛ませた状態で剛体アームの運動を生成し、その後、剛体アームの運動中に駆動関節の出力が飽和しない領域において線状柔軟リンクを急に引くことにより線状柔軟リンクを介して撃力を把持部材あるいは把持部材に把握された物体に与え、撃力により生じた把持部材の速度・角速度によって出力が飽和しない状態で線状柔軟リンクを引いて把持部材あるいは把持部材に把握された物体を移動させることが可能となる。
(7)キャスティングマニピュレータで重量物体を静的に持ち上げる際、図5(a)に示すように駆動関節18の出力が飽和する領域である出力飽和領域ならびに出力が飽和しない領域である出力非飽和領域が存在する場合、線状柔軟リンクに弾性体と同様の伸縮特性を持たせることにより、同図(b)に示すように出力非飽和領域Aから出力飽和領域を越えて他の出力非飽和領域Bまで負荷の小さい状態で剛体アームを移動させることができる。したがって、同図(c)に示すように剛体アームを出力非飽和領域Bに留めた状態で伸びた弾性体の復元力により、静的には持ち上げることのできない把持部材に把握された物体を引き上げることが可能となる。このような効果は把持部材が空中移動する上記(2)においても応用可能で、線状柔軟リンクを引く前に弾性体と同様の伸縮特性を線状柔軟リンクに持たせることにより、剛体アームの負荷が小さい状態で把持部材を引く方向に剛体アームを振って駆動関節の出力が飽和しない領域まで剛体アームを移動させることができ、それにより伸びた弾性体の復元力によって把持部材あるいは把持部材に把握された物体を移動させることが可能となる。
(8)図24に示すように、回収ばかりでなく、把持部材を高速に往復運動させて移動させることが可能となる。また、この繰り返し運動により、把持部材の速度を増加させることが可能なので、より遠方への把持部材の投射動作へ応用することも可能となる。さらに、図25に示すように、移動機構に線状柔軟リンクの見かけ上の剛性を可変とする機能を有するキャスティングマニピュレータを搭載し、把持部材が環境に固定された物体を把握した状態で、上記(2)に示す線状柔軟リンクの巻き取り動作と剛体アームの振り動作ならびに移動機構によるロボット本体の移動・停止を協調させることにより、ロボット本体が斜面を押す力を保ちつつ上記(6)及び(7)で示す効果を利用して駆動源の出力飽和を抑制しながら斜面を移動することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に係る把持部材移動方法及び装置を実施するための最良の形態について図面を参照して以下に説明する。
【0012】
図6は、キャスティングマニピュレータによる把持部材の操作(キャスティングマニピュレーション)における対象物体の把持・回収に関する基本動作を示すものであり、次の5つの動作に分割される。
(a)回転動作:マニピュレータ全体をスイングさせ、把持部材が対象物体へ到達するのに必要な運動を与える。
(b)投射動作:適切なタイミングで線状柔軟リンクの拘束を解放し、線状柔軟リンクを繰り出しながら把持部材を目標に向けて投射する。
(c)軌道制御動作:対象物体を把握できるように投射中の把持部材の位置・姿勢を制御する。
(d)把持動作:対象物体を掴む。
(e)回収動作:把握した対象物体を回収するために、線状柔軟リンクの巻き取りと剛体アームの運動を協調して行う。
【0013】
本発明は、上記(e)の回収動作に焦点をあて、把握した対象物体13を回収するために、線状柔軟リンク11の巻き取りと剛体アーム14の運動を協調して行う際の把持部材12の運動制御を行う方法及び装置と線状柔軟リンクの見かけ上の剛性を可変にする装置に関するものである。以下、実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例】
【0014】
把握した対象物体を回収するための線状柔軟リンクの巻き取りと剛体アームの運動の協調動作は、図6の(e)に示すように、線状柔軟リンク11の巻き取りと剛体アーム14の振りを同時に行って把持部材12に瞬発力を与えることが基本である。
図7に示すキャスティングマニピュレータの巻き取り装置ならびに関節1を駆動する駆動源を用いて、図8に示すような剛体アームの振りによる線状柔軟リンクの引っ張り動作と線状柔軟リンクの巻き取り動作を協調させて大きな力を瞬間的に発生させることにより、移動に必要な速度を把持部材に生成させて把持部材を空中移動させる。ただし、把持部材12を引っ張るときに巻き取り装置の駆動源にかかる負荷が駆動源の出力を越える場合、図7に示すブレーキなどにより線状柔軟リンク11を拘束することによって、巻き取り用の駆動源にかかる負荷を低減することが可能である。
【0015】
上記図8に示す動作でも十分な移動速度を生成できない場合は、図8で示す動作を繰り返し、断続的に力を把持部材に与えて移動速度を生成する。例えば、遠方にある物体や重い物体などの回収においては、図9に示すように、線状柔軟リンク11の巻き取りと剛体アーム14の振りの協調動作を繰り返し、断続的に把持部材12に瞬発力を与え続けることにより、把持部材12は空中を移動しながら物体13を回収するものである。前記協調動作の繰り返し回数は、物体の回収距離と1回の協調動作による物体13の移動距離との関係で決まる。
【0016】
次に、線状柔軟リンクを引っ張る方法を示す。
線状柔軟リンクの引っ張り方法は、引っ張り動作のために駆動源に接続されたリンクの「運動方式」と「運動方向」によって分類することができる。
「運動方式」として並進と回転、「運動方向」として往復型と一方向型を考えると、図10のように分類される。
図10(a)、(b)に示す往復型は断続的に線状柔軟リンクを引っ張ることができ、同図(c)、(d)に示す一方向型は連続的に引っ張ることができる。
【0017】
図10に示す型の特徴を説明する。
(a)回転往復型:前記図4を説明したように、振った剛体アームの慣性を利用して瞬間的に大きな力で引っ張ることが可能である。また、長い剛体アームを使う回転往復型による引っ張り動作では引っ張り力の上方向成分を大幅に拡大できるので、把持部材の上方向の速度を与えることができ、把持部材を空中で移動させるには非常に効果的な引っ張り方法である。ただし、線状柔軟リンクを一回引っ張ることはできるが、引っ張った後に線状柔軟リンクが弛んでしまうと引っ張り動作を繰り返すことができない。
(b)並進往復型:並進駆動型ブレーキ装置により線状柔軟リンクを拘束し、把持部材に対して逆側方向に並進駆動型ブレーキ装置が移動することにより線状柔軟リンクを引っ張り、十分に引いた後に線状柔軟リンクを解放し、並進駆動型ブレーキ装置が把持部材側方向へ移動するという一連の動作を繰り返す方法である。図10(d)に示す並進一方向型に比べて、装置の大型化を回避できる。ただし、一般に回転式のアクチュエータに比べて、市販のリニアアクチュエータの種類は少ない。
(c)回転一方向型:他の方式に比べて構造がシンプルでかつコンパクトに構成できるが、回転部の慣性が小さいので図10(a)の回転往復型などに比べると利用できる慣性力が小さいために、断続的に大きな瞬発力を発生させる動作には向いていない。機構の慣性を効果的に利用できないので、大きな瞬発力を発生させるには大出力の駆動源が必要となり、エネルギー効率の低下や高価格、装置の大規模化などが生ずる。小さな駆動源の場合、把持部材に連続的に小さな力を与え続けることは可能であるが、短時間に大きな力を発生できないため、把持部材がロボット本体に到達するのに必要な速度が生成される前に重力によって把持部材が床面に落下してしまう。
(d)並進一方向型:牽引車の長い移動距離が必要なので、装置が大型化する。一般に回転式のアクチュエータに比べて、市販のリニアアクチュエータの種類は少ない。車輪型の牽引車の場合、スリップなどの問題が生ずる。
【0018】
図10の基本的な4方式を組み合わせて引っ張り動作を行う方法もある。
図11に回転往復型と回転一方向型の組み合わせによる引っ張り動作を示す。引っ張り動作は回転往復型と回転一方向型を協調させて行うことが可能である。また、引っ張り動作による瞬発力によって把持部材に十分な速度が生成された後は、把持部材が自ら近づいて来るので、回転一方向型により無負荷の状態で線状柔軟リンクを巻き取ることができる。線状柔軟リンクの巻き取りを把持部材の接近速度より早く巻き取って再び線状柔軟リンクが張った状態あるいはその状態に近い状態になれば、さらに把持部材の引っ張り動作を繰り返すことができるため、1回のみの引っ張りしかできないという回転往復型の短所を補って図9のような断続的な引っ張り動作による把持部材の回収を行うことができる。
【0019】
次に、引っ張り動作により把持部材に効率よく運動エネルギーを与える方法を考える。
一般に、ワイヤ、ひも、ロープなどの線状柔軟リンクは伸縮方向についてバネ効果とともに減衰効果の性質を持っている。図12に線状柔軟リンクの力学モデルを示す。図12に示すように、線状柔軟リンクにはバネ要素のみならずダンパ要素(減衰要素)が含まれていて、線状柔軟リンクを介して把持部材に与えられたエネルギーの一部はこのダンパ要素によって失われる。
【0020】
図13にバネの無い線状柔軟リンクと実際のバネが装着された線状柔軟リンクのそれぞれの線状柔軟リンクを用いて質点と固定端とを結び、線状柔軟リンクが弛んだ状態で質点に図13の<1>,<1’>に示す矢印のような方向の速度を与えたときの質点の挙動を示す。線状柔軟リンクにバネが装着されていない場合、図10に示す線状柔軟リンクのダンパ要素の減衰効果によるエネルギーの散逸によって質点は十分に弾まない。
一方、線状柔軟リンク自身のバネ要素に比べて非常に低い剛性のバネを装着した線状柔軟リンクの場合、線状柔軟リンク自身のバネ要素の伸びの変化に比べて装着したバネの伸びの変化ははるかに大きいので、図12に示すダンパ要素の変位速度は小さく減衰効果が現れにくいために、図13の<3’>,<4’>に示すように質点は大きく弾む。線状柔軟リンクを通して把持部材に効果的にエネルギーを与えるには図13に示すバネの効果を線状柔軟リンクに付加することが有効な方法である。
【0021】
さらに、線状柔軟リンクの引っ張り動作における駆動源の出力飽和について考える。
前記のとおり図5(a)に示すような静的に出力が飽和する領域に対して、バネの効果を線状柔軟リンクに付加することによって、負荷の小さい状態すなわち出力が飽和しない状態でバネを伸ばしながら剛体アームは出力飽和領域を通過することができ、その結果、伸びたバネの復元力によって物体を移動させることができるので、バネの効果を線状柔軟リンクに付加することは駆動源の出力飽和を抑制する有効な方法である。
【0022】
そこで、線状柔軟リンクにバネ効果(弾性)を付加する方法を示す。
(ア)図14のように線状柔軟リンクに弾性部材を直結する方法。
この方法では線状柔軟リンクと弾性部材であるバネとの全体の剛性を可変にできない問題がある。また、図6(a)に示すように把持部材の投射前にマニピュレータ全体をスイングするとき、線状柔軟リンクに結合されたバネの伸縮により把持部材が線状柔軟リンクの延長線上で振動するため、マニピュレータ全体が複雑なスイングとなり投射制御の妨げとなる。さらに、バネの伸びを測定するのが困難であるため、バネの伸縮による把持部材の運動を制御することが困難である。
【0023】
(イ)巻き取り装置と把持部材の間の線状柔軟リンクに弾性部材を間接的に付加する方法。
図15(a)のように、線状柔軟リンクの案内ならびに線状柔軟リンクの引っ張りに用いる剛体アームを釣り竿程度の弾性のあるフレキシブルリンクに置き換え、フレキシブルリンクの弾性を用いて把持部材を移動させる方法である。この方法では、フレキシブルリンクを動的に曲げる制御ならびにフレキシブルリンクのたわみによる振動の制御が一般的に難しいために、把持部材の投射時、線状柔軟リンクのブレーキ時、線状柔軟リンクの巻き取り時などにおいて生ずるフレキシブルリンクの曲げ・たわみが制御誤差や振動を生み、その結果、空中の把持部材の運動制御を困難にする問題がある。
また、図15(b)のようにプーリならびにバネが装着されたプーリを用いる方法では、線状柔軟リンクにバネ効果を付加するために、線状柔軟リンクの張力が零の時にバネが装着されたプーリによって線状柔軟リンクが曲げられた状態にし、張力が増加するほどバネが縮むようにプーリを配置する。この方法では、バネ効果を与えるために線状柔軟リンクがプーリに沿って曲がった状態になる必要があるので、バネの剛性が高くなるほどプーリの摩擦の影響が大きくなる。その結果、線状柔軟リンクに摩擦力が生じ、把持部材の運動制御の妨げとなる。
【0024】
(ウ)図16のように巻き取り装置に弾性部材を付加する方法。
一般的にモータなどの駆動源はブレーキ装置などに比べて重いため、巻き取り装置用の駆動部20をバネにより振動させるには慣性力や摩擦力が大きいため剛性の大きいバネが必要となる。また、振動した駆動部をブレーキなどで停止させるとき、慣性力が大きいため、大きなブレーキ力が必要となる。
【0025】
(エ)図17のようにブレーキ台座22に弾性部材を付加する方法。
線状柔軟リンクの巻き取り用駆動源などの重量に比べると、図17に示す線状柔軟リンクの繰り出し停止用ブレーキ16の重量は小さいものを選ぶことができるので、ブレーキ時に引っ張られるブレーキ台座22の慣性の影響が小さくて済む。また、バネによるブレーキ台座22の振動(往復運動)を他のブレーキなどにより停止しやすい。さらに、ブレーキ16により線状柔軟リンク11を拘束して線状柔軟リンク11を引っ張ると、線状柔軟リンク11と共にバネが引っ張られ、線状柔軟リンク11はあたかもバネと同様に伸びるように見える。このとき外から見た線状柔軟リンク11の見かけ上の剛性は、バネ剛性と線状柔軟リンクそのものの剛性の和となり、ブレーキ16により線状柔軟リンク11を解放すると線状柔軟リンクそのものの剛性となる。このように線状柔軟リンク11の見かけ上の剛性を容易に切り替えることができる。
【0026】
線状柔軟リンク11を引くことにより把持部材12に瞬発力を与える場合、線状柔軟リンク11がバネのように伸縮するならば、効率良く把持部材に力を与えることができ、かつ引っ張り動作の繰り返しの周期を長くすることができるので制御が容易になる。しかし、バネのような引っ張り剛性の低い線状柔軟リンクを用いると、前記のとおり図6に示すスイングなどにおいて振り子運動とバネ伸縮運動が合成された複雑な挙動を示すことが知られている。したがって、線状柔軟リンクの引っ張り剛性が調節可能であることが望まれる。また、線状柔軟リンクの引っ張り剛性を可変にするときに、線状柔軟リンクに対する可変装置などの慣性の影響はできるだけ小さいことが望ましい。以上のことにより、線状柔軟リンクにバネ効果を付加する方法として、図17に示すようなバネが繋がったブレーキ台座22上に装着されたブレーキにより線状柔軟リンクを拘束する方法が有効と考えられ、図18のように剛体アーム上をスライドするブレーキ台座スライダー23と剛体アーム14とをバネで結合し、ブレーキ台座スライダーと剛体アームの相対運動を停止できるスライド停止用ブレーキをブレーキ台座スライダーに搭載した機構を考える。ブレーキ16により線状柔軟リンク11を拘束して線状柔軟リンク11を把持部材12の方向へ引っ張る場合、スライド停止用ブレーキをONにしてブレーキ台座スライダー23と剛体アーム14の相対運動を拘束すると、線状柔軟リンク11の見かけ上の剛性は線状柔軟リンクそのものの剛性であり、スライド停止用ブレーキをOFFにしてブレーキ台座スライダー23と剛体アーム14の相対運動を自由にすると、線状柔軟リンク11と共にバネが引っ張られ、線状柔軟リンク11はあたかもバネと同様に伸びるように見える。このとき、外から見た線状柔軟リンク11の見かけ上の剛性はバネ剛性と線状柔軟リンクそのものの剛性の和となる。
【0027】
図18に示す機構では線状柔軟リンクの見かけ上の剛性を連続的に変化させることができない。そこで、把持部材の引っ張り動作をよりきめ細かに制御するために、線状柔軟リンクの見かけ上の剛性を連続的に変化させる方法を考える。
図18のバネの固定支柱24を図19に示すような剛体アーム上をスライド運動する並進駆動部28に変えると、様々なバネの伸縮状態を作ることができる。
ブレーキ16により線状柔軟リンクを拘束する前に、ブレーキ27によりブレーキ台座スライダーと剛体アームを拘束し、並進駆動部28を所望の位置に移動させて固定することにより、バネを様々に伸びた状態にすることができる。したがって、バネを所望の伸縮状態にして、ブレーキ16により線状柔軟リンクを拘束し、同時にブレーキ27を解放することによって、所望する見かけ上の剛性を離散的に線状柔軟リンクに生成させることが可能となる。また、ブレーキ27を解放状態にして並進駆動部28を固定し、ブレーキ16により線状柔軟リンク11を拘束した後に並進駆動部28の位置を変えても、線状柔軟リンクの見かけ上の剛性を連続的に変えることができる。
【0028】
さらに、バネ剛性を連続的に可変にする方法を示す。
図20(a)に示すように、固定支柱をスライドするように駆動されるスライド支持点(A)29と回転自由な回転支柱26をスライドするように駆動されるスライド支持点(B)30との間にバネを装着すると、各支柱上のそれぞれの支持点の位置を制御することによって、てこの原理により回転支柱26の回転方向の剛性を可変にできる。
したがって、図20(a)の回転支柱26に図20(b)に示すような接合点31を設け、その接合点31とブレーキ台座スライダーとを伸縮しないリンク32でつなぐと、スライド支持点(A)29、(B)30の位置を制御することにより、ブレーキ台座スライダーの並進方向の剛性を可変にできるので、繰り出し停止用ブレーキにより線状柔軟リンクを拘束すると線状柔軟リンクの見かけ上の剛性を連続的に可変とすることができる。図20(a)に示す系全体を可変剛性機構33と呼ぶ。
今、スライド支持点(A)、(B)それぞれをb、b’の位置に設定すると、図17と同様な剛性をブレーキ台座スライダーに生成することができる。次に、スライド支持点(A)、(B)をa、a’に移動させると、てこの原理により接合点31での剛性は大きくなる。逆にスライド支持点(A)、(B)をc、c’に移動させると、接合点31での剛性は小さくなる。この機構での剛性が最小となるのは図20(c)の状態、最大になるのは同図(d)の状態になるようにスライド支持点(A)、(B)を移動させたときである。これは、バネと出力端とを結ぶ力の伝達機構を調整することによって、出力端での剛性を可変にする方法である。従来では、バネが固定端に固定される位置を変えることにより、バネの伸縮部分の長さを変えて剛性を可変にする方法があるが、使用頻度によりバネの特性を部分的に変えてしまう問題がある。本手法ではバネの全ての部分が均一的に伸縮運動に使われるので、このような問題はない。以上より、ブレーキにより線状柔軟リンクを拘束した場合の線状柔軟リンクの見かけ上の剛性を連続的に可変にできる方法を示した。
なお、線状柔軟リンクの見かけ上の剛性を決める方法の一つとして、剛体アームの姿勢ならびに駆動関節18の出力状態によって決める方法がある。例えば、図5(b)に示すように剛体アームを振って線状柔軟リンクを介して把持部材を引き上げるときバネが伸びるが、図5(c)の上側に示す出力非飽和領域Bに剛体アームが到達したときの張力が、把持部材の重量と把持部材に把握された物体の重量との和より小さくなるようにバネの剛性を設定する方法である。
【0029】
図21は、線状柔軟リンク11の引っ張り剛性を制御するシステムの一例を示したものである。
同図において、ロボット本体10には剛体アーム14が関節18、例えば紙面に垂直な軸18−1の回りに駆動できる関節を介して装着されている。
剛体アーム14の後部には、回転駆動源20及び回転駆動源20の回転力がベルトを介して伝達されるドラム21等からなる繰り出し・巻き取り装置15が装着される。
また、剛体アーム14の前部には回転式ガイダー17が設けられており、ドラム21から引き出された線状柔軟リンク11が案内部材19、後述するブレーキ台座スライダー23及び回転式ガイダー17を介して把持部材12に結合されている。回転式ガイダー17は、線状柔軟リンク11の方向が変化しても柔軟に追従可能とするためのものであり、例えば紙面に垂直な軸17−1の回りに回転自由な構造を有し、線状柔軟リンク11をガイドする構造を有している。
剛体アーム14の関節18より前側には、ブレーキ台座スライダー23が剛体アーム14に対してスライド可能な状態で装着されている。剛体アーム14には図21に示すように固定支柱24と回転自由な回転支柱26が設置され、各支柱上にはスライドするように駆動されるスライド支持点(A)29スライド支持点(B)30が設けられ、両支持点はバネで結合されている。また、回転支柱26とブレーキ台座スライダー23とは伸縮しないリンク32で結合されている。さらに、ブレーキ台座スライダー23上には、線状柔軟リンク11のブレーキ台座スライダー23に対する動きを停止できるブレーキ16及び剛体アーム14に対してブレーキ台座スライダー23の滑動を停止できるブレーキ27が設けられている。
【0030】
図21において、例えば、ブレーキ27をOFF(ブレーキ非作動。以下同じ。)にし、ブレーキ16をON(ブレーキ作動。以下同じ。)にした状態で剛体アーム14を振って線状柔軟リンク11の先の把持部材12を引っ張ると、バネ25が伸張しブレーキ台座スライダー23が線状柔軟リンク11とともに前方に移動するので、線状柔軟リンク11は見かけ上、引っ張り剛性の低いバネのようになる。さらに、スライド支持点(A)29と(B)30との相対位置を制御することにより、線状柔軟リンク11の見かけ上の剛性を連続的に変化させることができる。ブレーキ16をOFFにした状態で、巻き取り装置15により線状柔軟リンク11を巻き取ると、もとの線状柔軟リンク11の剛性に戻る。
【0031】
図22を参照しながら、把持部材12の空中回収の状況を以下に説明する。なお、把持部材12による物体13の把持動作の説明はここでは省略する。また、このときの線状柔軟リンク11の見かけ上の剛性を可変にする動作の説明もここでは省略するので、把持部材12の空中回収時におけるバネの伸縮状態が分かりやすく表示されるように、可変剛性機構33の代わりに固定した並進駆動部28を使って図22に表示する。
まず、図22(a)のように線状柔軟リンク11が少し弛んだ状態で、同図(b)、(c)に示すようにブレーキ27をOFF、ブレーキ16をONにし、剛体アーム14を振ると、剛体アーム14の慣性によって生ずる撃力と関節18の回転駆動力との合力により把持部材12が引っ張られ、線状柔軟リンク11を拘束したブレーキ台座スライダー23が回転式ガイダー17の方向へ引っ張られる。剛体アーム14の振りが終わっても、バネ25が伸張した状態となり、剛体アーム14の振りによって与えられたエネルギーがバネ25に蓄積される。
次に、図22(d)に示すように、バネ25の縮みにより把持部材12は引っ張られ、バネ25に蓄えられたエネルギーはその損失が極めて小さい状態で効率よく把持部材12の運動エネルギーに変換される。同図(e)(f)に示すように、バネが縮みきったときにブレーキ16をOFFにし、同図(g)に示すように、バネ25が自然長になったときにブレーキ27をONにする。
次に、同図(h)に示すように、線状柔軟リンク巻き取り装置15を駆動して線状柔軟リンク11を巻き取りながら剛体アーム14を把持部材12の方向に振る。
以上の(a)〜(h)の動作を繰り返すことにより、図9に示すような把持部材12の空中回収を行うことが可能となる。
【0032】
図23の(a)〜(h)は、図22の(a)〜(h)にそれぞれ対応するものであり、各(a)〜(h)における図21に示すブレーキ台座スライダー23、バネ25、ブレーキ16、ブレーキ27及び線状柔軟リンク巻き取り装置15の作動状態を示している。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】キャスティングマニピュレータ及び剛体アームのみで構成された従来のマニピュレータの概略及び作業領域を説明するための図である。
【図2】キャスティングマニピュレータを用いて、可変長の線状柔軟リンクの先端に装着された把持部材によって物体を把握・回収する状況を説明するための全体斜視図である。
【図3】キャスティングマニピュレータを用いて、可変長の線状柔軟リンクの先端に装着された把持部材によって物体を把握・回収するための要部を示す図である。
【図4】キャスティングマニピュレータの剛体アームの慣性を利用して、静的出力飽和領域を通過する方法を説明する図である。
【図5】キャスティングマニピュレータの線状柔軟リンクに付加された弾性を利用して、静的出力飽和領域を通過する方法を説明する図である。
【図6】キャスティングマニピュレータによる把持部材の操作における把持部材の投射、対象物体の把握・回収に関する基本動作を説明する図である。
【図7】線状柔軟リンクの巻き取り装置及び剛体アームを駆動可能な関節を備えたキャスティングマニピュレータを説明する図である。
【図8】線状柔軟リンク巻き取りと剛体アームの振りとの協調動作を説明する図である。
【図9】線状柔軟リンク巻き取りと剛体アームの振りとの協調動作の繰り返し、断続的に把持部材に瞬発力を与え続ける基本動作を説明する図である。
【図10】線状柔軟リンクを引っ張る基本的な方法を説明する図である。
【図11】回転往復型と回転一方向型を組み合わせた線状柔軟リンクの引っ張り方法を説明する図である。
【図12】線状柔軟リンクの力学モデルを説明する図である。
【図13】線状柔軟リンクの繋がった質点の挙動を説明する図である。
【図14】線状柔軟リンクにバネ要素を直結する方法を示す図である。
【図15】線状柔軟リンクにバネ要素を間接的に付加する方法を示す図である。
【図16】巻き取り装置にバネ要素を付加する方法を示す図である。
【図17】ブレーキ台座にバネ要素を付加する方法を説明する図である。
【図18】剛性を離散的に可変とする機構の一例を説明する図である。
【図19】並進駆動部を用いて剛性を連続的に可変とする機構の一例を説明する図である。
【図20】てこの原理を用いて剛性を連続的に可変とする機構の一例を説明する図である。
【図21】線状柔軟リンクの引っ張り剛性を制御するシステムの一例を示した図である。
【図22】把持部材の空中回収の状況を説明する図である。
【図23】図22の各(a)〜(g)における図21のブレーキ台座スライダー、バネ、ブレーキ、ブレーキ及びドラムの作動状態を示す図である。
【図24】剛体アームの振り動作と線状柔軟リンクの巻き取り・繰り出し動作の協調による把持部材の往復運動を示す図である。
【図25】把持部材により環境の固定端を把握した状態における剛体アームの振り動作と線状柔軟リンクの巻き取り・繰り出し動作の協調によるロボット本体の移動を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
10 ロボット本体
11 線状柔軟リンク
12 把持部材
13 対象物体
14 剛体アーム
15 繰り出し・巻き取り装置
16 繰り出し停止用ブレーキ
17 回転式ガイダー
18 駆動関節
19 案内部材
20 巻き取り装置用駆動源
21 ドラム
22 ブレーキ台座
23 ブレーキ台座スライダー
24 固定支柱
25 バネ
26 回転支柱
27 スライド停止用ブレーキ
28 並進駆動部
29 スライド支持点(A)
30 スライド支持点(B)
31 接合点
32 伸縮しないリンク
33 可変剛性機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線状柔軟リンクとその先端に装着された把持部材を持つロボット機構を用いて線状柔軟リンクの張力により把持部材を移動させる方法において、線状柔軟リンクの引っ張り動作と線状柔軟リンクの巻き取り動作を協調して行うことにより、線状柔軟リンクの先端の把持部材や把持部材で把握された物体を移動させることを特徴とする把持部材移動方法。
【請求項2】
線状柔軟リンクとその先端に装着された把持部材を持つロボット機構を用いて線状柔軟リンクの張力により把持部材を移動させる方法において、線状柔軟リンクの引っ張り動作と線状柔軟リンクの巻き取り動作の協調動作を繰り返すことにより、線状柔軟リンクの先端の把持部材や把持部材で把握された物体を移動させることを特徴とする把持部材移動方法。
【請求項3】
線状柔軟リンクとその先端に装着された把持部材を持つロボット機構を用いて線状柔軟リンクの張力により把持部材を移動させる把持部材移動装置において、ロボット本体に設置された駆動関節に剛体アームを装着し、該剛体アームには線状柔軟リンクの繰り出し・巻き取り手段及び案内手段を設け、剛体アームの揺動と線状柔軟リンクの巻き取りとを協調して行う制御を可能としたことを特徴とする把持部材移動装置。
【請求項4】
剛体アームに対して相対的に自由にスライド運動を可能とするブレーキ台座スライダーと剛体アームに固定された固定支柱との間にバネ等の弾性部材を装着し、ブレーキ台座スライダーに剛体アームとの相対運動を停止するスライド停止手段及び線状柔軟リンクの運動を停止させる繰り出し停止手段を装着することにより、線状柔軟リンクの見かけ上の剛性を段階的に可変とすることを特徴とする請求項3記載の把持部材移動装置。
【請求項5】
剛体アームに対して相対的に自由にスライド運動を可能とするブレーキ台座スライダーと剛体アームに対して相対的にスライド運動を可能とする並進駆動部を装着し、並進駆動部に固定された支柱とブレーキ台座スライダーとの間にバネ等の弾性部材を装着し、ブレーキ台座スライダーには剛体アームとの相対運動を停止するスライド停止手段及び線状柔軟リンクの運動を停止させる繰り出し停止手段を装着し、並進駆動部を用いて弾性部材の変位を制御することによって、線状柔軟リンクの見かけ上の剛性を連続的に可変とすることを特徴とする請求項3記載の把持部材移動装置。
【請求項6】
剛体アームに対して相対的に自由にスライド運動が可能なブレーキ台座スライダーを装着し、ブレーキ台座スライダーには剛体アームとの相対運動を停止するスライド停止手段及び線状柔軟リンクの運動を停止させる繰り出し停止手段を装着し、剛体アームに設けられた固定支柱と回転関節を有する回転支柱に対して各支柱上をスライドするように駆動される支持点を設け該支持点間をバネ等の弾性部材で結合し、回転支柱とブレーキ台座スライダーとを伸縮しないリンクで結合し、該支持点同士の相対位置を変えて弾性部材の変位を制御することによって、てこの原理により線状柔軟リンクの見かけ上の剛性を連続的に可変とすることを特徴とする請求項3記載の把持部材移動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2007−136601(P2007−136601A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−332948(P2005−332948)
【出願日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】