説明

投写型表示装置

【課題】複数個のランプのうち一部が点灯していても、また外部の衝撃等により部品ズレが発生し、光軸がずれ、照度分布が不均一になっても、スクリーンに投影される輝度分布は輝度劣化なく、完全に均一化することのできる投写型表示装置を提供することを目的とする。
【解決手段】ランプ21、22は、それぞれが保持体に保持されてランプユニット31、32を構成しており、ランプユニット31、32は、上下左右において物理的に平行移動する調整機構(図示せず)を有し、また光軸において、それぞれの角度α、βにて回転する回転機構(図示せず)を有しており、スクリーン上の輝度分布と明るさが最適となるようにランプユニット31、32の位置を移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大画面映像をスクリーン上に投影するための投写型表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、大画面映像を得るための方法として、ライトバルブ上に映像信号に応じた光学像を形成し、その光学像に光を照射し、投写レンズを用いてスクリーン上に拡大投写するプロジェクタ等の投写型表示装置がよく用いられている。
【0003】
かかる方法においては、ライトバルブとして液晶パネルやDMD(デジタルマイクロミラーデバイス)などの反射型ライトバルブを用いることで、高い解像度と高い画素開口率とを両立させることができ、光利用効率の高い高輝度の投写画像を表示することが可能となる。
【0004】
図5に、上述したような反射型ライトバルブを用いた従来の投写型表示装置における光学系の概略構成図を示す。図5において、光源としてのランプ光源1から放射される光を反射型ライトバルブ10上に集光及び照明するための照明光学系は、凹面鏡2、断面が反射型ライトバルブ10の有効表示面と略同じアスペクト比を有する四角柱状のロッドプリズム3、コンデンサレンズ4、カラーホイール(図示せず)、TIR(内部全反射)プリズム5によって構成されている。そして、反射型ライトバルブ10からの反射光は、投写レンズ11によりスクリーン(図示せず)上に投影される。
【0005】
上記構成において、凹面鏡2は反射面の断面形状が楕円形をなしており、第1焦点と第2焦点を有している。そして、ランプ光源1の発光体の中心1aが凹面鏡2の第1焦点付近に位置するように配置されており、ロッドプリズム3の光入射面3aが凹面鏡2の第2焦点付近に位置するように配置されている。なお、凹面鏡2は、ガラス製機材の内面に、赤外光を透過させ、可視光を反射させる性質を有する光学多層膜を形成したものである。
【0006】
ランプ光源1から放射された光は、凹面鏡2によって反射及び集光され、凹面鏡2の第2焦点においてランプ光源1の発光体像を形成する。
【0007】
ここで、ランプ光源1の発光体像は、光軸に近い中心付近が最も明るく、周辺ほど急激に暗くなる傾向にあるため、そのままでは、輝度に不均一性が残ってしまうという問題が生じる。
【0008】
かかる問題に対し、第2焦点付近にロッドプリズム3の入射面3aを配置し、ロッドプリズム3の側面3bで入射光を多重反射させて輝度の均一化を図っている。こうすることで、ロッドプリズム3の出射面3cを2次面光源として、以降に配置されているコンデンサレンズ4によって、反射型ライトバルブ10上に結像させることにより、照明光の均一性を確保することが可能となる。
【0009】
一方、高輝度、高信頼性という市場の要望に対して、前述の投写型表示装置において、ランプ(ランプ光源と凹面鏡を併せて、以下ランプと称す)を2灯、もしくはそれ以上のランプの光源を使用した投写型表示装置が開発されている。
【0010】
図6に、例えばランプを2灯備えた投写型表示装置の概略構成図を示す。図6において、図5と同じものは同一の番号を付している。ランプ21とランプ22も前述のランプと同等のものである。
【0011】
ランプ21とランプ22の発光体像は、三角プリズム6によりそれぞれ反射された後、ロッドプリズム3の光入射面3aに結像され、前述の投写型表示装置と同様に、ロッドプリズム3の側面3bで入射光を多重反射させて輝度の均一化を図っている。
【0012】
このような複数のランプを用いた光学系では、高輝度化を図ることができる一方、複数のランプ全てが同時に使用されず、ユーザーのマニュアル操作に応じて複数の光源の一部だけが使用される場合がある。
【0013】
実際、明るさを求めるのではなく、投写型表示装置のランプ寿命の延命手段として、備わっている複数個のランプのうち、一部のランプのみを使用する場合がある。また、一部のランプが破裂、破損し、点灯不可となった場合、残っているランプのみを使用する場合もある。
【0014】
しかしながら、複数の光源を用いた光学系では、全ての光源が使用される状態のみを想定して均一な照明が可能であるようにデバイス設計が行われている。要するに、複数の光源を用いた光学系では、複数の光源全てが使用されない場合は、表示画面内の明るさの均一性が劣化し、いわゆる照度斑を発生することがあった。
【0015】
この問題を解決するために、光を生成する複数個の光源と、複数個の光源の全部または一部によって生成された光を反射かつ合成する光反射合成手段と、反射された光の反射光路を調節できるように、光反射合成手段を位置変更可能に保持する光反射合成手段保持手段とを備えた装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0016】
この光反射合成手段保持手段は、光反射合成手段である三角プリズムの対称面(底面に垂直な対称面)が、2つのランプの光軸とほぼ直交し、照明光学系の光軸を含むように、三角プリズムを移動させ、ニュートラル位置(ランプが2つとも使用されるという想定で均一な照明が可能な位置)に調整するようにしたものである。
【特許文献1】特許第4028551号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、特許文献1に記載された装置では、反射光路を調節できるように、光反射合成手段の位置を変更するが、この方法では光線の角度のみの調整だけであり、光軸の変更の自由度が低い。
【0018】
実際の複数のランプを使用した光学系では、各光源の光路を確保するため、光軸はそれぞれほぼ平行にずらして設計されている。このため、特許文献1の方法では反射光路を調節できるように、光反射合成手段の位置を変更するようにしているが、この方法では光線の角度のみの調整だけであり、ランプの数が減少した場合などに輝度分布の不均一性を完全に取り除くことができず、また、輝度の大幅な劣化も招いてしまう。
【0019】
本発明は、上述の問題を解決するもので、複数個のランプのうち一部が点灯していても、また外部の衝撃等により部品ズレが発生し、光軸がずれ、照度分布が不均一になっても、スクリーンに投影される輝度分布は輝度劣化なく、完全に均一化することのできる投写型表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するために本発明にかかる投写型表示装置は、光を生成する複数の光源と、前記複数の光源の全部または一部によって生成された光を反射し、かつ合成する光反射合成手段と、前記反射された光の光路を調節できるように、前記光反射合成手段に対し、前記複数の光源を位置変更可能に駆動保持する光源位置駆動手段と、を備えている。
【0021】
また、前記光源位置駆動手段は、前記複数の光源を平行方向に位置変更可能に駆動保持する。
【0022】
また、前記光源位置駆動手段は、前記複数の光源の光軸を回転方向に位置変更可能に駆動保持する。
【0023】
また、前記光源位置駆動手段は、前記複数の光源の光軸を6軸方向に位置変更可能に駆動保持する。
【0024】
また、前記光源位置駆動手段は、前記複数の光源の点灯状態を検知し、点灯している光源において輝度均一化に最適な光の反射光路を調整する様に、光源の位置変更を自動で行うものである。
【0025】
また、前記光源位置駆動手段は、前記複数の光源をそれぞれ独立に位置変更可能に駆動保持する。
【0026】
また、前記光反射合成手段を位置変更可能に駆動保持するものである。
【0027】
前記反射された光を重畳する光重畳手段を備え、前記光重畳手段は、レンズアレイまたはガラスロッドを利用して構成されている。
【発明の効果】
【0028】
本発明により、複数個のランプのうち一部が点灯していても、また外部の衝撃等により部品ズレが発生し、光軸がずれ、照度分布が不均一になっても、スクリーンに投影される輝度分布は輝度劣化なく、完全均一化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0030】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る投写型表示装置の構成図である。図1において、従来例の図5、図6と同じものは同一の番号を付している。21は2つの光源の内、一方のランプを、22はもう一方の対向ランプを示す。3はロッドプリズム、10は反射型ライトバルブ、4はロッドプリズムから出射した光を反射型ライトバルブ10に送るリレーレンズ、5はTIRプリズム、11は投写レンズを、それぞれ示している。
【0031】
反射型ライトバルブ10は、画素ごとにミラー素子がマトリックス状に形成されており、映像信号に応じて光の進行方向を制御することによって、反射角の変化に応じて光学像が形成されるDMDである。
【0032】
また、ランプ21、22には高圧水銀ランプを用いており、それぞれが保持体に保持されてランプユニット31、32を構成している。
【0033】
ランプ21とランプ22の発光体像は、三角プリズム6によりそれぞれ反射された後、ロッドプリズム3の光入射面3aに結像される。
【0034】
ロッドプリズム3は、光の入射面3a及び出射面3cが反射型ライトバルブ10の有効表示面と同じアスペクト比を有する四角柱形状を有しており、ランプ21、22からの放射光が集光される場所に配置されるため、材質は耐熱性に優れる石英ガラスが好ましい。
【0035】
ロッドプリズム3に入射した光線束はロッドプリズム3の側面3bで多重反射され、反射回数分だけ発光体像が細分割および重畳され、ロッドプリズム3の出射面3cから出た光線束はカラーホイール(図示せず)で色分離された後、コンデンサレンズ4によって、TIRプリズム5を経て反射型ライトバルブ10上に照明され、その照明光が投射レンズ11により、スクリーン上に投影される。
【0036】
ここで、ランプユニット31、32は、上下左右において物理的に平行移動する調整機構(図示せず)を有し、また光軸において、それぞれの角度α、βにて回転する回転機構(図示せず)を有している。
【0037】
図2にランプを点灯したときのスクリーン上の輝度分布図を示す。(a)の2灯点灯時には、スクリーン上におけるセンター照度「オ」と、ある特定のANSI4ポイント平均(スクリーン左上「ア」、左下「イ」、右上「ウ」、右下「エ」)との比(これを周辺照度比と以後称す)は95%以上であり、本来の光学設計どおり、スクリーン上において輝度分布が均一化されている。
【0038】
次に、片側のランプが切れる、もしくはユーザーがランプの長寿命化を目的に意図的に片側のランプを消した場合、ランプ点灯は片側1灯のみとなり、スクリーン上の輝度分布は画質の品位として劣るものとなる。
【0039】
2灯設置ランプにおいて、片側1灯のみ点灯した場合におけるスクリーン上の輝度分布(b)では、左右上下において輝度勾配が発生しているのが判る。また、このとき周辺照度比は90%以下となる。
【0040】
ここで、従来の特許文献1のように、反射合成手段である三角プリズムの位置変更のみで調整した場合の照度分布は(c)のようになる。図から判るように、完全には照度分布を取り除くことはできず、また、照度劣化も最高照度比に対し、95%以下である。
【0041】
本実施の形態では、ランプユニット31、32がそれぞれ6軸方向に位置変位できる調整機構を設ける。これは手動、もしくは自動で変位できるものでも構わない。6軸変位可能なため、光線の光線高さ、光線角度を任意に操作することが可能であり、それにより、スクリーン上の輝度分布を任意で調整操作が可能である。
【0042】
ただし、本実施の形態におけるランプは回転対称体なので、実質的には5軸となる。この調整機構による調整後のスクリーン上の輝度分布(d)を示す。図から判るように、照度分布が完全に均一化しており、また照度劣化も95%となっており、周辺照度比も初期の2灯点灯時とほぼ同等となる。
【0043】
なお、この6軸変位ランプはランプユニット31、32を変異させたが、ランプ21、22自身が6軸調整されてもかまわない。
【0044】
また、ランプとランプの破裂を防ぐ防爆ガラスを同時に保持するモールド成型部品が同時に変位しても構わない。
【0045】
また、調整機構はランプそれぞれに独立して存在することが望ましい。
【0046】
また、点灯しているランプを検知し、点灯しているランプにおいて、最も輝度均一化できるように自動調整する機構を有していることも望ましい。
【0047】
また、発光体像を重畳する光重畳手段は、ロッドプリズムもしくはレンズアレイを利用して構成されていることが望ましい。
【0048】
次に、具体内容として、図3にランプが平行移動する様子を説明する。例えば、2灯点灯時は(a)のように、ランプ21の1灯点灯時は、ランプユニット31が(b)のように上側にランプ21の光軸21aを21bの位置に平行移動し、スクリーン上の輝度分布と明るさが最適となるように可変する。また、このとき、三角プリズム6の位置も左右に可変させる。
【0049】
また、図4にランプが回転する様子を説明する。一般的に光学系は光学部品の公差、光学部材保持部品のバラツキにより、光軸の精度が出ていない。
【0050】
これにより、若干の補整を実施する場合において、例えば図のように、ランプユニット31を微小に傾けて回転させ、照度分布と明るさの最適化を実行する。
【0051】
例えば、ランプ21の光軸21aをβ方向に回転させ、光軸21cとし、スクリーン上の輝度分布と明るさが最適となるように可変する。
【0052】
以上のように本実施の形態により、輝度均一化することができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の投写型表示装置は、複数個のランプのうち一部が点灯していても、また外部の衝撃等により部品ズレが発生し、光軸がずれ、照度分布が不均一になっても、スクリーンに投影される輝度分布は輝度劣化なく、完全均一化することができるものであり、高輝度化のため複数のランプを用いたプロジェクタなどの投写型表示装置に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施の形態1に係る投写型表示装置の概略構成図
【図2】同投写型表示装置のランプを点灯したときのスクリーン上の輝度分布図
【図3】同投写型表示装置のランプが平行移動する様子を説明する図
【図4】同投写型表示装置のランプが回転する様子を説明する図
【図5】従来の投写型表示装置における光学系の概略構成図
【図6】従来の2灯式の投写型表示装置における光学系の概略構成図
【符号の説明】
【0055】
3 ロッドプリズム
3a 入射面
3b 側面
3c 出射面
4 コンデンサレンズ
5 TIRプリズム
6 三角プリズム
10 反射型ライトバルブ
11 投写レンズ
21、22 ランプ
21a、21b、21c 光軸
31、32 ランプユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を生成する複数の光源と、
前記複数の光源の全部または一部によって生成された光を反射し、かつ合成する光反射合成手段と、
前記反射された光の光路を調節できるように、前記光反射合成手段に対し、前記複数の光源を位置変更可能に駆動保持する光源位置駆動手段と、
を備えた投写型表示装置。
【請求項2】
前記光源位置駆動手段は、前記複数の光源を平行方向に位置変更可能に駆動保持する請求項1記載の投写型表示装置。
【請求項3】
前記光源位置駆動手段は、前記複数の光源の光軸を回転方向に位置変更可能に駆動保持する請求項1記載の投写型表示装置。
【請求項4】
前記光源位置駆動手段は、前記複数の光源の光軸を6軸方向に位置変更可能に駆動保持する請求項1記載の投写型表示装置。
【請求項5】
前記光源位置駆動手段は、前記複数の光源の点灯状態を検知し、点灯している光源において輝度均一化に最適な光の反射光路を調整する様に、光源の位置変更を自動で行う請求項1記載の投写型表示装置。
【請求項6】
前記光源位置駆動手段は、前記複数の光源をそれぞれ独立に位置変更可能に駆動保持する請求項1記載の投写型表示装置。
【請求項7】
前記光反射合成手段を位置変更可能に駆動保持する請求項1記載の投写型表示装置。
【請求項8】
前記反射された光を重畳する光重畳手段を備え、前記光重畳手段は、レンズアレイまたはガラスロッドを利用して構成されている請求項1記載の投写型表示装置。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−91772(P2010−91772A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−261460(P2008−261460)
【出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】