投射光学系
【課題】反射面を含む結像光学系を採用しつつ、色収差も補正可能で、歪みない大画面の投射が可能で、コンパクトな投射光学系を実現する。
【解決手段】画像を形成するライトバルブに光源からの照明光を照射し、ライトバルブに形成された画像を平面の投影面に拡大投影する投射光学系であって、1以上のレンズからなり、投影面とライトバルブとの間に、画像の中間像を形成するための正のパワーを有する第1光学系71と、中間像と第1光学系との間に設けられた1枚の第1反射面721と、中間像を結像した後の発散する光束を反射し、投影面状に結像させるための正のパワーを有する1枚の第2反射面722と、を有し、第1反射面721、第1光学系71、第2反射面722の順に、投影面から近い位置に配置されている。
【解決手段】画像を形成するライトバルブに光源からの照明光を照射し、ライトバルブに形成された画像を平面の投影面に拡大投影する投射光学系であって、1以上のレンズからなり、投影面とライトバルブとの間に、画像の中間像を形成するための正のパワーを有する第1光学系71と、中間像と第1光学系との間に設けられた1枚の第1反射面721と、中間像を結像した後の発散する光束を反射し、投影面状に結像させるための正のパワーを有する1枚の第2反射面722と、を有し、第1反射面721、第1光学系71、第2反射面722の順に、投影面から近い位置に配置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、投射光学系および画像投射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像投射装置として広く知られた液晶プロジェクタは、近来、液晶パネルの高解像化、光源ランプの高効率化に伴う明るさの改善、低価格化などが進んでいる。
また、DMD(Digital Micro-mirror Device)を利用した小型軽量な画像投射装置が普及し、オフィスや学校のみならず家庭においても広くこれら画像投射装置が利用されるようになってきている。特に、フロントタイプのプロジェクタは携帯性が向上し、数人規模の小会議にも使われるようになってきている。
【0003】
画像投射装置であるプロジェクタには、大画面の画像を投射できること(投射画面の大画面化)と共に「プロジェクタ外に必要とされる投影空間」をできるだけ小さくできることが要請されている。
【0004】
投射画面の大画面化を図りつつ、プロジェクタ外の投影空間を縮小するには、投射される画像を結像する結像光束の光路を、できるだけ「画像投射装置内部に繰り込む」のが良く、このような工夫を行った画像投射装置として、特許文献1〜5記載のものが知られている。
【0005】
特許文献1記載の画像投射装置は、結像光学系の大型化を抑えて、広画角化を図るため、第1〜第4の反射鏡を備え、第1反射鏡を凹面形状、第2〜第4反射鏡を凸面として、これら反射鏡により結像光学系を構成している。また、第1〜第4反射鏡のうち少なくとも1面を自由曲面形状として投射性能の確保を図っている。
【0006】
特許文献2記載の画像投射装置は、スクリーンまでの投射距離を短くした面投射型ディスプレイであり、凹面鏡と「発散作用を有する凸面鏡」との対と、投射レンズとにより結像光学系を構成している。
【0007】
特許文献3記載の画像投射装置は「ビデオプロジエクタ」であって、結像光学系における第1番目の鏡面を凸面形状とし、装置の薄型化を図っている。
【0008】
特許文献1、3に記載された画像投射方式では、ライトバルブの画像をスクリーン上に拡大投射するのに、反射鏡のみで結像を行っており、色収差が原理的に発生しないというメリットがある。しかし、単板式でなく、3板式のように赤・緑・青の画像を3つのライトバルブに別個に表示し、各画像をスクリーン上で合成するような場合には、クロスプリズムやフィリップスプリズム等の色合成手段を介在させる必要があり、色合成の際に色収差が発生するが、反射面のみによる結像光学系では色収差補正ができない。
【0009】
特許文献4記載の画像投射装置では、画像表示パネルからの光束を、正のパワーを持つ結像レンズ系と、負のパワーの曲面ミラーを含む反射光学系とによる拡大投射光学系により順次スクリーンに導光して結像させている。
【0010】
スクリーンの高さと結像レンズ系は高さをずらして設定され、ミラーで折り返されてスクリーンに導光される。このため、スクリーン上の投射拡大画像の中心部(画像表示パネルの中心部に対応する)の上側と下側とで、結像光束の光路長が異なり、その結果として所謂「台形歪み」が発生する。
【0011】
台形歪みは「キーストン補正」により補正することができるが、キーストン補正は、スクリーン上の拡大画像の像質劣化をもたらし易い。
【0012】
台形歪みを少なくする構成として、結像レンズ系とスクリーンの間に「凸面ミラーを、結像レンズの光軸に対して偏芯させて設け」る構成が知られている。凸面ミラーを偏芯配置させる場合、結像レンズ系の「スクリーン側焦点位置よりも結像レンズ側」に凸面ミラーを配置し、凸面ミラーの有する負の屈折力によって、投射レンズの焦点位置を伸ばす。
【0013】
このような構成で、薄型且つ大画面の拡大投射装置を実現するのに、凸面ミラーの負のパワーを大きくして画角を広げる方法があるが、凸面ミラーの形状精度や組付公差が厳しくなり、またディストーションも大きくなる。
【0014】
結像レンズと凸面ミラーの間の距離を大きくすることにより、凸面ミラーの屈折力を弱くでき、ディストーションを軽減できるが、結像レンズと凸面ミラーの距離が大きくなることに伴い、凸面ミラーが大型化してミラーのコストが高くなり、拡大投射装置も大型化しやすい。
【0015】
特許文献5では、反射ミラーのみで拡大投射光学系が構成されている。このように、レンズ光学系を用いずに所望の光学性能を得ようとすると、各反射面の面精度や位置精度を極めて高く設定する必要があり、拡大投射光学系の組み付け精度が厳しくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、投射画面の大画面化を図りつつ、投射装置外の投影空間を縮小するために、反射面を含む結像光学系を採用しつつ、色収差も補正可能で、大画面を投射可能な投射光学系、このような投射光学系等を用いる薄型の画像投射装置の実現を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この発明の投射光学系は「画像形成するライトバルブに、光源からの照明光を照射し、ライトバルブに形成された画像を、投射光学系により拡大投射する画像投射装置において、ライトバルブに形成された画像を平面の投影面に拡大投影する投射光学系」であって、以下の特徴と有する。
【0018】
即ち、投射光学系は、第1光学系と第1および第2反射面を有する。
「第1光学系」は、1以上のレンズからなり、投影面とライトバルブとの間に「画像の中間像」を形成するものであり、正のパワーを有する。
「第1反射面」は1枚であり、中間像と第1光学系との間に設けられる。
「第2反射面」は、中間像を結像した後の発散する光束を反射し、投影面状に結像させるものであり、正のパワーを有する。
即ち、ライトバルブからの光束は、第1光学系と、第1、第2反射面により投影面に導光されて拡大画像を投影するが、先ず、第1光学系により中間像として結像される。中間像を結像した光束は、第1反射面で反射され、発散しつつ第2反射面に入射し、第2反射面により投影面に向けて反射される。
請求項1記載の投射光学系は「第1反射面、第1光学系、第2反射面が、この順序で、投影面から近い位置」に配置されていることを特徴とする。即ち、第1反射面が投影面から最も近く、第2反射面が投影面から最も遠い。
【0019】
請求項2記載の投射光学系は「ライトバルブから発する光線は、投影面から遠い箇所からの光線ほど、投影面への入射角が大きい」ことを特徴とする。
即ち、第2反射面により反射された光束の投影面への入射角は「ライトバルブの、投影面から最も遠い位置から放射される光線ほど大きくなる」ように構成されている。
若干補足すると、中間像の形状は「最終像の台形歪みが小さくなるような形状」であることができ、「最終像の台形歪みに対して逆に歪んだ形状の中間像を形成」するように構成することができる。
中間像は「投影面への入射角が最も大きい辺が最も短い」形状であることができる。
【0020】
中間像は、ライトバルブの中心から射出する光束の主光線に対して傾斜し、且つ像面が湾曲していることができる。
第2反射面は自由曲面で構成することができる。
【0021】
上記の如く、第1光学系は1以上のレンズで構成される。
【0022】
第1光学系を構成するレンズのレンズ面は自由曲面として「非球面形状の屈折面」を有することができる。
【0023】
「画像形成するライトバルブに、光源からの照明光を照射し、ライトバルブに形成された画像を、投射光学系により拡大投射する画像投射装置」において、ライトバルブに形成された画像を拡大投影する投射光学系として請求項1または2記載のものを用いることができる。
即ち請求項3の画像投射装置は「ライトバルブからの光束を投射光学系によってスクリーンに導光し、スクリーン上に、ライトバルブに形成された画像を拡大した最終像を結像させる画像投射装置であって、投射光学系として、請求項1または2記載の投射光学系を搭載した」構成のものである。
【0024】
投射光学系は「ライトバルブからの光束をスクリーンに導光し、スクリーンの法線に対し傾斜した方向から投射して、スクリーン上に、ライトバルブに形成された画像の拡大像を結像」させる拡大投射光学系であることができる。
【0025】
「ライトバルブ(LV)」は、透過型や反射型の各種液晶パネル等、あるいは、デジタル・マイクロミラー・デバイス(DMD)等であることもできる。
【0026】
以下、参考技術として、反射光学系と透過光学系をもつ拡大投射光学系を説明する。
「反射光学系」は、パワーを持つ複数の反射面により構成され、回転非対称反射面を1面以上含む。「回転非対称反射面」は、反射面の形状が、回転対称軸を持たない反射面である。
「透過光学系」は、屈折力をもつ透過面により構成され、非球面を1面以上含む。
【0027】
上記拡大投射光学系において「透過光学系における画像表示パネル側から第1面と、反射光学系におけるスクリーン側から第1面との間に絞りを設け、そのスクリーン側に配置した光学素子により、上記絞りの像が、負の縮小倍率で結像するように構成する」ことが好ましい。
【0028】
拡大投射光学系は「複数の透過面からなる透過光学系」と「複数の反射面から成る反射光学系」と「絞り」とを有し、反射光学系における反射面のうち「絞りを通過した光束が最初に入射するパワーを持つ反射面」のパワーが負であることもできる。
【0029】
この拡大投射光学系において、「絞りを通過した光束が最初に入射する負のパワーを持つ反射面」に続く反射面は正のパワーを持つことが好ましい。
【0030】
上記拡大投射光学系における反射光学系は「パワーを持つ複数の反射面により構成され、回転非対称反射面を1面以上含」み、透過光学系は「屈折力をもつ透過面により構成され、非球面を1面以上含」むことが好ましい。
【0031】
別の拡大投射光学系は以下の如き特徴を有する。
即ち、画像表示パネル側からスクリーンに至る光束が生成する画像表示パネルの、負の倍率の中間像(拡大投射光学系による結像光束の光路上において生成される「画像パネルの中間像」)と、スクリーン側から画像表示パネルに至る光束が生成するスクリーンの負の倍率の中間像(拡大投射光学系に、仮想的にスクリーン側から光を入射させたときに、上記光路上に生成するスクリーンの中間像。因みにこのときのスクリーンの像は縮小像で画像表示パネル上に結像する)の位置・形状が略一致している。
【0032】
この拡大投射光学系は「複数の反射面から成る反射光学系」と「複数の透過面からなる透過光学系」とを有することができ、この場合において、拡大投射光学系は「絞り」を有し、反射光学系における反射面のうち「絞りを通過した光束が最初に入射するパワーを持つ反射面」のパワーを負とすることができる)。この場合「絞りを通過した光束が最初に入射する負のパワーを持つ反射面に続く反射面」が正のパワーを持つことが好ましい。
【0033】
上記拡大投射光学系においては、反射光学系を「パワーを持つ複数の反射面により構成され、回転非対称反射面を1面以上含む構成」とし、透過光学系を「屈折力をもつ透過面により構成され、非球面を1面以上含む構成」とすることができる。
【0034】
上記拡大投射光学系において、反射光学系に含まれる「回転非対称反射面」は、投射光路上において最もスクリーン側に配置されることが好ましい。
【0035】
また、上記拡大投射光学系において、透過光学系は「屈折力を有する回転非対称な透過面」を含むことが好ましい。
【0036】
上記拡大投射光学系において、透過光学系の光軸は、画像表示パネル位置に対し、導光光路(画像表示パネルからスクリーンに至る光路における、画像表示パネルの中心から、スクリーン上の拡大像の中心に至る主光線の光路)を含む面内で偏芯して設定されることができる。
【0037】
また、上記拡大投射光学系における反射光学系は「ユニット」として構成することができる。
【0038】
上記拡大投射光学系を用い「画像表示パネルに画像を表示し、画像表示パネルを光源からの光で照明し、照明された画像表示パネルからの光束を拡大投射光学系によりスクリーンに導光し、スクリーンの法線に対し傾斜した方向から投射して、スクリーン上に、画像表示パネルに表示された画像の拡大像を投射する拡大投射装置」を構成できる。
【0039】
若干補足すると、上に説明した「透過光学系」に含まれる「透過面」は、レンズ面のみならず、フレネルレンズ面でもよい。
また、反射光学系に含まれる反射面における光の反射が「内部全反射条件を満たす」構成でも良い。このように反射面を「内部全反射面」とする場合、「透過光学系からの光束を取り込む面」は透過面である。この場合、この透過面への光束入射を面に直交させると、入射の際に収差が発生しないので好ましい。
【0040】
拡大投射装置に用いられる「画像表示パネルであるライトバルブ」は1枚に限らない。3枚の画像表示パネルを用い、R(赤)、G(緑)、B(青)の各色成分画像を、色ごとに「異なる画像表示パネル」に表示し、これら画像表示パネルからの光を合成して、拡大投射光学系によりスクリーンへ導光し、スクリーン上にカラー画像を表示するように構成することができることは言うまでも無い。
【0041】
上記拡大投射光学系では、結像光束をスクリーン法線に対して傾いた方向から投射して、スクリーン上に結像させるので「スクリーン法線の方向から投射する場合に、結像光束がスクリーン法線に対して傾いた場合に生じる表示画像の歪み」を有効に軽減させることができる。
【0042】
また、透過光学系の屈折力をもつ透過面はレンズ系による実現が容易で、セル化も容易であり、組付け精度を出し易くコストダウン効果が得られる。また、反射光学系に含まれる回転非対称反射面により、非対称な収差成分を補正できる。
【0043】
拡大投射光学系を屈折面のみで構成すると、屈折面の配列が1方向に伸びていくので、光学系の3次元的構造を小型化できないが、透過面と反射面の組み合わせによって光路を折り返す構成をとることができ、光学系を小型化できる。
【0044】
例えば、透過光学系の光路をスクリーンと平行に設定し、透過光学系の像側でスクリーンに向けて光路を折り曲げれば、同じ光路長の光学系でも薄型の構成を実現できる。
【0045】
また、透過光学系における画像表示パネル側の第1面と、反射光学系におけるスクリーン側の第1面との間に絞りを配置し、パネル側からの光束によって、絞りの像を全光学系中で1回結像させると、絞り像の結像位置はスクリーン側の射出瞳となる。絞りの像は実像であり、負の縮小倍率になっている。絞りの像を縮小倍率で結像させるようにすることで、絞り像以後の反射面の光線有効径を小さく抑え、反射面を小型化できる。
【0046】
絞りは透過光学系中もしくは「透過光学系と反射光学系の間」に配置することができる。絞りを通過した光が最初に入射する「パワーをもつ反射面」は反射光学系中にある。反射光学系と透過光学系を一体化することは難しく、透過光学系と反射光学系は別々に組み付けられる。このとき、透過光学系と反射光学系の各々に組み付け誤差が付随するので、両光学系の「相対的な位置ずれ」を完全にゼロすることは難しく、相対的な位置ずれの発生を前提とすると、公差感度の観点から、上記「パワーをもつ反射面」は負のパワーの反射面であるのが良い。
【0047】
透過光学系から射出する光束が発散光束であるケースは稀であり、通常は集光されている。このとき、反射光学系において最初に反射するパワーを持つ面のパワーを正とすると、光束の集光が強められる方向に作用する。一方、上記面のパワーを負とすれば光束の集光が緩められる方向に作用する。両者を比較した場合「透過光学系と反射光学系の相対的位置ずれによる光束状態の変化」は、前者において大きく、組みつけ公差が厳しくなる。上記反射面のパワーを負とすることにより組付け公差を緩くできる。
【0048】
上記負のパワーを持つ反射面に続いて正のパワーを持つ反射面を配すると、画角の異なる光束の分離を抑制でき、これらの光束を受ける反射面を小型化することができる。
【0049】
「絞り、スクリーンの中間像の形状・位置を略一致させる」ことにより、画像表示パネルから中間像までの歪曲収差と、中間像からスクリーンまでの歪曲収差の和を0に近づけることができ、スクリーン上に歪みの少ない像を形成できる。
【0050】
結像光路上の最終面を回転非対称反射面とすると、各光束の照射位置に対応して取り得る面形状の自由度が高くなる。この最終面に至る各像高位置の光束の残存収差を入射位置毎に適した形状を与えることで補正が容易になる。
【0051】
透過光学系に回転非対称な透過面を用いると、回転対称な透過面では発生させることのできない収差を発生させることができ、このように発生させた収差を他の収差のキャンセルに利用できる。
【0052】
透過光学系の光軸を、画像表示パネル位置に対し、導光光路を含む面内で偏芯して設定すると、反射光学系における偏芯反射面で発生する収差と逆の収差を透過光学系で発生させ、両者をキャンセルさせることができる。
【0053】
投射光学系は、第1及び第2の光学系を有する。
「第1の光学系」は、屈折光学系を少なくとも1つ含み、正のパワーを有する。
【0054】
「第2の光学系」は、パワーを有する反射面を少なくとも1つ含み、全体で正のパワー
を有する。
【0055】
これら第1及び第2の光学系は、物体面に近い側から第1、第2の光学系の順に配置される、物体像が一旦中間像として形成された後に正規像として結像されるように構成される。
【0056】
第1の光学系において「物体側にもっとも近い屈折力を持った光学要素」の光軸に対して他の光学要素が、1カ所以上において、平行偏芯および/またはチルト偏芯していることができる。即ち、平行偏芯あるいはチルト偏芯は「光学要素単位」で行われる。
【0057】
「第1の光学系」は、屈折光学系を少なくとも1つ含み、正のパワーを有する。
【0058】
「第2の光学系」は、パワーを有する反射面を少なくとも1つ含み、全体で正のパワーを有する。
【0059】
これら第1及び第2の光学系は、物体面に近い側から第1、第2の光学系の順に配置される、物体像が一旦中間像として形成された後に正規像として結像されるように構成される。
【0060】
第1の光学系において「物体側にもっとも近い屈折力を持った光学要素」の光軸に対して第1の光学系の各要素は「チルト偏芯」していなくてもよい。
【0061】
この場合、「第1の光学系を2以上の群で構成し、2以上の群のうちの少なくとも1つの群を平行偏芯させた構成」とすることができる。
【0062】
第2の光学系に含まれる反射面の1以上は「自由曲面」とすることが好ましく、第2の光学系に含まれる反射面のうち「正規像の結像位置側に最も近い反射面のみ」を自由曲面とすることができる。
【0063】
「第2の光学系に入射した光束が初めて反射される正のパワーを有する反射面」を、回転対称な面とすることが好ましく、この場合、回転対称な反射面を「球面反射面」とすることができる。
【0064】
投射光学系において「第1の光学系を屈折光学系のみで構成」することができ、この場合、第1の光学系における屈折光学系には「非球面形状が含まれていない」ようにすることができる。
【0065】
画像表示パネルからの光束を投射光学系によってスクリーンに導光し、スクリーン上に画像表示パネルに表示された画像の正規像を結像させる画像投射装置であって、投射光学系として上記投射光学系を搭載した画像投射装置を構成できる。
【0066】
若干補足すると、上記投射光学系を用いる画像投射装置において、投射される物体像を表示する物体としては、液晶パネル等のライトバルブやDMD、スライドフィルム等のように、外部光源からの光で照明される方式の画像表示手段を用いることができることは勿論、発光ダイオードを2次元的に配列したものやプラズマディスプレイ、EL発光素子アレイ等、自己発光型の画像表示手段を用いることも考えられる。
【0067】
また「屈折光学系」は、レンズ以外に、「回折作用を示す光透過型の素子」であること
もできる。
【0068】
以下、別の面から説明する。
投射光学系は「被投影物体面からの光束を、透過型屈折光学系と、1または2枚の反射ミラーからなる反射型屈折光学系を介して投影面上に導光し投影する投射光学系」であることができる。
【0069】
「透過型屈折光学系」は複数の透過型屈折素子を有する。
【0070】
「透過型屈折素子」は、「光透過性媒質の境界面において光の屈折作用を示す光学素子全般」を意味し、代表的な素子はレンズであるが、それ以外に「回折作用を示す光透過型の素子」であることもできる。
【0071】
「反射型屈折光学系」をなす反射ミラーは、反射境界面における光の反射屈折作用を示す光学素子全般を意味し、「回折作用を示す光反射型光学素子」であることもできる。
【0072】
被投影物体面から上記透過型屈折光学系の第1面までが略テレセントリックである。
【0073】
「被投影物体面」は、投影されるべき画像が物体として表示される面であるが、この面の実体をなすものは、前述した液晶パネル等のライトバルブやDMD、スライドフィルム等のように、外部光源からの光で照明される方式の画像表示手段を用いることができ、さらには、発光ダイオードを2次元的に配列したものやプラズマディスプレイ、EL発光素子アレイ等、自己発光型の画像表示手段を用いることができる。
【0074】
透過型屈折光学系よりも反射型屈折光学系側に、被投影物体面の中間像面が位置し、中間像面における中間像が、反射ミラーを介して投影面上に正規像として再結像される。
【0075】
少なくとも1枚の反射ミラー(反射型屈折光学系が1枚の反射ミラーにより構成されるときは当該反射ミラー、反射型屈折光学系が2枚の反射ミラーで構成される場合には1枚以上の反射ミラー)は、上下方向と左右方向とでパワーが異なるアナモフィックな多項式自由曲面である。
反射型屈折光学系から投影面に至る光線は投影面の法線に対して傾斜して導光される。
【0076】
透過型屈折光学系は被投影物体面の法線に対して偏芯し、透過型屈折光学系の有する複数の透過型屈折素子は互いに偏芯することなく構成されている。
【0077】
投射光学系は「被投影物体面からの光束を、透過型屈折光学系と、1または2枚の反射ミラーから成る反射型屈折光学系を介して投影面上に導光し投影する投射光学系」であって、透過型屈折光学系は複数の透過型屈折素子を有し、被投影物体面から透過型屈折光学系の第1面までが略テレセントリックであり、透過型屈折光学系よりも反射型屈折光学系側に、被投影物体面の中間像面が位置し、中間像面における中間像が、反射ミラーを介して投影面上に正規像として再結像され、少なくとも1枚の反射ミラーが、上下方向と左右方向とでパワーが異なるアナモフィックな多項式自由曲面で、反射型屈折光学系から投影面に至る光線が、投影面の法線に対して傾斜して導光される構成であることができる。
【0078】
「透過型屈折光学系が被投影物体面の法線に対して偏芯し、透過型屈折光学系の有する複数の透過型屈折素子は群単位レベルでは互いに偏芯することなく構成されている」ことができる。
【0079】
これら投射光学系は「反射型屈折光学系が、透過型屈折光学系の側から第1、第2の順に配置される2枚の反射ミラーを有し、被投影物体面の中間像面が第1及び第2の反射ミラーの間に位置し、第1の反射ミラーは負のパワーの軸対称な反射面、第2の反射ミラーは上下方向と左右方向とでパワーが異なるアナモフィックな多項式自由曲面であることができる。
【0080】
また「被投影物体面の中間像の、アスペクト比を補正する手段」として、透過型屈折光学系内に、上下方向と左右方向とでパワーが異なるアナモフィックな多項式自由曲面を有することができる。
【0081】
「中間像のアスペクト比」を反射型屈折光学系の反射ミラーの形状により行うことは不可能ではない。しかし、反射型屈折光学系の反射ミラーは主にディストーション補正を中心に形状を決定することが望ましい。従って、透過型屈折光学系においてアスペクト比を予め調整できていることが望ましく、透過型屈折光学系でアスペクト比を補正する手段として上記多項式自由曲面を用いることが有効である。
【0082】
透過型屈折光学系への多項式自由曲面の採用は1面に限られないが、後述する例では、透過型屈折光学系に多項式自由曲面を1面だけ使用して充分な補正効果が得られた。透過型屈折光学系に採用される多項式自由曲面は、被投影物体面に近い位置に採用しても良いが、補正効果を高めるには投影面側に近い位置に採用することが好ましい。因みに後述の例では透過型屈折光学系の最終面に多項式自由曲面を採用している。
【0083】
上記投射光学系は「透過型屈折光学系における被投影物体面側のNAが、中間像面側のNAよりも大きい」ことが好ましい。
【0084】
透過型屈折光学系を構成する場合、被投影物体面側のNA(「NA1」と言う。)は照明系の配向分布特性によって決まるが、中間像面側のNA(「NA2」と言う。)は透過型屈折光学系の構成配置によって変えることができる。投射倍率を高くするためには反射型屈折光学系のパワーを強くすることが有効であるが、このようにすると反射型屈折光学系の像側焦点距離が短くなるので、光束の集光点が反射型屈折光学系の反射ミラー側に寄り、そのため小さいサイズの正規像しか結像できない、つまり拡大倍率が小さくなる。この課題をクリアするため、反射型屈折光学系に入射する光束のNA2に着目したところ、NA2をNA1より小さくすることが「投射光学系倍率を高く」する上で特段の効果があることがわかった。
【0085】
上記投射光学系において、中間像面は「被投影物体面の中心から射出する光束の主光線に対して傾斜し、かつ像面が湾曲」していることができる。このようにすると、中間像面に対する自由度が増え、光学系全体の設計が容易になる。
【0086】
「透過型屈折光学系の最終面において、被投影物体面の中心から射出した主光線と、被投影物体面の周辺から射出した主光線とが略平行である」ことが好ましい。
【0087】
「中間像の倍率:M1は1〜5」程度が好ましい。投影倍率は40以上であることができる。この場合、投影面に対する投射角度:θが、5°より大きいことが好ましい。
【0088】
対角線で0.9インチサイズの被投影物体面の像を60インチ画面に拡大投射する拡大投射光学系を「薄さ:500mm以下」で実現するには上記NA2が0.005〜0.01程度になっているとよいことがわかった。NA2を小さくしすぎると透過型屈折系の全長が伸びてしまうので、装置の全体サイズを小型化することを考慮するとNA2は0.005から0.01程度が望ましい。
【0089】
またNA2を0.01以上にしたときには透過型屈折系はコンパクトになるが、NAが大きくなることにより、投射画面のディストーション補正、あるいは、倍率性能の確保が難しくなってくる傾向がある。勿論、画面サイズが60インチよりも小さい場合にはNA2の上限値は0.01以上でもよい。
【0090】
「被投影物体面であるライトバルブに形成される画像を投射光学系により投影面上に拡大投影する画像投射装置」の投射光学系として、上記の任意のものを用いたものは、フロントプロジェクタ型として構成することもできるし、結像光路を折り返す折り返しミラーを有するリアプロジェクタ型として構成することもできる。
【0091】
なお、上の説明における「上下方向と左右方向とでパワーが異なるアナモフィックな多項式自由曲面」は、上下方向(投射される画像を基準として上下方向と左右方向とを考える。)をY方向、左右方向をX方向、曲面のデプスをZ、「X2、Y2、X2Y、Y3、X2Y2等」を係数として、
Z=X2・x2+Y2・y2+X2Y・x2y+Y3・y3+X4・x4+X2Y2・x2y2+Y4・y4+
X4Y・x4y+X2Y3・x2y3+Y5・y5+X6・x6+X4Y2・x4y2+X2Y4・x2y4+Y6・y6+・・
・・(1)
で表される形状である。
【発明の効果】
【0092】
以上の如く、この発明によれば、新規な投射光学系および画像投射装置を実現できる。
【0093】
この発明の投射光学系は、第1光学系、第1、第2反射面により構成され、ライトバルブにより形成された画像を、結像光路上で、第1光学系と第1反射面との間の空間に中間像として結像させ、この中間像をさらに拡大して投射するので、大きな投射倍率を実現でき、第1光学系が1以上のレンズで構成されるので、色合成プリズムを用いた場合においても色分散特性を利用して色収差補正が可能であり、結像光束の光路を第1、第2反射面で折り返すのでコンパクトに構成できる。
【0094】
従って、この発明の投射光学系を用いる画像投射装置は、コンパクトに構成でき、結像光束の光路を装置空間内おいて長くとれるため、装置外の投影空間を縮小しながら大サイズの画像を投射表示できる。
【0095】
そして、この拡大投射光学系を用いる拡大投射装置は薄型に実現でき、設置の床面積を有効に小さくでき、狭い部分に配置することができる。
【0096】
また、第1光学系により中間像を形成して、第1、第2反射面で拡大投影することにより、光学系の合成の拡大倍率をあげることもでき、屈折光学系を構成するレンズ要素を平行偏芯もしくはチルト偏芯させることにより、投射画像に歪みが生じないように「中間像に逆歪みを効果的に発生させる」こともでき、所望の拡大倍率で至近距離投射を実現することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】投射光学系と画像投射装置の1形態を説明するための図である。
【図2】図1に示す形態の投射光学系を説明するための図である。
【図3】投射光学系の1形態を説明するための図である。
【図4】投射光学系の1形態を説明するための図である。
【図5】投射光学系の1形態を説明するための図である。
【図6】拡大投射光学系の1形態を説明するための図である。
【図7】画像投射装置の実施の1形態を説明するための図である。
【図8】図7における投射光学系部分を拡大して示す図である。
【図9】画像投射装置の実施の別形態を説明するための図である。
【図10】画像投射装置の実施の他の形態を説明するための図である。
【図11】実施例1におけるスクリーン上におけるディストーションの状態を示す図である。
【図12】画像投射装置の他の形態を説明するための図である。
【図13】図12における投射光学系部分を拡大して示す図である。
【図14】実施例6に関するスクリーン上のMTFの評価ポイントを説明するための図である。
【図15】実施例6に関するMTF特性を示す図である。
【図16】実施例6に関するMTF特性を示す図である。
【図17】実施例6に関するMTF特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0098】
図1は、画像投射装置の1形態における要部を略示している。
【0099】
符号15で示す「ライトバルブ」は、この実施の形態において液晶パネルであり、以下、単にパネル15と称する。符号10で示す光源は、ランプとリフレクタによる発光部11と、この発光部11からの光束を照明光束とする照明光学系12とにより構成されている。光源10からの照明光束は、パネル15に照射される。
【0100】
ライトバルブであるパネル15は「変調信号に応じて画像形成」され、形成された画像は、光源10からの照明光束を2次元的に強度変調して透過させる。パネル15を透過した光束は、第1の光学系17と第2の光学系19により構成される「投射光学系」によりスクリーン21上に投射結像され、「パネル15に画像形成された画像」の拡大像を表示する。
【0101】
図2は、図1における投射光学系の部分を説明するための図である。
【0102】
ライトバルブであるパネル15の投影側に、パネル15の側から第1、第2の順に配設される第1及び第2の光学系17、19を有し、第1の光学系17は屈折光学系(レンズ)で正のパワーを有し、第2の光学系19はパワーを有する反射面を有し、正のパワーを有する。
【0103】
パネル15により形成された画像は、第1及び第2の光学系17、19の光路上に中間像Iintとして結像され、スクリーン21上には、この中間像Iintを「さらに拡大した画像」が投射結像される。
【0104】
第1の光学系17は、図2において1枚のレンズとして示しているが、具体的には「屈折光学系を含む種々の形態」、例えば、複数レンズによる構成や、レンズとミラーの組合せ、反射面と屈折面を一体化した構成等が適宜可能である。
【0105】
第1の光学系17は、全体的に正のパワーを有しており、図2に示されたように、第1の光学系17により形成される中間像Iintは「パネル15に形成された画像の倒立像」である。中間像Iintの倍率は、パネル15上の画像の1〜数倍程度であることが好ましい。中間像Iintが縮小像であると、第1および第2の光学系全体として「大きな拡大率の表示画像」を得るためには、第2の光学系に大きな拡大倍率が必要となり、収差の補正等と大倍率のバランスを実現することが困難になる。
【0106】
逆に、中間像Iintの拡大倍率が大きくなりすぎると、第2の光学系のサイズが大きくなり、投射光学系、延いては画像投射装置を大型化してしまう。
【0107】
図2には、+側の最大像高(図1における位置:a)と−側の最大像高(図1における位置:b)の2点に対応するパネル15上の位置:A、Bから上記位置:a、bへ向う光束の光路を模式的に示している。
【0108】
中間像Iintは必ずしも「平面状に結像」する必要は無く、第1の光学系17と第2の光学系19との合成光学系でスクリーン21上に投射される画像が「満足のいく画像」となるよう、合成光学系全体として性能を確保していればよい。従って、第1の光学系17による結像性能には特に制約はない。中間像を「ライトバルブの中心から射出する光束の主光線に対して傾斜させ、且つ像面を湾曲させる」ことも可能である。
【0109】
図1、図2に示す形態においては、第1の光学系17により形成された中間像Iintを結像させた光束を、第2の光学系19で反射して光路を折り返し、中間像Iintを形成する光束の進行方向と逆の向きに投射画像を投影するようになっている。
【0110】
図1、図2の形態では、第2の光学系19を1面の凹面鏡で構成した例であるが、第2の光学系の形態はこれに限らず、反射面を2以上含むことができるし、反射面とともに屈折光学系を含むこともできる。
【0111】
図1、図2の構成において、第2の光学系中に「さらに1面の反射面を付け加える」ことにより、最終的に投射される光束の向きを「図1の向きと逆」にすることもできる。また、図1、図2の構成において、中間像Iintの形成される位置と、反射面19との間に、第2の光学系の一部として屈折光学系(レンズ系)を配し、反射面19に「より効率的に光量を取り込む」ようにすることができる。
【0112】
図2に示したように、パネル15における位置:Aを起点とする光束は、中間像Iintにおける位置:A’に重心を持つように集まり、集光後の光線は、集束角と同じ発散角で広がり、正のパワーを有する第2の光学系19により反射されて、図1におけるスクリーン21上の位置:aに結像する。
【0113】
同様に、パネル15における位置:Bを起点とする光束は、中間像Iintにおける位置:B’に重心を持つように集まり、集光後の光線は、集束角と同じ発散角で広がり、第2の光学系19により反射されて、図1におけるスクリーン21上の位置:bに結像する。
【0114】
中間像Iintを形成させることにより、パネル15における位置:A、Bからの光束の結像に寄与する反射面19の有効領域を「局所的に狭める」ことが可能となる。即ち、図2に示すように、位置:Aからの光束に対する結像性能には、第2の光学系19の「反射領域A’’」の形状が影響し、位置:Bからの光束に対する結像性能は「反射領域B’’」の形状が影響する。
【0115】
従って、図1、図2に示す構成により、反射領域A’’、B’’の面形状を最適化することが可能である。さらには、第2の光学系19における凹面の形状を「局所的に変化」させることにより、スクリーン21上の各部への集光特性が制御可能となる。
特に、上記凹面を自由曲面形状とすることでその効果を最大限に生かせる。
【0116】
従来から知られた光線追跡法などのシュミュレーション手法により、最適な諸元設定を行えばよい。反射面により最適化を行えるので、色収差の発生、増加を抑えて、そのほかの集光特性を向上させる設計が可能となる。
【0117】
第1の光学系17は、屈折光学系を含むので、「反射面だけでは補正不能な色収差」を屈折光学系により補正することが可能である。
【0118】
また、スクリーン21上に投射される投射像に影響する諸収差で、第2の光学系の反射面のみでは補正できない部分は、第2の光学系に積極的に屈折光学系を取り入れて補正するようにしてもよい。
【0119】
図1に示す如き構成において、第2の光学系19の結像倍率を高めるには、中間像Iintの形成される位置を、第2の光学系19の反射面に近づければよい。これを、図3、図4を参照して説明する。
【0120】
図3において、符号15はパネル、符号17Aは第1の光学系(レンズ)、符号19Aは第2の光学系(凹面鏡)を示し、符号21はスクリーンを示す。
【0121】
光学系の緒元の表記に従い、パネル側から数えて、第i番目の面の曲率半径をRi(i=1〜3 i=1は第1の光学系17Aの入射側面、i=3は第2の光学系19Aの反射面)、第i番目の面と第i+1番目の面との間の面間隔をTi(i=0〜3 i=0はパネル15と第1の光学系17Aの入射側面との間、i=3は第2の光学系19Aとスクリーン21との間)とする。
【0122】
図3の光学系の緒元は以下の通りである。
i Ri(mm) Ti(mm) 材質
0 85
1 65 25 BK7
2 −55 225
3 −135 −400 。
【0123】
パネル15における物体高は、±7.5mmである。
【0124】
像高位置0(スクリーン21上のP点)で、投射画像が最適に結像するよう設定すると、物体であるパネル15における位置:A、Bを起点として、スクリーン21上の位置:a、bに到達する各主光線の間隔は約208mmとなる。
【0125】
ここで、図4に示すように、第1の光学系17Bと第2の光学系19Bを用い、第1の光学系17Bのパワーを緩め、中間像Iintの位置を第1の光学系17Bから遠ざけるようにし、同時に「像高0における集光性が保たれるように位置関係を保った」まま、第2の光学系19Bにおける正のパワーを調整すると、これら光学系の緒元は以下の如くになる。
i Ri’(mm) Ti’(mm) 材質
0 85
1 65 25 BK7
2 −60 225
3 −98 −400 。
【0126】
パネル15における物体高は、±7.5mmである。
【0127】
図4は、説明上、図3と光学配置を異なるように描いているが、上記緒元から明らかなように、光学系の配置は、図3の配置と同じであり、図3の光学系と異なっているのは第1の光学系17Bの射出側面の曲率と、第2の光学系19Bの反射面の曲率のみである。
【0128】
このとき、パネル15における位置:A、Bを起点として、スクリーン21上の位置:
a’、b’に到達する各主光線の間隔は約362mmとなり、図3に示す場合(208mm)よりも拡大率が向上している。即ち、第1の光学系における正のパワーが弱まり、中間像Iintが第2の光学系19Bの「正のパワーを持つ反射面」に近づいた結果、拡大率が増大しているのである。上記のように、光学配置を変えることなく、屈折面・反射面の曲率半径を変化させるのみで、拡大率を向上させることができる。
なお、図3、図4の実施の形態とも、第1の光学系は、1以上のレンズからなる屈折光学系で構成され、正のパワーを有し、第2の光学系は、パワーを有する1枚の反射面19で構成され、正のパワーを有し、ライトバルブ15により形成された画像を、第1の光学系により、第1の光学系と反射面との間の空間中に中間像Iintを結像させ、中間像Iintとして結像した後の発散する光束を反射面19で反射し、反射面19の正のパワーにより、中間像をさらに拡大した画像を最終像として、投影面であるスクリーン21に投射し、第2光学系19により反射された光束の投影面21への入射角が、最終像上のライトバルブ15から最も遠い位置(図3、図4において像最上部)の方が最も近い位置より、大きくなるように構成されている。
【0129】
上に説明したところを具体化するには、第1及び第2の光学系の光路上において「中間像の結像位置を第2の光学系における正のパワーを持つ反射面に近づけるための、負のパワーをもつ光学素子」を、中間像のライトバルブ側に設ければよい。
【0130】
中間像の位置を第2の光学系における正のパワーを持つ反射面に近づけるために、中間像のライトバルブ側に設ける負のパワーを持つ光学素子としては、凹レンズやフレネル凹レンズ、凸面状の反射鏡、あるいはこれらの複合系等を考えることができる。
【0131】
実際には、各像高位置での集光特性を確保し、像面の歪みを補正する必要があるが、屈折面や反射面の面数を増やして設計の自由度を上げるなどし、従来から知られた光線追跡法などによるシミュレーションで最適化設計を行えばよい。
【0132】
図5は、別形態を略示している。煩雑をさけるため、混同の虞がないと思われるものについては、図1におけると同一の符号を付した。
この形態では、第2の光学系190は、正のパワーを有する反射面192と負のパワーを有する反射面191とを有する。
【0133】
パネル15からの光束は第1の光学系17の作用により結像光束となるが、中間像Iintが結像される以前に、負のパワーを持つ反射面191に入射し、反射面192に向って反射される。そして、中間像Iintは反射面191と反射面192との中間部に形成される。中間像Iintは、反射面192の正のパワーによりさらに拡大され、スクリーン21上にパネル15上の画像が投射される。
【0134】
即ち、第2の光学系190における反射面191は、請求項2記載の発明における「中間像Iintが形成される位置を、第2の光学系190の正のパワーを持つ反射面192に近づける作用をもつ負のパワーを持つ光学系」の1例である。
【0135】
反射面191としては、凸反射面、フレネル凸反射鏡、正のパワーを持つホログラム反
射鏡等、発散パワーを有する反射光学素子を適宜に利用できる。
【0136】
中間像の位置をライトバルブから離すために、投射光学系は多少大きくならざるを得ないが、上記「負のパワーをもつ光学系」を、反射鏡で構成することにより、光路を折り返すレイアウトを採用でき、光学系全体のサイズは小さくすることができる。
【0137】
「中間像の結像位置を第2の光学系における正のパワーを持つ反射面に近づけるための、負のパワーをもつ光学素子」用いることにより「第2の光学系における正のパワーを持つ反射面」への入射光束の「発散の程度」を狭める調整が可能となり、上記正のパワーを持つ反射面の「有効反射エリア」を小さくすることが可能となる。
【0138】
上記正のパワーを持つ反射面の有効反射エリアの調整や、同反射面の形状の局所的な形状付与、即ち「自由曲面形状の設定」により、集光特性や歪みなどをよりきめ細かく制御できる。
上記の如き構成の採用により、従来の投射光学系より広角化が可能となる。
【0139】
上の実施の形態で説明した各種の反射面のうち、少なくとも1面を自由曲面で構成することにより、設計の自由度が増し、諸収差の補正がし易くなる。
【0140】
ここに謂う「自由曲面」は、アナモフィック面や、X−Yポリノミナル面等、「非回転対称な面形状」を含む面である。
【0141】
投射光学系に含まれる全ての面(屈折面、反射面)を自由曲面で構成すれば、設計上は、極めて良好な結像特性を実現できるが、実際には各面の相対位置誤差や偏芯誤差等の要求精度が厳しくなるので、自由曲面の数は多いほど良いというわけではなく、最適な自由曲面の数を設定するのがよい。
【0142】
上に説明したように、中間像Iintを形成した光束は、その後、発散光束となり、第2の光学系における正のパワーを持つ反射面(凹面鏡)に入射する。従って、中間像Iintの各位置からの発散性の光束は、上記凹面鏡における局所的な反射領域で反射されてスクリーン上に結像する。換言すると、スクリーン上の各位置に結像する光束は、上記凹面鏡において「像高ごとに局所的な反射領域」に対応する。
【0143】
このことから、上記凹面鏡(中間像を形成した光束が、中間像形成後最初に反射される反射面)の面形状を自由曲面とし「それぞれの像高に対する反射領域」ごとに、反射面の曲面形状を調整することにより、最も効果的に諸収差補正が可能となり性能向上を図ることができる。
【0144】
面加工や組み付け性を考慮すると、自由曲面の数はできるだけ少ないのがよく、中間像を形成した直後の正のパワーを有する反射面(凹面鏡)に優先的に適用するのが最も効果的である。反射領域の調整に加え、「集光パワーを持つ凹面の局所的な形状を調整できる自由曲面」の形状設定によって、集光特性や像の歪みなどの特性をより向上させる設計が可能となる。
【0145】
中間像の倍率は「等倍〜数倍程度」であれば良く、中間像の形成に拘わる第1の光学系の結像倍率は大きい必要がない、従って、第1の光学系は、従来からある屈折光学系のみによる構成で最適化が可能である。第1の光学系を屈折光学系のみで構成すると、第1の光学系の光学設計が容易になり、面加工や組み付け性に関しても許容公差を緩くすることが可能となる。
【0146】
また、屈折面数等を増やして設計の自由度を増し、それにより、公差を分配して性能向上させることも可能である。
【0147】
第1の光学系を「屈折光学系のみ」で構成できるが、さらなる性能向上を望む場合は「第1の光学系構成上の自由度をさらに向上させる」ことが必要となる。
【0148】
このような更なる性能向上を図る場合には、第1の光学系を「回転対称軸を有する反射面と屈折光学系とで構成」するのが良い。「回転対称軸を持つ反射面」は比較的作り易く、加工性と組み付け性を損なうことなく設計の自由度を向上するのに極めて有効である。この回転対称軸をもつ反射面を、非球面形状とすることによりさらに自由度が向上する。また、この反射面にシフト偏芯やチルト偏芯の自由度を与えることにより、より自由度を向上させた設計が可能となる。
【0149】
また、屈折光学系においても非球面形状を用いることができる。このような構成を採用
することにより設計の自由度が向上し、より高性能な投射光学系を実現できる。
【0150】
反射面の加工には、従来から知られた研磨加工や、金型による成形加工、精密な形状転写加工等、様々な加工法を採用できる。また、屈折透過面と反射面とが一体となった構成とし、内部全反射構造としてもよい。
【0151】
図1を参照して、画像投射装置の実施の1形態を説明する。
光源10における発光部11のランプとしては、ハロゲンランプ、キセノンランプ、メ
タルハライドランプ、超高圧水銀ランプなどを用いることができる。
【0152】
高効率な照明効率を得られるように、ランプ近傍にランプと一体化して設けられたリフレクタを用いる。図1に図示されていないが、リフレクタにより反射されて「指向性を持った光束」を、光強度を均一化してパネル15上に照射できるように「インテグレータ光学系と呼ばれる公知の照度均一化手段」を用い、パネル面上に均一な照明分布の照明を行うようにすることもできる。
【0153】
図1に、ライトバルブとして例示した透過型の液晶パネル15に換えて「反射型の液晶ライトバルブ」を用いる場合は、偏光ビームスプリッタ等を用いて、照明光路と投射光路を分離することにより「効率のよい照明」が可能である。
【0154】
また、ライトバルブとして「デジタル・マイクロミラー・デバイス(DMD)」を用いる場合には「斜め入射光学系や全反射プリズムを使った光路分離光学系」を用いる。このようにライトバルブの種類に応じて適切な光学系を採用できる。
【0155】
フロントタイプのプロジェクタでは、投射画像を上方にシフトさせ、観察者からみて投射画像がプロジェクタの陰にならないようにするのが良い。即ち、投射光学系の光軸(第1の光学系17の光軸)に対して垂直な面内で、ライトバルブ15をシフト(図では下側)し、投射光学系の下方から光束を入射させるようにしている。
【0156】
ライトバルブ15の上記シフト量が大きいほど、第1の光学系17に要求される仕様として、特に有効画角を広くとる必要がある。ライトバルブ15の上記シフト量は必要に応じて適宜の大きさに設定し、第1の光学系17により一旦中間像Iintを形成し、正のパワーを有する第2の光学系19により、ライトバルブ15で形成した画像をスクリーン21上に拡大投射する。
【0157】
リアプロタイプでは、投射光路に平面ミラーを配置して、光路を折り曲げ空間占有率を
より小さくすることができることは当然である。
【0158】
なお、上には簡単のため、パネル15を1枚のみ示したが、赤・緑・青用の3枚のパネ
ルを用い、各パネルにより変調された光束を、公知のダイクロイックプリズム等の色合成
手段により色合成した後に、第1の光学系17等へ入射させることにより、スクリーン2
1上にカラー画像を投射することができることは言うまでも無い。
【0159】
以下に、別形態を説明する。
【0160】
図6に示す形態において、符号1で示す画像表示パネル(以下、単にパネル1という)から符号2で示す「スクリーン」に向かう光束群の基準光線はスクリーン2の法線と所定の傾きをもってスクリーン2に入射する。「基準光線」は、パネル1の中心からスクリーン2に導光される光束の主光線とする。
【0161】
パネル1は反射型の液晶パネルで、直線偏光した照明光が、偏光ビームスプリッタ10Aを介して照射され、パネル1により変調された光束が偏光ビームスプリッタ10Aを介して結像光束となる。
【0162】
光の伝搬においてパネル1側を「上流」、スクリーン2側を「下流」と呼ぶと、パネル1の下流側に「屈折力をもつ透過面から成り、非球面を1面以上含」む透過光学系3が配置され、その下流側に、複数の反射面4、5、6、7、8を有する「反射光学系」が配置される。
【0163】
パネル1からの結像光束は、透過光学系3内を伝搬し、反射光学系を構成する反射面4〜8を介してスクリーン2へ導光される。反射光学系を構成する反射面4〜8のうち、反射面8は「回転非対称反射面」となっている。
【0164】
透過光学系3には光束集光作用を与えることが好ましいが、この実施の形態では、透過光学系3における「倍率拡大の作用負担」を緩め、特に「下流側のレンズの口径が大型化しない」ようにしている。従って、拡大投射光学系としての倍率拡大の作用は、その全て、もしくは相当部分を反射光学系が負っている。
【0165】
回転非対称反射面8によって「非対称収差(図において、上記基準軸の上下方向における非対称性に起因する収差)」を補正するとともに、透過光学系3の光軸をパネル1に対して偏芯して設定(この実施の形態では、光軸が、パネル1の中心よりも、図の上方へ偏芯している)することにより、非対称収差の補正効果を高くしている。即ち、透過光学系3と反射光学系の双方に「非対称収差の補正を分担」させている。
【0166】
透過光学系3はセル化を容易にするため「全体を共軸」に組付けている。
この実施の形態のように、拡大投射光学系を、透過光学系と反射光学系で構成すると、全ての光学面を反射面で構成するよりも、光学系を組み付け易くなり、反射面による「光路折り返し効果」も活かすことができ、全系を小型化できる。
【0167】
透過光学系3の下流側で反射面4の上流側には符号9で示す「絞り」が設けられ、絞り9より下流側の反射面により、絞り9の像I9が「負の縮小倍率」で結像光路上に結像するようになっている。即ち、絞り9の「縮小倍率の像I9」は反射光学系の反射面4、5、6、7の作用により、反射面7と回転非対称反射面8との間に倒立像として結像する。
【0168】
このように、絞り9の像I9が縮小倍率で結像するようなパワー配置を取ると、絞り9の像I9より下流側にある反射面(説明中の実施の形態では反射面8)に入射する光束が大きく広がらないため、この反射面を小型にできる。
【0169】
上述の如く、絞り9の像I9は、反射光学系の光路内(反射面7と回転非対称反射面8との間)で結像しており、この結像位置は「スクリーン側の瞳」、即ち拡大投射光学系の「射出瞳」となる。
【0170】
結像光束は、反射光学系内の光路上においてパネル1の中間像を結像する。この中間像は、絞り9の像I9と同様「負の倍率の実像」で等立像である。図に示す実施の形態では、パネル1の中間像は反射面7の反射面近傍に結像される。即ち、パネル1の中間像は、透過光学系3と反射面4〜6とにより形成される。
【0171】
スクリーン2に結像するのは「パネル1の中間像の、反射面7と回転非対称反射面8による拡大像」であり、このときの結像倍率も負である。このように、パネル1からの光束は中間像が倒立像として結像され、さらにこの倒立像が倒立された正立像としてスクリーン2上に結像する。その際、中間像において発生する台形歪みが、スクリーン上に結像されるときの台形歪みと相殺しあい、台形歪みの少ない表示画像を得ることができる。
【0172】
透過光学系3を1つのユニットとしてセル化すると、拡大投射光学系における位置調整としては、セル化された透過光学系3と反射光学系との相対的な位置調整が残される。このとき、反射光学系における最も上流側の反射面4のパワーが正であると、透過光学系3から射出した光束が集光光束である場合、この光束は反射面4の正のパワーによりさらに集光される作用を受ける。
【0173】
この形態では「反射面4のパワー」を負としている。反射面4のパワーを正にすると、透過光学系3と反射光学系の相対位置が「ズレ」たときに発生する収差が大きくなる。換言すると、透過光学系3と「反射光学系」のズレ量が同一である場合、ズレ量に対する収差の変化量が大きい。
【0174】
上記形態のように、反射面4のパワーを負にすると、上記「ずれ量に対する収差の変化量」が小さい。従って、透過光学系3と反射光学系との相対的な位置関係の精度が緩やかになり、光学系組付けが容易となる。
【0175】
上記反射面4のパワーを負にした上で、その下流に配置する反射面5のパワーは正となっている。反射光学系における上流側において、負のパワーの反射面が続くと入射光束の発散性が過大になり、反射光学系内に「絞りの像」を結像させることができなくなる。
【0176】
反射面5のパワーを正とすることは、反射面5により反射される結像光束を収束傾向とし、絞り9の像I9を反射光学系の光路内に結像する上で重要である。即ち、絞り9と絞りの像I9の間に設ける光学系(反射面4〜7)の合成パワーは正である。
【0177】
反射面4とともに反射面5も負のパワーとし、その下流側の反射面6のパワーを正にしても良いが、反射面6のパワーを強くする必要性が生じたり、面間距離が長くなったりして収差発生量が増え、光学系が大きくなり、構成面数も増えるので、メリットはあまりない。
【0178】
パネル1とスクリーン2が共に平面で「斜め投射」を行う拡大投射光学系において、この発明では「パネル1側からスクリーン2へ向う光束が生成するパネル1の、負の倍率の中間像」と、「スクリーン2側からパネル1へ向う光束が生成するスクリーン2の、負の倍率の中間像」の位置・形状が略一致するように、中間像面の上流側および下流側の光学系を構成している。
【0179】
「スクリーン2側からパネル1に向う光束」は、拡大投射光学系設計の際に、スクリーンを物体面、パネルを像面として光線追跡を行う際において使用される仮想的な光束を言う。
【0180】
反射光学系部において、回転非対称反射面8は、この実施の形態におけるように、結像光束の光路上、最下流のスクリーン2に最も近い位置に配置することが好ましい。反射面4〜8における「異なる画角に対応する各々の光束」の入射位置は、上流においては重なっている領域が広く、下流に行くほど「重なる領域」が少なくなるようにする。
【0181】
回転非対称反射面は、入射位置に対して取り得る面形状の自由度が高いので、回転非対称反射面8を最下流側とし、この面位置において「異なる画角に対応する各々の光束の互いに重なる領域」が少なくなるようにすると、回転非対称反射面8よりも上流側の光学系による「各画角の光束が有する残存収差の補正に適する面形状」を回転非対称反射面8に与えることができ、高い収差補正効果を実現できる。
【0182】
上記とは逆に、反射光学系の上流側に回転非対称反射面を設けると、その反射面の同位置に「異なる画角の光束が重なって入射している状態」となるから、異なる画角の光束の各々が有する収差を同時に補正する「反射面の形状解」を得ることが困難になる。
【0183】
この実施の形態においては、透過光学系3にも「非対称収差成分の補正」を分担させることができる。このような場合、補正効果を高くするには、透過光学系3に「回転非対称な透過面」を与える。回転非対称面は「回転対称非球面では補正困難な収差成分を補正」するのに有効である。
【0184】
反射光学系は複数の反射面4〜8で構成されているが、これらをユニットとして一体に構成することによって、反射面同士の相対位置精度を出し易くなり、拡大投射光学系の組付けが容易になる。反射面の一体化は例えばモールド成形法によって実現できるが、これに限らず、他の適宜の方法で実現して良い。
【0185】
若干付言すると、絞り9を配置する位置は、図1の位置に限らず、例えば、透過光学系3における面間に設けても良い。この場合には、絞りの像の結像に、透過光学系の一部も参与することになる。
【0186】
画像表示パネルは1枚に限らず、3枚の画像表示パネルを用い、R(赤)、G(緑)、B(青)の各色成分画像を色ごとに異なる画像表示パネルに表示し、これら画像表示パネルからの光を合成して、拡大投射光学系によりスクリーンへ導光し、スクリーン上にカラー画像を表示するように構成することもできる。
【0187】
このような場合には、図1において、パネル1と透過光学系3との間の偏光ビームスプリッタとダイクロイクプリズムを組合せたもの(カラー画像投射装置において広く知られている)を用いることができる。
スクリーンは平面である。
【0188】
上に説明したように、図1の拡大投射光学系は、画像表示パネル1からの光束をスクリーン2に導光し、スクリーン2の法線に対し傾斜した方向から投射して、スクリーン2上に画像表示パネル1に表示された画像の拡大像を結像させる拡大投射光学系であって、反射光学系4〜8と透過光学系3とを有し、反射光学系はパワーをもつ複数の反射面4〜8により構成され、回転非対称反射面8を含み、透過光学系3は屈折力をもつ透過面により構成され、非球面を1面以上含む。
【0189】
透過光学系3における画像表示パネル側から第1面と、反射光学系におけるスクリーン側から第1面との間に絞り9が設けられ、そのスクリーン側に配置した光学素子4〜7により、絞り9の像I9が負の縮小倍率で結像するように構成されている。
【0190】
図6の拡大投射装置はまた、複数の透過面からなる透過光学系3と、複数の反射面4〜8から成る反射光学系と、絞り9とを有し、反射光学系における反射面のうち、絞り9を通過した光束が最初に入射するパワーを持つ反射面4のパワーが負であり、絞り9を通過した光束が最初に入射する負のパワーを持つ反射面4に続く反射面5が正のパワーを持ち、反射光学系は、パワーを持つ複数の反射面4〜8により構成され、回転非対称反射面8を含み、透過光学系3は屈折力をもつ透過面により構成され、非球面を1面以上含む。
【0191】
図6の拡大投射光学系はまた、画像表示パネル1側からスクリーン2に至る光束が生成する画像表示パネルの負の倍率の中間像と、スクリーン2側から画像表示パネル1に至る光束が生成するスクリーン2の負の倍率の中間像の位置・形状が略一致し、複数の反射面から成る反射光学系4〜8と、複数の透過面からなる透過光学系3とを有し、絞り9を有し、反射光学系における反射面のうち、絞りを通過した光束が最初に入射するパワーを持つ反射面4のパワーが負であり、絞り9を通過した光束が最初に入射する負のパワーを持つ反射面4に続く反射面5が正のパワーを持ち、反射光学系はパワーを持つ複数の反射面により構成され、回転非対称反射面8を含み、透過光学系3は屈折力をもつ透過面により構成され、非球面を1面以上含む。
【0192】
さらに、回転非対称反射面8は、投射光路上において「最もスクリーン2側」に配置され、透過光学系3が、屈折力を有する回転非対称な透過面を含み、画像表示パネル1の位置に対し、透過光学系3の光軸が、導光光路を含む面内で偏芯して設定されている。また、反射光学系はユニットとして一体に構成することができる。
【0193】
従って、図6に実施の形態を示した拡大投射光学系に対して、公知の各種の光源を付加することにより、画像表示パネル1に画像を表示し、画像表示パネル1を光源からの光で照明し、照明された画像表示パネル1からの光束を拡大投射光学系によりスクリーン2に導光し、スクリーン2の法線に対し傾斜した方向から投射して、スクリーン2上に画像表示パネル1に表示された画像の拡大像を投射する拡大投射装置である。
【0194】
以下、実施の形態を説明する。
【0195】
図7は、画像投射装置の実施の1形態を示している。投射光学系の部分を拡大して図8に示す。
【0196】
図8において、符号71で示す部分は物体側に配された第1光学系、符号72で示す部分は像側に配された第1、第2反射面を示す。第1光学系71はレンズ711〜716で構成されレンズ713の直後に絞りSを有する。レンズ713は「接合レンズ」である。
符号721、722は、第1、第2反射面を示している。第1反射面721、第2反射面722を合わせた部分を以下「第2光学系」と称する。
【0197】
第1光学系71の物体側は、図6に即して説明したような「反射型の液晶パネルに、直線偏光した照明光を、偏光ビームスプリッタを介して照射し、液晶パネルにより変調された反射光束が偏光ビームスプリッタを介して結像光束となる型のもの」が想定され、符号PBが「偏光ビームスプリッタ」を示している。
【0198】
物体側からの光束は第1光学系71、第2光学系72を介して、図示されない平面の投影面(図7に示すスクリーン)上に拡大画像を投射するが、物体の中間像は反射面721と722の間の位置に結像し、反射面722により投影面上に最終像として結像する。
【0199】
「投射されるべき画像を表示する物体」としてはまた、図1に即して示した「ライトバルブ15を、ランプとリフレクタによる発光部11からの光束を照明光学系12により照明する構成のもの」を用いることができる。発光部の具体例としては、ハロゲンランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ、超高圧水銀ランプなどが好適である。照明光学系には「リフレクタにより反射されて指向性を持った光束の強度をライトバルブに対して均一化するインテグレータ光学系」を搭載することもできる。
【0200】
上記物体としてはまた、DMDパネルに対し「斜め入射光学系」や全反射プリズムで、光路分離を行う方式のものを用いることもできる。勿論、LEDアレイやELアレイ、プラズマディスプレイ等の自己発光型の物体を用いることもできる。
【0201】
即ち、図7、図8に示す実施の形態における投射光学系は、1以上のレンズにより構成され、正のパワーを有する第1光学系71と、1枚の第1反射面721と、正のパワーを持つ1枚の第2反射面722を有し、投影面であるスクリーンに近い側から、第1反射面721、第1光学系71、第2反射面722の順に配置されている。
物体像は、一旦中間像として形成された後に最終像として結像されるように構成されている。
また、第1光学系において物体側にもっとも近い屈折力を持った光学要素711の光軸に対して他の光学要素712〜716、721、722が平行偏芯および/またはチルト偏芯している。
【0202】
具体的な実施例は後述する。
【0203】
図12に、画像投射装置の実施の他の形態を示す。図13にその投射光学系の部分を拡大して示す。
図13において、符号100で示す部分は、図6に即して説明した「反射型の液晶パネルに、直線偏光した照明光を、偏光ビームスプリッタを介して照射し、液晶パネル1により変調された反射光束が偏光ビームスプリッタを介して結像光束となる型」の物体側部分であり、反射型の液晶パネルの画像表示面が「被投影物体面」である。図中、符号PBが偏光ビームスプリッタを示す。物体側の構成はこれに限らず、図1に即して説明した「ライトバルブ15を、ランプとリフレクタによる発光部11からの光束を照明光学系12により照明する構成のもの、あるいはこれにインテグレ−タ光学系を付加したもの」を用いることもできるし、DMDパネルに対し斜め入射光学系や全反射プリズムで光路分離を行う方式のものを用いることもでき、LEDアレイやELアレイ、プラズマディスプレイ等の自己発光型の物体を用いることもできる。
【0204】
符号120で示す部分は第1光学系を示し、符号130で示す部分は、第1反射面131、第2反射面132による第2光学系である。
【0205】
第1光学系120はレンズ121〜127により構成されている。レンズ123とレンズ126とは接合レンズであり、全体は9枚のレンズで構成されている。第2光学系130は、1枚の第1反射面131、第2反射面132からなる。
【0206】
即ち、図12、図13に示す投射光学系では、被投影物体面からの光束は、第1光学系120と、2枚の反射面131、132から成る第2光学系130を介して図示されない投影面上に導光されて投影される。
【0207】
第1光学系120は複数の透過型屈折素子121〜127を有し、図示の如く、投影物体面から透過型屈折光学系の第1面(レンズ121の物体側面)までは、図に示されたように「略テレセントリック」であり、第2光学系130における第1、第2反射面131、132の間に、被投影物体面の中間像面が位置し、中間像面における中間像が、第2の反射ミラー132を介して投影面上に正規像として再結像される。
【0208】
後述する例に示すように、第1反射面131は負のパワーの軸対称な反射面であり、第2反射面132は「上下方向と左右方向とでパワーが異なるアナモフィックな多項式自由曲面」であり、第2の反射ミラー132から図示されない投影面に至る光線は投影面の法線に対して傾斜して導光される。
【0209】
そして、第1光学系120は、被投影物体面の法線に対して偏芯するが、第1光学系の有する複数のレンズ121〜127は互いに偏芯することなく構成されている。
【0210】
レンズ123とレンズ126とは接合レンズであり、これら接合レンズ123、126はそれぞれレンズの「群単位」を構成するが、これら接合レンズは「群単位レベルでは互いに偏芯することなく構成」されている。
【0211】
また、第1、第2反射面132、133の間に結像される中間像の像面は図13から分かるように「被投影物体面の中心から射出する光束の主光線に対して傾斜湾曲して」おり、透過屈折光学系の最終面(レンズ127の射出側面)において「被投影物体面の中心から射出した主光線と、被投影物体面の周辺から射出した主光線とが略平行」である。
【0212】
図12の画像投射装置は「フロントプロジェクタ型」であるが、勿論、結像光路内に光を折り曲げる反射鏡を付加することにより「リアプロジェクタ型」とすることも考えられる。
【0213】
以下、具体的な実施例を挙げる。
光学系の諸元において、面番号は物体面(投射されるべき画像が表示される面)を第0面として、以下順次に第1面、第2面・・と数える。全実施例を通じ、第1面および第2面は「偏光ビームスプリッタ」の液晶パネル側および投射光学系側の面である。
【実施例1】
【0214】
実施例1は、先に、図7、図8に示した画像投射装置・投射光学系の具体的な実施例である。即ち、1以上のレンズにより構成され、正のパワーを有する第1光学系71と、第1反射面721、正のパワーを持つ第2反射面722を有する第2の光学系72とを有し、物体面(ライトバルブ)に近い側から第1、第2光学系の順に配置され、物体像が一旦中間像として第1・第2反射面の間の光路上に形成された後に、中間像として結像した後の発散する光束を、正のパワーを持つ第2反射面722で反射することにより、中間像をさらに拡大し、最終像(正規像)として投影面(スクリーン)に投射する構成となっている。
第1の光学系において物体側にもっとも近い屈折力を持った光学要素711の光軸に対して他の光学要素712〜716、721、722が平行偏芯および/またはチルト偏芯している。
中間像の拡大率は3倍程度である。
【0215】
実施例1の諸元を表1に示す。
【0216】
【表1】
【0217】
表1において、シフトとあるのはシフト偏芯量、チルトとあるのはチルト偏芯量を示す。曲率半径、面間隔およびシフト偏芯量の単位は「mm」、チルト偏芯量の単位は「度」である。以下の各実施例においても同様である。
【0218】
第18面である第2の反射ミラーの反射面は前述の式(1)で示される「上下方向と左右方向とでパワーが異なるアナモフィックな多項式自由曲面」であるが、この多項式自由曲面における係数を表2に挙げる。
【0219】
【表2】
【0220】
上記の表記において例えば「1.14641E-11」は「1.14641×10-11」を意味する。以下においても同様である。
【0221】
上記の如く、第1の光学系は7枚のレンズにより構成され、第2の光学系は2面の反射面で構成されているが、反射面721は球面で、反射面722は多項式自由曲面である。
【0222】
正規像の像面(スクリーン)は、図7の左右方向に平行な平面であるが、像高の低い位置(物体に近い側)と高い位置(物体から遠い側)ではスクリーンへ入射する角度の差が大きため「下すぼみの歪んだ投射画像」になりがちであるが、中間像の歪みを逆に設定し、最終像面での歪みを補正した。即ち、中間像の形状において、投影面であるスクリーンへの入射角が最も大きい辺が最も短い。従って、中間像の形状によって最終像の平面方向の形状が補正されている。
【0223】
最終的な像面での「像の歪みの状態」を図11に示す。図11は、対角:略0.9インチの液晶パネルの表示される画像をスクリーン上に60インチ程度に拡大して投射した時のディストーションの様子を示している。図の如く、グリッドの像を略等間隔に形成でき、台形歪みが良好に補正されていることが分かる。投射サイズは1200mm×900mmサイズ、拡大率は65倍以上で、歪みは0.5%以下で非常に良好である。
【実施例2】
【0224】
実施例2は、図9に示す画像投射装置・投射光学系の具体的な実施例である。図9は、画像投射装置の投射光学系部分を拡大して示している。
【0225】
第1光学系81は6枚のレンズ811〜816により構成され、第2の光学系82は2枚の反射面821、822により構成されている。図示されない絞りが、レンズ813とレンズ814の間に配置されている。
【0226】
実施例1と同様、中間像は反射面821、822の中間に、第1光学系81により反転像として形成される。第2光学系82に入射した光束を反射する第1反射面821は正のパワーを持ち、回転対称な非球面形状であり、正のパワーを持つ第2反射面822は多項式自由曲面とした。回転対称な非球面形状の採用により、自由度のより高い設計が可能となった例である。なお、以下に示す具体的データから明らかなように、第1反射面の正のパワーは微弱である。
【0227】
実施例2の諸元を表3に示す。
【0228】
【表3】
【0229】
第16面に用いられている回転対象の非球面は、Zを光軸方向のデプス、cを近軸曲率半径、rを光軸からの光軸直交方向の距離、kを円錐定数、A、B、C、・・等を高次の非球面係数とする周知の非球面式:
Z=c・r2/[1+√{1-(1+k)c2r2}]+Ar4+Br6+Cr8
において、k、A、B、Cを与えて形状を特定する。以下の他の実施例においても同様である。
【0230】
第16面の非球面の係数を表4に与える。
【0231】
【表4】
【0232】
第17面の多項式自由曲面の係数の値を表5に与える。
【0233】
【表5】
【実施例3】
【0234】
実施例3は、図10に示す画像投射装置・投射光学系の具体的な実施例である。
第1光学系91は5枚のレンズ911〜915により構成され、第2光学系92は第1、第2反射面921、922により構成されている。レンズ913は接合レンズである。
図示されない絞りが、レンズ913とレンズ914の間に配置されている。
【0235】
実施例1、2と同様、中間像は反射面921、922の中間に形成される。第1の光学系により中間像が反転像として形成される。また、第2の光学系に入射した光側を最初に反射する正のパワーを有する反射面921は球面形状、反射面922は多項式自由曲面である。
【0236】
実施例3の諸元を表6に示す。
【0237】
【表6】
【0238】
表6から明らかなように、レンズ911の第1面(表6において第3面)は2.2度チルトしているが、このレンズ911の光軸に対し、レンズ912〜915はチルト偏芯せず、レンズ911〜915はレンズ911の光軸に対して平行偏芯しているのみである。
屈折光学系は1組の接合レンズ913を含み、これは1群として作用する。
【0239】
第16面の多項式自由曲面の係数の値を表7に示す。
【0240】
【表7】
【実施例4】
【0241】
実施例4は、上にあげた実施例3と同様の光学系構成(図10)で諸元を異ならせたものである。
【0242】
実施例4の諸元を表8に示す。
【0243】
【表8】
【0244】
第16面の多項式自由曲面の係数の値を表9に示す。
【0245】
【表9】
【実施例5】
【0246】
実施例5も、上にあげた実施例3と同様の光学系構成(図10)で諸元を異ならせたものである。
【0247】
実施例5の諸元を表10に示す。
【0248】
【表10】
【0249】
第16面の多項式自由曲面の係数の値を表11に示す。
【0250】
【表11】
【0251】
上述したように、上記実施例1〜5は、複数のレンズにより構成されて正のパワーを有する第1光学系と、第1反射面と、正のパワーを持つ第2反射面を有し、これらは、投影面に近い側から、第1反射面、第1光学系、第2反射面の順には位置される。
物体像は一旦中間像として形成された後に最終像として結像される。
実施例1〜5の第1光学系は、物体側にもっとも近い屈折力を持った光学要素の光軸に対して、他の光学要素が、1カ所以上において、平行偏芯および/またはチルト偏芯しており、実施例3〜5では、第1光学系91において物体側にもっとも近い、屈折力を持った光学要素911の光軸に対して第1の光学系91の各要素がチルト偏芯していない。
【0252】
また、実施例3〜4では、第1光学系91が2以上の群で構成され、2以上の群のうちの接合レンズとして1つの群をなすレンズ913が平行偏芯している。
【0253】
実施例1〜5とも、第2光学系に含まれる反射面の1以上が自由曲面であり、第2光学系に含まれる反射面のうち、最終像の結像位置から最も遠い第2反射面のみが自由曲面であり、実施例1〜5では、第2光学系に入射した光束が初めに反射される正のパワーを有する反射面が回転対称な面であり、実施例1、3、〜5においては上記回転対称な反射面が球面反射面である。
【0254】
また、実施例1〜5とも第1の光学系が複数のレンズで構成され、第1光学系におけるレンズは、非球面形状を含まない。
【0255】
従って、上記実施例の投射光学系に物体を組み合わせた画像投射装置は、画像投射装置の具体的な実施例を構成する。
【0256】
以下に挙げる実施例6は、先に、図12、図13に即して実施の形態を説明した投射光学系・画像投射装置の具体的実施例である。
【0257】
実施例6の諸元を表12に示す。
【0258】
【表12】
【0259】
第7面と第15面の非球面の係数を表13に与える。
【0260】
【表13】
【0261】
第19面と第21面の多項式自由曲面の係数の値を表14に与える。
【0262】
【表14】
【0263】
実施例6の投射光学系によるスクリーン上におけるMTF性能は周波数:0.5c/mmにおいて60%以上、ディストーションは2%以下である。
参考具体例において正規像を投射するスクリーンのサイズは60インチであり、投射光学系の「スクリーンに直交する方向の最大幅」は472mmである。
【0264】
図14に示す如く、スクリーンに、X方向(左右方向)とY方向(上下方向)とにおいて、±1.0Y、±0.5Y、0.0Y、±1.0X、±0.5X、0.0Xの碁盤状の線を設定し、評価周波数:0.5c/mmに対するMTF値を調べたところ、表15の如くになった。
【0265】
【表15】
【0266】
図15に、X=0.0Xにおける周波数:0〜0.5c/mmの範囲における±1.0Y、0.0Yにおけるサジタル方向(s)およびメリディオナル方向(m)のMTF特性を示す。図16に、X=0.5Xにおける周波数:0〜0.5c/mmの範囲における±1.0Y、0.0Yにおけるサジタル方向(s)およびメリディオナル方向(m)のMTF特性を示す。図17に、X=1.0Xにおける周波数:0〜0.5c/mmの範囲における±1.0Y、0.0Yにおけるサジタル方向(s)およびメリディオナル方向(m)のMTF特性を示す。これらの図から明らかなように、実施例6は良好なMTF特性を有している。
【0267】
実施例6の投射光学系は、反射型光学系は透過型屈折光学系の側から第1、第2の順に配置される2枚の反射面を有し、被投影物体面の中間像面が第1及び第2反射面の間に位置し、第1反射面は負のパワーの軸対称な反射面(第22面)、第2反射面は上下方向と左右方向とでパワーが異なるアナモフィックな多項式自由曲面(第23面)であり、被投影物体面の中間像の、アスペクト比を補正する手段として、透過型屈折光学系内に、上下方向と左右方向とでパワーが異なるアナモフィックな多項式自由曲面(第19面)を有する。
【0268】
また、透過型屈折光学系における被投影物体面側のNA(=0.143)が、中間像面側のNA(=0.01)よりも大きく、中間像の倍率:M1(=1.5)は1〜5の範囲にあり、投影倍率(=75倍)は40以上であり、投影面に対する投射角度:θ(=11度)は5°より大きい。
また、実施例1〜6の投射光学系とも「ライトバルブから発する光線は、投影面から遠い箇所からの光線ほど投影面への入射角が大きい」用に構成されている。
【符号の説明】
【0269】
L1 第1レンズ
L2 第2レンズ
L3 第3レンズ
1 画像表示パネル
2 スクリーン
3 透過光学系
4〜8 反射光学系を構成する反射面
8 回転非対称反射面
9 絞り
I9 絞りの像
【先行技術文献】
【特許文献】
【0270】
【特許文献1】特開2002− 40326号公報
【特許文献2】特開2002−174853号公報
【特許文献3】特公平6−91641号公報
【特許文献4】特開2001−264627号公報
【特許文献5】特開2002−296503号公報
【技術分野】
【0001】
この発明は、投射光学系および画像投射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像投射装置として広く知られた液晶プロジェクタは、近来、液晶パネルの高解像化、光源ランプの高効率化に伴う明るさの改善、低価格化などが進んでいる。
また、DMD(Digital Micro-mirror Device)を利用した小型軽量な画像投射装置が普及し、オフィスや学校のみならず家庭においても広くこれら画像投射装置が利用されるようになってきている。特に、フロントタイプのプロジェクタは携帯性が向上し、数人規模の小会議にも使われるようになってきている。
【0003】
画像投射装置であるプロジェクタには、大画面の画像を投射できること(投射画面の大画面化)と共に「プロジェクタ外に必要とされる投影空間」をできるだけ小さくできることが要請されている。
【0004】
投射画面の大画面化を図りつつ、プロジェクタ外の投影空間を縮小するには、投射される画像を結像する結像光束の光路を、できるだけ「画像投射装置内部に繰り込む」のが良く、このような工夫を行った画像投射装置として、特許文献1〜5記載のものが知られている。
【0005】
特許文献1記載の画像投射装置は、結像光学系の大型化を抑えて、広画角化を図るため、第1〜第4の反射鏡を備え、第1反射鏡を凹面形状、第2〜第4反射鏡を凸面として、これら反射鏡により結像光学系を構成している。また、第1〜第4反射鏡のうち少なくとも1面を自由曲面形状として投射性能の確保を図っている。
【0006】
特許文献2記載の画像投射装置は、スクリーンまでの投射距離を短くした面投射型ディスプレイであり、凹面鏡と「発散作用を有する凸面鏡」との対と、投射レンズとにより結像光学系を構成している。
【0007】
特許文献3記載の画像投射装置は「ビデオプロジエクタ」であって、結像光学系における第1番目の鏡面を凸面形状とし、装置の薄型化を図っている。
【0008】
特許文献1、3に記載された画像投射方式では、ライトバルブの画像をスクリーン上に拡大投射するのに、反射鏡のみで結像を行っており、色収差が原理的に発生しないというメリットがある。しかし、単板式でなく、3板式のように赤・緑・青の画像を3つのライトバルブに別個に表示し、各画像をスクリーン上で合成するような場合には、クロスプリズムやフィリップスプリズム等の色合成手段を介在させる必要があり、色合成の際に色収差が発生するが、反射面のみによる結像光学系では色収差補正ができない。
【0009】
特許文献4記載の画像投射装置では、画像表示パネルからの光束を、正のパワーを持つ結像レンズ系と、負のパワーの曲面ミラーを含む反射光学系とによる拡大投射光学系により順次スクリーンに導光して結像させている。
【0010】
スクリーンの高さと結像レンズ系は高さをずらして設定され、ミラーで折り返されてスクリーンに導光される。このため、スクリーン上の投射拡大画像の中心部(画像表示パネルの中心部に対応する)の上側と下側とで、結像光束の光路長が異なり、その結果として所謂「台形歪み」が発生する。
【0011】
台形歪みは「キーストン補正」により補正することができるが、キーストン補正は、スクリーン上の拡大画像の像質劣化をもたらし易い。
【0012】
台形歪みを少なくする構成として、結像レンズ系とスクリーンの間に「凸面ミラーを、結像レンズの光軸に対して偏芯させて設け」る構成が知られている。凸面ミラーを偏芯配置させる場合、結像レンズ系の「スクリーン側焦点位置よりも結像レンズ側」に凸面ミラーを配置し、凸面ミラーの有する負の屈折力によって、投射レンズの焦点位置を伸ばす。
【0013】
このような構成で、薄型且つ大画面の拡大投射装置を実現するのに、凸面ミラーの負のパワーを大きくして画角を広げる方法があるが、凸面ミラーの形状精度や組付公差が厳しくなり、またディストーションも大きくなる。
【0014】
結像レンズと凸面ミラーの間の距離を大きくすることにより、凸面ミラーの屈折力を弱くでき、ディストーションを軽減できるが、結像レンズと凸面ミラーの距離が大きくなることに伴い、凸面ミラーが大型化してミラーのコストが高くなり、拡大投射装置も大型化しやすい。
【0015】
特許文献5では、反射ミラーのみで拡大投射光学系が構成されている。このように、レンズ光学系を用いずに所望の光学性能を得ようとすると、各反射面の面精度や位置精度を極めて高く設定する必要があり、拡大投射光学系の組み付け精度が厳しくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、投射画面の大画面化を図りつつ、投射装置外の投影空間を縮小するために、反射面を含む結像光学系を採用しつつ、色収差も補正可能で、大画面を投射可能な投射光学系、このような投射光学系等を用いる薄型の画像投射装置の実現を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この発明の投射光学系は「画像形成するライトバルブに、光源からの照明光を照射し、ライトバルブに形成された画像を、投射光学系により拡大投射する画像投射装置において、ライトバルブに形成された画像を平面の投影面に拡大投影する投射光学系」であって、以下の特徴と有する。
【0018】
即ち、投射光学系は、第1光学系と第1および第2反射面を有する。
「第1光学系」は、1以上のレンズからなり、投影面とライトバルブとの間に「画像の中間像」を形成するものであり、正のパワーを有する。
「第1反射面」は1枚であり、中間像と第1光学系との間に設けられる。
「第2反射面」は、中間像を結像した後の発散する光束を反射し、投影面状に結像させるものであり、正のパワーを有する。
即ち、ライトバルブからの光束は、第1光学系と、第1、第2反射面により投影面に導光されて拡大画像を投影するが、先ず、第1光学系により中間像として結像される。中間像を結像した光束は、第1反射面で反射され、発散しつつ第2反射面に入射し、第2反射面により投影面に向けて反射される。
請求項1記載の投射光学系は「第1反射面、第1光学系、第2反射面が、この順序で、投影面から近い位置」に配置されていることを特徴とする。即ち、第1反射面が投影面から最も近く、第2反射面が投影面から最も遠い。
【0019】
請求項2記載の投射光学系は「ライトバルブから発する光線は、投影面から遠い箇所からの光線ほど、投影面への入射角が大きい」ことを特徴とする。
即ち、第2反射面により反射された光束の投影面への入射角は「ライトバルブの、投影面から最も遠い位置から放射される光線ほど大きくなる」ように構成されている。
若干補足すると、中間像の形状は「最終像の台形歪みが小さくなるような形状」であることができ、「最終像の台形歪みに対して逆に歪んだ形状の中間像を形成」するように構成することができる。
中間像は「投影面への入射角が最も大きい辺が最も短い」形状であることができる。
【0020】
中間像は、ライトバルブの中心から射出する光束の主光線に対して傾斜し、且つ像面が湾曲していることができる。
第2反射面は自由曲面で構成することができる。
【0021】
上記の如く、第1光学系は1以上のレンズで構成される。
【0022】
第1光学系を構成するレンズのレンズ面は自由曲面として「非球面形状の屈折面」を有することができる。
【0023】
「画像形成するライトバルブに、光源からの照明光を照射し、ライトバルブに形成された画像を、投射光学系により拡大投射する画像投射装置」において、ライトバルブに形成された画像を拡大投影する投射光学系として請求項1または2記載のものを用いることができる。
即ち請求項3の画像投射装置は「ライトバルブからの光束を投射光学系によってスクリーンに導光し、スクリーン上に、ライトバルブに形成された画像を拡大した最終像を結像させる画像投射装置であって、投射光学系として、請求項1または2記載の投射光学系を搭載した」構成のものである。
【0024】
投射光学系は「ライトバルブからの光束をスクリーンに導光し、スクリーンの法線に対し傾斜した方向から投射して、スクリーン上に、ライトバルブに形成された画像の拡大像を結像」させる拡大投射光学系であることができる。
【0025】
「ライトバルブ(LV)」は、透過型や反射型の各種液晶パネル等、あるいは、デジタル・マイクロミラー・デバイス(DMD)等であることもできる。
【0026】
以下、参考技術として、反射光学系と透過光学系をもつ拡大投射光学系を説明する。
「反射光学系」は、パワーを持つ複数の反射面により構成され、回転非対称反射面を1面以上含む。「回転非対称反射面」は、反射面の形状が、回転対称軸を持たない反射面である。
「透過光学系」は、屈折力をもつ透過面により構成され、非球面を1面以上含む。
【0027】
上記拡大投射光学系において「透過光学系における画像表示パネル側から第1面と、反射光学系におけるスクリーン側から第1面との間に絞りを設け、そのスクリーン側に配置した光学素子により、上記絞りの像が、負の縮小倍率で結像するように構成する」ことが好ましい。
【0028】
拡大投射光学系は「複数の透過面からなる透過光学系」と「複数の反射面から成る反射光学系」と「絞り」とを有し、反射光学系における反射面のうち「絞りを通過した光束が最初に入射するパワーを持つ反射面」のパワーが負であることもできる。
【0029】
この拡大投射光学系において、「絞りを通過した光束が最初に入射する負のパワーを持つ反射面」に続く反射面は正のパワーを持つことが好ましい。
【0030】
上記拡大投射光学系における反射光学系は「パワーを持つ複数の反射面により構成され、回転非対称反射面を1面以上含」み、透過光学系は「屈折力をもつ透過面により構成され、非球面を1面以上含」むことが好ましい。
【0031】
別の拡大投射光学系は以下の如き特徴を有する。
即ち、画像表示パネル側からスクリーンに至る光束が生成する画像表示パネルの、負の倍率の中間像(拡大投射光学系による結像光束の光路上において生成される「画像パネルの中間像」)と、スクリーン側から画像表示パネルに至る光束が生成するスクリーンの負の倍率の中間像(拡大投射光学系に、仮想的にスクリーン側から光を入射させたときに、上記光路上に生成するスクリーンの中間像。因みにこのときのスクリーンの像は縮小像で画像表示パネル上に結像する)の位置・形状が略一致している。
【0032】
この拡大投射光学系は「複数の反射面から成る反射光学系」と「複数の透過面からなる透過光学系」とを有することができ、この場合において、拡大投射光学系は「絞り」を有し、反射光学系における反射面のうち「絞りを通過した光束が最初に入射するパワーを持つ反射面」のパワーを負とすることができる)。この場合「絞りを通過した光束が最初に入射する負のパワーを持つ反射面に続く反射面」が正のパワーを持つことが好ましい。
【0033】
上記拡大投射光学系においては、反射光学系を「パワーを持つ複数の反射面により構成され、回転非対称反射面を1面以上含む構成」とし、透過光学系を「屈折力をもつ透過面により構成され、非球面を1面以上含む構成」とすることができる。
【0034】
上記拡大投射光学系において、反射光学系に含まれる「回転非対称反射面」は、投射光路上において最もスクリーン側に配置されることが好ましい。
【0035】
また、上記拡大投射光学系において、透過光学系は「屈折力を有する回転非対称な透過面」を含むことが好ましい。
【0036】
上記拡大投射光学系において、透過光学系の光軸は、画像表示パネル位置に対し、導光光路(画像表示パネルからスクリーンに至る光路における、画像表示パネルの中心から、スクリーン上の拡大像の中心に至る主光線の光路)を含む面内で偏芯して設定されることができる。
【0037】
また、上記拡大投射光学系における反射光学系は「ユニット」として構成することができる。
【0038】
上記拡大投射光学系を用い「画像表示パネルに画像を表示し、画像表示パネルを光源からの光で照明し、照明された画像表示パネルからの光束を拡大投射光学系によりスクリーンに導光し、スクリーンの法線に対し傾斜した方向から投射して、スクリーン上に、画像表示パネルに表示された画像の拡大像を投射する拡大投射装置」を構成できる。
【0039】
若干補足すると、上に説明した「透過光学系」に含まれる「透過面」は、レンズ面のみならず、フレネルレンズ面でもよい。
また、反射光学系に含まれる反射面における光の反射が「内部全反射条件を満たす」構成でも良い。このように反射面を「内部全反射面」とする場合、「透過光学系からの光束を取り込む面」は透過面である。この場合、この透過面への光束入射を面に直交させると、入射の際に収差が発生しないので好ましい。
【0040】
拡大投射装置に用いられる「画像表示パネルであるライトバルブ」は1枚に限らない。3枚の画像表示パネルを用い、R(赤)、G(緑)、B(青)の各色成分画像を、色ごとに「異なる画像表示パネル」に表示し、これら画像表示パネルからの光を合成して、拡大投射光学系によりスクリーンへ導光し、スクリーン上にカラー画像を表示するように構成することができることは言うまでも無い。
【0041】
上記拡大投射光学系では、結像光束をスクリーン法線に対して傾いた方向から投射して、スクリーン上に結像させるので「スクリーン法線の方向から投射する場合に、結像光束がスクリーン法線に対して傾いた場合に生じる表示画像の歪み」を有効に軽減させることができる。
【0042】
また、透過光学系の屈折力をもつ透過面はレンズ系による実現が容易で、セル化も容易であり、組付け精度を出し易くコストダウン効果が得られる。また、反射光学系に含まれる回転非対称反射面により、非対称な収差成分を補正できる。
【0043】
拡大投射光学系を屈折面のみで構成すると、屈折面の配列が1方向に伸びていくので、光学系の3次元的構造を小型化できないが、透過面と反射面の組み合わせによって光路を折り返す構成をとることができ、光学系を小型化できる。
【0044】
例えば、透過光学系の光路をスクリーンと平行に設定し、透過光学系の像側でスクリーンに向けて光路を折り曲げれば、同じ光路長の光学系でも薄型の構成を実現できる。
【0045】
また、透過光学系における画像表示パネル側の第1面と、反射光学系におけるスクリーン側の第1面との間に絞りを配置し、パネル側からの光束によって、絞りの像を全光学系中で1回結像させると、絞り像の結像位置はスクリーン側の射出瞳となる。絞りの像は実像であり、負の縮小倍率になっている。絞りの像を縮小倍率で結像させるようにすることで、絞り像以後の反射面の光線有効径を小さく抑え、反射面を小型化できる。
【0046】
絞りは透過光学系中もしくは「透過光学系と反射光学系の間」に配置することができる。絞りを通過した光が最初に入射する「パワーをもつ反射面」は反射光学系中にある。反射光学系と透過光学系を一体化することは難しく、透過光学系と反射光学系は別々に組み付けられる。このとき、透過光学系と反射光学系の各々に組み付け誤差が付随するので、両光学系の「相対的な位置ずれ」を完全にゼロすることは難しく、相対的な位置ずれの発生を前提とすると、公差感度の観点から、上記「パワーをもつ反射面」は負のパワーの反射面であるのが良い。
【0047】
透過光学系から射出する光束が発散光束であるケースは稀であり、通常は集光されている。このとき、反射光学系において最初に反射するパワーを持つ面のパワーを正とすると、光束の集光が強められる方向に作用する。一方、上記面のパワーを負とすれば光束の集光が緩められる方向に作用する。両者を比較した場合「透過光学系と反射光学系の相対的位置ずれによる光束状態の変化」は、前者において大きく、組みつけ公差が厳しくなる。上記反射面のパワーを負とすることにより組付け公差を緩くできる。
【0048】
上記負のパワーを持つ反射面に続いて正のパワーを持つ反射面を配すると、画角の異なる光束の分離を抑制でき、これらの光束を受ける反射面を小型化することができる。
【0049】
「絞り、スクリーンの中間像の形状・位置を略一致させる」ことにより、画像表示パネルから中間像までの歪曲収差と、中間像からスクリーンまでの歪曲収差の和を0に近づけることができ、スクリーン上に歪みの少ない像を形成できる。
【0050】
結像光路上の最終面を回転非対称反射面とすると、各光束の照射位置に対応して取り得る面形状の自由度が高くなる。この最終面に至る各像高位置の光束の残存収差を入射位置毎に適した形状を与えることで補正が容易になる。
【0051】
透過光学系に回転非対称な透過面を用いると、回転対称な透過面では発生させることのできない収差を発生させることができ、このように発生させた収差を他の収差のキャンセルに利用できる。
【0052】
透過光学系の光軸を、画像表示パネル位置に対し、導光光路を含む面内で偏芯して設定すると、反射光学系における偏芯反射面で発生する収差と逆の収差を透過光学系で発生させ、両者をキャンセルさせることができる。
【0053】
投射光学系は、第1及び第2の光学系を有する。
「第1の光学系」は、屈折光学系を少なくとも1つ含み、正のパワーを有する。
【0054】
「第2の光学系」は、パワーを有する反射面を少なくとも1つ含み、全体で正のパワー
を有する。
【0055】
これら第1及び第2の光学系は、物体面に近い側から第1、第2の光学系の順に配置される、物体像が一旦中間像として形成された後に正規像として結像されるように構成される。
【0056】
第1の光学系において「物体側にもっとも近い屈折力を持った光学要素」の光軸に対して他の光学要素が、1カ所以上において、平行偏芯および/またはチルト偏芯していることができる。即ち、平行偏芯あるいはチルト偏芯は「光学要素単位」で行われる。
【0057】
「第1の光学系」は、屈折光学系を少なくとも1つ含み、正のパワーを有する。
【0058】
「第2の光学系」は、パワーを有する反射面を少なくとも1つ含み、全体で正のパワーを有する。
【0059】
これら第1及び第2の光学系は、物体面に近い側から第1、第2の光学系の順に配置される、物体像が一旦中間像として形成された後に正規像として結像されるように構成される。
【0060】
第1の光学系において「物体側にもっとも近い屈折力を持った光学要素」の光軸に対して第1の光学系の各要素は「チルト偏芯」していなくてもよい。
【0061】
この場合、「第1の光学系を2以上の群で構成し、2以上の群のうちの少なくとも1つの群を平行偏芯させた構成」とすることができる。
【0062】
第2の光学系に含まれる反射面の1以上は「自由曲面」とすることが好ましく、第2の光学系に含まれる反射面のうち「正規像の結像位置側に最も近い反射面のみ」を自由曲面とすることができる。
【0063】
「第2の光学系に入射した光束が初めて反射される正のパワーを有する反射面」を、回転対称な面とすることが好ましく、この場合、回転対称な反射面を「球面反射面」とすることができる。
【0064】
投射光学系において「第1の光学系を屈折光学系のみで構成」することができ、この場合、第1の光学系における屈折光学系には「非球面形状が含まれていない」ようにすることができる。
【0065】
画像表示パネルからの光束を投射光学系によってスクリーンに導光し、スクリーン上に画像表示パネルに表示された画像の正規像を結像させる画像投射装置であって、投射光学系として上記投射光学系を搭載した画像投射装置を構成できる。
【0066】
若干補足すると、上記投射光学系を用いる画像投射装置において、投射される物体像を表示する物体としては、液晶パネル等のライトバルブやDMD、スライドフィルム等のように、外部光源からの光で照明される方式の画像表示手段を用いることができることは勿論、発光ダイオードを2次元的に配列したものやプラズマディスプレイ、EL発光素子アレイ等、自己発光型の画像表示手段を用いることも考えられる。
【0067】
また「屈折光学系」は、レンズ以外に、「回折作用を示す光透過型の素子」であること
もできる。
【0068】
以下、別の面から説明する。
投射光学系は「被投影物体面からの光束を、透過型屈折光学系と、1または2枚の反射ミラーからなる反射型屈折光学系を介して投影面上に導光し投影する投射光学系」であることができる。
【0069】
「透過型屈折光学系」は複数の透過型屈折素子を有する。
【0070】
「透過型屈折素子」は、「光透過性媒質の境界面において光の屈折作用を示す光学素子全般」を意味し、代表的な素子はレンズであるが、それ以外に「回折作用を示す光透過型の素子」であることもできる。
【0071】
「反射型屈折光学系」をなす反射ミラーは、反射境界面における光の反射屈折作用を示す光学素子全般を意味し、「回折作用を示す光反射型光学素子」であることもできる。
【0072】
被投影物体面から上記透過型屈折光学系の第1面までが略テレセントリックである。
【0073】
「被投影物体面」は、投影されるべき画像が物体として表示される面であるが、この面の実体をなすものは、前述した液晶パネル等のライトバルブやDMD、スライドフィルム等のように、外部光源からの光で照明される方式の画像表示手段を用いることができ、さらには、発光ダイオードを2次元的に配列したものやプラズマディスプレイ、EL発光素子アレイ等、自己発光型の画像表示手段を用いることができる。
【0074】
透過型屈折光学系よりも反射型屈折光学系側に、被投影物体面の中間像面が位置し、中間像面における中間像が、反射ミラーを介して投影面上に正規像として再結像される。
【0075】
少なくとも1枚の反射ミラー(反射型屈折光学系が1枚の反射ミラーにより構成されるときは当該反射ミラー、反射型屈折光学系が2枚の反射ミラーで構成される場合には1枚以上の反射ミラー)は、上下方向と左右方向とでパワーが異なるアナモフィックな多項式自由曲面である。
反射型屈折光学系から投影面に至る光線は投影面の法線に対して傾斜して導光される。
【0076】
透過型屈折光学系は被投影物体面の法線に対して偏芯し、透過型屈折光学系の有する複数の透過型屈折素子は互いに偏芯することなく構成されている。
【0077】
投射光学系は「被投影物体面からの光束を、透過型屈折光学系と、1または2枚の反射ミラーから成る反射型屈折光学系を介して投影面上に導光し投影する投射光学系」であって、透過型屈折光学系は複数の透過型屈折素子を有し、被投影物体面から透過型屈折光学系の第1面までが略テレセントリックであり、透過型屈折光学系よりも反射型屈折光学系側に、被投影物体面の中間像面が位置し、中間像面における中間像が、反射ミラーを介して投影面上に正規像として再結像され、少なくとも1枚の反射ミラーが、上下方向と左右方向とでパワーが異なるアナモフィックな多項式自由曲面で、反射型屈折光学系から投影面に至る光線が、投影面の法線に対して傾斜して導光される構成であることができる。
【0078】
「透過型屈折光学系が被投影物体面の法線に対して偏芯し、透過型屈折光学系の有する複数の透過型屈折素子は群単位レベルでは互いに偏芯することなく構成されている」ことができる。
【0079】
これら投射光学系は「反射型屈折光学系が、透過型屈折光学系の側から第1、第2の順に配置される2枚の反射ミラーを有し、被投影物体面の中間像面が第1及び第2の反射ミラーの間に位置し、第1の反射ミラーは負のパワーの軸対称な反射面、第2の反射ミラーは上下方向と左右方向とでパワーが異なるアナモフィックな多項式自由曲面であることができる。
【0080】
また「被投影物体面の中間像の、アスペクト比を補正する手段」として、透過型屈折光学系内に、上下方向と左右方向とでパワーが異なるアナモフィックな多項式自由曲面を有することができる。
【0081】
「中間像のアスペクト比」を反射型屈折光学系の反射ミラーの形状により行うことは不可能ではない。しかし、反射型屈折光学系の反射ミラーは主にディストーション補正を中心に形状を決定することが望ましい。従って、透過型屈折光学系においてアスペクト比を予め調整できていることが望ましく、透過型屈折光学系でアスペクト比を補正する手段として上記多項式自由曲面を用いることが有効である。
【0082】
透過型屈折光学系への多項式自由曲面の採用は1面に限られないが、後述する例では、透過型屈折光学系に多項式自由曲面を1面だけ使用して充分な補正効果が得られた。透過型屈折光学系に採用される多項式自由曲面は、被投影物体面に近い位置に採用しても良いが、補正効果を高めるには投影面側に近い位置に採用することが好ましい。因みに後述の例では透過型屈折光学系の最終面に多項式自由曲面を採用している。
【0083】
上記投射光学系は「透過型屈折光学系における被投影物体面側のNAが、中間像面側のNAよりも大きい」ことが好ましい。
【0084】
透過型屈折光学系を構成する場合、被投影物体面側のNA(「NA1」と言う。)は照明系の配向分布特性によって決まるが、中間像面側のNA(「NA2」と言う。)は透過型屈折光学系の構成配置によって変えることができる。投射倍率を高くするためには反射型屈折光学系のパワーを強くすることが有効であるが、このようにすると反射型屈折光学系の像側焦点距離が短くなるので、光束の集光点が反射型屈折光学系の反射ミラー側に寄り、そのため小さいサイズの正規像しか結像できない、つまり拡大倍率が小さくなる。この課題をクリアするため、反射型屈折光学系に入射する光束のNA2に着目したところ、NA2をNA1より小さくすることが「投射光学系倍率を高く」する上で特段の効果があることがわかった。
【0085】
上記投射光学系において、中間像面は「被投影物体面の中心から射出する光束の主光線に対して傾斜し、かつ像面が湾曲」していることができる。このようにすると、中間像面に対する自由度が増え、光学系全体の設計が容易になる。
【0086】
「透過型屈折光学系の最終面において、被投影物体面の中心から射出した主光線と、被投影物体面の周辺から射出した主光線とが略平行である」ことが好ましい。
【0087】
「中間像の倍率:M1は1〜5」程度が好ましい。投影倍率は40以上であることができる。この場合、投影面に対する投射角度:θが、5°より大きいことが好ましい。
【0088】
対角線で0.9インチサイズの被投影物体面の像を60インチ画面に拡大投射する拡大投射光学系を「薄さ:500mm以下」で実現するには上記NA2が0.005〜0.01程度になっているとよいことがわかった。NA2を小さくしすぎると透過型屈折系の全長が伸びてしまうので、装置の全体サイズを小型化することを考慮するとNA2は0.005から0.01程度が望ましい。
【0089】
またNA2を0.01以上にしたときには透過型屈折系はコンパクトになるが、NAが大きくなることにより、投射画面のディストーション補正、あるいは、倍率性能の確保が難しくなってくる傾向がある。勿論、画面サイズが60インチよりも小さい場合にはNA2の上限値は0.01以上でもよい。
【0090】
「被投影物体面であるライトバルブに形成される画像を投射光学系により投影面上に拡大投影する画像投射装置」の投射光学系として、上記の任意のものを用いたものは、フロントプロジェクタ型として構成することもできるし、結像光路を折り返す折り返しミラーを有するリアプロジェクタ型として構成することもできる。
【0091】
なお、上の説明における「上下方向と左右方向とでパワーが異なるアナモフィックな多項式自由曲面」は、上下方向(投射される画像を基準として上下方向と左右方向とを考える。)をY方向、左右方向をX方向、曲面のデプスをZ、「X2、Y2、X2Y、Y3、X2Y2等」を係数として、
Z=X2・x2+Y2・y2+X2Y・x2y+Y3・y3+X4・x4+X2Y2・x2y2+Y4・y4+
X4Y・x4y+X2Y3・x2y3+Y5・y5+X6・x6+X4Y2・x4y2+X2Y4・x2y4+Y6・y6+・・
・・(1)
で表される形状である。
【発明の効果】
【0092】
以上の如く、この発明によれば、新規な投射光学系および画像投射装置を実現できる。
【0093】
この発明の投射光学系は、第1光学系、第1、第2反射面により構成され、ライトバルブにより形成された画像を、結像光路上で、第1光学系と第1反射面との間の空間に中間像として結像させ、この中間像をさらに拡大して投射するので、大きな投射倍率を実現でき、第1光学系が1以上のレンズで構成されるので、色合成プリズムを用いた場合においても色分散特性を利用して色収差補正が可能であり、結像光束の光路を第1、第2反射面で折り返すのでコンパクトに構成できる。
【0094】
従って、この発明の投射光学系を用いる画像投射装置は、コンパクトに構成でき、結像光束の光路を装置空間内おいて長くとれるため、装置外の投影空間を縮小しながら大サイズの画像を投射表示できる。
【0095】
そして、この拡大投射光学系を用いる拡大投射装置は薄型に実現でき、設置の床面積を有効に小さくでき、狭い部分に配置することができる。
【0096】
また、第1光学系により中間像を形成して、第1、第2反射面で拡大投影することにより、光学系の合成の拡大倍率をあげることもでき、屈折光学系を構成するレンズ要素を平行偏芯もしくはチルト偏芯させることにより、投射画像に歪みが生じないように「中間像に逆歪みを効果的に発生させる」こともでき、所望の拡大倍率で至近距離投射を実現することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】投射光学系と画像投射装置の1形態を説明するための図である。
【図2】図1に示す形態の投射光学系を説明するための図である。
【図3】投射光学系の1形態を説明するための図である。
【図4】投射光学系の1形態を説明するための図である。
【図5】投射光学系の1形態を説明するための図である。
【図6】拡大投射光学系の1形態を説明するための図である。
【図7】画像投射装置の実施の1形態を説明するための図である。
【図8】図7における投射光学系部分を拡大して示す図である。
【図9】画像投射装置の実施の別形態を説明するための図である。
【図10】画像投射装置の実施の他の形態を説明するための図である。
【図11】実施例1におけるスクリーン上におけるディストーションの状態を示す図である。
【図12】画像投射装置の他の形態を説明するための図である。
【図13】図12における投射光学系部分を拡大して示す図である。
【図14】実施例6に関するスクリーン上のMTFの評価ポイントを説明するための図である。
【図15】実施例6に関するMTF特性を示す図である。
【図16】実施例6に関するMTF特性を示す図である。
【図17】実施例6に関するMTF特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0098】
図1は、画像投射装置の1形態における要部を略示している。
【0099】
符号15で示す「ライトバルブ」は、この実施の形態において液晶パネルであり、以下、単にパネル15と称する。符号10で示す光源は、ランプとリフレクタによる発光部11と、この発光部11からの光束を照明光束とする照明光学系12とにより構成されている。光源10からの照明光束は、パネル15に照射される。
【0100】
ライトバルブであるパネル15は「変調信号に応じて画像形成」され、形成された画像は、光源10からの照明光束を2次元的に強度変調して透過させる。パネル15を透過した光束は、第1の光学系17と第2の光学系19により構成される「投射光学系」によりスクリーン21上に投射結像され、「パネル15に画像形成された画像」の拡大像を表示する。
【0101】
図2は、図1における投射光学系の部分を説明するための図である。
【0102】
ライトバルブであるパネル15の投影側に、パネル15の側から第1、第2の順に配設される第1及び第2の光学系17、19を有し、第1の光学系17は屈折光学系(レンズ)で正のパワーを有し、第2の光学系19はパワーを有する反射面を有し、正のパワーを有する。
【0103】
パネル15により形成された画像は、第1及び第2の光学系17、19の光路上に中間像Iintとして結像され、スクリーン21上には、この中間像Iintを「さらに拡大した画像」が投射結像される。
【0104】
第1の光学系17は、図2において1枚のレンズとして示しているが、具体的には「屈折光学系を含む種々の形態」、例えば、複数レンズによる構成や、レンズとミラーの組合せ、反射面と屈折面を一体化した構成等が適宜可能である。
【0105】
第1の光学系17は、全体的に正のパワーを有しており、図2に示されたように、第1の光学系17により形成される中間像Iintは「パネル15に形成された画像の倒立像」である。中間像Iintの倍率は、パネル15上の画像の1〜数倍程度であることが好ましい。中間像Iintが縮小像であると、第1および第2の光学系全体として「大きな拡大率の表示画像」を得るためには、第2の光学系に大きな拡大倍率が必要となり、収差の補正等と大倍率のバランスを実現することが困難になる。
【0106】
逆に、中間像Iintの拡大倍率が大きくなりすぎると、第2の光学系のサイズが大きくなり、投射光学系、延いては画像投射装置を大型化してしまう。
【0107】
図2には、+側の最大像高(図1における位置:a)と−側の最大像高(図1における位置:b)の2点に対応するパネル15上の位置:A、Bから上記位置:a、bへ向う光束の光路を模式的に示している。
【0108】
中間像Iintは必ずしも「平面状に結像」する必要は無く、第1の光学系17と第2の光学系19との合成光学系でスクリーン21上に投射される画像が「満足のいく画像」となるよう、合成光学系全体として性能を確保していればよい。従って、第1の光学系17による結像性能には特に制約はない。中間像を「ライトバルブの中心から射出する光束の主光線に対して傾斜させ、且つ像面を湾曲させる」ことも可能である。
【0109】
図1、図2に示す形態においては、第1の光学系17により形成された中間像Iintを結像させた光束を、第2の光学系19で反射して光路を折り返し、中間像Iintを形成する光束の進行方向と逆の向きに投射画像を投影するようになっている。
【0110】
図1、図2の形態では、第2の光学系19を1面の凹面鏡で構成した例であるが、第2の光学系の形態はこれに限らず、反射面を2以上含むことができるし、反射面とともに屈折光学系を含むこともできる。
【0111】
図1、図2の構成において、第2の光学系中に「さらに1面の反射面を付け加える」ことにより、最終的に投射される光束の向きを「図1の向きと逆」にすることもできる。また、図1、図2の構成において、中間像Iintの形成される位置と、反射面19との間に、第2の光学系の一部として屈折光学系(レンズ系)を配し、反射面19に「より効率的に光量を取り込む」ようにすることができる。
【0112】
図2に示したように、パネル15における位置:Aを起点とする光束は、中間像Iintにおける位置:A’に重心を持つように集まり、集光後の光線は、集束角と同じ発散角で広がり、正のパワーを有する第2の光学系19により反射されて、図1におけるスクリーン21上の位置:aに結像する。
【0113】
同様に、パネル15における位置:Bを起点とする光束は、中間像Iintにおける位置:B’に重心を持つように集まり、集光後の光線は、集束角と同じ発散角で広がり、第2の光学系19により反射されて、図1におけるスクリーン21上の位置:bに結像する。
【0114】
中間像Iintを形成させることにより、パネル15における位置:A、Bからの光束の結像に寄与する反射面19の有効領域を「局所的に狭める」ことが可能となる。即ち、図2に示すように、位置:Aからの光束に対する結像性能には、第2の光学系19の「反射領域A’’」の形状が影響し、位置:Bからの光束に対する結像性能は「反射領域B’’」の形状が影響する。
【0115】
従って、図1、図2に示す構成により、反射領域A’’、B’’の面形状を最適化することが可能である。さらには、第2の光学系19における凹面の形状を「局所的に変化」させることにより、スクリーン21上の各部への集光特性が制御可能となる。
特に、上記凹面を自由曲面形状とすることでその効果を最大限に生かせる。
【0116】
従来から知られた光線追跡法などのシュミュレーション手法により、最適な諸元設定を行えばよい。反射面により最適化を行えるので、色収差の発生、増加を抑えて、そのほかの集光特性を向上させる設計が可能となる。
【0117】
第1の光学系17は、屈折光学系を含むので、「反射面だけでは補正不能な色収差」を屈折光学系により補正することが可能である。
【0118】
また、スクリーン21上に投射される投射像に影響する諸収差で、第2の光学系の反射面のみでは補正できない部分は、第2の光学系に積極的に屈折光学系を取り入れて補正するようにしてもよい。
【0119】
図1に示す如き構成において、第2の光学系19の結像倍率を高めるには、中間像Iintの形成される位置を、第2の光学系19の反射面に近づければよい。これを、図3、図4を参照して説明する。
【0120】
図3において、符号15はパネル、符号17Aは第1の光学系(レンズ)、符号19Aは第2の光学系(凹面鏡)を示し、符号21はスクリーンを示す。
【0121】
光学系の緒元の表記に従い、パネル側から数えて、第i番目の面の曲率半径をRi(i=1〜3 i=1は第1の光学系17Aの入射側面、i=3は第2の光学系19Aの反射面)、第i番目の面と第i+1番目の面との間の面間隔をTi(i=0〜3 i=0はパネル15と第1の光学系17Aの入射側面との間、i=3は第2の光学系19Aとスクリーン21との間)とする。
【0122】
図3の光学系の緒元は以下の通りである。
i Ri(mm) Ti(mm) 材質
0 85
1 65 25 BK7
2 −55 225
3 −135 −400 。
【0123】
パネル15における物体高は、±7.5mmである。
【0124】
像高位置0(スクリーン21上のP点)で、投射画像が最適に結像するよう設定すると、物体であるパネル15における位置:A、Bを起点として、スクリーン21上の位置:a、bに到達する各主光線の間隔は約208mmとなる。
【0125】
ここで、図4に示すように、第1の光学系17Bと第2の光学系19Bを用い、第1の光学系17Bのパワーを緩め、中間像Iintの位置を第1の光学系17Bから遠ざけるようにし、同時に「像高0における集光性が保たれるように位置関係を保った」まま、第2の光学系19Bにおける正のパワーを調整すると、これら光学系の緒元は以下の如くになる。
i Ri’(mm) Ti’(mm) 材質
0 85
1 65 25 BK7
2 −60 225
3 −98 −400 。
【0126】
パネル15における物体高は、±7.5mmである。
【0127】
図4は、説明上、図3と光学配置を異なるように描いているが、上記緒元から明らかなように、光学系の配置は、図3の配置と同じであり、図3の光学系と異なっているのは第1の光学系17Bの射出側面の曲率と、第2の光学系19Bの反射面の曲率のみである。
【0128】
このとき、パネル15における位置:A、Bを起点として、スクリーン21上の位置:
a’、b’に到達する各主光線の間隔は約362mmとなり、図3に示す場合(208mm)よりも拡大率が向上している。即ち、第1の光学系における正のパワーが弱まり、中間像Iintが第2の光学系19Bの「正のパワーを持つ反射面」に近づいた結果、拡大率が増大しているのである。上記のように、光学配置を変えることなく、屈折面・反射面の曲率半径を変化させるのみで、拡大率を向上させることができる。
なお、図3、図4の実施の形態とも、第1の光学系は、1以上のレンズからなる屈折光学系で構成され、正のパワーを有し、第2の光学系は、パワーを有する1枚の反射面19で構成され、正のパワーを有し、ライトバルブ15により形成された画像を、第1の光学系により、第1の光学系と反射面との間の空間中に中間像Iintを結像させ、中間像Iintとして結像した後の発散する光束を反射面19で反射し、反射面19の正のパワーにより、中間像をさらに拡大した画像を最終像として、投影面であるスクリーン21に投射し、第2光学系19により反射された光束の投影面21への入射角が、最終像上のライトバルブ15から最も遠い位置(図3、図4において像最上部)の方が最も近い位置より、大きくなるように構成されている。
【0129】
上に説明したところを具体化するには、第1及び第2の光学系の光路上において「中間像の結像位置を第2の光学系における正のパワーを持つ反射面に近づけるための、負のパワーをもつ光学素子」を、中間像のライトバルブ側に設ければよい。
【0130】
中間像の位置を第2の光学系における正のパワーを持つ反射面に近づけるために、中間像のライトバルブ側に設ける負のパワーを持つ光学素子としては、凹レンズやフレネル凹レンズ、凸面状の反射鏡、あるいはこれらの複合系等を考えることができる。
【0131】
実際には、各像高位置での集光特性を確保し、像面の歪みを補正する必要があるが、屈折面や反射面の面数を増やして設計の自由度を上げるなどし、従来から知られた光線追跡法などによるシミュレーションで最適化設計を行えばよい。
【0132】
図5は、別形態を略示している。煩雑をさけるため、混同の虞がないと思われるものについては、図1におけると同一の符号を付した。
この形態では、第2の光学系190は、正のパワーを有する反射面192と負のパワーを有する反射面191とを有する。
【0133】
パネル15からの光束は第1の光学系17の作用により結像光束となるが、中間像Iintが結像される以前に、負のパワーを持つ反射面191に入射し、反射面192に向って反射される。そして、中間像Iintは反射面191と反射面192との中間部に形成される。中間像Iintは、反射面192の正のパワーによりさらに拡大され、スクリーン21上にパネル15上の画像が投射される。
【0134】
即ち、第2の光学系190における反射面191は、請求項2記載の発明における「中間像Iintが形成される位置を、第2の光学系190の正のパワーを持つ反射面192に近づける作用をもつ負のパワーを持つ光学系」の1例である。
【0135】
反射面191としては、凸反射面、フレネル凸反射鏡、正のパワーを持つホログラム反
射鏡等、発散パワーを有する反射光学素子を適宜に利用できる。
【0136】
中間像の位置をライトバルブから離すために、投射光学系は多少大きくならざるを得ないが、上記「負のパワーをもつ光学系」を、反射鏡で構成することにより、光路を折り返すレイアウトを採用でき、光学系全体のサイズは小さくすることができる。
【0137】
「中間像の結像位置を第2の光学系における正のパワーを持つ反射面に近づけるための、負のパワーをもつ光学素子」用いることにより「第2の光学系における正のパワーを持つ反射面」への入射光束の「発散の程度」を狭める調整が可能となり、上記正のパワーを持つ反射面の「有効反射エリア」を小さくすることが可能となる。
【0138】
上記正のパワーを持つ反射面の有効反射エリアの調整や、同反射面の形状の局所的な形状付与、即ち「自由曲面形状の設定」により、集光特性や歪みなどをよりきめ細かく制御できる。
上記の如き構成の採用により、従来の投射光学系より広角化が可能となる。
【0139】
上の実施の形態で説明した各種の反射面のうち、少なくとも1面を自由曲面で構成することにより、設計の自由度が増し、諸収差の補正がし易くなる。
【0140】
ここに謂う「自由曲面」は、アナモフィック面や、X−Yポリノミナル面等、「非回転対称な面形状」を含む面である。
【0141】
投射光学系に含まれる全ての面(屈折面、反射面)を自由曲面で構成すれば、設計上は、極めて良好な結像特性を実現できるが、実際には各面の相対位置誤差や偏芯誤差等の要求精度が厳しくなるので、自由曲面の数は多いほど良いというわけではなく、最適な自由曲面の数を設定するのがよい。
【0142】
上に説明したように、中間像Iintを形成した光束は、その後、発散光束となり、第2の光学系における正のパワーを持つ反射面(凹面鏡)に入射する。従って、中間像Iintの各位置からの発散性の光束は、上記凹面鏡における局所的な反射領域で反射されてスクリーン上に結像する。換言すると、スクリーン上の各位置に結像する光束は、上記凹面鏡において「像高ごとに局所的な反射領域」に対応する。
【0143】
このことから、上記凹面鏡(中間像を形成した光束が、中間像形成後最初に反射される反射面)の面形状を自由曲面とし「それぞれの像高に対する反射領域」ごとに、反射面の曲面形状を調整することにより、最も効果的に諸収差補正が可能となり性能向上を図ることができる。
【0144】
面加工や組み付け性を考慮すると、自由曲面の数はできるだけ少ないのがよく、中間像を形成した直後の正のパワーを有する反射面(凹面鏡)に優先的に適用するのが最も効果的である。反射領域の調整に加え、「集光パワーを持つ凹面の局所的な形状を調整できる自由曲面」の形状設定によって、集光特性や像の歪みなどの特性をより向上させる設計が可能となる。
【0145】
中間像の倍率は「等倍〜数倍程度」であれば良く、中間像の形成に拘わる第1の光学系の結像倍率は大きい必要がない、従って、第1の光学系は、従来からある屈折光学系のみによる構成で最適化が可能である。第1の光学系を屈折光学系のみで構成すると、第1の光学系の光学設計が容易になり、面加工や組み付け性に関しても許容公差を緩くすることが可能となる。
【0146】
また、屈折面数等を増やして設計の自由度を増し、それにより、公差を分配して性能向上させることも可能である。
【0147】
第1の光学系を「屈折光学系のみ」で構成できるが、さらなる性能向上を望む場合は「第1の光学系構成上の自由度をさらに向上させる」ことが必要となる。
【0148】
このような更なる性能向上を図る場合には、第1の光学系を「回転対称軸を有する反射面と屈折光学系とで構成」するのが良い。「回転対称軸を持つ反射面」は比較的作り易く、加工性と組み付け性を損なうことなく設計の自由度を向上するのに極めて有効である。この回転対称軸をもつ反射面を、非球面形状とすることによりさらに自由度が向上する。また、この反射面にシフト偏芯やチルト偏芯の自由度を与えることにより、より自由度を向上させた設計が可能となる。
【0149】
また、屈折光学系においても非球面形状を用いることができる。このような構成を採用
することにより設計の自由度が向上し、より高性能な投射光学系を実現できる。
【0150】
反射面の加工には、従来から知られた研磨加工や、金型による成形加工、精密な形状転写加工等、様々な加工法を採用できる。また、屈折透過面と反射面とが一体となった構成とし、内部全反射構造としてもよい。
【0151】
図1を参照して、画像投射装置の実施の1形態を説明する。
光源10における発光部11のランプとしては、ハロゲンランプ、キセノンランプ、メ
タルハライドランプ、超高圧水銀ランプなどを用いることができる。
【0152】
高効率な照明効率を得られるように、ランプ近傍にランプと一体化して設けられたリフレクタを用いる。図1に図示されていないが、リフレクタにより反射されて「指向性を持った光束」を、光強度を均一化してパネル15上に照射できるように「インテグレータ光学系と呼ばれる公知の照度均一化手段」を用い、パネル面上に均一な照明分布の照明を行うようにすることもできる。
【0153】
図1に、ライトバルブとして例示した透過型の液晶パネル15に換えて「反射型の液晶ライトバルブ」を用いる場合は、偏光ビームスプリッタ等を用いて、照明光路と投射光路を分離することにより「効率のよい照明」が可能である。
【0154】
また、ライトバルブとして「デジタル・マイクロミラー・デバイス(DMD)」を用いる場合には「斜め入射光学系や全反射プリズムを使った光路分離光学系」を用いる。このようにライトバルブの種類に応じて適切な光学系を採用できる。
【0155】
フロントタイプのプロジェクタでは、投射画像を上方にシフトさせ、観察者からみて投射画像がプロジェクタの陰にならないようにするのが良い。即ち、投射光学系の光軸(第1の光学系17の光軸)に対して垂直な面内で、ライトバルブ15をシフト(図では下側)し、投射光学系の下方から光束を入射させるようにしている。
【0156】
ライトバルブ15の上記シフト量が大きいほど、第1の光学系17に要求される仕様として、特に有効画角を広くとる必要がある。ライトバルブ15の上記シフト量は必要に応じて適宜の大きさに設定し、第1の光学系17により一旦中間像Iintを形成し、正のパワーを有する第2の光学系19により、ライトバルブ15で形成した画像をスクリーン21上に拡大投射する。
【0157】
リアプロタイプでは、投射光路に平面ミラーを配置して、光路を折り曲げ空間占有率を
より小さくすることができることは当然である。
【0158】
なお、上には簡単のため、パネル15を1枚のみ示したが、赤・緑・青用の3枚のパネ
ルを用い、各パネルにより変調された光束を、公知のダイクロイックプリズム等の色合成
手段により色合成した後に、第1の光学系17等へ入射させることにより、スクリーン2
1上にカラー画像を投射することができることは言うまでも無い。
【0159】
以下に、別形態を説明する。
【0160】
図6に示す形態において、符号1で示す画像表示パネル(以下、単にパネル1という)から符号2で示す「スクリーン」に向かう光束群の基準光線はスクリーン2の法線と所定の傾きをもってスクリーン2に入射する。「基準光線」は、パネル1の中心からスクリーン2に導光される光束の主光線とする。
【0161】
パネル1は反射型の液晶パネルで、直線偏光した照明光が、偏光ビームスプリッタ10Aを介して照射され、パネル1により変調された光束が偏光ビームスプリッタ10Aを介して結像光束となる。
【0162】
光の伝搬においてパネル1側を「上流」、スクリーン2側を「下流」と呼ぶと、パネル1の下流側に「屈折力をもつ透過面から成り、非球面を1面以上含」む透過光学系3が配置され、その下流側に、複数の反射面4、5、6、7、8を有する「反射光学系」が配置される。
【0163】
パネル1からの結像光束は、透過光学系3内を伝搬し、反射光学系を構成する反射面4〜8を介してスクリーン2へ導光される。反射光学系を構成する反射面4〜8のうち、反射面8は「回転非対称反射面」となっている。
【0164】
透過光学系3には光束集光作用を与えることが好ましいが、この実施の形態では、透過光学系3における「倍率拡大の作用負担」を緩め、特に「下流側のレンズの口径が大型化しない」ようにしている。従って、拡大投射光学系としての倍率拡大の作用は、その全て、もしくは相当部分を反射光学系が負っている。
【0165】
回転非対称反射面8によって「非対称収差(図において、上記基準軸の上下方向における非対称性に起因する収差)」を補正するとともに、透過光学系3の光軸をパネル1に対して偏芯して設定(この実施の形態では、光軸が、パネル1の中心よりも、図の上方へ偏芯している)することにより、非対称収差の補正効果を高くしている。即ち、透過光学系3と反射光学系の双方に「非対称収差の補正を分担」させている。
【0166】
透過光学系3はセル化を容易にするため「全体を共軸」に組付けている。
この実施の形態のように、拡大投射光学系を、透過光学系と反射光学系で構成すると、全ての光学面を反射面で構成するよりも、光学系を組み付け易くなり、反射面による「光路折り返し効果」も活かすことができ、全系を小型化できる。
【0167】
透過光学系3の下流側で反射面4の上流側には符号9で示す「絞り」が設けられ、絞り9より下流側の反射面により、絞り9の像I9が「負の縮小倍率」で結像光路上に結像するようになっている。即ち、絞り9の「縮小倍率の像I9」は反射光学系の反射面4、5、6、7の作用により、反射面7と回転非対称反射面8との間に倒立像として結像する。
【0168】
このように、絞り9の像I9が縮小倍率で結像するようなパワー配置を取ると、絞り9の像I9より下流側にある反射面(説明中の実施の形態では反射面8)に入射する光束が大きく広がらないため、この反射面を小型にできる。
【0169】
上述の如く、絞り9の像I9は、反射光学系の光路内(反射面7と回転非対称反射面8との間)で結像しており、この結像位置は「スクリーン側の瞳」、即ち拡大投射光学系の「射出瞳」となる。
【0170】
結像光束は、反射光学系内の光路上においてパネル1の中間像を結像する。この中間像は、絞り9の像I9と同様「負の倍率の実像」で等立像である。図に示す実施の形態では、パネル1の中間像は反射面7の反射面近傍に結像される。即ち、パネル1の中間像は、透過光学系3と反射面4〜6とにより形成される。
【0171】
スクリーン2に結像するのは「パネル1の中間像の、反射面7と回転非対称反射面8による拡大像」であり、このときの結像倍率も負である。このように、パネル1からの光束は中間像が倒立像として結像され、さらにこの倒立像が倒立された正立像としてスクリーン2上に結像する。その際、中間像において発生する台形歪みが、スクリーン上に結像されるときの台形歪みと相殺しあい、台形歪みの少ない表示画像を得ることができる。
【0172】
透過光学系3を1つのユニットとしてセル化すると、拡大投射光学系における位置調整としては、セル化された透過光学系3と反射光学系との相対的な位置調整が残される。このとき、反射光学系における最も上流側の反射面4のパワーが正であると、透過光学系3から射出した光束が集光光束である場合、この光束は反射面4の正のパワーによりさらに集光される作用を受ける。
【0173】
この形態では「反射面4のパワー」を負としている。反射面4のパワーを正にすると、透過光学系3と反射光学系の相対位置が「ズレ」たときに発生する収差が大きくなる。換言すると、透過光学系3と「反射光学系」のズレ量が同一である場合、ズレ量に対する収差の変化量が大きい。
【0174】
上記形態のように、反射面4のパワーを負にすると、上記「ずれ量に対する収差の変化量」が小さい。従って、透過光学系3と反射光学系との相対的な位置関係の精度が緩やかになり、光学系組付けが容易となる。
【0175】
上記反射面4のパワーを負にした上で、その下流に配置する反射面5のパワーは正となっている。反射光学系における上流側において、負のパワーの反射面が続くと入射光束の発散性が過大になり、反射光学系内に「絞りの像」を結像させることができなくなる。
【0176】
反射面5のパワーを正とすることは、反射面5により反射される結像光束を収束傾向とし、絞り9の像I9を反射光学系の光路内に結像する上で重要である。即ち、絞り9と絞りの像I9の間に設ける光学系(反射面4〜7)の合成パワーは正である。
【0177】
反射面4とともに反射面5も負のパワーとし、その下流側の反射面6のパワーを正にしても良いが、反射面6のパワーを強くする必要性が生じたり、面間距離が長くなったりして収差発生量が増え、光学系が大きくなり、構成面数も増えるので、メリットはあまりない。
【0178】
パネル1とスクリーン2が共に平面で「斜め投射」を行う拡大投射光学系において、この発明では「パネル1側からスクリーン2へ向う光束が生成するパネル1の、負の倍率の中間像」と、「スクリーン2側からパネル1へ向う光束が生成するスクリーン2の、負の倍率の中間像」の位置・形状が略一致するように、中間像面の上流側および下流側の光学系を構成している。
【0179】
「スクリーン2側からパネル1に向う光束」は、拡大投射光学系設計の際に、スクリーンを物体面、パネルを像面として光線追跡を行う際において使用される仮想的な光束を言う。
【0180】
反射光学系部において、回転非対称反射面8は、この実施の形態におけるように、結像光束の光路上、最下流のスクリーン2に最も近い位置に配置することが好ましい。反射面4〜8における「異なる画角に対応する各々の光束」の入射位置は、上流においては重なっている領域が広く、下流に行くほど「重なる領域」が少なくなるようにする。
【0181】
回転非対称反射面は、入射位置に対して取り得る面形状の自由度が高いので、回転非対称反射面8を最下流側とし、この面位置において「異なる画角に対応する各々の光束の互いに重なる領域」が少なくなるようにすると、回転非対称反射面8よりも上流側の光学系による「各画角の光束が有する残存収差の補正に適する面形状」を回転非対称反射面8に与えることができ、高い収差補正効果を実現できる。
【0182】
上記とは逆に、反射光学系の上流側に回転非対称反射面を設けると、その反射面の同位置に「異なる画角の光束が重なって入射している状態」となるから、異なる画角の光束の各々が有する収差を同時に補正する「反射面の形状解」を得ることが困難になる。
【0183】
この実施の形態においては、透過光学系3にも「非対称収差成分の補正」を分担させることができる。このような場合、補正効果を高くするには、透過光学系3に「回転非対称な透過面」を与える。回転非対称面は「回転対称非球面では補正困難な収差成分を補正」するのに有効である。
【0184】
反射光学系は複数の反射面4〜8で構成されているが、これらをユニットとして一体に構成することによって、反射面同士の相対位置精度を出し易くなり、拡大投射光学系の組付けが容易になる。反射面の一体化は例えばモールド成形法によって実現できるが、これに限らず、他の適宜の方法で実現して良い。
【0185】
若干付言すると、絞り9を配置する位置は、図1の位置に限らず、例えば、透過光学系3における面間に設けても良い。この場合には、絞りの像の結像に、透過光学系の一部も参与することになる。
【0186】
画像表示パネルは1枚に限らず、3枚の画像表示パネルを用い、R(赤)、G(緑)、B(青)の各色成分画像を色ごとに異なる画像表示パネルに表示し、これら画像表示パネルからの光を合成して、拡大投射光学系によりスクリーンへ導光し、スクリーン上にカラー画像を表示するように構成することもできる。
【0187】
このような場合には、図1において、パネル1と透過光学系3との間の偏光ビームスプリッタとダイクロイクプリズムを組合せたもの(カラー画像投射装置において広く知られている)を用いることができる。
スクリーンは平面である。
【0188】
上に説明したように、図1の拡大投射光学系は、画像表示パネル1からの光束をスクリーン2に導光し、スクリーン2の法線に対し傾斜した方向から投射して、スクリーン2上に画像表示パネル1に表示された画像の拡大像を結像させる拡大投射光学系であって、反射光学系4〜8と透過光学系3とを有し、反射光学系はパワーをもつ複数の反射面4〜8により構成され、回転非対称反射面8を含み、透過光学系3は屈折力をもつ透過面により構成され、非球面を1面以上含む。
【0189】
透過光学系3における画像表示パネル側から第1面と、反射光学系におけるスクリーン側から第1面との間に絞り9が設けられ、そのスクリーン側に配置した光学素子4〜7により、絞り9の像I9が負の縮小倍率で結像するように構成されている。
【0190】
図6の拡大投射装置はまた、複数の透過面からなる透過光学系3と、複数の反射面4〜8から成る反射光学系と、絞り9とを有し、反射光学系における反射面のうち、絞り9を通過した光束が最初に入射するパワーを持つ反射面4のパワーが負であり、絞り9を通過した光束が最初に入射する負のパワーを持つ反射面4に続く反射面5が正のパワーを持ち、反射光学系は、パワーを持つ複数の反射面4〜8により構成され、回転非対称反射面8を含み、透過光学系3は屈折力をもつ透過面により構成され、非球面を1面以上含む。
【0191】
図6の拡大投射光学系はまた、画像表示パネル1側からスクリーン2に至る光束が生成する画像表示パネルの負の倍率の中間像と、スクリーン2側から画像表示パネル1に至る光束が生成するスクリーン2の負の倍率の中間像の位置・形状が略一致し、複数の反射面から成る反射光学系4〜8と、複数の透過面からなる透過光学系3とを有し、絞り9を有し、反射光学系における反射面のうち、絞りを通過した光束が最初に入射するパワーを持つ反射面4のパワーが負であり、絞り9を通過した光束が最初に入射する負のパワーを持つ反射面4に続く反射面5が正のパワーを持ち、反射光学系はパワーを持つ複数の反射面により構成され、回転非対称反射面8を含み、透過光学系3は屈折力をもつ透過面により構成され、非球面を1面以上含む。
【0192】
さらに、回転非対称反射面8は、投射光路上において「最もスクリーン2側」に配置され、透過光学系3が、屈折力を有する回転非対称な透過面を含み、画像表示パネル1の位置に対し、透過光学系3の光軸が、導光光路を含む面内で偏芯して設定されている。また、反射光学系はユニットとして一体に構成することができる。
【0193】
従って、図6に実施の形態を示した拡大投射光学系に対して、公知の各種の光源を付加することにより、画像表示パネル1に画像を表示し、画像表示パネル1を光源からの光で照明し、照明された画像表示パネル1からの光束を拡大投射光学系によりスクリーン2に導光し、スクリーン2の法線に対し傾斜した方向から投射して、スクリーン2上に画像表示パネル1に表示された画像の拡大像を投射する拡大投射装置である。
【0194】
以下、実施の形態を説明する。
【0195】
図7は、画像投射装置の実施の1形態を示している。投射光学系の部分を拡大して図8に示す。
【0196】
図8において、符号71で示す部分は物体側に配された第1光学系、符号72で示す部分は像側に配された第1、第2反射面を示す。第1光学系71はレンズ711〜716で構成されレンズ713の直後に絞りSを有する。レンズ713は「接合レンズ」である。
符号721、722は、第1、第2反射面を示している。第1反射面721、第2反射面722を合わせた部分を以下「第2光学系」と称する。
【0197】
第1光学系71の物体側は、図6に即して説明したような「反射型の液晶パネルに、直線偏光した照明光を、偏光ビームスプリッタを介して照射し、液晶パネルにより変調された反射光束が偏光ビームスプリッタを介して結像光束となる型のもの」が想定され、符号PBが「偏光ビームスプリッタ」を示している。
【0198】
物体側からの光束は第1光学系71、第2光学系72を介して、図示されない平面の投影面(図7に示すスクリーン)上に拡大画像を投射するが、物体の中間像は反射面721と722の間の位置に結像し、反射面722により投影面上に最終像として結像する。
【0199】
「投射されるべき画像を表示する物体」としてはまた、図1に即して示した「ライトバルブ15を、ランプとリフレクタによる発光部11からの光束を照明光学系12により照明する構成のもの」を用いることができる。発光部の具体例としては、ハロゲンランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ、超高圧水銀ランプなどが好適である。照明光学系には「リフレクタにより反射されて指向性を持った光束の強度をライトバルブに対して均一化するインテグレータ光学系」を搭載することもできる。
【0200】
上記物体としてはまた、DMDパネルに対し「斜め入射光学系」や全反射プリズムで、光路分離を行う方式のものを用いることもできる。勿論、LEDアレイやELアレイ、プラズマディスプレイ等の自己発光型の物体を用いることもできる。
【0201】
即ち、図7、図8に示す実施の形態における投射光学系は、1以上のレンズにより構成され、正のパワーを有する第1光学系71と、1枚の第1反射面721と、正のパワーを持つ1枚の第2反射面722を有し、投影面であるスクリーンに近い側から、第1反射面721、第1光学系71、第2反射面722の順に配置されている。
物体像は、一旦中間像として形成された後に最終像として結像されるように構成されている。
また、第1光学系において物体側にもっとも近い屈折力を持った光学要素711の光軸に対して他の光学要素712〜716、721、722が平行偏芯および/またはチルト偏芯している。
【0202】
具体的な実施例は後述する。
【0203】
図12に、画像投射装置の実施の他の形態を示す。図13にその投射光学系の部分を拡大して示す。
図13において、符号100で示す部分は、図6に即して説明した「反射型の液晶パネルに、直線偏光した照明光を、偏光ビームスプリッタを介して照射し、液晶パネル1により変調された反射光束が偏光ビームスプリッタを介して結像光束となる型」の物体側部分であり、反射型の液晶パネルの画像表示面が「被投影物体面」である。図中、符号PBが偏光ビームスプリッタを示す。物体側の構成はこれに限らず、図1に即して説明した「ライトバルブ15を、ランプとリフレクタによる発光部11からの光束を照明光学系12により照明する構成のもの、あるいはこれにインテグレ−タ光学系を付加したもの」を用いることもできるし、DMDパネルに対し斜め入射光学系や全反射プリズムで光路分離を行う方式のものを用いることもでき、LEDアレイやELアレイ、プラズマディスプレイ等の自己発光型の物体を用いることもできる。
【0204】
符号120で示す部分は第1光学系を示し、符号130で示す部分は、第1反射面131、第2反射面132による第2光学系である。
【0205】
第1光学系120はレンズ121〜127により構成されている。レンズ123とレンズ126とは接合レンズであり、全体は9枚のレンズで構成されている。第2光学系130は、1枚の第1反射面131、第2反射面132からなる。
【0206】
即ち、図12、図13に示す投射光学系では、被投影物体面からの光束は、第1光学系120と、2枚の反射面131、132から成る第2光学系130を介して図示されない投影面上に導光されて投影される。
【0207】
第1光学系120は複数の透過型屈折素子121〜127を有し、図示の如く、投影物体面から透過型屈折光学系の第1面(レンズ121の物体側面)までは、図に示されたように「略テレセントリック」であり、第2光学系130における第1、第2反射面131、132の間に、被投影物体面の中間像面が位置し、中間像面における中間像が、第2の反射ミラー132を介して投影面上に正規像として再結像される。
【0208】
後述する例に示すように、第1反射面131は負のパワーの軸対称な反射面であり、第2反射面132は「上下方向と左右方向とでパワーが異なるアナモフィックな多項式自由曲面」であり、第2の反射ミラー132から図示されない投影面に至る光線は投影面の法線に対して傾斜して導光される。
【0209】
そして、第1光学系120は、被投影物体面の法線に対して偏芯するが、第1光学系の有する複数のレンズ121〜127は互いに偏芯することなく構成されている。
【0210】
レンズ123とレンズ126とは接合レンズであり、これら接合レンズ123、126はそれぞれレンズの「群単位」を構成するが、これら接合レンズは「群単位レベルでは互いに偏芯することなく構成」されている。
【0211】
また、第1、第2反射面132、133の間に結像される中間像の像面は図13から分かるように「被投影物体面の中心から射出する光束の主光線に対して傾斜湾曲して」おり、透過屈折光学系の最終面(レンズ127の射出側面)において「被投影物体面の中心から射出した主光線と、被投影物体面の周辺から射出した主光線とが略平行」である。
【0212】
図12の画像投射装置は「フロントプロジェクタ型」であるが、勿論、結像光路内に光を折り曲げる反射鏡を付加することにより「リアプロジェクタ型」とすることも考えられる。
【0213】
以下、具体的な実施例を挙げる。
光学系の諸元において、面番号は物体面(投射されるべき画像が表示される面)を第0面として、以下順次に第1面、第2面・・と数える。全実施例を通じ、第1面および第2面は「偏光ビームスプリッタ」の液晶パネル側および投射光学系側の面である。
【実施例1】
【0214】
実施例1は、先に、図7、図8に示した画像投射装置・投射光学系の具体的な実施例である。即ち、1以上のレンズにより構成され、正のパワーを有する第1光学系71と、第1反射面721、正のパワーを持つ第2反射面722を有する第2の光学系72とを有し、物体面(ライトバルブ)に近い側から第1、第2光学系の順に配置され、物体像が一旦中間像として第1・第2反射面の間の光路上に形成された後に、中間像として結像した後の発散する光束を、正のパワーを持つ第2反射面722で反射することにより、中間像をさらに拡大し、最終像(正規像)として投影面(スクリーン)に投射する構成となっている。
第1の光学系において物体側にもっとも近い屈折力を持った光学要素711の光軸に対して他の光学要素712〜716、721、722が平行偏芯および/またはチルト偏芯している。
中間像の拡大率は3倍程度である。
【0215】
実施例1の諸元を表1に示す。
【0216】
【表1】
【0217】
表1において、シフトとあるのはシフト偏芯量、チルトとあるのはチルト偏芯量を示す。曲率半径、面間隔およびシフト偏芯量の単位は「mm」、チルト偏芯量の単位は「度」である。以下の各実施例においても同様である。
【0218】
第18面である第2の反射ミラーの反射面は前述の式(1)で示される「上下方向と左右方向とでパワーが異なるアナモフィックな多項式自由曲面」であるが、この多項式自由曲面における係数を表2に挙げる。
【0219】
【表2】
【0220】
上記の表記において例えば「1.14641E-11」は「1.14641×10-11」を意味する。以下においても同様である。
【0221】
上記の如く、第1の光学系は7枚のレンズにより構成され、第2の光学系は2面の反射面で構成されているが、反射面721は球面で、反射面722は多項式自由曲面である。
【0222】
正規像の像面(スクリーン)は、図7の左右方向に平行な平面であるが、像高の低い位置(物体に近い側)と高い位置(物体から遠い側)ではスクリーンへ入射する角度の差が大きため「下すぼみの歪んだ投射画像」になりがちであるが、中間像の歪みを逆に設定し、最終像面での歪みを補正した。即ち、中間像の形状において、投影面であるスクリーンへの入射角が最も大きい辺が最も短い。従って、中間像の形状によって最終像の平面方向の形状が補正されている。
【0223】
最終的な像面での「像の歪みの状態」を図11に示す。図11は、対角:略0.9インチの液晶パネルの表示される画像をスクリーン上に60インチ程度に拡大して投射した時のディストーションの様子を示している。図の如く、グリッドの像を略等間隔に形成でき、台形歪みが良好に補正されていることが分かる。投射サイズは1200mm×900mmサイズ、拡大率は65倍以上で、歪みは0.5%以下で非常に良好である。
【実施例2】
【0224】
実施例2は、図9に示す画像投射装置・投射光学系の具体的な実施例である。図9は、画像投射装置の投射光学系部分を拡大して示している。
【0225】
第1光学系81は6枚のレンズ811〜816により構成され、第2の光学系82は2枚の反射面821、822により構成されている。図示されない絞りが、レンズ813とレンズ814の間に配置されている。
【0226】
実施例1と同様、中間像は反射面821、822の中間に、第1光学系81により反転像として形成される。第2光学系82に入射した光束を反射する第1反射面821は正のパワーを持ち、回転対称な非球面形状であり、正のパワーを持つ第2反射面822は多項式自由曲面とした。回転対称な非球面形状の採用により、自由度のより高い設計が可能となった例である。なお、以下に示す具体的データから明らかなように、第1反射面の正のパワーは微弱である。
【0227】
実施例2の諸元を表3に示す。
【0228】
【表3】
【0229】
第16面に用いられている回転対象の非球面は、Zを光軸方向のデプス、cを近軸曲率半径、rを光軸からの光軸直交方向の距離、kを円錐定数、A、B、C、・・等を高次の非球面係数とする周知の非球面式:
Z=c・r2/[1+√{1-(1+k)c2r2}]+Ar4+Br6+Cr8
において、k、A、B、Cを与えて形状を特定する。以下の他の実施例においても同様である。
【0230】
第16面の非球面の係数を表4に与える。
【0231】
【表4】
【0232】
第17面の多項式自由曲面の係数の値を表5に与える。
【0233】
【表5】
【実施例3】
【0234】
実施例3は、図10に示す画像投射装置・投射光学系の具体的な実施例である。
第1光学系91は5枚のレンズ911〜915により構成され、第2光学系92は第1、第2反射面921、922により構成されている。レンズ913は接合レンズである。
図示されない絞りが、レンズ913とレンズ914の間に配置されている。
【0235】
実施例1、2と同様、中間像は反射面921、922の中間に形成される。第1の光学系により中間像が反転像として形成される。また、第2の光学系に入射した光側を最初に反射する正のパワーを有する反射面921は球面形状、反射面922は多項式自由曲面である。
【0236】
実施例3の諸元を表6に示す。
【0237】
【表6】
【0238】
表6から明らかなように、レンズ911の第1面(表6において第3面)は2.2度チルトしているが、このレンズ911の光軸に対し、レンズ912〜915はチルト偏芯せず、レンズ911〜915はレンズ911の光軸に対して平行偏芯しているのみである。
屈折光学系は1組の接合レンズ913を含み、これは1群として作用する。
【0239】
第16面の多項式自由曲面の係数の値を表7に示す。
【0240】
【表7】
【実施例4】
【0241】
実施例4は、上にあげた実施例3と同様の光学系構成(図10)で諸元を異ならせたものである。
【0242】
実施例4の諸元を表8に示す。
【0243】
【表8】
【0244】
第16面の多項式自由曲面の係数の値を表9に示す。
【0245】
【表9】
【実施例5】
【0246】
実施例5も、上にあげた実施例3と同様の光学系構成(図10)で諸元を異ならせたものである。
【0247】
実施例5の諸元を表10に示す。
【0248】
【表10】
【0249】
第16面の多項式自由曲面の係数の値を表11に示す。
【0250】
【表11】
【0251】
上述したように、上記実施例1〜5は、複数のレンズにより構成されて正のパワーを有する第1光学系と、第1反射面と、正のパワーを持つ第2反射面を有し、これらは、投影面に近い側から、第1反射面、第1光学系、第2反射面の順には位置される。
物体像は一旦中間像として形成された後に最終像として結像される。
実施例1〜5の第1光学系は、物体側にもっとも近い屈折力を持った光学要素の光軸に対して、他の光学要素が、1カ所以上において、平行偏芯および/またはチルト偏芯しており、実施例3〜5では、第1光学系91において物体側にもっとも近い、屈折力を持った光学要素911の光軸に対して第1の光学系91の各要素がチルト偏芯していない。
【0252】
また、実施例3〜4では、第1光学系91が2以上の群で構成され、2以上の群のうちの接合レンズとして1つの群をなすレンズ913が平行偏芯している。
【0253】
実施例1〜5とも、第2光学系に含まれる反射面の1以上が自由曲面であり、第2光学系に含まれる反射面のうち、最終像の結像位置から最も遠い第2反射面のみが自由曲面であり、実施例1〜5では、第2光学系に入射した光束が初めに反射される正のパワーを有する反射面が回転対称な面であり、実施例1、3、〜5においては上記回転対称な反射面が球面反射面である。
【0254】
また、実施例1〜5とも第1の光学系が複数のレンズで構成され、第1光学系におけるレンズは、非球面形状を含まない。
【0255】
従って、上記実施例の投射光学系に物体を組み合わせた画像投射装置は、画像投射装置の具体的な実施例を構成する。
【0256】
以下に挙げる実施例6は、先に、図12、図13に即して実施の形態を説明した投射光学系・画像投射装置の具体的実施例である。
【0257】
実施例6の諸元を表12に示す。
【0258】
【表12】
【0259】
第7面と第15面の非球面の係数を表13に与える。
【0260】
【表13】
【0261】
第19面と第21面の多項式自由曲面の係数の値を表14に与える。
【0262】
【表14】
【0263】
実施例6の投射光学系によるスクリーン上におけるMTF性能は周波数:0.5c/mmにおいて60%以上、ディストーションは2%以下である。
参考具体例において正規像を投射するスクリーンのサイズは60インチであり、投射光学系の「スクリーンに直交する方向の最大幅」は472mmである。
【0264】
図14に示す如く、スクリーンに、X方向(左右方向)とY方向(上下方向)とにおいて、±1.0Y、±0.5Y、0.0Y、±1.0X、±0.5X、0.0Xの碁盤状の線を設定し、評価周波数:0.5c/mmに対するMTF値を調べたところ、表15の如くになった。
【0265】
【表15】
【0266】
図15に、X=0.0Xにおける周波数:0〜0.5c/mmの範囲における±1.0Y、0.0Yにおけるサジタル方向(s)およびメリディオナル方向(m)のMTF特性を示す。図16に、X=0.5Xにおける周波数:0〜0.5c/mmの範囲における±1.0Y、0.0Yにおけるサジタル方向(s)およびメリディオナル方向(m)のMTF特性を示す。図17に、X=1.0Xにおける周波数:0〜0.5c/mmの範囲における±1.0Y、0.0Yにおけるサジタル方向(s)およびメリディオナル方向(m)のMTF特性を示す。これらの図から明らかなように、実施例6は良好なMTF特性を有している。
【0267】
実施例6の投射光学系は、反射型光学系は透過型屈折光学系の側から第1、第2の順に配置される2枚の反射面を有し、被投影物体面の中間像面が第1及び第2反射面の間に位置し、第1反射面は負のパワーの軸対称な反射面(第22面)、第2反射面は上下方向と左右方向とでパワーが異なるアナモフィックな多項式自由曲面(第23面)であり、被投影物体面の中間像の、アスペクト比を補正する手段として、透過型屈折光学系内に、上下方向と左右方向とでパワーが異なるアナモフィックな多項式自由曲面(第19面)を有する。
【0268】
また、透過型屈折光学系における被投影物体面側のNA(=0.143)が、中間像面側のNA(=0.01)よりも大きく、中間像の倍率:M1(=1.5)は1〜5の範囲にあり、投影倍率(=75倍)は40以上であり、投影面に対する投射角度:θ(=11度)は5°より大きい。
また、実施例1〜6の投射光学系とも「ライトバルブから発する光線は、投影面から遠い箇所からの光線ほど投影面への入射角が大きい」用に構成されている。
【符号の説明】
【0269】
L1 第1レンズ
L2 第2レンズ
L3 第3レンズ
1 画像表示パネル
2 スクリーン
3 透過光学系
4〜8 反射光学系を構成する反射面
8 回転非対称反射面
9 絞り
I9 絞りの像
【先行技術文献】
【特許文献】
【0270】
【特許文献1】特開2002− 40326号公報
【特許文献2】特開2002−174853号公報
【特許文献3】特公平6−91641号公報
【特許文献4】特開2001−264627号公報
【特許文献5】特開2002−296503号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を形成するライトバルブに光源からの照明光を照射し、前記ライトバルブに形成された画像を平面の投影面に拡大投影する投射光学系であって、
1以上のレンズからなり、前記投影面と前記ライトバルブとの間に、前記画像の中間像を形成するための正のパワーを有する第1光学系と、
前記中間像と前記第1光学系との間に設けられた1枚の第1反射面と、
前記中間像を結像した後の発散する光束を反射し、前記投影面状に結像させるための正のパワーを有する1枚の第2反射面と、を有し、
前記第1反射面、前記第1光学系、第2反射面の順に、前記投影面から近い位置に配置されていることを特徴とする投射光学系。
【請求項2】
画像を形成するライトバルブに光源からの照明光を照射し、前記ライトバルブに形成された画像を平面の投影面に拡大投影する投射光学系であって、
1以上のレンズからなり、前記投影面と前記ライトバルブとの間に、前記画像の中間像を形成するための正のパワーを有する第1光学系と、
前記中間像と前記第1光学系との間に設けられた1枚の第1反射面と、
前記中間像を結像した後の発散する光束を反射し、前記投影面状に結像させるための正のパワーを有する1枚の第2反射面と、を有し、
前記ライトバルブから発する光線は、前記投影面から遠い箇所からの光線ほど前記投影面への入射角が大きいことを特徴とする投射光学系。
【請求項3】
ライトバルブからの光束を投射光学系によってスクリーンに導光し、前記スクリーン上に上記ライトバルブに形成された画像を拡大した最終像を結像させる画像投射装置であって、
投射光学系として、請求項1または2記載の投射光学系を搭載したことを特徴とする画像投射装置。
【請求項1】
画像を形成するライトバルブに光源からの照明光を照射し、前記ライトバルブに形成された画像を平面の投影面に拡大投影する投射光学系であって、
1以上のレンズからなり、前記投影面と前記ライトバルブとの間に、前記画像の中間像を形成するための正のパワーを有する第1光学系と、
前記中間像と前記第1光学系との間に設けられた1枚の第1反射面と、
前記中間像を結像した後の発散する光束を反射し、前記投影面状に結像させるための正のパワーを有する1枚の第2反射面と、を有し、
前記第1反射面、前記第1光学系、第2反射面の順に、前記投影面から近い位置に配置されていることを特徴とする投射光学系。
【請求項2】
画像を形成するライトバルブに光源からの照明光を照射し、前記ライトバルブに形成された画像を平面の投影面に拡大投影する投射光学系であって、
1以上のレンズからなり、前記投影面と前記ライトバルブとの間に、前記画像の中間像を形成するための正のパワーを有する第1光学系と、
前記中間像と前記第1光学系との間に設けられた1枚の第1反射面と、
前記中間像を結像した後の発散する光束を反射し、前記投影面状に結像させるための正のパワーを有する1枚の第2反射面と、を有し、
前記ライトバルブから発する光線は、前記投影面から遠い箇所からの光線ほど前記投影面への入射角が大きいことを特徴とする投射光学系。
【請求項3】
ライトバルブからの光束を投射光学系によってスクリーンに導光し、前記スクリーン上に上記ライトバルブに形成された画像を拡大した最終像を結像させる画像投射装置であって、
投射光学系として、請求項1または2記載の投射光学系を搭載したことを特徴とする画像投射装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−256075(P2012−256075A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−205019(P2012−205019)
【出願日】平成24年9月18日(2012.9.18)
【分割の表示】特願2011−34406(P2011−34406)の分割
【原出願日】平成15年12月8日(2003.12.8)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年9月18日(2012.9.18)
【分割の表示】特願2011−34406(P2011−34406)の分割
【原出願日】平成15年12月8日(2003.12.8)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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