説明

投射型映像表示装置、それに用いる光学ユニット及び偏光分離体

【課題】
投射型映像表示技術において、偏光分離部の光反射や非点収差などを抑えて映像の高画質性を確保可能な技術を提供する。
【解決手段】
偏光分離部に用いる偏光分離体として、格子構造に基づく回折により光を偏光分離する偏光分離面を、プリズム材の間において光透過性の媒質に接して形成した構成とする。また、偏光分離面を、光透過性の基板上に格子状に配列された光反射性の格子部材によって形成し、上記媒質または該基板は、該媒質の光の屈折率をn、該基板の光の屈折率をnとするとき、{(n−n)/(n+n)}が0.003以下となるものを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投射型映像表示装置に関し、特に、液晶パネル等のライトバルブに照射される光及び該ライトバルブで変調された光を偏光分離する偏光分離技術に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に関連した従来技術としては、例えば、特開2001−142028号公報(特許文献1)及び特開2003−131212号公報(特許文献2)に記載されたものがある。特開2001−142028号公報には、偏光分離手段として、2つの直角プリズムの界面に誘電体多層膜である偏光ビームスプリッタ(Polarized Beam Splitter)(以下、PBSという)が形成されたPBSプリズムが記載され、特開2003−131212号公報には、ガラス基板上にワイヤグリッド(金属格子)を所定のピッチ(形成周期)で形成して回折格子としたワイヤグリッド型偏光分離素子が記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開2001−142028号公報
【特許文献2】特開2003−131212号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特開2001−142028号公報記載のPBSプリズムでは、光軸とPBS膜面の法線とで形成する面(主入射面)に平行でない斜め光が入射した場合には、漏れ光が生じて消光比が低下し、コントラストが低下するおそれがある。また、上記特開2003−131212号公報記載のワイヤグリッド型偏光分離素子では、空気層とガラス基板面との境界において、光のガラス基板での反射による明るさの低下や、非点収差による投射レンズの結像性能の低下などが発生し易く、また、投射レンズからライトバルブまでの光学的な距離が長くなり投射レンズの収差補正も困難となる。
本発明の課題点は、上記従来技術の状況に鑑み、投射型映像表示装置において、偏光分離部の光の反射、非点収差、及び、投射レンズからライトバルブまでの光学的な距離の増大を抑えられるようにすることである。
本発明の目的は、上記課題点を解決し、明るく高画質の映像を表示可能な投射型映像表示技術の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題点を解決するために、本発明では、偏光分離部に用いる偏光分離体として、格子構造に基づく回折により光を偏光分離する偏光分離面を、プリズム材の間において光透過性の媒質に接して形成した構成とする。また、上記偏光分離面を、光透過性の基板上に格子状に配列された光反射性の格子部材によって形成し、上記媒質または該基板は、該媒質の光の屈折率をn、該基板の光の屈折率をnとするとき、{(n−n)/(n+n)}が0.003以下となるものを用いる。この値が0.001以下の場合には、さらに優れた偏光分離特性を得ることができる。また、光源側からの光をライトバルブに照射し、映像信号に応じた光学像を形成して拡大投射する投射型映像表示装置またはそれに用いる光学ユニットとしては、該ライトバルブに照射される光及び該ライトバルブで変調された光を、上記偏光分離体により偏光分離し、該偏光分離した光を色合成手段で色合成し、該色合成した光を投射レンズユニットでスクリーン等に拡大投射する構成とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、投射型映像表示技術において、偏光分離部における光の反射や、非点収差などを抑えられ、この結果、明るく、かつ、コントラストの低下なども抑えた高画質の映像が得られる。さらに、投射レンズからライトバルブまでの光学的な距離を短くすることができるため、収差の補正が容易となり、低コストな投射レンズとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を実施するための最良の形態につき、図面を用いて説明する。なお、全図面において同じ構成・機能の構成要素には同一の符号を付す。
図1〜図4は、本発明の第1の実施例としての投射型映像表示装置の説明図である。本第1の実施例は、ライトバルブとして反射型液晶パネルを用いた液晶プロジェクタ装置の場合の例である。図1は、第1の実施例としての投射型映像表示装置の構成例図、図2は、図1の投射型映像表示装置における偏光分離部の構成例図、図3は、図2に示す偏光分離部の偏光分離面構成部を示す図、図4は、図3の偏光分離面構成部における光の透過率特性図である。
【0008】
図1において、11は光源、12は放物反射面形状のリフレクタ、13は、紫外線を除去するための紫外線カットフィルタ、14、15は、集光と平行光化を行うためのコリメートレンズ、16は、複数の矩形状のレンズセルにより構成され複数の2次光源像を形成する第1のマルチレンズアレイ、17は、複数の矩形状のレンズセルにより構成され、第1のマルチレンズアレイ16の個々のレンズセル像を結像させる第2のマルチレンズアレイ、18は、光源側からの光の偏光方向を揃え、P偏光光またはS偏光光を形成する偏光変換部としての偏光変換素子、19、25、26、37は集光レンズ、21は、色分離部としての赤色光反射用ダイクロイックミラー、22は、同じく色分離部としての緑色光反射用ダイクロイックミラー、35はリレーレンズ、36はフィールドレンズ、29は全反射ミラー、33は、赤色光中の赤外線を吸収するための赤外線吸収フィルタ、51は、赤色光用のライトバルブとしての赤色光用の反射型液晶パネル、52は、緑色光用のライトバルブとしての緑色光用の反射型液晶パネル、53は、青色光用のライトバルブとしての青色光用の反射型液晶パネル、71は、透過する赤色光の偏光方向を揃える赤色光用の1/4波長位相差板、72は、同緑色光用の1/4波長位相差板、73は、同青色光用の1/4波長位相差板、41は、入射した光を偏光分離する赤色光用の偏光分離部、42は、同緑色光用の偏光分離部、43は、同青色光用の偏光分離部、401は、赤色光用の1/2波長位相差板、403は、青色光用の1/2波長位相差板である。
【0009】
本実施例では、青色光用の偏光分離部43が、格子構造に基づく回折で光を偏光分離する偏光分離面をプリズム材の間に有し、該偏光分離面が、該プリズム材の間において光透過性の媒質に接して形成された構成を備えているものとし、赤色光用の偏光分離部41及び緑色光用の偏光分離部42は、例えば、有機多層膜を用いた従来の偏光分離構成を有するものとする。411は、偏光分離部41内で赤色光用の偏光分離面を構成する赤色光用の偏光分離面構成部、421は、偏光分離部42内で緑色光用の偏光分離面を構成する緑色光用の偏光分離面構成部、431は、偏光分離部43内で格子構造により青色光用の偏光分離面を構成する青色光用の偏光分離面構成部である。赤色光用の偏光分離部41は、上記赤色光用の反射型液晶パネル51に照射される光及び該反射型液晶パネル51で変調された光をその赤色光用の偏光分離面構成部411の偏光分離面により偏光分離し、緑色光用の偏光分離部42は、上記緑色光用の反射型液晶パネル52に照射される光及び該反射型液晶パネル52で変調された光をその緑色光用の偏光分離面構成部421の偏光分離面により偏光分離し、青色光用の偏光分離部43は、上記青色光用の反射型液晶パネル53に照射される光及び該反射型液晶パネル53で変調された光をその青色光用の偏光分離面構成部431の偏光分離面により偏光分離する。また、80は、色合成部としてのクロスダイクロイックプリズム、801、802はそれぞれ、クロスダイクロイックプリズム80のダイクロイック面、90は、色合成された光をスクリーン等に拡大投射するための投射レンズユニット、100は、映像信号に応じて上記反射型液晶パネル51、52、53のそれぞれを駆動する駆動回路である。
【0010】
上記図1の構成において、光源11から出射した光は、放物反射面形状のリフレクタ12で反射され、紫外線カットフィルタ13に入射する。紫外線カットフィルタ13で紫外線を除去された光は、コリメートレンズ14、15で平行光化され、第1のアレイレンズ16、第2のアレイレンズ17を通って、複数の2次光源像を結像する。該結像光は、偏光変換素子18に入射され、該偏光変換素子18内で偏光ビームスプリッタ(図示なし)により白色光のP偏光光とS偏光光とに分離され、同じく該偏光変換素子18内で1/2波長位相差板(図示なし)により、該分離されたP偏光光が偏光方向を回転されてS偏光光とされ、上記偏光ビームスプリッタで分離されたS偏光光と併せ、集光レンズ19を経て赤色光反射用ダイクロイックミラー21に入射される。該赤色光反射用ダイクロイックミラー21では、その色分離膜において、白色光のS偏光光のうち赤色光のS偏光光が反射され、緑色光+青色光のS偏光光が透過される。反射された赤色光のS偏光光は、リレーレンズ35を経て全反射ミラー29で反射され、フィールドレンズ36、赤外線吸収フィルタ33、集光レンズ37を通って赤色光用の偏光分離部41に入射される。
【0011】
赤色光用の偏光分離部41内では、該赤色光のS偏光光は、赤色光用の偏光分離面構成部411の有機多層膜による偏光分離面で偏光分離されながら反射される。該反射された赤色光のS偏光光は、赤色光用の1/4波長位相差板71で偏光方向を揃えられ、赤色光用の反射型液晶パネル51に照射される。駆動回路100により駆動される該反射型液晶パネル51では、該照射された赤色光のS偏光光が映像信号に応じて変調されかつ反射されて、赤色光のP偏光光として出射される。該出射された赤色光のP偏光光は、1/4波長位相差板71を通った後、再び偏光分離部41に入射される。該赤色光用の偏光分離部41内では、該赤色光のP偏光光は、赤色光用の偏光分離面構成部411の偏光分離面を透過する。該透過した該赤色光のP偏光光は、偏光分離部41内のプリズム材部分を経て該偏光分離部41から出射され、1/2波長位相差板401を通過するときS偏光光に変換され、クロスダイクロイックプリズム80に入射される。該クロスダイクロイックプリズム80内では、該赤色光のS偏光光はダイクロイック面801で反射される。
【0012】
一方、赤色光反射用ダイクロイックミラー21を透過した緑色光+青色光のS偏光光は、緑色光反射用ダイクロイックミラー22に入射する。緑色光反射用ダイクロイックミラー22では、その色分離膜において、緑色光が反射され、青色光が透過される。反射された緑色光は、集光レンズ26を通って緑色光用の偏光分離部42に入射される。該緑色光用の偏光分離部42内では、緑色光用の偏光分離面構成部421の有機多層膜による偏光分離面で偏光分離されながら反射される。該反射された緑色光のS偏光光は、緑色光用の1/4波長位相差板72で偏光方向を揃えられ、緑色光用の反射型液晶パネル52に照射される。駆動回路100により駆動される該反射型液晶パネル52では、該照射された緑色光のS偏光光が映像信号に応じて変調されかつ反射され、緑色光のP偏光光として出射される。該出射された緑色光のP偏光光は、1/4波長位相差板72を通った後、再び偏光分離部42に入射される。該緑色光用の偏光分離部42内では、該緑色光のP偏光光は、緑色光用の偏光分離面構成部421の偏光分離面を透過する。該透過した該緑色光のP偏光光は、偏光分離部42内のプリズム材部分を経て該偏光分離部42から出射され、クロスダイクロイックプリズム80に入射される。該クロスダイクロイックプリズム80内では、該緑色光のP偏光光はダイクロイック面801、802を透過する。
【0013】
また、緑色光反射用ダイクロイックミラー22を透過した青色光のS偏光光は、集光レンズ25を通り、青色光用の偏光分離部43に入射される。該青色光用の偏光分離部43内では、該青色光のS偏光光は、青色光用の偏光分離面構成部431の偏光分離面で格子構造に基づく回折により偏光分離されながら反射される。該反射された青色光のS偏光光は、青色光用の1/4波長位相差板73で偏光方向を揃えられ、青色光用の反射型液晶パネル53に照射される。駆動回路100で駆動される該反射型液晶パネル53では、該照射された青色光のS偏光光が映像信号に応じて変調されかつ反射され、青色光のP偏光光として出射される。該出射された青色光のP偏光光は、1/4波長位相差板73を通った後、再び偏光分離部43に入射される。該青色光用の偏光分離部43内では、該青色光のP偏光光は、青色光用の偏光分離面構成部431の偏光分離面を透過する。該透過した該青色光のP偏光光は、1/2波長位相差板403を通過するときS偏光光に変換され、偏光分離部43内のプリズム材部分を経て該偏光分離部43から出射され、クロスダイクロイックプリズム80に入射される。該クロスダイクロイックプリズム80内では、該青色光のS偏光光はダイクロイック面802で反射される。
【0014】
上記クロスダイクロイックプリズム80内では、上記偏光分離部41から出射された赤色光のS偏光光と、上記偏光分離部42から出射された緑色光のP偏光光と、上記偏光分離部43から出射された青色光のS偏光光とが互いに色合成され、白色光の光学像光として出射される。該出射された光学像光は投射レンズユニット90に入射され、スクリーン等に拡大投射されて映像表示が行われる。この時、スクリーン等での反射むらを軽減するために、クロスダイクロイックプリズム80の出射面に1/4波長位相差板を設けて、青、赤、緑の色光全てを円偏光にするとよい。
【0015】
以下の説明中で用いる図1の構成要素には、該図1で用いた符号と同じ符号を付して用いる。
【0016】
図2は、上記図1の投射型映像表示装置における青色光用の偏光分離部43を構成する偏光分離体の構成例図である。本構成例の場合、青色光用の偏光分離部43は、偏光分離面が、光透過性の基板上に格子状に配列された光反射性の格子部材(ワイヤグリッド)により形成され、かつ、該格子部材と該基板との間に、該格子部材面及び該基板面に接して光透過性の媒質が充填されている。
図2において、43Aは青色光用の偏光分離体、43a、43bはプリズム材、431は偏光分離面構成部、431aは格子状に配列された光反射性の格子部材(ワイヤグリッド)、431b、431bはそれぞれ、上記格子部材431aが平面上に配された光透過性の基板、431cは、光反射性の格子部材431aと基板431b、431bとの間にあって、格子部材431aの面及び光透過性の基板431b、431bの面に接して充填されている光透過性の媒質、432は、基板431bとプリズム材43aとの間及び基板431bとプリズム材43bとの間に配された光透過性の媒質である。偏光分離面構成部431は、上記基板431b、431bと、上記光反射性の格子部材431aと、上記光透過性の媒質431cとを備えて成る。媒質431cと媒質432は同じ材質のものであってもよいし、異なる材質のものであってもよい。本第1の実施例の場合は、媒質431cと媒質432とに同じ材質の接着剤または粘着剤を用い、媒質431cは基板431b、431b間を接着または粘着剤で固定し、媒質432は、基板431bとプリズム材43aとの間及び基板431bとプリズム材43bとの間をそれぞれ接着または粘着剤で固定するものとする。
【0017】
図3は、偏光分離面構成部431の斜視図である。2枚の光透過性の基板431b、431b間に、光反射性の格子部材431aが格子状に配列され、光透過性の媒質431cが格子部材431aの面及び光透過性の基板431b、431bの面に接して充填されている。媒質431cと基板431b、431bとは、それぞれの光の屈折率が互いに等しいことが光の偏光分離処理上望ましいが、媒質431cの光の屈折率をn、基板431b、431bの光の屈折率をnとしたとき、{(n−n)/(n+n)}が0.003以下となる範囲内にあれば、該屈折率nと該屈折率をnとが互いに等しい場合と略同等の偏光分離性能が得られる。また、これが0.001以下であれば、さらに優れた偏光分離特性が得られる。基板431b、431bとしては、例えば、ガラス基板、水晶基板、サファイア基板または酸化マグネシウム(MgO)基板などを用いる。水晶基板、サファイア基板または酸化マグネシウム(MgO)基板は、ガラス基板に比べて耐熱性が高くかつ熱伝導性が良い。特に、酸化マグネシウム(MgO)基板の場合は、光軸に対する軸調整が不要となる。
【0018】
図4は、上記図3の偏光分離面構成部431の光の透過率特性を示す図である。
図4の特性から、偏光分離面構成部431の光の透過率は、波長帯域600×10−9m以上の青色光の場合は約95%超、波長帯域500×10−9m以上の緑色光の場合も約95%以上となる。このため、偏光分離処理時の青色光の損失は5%未満であり、実用上全く支障ないレベルである。
上記第1の実施例の投射型映像表示装置によれば、光の反射や、非点収差などが抑えられ、この結果、明るく、コントラストの低下なども抑えた高画質の映像が得られる。さらに、投射レンズとライトバルブの間の光学的距離を短くすることができるため、投射レンズの収差補正が容易となり、投射レンズのコスト低減も可能となる。
【0019】
なお、上記第1の実施例の投射型映像表示装置では、青色光用の偏光分離部43だけが、格子構造に基づく回折で光を偏光分離する構成を有するとしたが、本発明はこれに限定されず、例えば、該青色光用の偏光分離部43と併せ、緑色光用の偏光分離部42も該格子構造に基づく回折で光を偏光分離する構成を有するようにしてもよいし、青色光用の偏光分離部43、緑色光用の偏光分離部42及び赤色光用の偏光分離部41がそれぞれ、格子構造に基づく回折で光を偏光分離する構成を備えるようにしてもよい。また、第1の実施例の投射型映像表示装置の上記偏光変換素子18では、その内部で分離したP偏光光をS偏光光とし白色光のS偏光光を出射するとしたが、これとは逆に、分離したS偏光光をP偏光光とし白色光のP偏光光を出射する構成としてもよい。また、第1の実施例の投射型映像表示装置では、ライトバルブとして、反射型液晶パネルを用いたが、透過型液晶パネルを用いてもよいし、または液晶パネル以外のライトバルブであってもよい。
【0020】
図5は、格子構造に基づく回折で光を偏光分離する構成を有する偏光分離体の第2の実施例と第3の実施例を示す図である(図2の偏光分離体43Aを青色光用の偏光分離体の第1の実施例とする)。本実施例は、偏光分離面構成部の基板をプリズム材43a、43bの表面よりも突出させた場合であり、(a)は、第2の実施例であって、偏光分離面構成部の2枚の基板431b、431bを突出させた場合、(b)は、第3の実施例であって、2枚の基板431b、431bのうちの一方の基板431bだけを突出させた場合である。
【0021】
図5(a)において、43Bは青色光用の偏光分離体、431b11、431b12はそれぞれ、基板431bがプリズム材43aよりも突出した部分、431b21、431b22はそれぞれ、基板431bがプリズム材43bよりも突出した部分である。他の符号は、上記図2の場合と同様である。基板431b及び基板431bはそれぞれ、プリズム材43a、43bに対し、紙面に直角な方向にも突出しているものとする。基板431b、431bとしては、例えば、ガラス基板、水晶基板、サファイア基板または酸化マグネシウム(MgO)基板などを用いる。また、媒質431cと基板431b、431bとは、媒質431cの光の屈折率をn、基板431b、431bの光の屈折率をnとしたとき、{(n−n)/(n+n)}が0.003以下となる範囲内にあるものとする。これが0.001以下であれば、より優れた偏光分離特性が得られる。かかる図5(a)の構成により、プリズム材43a、43bの表面よりも突出した部分には冷却風を当てることができるため、偏光分離体43Bの全体や偏光分離面構成部431の冷却効率を向上させることができる。光透過性の媒質431cは、突出した部分431b11と同431b12との間にも充填してもよい。
【0022】
図5(b)において、43Cは青色光用の偏光分離体、他の符号は、図5(a)の場合と同様である。この場合も、基板431b、431bとしては、例えば、ガラス基板、水晶基板、サファイア基板または酸化マグネシウム(MgO)基板などを用いるものとする。また、媒質431cと基板431b、431bとは、媒質431cの光の屈折率をn、基板431b、431bの光の屈折率をnとしたとき、{(n−n)/(n+n)}が0.003以下を満たす関係にあるものとし、該値を0.001以下とした場合には、より優れた偏光分離特性が得られる。かかる図5(b)の構成によっても、プリズム材43aよりも突出した部分には冷却風を当てることができるため、偏光分離体43C全体や偏光分離面構成部431などの冷却効率を向上させることができる。
【0023】
上記図5の偏光分離体を用いて偏光分離部を形成した投射型映像表示装置においても、光の反射や、非点収差などを抑えられ、この結果、明るく、かつ、色むらの増大やコントラストの低下などを抑えた高画質の映像が得られる。また、上記のように、偏光分離体全体や偏光分離面構成部などの冷却効率を向上させることができる。
【0024】
図6は、格子構造に基づく回折で光を偏光分離する構成を有する偏光分離体の第4の実施例を示す図である。本実施例は、偏光分離面構成部に1枚の基板を用いた場合の例である。
【0025】
図6において、43Dは青色光用の偏光分離体、431bは、偏光分離面構成部431を形成する1枚の基板である。他の符号は、図5の場合と同様である。本実施例構成においては、偏光分離面構成部431は、光反射性の格子部材431a、基板431b及び媒質432で構成される。この場合も、基板431bとしては、例えば、ガラス基板、水晶基板、サファイア基板または酸化マグネシウム(MgO)基板などを用いる。また、媒質432と基板431bとは、媒質432の光の屈折率をn、基板431bの光の屈折率をnとしたとき、{(n−n)/(n+n)}が0.003以下を満たす関係にあるものとし、該値を0.001以下とした場合には、より優れた偏光分離特性が得られる。
上記図6の偏光分離体を用いて偏光分離部を形成した投射型映像表示装置においても、光の反射や、非点収差などを抑えられ、明るく、かつ、色むらの増大やコントラストの低下などを抑えた高画質の映像が得られる。
【0026】
図7は、格子構造に基づく回折で光を偏光分離する構成を有する第5の実施例を示す図である。本実施例は、偏光分離面構成部に1枚の基板を用いかつ該基板をプリズム材の表面よりも突出させた場合の例である。(a)は平面図、(b)は斜視図である。
図7において、43Eは青色光用の偏光分離体、431b11は、基板431bがプリズム材43a、43bよりも突出した部分である。他の符号は、図5や図6の場合と同様である。本実施例構成においても、偏光分離面構成部431は、光反射性の格子部材431a、基板431b及び媒質432で構成される。この場合も、基板431bとしては、例えば、ガラス基板、水晶基板、サファイア基板または酸化マグネシウム(MgO)基板などを用いるものとする。また、媒質432と基板431bとは、媒質432の光の屈折率をn、基板431bの光の屈折率をnとしたとき、{(n−n)/(n+n)}が0.003以下を満たす関係にあるものとし、該値を0.001以下とした場合には、より優れた+が得られる。かかる図7の構成によっても、プリズム材43a、43bよりも突出した部分431b11には冷却風を当てることができるため、偏光分離体43E全体や偏光分離面構成部431などの冷却効率を向上させることができる。
上記図7の偏光分離体を用いて偏光分離部を形成した投射型映像表示装置においても、光の反射や非点収差などを抑えられ、この結果、明るく、かつ、色むらの増大やコントラストの低下などを抑えた高画質の映像が得られる。また、上記のように、偏光分離体43E全体や偏光分離面構成部431などの冷却効率を向上させることができる。
【0027】
上記図5〜図7の構成及びその説明ではそれそれ、青色光用の偏光分離部43に用いる偏光分離体の場合につき説明したが、さらに、青色光用の偏光分離部43と緑色光用の偏光分離部42との双方に、かかる格子構造に基づく回折で光を偏光分離する構成の偏光分離体を用いるとした場合や、青色光用の偏光分離部43、緑色光用の偏光分離部42及び赤色光用の偏光分離部41の全偏光分離部に、かかる格子構造に基づく回折で光を偏光分離する構成の偏光分離体を用いるとした場合も同様である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1の実施例としての投射型映像表示装置の構成例図である。
【図2】図1の投射型映像表示装置の偏光分離部の構成例図である。
【図3】図2の偏光分離部の偏光分離面構成部を示す図である。
【図4】図3の偏光分離面構成部における光の透過率特性図である。
【図5】偏光分離体の第2、第3の実施例図である。
【図6】偏光分離体の第4の実施例図である。
【図7】偏光分離体の第5の実施例図である。
【符号の説明】
【0029】
11…光源、
12…リフレクタ、
13…紫外線カットフィルタ、
16…第1のマルチレンズアレイ、
17…第2のマルチレンズアレイ、
14、15…コリメートレンズ、
18…偏光変換素子、
19、25、26、37…集光レンズ、
21、22…ダイクロイックミラー、
29…全反射ミラー、
33…赤外線吸収フィルタ、
35…リレーレンズ、
36…フィールドレンズ、
401、403…1/2波長位相差板、
41、42、43…偏光分離部、
43A、43B、43C、43D、43E…偏光分離体、
411、421、431…偏光分離面構成部、
51、52、53…反射型液晶パネル、
71、72、73…1/4波長位相差板、
401、403…1/2波長位相差板、
41、42、43…偏光分離部、
43A、43B、43C、43D、43E…偏光分離体、
411、421、431…偏光分離面構成部、
80…クロスダイクロイックプリズム、
801、802…ダイクロイック面、
90…投射レンズユニット、
100…駆動回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源側からの光をライトバルブで映像信号に応じて変調し光学像を形成して、拡大投射する投射型映像表示装置であって、
光源側からの光の偏光方向を揃え、P偏光光またはS偏光光を形成する偏光変換部と、
上記偏光変換された偏光光を、赤、緑、青の各色光に分離する色分離部と、
上記分離された各色光の偏光光が照射され、映像信号に基づき該偏光光を変調するライトバルブと、
格子構造に基づく回折により光を偏光分離する偏光分離面が、プリズム材の間において光透過性の媒質に接して形成され、上記ライトバルブに照射される光及び該ライトバルブで変調された光を偏光分離する偏光分離部と、
上記偏光分離された光を色合成する色合成部と、
上記色合成された光を拡大投射する投射レンズユニットと、
上記ライトバルブを駆動する駆動回路と、
を備えた構成を特徴とする投射型映像表示装置。
【請求項2】
上記偏光分離部は、光透過性の基板上に格子状に配列された光反射性の格子部材により形成され、かつ、該格子部材と該基板との間に、該格子部材面及び該基板面に接して光透過性の媒質が充填された構成である請求項1に記載の投射型映像表示装置。
【請求項3】
上記偏光分離部は、上記光透過性の基板が、上記格子部材をはさんでその両側に配された構成である請求項2に記載の投射型映像表示装置。
【請求項4】
上記偏光分離部は、上記基板が、上記プリズム材の表面よりも突出した構成である請求項1から3のいずれかに記載の投射型映像表示装置。
【請求項5】
上記偏光分離部は、上記偏光分離面が、光透過性の基板上に格子状に配列された光反射性の格子部材により形成され、かつ、該格子部材と該基板との間に、該格子部材面及び該基板面に接して光透過性の媒質が充填され、該媒質の光の屈折率をn、上記基板の光の屈折率をnとするとき、
{(n−n)/(n+n)}≦0.003
を満たす構成である請求項1に記載の投射型映像表示装置。
【請求項6】
上記光透過性の媒質は、接着剤または粘着剤である請求項1に記載の投射型映像表示装置。
【請求項7】
プリズム材の間に偏光分離面を有し、入射光を偏光分離する偏光分離体であって、
上記偏光分離面が、光透過性の基板上に格子状に配列された光反射性の格子部材により形成され、かつ、該格子部材と該基板との間に、該格子部材面及び該基板面に接して光透過性の媒質が充填された構成であることを特徴とする偏光分離体。
【請求項8】
上記媒質または上記基板は、該媒質の光の屈折率をn、上記基板の光の屈折率をnとするとき、
{(n−n)/(n+n)}≦0.003
を満たす請求項7に記載の偏光分離体。
【請求項9】
光源側からの光を偏光変換してライトバルブに照射し、映像信号に応じた光学像を形成して拡大投射する投射型映像表示装置用の光学ユニットであって、
格子構造に基づく回折により光を偏光分離する偏光分離面が、プリズム材の間において光透過性の媒質に接して形成され、上記ライトバルブに照射される光及び該ライトバルブで変調された光を偏光分離する偏光分離部と、
上記偏光分離された光を色合成する色合成部と、
上記色合成された光を拡大投射する投射レンズユニットと、
を備えた構成を特徴とする光学ユニット。
【請求項10】
光源側からの光をライトバルブで映像信号に応じて変調し光学像を形成して、拡大投射する投射型映像表示装置であって、
光源側からの光の偏光方向を揃え、P偏光光またはS偏光光を形成する偏光変換部と、
上記偏光変換された偏光光を、赤、緑、青の各色光に分離する色分離部と、
上記分離された各色光の偏光光が照射され、映像信号に基づき該偏光光を変調するライトバルブと、
上記偏光分離面が、光透過性の基板上に格子状に配列された光反射性の格子部材により形成され、かつ該格子部材と該基板との間に、該格子部材面及び該基板面に接して光透過性の媒質が充填され、該媒質の光の屈折率をn、上記基板の光の屈折率をnとするとき、{(n−n)/(n+n)}≦0.003の関係を満たす構成を有し、上記ライトバルブに照射される光及び該ライトバルブで変調された光を偏光分離する偏光分離部と、
上記偏光分離された光を色合成する色合成部と、
上記色合成された光を拡大投射する投射レンズユニットと、
を備えた構成を特徴とする光学ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−301338(P2006−301338A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−123452(P2005−123452)
【出願日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】