説明

投射型表示装置

【課題】LEDの発熱が少なく、表示される映像の色域が拡大でき、表示される映像の階調制御が容易で、明るい投射映像を得る。
【解決手段】周波数決定部33は、映像信号から抽出された階調信号と、色度情報や輝度情報から設定された混合比率信号に基づいて、周波数信号を生成する。LED駆動パルス生成部31では、周波数信号と同期信号に基づいてLEDパルス信号を生成する。LED駆動回路32では、LEDパルス信号に基づいて階調信号に応じたパルス幅のパルス信号であるLED駆動信号を生成しLED光源2r,2g,2bに出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長の異なる複数の光源と1個の光変調素子とを用いフィールドシーケンシャル駆動で画像を投射する際に、投射画像の階調に関わらず色度の変動の少ない映像を投射することができる投射型表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
小型で大画面の映像を表示する装置として、1個の光変調素子を用いフィールドシーケンシャル駆動をおこなう方式の投射型表示装置が知られている。
投射型表示装置は、光源からの照明光を液晶表示素子に照射し、液晶表示素子に表示されている画像をスクリーン上に拡大投射するものである。
【0003】
近年、LEDやレーザなどの半導体光源が高輝度化し投射型表示装置の光源として用いる検討がおこなわれている。
半導体光源は、光源の高速制御が可能な点や、小型軽量で長寿命な点から実用化に向けての検討が盛んになっている。
また、半導体光源の高速制御性を利用して、1個の光変調素子を用いるフィールドシーケンシャル駆動の検討もおこなわれている。
LED光源を用い、フィールドシーケンシャル駆動により映像を表示する投射型表示装置が特許文献1に記載されている。
【0004】
特許文献1には、概ね以下の内容が開示されている。
特許文献1に記載の表示装置は、赤(R)、緑(G)及び青(B)の各LEDと、1つの空間変調素子と光源調整部とを備える。映像の1フレームは、R光、G光及びB光に対応して3つのサブフレームに分割され、各サブフレームには、R、G及びBの各映像信号が空間変調素子に供給される。R、G及びBの各LEDは高速で駆動されている。光源調整部は、映像を目標色空間とするため、R、G及びBの各LEDのそれぞれの発光量の混合比を決定し、この混合比に基づいてR、G及びBの各LEDそれぞれに流すLED駆動電流を設定する。
サブフレーム毎に、G及びBの各LEDそれぞれに流すLED駆動電流を調整することにより、色空間を所望の位置に設定して色域調整がおこなうと共に、空間変調素子に照射する光の輝度を高め明るい投射映像得ることができる。
【0005】
【特許文献1】特開2006-330177号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1記載の表示装置に用いられる空間変調素子は、表示される映像の階調を空間変調素子に印加する電圧量あるいは電流量で制御するアナログ駆動の空間変調素子を利用している。
しかしながら、アナログ駆動の空間変調素子は、次にあげるような課題を有している。アナログ駆動の空間変調素子は、ディスクリネーションと呼ばれる配向欠陥が生じやすく、映像のコントラストを向上することが困難である。また、アナログ駆動の空間変調素子は、駆動回路の構造が複雑であり生産性を高めることが困難であり、コストが高くなってしまう。更に、アナログ駆動の空間変調素子は、液晶に印加する電圧が対象に印加されず一方の電極側に偏ってしまい、液晶に直流成分が加えられ焼き付きと呼ばれる不良が発生しやすい。
【0007】
更に、特許文献1記載のLED光源は、駆動方法として連続的に電圧を印加する連続駆動を用いている。連続駆動の場合、長時間駆動することにより発熱による発光効率の低下がおき、中心波長が移動するため表示する映像の色合いが変化する虞がある。
【0008】
そこで、本発明は、LEDの発熱の少ない駆動方法用いると共に、アナログ駆動の空間変調素子の課題を改善し、表示される映像の色度の拡大、及び表示される映像の階調制御を容易にし、明るい投射映像を得ることができる投射型表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は、次の1)乃至5)を提供する。
1)パルス駆動で駆動され、それぞれ波長の異なる光を発光する複数の半導体光源(2r,2g,2b)と、素子駆動信号に基づいてパルス駆動され、入射した前記半導体光源(2r,2g,2b)からの光を光変調して出力する空間変調素子(5)と、映像信号から同期信号を抽出して出力すると共に、前記映像信号から前記素子駆動信号を生成して前記空間変調素子(5)に対して出力する素子駆動回路(21)と、前記素子駆動回路(21)から出力した前記同期信号に基づいて前記映像信号に同期した光源駆動パルス信号を生成する光源駆動パルス生成部(31)と、前記光源駆動パルス生成部(31)から出力した前記光源駆動パルス信号に基づいて前記半導体光源(2r,2g,2b)を駆動する光源駆動信号を出力する光源駆動回路(32)と、を備えることを特徴とする投射型表示装置(1)。
2)パルス駆動で駆動され、それぞれ波長の異なる光を発光する複数の半導体光源(2r,2g,2b)と、素子駆動信号に基づいてパルス駆動され、入射した前記半導体光源(2r,2g,2b)からの光を光変調して出力する空間変調素子(5)と、 映像信号から階調信号を抽出して、前記映像信号及び前記階調信号を出力する階調信号抽出部(22)と、前記映像信号から前記素子駆動信号を生成し、前記空間変調素子(5)に対し出力する素子駆動回路(21)と、前記複数の半導体光源(2r,2g,2b)から射出する光を混色する際の混合比率の情報を含む混合比率信号と、前記階調信号抽出部(22)から出力された階調信号とに基づいて前記複数の半導体光源(2r,2g,2b)をパルス駆動するパルス情報を決定し、周波数信号として出力する周波数決定部(33)と、前記周波数決定部(33)から出力した前記周波数信号に基づいて半導体光源(2r,2g,2b)を駆動する光源駆動信号を出力する光源駆動回路(32)と、を備え、前記パルス情報には、前記複数の半導体光源(2r,2g,2b)のそれぞれに対応したパルス数,パルス周波数及びパルス幅の情報を含み、前記パルス幅は、前記混合比率信号に基づいて制御されることを特徴とする投射型表示装置(1)。
3)混合比率設定部(34)を更に備え、前記混合比率設定部(34)は、希望する色域に関する色度情報、あるいは目標とする輝度に関する輝度情報に基づいて前記複数の半導体光源(2r,2g,2b)から射出する光を混色する際の混合比率の情報を含む混合比率信号を設定することを特徴とする2)記載の投射型表示装置(1)。
4)前記素子駆動回路(21)は、入力する前記映像信号から同期信号を生成して出力し、前記周波数決定部(33)から出力した前記周波数信号と、前記素子駆動回路(21)から出力した前記同期信号とに基づいて光源駆動パルス信号を生成する光源駆動パルス生成部(31)を備え、前記光源駆動回路(32)は、前記光源駆動パルス生成部(31)で生成された前記光源駆動パルス信号に基づいて光源駆動信号を生成し、前記素子駆動信号と同期して前記半導体光源(2r,2g,2b)を発光させることを特徴とする2)または3)記載の投射型表示装置(1)。
5)前記空間変調素子(5)は1個であり、前記素子駆動信号は、投影画像の1フレームが前記複数の半導体光源(2r,2g,2b)の個数に対応した数のサブフレームに分割された時分割駆動用の信号であり、前記複数の半導体光源は(2r,2g,2b)、対応するサブフレームに応じて発光することを特徴とする2)乃至4)のいずれか1項に記載の投射型表示装置(1)。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、LEDの発熱の少ない駆動方法用いると共に、アナログ駆動の空間変調素子の課題を改善し、表示される映像の色域の拡大、及び表示される映像の階調制御を容易にし、明るい投射映像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施形態の投射型表示装置の構成を示す概略図である。
【図2】第1の実施形態の投射型表示装置の空間変調素子の駆動方法を示す説明図である。
【図3】第1の実施形態の投射型表示装置の半導体光源の駆動方法を示す説明図である。
【図4】第1の実施形態の投射型表示装置の制御部の詳細を説明するブロック図である。
【図5】第1の実施形態の投射型表示装置の光源駆動信号及び素子駆動信号の概略を説明するタイミングチャートである。
【図6】第1の実施形態の投射型表示装置で混色させた場合の光源駆動信号及び素子駆動信号の概略を説明するタイミングチャートである。
【図7】第2の実施形態の投射型表示装置の半導体光源の駆動方法を示す説明図である。
【図8】第2の実施形態の投射型表示装置の制御部の詳細を説明するブロック図である。
【図9】第2の実施形態の投射型表示装置で混色させた場合の光源駆動信号及び素子駆動信号の概略を説明するタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係る投射型表示装置の実施形態について、図面を参照して説明する。
なお、全図において、共通な機能を有する部品には同一符号を付して示し、一度説明したものに関しては、繰り返した説明を省略する。
【0013】
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態の投射型表示装置1の構成を示す概略図である。
投射型表示装置1は、半導体光源2と、照明光学系3と、偏光分離素子4と、空間変調素子5と、投射光学系6と、制御部7とを有する。
【0014】
半導体光源2は、赤色(R)光を発光するR光用半導体光源2rと、緑色(G)光を発光するR光用半導体光源2gと、青色(B)光を発光するB光用半導体光源2bと、放熱機能を備えたベース21とを有し、各色用半導体光源2r,2g,2bはベース21に固定されている。各色用半導体光源2r,2g,2bとしては、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)や半導体レーザが用いられる。ここでは、LEDを用いた場合について説明する。
照明光学系3は、複数の光学素子からなり、半導体光源2を発光した各色光の照明光が入射し入射した照明光の照度むらを低減すると共に、照明光の光束の大きさを空間変調素子5の大きさに合わせるように調整する。
【0015】
偏光分離素子4は、入射する光束に対して45度傾斜して配置される偏光分離面41を備える。入射した光束は、偏光分離面41において所定の角度である第1の直線偏光が透過され、第1の直線偏光と直交する第2の直線偏光が反射される。偏光分離素子4としては、偏光ビームスプリッター(PBS:Polarizing Beam Splitter)やワイヤグリッド偏光板が用いられる。ここでは、PBS4を用いた場合について説明する。
【0016】
空間変調素子5は、偏光分離素子4から入射した第1の直線偏光を、制御部7から入力した素子駆動信号に基づいて光変調すると共に反射し、変調光として偏光分離素子4に対して射出する。空間変調素子5としては、反射型あるいは透過型の液晶素子やデジタル・マイクロミラー・デバイスが用いられる。ここでは、空間変調素子5として反射型液晶素子5を用いた場合について説明する。
投射光学系6は、入射した光を拡大し図示しないスクリーンに対して映像を拡大投射する
【0017】
制御部7は、素子制御部11と、光源(LED)制御部12と、電源回路部13を有する。
素子制御部11は、外部から入力した映像信号に基づいて、空間変調素子5を光変調する際の素子駆動信号を出力する。LED制御部12は、各色用半導体光源2r,2g,2bを駆動する光源(LED)駆動信号を出力する。電源回路部13は、素子制御部11及びLED制御部12に対して、素子駆動信号及び光源駆動信号を生成するための電源をそれぞれ供給する。
【0018】
次に、半導体光源2を発光した光の経路について説明する。
LED制御部12入力した光源駆動信号に基づいて各色用半導体光源2r,2g,2bは、R光,G光及びB光を発光する。発光された各色光は、照明光として照明光学系3に入射する。
照明光学系3に入射した照明光は、照明光の照度むらを低減すると共に、照明光の光束の大きさを空間変調素子5の大きさに合わせるように調整され射出する。
【0019】
照明光学系3を射出した照明光は、偏光分離素子4に入射し、入射した照明光の光束に対して45度傾斜した偏光分離面41において第2の直線偏光であるS偏光が反射され、第1の直線偏光であるP偏光のみが透過する。ここでは、P偏光を第1の直線偏光とし、S偏光を第2の直線偏光とした場合について説明したが、S偏光を第1の直線偏光とし、P偏光を第2の直線偏光としてもよい。
【0020】
偏光分離素子4を透過したP偏光は、反射型液晶素子5に入射する。反射型液晶素子5は、外部から入力する映像信号に基づいて素子制御部11から出力した素子駆動信号によりP偏光を光変調し、変調光として反射して射出する。
反射型液晶素子5で反射した変調光は、再び偏光分離素子4に入射し、偏光分離面41で変調光のうちの変調成分であるS偏光が反射し、90度折り曲げられ偏光分離素子4から射出する。
【0021】
偏光分離面41で反射したS偏光は、偏光分離素子4から射出し、投射光学系6に入射する。投射光学系6に入射したS偏光は、映像光として投射光学系6で拡大され投射される。
【0022】
次に、図2を用いて第1の実施形態の投射型表示装置1に用いる反射型液晶素子5の駆動方法について説明する。
図2(a)は、一般的なアナログ駆動を用いる反射型液晶素子5の駆動方法を示しており、所定周期(1フレーム)の交流電圧で液晶が変調されるものである。また、アナログ駆動の場合の階調制御は、駆動電圧の振幅値で制御する。すなわち、図2(a)では、1フレームは+V,−Vの100%(全白)で駆動した状態であり、2フレームは、+V/2,−V/2の50%(中間調)で駆動した状態を示している。この駆動方式では、表示される映像の階調特性は電圧に応じて決定されるため良い特性を示す。
【0023】
しかしながらアナログ駆動の反射型液晶素子5は、ディスクリネーションと呼ばれる配向欠陥が生じやすく、映像のコントラストを向上することが困難である。また、駆動回路の構造が複雑であり生産性を高めることが困難であり、コストが高くなってしまう。更に、液晶に印加する電圧が対象に印加されず一方の電極側に偏ってしまい、液晶に直流成分が加えられ焼き付きと呼ばれる不良が発生しやすい。
【0024】
これらの課題を解決する方法としては、デジタル駆動を用いる反射型液晶素子5がある。
図2(b)示すようにデジタル駆動の反射型液晶素子5では、ピーク電圧が一定のパルスによって液晶を変調するものである。デジタル駆動の反射型液晶素子5における映像の階調制御は、パルスに分割したサブフレームのデジタルパルス電圧の平均電位による液晶変調によっておこなっている。
したがって、図2(b)に示すように、1フレームで100%の全白を表示するためには、+V,−Vのサブフレームのパルスで時間t駆動すればよい。一方、2フレームで50%の中間調を表示するためには、+V,−Vのサブフレームのパルスで時間t/2駆動する。
【0025】
次に、LED光源2r,2g,2bの発熱による発光効率の低下を防ぎ、映像の色合いが変化することを防ぐ技術としては、LED光源2r,2g,2bのパルス駆動がある。
図3を用いて第1の実施形態の投射型表示装置1に用いるLED光源2r,2g,2bの駆動方法について説明する。
図3(a)は、従来技術に記載した連続駆動によるLED光源2r,2g,2bの駆動状態を示す図である。連続駆動によるLED光源2r,2g,2bでは、最大出力である輝度100%を出力する場合、電圧を+Vの状態で連続発振させる。輝度を変化させる場合は、輝度に応じて電圧を変化させ連続発振させる。
【0026】
一方、パルス駆動の場合、図3(b)に示すようにピーク電圧が一定で所定のデューティ比の矩形波を連続発振して駆動する。
第1の実施形態の投射型表示装置1に用いるパルス駆動のLED光源2r,2g,2bでは、パルスの数で輝度を制御する。
LED光源2r,2g,2bで最大出力である輝度100%を出力する場合、時間tの間にピーク電圧+Vのパルスをn個発振する。同様に輝度50%を出力する場合、時間tの間にピーク電圧+Vのパルスをn/2個発振する。同様に輝度33%を出力する場合、時間tの間にピーク電圧+Vのパルスをn/3個発振する。このようにして、LED光源2r,2g,2bから出力される光の輝度を制御する。
【0027】
次に、デジタル駆動の反射型液晶素子5とパルス駆動のLED光源2r,2g,2bとを用いる素子制御部11及びLED制御部12の詳細について、図4で説明する。
図4に示すように、素子制御部11は素子駆動回路21を備えている。また、LED制御部12は光源(LED)駆動パルス生成部31と光源(LED)駆動回路32を備えている。素子駆動回路21,LED駆動パルス生成部31及びLED駆動回路32には、電源回路部13から電力が供給されている。
【0028】
投影する映像に対応する映像信号は、素子制御部11の素子駆動回路21に入力する。素子駆動回路21では、入力した映像信号からLED光源2r,2g,2bをパルス駆動する際のパルスのタイミングを制御するための同期信号を生成し、LED駆動パルス制御部31へ出力する。LED駆動パルス制御部31では、入力した同期信号に基づいてLED光源2r,2g,2bをパルス駆動するため、電圧が一定で所定のデューティ比のLED駆動パルス信号が生成され出力される。
【0029】
LED駆動パルス制御部31から出力されたLED駆動パルス信号は、LED駆動回路32に入力し、LEDの出力光の輝度に応じたパルス数をLED駆動信号としてLED光源2r,2g,2bに出力する。
素子駆動回路21では、外部から入力した映像信号とLED駆動パルス生成部31から入力した同期信号に基づいて、反射型液晶素子5をデジタル駆動するためのピーク電圧が一定のパルスである素子駆動信号を生成し反射型液晶素子5に出力する。
これにより、LED光源2r,2g,2bではLED駆動信号に応じた輝度の光を出力し、反射型液晶素子5では素子駆動信号に応じた階調で入射した照明光を光変調し変調光として出力する。
【0030】
次に、図4の回路でLED光源2r,2g,2b及び反射型液晶素子5を駆動する際のLED駆動信号及び素子駆動信号を図5のタイミングチャートで説明する
図5(a)は、素子駆動信号をR色に対応する部分,G色に対応する部分及びB色に対応する部分を理解しやすいように、R,G及びBの3つの素子駆動信号として分けて表示している。第1フレームは、R,G及びBの3つのサブフレームに分けられ、第1サブフレームがR色に,第2サブフレームがG色に,第3サブフレームがB色に対応している。第2フレームは、第4サブフレームがR色,第5サブフレームがG色,第6サブフレームがB色となっており、以下フレームは、R,G及びBの3つのサブフレームが繰り返されて構成されている。
図5(b)は、図5(a)のR,G及びBの3つのサブフレームに対応したR色のLED駆動信号,G色のLED駆動信号及びB色のLED駆動信号を示している。
【0031】
第1フレームは、100%の階調(全白)の場合を示し、第2フレームは50%の階調(中間調)の場合を示している。
このようにデジタル駆動の反射型液晶表示素子5と、パルス駆動のLED光源2r,2g,2bを用いることにより、LEDの色合いの変化が少なく、表示される映像の階調制御が容易な投射映像を得ることができる。
【0032】
<第2の実施形態>
次に、第1の実施形態の投射型表示装置1で明るい投射映像及び投射される映像の色域の拡大をおこなうことができる構成について、第2の実施例として説明する。
投射映像を明るくする技術としては、同一波長のLED光源を複数個使用する方法,LED光源の出力光の光量を大きくする方法,及び各色のLED光源から発光した光を混色する方法がある。LED光源を複数個使用する方法とLED光源の出力光の光量を大きくする方法とは、光源のコストが上昇すると共に発熱が増え出力光の波長がシフトする虞がある。一方、各色のLED光源から発光した光を混色する方法は、光源の数が増えないためコストが上昇することがなく、発熱が増えることもない。
【0033】
また、第1の実施形態の投射型表示装置1における投射映像の色域は、LED光源2r,2g,2bの各出力光の出力波長に依存している。そのため、投射映像の色域を拡大するためには、LED光源2r,2g,2bの出力波長を可変する、LED光源2r,2g,2bからの出力光の波長を光学素子で変化させるなどがあるが、どちらの場合もコストが上昇や出力光の輝度の低下が発生する。
この場合も、各色のLED光源2r,2g,2bから発光した光を混色することにより、コストが上昇することがなく、輝度の上昇も合わせて達成することができる。
【0034】
図6には、第1の実施形態の投射型表示装置1を用いてLED光源2r,2g,2bから発光した光を混色した場合について説明するタイミングチャートである。
R色を表示する第1サブフレームでは、LED駆動信号は主光線であるR光用のLED光源2rは連続発光するのに対して、G光用のLED光源2gは第1サブフレームの1/4期間のみ発光している。また、B光用のLED光源2bは第1サブフレームの1/8期間のみ発光している。
【0035】
同様に、G色を表示する第2サブフレームでは、LED駆動信号は主光線であるG光用のLED光源2gは連続発光するのに対して、第2光線であるR光用のLED光源2rは第2サブフレームの1/4期間のみ発光している。また、第3光線であるB光用のLED光源2bは第1サブフレームの1/8期間のみ発光している。
同様に、B色を表示する第3サブフレームでは、LED駆動信号は主光線であるB光用のLED光源2bは連続発光するのに対して、第2光線であるG光用のLED光源2gは第1サブフレームの1/4期間のみ発光している。また、第3光線であるR光用のLED光源2rは第2サブフレームの1/8期間のみ発光している。
【0036】
反射型液晶表示素子5が100%の変調度で変調をおこなう第1フレームの場合、反射型液晶表示素子5は各サブフレームの期間で連続的に駆動される。そのため、主光線に対応するLED光源の駆動期間と反射型液晶表示素子5の駆動期間とは一致する。
一方、反射型液晶表示素子5が50%の変調度で変調をおこなう第2フレームの場合、反射型液晶表示素子5は各サブフレームの期間の半分の期間駆動される。そのため、主光線に対応するLED光源の駆動期間は、反射型液晶表示素子5の駆動期間の1/2になる。
【0037】
ここで、第2フレームのように主光線が連続発光している場合でも、反射型液晶表示素子5の駆動期間が短い場合は、反射型液晶表示素子5の駆動期間しかLED光源からの光は利用されない。
このため、反射型液晶表示素子5の駆動期間と、第2光線に対応するLED光源の駆動期間と、第3光線に対応するLED光源の駆動期間とは、第1フレームでは1:1/4:1/8であるのに対して、第2フレームでは1/2:1/4:1/8となり第2光線と第3光線の割合が増加する。結果として、第1フレームの場合のLED光源の混色比率と異なってしまい、第1フレームと第2フレームのように階調が異なる場合に色合いが変化してしまう。
【0038】
そこで、LED光源2r,2g,2bから発光した光を混色させた際に、投影像の階調によらず色合いが変化しないLED光源2r,2g,2bの駆動方法について図7を用いて説明する。
図7(a)は、図3(b)に示す第1の実施形態の駆動方法を表している。この場合、パルスの数で輝度を制御する。 LED光源2r,2g,2bで最大出力である輝度100%を出力する場合、時間tの間にピーク電圧+Vのパルスをn個発振する。同様に輝度50%を出力する場合、時間tの間にピーク電圧+Vのパルスをn/2個発振する。同様に輝度33%を出力する場合、時間tの間にピーク電圧+Vのパルスをn/3個発振する。このようにして、LED光源2r,2g,2bから出力される光の輝度を制御する。
【0039】
一方、図7(b)には、第2の実施形態でのLED光源2r,2g,2bの駆動方法を示す。図7(b)の駆動方法では、LEDの輝度によらず各フレームでのパルス数は同一であり、輝度に応じてフレーム毎にパルスのデューティ比を変化させているのが特徴である。
具体的には、図7(b)に示すように、パルス数は同一であるため、パルス周期は同一であり、パルスがON状態の長さであるパルス幅が輝度と比例関係になっている。すなわち、輝度100%のパルス幅をxとしたとき、輝度50%のパルス幅がx/2となり、輝度33%のパルス幅はx/3となる。
【0040】
次に、図7(b)のLED光源2r,2g,2bの駆動方法を用いるLED制御部12とデジタル駆動の反射型液晶素子5を駆動する素子制御部11との詳細について図8を用いて説明する。
図7に示すように、素子制御部11は素子駆動回路21と階調信号抽出部22を備えている。また、LED制御部12はLED駆動パルス生成部31とLED駆動回路32を備えている。素子駆動回路21,LED駆動パルス生成部31とLED駆動回路32と周波数決定部33と混合比率設定部34を備えている。また、素子制御部11及びLED制御部12の各部には電源回路部13から電力が供給されている。
投影する映像に対応する映像信号は、素子制御部11の階調信号抽出部22に入力する。階調信号抽出部22では、入力した映像信号から各フレームの階調の情報が抽出され階調信号として出力されると共に、入力した映像情報が素子駆動回路21に出力する。
【0041】
素子駆動回路21では、入力した映像信号からLED光源2r,2g,2bをパルス駆動する際のパルスのタイミングを制御するための同期信号が抽出され出力されると共に、入力した映像情報に基づいて素子駆動信号を生成し反射型液晶表示素子5に出力する。
LED制御部12では、外部から色域を設定するための色度情報、あるいは輝度を設定する輝度情報が混合比率設定部34に入力する。色度情報、あるいは輝度情報は、投射型表示装置1に予め記憶されていても、使用者が入力してもよい。混合比率設定部34では、入力した色度情報あるいは輝度情報に基づいてR光用LED光源2r,G光用LED光源2g,及びB光用LED光源2bそれぞれから出力される出力光の混合比率を決定し、混合比率信号として周波数決定部33に出力する。
【0042】
階調信号抽出部22から出力された階調信号は周波数決定部33に入力する。周波数決定部33では、入力した階調信号と混合比率信号とに基づいてLED光源2r,2g,2bをパルス駆動するためのデューティ比(パルス幅),パルス数及び周波数が決定され、周波数信号としてLED駆動パルス制御部31に出力される。
LED駆動パルス制御部31では、周波数信号と素子駆動回路21から入力した同期信号とに基づいてLED駆動パルス信号が生成されLED駆動回路32に出力される。
LED駆動回路32では、LED駆動パルス制御部31から入力したLED駆動パルス信号に基づいてLEDの出力光の輝度に応じたパルス数をLED駆動信号としてLED光源2r,2g,2bに出力する。
【0043】
以上の構成により、LED光源2r,2g,2bではLED駆動信号に応じた輝度の光を出力し、反射型液晶素子5では素子駆動信号に応じた階調で入射した照明光を光変調し変調光として出力することができる。
【0044】
次に、図8の回路でLED光源2r,2g,2b及び反射型液晶素子5を駆動する際のLED駆動信号及び素子駆動信号を図9のタイミングチャートで説明する
図9(a)は、素子駆動信号をR色に対応する部分,G色に対応する部分及びB色に対応する部分を理解しやすいように、R,G及びBの3つの素子駆動信号として分けて表示している。第1フレームは、R,G及びBの3つのサブフレームに分けられ、第1サブフレームがR色に,第2サブフレームがG色に,第3サブフレームがB色に対応している。第2フレームは、第4サブフレームがR色,第5サブフレームがG色,第6サブフレームがB色となっており、以下フレームは、R,G及びBの3つのサブフレームが繰り返されて構成されている。
図9(b)は、図9(a)のR,G及びBの3つのサブフレームに対応したR色のLED駆動信号,G色のLED駆動信号及びB色のLED駆動信号を示している。
【0045】
第1フレームは、100%の階調(全白)の場合を示し、第2フレームは50%の階調(中間調)の場合を示している。
また、各サブフレームにおいてLED光源から出力する出力光を輝度の高い順に。主光線,第2光線,第3光線とする。具体的には、R色を表示する第1,第4サブフレームの場合、主光線はR光用のLED光源2rからの出力光であり、第2光線はG光用のLED光源2gからの出力光であり、第3光線はB光用のLED光源2bからの出力光である。G色を表示する第2,第5サブフレームの場合、主光線は、G光用のLED光源2gからの出力光であり、第2光線はR光用のLED光源2rからの出力光であり、第3光線はB光用のLED光源2bからの出力光である。B色を表示する第3,第6サブフレームの場合、主光線は、B光用のLED光源2bからの出力光であり、第2光線はG光用のLED光源2gからの出力光であり、第3光線はR光用のLED光源2rからの出力光である。
【0046】
LED光源2r,2g,2bが図7(b)のパルスにより駆動される場合、第1,第4サブフレームでは、R光用のLED光源2rはパルス幅がxのパルスによって駆動され、G光用のLED光源2gはパルス幅がx/2のパルスによって駆動され、B光用のLED光源2bはパルス幅がx/3のパルスによって駆動される。
また、
更に、第3,第6サブフレームでは、B光用のLED光源2bはパルス幅がxのパルスによって駆動され、G光用のLED光源2gはパルス幅がx/2のパルスによって駆動され、R光用のLED光源2rはパルス幅がx/3のパルスによって駆動される。
【0047】
各サブフレームにおいてLED光源2r,2g,2bは、パルス幅は異なるものの各サブフレーム期間で連続して駆動される。
反射型液晶表示素子5において100%の階調(全白)である第1、第2,第3サブフレームと50%の階調(中間調)である第4,第5,第6サブフレームとでは、第2フレームでは第1フレームに対して反射型液晶表示素子5が各サブフレームの期間の半分の期間しか駆動されない。しかしながら、LED光源2r,2g,2bは、パルスの数ではなくパルス幅で輝度を調整しているため、第1フレームと第2フレームとでLED光源2r,2g,2bからの出射光の混合比率が変化することはなく、階調が異なる場合に色合いが変化することもない。
【0048】
このように階調をパルス数で制御するデジタル駆動の反射型液晶表示素子5と、輝度をパルス幅で制御するパルス駆動のLED光源2r,2g,2bを用いることにより、LEDの発熱の少なく、表示される映像の色域を拡大することができ、明るい投射映像を得ることができる。
【符号の説明】
【0049】
11と、12と、13
1…投射型表示装置、2,2r,2g,2b…半導体光源(LED光源)、3…照明光学系、4…偏光分離素子、5…空間変調素子(反射型液晶表示素子)、6…投射光学系、7…制御部、11…素子制御部、12…光源(LED)制御部、13…電源回路部、21…素子駆動回路、22…階調信号抽出部、31…光源(LED)駆動パルス生成部、32…光源(LED)駆動回路、33…周波数決定部、34…混合比率設定部、41…偏光分離面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス駆動で駆動され、それぞれ波長の異なる光を発光する複数の半導体光源と、
素子駆動信号に基づいてパルス駆動され、入射した前記半導体光源からの光を光変調して出力する空間変調素子と、
映像信号から同期信号を抽出して出力すると共に、前記映像信号から前記素子駆動信号を生成して前記空間変調素子に対して出力する素子駆動回路と、
前記素子駆動回路から出力した前記同期信号に基づいて前記映像信号に同期した光源駆動パルス信号を生成する光源駆動パルス生成部と、
前記光源駆動パルス生成部から出力した前記光源駆動パルス信号に基づいて前記半導体光源を駆動する光源駆動信号を出力する光源駆動回路と、
を備えることを特徴とする投射型表示装置。
【請求項2】
パルス駆動で駆動され、それぞれ波長の異なる光を発光する複数の半導体光源と、
素子駆動信号に基づいてパルス駆動され、入射した前記半導体光源からの光を光変調して出力する空間変調素子と、
映像信号から階調信号を抽出して、前記映像信号及び前記階調信号を出力する階調信号抽出部と、
前記映像信号から前記素子駆動信号を生成し、前記空間変調素子に対し出力する素子駆動回路と、
前記複数の半導体光源から射出する光を混色する際の混合比率の情報を含む混合比率信号と、前記階調信号抽出部から出力された階調信号とに基づいて前記複数の半導体光源をパルス駆動するパルス情報を決定し、周波数信号として出力する周波数決定部と、
前記周波数決定部から出力した前記周波数信号に基づいて半導体光源を駆動する光源駆動信号を出力する光源駆動回路と、
を備え、
前記パルス情報には、前記複数の半導体光源のそれぞれに対応したパルス数,パルス周波数及びパルス幅の情報を含み、前記パルス幅は、前記混合比率信号に基づいて制御されることを特徴とする投射型表示装置。
【請求項3】
混合比率設定部を更に備え、
前記混合比率設定部は、希望する色域に関する色度情報、あるいは目標とする輝度に関する輝度情報に基づいて前記複数の半導体光源から射出する光を混色する際の混合比率の情報を含む混合比率信号を設定することを特徴とする請求項2記載の投射型表示装置。
【請求項4】
前記素子駆動回路は、入力する前記映像信号から同期信号を生成して出力し、
前記周波数決定部から出力した前記周波数信号と、前記素子駆動回路から出力した前記同期信号とに基づいて光源駆動パルス信号を生成する光源駆動パルス生成部を備え、
前記光源駆動回路は、前記光源駆動パルス生成部で生成された前記光源駆動パルス信号に基づいて光源駆動信号を生成し、前記素子駆動信号と同期して前記半導体光源を発光させることを特徴とする請求項2または請求項3記載の投射型表示装置。
【請求項5】
前記空間変調素子は1個であり、
前記素子駆動信号は、投影画像の1フレームが前記複数の半導体光源の個数に対応した数のサブフレームに分割された時分割駆動用の信号であり、
前記複数の半導体光源は、対応するサブフレームに応じて発光することを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載の投射型表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−203292(P2011−203292A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−67579(P2010−67579)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(308036402)株式会社JVCケンウッド (1,152)
【Fターム(参考)】