説明

投影型表示装置

【課題】レンズ駆動機構が不要で、液晶レンズを加熱するために特別な電力を消費することなく、低温下においても液晶レンズによる焦点変更動作を速く行うことが可能な合焦点機構を持った投影型表示装置を提供する。
【解決手段】投影型表示装置1は、光源10と、光源10からの光の照度を均一化するライトガイド20と、光の偏光変換を行う偏光ビームスプリッタユニット30と、光を変調して画像を合成する液晶ライトバルブ40と、液晶ライトバルブ40によって合成された画像をスクリーン100に拡大投影する投影レンズ50と、画像の焦点調整を行う液晶レンズ60と、光源10から発生する熱を液晶レンズ60に導く伝熱ホルダ70と、液晶レンズ60の表面温度を検出する温度センサ90と、温度センサ90が検出した温度値に従い、伝熱ホルダ70に伝わる熱を調節するための冷却ファン80と、から概略構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変焦点型の液晶レンズを組み込んだ投影型表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、投影型表示装置の焦点距離または焦点位置を変化させる合焦点機構として、2枚以上のレンズを組み合わせ、その位置関係を変化させることにより焦点を合わせる方式が広く用いられている。しかし、この方式では、レンズ駆動機構が必要であるため、機構が複雑になるという欠点や、レンズ駆動方法にモータを用いた場合には、モータ駆動に比較的多くの電力を要するという欠点がある。また、一般に耐衝撃性が低いという欠点もある。これらは投影型表示装置を小型にして携帯型の小型端末等に搭載する場合には大きな問題になる可能性がある。そこで、レンズ駆動機構が不要な合焦点機構として、液晶レンズの屈折率を変化させることにより焦点を合わせる方式が提案されており(例えば、特許文献1参照)、その液晶レンズを投影型表示装置に適用して、ズーム・合焦点させる例も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
また、液晶レンズの液晶を加熱するヒータを、液晶レンズの液晶屈折率変化を行うための位相変調電極群の外側の領域に設ける方法が提案されている(特許文献3参照)。
【0004】
さらに上記とは別に、液晶の応答速度を速くするために、ベンド配向と呼ばれる配向方法を用いたり(特許文献4参照)、液晶材料を高速応答性に優れる強誘電性液晶を用いたりする提案がされている。
【0005】
【特許文献1】特許第3047082号公報( 第3−5頁、第1−4図)
【特許文献2】特開平6−324298号公報( 第7頁、第30図)
【特許文献3】特開2006−201243号公報(第6−13頁、第1−11図)
【特許文献4】特開昭61−116329号公報( 第2−3頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び2に示すような液晶レンズを用いた可変焦点システムでは、問題になるのは液晶の応答速度である。液晶レンズに充填するネマティック液晶は、低温下では粘度の上昇により応答速度が遅くなることが知られている。
【0007】
また、特許文献3における液晶レンズのヒータを設けて液晶を加熱する方法では、ヒータを駆動するために電力が必要となるので、バッテリー電力量が限られているような携帯型の小型端末に投影型表示装置を搭載するような場合に問題となる。
【0008】
さらに、特許文献4に示すような高速応答が可能なベンド配向や強誘電性液晶は、どちらも液晶のON/OFF時の屈折率変化が小さいため、これらの手段を液晶レンズに使用した場合、可変焦点性能が著しく劣るという問題がある。
【0009】
そこで本発明は上記課題を解決し、レンズ駆動機構が不要で、液晶レンズを加熱するために特別な電力を消費することなく、低温下においても液晶レンズによる焦点変更動作を速く行うことが可能な合焦点機構を持った投影型表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の投影型表示装置は、次のような構成を採用する。
【0011】
本発明の投影型表示装置は、光源と、偏光光源からの光を画像パターンに応じて変調するライトバルブと、偏光ライトバルブにより変調された光を投影する投影レンズと、偏光投影レンズの焦点を変化させる可変焦点の液晶レンズと、偏光光源から発生する熱を偏光液晶レンズに伝達する伝熱手段と、を備えることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の投影型表示装置は、前述した構成に加えて、偏光伝熱手段は、偏光光源と偏光液晶レンズとが取り付けられた熱伝導体からなることを特徴とするものである。
【0013】
さらに、本発明の投影型表示装置は、前述した構成に加えて、偏光液晶レンズの温度を検出する検出手段と、偏光検出手段によって検出された温度に対応して、偏光伝熱手段による偏光液晶レンズへの伝熱量を制御する制御手段と、を備えることを特徴とするものである。
【0014】
さらに、本発明の投影型表示装置は、前述した構成に加えて、制御手段は、冷却ファンと、前記検出手段によって検出された液晶レンズの温度に対応して、冷却ファンのオンオフまたは回転数の少なくとも一方を制御する電気回路とからなることを特徴とするものである。
【0015】
さらに、本発明の投影型表示装置は、前述した構成に加えて、偏光光源は、発光ダイオードを有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の投影型表示装置は、光源から発生する熱を液晶レンズに伝達する伝熱手段を備える。これにより、光源の熱により液晶レンズが加熱され、低温下における液晶の粘度上昇による応答速度の低下を防ぐことができる。よって本発明の投影型表示装置では、液晶レンズを加熱するために特別な電力を消費することなく、低温下においても、液晶レンズによる焦点変更動作を速く行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、図1から図4を参照して、本発明にかかる投影型表示装置の好適な実施の形態を説明する。
【0018】
[構成の説明:図1〜図4]
まず、本発明の投影型表示装置の構成について説明する。図1は本発明の投影型表示装置の構造を説明する断面図である。
【0019】
図1における、符号10は光源、符号20はライトガイド、符号30は偏光ビームスプリッタユニット、符号40は液晶ライトバルブ、符号50は投影レンズ、符号60は液晶レンズ、符号70は伝熱ホルダ、符号80は冷却ファン、符号90は温度センサ、符号100はスクリーンである。
【0020】
図1に示す投影型表示装置1は、光源10と、光源10から出射される光の照度を均一化するためのライトガイド20と、ライトガイド20から出射される光の偏光変換を行う偏光ビームスプリッタユニット30と、偏光ビームスプリッタユニット30から出射された光を変調して画像を合成する液晶ライトバルブ40と、液晶ライトバルブ40によって合成された画像をスクリーン100に拡大投影する投影レンズ50と、スクリーン100に画像を投影した際の画像の焦点調整を行う液晶レンズ60と、光源10から発生する熱を液晶レンズ60に導くための伝熱ホルダ70と、液晶レンズ60の表面温度を検出する温度センサ90と、温度センサ90が検出した温度値に従い、伝熱ホルダ70に伝わる熱
を調節するための冷却ファン80と、から概略構成されている。
【0021】
光源10は、光の三原色、赤(R)、緑(G)、青(B)の各色を出射可能な小型の発光ダイオード(以下、LED)12を、単一平面基板11上に複数個並べて実装したLEDアレイユニットである。また、それぞれのLED12には図示せぬ光源駆動回路に接続されており、この光源駆動回路によって各LED12が発光するタイミングが制御され、R,G,Bの色光を時間的に分割して順番に発光可能な構成となっている。
単一平面基板11は、樹脂基板、もしくはセラミック基板を用い、基板上にはLED12に通電するための配線パターンを有する。
【0022】
ライトガイド20は、光源10から出射される色光の照度のムラを均一化するものであり、ポリカーボネイトやメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)等のプラスチック成型品である。LEDから出射された色光は、ライトガイド20の入射面に到達した時点ではLEDの中心部の輝度が高く、周辺部の輝度が低い照度分布を有しているが、ライトガイド20で内面反射を繰り返し、出射面から出射される時点では照度が均一化されている。
【0023】
偏光ビームスプリッタユニット30は、偏光分離膜と、反射ミラーとを有する偏光ビームスプリッタと、1/2波長板(位相差板)と、が組み合わされたものであって、光源10からの光に含まれるP偏光、S偏光(直線偏光)のうちの一方を偏光変換して他の偏光に揃えるものである。これにより光源からの出射光を液晶ライトバルブ40で表示に寄与する一偏光方向の偏光に揃えることができるので、光の利用効率を高めることができる。なお、偏光ビームスプリッタユニット30は、ライトガイド20よりも光源10側に位置していても構わない。
【0024】
液晶ライトバルブ40には、例えば、画素スイッチング用素子として薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor, 以下、TFT)を用いたTNモードのアクティブマトリクス方式の透過型の液晶セルが使用され、液晶セルの外面には入射側偏光板41、出射側偏光板42がその透過軸が互いに直交するように配置されて設けられている。例えば、オフ状態では液晶ライトバルブに入射されたS偏光がP偏光に変換されて出射され、オン状態では光が遮断される。
【0025】
液晶ライトバルブ40の駆動は、図示せぬ液晶ライトバルブ駆動回路によってなされ、入射されるR,G,Bの色光に対応させてオン/オフの制御がされる。
さらに、図示せぬ同期信号発生回路で発生する同期信号を、光源駆動回路および液晶ライトバルブ駆動回路に入力して、光源10から色光を出射するタイミングと、その色光に対応した液晶ライトバルブ40の駆動タイミングとを同期させる。
【0026】
すなわち、本実施の形態の画像投影装置では、1フレームを時分割し、光源10から時間順次にR,B、Gの各色光を出射させ、そのタイミングと同期させて液晶ライトバルブ40を駆動することにより、光源10から出射される各色光に対応する画像信号を時間順次に出力し、カラー画像を合成することができる。
【0027】
そして、液晶ライトバルブ40により形成された画像は、投影レンズ50により拡大され、スクリーン100に投影される。
【0028】
液晶レンズ60は、スクリーン100に画像を投影した際の画像の焦点調整を行う可変焦点のレンズである。液晶レンズ60は、液晶ライトバルブ40の出射面側すなわちスクリーン100側に設置されればよく、図1に示すように投影レンズ50の外側に設置するか、もしくは液晶ライトバルブ40と投影レンズ50との間に設置する。
【0029】
ここで、図2および図3を用いて、図1に示した液晶レンズ60の構成について、詳細に説明をする。図2は、液晶レンズ60の構成例を示す断面図である。図3は、液晶レンズ60の構成の一例を示す正面図である。
【0030】
図2に示すように、液晶レンズ60は、例えば2枚の対向する透明基板61、62を有しており、透明基板61の、透明基板62との対向面には透明なパターン電極63が形成されていて、透明基板62の、透明基板61との対向面には透明な対向電極64が形成されている。そして、透明基板61と、透明基板62との間に例えばホモジニアス配向の液晶層65が封入される。
【0031】
透明基板61は透明基板62に比べて平面形状が大きく、透明基板61の一部が突出部66として突出した状態で、透明基板61と透明基板62とは貼り合わされる。突出部66には引き出し配線602が延長されている。
【0032】
図3における符号601は、外形が円形形状の位相変調電極群、符号602aは、位相変調電極群601に給電を行うための引き出し電極、符号602bは、図には現れていない対向電極64(図2参照)に給電を行うための引き出し電極である。つまり、透明基板61上に形成されているパターン電極63は、位相変調電極群601と、引き出し電極602a、602bにより構成されている。なお、図3における符号606は、シール部材、符号607は、アライメントマークを示す。
【0033】
特に限定しないが、位相変調電極群601は、例えば円形状の中心部電極の回りに、変形の異なる複数の同心円の円周に沿って複数のC字状の輪帯電極が配置されたパターンで構成される。これら複数の輪帯電極の間は絶縁された空間となっており、各輪帯電極はそれぞれ独立に給電できるように、各々が引き出し電極602aに繋がっている。引き出し電極602aは、位相変調電極群601から引き出され、突出部66上に一列に配列される。
【0034】
また、突出部66には、パターン電極63に対向する、図には現れていない対向電極64と接続された引き出し電極602bが設けられている。この引き出し電極602bにはコモン電圧が印加される。
【0035】
この突出部66には、フレキシブル回路基板などが接続され、引き出し電極602a、602bを介して位相変調電極群601および対向電極64に給電が行われる。
【0036】
フレキシブル回路基板に接続された、複数の引き出し電極602aには種々の電圧が印加されるが、その印加電圧に応じて、位相変調電極群601の各輪帯電極のそれぞれの電圧値が異なる状態とすることができる。つまり、位相変調電極群601によって、液晶層65に電圧分布が生じる。この電圧分布を変化させることによって、液晶レンズ60の屈折率の分布が変化し、液晶レンズ60のレンズパワーを変えることができる。これにより、液晶レンズ60を凸レンズの状態にしたり、平行ガラスの状態にしたり、凹レンズの状態にすることで、可変焦点のレンズとして機能させることができる。
【0037】
シール部材606は、外形が円形形状の位相変調電極群601の周縁部を封止し、また液晶レンズ60における液晶層65(図2参照)の厚さは、シール部材606内に散布された図示しないスペーサ部材により一定に保たれている。
【0038】
アライメントマーク607は、透明基板61もしくは透明基板62に設けられた位置決め用のマークである。このアライメントマーク607の形状は、例えば図3に示すように、円形状のパターンを一定距離離して2カ所設ける。そしてこのマークの形成方法は、パ
ターン電極63もしくは対向電極64のパターニング時に電極膜と同じ材質で同時にパターニングする。特に、パターン電極63とアライメントマーク607を同じ工程でパターニングすれば、位相変調電極群601と、アライメントマーク607の位置関係を極めて高精度にすることができる。そのようにして形成したアライメントマーク607をターゲットとして液晶レンズ60の位置決めをすることで、容易に、かつ高精度に液晶レンズの光学中心の位置を決めることができる。
【0039】
本発明の液晶レンズでは特に限定しないが、一例として液晶パネル60の寸法を下記に示す。
透明基板61、62の一辺の長さは、数mmから十数mm程度、例えば10mmである。また、透明基板61、62の厚さは、数百μm程度、例えば300μmである。液晶層15の厚さは、数μmから数十μm程度、例えば25μmである。位相変調電極群601の直径は数mm程度、例えば6.5mmである。アライメントマーク607は、直径数百μm程度、例えば300μmである。
【0040】
次に、伝熱手段の一例である伝熱ホルダ70の構成について、詳細に説明する。図4は伝熱ホルダ70及び、伝熱ホルダ70に取り付ける光源10と液晶レンズ60の構成の一例を示す分解斜視図である。
【0041】
図4に示すように、伝熱ホルダ70はコの字型形状の部材であり、コの字の対向した面に、光源10と、液晶レンズ60とをそれぞれ取り付ける。つまり、伝熱ホルダ70は、光源10を取り付ける光源固定部71と、液晶レンズ60を取り付ける液晶レンズ固定部72と、光源固定部71及び液晶レンズ固定部72を連結する連結部73とを備える。本実施例では、伝熱ホルダ70は一体成形品としているが、光源固定部71、液晶レンズ固定部72、連結部73はそれぞれ独立した部品で形成し、ネジ止めや接着によって伝熱ホルダ70を形成しても構わない。
【0042】
光源固定部71には、単一平面基板11のLED12を実装していない面を当接して固定する。光源固定部の当接面にはネジ穴711を有し、単一平面基板11に設けた位置決め固定穴111を通じてネジ止めする。その際、当接した単一平面基板11と光源固定部71の対向する隙間には、空気層ができないようにシリコン充填剤等を充填した状態でネジ止めすることが望ましい。これによりLED12から発生した熱が効率よく光源固定部71に伝えることができる。
【0043】
液晶レンズ固定部72には、当接面721に、液晶レンズ60の少なくとも片方の透明基板を当接した状態で位置決めし、液晶レンズ60の周辺を例えばUV接着剤等で接着固定する。その際も当接した液晶レンズ60と当接面721との隙間には空気層ができないようにシリコン充填剤等を充填した状態で固定することが望ましい。これにより液晶レンズ固定部72に伝わってきた熱を効率よく液晶レンズ60に伝えることができる。
【0044】
ここで、当接面721には、開口孔722と、マーク孔723を設ける。開口孔722は、液晶レンズ60のレンズ有効径よりも若干大きな径であり、液晶レンズ60を通過した光は開口孔722を通過してスクリーンへ投影される。マーク孔723は、液晶レンズ60のアライメントマーク607に対応した位置に付けた位置決め用の孔である。液晶レンズ60を液晶レンズ固定部72に位置決めする際には、アライメントマーク607と、マーク孔723とを一致するように治具等で調整する。このことにより、開口穴722の中心軸と、液晶レンズ60のレンズ光学中心軸とを高精度に一致させることができる。
【0045】
また投影型表示装置1は、図1及び図4に示すように、検出手段の一例として、液晶レンズ60の液晶レンズ固定部72と当接していないもう片方の透明基板上に載置された温
度センサ90を備える。この温度センサ90の固着の方法は特に限定しないが、例えば熱伝導性のよいシリコン接着剤を用いて固着する。この温度センサ90は、光源10の発生した熱で液晶レンズ60を加熱した時の透明基板上の温度を検出することになる。その際、液晶レンズ60の液晶層65の温度をできるだけ正確に検出するために、温度センサ90の位置は、できるだけ液晶層65との温度差の少ない位置、すなわち、透明基板上における位相変調電極群601にできるだけ近い位置に固着するのが望ましい。
【0046】
さらに投影型表示装置1は、伝熱ホルダ70の伝熱量、を制御する制御手段の一例として、冷却ファンと冷却ファンを駆動する電気回路を有する。図1に示すように、冷却ファン80は、伝熱ホルダ70に直接送風が当たるように筐体内に設置される送風ファンである。冷却ファンを回転させる事で伝熱ホルダ70に伝わっていた熱は放熱され、伝熱ホルダ70を伝わって液晶レンズ60を加熱する熱量が減少する。更に、冷却ファンを駆動する電気回路(図示せず)は、温度センサ90が検出する液晶レンズ60の透明基板温度に応じて、冷却ファン80の駆動を制御するものであり、ファンのオンオフまたはファンの回転数の少なくとも一方を制御することで冷却効率を変化させる。つまり、ファンの冷却効率を変化させる事で、伝熱ホルダ70を伝わって液晶レンズ60を加熱する熱量の調節が可能となる。また、冷却ファン80の駆動の制御は、ファンのオンオフ及びファンの回転数の両方を制御して冷却効率を変化させることも可能である。
【0047】
伝熱ホルダ70の、冷却ファン80による送風が当たる部分は、送風が直接当たる面積ができるだけ大きくなるように図1に示すような櫛歯状にする事が望ましい。また、伝熱ホルダ70において、送風が当たる場所は、送風が直接当たりさえすれば、図1での伝熱ホルダ70の底面及び側面、または液晶レンズ60の側面などでもよく、必ずしも図1のように光源の裏面からでなくても構わない。
[作用の説明]
【0048】
次に、伝熱手段として伝熱ホルダ70を有する本発明の投影型表示装置1の作用について説明する。
光源10を発光させるに伴い、LED12には熱が発生する。その熱は単一平面基板11、伝熱ホルダ70(光源固定部71、連結部73、液晶レンズ固定部72)へと流れ、液晶レンズ60に伝わる。つまり光源10より発生した熱により液晶レンズ60の表面を加熱することができる。伝熱ホルダ70の材質は、熱伝導性の高い金属製であることが好ましく、例えば表面を黒色アルマイト処理されたアルミニウムが用いられる。
【0049】
これにより、光源10を発光している間は、絶えずその発生熱は伝熱ホルダ70を通じて液晶レンズ60の表面を加熱する事になるので、低温下において、液晶の粘度の上昇により応答速度が遅くなることを防ぐことができる。よって、本発明の投影型表示装置1では、低温下においても液晶レンズ60による焦点変更動作を速く行うことが可能となる。
【0050】
また、本発明の投影表示装置1は、温度センサ90により液晶レンズ60の温度を検出して、それが所定の温度よりも高くなった場合には、冷却ファン駆動回路により冷却ファン80を駆動させることで伝熱ホルダ70の温度を下げ、液晶レンズ60の温度の過上昇を抑えることができる。
【0051】
この様に温度センサ90で検出した温度に応じて冷却ファン80の駆動を制御することで、液晶レンズ60の温度を所定の値に制御することができる。よって、低温の環境下でも、液晶レンズ60を所定の温度に保持することが可能となり、低温下においても液晶レンズ60による焦点変更動作を一定の速度で行うことが可能となる。
【0052】
以上説明したように、本発明の投影型表示装置1は、光源10の熱を伝えるための伝熱
ホルダ70を設け、それに光源10と、液晶レンズ60を取り付けることにより、光源10から発生する熱を、液晶レンズ60を加熱するヒータとして利用することができる。また、液晶レンズ60の温度を、温度センサ90で検出して、その温度により冷却ファン80の駆動を制御することにより、液晶レンズ60を所定の温度に保つことができる。
【0053】
また本発明では液晶レンズ60を加熱するために特別な電力を消費することがないので、トータル電力が制限されるような小型機器に投影型表示装置を組み込む場合にも容易に適用することができる。
【0054】
以上のように、本発明にかかる投影型表示装置は、可変焦点を有する液晶レンズを組み込んだ装置に有用であり、特に、投影型表示装置、プロジェクタ、プロジェクタ付き携帯電話のプロジェクタ部などの構造に適している。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の投影型表示装置の構造を説明する断面図である。
【図2】本発明の投影型表示装置における液晶レンズの構成例を示す断面図である。
【図3】本発明の投影型表示装置における液晶レンズの構成の一例を示す正面図である。
【図4】本発明の投影型表示装置における伝熱ホルダとそれに取り付ける光源及び液晶レンズの構成の一例を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0056】
1 投影型表示装置
10 光源
11 単一平面基板
12 LED
20 ライトガイド
30 偏光ビームスプリッタユニット
40 液晶ライトバルブ
41 入射側偏光板
42 出射側偏光板
50 投影レンズ
60 液晶レンズ
61、62 透明基板
63 パターン電極
64 対向電極
65 液晶層
66 突出部
70 伝熱ホルダ
71 光源固定部
72 液晶レンズ固定部
73 連結部
80 冷却ファン
90 温度センサ
100 スクリーン
111 位置決め固定穴
601 位相変調電極群
602、602a、602b 引き出し電極
606 シール部材
607 アライメントマーク
711 ネジ穴
721 当接面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源からの光を画像パターンに応じて変調するライトバルブと、
前記ライトバルブにより変調された光を投影する投影レンズと、
前記投影レンズの焦点を変化させる可変焦点の液晶レンズと、
前記光源から発生する熱を前記液晶レンズに伝達する伝熱手段と、を備える
ことを特徴とする投影型表示装置。
【請求項2】
前記伝熱手段は、前記光源と前記液晶レンズとが取り付けられた熱伝導体からなる
ことを特徴とする請求項1に記載の投影型表示装置。
【請求項3】
前記液晶レンズの温度を検出する検出手段と、
前記検出手段によって検出された温度に対応して、前記伝熱手段による前記液晶レンズへの伝熱量を制御する制御手段と、を備える
ことを特徴とする請求項1または2に記載の投影型表示装置。
【請求項4】
前記制御手段は、冷却ファンと、前記検出手段によって検出された前記液晶レンズの温度に対応して、前記冷却ファンのオンオフまたは回転数の少なくとも一方を制御する電気回路とからなる
ことを特徴とする請求項3に記載の投影型表示装置。
【請求項5】
前記光源は、発光ダイオードを有する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の投影型表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−210705(P2009−210705A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−52013(P2008−52013)
【出願日】平成20年3月3日(2008.3.3)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】