説明

投影表示装置

【課題】MTFを低下させることなく、クリアで明るい映像を表示することのできる投影表示装置を提供する。
【解決手段】光源2と、導光板3と、反射シート15と、拡散板4、16およびプリズムシート5と、λ/4波長板12と、反射型液晶表示素子1と、導光板と反射型液晶表示素子との間に45度の傾きで配された偏光制御素子(ワイヤーグリッド型偏光ビームスプリッタ)8と、反射ミラー13と、を備え、光源2の発する光が、導光板3、拡散板4、プリズムシート5、拡散板16、λ/4波長板12、偏光制御素子8を順に透過して、反射型液晶表示素子1に入射し、反射型液晶表示素子に入射した光が、反射型液晶表示素子によって変調され、偏光制御素子8で反射されることで、接眼レンズ10へと入射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射型液晶表示素子を使用した投影表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置を用いた電子ビューファインダーやヘッドマウントディスプレイが販売されており、特に、デジタル一眼レフカメラの最近の規格(マイクロフォーサーズ規格)は、従来の光学ファインダーが使用できないために、電子ビューファインダーが用いられている。例えば、特許文献1には、電子ビューファインダーとして使われる反射型液晶表示装置の例が記載されている。
【0003】
図4は特許文献1に開示された装置の構成を示し、図5は図4の装置に結像レンズを加えた構成を示している。
【0004】
この装置は、光源2と、光源2の発する光が端面から入射され、輝度ムラを低減しながら発光面32から照明光として放出する導光板3と、導光板3の発光面32と反対側の面に配されて、導光板3の内部に入射した光を発光面32に向けて反射する反射体15と、導光板3の発光面32に近接させて、導光板3の発光面32に近い側から順に配された拡散板4、プリズムシート5、および偏光板9と、導光板3の発光面32と直交する方向に表示面を向けて配された反射型液晶表示素子1と、導光板3と反射型液晶表示素子1に対して45°の傾きで配された半透過反射シート7と、を備えている。これらの要素は、図示しない回路基板に位置決めされた状態で支持されている。また、半透過反射シート7は、反射シートと偏光シートを重ねたものとして構成されている。
【0005】
この装置では、光源2から発せられた光を、導光板3を用いて、導光板3の発光面32から導光板3に垂直な方向へと射出させ、その光を拡散板4やプリズムシート5、偏光板9に透過させることで、偏光の揃った輝度ムラの少ない光にして45度の傾きの半透過反射シート7で反射させて、反射型液晶表示素子1へと導く。反射型液晶表示素子1へ入射した光は、反射型液晶表示素子1にて変調され、半透過反射シート7を透過して、結像レンズ群10へと導かれる。即ち、眼に反射型液晶表示素子1の映像からの光が届く経路を考えると、反射型液晶表示素子1から出た光は、半透過反射シート7を透過した上で、結像レンズ10を透過して眼に入る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3539904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、電子ビューファインダーに求められる性能としては、いくつか上げられるが、その中でも光学ファインダーと同等以上のMTF(Modulation Transfer Function)を持つことが挙げられる。
【0008】
電子ビューファインダーでは、反射型液晶表示素子1の映像を眼の網膜へと結像する必要があり、前述の特許文献1に記載の装置では、その結像系の一部に、反射型液晶表示素子1に対して45度の傾きを持つように半透過反射シート7が配されている。しかし、結像系の光学性能として、45度の傾きを持って配された半透過反射シート7は、非点収差を生み出し、それが原因で、結像系のMTFを低下させる要因となる。
【0009】
さらに、反射型液晶表示素子1を用いることで、偏光という概念が必要となるが、特許文献1に開示されている装置では、半透過反射シート7を用いているために、偏光を半分しか使用することができず、そのために映像が暗くなりがちであり、明るくしようとした場合には光源2の消費電力をあげる必要があった。しかし、光源の消費電力をあげることは、カメラのシステムを考慮した場合には望ましくない。
【0010】
本発明は、上記事情を考慮し、MTFを低下させることなく、クリアで明るい映像を表示することのできる投影表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、請求項1の発明の投影表示装置は、光源(2)と、 前記光源の発する光を端面(31)から入射させ、照明光として発光面(32)から放出する導光板(3)と、前記導光板(3)の発光面(32)と反対側の面に配され、前記導光板(3)の内部に入射した光を前記導光板(3)の発光面(32)に向けて反射する反射体(15)と、前記導光板(3)の発光面(32)に近接させて、前記導光板(3)の発光面(32)に近い側から順に配された拡散板(4)およびプリズムシート(5)と、前記導光板(3)の発光面(32)に対して平行に距離を開けて配された反射型液晶表示素子(1)と、前記導光板(3)と前記反射型液晶表示素子(1)との間に配された偏光制御素子(8,11)と、を備え、前記光源(2)の発する光が、前記導光板(3)、拡散板(4)、プリズムシート(5)、偏光制御素子(8,11)を順に透過して、前記反射型液晶表示素子(1)に入射し、前記反射型液晶表示素子(1)に入射した光が、前記反射型液晶表示素子(1)によって変調され、前記偏光制御素子(8,11)で反射されることを特徴とする。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1に記載の投影表示装置であって、前記偏光制御素子(11)が、前記反射型液晶表示素子(1)からの変調された光を反射する際に、光を収束させるレンズの役割を果たすように曲面形状に形成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1に記載の投影表示装置であって、前記導光板(3)の発光面(32)に近接させて、前記拡散板(4)およびプリズムシート(5)と並べてλ/4波長板(12)が配されると共に、前記プリズムシート(5)を透過して前記偏光制御素子(8,11)に入射する光のうちで前記偏光制御素子(8,11)で反射する光を、前記偏光制御素子(8,11)に反射させる反射ミラー(13)が設けられ、前記反射ミラーで反射された光が前記偏光制御素子にて反射され、前記λ/4波長板(12)、プリズムシート(5)、拡散板(4)を通して、前記導光板(3)に入射されることを特徴とする。
【0014】
請求項4の発明は、請求項2に記載の投影表示装置であって、前記導光板(3)の発光面(32)に近接させて、前記拡散板(4)およびプリズムシート(5)と並べてλ/4波長板(12)が配されると共に、前記プリズムシート(5)を透過して前記偏光制御素子(11)に入射する光のうちで前記偏光制御素子(11)で反射する光を、前記偏光制御素子に反射させる反射ミラー(14)が設けられ、前記反射ミラーで反射された光が前記偏光制御素子(11)にて反射され、前記λ/4波長板(12)、プリズムシート(5)、拡散板(4)を通して、前記導光板(3)に入射されることを特徴とした。
【0015】
請求項5の発明は、請求項4に記載の投影表示装置であって、前記反射ミラー(14)が、前記偏光制御素子(11)の曲面形状に対応した曲面形状に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、結像系に非点収差を発生させる半透過反射シートを使用せず、反射型液晶表示素子からの光を偏光制御素子で反射させるようにしているため、高いMTFを確保することができる。また、光を効率よく使用することができるため、クリアで明るい映像を表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の投影表示装置の第1実施形態の構成図である。
【図2】図1の装置に接眼レンズを加えた装置の構成図である。
【図3】本発明の投影表示装置の第2実施形態の構成図である。
【図4】従来例の構成図である。
【図5】図4の装置に接眼レンズを加えた装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0019】
図1は第1実施形態の投影表示装置の構成図、図2は図1の装置に接眼レンズ(結像レンズ)を加えた装置の構成図である。
【0020】
この投影表示装置は、少なくとも、LED等の光源2と、光源2の発する光が端面31から入射され、輝度ムラを低減しながら発光面32から照明光として放出する導光板3と、導光板3の発光面32と反対側の面に配され、導光板3の内部に入射した光を発光面32に向けて反射する反射シート(反射体)15と、導光板3の発光面32に近接させて、発光面32に近い側から順に配された拡散板4、プリズムシート5、拡散板16、およびλ/4波長板12と、導光板3の発光面32に対して平行に距離を開けて配された反射型液晶表示素子1と、導光板3と反射型液晶表示素子1との間に45度の傾きで配された平面状の偏光制御素子(ワイヤーグリッド型偏光ビームスプリッタ)8と、平面状の反射ミラー13と、これらの要素を位置決めして支持する回路基板(図示略)と、を備えている。ここで、ワイヤーグリッド型偏光ビームスプリッタとは、ガラス基板上に金属材料を蒸着し、ナノメーターレベルでの微細エッチングによりワイヤー状のグリッドを形成した偏光制御素子である。また、導光板の端面31から入射された光が放出される面を発光面32と定義する。
【0021】
この装置では、光源2から発生した光は、導光板3の端面31へと入射する。導光板3の端面31へと入射した光は、反射を繰り返しながら進み、導光板3に製作された突起あるいは印刷された反射板などで反射されて発光面32(片方の主面)から放出され、拡散板4へと入射する。ここで、導光板3は、大まかに光の輝度ムラを低減する役割と照明光のビーム成形の役割を持つ。
【0022】
拡散板4へと入射した光は、拡散板4によって光の拡散が行なわれながら、プリズムシート5へと入射する。プリズムシート5は、角度選択性を備えており、ある角度の光線は反射し、それ以外の角度の光線は透過する。プリズムシート5を透過した光は、拡散板16を透過する。このように、導光板3と拡散板4とプリズムシート5と拡散板16を組み合わせる技術は、液晶テレビや携帯電話の液晶ディスプレイなどでよく使用される技術であり、この技術は光の輝度ムラを低減させ画質を向上させる役割を果たす。
【0023】
プリズムシート5で反射された光は、拡散板4を通って、再び導光板3へと入射し、反射シート15で反射されて再度、照明光として使用されるように、導光板3を透過し、拡散板4を透過して、再度プリズムシート5へ入射する。このように、プリズムシート5は、照明光を増やすための役割を担っている。
【0024】
プリズムシート5を通過し、拡散板16を透過した光は、λ/4波長板12を透過し、偏光制御素子8(ワイヤーグリッド型偏光ビームスプリッタ)へと入射する。偏光制御素子8へと入射した光は、不定偏光であり、偏光制御素子8で偏光成分が分離される。偏光制御素子8を透過した直線偏光は、反射型液晶表示素子1へと入射し、照明光として働く。一方、偏光制御素子8で反射された直線偏光は偏光制御素子8を透過した偏光に対して偏光方向が直交している。偏光制御素子8で反射された直線偏光は、反射ミラー13を介して反射され、偏光制御素子8で再び反射し、λ/4波長板12へと入射する。そして、λ/4波長板12に入射した直線偏光は、円偏光に変換される。
【0025】
変換された円偏光は、拡散板16、プリズムシート5、拡散板4、導光板3を透過し、導光板3の内部に入射され、反対面の反射シート15で反射される。反射された円偏光は、再び導光板3の内部および拡散板4を通り、プリズムシート5に入射する。プリズムシート5では、前述同様、ある角度の光線は反射し、それ以外の角度の光線は透過する。
【0026】
プリズムシート5を透過した円偏光は、拡散板16を透過しλ/4波長板12で再び直線偏光へと変わる。この直線偏光の偏光方向は、λ/4波長板12を2度透過したため、偏光制御素子8で反射された偏光方向に対して90度回転している。そのため、偏光制御素子8で反射されること無く、照明光として偏光制御素子8(ワイヤーグリッド型偏光ビームスプリッタ)を透過し、反射型液晶表示素子1へと入射する。
【0027】
反射型液晶表示素子1へと入射した光は、反射型液晶表示素子1で変調され、再び偏光制御素子8へと入射し、偏光制御素子8で反射され、偏光板9へと入射し透過する。そして、接眼レンズ(結像レンズ)10を透過して眼に入る。
【0028】
ここで、反射型液晶表示素子1からの光は偏光制御素子8で反射するため、45度の傾きを持った半透過反射シートを透過する場合のようにMTFが低下することは無い。さらに、偏光制御素子8で反射した光は偏光板9を透過しているが、この偏光板9は、前述の半透過反射シートのように斜めに配置する必要がなく、光軸に対して90度の角度で配置しているため、MTF低下への影響は極々軽微となる。
【0029】
また、ある偏光方向の光を透過し、その偏光方向とは90度の角度を持つ偏光方向の光を反射する偏光制御素子(ワイヤーグリッド型偏光ビームスプリッタ)8を用いると共に、反射ミラー13とλ/4波長板12を用いているので、光を無駄なく利用することができ、照明光量を増大させることができる。従って、光源2の消費電力を少なくすることができ、カメラの電子ビューファインダーに使用した場合は、より長時間のカメラの使用を可能にすることができる。あるいは、電池の大きさを小さくすることができて、カメラの重量を減少させるというメリットを得ることもできる。
【0030】
図3は第2実施形態の投影表示装置の構成図である。
【0031】
この第2実施形態の投影表示装置では、第1実施形態の装置における平面状の偏光制御素子8の代わりに曲面偏光制御素子11を備え、平面状の反射ミラー13の代わりに曲面反射ミラー14を備えている。曲面偏光制御素子11は、反射型液晶表示素子1からの変調された光を反射する際に、光を収束させるレンズの役割を果たすように曲面形状に形成されている。また、曲面反射ミラー14は、曲面偏光制御素子11の曲面形状に対応した曲面形状に形成されている。その他の構成は第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0032】
この装置においても、第1実施形態の装置と同様の経路で光が進むことで眼に像を結び、第1実施形態と同様の効果を奏する。特にこの装置の場合、曲面偏光制御素子11が、反射型液晶表示素子1で変調された光を反射する際に1枚のレンズのように振舞うため、偏光板9よりも先にある接眼レンズ(結像レンズ)10も含めて、より幅広い設計をすることが可能になる。
【符号の説明】
【0033】
1 反射型液晶表示素子
2 光源
3 導光板、31 端面、32 発光面
4 拡散板
5 プリズムシート
6 偏光シート
7 半透過反射シート
8 偏光制御素子
9 偏光板
10 接眼レンズ(結像レンズ)
11 曲面偏光制御素子
12 λ/4波長板
13 反射ミラー
14 曲面反射ミラー
15 反射シート
16 拡散板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源の発する光を端面から入射させ、照明光として発光面から放出する導光板と、
前記導光板の発光面と反対側の面に配され、前記導光板の内部に入射した光を前記導光板の発光面に向けて反射する反射体と、
前記導光板の発光面に近接させて、前記導光板の発光面に近い側から順に配された拡散板およびプリズムシートと、
前記導光板の発光面に対して平行に距離を開けて配された反射型液晶表示素子と、
前記導光板と前記反射型液晶表示素子との間に配された偏光制御素子と、を備え、
前記光源の発する光が、前記導光板、拡散板、プリズムシート、偏光制御素子を順に透過して、前記反射型液晶表示素子に入射し、前記反射型液晶表示素子に入射した光が、前記反射型液晶表示素子によって変調され、前記偏光制御素子で反射されることを特徴とする投影表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の投影表示装置であって、
前記偏光制御素子が、前記反射型液晶表示素子からの変調された光を反射する際に、光を収束させるレンズの役割を果たすように曲面形状に形成されていることを特徴とする投影表示装置。
【請求項3】
請求項1に記載の投影表示装置であって、
前記導光板の発光面に近接させて、前記拡散板およびプリズムシートと並べてλ/4波長板が配されると共に、
前記プリズムシートを透過して前記偏光制御素子に入射する光のうちで前記偏光制御素子で反射する光を、前記偏光制御素子に反射させる反射ミラーが設けられ、
前記反射ミラーで反射された光が前記偏光制御素子にて反射され、前記λ/4波長板、プリズムシート、拡散板を通して、前記導光板に入射されることを特徴とする投影表示装置。
【請求項4】
請求項2に記載の投影表示装置であって、
前記導光板の発光面に近接させて、前記拡散板およびプリズムシートと並べてλ/4波長板が配されると共に、
前記プリズムシートを透過して前記偏光制御素子に入射する光のうちで前記偏光制御素子で反射する光を、前記偏光制御素子に反射させる反射ミラーが設けられ、
前記反射ミラーで反射された光が前記偏光制御素子にて反射され、前記λ/4波長板、プリズムシート、拡散板を通して、前記導光板に入射されることを特徴とする投影表示装置。
【請求項5】
請求項4に記載の投影表示装置であって、
前記反射ミラーが、前記偏光制御素子の曲面形状に対応した曲面形状に形成されていることを特徴とする投影表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−181487(P2012−181487A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46114(P2011−46114)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(308036402)株式会社JVCケンウッド (1,152)
【Fターム(参考)】