説明

抗うつ作用を有する複素環縮合ベンゾジオキサンのピペリジン誘導体

化学式(I)で表された化合物は、うつ病(大うつ病性障害、小児期うつ病、気分変調を含むがこれに限られない)、不安症、パニック障害、心的外傷後ストレス障害、月経前不快気分障害(月経前症候群としても知られている)、注意力欠如障害(活動過剰を伴う場合と伴わない場合とがある)、強迫障害、社会不安障害、全般性不安障害、肥満症、拒食症や多食症といった摂食障害、血管運動性顔面紅潮、コカイン依存症やアルコール依存症、性機能障害および関連する諸症状の治療に有効である。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、その全体を本願に引用して援用する2002年9月12日米国出願No.60/410,033を基礎とする優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
大うつ病は人口の5%以上がかかっており、15ないし20%の終身有病率という重大な健康問題である。
【0003】
選択的セロトニン再取り込み阻害薬は、うつ病やうつ病関連症状の治療に成果を上げ、ほとんどの処方薬に使われるようになった。しかしながら、この薬は作用の発現開始が遅く、十分な治療効果をもたらすまでに数週間を要することもしばしばである。さらに、全患者の3分の2以下にしか効果を示さない。
【0004】
選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は、うつ病やその他の病態の治療によく使われている。SSRIは、神経細胞のセロトニン再取り込みを遮断して、シナプス領域におけるセロトニン濃度を高め、その結果、後シナプス性セロトニン受容体の活動を活発にすることで作用する。
【0005】
しかし、SSRIの単回投与は、シナプスのセロトニンを増加させると考えられている神経細胞のセロトニン輸送体を抑制できるとしても、臨床的改善を実現するまでには長期に渡る治療が必要である。
【0006】
SSRIは、セロトニン作動性の細胞体近傍におけるセロトニンのレベルを増加させ、この余剰のセロトニンが、前頭主要部でのセロトニン放出の減少を起こさせるソマトデンドリティック自己受容体すなわち5HT1A受容体を活性化すると推測されている。このネガティブフィードバックは、抗うつ薬により生じたシナプスのセロトニン増加を制限することになる。
【0007】
5HT1A抑制薬は、このネガティブフィードバックを制限し、セロトニン再取り込み作用の効率を改善すると思われる(Perez,V., et al., The Lancet,349:1594−1597(1997))。このような併用療法はセロトニン再取り込み阻害薬の効果を促進すると期待される。
【0008】
従って、セロトニン再取り込みを抑制すると同時に5HT1A受容体の抑制薬ともなるような改良された化合物を提供することが強く望まれている。
【発明の開示】
【0009】
発明の説明
本発明によると、化学式(I)で示される一連の新規な化合物、またはこれからなる製薬学的に許容しうる塩が得られる。
【化1】

【0010】
化学式(I)において、
、RおよびRは、互いに無関係であって、水素、水酸基、ハロゲン、シアノ基、炭酸アミド基、2ないし6個の炭素原子を有するカルボアルコキシ基、トリフルオロメチル基、1ないし6個の炭素原子を有するアルキル基、1ないし6個の炭素原子を有するアルコキシ基、2ないし6個の炭素原子を有するアルカノイル基、2ないし6個の炭素原子を有するアルカノイロキシ基、アミノ基、アルキル基がいずれも1ないし6個の炭素原子を有するモノまたはジアルキルアミノ基、2ないし6個の炭素原子を有するアルカンアミド基、1ないし6個の炭素原子を有するアルカンサルフォニル基、または1ないし6個の炭素原子を有するアルカンサルフォンアミド基であり、
XおよびYは、互いに無関係であって、水素、水酸基、ハロゲン、シアノ基、炭酸アミド基、2ないし6個の炭素原子を有するカルボアルコキシ基、トリフルオロメチル基、1ないし6個の炭素原子を有するアルキル基、1ないし6個の炭素原子を有するアルコキシ基、2ないし6個の炭素原子を有するアルカノイル基、2ないし6個の炭素原子を有するアルカノイロキシ基、アミノ基、アルキル基がいずれも1ないし6個の炭素原子を有するモノまたはジアルキルアミノ基、2ないし6個の炭素原子を有するアルカンアミド基、1ないし6個の炭素原子を有するアルカンサルフォニル基、または1ないし6個の炭素原子を有するアルカンサルフォンアミド基であるか、または、XおよびYは、両者が総合して、−N=C(R)−C(R)=N−、−N=C(R)−C(R)=CH−、−N=C(R)−N=CH−、−N=C(R)−O−、−NH−C(R)=N−、または−NH−C(R)=CH−であり、
およびRは、互いに無関係であって、水素、ハロゲン、アミノ基、アルキル基がいずれも1ないし6個の炭素原子を有するモノまたはジアルキルアミノ基、または1ないし6個の炭素原子を有するアルキル基であり、
は、水素または1ないし6個の炭素原子を有するアルキル基であり、
は、水素、ハロゲン、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、アミノ基、アルキル基がいずれも1ないし6個の炭素原子を有するモノまたはジアルキルアミノ基、または1ないし6個の炭素原子を有するアルキル基であり、
は、水素、ハロゲン、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、または1ないし6個の炭素原子を有するアルキル基であり、
破線は、随意的な二重結合を示しており、
Zは、酸素またはイオウであり、
Qは、炭素または窒素であり、
nは、0または1である。
【0011】
は、好ましくは、水素、ハロゲン、シアノ基、トリフルオロメチル基、1ないし6個の炭素原子を有するアルキル基、または1ないし6個の炭素原子を有するアルコキシ基である。より好ましくは、Rは、水素、ハロゲン、または1ないし6個の炭素原子を有するアルコキシ基である。本発明のさらに好ましい実施例では、Rは水素である。
【0012】
およびRは、好ましくは、互いに無関係に、水素、水酸基、ハロゲン、シアノ基、炭酸アミド基、1ないし6個の炭素原子を有するアルキル基、または1ないし6個の炭素原子を有するアルコキシ基から選択される。本発明のさらに好ましい実施例では、RおよびRは、互いに無関係に、水素、シアノ基、またはハロゲンから選択される。
【0013】
およびRは、好ましくは、互いに無関係に、水素、アミノ基、または1ないし6個の炭素原子を有するアルキル基である。より好ましくは、RおよびRは、互いに無関係に、水素、または1ないし3個の炭素原子を有するアルキル基である。
【0014】
およびRは、好ましくは、互いに無関係に、水素、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、または1ないし6個の炭素原子を有するアルキル基から選択される。より好ましくは、RおよびRは、互いに無関係に、水素、トリフルオロメチル基、または1ないし3個の炭素原子を有するアルキル基である。
【0015】
R6は、好ましくは、水素、または1ないし3個の炭素原子を有するアルキル基である。Zは、好ましくはイオウであり、Qは、好ましくは炭素であり、nは、好ましくは0であって破線は二重結合を表す。
【0016】
本発明の他の好ましい実施例においては、化学式(Ia)で表される化合物が得られる。
【化1a】

ここで、R1、R2、R3、R4、およびR6は前述の通りである。
【0017】
さらに本発明のその他の好ましい実施例においては、化学式(Ib)で表される化合物が得られる。
【化1b】

ここで、R1、R2、R3、およびR8は前述の通りである。
【0018】
本発明は、ベンゾジオキサンメチルアミンのRおよびS立体異性体のどちらにも関すると同時に、そのRおよびS立体異性体の混合物にも関する。本願書において、発明により得られた化合物の立体配置が示されていない場合、本発明の成果物の名称は、RおよびS光学異性体のいずれかだけでなく、両者の混合物をも意味する。本発明のいくつかの実施例においては、好ましくはS光学異性体である。本発明の特定の化合物については(例えば、XおよびYがイミダゾールを形成する場合)、互変異性型が存在する場合がある。従って、本出願は、本発明による化合物のすべての互変異性型をも包含する。
【0019】
実施例において、立体異性体が選択された場合、対応する光学異性体から実質的に独立しているものとする。従って、対応する光学異性体から実質的に独立した光学異性体とは、分離技術により単離または分離された、あるいは対応する光学異性体から独立して調製された化合物を指す。ここでいう「実質的に独立した」とは、一つの立体異性体の成分比率が非常に大きくなるように構成された化合物を意味する。特定の実施例における化合物は特定の立体異性体が重量比で少なくとも約90%となっている。本発明の他の実施例においては、化合物は特定の立体異性体が重量比で少なくとも約99%となっている。選択された光学異性体は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)やキラル塩の生成と結晶化
のような当業者に良く知られた方法でラセミ混合物から単離されるか、または以下に記述されている方法によって準備される。例えば、Jacques,et al., Enantiomers, Racemates and Resolutions(Wiley Interscience,New York,1981); Wilen,S.H.,et al., Tetrahedron 33:2725 (1977)、Eliel,E.L. Stereochemistry of Carbon Compounds(McGraw-Hill,NY,1962)、またはWilen,S.H. Tables of Resolving Agents and Optical Resolutions p.268 (E.L. Eliel, Ed.,Univ. of Notre Dame Press, Notre Dame, IN 1972)を参照せよ。
【0020】
ここでの用法として、「アルキル基」は、脂肪族炭化水素鎖を指しており、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、neo−ペンチル基、n−ヘキシル基、およびイソヘキシル基を意味する。低アルキル基とは1ないし3個の炭素原子を有するアルキル基を意味する。
【0021】
ここでの用法として、「アルカンアミド基」は、Rが1ないし5個の炭素原子のアルキル基であって、R−C(=O)−NH−である基を意味する。
【0022】
ここでの用法として、「アルカノイル基」は、Rが1ないし5個の炭素原子のアルキル基であって、R−C(=O)−である基を意味する。
【0023】
ここでの用法として、「アルカノイロキシ基」は、Rが1ないし5個の炭素原子のアルキル基であって、R−C(=O)−O−である基を意味する。
【0024】
ここでの用法として、「アルカンサルフォンアミド基」は、Rが1ないし6個の炭素原子のアルキル基であって、R−S(O)−NH−である基を意味する。
【0025】
ここでの用法として、「アルカンサルフォニル基」は、Rが1ないし6個の炭素原子のアルキル基であって、R−S(O)−である基を意味する。
【0026】
ここでの用法として、「アルコキシ基」は、Rが1ないし6個の炭素原子のアルキル基であって、R−O−である基を意味する。
【0027】
ここでの用法として、「カルボキサミド基」は、NH−C(=O)−である基を意味する。
【0028】
ここでの用法として、「カルボアルコキシ基」は、Rが1ないし5個の炭素原子のアルキル基であって、R−O−C(=O)−である基を意味する。
【0029】
ここでの用法として、「ハロゲン」(または「ハロ基」)は、塩素、臭素、フッ素、および沃素を意味する。
【0030】
製薬学的に許容しうる塩とは、以下の有機および無機の酸から誘導されるものである:酢酸、乳酸、クエン酸、桂皮酸、酒石酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、マロン酸、マンデル酸、リンゴ酸、シュウ酸、プロピオン酸、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硝酸、硫酸、グリコール酸、ピルビン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、サリチル酸、安息香酸、および同様に知られた許容される酸。
【0031】
化学式(I)の化合物の具体例は、
2−(4−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル−3,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−1−イルメチル)−8−メチル−2,3−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−f]キノリン、
2−(4−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル−3,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−1−イルメチル)−8−メチル−2,3−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−f]キノリン、
2−[4−(5−フルオロ−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル)−3,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−1−イルメチル]−8−メチル−2,3−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−f]キノリン、
2−[4−(7−メトキシ−ベンゾフラン−3−イル)−3,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−1−イルメチル]−8−メチル−2,3−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−f]キノリン、
2−[4−(5−フルオロ−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル)−3,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−1−イルメチル]−2,3−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−f]キノリン、
2−(4−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル−3,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−1−イルメチル)−2,3−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−f]キノリン、
2−(4−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル−3,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−1−イルメチル)−2,3−ジヒドロ−7H−[1,4]ジオキシノ[2,3−e]インドール、
2−[4−(5−フルオロ−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル)−3,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−1−イルメチル]−2,3−ジヒドロ−7H−[1,4]ジオキシノ[2,3−e]インドール、
8−(4−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル−3,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−1−イルメチル)−2−メチル−7,8−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−g][1,3]ベンゾオキサゾール、
2−(4−ベンゾ[b]チオフェン−7−イル−3,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−1−イルメチル)−8−メチル−2,3−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−f]キノリン、
2−(4−ベンゾフラン−2−イル−3,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−1−イルメチル)−8−メチル−2,3−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−f]キノリン、
2−(4−ベンゾフラン−2−イル−ピペリジン−1−イルメチル)−8−メチル−2,3−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−f]キノリン、
2−[4−(5−クロロ−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル)−3,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−1−イルメチル]−8−メチル−2,3−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−f]キノリン、
2−(4−ベンゾオキサゾール−2−イル−ピペリジン−1−イルメチル)−8−メチル−2,3−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−f]キノリン、である。
【0032】
本発明による化合物は、以下に述べる一般的な説明と具体例に従って調製される。特に断らなければ、使われる変数は化学式(I)に対して定義されたものである。(図式1):特に、以下に図示されるように、適当に置換されたピペリジン(2)が、ジメチル・スルホキシドなどの溶媒中において、適切に置換されたメチルトシル酸ベンゾジオキサンまたは臭化ベンゾジオキサン(1)と化合されて、数時間、70ないし100℃に加熱される。
【0033】
あるいは、適当に置換されたピペリジンを適切に置換された塩化カルボン酸ベンゾジオキサンによりアシル化してから、得られたアミドを水素化アルミニウムリチウムまたはボラン/THFなどの適切な還元剤によってアミンに還元しても良い。また、ピペリジンを、水素化シアノボロ・ナトリウムのような還元剤の存在下で、適切に置換されたベンゾジオキサン・カルボキシアルデヒドと化合させても良い。
【化1】

【0034】
(図式2):他の方法としては、適当に置換されたピリジン(3)が、ジメチル・スルホキシドなどの高沸点極性溶媒中において、適切に置換されたメチルトシル酸ベンゾジオキサンまたは臭化ベンゾジオキサン(1)によりアルキル化されて、ピリジニウムイオン(4)を作る。
【化2】

【0035】
メチルトシル酸ベンゾジオキサンおよびハロゲン化ベンゾジオキサン(1)は既知の化合物であり、後述の図式3の方法(a)によって、適当に置換されたサリチルアルデヒドから調製しても良い。サリチルアルデヒド(5)は、適切な塩基の存在下において、エピハロヒドリンまたはアリルスルホン酸グリシジルによってアルキル化される。アルデヒド成分は、ベイヤー・ビリジャー(Baeyer−Villager)法によりフェノールに変換され、炭酸カリウムのような塩基によって処理され環化してベンゾジオキサン・メタノール(7)を生じる。このアルコールは、塩化p−トルエンスルホン酸と第3アミン塩基によって処理されてトシレートに変化する、または処理によって臭化物に変化する。他の方法(b)としては、置換されたサリチルアルデヒド(8)を、ベンジルやアルデヒド(9)のような適切な保護基によって保護し、上述のように、フェノール(10)に変換しても良い。フェノールのグリシジルエーテル(11)への変化に続いて、脱保護基と環化が、重炭酸ナトリウムの存在下で、トランスファー水素化により同時に生じる。臭化物またはトシレートは、前述のようにして調製される。あるいは、メチル臭化ベンゾジオキサンは、前記の手順(c)によって適切に置換されたグアヤコール(12)から調製しても良い。グアヤコールは前述のようにアリルスルホン酸グリシジルまたはエピハロヒドリンによってアルキル化される。さらに、メチルエーテル(13)は48%の臭化水素によって処理されて開裂し、エポキシドがブロモヒドリン(14)に変換される。メチル臭化ベンゾジオキサンへの直接環化は、ミツォノブ(Mitsonobu)法により生じる。
【化3】

【0036】
がHである本発明による2,3−ジヒドロ−1,4ジオキシノ[2,3−f]キノリン−2−イルメチルアミンは、以下の図式4に示されているように、調製しても良い。
【0037】
特に、適当に置換されたニトログアヤコール(15)は、水素化ナトリウムなどの適切な塩基の存在下において臭化アリルによってアルキル化された後に、水酸化ナトリウムなどの試薬により脱メチル化される。得られた4−ニトロ−2−アリルオキシフェノール(17)は、さらに、水素化ナトリウムなどの塩基の存在下において、トシル酸グリシジルまたはエピハロヒドリンによってアルキル化され、メシチレンやキシレンなどの高沸点溶媒中で加熱されて、アルキル基の転位とジオキサン環の環化が生じる。結果として生じた第一級アルコール(19)は、第3アミンまたはピリジンの存在下において、塩化p−トルエンスルホン酸と反応してトシレートに変換される。あるいは、その他に、トリフェニルホスフィンと結合して四臭化炭素または四塩化炭素と反応し、ハロゲン化物に変換される。その後、アリル側鎖は、還流する塩化メチレンまたはベンゼン中で触媒である塩化ビスアセトニトリル・パラジウム(II)で処理されて異性体化される。還流するジオキサンと水のもとで化合物(20)の酸化セレンによるアリル酸化によりo−ニトロ桂皮アルデヒドが得られ、酢酸中の鉄によって直ちに還元されて環化され、2,3−ジヒドロ−1,4ジオキシノ[2,3−f]キノリン−2−メチルトシレート(21)またはハロゲン化物が得られる。トシレートまたはハロゲン化物は、ジメチルスルホン酸などの高沸点溶媒中で、適当に置換されたピペリジンによって置換されて、本願発明の表題の化合物が得られる。
【化4】

【0038】
がアルキル基である本発明の2,3−ジヒドロ−1,4ジオキシノ[2,3−f]キノリン−2−イルメチルアミンは、以下の様式(図式5)で、上述のニトロオレフィンから調製しても良い。転位したオレフィン(20)は、オゾンと第3アミンあるいは四酸化オスミウムと過ヨウ素酸ナトリウムにより順次処理されてo−ニトロベンズアルデヒド(22)となる。ウィティッヒ(Wittig)状態における適当なトリフェニルホスホリリデン・ケトンによる縮合によって、o−ニトロシンナミル・ケトンが得られ、これは、酢酸中の鉄によって直ちに還元されて環化され、対応する2,3−ジヒドロ−1,4ジオキシノ[2,3−f]キノリン−2−メチルトシレート(24)が得られる。上述のように、トシレートは、適当に置換されたピペリジンによって置換されて、本願発明の表題の化合物が得られる。上記のウィティッヒ(Wittig)過程におけるトリメチルホスホノアセテートのトリフェニルホスホリリデン・ケトンへの置換は、それに続く塩化スズ(II)によるニトロ基の還元と酸における環化を経て、Rが水酸基である本発明の化合物を生じさせる。この水酸基誘導体は、塩化ホスホリルまたは臭化ホスホリルなどの酸塩化物とともに処理されて、Rがハロゲン基である本発明の化合物を生じさせる。上記のウィティッヒ(Wittig)過程におけるシアノメチルホスホン酸ジエチルのトリフェニルホスホリリデン・ケトンへの置換は、それに続く塩化スズ(II)によるニトロ基の還元と酸における環化を経て、Rが水酸基である本発明の化合物を生じさせる。この水酸基誘導体は、塩化ホスホリルまたは臭化ホスホリルなどの酸塩化物とともに処理されて、Rがアミノ基である本発明の化合物を生じさせる。
【化5】

【0039】
が2,3−ジヒドロ−1,4ジオキシノ[2,3−f]キノリン−2−イルメチルアミンの6の位置に付けられた本発明の化合物は、以上の他に、次の図式6のスクラウプ(Skraup)キノリン合成法の一種によって調製しても良い。適当に置換されたメチルトシル酸ベンゾジオキサン(25)は、ジクロロエタンなどの溶媒中で標準条件下にて硝酸処理されて、得られたニトロ化合物(26)は、硫化炭素上の白金などの触媒によって水素による処理で還元される。得られたアニリン(27)は、塩化水素とp−クロルアニルまたはナフトキノンなどの酸化剤との存在下において、アクロレインとともに処理されて、対応する2,3−ジヒドロ−1,4ジオキシノ[2,3−f]キノリン(28)を生じさせる。上述のように、トシレートは、適当に置換されたピペリジンによって置換されて、本願発明の表題の化合物を生じさせる。
【化6】

【0040】
本発明の2,3−ジヒドロ−1,4ジオキシノ[2,3−f]キナゾリン−2−イルメチルアミンは、以下に(図式7)図示するようにして調製される。上述のo−ニトロベンズアルデヒド(22)は、酢酸ナトリウムなどの適切な塩基の存在下にてヒドロキシルアミン塩酸塩との処理によりオキシム(29)に変換され、その後、ニトロ基は、炭素上のパラジウムでの水素化によりアミンに還元される。N−酸化キナゾリンへの環化は、オストロウスキ(Ostrowski)の方法(Heterocycles,vol.43,No.2,p.389,1996)に従って、適当なオルト・エステルと還流処理することにより生じる。N−酸化キナゾリンは、ラネーニッケル上の水素などの適切な還元剤によりキナゾリン(30)に還元してもよい。他の方法としては、オルト・エステルでの長時間の還流をすれば、直接不均化反応により還元されたキナゾリンが生じ、カラム・クロマトグラフィによって、2,3−ジヒドロ−1,4ジオキシノ[2,3−f]キナゾリン−2−メチルトシレートまたはハロゲン化物が分離される。トシレートまたはハロゲン化物は、ジメチルスルホン酸などの高沸点溶媒中で、適当に置換されたピペリジンによって置換されて、本願発明の表題の化合物が得られる。
【化7】

【0041】
本発明の2,3−ジヒドロ−1,4ジオキシノ[2,3−f]キナゾリン−2−イルメチルアミンは、その他に、以下の図式8に示した方法によって、上述の転位したオレフィンから調製しても良い。ニトロオレフィン(20)は、まず、還流するエチルアセテート中にて塩化第一スズ二水和物などの適切な還元剤で処理されてアニリンに還元され、得られたアミンは、適当な酸ハロゲン化物または無水物によってアシル化される。オレフィン(31)は、次に、過剰な過ヨウ素酸ナトリウムの存在下において、触媒作用をする四酸化オスミウムによる開裂によってアルデヒド(32)に変換される。2,3−ジヒドロ−1,4ジオキシノ[2,3−f]キナゾリン−2−メチルトシレート(30)またはハロゲン化物への直接の環化は、アンモニアとアミドアルデヒドによる処理で生じ、ジメチルスルホン酸などの高沸点溶媒中で、適当に置換されたピペリジンによるトシレートまたはハロゲン化物の置換によって、上述と同様に、本願発明の表題の化合物が得られる。
【化8】

【0042】
本発明の2,3−ジヒドロ−1,4ジオキシノ[2,3−f]キノザリン−2−イルメチルアミンは、以下の図式9に図示するようにして調製される。上述のo−ニトロベンズアルデヒド(22)は、三酸化クロム(ジョーンズ酸化)または亜塩素酸ナトリウムなどの適切な酸化剤により酸化されてo−ニトロ安息香酸(33)になり、この酸は、ジイソプロピルエチルアミンなどの第3塩基の存在下にて、ジフェニルフォスフォリルアジド(DPPA)によってo−ニトロアニリン(34)に変換される。得られたニトロアニリンは炭素上のパラジウムと水素により還元されてジアミンになり、適当なジカルボニル化合物(例えば、グリオキサール、2,3−ブタンジオン、3,4−ヘキサンジオン)による処理で環化されて2,3−ジヒドロ−1,4ジオキシノ[2,3−f]キノザリン−2−メチルトシレート(36)またはハロゲン化物を生じる。トシレートまたはハロゲン化物は、ジメチルスルホン酸などの高沸点溶媒中で、適当に置換されたピペリジンによって置換されて、本願発明の表題の化合物が得られる。
【化9】

【0043】
上述の化学反応で用いられたo−ニトロベンズアルデヒド(22)は、この他に、以下の図式10に示すようにして調製しても良い。適当なモノアリル化カテコール(37)は上述のようにトシル酸グリシジルから合成され、還流するメシチレンにより転位する。ベンゾジオキサンメタノール(39)への環化は、エタノール中にて重炭酸ナトリウムとの処理により行われ、このアルコールは、上述のようにしてトシレート(40)またはハロゲン化物に変換される。還流する塩化メチレン中で触媒である塩化ビスアセトニトリル・パラジウム(II)で処理されて二重結合が転位し、上述のごとくオゾンまたは過ヨウ素酸ナトリウム中の四酸化オスミウムによって開裂した後に、得られたアルデヒド(41)は、硝酸および塩化スズ(IV)との組み合わせにより位置選択的に硝酸処理される。
【化10】

【0044】
本発明の7,8−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−g][1,3]ベンズオキサゾール−8−イルメチルアミンは、以下の図式8に図示するようにして調製される。図式8に示されているアミドオレフィン(31)は、過ヨウ素酸ナトリウムの存在下にて触媒である四酸化オスミウムで処理されて開裂して対応するo−アミドベンズアルデヒド(32)になる。このアルデヒドは、ベイヤー・ビリジャー(Baeyer−Villager)反応においてメタ・ペルオキシ安息香酸による処理でフェノール(42)に変換され、オルト・エステルなどの適当な脱水剤またはp−トルエンスルホン酸などの酸触媒によって還流にて処理されて、7,8−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−g][1,3]ベンズオキサゾール(43)への環化を生じる。トシレートまたはハロゲン化物は、ジメチルスルホン酸などの高沸点溶媒中で、適当に置換されたピペリジンによって置換されて、本願発明の表題の化合物が得られる。
【化11】

【0045】
他の方法として、ニトロオレフィン(20)は、このオレフィンを過ヨウ素酸ナトリウム中の四酸化オスミウムにより開裂してアルデヒド(45)としてからベイヤー・ビリジャー(Baeyer−Villager)法によりフェノール(46)に変換する前に、上記の図式8に示すように塩化スズ(II)により還元し、カルボベンゾキシ(Cbz)などの適切な保護基により保護しても良い。炭素に付着したパラジウム上での水素との処理による脱保護基反応でo−アミノフェノール(47)が得られ、これは、適当なオルト・エステル、カルボン酸または無水物によって処理されて、7,8−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−g][1,3]ベンズオキサゾール(43)へと環化する。o−アミノフェノールを、臭化または塩化シアンあるいは適切に置換された塩化カルバモイルで処理すると、Rがアミノ基である本発明の化合物が導かれる。o−アミノフェノールを、カルボニル・ジイミダゾールで処理するとオキサゾロンが得られ、これは、塩化または臭化ホスホリルなどの無機無水物による処理を経て、Rがハロゲンである本発明の化合物に至る。上述のように、適当に置換されたピペリジンによってトシレートを置換すると、本発明の表題の化合物が得られる。
【化12】

【0046】
が水素でRがアルキル基である本発明の化合物は、以下の図式13に従って最も都合良く調製される。適当な2’,3’,4’− 三水酸基アシルフェノン(48)は、炭酸ナトリウムなどの塩基の存在下において、トシル酸グリシジルまたはエピハロヒドリンによって位置選択的にアルキル化され、対応する7−アシル−8−ヒドロキシベンゾジオキサン−2−メタノール(49)を生じる。ヒドロキシルアミン塩酸塩および酢酸ナトリウムによる反応でケトンがオキシムに変換された後、適当なジメチルアルカン酸アミド中で塩化ホスホリルで処理されてオキサゾール(51)への環化が起こる。得られた7,8−ジヒドロ−1,6,9−トリオキサ−3−アザ−シクロペンタ[a]ナフタレン−8−メタノールは、ピリジン中にて塩化p−トルエンスルホン酸により処理されてトシレート(52)に変換され、上述のように適当なピペリジンと結合されて本発明の表題の化合物を生じる。
【化13】

【0047】
本発明の7,8−ジヒドロ−3H−6,9−ジオキサ−1,3−ジアザ−シクロペンタ[a]ナフタレンは、以下の図式14に図示するようにして調製される。図式9で述べたジアミン(35)は、適当なカルボン酸の還流で処理されて環化し、イミダゾール(53)を生じる。高沸点カルボン酸中の2塩酸ジアミンの還流により、時にはトシル基の塩化物による置換が起こる。ジメチルスルホン酸などの高沸点溶媒中で、適当に置換されたピペリジンによってトシレートまたはハロゲン化物が置換されて、Rが水素、ペルフルオロアルキル基またはアルキル基である本発明の7,8−ジヒドロ−3H−6,9−ジオキサ−1,3−ジアザ−シクロペンタ[a]ナフタレンが得られる。上述のジアミンを臭化または塩化シアンあるいは適切に置換された塩化カルバモイルで処理すると、Rがアミノ基である本発明の化合物が導かれる。ジアミンをカルボニル・ジイミダゾールで処理するとイミダゾロンが得られ、これは、塩化または臭化ホスホリルなどの無機無水物による処理を経て、Rがハロゲンである本発明の化合物に至る。上述のように、適当に置換されたピペリジンによってトシレートを置換すると、本発明の表題の化合物が得られる。
【化14】

【0048】
本発明の2,3−ジヒドロ−7H−[1,4]ジオキシノ[2,3−e]インドールは、以下の図式15に図示するようにして調製される。特に、図式4で述べたクライゼン(Claisen)転位による第一級アルコール(19)は、第3アミンまたはピリジンの存在下において、塩化p−トルエンスルホン酸と反応してトシレート(54)に変換される。あるいは、その他に、トリフェニルホスフィンと結合して四臭化炭素または四塩化炭素と反応し、ハロゲン化物に変換される。その後、アリル側鎖は、低温にてオゾンで処理された後、ジイソプロピルエチルアミンまたはトリエチルアミンなどの第三塩基を徐々に作用させるかあるいは触媒作用をする四酸化オスミウムと過ヨウ素酸ナトリウムとによる処理かによって、開裂してアルデヒド(55)になる。ニトロ基は、炭素上のパラジウムでの水素化によりアミンに還元される。酸化白金上の水素によって還元されたニトロ基は、Rが水素であるインドール(56)を直接形成する。この他に、アルデヒドを、適当なグリニャール(Grignard)試薬で処理するか、またはフッ化セシウムの存在下でトリフルオロメチル・トリメチルシランで処理し、その後、クロロクロム酸ピリジニウム(PCC)またはスウェルン(Swern)試薬などの適切な酸化剤によって酸化してケトンにしてから、酸化白金上の水素によって還元して、Rがアルキル基またはトリフルオロメチル基であるインドール(56)を生じさせても良い。トシレートまたはハロゲン化物は、ジメチルスルホン酸などの高沸点溶媒中で、適当に置換されたピペリジンによって置換されて、本発明の表題の化合物を生じさせる。
【化15】

【0049】
本発明の2,3−ジヒドロ−7H−[1,4]ジオキシノ[2,3−e]インドールは、この他に、以下の手順(図式16)によって、ニトロアルデヒド(21)から調製しても良い。o−ニトロベンズアルデヒド(22)は、適切な塩基触媒の存在下において、適当なニトロアルカンによって濃縮され、対応するo,β−ジニトロスチレン(57)を生じる。2つのニトロ基は、炭素上のパラジウムによる水素で還元された後に環化して、インドール(58)を形成する。トシレートは、上述のように適当に置換されたピペリジンによって置換されて、本発明の表題の化合物を生じさせる。
【化16】

【0050】
本発明の化合物は、従来からの方法によって、その光学異性体に分離しても良く、あるいは、好ましくは、上述の手順におけるエピハドヒドリンまたはラセミ体トシル酸グリシジルの代わりに、(2R)−(−)−グリシジル・3−ニトロベンゼン−スルホン酸またはトシル酸(Sベンゾジオキサン・メタンアミンのために)、あるいは(2S)−(+)−グリシジル・3−ニトロベンゼン−スルホン酸またはトシル酸(R光学異性体のために)の置換によって、個別の光学異性体を直接調製しても良い。
【0051】
さらにもう一つの方法では、本発明の複素環縮合ベンゾジオキサンは、図式17に従って調製しても良い。化合物Iの合成は、R’が1ないし6の炭素原子を有するアルキル基である59を、アセトニトリル中のN−ハロスクシニミドなどの試薬によりハロゲン化して60(Halは臭素、塩素、沃素などのハロゲン)を生じることから始まる複数のステップから成る。塩化メチレンなどの適切な溶媒中で三臭化ホウ素、三塩化ホウ素、三塩化アルミニウム、塩化第2鉄またはヨウ化トリメチルシリルなどのルイス(Lewis)酸により、あるいは、臭化水素や塩化水素などの強プロトン酸により、60は脱保護基反応を起こして塩61を生じる。61の遊離塩基は、エタノールまたはメタノールなどの極性溶媒中でアンバーリストA−21レジンスラリーによる中和によって得ても良い。
【0052】
炭酸ナトリウム、炭酸カリウムまたはトリエチルアミンなどの塩基の存在下にて、DMSO、DMFまたはDMAなどの適切な極性溶媒中で、ベンジルまたは置換されたベンジルで保護されたグリシジルエーテル((R’’を含む図式)、ここで、R’’はベンジル、4−ブロモベンジル、3,4−ジメトキシベンジル、2−または4−ニトロベンジル、または4−メトキシベンジルなどの置換されたベンジル)によって、61はアルキル化されて、遊離塩基または塩として、62を生じる。次いで、62は、トルエンなどの適切な溶媒中で、NaH、LiH、KH、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸チタニウム、炭酸セシウム、t−ブトキシドカリウムまたは三塩基性リン酸カリウムなどの塩基の存在下において、トリス・ジベンジリデンアセトン・ジパラジウム、テトラキス・トリフェニルホスフィン・パラジウム、パラジウムアセテートなどのパラジウム触媒を、(±)BINAPやその個別の光学異性体、(±)Tol−BINAPやその個別の光学異性体、1−1’−ビス・ ジフェニルホスフィノ・フェロセン、1,3−ビス・ジフェニルホスフィノ・プロパン、1,2ビス・ジフェニルホスフィノ・エタンから成る群の配位子とともに用いることにより、あるいはまた、トルエンなどの適切な溶媒中で、NaH、LiH、KHなどの塩基の存在下において、ヨウ化銅などの銅触媒により、環化されて63が得られる
【化17】

【0053】
塩化メチレンなどの適切な溶媒中で、三臭化ホウ素、三塩化ホウ素、三塩化アルミニウム、塩化第2鉄またはヨウ化トリメチルシリルなどのルイス(Lewis)酸により、または、HBr、HClなどの強プロトン酸により、あるいはまた、パラジウム触媒および水素、シクロヘキセン、メチルシクロヘキセンまたはギ酸アンモニウムなどの水素転移試薬とを用いた還元開裂条件により、キノリン63が脱保護基反応を起こして、複素環縮合ベンゾジオキサンメタノール64を生じる。
【0054】
64のヒドロキシル部分は、塩化メチレン、THFまたはトルエンなどの適切な溶媒中で、トリエチルアミンまたはピリジンなどの塩基の存在下にて、塩化p−トルエンスルホニル、塩化メタンスルホニル、塩化2−、3−または4−ニトロベンゼンスルホニル、あるいは塩化2−または4−ブロモベンゼンスルホニルなどの塩化アリル−またはアルキルスルホニルによって活性化されて、R’’’がp−トルエンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−、3−または4−ニトロベンゼンスルホン酸塩、あるいは、2−または4−ブロモベンゼンスルホン酸塩などのスルホン酸塩である65が得られる。THF、ジオキサン、DMSO、DMFまたはDMAなどの極性溶媒中で、ヒーニッヒ(Huenig)塩基(ジイソプロピルエチルアミン)、炭酸カリウムまたは炭酸ナトリウムなどの塩基の存在下にて、65は、本発明に適したピペリジンと結合して、本発明Iの化合物が得られる。
【0055】
上述の化学反応に適したフェノール、グアヤコール、カテコール、2’、3’、4’−トリヒドロキシアシルフェノンおよびメチルトシル酸ベンゾジオキサンは、公知の化合物またはこの分野の技術教育を受けた者により調製できるものである。適当に置換されたピペリジンやテトラヒドロピリジン、例えば、以下の図式18に図示した4−(7−メトキシベンゾフラン−3−イル)−1,2,3,6−テトラヒドロピリジンは、公知の化合物またはこの分野の技術教育を受けた者により容易に調製できるものである。適当に置換されたベンゾフラノン(66)は、トリフル無水物(triflic anhydride)およびトリエチルアミンなどの第3塩基によって処理して、トリフレート(67)に変換される。ジオキサボロラン(68)への変換は、塩化[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)などの適切なパラジウム触媒および第3塩基の存在下にて、4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロランにより処理することで行われる。ジオキサボロラン(68)は、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)などのパラジウム触媒を含むスズキ条件の下で、適当に保護されたアザ複素環トリフレートと結合されて(69)を生じ、それに続く脱保護基によって、本発明の化合物の一種を製造するのに適した置換テトラヒドロピリジン(70)が得られる。炭素上のパラジウムなどの触媒による水素化によって、70の二重結合が還元されて、置換ピペリジンを生じる。置換ピペリジンは本発明のさらに別の化合物の製造に必要である。
【化18】

【0056】
図式2に適合した置換ピリジンは公知の化合物であるか、または、以下の図式19に4−ベンゾ[b]チオフェン−7−イル−ピリジンのために図示した方法により、この分野の技術教育を受けた者により容易に調製できる。適切に置換されたブロモベンゾチオフェンまたはブロモベンゾフラン(71)は、塩化[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)などのパラジウム触媒を含むスズキ条件の下で、ピリジン−4−ボロン酸と結合して、本発明の化合物の製造に有益な中間物(72)を生じるようにしても良い。
【化19】

【0057】
チータム(Cheetham)ら(Neuropharmacol.32:737,1993)によって用いられたのと同じ手順が、本発明の化合物のセロトニン輸送体に対する親和性を決定するために用いられた。この化合物が雄のラットの前頭皮質膜からH−パロキセチンを除去する能力は、トムテック(Tom Tech)ろ過装置を用いて遊離H−パロキセチンの影響を分離し、ワラック1205ベータプレート(Wallac 1205 Beta Plate)計数器を用いて放射活性量を計って、決定した。こうして決定された標準臨床抗うつ薬に対するKjは、フルオキセチンに対しては1.96nMであり、イミプラミンに対しては14.2nM、ジメリジンに対しては67.6nMである。ラットの前頭皮質膜におけるH−パロキセチン結合とH−セロトニン吸収阻害との間には強い相関関係が見られた。
【0058】
セロトニン5−HT1A受容体に対する高い親和性は、ヒトの5−HT1A受容体の核酸を安定に入れたCHO細胞を用いるホール(Hall)らの方法(J.Neurochem.44,1685(1985))を一部変更した方法によって、5−HT1Aセロトニン受容体から[H]8−OHDPAT(ジプロピルアミノテトラリン)を除去する請求の範囲に記載の化合物の能力を試験することにより、確認された。本発明の化合物に対する5−HT1A親和性は、下記にKjとして報告する。
【0059】
5−HT1A受容体における抑制因子活性は、ラザレノ(Lazareno)とビルドサル(Birdsall)が用いた方法と同様の35S−GTPγS結合アッセイを用いて確認された。その方法で、クローン・ヒト5−HT1A受容体を含む膜に対する35S−GTPγSの結合に影響する試験化合物の能力を決定した。作動因子は結合を生み出すが、抑制因子は何の増加も生み出さず、むしろ標準的な作動因子8−OHDPATの効果を無効にする。試験した化合物の最高抑制効果はmaxとして表現されており、その有効性はIC50で定義した。
【0060】
前述の3つの段落において述べた3つの標準的な試験手順は次の通りである。
【表1】

【0061】

【0062】
フルオキセチン、パロキセチンおよびセルトラリンといった抗うつ薬と同様に、本発明の化合物は、脳の神経伝達物質セロトニンの再取り込みを強く阻止する能力を有している。従って、それらは、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の投与によって通常治療されている病態の治療に有効である。例えば、うつ病(大うつ病性障害、小児期うつ病、気分変調を含むがこれに限られない)、不安症、パニック障害、心的外傷後ストレス障害、月経前不快気分障害(月経前症候群としても知られている)、注意力欠如障害(活動過剰を伴う場合と伴わない場合とがある)、強迫障害(抜毛癖を含むがこれに限られない)、スペクトラム脅迫障害(自閉症を含むがこれに限られない)、社会不安障害、全般性不安障害、肥満症、拒食症や多食症といった摂食障害、血管運動性顔面紅潮、コカイン依存症やアルコール依存症、性機能障害(早漏を含むがこれに限られない)、失禁(便失禁、急迫性尿失禁、溢流性尿失禁、受動失禁、反射性尿失禁、腹圧性尿失禁、労作性尿失禁および尿失禁を含むがこれに限られない)および関連する諸症状である。さらに、本発明の化合物は、5−HT1Aセロトニン受容体に対する強力な親和性と抑制活性とを有している。混合薬剤(例えば、フルオキセチンおよびピンドロール)を用いた最近の臨床試験によると、SSRI活性と5−HT1A抑制とを組み合わせることで、治療における抑うつ効果の発現がより早いことが示されている(Blier and Bergeron,1995;F.Artigas et al.,1996;M.B.Tome et al.,1997)。従って、本発明の化合物は、抑うつ病の治療に対して非常に興味深く、かつ、有益である。
【0063】
このように、本発明は、哺乳類、特に人類における上記に掲げたそれぞれの病気を治療し、予防し、抑制し、または緩和する方法を提供し、それを必要とする哺乳類に対して薬剤として有効な量の本発明化合物を与えることから成る方法を提供する。
【0064】
さらに、少なくとも1つの化学式Iの化合物、その混合物、および、または、その製剤可能な塩、および薬剤として許容できるそのための基材からなる、病状あるいは中枢神経系を治療・抑制するための製剤可能な混合物は、この発明により包含される。そのような混合物は、「レミントン製剤科学(Remington’s Phermaceutical Sciences,17th edition,ed.Alfonoso R.Gennaro,Mack Publishing Company,Easton,PA(1985)」に述べられているような許容できる製剤手順に従って調製される。薬剤として許容できる基材は、製剤における他の成分と両立しうるものであり、生物学的に受け入れられるものである。
【0065】
この発明の化合物の投与は、そのままでも従来の薬剤基材と混合しても良く、また、経口でも非経口でも良い。可能な固体基材には、着香料、潤滑剤、可溶化剤、懸濁化剤、増量剤、流動促進剤、圧縮補助剤、結合剤または錠剤崩壊剤、あるいは封止剤としても作用する1またはそれ以上の材料が含まれる。粉末の場合には、基材は、細かく分割された機能成分と混合された細かく分割された固体である。錠剤の場合には、機能成分は、適切な比率で必要な圧縮特性を有する基材と混合されて、所望の形状・大きさに詰められる。粉末および錠剤は、好ましくは機能成分が99%まで含有される。適切な固体基材には、例えば、リン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、砂糖、乳糖、デキストリン、でんぷん、ゼラチン、セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチル・セルロース・ナトリウム、ポリビニルピロリジン、低融点ワックスおよびイオン交換樹脂を含む。
【0066】
液体基材は、溶液、懸濁液、乳液、シロップおよびエリキシル剤を準備するのに用いても良い。この発明の機能成分は、水、有機溶液、両者の混合液、あるいは製剤に許容しうる油または油脂などの製剤上許容できる液体に溶解または懸濁可能である。液体基材は、可溶化剤、乳化剤、緩衝剤、防腐剤、甘味料、着香料、懸濁化剤、増粘剤、着色、粘性調節剤、安定剤または浸透圧調節剤などのその他の適切な製剤上の添加物を含むことができる。経口または非経口投与のための液体基材として適切な例には、水(特に、上述の添加物、例えば、セルロース誘導体、好ましくは、カルボキシメチル・セルロース・ナトリウム溶液を含む)、アルコール(一価アルコールまたは多価アルコール例えばグリコールを含む)およびそれらの誘導体、および油(例えば、ヤシ油およびラッカセイ油)を含む。非経口投与のために、基材は、オレイン酸エチルやミリスチン酸イソプロピルなどのオイリー・エステルであってもよい。滅菌液体基材は、非経口投与のための滅菌液状混合物において使用される。
【0067】
滅菌の溶液または懸濁液である液状製薬混合物は、例えば、筋肉注射、腹腔内投与あるいは皮下注射によって投与され得る。滅菌溶液は、静脈内に投与することもできる。液状または固形混合物形態では、経口投与しても良い。
【0068】
好ましくは、製薬混合物は、単位投薬形態、例えば、錠剤、カプセル、粉末、溶液、懸濁液、乳剤、顆粒または座薬の形態になっている。そのような形態の場合、混合物は、有効成分の適量を含む単位用量に細分されている。すなわち、単位用量形態は、例えば、小分けした粉末、小瓶、アンプル、充填済み注射器または液体入り小袋などの包装された混合物になっていてもよい。単位用量形態は、例えば、カプセルや錠剤自体であっても良いし、適当な数のそれらの混合物を包装したものであっても良い。
【0069】
患者に与えられる量は、何が投与されるか、病気の予防か治療かといった投与の目的や患者の状態、投与の方法、その他によって変わる。治療への適用においては、この発明の化合物は、既に病気に罹っている患者に対して、治癒あるいは少なくとも病気やその合併症の症状がいくらかでも回復するために十分な量だけ与えられる。これを実現するのに適切な量は、「治療有効量」として定義される。特別な場合の治療において用いられるべき用量は、主治医の判断により決められなければならない。関連する変数には、特別な状態、および患者の大きさ、年令、反応パターンなどが含まれる。一般的には、最初の投薬量は1日当たりおよそ5ミリグラムであり、ヒトにおいて望ましい用量を与えるように、日用量を1日当たりおよそ150ミリグラムまで徐々に増やしていく。
【0070】
与えるとは、ここでは、本発明の化合物または混合物を直接投与することだけでなく、体内において活性な化合物すなわち薬物の同等量を形成するプロドラッグ、誘導体あるいは類似物を投与することをも意味する。
【0071】
本発明は、化学式I、IaおよびIbの化合物のプロドラッグを含む。プロドラッグとは、ここでは、代謝手段により(例えば、加水分解により)体内で化学式Iの化合物に転換可能な化合物を意味する。例えば、Bundgaard,(ed.),Design of Prodrugs,Elsevier(1985); Widder,et al.(ed.),Methods in Enzymology,vol.4,Academic Press(1985); Krogsgaard−Larsen,et al.,(ed).“Design and Application of Prodrugs,Textbook of Drug Design and Development, Chapter 5,113−191(1991), Bundgaard,et al.,Journal of Drug Deliver Reviews,8:1−38(1992), Bundgaard,J.of Pharmaceutical Sciences,77:285 et seq.(1988)およびHiguchi and Stella(eds.)Prodrugs as Novel Drug Delivery Systems,American Chemical Society(1975)において議論されているように、様々の形態のプロドラッグが、当技術分野で知られている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0072】
以下の実施例において、本発明の代表的な化合物の製造について説明している。
【0073】

中間体1
3−アリルオキシ−4−メトキシニトロベンゼン

5−ニトログアヤコールのナトリウム塩97.5グラム(0.51モル)を1リットルのDMFに溶解し、1.5当量の臭化アリルを加えた。反応物を65℃で2時間加熱し、その後、暗色はほとんど失われ、1:1のCHCl/ヘキサンによる薄層クロマトグラフ法(TLC)によると、出発材料が失われていることが分かった。溶液は真空中で濃縮され、残留物を水で洗浄した。生成物は、ろ過により単離して、真空中で乾燥した。こうして、淡黄色の固形物が112グラム得られた。メタノールによる再結晶化した試料は93−94℃の融点を示した。
【0074】

中間体2
2−アリルオキシ−4−ニトロフェノール

1リットルのジメチル・スルホキシドに750mLの2N水酸化ナトリウム水溶液を加え、混合液を65℃に加熱した。上記で調製した淡黄色固形物の3−アリルオキシ−4−メトキシニトロベンゼンを30分間かけて少しずつ加え、その後、温度を95℃に上げて3時間保持すると、出発材料はすべて消費された。その混合物は冷却され、1リットルの水と1リットルの2N塩酸との混合液に注がれた。精製していないが(1:1のCHCl/ヘキサンでのTLCによると)均一な所望の生成物が、ろ過により、淡褐色の固形物として単離された。この材料は、その後で、1:1のヘキサン/塩化メチレンに溶解されてシリカゲルを透過して68グラムの淡黄色固形物が得られた。これはエチル/アセテート/ヘキサンにより再結晶化すると、61−62℃の融点を示した。上述の初めの再結晶化の母液水溶液は、2リットルのエチルアセテートにより抽出された。これは、硫酸ナトリウムで乾燥され、ろ過され、濃縮されて濃い油となった。1:1のCHCl/ヘキサンによるシリカでのカラム・クロマトグラフィにより、追加して12グラムの表題の化合物が、黄色の固形物として得られた。CHCl中2%のMeOHによる溶出により、真空中でゆっくり結晶化する濃い油が12グラム得られた。これは、クライゼン(Claisen)生成物、3−アリル−4−ニトロカテコールであることが分かった。
【0075】

中間体3
2−(2−アリルオキシ−4−ニトロフェノキシメチル)−オキシラン

20グラム(0.50モル)の60%NaOH/鉱油を2リットルフラスコに入れて、500ミリリットルのヘキサンで洗浄した。1リットルのDMFを加えてから、前の段階で調製した2−アリルオキシ−4−ニトロフェノールを77グラム(0.40モル)加えた。フェノールを加えるのは、アルゴン下において少しずつ実行された。混合液をアルゴン下にて室温で30分間撹拌した後に、108グラム(0.48モル)の(R)−トシル酸グリシジルを加え、混合液を窒素下にて一晩70−75℃に加熱した。冷却後すぐに、DMFを真空中で除去し、1リットルの塩化メチレンに置換した。これを500ミリリットルの2N塩酸、飽和重炭酸ナトリウムおよび飽和塩水で洗浄した後に、硫酸ナトリウムで乾燥させた。混合物は、ろ過され、真空中で濃縮されて油になり、その後、1:1のCHCl/ヘキサンを溶離液としてシリカゲルでカラム・クロマトグラフィ処理された。これにより、2つの出発材料をわずかに含む生成物21グラムが得られ、続いて、淡黄色固形物として純粋の生成物21グラムが得られた。混ざり物のある材料は、1.2リットルの10%エチルアセテート/ヘキサンにより再結晶化されて、34グラムの純粋な(1:1CHCl/ヘキサンによるシリカゲルTLCで均一な)(R)−2−(2−アリルオキシ−4−ニトロフェノキシメチル)−オキシラン(融点64℃)が得られた。
【0076】
1213NOについての元素分析結果は次の通り。
【0077】
(計算値):C,57.37;H,5.21;N,5.58
(測定値):C,57.50;H,5.21;N,5.43

中間体4
(8−アリル−7−ニトロ−2,3−ジヒドロ−ベンゾ(1,4)ダイオキシン−2−イル)−メタノール

上記のようにして調製した(R)−2−(2−アリルオキシ−4−ニトロフェノキシメチル)−オキシラン(20グラム、80ミリモル)を窒素下にて、メシチレン中で155℃に24時間加熱した。形成された黒色固形物をろ過して、1.5グラムの非常に極性の強い物質が得られた。真空中で溶液を蒸発させた後に、塩化メチレンを溶離液としてシリカゲルでのカラム・クロマトグラフィにより、10グラムの回収された出発材料と7.5グラムの所望の転位した(S)−(8−アリル−7−ニトロ−2,3−ジヒドロ−ベンゾ(1,4)ダイオキシン−2−イル)−メタノールが得られ、後者は、真空中に置いておくと徐々に結晶化した(融点67℃)。回収した出発材料に基づく収率は75%である。
【0078】
1213NOについての元素分析結果は次の通り。
【0079】
(計算値):C,57.37;H,5.21;N,5.58
(測定値):C,57.26;H,5.20;N,5.35

中間体5
トルエン−4−スルホン酸8−アリル−7−ニトロ−2,3−ジヒドロ−ベンゾ(1,4)ダイオキシン−2−イルメチルエステル

9.55グラム(38.0ミリモル)の(S)−(8−アリル−7−ニトロ−2,3−ジヒドロ−ベンゾ(1,4)ダイオキシン−2−イル)−メタノールを465ミリリットルのピリジンに溶解し、29.0グラム(152ミリモル)のp−塩化トルエンスルホニルを加え、混合液を窒素下にて一晩室温で撹拌した。その後、水を加えて過剰の塩化トシルを急冷し、溶剤を真空中で除去した後に塩化メチレンで置換した。この溶液を2N塩酸、飽和重炭酸ナトリウムおよび飽和塩水で洗浄した後に、硫酸マグネシウムで乾燥させた。ろ過、真空中での蒸発および1:1のヘキサン/塩化メチレンを溶離液としてシリカゲルでのカラム・クロマトグラフィにより、12.6グラム(92%)のトルエン−4−スルホン酸(R)−アリル−7−ニトロ−2,3−ベンゾ(1,4)ダイオキシン−2−イルメチルエステルが得られた。これをそのままにしておくと徐々に結晶化して黄褐色の固形物(融点60−62℃)が得られた。
【0080】
1919NOSについての元素分析結果は次の通り。
【0081】
(計算値):C,56.29;H,4.72;N,3.45
(測定値):C,56.13;H,4.58;N,3.44

中間体6
{7−ニトロ−8−[1−プロペニル]−2,3−ジヒドロ−1,4−ベンゾダイオキシン−2−イル}メチル4−メチルベンゼンスルホン酸塩

700ミリリットルのベンゼンに10.0グラム(24.0ミリモル)の(R)−[8−アリル−7−ニトロ−2,3−ジヒドロ−1,4ベンゾダイオキシン−2−イル]メチル4−メチルベンゼンスルホン酸塩を入れた溶液に、1.03グラムのビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム(II)を加え、混合液を窒素下にて48時間還流した。そして触媒をろ過により除去し、ろ過液を真空中で濃縮して茶色の油を得た。塩化メチレンを溶離液としてシリカゲルでのカラム・クロマトグラフィにより、EおよびZ異性体混合物として、7.2グラムの表題の化合物を得た。純粋のE異性体を含む部分を蒸発させることにより、{(2R)−7−ニトロ−8[(E)−1−プロペニル]−2,3−ジヒドロ−1,4−ベンゾダイオキシン−2−イル}メチル4−メチルベンゼンスルホン酸塩を黄色の固形物(融点105−106℃)として得た。
【0082】
1919NOSについての元素分析結果は次の通り。
【0083】
(計算値):C,56.29;H,4.72;N,3.45
(測定値):C,56.12;H,4.64;N,3.39

中間体7
7−ニトロ−8−[3−オキソ−1−プロペニル]−2,3−ジヒドロ−1,4−ベンゾダイオキシン−2−イル}メチル4−メチルベンゼンスルホン酸塩

{(2R)−7−ニトロ−8−[1−プロペニル]−2,3−ジヒドロ−1,4−ベンゾダイオキシン−2−イル}メチル4−メチルベンゼンスルホン酸塩(6.15グラム、15.2ミリモル)を180ミリリットルのジオキサンに溶解した。次いで、酸化セレン(4.20グラム、37.9ミリモル)を加えてから、0.70ミリリットルの水を加えた。この異成分混合物を窒素下で5時間還流にて加熱した。冷却後、反応物をろ過し、真空中で濃縮して暗黄色の固形物を得た。これをわずかの量の酢酸エチルに溶解し、ヘキサン中の30%酢酸エチルを溶離液としてシリカゲルでカラム・クロマトグラフにかけたところ、5.75グラムの表題化合物の(R)光学異性体を、明黄色の固形物(融点138−140℃)として得た。
【0084】
1917NOSについての元素分析結果は次の通り。
【0085】
(計算値):C,54.41;H,4.09;N,3.34
(測定値):C,54.10;H,3.85;N,3.31

中間体8
2,3−ジヒドロ[1,4]ジオキシノ[2,3−f]キノリン−2−イルメチル4−メチルベンゼンスルホン酸塩

200ミリリットルの酢酸/エタノール(1:1)に{(2R)−7−ニトロ−8−[3−オキソ−1−プロペニル]−2,3−ジヒドロ−1,4−ベンゾダイオキシン−2−イル}メチル4−メチルベンゼンスルホン酸塩(3.50グラム、8.35ミリモル)を入れた溶液に、2.35グラム(42.1ミリモル)の鉄の粉末を加え、混合物を窒素下で8時間還流にて加熱した。反応が完了した後に、150ミリリットルの水を加えて、混合物をセライトパッドに通してろ過した。ろ過液を飽和重炭酸ナトリウムで中和し、酢酸エチルで抽出した。抽出物を硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過してから真空中で蒸発させた。残留物を20%酢酸エチル/ヘキサンで開始し70%酢酸エチル/ヘキサンで終了するような勾配溶離液を用いてシリカゲルでカラム・クロマトグラフにかけたところ、1.85グラムの表題化合物の(R)光学異性体を黄色の油として得た。H−NMR(CDCl)の結果:二重項8.8δ(1H);二重項8.2δ(1H);二重項7.8δ(2H);二重項7.6δ(1H);多重項7.35δ(1H);多重項7.25δ(3H);多重項4.6δ(1H);多重項4.3−4.4δ(3H);多重項4.2δ(1H);一重項2.4δ(3H)。
【0086】

中間体9
(8−ホルミル−7−ニトロ−2,3−ジヒドロ−1,4−ベンゾダイオキシン−2−イル)メチル4−メチルベンゼンスルホン酸塩

400ミリリットルの塩化メチレンに溶解した{(2R)−7−ニトロ−8−[1−プロペニル]−2,3−ジヒドロ−1,4−ベンゾダイオキシン−2−イル}メチル4−メチルベンゼンスルホン酸塩(10.5グラム、25.9ミリモル)を−78℃にて過剰のオゾンで処理した。その後、ジイソプロピルエチルアミン(11.5ミリリットル)を、30分以上滴下して加え、混合物を室温に戻して、窒素雰囲気にて一晩撹拌した。そして、その混合物を塩化メチレンで600ミリリットルになるように薄め、100ミリリットルの2N塩酸で3回、200ミリリットルの飽和重炭酸ナトリウムで2回、および200ミリリットルの飽和塩水で1回、洗浄した。その溶液を硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、真空中で乾燥させて、原油のような茶色の油とした。その油を30%ヘキサン/塩化メチレンによりシリカゲルでカラム・クロマトグラフにかけたところ、7.52グラムの表題化合物の(R)光学異性体を、黄色の固形物として得た。H−NMR(CDCl)の結果:二重項7.8δ(2H);二重項7.62δ(1H);二重項7.4δ(2H);二重項7.0δ(1H);多重項4.4−4.6δ(2H);多重項4.2δ(3H);一重項2.4δ(3H)。
【0087】

中間体10
{7−ニトロ−8−[(E)−3−オキソ−1−ブテニル]−2,3−ジヒドロ−1,4−ベンゾダイオキシン−2−イル}メチル4−メチルベンゼンスルホン酸塩

250ミリリットルのトルエンに3.00グラム(7.37ミリモル)の[(2R)−8−ホルミル−7−ニトロ−2,3−ジヒドロ−1,4−ベンゾダイオキシン−2−イル)メチル4−メチルベンゼンスルホン酸塩を溶かした溶液に、2.90グラム(9.10ミリモル)の1−トリフェニルホスホリルイデン−2−プロパノンを加えた。混合物を窒素下で室温にて5時間撹拌したところ、溶液から多少の生成物が沈殿した。溶剤を真空中で除去し、残留物をそのまま塩化メチレンによりシリカゲルでカラム・クロマトグラフにかけたところ、3.0グラムの表題化合物の(R)光学異性体を、黄色の固形物として得た。H−NMR(CDCl)の結果:二重項7.8δ(2H);二重項7.6δ(1H);二重項7.5δ(2H);二重項7.4δ(2H);二重項6.95δ(1H);二重項6.6δ(1H);多重項4.5δ(1H);二重項の二重項4.0δ(1H);多重項4.2δ(3H);一重項2.45δ(3H);一重項2.4δ(3H)。
【0088】

中間体11
(8−メチル−2,3−ジヒドロ[1,4]ジオキシノ[2,3−f]キノリン−2−イル)メチル4−メチルベンゼンスルホン酸塩

200ミリリットルの酢酸/エタノール(3:2)に{(2R)−7−ニトロ−8−[(E)−3−オキソ−1−ブテニル]−2,3−ジヒドロ−1,4−ベンゾダイオキシン−2−イル}メチル4−メチルベンゼンスルホン酸塩(3.40グラム、7.83ミリモル)を溶かした溶液に、2.25グラム(40.2ミリモル)の鉄の粉末を加え、混合物を窒素下にて8時間還流にて加熱した。反応が完了した後に、150ミリリットルの水を加えて、混合物をセライトパッドに通してろ過した。ろ過液を飽和重炭酸ナトリウム水溶液で中和し、酢酸エチルで抽出した。抽出物を硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過してから真空中で蒸発させた。残留物を20%酢酸エチル/ヘキサンで開始し70%酢酸エチル/ヘキサンで終了するような勾配溶離液を用いてシリカゲルでカラム・クロマトグラフにかけたところ、2.5グラムの表題化合物の(R)光学異性体を黄色の油として得た。H−NMR(CDCl)の結果:二重項8.1δ(1H);二重項7.6δ(2H);二重項7.45δ(1H);多重項7.2δ(4H);多重項4.6δ(1H);多重項4.3δ(3H);多重項4.1δ(1H);一重項2.5δ(3H);一重項2.4δ(3H)。
【0089】

中間体12
[7−ニトロ−8−(2−オキソエチル)−2,3−ジヒドロ−1,4−ベンゾダイオキシン−2−イル]メチル4−メチルベンゼンスルホン酸塩

4.2グラム(10ミリモル)のトルエン−4−スルホン酸(2R)−8−アリル−7−ニトロ−2,3−ジヒドロ−ベンゾ(1,4)ダイオキシン−2−イルメチルエステルを400ミリリットルの塩化メチレンに溶かした溶液をドライアイス/イソプロパノール槽で冷却してオゾンで飽和させた。そしてそれを酸素でパージし、2.6グラム(20ミリモル)のジイソプロピルエチルアミンを加えた。その混合物を室温に戻して、窒素下にて24時間撹拌した。そしてそれを300ミリリットルの2N塩酸、水および飽和塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、真空中で濃縮して3.8グラムの表題化合物の(R)光学異性体を、融点116−120℃白色固形の4分の1水和物として得た。
【0090】
1817NOS・0.25HOについての元素分析結果は次の通り。
【0091】
(計算値):C,52.49;H,4.28;N,3.40
(測定値):C,52.33;H,3.92;N,3.36

中間体13
2,3−ジヒドロ−7H−[1,4]ジオキシノ[2,3−e]インドール−2−イルメチル4−メチルベンゼンスルホン酸塩

50ミリリットルの酢酸エチル中の3.75グラム(9.2ミリモル)の[(2R)−7−ニトロ−8−(2−オキソエチル)−2,3−ジヒドロ−1,4−ベンゾダイオキシン−2−イル]メチル4−メチルベンゼンスルホン酸塩と3.0グラムの酸化白金の混合物を、パル(Parr)水素化装置にて45psiの水素で6時間処理した。混合物をその後セライト通してろ過し、真空中で濃縮した。残留物を、始めは10%ヘキサン/塩化メチレンを、次いで1%メタノール/塩化メチレンを、最後は2%メタノール/塩化メチレンを用いてシリカゲルでカラム・クロマトグラフにかけたところ、1.50グラムの表題化合物の(R)光学異性体を融点145℃白色固形の4分の1水和物として得た。
【0092】
1817NOS・0.25HOについての元素分析結果は次の通り。
【0093】
(計算値):C,59.41;H,4.85;N,3.85
(測定値):C,59.41;H,4.57;N,3.72

中間体14
1−[5−ヒドロキシ−3−(ヒドロキシメチル)−2,3−ジヒドロ−1,4−ベンゾダイオキシン−6−イル]−1−エタノン

DMF(75ミリリットル)に入れた2’,3’,4’−トリヒドロキシアセトフェノン(10.6グラム、63.0ミリモル)の溶液に炭酸カリウム(17.4グラム、126ミリモル)を加えた。5分後に(R)トシル酸グリシジル(9.67グラム、42.3ミリモル)を加えて、この異成分混合物を3時間70℃に加熱した。溶剤を真空中で除去した後、残留物を水(800ミリリットル)の中に入れ、その後酢酸エチル(4x 300ミリリットル)で抽出した。合成した有機物層を硫化マグネシウムで乾燥させ、ろ過して真空中で蒸発させて乾燥させた。このようにして得られた原油のような茶色の油を、40%ヘキサン/酢酸エチルを溶離液としてシリカゲルでカラム・クロマトグラフにかけたところ、表題化合物の(S)光学異性体を、そのままにしておくと固化する黄色の油として得た(7.5グラム、78%)。質量分析(MS)(ESI法)による質量/電荷(m/z)は223(M−H)−。
【0094】
1112・0.10HOについての元素分析結果は次の通り。
【0095】
(計算値):C,58.46;H,5.44
(測定値):C,58.02;H,5.09

中間体15
1−[5−ヒドロキシ−3−(ヒドロキシメチル)−2,3−ジヒドロ−1,4−ベンゾダイオキシン−6−イル]−1−エタノンオキシム

1:1エタノール/ピリジン(100ミリリットル)に塩酸ヒドロキシルアミン(2.38グラム、34.2ミリモル)を入れた溶液を、エタノール(200ミリリットル)に1−[(3S)−5−ヒドロキシ−3−(ヒドロキシメチル)−2,3−ジヒドロ−1,4−ベンゾダイオキシン−6−イル]−1−エタノン(1.92グラム、8.57ミリモル)を入れた溶液を加えた。そしてこれを窒素下にて5時間加熱還流した。冷却後、溶剤を除去して酢酸エチルにより置換した。さらに溶液を水(200ミリリットル)および2N塩酸(100ミリリットル)で洗浄し、硫化マグネシウムで乾燥させ、ろ過して真空中で蒸発させて、1.89グラム(93%)の表題化合物の(S)光学異性体を融点162℃灰色の固形物として得た。質量分析(MS)(ESI法)による質量/電荷(m/z)は240(M+H)+。
【0096】
1113NO・0.35HOについての元素分析結果は次の通り。
【0097】
(計算値):C,53.81;H,5.62;N,5.71
(測定値):C,53.51;H,5.30;N,5.58

中間体16
[2−メチル−7,8−ジヒドロ[1,4]ジオキシノ[2,3−g][1,3]ベンゾオキサゾール−8−イル]メタノール

3.03グラム(12.6ミリモル)の1−[(3S)−5−ヒドロキシ−3−(ヒドロキシメチル)−2,3−ジヒドロ−1,4−ベンゾダイオキシン−6−イル]−1−エタノンオキシムを1:3のN,N−ジメチルアセトアミド/アセトニトリル(100ミリリットル)混合液に溶解した。溶液を氷/水の槽で冷やして、これに、オキシ塩化リン(1.26ミリリットル、35ミリモル)を1:3のN,N−ジメチルアセトアミド/アセトニトリル(30ミリリットル)に溶かした混合液を加えた。反応混合物を窒素下にて48時間以上撹拌した。そして、それに、よく冷えた酢酸ナトリウムの飽和溶液を加え、酢酸エチルで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過して真空中で蒸発させた。得られた原油のような油を60%ヘキサン/酢酸エチルにてシリカゲルでカラム・クロマトグラフにかけて不純物を除去し、生成物を40%ヘキサン/酢酸エチルにより溶離した。溶剤を真空中で蒸発させると、2.08グラム(75%)の表題化合物の(S)光学異性体が、融点120℃で白色の固形物として得られた。質量分析(MS)(ESI法)による質量/電荷(m/z)は222(M+H)+。
【0098】
1111NO・0.20HOについての元素分析結果は次の通り。
【0099】
(計算値):C,58.77;H,5.11;N,6.23
(測定値):C,58.93;H,4.91;N,6.14

中間体17
[2−メチル−7,8−ジヒドロ[1,4]ジオキシノ[2,3−g][1,3]ベンゾオキサゾール−8−イル]メチル4−メチルベンゼンスルホン酸塩

塩化メチレン(100ミリリットル)に[(8S)−2−メチル−7,8−ジヒドロ[1,4]ジオキシノ[2,3−g][1,3]ベンゾオキサゾール−8−イル]メタノール(1.80グラム、8.14ミリモル)を入れた溶液に、塩化p−トルエンスルホン酸(3.90グラム、20.4ミリモル)を加えた。混合物を氷の槽で冷却し、その後、塩化メチレン(20ミリリットル)にジイソプロピルエチルアミン(3.55ミリリットル、20.4ミリモル)を入れた溶液を滴下して加え、続いて、4−ジメチルアミノピリジン(0.65グラム、5.30ミリモル)を加えた。その溶液を室温まで暖めて、窒素下にて一晩撹拌した。反応物を塩化メチレンで500ミリリットルの容積まで希釈してから、2N塩酸(200ミリリットル)、飽和重炭酸ナトリウム水溶液(200ミリリットル)、および塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、真空中で蒸発させて、黄色の油とした。その原油のような油を、不純物を除去するために塩化メチレンを用い、表題化合物の(R)−光学異性体を溶離するために3%メタノール/塩化メチレンを用いて、カラム・クロマトグラフにかけたところ、融点123℃の真空下で白色固形物(2.56グラム、84%)を得た。質量分析(MS)(ESI法)による質量/電荷(m/z)は376(M+H)+。
【0100】
1817NOS・0.20HOについての元素分析結果は次の通り。
【0101】
(計算値):C,57.04;H,4.63;N,3.70
(測定値):C,56.75;H,4.62;N,3.51

中間体18
5−ブロモ−6−メトキシ−2−メチルキノリン

アセトニトリル(1.77リットル)に6−メトキシ−2−メチルキノリン(1.77グラム、1.02モル)を入れた溶液を0−3℃に冷却してから、同じ温度に維持しつつ、N−ブロモスクシニミド(200グラム、1.12モル)を30分以上かけて少しずつ加えた。得られた茶色の懸濁液を室温に暖め、さらに6時間撹拌した。反応物を10%のNaHSO溶液(211ミリリットル)で急冷した。反応混合物を600ミリリットルの容積まで濃縮し、0.1NのNaOH(2.5リットル)に徐々に注ぎ込んだ。その懸濁液(pH=9)を1時間室温で撹拌してから、ろ過し、水(2x1リットル)で洗浄し、真空中で乾燥して253グラム(98.6%)の表題化合物を茶色の固形物として得た。Rf=0.39(3:7)EtOAc:ヘプタンであり、H−NMR(DMSO)δは、8.30(d,J=6.5Hz,1H)、7.98(d,J=6.9Hz,1H)、7.70(d,J=7.0Hz,1H)、7.47(d,J=6.5Hz,1H)、4.02(s,3H)、2.66(s,3H)であった。
【0102】
1110NOBrについての元素分析結果は次の通り。
【0103】
(計算値):C 52.40 H 3.97 N,5.56
(測定値):C 52.13 H,3.94 N,5.61

中間体19
5−ブロモ−2−メチル−6−キノリノール

48%HBr(135ミリリットル)に5−ブロモ−2−メチル−6−メトキシキノリン(30グラム、0.12モル)を入れた混合物を7時間加熱還流してから1時間5℃に冷却して茶色で高粘度の懸濁液を得た。懸濁液を1時間0ないし5℃で撹拌してから、ろ過し、EtOAc(2x50ミリリットル)で洗浄し、真空オーブンで乾燥して、34.9グラム(92%)の表題化合物を茶色の固形物として得た。H−NMR(DMSO)δは、8.26(d,J=8.7Hz,1H)、7.85(d,J=9.1Hz,1H)、7.56(d,J=9.1Hz,1H)、7.45(d,J=8.7Hz,1H)、2.64(s,3H)であった。MeOH(35ミリリットル)中に、5−ブロモ−2−メチル−6−キノリノール(3.4グラム、10.5ミリモル)の臭化水素酸塩とアンバーリストA−21イオン交換樹脂(1.7グラム、MeOHで予備洗浄してオーブンで乾燥)とを入れた懸濁液を室温で3時間撹拌した。そして、混合物をろ過し、真空中で濃縮して2.5グラム(100%)の黄色固形物を得た。Rf=0.36(1:1)EtOAc:ヘプタンであり、H−NMR(DMSO)δは、8.26(d,J=8.4Hz,1H)、7.82(d,J=9.3Hz,1H)、7.47(t,J=9.1Hz,2H)、2.66(s,3H)であった。
【0104】

中間体20
(2S)−1−(ベンジルオキシ)−3−[(5−ブロモ−2−メチル−6−キノリニル)オキシ]−2−プロパノール

DMA(200ミリリットル)に、5−ブロモ−2−メチル−6−キノリノール(30.1グラム、126ミリモル)、(R)ベンジルグリシジルエーテル(24.9グラム、152ミリモル)およびトリエチルアミン(17.4グラム、172ミリモル)を入れた溶液を、95−98℃の油槽にて2日間加熱した。その溶液を冷却して水(300ミリリットル)に撹拌しながら注ぎ込んだ。生成した黄褐色の沈殿物をろ過し、水(100ミリリットル)で洗浄して真空オーブンで乾燥して37グラム(73%)の表題化合物を黄褐色の固形物として得た。Rf=0.35(EtOAc)であり、H−NMR(DMSO)δは、8.31(d,J=8.8Hz,1H)、7.96(d,J=9.2Hz,1H)、7.72(d,J=9.3Hz,1H)、7.74(d,J=8.7Hz,1H)、7.25−7.36(m,5H)、5.28(d,J=5.1Hz,1H)、4.56(s,2H)、4.22−4.29(m,2H)、4.08−4.15(m,1H)、3.61−3.73(m,2H)、2.66(s,3H)で、比旋光度=+6.2度(c=1,CHOH)であった。
【0105】
2020BrNOについての元素分析結果は次の通り。
【0106】
(計算値):C 59.66 H 4.97 N,3.48
(測定値):C 59.43 H,4.97 N,3.55

中間体21
(2S)−2[(ベンジルオキシ)−8−メチル−2,3−ジヒドロ[1,4]ジオキシノ[2,3−f]キノリン

トルエン(2リットル)に、(2S)−1−(ベンジルオキシ)−3−[(5−ブロモ−2−メチル−6−キノリニル)オキシ]−2−プロパノール(100グラム、0.249モル)およびヨウ化銅(I)(47.4グラム、0.249モル)を入れた混合液に、NaH(10.9グラム、0.45モル)を、30−35℃にて20分以上かけて少しずつ加えた。反応混合物を30分以上35℃に保持してから110℃まで徐々に加熱した。30分後に、反応物を60℃まで冷却し、追加のNaH(10.9グラム、0.45モル)を加えた。これをさらに2時間、110℃に加熱してから室温に冷却し、水(200ミリリットル)を滴下した。15分間撹拌後、混合物をセライトベッドを通してろ過してから、トルエン(3x50ミリリットル)および水(50ミリリットル)で洗浄した。2つの層に分離した。有機物の層を、水(100ミリリットル)、NH4OH(100ミリリットル)、25%NaCl(100ミリリットル)で抽出し、真空中で濃縮して精製前の生成物387.6グラムを茶色のシロップとして得た。精製前の生成物を精製する前に、脱ベンジル化を行った。
【0107】

中間体22
[(2R)−8−メチル−2,3−ジヒドロ[1,4]ジオキシノ[2,3−f]キノリン−2−イル]メタノール

EtOH(1ミリリットル)に(2S)−2[(ベンジルオキシ)−8−メチル−2,3−ジヒドロ[1,4]ジオキシノ[2,3−f]キノリン(0.16グラム、0.5ミリリットル)を入れた溶液に、シクロヘキセン(0.5ミリリットル)を加え、さらに10%Pd/C(0.016グラム、10モル%)を加えた。混合物を窒素下で18時間加熱還流してから冷却してろ過した。触媒をメタノールですすぎ、ろ過物を真空中で濃縮して113グラム(98%)の表題アルコールが灰色がかった白色の固形物として得られた。
【0108】
H−NMR(CDOD)δは、8.46(m,1H)、7.47(m,1H)、7.38−7.31(m,2H)、4.40(m,1H)、4.36(m,1H)、4.18(m,1H)、3.91(m,2H)、2.68(s,3H)であった。
【0109】

中間体23
[(2R)−8−メチル−2,3−ジヒドロ[1,4]ジオキシノ[2,3−f]キノリン−2−イル]メチル4−ブロモベンゼンスルホン酸塩

トルエン(40ミリリットル)に、[(2R)−8−メチル−2,3−ジヒドロ[1,4]ジオキシノ[2,3−f]キノリン−2−イル]メタノール(4.0グラム、17.3ミリモル)、塩化ブロシル(4.86グラム、19.0ミリモル)、ジメチルアミノピリジン(20ミリグラム、0.16ミリモル)およびトリエチルアミン(3.62ミリリットル、25.8ミリモル)を入れた溶液を60℃で6時間撹拌した。反応混合物を室温に冷却してから水(20ミリリットル)を加えた。30分後、2つの層に分離した。有機物の層を8%NaHCO(20ミリリットル)とHO(20ミリリットル)で抽出し、NaSOで乾燥し、ろ過してから真空中で濃縮した。得られた固形物を80℃でイソプロピルアルコール(50ミリリットル)とトルエン(10ミリリットル)中に溶解し、室温に1時間以上冷却してから、ろ過し、(5:1)IPA:トルエン(2x5ミリリットル)で洗浄し、真空オーブンで乾燥して5.99グラム(76.9%)の表題化合物を灰色がかった白色の固形物として得た。13C NMR(CDCl)δは、157.9,144.3,138.1,134.7,132.9,129.7,129.6,129.0,122.4,121.7,121.3,118.8,70.7,67.6,64.5,25.4。
【0110】

実施例1
2−(4−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル−3,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−1−イルメチル)−8−メチル−2,3−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−f]キノリン

[(2R)−8−メチル−2,3−ジヒドロ[1,4]ジオキシノ[2,3−f]キノリン−2−イル]メチル4−トルエンスルホン酸塩(0.87グラム、2.3ミリモル)と4−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル−1,2,3,6−テトラヒドロ−ピリジン(0.48グラム、2.2ミリモル)の混合物に3ミリリットルのジメチル・スルホキシドを加えた。その混合物を97℃で18時間撹拌した。溶剤を減圧下で蒸発させた。残留物を、それぞれが500ミリリットルである塩化メチレンと飽和重炭酸ナトリウム水溶液との間で分離させた。塩化メチレンの層を500ミリリットルの水で一度洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。ろ過し、真空中で濃縮して0.91グラムの油を得た。これを酢酸エチルとヘキサンの勾配にてシリカゲルでクロマトグラフにかけた。生成物部分を集めて0.059グラムの遊離塩基を純粋の黄色の油として得た。これをエタノールに溶かして加熱した。エタノールにシュウ酸二水和物(0.0125グラム、0.991ミリモル)を加えた。混合物を冷却した後、ろ過すると、0.0619グラムの表題化合物のS光学異性体が、融点129−133℃でだいだい色のシュウ酸塩として得られた。
【0111】
2624S・C・2/3HOについての元素分析結果は次の通り。
【0112】
(計算値):C,63.38;H,5.19;N,5.28
(測定値):C,63.48;H,4.97;N,5.08

実施例2
2−(4−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル−3,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−1−イルメチル)−8−メチル−2,3−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−f]キノリン

[(2R)−8−メチル−2,3−ジヒドロ[1,4]ジオキシノ[2,3−f]キノリン−2−イル]メチル4−トルエンスルホン酸塩(0.638グラム、1.66ミリモル)と4−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル−1,2,3,6−テトラヒドロ−ピリジン(0.46グラム、2.1ミリモル)の混合物に12ミリリットルのジメチル・スルホキシドを加えた。その混合物を90℃で18時間撹拌した。溶剤を減圧下で蒸発させた。残留物を、それぞれが500ミリリットルである塩化メチレンと飽和重炭酸ナトリウム水溶液との間で分離させた。塩化メチレンの層を水で二度洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶剤を蒸発させて0.98グラムの油を得た。これを酢酸エチルとヘキサンの勾配にてシリカゲルでクロマトグラフにかけた。生成物部分を集めて、真空中で濃縮して0.39グラムの表題化合物をほぼ純粋の明黄色の油として得た。これをエタノールとともにすりつぶすと、0.2563グラムの表題化合物のS光学異性体が、融点174−176℃で明黄色の固形物として得られた。
【0113】
2624S・C・1/4HOについての元素分析結果は次の通り。
【0114】
(計算値):C,72.11;H,5.70;N,6.47
(測定値):C,72.01;H,5.42;N,6.32

実施例3
2−[4−(5−フルオロ−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル)−3,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−1−イルメチル]−8−メチル−2,3−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−f]キノリン

[(2R)−8−メチル−2,3−ジヒドロ[1,4]ジオキシノ[2,3−f]キノリン−2−イル]メチル4−トルエンスルホン酸塩(0.50グラム、1.1ミリモル)、4−(5−フルオロ−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル)−1,2,3,6−テトラヒドロピリジン(0.35グラム、1.5ミリモル)、21ミリリットルのTHFおよび21ミリリットルのDMFの溶液に、NaHCO3(0.45グラム、5.4ミリモル)を加えた。混合液を還流で18時間撹拌した。溶剤を真空中で除去し、残留物をそれぞれが500ミリリットルである塩化メチレンと水との間で分離させた。塩化メチレンの層を水で3回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。ろ過し、真空中で濃縮して0.62グラムの黒い油を得た。これを酢酸エチルとヘキサンの勾配にてシリカゲルでクロマトグラフにかけたところ、0.12グラムの遊離塩基を純粋の明黄色の油として得た。その油をエタノールに溶かし、エタノールにシュウ酸二水和物(0.0400グラム、0.317ミリモル)を溶かした溶液に加えた。ろ過すると、0.0871グラムの表題化合物のS光学異性体が、融点196−201℃で黄色のシュウ酸塩として得られた。
【0115】
2623FNS・C・2HOについての元素分析結果は次の通り。
【0116】
(計算値):C,58.73;H,5.10;N,4.89
(測定値):C,58.78;H,4.46;N,4.63

中間体24
トリフルオロ−メタンスルホン酸7−メトキシ−ベンゾフラン−3−イルエステル

30ミリリットルの塩化メチレンに3.3グラム(20ミリモル)の7−メトキシ−ベンゾフラノンを溶かした冷却した溶液(−20℃)に、8.3ミリリットル(6.0ミリモル)のトリエチルアミンを加えた。この冷えた混合物に、20ミリリットルの塩化メチレンに8.5グラム(30ミリモル)のトリフル無水物(triflic anhydride)を入れた溶液を滴下して加えた。1時間、温度を−20℃に保った。そして、反応物を100ミリリットルの飽和重炭酸ナトリウム水溶液で冷却し、塩化メチレン(2x150ミリリットル)で抽出した。結合した有機の抽出物を硫酸マグネシウムで乾燥し、真空中で濃縮して5.6グラムの所望の生成物を得た。質量分析(MS)(ES法)による質量/電荷(m/z)(相対強度)は265(M+H,100)。
【0117】

中間体25
2−(7−メトキシベンゾ[b]フラン−3−イル0−4,4,5,5−テトラメチル−[1,2]オキサボロラン

トリエチルアミン(1ミリリットル)にトリフルオロ−メタンスルホン酸7−メトキシ−ベンゾフラン−3−イルエステル(0.660グラム、2.23ミリモル)を入れた混合物に、始めに、THFに3.75ミリリットル(3.75ミリモル)の1Nピナコールボランを加え、次に、塩化[1,1‘−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)と塩化メチレンとを1:1に合成したものを0.10グラム加えた。反応物を3分間マイクロ波にて150℃で加熱した。溶剤を真空中で除去した。残留物を300ミリリットルの水に取って、エーテル(2x200ミリリットル)で抽出した。結合した有機の抽出物を硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、溶剤を真空中で除去した。残留物を、10%酢酸エチル/ヘキサンを用い、50ミリリットルのシリカゲルを通してろ過して、0.350グラムの表題化合物を得た。1H−NMR(300MHz、CDCl);δは、1.36(s,12H)、4.01(s,3H)、6.81(d,1H)、7.18(t,1H)、7.52(d,1H)、7.95(s,1H)。
【0118】

中間体26
4−(7−メトキシ−ベンゾフラン−3−イル)−3,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−1−カルボン酸第三ブチルエステル

ジメトキシエタン(1ミリリットル)に2−(7−メトキシベンゾ[b]フラン−3−イル)−4,4,5,5−テトラメチル−[1,2]オキサボロラン(1.10グラム、2.0ミリモル)を入れた混合物にCsCO(0.650グラム、2.0ミリモル)、HO(1ミリリットル)、4−トリフロロメタンスルホニルオキシ−3,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−1−カルボン酸第三ブチルエステル(0.480グラム、1.45ミリモル)、LiCl(0.10グラム、2.4ミリモル)およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.06グラム、0.05ミリモル)を加えた。反応物を5分間マイクロ波にて150℃で加熱した。溶剤を真空中で除去し、残留物を300ミリリットルの塩化メチレンに取って、それぞれが200ミリリットルである飽和炭酸ナトリウム水溶液と1NのNHOH水溶液とで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過して真空中で濃縮した。残留物を、15%酢酸エチル/ヘキサンを溶離液として、150ミリリットルのシリカゲルを通してろ過して、0.50グラムの表題化合物を得た。1H−NMR(300MHz、CDCl);δは、1.5(s,9H)、2.51(t,2H)、3.66(t,2H)、4.04(s,3H)、4.12(dd,2H)、6.24(br s,1H)、6.91(d,1H)、7.17(t,1H)、7.39(d,1H)、7.59(s,1H)で、質量分析(MS)(ES法)による質量/電荷(m/z)(相対強度)は330(M+H,100)。
【0119】

中間体27
4−(7−メトキシ−ベンゾフラン−3−イル)−1,2,3,6−テトラヒドロ−ピリジン

塩化メチレン(10ミリリットル)に4−(7−メトキシ−ベンゾフラン−3−イル)−3,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−1−カルボン酸第三ブチルエステル(0.50グラム、1.5ミリモル)を入れた溶液に、塩化メチレン(5ミリリットル)にTFA(1ミリリットル)を入れた溶液を滴下して加えた。反応物を室温で1時間撹拌してから、250ミリリットルの塩化メチレンで希釈し、1NのNaOH(100ミリリットル)および飽和塩水で洗浄し、硫化マグネシウムで乾燥し、ろ過し、真空中で濃縮して0.30グラムの表題化合物を得た。1H−NMR(300MHz、CDCl);δは、2.5(t,2H)、3.19(t,2H)、3.64(dd,2H)、4.01(s,3H)、6.30(br s,1H)、7.10(d,1H)、7.21(t,1H)、7.52(d,1H)、7.64(s,1H)で、質量分析(MS)(ES法)による質量/電荷(m/z)(相対強度)は230(M+H,100)。
【0120】

実施例4
2−[4−(7−メトキシ−ベンゾフラン−3−イル)−3,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−1−イルメチル]−8−メチル−2,3−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−f]キノリン

2ミリリットルのN,N−ジメチルホルムアミドに、[(2R)−8−メチル−2,3−ジヒドロ[1,4]ジオキシノ[2,3−f]キノリン−2−イル]メチル4−ブロモベンゼンスルホン酸塩エステル(0.173グラム、0.38ミリモル)、4−(7−メトキシベンゾフラン−3−イル)−1,2,3,6−テトラヒドロピリジン(0.10グラム、0.44ミリモル)および炭酸カリウム(0.145グラム、1.0ミリモル)を入れた混合物を、窒素下にて、室温で2日間次いで60℃で6時間撹拌した。水を加えて、得られた沈殿物をろ過し、乾燥して、始めはヘキサン中の50%酢酸エチル、次いで75%酢酸エチル/ヘキサンを溶離液として用いて100ミリリットルのシリカゲルでカラム・クロマトグラフにかけた。生成物部分を合わせて濃縮したところ、0.015グラムの表題化合物のS光学異性体が黄色の固形物として得られた。
【0121】
質量分析(MS)(ESI法)による質量/電荷(m/z)は443(M+H)+。
【0122】

実施例5
2−[4−(5−フルオロ−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル)−3,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−1−イルメチル]−2,3−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−f]キノリン

[(2R)−8−メチル−2,3−ジヒドロ[1,4]ジオキシノ[2,3−f]キノリン−2−イル]メチル4−トルエンスルホン酸塩(0.51グラム、1.4ミリモル)、4−(5−フルオロ−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル)−1,2,3,6−テトラヒドロ−ピリジン(0.39グラム、1.7ミリモル)、24ミリリットルのTHFおよび24ミリリットルのDMFの溶液に、NaHCO(0.50グラム、5.9ミリモル)を加えた。混合物を撹拌し、18時間還流で加熱した。溶剤を真空中で蒸発させ、残留物を、それぞれが500ミリリットルの酢酸エチルと水とで分離した。酢酸エチルの層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。ろ過して、真空中で濃縮して0.731グラムの油を得た。これを酢酸エチルとヘキサンの勾配にてシリカゲルでクロマトグラフにかけた。使用するのに十分清浄な部分だけを集めた。それらを濃縮して0.13グラムの遊離塩基を油として得た。これをエタノールに溶かした。エタノールにシュウ酸二水和物(0.0410グラム、0.325ミリモル)を入れた溶液を加えた。ろ過すると、0.11グラムの表題化合物のS光学異性体が、融点183−185℃で明黄色のシュウ酸塩として得られた。
【0123】
2521FNS・C・HOについての元素分析結果は次の通り。
【0124】
(計算値):C,59.99;H,4.66;N,5.18
(測定値):C,60.05;H,4.39;N,4.97

実施例6
2−(4−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル−3,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−1−イルメチル)−2,3−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−f]キノリン

[(2R)−2,3−ジヒドロ[1,4]ジオキシノ[2,3−f]キノリン−2−イル]メチルトルエンスルホン酸塩(0.43グラム、1.2ミリモル)、4−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル−1,2,3,6−テトラヒドロ−ピリジン(0.31グラム、1.4ミリモル)、21ミリリットルのTHFおよび21ミリリットルのDMFの溶液に、NaHCO(0.43グラム、5.1ミリモル)を加えた。混合物を撹拌し、2日間60℃に加熱し、さらに1日間室温に放置した。溶剤を真空中で蒸発させた。残留物を、それぞれが500ミリリットルの酢酸エチルと水とで分離した。酢酸エチルの層を水で4回洗浄してから、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。ろ過して、真空中で濃縮して0.24グラムの油を得た。これを酢酸エチルとヘキサンの勾配にてシリカゲルでクロマトグラフにかけて0.13グラムの遊離塩基を油として得た。これをエタノールに溶かし、エタノールにシュウ酸二水和物(0.021グラム、0.17ミリモル)を入れた溶液に加えた。ろ過すると、0.042グラムの表題化合物のS光学異性体が、融点178−180℃で黄色のシュウ酸塩として得られた。
【0125】
2522S・C・1.6HOについての元素分析結果は次の通り。
【0126】
(計算値):C,60.80;H,5.14;N,5.25
(測定値):C,60.59;H,4.79;N,5.00

実施例7
2−(4−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル−3,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−1−イルメチル)−2,3−ジヒドロ−7H−[1,4]ジオキシノ[2,3−e]インドール

[(2R)−7,8−ジヒドロ−3H−6,9−ジオキサ−3−アザ−シクロペンタ[a]ナフタレン−8−イル]メチルトルエン−4−スルホン酸塩(0.6グラム、2ミリモル)、4−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル−1,2,3,6−テトラヒドロ−ピリジン(0.04グラム、0.2ミリモル)、30ミリリットルのTHFおよび25ミリリットルのDMFの溶液に、NaHCO(0.6グラム、7ミリモル)を加えた。混合物を撹拌し、1日間70℃に加熱し、さらに3日間室温に放置した。溶剤を真空中で蒸発させた。残留物を、それぞれが500ミリリットルの酢酸エチルと水とで分離した。酢酸エチルの層を水で4回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。ろ過して、真空中で濃縮して0.86グラムの油を得た。これを酢酸エチルとヘキサンの勾配にてシリカゲルでクロマトグラフにかけて0.25グラムの遊離塩基を非常に明るい黄褐色の油として得た。これをエタノールに溶かした。エタノールにシュウ酸二水和物(0.0851グラム、0.675ミリモル)を入れた溶液を加えた。ろ過すると、0.1436グラムの表題化合物のS光学異性体が、明るいクリーム色の不定形シュウ酸塩として得られた。
【0127】
2422S・Cについての元素分析結果は次の通り。
【0128】
(計算値):C,63.36;H,4.91;N,5.68
(測定値):C,63.22;H,4.86;N,5.50

実施例8
2−[4−(5−フルオロ−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル)−3,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−1−イルメチル]−2,3−ジヒドロ−7H−[1,4]ジオキシノ[2,3−e]インドール

[(2R)−7,8−ジヒドロ−3H−6,9−ジオキサ−3−アザ−シクロペンタ[a]ナフタレン−8−イル]メチル4−トルエンスルホン酸塩(0.67グラム、1.9ミリモル)、4−(5−フルオロ−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル)−1,2,3,6−テトラヒドロ−ピリジン(0.48グラム、2.1ミリモル)およびNaCO(0.80グラム、7.5ミリモル)の混合物に、21ミリリットルのジメチルスルホキシドを加えた。混合物を撹拌し、18時間70℃に加熱した。シリカゲルでのTLCから、多くのトシレートが未反応であることが分かった。18時間、撹拌と80℃加熱を続けた。溶剤を減圧下で蒸発させた。残留物を、それぞれが500ミリリットルの酢酸エチルと水とで分離した。酢酸エチルの層を水で5回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。ろ過して、真空中で濃縮して0.86グラムの黒い油を得た。これを40%酢酸エチルとヘキサンにてシリカゲルでクロマトグラフにかけて0.29グラムの遊離塩基を明るい黄褐色の油として得た。これをエタノールに溶かし、シュウ酸二水和物(0.0978グラム、0.776)の溶液に加えた。ろ過すると、0.1049グラムの表題化合物のS光学異性体が、明るい灰色の不定形シュウ酸塩として得られた。
【0129】
2421FNS・C・0.2HOについての元素分析結果は次の通り。
【0130】
(計算値):C,60.74;H,4.59;N,5.45
(測定値):C,60.72;H,4.34;N,5.26

実施例9
8−(4−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル−3,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−1−イルメチル)−2−メチル−7,8−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−g][1,3]ベンゾオキサゾール

[(2R)−2−メチル−7,8−ジヒドロ−1,6,9−トリオキサ−3−アザ−シクロペンタ[a]ナフタレン−8−イル]メチル4−トルエンスルホン酸塩(0.3081グラム、0.8207ミリモル)および4−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル−1,2,3,6−テトラヒドロ−ピリジン(0.54グラム、2.5ミリモル)の混合物に、10ミリリットルのジメチルスルホキシドを加えた。溶液を撹拌し、4.5時間85℃に加熱した。溶剤を減圧下で蒸発させた。残留物を、それぞれが500ミリリットルの酢酸エチルと飽和重炭酸ナトリウム水溶液とで分離した。酢酸エチルの層を水で4回洗浄した。硫酸マグネシウムで乾燥した後に、ろ過し、溶剤を蒸発させて0.55グラムの油を得た。これをヘキサンと酢酸エチルにてシリカゲルで溶離して0.09グラムの遊離塩基を油として得た。これをEtOHに溶かし、シュウ酸二水和物(0.0304グラム、0.241ミリモル)をエタノールに溶かした溶液に加えた。ろ過すると、0.0948グラムの表題化合物のS光学異性体が、融点が126−129℃で細かな白色のシュウ酸塩として得られた。
【0131】
2422S・C・0.5HOについての元素分析結果は次の通り。
【0132】
(計算値):C,60.34;H,4.87;N,5.41
(測定値):C,60.36;H,4.99;N,5.26

中間体28
4−ベンゾ[b]チオフェン−7−イル−ピリジン

7−ブロモ−ベンゾ[b]チオフェン(5.28グラム、24.7ミリモル)に、ピリジン−4−ボロン酸(2.734グラム、22.24ミリモル)、KPO(12.0グラム、56.5ミリモル)、37.5ミリリットルの1,4−ジオキサンおよび3.8ミリリットルの水を加えた。混合物を数分間真空中に置き、窒素を吹き付けた。これを5回繰り返した。Pd(dppf)Cl・CHCl(0.909グラム、1.11ミリモル)、PdCl(0.1994グラム、1.124ミリモル)および1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(0.6234グラム、1.124ミリモル)を、同様にして高真空を用いてパージした。触媒を反応フラスコに加えて、3回繰り返してパージした。混合物を窒素下にて80℃で撹拌した。1日後TLCによるとほとんどの出発材料が残っていた。追加のKPO(2.3グラム、10.8ミリモル)をパージして加えた。窒素下にて80℃で撹拌を12ないし14時間続けてから、次の日まで室温に置いた。混合物を水と酢酸エチルとで分離し、セライトを通してろ過し、層に分けた。有機の層を真空中で濃縮した。残留物を酢酸エチルに再溶解し、水で洗浄して硫酸マグネシウムで乾燥させた。真空中で濃縮すると、6.06グラムの黒い油が得られた。これをヘキサンと酢酸エチルの勾配にてシリカゲルで溶離して2.43グラムの表題化合物を、ゆっくり結晶化する黄褐色の油として得た(融点71−72℃)。
【0133】
13NS・1/3HOについての元素分析結果は次の通り。
【0134】
(計算値):C,71.86;H,4.48;N,6.45
(測定値):C,71.93;H,4.37;N,5.66

中間体29
S−4−ベンゾ[b]チオフェン−7−イル−1−(8−メチル−2,3−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−f]キノリン−2−イルメチル)−ピリジニウム4−ブロモ−ベンゼンスルホン酸塩

[(2R)−8−メチル−2,3−ジヒドロ[1,4]ジオキシノ[2,3−f]キノリン−2−イル]メチル4−ブロモベンゼンスルホン酸塩(1.00グラム、2.22ミリモル)および4−ベンゾ[b]チオフェン−7−イル−ピリジン(0.58グラム、2.7ミリモル)の混合物に、4ミリリットルのベンゼンを加えた。混合物を75℃で18時間撹拌すると、大部分の溶剤は蒸発した。シリカゲルでのTLCでは、ほとんどの出発材料が残存していた。反応混合物を室温に放置して数日間大気にさらした。残ったタールを52℃にてアセトンですりつぶすと固形物となった。固形物を破砕し、蒸発により体積は減少して約20ミリリットルになった。ろ過すると、0.6581グラムの表題化合物が灰色の固形物として得られた(dec.>175℃)。
【0135】
3225BrN・2HOについての元素分析結果は次の通り。
【0136】
(計算値):C,55.09;H,3.61;N,4.02
(測定値):C,55.13;H,3.88;N,3.77

実施例10
2−(4−ベンゾ[b]チオフェン−7−イル−3,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−1−イルメチル)−8−メチル−2,3−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−f]キノリン

氷の槽で冷却した4.5ミリリットルのEtOHに溶かしたS−4−ベンゾ[b]チオフェン−7−イル−1−(8−メチル−2,3−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−f]キノリン−2−イルメチル)−ピリジニウム4−ブロモ−ベンゼンスルホン酸塩(0.5060グラム、0.7648ミリモル)の懸濁液を撹拌しているところへ、水素化ホウ素ナトリウム(0.045グラム、1.2ミリモル)を加えた。これをほぼ室温になるまで撹拌した。シリカゲルでのTLCでは、生成物といくらかの出発材料が示された。0℃で撹拌している混合物に、わずかに余分の水素化ホウ素ナトリウムを加えた。反応物を撹拌し、一晩室温に暖めた。溶液を減圧下で蒸発させた。残留物を酢酸エチルと水との間で分離した。酢酸エチルの層を水で2回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。ろ過し、真空中で濃縮すると、0.31グラムの油が得られた。これを酢酸エチルとヘキサンの勾配にてシリカゲルでクロマトグラフにかけると、0.1307グラムの遊離塩基が油として得られた。これをEtOHに溶かし、シュウ酸二水和物(0.0426グラム、0.338ミリモル)をエタノールに溶かした溶液に加えた。ろ過すると、0.1237グラムの表題化合物のS光学異性体が、融点が183−185℃で白色のシュウ酸塩として得られた。
【0137】
2624S・C・1/3HOについての元素分析結果は次の通り。
【0138】
(計算値):C,64.11;H,5.12;N,5.34
(測定値):C,64.01;H,5.05;N,5.28

実施例11
2−(4−ベンゾフラン−2−イル−3,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−1−イルメチル)−8−メチル−2,3−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−f]キノリン

3ミリリットルのN,N−ジメチルホルムアミドに、[(2R)−8−メチル−2,3−ジヒドロ[1,4]ジオキシノ[2,3−f]キノリン−2−イル]メチル4−ブロモベンゼンスルホン酸塩エステル(0.18グラム、0.40ミリモル)、4−ベンゾフラン−2−イル−1,2,3,6−テトラヒドロピリジン(0.15グラム、0.75ミリモル)および炭酸カリウム(0.21グラム、1.5ミリモル)を入れた混合物を、窒素下にて60℃で24時間撹拌した。混合物を、それぞれが250ミリリットルの水と酢酸エチルとで分離した。有機物部分を硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過して、真空中で濃縮した。残留物を、始めはヘキサン中の25%酢酸エチル、次いでヘキサン中の50%酢酸エチルを溶離液として用いて50ミリリットルのシリカゲルでカラム・クロマトグラフにかけた。生成物部分を合わせて濃縮したところ、0.025グラムの表題化合物のS光学異性体が、融点149−150℃で淡い黄色の固形物として得られた。
【0139】
2624・0.5HOについての元素分析結果は次の通り。
【0140】
(計算値):C,74.09;H,5.98;N,6.65
(測定値):C,73.96;H,5.89;N,6.43

実施例12
2−(4−ベンゾフラン−2−イル−ピペリジン−1−イルメチル)−8−メチル−2,3−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−f]キノリン

3ミリリットルのN,N−ジメチルホルムアミドに、[(2R)−8−メチル−2,3−ジヒドロ[1,4]ジオキシノ[2,3−f]キノリン−2−イル]メチル4−ブロモベンゼンスルホン酸塩エステル(0.18グラム、0.40ミリモル)、4−ベンゾフラン−2−イル−ピペリジン(0.103グラム、0.51ミリモル)および炭酸カリウム(0.21グラム、1.5ミリモル)を入れた混合物を、窒素下にて、室温で3日間、そしてさらに60℃で6時間撹拌した。混合物を、それぞれが250ミリリットルの水と酢酸エチルとで分離した。有機物部分を硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過して、真空中で濃縮した。残留物を、始めはヘキサン中の25%酢酸エチル、次いでヘキサン中の50%酢酸エチルを溶離液として用いて50ミリリットルのシリカゲルでカラム・クロマトグラフにかけた。生成物部分を合わせて濃縮したところ、0.060グラムの表題化合物のS光学異性体が、融点103−104℃で淡い黄色の固形物として得られた。
【0141】
2626・0.25HOについての元素分析結果は次の通り。
【0142】
(計算値):C,74.53;H,6.37;N,6.69
(測定値):C,74.52;H,6.49;N,6.63

中間体30
4−(5−クロロ−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル)−ピリジン

3−ブロモ−5−クロロ−ベンゾ[b]チオフェン(9.80グラム、39.6ミリモル)に、ピリジン−4−ボロン酸(4.445グラム、36.2ミリモル)、K3PO4(19.5グラム、91.9ミリモル)、61ミリリットルの1,4−ジオキサンおよび6ミリリットルの水を加えた。混合物を数分間真空中に置き、窒素を吹き付けた。これを5回繰り返した。Pd(dppf)Cl・CHCl(2.71グラム、3.31ミリモル)、PdCl(0.0563グラム、0.318ミリモル)および1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(0.1747グラム、0.3151ミリモル)を、同様にしてパージした。触媒を反応フラスコに加えて、さらに3回窒素でパージした。混合物を80℃で22時間撹拌した(撹拌棒)。TLCによるとほとんど変化がなかった。混合物を80℃で4時間機械により撹拌した。混合物を水と酢酸エチルとで分離し、セライトを通してろ過し、層に分けた。有機の層を蒸発させた。残留物を酢酸エチルに溶かし、水で2回洗浄した。2回目には飽和塩水を加えて、層が素早く分離するようにした。有機溶液を硫酸マグネシウムで乾燥させた。ろ過して真空中で濃縮すると11.35グラムの黒色の油が得られた。これをヘキサンと酢酸エチルの勾配にてシリカゲルで溶離すると、3.86グラムの回収出発材料および融点90−91℃で明るい茶色の結晶として4.28グラムの表題化合物を得た。
【0143】
13ClNSについての元素分析結果は次の通り。
【0144】
(計算値):C,63.54;H,3.28;N,5.70
(測定値):C,63.19;H,3.26;N,5.46

実施例13
2−[4−(5−クロロ−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル)−3,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−1−イルメチル]−8−メチル−2,3−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−f]キノリン

[(2R)−8−メチル−2,3−ジヒドロ[1,4]ジオキシノ[2,3−f]キノリン−2−イル]メチル4−ブロモベンゼンスルホン酸塩エステル(0.92グラム、2.0ミリモル)および4−(5−クロロ−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル)−ピリジン(0.50グラム、2.0ミリモル)の混合物に、8ミリリットルのアセトンを加えた。混合物を4時間還流処理し、室温で一晩撹拌し、さらに5時間還流処理した。溶液は徐々に蒸発し、随時補充した。室温で一晩放置すると、いくらかの結晶が生成された。これに15ミリリットルのメチルエチルケトンを加えた。混合物を一晩還流処理した。シリカゲルでのTLCでは、出発材料が存在し、生成物は見つからなかった。溶液を蒸発させた。残留物を130℃で一晩撹拌した。高粘度の混合物が固化した。それを破砕して粉々にした。これに12ミリリットルのエタノールを加えた。この異種成分からなる混合物を氷の槽にて撹拌した。水素化ホウ素ナトリウム(0.12グラム、3.2ミリモル)をまず加えた。ピリジウム塩による消費を保証するためにいくらかの余分を加えた。反応物を一晩撹拌して室温まで暖めた。溶剤を減圧下で蒸発させた。残留物を酢酸エチルと水との間で分離した。酢酸エチルの層を水で3回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。ろ過して真空中で濃縮すると0.84グラムの暗色の油が得られた。これを酢酸エチルとヘキサンの勾配にてシリカゲルでクロマトグラフにかけると、0.29グラムの遊離塩基が油として得られた。これをエタノールに溶かし、エタノール中にシュウ酸二水和物(0.0811グラム、0.643ミリモル)を入れた溶液に加えた。ろ過すると、0.2659グラムの表題化合物のS光学異性体が、融点203−207℃で白色のシュウ酸塩として得られた。
【0145】
2623ClNS・C・2/3HOについての元素分析結果は次の通り。
【0146】
(計算値):C,59.52;H,4.70;N,4.96
(測定値):C,59.59;H,4.40;N,4.74

実施例14
2−(4−ベンゾオキサゾール−2−イル−ピペリジン−1−イルメチル)−8−メチル−2,3−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−f]キノリン

3ミリリットルのN,N−ジメチルホルムアミドに、[(2R)−8−メチル−2,3−ジヒドロ[1,4]ジオキシノ[2,3−f]キノリン−2−イル]メチル4−ブロモベンゼンスルホン酸塩エステル(0.18グラム、0.40ミリモル)、2−ピペリジン−4−イル−ベンズオキサゾール(0.121グラム、0.59ミリモル)および炭酸カリウム(0.21グラム、1.5ミリモル)を入れた混合物を、窒素下にて、室温で3日間、そしてさらに60℃で6時間撹拌した。混合物を、それぞれが250ミリリットルの水と酢酸エチルとで分離した。有機物部分を硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過して、真空中で濃縮した。残留物を、始めはヘキサン中の50%酢酸エチル、次いで75%酢酸エチル/ヘキサンを溶離液として用いて50ミリリットルのシリカゲルでカラム・クロマトグラフにかけた。生成物部分を合わせて濃縮したところ、0.040グラムの表題化合物のS光学異性体が、融点128−130℃で暗いベージュ色の固形物として得られた。
【0147】
2525・0.25HOについての元素分析結果は次の通り。
【0148】
(計算値):C,71.49;H,6.12;N,10.00
(測定値):C,71.60;H,6.06;N,10.19
分子量などの物理的特性あるいは化学式などの化学的特性に対して、ここで範囲が用いられている場合には、その範囲に特有の実施形態のすべての結合や小結合が含まれることを意味する。
【0149】
この文書において引用され、あるいは記載されている個々の特許、特許出願、および出版物の開示は、それらの全内容を本願に引用して援用する
当業者であれば、本発明の好ましい実施例に対して数多くの変更や修正が可能であること、およびそれらの変更や修正が本発明の精神から離れることなくして可能であることを理解するであろう。従って、付記された請求の範囲は、本発明の真の精神と範囲に含まれるすべての等価な変形を含むことを意味する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
【化1】

、RおよびRは、互いに無関係であって、水素、水酸基、ハロゲン、シアノ基、炭酸アミド基、2ないし6個の炭素原子を有するカルボアルコキシ基、トリフルオロメチル基、1ないし6個の炭素原子を有するアルキル基、1ないし6個の炭素原子を有するアルコキシ基、2ないし6個の炭素原子を有するアルカノイル基、2ないし6個の炭素原子を有するアルカノイロキシ基、アミノ基、アルキル基がいずれも1ないし6個の炭素原子を有するモノまたはジアルキルアミノ基、2ないし6個の炭素原子を有するアルカンアミド基、1ないし6個の炭素原子を有するアルカンサルフォニル基、または1ないし6個の炭素原子を有するアルカンサルフォンアミド基であり、
XおよびYは、互いに無関係であって、水素、水酸基、ハロゲン、シアノ基、炭酸アミド基、2ないし6個の炭素原子を有するカルボアルコキシ基、トリフルオロメチル基、1ないし6個の炭素原子を有するアルキル基、1ないし6個の炭素原子を有するアルコキシ基、2ないし6個の炭素原子を有するアルカノイル基、2ないし6個の炭素原子を有するアルカノイロキシ基、アミノ基、アルキル基がいずれも1ないし6個の炭素原子を有するモノまたはジアルキルアミノ基、2ないし6個の炭素原子を有するアルカンアミド基、1ないし6個の炭素原子を有するアルカンサルフォニル基、または1ないし6個の炭素原子を有するアルカンサルフォンアミド基であるか、または、XおよびYは、両者が総合して、−N=C(R)−C(R)=N−、−N=C(R)−C(R)=CH−、−N=C(R)−N=CH−、−N=C(R)−O−、−NH−C(R)=N−、または−NH−C(R)=CH−であり、
およびRは、互いに無関係であって、水素、ハロゲン、アミノ基、アルキル基がいずれも1ないし6個の炭素原子を有するモノまたはジアルキルアミノ基、または1ないし6個の炭素原子を有するアルキル基であり、
は、水素または1ないし6個の炭素原子を有するアルキル基であり、
は、水素、ハロゲン、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、アミノ基、アルキル基がいずれも1ないし6個の炭素原子を有するモノまたはジアルキルアミノ基、または1ないし6個の炭素原子を有するアルキル基であり、
は、水素、ハロゲン、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、または1ないし6個の炭素原子を有するアルキル基であり、
破線は、随意的な二重結合を示しており、
Zは、酸素またはイオウであり、
Qは、炭素または窒素であり、
nは、0または1である、
化学式(I)の化合物、
または、これからなる製薬学的に許容しうる塩。
【請求項2】
Qが1であり、Zがイオウである、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
XおよびYが総合して、−N=C(R)−C(R)=CH−、または−NH−C(R)=CH−である、請求項1または請求項2記載の化合物。
【請求項4】
【化1a】

化学式(Ia)を有する請求項1記載の化合物、またはこれからなる製薬学的に許容しうる塩。
【請求項5】
が、水素または1ないし3個の炭素原子を有するアルキル基である、請求項1ないし4のいずれかに記載の化合物。
【請求項6】
【化1b】

化学式(Ib)を有する請求項1記載の化合物、またはこれからなる製薬学的に許容しうる塩。
【請求項7】
が、水素、ハロゲン、シアノ基、トリフルオロメチル基、1ないし6個の炭素原子を有するアルキル基、または1ないし6個の炭素原子を有するアルコキシ基である、請求項1ないし6のいずれかに記載の化合物。
【請求項8】
が、水素、ハロゲン、または1ないし6個の炭素原子を有するアルコキシ基である、請求項1ないし6のいずれかに記載の化合物。
【請求項9】
が水素である、請求項1ないし6のいずれかに記載の化合物。
【請求項10】
およびRが、水素、水酸基、ハロゲン、シアノ基、炭酸アミド基、1ないし6個の炭素原子を有するアルキル基、または1ないし6個の炭素原子を有するアルコキシ基から互いに無関係に選択される、請求項1ないし9のいずれかに記載の化合物。
【請求項11】
およびRが、水素、シアノ基、またはハロゲンから互いに無関係に選択される、請求項1ないし9のいずれかに記載の化合物。
【請求項12】
およびRが、互いに無関係であって、水素、アミノ基、または1ないし6個の炭素原子を有するアルキル基である、請求項1ないし11のいずれかに記載の化合物。
【請求項13】
およびRが、互いに無関係であって、水素、または1ないし3個の炭素原子を有するアルキル基である、請求項1ないし11のいずれかに記載の化合物。
【請求項14】
およびRが、水素、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、または1ないし6個の炭素原子を有するアルキル基から互いに無関係に選択される、請求項1ないし13のいずれかに記載の化合物。
【請求項15】
およびRが、互いに無関係であって、水素、トリフルオロメチル基、または1ないし3個の炭素原子を有するアルキル基である、請求項1ないし14のいずれかに記載の化合物。
【請求項16】
nが0であり、破線が二重結合を示す、請求項1ないし15のいずれかに記載の化合物。
【請求項17】
2−(4−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル−3,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−1−イルメチル)−8−メチル−2,3−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−f]キノリン、またはこれからなる製薬学的に許容しうる塩である請求項1記載の化合物。
【請求項18】
2−(4−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル−3,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−1−イルメチル)−8−メチル−2,3−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−f]キノリン、またはこれからなる製薬学的に許容しうる塩である請求項1記載の化合物。
【請求項19】
2−[4−(5−フルオロ−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル)−3,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−1−イルメチル]−8−メチル−2,3−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−f]キノリン、またはこれからなる製薬学的に許容しうる塩である請求項1記載の化合物。
【請求項20】
2−[4−(7−メトキシ−ベンゾフラン−3−イル)−3,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−1−イルメチル]−8−メチル−2,3−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−f]キノリン、またはこれからなる製薬学的に許容しうる塩である請求項1記載の化合物。
【請求項21】
2−[4−(5−フルオロ−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル)−3,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−1−イルメチル]−2,3−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−f]キノリン、またはこれからなる製薬学的に許容しうる塩である請求項1記載の化合物。
【請求項22】
2−(4−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル−3,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−1−イルメチル)−2,3−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−f]キノリン、またはこれからなる製薬学的に許容しうる塩である請求項1記載の化合物。
【請求項23】
2−(4−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル−3,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−1−イルメチル)−2,3−ジヒドロ−7H−[1,4]ジオキシノ[2,3−e]インドール、またはこれからなる製薬学的に許容しうる塩である請求項1記載の化合物。
【請求項24】
2−[4−(5−フルオロ−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル)−3,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−1−イルメチル]−2,3−ジヒドロ−7H−[1,4]ジオキシノ[2,3−e]インドール、またはこれからなる製薬学的に許容しうる塩である請求項1記載の化合物。
【請求項25】
8−(4−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル−3,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−1−イルメチル)−2−メチル−7,8−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−g][1,3]ベンゾオキサゾール、またはこれからなる製薬学的に許容しうる塩である請求項1記載の化合物。
【請求項26】
2−(4−ベンゾ[b]チオフェン−7−イル−3,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−1−イルメチル)−8−メチル−2,3−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−f]キノリン、またはこれからなる製薬学的に許容しうる塩である請求項1記載の化合物。
【請求項27】
2−(4−ベンゾフラン−2−イル−3,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−1−イルメチル)−8−メチル−2,3−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−f]キノリン、またはこれからなる製薬学的に許容しうる塩である請求項1記載の化合物。
【請求項28】
2−(4−ベンゾフラン−2−イル−ピペリジン−1−イルメチル)−8−メチル−2,3−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−f]キノリン、またはこれからなる製薬学的に許容しうる塩である請求項1記載の化合物。
【請求項29】
2−[4−(5−クロロ−ベンゾ[b]チオフェン−3−イル)−3,6−ジヒドロ−2H−ピリジン−1−イルメチル]−8−メチル−2,3−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−f]キノリン、またはこれからなる製薬学的に許容しうる塩である請求項1記載の化合物。
【請求項30】
2−(4−ベンゾオキサゾール−2−イル−ピペリジン−1−イルメチル)−8−メチル−2,3−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−f]キノリン、またはこれからなる製薬学的に許容しうる塩である請求項1記載の化合物。
【請求項31】
実質上R光学異性体を含まない、S光学異性体である、請求項1ないし30のいずれかに記載の化合物。
【請求項32】
うつ病、不安症、パニック障害、心的外傷後ストレス障害、月経前不快気分障害、注意力欠如障害、強迫障害、社会不安障害、全般性不安障害、肥満症、摂食障害、血管運動性顔面紅潮、コカイン依存症やアルコール依存症、または性機能障害のうちのいずれかの症状を示す患者の治療方法であって、請求項1ないし31のいずれかに記載の化学式(I)の化合物またはこれからなる製薬学的に許容しうる塩を治療効果のある量について前記症状の前記患者に投与する処置を含む治療方法。
【請求項33】
症状がうつ病である、請求項32記載の方法。
【請求項34】
症状が、強迫障害、パニック発作、全般性不安障害、または社会不安障害のうちのいずれかである、請求項32記載の方法。
【請求項35】
請求項1ないし31のいずれかに記載の化学式(I)の化合物またはこれからなる製薬学的に許容しうる塩、および製薬学的に許容しうる基材または賦形剤からなる調合合成品。
【請求項36】
薬剤として用いる、請求項1ないし31のいずれかに記載の化合物。
【請求項37】
うつ病、不安症、パニック障害、心的外傷後ストレス障害、月経前不快気分障害、注意力欠如障害、強迫障害、社会不安障害、全般性不安障害、肥満症、摂食障害、血管運動性顔面紅潮、コカイン依存症やアルコール依存症、または性機能障害の治療用薬剤の調合において、請求項1ないし31のいずれかに記載の化合物を使用する方法。
【請求項38】
症状がうつ病である、請求項37記載の使用方法。
【請求項39】
症状が、強迫障害、パニック障害、全般性不安障害、または社会不安障害のうちのいずれかである、請求項37記載の使用方法。

【公表番号】特表2006−510594(P2006−510594A)
【公表日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−536506(P2004−536506)
【出願日】平成15年9月11日(2003.9.11)
【国際出願番号】PCT/US2003/028523
【国際公開番号】WO2004/024733
【国際公開日】平成16年3月25日(2004.3.25)
【出願人】(505088569)
【Fターム(参考)】