説明

抗アテローム血栓薬および抗血小板凝集薬からなる新規な結合

本発明は、抗アテローム血栓薬および抗血小板凝集薬からなる新規な結合に関する。本発明は、医薬にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
新規な本発明は、抗アテローム血栓薬(anti-atherothrombotic agent)と抗血小板凝集薬との新規な結合(association)、およびそれらを含有する医薬組成物に関する。
【0002】
本発明は、より具体的には、特異的TP受容体アンタゴニストとクロピドグレルとの結合に関する。
【0003】
トロンボキサンA2(TXA2)は、数多くの心臓血管病の病因に関係するアラキドン酸の不安定な代謝産物である。トロンボキサンA2は、強力な血小板活性化物質であるが、細胞増殖性および接着促進性(pro-adhesive property)を有する強力な血管収縮薬でもある。
【0004】
TXA2、およびアラキドン酸の他の代謝産物、例えば、エンドペルオキシド(PGG2−PGH2)、HETEおよびイソプロスタンは、TP受容体(トロンボキサン−プロスタグランジン−エンドペルオキシド)と呼ばれる共通受容体によって作用を発揮する。
【0005】
近年になり、心臓血管系および神経血管系におけるトロンボキサンA2の過剰産生に関連する現象を予防する目的で、多数の研究が実施されてきた。それらのアンタゴニストのうち、特許明細書EP648741に記載されるものは、経口経路によって活性を示し長期間の作用を有する、強力で選択的な、TP受容体のアンタゴニストであることが見出された。
【0006】
より具体的には、ラセミ形態または光学的に純粋な異性体の形態の式(I):
【0007】
【化2】

【0008】
で示される化合物(A)および薬学的に許容され得るその塩が、強力な抗アテローム血栓薬であることが見出された。
【0009】
化合物Aは、TP受容体の特異的アンタゴニスト、とりわけ、トロンボキサンA2およびプロスタグランジン−エンドペルオキシド(PGG2−PGH2)受容体の特異的アンタゴニストであり、このことで、化合物Aに強力なアテローム血栓効果が付与される。
【0010】
一般に、アテローム性プラーク破裂後の血栓の形成は、循環する血小板と、血流に暴露される血管内皮の基底膜のコラーゲンとの相互作用に起因する。この現象は、アテローム血栓と呼ばれる。
【0011】
コラーゲンは、血管壁の基底膜内に存在し、ヒトおよび動物のアテローム性病変の血栓形成性の決定因子である。
【0012】
コラーゲン線維への血小板接着は、コラーゲン受容体を介して起こり、血小板の接着、それらの活性化および凝集に関係する。
【0013】
2種の主要なアゴニスト、ADPおよびトロンボキサンA2が遊離し、周辺の血小板上の、それらの各受容体(PY2、TP)に結合し、接着および血小板凝集を増大させることにより、血小板の活性化が起こる。
【0014】
ADPは、循環する媒介物質として、血中にも存在するが、トロンボキサンA2は、活性化される血小板内で、シクロオキシゲナーゼ1を介して、アラキドン酸から形成される、強力な二次媒介物質である。
【0015】
トロンボキサンA2は、血栓症を促進するだけでなく、血管壁の機能障害(血管収縮)を誘発し、血管壁の増殖および炎症性浸潤を促進する。
【0016】
現在利用できる抗血小板処置のうち、アスピリンはトロンボキサンA2からの血小板産生を阻害するが、クロピドグレルは、ADPにより誘発される血小板凝集を阻害する。
【0017】
ADPとトロンボキサンA2は、動脈血栓の形成において、重要で相補的な役割を担う。
【0018】
化合物Aは、供給源が何であろうとも、血小板または血小板以外(extra-platelet)であろうとも、トロンボキサンA2および他のTP受容体リガンドにより誘発される血小板凝集を遮断することによって作用する。それは、トロンボキサンA2により誘発される血管収縮を阻害することおよび、内皮機能障害ならびに血管壁の増殖および炎症に対抗することによって更に作用する。
【0019】
我々は、ヒトにおいて、化合物Aのクロピドグレルとの結合が、意外にも、抗血栓活性によって得られ得る相乗効果を与えることをここに見出した。事実、化合物Aおよびクロピドグレルは血小板凝集の完全に異なる経路に作用するため、新規な治療学的アプローチを予見するため、それらの2種の化合物を結合することは特に有利であった。
【0020】
意外にも、化合物Aとクロピドグレルとの結合が、活性によって得られ得る、実質的な相乗効果を与えるが得られることが見出され、それは文献のいずれの教示からも予測することができなかった。結合は、エクスビボでの、コラーゲン誘発血小板凝集阻害により評価される抗血栓効果にのいて、改善を与えた。
【0021】
その試験の過程で、化合物Aの抗血栓活性が、クロピドグレルの存在下で増大され、極めて実質的で全体的に予測不能な様態で増加することが示された。更に、その結合は、良好な許容性プロファイルを有する。
【0022】
本発明による結合において、化合物(A)およびクロピドグレルは、薬学的に許容され得る塩の形態で存在し得る。
【0023】
化合物(A)の付加塩として、非限定的に、薬学的に許容され得る塩基との付加塩、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、tert−ブチルアミン塩およびジエチルアミン塩などが挙げられる。
【0024】
ナトリウム塩の使用が好ましい。
【0025】
クロピドグレルの付加塩として、硫酸水素塩が好ましい。
【0026】
本発明による結合のうち、化合物(A)は、好ましくは、絶対配置(R)を有する。
【0027】
本発明は、1種以上の適切な不活性な、非毒性の賦形剤と共に、適切には、薬学的に許容され得る塩の形態で、化合物(A)とクロピドグレルとの結合を含む医薬組成物にも関する。
【0028】
本発明による医薬組成物として、とりわけ、経口、非経口もしくは経鼻投与に適するもの、錠剤または糖衣錠、舌下錠、ゼラチンカプセル剤、坐剤、クリーム剤、軟膏剤、皮膚用ゲル剤などが挙げられる。
【0029】
投与量は、病状の性質および重症度、投与経路、ならびに患者の年齢および体重に応じて変えることができる。
【0030】
本発明による組成物において、活性成分の量は、化合物(A)では、1〜300mg、そしてクロピドグレルでは、10〜600mgの範囲内である。
【0031】
したがって、本発明による組成物は、TP受容体の活性化に関係する心臓血管病の処置、およびその疾病の結果症状の処置においても有用である。これらの状態は、非限定的に、急性冠症候群、安定または不安定アンギナ、内皮機能障害、動脈硬化に関連する血管病、高血圧、糖尿病および心不全を含み、血管系、心臓血管系または神経血管系の障害のおよび、特に、動脈硬化、心耳原線維形成及び心臓学、神経学、血管病理学および放射線学における侵襲的外科処置(血管形成術、ステントの点滴術、バイパス術、カテーテル術など)に関連する血栓塞栓性障害の予防および治療におけるものを含む。
【0032】
コラーゲン誘発血小板凝集の阻害の測定
化合物A 10mgおよびクロピドグレル75mgが、クロピドグレル75mgであらかじめ7日間処置された志願者18名に、3日間経口投与された。化合物Aとクロピドグレルとの結合の効果が、別個に投与された、化合物Aおよびクロピドグレルの効果と比較された。試験の途中で、血小板凝集計を用いて、クエン酸塩化多血小板血漿(PRPc)の血小板凝集を測定することにより、コラーゲン(5μg/ml)により誘導された、エクスビボでの血小板凝集の阻害率(%)が計算された。
【0033】
得られた結果は、以下のとおりである。
− 化合物A単独の投与は、阻害率35%に至り、
− クロピドグレル単独の投与は、阻害率11%に至り、
− 化合物Aとクロピドグレルとの結合の投与は、阻害率62%に至る。
【0034】
これらの結果は、結合におけるこれらの2の化合物の投与が、コラーゲン誘発血小板凝集によって得られ得る相乗効果を与えることを非常に明瞭に示している。したがって、結合わせに基いて得られる抗凝集効果は、別個に摂られる2製品の効果の合計よりも優れている。この種の結果を示唆する文献は何も存在しない。これらの結果は、その結合が血管効果に関連する、増加される抗血栓効果を必要とする急性または慢性症状(神経血管もしくは心臓血管病の、急性治療または二次予防)において、有利であることを立証し得ることを示唆する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
場合により光学異性体の形態の式(I):
【化1】


で示される化合物(A)またはその薬学的に許容され得る塩の1種と、クロピドグレルまたはその薬学的に許容され得る塩の1種との結合。
【請求項2】
化合物(A)が、(R)配置の光学異性体の形態であることを特徴とする、請求項1記載の結合。
【請求項3】
化合物(A)が、ナトリウム塩の形態であることを特徴とする、請求項1または2いずれか記載の結合。
【請求項4】
クロピドグレルが、硫酸水素塩の形態であることを特徴とする、請求項1、2または3のいずれか1項記載の結合。
【請求項5】
1種以上の薬学的に許容され得る、不活性な賦形剤または担体と組み合せて、活性成分として、場合により光学異性体の形態の化合物(A)またはその薬学的に許容され得る塩の1種と、クロピドグレルまたはその薬学的に許容され得る塩の1種との結合を含む医薬組成物。
【請求項6】
化合物(A)が、(R)配置の光学異性体の形態であることを特徴とする、請求項5記載の医薬組成物。
【請求項7】
化合物(A)が、ナトリウム塩の形態であることを特徴とする、請求項5または6いずれか記載の医薬組成物。
【請求項8】
クロピドグレルが、硫酸水素塩の形態であることを特徴とする、請求項5、6または7のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項9】
活性成分の量が、化合物(A)では、1〜300mgおよびクロピドグレルでは、10〜600mgの各範囲内であることを特徴とする、請求項5〜8のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項10】
TP受容体の活性化に関係する心臓血管病の処置、およびその疾病の結果として起る症状の処置においても用いられる、請求項5〜9のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項11】
急性冠症候群、安定または不安定アンギナ、内皮機能障害、動脈硬化に関連する血管病、高血圧、糖尿病および心不全の処置、ならびに血管系、心臓血管系または神経血管系の障害のおよび、特に、動脈硬化、心耳原線維形成及び心臓学、神経学、血管病理学および放射線学における侵襲的外科処置に関連する血栓塞栓性障害の予防および治療において用いられる、請求項10記載の医薬組成物。

【公表番号】特表2007−507475(P2007−507475A)
【公表日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−530412(P2006−530412)
【出願日】平成16年10月1日(2004.10.1)
【国際出願番号】PCT/FR2004/002489
【国際公開番号】WO2005/032533
【国際公開日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(500287019)レ ラボラトワール セルヴィエ (166)
【Fターム(参考)】