説明

抗アンドロゲンペプチドおよび癌治療におけるその使用

本発明は、以下の一般式(S1):X-[(Pro)n-His-Pro-His-Ala-Arg-Ile-Lys]m-Y
で示される単離または精製または部分精製されたペプチド由来分子に関する。該ペプチドは、特に抗腫瘍剤として、医学的に使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトアンドロゲンレセプターの一部を含む、天然の、部位特異的突然変異、および合成ペプチドならびにその組成物に関する。本発明は、これらのペプチドに対して産生された抗体およびこれらのペプチドをコードするポリヌクレオチドにも関する。これらのペプチドの誘導体を合成し、前立腺癌および/または乳癌の治療および/または予防において抗アンドロゲン組成物としてそれらを使用するための方法、薬剤組成物の調製、診断用キット、ならびに抗癌治療で使用する関連アッセイの開発も提供される。
【背景技術】
【0002】
ヒト前立腺癌および乳癌におけるアンドロゲンレセプター
アンドロゲンレセプター(AR)は、内在性アンドロゲンと共にその活性を通じて男性の性的発育および機能の誘導を媒介するリガンド活性化転写調節タンパク質である(Royら、1999年)。アンドロゲンは一般的に男性性ホルモンとして知られている。アンドロゲンホルモンはステロイドであり、これは精巣および副腎皮質により身体内で産生されるまたは実験室で合成することができる。アンドロゲン性ステロイドは、筋肉と骨量、前立腺成長、精子形成および男性髪型などの男性性徴の発達および維持を含む多くの生理学的過程において重要な役割を果たしている(SiiteriとWilson、1974年)。内在性ステロイド性アンドロゲンには、テストステロンおよびジヒドロテストステロン(DHT)が挙げられる。テストステロンは精巣により分泌される主要ステロイドであり、男性の血漿中に存在する一次循環アンドロゲンである。テストステロンは、多くの末梢組織において酵素5−α−還元酵素によりDHTに転換される。したがって、DHTは、大半のアンドロゲン作用のための細胞内媒介物としての働きをすると考えられている。
【0003】
他のステロイド性アンドロゲンには、シピオン酸、プロピオン酸、フェニルプロピオン酸、シクロペンチルプロピオン酸、イソカルポレート(isocarporate)、エナント酸、およびデカン酸エステルなどのテストステロンのエステル、ならびに、7−メチル−ノルテストステロンなどの他の合成アンドロゲンが挙げられる。
【0004】
アンドロゲンレセプター(AR)を発現する2種類の主要な癌型は、前立腺癌および乳癌である。他の癌もAR陽性である可能性がある。最も一般的なAR陽性癌は前立腺癌である。前立腺癌のおよそ80〜90%が初期診断でアンドロゲンに依拠しており、前立腺癌の内分泌療法は血清アンドロゲンの減少およびARの阻害に向けられている(DenisとGriffiths、2000年)。しかし、アンドロゲンアブレーション療法が最終的に失敗すると、前立腺癌は進行してホルモン不応性状態になる。ARは前立腺癌進行の間ずっと発現され、ホルモン不応性病の大半の患者で持続する(Mohlerら、1996年;van der Kwastら、1991年;Sadiら、1991年;Chodakら、1992年;Hobischら、1996年)。その上、ホルモン不応性前立腺癌から同定されたAR突然変異体の大半は、転写活性が可能である。これらの所見によれば、AR機能の喪失はアンドロゲンアブレーション失敗の主な原因ではなく、AR−陰性前立腺癌細胞は顕著な増殖または延命効果を有さないことが示唆される。代わりに、入手可能な臨床上および実験上の証拠によれば、シグナル伝達カスケードを通したAR活性の誤調節、AR共調節因子の発現の変化、ならびにARがテストステロンおよびDHT以外のリガンドに応答して転写的に活性になることを可能にするARの突然変異体による正常なアンドロゲン軸の変化を通して前立腺癌の進行が生じることが示唆される。血清アンドロゲンだけで前立腺発癌を促進することはないが、アンドロゲン作用およびARの機能的状態は前立腺癌進行の重要な媒介物である。新たに診断され治療を受けていない前立腺癌に罹った男性の血清テストステロンレベルが低いことは、高くなったAR発現、腫瘍内の毛細血管密度の増加、および高くなったグリーソンスコアと関連があることが見出されている(Schatzlら、2002年)。術前治療を受けていない患者から収集した臨床的前立腺癌検体の最近の分析によっても、高AR発現は低下した無再発生存および疾患憎悪と関連があることが実証された(Lee、2003年)。前立腺癌の内分泌学的治療は、主に、去勢手術またはエストロゲン(ジエチルスチルベストロール)およびLHRH(黄体形成ホルモン放出ホルモン)アゴニストを使用した化学的去勢による循環精巣アンドロゲンの欠乏を通じたAR活性の調節を含む。ARの活性は、抗アンドロゲンの投与単独、または外科的もしくは化学的去勢との併用(併用アンドロゲン遮断と呼ばれる)のどちらかによっても遮断することができる。患者の80%超が、アンドロゲンアブレーションに正の応答を示す。しかし、転移性前立腺癌の患者は、最終的にアンドロゲン枯渇療法後平均12〜18カ月で疾患憎悪を経験する。これらの患者の腫瘍はホルモン不応性であるとみなされる。これらの腫瘍は、血清アンドロゲンの減少および/または抗アンドロゲンでの治療にもかかわらず憎悪してしまったという意味で不応性ではあるが、これらの腫瘍の大多数はアンドロゲンに対して完全に抵抗性というわけではなさそうである。ホルモン不応性転移性前立腺癌の患者の97%において、外来性アンドロゲン治療により疾患フレアおよび好ましくない応答が生じる(FowlerとWhitmore、1982年に概説されている)。ホルモン不応性前立腺癌の患者に対する二次療法も、大部分がアンドロゲン産生およびAR機能を標的とし、二次抗アンドロゲンの投与、副腎アンドロゲン産生の阻害、およびプロゲステロンまたはエストロゲン剤を使用した追加のLH(黄体形成ホルモン)阻害が含まれる(DawsonとVogelzang、2000年)。乳癌のような他の癌もAR陽性である可能性がある(Moinfarら、2003年)。アンドロゲンレセプターは乳管上皮内癌ならびに浸潤性乳癌において一般に発現されている。著しい数の低分化乳癌は、ER(エストロゲンレセプター)陰性およびPR(プロゲステロンレセプター)陰性であるが、それでもAR陽性である。前立腺癌同様、乳癌はホルモン枯渇により治療されるが、この場合、ホルモン枯渇はエストロゲンおよびエストロゲンレセプターを阻止することにより実現される。時間とともに、乳癌はエストロゲンの必要性なしに増殖する方法を探り致死的になる。ホルモン不応性になる乳癌は大多数の場合にARを発現し続ける。二次ホルモン療法も失敗することがあるが、ARに向けられた療法が正の治療有用性を提供できることによって、AR活性は前立腺癌と乳癌両方の増殖と生存の重要な媒介物であることが示唆される。
【0005】
この点に関して、ステロイド性レセプターはシグナル伝達カスケードを活性化するという証拠(Migliaccioら、1996年)により、これらの癌の治療の新たな最前線が開かれた。アンドロゲンならびにエストロゲンは、DNA合成を刺激するにはSrc/ras/erk経路活性化を必要とすることが実証されている(Migliaccioら、2000年)。ステロイド性レセプターと非レセプターチロシンキナーゼSrcが直接相互作用すると、そのような経路活性化が生じる。これらの相互作用に不可欠な部位はすでに同定されている。
【0006】
現行治療法
フルタミド(Eulexin(登録商標))、ビクルタミド(Casodex(登録商標))またはニルタミド(Anandron(登録商標))などの非ステロイド性抗アンドロゲンは、ホルモン応答性前立腺癌療法において使用されてきた。同様に、タモキシフェン(Nolvadex(登録商標))またはICI 182,780(Fulvestrant(登録商標))による抗エストロゲン療法は、ホルモン応答乳癌において一般に使用されている。不運なことに、これらのおよび類似するアプローチは、薬物抵抗性の発現のために効き目が悪くなることが多い。さらに、これらの化合物には、心血管系合併症の危険性の増加、および慢性使用の後の子宮癌の発生のわずかな増加のようないくつかの好ましくない副作用がある。したがって、非毒性代替化合物を使用してもっと特異的な形で前立腺癌および乳癌を治療する緊急の必要性が存在する。ホルモンまたは成長因子に刺激されたアンドロゲンレセプターはチロシンキナーゼSrcと相互作用をして、「インビトロ」で前立腺癌および乳癌細胞増殖を誘導することが最近見出された(Castoriaら、1999年;Migliaccioら、1996年;2000年;2005年)。
【0007】
WO98/46250は、大部分がLeuモチーフにより特徴付けられる抗エストロゲンホスホチロシンまたはマロニルチロシンペプチドを開示している。本発明はそのような分子には言及していない。
【0008】
WO00/01813は、ヒトアンドロゲンレセプターのアミノ酸234〜391由来のペプチドを開示している。開示されたペプチドの一部は本発明の分子とある程度配列類似性を共有しているが、先行技術文献は、AR/Src結合/活性化経路に関してそのようなペプチドのアンタゴニスト活性を開示してはいない。さらに、WO00/01813に開示されたペプチドは、前立腺または乳房腫瘍細胞増殖を減少させまたは遮断することが明らかにされていない。前記ペプチドは本当の適用可能な抗腫瘍活性を発揮することが明らかにされていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、前立腺癌療法と乳癌療法の両方においてアンドロゲンレセプター/Src会合および新しい種類の化合物の発現を無効にするよう標的されたペプチドを提供する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前立腺癌および乳癌の治療において使用される新規の組成物および方法を提供することにより先行技術に固有の落とし穴を克服する。本発明は、新規の合成ペプチドを提供し、これはヒト前立腺および/または乳癌療法もしくは予防において使用される抗アンドロゲンレセプター活性を示す。これらのペプチドはプロリンストレッチを含有しており、これはARとチロシンキナーゼSrc(Migliaccioら、2000年)および、潜在的には他のSrcファミリーキナーゼのSH3ドメインとの相互作用において主要な役割を果たしていると関係付けられてきた。前記SH3ドメインは50〜70アミノ酸長であり、真核生物シグナル伝達および細胞骨格タンパク質において認識されることが多い(Kayら、2000年)。前記ドメインはプロリンリッチなペプチドに結合し、そのような相互作用を通じて、キナーゼ活性の調節ならびに局在化および基質認識において主要な役割を果たしている。各Srcキナーゼファミリーメンバーはその配列中にSH3ドメインを有する。このファミリーのメンバーは9種類であり(Williamsら、1998年)、他のメンバーも将来同定される可能性がある。アゴニスト占有アンドロゲン(agonist-occupied androgen)およびプロゲステロンレセプターは、SrcのSH3ドメインと相互作用をすることができることが報告されている(Migliaccioら、2000年;Boonyaratanakornkitら、2001年)。これらの会合体はおそらくSH3ドメインの阻害作用を取り除きSrc活性化を始動させる。したがって、本発明に開示されるペプチドは、SrcのSH3ドメインに結合し、ARがSrcと相互作用しシグナル伝達を活性化するのを阻止する。アンドロゲンとエストラジオールレセプター(ER)は基本条件下で会合することが報告されている(Migliaccioら、2005年):前記2つのレセプターのうちの1つが、ステロイドアゴニストまたは成長因子のいずれかにより活性化されると、前記2つのレセプターはSrcと相互作用をする。したがって、SrcとのAR会合が阻止されると、このキナーゼとのER会合が阻止され、ERによるSrc活性化も阻止される。従って、本明細書に開示されるペプチドは抗エストロゲン作用も有する。
【0011】
本発明は、一般式:
【化1】

によって示され、単離または精製または部分精製された状態のペプチド由来分子を提供する。
(式中、Xは、H、アセチル基もしくは任意の天然アミノ酸であるか、または遊離NH基もしくは少なくともアセチル誘導体化NH基の付いたアミノ酸の配列であり、Yは、OH基、NH基もしくは任意のアミノ酸であるか、またはC末端カルボキシ−アミド基を有するアミノ酸の配列であり、「n」は1〜10の整数であり、「m」は1〜3のうちの整数である)
【0012】
前記ペプチド由来分子は、アンドロゲンレセプター(AR)とチロシンキナーゼSrcのSH3ドメインとの相互作用を阻害または阻止することができる。
【0013】
前記ペプチド由来分子は、インビトロまたはインビボで抗腫瘍活性を有する。
【0014】
これらのペプチドの追加の変異体も本開示の対象である。実際、式S1で示される化合物に由来し、類似の生物学的機能を果たすことができる化合物は、開示された直鎖状ペプチドの配列の2倍体化、3倍体化、またはもっと一般的には、多量体化のいずれによってでも達成し、考案する(または誘導する)ことができる。例として、複数抗原ペプチドの調製のためにTamと共同研究者により報告される方法(TamとSpetzler JC、1997年)、または鋳型集合合成タンパク質の調製のためにMutterと共同研究者により報告されている方法(TASP、TuchschererとMutter、1996年)に従って本発明のペプチドを改変してもよい。
【0015】
こうして得られた分子は、トリフルオロ酢酸塩、酢酸塩、塩化水素塩、硫酸塩または当業者が一般に使用している常用緩衝液に溶解することにより導き出される他のあらゆる塩として、本出願の目的で使用することができる。本出願に開示されたポリペプチド配列の例は表1に収載された配列である。
【0016】
【表1】

【0017】
一実施形態では、本発明は、約4〜約30程度のアミノ酸残基長の単離されたペプチドであって、前記ペプチドはその配列内に一般式S1で示されるペプチドを含んでおり、各アミノ酸はそのいかなる誘導体または類似体によっても置き換えることができるペプチドを含む組成物に関する。
【0018】
第2の実施形態では、本発明は、10〜約50程度のアミノ酸残基長の単離されたペプチドであって、前記ペプチドはその配列内に、
Pro-Pro-Pro-His-Pro-His-Ala-Arg-Ile-Lys(配列番号1)
により表わされるアミノ酸配列を含み、各アミノ酸はそのいかなる誘導体または類似体によっても置き換えることができるペプチドを含む組成物に関する。
【0019】
第3の実施形態では、本発明は、12〜約50程度のアミノ酸残基長の単離されたペプチドであって、前記ペプチドはその配列内に、
Pro-Pro-Pro-Pro-Pro-His-Pro-His-Ala-Arg-Ile-Lys(配列番号2)
により表わされるアミノ酸配列を含み、各アミノ酸はそのいかなる誘導体または類似体によっても置き換えることができるペプチドを含む組成物に関する。
【0020】
第4の実施形態では、本発明は、14〜約50程度のアミノ酸残基長の単離されたペプチドであって、前記ペプチドはその配列内に、
Pro-Pro-Pro-Pro-Pro-Pro-Pro-His-Pro-His-Ala-Arg-Ile-Lys(配列番号3)
により表わされるアミノ酸配列を含み、各アミノ酸はそのいかなる誘導体または類似体によっても置き換えることができるペプチドを含む組成物に関する。
【0021】
第5の実施形態では、本発明は、16〜約50程度のアミノ酸残基長の単離されたペプチドであって、前記ペプチドはその配列内に、
Gly-Pro-Pro-Pro-Pro-Pro-Pro-Pro-Pro-His-Pro-His-Ala-Arg-Ile-Lys(配列番号4)
により表わされるアミノ酸配列を含み、各アミノ酸はそのいかなる誘導体または類似体によっても置き換えることができるペプチドを含む組成物に関する。
【0022】
好ましいペプチド組成物は、細胞増殖に関するアンドロゲンレセプター活性を減少させるかまたは阻害する組成物である。この減少または阻害は、Srcキナーゼ(SH3−バインダーペプチド(複数可))とのAR相互作用を減少させるまたは無効にすることにより実現されることが発明者により明らかにされている。好ましくは、ペプチド組成物は7と約50程度のアミノ酸残基長由来であり、長さが10アミノ酸から、約55、50、45、40、35、30、25、20、15、14、13または12もしくは11程度(同値を含む)までのアミノ酸を有するようなペプチドをすべて含んでいてよい。
【0023】
約10、12、14、16アミノ酸の例となるペプチドは、AR活性およびDNA合成を低下させるのに特に有効であることが実証されている。そのような例となるペプチドは、配列番号1から配列番号6の配列に開示されている。
【0024】
本発明のペプチドは、随意に、開示されたペプチドのアミノ末端に1つもしくは複数のアミノ酸、またはカルボキシ末端に1つもしくは複数のアミノ酸をさらに含んでいてよく、あるいは代わりに、開示された抗アンドロゲンモチーフの両末端に1つまたは複数のアミノ酸をさらに含んでいてよい。そのようなアミノ酸は天然アミノ酸、アミノ酸誘導体、または置換されたアミノ酸でもよく、ペプチドの一次アミノ酸配列の全長を、本明細書に記載するAR−Src相互作用に関与するARモチーフのアミノ末端、カルボキシ末端、または両末端のいずれかで5、10、15、20、又は25程度の追加のアミノ酸だけ伸長するものであってもよい。
【0025】
したがって、好ましいペプチドの全長は、本明細書に開示するペプチドである限り、50、60、70、80、90、もしくは100程度、またはそれ以上のアミノ酸(同値を含む)まで及ぶものであってもよい。配列番号1から配列番号6までに示される配列のどれかを含む、約7または約10から、約100程度(同値を含む)までのアミノ酸長の単離されたペプチドが好ましい。前記ペプチド構造の重要な部分を模倣するよう立体的に類似する他の化合物を考案してよいこと、およびこれらの化合物は、癌、特に前立腺および乳房細胞癌の治療における本発明のペプチドと同じ用途を有している可能性があることも、本発明は企図している。
【0026】
本発明のペプチドは、少なくとも5つ以上の残基を含むと特徴付けてもよく、その配列内に少なくとも2つ以上のプロリン残基を含む。
【0027】
前記ペプチドは、L−アミノ酸(複数可)に代わりに1つまたは複数のD−アミノ酸(複数可)を用いるか、または例えば、アシル化、アセチル化、またはアミノ化によりN末端またはC末端に残基を付加することにより、治療での使用のために改変してよい。前記ペプチドは、脂質、ナノカプセル、脂質複合体および/またはリポソーム内に被包することもできる。その上、前記ペプチドは徐放のために被膜カプセルに組み込むことができる。
【0028】
本発明のペプチド由来分子は、抗腫瘍剤として、好ましくは抗乳癌剤もしくは抗前立腺癌剤として、またはアンドロゲンレセプターを単独でもしくはエストラジオールレセプターとともに発現している他の癌に対して使用してよい。
【0029】
上記のペプチド由来分子を医薬的に許容可能かつ有効な量で含む薬剤組成物は、本発明の目的である。
【0030】
好ましい実施形態では、前記組成物において、ペプチドはBSAもしくはKLHなどの担体分子に連結されており、かつ/または脂質粒子、ナノカプセル、リポソームもしくは脂質ベシクルなどの脂質組成物中に医薬品賦形剤と共に含まれる。好ましくは、前記組成物は少なくとも第2の抗癌剤をさらに含む。
【0031】
本発明のペプチドは、薬物、またワクチンの調製のための、アンドロゲンレセプターペプチドに特異的に結合する抗体の調製にも使用してよい。
【0032】
本発明の別の目的は、前記ペプチド由来分子を特異的に認識することができる抗体である。
【0033】
本発明の追加の態様は、ポリヌクレオチドもしくは組換えベクター、または本明細書に開示する1つまたは複数のペプチド、ポリヌクレオチドもしくは組換えベクター組成物を含む宿主細胞である。これらのそれぞれは、抗癌製剤の調製にも使用してよい。
【0034】
本発明は、非経口、筋肉内、静脈内注射または経口、経鼻、もしくは局所的投与に適した1つまたは複数の開示された抗エストロゲンペプチド組成物を含むキットを提供する。前記キットは、1つもしくは複数の追加の薬物、ペプチド模倣薬、または他の薬剤を含んでいてよい。前記ペプチドは、ワクチンまたは抗体の調製に使用してよい。
【0035】
別の実施形態では、本発明は、細胞に一定量の抗アンドロゲンペプチドを与えて、細胞中でアンドロゲンレセプター活性を減少させるための方法を提供する。前記細胞は培養されていても、前立腺癌または乳癌などの癌と診断されている動物中に含まれていてもよい。
【0036】
本発明は、アンドロゲンレセプター/Src会合を減少させるための方法も提供する。本発明の追加の実施形態は、動物における癌の治療方法を提供する。この方法は、一般に、前立腺癌または乳癌などの癌に罹った動物を同定すること、および、賦形剤またはリポソームまたは他の脂質担体に処方されてもよい、ならびに従来のいずれかの送達手段を通じた投与のために調製してよい抗アンドロゲンペプチド組成物を治療有効量で前記動物に投与することを含む。
【0037】
本発明は、治療有効量の抗エストロゲンペプチドを与えて、好ましくは動物内に含まれる腫瘍細胞を死滅させる方法も提供する。前記方法は、一般に、癌を有すると疑われる動物を同定し、治療有効量の抗アンドロゲンペプチドを動物に投与することを含む。本発明の製剤は、腫瘍細胞発生の予防に使用してもよい。
【0038】
抗アンドロゲンペプチドの組成
本発明は、精製された、および好ましい実施形態では、実質的に精製された、抗癌特性を有するプロリンリッチなペプチド誘導体を提供する。本明細書で使用する用語「精製されたペプチド」は、前記ペプチドリッチなペプチドが、その天然に入手可能な状態と比べてどんな程度であれ精製されているタンパク質組成物に言及することを意図する。したがって、精製されたペプチドまたはペプチドは、そのペプチドまたはタンパク質が天然に存在する環境から遊離しているペプチドまたはタンパク質にも言及する。
【0039】
一般に、「精製された」は、種々の非ペプチド誘導体成分を除去するために分画にかけられたペプチド組成物に言及することになる。
【0040】
用語「実質的に精製された」が使用される場合、この用語は、ペプチドが組成物の主要成分を形成する組成物(例えば、組成物中のタンパク質の約50%以上を構成するなど)に言及する。好ましい実施形態では、実質的に精製されたタンパク質は、組成物の60%、70%、80%、90%、95%、99%を超えるか、または99.9%以上を構成することになる。
【0041】
本発明に適用される「均質に精製され」ているポリペプチドまたはタンパク質とは、前記ポリペプチドまたはタンパク質に他のタンパク質および生物学的成分が実質的に含まれない純度を前記ポリペプチドまたはタンパク質が有することを意味する。例えば、精製されたポリペプチドは、分解性配列決定を十分うまく実施できる程度に他のペプチド成分が含まれない場合が多い。
【0042】
本発明は、一般式S1から誘導されるアミノ酸配列を含む、約50程度までのアミノ酸を含むペプチドを含む、少なくとも4以上の残基長の単離されたペプチドといった、プロリンリッチなペプチド誘導体に特に関係している。好ましくは、これらのペプチドはSrc−SH3ドメインへのAR会合を阻害し、ヒトなどの罹患動物における腫瘍ならびに前立腺癌および乳癌の治療に活性である。治療法における小ペプチドの使用は種々の理由で好ましい。これらの理由には、大規模調製の低コストおよび容易さ、ならびに産物の信頼性が挙げられる。その上、ペプチドが容易に組織を浸透できること、その低い免疫原性、ペプチドがプロテアーゼに比較的小さな標的を提示するために比較的長いバイオアベイラビリティを与えるという事実から、その生物学的特性は好ましいものであり、さらにペプチドがAR−Src相互作用の防止に有効に機能して、抗アンドロゲン治療法として機能することが予測される。
【0043】
しかし、ある種の実施形態での使用には好ましいかもしれないが、プロリンリッチなSH3バインダーペプチドは常にその最も精製された状態で提供されることは一般的に要求されない。この点に関して、十分なレベルのペプチド純度が達成される限り、当業者に公知のどんな精製方法でも用いることができる。
【0044】
例えば、L−アミノ酸の代わりに1つもしくは複数のD−アミノ酸を用いることにより、アシル化もしくはアミノ化などでN末端もしくはC末端に基を付加することにより、あるいは、脂質、ナノカプセル、脂質複合体および/もしくはリポソーム内に、または徐放のために設計された生体適合性被膜中にペプチドを被包することにより、合成ペプチドを改変することができる。本発明は、能動免疫と受動免疫の両方において使用するためのワクチンを企図している。これらのワクチンは、本明細書に開示する形で調製される免疫原性ペプチドから、最も迅速に調製できる。
【0045】
核酸セグメント
本発明は、ほとんどどんな供給源からも単離することができ、全ゲノムDNAから遊離しており、本明細書に開示する新規のペプチドの全体または一部をコードするDNAセグメントにも関する。新規のペプチド種をコードするポリヌクレオチドは、当業者に公知の方法を使用して完全にインビトロで合成できる。
【0046】
用語「DNAセグメント」に含まれるのは、DNAセグメントおよびそのようなセグメンとのさらに小さなフラグメント、ならびにプラスミド、コスミド、ファージミド、ファージおよびウイルスなどを含む組換えベクターである。
【0047】
同様に、単離されたまたは精製された抗アンドロゲンペプチドコード遺伝子を含むDNAセグメントは、ペプチドコード配列に加えて、他の天然に存在する遺伝子またはタンパク質コード配列から実質的に単離された、調節配列などのある種の他のエレメントを含んでいる可能性のあるDNAセグメントに言及する。この点に関して、用語「遺伝子」は、単純化のため、機能的タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドをコードするユニッを言及するのに使用される。当業者であれば理解するように、この機能的用語には、余分な染色体DNA配列を含むゲノム配列だけではなく、オペロン配列および/あるいは、タンパク質、ポリペプチドもしくはペプチドを発現する、または発現するように適応させることができる工学的に改変された遺伝子セグメントも含まれる。
【0048】
「他のコード配列から実質的に単離された」は、対象の遺伝子、この場合は、抗アンドロゲンポリペプチド遺伝子が前記DNAセグメントのコード領域のかなりの部分を形成すること、および、前記DNAセグメントが、大きな染色体フラグメントまたは他の機能的遺伝子またはオペロンコード領域などの天然に存在するコードDNAの大きな部分を含有していないことを意味する。当然のことながら、これは最初に単離されているDNAセグメントに言及しているが、後に人の手により該セグメントに付加される遺伝子、組換え遺伝子、合成リンカー、またはコード領域を除外するものではない。
【0049】
特定の実施形態では、本発明は、そのアミノ酸配列内に一般式S1に、またはポリペプチド配列番号1〜配列番号6の例に記載されたアミノ酸配列のいずれかを含む抗エストロゲンペプチド種をコードするDNA配列を組み込んでいる単離されたDNAセグメントおよび組換えベクターに関する。さらに好ましくは、前記DNA配列は、そのアミノ酸配列内に、一般式S1にまたはペプチド配列番号1〜配列番号6に記載されたアミノ酸配列に隣接する少なくとも10アミノ酸配列を含む抗アンドロゲンペプチド種をコードする核酸配列を含む。
【0050】
用語「一般式S1にまたはポリペプチド配列番号1〜配列番号6の例に実質的に記載された配列」とは、配列が一般式S1またはポリペプチド配列番号1〜配列番号6の例の配列の一部に実質的に一致しており、これらの配列のいずれかのアミノ酸と同一ではない比較的少数のアミノ酸または生物学的機能上の等価物を有することを意味する。用語「生物学的機能上の等価物」は当技術分野ではよく理解されており、本明細書においてさらに詳細に定義されている。したがって、配列番号1〜配列番号6のいずれか1つのアミノ酸配列に対して約70%と約80%の間、またはさらに好ましくは約81%と約90%の間、またはさらに好ましくは約91%と約99%の間のアミノ酸配列同一性を有する配列もしくは機能的同等性を有する配列である。
【0051】
したがって、配列番号1〜配列番号6のいずれか1つのアミノ酸配列に対して約70%と約80%の間、またはさらに好ましくは約81%と約90%の間、またはさらに好ましくは約91%と約99%の間のアミノ酸配列同一性を有する配列もしくは機能的同等性を有する配列は、配列番号1〜配列番号6のいずれか1つに実質的に記載されている配列になる。
【0052】
アミノ酸および核酸配列は、追加のN末端もしくはC末端のアミノ酸などの追加の残基、または5’もしくは3’配列を含んでいてもよいが、この配列がペプチド発現に関して生物学的抗アンドロゲン活性の維持を含む上記の基準を満たす限り、本明細書に開示する配列のうちの1つに実質的に記載されている可能性があることも理解されるであろう。末端配列の付加は、例えば、コード領域の5’もしくは3’部分のどちらかに隣接する種々の非コード配列を含んでもよく、または遺伝子内に存在することが分かっている種々の内部配列、すなわちイントロンを含んでもよい核酸配列に特に当てはまる。
【0053】
本発明の核酸セグメントは、コード配列それ自体の長さとは無関係に、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、追加の制限酵素部位、マルチプルクローニングサイト、他のコードセグメント、およびその同類のものなど他のDNA配列と組み合わせてよく、それによってその全長がかなり変化してもよい。したがって、ほとんどどんな長さの核酸フラグメントを用いてもよく、全長は好ましくは意図される組換えDNAプロトコルにおける調製および使用の容易さにより制限されることが企図されている。例えば、配列番号1および/または配列番号2に開示されたペプチド配列の全体もしくは一部をコードする短い隣接ストレッチを含む、あるいは配列番号1および配列番号2に開示されたペプチドのいずれかをコードするDNA配列と同一または相補的な核酸フラグメントを調製してよい。例えば、約30ヌクレオチドなどの、および約10,000以下、約5,000以下、約3,000以下、約2,000以下、約1,000以下、約500以下、約200以下、約100以下、約50以下、および約30以下の塩基対長(その中間の長さすべてを含む)であるDNA配列も有用であると予期される。
【0054】
本発明は、本発明のペプチドをコードする、または配列番号1〜配列番号6のアミノ酸配列をコードする特定の核酸配列に限定されるものではないことも理解されるであろう。
【0055】
したがって、組換えベクターおよび単離されたDNAセグメントは、ペプチドコード領域それ自体、基本的コード領域に選択された改変物もしくは修飾物を含むコード領域を多様に含んでよく、あるいは、組換えベクターおよび単離されたDNAセグメントは、やはりこれらのペプチドコード領域を含む比較的大きなポリペプチドをコードしてもよく、または変異アミノ酸配列を有する生物学的機能が等価のタンパク質もしくはペプチドをコードしていてもよい。
【0056】
本発明のDNAセグメントは、生物学的機能が等価のペプチドを包含する。そのような配列は、コドン重複性および機能的等価性の結果として生じる可能性があり、このようなコドン重複性および機能的等価性は、核酸配列および従ってこれにコードされるタンパク質内に自然に存在することが分かっている。代わりに、機能的に等価なタンパク質またはペプチドは、置換されるアミノ酸の特性についての考察に基づいて、タンパク質構造の変化が工学的に作り出される組換えDNA技術の適用を介して作製してよい。部位特異的突然変異誘発技術の適用により人が設計する変化を導入して、例えば、タンパク質の抗原性に改善点を導入するか、または分子レベルで活性を調べるために突然変異体を試験することもできる。
【0057】
必要であれば、例えば、ペプチドコード領域が同一発現ユニット内で、精製または免疫検出目的などの所望の機能を有する他のタンパク質またはペプチドと並べられる、融合タンパク質およびペプチドを調製してもよい。
【0058】
組換えベクターは、本発明の追加の態様を形成する。特に有用なベクターは、DNAセグメントのコード部分が、完全長タンパク質をコードしていてももっと小さなペプチドをコードしていても、プロモーターの制御下に位置付けられるベクターであると予期される。プロモーターは、コードセグメントもしくはエクソンの上流に位置している5’非コード配列を単離することにより得られる可能性があるので、本発明のペプチドをコードする遺伝子と天然に結合しているプロモーターの形でよい。
【0059】
ハイブリダイゼーションプローブおよびプライマーとしてのDNAセグメント
本発明のペプチドの発現における使用に加えて、本明細書で企図される核酸配列は種々の他の使用も有する。
【0060】
例えば、前記核酸配列は、核酸ハイブリダイゼーションの実施形態においてプローブまたはプライマーとしての有用性も有する。
【0061】
そのような核酸プローブは、抗アンドロゲンペプチドコード化配列に特異的にハイブリダイズするその能力のおかげで、所与の試料中の相補的配列の存在を検出する際に有用となり得る。しかし、突然変異種プライマー、または他の遺伝子構築物の調製における使用のためのプライマーの調製のための配列情報の使用を含む他の使用が想定されている。
【0062】
10〜14、15〜20、30、50、もしくは100〜200ヌクレオチド程度の隣接ヌクレオチドストレッチからなる配列領域を有する核酸分子は、開示されたポリペプチドをコードするDNA配列に対して同一でも相補的でも、特に、例えば、サザンおよびノーザンブロッティングにおいて使用するためのハイブリダイゼーションプローブとして企図されている。小さいフラグメントほど、隣接する相補的領域の長さが、約10〜14と約100〜200ヌクレオチドの間など変化してもよいハイブリダイゼーション実施形態においては一般に有用であるが、検出を望む相補的配列の長さ次第では比較的大きな隣接する相補的ストレッチを使用してもよい。
【0063】
約14ヌクレオチド長のハイブリダイゼーションプローブを使用すれば、安定でありかつ選択的である二重鎖分子の形成が可能になる。しかし、ハイブリッドの安定性および選択性を増加させ、それによって、得られる特定のハイブリッド分子の質と程度を改善するためには、14塩基長よりも大きなストレッチに及ぶ隣接する相補的配列を有する分子が一般には好ましい。15〜20隣接ヌクレオチド、または必要であればさらに長い遺伝子相補的ストレッチを有する核酸分子を設計する方が一般に好まれるであろう。
【0064】
ある種の実施形態では、本発明の核酸配列を、ハイブリダイゼーションを判定するために、標識などの適切な手段と組み合わせて用いるのが有利であろう。検出シグナルを出すことができる蛍光、放射性、酵素的またはアビジン/ビオチンなどの他のリガンドを含む、多種多様な適切な指示手段は当技術分野では公知である。好ましい実施形態では、放射性または他の環境に好ましくない試薬の代わりに、蛍光標識またはウレアーゼ、アルカリホスファターゼもしくはペルオキシダーゼなどの酵素タグを用いることがおそらく好まれるであろう。酵素タグの場合、相補的核酸含有試料との特異的ハイブリダイゼーションを同定するために、比色指示基質を用いてヒトの目または分光光度計で検出可能な手段を提供できることは公知である。
【0065】
一般に、本明細書に記載するハイブリダイゼーションプローブは、溶液ハイブリダイゼーションにおける試薬としても、ならびに固相を用いる実施形態においても有用であろうと想定される。固相を含む実施形態では、試験DNA(またはRNA)は選択されたマトリックスまたは表面に吸着されるか、別の方法で付着される。次に、この固定された1本鎖核酸は、望ましい条件下で選択されたプローブとの特異的ハイブリダイゼーションにかけられる。選択された条件は、要求される特定の基準に基づく特定の状況に依拠することになる(例えば、G+C含有量、標的核酸の種類、核酸の供給源、ハイブリダイゼーションプローブの大きさ、等に依拠する)。
【0066】
組換えベクターおよびポリペプチド発現
本発明は、開示された抗アンドロゲンペプチドのいずれかを含む組成物も開示し、クレームする。前記組成物は、抗アンドロゲンペプチドをコードする核酸セグメントを発現する1つもしくは複数の宿主細胞、前記ペプチドもしくは前記ペプチドを含む融合タンパク質を発現する組換え宿主細胞、開示された抗アンドロゲンペプチドを含有する細胞懸濁液、細胞抽出物、細胞封入体、または組織培養物もしくは培養抽出物、培養上清、破壊細胞、細胞抽出物、細胞溶解物、細胞ホモジネート等に含まれていてもよい。前記組成物は、水性形でも、代わりに、乾燥、半湿潤、もしくは細胞ペースト、細胞ペレットなどの類似の形でも、代わりに、フリーズドライ化、粉末化、凍結乾燥、蒸発、または類似の方法で乾燥した形をしてもよい。抗アンドロゲンペプチドを調製するためのそのような手段は、タンパク質単離および精製の分野の当業者には公知である。ある種の実施形態では、抗アンドロゲンペプチドは、精製しても、濃縮しても、他の試薬と混合しても、または目的の最終的な形まで加工してもよい。好ましくは、前記組成物は、抗アンドロゲンペプチドを約1重量%から約90重量%の範囲で、さらに好ましくは、約5重量%から約50重量%の範囲で含むことになる。
【0067】
好ましい実施形態では、本発明の抗アンドロゲンペプチド組成物は、そのようなペプチドを産生するのに有効な条件下で抗アンドロゲンペプチドを発現する宿主細胞を培養し、次に前記細胞から該ペプチドを得る段階を含むプロセスにより調製してよい。そのような抗アンドロゲンペプチドを得ることは、前記ポリペプチドを精製したり、濃縮したり、加工したり1つまたは複数の試薬内に混合することをさらに含んでもよい。好ましくは、抗アンドロゲンペプチドは、約1重量%から約90重量%の範囲で、さらに好ましくは、約5重量%から約70重量%の範囲で、より好ましくは、約10重量%から約20重量%から約30重量%、または約40重量%もしくは50重量%までの量で得られる。
【0068】
本発明は、抗アンドロゲンペプチド組成物を調製する方法にも関する。そのような方法は、一般に、前記ペプチドを産生するのに有効な条件下で抗アンドロゲンペプチドを発現する宿主細胞を培養し、次にそのようにして産生されたポリペプチドを得る段階を含む。
【0069】
本発明の組換えプラスミドベクターを使用して、他の適切な細菌または真核細胞を形質転換して本発明の抗アンドロゲンポリペプチドを産生してよい。
【0070】
NIH3T3、COS7、およびCAOV3を含む真核宿主細胞、ならびに酵母細胞は、本発明のペプチド種の調製に特に有用であると予期される。同様に、大腸菌、シュードモナス属種および関連する腸内細菌などのグラム陰性細胞を含む原核宿主細胞はすべて、本発明の抗アンドロゲンペプチドの調製に有用であると予期される。
【0071】
そのような実施形態では、コードDNAセグメントを組換えまたは異種プロモーターの制御下に位置付けることによりある種の利点が得られることが予期される。本明細書で使用するように、組換えまたは異種プロモーターは、その自然環境において抗アンドロゲンペプチドをコードするDNAセグメントとは通常は結合されていないプロモーターに言及することを意図している。そのようなプロモーターは、通常は他の遺伝子と結合しているプロモーター、および/または任意の細菌、ウイルス、または真核細胞から単離されたプロモーターを含んでいてよい。好ましい真核細胞は動物細胞であり、哺乳動物細胞、特にヒト細胞が最も好ましい。当然ながら、発現のために選ばれた細胞種、組織、生物、動物、または組換え宿主細胞において前記DNAセグメントを有効に発現させるプロモーターを用いることが重要になる。タンパク質発現のためのプロモーターと細胞型の組合せの使用は、分子生物学の分野の当業者には一般に公知であり、例えば、Sambrookら、1989年を参照されたい。用いるプロモーターは、構成的でも、誘導性でもよく、適切な条件下で使用すれば、導入されたDNAセグメントを高レベルで発現させることができ、例えば、組換えタンパク質またはペプチドの大規模生産に有利である。
【0072】
治療および診断用キット
本発明の治療キットは、本明細書に開示されるプロリンリッチなペプチドを含むタンパク質、ペプチド、阻害剤、遺伝子、ベクターまたは他のペプチド結合タンパク質エフェクターを含むキットである。そのようなキットは、一般に、許容可能な製剤中に本明細書に開示されるプロリンリッチなペプチドを含むタンパク質、ペプチド、阻害剤、遺伝子、ベクターもしくは他のペプチド結合タンパク質エフェクター、または、これらのいずれかを発現させるベクターを含有する許容可能な製剤を適切な収容手段で含み、随意に他の抗癌剤を含んでいてもよい。キットは、単一の容器手段を有してもよく、化合物ごとに別々の容器手段を有してもよい。
【0073】
キットの成分が1つまたは複数の液体溶液で提供される場合、前記液体溶液は水溶液であり、減菌水溶液が特に好ましい。前述の組成物は注入可能な組成物に処方してもよい。この場合、容器手段それ自体が注射器、ピペット、または他のそのような器具でもよく、これらの器具から製剤が身体の感染部位に適用されても、動物に注入されても、またはキットのその他の成分に適用され、混合されてもよい。
【0074】
しかし、キットの成分は、乾燥粉末として提供されてよい。試薬または成分が乾燥粉末として提供される場合、その粉末は適切な溶剤を添加することにより再溶解することができる。前記溶剤は別の容器手段で提供されてもよいと想定されている。第2の抗癌治療薬が提供されるところでは、前記キットは一般に第2の容器を含有する。前記キットは許容可能な希釈剤のための別の容器を含んでいてもよい。
【0075】
核酸送達およびDNAトランスフェクションの方法
ある種の実施形態では、本明細書に開示する核酸セグメントを使用して適切な宿主細胞をトランスフェクトすることが企図されている。DNAを細胞に導入するための技術は当業者には公知である。核セグメントを細胞に送達するための4種類の一般的方法としてはは、
(1)化学的方法(GrahamとVanDerEb、1973年)
(2)マイクロインジェクション(Capecchi、1980年)、エレクトロポレーション(WongとNeumann、1982年;Frommら、1985年)および遺伝子銃(Yangら、1990年)などの物理的方法
(3)ウイルスベクター(Clapp、1993年;Eglitisら、1988年;EglitisとAnderson、1988年)、ならびに
(4)レセプター媒介機構(Curielら、1991年;Wagnerら、1992年)
が考えられる。
【0076】
リポソームおよびナノカプセル
ある種の実施形態では、発明者は、ペプチド組成物を宿主細胞に導入するためのリポソームおよび/またはナノカプセルの使用を企図している。そのような製剤は、本明細書に開示するポリペプチド、医薬品、および/または抗体の医薬的に許容可能な製剤の導入に好ましいものであろう。リポソームの形成および使用は、一般に当業者には公知である(例えば、細胞内細菌感染および疾病の標的抗体療法におけるリポソームおよびナノカプセルの使用を記載している、Couvreurら、1977年を参照)。さらに最近では、血清安定性および循環半減時間が改良されたリポソームが開発された(GabizonとPapahadjopoulos、1988年;AllenとChoun、1987年)。
【0077】
図は本明細書の一部を形成し、本発明のある種の態様をさらに実証するために含まれる。本発明は、本明細書に示される特定の実施形態の詳細な説明と組み合わせて1つまたは複数のこれらの図を参照することによりさらによく理解される。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】図1A:ARをモデルにしたSrc−SH3バインダーペプチド(配列番号1)によるヒト前立腺癌細胞のDNA合成阻害を示す図である。ヒト前立腺癌由来のLNCaP細胞を、先の文献(Migliaccioら、2000年)の記載に沿って活性炭処理した血清を添加したフェノールレッド無添加培地で増殖させ、10nM R1881合成アンドロゲンだけで、または1000倍過剰量の抗アンドロゲンCasodex、もしくは1nMのSH3−バインダーペプチド(SH3、配列番号1)、もしくは1nM Ss(シャッフル配列:配列番号7)ペプチドの存在下で10nM R1881合成アンドロゲンで24時間処理した。ホルモン処理の終了時に、未処理の細胞(対照)あるいはR1881だけで(R1881)、またはcasodex(Cdx)、もしくはSH3バインダーペプチド(SH3、配列番号1)、もしくはペプチド配列番号1のシャッフル配列(Ss、配列番号7)の存在下でR1881で処理した細胞へのBrdU取込みを、報告された通り(Castoriaら、1999年)に評価した。データは、BrdUを取り込んだ細胞の割合として6回の実験の平均値を求めて示している。 図1B:AR由来のSH3バインダーペプチド(配列番号1)によるエストラジオール刺激ヒト乳癌細胞のDNA合成阻害を示す図である。ヒト乳癌由来MCF−7細胞を、前述の通りに活性炭処理した血清を含有するフェノールレッド無添加培地で3日間維持し、10nM 17βエストラジオールだけで、または1000倍過剰量の抗エストロゲンICI 182,780、もしくは1nMのSH3バインダーペプチド配列番号1、もしくはペプチド配列番号1のシャッフル配列(Ss、配列番号7)の存在下で10nM 17βエストラジオールで24時間処理した。ホルモン処理の終了時に、未処理の細胞(対照)あるいはエストラジオールだけで(E2)、またはICI 182,780(ICI)、もしくはAR由来(SH3)、もしくはSsペプチドの存在下でエストラジオールで処理した細胞へのBrdU取込みを評価した。データは、BrdUを取り込んだ細胞の割合として6回の実験の平均値を求めて報告している。 図1C:ARをモデルにしたSH3バインダーペプチド(配列番号1)によるEGF−刺激ヒト前立腺癌細胞のDNA合成阻害を示す図である。LNCaP細胞を、前述の通りに活性炭処理した血清を添加したフェノールレッド無添加培地で増殖させ、100ng/ml EGFだけで、または10μMの抗エストロゲンICI 182,780、もしくは1nMのAR由来(SH3バインダー)ペプチド(配列番号1)、もしくはペプチド配列番号1のシャッフル配列(配列番号7)の存在下で100ng/ml EGFで24時間処理した。成長因子処理の終了時に、未処理の細胞(対照)あるいはEGFだけで(EGF)、またはICI 182,780(ICI)、もしくはSH3−バインダー(SH3)、もしくはペプチド配列番号1のシャッフル配列(Ss)の存在下でEGFで処理した細胞へのBrdU取込みを評価した。データは、BrdUを取り込んだ細胞の割合として報告している。 図1D:ARをモデルにしたSH3バインダーペプチド(配列番号1)によるEGF−刺激ヒト乳癌細胞のDNA合成阻害を示す図である。MCF−7細胞を、前述の通りに活性炭処理した血清を添加したフェノールレッド無添加培地で増殖させ、100ng/ml EGFだけで、または10μMの抗エストロゲンICI 182,780、もしくは1nMのAR由来(SH3バインダー)ペプチド、もしくはペプチド配列番号1のシャッフル配列(配列番号7)の存在下で100ng/ml EGFで24時間処理した。成長因子処理の終了時に、未処理の細胞(対照)あるいはEGFだけで(EGF)、またはICI 182,780(ICI)、もしくはSH3−バインダー(SH3)、もしくはペプチド配列番号1のシャッフル配列(Ss)の存在下でEGFで処理した細胞へのBrdU取込みを評価した。データは、BrdUを取り込んだ細胞の割合として報告している。
【図2】図2A:AR由来(Src−SH3バインダー)ペプチド(配列番号1)によるSrcとのアンドロゲン刺激AR会合の阻害を示す図である。ヒト前立腺癌LNCaP細胞を、無刺激のままにしておく、あるいは10nM R1881だけで、または1000倍過剰量のCasodex、もしくは1nMのSH3−バインダーペプチド、もしくはペプチド配列番号1のシャッフル配列(配列番号7)の存在下で10nM R1881で2分間刺激しておいた。細胞ライセートは抗Src抗体とともにインキュベートし、免疫沈降させたタンパク質はSDS−PAGEで分離し、ニトロセルロースフィルター上に移した。次に、フィルターは、抗Srcまたは抗ヒトAR抗体のいずれかでブロットしてSrcに会合したARを検出した。免疫複合体はECL検出キットを使用して検出した。レーン1:無刺激細胞;レーン2:R1881処理細胞;レーン3:Casodex(Cdx)の存在下R1881で処理した細胞;レーン4:SH3バインダーペプチド(SH3、配列番号1)の存在下R1881で処理した細胞;レーン5:ペプチド配列番号1のシャッフル配列(Ss、配列番号7)の存在下R1881で処理した細胞。 図2B:AR由来Src−SH3バインダーペプチド(配列番号1)によるSrcとのエストロゲン刺激AR会合の阻害を示す図である。ヒト乳癌MCF−7細胞を、無刺激のままにしておく、あるいは10nM 17βエストラジオールだけで、または1000倍過剰量のICI 182,780、もしくは1nMのSH3−バインダーペプチド、もしくはペプチド配列番号1のシャッフル配列(配列番号7)の存在下で10nM 17βエストラジオールで2分間刺激しておいた。細胞ライセートは抗Src抗体とともにインキュベートし、免疫沈降させたタンパク質はSDS−PAGEで分離し、ニトロセルロースフィルター上に移した。次に、フィルターは、抗Srcまたは抗ヒトAR抗体のいずれかでブロットしてSrcに会合したARを検出した。免疫複合体はECL検出キットを使用して検出した。レーン1:無刺激細胞;レーン2:エストラジオール(E2)処理細胞;レーン3:ICI 182,780(ICI)の存在下E2で処理した細胞;レーン4:SH3バインダーペプチド(SH3)の存在下E2で処理した細胞;レーン5:ペプチド配列番号1のシャッフル配列(Ss)の存在下エストラジオールで処理した細胞。
【図3】図3A:AR由来Src−SH3バインダーペプチド(配列番号1)によるアンドロゲン誘導サイクリンD1発現の阻害を示す図である。静止MCF−7およびLNCaP細胞を未処理のままにしておく、あるいは10nM R1881だけで、または5μM PI3−キナーゼ阻害剤LY294,002、もしくは1nM AR由来SH3バインダー、もしくはペプチド配列番号1のシャッフル配列(配列番号7)の存在下で10nM R1881で8時間処理しておいた。細胞ライセート由来タンパク質をSDS−PAGEで分離し、次にニトロセルロースフィルターに移した。内在性サイクリンD1は適切な抗体を使用して検出した。レーン1:無刺激細胞;レーン2:R1881処理細胞;レーン3:LY294,002(LY)の存在下R1881で処理した細胞;レーン4:AR由来(SH3バインダー)ペプチド(SH3)の存在下R1881で処理した細胞;レーン5:ペプチド配列番号1のシャッフル配列(Ss)の存在下R1881で処理した細胞。 図3B:AR由来Src−SH3バインダーペプチド(配列番号1)によるエストロゲン誘導サイクリンD1発現の阻害を示す図である。静止MCF−7およびLNCaP細胞を未処理のままにしておく、あるいは10nM 17βエストラジオールだけで、または5μM PI3−キナーゼ阻害剤LY294,002、もしくは1nMのSH3バインダー、もしくはペプチド配列番号1のシャッフル配列(配列番号7)の存在下で10nM 17βエストラジオールで8時間処理しておいた。細胞ライセート由来タンパク質をSDS−PAGEで分離し、次にニトロセルロースフィルターに移した。内在性サイクリンD1は適切な抗体を使用して検出した。レーン1:無刺激細胞;レーン2:エストラジオール処理細胞;レーン3:LY294,002(LY)の存在下エストラジオールで処理した細胞;レーン4:SH3バインダーペプチド(SH3)の存在下エストラジオールで処理した細胞;レーン5:ペプチド配列番号1のシャッフル配列(Ss)の存在下エストラジオールで処理した細胞。
【図4】図4A:前立腺癌(LNCaP細胞)におけるアンドロゲンレセプター調節遺伝子転写に対するAR由来(SH3バインダー)ペプチド(配列番号1)の無効性を示す図である。LNCaP細胞は、アンドロゲン応答性エレメント(ARE3416)の制御下にあるルシフェラーゼ遺伝子をコードするレポーター遺伝子でトランスフェクトした(Castoriaら、2003年)。トランスフェクションの6時間後、細胞は10nM R1881の不在下で、あるいは10nM R1881だけの存在下で、または1000倍過剰量のCasodexと10nM R1881で、または1nM SH3バインダーペプチド(配列番号1)もしくは1nMペプチド配列番号1のシャッフル配列(配列番号7)と10nM R1881でさらに24時間維持した。次に、ルシフェラーゼ活性を細胞ライセートにおいて評価した。バー1:無刺激細胞;バー2:R1881処理細胞;バー3:Casodex(Cdx)の存在下R1881で処理した細胞;バー4:SH3バインダーペプチド(SH3)の存在下R1881で処理した細胞;バー5:ペプチド配列番号1のシャッフル配列(Ss)の存在下R1881で処理した細胞。 図4B:乳癌(MCF−7細胞)におけるエストロゲンレセプター調節遺伝子転写に対するAR由来(SH3バインダー)ペプチド(配列番号1)の無効性を示す図である。MCF−7細胞は、エストロゲン応答性エレメント(vt−tk−LUC)の制御下にあるルシフェラーゼ遺伝子をコードするレポーター遺伝子でトランスフェクトした(Castoriaら、2003年)。トランスフェクションの6時間後、細胞は10nM 17β−エストラジオール(E2)の不在下で、あるいは10nM 17β−エストラジオール(E2)だけの存在下で、または1000倍過剰量のICI 182,780と10nM 17β−エストラジオールで、または1nM SH3バインダーペプチド(配列番号1)もしくは1nMペプチド配列番号1のシャッフル配列(配列番号7)と10nM 17β−エストラジオールでさらに24時間維持した。次に、ルシフェラーゼ活性を細胞ライセートにおいて評価した。バー1:無刺激細胞;バー2:E2処理細胞;バー3:ICI 182,780(ICI)の存在下E2で処理した細胞;バー4:SH3バインダーペプチド(SH3)の存在下E2で処理した細胞;バー5:ペプチド配列番号1のシャッフル配列(Ss)の存在下E2で処理した細胞。
【図5】図5A:インビボでのヒト前立腺癌細胞に対するSH3−バインダーペプチドの効果を示す図である。LNCaP前立腺癌細胞をオスのヌードマウスの皮下で増殖させた。腫瘍が200〜400mmの大きさに到達した後、マウスは、200μlの対照(ctrl)溶液(サークル)または2μMのSH3(SH3)バインダーペプチド配列番号1を含有する同一溶液(四角)の腹腔内注射で治療した。治療は0週目の開始時に始め、グループ当たり5匹の動物を使用して、ペプチドを隔日で4週間与えた。 図5B:インビボでのヒト乳癌細胞に対するSH3−バインダーペプチドの効果を示す図である。MCF−7ヒト乳癌細胞をオスのヌードマウスの皮下で増殖させた。腫瘍が約1000mmの大きさになると、マウスは、200μlの対照溶液(ctrl、サークル)または2μMのSH3バインダーペプチド配列番号1を含有する200μlの同一溶液(SH3、四角)の腹腔内注射で治療した。治療は0週目の開始時に始め、グループ当たり5匹の動物を使用して、ペプチドを隔日で5週間与えた。
【図6】図6A:ヒト前立腺癌細胞におけるKi−67抗原発現およびアポトーシスに対するSH3バインダーペプチドの効果を示す図である。オスのヌードマウスにおけるLNCaP細胞異種移植片は、図5Aに示される実験で使用した移植片と同じである。治療の終了時に、腫瘍検体をKi−67抗原発現およびアポトーシスについて評価した。左パネルはKi−67抗原の発現を、未治療(ctrl)マウスおよび配列番号1ペプチド治療(SH3)マウスにおけるKi−67陽性細胞の割合として示している。右パネルは、代表的な分野において観察されるTUNELアッセイ陽性細胞を示している。 図6B:ヒト乳癌細胞におけるKi−67抗原発現およびアポトーシスに対するSH3バインダーペプチドの効果を示す図である。オスのヌードマウスにおけるMCF−7細胞異種移植片は、図5Bの実験で使用した移植片と同じである。治療の終了時に、腫瘍検体をKi−67抗原発現およびアポトーシスについて評価した。左パネルはKi−67抗原の発現を、未治療(ctrl)マウスおよび配列番号1ペプチド治療(SH3)マウスにおけるKi−67陽性細胞の割合として示している。右パネルは、代表的な分野において観察されるTUNELアッセイ陽性細胞を示している。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0079】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を実証するために含まれる。しかし、当業者であれば、本開示を考慮すると、開示されている特定の実施形態において多くの変更を加えることができ、それでも本発明の精神と範囲から逸脱することなく同様のまたは類似の結果が得られることを認識するはずである。
【実施例1】
【0080】
化学的合成によるAR由来Src−SH3バインダーペプチド(配列番号1)の調製
固相法(Bodansky MとBodansky A、1995年)および科学文献に大部分が記載されており(CarpinoとHan、1972年;FieldsとNoble、1990年)当業者には公知であるFmoc/tBu(Fmoc:9−フルオレニル−メトキシカルボニル)化学を用いることにより、ペプチド1から4は都合よく手作業で調製することができる。前記調製を迅速に処理し促進するために、自動多重ペプチド合成装置(automatic multiple peptide synthesizer)を利用することができる。どんな種類の化学的方法または単一もしくは複数のチャネルを備えた機械的合成装置も都合よく使用しても、最終化合物の生物学的特性に影響を与えることなく、前記合成を実施することができる。
【0081】
ペプチドの合成は、C末端にアミドペプチドを与えることができるRINKリンカーで適切に誘導体化された樹脂を使用して50μモルのスケールで実施される(Rink、1987年)。そのような樹脂の1つは、製品4−(2’,4’−ジメトキシフェニル−Fmoc−アミノメチル)−フェノキシ樹脂、100〜200メッシュ;スチレン1%ジ−ビニルベンゼン共重合体)、置換0.50mmol/g(Novabiochem社、カタログ番号01−64−5026)であり、当業者にはRINK AMIDE樹脂としても知られている。100mgの量の樹脂を使用する。前記樹脂は、底に濾過中隔を備えた5mlポリプロピレン反応容器(RV)(島津製作所、カタログ番号292−05250−02)に設置する。典型的なプロトコルでは、樹脂は、攪拌下10分間膨潤させ、次に、1.0mLの乾燥N,N−ジメチルホルムアミド(DMF、ペプチド合成グレード、LabScan社、カタログ番号H6533)で複数回リンスし、わずかな減圧を用いて底から前記溶剤を取り除く。次に、前記樹脂は、DMFを溶媒とする1.0mLの20%v/vのピペリジン溶液(BIOSOLVE社、カタログ番号16183301)で攪拌下室温で15分間処理して、最初のFmoc基を取り除き、そして1.0mLの無水DMFで2分間の洗浄を数回(少なくとも4回)行って過剰な試薬を取り除く。
【0082】
次に、以下の6段階を連続して実施する。
1.250μモル(117mg)のFmoc−L−Lys(Boc)−OH(Novabiochem、カタログ番号04−12−1026)を500μLの無水DMF中に溶解する。
2.保護したアミノ酸を、400μLの溶液Aおよび400μLの溶液Bを用いて、室温で攪拌下4分間かけて前活性化する。
溶液Aは、DMF中に0.5Mの2−(1H−ベンゾトリアゾール−イル)−1,1,3,3−テトラメチル−ウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU、>99%,Chem−Impex Intl、カタログ番号02056)および0.5Mの1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt、SIGMA−ALDRICH社、カタログ番号H2006)を含有する。
溶液Bは、DMF中に1Mのジイソプロピル−エチルアミン(DIEA、SIGMA−ALDRICH社、カタログ番号D−3887)を含有する。
3.前記溶液を樹脂上に移し、30分間攪拌する。
4.前記試薬を減圧下で取り除き、前記樹脂は1.0mLの無水DMFで4回洗浄する。
5.前記樹脂は、再び、DMFを溶媒とする1.0mLの20%v/vピペリジン溶液で攪拌下室温で15分間処理して、N−末端Fmocを取り除く。
6.前記樹脂は1.0mLのDMFで3回洗浄する。
【0083】
次に、段階1において配列中で要求される対応する保護アミノ酸を変更して、段階1から6を繰り返す。使用される保護誘導体は次の表IIに示す。
【0084】
【表2】

【0085】
最後のFmoc基を取り除いたのち、樹脂は、攪拌下室温で30分間、1.0M DIEAを含有する無水DMFを溶媒とする1.0M無水酢酸溶液(Fluka社、カタログ番号45830)で処理することによりアセチル化する。DMFで十分にリンスした後、樹脂は以下のように洗浄する。
【0086】
【表3】

【0087】
樹脂は窒素流を用いて乾燥させ、次に秤量する。樹脂の最終重量は280.0mgである。
【0088】
3.0mLのTFA−HO−TIS(100:5:5、v/v/v)混合物(TIS、トリ−イソ−プロピルシラン、SIGMA−ALDRICH社、カタログ番号23,378−1)を新たに調製し、樹脂に添加する。3時間攪拌後、樹脂は濾過して除き、酸性溶液を、15mLの冷EtOを含有する15mlポリプロピレンチューブに直接回収する。3000rpm、10分間の遠心分離により白い沈殿物を分離し、有機溶剤を捨てる。沈殿物は5.0mLの冷EtOで1回洗浄し、遠心分離後2.0mLの脱イオン化HOに溶解させ、凍結乾燥する。白い固体を秤量する:102mg。
【0089】
凍結乾燥させたペプチドは、例えば、Phenomenex社が提供するJupiter25×2.1cmID C18カラム(Phenomenex社、カタログ番号00G−4053−P0)などの市販の調製用逆相C18カラムを備えた、島津製作所製のLC−8システムなどの市販の高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)システムを使用して逆相クロマトグラフィーにより都合よく精製することができる。ペプチド精製のための典型的勾配は、脱イオン化HO、0.1%トリフルオロ酢酸(TFA、Sigma−Aldrich社、カタログ番号91700)およびアセトニトリル(CHCN、LabScan社、カタログ番号C2503、0.1%TFA)などの溶剤を利用して、20mL/分の典型的動作流量で35分間に渡り、典型的濃度は、5%〜60%CHCN/0.1%TFAである。これらの方法は当業者には公知であり、Phenomenex Jupiterカラム、250×4.6mmID RP−18(Phenomenex社、カタログ番号00G−4053−E0)などの市販の分析用RP18カラム上の分析用HPLC分析による測定において最大95〜99%の純度の精製ペプチドを提供することになる。勾配は、1.0mL/分の典型的流量で35分間かけて、5%〜60%CHCN/0.1%TFAである。モニタリングは、典型的には、HPLCシステムに装着され、典型的な波長の214nmに設定された紫外可視検出器を使用することにより実現される。
【0090】
最終ペプチドは、MALDI−TOFおよびESI−MSなどの質量分析法により都合よく特徴付けられる。典型的な例では、ESI−MS質量分析器で測定される実験分子量(MW)は、1189.5原子質量単位(amu)であり、これは理論値1189.68amu(モノアイソトピック種)に一致する。
【実施例2】
【0091】
AR由来Src−SH3バインダーペプチド配列番号1の「インビトロ」抗腫瘍効果
10nM R1881合成アンドロゲンでのヒト前立腺癌LNCaPの治療はDNA合成を劇的に促進することは実証されている。したがって、LNCaP細胞は、ルーチンで、フェノールレッド、2mM L−グルタミン(GIBCO社)、ペニシリン(100U/ml)、ゲンタマイシン(50μl/ml)、インスリン(ヒューマリンI 0.2U.I/ml、Roche社)および10%ウシ胎仔血清を補充したRPMI 1640培地(GIBCO社)中、大気中5%CO中で増殖させる。次に、細胞は、前もってゼラチン被膜したカバーガラス上に約40%コンフルエンスで播種し、インスリンおよび活性炭処理ウシ血清を含有するフェノールレッド無添加RPMI−1640中で維持し、3日間ステロイド汚染が最小限度以下であることを確認する(Shiら、1994年)。次に、LNCaP細胞は、10nMの合成アンドロゲンR1881(Astra−Zeneca社)だけで、または1000倍モル過剰の抗アンドロゲンCasodex(Astra−Zeneca社)もしくは表示されるペプチドの存在下で10nMの合成アンドロゲンR1881で24時間処理される。
【0092】
6つの別々のアッセイから平均値をとった図1Aに示す結果により、アンドロゲンが20から54%BrdU取込み速度を増加させていることが示される。ホルモン刺激取込みは、濃度1nMのSH3バインダーペプチド(SH3)により劇的に減少している(25%の残留BrdU取込み)。SH3ペプチドの効果を、同程度にDNA合成を減少させた(21%の残留BrdU取込み)純粋抗アンドロゲンCasodexの効果と比較した。配列番号1のシャッフル配列(shuffled sequence)(配列番号7)に対応する合成ペプチドも使用した(Ss)。細胞のアンドロゲン刺激中にこのペプチドを添加しても、ホルモン依存性DNA合成に対して無視できるほどの阻害効果しかない(48%の残留BrdU取込み)。上記のペプチドに加えて、ペプチド配列番号2〜配列番号4を試験した。その阻害効果はペプチド配列番号1の阻害効果ほど強くはなかった。
【0093】
MCF−7ヒト乳癌細胞のエストラジオール刺激DNA合成に対するペプチド配列番号1の効果も試験した。MCF−7細胞は、フェノールレッド、2mM L−グルタミン(GIBCO社)、ペニシリン(100U/ml)、ゲンタマイシン(50μl/ml)、ヒドロコルチゾン3.75ng/ml、インスリン(ヒューマリンI 0.2U.I/l、Roche社)および5%ウシ胎仔血清を補充したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM、GIBCO社)中、大気中5%CO中で増殖させた。次に、細胞は、前もってゼラチン被膜したカバーガラス上に約40%コンフルエンスで播種し、インスリンおよび活性炭処理ウシ血清を含有するフェノールレッド無添加DMEM中で3日間維持する。次に、MCF−7細胞は、10nM 17βエストラジオール(SIGMA社、ミズリー州)だけで、または1000倍モル過剰の抗エストロゲンICI 182,780(Astra−Zeneca社)もしくは表示されるペプチドの存在下で10nM 17βエストラジオールで24時間処理される。
【0094】
6つの異なるアッセイから平均値をとった図1Bに示す結果により、エストラジオール(E)が8から61%BrdU取込み速度を増加させていることが示される。ホルモン刺激取込みは、濃度1nMのSH3バインダーペプチド(SH3)により著しく減少している(23%の残留BrdU取込み)。SH3ペプチドの効果を、エストロゲン誘導DNA合成を停止させた(7%の残留BrdU取込み)純粋抗エストロゲンICI 182,780の効果と比較する。ペプチド配列番号1のシャッフル配列(Ss)は、エストロゲン誘導DNA合成に対して著しい効果を及ぼさない。
【0095】
ペプチド配列番号1について、ヒト前立腺癌LNCaP(1C)およびMCF−7(1D)細胞におけるEGF誘導DNA合成を減少させるまたは阻害するその能力を最終的に評価する。LNCaPおよびMCF−7細胞は上記のように培養し、次にカバーガラス上に播種する。次に細胞を、1nMペプチド配列番号1の不在下または存在下で、100ng/mlの高純度EGF(Boheringer社、カリフォルニア州)で刺激する。
【0096】
図1Cでは、EGFがBrdU取込みを8から21%に刺激することが観察される。前記ペプチドの添加により、5.8%までBrdU取込みが減少するが、これは、純粋な抗エストロゲン、ICI 182,780(7%の残留取込み)の場合と同程度である。ペプチド配列番号1のシャッフル配列(Ss)はBrdU取込みにわずかな効果がある(15%の残留取込み)。MCF−7細胞では、図1Dに示されるように、EGFもBrdU取込みを刺激し(6から36%)、前記ペプチドの添加により13%までBrdU取込みは減少し、ICI 182,780では残留取込みの9%まで減少する。これとは対照的に、ペプチド配列番号1のシャッフル配列(Ss)ではBrdU取込みは減少しない(48%の取込み)。
【0097】
方法
DNA合成は、100μM(最終濃度)BrdU(Boeheringer社)での6時間パルスにより単細胞で評価される。カバーガラス上の細胞を固定し、希釈(PBS中1:1)フルオレセイン結合マウス抗BrdU mAbs(Boheringer Mannheim社製、インディアナ州のクローンBMC9318)とともにインキュベートし、次に、PBSで3回洗浄する。マウス抗体は、希釈(PBS中1:200)Texas−red結合ヤギ抗マウス抗体(Calbiochem社、カリフォルニア州)を使用して検出する。カバーガラスはすべてPBSで3回洗浄し、反転させてスライドガラス上でMoviol(Calbiochem社、カリフォルニア州)でマウントする。スライドはAxiophot蛍光顕微鏡(Zeiss社)を使用して分析する。
【実施例3】
【0098】
AR由来(Src−SH3バインダー)ペプチド(配列番号1)によるSrcへのアンドロゲン刺激AR会合の阻害
ホルモン結合ARは、おそらくプロリンストレッチを通じてSrcキナーゼのSH3ドメインと相互作用することはすでに実証されている(Migliaccioら、2000年)。この相互作用の結果として、前記キナーゼおよび下流シグナル経路は活性化され、最終的に、DNA合成が活性化される。この相互作用に関与するARのドメインを模倣する小ペプチド配列を使用すれば、競合によりAR−Src会合を阻害しDNA合成を遮断することができるはずである。この仮説を試験するために、LNCaP細胞は、ルーチンで、フェノールレッド、2mM L−グルタミン(GIBCO社)、ペニシリン(100U/ml)、ゲンタマイシン(50μl/ml)、インスリン(0.2U.I./ml)および10%ウシ胎仔血清を補充したRPMI 1640培地(GIBCO社)中、大気中5%CO中で増殖させる。次に、前記細胞は、フェノールレッドなしで、上記のグルタミン、ペニシリン、ゲンタマイシンおよびインスリンを補充され、10%活性炭処理ウシ胎仔血清を含有するRPMI 1640でさらに4日間維持する。次に、細胞は、10nM R1881だけで、または1000倍過剰量の抗アンドロゲンCasodex、もしくは1nMの配列番号1ペプチドもしくは1nMのペプチド配列番号1のシャッフル配列(配列番号7)の存在下で10nM R1881で2分間刺激し、溶解する。細胞ライセートは、マウスモノクロナール抗Src抗体(クローン327、Oncogene Science社、マンハセット、ニューヨーク州)を使用して免疫沈降に付する。免疫沈降タンパク質は12%SDSポリアクリルアミドゲルで分離し、その後ニトロセルロースフィルター上に移す。前記フィルターは、抗Src抗体またはマウスモノクロナール抗AR抗体のいずれかとともにインキュベートする。ニトロセルロースフィルター上の免疫複合体は、化学発光基質(Pierce Chemicals社、イリノイ州)結合ペルオキシダーゼ連結抗マウス抗体を使用して検出する。
【0099】
予想通り、ホルモン処理細胞では、ARは、抗Src抗体により共免疫沈降される(図2A、レーン2)。ARとSrc間の会合は、LNCaP細胞がCasodexの存在下ホルモンで刺激されると阻害される(レーン3)。同様に、アンドロゲンおよびSH3バインダーペプチドで処理された細胞では、抗Src抗体によりARは共免疫沈降されない。これとは対照的に、ホルモン刺激Src−AR会合は、同一濃度のペプチド配列番号1のシャッフル配列(配列番号7)での処理によりごくわずかな影響しか受けない。
【0100】
方法
細胞ライセートの調製。細胞は1mlの溶解用緩衝液:5mM MgCl2、150mM NaCl、0.5%Triton X−100を含有する50mM Tris−HCl、pH7.40に懸濁し、4℃で2分間穏やかな振盪下に置く。次に、懸濁液を約800gで30分間遠心分離し、上清を回収して免疫沈降に使用する。
【実施例4】
【0101】
AR由来(Src−SH3バインダー)ペプチド(配列番号1)によるSRCへのエストロゲン刺激ER会合の阻害
ERはARと一緒にSrcと三元複合体を形成することは以前明らかにされている(Migliaccioら、2000年)。ERまたはARのいずれかとSrcの相互作用を阻害すると、この三元複合体は破壊され、Src媒介シグナル伝達が阻害される。したがって、SH3バインダーペプチド(複数可)によりAR−Src相互作用を阻害すれば、SrcとのERα会合およびエストラジオール誘導シグナル伝達も阻害されるはずである。この点に取り組むために、乳癌由来MCF−7細胞を、フェノールレッド、2mM L−グルタミン(GIBCO社)、ペニシリン(100U/ml)、ゲンタマイシン(50μl/ml)、ヒドロコルチゾン(3.75ng/ml)、インスリン(0.2U.I./ml)および5%ウシ胎仔血清を補充したDMEM培地(GIBCO社)中、大気中5%CO中で増殖させる。次に、前記細胞を、フェノールレッドなしの、上記のグルタミン、ペニシリン、ゲンタマイシンおよびインスリンを補充され、5%活性炭処理ウシ胎仔血清を含有するDMEMでさらに4日間維持する。次に、前期細胞を、10nM 17βエストラジオールだけで、または1000倍過剰量の抗エストロゲンICI 182,780、もしくは1nMの配列番号1ペプチド、もしくはペプチド配列番号1のシャッフル配列の存在下で10nM 17βエストラジオールで3分間刺激し、溶解する。細胞ライセートは、マウスモノクロナール抗Src抗体(Oncogene Science社、マンハセット、ニューヨーク州)を使用して免疫沈降に付する。免疫沈降タンパク質は12%SDSポリアクリルアミドゲルで分離し、その後ニトロセルロースフィルター上に移す。前記フィルターを、抗Src抗体またはマウスモノクロナール抗AR抗体のいずれかとともにインキュベートする。ニトロセルロースフィルター上の免疫複合体は、上記の化学発光基質付きのペルオキシダーゼ連結抗マウス抗体を使用して検出する。
【0102】
予想通り、ホルモン処理細胞では、ERは、抗Src抗体により共免疫沈降される(図2B、レーン2)。ERとSrc間の会合は、MCF−7細胞がICI 182,780の存在下ホルモンで刺激されると阻害される(レーン3)。濃度1nMのアンドロゲンおよびSH3バインダーペプチドで処理された細胞では、抗Src抗体によりERは共免疫沈降されない。Src−AR会合は、1nMのペプチド配列番号1(Ss)のシャッフル配列での処理によりごくわずかな影響しか受けない。
【実施例5】
【0103】
前立腺癌(LNCAP)および乳癌(MCF−7)細胞におけるAR−Y(SH3バインダー)ペプチド(配列番号1)によるアンドロゲン刺激サイクリン−d発現の阻害
エストロゲンおよびアンドロゲンレセプターはSrcを刺激し、次にSrcがホスファチジル−3−キナーゼ(PI3−K)経路を活性化する(Castoriaら、2000年)。PI3−Kを活性化すれば、PKB/Aktキナーゼがリン酸化され、サイクリンD1発現が増加する。これにより、ホルモン依存性細胞が細胞周期G1/S移行期に向けて駆り立てられる(Castoriaら、2000年)。SrcまたはPI3−Kが阻害されると、細胞がG1期に停滞しDNA合成が遮断される。したがって、SH3バインダーペプチドを使用すれば、SrcキナーゼおよびPI−3K依存性サイクリンD1発現を阻害することができると考えられる。この可能性を立証するため、SH3バインダーペプチド(配列番号1)をアンドロゲンで刺激したMCF−7およびLNCaP細胞に添加する。MCF−7およびLNCaP細胞はルーチンで上記の通りに増殖させる。次に、細胞は、上記の通りに補充され、ステロイド濃度を最小限にとどめるためにデキストラン被膜活性炭処理ウシ胎仔血清を添加したレッドフェノール無添加培地で少なくとも4日間維持する。次に、細胞は、10nM R1881だけで、または1nM SH3バインダーペプチド(SH3,配列番号1)、もしくは1nMのペプチド配列番号1のシャッフル配列(配列番号7)の存在下で10nM R1881で6時間処理し、その後溶解し、抗サイクリンD1抗体を使用したウェスタンブロットに付する(図3A、上および下パネル)。予想通り、アンドロゲンはMCF−7およびLNCaP細胞においてサイクリンD1発現を刺激する。濃度5μMのPI3−K阻害剤(LY294,002)およびSrc阻害剤(PP2)(非表示)はホルモン刺激サイクリン発現を阻害する。1nM SH3バインダーペプチド(配列番号1)(SH3)を添加するとR1881によるサイクリンD誘導も抑制されるが、ペプチド配列番号1のシャッフル配列(Ss)はこの効果を部分的に減少させるだけである。
【実施例6】
【0104】
前立腺(LNCAP)および乳(MCF−7)癌細胞におけるAR由来(Src−SH3バインダー)ペプチド(配列番号1)によるエストロゲン刺激サイクリン−d1発現の阻害
エストロゲン刺激サイクリンD1発現に対するSH3バインダーペプチド(配列番号1)の効果を試験するため、このペプチドを10nM 17βエストラジオールで刺激したLNCaPおよびMCF−7細胞に添加する(図3B)。MCF−7およびLNCaP細胞はルーチンで上記の通りに増殖させる。次に、細胞は、上記の通りに補充され、ステロイド濃度を最小限にとどめるためにデキストラン被膜活性炭処理ウシ胎仔血清を添加したレッドフェノール無添加培地で少なくとも4日間維持する。次に、細胞を、10nM 17βエストラジオールだけで、またはPI−3K阻害剤のLY294,002(5μM)、もしくは1nMのSH3バインダーペプチド(配列番号1)、もしくは1nMのペプチド配列番号1のシャッフル配列(配列番号7)のいずれかの存在下で10nM 17βエストラジオールで6時間処理し(図3B、上および下パネル)、その後溶解し、上記のように抗サイクリンD1抗体を使用したウェスタンブロットに付する。アンドロゲンと同様に、17βエストラジオールはサイクリンD1発現を刺激する。PI3−K阻害剤のLY294,002は、この場合もホルモン刺激サイクリン発現を阻害する。1nMのSH3バインダーペプチド(配列番号1)(SH3)はエストロゲンによるサイクリンD誘導を完全に抑制するが、並べ替えペプチド配列番号1(Ss)はわずかな効果しかない。
【実施例7】
【0105】
前立腺癌(LNCaP)および乳癌(MCF−7)細胞におけるアンドロゲンレセプター依存性遺伝子転写に対するAR由来(Src−SH3バインダー)ペプチド(配列番号1)の無効性
ステロイド系レセプターは一般にリガンド活性化転写因子として知られている。したがって、SH3バインダー抗アンドロゲンペプチド効果がアンドロゲンレセプターの転写活性に関与するかどうかを評価することは重要である。LNCaP細胞を、フェノールレッド、2mM L−グルタミン(GIBCO社)、ペニシリン(100U/ml)、ゲンタマイシン(50μl/ml)、インスリンおよび10%ウシ胎仔血清を補充したRPMI 1640培地(GIBCO社)中、大気中5%CO中で維持し、アンドロゲン応答性エレメント(ARE3416)の制御下のルシフェラーゼ遺伝子を含むpSG5発現ベクターに工学的に組み込まれたレポーター遺伝子でトランスフェクトする(Verrijdtら、2000年)。トランスフェクションの6時間後、培地を新しい培地と交換し、細胞は、10nM R1881の不在下で、あるいは10nM R1881だけの存在下で、または1000倍過剰量のCasodex、1nM SH3バインダーペプチド配列番号1、もしくは1nMの組換えたペプチド配列番号1(配列番号7)と10nM R1881の存在下でさらに24時間維持した。細胞ライセートのルシフェラーゼ活性を評価する。同一実験が繰り返して、ヒト乳癌細胞におけるエストロゲンレセプターの転写活性に対する抗アンドロゲンペプチド効果を分析する。MCF−7細胞を、フェノールレッド、2mM L−グルタミン(GIBCO社)、ペニシリン(100U/ml)、ゲンタマイシン(50μl/ml)、ヒドロコルチゾン(3.75ng/ml)、インスリン(0.2U.I./ml)および5%ウシ胎仔血清を補充したDMEM培地(GIBCO社)中、大気中5%CO中で維持し、アンドロゲン応答性エレメント(ARE3416)の制御下のルシフェラーゼ遺伝子を含むpSG5発現ベクターにクローニングしたレポーター遺伝子QUALEでトランスフェクトする。最終的に、細胞ライセートのルシフェラーゼ活性を評価する。
【0106】
図4Aは、未処理LNCaP細胞(バー1)、R1881だけで刺激した細胞(バー2)で、または過剰量Casodex、もしくはSH3ペプチド(SH3)、もしくは組み換えられたペプチド配列番号1(Ss)のいずれかの存在下でR1881で刺激した細胞(それぞれ(バー3)(バー4)(バー5))におけるルシフェラーゼ活性を示している。
【0107】
図4Bは、未処理MCF−7細胞(バー1)、17βエストラジオールだけで刺激した細胞(バー2)で、またはICI 182,780過剰、もしくはペプチド配列番号1(SH3)、もしくはペプチド配列番号1のシャッフル配列(Ss)のいずれかの存在下で17βエストラジオールで刺激した細胞(それぞれ(バー3)(バー4)(バー5))におけるルシフェラーゼ活性を示している。
【0108】
従来の抗アンドロゲンは、レポーター遺伝子のアンドロゲン誘導転写を完全に阻害するが、SH3ペプチドもペプチド配列番号1のシャッフル配列もARの転写活性に影響を与えないことが観察される。
【実施例8】
【0109】
AR由来Src−SH3バインダーペプチド(配列番号1)の「インビボ」抗腫瘍効果
インビトロおよびインビボ腫瘍増殖研究の結果は多岐にわたることがあるために、インビボでの抗アンドロゲンペプチドに対するLNCaPおよびMCF−7細胞の増殖応答性を試験した。LNCaP癌細胞を、上記のルーチン条件下で増殖させ、無菌PBS中50%(vol/vol)マトリゲル溶液(pH7.4)中に懸濁し、ホルモン刺激なしで2.5×10細胞/動物(CDマウス、Charles−River社)でオス胸腺欠損マウスの背側後方領域に皮下注射する。
【0110】
14〜21日後、同程度の大きさの腫瘍を持つ動物を、さらに5週間、SH3バインダーペプチド、配列番号1、または溶媒だけによる治療に無作為に割り分ける。治療は、腫瘍がおよそ200〜400mmの大きさになった時点で開始する。治療ありまたは治療なしでのLNCaP細胞異種移植片の腫瘍容積を、キャリパーにより測定し、式D×d×0.5に従って記録する(式中、Dは腫瘍の長さであり、dは腫瘍の幅である)。
【0111】
各動物のペプチド治療では、0.1%DMSOに溶解した20nM SH3バインダーペプチド(配列番号1)200μlまたは同量の溶媒のみを隔日でマウスに腹腔内投与する。そのような研究は、ヒト悪性腫瘍で一般的に見られるアンドロゲンレセプターレベルを発現するヒト前立腺および乳癌細胞の潜在的治療薬としてのペプチドの有効性を評価するのに特に重要である。これらのペプチド(一般式S1および配列番号1から配列番号6)の用量、種類および大きさならびにペプチドの送達ルートはすべて当技術分野の通常技術を使用して決定できる要素である。
【0112】
図5Aは、SH3バインダーペプチド(SH3)でまたは溶媒だけ(ctrl)で治療されたオスのヌードマウスにおけるLNCaP細胞異種移植片の増殖速度を示している。
【0113】
本発明者らは、このモデルでは、対照グループと比べるとSH3治療グループでは腫瘍の大きさが有意に小さいことを観察した。溶媒溶液で治療したマウスの体重とペプチドで治療したマウスの体重の間に差は見られない(データ非表示)。
【0114】
ヌードマウスに定着させた乳癌MCF−7細胞異種移植片に対する抗アンドロゲンペプチドの効果も分析する(図5B)。この場合、MCF−7細胞は、あらかじめ上記の通りに増殖させ、無菌PBS中50%マトリゲル(vol/vol)溶液中に懸濁し、胸腺欠損オスマウスに2.5×10細胞/動物で皮下注射する。
【0115】
14〜21日後、同程度の大きさの腫瘍を持つ動物を、さらに5週間、SH3バインダーペプチド配列番号1、または溶媒だけによる治療に無作為に割り分ける。治療開始時の腫瘍はおよそ1000mmある。0.1%DMSO中20nM SH3バインダーペプチド200μlまたは同量の溶媒のみを隔日でマウスに腹腔内投与する。治療ありまたは治療なしのMCF−7癌細胞異種移植片の腫瘍容積を上記のように測定して記録する。対照マウスとペプチド治療マウスの間に体重差は認められない。
【0116】
LNCaP細胞異種移植片モデルに対して観察されたことと同様に、本発明者らは、MCF−7細胞異種移植片モデルでも、対照グループと比べるとSH3治療グループでは腫瘍サイズが小さいことを見出した。溶媒溶液で治療したマウスと前記ペプチドで治療したマウスの体重の間に差は見られない(データ非表示)。
【0117】
治療の終了時に、動物を屠殺し、腫瘍検体をKi67抗原およびアポトーシス細胞について評価する。簡単に述べると、各検体由来の切片を3〜5ミクロンに切断し、ガラス上にマウントし、37℃で一晩乾燥させる。次に、全切片をキシレン中で脱パラフィンし、段階的アルコール系列を通じて再水和し、PBSで洗浄する。この緩衝液は、その後の全ての洗浄および抗体希釈に使用する。ヘマトキシリン/エオジンおよびヘマトキシリン/ファンギーソンで染色後、光学顕微鏡検査を行う。免疫組織化学的検査では、各組織切片をクエン酸緩衝液(pH6)に浸した状態で電子レンジで700Wにて5分間の加熱を2度繰り返し、次に、標準的ストレプトアビジン−ビオチン−免疫ペルオキシダーゼ法(DAKO Universal Kit、DAKO社、カーピンテリア、カリフォルニア州、米国)で処理する。DAKO社製ウサギ抗ヒトKi67は1:100希釈率で使用する。一次抗体を室温で1時間インキュベートした。ジアミノ−ベンジジンを最終色素として、ヘマトキシリンを核対比染色として使用する。各組織切片のネガティブコントロールは、一次抗体を除外して実施する。各実験に含まれるポジティブコントロールは、対象の抗原を発現することが以前明らかにされている組織で構成される。2人の観察者が、2種類のタンパク質の染色パターンを別々に評価し、切片全体をスキャンし、高倍率視野10×20で視認できる陽性細胞の数を測定することにより各検体におけるタンパク質発現を点数化する。観察者間で合意された割合として表現される一致のレベルは92%である。その残りの検体では、共同で見直して同意した後に点数が付けられる。ペルオキシダーゼベースApoptagキット(Oncor社、ゲイサーズバーグ、メリーランド州、米国)を使用してTUNEL反応を行う。TUNEL陽性細胞は、供給業者の使用説明書に従って、ジアミノ−ベンジジンおよびHで検出する。2人の観察者が、2種類のタンパク質の染色パターンを別々に評価し、切片全体をスキャンし高倍率視野10×20で視認できる陽性核の数を測定することにより各検体におけるタンパク質発現を点数化する。観察者間で合意された割合として表現される一致のレベルは100%である。
【0118】
本発明者らは、LNCaP腫瘍異種移植片検体において、対照グループとの比較において、SH3治療グループでは、Ki−67抗原陽性細胞の割合に有意の減少(P<0.002、図6A、左パネル)、およびTUNEL陽性細胞の数に有意の増加(P<0.009、図6A、右パネル)を観察した。MCF−7腫瘍異種移植片検体でも同様の結果が認められた(図6B、左と右パネル)。
【実施例9】
【0119】
抗体組成物の調製
上記の合成ペプチドおよび組換えペプチドは、動物またはヒトにおける免疫応答の発生に、およびこれらのエピトープに特異的な抗体の調製に使用できる。ワクチンおよび抗体の調製は、上記本明細書に記載するように、当業者には公知である。簡単に述べると、本発明の新規のペプチドは、以下のようにして動物における抗原として使用することができる:
各ペプチドはkeyhole limpet hemocyanin(KLH)に結合させ、BALB/cマウスを皮下免疫するのに使用してよい。最初の注射は250pgタンパク質を含み、マウスは7週間後にそれぞれのKLH結合ペプチド250μgで追加免疫し、次に、1週間後に採血する。注射されたマウスにより産生されるポリクロナール抗体について、ELISAアッセイでペプチド抗原を認識する能力を試験する。また、前記抗体について、AR誘導DNA合成を阻害する能力も評価する。
【0120】
参考文献
Allen, Choun 1987 FEBS Lett. 223: 42-46
Bodansky M, Bodansky A 1995 The practice of peptide synthesis (2nd edn.), Springer Verlag, Berlin
Boonyaratanakornkit V. et al, 2001 Mol Cell, 8: 269-280
Capecchi C 1980 Cell, 22(2):479-488,.
Carpino LA, Han GY 1972 J. Org. Chem. 37: 3404-3409
Castoria G, Barone MV, Di Domenico M, Bilancio A, Ametrano D, Migliaccio A and Auricchio F 1999 EMBO J. 18: 2500-2510
Chodak GW, et al., 1992 J Urol 147:798-803
Clapp 1993 Clin. Perinatal., 20(1): 155-168
Couvreur, Tulkens, Roland, Trouet, Speiser 1977 FEBS Lett. 84 (2):323-326
Couvreur 1988 Crit. Rev. Ther. Drug Carrier Syst. 5:1-20
Curiel, et al., 1991 Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88 (19):8850-8854
Dawson NA, Vogelzang NJ 2000 Secondary hormonal therapy. In:Resnick MI, Thompson MI, eds. Advanced therapy of prostate disease. Hamilton, Ontario: BC Decker; 378-384
Denis LJ, Griffiths K 2000 Sem Surg Oncol 18:52-74
Eglitis, Anderson 1988 6(7): 608-614,.
Eglitis, et al., 1988 Avd. Exp. Med. Biol. 241 :19-27,.
Fields GB, Noble RL 1990 Int. J. Pep Prot Res 35: 161-214
Fowler JE, Whitmore WF 1982 Cancer 49:1373-1377
Fromm, Taylor, Walbot, 1985 Proc. Natl. Acad. Sci. USA,82(1 7):5824-5828
Gabizon, Papahadjopoulos 1988 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85: 6949-6953
Graham FL and van der Eb AJ, 1973 Virology 54(2): 536-539
Hobisch A, et al., 1996 Prostate 28:129-135
Kay BK et al. 2000 FASEB J: 14, 231-235
Lee D 2003 Clin Prostate Cancer 2:13-14
Migliaccio A, et al., 2000 EMBO J, 19: 5406-5417
Migliaccio A, et al., 1996 EMBO J. 15: 1292-1300
Migliaccio A, et al., 2005 Cancer Res, 65: 10585-10593.
Mohler JL, et al., 1996 Clin Cancer Res 2:889-895
Moinfar F, et al., 2003 Cancer 98: 703-711
Moss GP 1996 Pure and Applied Chemistry 68: 2193-2222
Rink H 1987 Tetrahedron Lett. 28: 3787-3790
Roy AK, et al., 1999 Vit. Horm. 55:309-352
Sadi MV, Walsh PC, Barrack ER 1991 Cancer 67: 3057-3064
Schatzl G, Madersbacher S, Gsur A, Preyer M, Haidinger G, Haitel A, Vutuc C,
Micksche M, Marberger M 2002 Prostate 52:130-138
Shi,Liu, Lippman, Dickson, 1994 Human Reprod., 9: 162-173
Siiteri PK, Wilson JD 1974 J Clin. Endocrinol. Metab 38:113-125
Tam JP, Spetzler JC, 1997 Methods Enzymol. 289: 612-37
Tuchscherer G and Mutter M, 1996 Pure&App/. Chem.; 68, 11 : 2153-2162
van der Kwast TH, Schalken J, Ruizeveld de Winter JA, van Vroonhoven CCJ,
Mulder E, Boersma W, Trapman J 1991 Int J Cancer 48:189-193
Verrijdt et al. 2000 J. Biol. Chem 275: 12298-12305
Wagner E., et al., 1990 Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87: 3410-3414
Williams JC et al. 1998 TIBS: 23, 179-184
Wong and Neumann 1982 Biochim. Biophys. Res. Commun.107(2): 584-587
Yang et al. 1990 Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87: 9568-9572

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式:
【化2】

によって示され、単離または精製または部分精製された状態のペプチド由来分子。
(式中、Xは、H、アセチル基もしくは任意の天然アミノ酸であるか、または遊離NH基もしくは少なくともアセチル誘導体化NH基が付加したアミノ酸の配列であり、Yは、OH基、NH基もしくは任意のアミノ酸であるか、またはC末端カルボキシ−アミド基を有するアミノ酸の配列であり、「n」は1〜10の整数であり、「m」は1〜3の整数である)
【請求項2】
アンドロゲンレセプター(AR)とチロシンキナーゼSrcのSH3ドメインとの相互作用を阻害または阻止することができる、請求項1に記載のペプチド由来分子。
【請求項3】
インビトロまたはインビボで抗腫瘍活性を有する、請求項1または2に記載のペプチド由来分子。
【請求項4】
配列番号1のアミノ酸配列を有する、請求項1から3のいずれか1項に記載のペプチド由来分子。
【請求項5】
配列番号2のアミノ酸配列を有する、請求項1から3のいずれか1項に記載のペプチド由来分子。
【請求項6】
配列番号3のアミノ酸配列を有する、請求項1から3のいずれか1項に記載のペプチド由来分子。
【請求項7】
配列番号4のアミノ酸配列を有する、請求項1から3のいずれか1項に記載のペプチド由来分子。
【請求項8】
薬物として使用するための、請求項1から7のいずれか1項に記載のペプチド由来分子。
【請求項9】
抗腫瘍剤として使用するための、請求項1から7のいずれか1項に記載のペプチド由来分子。
【請求項10】
抗乳癌剤もしくは抗前立腺癌剤として、またはアンドロゲンレセプターを単独でもしくはエストラジオールレセプターとともに発現している他の癌に対して使用するための、請求項9に記載のペプチド由来分子。
【請求項11】
請求項1から7のいずれか1項に記載のペプチド由来分子を医薬的に許容可能かつ有効な量で含む薬剤組成物。
【請求項12】
前記ペプチドが、BSAもしくはKLHなどの担体分子に連結されており、かつ/または脂質粒子、ナノカプセル、リポソームもしくは脂質ベシクルなどの脂質組成物に医薬品賦形剤と共に含まれる、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
少なくとも第2の抗癌剤をさらに含む、請求項11または12に記載の組成物。
【請求項14】
抗アンドロゲンポリペプチドに対する抗体を産生するための抗原としての、請求項1から7のいずれか1項に記載のペプチド由来分子の使用。
【請求項15】
薬物を調製するための、請求項1から7のいずれか1項に記載のペプチド由来分子の使用。
【請求項16】
前記薬物がワクチンである、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
請求項1から7のいずれか1項に記載のペプチド由来分子を特異的に認識することができる抗体。
【請求項18】
請求項1から7のいずれか1項に記載のペプチドをコードする核酸配列。
【請求項19】
請求項1から7に記載のペプチドを発現する組換えベクター。
【請求項20】
請求項19に記載の組換えベクターを含む、哺乳動物、ヒトまたは細菌宿主細胞。
【請求項21】
請求項1から7のいずれか1項に記載のペプチド由来分子を癌細胞に提供することを含む、癌細胞を死滅させる方法。
【請求項22】
前記細胞が乳房細胞または前立腺細胞である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記細胞に少なくとも第2の抗癌剤を提供することをさらに含む、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
請求項1から7のいずれか1項に記載のペプチド由来分子を治療量で癌を患う動物に投与することを含む、癌を患う動物を治療するための方法。
【請求項25】
請求項11から13のいずれか1項に記載の組成物を治療量で癌を患う動物に投与することを含む、癌を患う動物を治療するための方法。
【請求項26】
前記動物がヒトである、請求項24または25に記載の方法。
【請求項27】
単一または複数の容器内に検出可能な標識および免疫検出試薬に機能的に結合された、請求項17に記載の抗体を含むキット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2010−521441(P2010−521441A)
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−553162(P2009−553162)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【国際出願番号】PCT/EP2008/053127
【国際公開番号】WO2008/113770
【国際公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(598176569)キャンサー・リサーチ・テクノロジー・リミテッド (57)
【氏名又は名称原語表記】CANCER RESEARCH TECHNOLOGY LIMITED
【Fターム(参考)】