説明

抗エフリンB2抗体

【課題】 エフリンB2に結合し、かつ、エフリンB2とephB4の結合を阻害することにより、エフリンB2の生物活性を阻害する抗体または抗体断片を提供すること。
【解決手段】 本発明は、腫瘍等の血管新生している組織細胞において発現されているエフリンB2に結合する抗体または抗体断片、該抗体または該抗体断片を用いるエフリンB2またはエフリンB2発現細胞の免疫学的検出方法および検出用試薬、該抗体または該抗体断片を用いるエフリンB2が関与する疾患の診断薬または治療薬、ならびに該抗体を産生するハイブリドーマを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エフリン(Ephrin;Eph-receptor-interacting protein)B2に結合し、かつ、エフリンB2とEphB4(Erythropoietin producing hepatocellular carcinoma B4)との結合を阻害することにより、エフリンB2の生物活性を阻害する抗体または抗体断片、該抗体または該抗体断片を用いるエフリンB2またはエフリンB2発現細胞の免疫学的検出方法および検出用試薬または定量用試薬、該抗体または該抗体断片を用いる血管新生が関与する疾患の診断薬または治療薬および該抗体を産生するハイブリドーマを提供する。該抗体はエフリンB2が関与する各種疾患の治療に有用である。また、該抗体はエフリンB2またはエフリンB2発現細胞を免疫学的手法により特異的に検出することができ、エフリンB2が関与する各種疾患の診断に有用である。
【背景技術】
【0002】
エフリンB2とEphB4は血管内皮細胞上に発現する、リガンドとそのレセプターであり、両者共に膜蛋白質である。エフリンB2は動脈内皮細胞と動脈周囲の血管平滑筋細胞に、EphB4は静脈内皮細胞に選択的に発現しているため(特許文献1、非特許文献1〜3)、エフリンB2およびEphB4は、これまで困難であった動脈と静脈とを区別できるマーカーとなりうる。エフリンB2の遺伝子欠損マウスでは、動脈および静脈の両方で血管新生に障害が発生し、発生初期で致死となる(非特許文献1)。また、エフリンB2および/またはEphB4の遺伝子欠損マウスでは、血管新生に障害がもたらされ、胎生初期に致死となることからも、エフリンB2およびEphB4は血管形成において重要な役割を果たしている(非特許文献1、4)。
【0003】
そして、エフリンB2遺伝子またはEphB4遺伝子のいずれか一方のノックアウトマウスは、動脈または静脈に関わらず、血管新生で誘導される血管が、全体的に形成されていない(非特許文献1)。このことは、エフリンB2およびEphB4が互いに相互作用していることを示しており、エフリンB2およびEphB4のいずれか一方の発現抑制により、動脈および静脈に関わらず、血管新生全体が抑制される。
【0004】
エフリンB2が過剰に存在している条件では、静脈内皮細胞の発生が抑制され、逆にEphB4の過剰に存在している条件では、動脈内皮細胞の発生が抑制される(非特許文献3)。これは、EphB4とエフリンB2が結合した際には、EphB4またはエフリンB2を発現するそれぞれの細胞内にチロシンリン酸化を介したシグナルが伝達され、細胞増殖が抑制される。これは例えば、毛細血管の末端において、動脈組織と静脈組織が近接し、または接着した場合に、それぞれの内皮細胞のエフリンB2およびEphB4が結合することにより、上記のように細胞増殖が抑制され、血管新生を停止させているものと考えられる。動脈組織と静脈組織が近接し、または接着した際の、増殖抑制の機能は生体内においては、動脈と静脈を容易には融合させないための機能であると考えられる(非特許文献5)。
【0005】
特に、種々の病態で生じる血管新生は、おもにその病変組織への酸素、栄養、炎症細胞等の浸潤を補助するために形成されるものであり、これらの血流内環境因子はおもに動脈を介して補給される。従って、種々の病態に関わる血管新生を阻害することによりその病態を改善する際には、動脈の新生を阻害することが適切な手段である。
【0006】
動脈特異的にその新生を抑制する手段としては、エフリンB2の機能を抑制して、動脈形成を抑制することが効果的であると考えられる。しかしながら、エフリンB2およびEphB4の機能は未解明な点が多く、発生段階における血管形成、あるいは成熟体での血管新生へのエフリンB2およびEphB4の機能は未知である。
【0007】
これまでに、エフリンB2に反応するポリクローナル抗体については、マウスエフリンB2のアミノ酸配列から推測されたヒトエフリンB2の細胞外ドメインをウサギに免疫して得られたポリクローナル抗体Epherin-B2(P-20)、ヒトエフリンB2のアミノ酸配列の168〜235番目のアミノ酸配列に相当するポリペプチドをウサギに免疫して得られたポリクローナル抗体Epherin-B2(H-83)およびマウスエフリンB2のアミノ酸配列から推測されたヒトエフリンB2の細胞外ドメインをヤギに免疫して得られたポリクローナル抗体Epherin-B2(C-20)の3種類のヒトエフリンB2に対するポリクローナル抗体が知られている(非特許文献6)。これらは、ヒト、マウスおよびラットのエフリンB2に反応するポリクローナル抗体であり、ウェスタンブロッティングおよび免疫組織染色で使用できることが確認されている。ポリクローナル抗体Epherin-B2(H-83)は、免疫沈降に用いることできる。
【0008】
エフリンB2に特異的に反応するモノクローナル抗体については、細胞蛍光抗体法で利用するために作製されたサブクラスがIgMであるモノクローナル抗体(非特許文献7)、マウスエフリンB2に反応するハムスターモノクローナル抗体であって、エフリンB2に特異的に結合し、マウスエフリンB2とエフリンB2の受容体の一つであるマウスEphB2の結合をin vitroの結合試験において、60%に阻害するモノクローナル抗体が知られている(特許文献2)。
【0009】
【特許文献1】米国特許第6579683号明細書
【特許文献2】米国特許公開公報第2002-0136726号明細書
【非特許文献1】Cell, 93, 741-753 (1998)
【非特許文献2】Dev. Biol., 230, 151(2001)
【非特許文献3】Blood, 98, 1028(2001)
【非特許文献4】Mol. Cell, 4, 403(1999)
【非特許文献5】J. Cell Sci., 116, 2461(2003)
【非特許文献6】SANTA CRUZ BIOTECHNOLOGY社ホームページ、[on line]、[平成16年8月21日検索]、インターネット<http://www.scbt.com/catalog/action.lasso?-response=product_search_list.html&-Error=no_results.html&-token.order_id=&search_field=ephrinB2&-nothing.x=8&-nothing.y=17>
【非特許文献7】Arterioscler Thromb Vasc Biol., 23, 190(2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、エフリンB2に結合し、かつ、エフリンB2とEphB4受容体の結合を阻害することにより、エフリンB2の生物活性を阻害する抗体または抗体断片、該抗体または抗体断片を用いるエフリンB2の免疫学的検出方法および検出用試薬または定量用試薬、該抗体または該抗体断片を用いるエフリンB2が関与する疾患の診断薬または治療薬、該抗体を産生するハイブリドーマを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、以下の(1)〜(23)に関する。
(1) エフリンB2に結合し、かつ、エフリンB2とエリスロポエチン・プロデューシング・ヘパトセルラー・カルシノーマB4(EphB4;Erythropoietin producing hepatocellular carcinoma B4)の結合を阻害することにより、エフリンB2の生物活性を阻害する抗体または抗体断片。
【0012】
(2) エフリンB2が配列番号2で表されるアミノ酸配列で示されるポリペプチドである、(1)に記載の抗体または抗体断片。
(3) 抗体が、モノクローナル抗体である(1)または(2)に記載の抗体または抗体断片。
【0013】
(4) モノクローナル抗体のクラスがIgGである(1)〜(3)のいずれかに記載の抗体または抗体断片。
(5) モノクローナル抗体が、ハイブリドーマVERB2(FERM ABP-10100)から生産されるモノクローナル抗体である(1)〜(4)のいずれかに記載のモノクローナル抗体または抗体断片。
【0014】
(6) モノクローナル抗体が、ハイブリドーマVERB2(FERM ABP-10100)から生産されるモノクローナル抗体が結合するエピトープと結合するモノクローナル抗体である(1)〜(4)のいずれかに記載のモノクローナル抗体または抗体断片。
(7) (1)〜(6)のいずれかに記載の抗体または抗体断片を用いてエフリンB2またはエフリンB2発現細胞を免疫学的に検出する方法。
【0015】
(8) 検出する方法が、免疫組織染色法である(7)に記載の方法。
(9) 検出する方法が、免疫細胞染色法である(7)に記載の方法。
(10) (1)〜(6)のいずれかに記載の抗体または抗体断片を用いるエフリンB2の検出用試薬。
【0016】
(11) (1)〜(6)のいずれかに記載の抗体または抗体断片を用いるエフリンB2の定量用試薬。
(12) (1)〜(6)のいずれかに記載の抗体または抗体断片を用いるエフリンB2が関与する疾患の診断薬。
【0017】
(13) エフリンB2が関与する疾患が、血管新生が関与する疾患である(12)に記載の診断薬。
(14) 血管新生が関与する疾患が固形腫瘍、慢性関節リウマチ、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症および乾癬からなる群から選択される疾患である(13)に記載の診断薬。
(15) エフリンB2が関与する疾患が、乳腺組織の増殖をきたす疾患である(12)に記載の診断薬。
【0018】
(16) 乳腺組織の増殖をきたす疾患が乳腺種または乳癌からなる群から選択される疾患である(15)に記載の診断薬。
(17) (1)〜(6)のいずれかに記載の抗体または抗体断片を有効成分として含有するエフリンB2が関与する疾患の治療薬。
(18) エフリンB2が関与する疾患が、血管新生が関与する疾患である(17)に記載の治療薬。
【0019】
(19) 血管新生が関与する疾患が固形腫瘍、慢性関節リウマチ、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症および乾癬からなる群から選択される疾患である(18)に記載の治療薬。
(20) エフリンB2が関与する疾患が、乳腺組織の増殖をきたす疾患である(17)に記載の治療薬。
(21) 乳腺組織の増殖をきたす疾患が乳腺種または乳癌からなる群から選択される疾患である(20)に記載の治療薬。
【0020】
(22) (3)〜(6)のいずれかに記載のモノクローナル抗体を生産するハイブリドーマ。
(23) ハイブリドーマがハイブリドーマVERB2(FERM ABP-10100)である、(22)に記載のハイブリドーマ。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、エフリンB2に結合し、かつ、エフリンB2とEphB4の結合を阻害することにより、エフリンB2の生物活性を阻害する抗体または抗体断片、該抗体または該抗体断片を用いるエフリンB2またはエフリンB2発現細胞の免疫学的検出方法および検出用試薬または定量用試薬、該抗体または該抗体断片を用いるエフリンB2が関与する疾患の診断薬または治療薬および該抗体を産生するハイブリドーマが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明は、エフリンB2に結合し、かつ、エフリンB2とEphB4の結合を阻害することにより、エフリンB2の生物活性を阻害する抗体または抗体断片に関する。
【0023】
エフリンB2としては、いかなる生物種の由来であってもよいが、具体的には、DNA配列が配列番号1、アミノ酸配列が配列番号2でそれぞれ表されるヒトのエフリンB2、DNA配列が配列番号3、アミノ酸配列が配列番号4でそれぞれ表されるマウスのエフリンB2、DNA配列が配列番号5、アミノ酸配列が配列番号6でそれぞれ表されるラットのエフリンB2などがあげられる。
【0024】
エフリンB2としては、配列番号2、4または6で示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド、配列番号2、4または6で示されるアミノ酸配列において1以上のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列を有するポリペプチド、ならびに配列番号2で示されるアミノ酸配列と60%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチド、好ましくは80%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチド、さらに好ましくは90%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチド、最も好ましくは95%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチであって、エフリンB2と実質的に同一の活性を有するポリペプチドなどがあげられる。
【0025】
配列番号2、4または6で示されるアミノ酸配列において1以上のアミノ酸が欠失、置換、または付加されたアミノ酸配列を有するポリペプチドは、[Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Second Edition(Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)、Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley & Sons 1987-1997)、Nucleic Acids Research, 10, 6487 (1982)、Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 79, 6409(1982)、Gene, 34, 315(1985)、Nucleic Acids Research, 13, 4431(1985)、Proc. Natl. Acad. Sci USA, 82, 488(1985)]などに記載の部位特異的変異導入法を用いて、例えば配列番号2、4または6で示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするDNAに部位特異的変異を導入することにより得ることができる。欠失、置換または付加されるアミノ酸の数は特に限定されないが、好ましくは1個〜数十個、例えば、1〜20個、より好ましくは1個〜数個、例えば、1〜5個である。
【0026】
本発明に記載される相同性の数値は、特に明示した場合を除き、当業者に公知の相同性検索プログラムを用いて算出される数値であってよいが、塩基配列については、BLAST 〔J. Mol. Biol., 215, 403 (1990)〕においてデフォルトパラメータを用いて算出される数値など、アミノ酸配列については、BLAST2 〔Nucleic Acids Res., 25, 3389(1997); Genome Res., 7, 649 (1997);http://www.ncbi.nlm.nih.gov/Education/BLASTinfo/information3.html〕においてデフォルトパラメータを用いて算出される数値などがあげられる。
【0027】
デフォルトパラメーターとしては、G(Cost to open gap)が塩基配列の場合は5、アミノ酸配列の場合は11、-E(Cost to extend gap)が塩基配列の場合は2、アミノ酸配列の場合は1、-q (Penalty for nucleotide mismatch)が-3、-r(reward for nucleotide match)が1、-e(expect value)が10、-W(wordsize)が塩基配列の場合は11残基、アミノ酸配列の場合は3残基、-y(Dropoff (X) for blast extensions in bits)がblastn の場合は20、blastn以外のプログラムでは7、-X(X dropoff value for gapped alignment in bits)が15および-Z(final X dropoff value for gapped alignment in bits)がblastn の場合は50、blastn以外のプログラムでは25である(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/html/blastcgihelp.html)。
【0028】
配列番号2、4または6で示されるアミノ酸配列の部分配列を含むポリペプチドは、当業者に公知の方法によって作製することができ、例えば、配列番号2、4または6で示されるアミノ酸配列をコードするDNAの一部を欠失させ、これを含む発現ベクターを導入した形質転換体を培養することにより作製することができる。また、こうして作製されるポリペプチドまたはDNAに基づいて、上記と同様の方法により、配列番号2、4または6で示されるアミノ酸配列の部分配列において1以上のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列を有するポリペプチドを得ることができる。
【0029】
本発明のエフリンB2に結合し、かつ、エフリンB2とEphB4の結合を阻害することにより、エフリンB2の生物活性を阻害する抗体としては、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体があげられるが、好ましくはモノクローナル抗体が用いられる。
【0030】
モノクローナル抗体としては、ハイブリドーマにより生産される抗体、および抗体遺伝子を含む発現ベクターで形質転換した形質転換体により生産される遺伝子組換え抗体をあげることができる。
【0031】
ハイブリドーマは、例えば上記のエフリンB2が発現した細胞などを抗原として調製し、該抗原を免疫した動物より抗原特異性をもつ抗体生産細胞を誘導し、さらに、それと骨髄腫細胞とを融合させて調製することができる。該ハイブリドーマを培養するか、あるいは該ハイブリドーマ細胞を動物に投与して該動物を腹水癌化させ、該培養液または腹水を分離、精製することにより本発明のモノクローナル抗体を取得することができる。
【0032】
抗原を免疫する動物としてはハイブリドーマを作製することが可能であれば、いかなるものも用いることができるが、マウス、ラット、ハムスター、ラビットウサギなどが好適に用いられる。またこのような動物から抗体産生能を有する細胞を取得し、該細胞にin vitroで免疫を施した後に、ミエローマ細胞と融合して作製したハイブリドーマから生産されるモノクローナル抗体なども本発明の抗体に包含される。
【0033】
本発明のモノクローナル抗体の具体例としては、ハイブリドーマVERB2が生産するラット抗体VERB2があげられる。ハイブリドーマVERB2は平成16年8月19日付でブダペスト条約に基づき独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)に受領番号FERM ABP-10100として寄託されている。
【0034】
また、本発明のモノクローナル抗体としては、上記のハイブリドーマVERB2(FERM ABP-10100)により生産されるモノクローナル抗体が結合するエピトープに結合するモノクローナル抗体なども包含される。
【0035】
遺伝子組換え抗体は、上記本発明のモノクローナル抗体を遺伝子組換え技術を用いて改変したものである。遺伝子組換え抗体としては、ヒト化抗体、ヒト抗体または抗体断片など、遺伝子組換えにより製造される抗体を包含する。遺伝子組換え抗体において、モノクローナル抗体の特徴を有し、抗原性が低く、血中半減期が延長されたものは、治療薬として好ましい。
【0036】
本発明におけるヒト化抗体とは、ヒト型キメラ抗体およびヒト型CDR (Complementarity Determining Region; 相補性決定領域;以下、CDRと記す)移植抗体を包含する。
【0037】
ヒト型キメラ抗体は、ヒト以外の動物の抗体の重鎖可変領域(以下、VHと記す)および軽鎖可変領域(以下、VLと記す)とヒト抗体の重鎖定常領域(以下、CHと記す)および軽鎖定常領域(以下、CLと記す)とからなる抗体をいう。
【0038】
本発明のヒト型キメラ抗体は、エフリンB2に結合し、かつ、エフリンB2とEphB4の結合を阻害することにより、エフリンB2の生物活性を阻害するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマより、VHおよびVLをコードするcDNAを取得し、ヒト抗体のCHおよびCLをコードする遺伝子を有する動物細胞用発現ベクターにそれぞれ挿入してヒト型キメラ抗体発現ベクターを構築し、動物細胞へ導入することにより発現させ、製造することができる。
【0039】
ヒト型キメラ抗体のCHとしては、ヒトイムノグロブリン(以下、hIgと表記する)に属すればいかなるものでもよいが、hIgGクラスのものが好適であり、さらにhIgGクラスに属するhIgG1、hIgG2、hIgG3、hIgG4といったサブクラスのいずれも用いることができる。また、ヒト型キメラ抗体のCLとしては、hIgに属すればいずれのものでもよく、κクラスあるいはλクラスのものを用いることができる。
【0040】
ヒト型CDR移植抗体は、ヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLのCDRのアミノ酸配列をヒト抗体のVHおよびVLの適切な位置に移植した抗体をいう。
【0041】
本発明のヒト型CDR移植抗体は、エフリンB2に結合し、かつ、エフリンB2とEphB4の結合を阻害することにより、エフリンB2の生物活性を阻害するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマから産生されるヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLのCDRのアミノ酸配列を任意のヒト抗体のVHおよびVLのFRに移植したV領域をコードするcDNAを構築し、ヒト抗体のCHおよびCLをコードする遺伝子を有する動物細胞用発現ベクターにそれぞれ挿入してヒト型CDR移植抗体発現ベクターを構築し、動物細胞へ導入することにより発現させ、製造することができる。
【0042】
ヒト型CDR移植抗体のCHとしては、hIgに属すればいかなるものでもよいが、hIgGクラスのものが好適であり、さらにhIgGクラスに属するhIgG1、hIgG2、hIgG3、hIgG4といったサブクラスのいずれも用いることができる。また、ヒト型CDR移植抗体のCLとしては、hIgに属すればいずれのものでもよく、κクラスあるいはλクラスのものを用いることができる。
【0043】
ヒト抗体は、元来、ヒト体内に天然に存在する抗体をいうが、最近の遺伝子工学的、細胞工学的、発生工学的な技術の進歩により作製されたヒト抗体ファージライブラリーおよびヒト抗体産生トランスジェニック動物から得られる抗体なども含まれる。
【0044】
ヒト体内に天然に存在する抗体は、例えば、ヒト末梢血リンパ球を単離し、EBウイルスなどを感染させ不死化し、クローニングすることにより、該抗体を産生するリンパ球を培養でき、培養上清中より該抗体を精製することができる。
【0045】
ヒト抗体ファージライブラリーは、ヒトB細胞から調製した抗体遺伝子をファージ遺伝子に挿入することによりFab、scFvなどの抗体断片をファージ表面に発現させたライブラリーである。該ライブラリーより、抗原を固定化した基質に対する結合活性を指標として所望の抗原結合活性を有する抗体断片を表面に発現しているファージを回収することができる。該抗体断片は、さらに、遺伝子工学的手法により2本の完全なH鎖および2本の完全なL鎖からなるヒト抗体分子へも変換することができる。
【0046】
ヒト抗体産生トランスジェニック動物は、ヒト抗体遺伝子が細胞内に組込まれた動物を意味する。具体的には、例えば、マウスES細胞へヒト抗体遺伝子を導入し、該ES細胞をマウスの初期胚へ移植後、発生させることによりヒト抗体産生トランスジェニックマウスを作製することができる。ヒト抗体産生トランスジェニック動物からのヒト抗体の作製方法は、通常のヒト以外の動物で行われているハイブリドーマ作製方法によりヒト抗体産生ハイブリドーマを取得し、培養することで培養上清中にヒト抗体を産生蓄積させることができる。
【0047】
本発明の抗体断片としては、Fab、F(ab')2、Fab'、scFv、diabody、dsFvおよびCDRを含むペプチドなどがあげられる。
【0048】
Fabは、IgGを蛋白質分解酵素パパインで処理して得られる断片のうち(H鎖の224番目のアミノ酸残基で切断される)、H鎖のN末端側約半分とL鎖全体がジスルフィド結合で結合した分子量約5万の抗原結合活性を有する抗体断片である。
【0049】
本発明のFabは、エフリンB2に結合し、かつ、エフリンB2とEphB4の結合を阻害することにより、エフリンB2の生物活性を阻害するモノクローナル抗体を蛋白質分解酵素パパインで処理して得ることができる。または、該抗体のFabをコードするDNAを原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することにより発現させ、Fabを製造することができる。
【0050】
F(ab')2は、IgGのヒンジ領域の2個のジスルフィド結合の下部を酵素ペプシンで分解して得られた、2つのFab領域がヒンジ部分で結合して構成された、分子量約10万の抗原結合活性を有するフラグメントである。
【0051】
本発明のF(ab')2は、エフリンB2に結合し、かつ、エフリンB2とEphB4の結合を阻害することにより、エフリンB2の生物活性を阻害するモノクローナル抗体を蛋白質分解酵素ペプシンで処理して得ることができる。または、下記のFab'をチオエーテル結合あるいはジスルフィド結合させ、作製することができる。
【0052】
Fab'は、上記F(ab')2のヒンジ領域のジスルフィド結合を切断した分子量約5万の抗原結合活性を有する抗体断片である。
【0053】
本発明のFab'は、本発明のエフリンB2に結合し、かつ、エフリンB2とEphB4の結合を阻害することにより、エフリンB2の生物活性を阻害するF(ab')2を還元剤ジチオスレイトール処理して得ることができる。または、該抗体のFab'断片をコードするDNAを原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することにより発現させ、Fab'を製造することができる。
【0054】
scFvは、1本のVHと1本のVLとを適当なペプチドリンカー(以下、Pと表記する)を用いて連結した、VH-P-VLないしはVL-P-VHポリペプチドで、抗原結合活性を有する抗体断片である。
【0055】
本発明のscFvは、本発明のエフリンB2に結合し、かつ、エフリンB2とEphB4の結合を阻害することにより、エフリンB2の生物活性を阻害するモノクローナル抗体のVHおよびVLをコードするcDNAを取得し、scFvをコードするDNAを構築し、該DNAを原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することにより発現させ、scFvを製造することができる。
【0056】
diabodyは、scFvが二量体化した抗体断片で、二価の抗原結合活性を有する抗体断片である。二価の抗原結合活性は、同一であることもできるし、一方を異なる抗原結合活性とすることもできる。
【0057】
本発明のdiabodyは、本発明のエフリンB2に結合し、かつ、エフリンB2とEphB4の結合を阻害することにより、エフリンB2の生物活性を阻害するモノクローナル抗体のVHおよびVLをコードするcDNAを取得し、scFvをコードするDNAをPのアミノ酸配列の長さが8残基以下となるように構築し、該DNAを原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することにより発現させ、diabodyを製造することができる。
【0058】
dsFvは、VHおよびVL中のそれぞれ1アミノ酸残基をシステイン残基に置換したポリペプチドを該システイン残基間のジスルフィド結合を介して結合させたものをいう。システイン残基に置換するアミノ酸残基はReiterらにより示された方法(Protein Engineering, 7, 697-704, 1994)に従って、抗体の立体構造予測に基づいて選択することができる。
【0059】
本発明のdsFvは、本発明のエフリンB2に結合し、かつ、エフリンB2とEphB4の結合を阻害することにより、エフリンB2の生物活性を阻害するモノクローナル抗体のVHおよびVLをコードするcDNAを取得し、dsFvをコードするDNAを構築し、該DNAを原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することにより発現させ、dsFvを製造することができる。
【0060】
CDRを含むペプチドは、VHまたはVLのCDRの少なくとも1領域以上を含んで構成される。複数のCDRを含むペプチドは、直接または適当なペプチドリンカーを介して結合させることができる。
【0061】
本発明のCDRを含むペプチドは、本発明のエフリンB2に結合し、かつ、エフリンB2とEphB4の結合を阻害することにより、エフリンB2の生物活性を阻害するモノクローナル抗体のVHおよびVLのCDRをコードするDNAを構築し、該DNAを原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することにより発現させ、CDRを含むペプチドを製造することができる。
【0062】
また、CDRを含むペプチドは、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBoc法(t-ブチルオキシカルボニル法)などの化学合成法によって製造することもできる。
【0063】
本発明の抗体は、本発明のエフリンB2に結合し、かつ、エフリンB2とEphB4の結合を阻害することにより、エフリンB2の生物活性を阻害する抗体または抗体断片に放射性同位元素、低分子の薬剤、高分子の薬剤、蛋白質などを化学的あるいは遺伝子工学的に結合させた抗体の誘導体を包含する。
【0064】
本発明の抗体の誘導体は、本発明のエフリンB2に結合し、かつ、エフリンB2とEphB4の結合を阻害することにより、エフリンB2の生物活性を阻害する抗体または抗体断片のH鎖あるいはL鎖のN末端側あるいはC末端側、抗体またはその抗体断片中の適当な置換基あるいは側鎖、さらには抗体または抗体断片中の糖鎖などに放射性同位元素、低分子の薬剤、高分子の薬剤、蛋白質などを化学的手法(抗体工学入門、金光修著、地人書館、1994)により結合させることにより製造することができる。
【0065】
また、本発明のエフリンB2に結合し、かつ、エフリンB2とEphB4の結合を阻害することにより、エフリンB2の生物活性を阻害する抗体または抗体断片をコードするDNAと、結合させたい蛋白質をコードするDNAを連結させて発現用ベクターに挿入し、該発現ベクターを適当な宿主細胞へ導入し、発現させることにより製造することができる。
【0066】
放射性同位元素としては、131I、125Iなどがあげられ、例えば、クロラミンT法などにより抗体に結合させることができる。
【0067】
低分子の薬剤としては、ナイトロジェン・マスタード、サイクロフォスファミドなどのアルキル化剤、5-フルオロウラシル、メソトレキセートなどの代謝拮抗剤、ダウノマイシン、ブレオマイシン、マイトマイシンC、ダウノルビシン、ドキソルビシンなどの抗生物質、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシンのような植物アルカロイド、タモキシフェン、デキサメタソンなどのホルモン剤などの抗癌剤(臨床腫瘍学、日本臨床腫瘍研究会編、癌と化学療法社、1996)、またはハイドロコーチゾン、プレドニゾンなどのステロイド剤、アスピリン、インドメタシンなどの非ステロイド剤、金チオマレート、ペニシラミンなどの免疫調節剤、サイクロフォスファミド、アザチオプリンなどの免疫抑制剤、マレイン酸クロルフェニラミン、クレマシチンのような抗ヒスタミン剤などの抗炎症剤(炎症と抗炎症療法、医歯薬出版株式会社、1982)などがあげられる。例えば、ダウノマイシンと抗体を結合させる方法としては、グルタールアルデヒドを介してダウノマイシンと抗体のアミノ基間を結合させる方法、水溶性カルボジイミドを介してダウノマイシンのアミノ基と抗体のカルボキシル基を結合させる方法などがあげられる。
【0068】
高分子の薬剤としては、ポリエチレングリコール(以下、PEGと表記する)、アルブミン、デキストラン、ポリオキシエチレン、スチレンマレイン酸コポリマー、ポリビニルピロリドン、ピランコポリマー、ヒドロキシプロピルメタクリルアミドなどがあげられる。これらの高分子化合物を抗体または抗体断片に結合させることにより、(1)化学的、物理的あるいは生物的な種々の因子に対する安定性の向上、(2)血中半減期の顕著な延長、(3)免疫原性の消失、抗体産生の抑制、などの効果が期待される(バイオコンジュゲート医薬品、廣川書店、1993)。例えば、PEGと抗体を結合させる方法としては、PEG化修飾試薬と反応させる方法などがあげられる(バイオコンジュゲート医薬品、廣川書店、1993)。PEG化修飾試薬としては、リジンのε-アミノ基の修飾剤(特開昭61-178926)、アスパラギン酸およびグルタミン酸のカルボキシル基の修飾剤(特開昭56-23587)、アルギニンのグアニジノ基の修飾剤(特開平2-117920)などがあげられる。
【0069】
蛋白質としては、免疫担当細胞を活性化するサイトカイン、例えば、ヒトインターロイキン2、ヒト顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、ヒトマクロファージコロニー刺激因子、ヒトインターロイキン12などがあげられる。また、癌細胞を直接障害する活性を有するリシンやジフテリア毒素などの毒素を用いることができる。例えば、蛋白質との融合抗体については、抗体または抗体断片をコードするcDNAに蛋白質をコードするcDNAを連結させ、融合抗体をコードするDNAを構築し、該DNAを原核生物あるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することにより発現させ、融合抗体を製造することができる。
【0070】
融合抗体を検出方法、定量方法、検出試薬、定量試薬または診断薬として使用する場合の薬剤としては、通常の免疫学的測定法で用いられる標識体があげられる。標識体としては、アルカリフォスファターゼ、ペルオキシダーゼ、ルシフェラーゼなどの酵素、アクリジニウムエステル、ロフィンなどの発光物質、FITC、RITCなどの蛍光物質などがあげられる。
【0071】
エフリンB2の生物活性としては、エフリンB2が有する生物活性であればいずれでもよいが、例えば、血管新生に関与する活性などがあげられる。血管新生に関与する活性としては、例えば、動脈形成、血管内皮細胞の浸潤・遊走の誘導などがあげられる。
【0072】
以下に、本発明の抗体の製造方法について、具体的に説明する。
(1)抗原の調製
本発明の抗体の製造において用いられるエフリンB2は、[Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Second Edition(Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)、Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley & Sons, 1987-1997)]などに記載された方法などを用い、例えば以下の方法により、エフリンB2をコードするDNAを宿主細胞で発現させて、製造することができる。発現させるエフリンB2は、野生型のエフリンB2と同様に膜に結合した状態で発現させてもよく、膜結合ドメインを除いた可溶性部分を発現させてもよい。また、発現させるエフリンB2は、エフリンB2の全長のポリペプチドであっても、一部分であってもよい。
【0073】
まず、該ポリペプチドをコードする部分のcDNAを含む完全長cDNAを適当な発現ベクターのプロモーターの下流に挿入することにより、組換えベクターを作製する。この際もし必要であれば、完全長cDNAをもとにしてエフリンB2をコードする部分を含む適当な長さのDNA断片を調製し、上記完全長cDNAの代わりに該DNA断片を使用してもよい。次いで、該組換えベクターを、該発現ベクターに適合した宿主細胞に導入することにより、ポリペプチドを生産する形質転換体を得ることができる。
【0074】
宿主細胞としては、大腸菌、動物細胞など、目的とする遺伝子を発現できるものであればいずれをも用いることができる。
【0075】
発現ベクターとしては、使用する宿主細胞において自律複製または染色体中への組込が可能で、エフリンB2をコードするDNAを転写できる位置に適当なプロモーターを含有しているものが用いられる。
【0076】
大腸菌などの原核生物を宿主細胞として用いる場合には、該組換えベクターは、原核生物中で自律複製が可能であると同時に、プロモーター、リボソーム結合配列、本発明において用いられるDNAおよび転写終結配列を含むベクターであることが好ましい。該組換えベクターは、さらに、プロモーターを制御する遺伝子を含んでいてもよい。
【0077】
発現ベクターとしては、例えば、pBTrp2、pBTac1、pBTac2(いずれもRoche Diagnostics社製)、pKK233-2 (Pharmacia社製)、pSE280 (Invitrogen社製)、pGEMEX-1 (Promega社製)、pQE-8 (QIAGEN社製)、pKYP10 (特開昭58-110600)、pKYP200 [Agricultural Biological Chemistry, 48, 669 (1984)]、pLSA1 [Agric. Biol. Chem., 53, 277 (1989)]、pGEL1[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82, 4306 (1985)]、pBluescriptII SK(-)(Stratagene社製)、pTrs30[大腸菌 JM109/pTrS30(FERM BP-5407)より調製]、pTrs32 [大腸菌 JM109/pTrS32(FERM BP-5408)より調製]、pGHA2 [大腸菌 IGHA2(FERM BP-400)より調製、特開昭60-221091]、pGKA2[大腸菌IGKA2(FERM BP-6798)より調製、特開昭60-221091]、pTerm2 (US4686191、US4939094、US5160735)、pSupex、pUB110、pTP5、pC194、pEG400[J. Bacteriol., 172, 2392 (1990)]、pGEX(Pharmacia社製)、pETシステム(Novagen社製)、pME18SFL3などをあげることができる。
【0078】
プロモーターとしては、使用する宿主細胞中で機能を発揮できるものであればいかなるものでもよい。例えば、trpプロモーター(Ptrp)、lacプロモーター、PLプロモーター、PRプロモーター、T7プロモーターなどの、大腸菌やファージなどに由来するプロモーターなどをあげることができる。また、Ptrpを2つ直列させたタンデムプロモーター、tacプロモーター、lacT7プロモーター、letIプロモーターなどのように、人為的に設計改変されたプロモーターも用いることができる。
【0079】
また、上記組換えベクターとしては、リボソーム結合配列であるシャイン・ダルガルノ(Shine-Dalgarno)配列と開始コドンとの間を適当な距離(例えば6〜18塩基)に調節したプラスミドを用いることが好ましい。本発明において用いられるエフリンB2をコードするDNAの塩基配列においては、宿主内での発現に最適なコドンとなるように塩基を置換することができ、これにより、目的とするエフリンB2の生産率を向上させることができる。さらに、上記組換えベクターにおける遺伝子の発現には転写終結配列は必ずしも必要ではないが、構造遺伝子の直下に転写終結配列を配置することが好ましい。
【0080】
このような宿主細胞として用いられる原核生物としては、例えば、エシェリヒア属などに属する原核生物を用いることができ、具体的には大腸菌 XL1-Blue、大腸菌 XL2-Blue、大腸菌 DH1、大腸菌 MC1000、大腸菌 KY3276、大腸菌 W1485、大腸菌 JM109、大腸菌 HB101、大腸菌 No.49、大腸菌 W3110、大腸菌 NY49などが用いることができる。
【0081】
組換えベクターの導入方法としては、上記宿主細胞へDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、カルシウムイオンを用いる方法[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 69, 2110(1972)、Gene, 17, 107(1982)、Molecular & General Genetics, 168, 111(1979)]に記載の方法などをあげることができる。
【0082】
本発明の抗体の製造において用いられるエフリンB2を大腸菌で生産した場合には、ベクターの種類によりエフリンB2は、細胞質内に可溶型として、細胞質内に不溶性顆粒としてまたはペリプラズミックスペースに可溶型としてなどの発現様式で発現させることができる。
【0083】
動物細胞を宿主として用いる場合には、発現ベクターとして、例えば、pcDNAI、pcDM8(フナコシ社より市販)、pAGE107 [特開平3-22979;Cytotechnology, 3, 133, (1990)]、pAS3-3 (特開平2-227075)、pCDM8 [Nature, 329, 840, (1987)]、pcDNAI/Amp (Invitrogen社製)、pREP4 (Invitrogen社製)、pAGE103 [J. Biochemistry, 101, 1307 (1987)]、pAGE210、pME18SFL3などをあげることができる。
【0084】
プロモーターとしては、動物細胞中で機能を発揮できるものであればいずれも用いることができ、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)のIE(immediate early)遺伝子のプロモーター、SV40の初期プロモーター、レトロウイルスのプロモーター、メタロチオネインプロモーター、ヒートショックプロモーター、SRαプロモーターなどをあげることができる。また、ヒトCMVのIE遺伝子のエンハンサーをプロモーターと共に用いてもよい。
【0085】
宿主細胞としては、ヒトの細胞であるナマルバ(Namalwa)細胞、サルの細胞であるCOS細胞、チャイニーズ・ハムスターの細胞であるCHO細胞、HBT5637細胞(特開昭63-299)などをあげることができる。
【0086】
組換えベクターの導入方法としては、動物細胞にDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、エレクトロポレーション法[Cytotechnology, 3, 133(1990)]、リン酸カルシウム法(特開平2-227075)、リポフェクション法[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84, 7413 (1987)]などをあげることができる。
【0087】
遺伝子の発現方法としては、直接発現以外に、[Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Second Edition(Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)]に記載されている方法などに準じて、分泌生産、融合蛋白質発現などを行うことができる。真核生物由来の細胞で発現させた場合には、糖あるいは糖鎖が付加されたエフリンB2を得ることができる。
【0088】
以上のようにして得られる形質転換体を培地に培養し、培養物中に該エフリンB2を生成蓄積させ、該培養物から採取することにより、本発明において用いられるエフリンB2を製造することができる。該形質転換体を培地に培養する方法は、宿主の培養に用いられる通常の方法に従って行うことができる。
【0089】
プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた組換えベクターで形質転換した微生物を培養するときには、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、lacプロモーターを用いた組換えベクターで形質転換した微生物を培養するときにはイソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシドなどを、trpプロモーターを用いた組換えベクターで形質転換した微生物を培養するときにはインドールアクリル酸などを培地に添加してもよい。
【0090】
動物細胞を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、一般に使用されているRPMI1640培地[The Journal of the American Medical Association, 199, 519(1967)]、EagleのMEM培地[Science,122, 501(1952)]、ダルベッコ改変MEM培地[Virology, 8, 396(1959)]、199培地[Proc. Soc. Exp. Biol. Med., 73, 1(1950)]またはこれら培地に牛胎児血清などを添加した培地などを用いることができる。培養は、通常pH6〜8、30〜40℃、5%CO2存在下などの条件下で1〜7日間行う。また、培養中必要に応じて、カナマイシン、ペニシリンなどの抗生物質を培地に添加してもよい。
【0091】
上記のとおり、本発明の抗体の製造において用いられるエフリンB2をコードするDNAを組み込んだ組換えベクターを保有する微生物、動物細胞など由来の形質転換体を、通常の培養方法に従って培養してエフリンB2を生成蓄積させ、該培養物より採取することにより、本発明の抗体の製造において用いられるエフリンB2を製造することができる。
【0092】
遺伝子の発現方法としては、直接発現以外に、[Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Second Edition(Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)]に記載されている方法などに準じて、分泌生産、融合蛋白質発現などを行うことができる。
【0093】
エフリンB2の生産方法としては、宿主細胞内に生産させる方法、宿主細胞外に分泌させる方法、および宿主細胞外膜上に生産させる方法があり、使用する宿主細胞や、生産させるエフリンB2の構造を変えることにより、適切な方法を選択することができる。
【0094】
エフリンB2が宿主細胞内または宿主細胞外膜上に生産される場合、ポールソンらの方法[J. Biol. Chem., 264, 17619(1989)]、ロウらの方法[Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 86, 8227(1989)、Genes Develop., 4, 1288(1990)、特開平05-336963またはWO94/23021]などに記載の方法を準用することにより、該遺伝子産物を宿主細胞外に積極的に分泌させることもできる。また、特開平2-227075号公報に記載されている方法に準じて、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子などを用いた遺伝子増幅系を利用して生産量を上昇させることもできる。
【0095】
エフリンB2は、例えば、以下のようにして、上記の培養物などから単離・精製することができる。
【0096】
エフリンB2が細胞内に溶解状態で発現した場合には、培養終了後に細胞を遠心分離により回収し、水系緩衝液に懸濁後、超音波破砕機、フレンチプレス、マントンガウリンホモゲナイザー、ダイノミルなどにより細胞を破砕し、無細胞抽出液を得る。該無細胞抽出液を遠心分離することにより得られる上清から、通常の酵素の単離精製法、即ち、溶媒抽出法、硫安などによる塩析法、脱塩法、有機溶媒による沈殿法、ジエチルアミノエチル(DEAE)−セファロース、DIAION HPA-75(三菱化学社製)などのレジンを用いた陰イオン交換クロマトグラフィー法、S-Sepharose FF(Pharmacia社製)などのレジンを用いた陽イオン交換クロマトグラフィー法、ブチルセファロース、フェニルセファロースなどのレジンを用いた疎水性クロマトグラフィー法、分子篩を用いたゲルろ過法、アフィニティークロマトグラフィー法、クロマトフォーカシング法、等電点電気泳動などの電気泳動法などの手法を単独または組み合わせて用い、精製標品を得ることができる。
【0097】
また、エフリンB2が細胞質内に不溶性顆粒を形成して発現した場合は、同様に細胞を回収後破砕し、遠心分離を行うことにより、沈殿画分として該エフリンB2の不溶性顆粒を回収する。回収した該蛋白質の不溶性顆粒を蛋白質変性剤で可溶化する。該可溶化液を希釈または透析することにより、該蛋白質を正常な立体構造にまき戻した後、上記と同様の単離精製法によりエフリンB2の精製標品を得ることができる。
【0098】
エフリンB2またはその糖修飾体などの誘導体が細胞外に分泌された場合には、培養上清において、エフリンB2またはその糖修飾体などの誘導体を回収することができる。即ち、該培養物を上記と同様の遠心分離などの手法により処理することにより、固形物を取り除いた培養上清を取得し、該培養上清から、上記と同様の単離精製法を用いることにより、精製標品を得ることができる。
【0099】
エフリンB2が細胞外膜上に生産された場合には、細胞を回収、破砕した後、細胞膜画分を適当な界面活性剤などで可溶化し、上記と同様の単離精製法を用いることにより、精製標品を得ることができる。また、エフリンB2が細胞外膜上に生産された場合には、該発現細胞を回収して免疫原に用いることもできる。
【0100】
また、エフリンB2は、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBoc法(t−ブチルオキシカルボニル法)などの化学合成法によっても製造することができる。また、Advanced ChemTech社、パーキン・エルマー社、Pharmacia社、Protein Technology Instrument社、Synthecell-Vega社、PerSeptive社、島津製作所などのペプチド合成機を利用して化学合成することもできる。
【0101】
上記の方法により得られるエフリンB2、エフリンB2の部分配列を有するペプチドまたはエフリンB2発現細胞を抗原として用いることができる。
【0102】
(2)動物の免疫と抗体産生細胞の調製
3〜20週令のマウス、ラットまたはハムスターなどに上記のように調製した抗原を免疫して、その動物の脾臓、リンパ節、末梢血中の抗体産生細胞を採取する。
【0103】
免疫は、動物の皮下あるいは静脈内あるいは腹腔内に、適当なアジュバント〔例えば、フロインドの完全アジュバント(Complete Freund’s Adjuvant)や水酸化アルミニウムゲルと百日咳菌ワクチンなど〕とともに抗原を投与することにより行う。抗原が部分ペプチドである場合には、BSA(ウシ血清アルブミン)やKLH(Keyhole Limpet hemocyanin)などのキャリア蛋白質とコンジュゲートを作製し、これを免疫原として用いる。
【0104】
抗原の投与は、1回目の投与の後1〜2週間おきに5〜10回行う。各投与後3〜7日目に眼底静脈叢より採血し、その血清が抗原と反応することを酵素免疫測定法〔Antibodies - A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory, 1988)〕などで調べる。免疫に用いた抗原に対し、その血清が十分な抗体価を示したマウス、ラットまたはハムスターを抗体産生細胞の供給源として用いる。
【0105】
ポリクローナル抗体は、該血清を分離、精製することにより調製することができる。該ポリクローナル抗体が、エフリンB2に結合し、かつ、エフリンB2とEphB4の結合を阻害することにより、エフリンB2の生物活性を阻害する活性を有していることは、後述(6)に記載の方法で調べることができる。
【0106】
抗体産生細胞と骨髄腫細胞の融合に供するにあたって、抗原の最終投与後3〜7日目に、免疫したマウス、ラットまたはハムスターより脾臓などの抗体産生細胞を含む組織を摘出し、抗体産生細胞を採取する。脾臓細胞を用いる場合には、脾臓をMEM培地(日水製薬社製)中で細断し、ピンセットでほぐし、遠心分離(1200rpm、5分間)した後、上清を捨て、トリス−塩化アンモニウム緩衝液(pH7.65)で1〜2分間処理し赤血球を除去し、MEM培地で3回洗浄して融合用抗体産生細胞として提供する。
【0107】
(3)骨髄腫細胞の調製
骨髄腫細胞としては、マウスから得られた株化細胞を使用する。たとえば、8-アザグアニン耐性マウス(BALB/cマウス由来)骨髄腫細胞株P3-X63Ag8-U1(P3-U1) (Current Topics in Microbiology and Immunology, 18, 1, 1978)、P3-NS1/1-Ag41(NS-1) (European J. Immunology, 6, 511, 1976)、SP2/0-Ag14(SP-2) (Nature, 276, 269, 1978)、P3-X63-Ag8653(653) (J.Immunology, 123, 1548, 1979)、P3-X63-Ag8(X63) (Nature, 256, 495, 1975)などが用いられる。これらの細胞株は、8-アザグアニン培地〔RPMI-1640培地にク゛ルタミン(1.5mM) 、2-メルカプトエタノール(5×10-5M)、ジェンタマイシン(10μg/ml)および牛胎児血清(FCS)を加えた培地(以下、正常培地という。)に、さらに8-アザグアニン(15μg/ml)を加えた培地〕で継代するが、細胞融合の3〜4日前に正常培地に継代し、融合当日2×107個以上の細胞数を確保する。
【0108】
(4)細胞融合
前述した抗体産生細胞と骨髄腫細胞をMEM培地またはPBS(リン酸二ナトリウム1.83g、リン酸一カリウム0.21g、食塩7.65g、蒸留水1リットル、pH7.2)でよく洗浄し、細胞数が、抗体産生細胞:骨髄腫細胞=5〜10:1になるよう混合し、遠心分離(1200rpm、5分間)した後、上清を捨て、沈澱した細胞群をよくほぐした後、攪拌しながら、37℃で、ポリエチレングライコール−1000(PEG-1000)2g、MEM 2mlおよびジメチルスルホキシド0.7mlの混液の0.2〜1mlを、1×108個の抗体産生細胞に加え、1〜2分間毎にMEM培地1〜2mlを数回加えた後、MEM培地を加えて全量が50mlになるようにする。遠心分離(900rpm、5分間)後、上清を捨て、ゆるやかに細胞をほぐした後、メスピペットによる吸込み、吹出しでゆるやかに細胞をHAT培地〔正常培地にヒポキサンチン(10-4M)、チミジン(1.5×10-5M)およびアミノプテリン(4×10-7M)を加えた培地〕100ml中に懸濁する。この懸濁液を96ウエル培養用プレートに100μl/ウエルずつ分注し、5%CO2インキュベーター中、37℃で7〜14日間培養する。
【0109】
培養後、培養上清の一部をとり後述するハイブリドーマの選択方法により、エフリンB2に結合し、かつ、エフリンB2とEphB4の結合を阻害することにより、エフリンB2の生物活性を阻害する抗体を生産するハイブリドーマを含むウエルを選択する。ついで、限界希釈法によりクローニングを2回繰り返し〔1回目は、HT培地(HAT培地からアミノプテリンを除いた培地)、2回目は、正常培地を使用する〕、安定して強い抗体価の認められたものをモノクローナル抗体産生ハイブリドーマ株として選択する。
【0110】
(5)モノクローナル抗体の調製
プリスタン処理〔2,6,10,14-テトラメチルペンタデカン(Pristane)0.5mlを腹腔内投与し、2週間飼育する〕した8〜10週令のマウスまたはヌードマウスに、上記(4)で得られた抗エフリンB2モノクローナル抗体産生ハイブリドーマ細胞2×106〜5×107細胞/匹を腹腔内注射する。10〜21日でハイブリドーマは腹水癌化する。このマウスから腹水を採取し、遠心分離(3000rpm、5分間)して固形分を除去後、40〜50%硫酸アンモニウムで塩析した後、カプリル酸沈殿法、DEAE-セファロースカラム、プロテインA-カラムあるいはゲル濾過カラムによる精製を行ない、IgGあるいは、IgM画分を集め、精製モノクローナル抗体とする。
【0111】
抗体のサブクラスの決定は、サブクラスタイピングキットを用いて酵素免疫測定法により行う。蛋白量の定量は、ローリー法および280nmでの吸光度より算出する。
(6)ハイブリドーマの選択方法
本発明のエフリンB2に結合し、かつ、エフリンB2とEphB4の結合を阻害することにより、エフリンB2の生物活性を阻害するモノクローナル抗体を生産するハイブリドーマを選択する方法としては、例えば、以下の方法があげられる。
【0112】
まず、以下の方法を用いて、エフリンB2に特異的に結合できるモノクローナル抗体を生産するハイブリドーマを選択する。抗原蛋白質あるいは抗原蛋白質を発現した細胞などを96ウェルプレートにコートし、ハイブリドーマ培養上清もしくは上述の方法で得られる精製抗体を第一抗体として反応させる。抗原蛋白質としては、上記(1)で作製されたエフリンB2などがあげられるが、具体的には、可溶性マウスエフリンB2-Fc(Blood, 98, 1028, 2001)があげられる。抗原蛋白質を発現した細胞としては、上記(1)で作製されたエフリンB2を発現する細胞などがあげられるが、具体的には、実施例1の(1)に記載のマウスエフリンB2を発現するRat1細胞があげられる。
【0113】
第一抗体反応後、プレートを洗浄して第二抗体を添加する。
第二抗体とは、第一抗体のイムノグロブリンを認識できる抗体を、ビオチン、酵素、化学発光物質あるいは放射線化合物等で標識した抗体である。具体的にはハイブリドーマ作製の際にマウスを用いたのであれば、第二抗体としては、マウスイムノグロブリンを認識できる抗体を用いる。
【0114】
反応後、第二抗体を標識した物質に応じた反応を行ない、抗原に特異的に反応するモノクローナル抗体を生産するハイブリドーマとして選択する。このとき、同様の方法により、他のエフリンファミリーであるエフリンB1およびエフリンB3と反応しないことを確認してもよい。
【0115】
次いで、上記のようにして選択されたエフリンB2に特異的に結合できるモノクローナル抗体を生産するハイブリドーマの培養上清を用いて、エフリンB2とEphB4の結合を阻害するモノクローナル抗体を生産するハイブリドーマは、例えば、米国特許公開公報第2002-0136726号明細書に記載されている、エフリンB2とEphB2の結合阻害実験に類似の方法で行うことができる。すなわち、固相化したGlycophosphatidylinositol(以下、GPIと表記する)融合エフリンB2とFc融合EphB4との結合を、標識化抗Fc抗体を用いて検出する反応系において、上記のエフリンB2に特異的に結合できるモノクローナル抗体を生産するハイブリドーマの培養上清を添加し、GPI融合エフリンB2とFc融合EphB4の結合を阻害するハイブリドーマを選択することにより、エフリンB2とEphB4の結合阻害するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを選択することができる。
【0116】
(7)本発明の抗体を用いた疾患の診断方法
本発明の抗体または抗体断片を用いて生体試料中のエフリンB2を測定することにより、エフリンB2が関連する疾患を診断することができる。
【0117】
本発明においてエフリンB2を測定する対象となる生体試料としては、組織細胞、血液、血漿、血清、膵液、尿、糞便、組織液、培養液など、測定しようとするエフリンB2またはエフリンB2発現細胞を含む可能性のあるものであれば特に限定されない。
【0118】
エフリンB2が関連する疾患としては、例えば、血管新生が関与する疾患があげられる。血管新生が関与する疾患の具体例としては、乳癌、前立腺癌、大腸癌、胃癌、肺癌などの固形腫瘍の増殖もしくは転移形成、慢性関節リウマチにおける関節炎、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症および乾癬などの血管新生の異常により病態が進行する疾患などがあげられる。
【0119】
また、血管新生が関与する疾患以外にも、エフリンB2は乳腺上皮に特異的に発現しているので、エフリンB2が関与する疾患としては、乳腺組織の増殖をきたす疾患なども包含される。乳腺組織の増殖をきたす疾患の具体例としては、乳腺腫、乳癌などがあげられる。
【0120】
血管新生が関与する疾患の診断は、例えば、以下のようにして行うことができる。
複数の健常者の生体から採取した生体試料について、本発明の抗体または抗体断片、またはこれらの誘導体を用い、下記の免疫学的検出法を用いて、エフリンB2の検出あるいは測定を行い、健常者の生体試料中のエフリンB2またはエフリンB2発現細胞の存在量を調べておく。被験者の生体試料中についても同様にエフリンB2またはエフリンB2発現細胞の存在量を調べ、その存在量を健常者の存在量と比較する。被験者のエフリンB2またはエフリンB2発現細胞の存在量が健常者と比較して増加している場合には、癌が陽性であると診断できる。
【0121】
本発明の抗体または抗体断片、またはこれらの誘導体を含有する診断薬は、目的の診断法に応じて、抗原抗体反応を行なうための試薬、該反応の検出用試薬を含んでもよい。抗原抗体反応を行なうための試薬としては、緩衝剤、塩などがあげられる。検出用試薬としては、抗体もしくは抗体断片、またはこれらの誘導体、または抗体もしくは抗体断片、またはこれらの誘導体を認識する標識された二次抗体、標識に対応した基質などの通常の免疫学的検出法に用いられる試薬があげられる。
【0122】
本発明においてエフリンB2またはエフリンB2発現細胞を定量する方法としては、任意の公知の方法があげられる。例えば、免疫学的測定方法などがあげられる。
【0123】
免疫学的測定法とは、標識を施した抗原または抗体を用いて、抗体量または抗原量を測定する方法である。免疫学的測定方法としては、放射性物質標識免疫抗体法(RIA)、酵素免疫測定法(EIAまたはELISA)、蛍光免疫測定法(FIA)、発光免疫測定法(luminescent immunoassay)、ウエスタンブロット法および物理化学的検出法(TIA,LAPIA,PCIA)などがあげられる。抗原の検出または測定を行う方法であればいかなる方法でもよいが好ましくは免疫沈降法または蛍光細胞染色法があげられる。
【0124】
放射性物質標識免疫抗体法(RIA)としては、例えば、抗原または抗原を発現した細胞などに、本発明の抗体を反応させ、さらに放射線標識を施した抗イムノグロブリン抗体または結合断片を反応させた後、シンチレーションカウンターなどで測定する方法があげられる。
【0125】
酵素免疫測定法(EIAまたはELISA)としては、例えば、抗原または抗原を発現した細胞などに、本発明の抗体を反応させ、さらに標識を施した抗イムノグロブリン抗体または結合断片を反応させた後、発色色素を吸光光度計で測定する方法があげられ、例えばサンドイッチELISA方などが用いられる。酵素免疫測定法で用いる標識体としては、前述のとおり、任意の公知(石川榮次ら編、酵素免疫測定法、医学書院)の酵素標識を用いることができる。例えば、アルカリフォスファターゼ標識、ペルオキシダーゼ標識、ルシフェラーゼ標識、ビオチン標識などを用いることができる。
【0126】
サンドイッチELISA法は、固相に抗体を結合させた後、測定したい抗原をトラップさせ、トラップされた抗原に第2の抗体を反応させる方法である。該ELISA法では、測定したい抗原を認識する抗体または抗体断片であって、抗原認識部位の異なる2種類の抗体を準備し、そのうち、一方の抗体または抗体断片を予めプレート(例えば、96ウェルプレート)に吸着させ、第2の抗体または抗体断片をFITCなどの蛍光物質、ペルオキシダーゼなどの酵素、ビオチンなどで標識しておく。上記の抗体が吸着したプレートに、生体内から分離された、細胞またはその破砕液、組織またはその破砕液、細胞培養上清、血清、胸水、腹水、眼液などを反応させた後、標識したモノクローナル抗体または抗体断片を反応させ、標識物質に応じた検出反応を行う。濃度既知の抗原を段階的に希釈して作製した検量線より、被験サンプルの濃度を算出することができる。サンドイッチELISA法に用いる抗体としては、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体のいずれを用いてもよく、Fab、Fab'、F(ab)2などの抗体フラグメントを用いてもよい。サンドイッチELISA法で用いる2種類の抗体の組み合わせとしては、異なるエピトープを認識するモノクローナル抗体または抗体断片の組み合わせでもよいし、ポリクローナル抗体とモノクローナル抗体または抗体断片の組み合わせでもよい。
【0127】
蛍光免疫測定法(FIA)としては、文献[Monoclonal Antibodies: Principles and practice, Third edition (Academic Press, 1996);単クローン抗体実験マニュアル(講談社サイエンティフィック、1987)]などに記載された方法があげられる。蛍光免疫測定法で用いる標識体としては、前述のとおり、任意の公知(川生明著、蛍光抗体法、ソフトサイエンス社)の蛍光標識を用いることができる。例えば、FITC標識、RITC標識などを用いることができる。
【0128】
上記のような発光免疫測定法(luminescent immunoassay)で用いる標識体としては、前述のとおり、任意の公知[今井一洋編、生物発光と化学発光、廣川書店; 臨床検査42(1998)]の発光体標識があげられる。例えば、アクリジニウムエステル標識、ロフィン標識などを用いることができる。
【0129】
ウエスタンブロット法は、抗原または抗原を発現した細胞などをSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動[Antibodies-A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory, 1988)]で分画した後、該ゲルをPVDF膜またはニトロセルロース膜にブロッティングし、該膜に抗原を認識する抗体または抗体断片を反応させ、さらにFITCなどの蛍光物質、ペルオキシダーゼなどの酵素標識、ビオチン標識などを施した抗マウスIgG抗体または結合断片を反応させた後、該標識を可視化することによって確認する方法である。ウエスタンブロット法の一例を以下に示す。
【0130】
エフリンB2を発現している細胞や組織を溶解し、還元条件下でレーンあたりのタンパク質量として0.1〜30μgをSDS-PAGE法により泳動する。泳動されたタンパク質をPVDF膜にトランスファーし1%BSAを含むPBS(以下、BSA-PBSと記す)に室温で30分間反応させブロッキング操作を行う。ここで本発明のモノクローナル抗体を反応させ、Tween-PBSで洗浄し、ペルオキシダーゼ標識したヤギ抗マウスIgGを室温で2時間反応させる。Tween-PBSで洗浄し、ECLTMWestern blotting detection reagents(Amersham社製)などを用いてモノクローナル抗体が結合したバンドを検出することにより、エフリンB2を検出することができる。
【0131】
物理化学的検出法とは、具体的には、エフリンB2と特異的に結合する抗体もしくは抗血清を用いて、抗原であるエフリンB2と抗体、もしくは抗血清とを結合させることにより凝集体を形成させて、この凝集体を検出することにより行う。この他に物理化学的検出法としては、毛細管法、一次元免疫拡散法、免疫比濁法あるいはラテックス免疫比濁法等で測定する方法があげられる[臨床検査法提要、金原出版, 499(1998)]。
【0132】
例えば、ラテックス免疫比濁法では、抗体または抗原を感作させた粒径0.1〜1μm程度のポリスチレンラテックス等の担体を用い、対応する抗原あるいは抗体により抗原抗体反応を起こさせると、反応液中の散乱光は増加し、透過光は減少する。この変化を吸光度あるいは積分球濁度として検出することによりエフリンB2を測定することができる。
【0133】
本発明の抗体は、エフリンB2に結合できるため、エフリンB2発現細胞の検出に好適に用いられる。
【0134】
エフリンB2発現細胞の検出には、公知の免疫学的測定法を用いることができるが、免疫沈降法、蛍光細胞染色法、免疫組織染色法、および免疫組織染色法などが、好ましく用いられる。また、FMAT8100HTSシステム(アプライドバイオシステム社)を用いる蛍光抗体染色法なども用いることができる。
【0135】
免疫沈降法とは、エフリンB2発現細胞などを本発明のモノクローナル抗体または抗体断片と反応させた後、プロテインG-セファロースなどのイムノグロブリンに特異的な結合能を有する担体を加えて抗原抗体複合体を沈降させる方法である。あるいは以下のような方法によっても行なうことができる。
【0136】
ELISA用96ウエルプレートに上述した本発明の抗体を固相化した後、BSA-PBSによりブロッキングする。抗体が精製されていない状態の例えばハイブリドーマ株培養上清などの精製されていない状態である場合には、抗マウスイムノグロブリンあるいはラットイムノグロブリンまたはプロテインAあるいはGなどをあらかじめELISA用96ウエルプレートに固相化しBSA-PBSでブロッキングした後、ハイブリドーマ株培養上清を分注して結合させる。BSA-PBSを捨てPBSでよく洗浄した後、エフリンB2を発現している細胞や組織の溶解液を反応させる。よく洗浄した後のプレートより免疫沈降物をSDS-PAGE用サンプルバッファーで抽出し、上記のウエスタンブロッティングにより検出を行う。
【0137】
免疫細胞染色法および免疫組織染色法とは抗原を発現した細胞または組織などを、場合によっては抗体の通過性を良くするため界面活性剤やメタノールなどで処理した後、本発明の抗体を反応させ、さらにフルオレシン・イソチオシアネート(FITC)などの蛍光標識、ペルオキシダーゼなどの酵素標識、ビオチン標識などを施した抗イムノグロブリン抗体または結合断片を反応させた後、該標識を可視化し、顕微鏡にて顕鏡するか、あるいは蛍光標識の抗体と細胞を反応させ、フロ−サイトメーターにて解析する蛍光抗体染色法(フローサイトメトリー)である。例えば、文献[Monoclonal Antibodies: Principles and practice, Third edition (Academic Press, 1996)、単クローン抗体実験マニュアル(講談社サイエンティフィック, 1987)]などに記載された方法を用いて行うことができる。特に、本発明の抗体は、エフリンB2を特異的に認識し、かつ該細胞外領域に結合できるため、フローサイトメトリーにより、エフリンB2が発現している細胞の検出に好ましく用いられる。
【0138】
また、FMAT8100HTSシステム(アプライドバイオシステム社)を用いる蛍光抗体染色法とは、形成された抗体-抗原複合体と、抗体-抗原複合体の形成に関与していない遊離の抗体または抗原とを分離することなく、抗原量または抗体量を測定することができる、ホモジニアスなアッセイ方法である。
【0139】
(8)本発明の抗体を用いた癌の治療方法
本発明の抗体または抗体断片は、エフリンB2に結合し、かつ、エフリンB2とEphB4の結合を阻害することにより、エフリンB2が関与する疾患を治療することができる。エフリンB2が関与する疾患としては、血管新生が関与する疾患などがあげられる。血管新生が関与する疾患としては、乳癌、前立腺癌、大腸癌、胃癌、肺癌などの固形腫瘍の増殖もしくは転移形成、慢性関節リウマチにおける関節炎、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症および乾癬などの血管新生の異常により病態が進行する疾患などがあげられる。本発明の治療剤には、エフリンB2が関与する癌の治療剤、および抗体依存性細胞傷害作用(ADCC)や補体依存性細胞傷害作用(CDC)、あるいはアポトーシス誘導作用による癌の治療剤が含まれる。
【0140】
抗体の有する抗体依存性細胞傷害作用(ADCC)や補体依存性細胞傷害作用(CDC)は、例えば、特開平6-205694号公報に記載の方法で測定することができる。このような活性を有する抗体は、invivoにおいて、特定の抗原が発現した細胞を傷害することができるため、疾患の治療薬として用いることができる。特に、ヒトIgGクラスの抗体定常領域を有するヒト型キメラ抗体、ヒト型CDR移植抗体およびヒト抗体は治療剤として、有効に用いられる(Cancer Res., 56, 1118, 1996)。
【0141】
本発明の抗体は、エフリンB2を認識することができるので、生体内に存在するエフリンB2発現細胞を認識することができる。従って、該抗体の可変領域のCDRを含むヒトIgGクラスの抗体定常領域を有するヒト型キメラ抗体、ヒト型CDR移植抗体およびヒト抗体は、invivoまたはin vitroにおいて、エフリンB2発現細胞を傷害することができるので、乳癌、前立腺癌、大腸癌、胃癌、肺癌などの固形腫瘍の増殖もしくは転移形成、慢性関節リウマチにおける関節炎、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症および乾癬などの血管新生の異常により病態が進行する疾患などの治療に有用である。
【0142】
また、血管新生が関与する疾患以外にも、エフリンB2は乳腺上皮に特異的に発現しているので、本発明のエフリンB2に結合し、かつ、エフリンB2とEphB4の結合を阻害することにより、エフリンB2の生物活性を阻害する抗体または抗体断片は、乳腺組織の増殖をきたす疾患などの治療に有用である。乳腺組織の増殖をきたす疾患の具体例としては、例えば、乳腺腫、乳癌などがあげられる。
【0143】
本発明の抗体もしくは抗体断片、またはこれらの誘導体を含有する治療剤は、有効成分としての該抗体もしくは抗体断片、またはこれらの誘導体のみを含むものであってもよいが、通常は薬理学的に許容される1以上の担体と一緒に混合し、製剤学の技術分野においてよく知られる任意の方法により製造した医薬製剤として提供するのが望ましい。
【0144】
投与経路は、治療に際して最も効果的なものを使用するのが望ましく、経口投与、または口腔内、気道内、直腸内、皮下、筋肉内および静脈内などの非経口投与をあげることができ、抗体またはペプチド製剤の場合、望ましくは静脈内投与をあげることができる。投与形態としては、噴霧剤、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、シロップ剤、乳剤、座剤、注射剤、軟膏、テープ剤などがあげられる。
【0145】
経口投与に適当な製剤としては、乳剤、シロップ剤、カプセル剤、錠剤、散剤、顆粒剤などがあげられる。乳剤およびシロップ剤のような液体調製物は、水、ショ糖、ソルビトール、果糖などの糖類、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類、ごま油、オリーブ油、大豆油などの油類、p−ヒドロキシ安息香酸エステル類などの防腐剤、ストロベリーフレーバー、ペパーミントなどのフレーバー類などを添加剤として用いて製造できる。カプセル剤、錠剤、散剤、顆粒剤などは、乳糖、ブドウ糖、ショ糖、マンニトールなどの賦形剤、デンプン、アルギン酸ナトリウムなどの崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、タルクなどの滑沢剤、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチンなどの結合剤、脂肪酸エステルなどの界面活性剤、グリセリンなどの可塑剤などを添加剤として用いて製造できる。
【0146】
非経口投与に適当な製剤としては、注射剤、座剤、噴霧剤などがあげられる。注射剤は、塩溶液、ブドウ糖溶液、あるいは両者の混合物からなる担体などを用いて調製される。座剤はカカオ脂、水素化脂肪またはカルボン酸などの担体を用いて調製される。また、噴霧剤は該抗体または抗体断片自体、ないしは受容者の口腔および気道粘膜を刺激せず、かつ該化合物を微細な粒子として分散させ吸収を容易にさせる担体などを用いて調製される。担体として具体的には乳糖、グリセリンなどが例示される。該抗体および用いる担体の性質により、エアロゾル、ドライパウダーなどの製剤が可能である。また、これらの非経口剤においても経口剤で添加剤として例示した成分を添加することもできる。
【0147】
投与量または投与回数は、目的とする治療効果、投与方法、治療期間、年齢、体重などにより異なるが、通常成人1日当たり10μg/kg〜8mg/kgである。
【0148】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0149】
抗エフリンB2モノクローナル抗体の作製
(1)抗原となるマウスエフリンB2を発現するRat1細胞の調製
マウス全長エフリンB2遺伝子の発現プラスミドについては公知の方法(Blood, 98, 1028, 2001)に従って作製した。ラットに免疫する細胞としてはRat1細胞(Cancer Research, 46, 4787,1986)を用いた。遺伝子導入はリポフェクション法(lipofectamine2000; invitrogen製)を用いた。遺伝子導入細胞は10%の血清を含むDMEM培地中にペニシリン(100unit/ml)とストレプトマイシン(100μg/ml)(いずれもGIBCO製)を添加し、7日間G418(GIBCO製)を500μg/mlの最終濃度で添加して、生存細胞を遺伝子導入細胞とした。これらの細胞を96穴培養プレートの一穴に一個一個の細胞を播種し、増殖した細胞を10cmの培養皿に移し、培養皿中細胞が8割を占拠するに至った培養皿からEDTAを用いて細胞を回収し、一部を細胞培養を継続するとともに、残りの細胞からRNAと細胞抽出液を作成した。抽出液はSDSゲルで電気泳動し、ニトロセルロースフィルターに転写後、市販のエフリンB2のポリクローナル抗体(SANTA CRUZ製)を用いてウエスタンブロットを行った。Rat1はラットのエフリンB2を発現しているため、遺伝子導入していない細胞に対し遺伝子導入した細胞にエフリンB2抗体で強いバンドの検出されたものをマウスエフリンB2 が遺伝子導入された細胞の候補として選択された。実際にマウスエフリンB2遺伝子が導入されているかどうかはマウスエフリンB2のRT-PCR用プライマー(5’-ATCTGTCTGCTTGGTCTTTATCAAC-3’(配列番号7))と遺伝子導入に用いたプラスミドのCAGプロモーターの塩基配列であるプライマー(5’-CTCTAGAGCCTCTGCTAACCATGTTC-3’(配列番号8))でPCR産物が確認できるかいなかで解析した。得られる遺伝子産物は387bpである。
【0150】
(2)ハイブリドーマのスクリーニングで使用する可溶性のマウス細胞外エフリンB2ヒトFc融合蛋白(エフリンB2-Fc)の精製
エフリンB2-Fc遺伝子の発現プラスミドおよびその可溶性蛋白の精製は、Blood, 98, 1028, 2001に記載の方法に準じて行った。
【0151】
(3)フローサイトメトリー法で使用するマウス全長エフリンB2を発現するBaF/3細胞(BaF/3/エフリンB2)の作製
マウス全長エフリンB2遺伝子の発現プラスミドについては公知の方法(Blood, 98, 1028, 2001)に従って作製した。マウスエフリンB2を発現していないBaF/3細胞(Cell, 41, 727, 1985)を遺伝子導入用の細胞として用いた。
【0152】
遺伝子導入はリポフェクション(lipofectamine2000; invitrogen製)を用いた。遺伝子導入細胞は10%の血清を含むRPMI培地中にペニシリン(100unit/ml)とストレプトマイシン(100μg/ml)(いずれもGIBCO製)を添加し、7日間G418(GIBCO製)を500μg/mlの最終濃度で添加して、生存細胞を遺伝子導入細胞とした。これらの細胞を96穴培養プレートの一穴に一個一個の細胞を播種し、増殖した細胞を10cmの培養皿に移し、培養皿中細胞が8割を占拠するに至った培養皿から細胞を回収し、一部は細胞培養を継続するとともに、残りの細胞からRNAと細胞抽出液を作成した。
【0153】
抽出液はSDSゲルで電気泳動し、ニトロセルロースフィルターに転写後、市販のエフリンB2のポリクローナル抗体(SANTA CRUZ製)を用いてウエスタンブロットを行い、エフリンB2のバンドが検出された細胞を遺伝子導入細胞として確立した。さらにマウスエフリンB2遺伝子が導入されているかどうかはマウスエフリンB2のRT-PCR用プライマー(5’-ATCTGTCTGCTTGGTCTTTATCAAC-3’(配列番号9))と遺伝子導入に用いたプラスミドのCAGプロモーターの塩基配列であるプライマー(5’-CTCTAGAGCCTCTGCTAACCATGTTC-3’(配列番号10))でPCR産物が確認できるかいなかで解析した。得られる遺伝子産物は387bpである。
【0154】
(4)動物の免疫と抗体産生細胞の調製
上記(1)により得られたマウスエフリンB2を発現するRat1細胞(2×108個)を500μlのリン酸緩衝液(PBS)にけん濁し、8週令雌Fisherラット(日本SLC社製)の腹腔内に投与した。本操作を2週間毎に行い、計4回投与した。尾静脈より採血し、その血清抗体価を以下に示す酵素免疫測定法で調べ、十分な抗体価を示したラットから最終免疫3日後に脾臓を摘出した。脾臓をRPMI培地(SIGMA製)中で細断し、ステンレスメッシュに細切された脾臓をこすりながらピンセットでほぐし、遠心分離(1200rpm、5分間)した後、40μmのポアを有するセルストレイナー(BD Falcon製)を用いて細胞塊を除去した。これらを遠心分離し(1200rpm、5分)、上清を捨て、細胞融合に用いた。
【0155】
(5)酵素免疫測定法(ELISA)
(4)で得られたマウスエフリンB2を発現するRat1細胞を投与されたラットに由来する抗血清およびハイブリドーマの培養上清の測定に関しては、抗原として、(2)で得られた、可溶性マウスエフリンB2-Fcを用いた。96ウェルのEIA用プレート(BD Falcon社製)に、PBS希釈1〜10μg/ml可溶性マウスエフリンB2-Fcを、それぞれ50μl/ウェルで分注し、4℃で一晩放置して吸着させた。洗浄後、1%牛血清アルブミン(BSA)を含むPBS(以下、1%BSA-PBSと記す)を100μl/ウェル加え、室温1時間反応させて残っている活性基をブロックした。1%BSA-PBS を捨て、被免疫ラット抗血清およびハイブリドーマの培養上清を50μl/ウェルで分注し2時間反応させた。0.05%Tween-PBSで洗浄後、ペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ラットイムノグロブリン(Biosource社製)を50μl/ウェルで加えて室温、1時間反応させ、0.05%Tween-PBSで洗浄後TMB基質液[3,3’,5,5’-テトラメチルベンジディン](Wako Chemical社製)を用いて発色させOD450nmの吸光度を測定した。
【0156】
(6)マウス骨髄腫細胞の調製
8-アザグアニン耐性マウス骨髄腫細胞株X63-AG8を10%牛血清を含むRPMI培地で培養し、細胞融合時に5×107以上の細胞を確保し、細胞融合に親株として供した。
【0157】
(7)ハイブリドーマの作製
上記(4)で得られたラット脾細胞と、上記(6)で得られた骨髄腫細胞とを2:1(1×108:5×107)になるよう混合し、遠心分離(1200rpm、5分間)した後、上清を捨て、沈澱した細胞群をよくほぐした後、攪拌しながら、37℃で、ポリエチレングリコール溶液(SIGMA社製)1mlを加え、2分間静置した。その後、37℃にあたためたRPMI培地20mlを細胞をけん濁している50mlのチューブを震盪させながら20分間にわたり添加した後、遠心分離(900rpm、5分間、室温)後、上清を捨て、ゆるやかに細胞をほぐした後、メスピペットによる吸込み、吸出しでゆるやかに細胞をHAT(GIBCO社製)を1%含む10%牛血清を添加したRPMI培地50ml中に懸濁した。
【0158】
この懸濁液を96ウェル培養用プレートに100μl/ウェルずつ分注し、5%CO2インキュベーター中、37℃で10〜14日間CO25%下で培養した。この培養上清を実施例(5)に記載した酵素免疫測定法で調べ、(2)で得られた可溶性マウスエフリンB2に強く反応し、市販の他の可溶性エフリンB1またはB3に反応しないウェルを選び、さらにHT培地(GIBCO社製)と正常培地に換え、2回クローニングを繰り返して、抗マウスエフリンB2モノクローナル抗体を生産するハイブリドーマ株(以下VERB2と呼ぶ)を確立した。ハイブリドーマ株VERB2が生産するモノクローナル抗体をVERB2抗体と称する。
【0159】
VERB2抗体の抗体クラスはサブクラスタイピングキット[ザイメット(Zymed)社製]を用いた酵素免疫測定法を行った。その結果を図1に示す。
本発明で確立したモノクローナル抗体はIgG1、kappaクラスであった。
【0160】
(8)VERB2抗体の精製
プリスタン処理した8週令KSNヌード雌マウス(SLC社製)に(7)で得られたハイブリドーマ株VERB2を5〜20×106細胞/匹それぞれ腹腔内に注射した。10〜21日後に、ハイブリドーマは腹水癌化した。腹水のたまったマウスから、腹水を採取(1〜8ml/匹)し、遠心分離(3000rpm、5分間)して固形分を除去した後硫酸アンモニウム沈殿法(アンチボディーズ・ア・ラボラトリー・マニュアル)により精製し、さらに必要に応じて、ProteinAカラム(amersham社製)を用いてさらに精製した。以下に示すフローサイトメトリーを用いた本発明の抗体の反応実験には精製したVERB2抗体を、ビオチン結合キット(SIGMA社製)を用いてビオチン化したものを用いた。
【実施例2】
【0161】
本発明の抗体の反応性の確認
(1)モノクローナル抗体のラットおよびマウスエフリンB2発現細胞におけるフローサイトメトリーを用いた解析
VERB2抗体の特異性を、免疫細胞染色を用いて以下の手順に従い確認した。自発的にラットエフリンB2を発現する細胞株Rat1とRat1細胞にマウスエフリンB2を遺伝子導入した細胞(Rat1/エフリンB2)1×106個を1.5mlの容量が入るチューブ(Eppendorf社製)に免疫細胞染色用緩衝液(5%牛血清を含むPBS)100μlに懸濁して分注した。微量高速冷却遠心機(TOMY工業製)を用い4℃、5000rpmで1分間遠心分離後、上清を除き、ビオチン化した精製抗体50μl(最終濃度0.1〜5μg/ml)を加えて4℃で30分間反応させた。反応後、500μlの免疫細胞染色用緩衝液を各ウェルに加え4℃、5000rpm で1分間遠心分離後上清を除き細胞の洗浄を行った。この洗浄操作をさらに2回行った後、avidin-FITC(Pharmingen社製)を1/50の濃度で含む免疫細胞染色用緩衝液50μlを加えて4℃で30分間反応させた。反応後、上記と同様の洗浄操作を3回行った後フローサイトメーター(Becton社製)を用いて解析を行った。
【0162】
結果を図2に示した。細胞に抗体を添加せずavidin-FITCのみを添加した場合に比べVERB2抗体を添加すると、Rat1細胞に若干の反応が見られた。これはVERB2抗体がラットのエフリンB2にも交叉することを意味する。しかしマウスエフリンB2を過剰発現させた細胞ではさらに強い反応が見られた。
【0163】
次に、実施例1の(3)に記載のBaF/3細胞とBaF/3/エフリンB2細胞を用い、VERB2抗体がマウスエフリンB2に反応するか否かを検討した。上記の方法で細胞を染色し、フローサイトメーターを用いて観察した。
【0164】
結果を図3に示す。エフリンB2を発現しないBaF/3細胞にVERB2抗体で染色したものはネガティブコントロールと同様に反応は見られなかった(図3左段)。一方、BaF/3/エフリンB2細胞では一次抗体無し、あるいは一次抗体にコントロール抗体を使用した場合には反応が認められないのに対し、一次抗体にVERB2抗体を用いることによって、反応が認められた(図3右段)。以上のことから、VERB2はラットおよびマウスのエフリンB2を認識する抗体であることが判明した。
【0165】
同時に市販のポリクローナル抗体(SANTA CRUZ社製)を用いて、同様の検討を行ったが、市販のポリクローナル抗体は、上記のコントロール抗体と同様の結果であった。従って、市販のポリクローナル抗体は、フローサイトメトリーでは使用できないことがわかった。
【0166】
(2)モノクローナル抗体による免疫組織染色
胎児期にエフリンB2は動脈に発現するが静脈には発現しないことが報告されている。しかし、RNAを検出することによる証明はなされているが、エフリンB2がタンパク質として発現していることは証明されていない。そこで、VERB2抗体を用いて、マウス胎児の組織切片を用いて発現解析を行った。
【0167】
妊娠13日目のマウスの子宮内より胎児を実体顕微鏡(Leica製)下で取り出し、パラホルムアルデヒド(Wako社製)を4%の濃度で含むPBSに2時間4℃で浸透して組織を固定した。パラホルムアルデヒドの入ったPBSを除去し、胎児組織をPBSで2時間4℃でPBSに浸透して洗浄した。胎児は40%メタノール、70%メタノールを含むPBS、100%メタノールでそれぞれ4℃で20分間脱水させた。胎児をナイフを用いて細切し、50%ポリエステルワックス(第一化学社製)を含むメタノール溶液、100%ポリエステルワックスでそれぞれ42℃で30〜60分間ワックスを浸透した。さらにこの組織をカセット内でワックスに包埋し、ミクロトーム(ヤマト科学社製)を用いて8μmに薄切し、スライドグラス上で固定、乾燥させた。このようにして作製した組織切片を100%のエタノールで脱ワックスを行い、0.6%の過酸化水素と0.2%のアジ化ナトリウムを含むメタノールに室温で30分間浸透し、内因性のペルオキシダーゼの不活化を行った。続いて70%メタノールを含むPBS、ついでPBSの順にそれぞれ5分間静置して、親水した。組織切片に5%ヤギ血清および1%BSAを含むPBS(ブロッキング液)をのせ室温で30分間浸透させ、二次抗体のブロッキングを行った。ブロッキング液を捨て、VERB2抗体を最終濃度0.1〜5μg/mlにブロッキング液で希釈して、6〜12時間室温あるいは4℃で反応させた。抗体を捨て、0.05%Tween20を含むPBS(洗浄液)中に4℃で10分間浸透させ、洗浄液を捨てた。この操作を3回繰り返した。ペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ラットイムノグロブリン(Biosource社製)を100分の1〜500分の1の濃度にブロッキング液で希釈し、組織切片にのせ、室温で1時間反応させた。二次抗体を捨て、洗浄液で上記と同様切片を3回洗浄した。組織切片にディアミノベンジディン(DAB;同人化学社製)を250μg/mlの濃度でPBSに溶解したDAB溶液1mlに対して、1.5%過酸化水素を5μl添加した溶液を発色液として用いて、VERB2抗体によるエフリンB2の発現を解析した。
【0168】
VERB2抗体は背側動脈には濃青色の反応が認められるのに対して、大静脈には反応が認められなかった。このことから、VERB2抗体はマウスの胎児において、動脈特異的に染色が可能な抗体であることが示された。
【0169】
(3)VERB2を用いた腫瘍組織における血管のエフリンB2の発現解析
従来よりエフリンB2は胎児期ではその発現解析がすすめられているものの、成体の病変部においてはまだ詳細な発現が明らかにされていない。そこで、成体で血管新生が生じる腫瘍組織におけるエフリンB2の発現をVERB2抗体を用いて検討した。C57Bl/6マウス(SLC社製)に植え付けられたLewis lung carcinoma 肺ガン細胞を腫瘍として持つマウスから腫瘍組織を取り出し、本実施例の(1)と同様の方法で処理し、組織切片を作成し、VERB2抗体により本実施例の(1)と同様の手段で染色した。
【0170】
腫瘍周囲の間葉系組織内では平滑筋細胞におおわれた動脈の血管内皮細胞および平滑筋の被覆のない静脈の内皮細胞において、染色が確認でき、これらの細胞はエフリンB2を発現していることが確認できた。また、腫瘍内部では、ほぼ全ての血管において、エフリンB2が発現していることが確認できた。以上のことから、腫瘍ではVERB2抗体はほぼすべての内皮細胞を認識することから、VERB2抗体は腫瘍の診断や血管新生の抑制などの治療に有効であることが示された。
【0171】
(4)VERB2抗体による血管新生の抑制
成体中の組織における血管新生は、病態が発生した時にのみ観察されるが、胎児期においては臓器の形成が盛んであり血管新生が進行しないとマウスは致死となる。そこで、VERB2抗体を妊娠マウスに投与し、胎児の血管新生に影響を与えるか否かを検討した。
【0172】
8週齢のC57Bl/6妊娠マウス(SLCより購入)に経胎盤的に母体からのIgGが胎児に浸透する妊娠9日以降から、VERB2抗体、あるいはコントロール抗体(B220)を、一匹につき1〜5mgをPBSで希釈し、妊娠9、10、11、12日に腹腔内投与し、13日目に妊娠マウスの子宮より胎児を実体顕微鏡(Leica製)下で取り出し、血管新生について観察した。
【0173】
コントロールの抗体を投与した母胎の胎児と比較して、VERB2抗体を投与した母胎の胎児は卵黄嚢の血管が細く、血管構造が未発達であった。また、頭部においてはコントロールの抗体を投与した母胎の胎児と比較して、著しく血管が細く、また血管数が減少していた。また、血管数の減少に応じて赤血球の運搬がなされず、胎児は貧血色を呈していた。
【0174】
以上のことから、VERB2は血管新生を顕著に抑制することが判明し、腫瘍や慢性炎症性疾患などで病態の悪化に繋がる血管新生を抑制する治療薬として本発明の抗体が使用できることが示された。
【0175】
(5)VERB2による乳腺組織形成の破綻の誘導
エフリンB2は血管だけでなく、乳腺上皮に特異的に発現することが報告されているが(Journal of Cell Science, 111, 2741 1998)、ノックアウトマウスが発生初期に致死となるため、妊娠マウスにおいて解析が可能な乳腺におけるエフリンB2の機能解析はなされてこなかった。そこで、VERB2 抗体を妊娠マウスに投与することにより乳腺の発生に関してエフリンB2の機能を観察した。上記(4)に記載のスケジュールと同様にVERB2抗体とコントロール抗体を妊娠マウスに投与した。
【0176】
2.4mgのVERB2抗体を投与した場合には、胎児は全て妊娠14日目までに致死となったが、1mgのVERB2抗体を投与した場合は出生するマウス新生児が確認された。新生児は正常に出生したが、発育が遅延することが判明した。しかし、出生と同時にVERB2抗体を投与していない妊娠マウスのケージに新生児を移した場合には、上記の発育が遅延していたマウスの発育は、正常になることが判明した。これは、VERB2抗体投与により、妊娠マウスの乳腺の発達が遅延するため、新生児に与えられる母乳量が少なくなるために、新生児の発育遅延が生じることが判明した。従って、VERB2抗体は乳腺組織の増殖をきたす疾患(乳腺腫、乳ガンなど)に対し治療効果を有することが示された。
【図面の簡単な説明】
【0177】
【図1】作製したVERB2抗体のサブクラスタイピングの結果を示す。
【図2】作製したVERB2抗体を用いたフローサイトメトリーでの、ラット及びマウスエフリンB2を染色した結果を示す。
【図3】作製したVERB2抗体を用いたフローサイトメロリーの結果を示す。左段のカラムはエフリンB2を発現していないBaF/3細胞に対する、右段のカラムはエフリンB2を発現しているBaF/3/エフリンB2細胞に対するそれぞれの抗体の反応性を示す。図は上から、一次抗体無し、一次抗体にコントロール抗体、一次抗体にVERB2抗体を用いたときの反応の結果をそれぞれ示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エフリンB2に結合し、かつ、エフリンB2とエリスロポエチン・プロデューシング・ヘパトセルラー・カルシノーマB4(EphB4;Erythropoietin producing hepatocellular carcinoma B4)との結合を阻害することにより、エフリンB2の生物活性を阻害する抗体または抗体断片。
【請求項2】
エフリンB2が配列番号2で表されるアミノ酸配列で示されるポリペプチドである、請求項1に記載の抗体または抗体断片。
【請求項3】
抗体が、モノクローナル抗体である請求項1または2に記載の抗体または抗体断片。
【請求項4】
モノクローナル抗体のクラスがIgGである請求項1から3のいずれか1項に記載の抗体または抗体断片。
【請求項5】
モノクローナル抗体が、ハイブリドーマVERB2(FERM ABP-10100)から生産されるモノクローナル抗体である請求項1〜4のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体または抗体断片。
【請求項6】
モノクローナル抗体が、ハイブリドーマVERB2(FERM ABP-10100)から生産されるモノクローナル抗体が結合するエピトープと結合するモノクローナル抗体である請求項1〜4のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体または抗体断片。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の抗体または抗体断片を用いてエフリンB2を免疫学的に検出する方法。
【請求項8】
検出する方法が、免疫組織染色法である請求項7に記載の方法。
【請求項9】
検出する方法が、免疫細胞染色法である請求項7に記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の抗体または抗体断片を用いるエフリンB2の検出用試薬。
【請求項11】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の抗体または抗体断片を用いるエフリンB2の定量用試薬。
【請求項12】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の抗体または抗体断片を用いるエフリンB2が関与する疾患の診断薬。
【請求項13】
エフリンB2が関与する疾患が、血管新生が関与する疾患である請求項12に記載の診断薬。
【請求項14】
血管新生が関与する疾患が固形腫瘍、慢性関節リウマチ、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症および乾鮮からなる群から選択される疾患である請求項13に記載の診断薬。
【請求項15】
エフリンB2が関与する疾患が、乳腺組織の増殖をきたす疾患である請求項12に記載の診断薬。
【請求項16】
乳腺組織の増殖をきたす疾患が乳腺種または乳癌からなる群から選択される疾患である請求項15に記載の診断薬。
【請求項17】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の抗体または抗体断片を有効成分として含有するエフリンB2が関与する疾患の治療薬。
【請求項18】
エフリンB2が関与する疾患が、血管新生が関与する疾患である請求項17に記載の治療薬。
【請求項19】
血管新生が関与する疾患が固形腫瘍、慢性関節リウマチ、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症および乾鮮からなる群から選択される疾患である請求項18に記載の治療薬。
【請求項20】
エフリンB2が関与する疾患が、乳腺組織の増殖をきたす疾患である請求項17に記載の治療薬。
【請求項21】
乳腺組織の増殖をきたす疾患が乳腺種または乳癌からなる群から選択される疾患である請求項20に記載の治療薬。
【請求項22】
請求項3〜6のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体を生産するハイブリドーマ。
【請求項23】
ハイブリドーマがハイブリドーマVERB2(FERM ABP-10100)である、請求項22に記載のハイブリドーマ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−320850(P2007−320850A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−244433(P2004−244433)
【出願日】平成16年8月24日(2004.8.24)
【出願人】(000001029)協和醗酵工業株式会社 (276)
【出願人】(504160781)国立大学法人金沢大学 (282)
【Fターム(参考)】