説明

抗コリン作用薬を含む吸入用エアロゾル製剤

本発明は、式(1)で表される抗コリン作用薬1種以上(式中、Xはアニオンを示す)と、少なくとも1種の医薬的に相溶性のある有機酸とを含み、さらに医薬的に相溶性のある別のアジュバント及び/又は錯化剤を含んでいてもよい、噴射剤を含有しない特定の水性エアロゾル製剤に関する。式(1’)のカチオンが医薬製剤100mlに対して32〜54mgの濃度で製剤中に含まれている。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、式1で表される抗コリン作用薬:
【0002】
【化1】

【0003】
(式中、X-はアニオンを示す)の1種以上と、
少なくとも1種の医薬的に許容される有機酸とを含み、さらに医薬的に許容される他の賦形剤及び/又は錯化剤を含んでもよい、噴射剤を含有しない特定の水性エアロゾル製剤であって、下記式1’で表されるカチオンが医薬製剤100mlに対して32〜54mgの濃度で製剤中に存在する医薬製剤に関する。
【0004】
【化2】

【0005】
式1の化合物は、WO02/32899より公知である。該化合物は有用な薬理学的特性を有し、非常に有効な抗コリン作用薬が呼吸器系疾患の治療に、とりわけ炎症性及び/又は閉塞性呼吸器系疾患の治療に、特に喘息又は慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療において、治療効果を示すことができる。
本発明は、前記化合物を含む、吸入による投与が可能な有効成分液体製剤に関するもので、本発明の液体製剤は高い品質基準を満たしていなければならない。
本発明の製剤は経口又は鼻から吸入することができる。有効成分を肺の中で最適に分散させるためには、適切な吸入器を使って、噴射剤ガスなしで投与する液体製剤の使用が有用である。このような製剤は口からの経路と鼻からの経路の両方で吸入することができる。治療目的に必要な用量である少量の液体製剤を、数秒以内で治療用吸入に適したエアロゾルにして噴霧できる吸入器が特に好適である。本発明の範囲においては、好ましくは一度のスプレー又は二度のスプレー操作で100μL未満、好ましくは50μL未満、より好ましくは20μL未満の量の有効成分溶液を霧状にして、平均粒子サイズが20μm未満、好ましくは10μm未満のエアロゾルを形成し、エアロゾルの吸入されうる部分が治療上の有効量に相当するようにすることが可能な吸入器が好ましい吸入器である。
吸入用液状医薬組成物の定量を、噴射剤を使わずに投与するタイプの装置については、例えば、国際特許出願WO91/14468 "Atomizing Device and Methods(噴霧装置及び噴霧方法)及びWO97/12687に詳述されており、図6a及び図6bならびに付随する説明が参照される。この種の噴霧器では、500barまでの高圧により肺で分散するエアロゾルに液体製剤が変換され、噴霧される。本願明細書の範囲に、前記文献の全内容を引用するものである。
【0006】
この種の吸入器では、液体製剤はリザーバーに貯蔵される。使用される有効成分製剤が貯蔵時に十分安定していること、また同時に、その医療上の目的に応じて、できれば特別な取り扱いを必要とせずにそのまま投与できる状態であることが重要である。さらに、有効成分製剤は、吸入器と反応して吸入器又は液体もしくは生成されたエアロゾルの製薬上の品質を損なうような成分は含有しない。
液体を噴霧するために、例えばWO94/07607又はWO99/16530に記載されているような特殊なノズルが使用される。これらの公報はいずれも本願に特別に引用するものである。
また、WO04/022052A1にも、式1の抗コリン作用薬のための、噴射剤を使用しない水性エアロゾル製剤が記載されている。この水性製剤は、式1で表される抗コリン作用薬を少なくとも1種の医薬的に許容される有機酸又は無機酸と一緒に含み、さらに医薬的に許容される他の賦形剤及び/又は錯化剤を含んでいてもよい。
本発明の課題は、本願明細書前記の吸入器を使った溶液の最適な噴霧を可能にするために必要とされる高い水準を満たし、かつ、先行技術による水性製剤よりも優れた特性を有する、式1の化合物の水性製剤を提供することである。また、本発明の有効成分製剤は製薬上の品質も十分に高くなければならない。即ち、数年にわたり、好ましくは少なくとも1年間、より好ましくは2年間の保存期間にわたり製薬上安定していることが望ましい。
また、噴射剤を含有しない液体製剤は、吸入器による圧力下での噴霧が可能で、生成されたエアロゾル状態での組成物の送達範囲が、再現性をもって所定の範囲内におさまらなければならない。
本発明の課題は、式1で表される化合物の1種以上、好ましくは1種:
【0007】
【化3】

【0008】
(式中、X-はアニオンを示す)と、医薬的に許容される有機酸とを含み、さらに医薬的に許容される他の賦形剤及び/又は錯化剤を含んでいてもよい、吸入用の水性医薬製剤であって、下記式1’で表されるカチオンが医薬製剤100mlに対して32〜54mgの濃度で製剤中に存在する水性医薬製剤によって解決される。
【0009】
【化4】

【0010】
本発明の範囲においては、アニオンX-が塩化物、臭化物、ヨウ化物、スルフェート、ホスフェート、メタンスルホネート、ニトレート、マレエート、アセテート、シトレート、フマレート、タルトレート、オキサレート、スクシネート、ベンゾエート及びp−トルエンスルホネートから選択される、式1で表される化合物の使用が好ましい。
好ましくは、X-が塩化物、臭化物、4−トルエンスルホネート及びメタンスルホネートから選択されるアニオンを示す式1の塩の使用が好ましい。
-が臭化物を示す式1の化合物を含有する製剤が、本発明の範囲において特に好適である。
-が臭化物を示す式1の化合物1種以上、好ましくは1種と、医薬的に許容される有機酸とを含み、さらに医薬的に許容される賦形剤及び/又は錯化剤を含む、吸入用の水性医薬製剤であって、医薬製剤100mlに対して式1の臭化物を40〜65mg含む水性医薬製剤の使用が好ましい。
式1の化合物に言及する場合、この化合物の存在可能なすべての非晶質及び結晶性の変形も本発明の範囲に常に含まれる。また、式1の化合物に言及する場合、本発明の範囲においては該化合物から形成しうるすべての可能な溶媒和物及び水和物も含まれる。
本発明の範囲において化合物1’に言及する場合はいずれも、塩1に含まれる下記式で表される医薬的に有効なカチオンを指すとみなすべきである。
【0011】
【化5】

【0012】
本発明の製剤においては、化合物1は水に溶解している。補助溶媒を使用してもよい。しかしながら、本発明では他の溶媒を使用しない方が好ましい。
本発明の医薬製剤においては、医薬的に有効なカチオン1’の量を基準とした式1の化合物の濃度は、本発明によると100mlにつき約37〜50mgが好ましい。特に好ましくは、本発明の製剤100mlにカチオン1’が約41〜約45mg、とりわけ43.47mg含まれているとよい。
使用する式1の化合物が、X-が臭化物を示す本発明のとりわけ好ましい化合物である場合、本発明の化合物1の量は、医薬製剤に対して約45〜60mgが好適である。とりわけ、100mlの本発明の医薬製剤中に式1の化合物が50〜55mg、特に、約52.882mg含有されることが好ましい。
本発明によると、製剤中には式1で表される塩が1種のみ含有されることが好ましい。しかしながら、製剤中に式1で表される異なる塩の混合物が含まれてもよい。
本発明による製剤のpH値は、好ましくは本発明では2.5〜6.5の範囲、より好ましくは3.0〜5.0の範囲、さらに好ましくは3.5〜4.5の範囲、とりわけ好ましくは3.6〜4.4の範囲である。
pH値は医薬的に許容される有機酸を添加して調整する。医薬的に許容される有機酸の例は、アスコルビン酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、マレイン酸、コハク酸、フマル酸、酢酸、ギ酸及びプロピオン酸から選択される。推奨される医薬的に許容される有機酸は、アスコルビン酸、フマル酸及びクエン酸で、なかでもクエン酸が本発明では好ましい。所望であれば、上記酸の混合物を用いることもできる。特に、酸性化特性に加えて他の特性を有する酸、例えば、クエン酸又はアスコルビン酸等のように香料添加剤又は酸化防止剤として作用する酸の場合は、混合して用いるとよい。
所望であれば、医薬的に許容される塩基を使用して正確にpHを滴定してもよい。好適な塩基としては、例えばアルカリ金属水酸化物及びアルカリ金属炭酸塩が挙げられる。好適なアルカリイオンはナトリウムである。この種の塩基を使用する場合、得られる塩が最終的な医薬製剤に含有されるので、該塩が前記の酸と薬理学的に相溶性があることを確認するよう注意しなければならない。
【0013】
本発明の製剤は、医薬的に許容される有機酸としてクエン酸を溶液100mlに対して2〜5mgの濃度で、さらに好ましくは3mg/100mlの濃度で含むことが好ましい。
本発明の製剤は更に錯化剤を含んでもよい。錯化剤とは、本発明の範囲においては錯体結合が可能な分子を意味する。こうした化合物は、カチオン、特に好ましくは金属カチオンの錯化作用を有しているとよい。本発明の製剤はエデト酸(EDTA)又はエデト酸の公知の塩の1種、例えばエデト酸ナトリウム又はエデト酸二ナトリウムを錯化剤として含有することが好ましい。エデト酸ナトリウムの使用が好ましく、エデト酸ナトリウムは水和物の状態で、より好ましくは二水和物の状態で使用するとよい。錯化剤を本発明の製剤中に使用する場合、錯化剤の量は本発明の製剤100mlに対して5〜20mg、より好ましくは7〜15mg/100mlがよい。とりわけ、本発明の製剤には、製剤100mlに対して約9〜12mg、より好ましくは製剤100mlにつき約10mgの量の錯化剤が含有されるとよい。
エデト酸ナトリウムについての摘要は、EDTA又はその塩と同等であり、錯体形成性を有しEDTA又はその塩の替わりに使用可能な他の添加剤、例えばニトリロ三酢酸やその塩にも当てはまる。
また、医薬的に許容できる他のアジュバントを本発明の製剤に添加してもよい。アジュバント及び添加剤とは、本願においては、それ自体は活性物質ではないが、薬理学的に好適な溶媒中で活性物質と共に製剤化して、活性物質を含む調剤の特質を改善することができる、医薬的に許容でき、かつ、治療上有用な物質を意味する。これらの物質は薬理的作用を持たないことが好ましく、所望の療法との関連において容易に認識できるような薬理作用は持たないか、少なくとも望ましくない薬理作用を有していないことが好ましい。アジュバント及び添加剤としては、例えば、安定化剤、最終的な医薬製剤の貯蔵寿命を延長させる酸化防止剤及び/又は防腐剤、ならびに、香味付与剤、ビタミン類及び/又は当分野で公知の他の添加剤が挙げられる。また、添加剤には、例えば塩化ナトリウムなどの薬理学的に許容される塩も含まれる。
好適な賦形剤としては、例えば、pHの調整に使用されていないのであればアスコルビン酸、また、ビタミンA、ビタミンE、トコフェロール及び人体内で産生する同様なビタミン類及びプロビタミン類等の酸化防止剤が挙げられる。
【0014】
防腐剤を添加して病原菌による汚染から製剤を保護することができる。適切な防腐剤は当該分野において公知のものであり、特に当該分野で既知の濃度の、塩化ベンザルコニウム又は安息香酸もしくは安息香酸ナトリウムなどの安息香酸塩である。好ましくは、塩化ベンザルコニウムを本発明の製剤に添加するとよい。塩化ベンザルコニウムの量は、製剤100mlにつき1mg〜50mg、好ましくは約7〜15mg/100ml、より好ましくは約9〜12mg/100mlである。
好ましい製剤は、溶剤としての水及び式1の化合物に加えて、塩化ベンザルコニウムと、エデト酸ナトリウムと、pHの調整に必要な酸のみを含むものである。
本発明によると、噴射剤を含まないエアロゾルを生成させるためには、式1の化合物を含む本発明の医薬製剤は、本願明細書前記に示したタイプの吸入器で使用することが好ましい。この点について、本願明細書前述の特許文献を再度明確に言及し、本願明細書に引用する。
最初に記載のごとく、好適な吸入器をさらに展開した実施形態がWO97/12687に開示されている(特に図6a及び図6bならびに関連の明細書箇所参照)。この噴霧器(Respimat(登録商標))を効果的に利用して、本発明の吸入エアロゾルを生成することができる。この装置は、形状が円筒状で、長さ9〜15cm及び幅2〜4cmそこそこの取り扱い易いサイズであるために、患者は常に携行することができる。この噴霧器は、高圧を利用して小さなノズルから所定量の医薬製剤を噴霧して、吸入用エアロゾルを生成する。
この好ましい噴霧器は、上部ハウジング部と、ポンプハウジングと、ノズルと、ロッキングクランプと、バネハウジングと、バネと、貯蔵容器から本質的になり、
− 上部ハウジング部内に固定され、その一端にはノズル又はノズル装置を備えたノズル本体を担持するポンプハウジング、
− バルブ本体を備えた中空ピストン、
− 中空体(hollow body)が中に固定され、上部ハウジング部に配置された動力取出しフランジ、
− 上部ハウジング部に位置するロッキングクランプ機構、
− 内部にバネを収容し、回転軸受けによって上部ハウジング部に回動可能に取り付けられているバネハウジング、
− バネハウジング上に軸方向に取り付けられている下部ハウジング部、とによって特徴づけられる。
【0015】
バルブ本体を備えた中空ピストンは、WO97/12687に開示の装置に対応する。中空ピストンは、ポンプハウジングのシリンダ内に一部が突き出ており、シリンダ内を軸方向に移動可能に配置されている。前記国際特許出願の特に図1乃至図4、とりわけ図3、及びそれに関連する明細書の説明箇所に記載されている。バルブ本体を備えた中空ピストンは、バネが緩んだ瞬間に、その高圧末端において、流体、即ち定量の有効成分溶液に対して5〜60Mpa(約50〜600bar)、好ましくは10〜60Mpa(約100〜600bar)の圧力を及ぼす。1回の作動による量は、好ましくは10〜50μL、より好ましくは10〜20μLで、10〜15μLの量が特に好ましい。
バルブ本体は、ノズル本体に面した中空ピストンの端部に好ましくは取り付けられる。
ノズル本体内のノズルは微細構造を有することが好ましく、即ち、マイクロ技術によって作製される。微細構造を有するノズル本体については、例えばWO99/16530に開示されており、この明細書の内容、特に図1及びその関連説明の内容を本願明細書に引用する。
ノズル本体は、例えば、強固に結合した2枚のガラス及び/又はシリコンシートからなり、2枚のうちの少なくとも1枚には、1本以上の微細構造により作製された溝があり、この溝によってノズル入口端部がノズル出口端部と連結する。ノズル出口端部には、深さ2〜10μmで幅5〜15μm、好ましくは深さが4.5〜6.5μmで、長さが7〜9μmの少なくとも1個の円形又は非円形開口部がある。
ノズル開口部が複数個、好ましくは2個ある場合、ノズル本体内におけるノズルのスプレー方向は互いに平行に延びてもよいし、あるいはノズル開口方向に互いに対して傾斜していてもよい。出口端部に少なくとも2個のノズル開口部を有するノズル本体の場合、スプレー方向は、互いに対して20〜160度、好ましくは60〜150度、最も好ましくは80〜100度の角度がよい。
ノズル開口部は、好ましくは10〜200μm、より好ましくは10〜100μm、さらに好ましくは30〜70μmの間隔をおいて配置される。50μmの間隔が最も好ましい。
したがって、スプレー方向はノズル開口部近傍でぶつかることになる。
【0016】
前述のとおり、液体医薬製剤は、600barまでの導入圧力、好ましくは200〜300barの導入圧力でノズル本体に突き当たり、ノズル開口部を通って吸入エアロゾル状態に霧化される。エアロゾルの好ましい粒径は20μmまで、好ましくは3〜10μmである。
ロッキングクランプ機構には、機械的エネルギーを保存するためのバネ、好ましくは円筒状の圧縮コイルバネが含まれる。このバネはバネ部材として動力取出しフランジに作用するが、フランジの移動はロック部材の位置によって決まる。この動力取出しフランジの移動は、上部および下部の止め(stop)によって正確に定められている。上部ハウジング部を下部ハウジング部内のバネハウジングに対して回転させる時に発生する外部トルクによって、バネは、ステッピングアップギア、例えば斜歯スライディングギア(helical sliding gear)を介して張力がかけられると好ましい。この場合、上部ハウジング部及び動力取出しフランジは、1速又は多速スプラインギア(single- or multi-speed spline gear)を有する。
噛合するロック面を有するロック部材は、動力取出しフランジの回りにリング状に配置されている。ロック部材は、例えば、本質的に径方向に弾性変形するプラスチック又は金属のリングで構成される。このリングは、噴霧器の軸に対して直角をなす面に配置される。バネがロックされると、ロック部材のロック面は動力取出しフランジの通路内に移動し、バネが緩まないようにする。ロック部材はボタンによって作動する。この作動ボタンはロック部材に接続又は連結している。ロッキングクランプ機構を作動させるには、作動ボタンをリング面に対して水平に移動させ、好ましくは噴霧器内に移動させる。これによって変形性リングはリング面方向に変形する。ロッキングクランプ機構の構成に関する詳細は、WO97/20590に記載されている。
【0017】
バネハウジングの上から下部ハウジング部が軸方向にはめこまれ、ベアリング、スピンドルの駆動装置及び流体用貯蔵容器を収容する。
噴霧器を作動させると、ハウジングの上部は下部に対して相対的に回転し、下部ハウジング部はバネハウジングを一緒に回転させる。その間、バネは斜歯スライディングギアによって圧縮、偏向され、クランプ機構が自動的に嵌合する。回転角は360度分の整数度、例えば180度が好ましい。バネが引張られると同時に、上部ハウジング部における動力取出し部が所定の距離だけ移動し、中空ピストンがポンプハウジング内のシリンダ内部に引き戻され、その結果として、流体の一部が貯蔵容器からノズル前方の高圧チャンバー内に吸い込まれる。
所望であれば、噴霧する流体を収容する複数の交換可能な貯蔵容器を順次噴霧器に挿入して使用することもできる。貯蔵容器には、本発明による水性エアロゾル調剤が収容される。
噴霧工程は、作動ボタンを軽く押すことにより開始される。この結果、クランプ機構により動力取出し部の通路が開けられる。偏向したバネによって、ポンプハウジングのシリンダ内にピストンが押し込まれる。流体が霧状になって噴霧器のノズルから放出される。
構造についての更なる詳細は、PCT出願WO97/12683及びWO97/20590に開示されており、これらを本願明細書に引用する。
噴霧器(ネブライザー)の構成部品は、その機能に合った材料で作られる。噴霧器のハウジング、さらには機能上可能であれば他の部品も同様に、例えば射出成型によって好ましくはプラスチックで作製される。医療用途には、生理学的に許容される材料が用いられる。
【0018】
WO97/12687の図6a/図6bには、本発明による水性エアロゾル製剤の吸入に有利に使用できるネブライザーRespimat(登録商標)が示されている。
図6aは、バネが引張られた状態の噴霧器の長手方向断面図であり、図6bは、バネが緩んだ状態の噴霧器の長手方向断面図である。
上部ハウジング部(51)はポンプハウジング(52)を収容し、その端部には噴霧器ノズル用のホルダ(53)が取付けられている。ホルダにはノズル本体(54)及びフィルタ(55)がある。ロッキングクランプ機構の動力取出しフランジ(56)内に固定された中空ピストン(57)は、ポンプハウジングのシリンダ内にその一部が突き出している。中空ピストンは、その端部においてバルブ本体(58)を担持する。中空ピストンはガスケット(59)によって封止される。上部ハウジング部内には止め(60)があり、バネが緩むと動力取出しフランジが止めの上に載る。動力取出しフランジ上には止め(61)があり、バネが引っ張られると動力取出しフランジがこの止めの上に載る。バネが引っ張られると、ロック部材(62)は、上部ハウジング部内の止め(61)と支持体(63)との間を移動する。作動ボタン(64)は、ロック部材に連結している。上部ハウジング部は、マウスピース(65)で終端しており、取り外しできる保護キャップ(66)によって閉められる。
圧縮バネ(68)を備えたバネハウジング(67)は、カチッとはまる爪(69)及び回転軸受けによって上部ハウジング部に回動自在に取付けられている。下部ハウジング部(70)はバネハウジングの上に押し込まれている。バネハウジング内部には、噴霧する流体(72)用の交換可能な貯蔵容器(71)がある。貯蔵容器はストッパー(73)により封止され、ストッパーを介して中空ピストンは貯蔵容器内に突き出し、その端部が流体中に浸漬する(有効成分溶液の供給)。
【0019】
機械的カウンタ用のスピンドル(74)はバネハウジングの外側に取付けられている。上部ハウジング部に面したスピンドルの端部には、駆動ピニオン(75)が配置される。スライダ(76)はスピンドル上に位置する。
上記ネブライザーは、本発明のエアロゾル製剤を噴霧して吸入に適したエアロゾルを生成するのに好適である。
本発明の製剤を、上記方法(Respimat(登録商標))を用いて噴霧する場合、吸入器の全操作(スプレー動作)の少なくとも97%、好ましくは少なくとも98%の達成で、放出される質量が、許容差25%以下、好ましくは20%以下の範囲で規定量に相当するとよい。好ましくは、5〜30mg、より好ましくは5〜20mgの製剤が、所定量として1回のスプレー動作で放出されることが好ましい。
本発明の製剤は、上記以外の吸入器、例えば、ジェット流吸入器等によって噴霧することもできる。
式1の化合物中のX-が臭化物である本発明の医薬製剤をRespimat(登録商標)を使って噴霧する場合、1回のスプレー動作で(即ち、吸入器の作動1回につき)式1の化合物が4.7〜5.2μg投与されることが好ましい。所望の治療効果に応じて、本発明の液を投与するごとに、吸入器を4回まで、好ましくは3回まで、特に好ましくは1回又は2回作動させることが好ましい。
そこで、本発明は、上記の本発明による医薬製剤の1種と、該医薬製剤の噴霧に適した吸入器とからなる吸入キットに関する。好ましくは、本発明は、上記の本発明による医薬製剤の1種と、前記吸入器Respimat(登録商標)とからなる吸入キットに関する。
以下の製剤の実施例は、一例として示す組成物に本発明の主題を限定することなく、例示を意図するものである。
I.製剤例
特に好適な医薬製剤100ml中、以下の成分が精製水又は注射用水に含まれ、温度15〜31℃での密度は1.00g/cm3である。
【0020】
【表1】

【0021】
可能な実施形態の1つでは、1回分の用量が吸入器の2回の作動(即ち、2回のスプレー操作)で構成される。したがって、上記の特に好適な医薬製剤の場合、合計して約9.4〜10.5μg、好ましくは9.45〜10.4μg、より好ましくは10μgの式1の化合物が1回分の患者への用量として投与される。製剤溶液を4.5mlカートリッジのRespimatで使用することが好ましい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式1で表される化合物:
【化1】

(式中、X-はアニオンを示す)と、
少なくとも1種の医薬的に許容される有機酸とを含み、さらに医薬的に許容される他の賦形剤及び/又は錯化剤を含んでもよい、吸入用水性医薬製剤であって、
下記式1’で表されるカチオン:
【化2】

が医薬製剤100mlに対して32〜54mgの濃度で前記製剤中に存在することを特徴とする、水性医薬製剤。
【請求項2】
前記アニオンX-が塩化物、臭化物、ヨウ化物、スルフェート、ホスフェート、メタンスルホネート、ニトレート、マレエート、アセテート、シトレート、フマレート、タルトレート、オキサレート、スクシネート、ベンゾエート及びp−トルエンスルホネートから選択される、請求項1記載の水性医薬製剤。
【請求項3】
前記アニオンX-が塩化物、臭化物、4−トルエンスルホネート及びメタンスルホネートから選択される式1の化合物を少なくとも1種含む、請求項2記載の水性医薬製剤。
【請求項4】
前記アニオンX-が臭化物を示す式1の化合物を少なくとも1種含む、請求項3記載の水性医薬製剤。
【請求項5】
前記アニオンX-が臭化物を示す前記式1の化合物が、医薬製剤100mlに対して45〜60mg濃度で前記製剤中に存在することを特徴とする、請求項4記載の水性医薬製剤。
【請求項6】
前記アニオンX-が臭化物を示す前記式1の化合物が、医薬製剤100mlに対して50〜55mg濃度で前記製剤中に存在することを特徴とする、請求項4記載の水性医薬製剤。
【請求項7】
前記医薬的に許容される有機酸が、アスコルビン酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、マレイン酸、コハク酸、フマル酸、酢酸、ギ酸及びプロピオン酸から選択される、請求項1〜6のいずれか1項記載の水性医薬製剤。
【請求項8】
前記医薬的に許容される有機酸がクエン酸又はアスコルビン酸である、請求項7記載の水性医薬製剤。
【請求項9】
前記医薬的に許容される有機酸としてクエン酸を医薬製剤100mlに対して2〜5mgの濃度で使用することを特徴とする、請求項8記載の水性医薬製剤。
【請求項10】
前記医薬製剤のpH値が3.0〜5.0であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項記載の水性医薬製剤。
【請求項11】
前記医薬製剤のpH値が3.6〜4.4であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項記載の水性医薬製剤。
【請求項12】
前記医薬製剤が賦形剤として塩化ベンザルコニウムを含むことを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項記載の水性医薬製剤。
【請求項13】
前記塩化ベンザルコニウムの量が製剤100mlにつき7〜15mgであることを特徴とする、請求項12記載の水性医薬製剤。
【請求項14】
前記水性医薬製剤が更に錯化剤を含む、請求項1〜13のいずれか1項記載の水性医薬製剤。
【請求項15】
前記錯化剤として、エデト酸(EDTA)又はその塩もしくは水和物の1種が用いられる、請求項14記載の水性医薬製剤。
【請求項16】
前記錯化剤として、エデト酸二ナトリウム又はその水和物の1種が、製剤100mlにつき7〜15mgの濃度で用いられる、請求項15記載の水性医薬製剤。
【請求項17】
呼吸器系疾患の治療用医薬組成物を製造するための、請求項1〜16のいずれか1項記載の水性医薬製剤の使用。
【請求項18】
アニオンX-が臭化物を示す式1の化合物9.4〜10.5μgが投与される、請求項17記載の使用。

【公表番号】特表2010−509186(P2010−509186A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−541693(P2008−541693)
【出願日】平成18年11月13日(2006.11.13)
【国際出願番号】PCT/EP2006/068399
【国際公開番号】WO2007/060108
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(503385923)ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (976)
【Fターム(参考)】