説明

抗プロゲスチンの投薬処方計画

本発明は、エストロゲン依存性症状を治療するために使用するためのプロゲステロン受容体アンタゴニストを含む組成物を投与する方法に関する。本発明は、また、子宮内膜症と関連する疼痛を治療するための方法に向けられる。組成物は、子宮内膜症を有する女性、並びにエストロゲンおよび/または選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)療法を受けている女性に投与し得る。一定の態様では、本発明は、子宮内膜の増殖を抑制するための方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2008年4月28日に出願された米国仮出願No.61/048472の利益を主張し、その内容は参照により本明細書に援用される。
発明の技術分野
本発明は、エストロゲン依存性症状を治療するための組成物および方法に関する。より具体的には、本発明は、子宮内膜の増殖を抑制するための1つまたは複数のプロゲステロンアンタゴニストを含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
エストロゲンは、子宮および乳房の発達、骨密度の維持および脂質プロフィールに対するポジティブな作用による心血管の保護を含む種々の生理的プロセスに必須な一群のホルモンである。エストロゲンの作用は、核のエストロゲン受容体との結合により媒介される。古典的なモデルによると、核の非占有エストロゲン受容体は、エストロゲンを結合することにより、エストロゲン応答性遺伝子のプロモーター内のDNA配列と相互作用する能力を得る。DNA結合エストロゲン受容体は、正または負に、これらの遺伝子の転写を調節する。
【0003】
エストロゲンは、乳房および子宮組織の過剰増殖作用を有することが知られている。たとえば、閉経期の女性への、対立しないエストロゲンの投与は、子宮内膜増殖症および子宮内膜癌の両方をもたらすことが証明されている。対照的に、プロゲステロンは、エストロゲン依存的な子宮内膜の増殖および癌発症に強力に対抗する。したがって、対立しないエストロゲンの作用を妨げるために、プロゲスチンは、一般的にホルモン置換療法(HRT)の一部として処方される。しかし、Women’s Health Initiativeによる大規模臨床試験は、近年、抱合型エストロゲンと酢酸メドロキシプロゲステロンの組み合わせが、心臓血管疾患、脳卒中、肺塞栓症および乳癌を発症する危険性を増大させることを特定した。加えて、外科的に閉経期を作製したマカクザルにおける実験データは、エストロゲンとプロゲステロンの併用投与法が、エストロゲン単独に比べて高レベルの乳房増殖および過形成をもたらしたことを示している。また、プロゲスチンの同時投与は、破綻出血と関連しており、さらにエストロゲンの過剰増殖作用を無効にするための薬剤としてのその適合性を限定する。
【0004】
エストロゲン受容体のエストロゲン依存的な活性化に影響を及ぼす多くの化合物が、当技術分野において知られている。種々の因子に応じて、これらの化合物は、これらがエストロゲンとよく似ている点で完全エストロゲン様であり得るし、これらがエストロゲン作用を阻害する点で、抗エストロゲン様であり得るし、またはこれらは中間のどこかに収まり得る。混合エストロゲン性および抗エストロゲン性を示す化合物は、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)と称される。SERMは、組織特異的にこれらのエストロゲン性または抗エストロゲン性作用を発揮する。この組織特異性の根本のメカニズムは明らかでないが、とりわけ、その相対的発現レベルが組織型とエストロゲン受容体アイソフォームαおよびβの組織特異的発現との間で変わるコリプレッサーおよびコアクチベーターの動員を含み得る。エストロゲン受容体αがアクチベーターであるのに対し、受容体βは、エストロゲン受容体αとヘテロ二量体を形成することによりエストロゲン受容体α活性を抑制し得る。
【0005】
SERMの二重活性は、いくつかの潜在的利点を女性に提供する。SERMのエストロゲン特性は、エストロゲンの望ましくない作用のいくつかを最小化しながら、骨空洞形成などのエストロゲン欠乏によって生じる疾患の治療または抑制に使用され得る。逆に、SERMの抗エストロゲン特性は、エストロゲン活性が望ましくない乳癌などの疾患を予防するか、または治療するために使用され得る。それにもかかわらず、子宮内膜増殖症はSERM療法と関連しており、したがって、その有用性を限定している。
【0006】
たとえば、SERMタモキシフェンは、乳癌において抗エストロゲン性であることが示されており、そこでそれがエストロゲンの増殖性作用を遮断して、結果としてある種の乳癌の治療に好ましいことが見出された。その一方、タモキシフェンは骨および子宮に対してエストロゲン作用を示し、子宮内膜増殖症および子宮内膜癌の発症率の増加に関連し、抗エストロゲンとしてのその有用性を限定している。
【0007】
霊長類における予備研究は、抗プロゲスチンが子宮内膜に対して抗増殖作用を有することを示すように思えた。しかし、抗プロゲスチンによる長期治療が対立しないエストロゲンの作用による子宮内膜増殖症を生じ得るという懸念が存在する。いくつかの研究は、抗プロゲスチンの長期投与を受けている女性において、子宮内膜の成長が増大し、それが時間とともに悪化することを示している。その上、成人女性におけるいくつかの最近の研究は、抗プロゲスチンで処置された女性の子宮内膜における組織異常を明らかにし、とりわけ、破綻出血の危険性を増加させるように見える。これらの所見は、抗プロゲスチンの慢性使用を抑制した。
【0008】
エストロゲンの増殖性作用に対抗する一方、身体に対するエストロゲンの有益な作用を維持しながら、慢性投与の副作用を減少または除外する抗プロゲスチンの長期投与に適した治療計画の必要性が残る。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、プロゲステロン受容体アンタゴニストを含む組成物を投与する方法に関する。プロゲステロンアンタゴニストは、純粋の抗プロゲスチンまたは選択的プロゲステロン受容体モジュレーター(SPRM)であり得る。好ましい態様では、プロゲステロンアンタゴニストは、糖質コルチコイド受容体に対する低親和性を有する。別の好ましい態様では、女性へのプロゲステロンアンタゴニストの投与は、女性のエストロゲンレベルを実質的に低下させない。最も好ましくは、プロゲステロンアンタゴニストは、CDB-4124である。
【0010】
本発明に従えば、組成物は、女性の月経周期のある時点で開始して女性に投与され、女性はその周期終了後に月経を生ずることができる。したがって、組成物は、月経周期の14日目またはその後にある女性に投与されることが好ましい。たとえば、組成物は、女性の月経周期の14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24もしくは25日目またはその後から投与してもよい。
【0011】
一つの態様では、組成物の投与は、女性が治療中にさらなる月経を生じないものである。したがって、この態様に従えば、組成物の投与は、その周期の終わりに女性に月経を起こすことができる女性の月経周期のある時点で開始するが、女性は治療中にはさらなる月経を生じない。
【0012】
別の態様では、組成物の投与は、治療経過中の周期的な月経を可能にする。たとえば、患者が治療経過中に周期的に月経を起こすように、組成物は断続的に投与され得る。このアプローチは、プロゲステロンアンタゴニストの長期処置に伴う停滞した子宮内膜と関連する有害作用を潜在的に回避すると予想される。
【0013】
組成物は、女性のエストロゲン依存性症状を予防するために女性に投与され得る。組成物で治療してもよいエストロゲン依存性症状は、限定されないが、子宮内膜の増殖または子宮内膜増殖症を含む。
【0014】
また、組成物は、女性の生殖器官の疾患および生殖ホルモン変動に関連する疾患に関連する疼痛の予防、並びに/または寛解のために女性に投与され得る。たとえば、組成物は、性交疼痛、月経困難症、月経周期と関連する片頭痛、月経前症候群もしくは不正子宮出血と関連する疼痛、子宮筋腫および/または子宮内膜症を予防および/または寛解させるために女性に投与され得る。好ましい態様では、組成物は、子宮内膜症と関連する疼痛を治療するために、子宮内膜症を有する女性に投与される。一つの側面において、プロゲステロンアンタゴニストは、子宮内膜症と関連する疼痛を治療するために、慢性的に投与される。
【0015】
また、組成物は、エストロゲンおよび/またはSERM療法を受けている女性に投与され得る。一つの側面において、本発明は、子宮内膜増殖症の発症および/またはエストロゲンおよびSERM療法における子宮内膜癌を予防する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】ラットにおける血清コルチゾールに対する選択的プロゲステロン受容体モジュレーターの作用を示するグラフである。
【図2】ラットにおける血清コルチゾールに対するCDB-4124の用量依存的な作用を示すグラフである。
【図3】女性の月経周期の時系(タイムライン)である。子宮内膜の血管新生および腺化(glandularization)が月経周期の約5日目に始まり、14日目にて劇的に増大し、その後プロゲステロンの影響を受けることが描かれる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明の詳細な説明
用語「有効用量」は、所望の作用を達成するために十分な組成物の活性成分の量を意味し、これは、たとえば、子宮内膜増殖の抑制または子宮内膜症と関連する疼痛の治療であり得る。
【0018】
用語「エストロゲン依存性症状」は、限定されないが、子宮内膜の増殖、破綻出血、出血(スポッティング)および子宮内膜癌のようなエストロゲンと関連する任意の状態を含む。
【0019】
用語「選択的プロゲステロン受容体モジュレーター」は、組織特異的な方法でプロゲステロン受容体の機能に影響を及ぼす化合物を意味する。化合物は、いくつかの組織(たとえば、子宮)においてはプロゲステロン受容体アゴニストとして作用し、その他の組織においてはプロゲステロン受容体アンタゴニストとして作用する。
【0020】
用語「治療する」または「治療」は、その目的が望ましくない生理学的変化もしくは疾患を予防または鈍化(減少)させるものである、治療的療法および予防法または予防的手段の両方をいう。本発明の目的において、有益なまたは望ましい臨床結果は、これらに限定されないが、検出可能か不可能であるかによらず、症候の緩和、疾患の程度の減少、安定した(すなわち、悪化しない)病状および寛解(部分的または完全のいずれにせよ)を含む。また、「治療」は、治療を受けない場合の予測生存者と比較して、生存を延長することも意味する。治療を要するものは、すでにその症状もしくは障害を有するもの、並びにその症状もしくは障害を有しやすいもの、またはその症状もしくは障害が防止されるべきものを含む。
【0021】
用語「プロゲステロンアゴニスト」は、プロゲステロン受容体に結合し、天然のホルモンの作用を模倣する化合物を意味する。
【0022】
用語「プロゲステロンアンタゴニスト」は、プロゲステロン受容体に結合し、プロゲステロンの作用を阻害する化合物を意味する。
【0023】
子宮内膜組織の増殖に関して本明細書に使用される用語「抑制する」または「抑制する(単数)」または「抑制すること」は、子宮内膜組織の分裂増殖が、同一状況下の無処置の子宮内膜組織と比較してプロゲステロンアンタゴニストの投与で抑制されることを意味し、たとえばアポトーシスを介するような細胞死と区別されるべきである。子宮内膜の分裂増殖の抑制におけるプロゲステロンアンタゴニストの活性は、たとえば子宮の細胞株において、プロゲステロンアンタゴニストで処理した細胞におけるブロモデオキシウリジン(BrdU)の取込みを対照(未処置の)細胞と比較することによって、試験され得る。
【0024】
女性のホルモンレベルに関して本明細書で使用される用語「実質的に減少されない」は、ホルモンレベルが、本発明の組成物の投与の間、正常範囲内に維持されることを意味する。したがって、ホルモンレベルが正常範囲内で維持される限り、ホルモンレベルの多少の減少が生じ得ると考えられる。
【0025】
女性のホルモンレベルに関して本明細書に使用される「実質的に増大されない」は、ホルモンレベルが、本発明の組成物の投与の間、正常範囲内で維持されることを意味する。したがって、ホルモンレベルが正常範囲内で維持される限り、ホルモンレベルの多少の上昇が生じ得ると考えられる。
【0026】
女性の子宮内膜平均に関して本明細書に使用される「実質的に肥厚しない」は、超音波で測定された時に、投与期間中女性の子宮内膜が厚さ19mmを上回らないことを意味する。したがって、女性の子宮内膜が厚さ19mmを上回らない限り、多少の肥厚が投与期間中に生じ得ると考えられる。好ましくは、投与期間中、女性の子宮内膜は、厚さ15mm未満、より好ましくは、厚さ10mm未満であり、最も好ましくは厚さ7mm未満である。女性の子宮内膜は、測定基準値に対して100%未満、より好ましくは測定基準値に対して50%未満、最も好ましくは測定基準値に対して25%未満まで肥厚し得る。
【0027】
本発明は、好ましくは子宮内膜の増殖を抑制するのに有効な用量にて、プロゲステロンアンタゴニストを含む組成物を投与する方法に関する。後述するように、CDB-4124の6ヵ月の治療計画の場合、より高濃度が投与されたときに、増殖はより大きく抑制された。
【0028】
女性の月経周期の5日目に始まる期間に投与されるとき、プロゲステロンアンタゴニストCDB-4124が子宮内膜厚に対する逆の用量依存性を示すことが分かっている。言い換えると、CDB-4124の比較的低濃度の投与は、治療の間、子宮内膜の実質的肥厚を生じる。この作用は、より高濃度のCDB-4124が投与されるときに減弱する。この方法は、子宮内膜の腺の嚢胞性拡張の発生が、CDB-4124による治療の間に生じる子宮内膜の肥厚の主因であるという予想外の発見に起因する。
【0029】
治療が、月経がその周期の終わりで生じない女性の月経周期の時点(月経周期の5日目など)で開始される場合、残留(ブロックされていない)プロゲステロンの下で血管新生と子宮内膜の腺の活性が生じ、CDB-4124濃度が残留プロゲステロンの遮断に十分なほど蓄積するまで、嚢胞状腺管を膨張させて、子宮内膜を肥厚および硬化させる。肥厚した子宮内膜はもろく、治療中に破綻および出血しやすい傾向がある。実施例11にて更に詳細に論じるように、女性の早期の月経周期において添加される場合、比較的低濃度のプロゲステロンアンタゴニストCDB-4124は、治療中のこのような子宮内膜の肥厚を生じて、出血に至る可能性がある。
【0030】
本発明によれば、プロゲステロンアンタゴニストの投与は、女性の月経周期の黄体期の間に開始され、周期の終わりに月経を起こす。結果的に、より低濃度のプロゲステロンアンタゴニストが、卵胞期の間に投与が開始された場合に生ずる子宮内膜の肥厚を伴わずに用いられ得る。これは、任意の初期に形成される嚢胞状腺管が、余剰のプロゲステロンを阻害するのに十分な程度にプロゲステロンアンタゴニストの濃度が蓄積した時点で、月経の間に脱落するため、可能となる。形態異常は、女性の月経周期の卵抱期の間に始まる時期に投与される場合にいくつかのこれらの化合物にみられるので、同様の利点が、全ての抗プロゲスチン剤においても予測される。
【0031】
したがって、一つの側面において、本発明は、プロゲステロンアンタゴニストの有効量を含む組成物を女性の月経周期の黄体期の間に始まる時期に女性に投与することを含む、エストロゲン依存性症状を治療するための方法を提供する。女性の月経周期の黄体期は、月経周期の14日目ごろに始まる。したがって、プロゲステロンアンタゴニストの投与は、月経周期の少なくとも14日目に開始する。これは、投与時期を女性の月経周期の卵胞期の間に開始する場合に生ずる子宮内膜の肥厚を伴わずに、比較的低濃度のプロゲステロンアンタゴニストを使用できる利点を提供する。
【0032】
本発明の方法は、最少1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31日またはそれ以上の投与期間にわたってプロゲステロンアンタゴニストの有効量を含む組成物を投与することを含み得る。組成物はまた、最少1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12またはより多くの月の投与期間にわたって投与して得る。組成物はまた、最小1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはより多くの年の投与期間にわたって投与し得る。投与期間の間に、組成物は、毎日または一日おき、一か月おき等、周期的に投与し得る。組成物はまた、断続的に投与し得る。たとえば、組成物は、1、2、3、4、5月またはそれ以上の期間にわたって投与され、続いてしばらく中断し、また続いて同様に1、2、3、4、5月またはそれ以上の期間にわたって投与し得る。すべての場合において、投与期間は、女性の月経周期の黄体期の間に開始する。
【0033】
「間欠投与」とは、その後にしばらくの中断期間、またその後に別の投与期間が続く、プロゲステロンアンタゴニストの治療的有効用量の投与期間を意味する。
【0034】
「中断の期間」または「中断期間」は、毎日、毎週、毎月またはそれらの間のプロゲステロンの投与の中断を意味する。中断の期間は、投与期間より長くても短くてもよいが、投与期間の間の投薬間隔より常に長い。たとえば、投与期間が、毎日の、毎週の、または毎月の投薬からなる場合、中断期間は、それぞれ少なくとも2日、少なくとも8日または少なくとも32日である。したがって、中断期間は、少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32またはより多くの日であり得る。
【0035】
一つの態様では、患者が少なくとも1回中断期間の間に月経を生ずるように、組成物は断続的に投与される。このアプローチは、停滞した子宮内膜と関連する有害作用を回避すると予想される。少なくとも1つの、および好ましくはすべての中断期間は、患者が月経を経験するために十分な長さである。より好ましくは、患者は、中断期間ごとの間に月経を経験する。特に好ましい態様では、組成物は4ヶ月の投与期間の間毎日投与され、間に患者が月経を経験する中断期間が続き、後に4ヶ月の別の投与期間等が続く。すべての場合において、投与期間は、女性の月経周期の黄体期の間に開始する。
【0036】
任意に、子宮内膜の脱落または回復を早めるために、中断期間の間にゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アゴニストまたはアンタゴニストを投与し得る。GnRHアゴニストの非限定的な例は、ナファレリン、ブセレリン、リュープロレリン、トリプトレリン、ゴセレリン、[DLys6]GnRH、[DAla6]GnRH等を含む。GnRHアンタゴニストの非限定的な例は、ヒストレリン、アベラリクスおよび米国特許第4,409,208号、4,547,370号、4,565,804号、4,569,927号および4,619,914号に見出だされるものを含み、これらの全体が参照によって本明細書中に組み込まれる。
【0037】
任意に、プロゲスチンは、患者における正常な月経を得るために、中断期間の間に投与し得る。プロゲスチンの投与は、好ましくは、月経の間のプロゲステロンレベルの自然な増減を模倣するプロゲステロンプロフィールを生じる。このような治療計画は、当該技術分野において周知である。中断期間の間のプロゲスチンの投与は、プロゲステロンアンタゴニストの投与によって受けられる作用に加えてエストロゲンの作用と反対するものもまた提供し得るし、したがって子宮内膜の肥厚などのエストロゲン依存性症状を治療するのを補助し得る。プロゲスチンの非限定的な例は、メドロゲストン、メドロキシプロゲステロン、メゲストロール、ノルエチンドロン、プロゲステロン、ヒドロキシプロゲステロン、アセトキシプレグネノロン、アリルエストレノール、シプロテロン、デソゲストレル、ジメチステロン、エチステロン、二酢酸エチノジオール、ゲスタデン、リネストレノール等を含む。
【0038】
一つの態様では、子宮内膜症を有する女性患者は、女性の月経周期の黄体期の間に始まる期間の間の子宮内膜の増殖を抑制するために有効な量のプロゲステロンアンタゴニストを含む組成物を投与される。
【0039】
関連する態様では、プロゲステロンアンタゴニストを含む組成物は、生殖器官の障害および/または女性の月経周期の黄体期の間に始まる期間の間の生殖ホルモン変動と関連する疼痛の治療に有効な量で女性に投与される。たとえば、プロゲステロンアンタゴニストの投与は、子宮内膜の病変に関連する疼痛、不正子宮出血および子宮筋腫を減少させ得る。疼痛は、子宮内膜症で最も高頻度にみられる、消耗性の症候であり、医学的および外科的処置の両方の第一適応である。疼痛は、月経困難症、骨盤の疼痛、背痛、腹痛、乳房疼痛、性交疼痛等として呈される。プロゲステロンアンタゴニストの投与は、子宮内膜の病変または子宮筋腫の大きさをまた減少させ得る。子宮内膜症の治療のための現在の処方計画は、卵巣エストロゲン分泌を阻害することによって仮性閉経期の状態を誘導するGnRHアゴニストを含み、したがって、骨密度の減少、全身性カルシウムの減少およびその他の骨粗鬆症様の副作用のために長期間の投与は有用でない。本発明の組成物は、エストロゲンレベルの実質的減少を伴わず長期に投与し得る。
【0040】
疼痛治療におけるプロゲステロンアンタゴニストの使用は、好ましい抗プロゲスチン、CDB-4124がオピエートμ受容体(MOP)に対すて親和性を有し、かつ阻害することができるという予想外の発見に部分的に起因する。オピエート受容体は、神経細胞またはニューロンの表面上に存在し、内因性オピオイドリガンドを結合して疼痛の軽減を導く。オピエートμ受容体はまた、性腺刺激ホルモン放出の制御のような、女性の生殖神経内分泌学のいくつかの側面に関与しているように思われる。オピエートμ受容体に結合して、かつ阻害するCDB-4124の能力は、そのクラスのその他の抗プロゲスチン(すなわち下記の一般式を有するもの)に拡張されると予想される。
【0041】
別の態様では、本発明は、子宮内膜の増殖を抑制するのに有効な量のプロゲステロンアンタゴニストの量を同時投与することによって、エストロゲンまたはSERMのようなエストロゲン性化合物を使用する最新のホルモン療法と関連するエストロゲン依存性症状を治療する方法を提供し、プロゲステロンアンタゴニストは女性の月経周期の黄体期の間に始まる時期に投与される。最新のエストロゲン/SERMホルモン療法と関連するエストロゲン依存性症状は、限定されないが、子宮内膜増殖症および子宮内膜癌を含む。その際、プロゲステロンアンタゴニストは、複合ホルモン療法処方計画の一部として、エストロゲンまたはSERMSの投与の前、間または後に投与することができる。
【0042】
本発明のそれぞれの方法の好ましい態様では、女性に対するプロゲステロンアンタゴニストの投与は、女性のエストロゲンレベルを実質的に減少させない。したがって、本発明は、Lupron(登録商標)(酢酸ロイプロリド)のような生殖腺刺激ホルモン(GnRH)アゴニストをしばしば使用する子宮内膜症の治療に対する現在の治療法に勝る利点を提供する。
【0043】
本発明の各方法のさらに別の好ましい態様では、プロゲステロンアンタゴニストは、糖質コルチコイド受容体に対する減少した親和性を示す。より好ましくは、プロゲステロン受容体に対するプロゲステロンアンタゴニストの結合親和性は、糖質コルチコイド受容体に対するプロゲステロンアンタゴニストの結合親和性より少なくとも1.5倍高い。
【0044】
上記の化合物の特徴を有する任意の公知のプロゲステロンアンタゴニストは、本発明を実践する技術者によって使用され得る。特に有用な化合物は、その全体を参照することによって本明細書に組み入れられる、米国特許第6,861,415号に開示されたもの、並びにその全体を参照することによって本明細書に組み入れられる、米国特許第6,900,193号に開示されたもの、すなわち以下の一般式を有する21-置換19-ノルプレグナンを含む:
【0045】
【化1】

【0046】
式中:
Xは、たとえば、アルキル、アルケニル、アルキニル、水素、ハロ、モノアルキルアミノまたはN,N-ジメチルアミノなどのジアルキルアミノであってもよく;
R1は、たとえば、O、NOHまたはNO-メチルであってもよく;
R2は、たとえば、水素またはアセチルであってもよく;および
R3は、たとえば、メンチルオキシ、ホルミルオキシ、アセトキシ、アシロキシ、S-アルコキシ、アセチルテオニル、グリシメート、ビニルエーテル、アセチルオキシメチル、炭酸メチル、ハロゲン、メチル、ヒドロキシおよびエチルオキシであってもよい。
21-置換19-ノルブレグナンの例は、これらに限定されないが、下記に開示される24の化合物を含む。
1. 以下の構造式を有するCDB-4247(21-プロピオ[[l]]ニルオキシ-17α-アセトキシ-11β-(4N(N-ジメチルアミノフェニル))-19-ノルプレグナ-4,9-ジエン-3,20-ジオン):
【0047】
【化2】

【0048】
2. 以下の構造式を有するCDB-4361(21-ビニルエーテル-17α-アセトキシ-11β-(4 N(N-ジメチルアミノフェニル))-19、-ノルプレグナ-4,9-ジエン-3,20-ジオン):
【0049】
【化3】

【0050】
3. 以下の構造式を有するCDB-4059(21-アセトキシ-17α-アセトキシ-11β-(4N(N-ジメチルアミノフェニル))-19-ノルプレグナ-4,9-ジエン-3,20-ジオン):
【0051】
【化4】

【0052】
4. 以下の構造式を有するCDB-4124(21-メトキシ-17α-アセトキシ-11β-(4N(N-ジメチルアミノフェニル))-19-ノルプレグナ-4,9-ジエン-3,20-ジオン):
【0053】
【化5】

【0054】
5. 以下の構造式を有するCDB-4031(21-ブロミン-17α-アセトキシ-11β-(4N(N-ジメチルアミノフェニル))-19-ノルプレグナ-4,9-ジエン-3,20-ジオン):
【0055】
【化6】

【0056】
6. 以下の構造式を有するCDB-3876(21-クロリン-17α-アセトキシ-11β-(4N(N-ジメチルアミノフェニル))-19-ノルプレグナ-4,9-ジエン-3,20-ジオン):
【0057】
【化7】

【0058】
7. 以下の構造式を有するCDB-4058(21-フロウリン-17α-アセトキシ-11β-(4N(N-ジメチルアミノフェニル))-19-ノルプレグナ-4,9-ジエン-3,20-ジオン):
【0059】
【化8】

【0060】
8. 以下の構造式を有するCDB-4030(21-メチル-17α-アセトキシ-11β-(4N(N-ジメチルアミノフェニル))-19-ノルプレグナ-4,9-ジエン-3,20-ジオン):
【0061】
【化9】

【0062】
9. 以下の構造式を有するCDB-4152(21-ヒドロキシ-17α-アセトキシ-11β-(4N(N-ジメチルアミノフェニル))-19-ノルプレグナ-4,9-ジエン-3,20-ジオン):
【0063】
【化10】

【0064】
10. 以下の構造式を有するCDB-4167(21-エチルオキシ-17α-アセトキシ-11β-(4N(N-ジメチルアミノフェニル))-19-ノルプレグナ-4,9-ジエン-3,20-ジオン):
【0065】
【化11】

【0066】
11. 以下の構造式を有するCDB-4101(21-メトキシチオ-17α-アセトキシ-11β-(4N(N-ジメチルアミノフェニル))-19-ノルプレグナ-4,9-ジエン-3,20-ジオン):
【0067】
【化12】

【0068】
12. 以下の構造式を有するCDB-4110(21-アセトニド-17α-アセトキシ-11β-(4N(N-ジメチルアミノフェニル))-19-ノルプレグナ-4,9-ジエン-3,20-ジオン):
【0069】
【化13】

【0070】
13. 以下の構造式を有するCDB-4111(21-BMD-17α-アセトキシ-11β-(4N(N-ジメチルアミノフェニル))-19-ノルプレグナ-4,9-ジエン-3,20-ジオン):
【0071】
【化14】

【0072】
14. 以下の構造式を有するCDB-4125(21-(Cyp*-ヒドロキシ)-17α-アセトキシ-11β-(4N(N-ジメチルアミノフェニル))-19-ノルプレグナ-4,9-ジエン-3,20-ジオン):
【0073】
【化15】

【0074】
15. 以下の構造式を有するCDB-4205(3-ヒドロキシアミノ-21-メトキシ-17α-アセトキシ-11β-(4N(N-ジメチルアミノフェニル))-19-ノルプレグナ-4,9-ジエン-3,20-ジオン):
【0075】
【化16】

【0076】
16. 以下の構造式を有するCDB-4206(3-ヒドロキシアミノ-21-アセトキシ-17α-アセトキシ-11β-(4N(N-ジメチルアミノフェニル))-19-ノルプレグナ-4,9-ジエン-3,20-ジオン):
【0077】
【化17】

【0078】
17. 以下の構造式を有するCDB-4226(3-ヒドロキシアミノ-21-エチルオキシ-17α-アセトキシ-11β-(4N(N-ジメチルアミノフェニル))-19-ノルプレグナ-4,9-ジエン-3,20-ジオン):
【0079】
【化18】

【0080】
18. 以下の構造式を有するCDB-4262(3-メトキシアミノ-21-エチルオキシ-17α-アセトキシ-11β-(4N(N-ジメチルアミノフェニル))-19-ノルプレグナ-4,9-ジエン-3,20-ジオン):
【0081】
【化19】

【0082】
19. 以下の構造式を有するCDB-4223(21-メチルチオ-17α-アセトキシ-11β-(4N(N-ジメチルアミノフェニル))-19-ノルプレグナ-4,9-ジエン-3,20-ジオン):
【0083】
【化20】

【0084】
20. 以下の構造式を有するCDB-4119(4-ベンゾイン-21-アセチルチオ-17α-アセトキシ-11β-(4N(N-ジメチルアミノフェニル))-19-ノルプレグナ-4,9-ジエン-3,20-ジオン):
【0085】
【化21】

【0086】
21. 以下の構造式を有するCDB-4239(4-ベンゾイン-21-メトキシ-17α-アセトキシ-11β-(4N(N-ジメチルアミノフェニル))-19-ノルプレグナ-4,9-ジエン-3,20-ジオン):
【0087】
【化22】

【0088】
22. 以下の構造式を有するCDB-4306(21-グリシネート-17α-アセトキシ-11β-(4N(N-ジメチルアミノフェニル))-19-ノルプレグナ-4,9-ジエン-3,20-ジオン):
【0089】
【化23】

【0090】
23. 以下の構造式を有するCDB-4352(21-シアノチオ-17α-アセトキシ-11β-(4N(N-ジメチルアミノフェニル)-19ノルプレグナ-4,9-ジエン-3,20-ジオン)):
【0091】
【化24】

【0092】
24. 以下の構造式を有するCDB-4362(21-メトキシアセチル-17α-アセトキシ-11β-(4N(N-ジメチルアミノフェニル))-19-ノルプレグナ-4,9-ジエン-3,20-ジオン):
【0093】
【化25】

【0094】
また、上に開示した24個の化合物の11β-モノ脱メチル誘導体(すなわちXがN-メチルアミノであるもの)も特に本発明の実施において有用である。この点に関しては、CDB-4124のモノ脱メチル化された誘導体である、CDB-4453(21-メトキシ-17α-アセトキシ-11β-(4-N-メチルアミノフェニル)-19-ノルプレグナ-4,9-ジエン-3,20-ジオン)は、その親(化合物)よりさらに低い抗糖質コルチコイド活性を有することが示された。Attardiら、2002、Mol. Cell. Endocrin. 188:111-123は、その内容が参照により本明細書に援用される。
【0095】
上記の一般式の化合物およびこれらのモノ脱メチル化された誘導体が好ましいものであるが、任意のプロゲステロンアンタゴニストをプロゲステロン受容体に対するそのアンタゴニスト作用のために本発明の実施に際して使用し得る。好ましくは、プロゲステロンアンタゴニストは、以下の特徴:低抗糖質コルチコイド活性、最小のエストロゲンおよび抗エストロゲン活性の1つまたは複数を有し、プロゲステロンレベルを実質的に上昇させない。
【0096】
本発明において有用な抗プロゲスチンは、限定されないが、アソプリスニル(ベンズアルデヒド、4-[(11β,17β)-17-メトキシ-17-(メトキシメチル)-3-オキソエストラ-4,9-ジエン-11-イル]-1-(E)-オキシム;J867)、その代謝産物であるJ912(4-[17β-ヒドロキシ-17α-(メトキシメチル)-3-オキソエストラ-4,9-ジエン-11β-イル]ベンズアルデヒド-(1E)-オキシム)およびDE 43 32 283およびDE 43 32 284に記述されたその他の化合物;CDB-2914(17α-アセトキシ-11β-(4-N,N-ジメチルアミノフェニル)-19-ノルプレグナ-4,9-ジエン-3,20-ジオン)、並びにStratton ら、2000、Hu. Reprod. 15:1092-1099において記述されたその他の化合物;JNJ-1250132およびAllanら、2006、Steroids 71:949-954において記述されたその他の化合物;Zhiら、1998、J. Med. Chem. 41:291-302において記述された5-アリール-1,2-ジヒドロクロメノ[3,4-f]キノリン;Zhangらに対する米国特許第6,509,334号、6,566,358号および6,713,478号において記述された1,4-ジヒドロ-ベンゾ[d][1,3]オキサジン-2-オン;Fensomeらに対する米国特許番号6,391,907において記述された 1,3-ジヒドロ-インドール-2-オン;Ulrichらに対する米国特許第6,417,214号において記述された2,3-ジヒドロ-1H-インドール;ベンゾイミダゾロンおよびZhangらに対する米国特許第6,380,235号において記述されたその類似体;Collinsらに対する米国特許第6,339,098号において記述された2,1-ベンゾイソチアゾリン2,2-ジオキシド;Santilliらに対する米国特許第6,306,851号および第6,441,019号において記述されたシクロカルバメートおよびシクロ-アミド;Zhangらに対する米国特許第6,369,056号において記述された環状尿素および環状アミド誘導体;並びにZhangらに対する米国特許第6,358,948号において記述されたキナゾリノンおよびベンゾオキサジン誘導体を含む。
【0097】
本発明において有用なその他の抗プロゲスチンは、限定されないが、米国特許第4,871,724号において記述された(6α,11β,17β)-11-(4-ジメチルアミノフェニル)-6-メチル-4',5'-ジヒドロスピロ[エストラ-4,9-ジエン-17,2'(3'H)-フラン]-3-オン(ORG-31710)およびその他の化合物;(11β,17α)-11-(4-アセチルフェニル)-17,23-エポキシ-19,24-ジノルコラ-4,9,20-トリエン-3-オン(ORG-33628);米国特許第4,921,845号において記述された(7β,11β,17β)-11-(4-ジメチルアミノフェニル-7-メチル]-4',5'-ジヒドロスピロ[エストラ-4,9-ジエン-17,2'(3'H)-フラン]-3-オン(ORG-31806)およびその他の化合物;Michnaら、1992、J. Steroid Biochem. Molec Biol. 41:339-348において記述されたZK-112993およびその他の化合物;ORG-31376;ORG-33245;ORG-31167;ORG-31343;RU-2992;RU-1479;RU-25056;RU-49295;RU-46556;RU-26819;LG1127;LG120753;LG120830;LG1447;LG121046;CGP-19984A;RTI-3021-012;RTI-3021-022;RTI-3021-020;RWJ-25333;ZK-136796;ZK-114043;ZK-230211;ZK-136798;ZK-98229;ZK-98734;およびZK-137316を含む。
【0098】
本発明において有用なさらに他の抗プロゲスチンは、限定されないが、米国特許第4,386,085号、第4,447,424号、第4,519,946号および第4,634,695号において記述されたミフェプリストン(11β-[パラ-(ジメチルアミノ)フェニル]-17β-ヒドロキシ-17-(1-プロピニル)エストラ-4,9-ジエン-3-オン;Ru 486)およびその他の化合物;Jiangら、2006、Steroid 71:949-954において記述されたリン含有17β-側鎖ミフェプリストン類似体;米国特許第4,780,461号において記述されたオナプリストン(11β-[パラ-(ジメチルアミノ)フェニル]-17α-ヒドロキシ-17-(3-ヒドロキシプロピル)-13α-エストラ-4,9-ジエン-3-オン)およびその他の化合物;米国特許第4,609,651号において記述されたリロプリストン(((Z)-11β-[(4-ジメチルアミノ)フェニル]-17-β-ヒドロキシ-17α-(3-ヒドロキシ-1-プロペニル)エストラ-4,9-ジエン-3-オン)およびその他の化合物;Belagnerら、1981、Steroid 37:361-382において記述された11β-(4-メトキシフェニル)-17β-ヒドロキシ-17α-エチニル-4,9-エストラジエン-3-オンなどの11β置換19-ノルステロイド;米国特許第5,728,689号において記述された(Z)-11β-[(4-ジメチルアミノ)フェニル)]-17β-ヒドロキシ-17α-(3-ヒドロキシ-1-プロペニル)エステル-4-エン-3-オンのような11β-アリール-4-エストレン;米国特許第5,843,933号および第5,843,931号において記述された11β-アリール-エストレン誘導体;米国特許第5,693,628号において記述された4-[17β-メトキシ-17α-(メトキシメチル)-3-オキソエストラ-4,9-ジエン-11β-イル]ベンズアルデヒド-1-(E)-オキシムのような11-ベンズアルドキシム-エストラジエン誘導体;米国特許第5,576,310号において記述された4-[17β-メトキシ-17a-(メトキシメチル)-3-オキソエストラ-4,9-ジエン-11β-イル]ベンズアルデヒド-1-(E)-[O-(エチルアミノ)カルボニル]オキシムのような11-ベンズアルドキシム-17β-メトキシ-17α-メトキシメチル-エストラジエン誘導体;WO 99/45023において記述された4-[17β-メトキシ-17α-(メトキシメチル)-3-オキソエストラ-4,9-ジエン-11β-イル]ベンズアルデヒド-1-(E)-[O-(エチルチオ)カルボニル]オキシムなどのS-置換11β-ベンズアドオキシム-エストラ-4,9-ジエン-炭酸チオールエステル;DE 19652408、DE 4434488、DE 4216003、DE 4216004およびWO 98/24803において記述された(Z)-6'-(4-シアノフェニル)-9,11α-ジヒドロ-17β-ヒドロキシ-17α-[4-(1-オキソ-3-メチルブトキシ)-1-ブテニル]4'H-ナフト[3',2',1';10,9,11]エステル-4-エン-3-オンのようなステロイドエステル;WO 98/34947において記述された11β-(4-アセチルフェニル)-17β-ヒドロキシ-17α-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)エストラ-4,9-ジエン-3-オンのようなフッ化17α-アルキル鎖ステロイド;米国特許第5,292,878号において記述された11β-(4-アセチルフェニル)-19,24-ジノル-17,23-エポキシ-17α-コラ-4,9,20-トリエン-3-オンのような17-スピロフラン-3'-イリデンステロイド;米国特許第5,439,913号において記述された(Z)-11β,19-[4-(3-ピリジニル)-o-フェニレン]-17β-ヒドロキシ-17α-[3-ヒドロキシ-1-プロペニル]-4-アンドロステン-3-オンおよびその他の化合物;米国特許第5,446,036号において記述された11β-[4-(1-メチルエテニル)フェニル]-17α-ヒドロキシ-17β-(3-ヒドロキシプロピル)-13α-エストラ-4,9-ジエン-3-オンのような13-アルキル-11-β-フェニルゴナン;米国特許第4,921,845号において記述された4',5'-ジヒドロ-11β-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]-6β-メチルスピロ[エストラ-4,9-ジエン-17β,2'(3'H)-フラン]-3-オンのような11-アリールステロイド;米国特許第4,829,060号、第4,814,327号および第5,089,488号において記述された11-β-アリール-エストラジエン;米国特許第5,739,125号、第5,407,928号および第5,273,971号において記述された11-β-アリール-4,9 ゴナジエンおよび11-β-アリール-13-アルキル-4,9-ゴナジエン;EP 289073において記述された11-β-アリール-6-アルキル(またはアルケニルまたはアルキニル)ステロイド;米国特許第5,093,507号において記述された10-β,11-β架橋ステロイド;米国特許第5,244,886号において記述された11-β-アリール-14-β-ステロイド;米国特許第5,095,129号、第5,446,178号、第5,478,956号および第5,232,915号において記述された19,11-β架橋ステロイド;米国特許第5,684,151号において記述された1-アリールスルホニル、アリールカルボニルおよび1-アリールホスホニル-3-フェニル-1,4,5,6-テトラヒドロピリダジン;米国特許第5,753,655号において記述された1-アリールスルホニル、アリールカルボニルおよびアリールチオカルボニルピリダジノ誘導体;米国特許第5,688,808号、第5,693,646号、第5,693,647号、第5,696,127号、第5,696,130号および第5,696,133号において記述された1,2-ジヒドロ-[1,2-g]キノリン誘導体および1,2-ジヒドロ-クロメノ-[3,4-f]キノリン誘導体;Kangら、2007、Bioorg. Med. Chem. Lett. 15:907-910において記述された(8S、13S、14R)-7-オキサ-エストラ-4,9-ジエン-3,17-ジオン1由来のオキサステロイド6;並びにKangら、2007、Bioorg. Med. Chem. Lett. 17:2531-2534において記述された7-オキサステロイド4を含む。
【0099】
好ましい実施形態において、プロゲステロンアンタゴニストは、抗プロゲスチン/SPRM CDB-4124(21-メトキシ-17α-アセトキシ-11β-(4N,N-ジメチルアミノフェニル)-19-ノルプレグナ-4,9-ジエン-3,20-ジオン)である。実施例10は、雌の月経周期の5日目の開始期間に成熟雌に投与されるとき、より低い投与量(25mg/日および12.5mg/日)のCDB-4124は高投与量(50mg/日)では観察されない子宮内膜の肥厚を生じることを示す。
【0100】
本発明のプロゲステロンアンタゴニスト組成物は、子宮内膜増殖症または子宮内膜癌の増加した危険性または発症率と関連する任意のホルモン療法を受けている患者に投与され得る。これらの治療は、限定されないが、エストロゲンの投与またはSERMの投与を含む。患者は、プロゲステロンアンタゴニスト化合物が子宮の子宮内膜組織に及ぼす抗増殖作用の恩恵を受け得るため、本発明のプロゲステロンアンタゴニスト組成物は抗エストロゲン性の治療を受けている患者にも投与し得る。
【0101】
SERMは、乳癌、骨粗鬆症、大腸癌、パーキンソンおよびアルツハイマーのような神経変性疾患、心臓血管疾患、膣の萎縮症および肥満症を含む種々の障害を治療するために、現在投与される。しかし、SERM療法は、子宮内膜増殖症および子宮内膜癌と関連する。たとえば、タモキシフェン乳癌治療は、正常な子宮を有する女性において、約20%の異型を伴う過形成の発病率をもたらす。異型を示す子宮内膜検体を有する患者は、癌へ進行する25%の可能性を有する。本発明の化合物は、SERMによる治療を伴う過形成に対抗するのに十分な用量にて投与される。本発明の化合物は、上述した障害のいずれかの治療のために、SERMと組み合わせて投与し得る。
【0102】
本発明において開示される化合物は、子宮におけるプロゲステロンアンタゴニストとして作用し得る。その他の適応に関しては、本発明の化合物は、ホルモン置換療法を受けている閉経期の患者において必要とされる長期の使用に適切であり得る。このような使用が考慮される場合、化合物は好ましくは、低い糖質コルチコイド受容体結合活性のみを有し、したがって、化合物は糖質コルチコイド受容体の機能を実質的に妨げない。したがって、化合物の適用は、気分変動、疲労および体重減少のような、糖質コルチコイド受容体に対する高親和性を有する抗プロゲスチンが使用される場合に典型的に見いだされる副作用を減少させることができる。
【0103】
別の態様では、本発明は、選択的プロゲステロン受容体結合活性を有する化合物を同定するために使用し得る方法を教示する。これらの方法は、抗McGinty、抗Clauberg、糖質コルチコイド、アンドロゲンで、エストロゲン、アンドロゲンおよび抗糖質コルチコイド(AG)、抗エストロゲンおよび抗アンドロゲン活性、並びに性交後および抗排卵活性などの受容体結合およびインビボバイオアッセイを含み、本発明の主要な化合物において参照として使用される。
【0104】
別の態様では、本発明は、潜在的SPRMにより、さらにまたヒト細胞における転写活性に対するこれらの作用について解析することができることを教示する。本発明において開示されるSPRMが参照として用いられる場合、この解析は、(1)SPRMの受容体に対する相互作用、(2)その他の転写因子で活性化された受容体の相互作用、(3)プロゲステロン応答エレメント(PRE)での転写複合体の活性化に関する情報;および最終的に遺伝子発現に対するその作用に関する情報を提供し得る。これらの実験において、hPR-Bを発現するプラスミドは、PRE依存的なプロモーター下の関連技術の当業者に公知の任意のレポーターとともにHeLa、HepG2またはT47D細胞にコトランスフェクトすることができる。レポーターは、限定されないが、ルシフェラーゼ、β‐ガラクトシダーゼ、緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質または黄色蛍光タンパク質を含む。トランスフェクション後、細胞は、試験化合物または陽性対照として働く本願に開示されるSPRMの1つで処理される。処理に続いて、細胞は、レポーター発現について測定される。
【0105】
別の態様では、本発明は、SPRM候補を、ヒトリンパ性株細胞CEM-7におけるデキサメサゾン誘導の細胞死に対抗する能力について試験して、本願明細書において開示されるSPRMの効果と比較することができることを教示する。これらの実験において、デキサメサゾンは、細胞死を生じる濃度にて添加し得る。細胞は、次いで10-6から10-8Mの間の濃度にて、RU486、本発明のSPRMの1つまたは試験化合物のいずれかで処理される。
【0106】
本発明に従って使用され得るプロゲステロンアンタゴニスト化合物は、米国特許第6,861,415号において開示されたものなどの当該技術分野において公知の合成化学技術を使用して合成することができる。ある種の官能基が反応条件下でその他の反応物質または試薬と干渉し、したがって一時的な保護を要する可能性があることを理解すべきである。保護基の使用は、’Protective Groups in Organic Synthesis’ 2nd edition, T. W. Greene & P. G. M. Wutz(Wiley-Interscience(1991))において記述された。
【0107】
一つの態様では、本発明の組成物は、1つまたは複数のプロゲステロンアンタゴニストまたはその薬学的に許容される塩を含む。プロセス条件に応じて、得られた塩化合物は、中性または塩形態のいずれでもあってもよい。塩形態は、水和物およびその他の溶媒和物、更には結晶性の多形を含む。遊離塩基およびこれらの最終産物の塩両方とも、本発明に従って使用し得る。
【0108】
酸付加塩は、それ自体公知の方法で、アルカリなどの塩基性物質を使用してまたはイオン交換によって遊離塩基に変換される。得られた遊離塩基は、有機または無機酸と塩をまた形成してもよい。
【0109】
酸付加塩の調製において、好ましくは、適切に薬学的に許容される塩を形成する酸が用いられる。このような酸の例は、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、脂肪酸、脂環式カルボン酸、またはスルホン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、グルクロン酸、フマル酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸の酸、ピルビン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、p-ヒドロキシ安息香酸、エンボン酸の酸、エタンスルホン酸、ヒドロキシエタンスルホン酸、フェニル酢酸、マンデル酸、アロゲンベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ガラクタル酸、ガラクツロン酸またはナフタレンスルホン酸などである。全ての結晶形態多形が、本発明に従って用いられ得る。
【0110】
塩基付加塩もまた、本発明に従って使用してよく、遊離酸型を、従来の方式で、塩を産生するために十分な量の所望の塩基と接触させることによって調製され得る。遊離酸形態は、塩形態を酸と接触させ、従来の方式で遊離酸を単離することによって再生してもよい。薬学的に許容される塩基付加塩は、アルカリおよびアルカリ土金属または有機アミンのような、金属またはアミンと形成されている。陽イオンとして使用される金属の例は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等である。適切なアミンの例は、リジン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、N-メチルグルカミン等のアミノ酸である。
【0111】
上述した目的において、本発明の化合物は、プロゲステロンアンタゴニストが活性である任意の従来の経路を介して患者に投与し得る。たとえば、本発明のプロゲステロンアンタゴニストは、経口的に、非経口的に、舌下に、経皮的に、直腸に、経粘膜的に、局所的に、吸入を介して、口腔内投与を介して、またはこれらの組み合わせにより投与し得る。非経口投与は、限定されないが、静脈内、動脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、髄腔内、関節内、嚢内および心室内投与を含む。投与形態は、錠剤、カプセル、丸剤、経鼻懸濁液、エアロゾル、ペレット、インプラント(またはその他のデポー)等であり得る。
【0112】
治療における使用に必要な組成物の治療的有効量は、他の要因のなかでも、使用される特定の化合物、投与方法、治療される状態の重症度、望まれる活性の時間の長さに応じて変化し得るし、最終的に担当医によって決定される。大抵の場合、特定の化合物の有効投与量は、子宮内膜の増殖を抑制するために十分な量である。しかし、一般に、典型的にヒト治療のために使用される投与量は、1日あたり約0.001mg/kg〜約500mg/kgの範囲内であり、たとえば1日あたり約1μg/kgから約1mg/kgまたは1日約1μg/kgから約100μg/kgである。大部分の大きな哺乳類については、1日総投与量は約1から100mg、好ましくは約2から80mgである。投与計画は、最適の治療反応を提供するように調整され得る。所望用量は、便利に単回投与され得、また適当な間隔で、たとえば1日あたり2、3、4またはそれ以上のサブドーズとして複数回投与され得る。
【0113】
実例的には、本発明の組成物は、患者にプロゲステロンアンタゴニストを提供するために、約1μ/kgから約1μ/kg体重で、たとえば約1μg/kg、約25μg/kg、約50μg/kg、約75μg/kg、約100μg/kg、約125μg/kg、約150μg/kg、約175μg/kg、約200μg/kg、約225μg/kg、約250μg/kg、約275μg/kg、約300μg/kg、約325μg/kg、約350μg/kg、約375μg/kg、約400μg/kg、約425μg/kg、約450μg/kg、約475μg/kg、約500μg/kg、約525μg/kg、約550μg/kg、約575μg/kg、約600μg/kg、約625μg/kg、約650μg/kg、約675μg/kg、約700μg/kg、約725μg/kg、約750μg/kg、約775μg/kg、約800μg/kg、約825μg/kg、約850μg/kg、約875μg/kg、約900μg/kg、約925μg/kg、約950μg/kg、約975μg/kgまたは約1 mg/kg 体重の量で投与し得る。
【0114】
本発明の組成物は、約25から約90%の、さらに通常約5%から60重量%の活性成分を、担体と組合わせて含有し得る。
【0115】
活性成分の性質および所望の特定投与形態に適切である場合、固体担体は、デンプン、乳糖、リン酸二カルシウム、微結晶性セルロース、スクロースおよびカオリンを含有し、液体担体は滅菌水、ポリエチレングリコール、非イオン性界面活性物質およびコーン油、落花生油およびゴマ油などの食用油を含有し得る。香料、着色剤、保存剤およびたとえばビタミンEおよびアスコルビン酸のような抗酸化剤も同様に製剤に含有され得る。通常の貯蔵および使用条件下で、製剤は、微生物の増殖を防止するために保存剤を含有し得る。
【0116】
本発明の組成物は、関連した分野の当業者に周知の技術を使用することにより、錠剤成形機で錠剤に処方され得る。任意に、本発明による活性成分はまた、別々に、二層錠剤に圧縮され得る。本発明によれば、錠剤は、活性成分の1つとして、抗エストロゲン、エストロゲンまたはSERMを含有し得る。本発明の組成物は、油性溶液としてまた処方され得る。
【0117】
本発明の組成物を用いた治療を受けている患者は、血清エストロゲンおよび糖質コルチコイドレベルについて定期的に測定されるべきである。
【0118】
以下の非限定的実施例は、本発明の教示を理解するのを助けるために提供される。
【0119】
本明細書において参照される全ての特許、特許出願および刊行物は、法の下で許される最大限に、本明細書における参照により本明細書に組み入れられる。
【0120】
実施例1 本発明の製剤は錠剤として調製され得る
本発明を実施するための錠剤を得るために、以下の成分を錠剤成形機で一緒に圧縮し得る:
50.0 mg CDB-41241
140.5 mg ラクトース
69.5 mg コーンスターチ
2.5 mg ポリ-N-ビニルピロリドン
2.0 mg アエロジル
0.5 mg ステアリン酸マグネシウム
【0121】
本発明を実施するための二層錠剤を得るために、以下の成分を錠剤成形機で一緒に圧縮し得る:
20.0 mg タモキシフェン
50.0 mg CDB-4124
105.0 mg ラクトース
40.0 mg コーンスターチ
2.5 mg ポリ-N-ビニルピロリドン 25
2.0 mg アエロジル
0.5 mg ステアリン酸マグネシウム
【0122】
本発明を実施するための抗エストロゲンを含む錠剤を得るため、たとえば、以下の成分を錠剤成形機で一緒に圧縮し得る:
10.0 mg ラロキシフェン
50.0 mg CDB-4124
125.0 mg ラクトース
50.0 mg コーンスターチ
2.5 mg ポリ-N-ビニルピロリドン 25
2.0 mg アエロジル
0.5 mg ステアリン酸マグネシウム
【0123】
本発明を実施するための油性製剤を得るために、たとえば、以下の成分を一緒に混合しアンプルに充填し得る:
100.0 mg CDB-4124
343.4 mg ヒマシ油
608.6 mg 安息香酸ベンジル
【0124】
実施例2 本発明の化合物は弱い抗糖質コルチコイド受容体結合活性のみを有し得る
一定の抗プロゲスチンを、ウサギプロゲステロン受容体(rbPR)および糖質コルチコイド受容体(rbGR)の結合能力に関して受容体-結合アッセイで試験した。簡潔には、PRまたはGRを含むサイトゾルを、エストラジオール感作された未成熟のウサギの子宮または胸腺から、それぞれ、TEGMD緩衝液(10mM Tris、pH 7.2、1.5mM EDTA、0.2mMモリブデン酸ナトリウム、10%のグリセロール、1mM DTT)中に調製した。PR結合については、サイトゾルを6nM 1,2-[3H]プロゲステロン(50.0Ci/mmole)と共にインキュベートし、競合物質を2から100nMの濃度で添加した。GR結合については、サイトゾルを6nM 6,7-[3H]-デキサメサゾン(40Ci/mmol)と共にインキュベートし、試験化合物を20から100nMまでの濃度で添加した。4℃で一晩インキュベーションした後、結合および非結合[3H]ステロイドを、デキストラン被覆活性炭の添加、並びに4℃にて15分間2100×gの遠心分離により分離した。[3H]-ステロイド受容体複合体を含む上清を、4mlのOptifluor(Packard Instrument Co.)を含むバイアルにデカントし、ボルテックスし、30分間液体シンチレーション計数器において平衡化して、次いで2分間計数した。計数データを4パラメーターS字形コンピュータープログラム(RiaSmart(登録商標)Immunoassay Data Reduction Program, Packard Instrument Co., Meriden, Conn.)に入力することによって、各標準曲線および各化合物曲線に関するEC50(有効濃度)を決定した。以下の方程式を使用して各化合物の相対結合親和性(RBA)を算出した:標準のEC50/試験化合物のEC50 x 100。PRおよびGRアッセイに関する標準は、それぞれ非標識プロゲステロンおよびデキサメタゾンであった。これらの実験の結果は、rbPRおよびrbGR受容体に対する各化合物の相対結合親和性の比(rbPR/rbGR)として、表1に要約してある。この差異は、2つの受容体および必要な転写補因子を有する細胞または組織中の化合物の相対活量を反映する。
【0125】
抗McGintyおよび抗Claubergアッセイ法によるウサギ子宮における同一化合物の相対的生物学的活性も、表1に示してある。CDB-2914を用いる実験の結果が以前に発表されていることから(Hild-Petitoら、1996; Passaroら、1997; Reelら、1998; Larnerら、2000)、化合物CDB-2914(表の末尾に記載)をこれらの実験のための対照または参照化合物(ウサギ生物学的活性=1.00)として用いた。抗McGinty試験については、未成熟の雌ウサギに、6連続日の間毎日10%エタノール/ゴマ油中のエストラジオール5μgのエストラジオールを皮下注射した。7日目に、動物に滅菌腹部手術を行い、両方の子宮角の3-4cmのセグメントを結紮した。適切な溶媒に入った試験化合物を一方の子宮角の結紮したセグメントに、そして媒体単独を他方に、腔内投与した。刺激用量のプロゲステロン(267mg/日)を、子宮内膜の増殖を誘導するために、次の3日間毎日各ウサギに皮下投与した。全動物は、子宮の除去のために10日目に屠殺して、結紮の中心となるセグメントを除去し、10%中性緩衝ホルマリン中に固定して、組織学的処理に供した。ヘマトキシリンおよびエオシンで染色した5ミクロン切片を、子宮内膜腺の増殖の程度に関して顕微鏡的に評価した。各ウサギに関する子宮内膜の増殖の阻害パーセントを算出し、5羽の動物群の平均を記録した。抗Clauberg試験に関しては、未成熟の雌ウサギに、6連続日の間毎日10%のエタノール/ゴマ油中のエストラジオール5μgを皮下注射した。7日目に、動物に皮下注射によるプロゲステロン160μ/日)、および適切な媒体中の試験化合物を経口的または皮下的に、連続5日間投与した。ウサギの1群には、プロゲステロンのみを投与した。最終用量の24時間後に、全動物を屠殺して子宮を除去し、全ての脂肪および結合組織を取り除くと、ほぼ0.2mgの重さであり、その後の組織学的処理のために10%の中性緩衝ホルマリン中に入れた。ヘマトキシリン‐エオジンで染色した5ミクロン切片を、子宮内膜腺の増殖の程度に関して、顕微鏡的に評価した。試験化合物の各服用レベルにおける子宮内膜の増殖の阻害パーセントは、プロゲステロン刺激動物単独と比較することにより得た。表1に示したデータ(ウサギ生物学的活性)は、CDB-2914と比較した、抗McGintyおよび抗Claubergアッセイによる各化合物に関して得られた結果の平均を反映している。
【0126】
表1に記載したように、試験した抗プロゲスチンを、各化合物のウサギGRを超えるウサギPRに対する選択性に基づき、順位付けした。抗プロゲスチンはまた、ウサギ子宮における生物学的活性に基づき、順位付けした。表1に示したデータは、主要化合物のプロゲステロン受容体に対する親和性が糖質コルチコイド受容体に対するこれらの親和性より少なくとも1.5倍大きかったということを示す。
【0127】
これらの試験の結果はまた、2つの主要化合物CDB-4124およびCDB-4059が、Ru 486およびCDB-2914と比較して、ウサギ子宮における強力な抗プロゲスチン活性を有することも示す。両化合物は、エストロゲン、アンドロゲン、抗エストロゲンおよび抗アンドロゲンの活性を欠く。両化合物は、中程度の糖質コルチコイド受容体結合活性を有するRU 486およびCDB-2941とそれらを区別する特徴である最小の抗糖質コルチコイド受容体活性を有する。これらのアッセイにおいて、CDB-4124は、CDB-4059よりわずかに良好に機能する。
【0128】
【表1】

【0129】
実施例3 コルチゾール測定
いくつかの異なる実験系は、Ru 486がヒトおよび霊長類において強力な抗糖質コルチコイド特性を有するため、Ru 486がコルチゾールを増加させるという結論を支持する。
【0130】
しかし、図1に示したように、10mg/kgでRu 486を処置したラットは、コルチゾールのレベルにおける有意差を示さなかった。対照的に、同一用量レベルのCDB-4124またはCDB-4059で処置したラットは、対照群からのラットより有意に高いレベルの血清コルチゾールを有した。
【0131】
これらの高レベルは、3-4μg/dl(30-40ng/ml)の範囲であった。CDB-4124の用量が増大するとコルチゾールも増加したという点で、効果は用量依存的であった(図2)。
【0132】
コルチゾールレベルに及ぼすRu 486対CDB-4124またはCDB-4059の作用のこの差は、慢性投与の21日後に、ラットの肝臓が2つのCDB化合物のいずれよりも良好にRU 486を代謝し得たと推定することにより説明され得る。
【0133】
実施例4 コルチコステロン測定
コルチコステロンは、ラットにおいて最も豊富な糖質コルチコイドである。図1および2に示したコルチゾールに対するSPRMの作用は、コルチコステロンに対する強力な作用に派生し得る。より良好にこの現象を探求するために、20mg/kgまたは10mg/kgでCDB-4124を処置した群のように、コルチゾールレベルの最強変化を示した群で、コルチコステロンのレベルを測定した。比較のために、以下の群を試験した:20mg/kgのCDB-4124+10mg/kgのプロゲステロンを摂取した群、10mg/kgのCDB-4124+10mg/kgのプロゲステロンを摂取した群、10mg/kgのRu 486を摂取した群、10mg/kgのプロゲステロン単独を摂取した群、対照群。コルチコステロンのレベルは、コルチゾールのレベルより10-40倍高かった。しかし、平均コルチゾールレベルに関する群間の差異は、ほとんど観察されなかった。処置前(p = 0.43, Kruskal-Wallis 試験)、処置の21日後(p = 0.57, Kruskal-Wallis 試験)、または処置の28日後および屠殺時(p = 0.061, Kruskal-Wallis 試験)の群間の差異は認められなかった。
【0134】
血清コルチコステロンに対する外来性プロゲステロンの作用を測定するために、外来性プロゲステロンを摂取したか否かの点で異なる3対の群(たとえば、対照対プロゲステロン、または20mg/kgでのCDB-4124対20mg/kgでのCDB-4124+プロゲステロン、または10mg/kgでのCDB-4124対10mg/kgでのCDB-4124+プロゲステロン)で、コルチコステロンのレベルを比較した。統計学的に有意な差異が検出された:処置21日後にプロゲステロン処置動物において、コルチコステロンレベルは低下した(p = 0.029, Mann-Whitney Wilcoxon1検定, 両側)。この作用は、屠殺時に摂取された血清においては実証されなかった。血清コルチコステロンにおける差異は、プロゲステロンおよびCDB-4124群、プロゲステロンおよびRU-486群、RU-486群とCDB-4124群間には見出されなかった。
【0135】
各群における血清コルチゾールおよび血清コルチコステロン間の関係も、また分析した。20mg/kgでのCDB-4124(r2 = 0.78)において、10mg/kgでのCDB-4124(r2 = 0.82)において、およびRu 486(r2 = 0.85)において、2つの間に強い正の線形相関が認められた。最初の2つのCDB-4124群にプロゲステロンを付加することは、その関係をはるかに弱くした(それぞれ群10においてはR2 = 0.34および群11においてはr2 = 0.37)。プロゲステロンそれ自体は、このような正の相関(r2 =-1.0)を示さなかった。対照群は、2つの糖質コルチコイドの間の相関を示さなかった(r2 = 0.064)。したがって、CDB-4124を摂取している群におけるコルチゾールレベルの増大は、おそらく何らかの形で増強されるコルチコステロンからの転換に起因して、コルチコステロンのレベルと相関する。これは、上記で観察されたCDB-4124の作用と一致する:プロゲステロンおよびコルチゾールのレベルに関与する代謝酵素に対する作用。
【0136】
ラットの主要糖質コルチコイドに対するCDB-4124の強力な作用は見いだされなかったが、にもかかわらず、安全性の理由で、第1相臨床試験においてCDB-4124またはCDB-4059を投与される患者は、血清コルチゾール、コルチコステロンまたはACTHにおける起こり得る増大を含む起こり得るグルココルチコイドの作用が監視されるべきである。
【0137】
実施例5 子宮細胞におけるSPRMの抗増殖作用の試験
任意の子宮細胞株を使用することができる。増殖は、96ウェルマイクロタイタープレートにおいて測定する。5X103細胞を、各ウェルに添加する。培養液および薬液を、Perkin Elmer Cetus Pro/PETTEで、ウェルに添加する。培養液は、5%のウシ胎児血清を補充したIMEMである。0.078μMから10μMの8つの薬剤濃度を、二重反復実験で試験する。試料は、タモキシフェン単独およびタモキシフェンと組み合わせて本願明細書において開示される化合物の各々を含む。
【0138】
4日のインキュベーション後、培地を、薬物を含む新鮮培地と交換し、そして合計7日の後、細胞単層をトリクロル酢酸で固定し、スルホローダミン色素で染色する。抽出色素溶液の吸光度(492nm)を、Titertekマルチスキャンプレートリーダーで測定する。50%増殖を阻害した薬剤濃度(μM)として定義されるIC50値を測定するために、用量反応曲線(対照吸光度のパーセント対薬剤濃度)を作図する。IC50値は、細胞増殖の阻害について試験された薬物の効力と相関し、したがって子宮細胞の過剰増殖を防止するために適した化合物を同定するために必要な情報を提供する。
【0139】
実施例6 CDB-4124はカニクイザルの黄体期プロゲステロンを低下させる
カニクイザル(Macaca fascicularis)(n=14)を、1.0 mg/kg/dayでのCDB-4124またはRU-486で、またはプラセボ(対照)で、36週間経口的に処置した。別の群(n=14)は月1回Lupron(登録商標) IMを摂取した。試験の中頃の1月間(14-17週)および試験の最終月間(週33-36週)に、各動物において尿のプロゲステロンレベルを測定した。結果を以下に示す:
【0140】
【表2】

【0141】
実施例7 CDB-4124はカニクイザルにおける卵胞期エストロゲンを低下させない
試験の中頃の1月間(14-17週)および試験の最終月間(週33-36週)に、実施例6の各動物において尿のエストロゲンレベルを測定した。卵胞期結果は、35ベースライン排卵サイクルに基づく。結果を下記に示す:
【0142】
【表3】

【0143】
実施例8 CDB-4124およびLupron(登録商標)はカニクイザル子宮内膜の上皮における増殖を抑制するがRu 486は抑制しない
36週に、実施例6の各群からの3匹の動物に、屠殺後24時間以内に、増殖細胞およびそれらの産物のマーカーであるチミジン類似体ブロモデオキシウリジン(BrdU)を注射し、組織増殖を評価した。完全な厚みの子宮切片を染色して、BrdUの取込みが陽性の細胞%を増殖の証拠として顕微鏡的に検討した:
【0144】
【表4】

【0145】
実施例9 CDB-4124およびRu 486はカニクイザル子宮内膜上皮におけるアポトーシスを増強するが、Lupron(登録商標)は増強しない。ターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼが介するdUTP-ビオチン・ニック末端標識(TUNEL)技術により、スライド上の同一動物からの組織においてアポトーシスを評価した。アポトーシス細胞パーセントを以下に示す:
【0146】
【表5】

【0147】
実施例10 低濃度のCDB-4124は女性の月経周期の黄体期の間に開始する投与期間の間の子宮内膜厚を増大させる
子宮内膜症と診断された39人の閉経前成人女性が、子宮内膜症の治療におけるProellex(商標)(CDB-4124)の6ヵ月試験の非験者であった。研究には、3つの用量レベルのCDB-4124、並びに陽性対照アームを包含した。陽性の対照は、子宮内膜症の治療に一般に使用されるGnRHアゴニストであるLucrin(登録商標)(Lupron(登録商標)としても知られる)であった。CDB-4124は、12.5mg/日(n=2)、25mg/日(n=3)および50mg/日(n=3)の投与量にて1日経口カプセルとして二重盲検様式にて投与し、開始は女性の月経周期の5日目であった。別の群(n=4)は、陽性対照として、月1回Lucrin(登録商標)の徐放製剤を注射した。
【0148】
CDB-4124の全用量は、並びにLucrin(登録商標)は、6ヶ月の薬物への暴露の間に疼痛に関連した苦痛を平均して減少させ、50 mgのCDB-4124用量は、12.5 mgまたは25 mg用量よりも疼痛の期間および強度をともに有効に減少させ、試験中の疼痛の日数の減少に関してLucrin(登録商標)よりも有意に優れている(p = 0.0012)。疼痛減少はまた、活性対照であるLucrin(登録商標)を用いた場合よりも迅速に生じた。この試験における処置に対する疼痛の応答を2つの方法で解析した。試験における患者は、疼痛の重症度および頻度を記録する毎日の疼痛日記を継続した。加えて、各外来診療時に、患者は、10が最大強度である0-10のスケールで、良くない日の疼痛強度を評価する質問表を含む子宮内膜症症候調査を記入した。毎日の疼痛日記は、Lucrin(登録商標)投与女性は、平均して最初の三ヶ月にわたって19.4日の疼痛を経験したことを示した。50mgのCDB-4124投与女性は、同期間で1日未満の疼痛を示した。25mgおよび12.5mgのCDB-4124投与女性は、最大用量のCDB-4124またはLucrin(登録商標)を摂取している女性により記録されたものよりも長い日数の疼痛を示した。疼痛減少に対する用量依存的な作用が存在すると思われる。180日の治療期間にわたって、疼痛日記は、50mgのCDB-4124用量投与女性が170または96%の無疼痛日(標準偏差=8.86日)を有することを示した。疼痛期間のこの減少は、Lucrin(登録商標)で達成された117.8(74%;標準偏差51.4日)無痛日より統計学的に優れていた(p=0.0012)。50mg用量のCDB-4124はまた、無疼痛日に関して25mgおよび12.5mg用量の両方より統計学的に優れていた。CDB-4124の12.5mgおよび25mg用量投与患者は、それぞれ、115.9(66%;標準偏差69.2日)および133.6(75%;標準偏差27.4日)無疼痛日を有した。これらの結果は、CDB-4124に関する用量反応を明らかに支持する。25mgおよび12.5mg用量のCDB-4124は、Lucrin(登録商標)と統計学的に異ならなかった。治療の第1月の終わりにおいて、3つのその他の処理群において、ベースラインと比較して50mg Proellex群の疼痛日に関して統計学的に有意の減少(p=0.031)があったが、3つの他の処置群ではみられなかった。疼痛の強度は、「0が無疼痛であり10が極度の疼痛である、1-10のスケールにおいて、具合のよくない日のあなたの疼痛はどのくらいの強さですか?」という質問によって評価した。ベースラインでの疼痛強度の平均スコアは、CDB-4124群では6.3、Lucrin(登録商標)群では6.1であった。統計学的に有意な疼痛の軽減は、25mgおよび50mg Proellex群での第1月により明らかであった。3ヶ月目に、4つの活性処置群すべてが、ベースラインと比較して統計学的に優位な疼痛減少を示し、以下のスコアを示した。12.5mgのCDB-4124においては3.7(p = 0.03)、25mgのCDB-4124においては3.2(p = 0.03)、50mgのCDB-4124においては1.5(p = 0.016)およびLucrin(登録商標)においては1.6(p = 0.015)。これらの用量依存性の減少は、疼痛強度の数値がそれぞれ、2.0(p = 0.008)、2.8(p = 0.023)、0.6(p = 0.004)および0.7(p = 0.016)となった6ヶ月目まで継続した。処置を中止した後の2ヶ月後に疼痛は戻り、4つの処置群すべてにおいて同様の強度であった。
【0149】
当該試験においてLucrin(登録商標)を摂取している女性は、平均して、3ヶ月目までに閉経後レベル(<20pg/ml)へのエストロゲンの減少を経験し、およびこれは6ヶ月の処置期間をとおして維持された。この結果は、3ヶ月でのベースライン値と比較して骨吸収の生体マーカーにおける統計学的に有意な増大(p = 0.023)と関連しており、したがって、骨量減少の危険性の増加と関連している。6ヶ月および1ヶ月追跡調査来診時、骨吸収のマーカーのこの増大は、Lucrin(登録商標)で治療した女性において依然として存在した。すべての用量のCDB-4124は、Lucrin(登録商標)でみられたものを有意に上回るエストロゲン濃度を維持し、低正常範囲(平均> 40 pg/ml)のままであった。重要なことに、処置の3ヶ月および6ヶ月目において、CDB-4124の用量アームのいずれにおける骨吸収の生体マーカーにも有意な変化はなかった。閉経後レベルのエストロゲンを有する女性は、骨量減少およびその他の医学的状態に関してより大きな危険性に直面することを示された。したがって、Lucrin(登録商標)は6ヶ月より長く継続する治療に適用されない。
【0150】
CDB-4124の副作用は一般に軽度であって、個々の器官系は、系統的に関連しなかった。これは小さな研究であり、安全性データから明確な結論は下されないが、安全性のシグナルは一つも観察されなかった。
【0151】
試験における女性を、子宮内膜の構造変化に関して厳密にモニターした。これらの検査のデータは、超音波により測定される、子宮内膜の厚みに対するCDB-4124の逆用量依存性を示唆する。ベースラインと来診時の子宮内膜厚の超音波測定値を共に比較した。臨床データは、CDB-4124の3つの用量すべてで進行性の子宮内膜肥厚が生じていることを示した。子宮内膜の肥厚は、12.5mgの用量で最も顕著であり、25mgおよび50mgの用量ではそれほどでなかった。治療の6ヶ月後、25mgおよび50mgの用量がそれぞれ9.8mmおよび3.9mmの統計学的に有意でない変化を示す一方、12.5mgの用量は、統計学的に有意なベースラインからの子宮内膜厚の10.9mmの増大(p 0.016)を生じた。
【0152】
研究において有意な出血を経験した4人の被験者はすべて、20mmを超える子宮内膜厚を有し、5ヶ月以上治療を受けた。別の試験では、子宮筋腫を有する女性に、各女性の月経周期の5日目に開始しして、3ヶ月の期間1日量12.5mg、25mgまたは50mgのCDB-4124を投与した。12.5mgまたは25mgの用量を摂取した被験者のいずれも有意な出血症状を呈さず、これらの平均の子宮内膜厚の測定値は20mm未満であった。これらのデータは、出血の危険性が治療期間および増大した子宮内膜の厚みの両方に関連することを示唆する。
【0153】
実施例11:CDB-4124処置群女性の子宮内膜の生検
子宮内膜生検は、6ヶ月間12.5mg、25mgまたは50mgのCDB-4124に曝露された27人の女性および31人の子宮筋腫の女性から採取した。検体は、WHO診断概要(Silverberg et al., tumors of the uterine corpus: epithelial tumors and related lesions. Tavassoli FA, Stratton MR, reditors. WHO Classification of Tumors: Pathology and Genetics of Tumors of the Breast and Female Genital Organs. Lyon, France: IARC Press, 2003: 221-232)を利用する盲検方法の処理により評価した。コンセンサス主要エンドポイントは、各検体につき多数(3人の病理学者の同意の2つかそれ以上)によって決定するか、またはすべての病理学者が一致しない場合には、3つのうち「最悪の」診断が与えた。さらなる知見を、構造化データ収集機器を使用して記録した。全ての生データは、結論の基礎となる独立した分析を行うレビュー病理学者に提供した。
【0154】
結果は、何らの過形成、子宮内膜上皮内の新生物または癌を伴わず、CDB-4124処置した良性子宮内膜のすべての被験者におけるコンセンサス主要診断を証明した。したがって、CDB-4124は、試験したあらゆる濃度にて子宮内膜の増殖を抑制した。主要診断の結果は、子宮内膜症または子宮筋腫を有する被験体または3または6ヶ月の間3つの異なる用量に暴露された被験者の間で、何らの相違もなかった。
【0155】
「良性の」カテゴリーの中でさらなる二次知見が注目され、最も顕著なものは、アソプリスニル、ミフェプリストンおよびCDB-2914などのその他のプロゲステロン受容体モジュレーターで治療された女性で最近説明される組織学的なパターンに似た腺の嚢胞性の拡張の存在である。これらの嚢胞中の腺上皮は外観が異なるが、発達程度が低い分泌活性、死にかけている細胞(アポトーシス小体)および珍しい有糸分裂の非生理的組み合わせを含んでいた。その他の嚢胞性の腺は、不活性上皮によって覆われた。低用量のCDB-4124で観察される珍しい腺の有糸分裂は50mgにて消滅し、このことは用量の増加にともなう抗増殖性の効果を示唆した。この嚢胞および上皮の知見群は新規であり、近年このクラスの他の化合物について記述された関連する子宮内膜の変化に関連するプロゲステロン受容体モジュレーターの領域に入る。しかしながら、CDB-4124は、いくつかのその他のプロゲステロン受容体モジュレーターでみられる血管壁肥厚および格子キャピラリーパターンを誘導しなかった。
【0156】
重要なことに、全ての治療用量にわたって、超音波で測定される子宮内膜厚の増大とレビュー病理学者による嚢胞性の腺の診断との間に正の相関が観察された。しかし、CDB-4124の最低用量を摂取している女性において、嚢胞性の腺は、最高用量を摂取している女性よりも数およびサイズの点でより高かった。3および6ヶ月時点の間で、12.5m群において、厚みの増大およびより多くの嚢胞の明らかな傾向が認められた。この子宮内膜厚と組織学的嚢胞との関連は、治療期間の増加とともに強くなり、子宮内膜の肥厚が腺の拡張の発生によることを示唆する。重要なことに、各処置群へのCDB-4124投与は女性の月経周期の5日目に開始し、結果的に、いずれの処置群の女性においても薬物が取り除かれるまで月経は生じなかった。
【0157】
子宮内膜のベッドの広範な腺化(glandularization)が5日目の直後に生じ始めることが知られている。図3を参照されたい。血管新生およびさらなる腺の活性が、14日ごろ開始したプロゲステロンの影響を受けて加速した。理論に制約されることを望まないが、50mg処置群の女性とは対照的に、12.5mgおよび25mg処置群の女性においては、CDB-4124が、女性の第1のサイクルの間、プロゲステロンを完全に遮断するために十分な濃度に蓄積しなかったと考えられ、残存する(ブロックされていない)プロゲステロンおよび残留する(障害物を取り除かれる)プロゲステロン貯臓の影響を受けて、腺の数を増やし、大きさを膨張させる。
【0158】
女性の月経周期の黄体期(すなわち、14日目またはその後)の間の時点にて開始するCDB-4124の投与は、初期のサイクルの間女性に月経を起こさせ得る。初期に形成される嚢胞性の腺はこの月経の間に脱落することが予想され、その後CDB-4124濃度がプロゲステロンを阻害するのほど十分に高くなり、これによってプロゲステロンの子宮内膜に対する血管および腺作用を抑制することが期待される。したがって、本発明は、子宮内膜の無用の肥厚および増加した破砕を伴わずに、治療投薬処方計画、とりわけ、比較的低濃度のCDB-4124などのプロゲステロンアンタゴニストの投与を含むエストロゲン依存性症状の治療投薬処方計画を提供する。したがって、本開示の投薬処方計画は、プロゲステロンアンタゴニスト治療中に周期的な月経を誘導する必要がなく、たとえば、肥厚、脆い子宮内膜をともなう破綻出血を減少または解消するという利点を提供する。より高濃度のCDB-4124が女性の月経周期の黄体期の間に始まる期間に投与される場合も、有益な結果が得られる(比較的より小さい程度に)ことが予測される。したがって、50mgのCDB-4124が女性の月経周期の黄体期のある時点で始まる期間の間に投与される場合、実施例10の50mg処置群(投与期間が各女性の月経周期の5日目に開始したもの)でみられたものに比較して、子宮内膜厚のさらなる減少が予測される。
【0159】
実施例12:子宮内膜症処置に対する低濃度プロゲステロンアンタゴニストの投与
子宮内膜症を患う女性を2群に分けた:第1群は、各女性の月経周期の5日目に開始する6ヶ月間12.5mgのCDB-4124を摂取し、第2群は女性の月経周期の15日目に開始する6ヶ月間12.5mgのCDB-4124を摂取する。子宮内膜の厚みを6ヵ月の期間にわたって定期的にモニターする。第2群の女性は第1群の女性に比しより低い程度の子宮内膜肥厚を示し、好ましくは減少した子宮内膜誘導性疼痛の恩恵を受けながら子宮内膜肥厚を起こさない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エストロゲン依存性症状を治療する方法であって、それを必要とする女性に、有効量のプロゲステロンアンタゴニストを含む組成物を、女性の月経周期の黄体期の間に始まる投与期間に投与することを含み、前記女性の子宮内膜が前記期間の間に実質的に肥厚しない方法。
【請求項2】
請求項1の方法であって、エストロゲン依存性状態が、子宮内膜症である方法。
【請求項3】
請求項1の方法であって、前記組成物が、女性の月経周期の14日から25日に投与開始される方法。
【請求項4】
請求項1の方法であって、プロゲステロン受容体に対する前記プロゲステロンアンタゴニストの結合親和性がグルココルチコイド受容体に対する前記プロゲステロンアンタゴニストの結合親和性よりも少なくとも1.5倍高い方法。
【請求項5】
請求項1の方法であって、女性のエストロゲンレベルが前記組成物の投与で実質的に減少しない方法。
【請求項6】
プロゲステロンアンタゴニストが、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物であり:
【化1】

(I)
式中:
Xは、アルキル、アルケニル、アルキニル、水素、ハロ、モノアルキルアミノまたはジアルキルアミノを表し;
R1は、O、NOHまたはNO-メチルを表し;
R2は、水素またはアセチルを表し;および
R3は、メンチルオキシ、ホルミルオキシ、アセトキシ、アシロキシ、S-アルコキシ、アセチルテオニル、グリシメート、ビニルエーテル、アセチルオキシメチル、炭酸メチル、ハロゲン、メチル、ヒドロキシまたはエトキシを表す、請求項1の方法。
【請求項7】
請求項5の方法であって、前記化合物が、CDB-4124である方法。
【請求項8】
請求項6の方法であって、前記化合物が、0.5mg/kgから500mg/kgの投薬量にて投与される方法。
【請求項9】
請求項7の方法であって、前記化合物は、1日あたり約12.5mgから1日あたり約100/mgの間の投薬量にて投与される方法。
【請求項10】
請求項9の方法であって、前記化合物は、1日あたり約12mgから1日あたり約50mgの間の投薬量にて投与される方法。
【請求項11】
請求項7の方法であって、前記化合物は、1日あたり約50mgおよび1日あたり約100mgの間の投薬量にて投与される方法。
【請求項12】
請求項9の方法であって、前記化合物が、少なくとも5ヶ月間投与される方法。
【請求項13】
子宮内膜症、不正子宮出血、子宮筋腫および月経困難症からなる群より選択される疾患と関連する疼痛を治療するための方法であって、それを必要とする女性に、式(I)の化合物または薬その学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物の有効量を含む組成物を投与すること含み:
【化2】

(I)
式中:
Xは、アルキル、アルケニル、アルキニル、水素、ハロ、モノアルキルアミノまたはジアルキルアミノを表し;
R1は、O、NOHまたはNO-メチルを表し;
R2は、水素またはアセチルを表し;および
R3は、メンチルオキシ、ホルミルオキシ、アセトキシ、アシロキシ、S-アルコキシ、アセチルテオニル、グリシメート、ビニルエーテル、アセチルオキシメチル、炭酸メチル、ハロゲン、メチル、ヒドロキシまたはエトキシを表す、方法。
【請求項14】
請求項13の方法であって、前記組成物が女性の月経周期の黄体期に開始する期間の間に投与され、前記女性の子宮内膜が前記期間の間に実質的に肥厚しない方法。
【請求項15】
請求項13の方法であって、前記化合物が、CDB-4124である方法。
【請求項16】
請求項13の方法であって、女性の子宮内膜病変のサイズが減少する方法。
【請求項17】
請求項13の方法であって、女性のエストロゲンレベルが前記組成物の投与で実質的に減少しない方法。
【請求項18】
請求項13の方法であって、前記化合物が、0.5mg/kgから500mg/kgの投薬量にて投与される方法。
【請求項19】
請求項15の方法であって、前記化合物が、1日あたり約12.5mgから1日あたり約100mgの間の投薬量にて投与される方法。
【請求項20】
請求項19の方法であって、前記化合物が、1日あたり12.5mgから1日あたり50mgの間の投薬量にて投与される方法。
【請求項21】
請求項13の方法であって、前記化合物が、少なくとも約1から6ヶ月の期間投与される方法。
【請求項22】
請求項13の方法であって、前記組成物が、前記女性に断続的に投与され、前記女性は少なくとも1つの中断期間の間に月経を生ずる、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−518845(P2011−518845A)
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−506497(P2011−506497)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【国際出願番号】PCT/US2009/041826
【国際公開番号】WO2009/134718
【国際公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(509115199)レプロス セラピューティクス インコーポレイティド (6)
【Fターム(参考)】