説明

抗腫瘍活性を有する化合物及びその製造方法

【課題】 抗腫瘍活性を有する新規化合物及びそれを含む医薬を提供する。
【解決手段】 式(I)
【化1】


で表される化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物が生産する新規な化合物及びその製造方法、並びにその化合物を含む抗腫瘍剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトは、感染症の治療のためにペニシリンやストレプトマイシン等多くの抗生物質や抗菌剤を利用してきた。しかしながら、医療現場における抗生物質の頻繁な使用によって、被使用菌が薬剤耐性を獲得し、使用抗生物質が効かなくなるという問題がある。また、癌などの腫瘍に対しても、抗生物質の使用を継続すると、使用抗生物質に対して耐性が生じる。
【0003】
また現在、先に述べたペニシリンやストレプトマイシンに代表されるように、微生物代謝産物から有用な抗生物質を探索するという試みが行われている(特許文献1、2及び3参照)。また、生理活性物質の探索資源として真菌類や海洋性生物が着目されつつある(非特許文献1、2参照)。
【0004】
上記で述べたような既存の抗生物質に耐性を獲得した病原菌に対して有効な、また、既存の抗癌剤では十分な治療効果が得られないような腫瘍に対する効果を有するような新しい抗生物質の発見が常に望まれている。特に、抗腫瘍性活性を有する新規抗生物質の発見が望まれている。
【特許文献1】特開2001−257454号公報
【特許文献2】特開2000−189182号公報
【特許文献3】特開平05−247018号公報
【非特許文献1】供田洋、化学と生物、Vol. 40, No. 11, p.757-764, 2002年
【非特許文献2】John W.Blunt, Brent R. Copp, Murray H. G. Munro, Peter T. Northcote and Miche1e R. Prinsep; Natural Products Report, 20, p.1-48. 2003年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、抗腫瘍活性を有する新規な抗生物質を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ストレプトマイセス属に属する微生物の培養液から得られた化合物が、新規であり、かつ抗腫瘍活性を示す有用な化合物であることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)式(I)
【0007】
【化1】

で表される化合物又はその薬学的に許容される塩。
(2)前記(1)記載の化合物を有効成分として含有する医薬。
(3)前記(1)記載の化合物を有効成分として含有する抗腫瘍剤。
(4)ストレプトマイセス属に属し、前記(1)記載の化合物を生産する能力を有する微生物を培地に培養し、培養物中に該化合物を生成蓄積させ、該化合物を採取することを特徴とする、前記(1)記載の化合物の製造方法。
(5)前記微生物がストレプトマイセス sp. YM8−053株(NITE P−69)又はその変異株である前記(4)記載の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、新規な抗腫瘍性化合物、該化合物を生産する能力を有する微生物、及びその微生物を用いた前記該化合物の製造方法が提供される。
本発明の化合物は、高い抗腫瘍効果を有しており、医薬品、医薬品原料として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明者らは、上記式(I)で表される化合物は海洋性細菌(ストレプトマイセス・スピーシーズ(Streptomyces sp.)YM8-053株)から得られることを見出した。
【0010】
式(I)で表される本発明の化合物の理化学的性質及びその製造方法について以下に詳述する。
1.式(I)で表される化合物の理化学的性質
上記式(I)で表される本発明の化合物の構造式及び理化学的性質は以下のとおりである:
(1)物質の色:黄色
(2)分子量 :270
(3)分子式 :C1514
(4)質量分析:高分解能FABMS(高速中性粒子衝突イオン化質量分析)
実測値:271.1090(M+H)
計算値:271.1083(C1515)
(5)紫外線吸収スペクトル(メタノール中) λmax (1ogε) 238nm(4.06), 290nm(4.09), 396nm(3.48), 483nm(3.15).
(6)H NMR(メタノール中で測定、750MHz)
δ ppm: 1.34 (3H, t, J=7.5Hz), 2.77 (2H, q, J=7.5Hz), 4.06 (3H, s), 7.18 (1H, s), 7.91 (1H, d, J=1.5Hz), 8.24 (1H, s), 8.735 (1H, d, J=1.5Hz), 8.74 (1H, s).
(7)13C NMR(重メタノール中で測定、125MHz)
δ ppm: 14.84, 20.84, 57.10, 111.56, 113.35, 116.44, 124.99, 133.60, 135.01, 136.09, 137.80, 143.85, 150.66, 155.52, 159.66.
(8)溶解性:メタノールに可溶。
(9)ヒト肺癌由来細胞株A549細胞を本発明の式(I)の化合物9.4μMの濃度で48時間培養したところ、A549細胞の細胞増殖を50%阻害し、120μMの濃度で48時間培養したところ、A549細胞を完全に死滅させた。
【0011】
2.本発明の化合物の製造
2.1.式(I)の化合物の製造
本発明の式(I)の化合物は、微生物を培地に培養し、培養物中に該化合物を生成蓄積させ、該培養物から該化合物を採取することにより製造することができる。
(1)微生物
本発明の製造方法において用いることのできる微生物としては、ストレプトマイセス(Streptomyces)属に属し、かつ上記式(I)で表される化合物を生産する能力を有する微生物であれば特に限定されない。
【0012】
ここで、「式(I)で表される化合物を生産する能力を有する微生物」とは、典型的には、菌株を500mLのマリンブロス培地を入れた1Lバッフル付き三角フラスコ中で、30℃にて5日間回転震盪(100rpm)培養して種菌とし、該種菌を1Lのマリンブロス培地の入った2Lバッフル付きフラスコ9本(計9L)に10mLずつ植菌し、30℃、7日間、回転震盪(100rpm)培養して得られた培養液9Lを、遠心分離(6000g, 30分間)して菌体と上清に分離し、上清を酢酸エチルで抽出して得られた抽出物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製して抗腫瘍活性を有する画分を回収し、該画分を高速液体クロマトグラフィーにて精製するという操作を繰り返し行った場合に、培養液9L当たり3mg以上、より好ましくは4mg以上、最も好ましくは5mg以上の量で上記式(I)で表される化合物を生産することができる微生物を意味する。
【0013】
そのような微生物としては、例えば、ストレプトマイセス・スピーシーズYM8-053株、及び該菌株に由来する変異株もしくは該菌株の類似菌株であって上記式(I)で表される化合物を生産する能力を有するものを挙げることができる。なお、ストレプトマイセス・スピーシーズYM8-053株は、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)に、平成17年1月25日付で受託番号NITE P−69として寄託されている。
【0014】
ストレプトマイセス・スピーシーズYM8-053株の菌学的性質は以下のとおりである:
a.形態的および培養的性質
1) 胞子の有無 :有り
2) 運動性の有無 :無し
3) マリンアガー平板培養 :良好に生育する。コロニーは菌糸状、半レンズ状、乳白色
4) ISP培地 No.2 平板培養 :生育が悪い。コロニーは菌糸状、乳白色
5) ISP培地 No.3 平板培養 :生育する。コロニーは不規則な菌糸状、盛上がり厚みがある、乳白色〜白色
2) ISP培地 No.4 平板培養 :良好に生育する。コロニーは菌糸状、半球状、乳白色。コロニーの周囲に透明帯あり
3) ISP培地 No.5 平板培養 :生育する。コロニーは不規則な菌糸状、扁平、乳白色〜白色
4) ISP培地 No.6 平板培養 :生育する。コロニーは不規則な菌糸状、盛上がり厚みがあり、乳白色〜白色
5) ISP培地 No.7 平板培養 :生育する。コロニーは不規則な菌糸状、扁平、乳白色〜白色
【0015】
b.生理学的性質
1) 生育温度範囲 :15−37℃
2) 生育塩濃度 :0−7%
3) メラニン様色素の生成 :生成しない
【0016】
ここでいう「変異株」は任意の適当な変異原を用いた変異誘発処理により得られたものであり、「変異原」なる語は、その広義において、例えば変異原効果を有する薬剤のみならずUV照射のごとき変異原効果を有する処理をも含むものと理解すべきである。適当な変異原の例として、エチルメタンスルホネート、UV照射、N−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン、ブロモウラシルのようなヌクレオチド塩基類似体及びアクリジン類が挙げられるが、他の任意の効果的な変異原もまた使用され得る。
【0017】
ここでいう「類似菌株」としては、ストレプトマイセス・スピーシーズYM8-053株の16Sr DNA遺伝子の塩基配列(配列番号1に示す)と95%以上相同な塩基配列で表される16Sr DNA遺伝子を持つ菌株を挙げることができる。16Sr DNA遺伝子の相同性は95%以上であればよいが、97%以上であることが好ましく、98%以上であることがさらに好ましく、100%相同であることが最も好ましい。
【0018】
(2)微生物の培養
本発明における微生物の培養は、通常の微生物の培養方法が用いられる。培地としては、資化可能な炭素源、窒素源、無機物及び必要な生育・生産促進物質を適宜含有する培地であれば、合成培地又は天然培地のいずれでも使用可能である。炭素源としては、グルコース、澱粉、デキストリン、マンノース、フラクトース、シュクロース、ラクトース、キシロース、アラビノース、マンニトール、糖蜜などを単独又は組み合わせて用いることができる。さらに、必要に応じて炭化水素、アルコール類、有機酸、アミノ酸(トリプトファン等)なども用いることができる。窒素源としては塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、尿素、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、乾燥酵母、コーン・スチープ・リカー、大豆粉、綿実かす、カザミノ酸などを単独又は組み合わせて用いることができる。そのほか、必要に応じて食塩、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素ニカリウム、硫酸第一鉄、塩化カルシウム、硫酸マンガン、硫酸亜鉛などの無機塩類を加えることができる。さらに使用する微生物の生育や本発明の化合物の生産を促進する微量成分を適当に添加することができ、当業者であればそのような成分として適当なものを選択することができる。
【0019】
培養法としては、液体培養が適しているが、これに限定されるものではない。培養温度は、25〜37℃が適当であり、培養中の培地のpHは7〜9に維持することが望ましく、震盪速度が30〜120rpmで回転又は往復震盪培養することが望ましい。液体培養で通常5〜14日間培養を行うと、目的化合物が培養液中ならびに菌体中に生成蓄積される。通常は、培養物中の生成量が最大に達した時に培養を停止する。
【0020】
(3)化合物の単離・精製
培養物からの本発明の化合物の単離・精製は、微生物代謝生産物を培養物から単離・精製するために常用される方法に従って行われ得る。ここで、「培養物」とは、培養上清、培養菌体、又は菌体の破砕物のいずれをも意味するものである。例えば培養物を濾過や遠心分離により培養濾液と菌体に分け、菌体をクロロホルム/メタノール(9:1)混合溶媒などで抽出する。また培養濾液は酢酸エチル、クロロホルムなどで抽出することができる。ついで、菌体抽出液、培養濾液若しくは培養濾液の抽出物をそれぞれ単独で又はそれらの2種以上を合わせて濃縮し、カラムクロマトグラフィー、分取薄層クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィーなどにより精製を行い、本発明の化合物を得ることができる。得られた化合物は、NMR解析などの通常の化学的手法により、上記「1.式(I)で表される化合物の性質」に記載した性質を示すか否かを調べることにより、本発明の化合物であることを確認することができる。
【0021】
また、本発明の化合物は塩の形態であってもよい。塩としては薬学的に許容されるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、メタンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、クエン酸塩等が挙げられる。
【0022】
得られた化合物の抗腫瘍活性、例えば、以下のようにして評価することができる。癌細胞をマイクロプレートに播種し、そこに得られた化合物を適当な濃度で添加して培養する。また、対照として化合物無添加群についても同様に培養する。培養終了後、MTTアッセイ等で生存癌細胞数を測定する。測定された癌細胞数を対照のそれと比較することにより癌細胞の増殖抑制効果を評価する。
【0023】
3.本発明の化合物の用途
(1)抗腫瘍剤
本発明の式(I)で表される化合物は、優れた抗腫瘍活性を有するため抗腫瘍剤として有用であり、人体及び動物用医薬品、医薬品原料等として使用することができる。
【0024】
本発明の抗腫瘍剤は、上記式(I)で表される化合物を有効成分として含むものである。本発明の抗腫瘍剤は、上記「2.本発明の化合物の製造」の項に記載の方法に従って調製される、上記式(I)で表される化合物を含有する培養物を含むものであってもよい。さらに本発明の抗腫瘍剤は、他の抗腫瘍剤及び/又は添加剤などをさらに含有するものであってもよい。このような他の抗腫瘍剤及び添加剤は、本発明の化合物の抗腫瘍活性を低減させるものでなければ任意のものを使用することができ、例えば、アドリアマイシン、シスプラチン、タキソール、ハーセプチンなどが挙げられる。
【0025】
本発明の抗腫瘍剤を腫瘍の予防又は治療目的で使用する場合は、予防又は治療の対象は特に限定されない。例えば、癌、肉腫、良性腫瘍などの少なくとも一種の腫瘍について予防又は治療を特異目的として用いることができる。これらの疾病は、単独であっても、併発したものであっても、上記以外の他の疾病を併発したものであっても、使用の対象とすることができる。これらの癌腫は特に限定されるものではなく、例えば脳腫瘍、上咽頭癌、舌癌、食道癌、胃癌、膵臓癌、肝癌、直腸癌、結腸癌、子宮癌、卵巣癌、精巣癌、骨肉腫及び白血病からなる群から選択される少なくとも一種の癌腫等が挙げられる。また単一の癌のみならず複数の癌が併発したものも含まれる。
【0026】
本発明の抗腫瘍剤を投与する対象としては、限定するものではないが、哺乳動物、例え
ば、ヒト、家畜(ウシ、ウマ等)、愛玩動物(イヌ、ネコ等)、実験動物(マウス、ラット、ハムスター等)でありうる。
【0027】
(2)投与
本発明の抗腫瘍剤は、医薬的に許容される担体又は添加物を共に含む医薬製剤として哺乳動物に投与され得る。このような担体及び添加物の例としては、水、医薬的に許容される有機溶剤、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、寒天、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、医薬添加物として許容される界面活性剤などの他、リボゾームなどの人工細胞構造物などが挙げられる。使用される添加物は、医薬組成物の剤形に応じて上記の中から適宜又は組み合わせて選択される。
【0028】
本発明の抗腫瘍剤は、経口経路又は非経口経路のいずれでも投与することができる。
本発明の抗腫瘍剤を経口的に投与する場合、本発明の抗腫瘍剤は、それに適用される錠剤、顆粒剤、散剤、丸剤などの固形製剤、あるいは液剤、シロップ剤などの液体製剤等として製剤化され得る。特に顆粒剤及び散剤は、カプセル剤として単位投与剤形とすることができ、液体製剤の場合は使用する際に再溶解させる乾燥生成物にしてもよい。
【0029】
これら剤形のうち経口用固形剤は通常、それらの組成物中に製剤上一般に使用される結合剤、賦形剤、滑沢剤、崩壊剤、湿潤剤などの添加剤を含有する。また、経口用液体製剤は通常、それらの組成物中に製剤上一般に使用される安定剤、緩衝剤、矯味剤、保存剤、芳香剤、着色剤などの添加剤を含有する。
【0030】
また非経口的に投与する場合は、注射剤又は坐剤などの剤形とすることができる。例えば、注射剤は、ポリアルコキシフラボノイドを溶液、懸濁液、乳液などに溶解又は懸濁して調製されるものであり、通常単位投与量アンプル又は多投与量容器の形態で提供される。
【0031】
また注射剤は、使用する際に適当な担体、例えば発熱物質を含まず滅菌水に再溶解させることができる粉剤であってもよい。注射手法としては、例えば点滴静脈内注射、静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射、皮内注射が挙げられる。これらの非経口投与剤形は、通常それらの組成物中に薬学上一般的に使用される乳化剤、懸濁剤などの添加剤を含有する。
【0032】
上記抗腫瘍剤における本発明の化合物の量は、用途、剤形及び投与経路などにより異なるが、総重量を基準として1〜5重量%、好ましくは2〜3重量%である。また、本発明の化合物の有効量は、投与対象の年齢、投与経路、投与回数により異なり、広範囲に変えることができる。例えば、1日につき体重1kg当たり0.1〜1000mgであり、1日数回から数週間の間隔で投与することができる。
【0033】
以下に本発明を実施例により具体的に説明する。ただし、本発明は実施例によりその技
術的範囲が限定されるものではない。
【実施例】
【0034】
(実施例1)
式(I)の化合物の製造
式(I)の化合物の生産菌としてストレプトマイセス・スピーシーズYM8-053株を用いた。該菌株を、500mLのマリンブロス培地(Difco)を入れた1Lバッフル付き三角フラスコ中で、30℃にて5日間回転震盪(100rpm)培養し、次に行う大量培養の種菌とした。この種菌培養物を1Lのマリンブロス培地の入った2Lバッフル付きフラスコ9本(計9L)に10mLずつ植菌し、30℃、7日間、回転震盪(100rpm)培養した。培養中、培地のpHは特に制御しなかった。
【0035】
このようにして得られた培養液9Lを遠心分離(6000g,30分間)し、菌体と上清とに分離した。上清は等量の酢酸エチルで二回抽出した。菌体は、クロロホルム/メタノール(9:1)で抽出した。抗腫瘍活性のほとんどは上清抽出物に認められたので、次に、得られた上清抽出物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製した。ワコーゲルC200(和光純薬)を担体として用い、移動相として、最初にクロロホルムにて溶出、次に、2%(v/v)メタノール含有クロロホルムにて溶出し、順次メタノール含量を1%刻みで増やしていき、最終的に5%(v/v)メタノール含有クロロホルムで溶出した。2%(v/v)メタノール含有クロロホルムと3%(v/v)メタノール含有クロロホルムにて溶出した画分に抗腫瘍活性が認められた。
【0036】
次に、抗腫瘍活性が認められた画分を高速液体クロマトグラフィー(カラム:Capce11Pak CN(直径15mm、長さ250mm)、移動相A:0.1%TFA/水、移動相B:0.1%TFA/アセトニトリル、グラジエント:0分〜30分 0%(v/v)移動相Bから60%(v/v)移動相Bまでリニアグラジエント、流速10mL/min)にて精製した。本発明の式(I)の化合物は上記の条件で保持時間16〜17分で溶出された。
上記の方法により、培養物計9Lから本発明の式(I)の化合物5mg得た。
【0037】
(実施例2)
抗腫瘍活性の評価
本発明の化合物の抗腫瘍活性を以下のようにして評価した。
ヒト肺癌由来細胞A549細胞を96穴マイクロプレートに4×103個/200μL/we11の濃度で播種し、14時間、COインキュベーター(5%二酸化炭素、37℃)にて前培養した。ここに、希釈系列を作成した式(I)の化合物を添加し、48時間培養した。48時間後にアラマーブルー(和光純薬より購入)を用いて生存細胞数を測定した。その結果、式(I)の化合物は、9.4μMの濃度でA549細胞の細胞増殖を約50%阻害し(すなわちIC50値は約9.4μM)、120μMの濃度でA549細胞を完全に死滅させた。
【産業上の利用可能性】
【0038】
式(I)により表される本発明の化合物は抗腫瘍活性を有し、抗腫瘍剤等の医薬品、医薬品原料として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

で表される化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
請求項1記載の化合物を有効成分として含有する医薬。
【請求項3】
請求項1記載の化合物を有効成分として含有する抗腫瘍剤。
【請求項4】
ストレプトマイセス属に属し、請求項1記載の化合物を生産する能力を有する微生物を培地に培養し、培養物中に該化合物を生成蓄積させ、該化合物を採取することを特徴とする、請求項1記載の化合物の製造方法。
【請求項5】
前記微生物がストレプトマイセス sp. YM8−053株(受託番号NITE P−69)又はその変異株である請求項4記載の製造方法。

【公開番号】特開2007−70318(P2007−70318A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−262225(P2005−262225)
【出願日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成16年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、生物機能活用型循環産業システム創造プログラム/ゲノム情報に基づいた未知微生物遺伝資源ライブラリーの構築 委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(591001949)株式会社海洋バイオテクノロジー研究所 (33)
【Fターム(参考)】