説明

抗菌性のあるポリマー組成物

本発明の一態様は、ポリマーおよび有効量の特定のポリマー添加剤を含んでなる抗菌組成物である。本発明の別の態様は、ポリマー組成物中に有効量のポリマー添加剤を組み込むステップを含んでなる、抗菌ポリマー組成物を製造する方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非浸出性抗菌性を有し、繊維、布帛、フィルム、およびその他の有用な物品の製造における使用に適した、好ましくはポリエステルであるポリマー組成物の分野に関する。具体的には、それは物品およびこのような組成物を製造する方法、特に服飾品、床張り材、および不織布に適した物品に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の医学知識の進歩に伴って、健康を守るためにあらゆる可能な手段を利用する必要性に対する意識が増大している。このような手段としては、細菌などの病原体の感染からの保護を助ける、服飾品、敷物類、およびその他の材料の必要性が挙げられる。これは特に、疾患のクロス感染および術後感染防御が日々の懸念である、病院およびその他のヘルスケア施設において当てはまる。特に重要なのは、医師、看護師、および患者のための不織ガウンおよびその他の服飾品である。織布および不織布にむすびついた微生物の問題は、テキスタイル工業の全部門に見ることができる。微生物レベルの適切な制御は、完成品の安全性と市場での受け入れにとって重要である。
【0003】
市販される抗菌剤には、主として非浸出性および浸出性抗菌剤の2つの主要な分類がある。浸出性抗菌剤は非浸出性とは反対に、繊維/布帛ポリマー造形品および不織繊維と化学的に結しておらず、水分との接触によって除去できる。
【0004】
2003年6月10日にSunらに付与された同一譲受人の米国特許第6,576,340号明細書、および2004年4月20日にSunらに付与された同一譲受人の米国特許第6,723,799号明細書は、ポリマー添加剤を含んでなる酸染色性ポリエステルおよびポリマー組成物、物品、およびこのような組成物および物品を製造する方法を開示し、前記組成物は、繊維、布帛、フィルム、およびその他の有用な物品の製造で使用するのに適している。
【0005】
ポリマーによって達成される染料深度に小さな補正を加えることが所望される場合、非常に少量のポリマー添加剤が必要である。このような場合、組成物は、百万グラムの得られるポリマーあたり約6モル(「mpmg」)程度にわずかな三級アミンを含有できる。小さな補正は、それらのより大きな透過度のために概してポリエステルよりも容易に染色されるナイロンポリマーに効果的であり、好ましい酸染料の場合には、ナイロン中のアミン末端基が染色部位の役割を果たすので効果的である。
【0006】
他方、ポリエステル、特にポリエステル繊維および布帛は染色が困難である。ポリエステルに望ましい特性を与える分子構造および高レベルの配向性および結晶化度は、染料化合物による着色に対する抵抗性にも寄与する。またポリエステル組成物の染色の困難さに寄与するのは、ポリエステルがポリマー鎖内に、塩基性または酸性染料化合物と反応性である染色部位を有さないという特徴である。染色困難ポリマーの有効染色深度は、6mpmgよりもはるかに高い値を要求する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、
a)少なくとも1つのポリエステル、少なくとも1つのポリエーテル、少なくとも1つのポリカーボネート、少なくとも1つのポリオレフィン、またはそれらの組み合わせを含んでなるポリマー組成物、および
b)式
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、A、B、およびQは独立して、脂肪族または芳香族置換基であるが、ただし少なくとも4個の炭素原子がいずれかの2個の窒素基を隔て、Rは脂肪族または芳香族基または水素であり、aは1〜約5であり、nは3〜約10,000であり、窒素基は負に帯電した官能基との相互作用になおも利用できる)を有する反復単位を含んでなる約0.1〜2.0モル%未満のポリマー添加剤、またはその塩
を含んでなる、抗菌ポリマー組成物である。
【0010】
ポリマー組成物は、好ましくはポリエステル、より好ましくはポリアルキレンテレフタレート、さらにより好ましくはポリトリメチレンテレフタレートを含んでなる。好ましくはポリマー添加剤は、ポリ(6,6’−アルキルイミノ−ビスヘキサメチレンアジパミド)、ポリ(6,6’−アルキルイミノ−ビステトラメチレンアジパミド)、ポリ(N,N’−ジアルキルイミノ−トリ(テトラメチレン))アジパミド、またはそれらの組み合わせであり、アルキル基は1〜約4個の炭素原子を有する。
【0011】
本発明の別の態様は、少なくとも1つのポリエステル、少なくとも1つのポリエーテル、少なくとも1つのポリカーボネート、少なくとも1つのポリオレフィン、またはそれらの組み合わせを含んでなるポリマー組成物に、式
【0012】
【化2】

【0013】
(式中、A、B、およびQは独立して、脂肪族または芳香族置換基であるが、ただし少なくとも4個の炭素原子がいずれかの2個の窒素基を隔て、Rは脂肪族または芳香族基または水素であり、aは1〜約5であり、nは3〜約10,000であり、窒素基は負に帯電した官能基との相互作用になおも利用できる)を有する反復単位を含んでなる、有効量のポリマー添加剤またはその塩を組み込むステップを含んでなる、抗菌ポリマー組成物を製造する方法である。
【0014】
本発明別の態様は、
(a)物品を提供するステップと、
(b)物品中に、少なくとも1つのポリエステル、少なくとも1つのポリエーテル、少なくとも1つのポリカーボネート、少なくとも1つのポリオレフィン、またはそれらの組み合わせを含んでなるポリマー組成物を含んでなる抗菌ポリマー組成物、および式
【0015】
【化3】

【0016】
(式中、A、B、およびQは独立して、脂肪族または芳香族置換基であるが、ただし少なくとも4個の炭素原子がいずれかの2個の窒素基を隔て、Rは脂肪族または芳香族基または水素であり、aは1〜約5であり、nは3〜約10,000である)を有する反復単位を含んでなる、有効量のポリマー添加剤またはその塩を組み込むステップと、
(c)ステップ(b)によって製造された物品を窒素基が負に帯電した官能基との相互作用になおも利用できるように染色するステップ
を含んでなる、染色された物品の製造方法である。
【0017】
以下の詳細な説明および添付の特許請求の範囲を参照すれば、これらおよびその他の本発明の態様は当業者には明らかである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本出願人は、本願明細書中で引用された全参考文献の内容全体を本願明細書に具体的に編入する。さらに量、濃度、またはその他の値またはパラメーターが、範囲、好ましい範囲、または好ましい最高値と好ましい最低値の一覧のいずれかとして提示される場合、それは範囲が別々に開示されるか否かにかかわらず、あらゆる最高範囲限界または好ましい値とあらゆる最低範囲限界または好ましい値とのあらゆる対から形成される全範囲を具体的に開示するものと理解される。本願明細書で数値範囲が列挙される場合、特に断りのない限り、範囲はその終点、および範囲内の全整数と少数を含むことが意図される。範囲を画定する際に列挙される特定の値に、本発明の範囲を限定することは意図されない。
【0019】
本願明細書の文脈では、いくつかの用語が使用される。
【0020】
「微生物」とは、独立して、作用または機能する能力を有する、またはそれを発達できる、顕微鏡または限外顕微鏡サイズの生物を意味する。微生物としては、例えば細菌、真菌、ウィルス、原生動物、酵母、および藻類が挙げられる。
【0021】
「抗菌剤」とは、微生物を殺し、微生物の生育を阻害しまたは防止できる作用物質を意味する。ここでの用法では、抗菌剤としては、抗細菌剤、すなわち細菌を殺し、細菌の生育を阻害しまたは防止できる作用物質、および抗真菌剤、すなわち真菌を殺し、真菌の生育を阻害しまたは防止できる作用物質が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0022】
「抗菌性」とは、本願明細書で述べられるように有効量のポリマー添加剤が組み込まれたポリマー組成物が、微生物含有ブロスに一定時間接すると、開始微生物個体数の指数関数的減少があることを意味する。
【0023】
ポリマー組成物に関わる言及は、単一ポリマー、またはこのようなポリマーの配合物または混合物、異なるポリマーの配合物または混合物、異なる分子量を有する単一ポリマーの配合物または混合物、または異なる分子量を有する異なるポリマーの配合物または混合物を示す。例えば「ポリエステル」とは、1つ以上のポリエステルを意味する。したがって例えば本出願人がXモル%のポリエステルを含有する組成物について言及する場合、組成物はXモル%の1つのポリエステルまたはXモル%の異なるポリエステル全てを含んでなってもよい。同様に「ポリマー添加剤」は、1つ以上のポリマー添加剤を意味する。
【0024】
本発明の一態様は、
a)少なくとも1つのポリエステル、少なくとも1つのポリエーテル、少なくとも1つのポリカーボネート、少なくとも1つのポリオレフィン、またはそれらの組み合わせを含んでなるポリマー組成物、および
b)式
【0025】
【化4】

【0026】
(式中、A、B、およびQは独立して、脂肪族または芳香族置換基であるが、ただし少なくとも4個の炭素原子がいずれかの2個の窒素基を隔て、Rは脂肪族または芳香族基または水素であり、aは1〜約5であり、nは3〜約10,000であり、窒素基は負に帯電した官能基との相互作用になおも利用できる)を有する反復単位を含んでなる0.1〜2.0モル%未満のポリマー添加剤またはその塩
を含んでなる、染色された物品に関する。
【0027】
好ましくは抗菌ポリマー組成物の押出し前に、ポリマー添加剤がポリマー組成物中に組み込まれる。ポリマー組成物は好ましくはポリエステル、より好ましくはポリアルキレンテレフタレート、およびなおもより好ましくはポリトリメチレンテレフタレートである。
【0028】
本発明の別の態様は、少なくとも1つのポリエステル、少なくとも1つのポリエーテル、少なくとも1つのポリカーボネート、少なくとも1つのポリオレフィン、またはそれらの組み合わせを含んでなるポリマー組成物に、式
【0029】
【化5】

【0030】
(式中、A、B、およびQは独立して、脂肪族または芳香族置換基であるが、ただし少なくとも4個の炭素原子がいずれかの2個の窒素基を隔て、Rは脂肪族(好ましくは非環式アルキル)または芳香族基(好ましくはアリール)または水素であり、aは1〜約5であり、nは3〜約10,000であり、窒素基は負に帯電した官能基との相互作用になおも利用できる)を有する反復単位を含んでなる有効量のポリマー添加剤、またはその塩を組み込むステップを含んでなる、抗菌ポリマー組成物を製造する方法である。通例、三級アミン基は負に帯電した官能基と反応する。穏やかに酸性の環境内でも三級アミン基は容易にプロトン化でき、例えば負に帯電した細菌細胞壁と反応できる。
【0031】
ポリマー添加剤は、上に示す反復単位から本質的になる、またはそれからなるポリマーであることができる。代案としては、それはポリマー添加剤単位およびその他のポリマー単位を含有するポリマーであることができる。加熱すると、最初のポリマー添加剤のいくらかは未反応のままでありながら、ポリマー添加剤のほとんどはポリマーまたはポリマー形成化合物と反応して新しいポリマー添加剤(ポリマー)を形成するので、双方のタイプのポリマーが存在できる。例えば加熱前の組成物は、ポリエステルおよびポリマー添加剤を含んでなることができ、加熱後は、ポリエステル、反応したポリエステルとポリマー添加剤とのブロックポリマー、および未反応ポリマー添加剤の組み合わせを形成できる。
【0032】
好ましくはnは3〜1,000であり、より好ましくは3〜100であり、さらにより好ましくは3〜20である。
【0033】
上式内の
【0034】
【化6】

【0035】
によって表される三級アミンの数は反復単位毎に異なることができるので、aは平均値である。好ましくはAは1または2であり、より好ましくは1である。
【0036】
Rが肪族または芳香族基である場合、それは窒素または酸素などのヘテロ原子を包含し、すなわちそれは置換または非置換であることができる。それは好ましくは炭素原子1〜8個のアルキル基である。ポリマー添加剤の末端基は、水素または水酸化物であることができる。
【0037】
好ましくはA、B、およびQは独立して、1〜20個の炭素を含有するアルキレン、または6〜18個の炭素を含有するアリーレン置換基であるが、ただしAまたはBはそれぞれ少なくとも4個の炭素を含有するアルキレン単位または少なくとも6個の炭素を含有するアリーレン単位のいずれかを含有するが、ただしQは少なくとも2個の炭素を含有するアルキレン単位または少なくとも6個の炭素を含有するアリーレン単位のいずれかを含有する。アルキレンおよびアリーレン単位は、置換基および分枝が実質的に抗菌性を妨げない限り、置換または非置換、直鎖または分枝鎖などであることができる(例えば炭素鎖はエーテル基を含有できる)。
【0038】
ポリマー組成物はあらゆる技術を使用して製造できるが、ただしポリマー組成物は、抗菌ポリマー組成物の抗菌性を妨げるあらゆる物質の相当量を含有しない。例えばポリトリメチレンテレフタレートは、技術分野で既知のあらゆる方法によって製造できる。ポリマー組成物として有用なポリトリメチレンテレフタレートは、商品名Sorona(登録商標)の下にE.I.du Pont de Nemours & Company(Wilmington,Del.)から市販される。
【0039】
好ましい数平均分子量(「M」)は、使用するポリマー組成物に左右される。ポリエーテルのMは、好ましくは約300〜2,000の範囲である。ポリカーボネートのMは、好ましくは約500〜2,000の範囲である。ポリオレフィンのMは、好ましくは約30,000〜45,000の範囲である。好ましい実施形態では、ポリアルキレンテレフタレートのMは、好ましくは少なくとも15,000、より好ましくは少なくとも18,000、および好ましくは40,000以下、より好ましくは35,000以下である。ポリエチレンテレフタレートがポリアルキレンテレフタレートである場合、Mはさらにより好ましくは15,000〜25,000の範囲であり、約25,000のMが最も好ましい。ポリテトラメチレンテレフタレートがポリアルキレンテレフタレートである場合、Mはさらにより好ましくは25,000〜35,000の範囲であり、約27,000のMが最も好ましい。ポリトリメチレンテレフタレートがポリアルキレンテレフタレートである場合、Mはさらにより好ましくは25,000〜35,000の範囲であり、約28,000〜約29,000のM範囲が最も好ましい。
【0040】
ポリマー添加剤は、同一譲受人の米国特許第6,723,799号明細書で述べられるようにして調製される。好ましくは二級アミン単位を含有するポリマー添加剤は、ジカルボン酸と二級アミン単位を含有するポリアミンとを重合して調製される。好ましくは三級アミン単位を含有するポリマー添加剤は、ジカルボン酸と二級アミン単位を含有するポリアミンとを重合して、次に得られるポリアミド中の二級アミン単位をアルキル化して、対応する三級アミン単位を含有するポリアミドを形成して調製される。より好ましくは上のアルキル化は、ホルムアルデヒドおよびギ酸を使用して、酸性条件下でのメチル化によって実施される。代案としては、三級アミン単位またはその塩を含有するポリアミンと1つ以上のその他のモノマーまたはポリマー単位とを重合して、三級ポリマー添加剤を調製してもよい。
【0041】
より好ましくはポリマー添加剤は、(i)二級または三級アミン単位またはその塩を含有するポリアミンと、(ii)その他のモノマー単位とを重合して調製され、ポリアミンは、式
N(CH[NR(CHNH
(式中、同一または異なることができるmおよびnは4〜10の整数であり、aは1〜2であり、Rは水素または1〜4個の炭素を含有する直鎖または分枝鎖のアルキル基である)を有するものから選択される。より好ましくはポリアミンは、メチル−ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、メチル−ビス(ヘキサメチレン)テトラミン、メチル−ビス(テトラメチレン)トリアミン、およびジメチル−ビス(テトラメチレン)テトラミン、またはその塩から選択される。好ましくはポリアミン単位は、アジペート、テレフタレート、イソフタレート、またはナフタレート単位と組み合わせられる。
【0042】
好ましくはポリマー添加剤は、ポリ(6,6’−アルキルイミノ−ビスヘキサメチレンアジパミド)、ポリ(6,6’−アルキルイミノ−ビステトラメチレンアジパミド)、ポリ(N,N’−ジアルキルイミノ−トリ(テトラメチレン))アジパミド、またはそれらの混合物であり、アルキル基は1〜4個の炭素原子を有する。
【0043】
ポリマー添加剤のM(ポリマー単位との反応前)は、好ましくは少なくとも約1,000、より好ましくは少なくとも約3,000、最も好ましくは少なくとも約4,000、および好ましくは約10,000以下、より好ましくは約7,000以下、最も好ましくは約5,000以下である。好ましいMは、使用するポリマー添加剤、組成物のバランス、および所望の特性に左右される。
【0044】
上のポリマー添加剤は、一部は同一譲受人の米国特許第6,576,340号明細書、および一部は同一譲受人の米国特許第6,723,799号明細書で開示され、それらは酸可染性ポリエステルおよびナイロン組成物を製造するのに効果的であることが分かった。意外にもこれらのポリマー添加剤は、これらの組成物中の抗菌性を促進する。さらにこれらの添加剤を含有するポリトリメチレンテレフタレート布帛を酸染料によって染色すると、布帛はそれらの抗菌性を失ったように見える。酸染色はポリマー添加剤の部位で生じ、すなわち酸染料分子がポリマー添加剤の窒素基に結合する。したがってポリマー添加剤は、ここでの用法では酸染色すべきでなく、またはそれらのアミン部位を不可逆的に拘束するあらゆる同等の変性ステップを施すべきでない。このようにして、いくつかのまたは全ての元の窒素基は、負に帯電した官能基との相互作用になおも利用できる。
【0045】
しかし当業者によく知られているその他の染色技術が使用できる。例えばポリマーのアミン部位を拘束しないやり方で、ポリマー添加剤を含んでなる物品を顔料染色できる。繊維を紡績する、またはフィルムを押し出す前または後に、顔料色素を添加して上の基準を満たす染色方法を提供してもよい。
【0046】
好ましくはポリマー添加剤が溶融ブレンドされて、ポリマー組成物中に組み込まれる。温度は、各構成要素の融点を超えるが、最低分解温度未満であるべきであり、したがってポリマー組成物およびポリマー添加剤のあらゆる特定の組成物について調節しなくてはならない。ポリマー組成物およびポリマー添加剤を加熱して同時に混合してもよく、加熱が起きる前に別々の装置内で予備混合してもよく、または代案としては別々に加熱して次に混合してもよい。さらにポリマー組成物を形成して次に使用してもよく、または使用中に形成してもよい(例えばポリマー組成物およびポリマー添加剤のチップまたはフレークを繊維またはフィルム製造工場の押出し機内で混合および加熱する、または繊維またはフィルム製造において溶融ポリマー組成物およびポリマー添加剤をブレンドする)。溶融ブレンドは、ポリマー組成物次第で好ましくは約200〜約295℃、より好ましくは約260〜約285℃で実施される。ポリトリメチレンテレフタレートでは、好ましい温度は約230〜約270℃であり、より好ましくは約260℃である。ポリエチレンテレフタレートでは、好ましい温度は約200〜約295℃であり、より好ましくは約280〜約290℃である。ポリブチレンテレフタレートでは、好ましい温度は約200〜約295℃であり、より好ましくは約250〜約275℃である。
【0047】
ポリマー組成物とポリマー添加剤は反応できる。抗菌組成物はポリマー組成物をポリマー添加剤よりも多量に含んでなるので、ポリマー添加剤を含んでなる抗菌ポリマー組成物は、ポリマー組成物およびポリマー添加剤反復単位および未反応ポリマー組成物を含んでなる。多くの場合、抗菌ポリマー組成物は、ポリマー組成物からの単位を有さないポリマー添加剤を含有する。好ましい実施形態では、抗菌ポリマー組成物は、ポリエステルとポリマー添加剤とのブロック共重合体を含んでなる。ブロック共重合体とは、例えばポリ(6,6’−アルキルイミノ−ビスヘキサメチレンアジパミド)ポリマー添加剤とポリトリメチレンテレフタレートに関して、共有結合によってポリマー添加剤に結合するポリエステルによって形成されたランダム共重合体を意味する。
【0048】
抗菌ポリマー組成物は、未反応ポリマー組成物およびポリマー添加剤をさらに含んでなることができる。
【0049】
好ましくは、有効量のポリマー添加剤をポリマー組成物中に組み込むことは、試験材料上で24時間後、微生物濃度に、ポリマー添加剤なしの対照材料と比べて少なくとも約2ログの減少をもたらす。有効量のポリマー添加剤は、より好ましくは少なくとも約3ログの減少、さらにより好ましくは4ログの減少をもたらす。
【0050】
一実施形態では、ポリマー組成物中に有効量のポリマー添加剤を組み込むことは、ポリマー組成物とポリマー添加剤とを含む抗菌ポリマー組成物中の反復単位数を基準にして、約0.1〜約20モル%、より好ましくは約0.5〜約10モル%、さらにより好ましくは約1〜約5モル%、さらになおより好ましくは約2〜約4モル%の二級または三級アミン単位を有する抗菌ポリマー組成物をもたらす。別の実施形態では、ポリマー組成物に有効量のポリマー添加剤を組み込むことは、ポリマー組成物とポリマー添加剤とを含む抗菌ポリマー組成物中の反復単位数を基準にして、約0.1〜約15モル%、より好ましくは約0.5〜約7モル%、さらにより好ましくは約0.7〜約2モル%の二級または三級アミン単位を有する抗菌ポリマー組成物をもたらす。
【0051】
本発明のポリエステルまたはナイロン組成物を使用して、高強度造形品をはじめとする抗菌造形品を製造できる。例えば特にポリエステルがポリトリメチレンテレフタレートである本発明の実施形態では、2.0g/d以上の粘着性、および30%〜90%以上、好ましくは60%〜95%以上の染料消耗を有するメルトスパンフィラメントが得られる。ポリトリメチレンテレフタレートは、概して高強度繊維またはフィラメントに紡ぐのが困難なポリエステルと見なされているので、これはかなり顕著である。追加的な困難性は、例えば抗菌性などのポリマーの1つの特性を増強する添加剤の使用が、加工性および強度などのその他の特性に悪影響を与えることが多いことである。しかし本発明に従って、例えばポリ(トリメチレン)テレフタレートである、抗菌性高強度のポリアルキレンテレフタレート繊維が得られる。
【0052】
抗菌ポリマー組成物は、既知の添加剤をさらに含んでなり、強度を改善し、または押出し後加工を容易にできる。例えばナイロン6またはナイロン6,6などのヘキサメチレンジアミンおよび/またはポリアミドが少量(例えば約0.5〜約5モル%)添加されて、強度および加工性を付加してもよい。所望ならば、抗菌ポリマー組成物は、例えば抗酸化剤、艶消剤(例えばTiO、硫化亜鉛、または酸化亜鉛)、着色剤(例えば染料または顔料)、安定剤、難燃剤、充填材(炭酸カルシウムなど)、追加的抗菌剤、帯電防止剤、蛍光増白剤、増量剤、加工助剤、増粘剤、調色顔料、およびその他の官能性添加剤などの様々なその他の添加剤を含有できる。ポリマーまたは繊維にTiOが添加されてもよい。
【0053】
組成物は、繊維、布帛、フィルム、およびその他の有用な物品、そしてこのような組成物および物品を製造する方法において有用である。「繊維」とは技術分野で、連続フィラメント、ステープル、およびその他の細断繊維などの繊維として認識されるアイテムを指す。繊維は、単一成分(「ホモ繊維」と称されることもある)、またはシース−コア、偏心シース−コア、および並列繊維、およびそれらから作られたヤーンをはじめとする、二成分またはその他の多成分繊維であってもよい。布帛としては、編地、織布、および不織布が挙げられる。組成物はフィルムまたはフィルム層などを形成してもよい。
【0054】
嵩高加工された連続フィラメントおよび布帛は、米国特許第5,645,782号明細書および米国特許第5,662,980号明細書で述べられる方法に従って製造してもよい。繊維および布帛、およびそれらの製造について述べているその他の文献としては以下が挙げられる。米国特許第5,885,909号明細書および米国特許第5,782,935号明細書、国際公開第99/06399号パンフレット、国際公開第99/27168号パンフレット、国際公開第99/39041号パンフレット、国際公開第00/22210号パンフレット、国際公開第00/26301号パンフレット、国際公開第00/29653号パンフレット、国際公開第00/29654号パンフレット、国際公開第00/39374号パンフレット、および国際公開第00/47507号パンフレット、欧州特許第745 711号明細書、欧州特許第1 016 741号明細書、欧州特許第1 016 692号明細書、欧州特許第1 006 220号明細書、および欧州特許第1 033 422号明細書、英国特許第1254826号明細書、特開平11−100721号公報、特開平11−107036号公報、特開平11−107038号公報、特開平11−107081号公報、特開平11−189920号公報、および特開平11−189938号公報、米国特許出願第09/518,732号明細書および米国特許出願第09/518,759号明細書、およびH.L.Traub著「Synthese und textilchemische Eigenschaften des Poly−Trimethyleneterephthalats」、Dissertation Universitat Stuttgart(1994年)、H.L.Traub著「Dyeing properties of Poly(trimethylene terephthalate)fibres」、Melliand(1995年)、H.L.Traubら著「Mechanical Properties of fibers made of polytrimethylene terephthalate」、Chemical Fibers International(CFI)、第45巻、110〜111頁(1995年)、W.Oppermannら著「Fibers Made of Poly(trimethylene terephthalate)」、Dornbirn(1995年)、H.S.BrownおよびH.H.Chuah著「Texturing of Textile Filament Yarns Based on Poly(trimethylene terephthalate)」、Chemical Fibers International、47:1、1997年、72〜74頁、Schauhoff,S.著「New Developments in the Production of Polytrimethylene Terephthalate(PTT)」、Man−Made Fiber Year Book(1996年9月)。
【0055】
抗菌ポリマー組成物は、例えばポリ(エチレンテレフタレート)およびポリ(トリメチレンテレフタレート)、またはポリ(エチレンテレフタレート)およびポリ(テトラメチレンテレフタレート)を含んでなる二成分繊維などの抗菌ポリマー二成分繊維を製造するのに使用できる。ポリ(エチレンテレフタレート)およびポリ(トリメチレンテレフタレート)をベースとする二成分繊維が好ましい。ポリマー添加剤は、どちらかのまたは双方の構成要素中に組み込むことができる。構成要素はシース−コア、偏心シース−コア、または並列関係に配列できる。延伸、熱処理、および弛緩時に、二成分繊維がクリンプできて伸縮性繊維を形成することが所望される場合、偏心シース−コアまたは並列関係が使用でき、より高いクリンプレベルのためには並列が好ましい。好ましいポリエチレンテレフタレート/ポリトリメチレンテレフタレート二成分繊維は、米国特許第6,692,687号明細書で述べられるようにして製造できる。これらの二成分繊維中で使用されるポリエステルの片方または双方は、コポリエステルであることができる。このようなコポリエステル中で有用なコモノマーについては、これまでに述べられている。コモノマーは、約0.5〜15モル%範囲のレベルでコポリエステル中に存在できる。
【実施例】
【0056】
続く実施例で、本発明をさらに定義する。これらの実施例は、本発明の好ましい実施形態を示しながら、例証のためにのみ提供されるものとする。上の考察およびこれらの実施例から、当業者は本発明の好ましい特徴を見極められ、その精神と範囲を逸脱することなく、様々な用途および条件に適合するように本発明の様々な変更および修正ができる。
【0057】
略語の意味は次の通り。「h」は時間を意味し、「mL」はミリリットルを意味し、「mg」はミリグラムを意味し、「wt%」は重量%(百分率)を意味し、「Me−BHMT」はメチル−ビス(ヘキサメチレン)トリアミンを意味し、「Me−BHMT−TAM」はメチル−ビス(ヘキサメチレン)テトラミンを意味し、「3GT」はポリトリメチレンテレフタレートを意味し、「2GT」はポリエチレンテレフタレートを意味し、「CFU」はコロニー形成単位を意味し、「AATCC」は米国繊維化学者色彩技術者協会を意味し、「ATCC」は米国微生物系統保存機関を意味し、「PE」はポリエチレンを意味する。
【0058】
一般実験手順
固定化され緩慢に拡散する抗菌剤のために開発された方法を使用して、標本の抗菌活性を試験した。これは試験期間中に緩衝液中の試験標本の絶え間ない撹拌によって、微生物と試験標本間の良好な接触を確実にする。試験細菌はグラム陽性細菌である黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(ATCC No.6538)、およびグラム陰性細菌である肺炎杆菌(Klebsiella pneumoniae)(ATCC No.4352)であった。手関節型作動振盪機上で、25〜750mgのサンプルと共に、75mLのリン酸塩緩衝液に懸濁した細菌を振盪した。全測定は、24時間後にトリプチケースソイ寒天(TSA、BBL)プレートに播種し、プレートを35℃でインキュベートして実施した。抗菌剤Dow Corning−5700(「DC−5700」)を含有するDacron(登録商標)2GT繊維を陽性対照として使用した。未処理Dacron(登録商標)繊維が負の対照の役目をした。Dacron(登録商標)2GTはE.I.du Pont de Nemours & Co.(Wilmington,Del.)から入手できる。二連のサンプルおよび対照を評価し、試験における変動を判定した。
【0059】
硬質表面試験(フィルムまたはポリマー造形品)では、試験材料のタイルに既知濃度の微生物を接種して、高湿度でインキュベートして乾燥を遅らせた。微生物を数えあげる標準微生物学的技術に続いて、例えば抗菌剤なしの対照材料と比べて試験材料上の濃度の3ログの減少が実証される場合、顕著な有効性が実証された。このレベルの有効性は、米国環境保護庁(「EPA」)によって「抗細菌硬質表面」活性を有すると認められている。試験細菌は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(ATCC No.6538)および大腸菌(Escherichia coli)(ATCC No.25922)であった。
【0060】
繊維の殺真菌活性を試験するために、二連の対照サンプルを評価して試験における変動を判定した。試験真菌は、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)(ATCC No.6275)であった。VWR軌道振盪機上で20mgのサンプルと共に、2mLのリン酸塩緩衝液に懸濁した真菌を振盪した。数えあげは、トリプチケースソイ寒天(TSA、BBL)プレートに播種し、30℃で<48時間インキュベーションした後に実施した。DC−5700を含有するDacron(登録商標)繊維を陽性対照として使用した。未処理Dacron(登録商標)繊維が負の対照の役目をした。
【0061】
標本の抗菌活性は、死亡率定数k、および活性定数Δtを使用して報告され、tは接触時間である。死亡率定数kは、開始微生物個体数の指数関数的減少に基づく抗菌活性の尺度である。活性定数Δtは、対照標本と比べた処理済み標本の抗菌活性の尺度である。
【0062】
「Δt」値は次のようにして、下一桁まで計算される。
Δt=接触時間tに対する活性定数(=C−B)
C=X時間インキュベーション(好ましくはX=24)後の未処理対照標本フラスコ内の平均log10微生物濃度
B=X時間インキュベーション(好ましくはX=24)後の試験アイテムのフラスコ内の平均log10微生物濃度
【0063】
抗菌活性レベルである細菌の形成単位はΔt値で表され、Δt=接種済み対照のlog CFU/mL−試験サンプルのlog CFU/mL(どちらも同一曝露時間での)である。
【0064】
「Δt」値は、表1に列挙した値と同等である。
【0065】
表1.「Δt」値の意味の要約

【0066】
続く実施例の繊維は、断りのない限り米国特許第6,576,340号明細書および米国特許第6,723,799号明細書で開示される方法に従って調製した。
【0067】
実施例1
ポリマー組成物中の4モル%三級アミン(Me−BHMT、ポリマー添加剤の反復単位を含むポリマー反復単位の総モル基準)を使用して、3GT共重合体を調製した(ポリマーの調製、配合、および紡績についての詳細な説明は米国特許第6,723,799号明細書にある)。共重合体を溶融押出しして、ペレットを乾燥させ繊維に紡いだ。4モル%Me−BHMTを含有する3GT繊維での抗細菌試験結果、および対照繊維での試験結果を表2に示す。よく知られている浸出性抗細菌剤(DC−5700)を使用した陽性Dacron(登録商標)対照と比較して、および抗細菌剤なしでMe−BHMT添加剤なしの陰性対照と比較してサンプルを試験した。この方法の検出限界は、全ての表で最小10CFU/mLである。
【0068】
表2.グラム陰性およびグラム陽性細菌に対するポリエステル繊維の抗菌特性

【0069】
4.0モル%Me−BHMTを含有する3GT繊維の抗細菌性は優れていた(Δtの4ログの減少)。結果は、浸出性抗細菌剤(陽性Dacron(登録商標)対照)で処理されたサンプルと本質的に等しかった。3GTの未処理対照サンプルは、抗細菌活性を有さなかった。
【0070】
実施例2
ポリマー組成物中の2モル%Me−BHMTを使用して、3GT共重合体を調製した。ポリマーをペレット化し、ペレットを2GTおよび3GTと共に二成分繊維に紡いだ(ポリマーの調製、配合、および紡績についての詳細な説明は米国特許第6,692,687号明細書にある)。対照2GT/3GT二成分繊維を同様にして得た。結果を表3に示す。
【0071】
表3.二成分繊維上での抗細菌効率結果

【0072】
2.0モル%Me−BHMTを含有する2GT/3GT繊維の抗細菌性(Δtの4ログの減少)は、陽性Dacron(登録商標)対照(抗細菌剤で処理済み)と同一であった。対照二成分繊維は、抗細菌活性を有さなかった。
【0073】
実施例3
2モル%Me−BHMT−TAMを使用して、3GT共重合体を調製した(ポリマーの調製、配合、および紡績についての詳細な説明は米国特許第6,723,799号明細書にある)。共重合体を溶融押出しし、ペレットを繊維に紡いだ。対照3GT繊維を同様にして調製した。結果を表4に示す。
【0074】
表4.繊維上での抗細菌効率結果

【0075】
実施例3の繊維は、処理済みDacron(登録商標)対照と同一の抗細菌活性を有した。対照3GT繊維は活性を有さなかった。
【0076】
実施例4A
実施例1と同様にして、4モル%Me−BHMTを使用して3GT共重合体繊維を調製した。繊維に標準洗濯サイクルを施した(AATCC 4サイクル、家庭洗濯20サイクルに相当)。実施例1と同様にして対照3GT繊維を調製した。結果を表5に示す。
【0077】
実施例4B
洗浄サイクルが家庭洗濯30サイクルに相当するAATCC 6サイクルであったこと以外は、実施例4Aと同様にして試験を実施した。結果を表5に示す。
【0078】
表5.4回および6回の経済洗濯サイクル後の抗細菌試験

【0079】
表5に示されるように、Me−BHMTポリマーを使用して調製された3GT繊維は、4回の経済洗濯サイクル後に処理済みDacron(登録商標)対照繊維と同一の抗細菌性を有した(4ログの減少)。Me−BHMTポリマーを使用して調製された3GT繊維は、6回の経済洗濯サイクル後に3ログの減少を示した。対照3GT繊維は活性を有さなかった。
【0080】
実施例5A
3GT/2モル%Me−BHMT共重合体を使用して、二軸押出し機(2ミル、4ミル、および6ミル厚さ)によって、ポリマーフィルムを調製した(ポリマー調製および化合物に関する詳細な説明は、米国特許第6,723,799号明細書にある)。厚さ2ミルのサンプルを試験のために使用した。サンプルに対して標準抗細菌試験を実施した。抗菌剤なしの対照材料と比べて、試験材料濃度の3ログの減少が、顕著な有効性を実証した。試験細菌は黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(ATCC No.6538)であった。結果を表6に示す。
【0081】
実施例5B
3GT/4モル%Me−BHMT共重合体を使用したこと以外は、実施例5Aと同様にしてポリマーフィルムを調製した。結果を表6に示す。
【0082】
実施例5C
3GT/1モル%Me−BHMT−TAM共重合体を使用したこと以外は、実施例5Aと同様にしてポリマーフィルムを調製した。結果を表6に示す。
【0083】
表6.ポリマーフィルムサンプル上での抗細菌試験結果

【0084】
実施例5A、5B、および5Cは、処理済みDacron(登録商標)対照と同一の抗菌剤有効性を有した(4ログの減少)。対照3GTフィルムは活性を有さなかった。
【0085】
実施例6A
3GT/2モル%Me−BHMT共重合体を使用して、プレス成形によってポリマー造形品(硬質ポリマーディスク)を調製した(ポリマー調製および化合物に関する詳細な説明は、米国特許第6,723,799号明細書にある)。3GT対照サンプルを同様にして調製した。サンプルに対して標準抗細菌試験を実施した。試験細菌は大腸菌(Escherichia coli)(ATCC No.25922)であった。結果を表7に示す。
【0086】
実施例6B
実施例6Aと同様にして、3GT/4モル%Me−BHMT共重合体を使用したポリマー造形品(硬質ポリマーディスク)。3GT対照サンプルを同様にして調製した。サンプルに対して標準抗細菌試験を実施した。結果を表7に示す。
【0087】
実施例6C
実施例6Aと同様にして、3GT/1モル%Me−BHMT−TAM共重合体を使用したポリマー造形品(硬質ポリマーディスク)。3GT対照サンプルを同様にして調製した。サンプルに対して標準抗細菌試験を実施した。結果を表7に示す。
【0088】
表7.ポリマー造形品上での抗細菌試験結果

【0089】
実施例6A、6B、および6C(3ログの減少)は、抗細菌活性を実証する。対照3GTアイテムは活性を有さなかった。
【0090】
実施例7A
ポリマーを溶液中に保つ温度および圧力を使用するポリマーが閉鎖容器内で溶剤に溶解される典型的な工業手順を使用して、不織繊維を調製した。指定の温度(溶剤が室温で蒸発するように十分高い)において、ポリマーが溶液から出て来はじめるように(曇り点)圧力を低下させる。次に吐糸管オリフィス出口の栓を抜き、溶剤がポリマーをフード内の大気条件に迅速に押し出す。溶剤が即座に蒸気に「急速に気化」して排気管に運ばれる一方で、ポリマーは迅速な排出中に延伸されて長い絡み合った繊維に固化する(方法の詳細な説明は、2002年10月1日にShinらに付与された米国特許第6,458,304号明細書にある)。
【0091】
本実施例では、85wt%のPEおよび15wt%の3GT/4モル%Me−BHMT共重合体を使用して、不織繊維を調製した。PE対照繊維を同様にして調製した。結果を表8に示す。
【0092】
実施例7B
80wt%のPEおよび20wt%の3GT/4モル%Me−BHMT共重合体を使用して、不織繊維を調製した。PE対照繊維を同様にして調製した。結果を表8に示す。
【0093】
実施例7C
70wt%のPEおよび30wt%の3GT/4モル%Me−BHMT共重合体を使用して、不織繊維を調製した。PE対照繊維を同様にして調製した。結果を表8に示す。
【0094】
実施例7D
50wt%のPEおよび50wt%の3GT/4モル%Me−BHMT共重合体を使用して、不織繊維を調製した。PE対照繊維を同様にして調製した。結果を表8に示す。
【0095】
表8.不織繊維上での抗細菌試験結果

【0096】
不織繊維の各組成物は、グラム陽性およびグラム陰性細菌に対して優れた抗細菌性を示した。実施例7A、7B、7C、および7Dは、処理済みDacron(登録商標)対照と同一の有効性を有した。PEおよび3GT対照繊維は、抗細菌活性を示さなかった。
【0097】
実施例8A
85wt%のPEおよび15wt%の3GT/4モル%Me−BHMT共重合体を使用して、不織繊維を調製した。PE対照繊維を同様にして調製した。サンプルを抗真菌有効性について試験した。結果を表9に示す。
【0098】
実施例8B
80wt%のPEおよび20wt%の3GT/4モル%Me−BHMT共重合体を使用して、不織繊維を調製した。PE対照繊維を同様にして調製した。サンプルを抗真菌有効性について試験した。結果を表9に示す。
【0099】
実施例8C
70wt%のPEおよび30wt%の3GT/4モル%Me−BHMT共重合体を使用して、不織繊維を調製した。PE対照繊維を同様にして調製した。サンプルを抗真菌有効性について試験した。結果を表9に示す。
【0100】
実施例8D
50wt%のPEおよび50wt%の3GT/4モル%Me−BHMT共重合体を使用して、不織繊維を調製した。PE対照繊維を同様にして調製した。サンプルを抗真菌有効性について試験した。結果を表9に示す。
【0101】
実施例8E
ポリマー組成物中の4モル%三級アミン(Me−BHMT、ポリマー添加剤の反復単位を含むポリマー反復単位の総モル基準)を使用して、3GT共重合体を調製した。共重合体を溶融押出しして、ペレットを乾燥させ繊維に紡いだ。サンプルを抗真菌有効性について試験した。結果を表9に示す。
【0102】
表9.不織繊維上での抗真菌試験結果

【0103】
実施例8Dおよび実施例8Eは、処理済みDacron(登録商標)対照と比べて2ログの減少を示す。より少量の3GT/4モル%Me−BHMT共重合体を含有する実施例8A、8B、および8Cは、ごくわずかな効果しかなかった。PEおよび対照3GT繊維は、抗真菌活性を示さなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも1つのポリエステル、少なくとも1つのポリエーテル、少なくとも1つのポリカーボネート、少なくとも1つのポリオレフィン、またはそれらの組み合わせを含んでなるポリマー組成物、および
b)式
【化1】

(式中、A、B、およびQは独立して、脂肪族または芳香族置換基であるが、ただし少なくとも4個の炭素原子がいずれかの2個の窒素基を隔て、Rは脂肪族または芳香族基または水素であり、aは1〜5であり、nは3〜10,000であり、窒素基は負に帯電した官能基との相互作用になおも利用できる)を有する反復単位を含んでなる0.1〜2.0モル%未満のポリマー添加剤またはその塩
を含んでなる抗菌ポリマー組成物。
【請求項2】
ポリマー組成物がポリアルキレンテレフタレートを含んでなる、請求項1に記載の抗菌ポリマー組成物。
【請求項3】
ポリアルキレンテレフタレートがポリトリメチレンテレフタレートを含んでなる、請求項2に記載の抗菌ポリマー組成物。
【請求項4】
aが1〜2である、請求項1に記載の抗菌ポリマー組成物。
【請求項5】
Aが1である、請求項4に記載の抗菌ポリマー組成物。
【請求項6】
A、B、およびQが独立して、4〜20個の炭素を含有するアルキレン置換基または6〜18個の炭素を含有するアリーレン置換基を含んでなるが、ただしAまたはBはそれぞれ少なくとも4個の炭素を含有するアルキレンまたは少なくとも6個の炭素を含有するアリーレンのいずれかを含有するが、ただしQは少なくとも2個の炭素を含有するアルキレンまたは少なくとも6個の炭素を含有するアリーレンのいずれかを含有する、請求項1に記載の抗菌ポリマー組成物。
【請求項7】
nが3〜1,000である、請求項1に記載の抗菌ポリマー組成物。
【請求項8】
nが3〜100である、請求項7に記載の抗菌ポリマー組成物。
【請求項9】
nが3〜20である、請求項8に記載の抗菌ポリマー組成物。
【請求項10】
RがC1〜C8アルキルである、請求項1に記載の抗菌ポリマー組成物。
【請求項11】
ポリマー添加剤がポリ(6,6’−アルキルイミノ−ビスヘキサメチレンアジパミド)、ポリ(6,6’−アルキルイミノ−ビステトラメチレンアジパミド)、ポリ(N,N’−ジアルキルイミノ−トリ(テトラメチレン))アジパミド、またはそれらの組み合わせであり、アルキル基が1〜4個の炭素原子を有する、請求項1に記載の抗菌ポリマー組成物。
【請求項12】
請求項1に記載の抗菌ポリマー組成物を含んでなる物品。
【請求項13】
繊維、布帛、ヤーン、膜、フィルム、またはフィルム層の形態の請求項12に記載の物品。
【請求項14】
繊維が単一成分繊維または二成分繊維の形態である、請求項13に記載の物品。
【請求項15】
二成分繊維がポリエチレンテレフタレートおよびポリトリメチレンテレフタレートを含んでなる、請求項14に記載の物品。
【請求項16】
繊維、布帛、ヤーン、膜、フィルム、またはフィルム層が押出しにより形成される、請求項13に記載の物品。
【請求項17】
ポリマー添加剤が押出しに先だってポリマー組成物中に組み込まれる、請求項16に記載の物品。
【請求項18】
前記物品が顔料染色される、請求項12に記載の物品。
【請求項19】
請求項1に記載の抗菌ポリマー組成物を含んでなる、不織布衣料品。
【請求項20】
少なくとも2.0の24時間後Δtを有する、請求項1に記載の抗菌ポリマー組成物。
【請求項21】
少なくとも3.0の24時間後Δtを有する、請求項20に記載の抗菌ポリマー組成物。
【請求項22】
少なくとも4.0の24時間後Δtを有する、請求項21に記載の抗菌ポリマー組成物。
【請求項23】
少なくとも1つのポリエステル、少なくとも1つのポリエーテル、少なくとも1つのポリカーボネート、少なくとも1つのポリオレフィン、またはそれらの組み合わせを含んでなるポリマー組成物に、式
【化2】

(式中、A、B、およびQは独立して、脂肪族または芳香族置換基であるが、ただし少なくとも4個の炭素原子がいずれかの2個の窒素基を隔て、Rは脂肪族または芳香族基または水素であり、aは1〜5であり、nは3〜10,000であり、窒素基は負に帯電した官能基との相互作用になおも利用できる)を有する反復単位を含んでなる有効量のポリマー添加剤またはその塩を組み込むステップを含んでなる、抗菌ポリマー組成物を製造する方法。
【請求項24】
組み込むステップが、少なくとも1つのポリエステルと少なくとも1つのポリマー添加剤とのブロック共重合体を形成して達成される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
少なくとも1つのポリエステルがポリトリメチレンテレフタレートである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
少なくとも1つのポリマー添加剤がポリ(6,6’−アルキルイミノ−ビスヘキサメチレンアジパミド)であり、アルキル基が1〜4個の炭素原子を有する、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
組み込むステップが、ポリマー組成物とポリマー添加剤とを溶融ブレンドして達成される、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
請求項に23記載の方法によって製造される、抗菌ポリマー組成物。
【請求項29】
物品中またはその上に、
a)少なくとも1つのポリエステル、少なくとも1つのポリエーテル、少なくとも1つのポリカーボネート、少なくとも1つのポリオレフィン、またはそれらの組み合わせを含んでなるポリマー組成物、および
b)式
【化3】

(式中、A、B、およびQは独立して、脂肪族または芳香族置換基であるが、ただし少なくとも4個の炭素原子がいずれかの2個の窒素基を隔て、Rは脂肪族または芳香族基または水素であり、aは1〜5であり、nは3〜10,000であり、窒素基は負に帯電した官能基との相互作用になおも利用できる)を有する反復単位を含んでなる有効量のポリマー添加剤またはその塩
を含んでなる抗菌ポリマー組成物を組み込むステップを含んでなる、物品中またはその上における微生物生育の阻害方法。
【請求項30】
微生物が細菌である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
細菌がグラム陽性細菌またはグラム陰性細菌である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
微生物が真菌である、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
(a)物品を提供するステップと、
(b)物品中に請求項1に記載の抗菌ポリマー組成物を組み込むステップ
を含んでなる、染色された物品を製造する方法。
【請求項34】
請求項1に記載の抗菌ポリマー組成物を含んでなる不織服飾品を着用するステップを含んでなる、感染を予防する方法。
【請求項35】
不織服飾品がガウンである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
不織服飾品が医師、看護師、または患者によって着用される、請求項35に記載の方法。

【公表番号】特表2008−501820(P2008−501820A)
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−515070(P2007−515070)
【出願日】平成17年4月6日(2005.4.6)
【国際出願番号】PCT/US2005/011665
【国際公開番号】WO2005/100475
【国際公開日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】