説明

抗菌性洗浄剤組成物

【課題】抗菌性洗浄剤組成物の提供。
【解決手段】カテキン類0.0005〜5質量%及びアニオン性界面活性剤0.0001〜10質量%を含有し、pHが4.5〜5.5又は7.5〜8.5である抗菌性洗浄剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌作用を発揮する洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
界面活性剤は、浸透作用、乳化作用及び分散作用を有することから、各種洗浄剤の成分として広く用いられている。近年、微生物による生活環境の汚染を防止すべく、様々な素材に抗菌性を付与する指向が高まり、洗浄剤においても、抗菌性物質の添加や抗菌性を有する界面活性剤を組み合わせて使用する等により抗菌効果を付与することが行われている(非特許文献1)。
しかしながら、抗菌物質の抗菌効果が十分意発揮されない、或いは抗菌物質と洗浄剤との組み合わせによっては洗浄力が低下する、等の問題があり、洗浄力を維持しつつ、抗菌効果を発揮される洗浄剤が求められている。
【0003】
一方、カテキン類は、茶葉から抽出することのできるポリフェノールの一種であり、黄色ブドウ球菌や腸炎ビブリオ等の食中毒細菌、薬剤耐性細菌や植物病原菌に有効であることが報告されている(特許文献1〜5、非特許文献2)。
しかしながら、抗菌性を付与する目的で、洗浄剤にカテキン類を配合することは知られていない。
【特許文献1】特開平2−276562号公報
【特許文献2】特開平2−117608号公報
【特許文献3】特開平3−246227号公報
【特許文献4】特開平8−38133号公報
【特許文献5】特開2000−328443号公報
【非特許文献1】感染防止 Vol.9,No.5,p35-41(1990)
【非特許文献2】FFI Reports、Technical Reports「カテキン」三栄源エフ・エフ・アイ株式会社、ホームページ(http://www.saneigenffi.co.jp/foods/index.html)、平成18年9月12日
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、安全性が高く、且つ優れた抗菌作用を示す抗菌性洗浄剤を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、洗浄剤の抗菌力を向上することについて検討した結果、驚くべきことにアニオン性界面活性剤とカテキン類を組み合わせ、その混合溶液のpHを4.5〜5.5又は7.5〜8.5にした場合、優れた抗菌効果を発揮する洗浄剤組成物が得られることを見出した。
【0006】
すなわち、本発明は、カテキン類0.0005〜5質量%及びアニオン性界面活性剤0.0001〜10質量%を含有し、pHが4.5〜5.5又は7.5〜8.5である抗菌性洗浄剤組成物を提供するものである。
【0007】
また、本発明は、化粧品組成物、医薬部外品組成物、医薬品組成物又はハウスホールド製品組成物に、(A)カテキン類 0.0005〜5質量%、及び(B)アニオン性界面活性剤 0.0001〜10質量%を含有し、pHを4.5〜5.5又は7.5〜8.5に調整することを特徴とする、前記組成物に抗菌性を付与する方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、カテキン類及びアニオン性界面活性剤の使用量を減らしつつ、抗菌性の高い洗浄剤組成物及びハウスホールド製品等を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の抗菌性洗浄剤組成物は、カテキン類及びアニオン性界面活性剤を含有する。
【0010】
本発明におけるカテキン類とは、カテキン、カテキンガレート、ガロカテキン及びガロカテキンガレート等の非エピ体カテキン類、並びにエピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート及びエピガロカテキンガレート等のエピ体カテキン類の総称であり、これらの一種以上を含有するのが好ましい。また、カテキン類は、非重合体であるのが好ましい。
【0011】
本発明に使用するカテキン類は、一般的には茶葉から直接抽出すること、又はその茶抽出物を濃縮若しくは精製することにより得ることができるが、他の原料由来のもの、カラム精製品及び化学合成品でもあってもよい。
【0012】
当該茶葉抽出は、Camellia属、例えばC.sinensis、C.assamica、またはそれらの雑種から得られる茶葉より製茶された茶葉に、水や熱水、場合によってはこれらに抽出助剤を添加して抽出することにより行うことができる。また、煮沸脱気や窒素ガス等の不活性ガスを通気して溶存酸素を除去しつつ、いわゆる非酸化的雰囲気下で抽出する方法を併用してもよい。
当該製茶された茶葉には、(1)煎茶、番茶、玉露、てん茶、釜煎り茶などの緑茶類;(2)総称して烏龍茶と呼ばれる鉄観音、色種、黄金桂、武夷岩茶などの半発酵茶;(3)紅茶と呼ばれるダージリン、ウバ、キーマンなどの発酵茶が含まれる。
抽出助剤としては、アスコルビン酸ナトリウム等の有機酸又はこれら有機酸塩類が挙げられる
【0013】
当該茶抽出物の濃縮は、上記抽出物を濃縮することにより行うことができ、当該茶抽出物の精製は、溶剤やカラムを用いて精製することにより行うことができる。茶抽出物の濃縮物や精製物の形態としては、固体、水溶液、スラリー状等種々のものが挙げられる。
例えば、当該茶抽出物(茶カテキンともいう。)は、特開昭59-219384号、特開平4-20589号、特開平5-260907号、特開平5-306279号等に詳細に例示されている方法で調製することができる。また、市販品を用いることもでき、斯かる市販品としては、三井農林(株)「ポリフェノン」、(株)伊藤園「テアフラン」、太陽化学(株)「サンフェノン」、DSMニュートリショナル・プロダクツ「テアビゴ」、サントリー(株)「サンウーロン」等が挙げられる。
【0014】
当該茶抽出物中のカテキン類は、非重合体若しくは重合体で存在し、かつ液に溶解しているもの又は茶の微細粉末の懸濁物に吸着若しくは包含された固形状のものとして存在する。
また、茶葉中のカテキン類の大部分はエピ体カテキン類として存在しており、このエピ体カテキン類を用いて熱や酸やアルカリ等の処理により立体異性体である非エピ体に変化させることができる。従って、非エピ体カテキン類を使用する場合には、緑茶類、半発酵茶類又は発酵茶類からの抽出液や茶抽出液の濃縮物を水溶液にして、例えば40〜140℃、0.1分〜120時間加熱処理して得ることができる。また非エピカテキン類含有量の高い茶抽出液の濃縮物を使用してもよい。それらは単独又は併用してもよい。
【0015】
本発明におけるアニオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム等のアルキル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンラウリル硫酸トリエタノールアミン塩等のアルキルエーテル硫酸エステル塩;N−ラウロイルサルコシンナトリウム等のN−アシルサルコシン塩;N−ミリストイル−N−メチルタウリンナトリウム、N−ステアロイル−N−メチルタウリンナトリウム等の高級脂肪酸アミドスルホン酸塩;モノステアリルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸ナトリウム等のリン酸エステル塩;ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム等のスルホコハク酸塩;リニアドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、リニアドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン塩等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;N−ラウロイルグルタミン酸モノナトリウム、N−ステアロイルグルタミン酸モノナトリウム、N−ステアロイルグルタミン酸ジナトリウム、N−ミリストイル−L−グルタミン酸モノナトリウム等のN−アシルグルタミン酸塩等が挙げられる。これらを単独で又は2種以上組み合わせて使用しても良い。
このうち、好ましくは、アルキル硫酸エステル塩であり、より好ましくは、当該アルキル基の炭素数が12である。
【0016】
アニオン性界面活性剤に用いる塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩:カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩:塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、炭酸塩等の鉱酸の酸付加塩:又は安息香酸、スルホン酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩等の有機酸の酸付加塩が挙げられる。
【0017】
本発明の抗菌性洗浄剤組成物のpHは、当該洗浄剤組成物を水溶液(20℃)とした時のpHがカテキン類及びアニオン性界面活性剤の抗菌性が高まる4.5〜5.5又は7.5〜8.5とするのが好ましい。
本発明の抗菌性組成物のpHをこのような特定の範囲とするには上記pHに調整するためのpH調整剤を配合するのが好ましい。
そのようなpH調整剤としては、酢酸、クエン酸、フマル酸、リンゴ酸、乳酸、グルコン酸、酒石酸等の有機酸塩、リン酸、塩酸、硫酸等の無機塩、水酸化ナトリウム等の水酸化物、アンモニア又はアンモニア水、エタノールアミン類、低級アルカノールアミン類、アルギニン、リジン等の塩基性アミノ酸等が挙げられ、これらを単独又は2種以上組み合わせて用いてもよく、さらに他のpH調整剤と適宜組み合わせてもよい。
また、pH調整剤の配合量は、上記pHの範囲に調整することができれば特に限定されない。
【0018】
後記実施例に示すとおり、アニオン性界面活性剤及びカテキン類を含有し、そのpHを4.5〜5.5又は7.5〜8.5に調整した場合に優れた抗菌効果が認められる。従って、これらを配合してなる組成物は、抗菌性洗浄剤組成物として有用である。また、これらを配合してなる抗菌剤組成物を化粧品、医薬部外品、医薬品、又はハウスホールド用品(以下、単に製品ということがある。)に配合することにより抗菌性を付与することができる。
【0019】
本発明において、カテキン類及びアニオン性界面活性剤を上記組成物又は製品に配合した場合、組成物又は製品中のカテキン類の配合量は、カテキン類の抗菌力が有効に発揮し、使用コストを低くするため、0.0005〜5質量%であり、好ましくは0.001〜1質量%であり、より好ましくは0.001〜0.2質量%である。
【0020】
また、カテキン類及びアニオン性界面活性剤を上組成物又は記製品に配合した場合、組成物又は製品中のアニオン性界面活性剤の配合量は、肌荒れを低減しつつ洗浄力を有効に発揮するため、0.0001〜10質量%であり、好ましくは、0.0001〜0.01質量%である。
【0021】
また、カテキン類及びアニオン性界面活性剤の配合比率は、両者の性質を阻害しあわず抗菌性と洗浄性を有効に発揮するため、カテキン類:アニオン性界面活性剤が50000:1〜1:20000、好ましくは10000:1〜1:10であり、より好ましくは2000:1〜1:10である。
【0022】
本発明の組成物は、常法に従って、例えば水等公知の溶剤を適宜用いて製造できる。また、その形態は、特に制限されず、溶液、固形物、乳化物、可溶化物、分散物、ジェル等の形態で使用することができる。
斯くして製造された本発明の組成物は、化粧品、医薬部外品、医薬品、又はハウスホールド製品の何れにも配合又は使用することができ、例えば、口紅、乳液、保湿パック、美容液、化粧水等の化粧品:液剤、ゲル剤、クリーム剤、パップ剤、エアゾール剤、ローション剤等の皮膚外用剤:洗顔料、メイク落とし、ボディシャンプー、ハンドソープ等の皮膚洗浄剤、シェービングフォーム、シャンプー等の毛髪洗浄剤、デオドラント剤等のトイレタリー用品:歯磨剤、洗口剤、口中清涼剤、義歯用品等のオーラルケア用品:台所用洗剤、衣類洗浄剤や柔軟剤、トイレ洗浄剤等の洗浄剤:殺虫剤、防虫剤、除湿剤、除菌剤、抗菌剤、消臭剤、芳香剤等の家庭用化学製品に配合することができる。また、紙製品、生理用品、紙おむつ、医療品等の衛生用品等には、例えば紙おむつ等に本発明の組成物を吹き付けることやシート状の紙・不職布製品に本発明の組成物を含む洗浄剤等を含浸させることで使用できる。また、コンタクトレンズ洗浄・保存剤等に配合できる。
ここで、ハウスホールド製品とは、衣料・台所・住居用洗剤、柔軟仕上剤、掃除用紙製品、トイレタリー用品及びペット用品等広く一般家庭において使用される製品をいう。
【0023】
本発明の抗菌性洗浄剤組成物には、その形態及び用途に応じて、本発明の効果を阻害しない範囲内で他の成分、例えば、油脂成分、殺菌剤、抗炎症剤、防腐剤、キレート剤、保湿剤、パール化剤、乳白剤、顔料、スクラブ剤、抗ニキビ剤、香料、冷感剤、色素、紫外線吸収剤、酸化防止剤、安定剤、無機塩、品質安定剤、多糖増粘剤、植物エキス、ビタミン類等を配合することができる。
【0024】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明する。
【実施例】
【0025】
試験例1〜2及び参考例1
(1)界面活性剤−カテキン類混合液の調製
界面活性剤は、オートクレーブ処理(121℃、20分間)後、滅菌水で所定の濃度に希釈して使用した。
カテキン類溶液は、カテキン製剤(POLYPHENON 70A(三井農林(株)製))を10000ppmとなるように純水に溶解し、pHを6.5に調整し、所定の濃度に希釈後、ろ過滅菌(0.2μm、関東化学社製)した。
界面活性剤−カテキン類混合液は、9mLの0.1Mリン酸(pH6.5)緩衝溶液に上記滅菌処理した界面活性剤を1mL添加混和し、カテキン類濃度の終濃度が所定の濃度となるようにカテキン類を加えて調製した。なお、pH調整(pH5又は8)をする場合には、リン酸緩衝溶液(pH5〜8付近)を適宜用い、表1に示すような所望のpHに適宜調整した。
【0026】
(2)接触試験
対象とする細菌は、LB培地(Becton&Dickinson社製;pH7.0)にて24時間、30℃、振とう培養を行い、107〜108CFU/mL菌液に調製した。
LB培地組成は、1%カゼイン膵液分解物、0.5%酵母エキス、0.5%NaClからなる。
上記界面活性剤−カテキン類混合液10mLに予め培養した107〜108CFU/mLに調製した上記菌液を100μL添加し、終菌数を105CFU/mL程度に調整した。30℃、24時間静置培養し、随時ボルテックスを行った。
24時間後の菌数を界面活性剤未添加カテキン類溶液はプレーティングにより求め、界面活性剤添加カテキン類混合液はLP希釈液後、プレーティングにより細菌の菌の存在を確認した。
プレーティングについては、各希釈液100μLをTSA寒天平板に塗抹して48時間、37℃で静置培養した。培養後のコロニー数から生菌濃度を算出した。
使用培地:TSA寒天平板培地(Tryptic Soy Agar,Becton Dickinson 社):1.7%カゼイン分解物、0.3%大豆酵素分解物、0.25%デキストロース、0.5%塩化ナトリウム、1.5%寒天、pH7。
【0027】
(3)試験菌
Pseudomonas aeruginosa IFO 13275
【0028】
(4)界面活性剤
アニオン界面活性剤:エマール(花王社製;ラウリル硫酸ナトリウム25質量%含有)
【0029】
表1に示すように、中性領域(pH6.5)付近では、カテキン類及びラウリル硫酸ナトリウムの抗菌性が認められなかったものの、酸性領域(pH5.0)又はアルカリ領域(pH8.0)では抗菌性が認められた。また、その抗菌作用は相乗的であった。
【0030】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテキン類0.0005〜5質量%及びアニオン性界面活性剤0.0001〜10質量%を含有し、pHが4.5〜5.5又は7.5〜8.5である抗菌性洗浄剤組成物。
【請求項2】
pHを4.5〜5.5又は7.5〜8.5に調整するためのpH調整剤を含有するものである請求項1記載の抗菌性洗浄剤組成物。
【請求項3】
カテキン類及びアニオン界面活性剤の配合比が50000:1〜1:20000である請求項1又は2記載の抗菌性洗浄剤組成物。
【請求項4】
化粧品組成物、医薬部外品組成物、医薬品組成物又はハウスホールド製品組成物に、(A)カテキン類 0.0005〜5質量%、及び(B)アニオン性界面活性剤 0.0001〜10質量%を含有し、pHを4.5〜5.5又は7.5〜8.5に調整することを特徴とする、前記組成物に抗菌性を付与する方法。

【公開番号】特開2009−73952(P2009−73952A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−244784(P2007−244784)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成19年6月7日 http://wwwsoc.nii.ac.jp/saaaj/conference/conference_old34th.htmlを通じて発表
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】