説明

抗菌性着色加硫ゴム物品

少なくとも過半重量がエチレン-プロピレン-ジエン変性(三元重合体)ゴム(例えば、限定さえ玲流ものではないが、EPDM及び/又はNBR)から製造され、非常に望ましい長期間の抗菌特性を加硫ゴム物品に付与する銀系化合物を含有し、少なくともその一部がブラック以外の色調を示す非シリコーン加硫ゴム物品を提供する。このような物品は、固体または中空(発泡体またはスポンジ)状態のいずれか(または多層成形品における両方の組み合わせであって、全て或いは個々の層が着色されたもの)であって、これらは様々な異なった用途に利用され得る。銀系化合物は、例えば硫黄系の化合物および/または系のような標準的な加硫剤および加硫促進剤の利用によって悪影響を受けるため、このような有効な抗菌性加硫ゴム物品を提供することはかなり困難である。しかし、本発明は、加硫を可能にし、銀イオンと付加逆的に結合せず、それによって最終ゴム物品自体の長期間持続する抗菌性能を生ずる、一例としての過酸化物のような非硫黄系の加硫系および加硫剤の存在を包含する。該ゴム物品はフィラーも含む必要があり、同時に意外にも、ゴム物品の抗菌効力の制御を向上させ、かつ得られる銀と有害に結合して目的ゴムも着色させることがない一方で、寸法安定性、剛性、曲げ弾性率、引張り強度、耐摩耗性、伸びなどの望ましい特性を最終ゴム物品へ与えるために、可塑剤も含み得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非常に望ましい長期間持続する抗菌特性を、少なくとも一部がブラック以外の色調を示す硬化ゴム物品中に与えるための銀系化合物を含む、少なくとも大部分(重量)がゴムからなる特定の非シリコーン加硫ゴム物品(限定されるものではないが、例えば、エチレン-プロピレンジエン改質ゴム、別名EPDM、および/またはアクリロニトリルブタジエンゴム、別名NBR)に関する。このような物品は、固体または中空(発泡体またはスポンジ)状態のいずれか(または多層成形品における両方の組み合わせであって、全て或いは個々の層が着色されたもの)であって、これらは様々な異なった用途に利用され得る。銀系化合物は、例えば硫黄系の化合物および/または系のような標準的な加硫剤および加硫促進剤の利用によって悪影響を受けるため、このような有効な抗菌性加硫ゴム物品を提供することはかなり困難である。しかし、本発明は、加硫を可能にし、銀イオンと不可逆的に結合せず、それによって最終ゴム物品自体の長期間持続する抗菌性能を生ずる、一例としての過酸化物のような非硫黄系の加硫系および加硫剤の存在を包含する。該ゴム物品はフィラーも含む必要があり、同時に意外にも、ゴム物品の抗菌効力の制御を向上させ、かつ得られる銀と有害に結合して目的ゴムも着色させることがない一方で、寸法安定性、剛性、曲げ弾性率、引張り強度、耐摩耗性、伸びなどの望ましい特性を最終ゴム物品へ与えるために、可塑剤も含み得る。
【背景技術】
【0002】
以下に引用した全ての米国特許は、その全体を引用してここに組み込む。
近年、潜在する日常的な暴露から細菌性汚染が生じる危険について、かなりの注意が払われてきている。これに関する注目すべき例は、ファーストフード店で十分に加熱調理されていない牛肉から発見された菌株 Eschericia coli による食中毒、十分に加熱調理されていない不潔な鶏肉製品からの Salmonella enteritidis 汚染が引き起こす病気、Staphylococcus aureus、Klebsiella pneumoniae、イースト(Candida albicans)、他の単細胞微生物に起因する病気や皮膚感染症の致命的な結果を含む。この分野に興味をもつ消費者が増加するにつれ、製造業者が様々な日常製品や物品の中に抗菌剤を導入し始めるようになった。例えば、あるブランドのまな板、靴底、靴の中敷、医療機器及び器具、液体石鹸などは全て抗菌性化合物を含む。このような物品について最も普及している抗菌剤は、トリクロサンである。液体またはある重合媒体中へのこのような化合物の配合は比較的容易だが、他の基材、特に加硫ゴム及びその表面についてはほとんど適用されていない。更に、そのようなトリクロサン添加剤は、ある種の菌にとって使用が困難であったり効果的でないことが判明した。例えば、トリクロサン自体は、ある種の高分子基材及び/又は基質の中へ及びそこから容易に移行し(従って、耐久性が良くはない)、熱安定性に欠け(従って、高温で、ゴムおよび同様の材料から浸出する)、幅広い範囲のバクテリア殺菌を与えない(例えば、Pseudomonas aeruginosa に対する殺菌性を示さない)。
【0003】
抗菌性ゴム組成物は、抗菌性作用だけでなく抗真菌性、抗カビ性、防汚性及び臭気制御特性を与えるために、加硫ゴム物品及び組成物の製造にとって、間違いなく強く望まれている。ゴム物品は、車(ホース、タイヤ、バンパーなど)から家庭用品(玩具、流し台、ガスケット、電気・ガス機器、床マット、ドアマット、シール、カーペット付ゴム製床、手袋など)、並びに菌の成長が潜在的問題となる他の分野まで、多くの異なった用途に利用されている。最終加硫物品中で長期間持続する抗菌性等の効果を与える、有効な耐久性と信頼性のある抗菌性加硫ゴム組成物を提供するという、古くから存在する要求がなお残っている。残念ながら、このように強く望まれている銀系抗菌剤含有の抗菌性ゴム組成物及び/又は加硫物品は、今まで関連する従来技術によって提供されていない。
【0004】
最も近い技術には、銀複合物の存在により抗菌特性を示す未加硫ゴム組成物及び物品の製造について開示している日本国特許出願 1997-342076 が含まれる。このような組成物は、無酸素雰囲気中、高温混練によって作られ、水殺菌システムで部品として使用されている。また、加硫ゴムは、この公報では教示されておらず、得られてもいない。抗菌性ゴムバンドは、その中に銀抗菌剤を伴う加硫型で、日本国特許出願 1997-140034 に教示されている。しかしながら、このようなコンパウンドは、使用がかなり制限されており、対象ゴムの最終加硫物を実現するため、加硫工程で硫黄加硫剤を含まなくてはならない。このような硫黄加硫剤は、ある種の銀系抗菌剤に、硫黄が銀イオンと反応して硫化銀を形成することにより殺菌剤としての効果を失わせるという、著しい悪影響を与える。このように、大規模な抗菌性物品のための、また該物品中での、このような特定のゴムバンド組成物の利用は、基本的に実行不可能である。
【0005】
ある種の抗菌性過酸化物触媒加硫ゴム組成物は、これまで製造されてきた;しかしながら、このような過酸化物加硫ゴムは、全てシリコーン系であった。シリコーンゴムは典型的な硫黄系触媒によって加硫できないことは、よく理解され、認められている。従って、米国特許第 5,466,726 号や日本国特許出願 1997-026273 及び 1995-065149 の抗菌性ゴム組成物は、ある抗菌性化合物も含む、標準的加硫シリコーンゴム組成物及び物品である。
【0006】
更に、抗菌剤を含むゴムラテックス(未加硫)が、パイル繊維成分中に配合されている銀系抗菌剤を有する床マットとして開示されており(例えば米国特許第 5,736,591 号)、それは、パイル繊維抗菌性化合物を硫黄化合物による攻撃から保護するために、過酸化物触媒加硫により硬化した非抗菌性ゴム裏剤を有する(日本国特許出願 1993-3555168 及び 1995-38991)。しかしながら、今までのところ、銀系抗菌性化合物の長期間持続する有効な利用によって優れた抗菌特性を示す、加硫非シリコーンゴム組成物の製造について開示または示唆は存在しない。本発明は、このような空隙を埋めるものである。
【0007】
【特許文献1】日本国特許出願 1997-342076 号
【特許文献2】日本国特許出願 1997-140034 号
【特許文献3】米国特許第 5,466,726 号
【特許文献4】日本国特許出願 1997-026273 号
【特許文献5】日本国特許出願 1995-065149 号
【特許文献6】米国特許第 5,736,591 号
【特許文献7】日本国特許出願 1993-3555168 号
【特許文献8】日本国特許出願 1995-38991 号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明の目的は、抗菌力またはモジュラス強度が検知し得るレベルで失われること無く、反復使用に耐えるのに十分な抗菌活性及び構造一体性を示す、着色(ブラック以外)抗菌性加硫ゴム含有物品を提供することである。本発明の別の目的は、最終加硫物品の抗菌活性に悪影響を及ぼさない(従って、必然的に硫黄系加硫剤及び促進剤を含まない)加硫剤を含む、銀系抗菌性化合物を含んでなる抗菌性着色加硫ゴム物品を提供することである。また、本発明の更に別の目的は、少なくとも15日間の暴露後、ある真菌の成長を妨害すると共に、室温での24時間暴露後に、Staphylococcus aureus 及び Klebsiella pneumoniae(及び/又は他のタイプの菌も)に対して、少なくとも1.0の対数殺菌率を示す、着色加硫EPDM及び/又はNBRゴム含有物品を提供することである。また、本発明の更に別の目的は、物品表面への銀イオン放出を調整することによって、物品自体の抗菌有効性の制御をも向上する(例えば、Staphylococcus aureus 及び Klebsiella pneumoniae に対して高い対数殺菌率を、また Aspergillus niger に対して菌の成長妨害を示す)、構造一体性フィラー成分及び可塑剤(例えば、適当に配合されたシリカ、ある種の金属塩、ある種の有機塩、炭酸カルシウム、ある種の金属酸化物、クレー、ある種のオイルなど)を含む、加硫EPDM及び/又はNBRゴム含有物品を提供することである。また、本発明の更に別の目的は、工業的洗浄及び/又は磨耗後に抗菌活性の増加を示す、最終着色ゴム物品を提供することである。また、更に別の目的は、このような抗菌性加硫EPDM及び/又はNBRゴム含有物品の、簡単な製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
よって、本発明は、室温での24時間暴露後に、Staphylococcus aureus 及び Klebsiella pneumoniae に対して、各々少なくとも1.0の対数殺菌率を示す、寸法安定性の加硫ゴム含有着色物品を包含する。また、本発明は、Aspergillus niger ATCC 6275 に対する試験方法 ISO 486 に従って、30℃、湿度90%超、少なくとも15日間の試験で、少なくとも70%の抑制を示すような抗真菌特性を示す寸法安定性加硫ゴム含有物品を包含する。更に、本発明は、フィラー(例えば、炭酸カルシウム、白土または焼成クレー、シラン被覆または混合シリカ、二価ケイ酸金属、アルミニウム三水和物、およびそれらの任意の混合物)、物品にブラック以外の色調を与えるための少なくとも一つの着色剤、必要に応じ、少なくとも一つの可塑剤(例えば、フタレートオイル及びパラフィンオイルのようなオイル)からなる群から選ばれる少なくとも1つの無着色性銀イオン放出制御添加剤を含む、このような加硫ゴム含有物品を包含する。加えて、本発明は、未加硫ゴム、少なくとも1つの非硫黄系加硫剤及び少なくとも1つの銀系抗菌性化合物、少なくとも1つの無着色性銀放出添加剤(フィラー)、最終物品に非ブラック色調を与える少なくとも1つの着色剤を含むゴム組成物を供給し、前記ゴム組成物を少なくとも150℃の温度で、少なくとも3バールの圧力で加硫する工程を含む、着色加硫EPDM及び/又はNBRゴム含有物品の製造方法を包含する。ここで、前記ゴム組成物は、実質上、硫黄加硫剤及び加硫促進剤を含まない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
用語「寸法安定」は、より小さい部分への崩壊無しに構造上取り扱われ得る、加硫ゴム物品を含むことが意図される。従って、物品は、ある程度の構造一体性を示し、ゴムであり、ある程度の曲げ弾性率を示さなければならない。
【0011】
用語「着色」は、前述のように、最終ブラック物品用のブラック以外の色調を意味する。その効果により、審美的な改良、並びに潜在的な製品識別の利点が対象ゴム物品に付与される。特定の科学理論に限定する意図はないが、あるフィラーがゴム組成物中に存在すると、抗菌剤中で銀イオンと問題のある錯化が引き起こされると考えられる。そのような反応により、ゴム自体の中で銀が結合して暗変色を形成される。ブラック顔料(または他の着色料)が存在すると、ベースゴムの色調が所望のブラック着色を支配するものではないため、銀イオンとフィラー(例えば、シリカ、ケイ酸アルミニウム、その他)間のこのような結果的に起こる反応で、ゴムを有害に変色させることはない。しかし、白、赤、青、黄、緑、オレンジなどのようにより明るい色では、これらのフィラーが存在すると、目的組成物中で、物品がブラックまたは同様に浅黒く(目的とするより明るい着色の点では、明らかに所望のものと違う)見えるような、望ましくない顕著な変色を生じる傾向がある。このように、寸法安定性と物品中の物質を与えるためだけでなく、主に美観目的で対象ゴム物品を適切に着色することを可能とするために、主としてフィラー成分を選択する点で、本発明の望ましい着色ゴム物品を提供するために充足すべき重要な基準がある。これまで、抗菌持続性を備え(色調の点で)審美的に見栄えの良い着色抗菌性ゴムを付与する能力は、最終対象ゴム物品に悪影響を及ぼさないことと共に、抗菌剤、加硫系、およびフィラー成分の適切な選択要件によって極めて限定されていた。
【0012】
このように、前記特定の抗菌性加硫ゴム含有物品は、ゴム産業または従来技術において教示も明確な示唆もなされていない。上述したように、検知し得る量の硫黄系加硫剤及び加硫促進剤を回避すると、最終生成物中で、少なくとも Staphylococcus aureus、Klebsiella pneumoniae、Pseudomonas aeruginosa 及び Eschericia coli に対して長期間持続する対数殺菌率を与えるのに十分な量の銀抗菌剤の保持が可能となる。更に、主として高コストのため、非硫黄加硫剤は、加硫ゴム組成物及び物品に一般的に用いられていない。このように、抗菌性加硫ゴム物品を有効に形成するための未加硫ゴム組成物中で、非硫黄加硫剤(最も好ましくは過酸化物加硫剤)と銀系抗菌剤を組み合わせることに関し教示も明確な示唆も存在しない。
【0013】
加えて、一般的に及び好ましくは、ある種のフィラー及び補充的にオイル(例えば、二価シリケート、シラン被覆または混合シリカ、酸化亜鉛、クレー、アルミニウム三水和物塩、炭酸カルシウム、及び他の種類であって、銀抗菌剤含有EPDMおよび/またはNBR(単に好ましい例として)ゴム組成物を変色させないもの)は、加硫ゴム物品に曲げ弾性率及び構造一体性の両方を与えるため必要である。ゴム成分単独では、一般に、このような添加剤無しでは適当な寸法安定性を示さない。驚くべきことに、このような添加剤が存在すると、所望の銀イオンとの、そこに存在する抗菌性成分中での有害な反応が無いだけでなく、目的物品表面での銀イオン放出を制御する能力も付与される。そのようなものとして、対象物品は、卓越したものではないにせよ、許容可能な寸法安定性を加硫後に示すだけでなく、前記の問題ある潜在的な銀イオン-フィラー反応による望ましくない問題(従って、暗色化)なしに、明るく良好な色相に着色される能力を示す。従って、そのような本発明の着色した持続性抗菌性ゴムは独特であって、実現する成分に関して選択性を要する。このように、上述したような有利なフィラーは、対象ゴム組成物に、そのために、その中で、多くの重要特性を与えるようである。
【0014】
特定の科学理論に拘束されることを意図しないが、上記のようなフィラー、とりわけ本質的に親水性のフィラー(二価シリケート、シラン被覆シリカ、酸化亜鉛など)の中には、物品に水分を取り込むように働き、そうして、物品内部から表面へ銀イオンを移動させるものがあると考えられる。このような状況において、ゴム物品は、向上した銀放出性を示すので、より多量の利用可能な表面銀イオン(available surface silver ions)の存在により、ある種の菌に対して高い対数殺菌率を生じ得る。他の親水性フィラー、例えば顔料、クレー及び炭酸カルシウム(例として)には、目的物品の外に水を維持し、それによって物品表面への銀イオンの移動を防ぐという逆の挙動を示すものがあると考えられる。従って、このような銀イオン利用性の低下は、ゴム物品の抗菌効力を低減させる。実際、全ゴム物品の実際の抗菌効力は、ある量のこのような一般的に必要なフィラー及びオイルの存在によって制御され得る(ある親水性帯電防止剤も、シリカと同じ挙動を示すようである。)。結果として、最終物品の寸法弾性(レジリエンス)及び/または曲げ弾性率(従って、実際の有用性)を与えるのに要する必要なフィラー及び/またはオイル成分は、ゴム産業において今まで認識されていなかった二つの目的に役立つ。ゴム物品は、特定量のこのような添加剤の添加によって、所望の抗菌活性の持続性に応じて、特定の最終用途を考慮して、製造され得る。また、このような目標とする持続抗菌性加硫物品及びその利点は、今まで、ゴム産業において知られておらず、認識されていなかった。これらのゴム成分を、以下「銀イオン放出制御添加剤」と称する。
【0015】
上述のように、用語「EPDMゴム」は、少なくとも過半数(重量)にEPDMゴムを有し、寸法安定性ゴム物品を提供するために加硫される任意の標準的なゴムをカバーするよう意図される。該加硫または他の加工は、安価に提供される環境で行われ、従って酸素を豊富に含む環境中で(提供が一般的に困難な嫌気性環境とは反対に)行われるように意図される。EPDMゴムはゴム産業界で様々な用途にこれまで利用されてきたし、一般的に広く知られ、先行技術中に教示されている。このような本発明のゴム物品は、補強に必要なフィラー(例えば炭酸カルシウム、カーボンブラック、シリカ及びクレー)と共に、配合及び加工中、エラストマーの分解期間を促進する(そして、最終物品に曲げ弾性率特性を与える)、化学的可塑剤も有すべきである。任意に、発泡(例えば、発泡体またはスポンジ)ゴムタイプ形成のために、発泡剤を、本発明の組成物に添加してよい。
【0016】
従って、本発明のゴム物品の非シリコーンゴム成分は、過半のEPDMと他のタイプの考え得るゴム(種々の強度、柔軟性、または他の特性を付与するため)、例えばニトリルゴム(例えばアクリロニトリルブタジエン(NBR))、スチレンブタジエンゴム(SBR)、天然ゴム、クロロプレン、エチレンプロピレンゴム、天然ゴム、ポリウレタンゴム、ブチルゴム、イソプレン、ハロブチルゴム、フルオロエラストマー、エピクロロヒドリンゴム、ポリアクリレートゴム及び塩素化ポリエチレンゴム、水素化SBR、水素化NBR及びカルボキシル化NBRよりなる群から選ばれるがこれらに限定されないゴムである。シリコーンゴムの存在は、本発明の組成物中では望ましくないが、全体的な抗菌性ゴム組成物自体に悪影響を及ぼすことなく、特定の未加硫ゴム成分を少量添加する可能性は残されている。従って、組成物の総重量の25%までは、シリコーンゴムであってもよい。しかしながら、ゴム組成物の大部分は非シリコーンゴムでなくてはならない。更に、非シリコーンゴム部は、検知し得る量の硫黄系加硫剤または残渣(最終物品中に)を有してはならず、従って、主として非硫黄系化合物(例えば、過酸化物、金属酸化物)で硬化することにより加硫されなくてはならない。該ゴム成分は、全組成物の約10〜約1,000部、より好ましくは約50〜約500部、最も好ましくは約100〜約200部の量で存在する。従って、目的加硫ゴム物品中、約300〜2,000部の全体部数で、ゴムは全物品の部数の約25〜約70%の割合を構成する。残りは、フィラー、オイル、加硫剤、所望の抗菌剤、任意に発泡剤などのような添加剤を含む(以下により詳細を示す)。
【0017】
更に、非シリコーンゴム部は、検知し得る量の硫黄系加硫剤または残渣(最終物品中に)を有してはならず、従って、主として非硫黄系化合物(例えば、過酸化物、金属酸化物)で硬化することにより加硫されなくてはならない。該ゴム成分は全組成物の約10〜約1,000部、より好ましくは約50〜約500部、最も好ましくは約100〜約200部の量で存在する。
【0018】
本発明の生ゴム組成物の抗菌剤は、いかなる標準的銀系化合物でもあり得る。トリクロサンのような有機物タイプと対照的に、このような化合物は低い熱安定性を示さず、従って、異なった温度で対象基質または基材中に残る。従って、このような抗菌剤は、上述したように、所望される表面放出のために、より制御し易い。このような抗菌剤は、限定するわけではないが、銀塩、酸化銀、銀元素、並びに最も好ましくは、イオン交換物、ガラス及び/またはゼオライト化合物である。この目的のためにより好ましいのは、銀系イオン交換化合物である。その理由は、このような化合物によって最終生成物に与えられる低レベルの変色及び向上した耐久性、最終組成物にこのような化合物が与える効力、及びこのような特定の化合物で可能になる製造の容易さにある。従って、本発明の抗菌剤は、単に代表的な微生物にすぎないが、前述した Staphylococcus aureus、Klebsiella pneumoniae、Escherichia coli 及び Pseudomonas aeruginosa に対する望ましい対数殺菌率を与える、いかなるタイプでもあり得る。更に、このような抗菌性化合物は、目的とする非硫黄(例えば過酸化物)加硫EPDMゴム含有物品中にうまく配合するための、高い加工温度に耐え得るものでなくてはならない。また、このような抗菌剤は、好ましくは、銀含有イオン交換物、ガラス及び/またはゼオライト化合物を含む。最も好ましくは、このような化合物は、銀系イオン交換化合物であり、特に更なる有機殺菌性化合物を含まない(それによって、高温加工などの間、大気中への揮発性有機化合物の放出が生じない)。
【0019】
好ましい銀系イオン交換材料は、Milliken & Company から商品名 ALPHASAN(登録商標)で入手できる、抗菌性銀ジルコニウムホスフェートである。このような化合物は、異なった銀イオン濃度で、及び酸化亜鉛との混合物として入手できる。従って、銀イオン濃度が全成分量(例えば、銀イオン及びジルコニウムホスフェートの総量)の約0.01〜10%、好ましくは約3〜約8%、最も好ましくは約3、3.8及び10%の異なった化合物が可能である。本発明における他の潜在的に好ましい銀含有固体無機抗菌剤は、Sinanen から商品名 ZEOMIC(登録商標)で得られる銀置換ゼオライト、または Ishizuka Glass から商品名 IONPURE(登録商標)で得られる銀置換ガラスであり、好ましい種に加えてまたは替えて使用され得る。他の可能な化合物は、これらに限定するわけではないが、Dupont から MICROFREE(登録商標)で得られる銀系材料、同様に Johnson Mathey から JMAC(登録商標)で得られる銀系材料である。
【0020】
一般的に、このような抗菌性化合物は、ゴム組成物に、ゴム組成物の総重量の約0.1〜10重量%、好ましくは約0.1〜約5重量%、より好ましくは約0.1〜約2重量%、最も好ましくは約0.2〜約2.0重量%の量で添加される。
【0021】
更に、銀系無機抗菌性材料に関して、抗菌性ゴム物品は、このような物品に要求される望ましい高レベルの効力及び持続性にとって、特に適していることが示されている。ある銀系イオン交換化合物、例えば Milliken & Company から入手できる ALPHASAN(登録商標)ブランド抗菌剤は、印象的な生物効力を示すことが分かっている(東亞合成株式会社の米国特許第 5,926,238 号、米国特許第 5,441,717 号、米国特許第 5,698,229 号)。一定時間後、代替抗菌性化合物(例えば、トリクロサン、microchek、OBPA、Zn-omadine)は、まず高加工温度下で分解を受け、周囲の環境へ浸出し、最終的に殺菌活性を枯渇させる殺生物剤の消耗をもたらす。しかしながら、銀含有イオン交換物、ガラス及び/またはゼオライト化合物は、このような欠点を有していない。このような抗菌剤は、高温(> 1000℃)安定性を示し、環境に浸出せず、所望の長い持続性を与えるための実質量の微量作用の銀イオンを提供する。
【0022】
本発明の抗菌性物品は、「疎水性繊維及び固体基材の抗菌特性の評価」と題する AATCC ドラフト方法、並びに JIS2 2801 の試験方法に従って、24時間後、良好な対数殺菌率を示す。このように良好なレベルの対数殺菌率は、Staphylococcus aureus または Klebsiella pneumoniae で試験を行ったところ、基準値より少なくとも0.1増加した。別の表現では、対数殺菌率が、処理していない(例えば、固体無機抗菌剤無添加)ゴム物品の対数殺菌率より大きくなった場合(例えば、対照の抗菌剤を含まない加硫EPDMゴムに対し対数殺菌率が約0.5増加)、許容レベルにあるとする。好ましくは、このような対数殺菌率の基準値増加は、S.aureus 及び K.pneumoniae に対して各々少なくとも0.3及び0.3であり、より好ましくは各々0.5及び0.5であり、最も好ましくは各々1.0及び1.0である。もちろん、このような対数殺菌率の上限は、基準値よりずっと大きく最大5.0(殺菌率99.999%)である。もちろん、中間のいかなる率も同様に許容範囲である。しかしながら、関係のある未処理ゴム物品についての値よりも測定値が良い限り、負の対数殺菌率も、本発明においては許容範囲である。このような場合、ゴム物品中に存在する抗菌性材料が、少なくとも微生物の成長を妨害していることを示している。更に、このようなゴム物品は、他のタイプの菌、例えば Pseudomonas aeruginosa 及び Eschericia coli に対しても同程度の対数殺菌率を示す。
【0023】
このような抗菌活性は、目的ゴム物品上の利用可能な表面銀イオンが充分量である場合にのみ認識される。従って、表面積当たりの数値が高いこと(例えば、約0.075 ppb/cm2以上)が、良好な抗菌効力のために必要である。このような測定値は基本的に、着色ゴム物品の個々の試料を15 mL の緩衝溶液中に高温で1時間浸漬することによって得る。この抽出試験は、ナトリウム-カリウムリン酸塩溶液を用いて、以下に詳述されている。
【0024】
本発明で非常に驚くべきことは、抗菌特性と同様に抗真菌性を与えるための、本発明の最終物品における能力である。このように用途が広いのは、抗菌性化合物ではまれである。しかしながら、特定の科学理論に限定されることを意図しないが、銀イオン、特に物品表面に豊富に存在する銀イオンは、優れた抗真菌特性を与えると考えられる。より広い一連の潜在的な抗真菌性を与えるため、他の化合物、例えば1つの例として、前記した可能性あるフィラー成分である酸化亜鉛を、対象未加硫ゴム組成物(及びその後の物品)に配合し得る。
【0025】
抗菌性及び抗真菌活性に関して、本発明の物品の効力にとって非常に重要なことは、有害な量の硫黄系加硫剤及び加硫促進剤が、ゴム物品から除かれることである。上述したように、特定の科学理論に拘束されることを意図しないが、ゴム組成物及び/またはその物品中、硫黄は好ましい銀系抗菌剤と反応し、不可逆的に銀イオンと結合する(例えば硫化銀のように)と考えられる。そうすると、得られた硫化銀などは抗菌剤として効力がなく、従ってそれらが存在すると、最終生成物が抗菌的に不活性となる。従って、検知し得る量の硫黄加硫剤及び加硫促進剤を含まない加硫ゴム物品を製造することが必要とされてきた。用語「検知し得る量」は、少量の存在は許容すると解されるべきである。存在する硫黄と銀のモル比が1:1(及びそれ以上)であると、所望の最終加硫物品中で抗菌活性の明らかな損失を引き起こすことが分かっている。しかしながら、硫黄よりも銀のモル量が多ければ、少なくとも幾らかの抗菌特性が所望物品に付与される。従って、硫黄の銀イオンに対するモル比が0.25:1〜約0.000000001:1の範囲であれば、少なくとも許容できる。しかしながら、主加硫剤は、対象ゴムに所望の抗菌活性を与えるため、非硫黄性で、(必ずではないが、好ましくは)過酸化物系化合物でなくてはならない。過酸化物加硫剤はゴムの加硫のために、以前から利用されてきたが、このような異なったタイプの加硫剤は、様々な理由からゴムに対しては適当な加硫触媒として広く利用されていない。第一に、過酸化物のような加硫剤は、標準的な硫黄系加硫剤より遙かに高価であり、従って、硫黄系化合物の代替品としてのこのような過酸化物などの利用は、むしろ、ほとんどシリコーン系ゴムまたは少なくとも非抗菌性ゴム物品に限定されてきた。しかしながら、このような銀化合物が硫黄系加硫剤と反応するときの抗菌活性に関する問題のため、硫黄系加硫物品の代替物が、長期間持続する高い対数殺菌率効果のために、生及び加硫ゴム中でのこのような有効な抗菌性化合物の利用を可能にした。従って、非硫黄系化合物は、非シリコーン産業で加硫剤として容易には利用されていないが、このような加硫剤の利用は、効果的な最終抗菌性加硫ゴム物品を与えるために必要であった。
【0026】
驚くべきことに、上述した本発明のゴム物品は、検知し得る量の硫黄系加硫剤を用いずに得られることが分かった。最も重要なことには、ある添加剤の導入に伴って、ゴム組成物の構造一体性及び/又は曲げ弾性率が許容できるレベルに改善され、抗菌成分の効力が同時に制御され得る。
【0027】
従って、加硫されて本発明の物品を形成する生ゴム組成物中に存在する加硫剤は、非硫黄系加硫剤の少なくとも過半、好ましくは少なくとも約75重量%でなくてはならない。上述したように、従来の硫黄及び硫黄系触媒は、本発明の抗菌性組成物では、硫黄原子と殺生物性Agイオンとの化学反応により作用しない。しかしながら、非硫黄系触媒、例えば、過酸化物に限定することを意図しないが、ある化合物、例えばジクミルパーオキシド、2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン、ジ-(t-ブチル-パーオキシ-イソプロピル)ベンゼン、ジ-(t-ブチル-パーオキシ-トリメチル)-シクロヘキサンなどを含む有機過酸化物、並びに酸化亜鉛などを含む無機過酸化物及び酸化物は、本発明の生ゴム組成物を効果的に加硫する。このような加硫剤は、1つの加硫剤のみまたは複数の異なったタイプの組み合わせで、ゴム100部あたり約0.5〜約100部(pphr)、より好ましくは約1〜約50 pphr、最も好ましくは約2〜約10 pphr の量で存在すべきである。
【0028】
本発明の加硫ゴム物品中に存在する他の添加剤は、上記銀イオン放出制御添加剤、加硫促進剤、加硫促進活性剤、分解防止剤、軟化剤、研磨剤、着色剤、難燃剤、均質化剤、内部滑剤及び消臭剤を含む。このような化合物は、存在するにしても、約0.1〜約10 pphr のむしろ少ない量で存在すべきである。
【0029】
予想外に、抗菌性及び抗真菌性効力の実質的な増加は、最終的な本発明の物品の洗浄によって与えられることが更に認められた。このような物品の表面摩耗も、Agイオンの増加により、抗菌特性の増加を可能にする。しかしながら、あるゴム製品(マットなど)の工業的洗浄は、単純な洗浄によって、抗菌性などの効力を向上し得る。実際、このような増加は、何回もの一貫した洗浄によって着実に向上されており、例えば、加硫したばかりのゴム物品は、(標準工業ロータリー洗濯機で)1、2、3及び少なくとも20回まで洗浄した加硫ゴム物品より低い総合的な抗菌性及び抗真菌活性しか示さないことが分かっている。従って、このような驚くべき利点のため、このようなゴム物品を、床カバー材(一例としてマット、例えば、カーペット部を有するマットまたはゴム単独のマット;特に、このような工業ロータリー洗濯及び乾燥中の機械損傷の機会を減らすための、抗疲労特性及び比重低下のための発泡ゴムマット)及び標準工業洗濯機で容易に洗濯し得る他の物品として利用することが可能となる。
【0030】
更に、上述したように、対象ゴム物品表面での摩擦は、ゴムの非常に僅かな層を物品表面から除去し得、それによって、所望通りに抗菌性及び/または抗真菌性能を発揮する「新しい」銀含有結晶子(crystallites)が表面に現れることを可能にする。基本的に、本発明の生ゴム組成物から製造される本発明の物品は、ゴム物品全体への抗菌性粒子の一様な分散を示す。従って、ゴム物品でのこのような殺生物剤の一様な分散は、殺生物性金属イオンを含む新しい結晶子の貯蔵庫となる。ゴムの層は、摩滅され、摩耗されるので、未利用銀イオンを含む抗菌性粒子が利用できるようになる。
【0031】
抗菌剤を含む、好ましい本発明の過酸化物加硫着色EPDM及び/又はNBRゴム物品は、ゴム物品の寿命を通じて優れた抗菌特性並びに抗菌効力を示すゴム物品に加工し得る。本発明に包含される他のこのような着色ゴム物品の例は、これらに限定されるものではないが、硬質ゴムマット、スポンジまたは発泡ゴムマット、静電気散逸ゴムマット、抗疲労ゴムマット、表面繊維を含むゴムマット、ゴム結合マット、ゴムガスケット、ゴム医療製品、ゴム手袋、ゴム医療機器、ゴムコンベヤーベルト、食品加工において使用されるゴムベルト及びゴムホイール、ゴム衣料、ゴム靴、ゴムブーツ、ゴムチューブ、ゴムシール、ゴムプランジャー、ゴム車両バンパー、ゴム靴底、容器用ゴム構成材、並びにゴム製自動車燃料ホースを含む。このような本発明の組成物は多層ゴム物品にも組み込むことができ、抗菌剤は任意の表面層に配合し得、所望の抗菌効力を付与し得る。
【0032】
特に興味深いのは、ゴム層の少なくとも1つが所望の抗菌活性を示し、本発明のEPDMゴム含有物品から形成される多層ゴム物品の製造である。このような層状物品は、共加硫及び接着などによって一緒に接着され得る。更に、他のタイプの材料の層は、1つの非限定特性として、より優れた構造安定性を所望の多層物品に与えるためのゴム層にも位置づけ得る。
【0033】
更に、このような多層物品は、少なくとも一つの着色抗菌層と少なくとも一つの無着色(ブラックまたはホワイト)抗菌層;若しくは少なくとも一つの着色抗菌層と少なくとも一つの無着色層(非抗菌);若しくは少なくとも一つの着色抗菌層、及び抗菌性か非抗菌性のいずれかである任意の他の層を有してよい。基本的に、少なくとも一層がここに定義された本発明の着色抗菌性ゴム組成物である限り、このような多層物品の任意の配置が本発明を充足する。もちろん、このような本発明のゴム組成物は、他の任意のタイプの物品(例えば金属物品、或いは二つの金属物品間、プラスチック物品、または二つ或いはそれ以上のプラスチック物品間など)における層(或いは複数の層)または部品(例えばシール)であってもよい。
これらのゴム組成物及び物品の非限定的な好ましい態様を、以下、より詳細に説明する。
【実施例】
【0034】
好ましい実施態様の記述

本発明の生ゴム組成物
最初に、銀含有抗菌剤の効果を分析するため、着色剤を含まない生ゴム組成物を製造し、加硫した(この際、銀イオン-交換リン酸ジルコニウム塩(ALPHASAN(登録商標)の商品名でMilliken & Companyから市販)を用いた。用いた銀含有抗菌剤は、イオン交換化合物:AgxNayHzZr2(PO4)3(式中、x+y+z=1)中で約10.0重量%の銀イオン濃度を含む一般式に従うものであった。)。該組成物および色調決定は以下の通りである:
【0035】

【0036】

【0037】

【0038】

【0039】

【0040】

【0041】

【0042】

【0043】

【0044】

【0045】

【0046】

【0047】
各組成物における成分のコンパウンドは、オープンミル、密閉式ミキサーまたは各成分のポリマー基質内部で強い混合が起こる押出機により行い得る。混合操作の間、成分の高剪断混合による温度上昇の制御は、その工程の間に事前加硫(焼け)が起こらないことを確実にするために重要である。一般的に、密閉式ミキサーによる一段階(パス)混合において120℃の最高温度に到達する。配合物は、混合後更に、製品への製造のために適切な体裁を与えるように特定の形に加工され得る。これは、カレンダー、押出し、造粒/ペレット化、ストリップ形、二次加工、及び180℃で10分間の圧縮成形とその後の室温への冷却によりサイズが3インチ×2インチである特定形状の打抜板とする予備成形を含む。
【0048】
配合物の加硫は、成形(圧縮、トランスファー、射出)、連続押出し(LCM、UHF(可能なら)、オートクレーブ及び熱風)、並びに被覆の形で行い得る。加硫(硬化)温度は、150℃〜250℃の範囲であり得る。この特定の状況において、ゴム物品は、荒マット構造にカレンダーされ、その後、高温加圧下で加硫される。
【0049】
ゴム自体は、特定の顔料(例えばカーボンブラック)を添加しなければ、若しくは他の着色源(暗色または別のもの)が存在しなければ、暗着色を示さない。従って、フィラー-銀イオン錯化により存在する変色を除けば、最終加硫構造物が感知可能な着色を示さないはずである。よって、他の色源を含有させて、着色剤を更に含む加硫ゴム組成物へ加硫中に所望の着色を与えるための、小さな変色は許容される。このような未着色ベース加硫組成物における大きな変色は、望ましくない銀イオン-フィラー錯化(または同様の反応)によって生じた暗変色が支配するため、そのような着色を可能としない。そこで、上記未着色の加硫試料につき、許容し得る低い変色レベルであることを実証的に分析した。下表中、+++は極めて小さな着色を示し、++は非常に小さな着色を示し、+は少なくとも許容できる小さな着色であることを示し(全て、対象とする最終加硫ゴム物品の着色)、また、−または−−は許容できない大きな変色を示す。結果は下記の通りである:
【0050】
変色結果の表

【0051】
もちろん、第三の比較実施例は、いかなるフィラー成分も有さない対象標準ゴムであった。それは優れた低変色を示したが、適切なフィラーを含まないため生成物全体としては低い寸法安定性となり、その結果、これ以上の使用には許容できないものであった。
【0052】
従って、次に、所望の着色効果を得るため、許容し得る低変色ベースゴムの選択された組成物を、ある着色剤をそこへ添加して調製した。このように、5phpの二酸化チタン(ホワイト用)、5phpのフタロシアニンブルー(Prima Colour 社製 RD Blue B609)、5 php のジアリリドイエロー(Prima Colour 社製 RD Yellow B581)、及び5phpのフタロシアニングリーン(Prima Colour 社製 RD Green B592)の全てを、上記本発明のEPDMベース組成物2にそれぞれ混合し、所望の抗菌性着色EPDMゴム物品(カレンダーシート)を製造した。
【0053】
表面-利用可能な銀の分析
次に、このような各着色物品(小試料の寸法)を室温で24時間(またはそれ以上、下記に示す)、抽出溶液にさらした。以下のどの場合にも、用いた抽出溶液はリン酸ナトリウム-カリウム緩衝液であったが、適切な銀抽出物がその溶液で許容される限り、任意の塩溶液(例えば、塩化ナトリウム、塩化カルシウムなど)を試験抽出溶液として利用することもできる。銀抗菌剤を有するがカルボン酸塩を有さない対象標準を、比較として試験した。
【0054】
抽出手順および分析は、第一に、硝酸溶液中で異なる濃度の標準プロットを行うことを伴う。銀配合物は、まず1000ppmの銀を100mL容量フラスコ中に秤量し、充分量の5%硝酸溶液を同フラスコへ充填線まで添加(1ppm銀標準液を調製)することにより調製した。10gの1ppm配合物を、100mL容量フラスコ中で、残りの5%硝酸溶液を添加することによって更に希釈した(100ppb標準液を調製)。次に、同様に5gの100ppb標準液を用いて、最終的に500ppb標準液を調製した。次いで、誘導結合プラズマ分光法を利用して、この銀含有量につき濃度を測定した。次に、比較のため、下記抽出溶液の最終的な銀含有量で、結果をプロットした。
【0055】
1X強度リン酸ナトリウム-カリウムの抽出溶液を調製した(初めに、約145gのリン酸ナトリウムを約71gのリン酸カリウムと混合し、1リットル容量フラスコ中で脱イオン水により希釈して第一溶液とし、次いで、この第一溶液100mLを脱イオン水により1000mLに希釈した)。次に、処理プラックをそれぞれ、密封プラスチック袋中に置き、充分な量の抽出溶液で試料を充分浸した。次いで、該プラスチック袋をオービタルシェーカーに140rpmで設置し、室温にて24時間保持した。この時間経過後、得られた抽出溶液9.5mLを15mLガラス瓶中に入れ、0.5%の70%硝酸を添加した。次に、得られた試験抽出溶液をICP分光法にかけ、次いで得られた銀濃度の測定値を上記標準液に対しプロットした。上記プラック試料に対する測定値は以下の通りである:
【0056】

【0057】
このように、所望の抗菌活性を対象ゴム物品に付与するには、理論的に0.075(3)g/dm2の目標値が必要であるため、これらの実験例は明らかに、利用可能な表面銀を充分に付与するものであったが、それでもなお有効かつ満足すべき着色を保持していた。
【0058】
本発明を詳細に説明してきたが、当業者が、本発明の範囲から逸脱することなく、それに変更及び修正を加え得ることは明らかである。従って、本発明の範囲は、ここに記した請求項によってのみ確定されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの銀系抗菌剤を含んで成る寸法安定性着色加硫ゴム物品であって、該着色ゴム物品は最低0.075(3)g/dm2 の表面利用可能銀量(surface available silver)を示すゴム物品。
【請求項2】
前記銀系抗菌性化合物は、銀元素、酸化銀、銀塩、銀イオン交換化合物、銀ゼオライト、銀ガラス、およびそれらの任意の混合物よりなる群から選ばれる請求項1に記載のゴム物品。
【請求項3】
前記物品は、少なくとも一つの銀イオン放出制御添加剤を更に含む請求項1に記載のゴム物品。
【請求項4】
前記物品は少なくとも一つの銀イオン放出制御添加剤を、更に含む請求項2に記載のゴム物品。
【請求項5】
前記少なくとも一つの銀イオン放出制御添加剤は、フィラー、オイル、およびそれらの混合物よりなる群から選ばれる請求項3に記載のゴム物品。
【請求項6】
前記少なくとも一つの銀イオン放出制御添加剤は、ケイ酸金属、ステアリン酸金属、金属酸化物、金属炭酸塩、クレー、シラン油処理シリカ、およびそれらの任意の混合物よりなる群から選ばれる親水性フィラーである請求項5に記載のゴム物品。
【請求項7】
前記少なくとも一つの銀イオン放出制御添加剤は、フィラー、オイル、およびそれらの混合物よりなる群から選ばれる請求項4に記載のゴム物品。
【請求項8】
前記少なくとも一つの銀イオン放出制御添加剤は、ケイ酸金属、ステアリン酸金属、金属酸化物、金属炭酸塩、クレー、シラン油処理シリカ、およびそれらの任意の混合物よりなる群から選ばれる親水性フィラーである請求項7に記載のゴム物品。
【請求項9】
前記ゴム成分は、EPDM、NBR、およびそれらの任意の混合物よりなる群から選ばれる請求項1に記載のゴム物品。
【請求項10】
表面利用可能銀イオン量(surface availability of silver ions)が最低0.075(3)g/dm2 を示す着色ゴム物品の製造方法であって、
a)少なくとも一つのゴム成分(その大部分は非シリコーンゴムでなくてはならない)、少なくとも一つの銀系抗菌性化合物、少なくとも一つの着色剤、少なくとも一つのフィラー成分、および少なくとも一つの加硫剤化合物を含有する未加硫ゴム組成物を一緒に配合し、ここで、ブラック着色剤は存在せず、該組成物中に存在する該硬化剤化合物は検知し得る量の硫黄系化合物を含まないものであり、
b)該ゴム組成物を予め選択した形状に成形し、
c)該ゴム組成物を高圧下、高温に暴露して加硫する
工程を含む方法。
【請求項11】
前記銀系抗菌性化合物は、銀元素、酸化銀、銀塩、銀イオン交換化合物、銀ゼオライト、銀ガラス、およびそれらの任意の混合物よりなる群から選ばれる請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも一つのフィラー成分は、同時に銀イオン放出制御添加剤として機能する請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも一つのフィラー/銀イオン放出制御添加剤は、フィラー、オイル、およびそれらの混合物よりなる群から選ばれる請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも一つのフィラー/銀イオン放出制御添加剤は、ケイ酸金属、ステアリン酸金属、金属酸化物、金属炭酸塩、クレー、シラン油処理シリカ、およびそれらの任意の混合物よりなる群から選ばれる親水性フィラーである請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ゴム成分は、EPDM、NBR、およびそれらの任意の混合物よりなる群から選ばれる請求項10に記載のゴム物品。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの銀系抗菌剤を含んで成る寸法安定性着色加硫ゴム物品であって、該着色ゴム物品は最低0.075μg/dm2 の表面利用可能銀量(surface available silver)を示すゴム物品。
【請求項2】
前記銀系抗菌性化合物は、銀元素、酸化銀、銀塩、銀イオン交換化合物、銀ゼオライト、銀ガラス、およびそれらの任意の混合物よりなる群から選ばれる請求項1に記載のゴム物品。
【請求項3】
前記物品は、少なくとも一つの銀イオン放出制御添加剤を更に含む請求項1に記載のゴム物品。
【請求項4】
前記物品は少なくとも一つの銀イオン放出制御添加剤を、更に含む請求項2に記載のゴム物品。
【請求項5】
前記少なくとも一つの銀イオン放出制御添加剤は、フィラー、オイル、およびそれらの混合物よりなる群から選ばれる請求項3に記載のゴム物品。
【請求項6】
前記少なくとも一つの銀イオン放出制御添加剤は、ケイ酸金属、ステアリン酸金属、金属酸化物、金属炭酸塩、クレー、シラン油処理シリカ、およびそれらの任意の混合物よりなる群から選ばれる親水性フィラーである請求項5に記載のゴム物品。
【請求項7】
前記少なくとも一つの銀イオン放出制御添加剤は、フィラー、オイル、およびそれらの混合物よりなる群から選ばれる請求項4に記載のゴム物品。
【請求項8】
前記少なくとも一つの銀イオン放出制御添加剤は、ケイ酸金属、ステアリン酸金属、金属酸化物、金属炭酸塩、クレー、シラン油処理シリカ、およびそれらの任意の混合物よりなる群から選ばれる親水性フィラーである請求項7に記載のゴム物品。
【請求項9】
前記ゴム成分は、EPDM、NBR、およびそれらの任意の混合物よりなる群から選ばれる請求項1に記載のゴム物品。
【請求項10】
表面利用可能銀イオン量(surface availability of silver ions)が最低0.075μg/dm2 を示す着色ゴム物品の製造方法であって、
a)少なくとも一つのゴム成分(その大部分は非シリコーンゴムでなくてはならない)、少なくとも一つの銀系抗菌性化合物、少なくとも一つの着色剤、少なくとも一つのフィラー成分、および少なくとも一つの加硫剤化合物を含有する未加硫ゴム組成物を一緒に配合し、ここで、ブラック着色剤は存在せず、該組成物中に存在する該硬化剤化合物は検知し得る量の硫黄系化合物を含まないものであり、
b)該ゴム組成物を予め選択した形状に成形し、
c)該ゴム組成物を高圧下、高温に暴露して加硫する
工程を含む方法。
【請求項11】
前記銀系抗菌性化合物は、銀元素、酸化銀、銀塩、銀イオン交換化合物、銀ゼオライト、銀ガラス、およびそれらの任意の混合物よりなる群から選ばれる請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも一つのフィラー成分は、同時に銀イオン放出制御添加剤として機能する請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも一つのフィラー/銀イオン放出制御添加剤は、フィラー、オイル、およびそれらの混合物よりなる群から選ばれる請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも一つのフィラー/銀イオン放出制御添加剤は、ケイ酸金属、ステアリン酸金属、金属酸化物、金属炭酸塩、クレー、シラン油処理シリカ、およびそれらの任意の混合物よりなる群から選ばれる親水性フィラーである請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ゴム成分は、EPDM、NBR、およびそれらの任意の混合物よりなる群から選ばれる請求項10に記載のゴム物品。

【公表番号】特表2006−501315(P2006−501315A)
【公表日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−551195(P2003−551195)
【出願日】平成14年9月30日(2002.9.30)
【国際出願番号】PCT/US2002/030852
【国際公開番号】WO2003/050173
【国際公開日】平成15年6月19日(2003.6.19)
【出願人】(500524682)ミリケン・アンド・カンパニー (23)
【Fターム(参考)】