説明

抗菌活性を有する半合成グリコペプチド

抗菌活性を有する半合成グリコペプチドは、エレモマイシン、A82846B、バンコマイシン、テイコプラニンまたはA−40,926などの骨格を、特にこれらの骨格上のアミノ置換糖部分におけるアミノ置換基の、ある種のアシル基(特に、アミノ酸およびそれらの誘導体)によるアシル化;および/またはこれらの骨格の大環状の環上における酸部分の、ある種の置換されたアミドへの変換反応;または、これらの骨格上にあるアミノ置換糖部分におけるアミノ置換基の、ある種のアルキル基によるアルキル化修飾、もしくはこれらの骨格上にあるアミノ置換糖部分におけるアミノ置換基の、ある種のアルキル基(β−アミノ酸またはそれらの誘導体が挙げられる)によるアシル化修飾と、これらの骨格の大環状の環上における酸部分の、ある種の置換されたアミドへの変換反応との組み合わせ、による修飾によって製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、「SEMI−SYNTHETIC GLYCOPEPTIDES WITH ANTIBIOTIC ACTIVITY」のタイトルを有する、2005年2月28日に出願された米国仮特許出願第60/657,297号に対する優先権を主張する。その開示は、その全体が全ての目的のために、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(発明の背景)
(1.発明の分野)
本発明は、新規な、抗菌活性を有する半合成グリコペプチド、これらの化合物を含む医薬組成物、および医学的な治療方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(2.関連技術分野の説明)
薬剤耐性の細菌株の出現は、改善された活性を有する抗生物質の合成および同定の必要性を強調してきた。細菌感染症に対抗するために使用される天然の、および半合成のグリコペプチド抗生物質は、それぞれ下記する骨格A、B、CおよびDを有する、エレモマイシン(構造A、X=H)、A82846B(構造A、X=Cl)、バンコマイシン、テイコプラニン、およびA−40,926などの化合物を含む。
【0004】
【化4】

これらの化合物は細菌感染症を治療および予防するために使用されるが、他の抗菌剤と同様に、これらの化合物に対する耐性あるいは不十分な感受性を持つ細菌株が同定され、これらの化合物はグリコペプチド耐性腸球菌により起きるある種の細菌感染症に対しては限られた効果しか有さないことが判明した。したがって、改善された抗菌活性、耐性出現の少ない可能性、現在利用可能な抗生物質の治療に耐性の細菌感染症に対する改善された有効性、あるいは標的とする微生物に対する予想外の選択性を有する新規な誘導体化合物を同定する必要が絶えずある。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述のことを達成するために、本発明は、新規な抗菌活性を有する半合成グリコペプチドを提供する。本発明の半合成グリコペプチドは、エレモマイシン、A82846B、バンコマイシン、テイコプラニン、およびA−40,926などの骨格の修飾、特にこれらの骨格のアミノ置換糖部分におけるアミノ置換基をある種のアシル基、特にアミノ酸またはそれらの誘導体によるアシル化;および/またはこれらの骨格の大環状の環上の酸部分をある種の置換されたアミドへの変換反応;または、これらの骨格上にあるアミノ置換糖部分におけるアミノ置換基をある種のアルキル基によるアルキル化修飾、もしくはこれらの骨格上にあるアミノ置換糖部分におけるある種のアルキル基、例えばβ−アミノ酸またはそれらの誘導体によるアシル化修飾と、これらの骨格の大環状の環上における酸部分をある種の置換されたアミドへの変換反応との組み合わせに基づいている。また、該化合物の合成法、該化合物を含んでいる医薬組成物、および疾患、特に細菌感染症の治療および/または予防のための該化合物の使用法が提供される。
【0006】
本発明の特定の実施形態では、エレモマイシン、A82846B、バンコマイシン、テイコプラニンおよびA−40,926の骨格が修飾されて、
【0007】
【化5】

から成る群から選択される式を有する化合物
(式中、Rは、C(=O)CR7aNR8aであり、式中、
およびR7aは、独立して水素、天然もしくは非天然のアミノ酸の側鎖、アルキル、またはハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アルコキシアルコキシ、カルボキシル、カルボキシルエステル、−C(=O)NR8a、−NR8a、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、メルカプト、またはチオアルコキシから成る群から選択される1以上の置換基で置換されたアルキルであり、またはRおよびR7aは、それらが結合している原子と一緒になってシクロアルキル環を形成し、該シクロアルキル環は、必要に応じて、置換されていてもよいO、N、およびSから成る群から選択されるヘテロ原子を必要に応じて含んでいてもよく;
およびR8aは、独立して水素および非置換または置換された、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキルまたはヘテロアリールから成る群から選択され、前記アリール、アリールアルキル、アルキルアリールまたはヘテロアリール基は、1以上の必要に応じて置換されていてもよい、アリール、ヘテロアリール、または縮合環を必要に応じて含んでいてもよく、またはRおよびR8aは、それらが結合している原子と一緒になってシクロアルキル環を形成し、該シクロアルキル環は、必要に応じて、置換されていてもよいO、N、およびSから成る群から選択されるヘテロ原子を必要に応じて含んでいてもよく;
1Aは、H、CHR5a、およびC(=O)Rから成る群から選択され、式中、RおよびR5aは、独立して水素および非置換または置換された、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、およびヘテロアリールから成る群から選択され、前記アリール、アルキルアリール、アリールアルキルまたはヘテロアリール基は、1以上の必要に応じて置換されていてもよい、アリール、ヘテロアリール、または縮合環を必要に応じて含んでいてもよく、またはRおよびR5aは、それらが結合している原子と一緒になってシクロアルキル環を形成し、該シクロアルキル環は、必要に応じて、置換されていてもよいO、NおよびSから成る群から選択されるヘテロ原子を必要に応じて含んでいてもよく;および
は、非置換または置換された、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、および必要に応じて、置換されていてもよいO、N、およびSから成る群から選択されるヘテロ原子を含んでいてもよいヘテロアリールから成る群から選択され、前記アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、またはヘテロアリール基は、1以上の必要に応じて置換されていてもよい、アリール、ヘテロアリール、または縮合環を必要に応じて含んでいてもよく;
は、
(1)OH、
(2)1−アダマンタンアミノ、
(3)2−アダマンタンアミノ、
(4)3−アミノ−1−アダマンタンアミノ、
(5)1−アミノ−3−アダマンタンアミノ、
(6)3−低級アルキルアミノ−1−アダマンタンアミノ、
(7)1−低級アルキルアミノ−3−アダマンタンアミノ、
(8)アミノ、
(9)NR9a
から成る群から選択され、式中、RおよびR9aは、独立して水素、低級アルキルまたは置換低級アルキルから成る群から選択され、または
およびR9aは、それらが結合している原子と一緒になって3員から10員のヘテロシクロアルキル環を形成し、この環は、
(a)ハロゲン、
(b)ヒドロキシ、
(c)C−C−アルコキシ、
(d)C−C−アルコキシ−C−C−アルコキシ、
(e)オキソ、
(f)C−C−アルキル、
(g)ハロ−C−C−アルキル、および
(h)C−C−アルコキシ−C−C−アルキル
から成る群から独立して選択される1以上の置換基で場合により置換されていてもよく;
2Aは、
(1)1−アダマンタンアミノ、
(2)2−アダマンタンアミノ、
(3)3−アミノ−1−アダマンタンアミノ、
(4)1−アミノ−3−アダマンタンアミノ、
(5)3−低級アルキルアミノ−1−アダマンタンアミノ、
(6)1−低級アルキルアミノ−3−アダマンタンアミノ
から成る群から選択され;および
は、水素およびアミノ低級アルキルから成る群から選択され、該アミノ低級アルキルのアミノ基は、非置換または置換された、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、アルコキシ、アリールオキシ、置換アルコキシ、および置換アリールオキシでさらに置換されている)から成る群から選択される式を有する化合物;または
その薬学的に許容される塩、エスエル、溶媒和物、立体異性体、互変異性体もしくはプロドラッグが製造される。
【0008】
本発明はまた、医薬組成物を提供し、該医薬組成物は治療的有効量の上に定義した化合物と薬学的に許容される担体との組み合わせを含む。
【0009】
本発明はさらに、そのような治療を必要とする宿主哺乳動物の細菌感染症の治療法に関し、上に定義した化合物の治療的有効量をそのような治療を必要とする哺乳動物に投与することを含む。
【0010】
本発明のさらなる態様では、上に定義した半合成グリコペプチドの製造法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(発明の具体的な実施形態の説明)
本発明の材料および関連する技術および装置は、いくつかの実施形態に関連して記載されるであろう。記載された実施形態の重要な特性および特徴は、明細書中の構造の中で説明される。本発明はこれらの実施形態と共に記載されるであろうが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではないことを理解すべきである。これに反して、本発明は添付された特許請求の範囲によって定義される発明の精神および範囲内に含まれ得る、代替、改変および均等物を保護するように意図される。以下に示す記載では、多数の特定の細部項目が、本発明についての完全な理解を提供するために述べられる。本発明は、これらの特定の細部項目のうちのいくつかあるいは全くなしで実行し得る。他の実例では、周知の方法の操作は、不必要に本発明を不明瞭にしないように詳細には記述されていない。
【0012】
(導入)
本発明は、抗菌活性を有する新規半合成グリコペプチドを提供する。本発明の半合成グリコペプチドは、エレモマイシン、A82846B、バンコマイシン、テイコプラニン、およびA−40,926などの骨格の修飾、特にこれらの骨格のアミノ置換糖部分におけるアミノ置換基をある種のアシル基によるアシル化;およびこれらの骨格の大環状の環上における酸部分をある種の置換されたアミドへの変換反応に基づいている。また、該化合物の合成法、該化合物を含む医薬組成物、および疾患、特に細菌感染症の治療および/または予防のための該化合物の使用法が提供される。
【0013】
(本発明の化合物)
本発明の具体的な実施形態では、エレモマイシン、A82846B、バンコマイシン、テイコプラニン、およびA−40,926の骨格が修飾されて、
【0014】
【化6】

(式中、Rは、C(=O)CR7aNR8aであり、式中、
およびR7aは、独立して水素、天然もしくは非天然のアミノ酸の側鎖、アルキル、またはハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アルコキシアルコキシ、カルボキシル、カルボキシルエステル、−C(=O)NR8a、−NR8a、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、メルカプト、またはチオアルコキシから成る群から選択される1以上の置換基で置換されたアルキルであり、またはRおよびR7aは、それらが結合している原子と一緒になってシクロアルキル環を形成し、該シクロアルキル環は、必要に応じて、置換されていてもよいO、N、およびSから成る群から選択されるヘテロ原子を必要に応じて含んでいてもよく;
およびR8aは、独立して水素および非置換または置換された、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリールおよびヘテロアリールから成る群から選択され、前記アリール、アルキルアリール、アリールアルキルまたはヘテロアリール基は、1以上の必要に応じて置換されていてもよいアリール、ヘテロアリール、または縮合環を必要に応じて含んでいてもよく、またはRおよびR8aは、それらが結合している原子と一緒になってシクロアルキル環を形成し、該シクロアルキル環は、必要に応じて、置換されていてもよいO、N、およびSから成る群から選択されるヘテロ原子を必要に応じて含んでいてもよく;
1Aは、H、CHR5a、およびC(=O)Rから成る群から選択され、式中、RおよびR5aは、独立して水素および非置換または置換された、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、およびヘテロアリールから成る群から選択され、前記アリール、アルキルアリール、アリールアルキルまたはヘテロアリール基は、1以上の必要に応じて置換されていてもよい、アリール、ヘテロアリール、または縮合環を必要に応じて含んでいてもよく、またはRおよびR5aは、それらが結合している原子と一緒になってシクロアルキル環を形成し、該シクロアルキル環は、必要に応じて、置換されていてもよいO、N、およびSから成る群から選択されるヘテロ原子を必要に応じて含んでいてもよく;および
は、非置換または置換された、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリールおよびヘテロアリールから成る群から選択され、前記アリール、アルキルアリール、アリールアルキルまたはヘテロアリール基は、1以上の必要に応じて置換されていてもよいアリール、ヘテロアリール、または縮合環を必要に応じて含んでいてもよく;
は、
(1)OH、
(2)1−アダマンタンアミノ、
(3)2−アダマンタンアミノ、
(4)3−アミノ−1−アダマンタンアミノ、
(5)1−アミノ−3−アダマンタンアミノ、
(6)3−低級アルキルアミノ−1−アダマンタンアミノ、
(7)1−低級アルキルアミノ−3−アダマンタンアミノ、
(8)アミノ、
(9)NR9a
から成る群から選択され、式中、RおよびR9aは、独立して水素、低級アルキルまたは置換低級アルキルから成る群から選択され、または
およびR9aは、それらが結合している原子と一緒になって3員から10員のヘテロシクロアルキル環を形成し、この環は、
(a)ハロゲン、
(b)ヒドロキシ、
(c)C−C−アルコキシ、
(d)C−C−アルコキシ−C−C−アルコキシ、
(e)オキソ、
(f)C−C−アルキル、
(g)ハロ−C−C−アルキル、および
(h)C−C−アルコキシ−C−C−アルキル
から成る群から独立して選択される1以上の置換基で必要に応じて置換されていてもよく;
2Aは、
(1)1−アダマンタンアミノ、
(2)2−アダマンタンアミノ、
(3)3−アミノ−1−アダマンタンアミノ、
(4)1−アミノ−3−アダマンタンアミノ、
(5)3−低級アルキルアミノ−1−アダマンタンアミノ、
(6)1−低級アルキルアミノ−3−アダマンタンアミノ
から成る群から選択され;および
は、水素およびアミノ低級アルキルから成る群から選択され、該アミノ低級アルキルのアミノ基は、非置換または置換された、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、アルコキシ、アリールオキシ、置換アルコキシ、および置換アリールオキシでさらに置換されている)から成る群から選択される式を有する化合物;
またはその薬学的に許容される塩、エスエル、溶媒和物、立体異性体、互変異性体もしくはプロドラッグが製造される。
【0015】
本発明の特定の実施形態によれば、様々な置換基としては以下のものであってもよい:
1Aの範囲内:
は水素であってもよく、そしてR5aは非置換または置換された、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、およびヘテロアリールから成る群から選択され、前記アリール、アルキルアリール、アリールアルキルまたはヘテロアリール基は、1以上の必要に応じて置換されていてもよい、アリール、ヘテロアリール、または縮合環を必要に応じて含んでいてもよく、またはRおよびR5aは、それらが結合している原子と一緒になってシクロアルキル環を形成し、該シクロアルキル環は、必要に応じて、置換されていてもよいO、N、およびSから成る群から選択されるヘテロ原子を必要に応じて含んでいてもよい。
【0016】
は、β−アミノ酸アナログであってもよい。そのような基としては、−CHCHNH−部分を含むであろう。例えば、Rは、CHC(R)(R7a)(NR8a)であってもよく、R、R7a、R、およびR8aは、上で定義した通りであり、または−CR7aは、NR8aと一緒になって、ピロリジン環を形成してもよい。
【0017】
の範囲内で、C(=O)CR7aNR8aは、R、RおよびR8aがそれぞれHであり、R7aがH、CH、CH(CH、CHCH(CH、CH(CH)CHCH、(CHNH、CHOH,CH(OH)CH、CHCOOH、(CHCOOH,CHC(=O)NH、(CHC(=O)NH、CHSH,(CHSCH,(CHNHC(=NH)NH,CH,CHOH、CH(4−イミダゾリル)またはCH(3−インドリル)の1つであり、または−CR7aは、NR8aと一緒になって、ピロリジン環を形成するようなアミノ酸部分であってもよい。
または、Rは、Hであってもよく、およびR7aは、
(1)水素、
(2)C−C12−アルキル、および
(3)C−C12−アルキルであって、
(a)ハロゲン、
(b)ヒドロキシ、
(c)C−C−アルコキシ、
(d)C−C−アルコキシ−C−C−アルコキシ、
(e)−CO(式中、Rは水素、低級アルキルまたは置換された低級アルキルである)、
(f)−C(=O)NR9a
(g)アミノ、および
(h)−NR9a、または
およびR9aは、それらが結合している原子と一緒になって3員から10員の、ヘテロシクロアルキル環であり、該環は必要に応じて
(i)ハロゲン、
(ii)ヒドロキシ、
(iii)C−C−アルコキシ、
(iv)C−C−アルコキシ−C−C−アルコキシ、
(v)オキソ、
(vi)C−C−アルキル、
(vii)ハロ−C−C−アルキル、および
(viii)C−C−アルコキシ−C−C−アルキル
から成る群から独立して選択される1以上の置換基で置換される、−NR9a
(i)アリール、
(j)置換アリール、
(k)ヘテロアリール、
(l)置換ヘテロアリール、
(m)メルカプト、および
(n)C−C−チオアルコキシ
から成る群から選択される1以上の置換基で置換されている、C−C12−アルキル
から成る群から選択されてもよい。
【0018】
さらに、RおよびR8aは、
(1)水素、
(2)C−C12−アルキル、および
(3)C−C12−アルキルであって、
(a)ハロゲン、
(b)ヒドロキシ、
(c)C−C−アルコキシ、
(d)C−C−アルコキシ−C−C−アルコキシ、
(e)アミノ、および
(f)C−C−アルキルアミノ
から成る群から選択される1以上の置換基で置換されている、C−C12−アルキル
(4)アリールで置換されているC−C12−アルキル、
(5)置換アリールで置換されているC−C12−アルキル、
(6)ヘテロアリールで置換されているC−C12−アルキル、および
(7)置換ヘテロアリールで置換されているC−C12−アルキル
から成る群から独立して選択されてもよく;または
およびR8aは、それらが結合する原子と一緒になって、C−C−ヘテロシクロアルキル環を形成し、該環が5員から7員の環であるときは、場合により、−O−、−NH、−N(C−C−アルキル−)−、−N(アリール)−、−N(アリール−C−C−アルキル−)−、−N(置換−アリール−C−C−アルキル−)−、−N(ヘテロアリール)−、−N(ヘテロアリール−C−C−アルキル−)−、−N(置換−ヘテロアリール−C−C−アルキル−)−、および−S−またはS(=O)−(式中、nは1または2である)から成る群から選択されるヘテロ官能基を含んでもよい。
【0019】
特定の実施形態において、該化合物は、N’−p−BuBnHNCHCOエレモマイシン、N’−スチルベニルHNCHCOエレモマイシン、N’−p−C17OBnHNCHCOバンコマイシン、N’−p−C17OBnHNCH(CH)COバンコマイシンおよび2−アダマンタンアミノエレモマイシンの1つであってもよい。
【0020】
(定義)
特に断りのない限り、本明細書で使用される用語は、当業者によって理解されるようなその通常の意味が与えられるべきである。本発明について理解しやすいように、多くの定義された用語は、本発明の特別の要素を指定するために本明細書では使用される。そのように使用される場合、次の意味が意図される:
本明細書で使用される用語「アルキル」は、飽和の直鎖状または分岐状の炭化水素基を意味し、この基は1個の水素原子が除去されることによって、1と20との間の炭素原子を含む炭化水素部分に由来する。
【0021】
本明細書で使用される用語「アルケニル」は、不飽和の直鎖状または分岐状の炭化水素基を意味し、この基は1個の水素原子が除去されることによって、2と20との間の炭素原子を含む炭化水素部分に由来する。
【0022】
本明細書で使用される用語「シクロアルキル」は、1個の水素原子が除去されることによって、3と20との間の炭素原子を含む単環式または二環式の飽和炭素環化合物に由来する1価の基を意味する。
【0023】
本明細書で使用される用語「シクロアルケニル」は、1個の水素原子が除去されることによって、3と20との間の炭素原子を含む単環式または二環式の不飽和炭素環化合物に由来する1価の基を意味する。
【0024】
本明細書で使用される用語「C−C−アルキル」、「C−C−アルキル」、および「C−C12−アルキル」は、飽和の直鎖状または分岐状の炭化水素基を意味し、この基は1個の水素原子が除去されることによって、1と3との間、1と6との間、および1と12との間の炭素原子をそれぞれ含んでいる炭化水素部分に由来する。C−C−アルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピルおよびイソプロピルを含む。C−C−アルキル基の例としては、これらに限定されないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル、ネオペンチルおよびn−ヘキシルを含む。C−C12−アルキル基の例としては、これらに制限されないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシルおよびn−ドデシル(n−docecyl)が挙げられる。
【0025】
本明細書で使用される用語「置換低級アルキル」は、ハロゲン、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヒドロキシ、アリール、ヘテロアリール、アルケンまたはアルキン基から成る1個、2個または3個の基によって置換されたC−C12−アルキルを意味する。
【0026】
用語「C−C12−シクロアルキル」は、1個の水素原子が除去されることによって、単環式または二環式の飽和炭素環化合物に由来する1価の基を意味する。例示としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、およびビシクロ[2.2.2]オクチルが挙げられる。
【0027】
本明細書で使用される用語「C−C−アルコキシ」、「C−C−アルコキシ」は、酸素原子を介して親の分子部分に結合している、上に定義したC−C−アルキル基およびC−C−アルキル基を意味する。C−C−アルコキシ基の例としては、これらに限定されることはないが、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、tert−ブトキシ、ネオペントキシルおよびn−ヘキソキシが挙げられる。
【0028】
用語「オキソ」は、上に定義したアルキル基中の1個の炭素原子上の2個の水素原子が1個の酸素原子(つまりカルボニル基)で置換されている基を意味する。
【0029】
本明細書で使用される用語「アリール」は、これらに限定はされないが、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダニル、インデニルなどを含む1個または2個の芳香族環を有する単環式または二環式の炭素環系を意味し、低級アルキル、置換低級アルキル、ハロアルキル、C−C12−アルコキシ、チオアルコキシ、C−C12−チオアルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アシルアミノ、シアノ、ヒドロキシ、ハロゲン、メルカプト、ニトロ、カルボキシアルデヒド、カルボキシ、アルコキシカルボニルおよびカルボキサミドから独立して選択される1個、2個または3個の置換基で置換されている(二環式のアリール基を含む)か、または非置換のものである。さらに、置換アリール基としては、テトラフルオロフェニルおよびペンタフルオロフェニルが挙げられる。
【0030】
本明細書で使用される用語「アリールアルキル」は、1と12との間の炭素原子のアルキル基を介して親の分子部分に結合する、上に定義したアリール基を意味する。
【0031】
本明細書で使用される用語「アルキルアリール」は、アリール基を介して親の分子部分に結合する、先に定義したアルキル基を意味する。
【0032】
本明細書で使用される用語「ハロ」および「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素から選択される原子を意味する。
【0033】
用語「アルキルアミノ」は、構造−NHR’(R’は先に定義したアルキル)を有する基を意味する。アルキルアミノの例としては、メチルアミノ、エチルアミノ、イソプロピルアミノなどが挙げられる。
【0034】
本明細書で使用される用語「低級アルキルアミノ」は、窒素原子を介して親の分子部分に結合する、上に定義したC−C−アルキル基を意味する。C−C−アルキルアミノの例としては、これらに限定されないが、メチルアミノ、ジメチルアミノ、エチルアミノ、ジエチルアミノ、およびプロピルアミノなどが挙げられる。
【0035】
用語「ジアルキルアミノ」は、構造−NHR’R”(R’およびR”は先に定義したアルキルから独立して選択される)を有する基を意味する。さらに、R’およびR”は、一緒になって必要に応じて−(CH−であってもよく、式中kは2から6の整数である。ジアルキルアミノの例としては、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、メチルプロピルアミノ、ピペリジノなどを含む。
【0036】
用語「ハロアルキル」は、1個、2個または3個のハロゲン原子がそれに結合している、上に定義したアルキル基を意味し、クロロメチル、ブロモエチル、トリフルオロメチルなどの基が例示される。
【0037】
用語「アルコキシカルボニル」は、エステル基を表す;すなわちメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどのカルボニル基を介して親の分子部分に結合しているアルコキシ基である。
【0038】
用語「チオアルコキシ」は、硫黄原子を介して親の分子部分に結合している、先に定義したアルキル基を意味する。
【0039】
本明細書で使用される用語「カルボキシアルデヒド」は、式−CHOの基を意味する。
【0040】
本明細書で使用される用語「カルボキシ」は、式−COHの基を意味する。
【0041】
本明細書で使用される用語「カルボキサミド」は、式−CONHR’R”の基を意味し、式中、R’およびR”は、水素、アルキルから独立して選択され、またはR’およびR”は、一緒になって場合により−(CH−(kは2から6の整数である)であってもよい。
【0042】
本明細書で使用される用語「ヘテロアリール」は、5から10個の環原子を有する環状または二環式の芳香族基を意味し、各環において該環または二環式環の少なくとも1個の原子が、場合により置換されていてもよいS、O、およびNから選択される;ゼロ個、1個または2個の環原子は、場合により置換されていてもよいS、O、およびNから独立して選択される付加的なヘテロ原子である;および残りの環原子は炭素であり、該芳香族基は、任意の環原子を介して分子の残余に結合している、例えばピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、チオフェニル、フラニル、キノリニル、イソキノリニル、ナフチリジニルなどである。
【0043】
本明細書で使用される用語「ヘテロシクロアルキル」は、非芳香族性の、部分的に不飽和されているか、または完全に飽和された3員から10員の環系を意味し、該環は、3から8個の原子の大きさの単環および二環式もしくは三環式の環系を含み、該二環式もしくは三環式の環系は、非芳香族性の環に縮合している、芳香族性の6員のアリール環またはヘテロアリール環である。これらのヘテロシクロアルキル環は、酸素、硫黄及び窒素から独立して選択される1個から3個のヘテロ原子を有する環であり、該環では窒素および硫黄のヘテロ原子は、場合により、酸化されていてもよく、窒素ヘテロ原子は場合により4級化されていてもよい。代表的なヘテロシクロアルキル環としては、これらに限定されないが、ピロリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリジニル、モルホリニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、およびテトラヒドロフリルが挙げられる。
【0044】
本明細書で使用される用語「ヘテロアリールアルキル」は、1から12個の炭素原子のアルキル基を介して親の分子部分に結合する、上に定義したヘテロアリール基を意味する。
【0045】
「保護基」は、例えばヒドロキシル、ケトンまたはアミンなどの官能基を合成操作の間、望ましくない反応に対して保護すること、および選択的に除去され得ることが当該分野で知られている、容易に除去可能な基を意味する。保護基の使用は、合成操作の間、望ましくない反応に対する保護基として当該分野でよく知られており、多くのそのような保護基が公知である;参照、例えばT.H.GreenおよびP.G.M.Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,第2版,John Wiley& Sons,New York(1991)。水酸基の保護基としては、これらに限定はされないが、メチルチオメチル、tert−ジメチルシリル、tert−ブチルジフェニルシリル、メトキシメチルなどのエーテル、およびアセチル、ベンゾイルなどのエステルが挙げられる。ケトン保護基の例としては、これらに限定はされないが、ケタール類、オキシム類、O−置換オキシム類が挙げられ、O−置換オキシム類としては、例えばO−ベンジルオキシム、O−フェニルチオメチルオキシム、1−イソプロポキシシクロヘキシルオキシムなどが挙げられる。アミノ保護基の例としては、これらに限定はされないが、tert−ブトキシカルボニル(Boc)およびカルボベンジルオキシ(Cbz)が挙げられる。
【0046】
用語「アミノ酸」は、DまたはLの立体化学を有するアミノ酸を意味し、20の必須アミノ酸に見られる側鎖以外の側鎖を有する合成の非天然アミノ酸をも意味する。非天然アミノ酸は、市販のものを利用することもできるし、あるいは米国特許第5,488,131およびその中の引用文献に従って製造することもできる。アミノ酸は、さらに置換されてアミノ、カルボキシ、または側鎖基に対する修飾を含む。これらの修飾は、ペプチド合成において通常使用される多くの保護基を含む(T.H.GreenおよびP.G.M.Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,第2版,John Wiley& Sons,New York,1991)。
【0047】
本明細書で使用される用語「置換アリール」は、ここで定義したアリール基を意味し、該アリール基上の1個、2個または3個の水素原子は、Cl、Br、F、I、OH、CN、C−C12−アルキル、C−C12−アルコキシ、アリール置換C−C12−アルコキシ、置換アリール置換C−C12−アルコキシ、ハロアルキル、チオアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、メルカプト、ニトロ、カルボキシアルデヒド、カルボキシ、アルコキシカルボニルおよびカルボキサミドで独立した置換により置換されている。さらに、任意の置換基は、アリール、ヘテロアリール、またはヘテロシクロアルキル基であってもよい。
【0048】
本明細書で使用される用語「置換ヘテロアリール」は、本明細書で定義したヘテロアリール基を意味し、該ヘテロアリール基上の1個、2個または3個の水素原子は、Cl、Br、F、I、OH、CN、C−C12−アルキル、C−C12−アルコキシ、アリール置換C−C12−アルコキシ、ハロアルキル、チオアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、メルカプト、ニトロ、カルボキシアルデヒド、カルボキシ、アルコキシカルボニルおよびカルボキサミドで独立した置換により置換されている。さらに、任意の置換基は、アリール、ヘテロアリール、またはヘテロシクロアルキル基であってもよい。
【0049】
本明細書で使用される用語「置換ヘテロシクロアルキル」は、本明細書で定義したヘテロシクロアルキル基を意味し、該ヘテロシクロ環上の1個、2個または3個の水素原子は、Cl、Br、F、I、OH、CN、C−C12−アルキル、C−C12−アルコキシ、アリール置換C−C12−アルコキシ、ハロアルキル、チオアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、メルカプト、ニトロ、カルボキシアルデヒド、カルボキシ、アルコキシカルボニルおよびカルボキサミドで独立した置換により置換されている。さらに、任意の置換基は、アリール、ヘテロアリール、またはヘテロシクロアルキル基であってもよい。
【0050】
本明細書で使用される用語「アダマンタンアミノ」は、1以上のアミノ置換基を有する、完全に飽和されたトリシクロ[3.3.1.1(3,7)]10員の炭素環系を意味する。例示としては、1−アダマンタンアミノ、2−アダマンタンアミノ、3−アミノ−1−アダマンタンアミノ、1−アミノ−3−アダマンタンアミノ、3−低級アルキルアミノ−1−アダマンタンアミノ、および1−低級アルキルアミノ−3−アダマンタンアミノが挙げられる。
【0051】
本明細書で使用される用語「立体異性体」は、同じ分子式および同じ順序で結合している構成原子を有するが、不斉中心に関する空間における異なる配置を有する化合物の2つの型のどちらかを意味する。本発明の化合物には、多くの不斉中心が存在する。特に断りのある場合を除き、本発明は、様々な異性体およびそれらの混合物を企図する。したがって、特に断りのある場合を除き、立体配向の混合物または決定されたまたは未決定の配向を有する個々の異性体が存在してもよいものとする。
【0052】
本明細書で使用される用語「互変異性体」は、互変異性を示す化合物の2つの型のどちらかを意味し、それは、ある化合物が水素移動によって2つの互換性の異性体が平衡にある混合物として存在する能力である。カルボニル化合物のケト/エノール型は、互変異性体の例である。それらは少量の酸および塩基の存在下、共鳴安定化アニオン、すなわちエノラートイオンを経由して互変性である。
【0053】
用語「薬学的に許容される塩」は、それらの健全な医学的判断の範囲内でヒトおよび下等動物の組織に接触した際に、過度の毒性、刺激、アレルギー反応などを与えることなく使用するのに適しており、また、合理的な対危険便益比が釣り合っている塩を意味する。薬学的に許容できる塩は当該分野で周知である。例えば、S.M.Bergeらは、J.Pharmaceutical Sciences、66:1−19(1977)で薬学的に許容される塩について詳細に説明しており、これは、本明細書中に参考として援用される。塩類は、本発明の化合物の最終的な分離および精製中に、あるいは別々に適切な有機酸で遊離の塩基の官能基を反応させることにより、インサイチュ(in situ)で製造することができる。薬学的に許容される、無毒性の酸付加塩の例としては、塩酸、臭化水素酸、燐酸、硫酸および過塩素酸などの無機酸、または酢酸、蓚酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸およびマロン酸などの有機酸を用いて形成されるアミノ基の塩であり、あるいはイオン交換など当該分野で使用される他の方法を用いて形成されるアミノ基の塩が挙げられる。他の薬学的に許容される塩としては、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、硫酸水素塩、硼酸塩、酪酸塩、カンファー酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマール酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロオキシ−エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、燐酸塩、ピクリン酸塩、ピバリン酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などが挙げられる。代表的なアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどが挙げられる。さらに、薬学的に許容される塩類は、ハロゲン化物、水酸化物、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、低級アルキルスルホン酸塩およびアリールスルホン酸塩などのカウンターイオンを使用して形成される、適切であれば、無毒性のアンモニウム、第四級アンモニウム、およびアミンカチオンを含む。
【0054】
用語「薬学的に許容されるエステル」は、インビボで加水分解するエステルを意味し、ヒトの体内で容易に分解されて親化合物またはその塩となるエステルを含む。適切なエステル基としては、例えば、薬学的に許容される脂肪族カルボン酸類、特にアルカノール酸、アルケノ−ル酸、シクロアルカノール酸およびアルカンジオール酸に由来するエステルが挙げられ、それらにおいて、各アルキルまたはアルケニル部分は6個以下の炭素原子を有するエステルが有利である。特定のエステルの代表例としては、これらに制限されないが、ギ酸エステル、酢酸エステル、プロピオン酸エスエル、酪酸エステル、アクリル酸エステルおよびコハク酸エチルが挙げられる。
【0055】
本明細書で使用される用語「溶媒和物」は、溶媒和、つまり溶媒分子と本発明の化合物から成る溶質の分子またはイオンの組み合わせによって形成される化合物を意味する。用語「薬学的に許容される溶媒和物」は、それらの健全な医学的判断の範囲内でヒトおよび下等動物の組織に接触した際に、過度の毒性、刺激、アレルギー反応などを与えることなく使用するのに適しており、また、合理的な対危険便益比が釣り合っている溶媒和物を意味する。薬学的に許容される溶媒和物は当該分野でよく知られている。
【0056】
用語「薬学的に許容されるプロドラッグ」は、それらの健全な医学的判断の範囲内でヒトおよび下等動物の組織に接触した際に、過度の毒性、刺激、アレルギー反応を与えることなく使用するのに適しており、また、合理的な対危険便益比が釣り合っており、意図された使用に対して有効である、本発明の化合物のみならず、可能ならば、本発明の双性イオン型のこれらプロドラッグを意味する。用語「プロドラッグ」は、急速に生体内で変換されて上記式の親化合物を、例えば血液中における加水分解により、生成させる化合物を意味する。例えば、徹底的な考察がT.HiguchiとV.Stellaらの,Prro−drugs as Novel Delivery Systems、Vol.14 of the A.C.S.Symposium Series,およびEdward B.Roche編集のBioreversible Carriers in Drug Design、American Pharmaceutical Association and Pergamon Press、1987に提供されている。これらは両方、本明細書中に参考として援用される。
【0057】
(合成法)
本発明の化合物の合成は、以下の通りに広範囲に要約することができる。本発明の化合物は、アミド形成条件のもとで官能基化されているか、または官能基化されていないグリコペプチドを、適切なアシル、アルキル、および/またはアミノ基とカップリングすることによって製造し得る。特に、本発明の半合成グリコペプチドは、エレモマイシン、A82846B、バンコマイシン、テイコプラニンまたはA−40,926などの骨格を、
特にこれらの骨格上のアミノ置換糖部分におけるアミノ置換基の、ある種のアシル基(特に、アミノ酸およびそれらの誘導体)によるアシル化;および/または
これらの骨格の大環状の環上における酸部分の、ある種の置換されたアミドへの変換反応;または、
これらの骨格上にあるアミノ置換糖部分におけるアミノ置換基の、ある種のアルキル基によるアルキル化修飾、もしくはこれらの骨格上にあるアミノ置換糖部分におけるアミノ置換基の、ある種のアルキル基(β−アミノ酸またはそれらの誘導体が挙げられる)によるアシル化修飾と、これらの骨格の大環状の環上における酸部分の、ある種の置換されたアミドへの変換反応との組み合わせ、
による修飾によって製造される。
【0058】
特に、本発明の半合成グリコペプチドは、エレモマイシン、A82846B、バンコマイシン、テイコプラニンまたはA−40,926の骨格:
【0059】
【化7】

の1つを、以下
(a)該化合物のアミノ置換糖部分におけるアミノ置換基の、構造−C(=O)CR7aNR8aを有するアシル基によるアシル化
(b)該化合物の大環状の環上における酸部分の、Rによって定義された置換アミドによる変換反応、および
(c)上記(a)と(b)との組み合わせ、
(d)上記(b)と、該化合物のアミノ置換糖部分におけるアミノ置換基の、構造−C(=O)Rを有するアシル基によるアシル化との組み合わせ、
(e)上記(b)と、該化合物のアミノ置換糖部分におけるアミノ置換基の、構造−CHR5aを有するアルキル基によるアルキル化との組み合わせ、
から成る群から選択される方法により修飾して、
【0060】
【化8】

(式中、R、R1A、R、R2A、R、R、R5a、R、R、R7a、R、およびR8aは、本明細書で定義した通りである)から成る群から選択される式を有する化合物を形成させることにより製造することができる。
【0061】
化合物の合成は、さらに収率を最大限にするため、所望されない副産物を最小にするため、あるいは精製の容易さを改善するために、保護基またはブロッキング基の使用を含んでもよい。本発明の化合物の具体的な合成例は、下記の実施例において提供される。
【0062】
(医薬組成物)
本発明の医薬組成物は、1つ以上の薬学的に許容される担体と一緒に製剤化された本発明の治療上有効な量の化合物を含む。本明細書で使用される用語「薬学的に許容される担体」は無毒性で不活性な固体、半固体もしくは液体の充填剤、希釈剤、カプセル化剤または任意のタイプの製剤化助剤を意味する。薬学的に許容される担体として機能し得る材料のいくつかの例としては、ラクトース、グルコース、蔗糖などの糖類;コーンスターチ、ポテトスターチなどの澱粉;カルボキシルメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、酢酸セルロースなどのセルロースおよびその誘導体;粉末トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;カカオバター、坐薬用ワックスなどの賦形薬;落花生油、綿実油などの油;サフラワー油;胡麻油;オリーブオイル;トウモロコシ油および大豆油;プロピレングリコールなどのグリコール類;オレイン酸エチル、ラウリン酸エチルなどのエステル類;寒天;水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;アルギン酸;パイロジェンフリー水;等張生理食塩水;リンゲル液;エチルアルコール、およびリン酸緩衝液、同様にラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウムなどの他の無毒相容性の滑沢剤が挙げられ、同様に着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味剤、風味剤、芳香剤、防腐剤および酸化防止剤が、さらに製剤を処方する人の判断によって組成物中に含ませることもできる。本発明の医薬組成物は、ヒトおよび他の動物に、経口投与、経腸投与、非経口投与、大槽内投与、経膣投与、腹腔内投与、局所投与(粉末、軟膏、またはドロップ剤として)、舌下投与、または経口もしくは経鼻スプレー投与、または吸入用液体エアロゾルもしくは粉末製剤投与することができる。
【0063】
経口投与のための液体製剤としては、薬学的に許容される乳剤、マイクロエマルジョン、溶液製剤、懸濁剤、シロップおよびエリキシル剤が挙げられる。活性化合物に加えて、液体製剤は、例えば水あるいは他の溶剤などの当該分野で通常使用されている不活性希釈剤、可溶化剤および乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1、3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に、綿実油、地下に実を結ぶ植物の油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセリン、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタン脂肪酸エステル、およびそれらの混合物を含んでもよい。経口組成物は、不活性な希釈剤に加えて、さらに湿潤剤、乳化剤および懸濁化剤、甘味剤、風味剤および芳香剤などの補助剤を含むこともできる。
【0064】
注射製剤、例えば、無菌の水性または油性の懸濁液は、適切な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を使用して、公知の技術によって製剤化され得る。この無菌注射剤は、無毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶剤中の、例えば1、3−ブタンジオール溶液として、無菌の注射溶液、懸濁液または乳化液であってもよい。使用され得る、許容される溶剤または溶媒としては、水、リンゲル液(米国薬局方)、および生理食塩水が挙げられる。さらに、無菌の固定油が、溶媒または懸濁化媒体として通常使用される。この目的のために、合成モノ−グリセリドまたはジ−グリセリドを始めとする、刺激のない任意の固定油も使用することができる。さらに、オレイン酸などの脂肪酸は、注射剤の製造に使用される。
【0065】
注射製剤は、例えば細菌捕捉フィルタで濾過したり、あるいは使用の直前に無菌水または他の無菌注射用媒体に溶解または分散できるような滅菌剤を無菌固体組成物の形で添加することにより、無菌化することができる。
【0066】
薬剤の効果を持続するために、しばしば、皮下または筋肉内注射により薬剤の吸収を遅らせることが望ましい。これは、水に対する難溶性の結晶または無定形物質の液体懸濁液を使用することにより達成できる。薬剤の吸収速度は、溶解速度に依存し、溶解速度が今度は結晶のサイズと結晶の形に依存する。また、非経口的に投与した薬剤の吸収の徐放性は、薬剤を油性溶剤に溶解または懸濁することにより達成される。注射可能な蓄積剤は、ポリラクチド−ポリグリコライドのような生分解性ポリマー中で薬剤のマイクロカプセルマトリックスを形成することによって製造できる。薬剤とポリマーとの比および採用した特定のポリマーの性質に依存して、薬剤の放出速度が制御できる。他の生分解性ポリマーとしては、ポリ(オルトエステル)、ポリ(酸無水物)が含まれる。蓄積型注射製剤は、体組織と相容性であるリポソームまたはマイクロエマルジョンに薬剤をトラップすることにより調製することもできる。
【0067】
直腸投与又は膣投与のための組成物は、ココアバター、ポリエチレングリコール、又は坐薬用ワックスのような適切な非刺激性の賦形剤又は担体と本発明の化合物とを混合することにより調製される坐薬であることが好ましい。ココアバター等は、室温では固体であるが、体温では液体であり、従って直腸または膣内で溶解し、活性化合物を放出する。
【0068】
経口投与のための固形製剤の剤型としては、カプセル、錠剤、丸剤、粉剤、および顆粒剤が挙げられる。そのような固形製剤では、活性化合物は、少なくとも1種以上の不活性な、薬学的に許容される賦形剤または担体と混合される。そのような賦形剤または担体としては、クエン酸ナトリウム、リン酸二カルシウム、および/またはa)充填剤または増量剤、例えば澱粉、乳糖、蔗糖、グルコース、マニトール、およびケイ酸など、b)結合剤、例えばカルボキシメチルセルロース、アルギン酸、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、蔗糖、およびアラビアゴムなど、c)湿潤剤、例えばグリセロールなど、d)崩壊剤、例えば寒天、炭酸カルシウム、馬鈴薯またはタピオカデンプン、アルギン酸、ある種のケイ酸塩、および炭酸ナトリウムなど、e)溶出遅延剤、例えばパラフィンなど、f)吸収促進剤、例えば第四級アンモニウム化合物など、g)湿潤剤、例えばアセチルアルコール、モノステアリン酸グリセロールなど、h)吸着剤、例えばカオリン、ベントナイトクレイなど、およびi)滑沢剤、例えばタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固形ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムなど、およびそれらの混合物が挙げられる。カプセル、錠剤、および丸薬の場合、それらの投与剤型は、緩衝剤を含むこともある。
【0069】
同様のタイプの固形組成物は、乳糖またはミルク糖のみならず高分子量ポリエチレングリコールなどを賦形剤として使用するソフト充填およびハード充填ゼラチンカプセルにおいて充填剤として採用されてもよい。
【0070】
錠剤、糖衣錠、カプセル、丸剤、および顆粒剤の固形投与剤型は、製剤技術分野で周知の腸溶性コーティングおよび他のコーティングなどのコーティングおよびシェルで調製できる。それらは必要に応じて不透明化剤を含んでも良いし、腸管の特定の部位でのみ、またはそこで選択的に活性成分(複数を含む)を放出したり、必要に応じて時限放出性の様式で放出する組成物とすることもできる。使用できる埋め込み型組成物の例には重合性物質及びワックス類を含む。
【0071】
同様のタイプの固形組成物は、乳糖またはミルク糖のみならず高分子量ポリエチレングリコールなどを賦形剤として使用するソフト充填およびハード充填ゼラチンカプセルにおいて充填剤として採用されてもよい。
【0072】
活性化合物は、また、前記した1以上の賦形剤を使用してマイクロにカプセルに封入した形態とすることもできる。錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸剤、および顆粒剤の固形製剤は、製剤技術分野で周知の腸溶性コーティング、放出制御コーティングおよび他のコーティングなどのコーティングおよびシェルを使用して調製できる。そのような固形製剤では、活性化合物は、蔗糖、乳糖または澱粉などの、少なくとも1種の不活性希釈剤で混合されてもよい。そのような投薬製剤は、普通に行われているように、不活性希釈剤以外の追加の物質、例えば、ステアリン酸マグネシウムや微結晶性セルロースなどの打錠用滑沢剤および他の打錠用補助剤を含んでもよい。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合には、投薬製剤はまた、緩衝剤を含んでもよい。それらは必要に応じて不透明化剤を含んでもよいし、腸管の特定の部位でのみ、またはそこで選択的に活性成分(複数を含む)を放出したり、必要に応じて時限放出性の様式で放出する組成物とすることもできる。使用できる埋め込み型組成物の例では重合性物質及びワックス類を含む。
【0073】
本発明の化合物の局所的または経皮的な投与のための製剤は、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、パウダー、溶液、スプレー、吸入剤あるいはパッチ剤を含む。活性成分は、薬学的に許容される担体および任意の必要とされる防腐剤または緩衝剤と、滅菌条件下で混合される。眼科用の製剤、点耳薬などもまた、本発明の範囲内のものと考えられる。
【0074】
軟膏、ペースト、クリームおよびゲルは、本発明の活性化合物に加えて、動物性および植物性の油脂、油、ワックス、パラフィン、澱粉、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコン、ベントナイト、ケイ酸、タルクおよび酸化亜鉛、並びにそれらの混合物などの賦形剤を含んでもよい。
【0075】
本発明の組成物は、また、液体のエアゾールあるいは吸入可能な乾燥粉末として送達させるために製剤化してもよい。液体のエアゾール製剤は、バクテリアが慢性気管支炎や肺炎のような気管支炎の患者に存在するところで、終末細気管支および呼吸細気管支に送達することができる粒子サイズへ主として噴霧化され得る。病原細菌は、気道を通って下方の気管支、細気管支および肺実質、特に終末細気管支および呼吸細気管支に、通常、存在する。感染悪化の間には、細菌はまた、肺胞中にも存在することができる。液体のエアゾールおよび吸入可能な乾燥粉末製剤は、気管支ツリーを通って終末細気管支および最終的には実質組織に送達されるのが好ましい。
【0076】
本発明のエアゾール化製剤は、特定のジェット式振動多孔性プレートまたは超音波ネブライザなどのエアゾール形成器を使用して、好ましくは主として1μから5μの質量中位平均径を有するエアゾール粒子の形成を可能にするように選択されて送達される。さらに、この製剤は、釣り合いのとれた浸透圧イオン強度および塩化物濃度を有し、感染部位に本発明の化合物の有効な用量を送達し得る、最小のエアゾール容量を有する。さらに、このエアゾール製剤は、気道の機能を害することはなく、そして所望されない副作用も生じない。
【0077】
本発明のエアゾール製剤の投与に適したエアゾール噴霧装置は、例えば、ジェット式振動多孔性プレート、超音波ネブライザおよび電気式乾燥粉末吸入器が挙げられ、これらは本発明の製剤を主として1μから5μのサイズ範囲のエアゾール粒子サイズへ霧状にすることができる。この適用手段において、「主として」とは、発生した全てのエアゾール粒子の少なくとも70%が、しかし、好ましくは90%超が、1μから5μ内にあることを意味する。ジェット式ネブライザは、液体溶液をエアゾール液滴に破壊する空気圧力によって作動する。振動式多孔性プレートネブライザは、溶媒液滴を多孔性プレートを通して押し出すための迅速に振動する多孔性プレートによって生じた音波真空を用いることによって作動する。超音波ネブライザは、液体に剪断をかけ小さなエアゾール液滴とする圧電性結晶によって作動する。種々の適切なデバイスが利用可能であるが、例えば、AeroNeb(登録商標)およびAeroDose(登録商標)振動式多孔性プレートネブライザ(AeroGen,Inc.,Sunnyvale,California)、Sidestream(登録商標)ネブライザ(Medic−Aid Ltd.,West Sussex,England)、Pari LC(登録商標)およびPari LC Star(登録商標)ジェットネブライザ(Pari Respiratory Equipment,Inc.,Richmond,Virginia)、およびAerosonicTM(DeVilbiss Medizinische Produkte(Deutschland)GmbH,Heiden,Germany)およびUltraAire(登録商標)(Omron Healthcare,Inc.,Vernon Hills,Illinois)超音波ネブライザが挙げられる。
【0078】
また、本発明の化合物は、局所用粉末および噴霧剤として用いるために製剤化することもでき、該製剤は本発明の化合物に加えて、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウムおよびポリアミド粉末、またはこれらの物質の混合物などの賦形剤を含むことができる。噴霧剤は、さらにクロロフルオロハイドロカーボンのような慣用的な推進剤を含有することができる。
【0079】
経皮パッチは、化合物の身体への制御された送達を供する付加的な利点を有する。そのような投与剤形は、当該化合物を適当な媒体に溶解または分注することによって調製することができる。また、吸収促進剤を用いて、皮膚を通過しての化合物の浸透を増加させることもできる。該速度は、速度制御膜を供することによって、または当該化合物をポリマーマトリックスまたはゲルに分散させることによって制御することができる。
【0080】
本発明の治療方法によれば、所望の結果を達成するのに必要な量および時間で、治療的有効量の本発明の化合物を患者に投与することによって、ヒトまたは下等哺乳動物などの患者における細菌感染症を治療するか、または予防する。本発明の化合物の「治療的有効量」とは、任意の医療的治療に適用できる合理的な対危険便益比で、細菌感染症を治療するのに十分な量の化合物を意味する。しかしながら、本発明の化合物および組成物の1日当たりの合計用量は、健全な医学的判断の範囲内で主治医によって決定されることが理解されるであろう。いずれかの特定の患者のための特定の治療上有効な用量のレベルは、治療すべき疾患および疾患の重症度;使用する具体的化合物の活性;使用する特定の組成物;患者の年齢、体重、一般的健康、性別およびダイエット;投与時間、投与経路、および使用する特定の化合物の排泄速度;治療の継続;使用する特定の化合物と組み合わせる、または同時に用いる薬剤;医療分野でよく知られた同様な因子を含む種々の因子、に依存するであろう。
【0081】
単一または分割用量で、ヒトまたは他の哺乳動物に投与される本発明の化合物の1日当たりの合計用量は、例えば、0.01から50mg/kg体重、またはより一般的には0.1から25mg/kg体重の量とすることができる。単一用量組成物は、1日当たりの用量を調製するためにそのような量またはその約数を含むことができる。一般に、本発明による治療方法は、単一または複数用量中の1日当たり本発明の化合物の約10mgから約2000mgをそのような治療を必要とする患者に投与することを含む。
【実施例】
【0082】
以下の実施例は、本発明による半合成グリコペプチドの合成、特性および活性並びに適用に関する細部事項を提供するものである。以下の実施例は代表例のみであり、本発明がこれらの実施例において述べられた細かな事項によっては制限されるものではないことを理解すべきである。
【0083】
(実施例1:N’−アルキルアミノアシル化エレモマイシンおよびバンコマイシン誘導体の合成)
N’−アルキルアミノアシル化エレモマイシンまたはバンコマイシン誘導体は、保護されていないエレモマイシンまたはバンコマイシンを、RCHN(Fmoc)CHCOOSu(式中、R=p−BuPh、p−CIPhPh、p−BuOPhおよびp−オクチルOPh)で処理し、次いでDMSO中、10%のジエチルアミンで脱保護して製造した。エレモマイシン誘導体は、およそ30%から50%の収率で得られた。バンコマイシン誘導体は、およそ30%から60%の収率で得られた。出発原料のグリシン誘導体は、スキーム1、および工程I、IIおよびIIIに関連する記載中で、以下に示され、記述されるように合成する。
【0084】
(スキーム1)
N’−(p−オクチルOPhCHNHCHCO)バンコマイシンのための原料試薬の合成
【0085】
【化9】

I.グリシンの還元的アルキル化(RCHNHCHCOOHの合成)
室温で攪拌しながら、1mmolの適切なアルデヒドのTHF(テトラヒドロフラン)溶液および1.5mmolのNaCNBHを、グリシン(2mmol)のTHF:HO(1:1)混合液に少しずつ添加した。反応混合物を4時間撹拌し、次に水を加えた。得られた混合液を減圧蒸発しTHFを除去し、石油エーテルで3回抽出した。その後、水性画分をシリカゲルと共に減圧蒸発乾固し、CHClで予め平衡化したシリカゲルを用いてクロマトグラフィカラムにかけた。カラムは、CHCl:MeOH:25%NHOH(3:1:0.05)系で10mL/時間の速度で溶出し、各5mLの画分を集めた。適切な画分を合わせ、減圧下、蒸発乾固した。収率は30%から50%であった。
【0086】
II.RCHN(Fmoc)CHCOOHの合成
室温で攪拌しながら、3mmolのトリエチルアミンおよび1.5mmolのFmocOSuのTHF溶液を、RCHNHCHCOOH(1mmol)のTHF:HO(1:1)混合液に少しずつ添加した。反応混合物を4時間撹拌し、次に水を加えた。得られた混合液を減圧蒸発しTHFを除去し、石油エーテルで3回抽出した。その後、水性画分をシリカゲルと共に減圧蒸発乾固し、CHClで予め平衡化したシリカゲルを用い、クロマトグラフィカラムにかけた。カラムは、CHCl:MeOH:25%NHOH(5:1:0.05)系で10mL/時間の速度で溶出し、各5mLの画分を集めた。適切な画分を合わせ、減圧下で蒸発乾固した。収率は50%から80%であった。
【0087】
III.RCHN(Fmoc)CHCOOSuの合成
攪拌しながら、RCHN(Fmoc)CHCOOH(1mmol)のCHClの溶液に、0℃から5℃で1.3mmolのHOSuを添加し、1.2mmolのDCCのTHF溶液を少しずつ加えた。反応混合物を4時間撹拌し、その後、析出したジシクロヘキシルウレアを濾過して除いた。有機層を少量まで減圧濃縮し、析出したジシクロヘキシルウレアの固体を再び濾過して除いた。この有機層を減圧蒸発乾固した。
【0088】
N’−(p−オクチルOPhCHNHCHCO)バンコマイシンの製造
p−オクチルOPhCHN(Fmoc)CHCOOSuが、グリシンから出発して、概略20%の収率で、スキーム1に示されるように製造された。
【0089】
次に、攪拌しながら、1800mg(1.25 mmol)のバンコマイシン(塩基)のDMSO:HO(4:1)混合液30mLに、EtNの0.16mL(1.25mmol)およびp−オクチルOPhCHN(Fmoc)CHCOOSuの1165mg(1.9mmol)を添加した。反応混合物は、室温で5時間攪拌し、次に3mLのEtNHを加えた。反応混合物を室温で1時間撹拌し、次にそれを200mLのアセトンに加えた。析出した固体を濾過し、アセトンで洗浄し、減圧乾燥した。次に、得られた乾燥析出物をHO:THF(1:1)の混合液に溶解し、少量のシラン化シリカゲルを用いて減圧蒸発した。この溶液を、水で予め平衡化されたシラン化シリカゲルのクロマトグラフィカラム(3×120cm)にかけた。カラムは、最初にHO(1000mL)で10mL/時間の速度で溶出し、各5mLの画分を集めた。バンコマイシンを含む画分を集めた。次に、カラムは、0.02MのCHCOOH(1000mL)を用いて10mL/時間の速度で溶出し、各5mLの画分を集めた。その後、カラムは0.02MのCHCOOH(500mL)中の15%MeOHにより同じ速度で溶出し、反応生成物を含む画分を集めた。次に、カラムは0.02MのCHCOOH(1000mL)中の30%MeOHにより同じ速度で溶出し、反応生成物を含む適切な画分を集めた。(p−オクチルOPhCHNHCHCO)バンコマイシンのすべての適切な画分を合わせ、少量(約10mL)まで減圧濃縮した。その後、30mLのアセトンを加え、この混合液を250mLのEtOに加えて生成物を沈澱させた。固体の析出物を濾過し、EtOで洗浄し、減圧乾燥して904mg(42%)のN’−(p−オクチルOPhCHNHCHCO)バンコマイシンを得た。
【0090】
この方法で合成されたエレモマイシンとバンコマイシンの誘導体の精製は、シラン化シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィにより実施された。反応の進行、カラム溶離液の成分および最終化合物の純度は、EtOAc−n−PrOH−25%NHOH(1:1:1または3:2:2)およびn−BuOH−AcOH−HO(5:1:1)の系でのTLCによりチェックし、さらに、インビボ研究用の誘導体の純度はHPLCによって制御された。
【0091】
(実施例2:N’−[C17OCCHNHCH(CH)CO]バンコマイシンの製造)
【0092】
【化10】

スキーム2 N’−[C17OCCHNHCH(CH)CO]バンコマイシンのための原料試薬の合成
【0093】
【化11】

I.L−アラニンの還元的アルキル化(p−C17OCCHNHCH(CH)COOHの合成)
26℃から28℃で攪拌しながら、L−アラニン(1mmol)のTHF−HO(1:1)混合溶液に、1mmolのp−C17OCCHOのTHF溶液と0.75mmolのNaCNBHとを、少しずつ添加した。反応混合物を26℃から28℃で4時間攪拌し、その後、水を加えた。得られた反応混合物を減圧濃縮してTHFを除去し、反応生成物を沈澱させた。沈澱物を濾過し、氷冷水で洗浄した。固体をTHF−HO(1:1)混合液に溶解し、この混合物を5℃で18時間維持した。白色の固体(L−アラニン)を濾過し、氷冷水で洗浄し、濾液を減圧蒸発してTHFを除き、反応生成物を沈澱させた。析出物をアセトンで洗浄し、減圧乾燥した。その収率は約30%から40%であった。
【0094】
II.p−C17OCCHNFmocCH(CH)COOHの合成
室温で攪拌しながら、N−(p−C17OCCH)−(L)−アラニン(1mmol)のTHF−HO(1:1)混合液に、3mmolのトリエチルアミンと1.5 mmolのFmocOSuのTHF溶液とを少しずつ添加した。反応混合物を4時間攪拌し、次いで水を加えた。得られた混合物を減圧蒸発してTHFを除去し、石油エーテルで抽出した。有機層を水洗した。水層画分を合わせ、シリカゲルを用いて減圧蒸発乾固しCHClで予め平衡化したクロマトグラフィ用カラムにかけた。カラムは、CHCl:MeOH:25%NHOH(5:1:0.05)の系により10mL/時間の速度で溶出し、各5mLの画分を集めた。適切な画分を合わせ、減圧蒸発乾固した。収率は約60%から約80%であった。
【0095】
III.p−C17OCCHNFmocCH(CH)COOSuの合成
0℃から5℃で攪拌しながら、p−C17OCCHNFmocCH(CH)COOH(1mmol)のCHCl溶液に、1.3mmolのHOSuを添加し、その後、1.2mmolのDCCのTHF溶液を滴下した。反応混合物を4時間撹拌し、次いで析出したジシクロヘキシルウレアを濾過して除いた。有機層を少量まで減圧濃縮し、析出したジシクロヘキシルウレアの固体を再び濾過して除いた。この有機層を減圧蒸発乾固した。p−C17OCCHNFmocCH(CH)COOSuが、スキーム2に従いL−アラニンから出発して、約20%から30%の概略収率で得られた。
【0096】
N’−[C17OCCHNHCH(CH)CO]バンコマイシンの合成
攪拌しながら、360mg(0.25mmol)のバンコマイシン(塩基)のDMSO−HO(4:1)混合液7.5mLに、32μL(0.25mmol)のトリエチルアミンと627mg(0.38mmol)の出発原料であるアミノ酸誘導体p−C17OCCHNFmocCH(CH)COOSuとを添加した。反応混合物を室温で5時間攪拌し、次に、0.75mLのEtNHを加えた。反応混合物を室温で1時間攪拌し、それを100mLのアセトンに加えた。析出した固体を濾過し、アセトンで洗浄し、減圧乾燥した。次に、この固体をHO:THF(1:1)の混合液に溶解し、少量のシラン化シリカゲルを用いて減圧蒸発し、予めHOで平衡化したシラン化シリカゲルのクロマトグラフィ用カラム(2×60cm)にかけた。最初にカラムは、HO(200mL)により10mL/時間の速度で溶出し、各5mLの画分を集めた。カラムは、0.02MのCHCOOH(300mL)を用いて10mL/時間の速度で溶出し、各5mLの画分を集めた。バンコマイシンを含んでいる画分を集めた。その後、カラムは、0.02MのCHCOOH(250mL)中10%MeOHを用いて同じ速度で溶出し、続いて0.02MのCHCOOH(250mL)中20%のMeOHで溶出して副生物を溶出した。カラムを0.02MのCHCOOH中40%MeOHを用いて溶出したとき、所望の生成物を含む画分を集めた。生成物の全ての適切な画分を合わせ、少量(約2mL)まで減圧濃縮した。この混合液にTHF(2mL)を加え、次いで20mLのアセトンを添加した。得られた混合物は、80mLのEtOに添加し、反応生成物を析出させた。固形の析出物を濾過し、アセトンで洗浄し、次いで減圧乾燥した。収率は、130mg(30%)であた。
【0097】
(実施例3:エレモマイシンのN’−アミノアシル(非グリシル)誘導体の合成)
アミノ酸またはN−アルキル化アミノ酸で置換されたN’−アシル化エレモマイシン誘導体およびバンコマイシン誘導体は、抗生物質をアミノ酸類もしくはN−アルキル化アミノ酸類のN−Fmoc誘導体のN−ヒドロキシスクシンイミドエステルで処理して製造され、続いてDMSO中、10%のジエチルアミンで脱保護して所望の生成物をおよそ10%から50%の収率で得た。出発原料のアミノ酸誘導体は、スキーム3を参照して、下記に示され、記載されるように合成された。
【0098】
スキーム3 エレモマイシンのN’−アミノアシル(非グリシル)誘導体のための、原料アミノ酸誘導体の製造
a)Nα,Nε−ジ−Fmoc−L−LysのN−ヒドロキシスクシンイミドエステル
【0099】
【化12】

b)N−Fmoc−L−Phe、N−Fmoc−D−PheおよびN−Fmoc−(Bn−O−L−Tyr)のN−ヒドロキシスクシンイミドエステル
【0100】
【化13】

c)Nα−R−Nα,Nδ−ジ−Fmoc−L−OrnのN−ヒドロキシスクシンイミドエステル
【0101】
【化14】

(式中、R=p−(Bu−Ph)−、p−(C17−O−Ph)−)
α,Nε−ジ−Fmoc−L−LysのN−ヒドロキシスクシンイミドエステルの製造(スキーム3a)
α,Nε−ジ−Fmoc−L−LysのN−ヒドロキシスクシンイミドエステルは、Nα,Nε−ジ−Fmoc−L−Lysから方法C(下記参照)により得た。
【0102】
N−Fmoc−L−PheおよびN−Fmoc−D−PheのN−ヒドロキシスクシンイミドエステルの製造(スキーム3b)
N−Fmoc−L−PheのN−ヒドロキシスクシンイミドエステルは、方法BによりL−Pheから製造されたN−Fmoc−L−Pheから、方法Cにより得た。
【0103】
N−Fmoc−(Bn−O−L−Tyr)のN−ヒドロキシスクシンイミドエステルの製造(スキーム3b)
N−Fmoc−(Bn−O−L−Tyr)は、Bn−O−L−Tyrから出発して方法Bにより得た。N−Fmoc−(Bn−O−L−Tyr)のN−ヒドロキシスクシンイミドエステルは、方法Cにより製造された。
【0104】
α−R−Nα,Nδ−ジ−Fmoc−L−OrnのN−ヒドロキシスクシンイミドエステルの製造(スキーム3c)
α−R−Nδ−Boc−L−Orn[R=p−(C17−O−Ph)−CH−またはp−(BuPh)−CH−]は、Nδ−Boc−L−OrnおよびR−CHOから、方法Aにより得た。次に、Nα−R−Nδ−Boc−L−Ornを、TFAで室温、30分間処理してNα−R−L−Ornを得た。MeOHを添加し、溶液を減圧蒸発乾固した。この操作を3回繰り返した。Nα−R−Nα,Nδ−ジ−Fmoc−L−Ornは、方法Bで記載したようにNα−R−L−Ornの出発原料から得られるが、2.2当量のFmocClのTHF溶液を1当量のNα−R−L−Ornの冷却(0℃から5℃)溶液と5当量の炭酸カリウムのTHF:HO(1:1)混合液とに滴下して加えた。Nα−R−Nα,Nδ−ジ−Fmoc−L−OrnのN−ヒドロキシスクシンイミドエステルは、方法Cにより製造された。
【0105】
方法A.還元的アルキル化
室温で攪拌しながら、Nδ−Boc−L−Orn(2mmol)のTHF:HO(1:1)の混合液に、1mmolの適切なアルデヒドのTHF溶液と1.5mmolのNaCNBHとを、少しずつ添加した。反応混合物を4時間攪拌し、次いで水を加えた。得られた混合物を減圧蒸発してTHFを除去し、石油エーテルで抽出した。水層画分を、シリカゲルを用いて減圧蒸発乾固し、CHClで予め平衡化したシリカゲルのクロマトグラフィ用カラムにかけた。カラムは、CHCl:MeOH:25%NHOH(5:1:0.05)の系により10mL/時間の速度で溶出し、各5mLの画分を集めた。適切な画分を合わせ、減圧蒸発乾固した。収率は30%から50%であった。
【0106】
方法B.N−Fmoc誘導体の製造
室温で攪拌しながら、アミノ酸(1mmol)のTHF:HO(1:1)の混合液に、4mmolのトリエチルアミンと1.5mmolのFmocOSuのTHF溶液とを少しずつ添加した。反応混合物を4時間攪拌し、次いで水を加えた。得られた混合物を減圧蒸発してTHFを除去し、石油エーテルで抽出した。水層画分を、シリカゲルを用いて減圧蒸発乾固し、CHClで予め平衡化したシリカゲルのクロマトグラフィ用カラムにかけた。カラムは、CHCl:MeOH:25%NHOH(5:1:0.05)の系によりスキーム2bに従って、あるいはCHCl:MeOH:25%NHOH(7:1:0.05)の系によりスキーム2cに従って、10mL/時間の速度で溶出し、各5mLの画分を集めた。適切な画分を合わせ、減圧蒸発乾固した。収率は50%から80%であった。
【0107】
方法C.N−ヒドロキシスクシンイミドエステルの製造
0℃から5℃で攪拌しながら、出発原料N−Fmoc誘導体(1mmol)のCHCl溶液に、1.3mmolのHOSuを加え、1.2mmolのDCCのTHF溶液を滴下して加えた。反応混合物を4時間攪拌し、ジシクロヘキシルウレアの沈殿物を濾過して除いた。有機層を少量になるまで減圧濃縮し、ジシクロヘキシルウレアの析出した固体を再度、濾過して除いた。有機層を減圧蒸発乾固した。
【0108】
N’−置換グリコペプチド誘導体
攪拌しながら、0.5mmolの抗生物質(塩基)のDMSO:HO(4:1)混合原料液15mLに、0.5mmolのトリエチルアミンとスキーム2に従って製造された0.75mmolの出発原料アミノ酸誘導体とを添加した。反応混合物を室温で5時間攪拌し、その後1.5mLのEtNHを加えた。反応混合物を室温で1時間攪拌し、次いで100mLのアセトン中へ添加した。析出した固体を濾過し、アセトンで洗浄し、減圧乾燥した。次いで、これをHO:THF(1:1)混合液に溶解し、少量のシラン化シリカゲルを用いて減圧蒸発し、予めHOで平衡化したシラン化シリカゲルのクロマトグラフィ用カラム(3×120cm)にかけた。カラムは、最初にHO(400mL)により10mL/時間の速度で溶出し、各5mL画分を集めた。次に、カラムは、0.02MCHCOOH(500mL)により10mL/時間の速度で溶出し、各5mLの画分を集めた。抗生物質を含む画分を集めた。次に、カラムは、0.02MのCHCOOH(500mL)中、10%MeOHにより同じ速度で溶出し、反応生成物を含む画分を集めた。次に、カラムは、0.02MのCHCOOH(500mL)中、20%MeOHにより、続いて0.02MのCHCOOH中、30%MeOHにより、同じ速度で溶出した。所望の生成物の全ての適切な画分を合わせ、少量(約3mL)まで減圧濃縮した。次に、50mLのアセトンを添加して反応生成物Nα,Nε−ジ−Fmoc−L−LysのN−ヒドロキシスクシンイミドエステル並びにN−Fmoc−L−Phe、N−Fmoc−D−PheおよびN−Fmoc−(Bn−O−L−Tyr)のN−ヒドロキシスクシンイミドエステルを析出させた。Nα−R−Nα,Nδ−ジ−Fmoc−L−OrnのN−ヒドロキシスクシンイミドエステルに関しては、8mLのアセトンを添加し、この混合物を100mLのEtOに加えて生成物を析出させた。析出した固体を濾過し、アセトンまたはEtOで洗浄し、次いで減圧乾燥した。収率は、Nα,Nε−ジ−Fmoc−L−LysのN−ヒドロキシスクシンイミドエステル並びにN−Fmoc−L−Phe、N−Fmoc−D−PheおよびN−Fmoc−(Bn−O−L−Tyr)のN−ヒドロキシスクシンイミドエステルに関しては30%から50%であり、Nα−R−Nα,Nδ−ジ−Fmoc−L−OrnのN−ヒドロキシスクシンイミドエステルに関しては約10%であった。
【0109】
(実施例4:グリコペプチド抗生物質の(アダマンチルアミノ)アミド類またはそれらの誘導体の製造)
抗生物質またはその誘導体(例えば実施例3に記載されるように製造された)(0.1mmol)のDMSO中での攪拌溶液(4mL)に、2−アミノ−アダマンタンまたは1−アミノ−アダマンタン(0.5mmol)、EtN(1mmol)およびHBPyU[O−ベンゾトリアゾール−1−イル−N,N,N’,N’−ビス(テトラメチレン)ウロニウムヘキサフルオロホスファート]またはPyBOP[(ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)−トリス(ピロリジノ)ホスホニウム−ヘキサフルオロホスファート](0.2mmol)を室温で3回に分けて1時間攪拌しながら添加した。4時間後、100mLのアセトンを添加して固体を得た。これをアセトンで洗浄し、減圧乾燥して対応するアミドを約90%の収率で得た。
【0110】
(実施例5:さらなるアミド誘導体化および評価)
エレモマイシンアミド類の合成は、未保護のエレモマイシンを適切なアミンと、縮合剤としてのPyBOPの存在下、以下に記載される方法に従って縮合することによって実施された:Miroshnikova O.V.,Printsevskaya S.S.,Olsufyeva E.N.,Pavlov A.Y.,Nilius A.,Hensey−Rudloff D.,Preobrazhenskaya M.N.J.Antibiot.,2000.V.53.P.286−293。これらは、全ての目的のために、本明細書中に参考として援用される。そのアミドの収率は、アミンの性質に依存し、40%から80%である(例えば、化合物79の収率は、40%であったが、その一方で化合物90は、80%の収率で得られた)。殆どの出発原料のアミンは、市販されておらず、スキーム4で示されるように製造された。
【0111】
エレモマイシンのアミノメチル化誘導体は、Pavlov A.Y.,Lazhko E.I.,Preobrazhenskaya M.N.J.Antibiot.1996,V.50,P.509−513に記載された方法に従って、エレモマイシンとアミンおよび37%ホルムアデヒド水溶液とのpH9から9.5における相互作用によって得られた。この文献は、全ての目的のために、本明細書中に参考として援用される。エレモマイシンアミドとは対照的に、アミノメチル化誘導体の合成は、第1級アミン(例えば、化合物72は40%の収率および化合物73は60%の収率)に対するよりも第2級アミンに対しての方が、よりよい収率を与えた。
【0112】
アミノメチル化誘導体のアミドは、アミノメチル化誘導体のアミド化によって製造された。最良の結果は、過剰のアミン(約5倍)の使用によるアミド化により得られた。アミノメチル化誘導体(エレモマイシンから出発して)のアミドのおよその収率は、20%から50%であった。
【0113】
N−アリル−エレモマイシンのアミド類およびN,N−ジメチル−エレモマイシンの第4級塩は、適切なアミドと臭化アリルまたはヨウ化メチルとを、DMSO中、NaHCOの存在下で反応させることにより得られた。臭化アリルの場合、生成物の収率は約60%であったが、その一方でヨウ化メチルの場合は、N、N−ジメチル−エレモマイシンの目的とするアミドの収率は、90%であった。したがって、これらの誘導体のおよその収率は、45%から70%であった。N、N−ジメチル−エレモマイシンのデシルジメチルアミノプロピルアミド(化合物70)は、65%の収率で製造された。
【0114】
エレモマイシン誘導体の精製は、以下に記載されるようにCM−32−セルロースまたはシラン化シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィを用いて実施された:Pavlov A.Y.,Berdnikova T.F.,Olsufyeva E.N.,Miroshnikova O.V.,Fillipposianz S.T.,Preobrazhenskaya M.N.,Sottani C.,Colombo L.,Goldstein B.P.,J.Antibiot.,1996,V.49,P.194−198;およびMiroshnikova O.V.,Printsevskaya S.S.,Olsufyeva E.N.,Pavlov A.Y.,Nilius A.,Hensey−Rudloff D.,Preobrazhenskaya M.N.,J.Antibiot.,2000.V.53.P.286−293。これらの文献は、全ての目的のために、本明細書中に参考として援用される。反応の進行、カラム溶離液の成分および最終化合物の純度は、EtOAc−n−PrOH−25%NHOH(1:1:1または3:2:2)およびn−BuOH−AcOH−HO(5:1:1)の系でのTLCによってチェックされた。さらに、最も活性な誘導体の純度はHPLCによってコントロールされた。エレモマイシン誘導体の構造は、上記した参考文献に記載の方法に従い、H NMRおよび化学的分解法(未修飾のエレモサミンや改変アグリコンを産生する酸加水分解および未置換のN−末端アミノ酸の存在を示すエドマン分解法)により確認された。
【0115】
スキーム4 原料アミン類の合成
a)化合物46および72に対するアミンは以下のようにして得た。
【0116】
【化15】

化合物74および79に対するアミンは、N−メチルピペラジンから同様の手順により90%の収率で得た。
【0117】
b)化合物89、90、95および96に対するアミンは以下のようにして得た。
【0118】
【化16】

化合物84および87に対するアミンは、ピペラジンから同様の方法により、およそ30%の収率で得た。
【0119】
【化17】

化合物96に対するアミンは、ジアミンヘキサンから10%の全収率で得た。
【0120】
c)化合物88および91に対するアミンは以下のようにして得た。
【0121】
【化18】

(実施例6:抗菌活性評価)
インビトロでの抗菌活性は、NCCLS(米国臨床検査標準化委員会)によって推奨される、Meuller−Hinton液体培地における微量液体希釈法より調べた。全ての試験菌株は、天然グリコペプチドに対して感受性または耐性である臨床分離株であった。その結果は、μg/mlのMIC(最小発育阻止濃度)として表中に報告されている。合成されたほとんどの化合物は、感受性菌に対してバンコマイシンに匹敵し得る活性を有する(化合物70は例外)。化合物70は、バンコマイシン感受性グラム陽性菌の臨床分離株に対して、試験した全ての化合物の中で、最も活性のあるエレモマイシン誘導体である。エレモマイシンの全ての誘導体は、天然グリコペプチド[エレモマイシン(Ere)、バンコマイシン(Vanco)、テイコプラニン(Teico)]よりも、GISAおよびGREに対して活性がより大きい。化合物72、87、90および95は、GISAに対して最も活性である。化合物70、72、75、76、90および95は、GRE菌株(4から16mcg/mlの間)に対して、さらにやや良好な活性を示すが、しかし、LY333328よりは活性がいくらか低下する。
【0122】
得られたMIC値の分析により、4級フラグメントである−N1021を含む部分の導入が、GISAおよびGREに対する高活性を有する誘導体の合成への生産的アプローチであることが示されている。抗菌活性に対する4級化の積極的な効果は、化合物89のMIC値と、化合物90または95のMIC値とを比較してみれば、明らかである。基−NHC1021(89)を、−NMe1021(90)または−N(アリル)1021(95)に変換することにより、感受性菌および耐性菌に対して2倍から8倍まで活性が増大することとなる。また、2つのC1021部分を含んでいる化合物92および96が、耐性菌および感受性菌の両方に対して良好な活性を保持するのに対して、一方では、2つの疎水性の非4級化置換基の導入が抗菌活性の著しい減少(1桁より大きく)に結びつくと早くから結論付けられていたことに注目することは興味深いものがある。4級フラグメントである−N1021を含む化合物に対するSARの研究により、この基の部分とエレモマイシン(化合物46と90)の枠組みの間のスペーサーの長さは抗菌活性に重要な影響を及ぼさないことを証明している。スペーサー(化合物88、90および91)の性質(疎水性)は、より重要に見える。
【0123】
(表)
以下に示す表は、本発明による特定種の化合物およびそれらの関連する抗菌活性情報を明らかにする。グリコペプチドは下記に示すように様々な菌株に対して試験され、該菌株としては、Staphylococus epidermidis、Staphylococus haemolyticus、グリコペプチド低感受性(glycopeptide intermediate) Staphylococus aureus(GISA)、グリコペプチド感受性Enterococcus faecalis(GSE)およびグリコペプチド耐性Enterococcus faecalis(GRE)が挙げられる。結果は、μg/mlの単位で最小発育阻止濃度(MIC)として表中に示される。
【0124】
表1.Rは各化合物に対して示される通りである式:
【0125】
【化19】

の、N’−アルキルグリシル−およびN’−アシルグリシル−置換エレモマイシン誘導体
【0126】
【表1】

表1a.N’−アルキルグリシル−およびN’−アシルグリシル−置換エレモマイシン誘導体の抗菌活性
【0127】
【表1a】

表2.Rは、各化合物に対して示される通りである式:
【0128】
【化20】

の、N’−アルキルグリシル置換バンコマイシン誘導体
【0129】
【表2】

表2a.N’−アルキルグリシル置換バンコマイシン誘導体の抗菌活性
【0130】
【表2a】

表3.Rは、各化合物に対して示される通りである下記式:
【0131】
【化21】

を有する非グリシンアミノ酸によりN’−置換されたエレモマイシン誘導体
【0132】
【表3】

表3a.非グリシンアミノ酸によりN’−置換されたエレモマイシン誘導体の抗菌活性
【0133】
【表3a】

表4. RおよびRは、各化合物に対して示される通りである式:
【0134】
【化22】

の二重修飾エレモマイシン誘導体:
【0135】
【表4】

表4a.二重修飾エレモマイシン誘導体の抗菌活性
【0136】
【表4a】

表5.RおよびRは、各化合物に対して示される通りである式
【0137】
【化23】

の二重修飾バンコマイシン誘導体
【0138】
【表5】

表5a.二重修飾バンコマイシン誘導体の抗菌活性
【0139】
【表5a】

結論
上記発明は、明瞭に理解されるようにかなり詳細に記載されているけれども、ある種の変更および改変は、添付した特許請求の範囲内で実行され得ることは明白である。従って、本発明の製法および組成物の両方を実施する多くの代替的方法があることに留意すべきである。従って、本実施形態は、例示的なものであって、限定的なものではないと考えるべきであり、本発明は本明細書中に与えられた詳細なものに限定されるべきではなく、添付した特許請求の範囲および均等物内において、改変されてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式:
【化1】

(式中、Rは、C(=O)CR7aNR8aであり、式中、
およびR7aは、独立して水素、天然もしくは非天然のアミノ酸の側鎖、アルキル、またはハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アルコキシアルコキシ、カルボキシル、カルボキシルエステル、−C(=O)NR8a、−NR8a、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、メルカプト、またはチオアルコキシから成る群から選択される1以上の置換基で置換されたアルキルであり、またはRおよびR7aは、それらが結合している原子と一緒になってシクロアルキル環を形成し、該シクロアルキル環は、必要に応じて、置換されていてもよいO、N、およびSから成る群から選択されるヘテロ原子を必要に応じて含んでいてもよく;
およびR8aは、独立して水素および非置換または置換された、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキルまたはヘテロアリールから成る群から選択され、前記アリール、アリールアルキル、アルキルアリールまたはヘテロアリール基は、1以上の必要に応じて置換されていてもよい、アリール、ヘテロアリール、または縮合環を必要に応じて含んでいてもよく、またはRおよびR8aは、それらが結合している原子と一緒になってシクロアルキル環を形成し、該シクロアルキル環は、必要に応じて、置換されていてもよいO、N、およびSから成る群から選択されるヘテロ原子を必要に応じて含んでいてもよく;
1Aは、H、CHR5a、およびC(=O)Rから成る群から選択され、式中、RおよびR5aは、独立して水素および非置換または置換された、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリールおよびヘテロアリールから成る群から選択され、該アリール、アルキルアリール、アリールアルキルまたはヘテロアリール基は、1以上の必要に応じて置換されていてもよいアリール、ヘテロアリール、または縮合環を必要に応じて含んでいてもよく、またはRおよびR5aは、それらが結合している原子と一緒になってシクロアルキル環を形成し、該シクロアルキル環は、必要に応じて、置換されていてもよいO、N、およびSから成る群から選択されるヘテロ原子を必要に応じて含んでいてもよく;および
は、非置換または置換された、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリールおよび必要に応じて置換されていてもよい、O、N、およびSから成る群から選択されるヘテロ原子を含んでいてもよいヘテロアリールから成る群から選択され、前記アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、またはヘテロアリール基は、1以上の必要に応じて置換されていてもよいアリール、ヘテロアリール、または縮合環を必要に応じて含んでいてもよく;
は、
(1)OH、
(2)1−アダマンタンアミノ、
(3)2−アダマンタンアミノ、
(4)3−アミノ−1−アダマンタンアミノ、
(5)1−アミノ−3−アダマンタンアミノ、
(6)3−低級アルキルアミノ−1−アダマンタンアミノ、
(7)1−低級アルキルアミノ−3−アダマンタンアミノ、
(8)アミノ、
(9)NR9a
から成る群から選択され、式中、RおよびR9aは、独立して水素、低級アルキルまたは置換低級アルキルから成る群から選択され、または
およびR9aは、それらが結合している原子と一緒になって3員から10員のヘテロシクロアルキル環を形成し、この環は、
(a)ハロゲン、
(b)ヒドロキシ、
(c)C−C−アルコキシ、
(d)C−C−アルコキシ−C−C−アルコキシ、
(e)オキソ、
(f)C−C−アルキル、
(g)ハロ−C−C−アルキル、および
(h)C−C−アルコキシ−C−C−アルキル
から成る群から独立して選択される1以上の置換基で場合により置換されていてもよく;
2Aは、
(1)1−アダマンタンアミノ、
(2)2−アダマンタンアミノ、
(3)3−アミノ−1−アダマンタンアミノ、
(4)1−アミノ−3−アダマンタンアミノ、
(5)3−低級アルキルアミノ−1−アダマンタンアミノ、
(6)1−低級アルキルアミノ−3−アダマンタンアミノ
から成る群から選択され;および
は、水素およびアミノ低級アルキルから成る群から選択され、該アミノ低級アルキルのアミノ基は、非置換または置換された、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、アルコキシ、アリールオキシ、置換アルコキシ、および置換アリールオキシでさらに置換されている)
から成る群から選択される式を有する化合物;または
その薬学的に許容される塩、エスエル、溶媒和物、立体異性体、互変異性体もしくはプロドラッグ。
【請求項2】
が水素であり、かつR5aが非置換または置換された、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、およびヘテロアリールから成る群から選択され、該アリール、アルキルアリール、アリールアルキルまたはヘテロアリール基は、必要に応じて置換されていてもよい、1以上のアリール、ヘテロアリール、または縮合環を必要に応じて含んでいてもよく、またはRおよびR5aが、結合している原子と一緒になってシクロアルキル環を形成し、該シクロアルキル環は、必要に応じて、置換されていてもよいO、N、およびSから成る群から選択されるヘテロ原子を必要に応じて含んでいてもよい、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
化合物N’−p−BuBnHNCHCOエレモマイシン。
【請求項4】
化合物N’−スチルベンジルHNCHCOエレモマイシン。
【請求項5】
化合物N’−p−C17OBnHNCHCOバンコマイシン。
【請求項6】
化合物N’−p−C17OBnHNCH(CH)COバンコマイシン。
【請求項7】
化合物2−アダマンタンアミノエレモマイシン。
【請求項8】
が、−CHCHNH−部分を含むβ−アミノ酸アナログである、請求項1記載の化合物。
【請求項9】
が、CHC(R)(R7a)(NR8a)から成る群から選択され、式中、R、R7a、R、およびR8aは、前記で定義した通りであるか、または−CR7aは、NR8aと一緒になってピロリジン環を形成する、請求項8記載の化合物。
【請求項10】
C(=O)CR7aNR8aが、アミノ酸部分から成る群から選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項11】
、RおよびR8aがそれぞれHであり、R7aがH、CH、CH(CH、CHCH(CH、CH(CH)CHCH、(CHNH、CHOH,CH(OH)CH、CHCOOH、(CHCOOH,CHC(=O)NH、(CHC(=O)NH、CHSH,(CHSCH,(CHNHC(=NH)NH,CH,CHOH、CH(4−イミダゾリル)およびCH(3−インドリル)から成る群から選択されるか、または−CR7aがNR8aと一緒になって、ピロリジン環を形成する、請求項10記載の化合物。
【請求項12】
が水素であり、かつ
7aが、
(1)水素、
(2)C−C12−アルキル、および
(3)C−C12−アルキルであって、
(a)ハロゲン、
(b)ヒドロキシ、
(c)C−C−アルコキシ、
(d)C−C−アルコキシ−C−C−アルコキシ、
(e)−CO(式中、Rは水素、低級アルキルまたは置換された低級アルキルである)、
(f)−C(=O)NR9a
(g)アミノ、および
(h)−NR9a、または
およびR9aは、結合している原子と一緒になって3員から10員の、ヘテロシクロアルキル環を形成し、該環は必要に応じて
(i)ハロゲン、
(ii)ヒドロキシ、
(iii)C−C−アルコキシ、
(iv)C−C−アルコキシ−C−C−アルコキシ、
(v)オキソ、
(vi)C−C−アルキル、
(vii)ハロ−C−C−アルキル、および
(viii)C−C−アルコキシ−C−C−アルキル
から成る群から独立して選択される1以上の置換基で場合により置換されていてもよく、
(i)アリール、
(j)置換アリール、
(k)ヘテロアリール、
(l)置換ヘテロアリール、
(m)メルカプト、および
(n)C−C−チオアルコキシ
から成る群から選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項13】
およびR8aが、それぞれ独立して、
(1)水素、
(2)C−C12−アルキル、および
(3)C−C12−アルキルであって、
(a)ハロゲン、
(b)ヒドロキシ、
(c)C−C−アルコキシ、
(d)C−C−アルコキシ−C−C−アルコキシ、
(e)アミノ、および
(f)C−C−アルキルアミノ
から成る群から選択される1以上の置換基で置換されている、C−C12−アルキル、
(4)アリールで置換されているC−C12−アルキル、
(5)置換アリールで置換されているC−C12−アルキル、
(6)ヘテロアリールで置換されているC−C12−アルキル、および
(7)置換ヘテロアリールで置換されているC−C12−アルキル
から成る群から独立して選択されるか;または
およびR8aは、それらが結合する原子と一緒になって、C−C−ヘテロシクロアルキル環を形成し、該環が5員から7員の環であるときは、場合により、−O−、−NH、−N(C−C−アルキル−)−、−N(アリール)−、−N(アリール−C−C−アルキル−)−、−N(置換−アリール−C−C−アルキル−)−、−N(ヘテロアリール)−、−N(ヘテロアリール−C−C−アルキル−)−、−N(置換−ヘテロアリール−C−C−アルキル−)−、および−S−またはS(=O)−(式中、nは1または2である)から成る群から選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項14】
治療的有効量の請求項1記載の化合物を、薬学的に許容される担体と一緒に含む、医薬組成物。
【請求項15】
抗菌学的有効量の請求項1記載の化合物と薬学的に許容される担体とを哺乳動物に投与することを含む、そのような治療を必要とする哺乳動物の治療方法。
【請求項16】
エレモマイシン、A82846B、バンコマイシン、テイコプラニンおよびA−40,926の骨格:
【化2】

から成る群から選択されるグリコペプチド骨格を、
(a)該化合物のアミノ置換糖部分におけるアミノ置換基の、構造−C(=O)CR7aNR8aを有するアシル基によるアシル化、
(b)該化合物の大環状の環上の酸部分の、Rによって定義された置換アミドによる変換反応、および
(c)上記(a)と(b)の組み合わせ、
(d)上記(b)と、該化合物のアミノ置換糖部分におけるアミノ置換基の、構造−C(=O)Rを有するアシル基によるアシル化との組み合わせ、
(e)上記(b)と、該化合物のアミノ置換糖部分におけるアミノ置換基の、構造CHR5aを有するアルキル基によるアルキル化との組み合わせ、
から成る群から選択される方法によって修飾し、
【化3】

(式中、R、R1A、R、R2A、R、R、R5a、R、R、R7a、R、およびR8aは、本明細書で定義した通りである。)から成る群から選択される式を有する化合物を形成させることを含む、請求項1記載の化合物の製造方法。

【公表番号】特表2008−531702(P2008−531702A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−558127(P2007−558127)
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【国際出願番号】PCT/US2006/007049
【国際公開番号】WO2006/093947
【国際公開日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(506361100)ノバルティス ヴァクシンズ アンド ダイアグノスティクス, インコーポレイテッド (44)
【Fターム(参考)】