説明

抗血管新生剤とTNFαとを用いる組合せ療法

【課題】本発明は、腫瘍転移の治療を目的とする組合せ療法を提供する。
【解決手段】本発明は、場合によっては、インターフェロン・ガンマ(IFNγ)などの他の細胞傷害薬、あるいは抗EGFR抗体などの他の化学療法剤と一緒に、抗血管新生剤と腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)との投与を含む、腫瘍転移の治療を目的とする組合せ療法に関する。該手法ならびに前記薬剤複数を含む医薬組成物は、各個治療薬の腫瘍細胞増殖阻害効果の相乗的強化をもたらし、個々の成分の単独投与で見出されるものよりも、より効果的な治療をもたらすことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗血管新生剤、および腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)またはTNFαの生物活性を有する分子を、場合によっては、インターフェロン・ガンマ(IFNγ)など他の細胞傷害薬剤やシスプラチンなどの化学療法剤、あるいは、抗EGFR抗体などのErbB受容体阻害剤と一緒に、投与することを含んでなる、腫瘍および腫瘍転移の治療用の組合せ療法に関する。該手法ならびに前記薬剤複数を含んでなる医薬組成物は、各個治療薬の腫瘍細胞増殖阻害効果の相乗的な強化をもたらし、個々の成分の単独投与において見出されるよりも、より効果的な治療をもたらすことができる
【背景技術】
【0002】
血管新生は、また新血管形成とも呼ばれるが、新しく発生中の血管の組織内への伸長を伴う、組織血管形成のプロセスである。このプロセスは、内皮細胞および平滑筋細胞の浸潤によって媒介されている。このプロセスは、(1)血管は、既存の血管から出芽することができる、(2)血管の新規発生は、前駆細胞から発することができる(脈管形成(vasculogenesis))、または(3)存在する細い血管は、その直径を拡大することができる、該3つの経路のいずれかにより、進行すると考えられている(Blood他、1990、Bioch.Biophys.Acta、1032、89)。血管内皮細胞は、ビトロネクチン受容体(αVβ3またはαVβ5)、コラーゲン・タイプIおよびIVの受容体、ラミニン受容体、フィブロネクチン/ラミニン/コラーゲン受容体、フィブロネクチン受容体を含む、少なくとも5つのRGD依存性インテグリンを含有していることが知られている(Davis他、1993、J.Cell.Biochem.、51、206)。平滑筋細胞は、αVβ3およびαVβ5を含む、少なくとも6つのRGD依存性インテグリンを含有していることが知られている。
【0003】
血管新生は、新生児の生育における重要なプロセスであり、また、創傷治癒、ならびに組織炎症、関節炎、乾癬、癌、糖尿病性網膜症、黄斑変性症、および他の新血管形成性の眼疾患を含む、様々な臨床的に重要な疾病の病因においても、重要である。血管新生に関連したこれらの臨床的病態は、血管新生病と呼ばれる(Folkman他、1987、Science、235、442)。
【0004】
様々なインテグリンのαまたはβサブユニットに免疫特異的なモノクローナル抗体を用いたin vitroな細胞接着の阻害により、微小血管内皮細胞を含めて様々な細胞種の細胞接着にビトロネクチン受容体αVβ3が関連付けられた(Davis他、1993、J.Cell.Biol.、51、206)。
【0005】
インテグリンは、細胞外基質タンパク質と結合し、従って、一般的に細胞接着現象と呼ばれている、細胞−細胞および細胞−細胞外基質の相互作用を媒介することが知られている、細胞性受容体の1クラスである。このインテグリン受容体は、αおよびβサブユニットから形成される非共有結合性ヘテロ二量体糖タンパク質複合体に共通する構造的特徴を有するタンパク質のファミリーを構成する。ビトロネクチンと優先的に結合する、その本来の特徴により命名されたビトロネクチン受容体は、現在では、αVβ1、αVβ3、αVβ5と呼ばれる3つの異なるインテグリンを指すことが知られている。αVβ1は、フィブロネクチンおよびビトロネクチンと結合する。αVβ3は、フィブリン、フィブリノーゲン、ラミニン、トロンボスポンジン、ビトロネクチン、フォンウィルブランド因子を含めた様々なリガンドと結合する。αVβ5は、ビトロネクチンと結合する。共通の生物学的特異性を有する、異なるインテグリンやサブユニットと同様に、異なる生物学的機能を有する様々なインテグリンが存在することも明白である。多くのインテグリンに対する、リガンド内の1つの重要な認識部位は、アルギニン−グリシン−アスパラギン酸(RGD)のトリペプチド配列である。ビトロネクチン受容体インテグリンに対する、上で特定したリガンドの全てにおいて、RGDが見出されている。
【0006】
このRGD認識部位は、RGD配列を含む直線状および環状(ポリ)ペプチドによって模倣することができる。かかるRGDペプチドは、それぞれ、インテグリン機能の阻害剤または拮抗剤であることが知られている。しかし、RGDペプチドの配列および構造に応じて、特異的なインテグリンを標的にするように阻害の特異性が改変できることを特記することが重要である。異なるインテグリン特異性を有する、様々なRGDポリペプチドが、例えば、Cheresh他、1989、Cell、58、945、Aumailley他、1991、FEBS Letts.、291、50、および数々の特許出願や特許(例えば、米国特許第4,517,686号、第4,578,079号、第4,589,881号、第4,614,517号、第4,661,111号、第4,792,525号、ヨーロッパ特許第0770 622号)に記載されている。
【0007】
新しい血管の生成、あるいは、血管新生は、悪性腫瘍疾患において、主な役割を担っており、血管新生を阻害する薬剤の開発に対する多くの関心が起こさせている(例えば、Holmgren他、1995、Nature Medicine、1、149;Folkman、1995、Nature Medicine、1,27;O’Reilly他、1994、Cell、79、315 参照)。血管新生を阻害するための、αVβ3インテグリン拮抗剤の使用は、固形腫瘍への血液供給を減少させることにより固形腫瘍の成長を阻害する方法において、知られている(例えば、合成ポリペプチド、モノクローナル抗体、αVβ3受容体に結合して血管新生を阻害するαVβ3の模倣体など、αVβ3の拮抗剤の使用を記載している、米国特許第5,753,230号および米国特許第5,766,591号 参照)。ビトロネクチン受容体αVβ5の拮抗剤を使用して、αVβ5に媒介された組織の血管新生を阻害する方法および組成物は、国際公開 WO 97/45447号パンフレットに開示されている。
【0008】
血管新生は、内皮細胞の浸潤、遊走、および増殖によって特徴づけられ、細胞の細胞外基質成分との相互作用に依存している。この関係では、インテグリン型細胞−基質受容体が、細胞の拡散および遊走を媒介する。インテグリンαVβ3型の内皮接着受容体は、抗血管新生の治療戦略における血管特異的標的を提供する、中心的なプレーヤーであることが示された(Brooks他、1994、Science、264、569;Friedlander他、1995、Science、270)。血管新生における血管性インテグリンαVβ3の必要性は、いくつかのin vivoモデルによって実証され、すなわち、移植したヒト腫瘍による新しい血管の生成が、前述のように、インテグリンαVβ3およびαVβ5のペプチド拮抗剤の全身投与、あるいはその代わりに、抗αVβ3抗体LM609によって、完全に阻害された(Brooks他、1994、Cell、79、1157;ATCC9537)。この抗体は、その天然リガンドによるその活性化は、増殖性血管新生血管細胞のアポトーシスを阻害するαVβ3インテグリン受容体を阻害し、そして、それによって腫瘍増殖に必須の現象である、新しく形成中の血管の成熟を乱す。とはいえ、内皮細胞が存在していなくても、黒色腫細胞は、クモの巣状パターンの血管を形成できることが最近報告されており(Barinaga、1990、Science、285、1475)、腫瘍が、内皮組織の存在下でのみ有効である一部の抗血管新生剤を無効化することができる可能性を暗示している。
【0009】
VEGF、Ang1、およびbFGFを含む、数々の分子は、内皮の増殖、遊走、および集合を刺激し、また、重要な生存因子である。VEGF(血管内皮成長因子)は、内皮細胞の有糸分裂誘発を刺激することができる、選択的血管新生成長因子として同定されている。特に、VEGFは、原発腫瘍における、および虚血性眼球疾病における血管新生の主要な媒介者であると考えられている。VEGFは、チロシンキナーゼ活性を有する高親和性の膜結合受容体に結合する(Jakeman他、1992、J.Clin.Invest.、89、244)、内皮細胞に特異的な血管新生性因子(Ferrara他、1992、Endocrin.Rev.、13、18)および血管透過性因子である(Senger他、1986、Cancer Res.、465629)、ホモ二量体(MW:46,000)である。ヒト腫瘍バイオプシーでは、悪性腫瘍細胞によるVEGF mRNAの、また近隣の内皮細胞中におけるVEGF受容体mRNAの発現の増強が示される。VEGFの発現は、血管の壊死領域に近隣する腫瘍領域中で最大であるように見える(総説として、Thomas他、1996、J.Biol.Chem.、271(2)、603;Folkman、1995、Nature Medicine、1、27 参照)。国際公開 WO 97/45447号パンフレットは、αVβ5インテグリンを、特には、VEGF、EGF、TGF−αによって誘発される新血管形成と関連づけ、また、αVβ5拮抗剤がVEGFによって促進される血管新生を阻害することができることを開示している。効果的な抗腫瘍療法では、モノクローナル抗体を使用して血管新生を阻害するために、VEGF受容体を標的にすることを利用することもできる(Witte他、1998、Cancer Metastasis Rev.、17(2)、155)。MAb DC−101は、腫瘍細胞の血管新生を阻害することが知られている。
【0010】
チロシンキナーゼは、アデノシン三リン酸の末端リン酸をタンパク質基質のチロシン残基への転移を触媒している、酵素の一群である。チロシンキナーゼは、基質のリン酸化を通じて、数々の細胞機能のシグナル伝達において、必須な役割を担っていると信じらている。シグナル伝達の正確な機構は依然として不明確であるが、チロシンキナーゼは、細胞増殖、発癌、および細胞分化に寄与する重要な因子であることが示されている。
【0011】
チロシンキナーゼは、受容体型または非受容体型に分類することができる。受容体型および非受容体型のチロシンキナーゼの双方とも、癌、乾癬、過免疫応答を含む、数々の発病状態をもたらす細胞性シグナル経路に関与している。多くのチロシンキナーゼが、細胞成長のみならず血管新生にも関与している。
【0012】
受容体型のチロシンキナーゼは、細胞外、膜貫通、ならびに細胞内も部分を有しているが、受容体型でないチロシンキナーゼは、完全に細胞内にある。受容体と連結されたチロシンキナーゼは、細胞外リガンド結合ドメイン、膜貫通配列、および細胞質内チロシンキナーゼドメインを含有する膜貫通タンパク質である。受容体型のチロシンキナーゼは、多様な生物活性を有する、多数の膜貫通受容体を含んでいる。実際、受容体型のチロシンキナーゼの様々なサブファミリーが同定されている。包含されるチロシンキナーゼには、線維芽細胞成長因子(FGF)受容体、ErbB主要クラスファミリーの上皮成長因子(EGF)受容体、および血小板由来成長因子(PDGF)受容体が含まれる。また、神経成長因子(NGN)受容体、脳由来神経栄養因子(BDNF)受容体、ニューロトロフィン−3(NT−3)受容体、ニューロトロフィン−4(NT−4)受容体も、包含されている。
【0013】
HERまたはErbBサブファミリーと命名された、受容体型チロシンキナーゼの1サブファミリーは、EGFR(ErbB1)、HER2(ErbB2またはp185neu)、HER3(ErbB3)、およびHER4(ErbB4またはtyro2)を含んでなる。この受容体サブファミリーのリガンドには、上皮成長因子(EGF)、TGF−a、アンフィレギュリン、HB−EGF、ベータセルリン、ヘレグリンが含まれる。PDGFサブファミリーには、キナーゼ挿入ドメイン受容体(KDR)を含んでなるFLKファミリーが含まれる。
【0014】
erbB1遺伝子によってコードされる、EGFRは、ヒト悪性腫瘍との因果関係が関係付けられた。具体的には、乳房、膀胱、肺、頭部、頚部、および胃の癌だけでなくグリア芽細胞種でも、EGFR発現の増大が観察された。EGFR受容体の発現の増大は、しばしば、オートクリン刺激性経路による受容体活性化をもたらす同じ腫瘍細胞による、EGFRリガンド、トランスフォーミング成長因子(TGF−a)、の生成の増大を付随している(BaselgaおよびMendelsohn、Pharmac.Ther.、64:127〜154、1994)。EGF受容体は、170,000の分子量を有し、多くの上皮細胞種で見出される膜貫通糖タンパク質である。これは、少なくとも3つのリガンド、EGF、TGF−α(トランスフォーミング成長因子アルファ)、およびアンフィレギュリンによって活性化される。上皮成長因子(EGF)およびトランスフォーミング成長因子アルファ(TGF−a)は共にEGF受容体に結合し、細胞性増殖および腫瘍成長を引き起こすことが実証されている。これらの成長因子は、HER2には結合しない(UlrichおよびSchlesinger、1990、Cell、61、203)。それ自体の二量体の性質に基づき、受容体の二量体化を誘導する、成長因子のいくつかのファミリー(例えば、PDGF)とは異なり、EGFなどの単量体型成長因子は、その受容体用に結合部位2つを含み、従って、近隣するEGF受容体2つを架橋連結することができる(Lemmon他、1997、EMBO J.、16、281)。受容体の二量体化は、内因性触媒活性の刺激および成長因子受容体の自己リン酸化に対して、必須である。受容体型タンパク質チロシンキナーゼ(PTK)は、ホモならびにヘテロ二量体化のいずれをも受けることができることには、注意すべきである。
【0015】
抗EGF受容体抗体は、EGFおよびTGF−aの受容体への結合を妨害することで、腫瘍細胞の増殖を阻害できることが実証された。これらの知見を考慮して、EGF受容体に対するネズミおよびラットモノクローナル抗体多数が開発され、in vitroおよびin vivoにおいて、腫瘍細胞の成長を阻害するその能力が試験された(ModjtahediおよびDean、1994、J.Oncology、4、227)。いずれもEGF受容体に特異性を有する、ヒト化モノクローナル抗体425(hMAb425、米国特許第5,558,864号、ヨーロッパ特許第0531 472号)およびキメラモノクローナル抗体225(cMAb225、米国特許第4,943,533号およびヨーロッパ特許第0359 282号)は、臨床試験において、その有効性を示した。該C225抗体は、in vitroでEGF媒介腫瘍細胞成長を阻害し、また、ヌードマウスにおいて、in vivoでヒト腫瘍形成を阻害することが検証された。さらに、該抗体は、とりわけ、特定の化学療法薬(すなわち、ドキソルビシン、アドリアマイシン、タキソール、シスプラチン)と相乗的に作用して、異種移植マウスモデルにおいて、in vivoでヒト腫瘍を根絶させるように見えた。Ye他(1999、Oncogene、18、731)は、HER2受容体に対するヒト化MAb4D5と、cMAb225との組合せによって、ヒト卵巣癌細胞の治療に成功したことを報告した。
【0016】
ErbBファミリーの第2のメンバーである、HER2(ErbB2あるいはp185neu)は、最初、化学的に処置したラットの神経芽細胞腫より、形質転換遺伝子の産物として同定された。該neuプロトオンコジーンの活性化型は、コードされたタンパク質の膜貫通領域内における、点突然変異(バリンからグルタミン酸)により起こされる。neuのヒト相同体の増幅は、乳房および卵巣癌中で観察され、予後不良と関連している(Slamon他、Science、235:177〜182、1987;Slamon他、Science、244:707〜7 12、1989;米国特許第4,968,603号)。ErbB2(HER2)は、約185,000の分子量を有し、EGF受容体(HER1)と相当な相同性を有するが、現在までのところ、まだ、HER2の特異的リガンドは明確に同定されていない。
【0017】
さらに、HER2に対する抗体4D5は、TNFαの細胞傷害効果に対して、ErbB2過剰発現乳房腫瘍細胞系を感受的にすることが見出された(米国特許第5,677,171号)。ネズミ抗ErbB2抗体4D5のヒト化組換え体(huMAb4D5−8、rhuMAb HER2またはHERCEPTIN(登録商標)米国特許第5,821,337号)は、継続的に、事前の抗癌療法を受けている、ErbB2過剰発現転移性乳癌を有する患者において、臨床的な実効がある(Baselga他、J.Clin.Oncol.、14:737〜744、1996)。HERCEPTIN(登録商標)は、その腫瘍はErbB2タンパク質を過剰発現している、転移性乳癌を有する患者の治療用に、1998年に販売承認を受けている。
【0018】
TNFαは、Fasリガンド、CD40リガンド、TRAIL、リンホトキシンなどの重要なサイトカインを含む、分子の大きなファミリーに属する(Locksley他、2001、Cell、104:487〜501)。多くの細胞種から放出されるほか、TNFαはまた、細胞膜に結合した、より高分子量の形態で、細胞上に存在しており、この形態も、様々な生物効果を媒介しているように見える。TNFαは、正常な発生および生理機能においては、殆ど役割を持っていないと考えられているが、しかし、これは、多くの疾病状態において、多くの組織に有害で破壊的な効果を及ぼす(Tracey他、Ann.Rev.Med、1994、45:491)。TNFαが主要な役割を果たすことが示された疾病状態には、敗血性ショック症、癌悪液質、関節リウマチ等が含まれる。
【0019】
ヒトTNFαは、1985年に最初に精製された(Aggarwal他、J Biol.Chem.、1985、260、2345〜2354参照)。そのすぐ後、TNF cDNAのクローニングおよびヒトTNF座位のクローニングがなされた(Pennica他、Nature、1984、312、124〜729;Wang他、Nature、1985、313、803〜806)。TNFαは、主にマクロファージによって産生される、三量体型の17KDaのポリペプチドである。このペプチドは、最初、26KDaの膜貫通タンパク質として発現され、そこから、タンパク質分解切断によって、該17KDaのサブユニットが切断され、放出される。TNFαは、通常、様々な細胞、例えば、活性化されたマクロファージや線維芽細胞により産生される。TNFαは、多くの多様な因子を誘導することが報告されている。TNFαはまた、直接的にまたは間接的に、伝染性疾患、全身性エリテマトーデス(SLE)や関節炎などの自己免疫疾患、AIDS、敗血症、および特定の種類の感染症など、様々な疾病に関与することが報告されている。
【0020】
TNFαならびに炎症応答性感染および組織傷害は、総称して炎症応答と呼ばれる、免疫系の複雑な反応の開始を誘起する、生化学変化のカスケードを誘発する。この応答の展開は、少なくとも部分的には、局部血管拡張または血管透過性の亢進や血管内皮の活性化に基づいており、それは、白血球の効率的な循環と損傷部位への遊走を可能とし、従って、なんらかの抗原へ結合し、破壊する確率を増進させる。その後、血管内皮が活性化するまたは炎症性になると考えられる。一般的に、炎症は、様々な予想外の刺激物に対する、即答性の免疫応答であり、それ故、迅速な開始および短い持続を(急性炎症)示す。しかし、その持続的なまたは制御されていない活性(慢性炎症)は、身体に有害な効果を有しており、敗血性ショック、関節リウマチ、炎症性腸疾患、うっ血性心不全などいくつかの免疫疾患の病因となる(「Cytokines and cytokine receptors」、BonaおよびRevillard(編)、Harvard Academic Publishers、アムステルダム、2000、118〜148の「TNF and TNF receptor superfamily」参照)。
【0021】
TNFαだけでなく多くの他のサイトカインは、炎症応答の開始の直後に、マクロファージから分泌され、血液凝固を誘発し、血管透過性を増大させ、血管内皮細胞上の接着分子の発現を活性化させる。
【0022】
TNFαは、宿主にとっては、完全に有利でも完全に破壊的でもない。従って、TNFαは、内皮細胞機能に対する強力なモジュレーターである。血管の状況に応じて、これは内皮細胞の活性化を誘発することによって炎症ならびに生存を促進し、あるいは、内皮細胞アポトーシスを誘発することによって組織壊死ならびに血管破壊を引き起こす(Pober,J.S.、Pathol Biol、Paris、46、159〜163、1998;AggarwalおよびNatarajan、Eur.Cytokine Netw.、7、93〜124、1996)。これら2つの相反する応答を媒介する多くの細胞内シグナル経路が、特定さられているが(Wallach他、Annual Revies of Immunology、17、331〜367、1999)、TNFαに暴露された内皮細胞が、生存するか死滅するかを決定する、細胞外の合図(cue)は、未だに特定できていない。
【0023】
確かに、その過程において、宿主の快適な状態を損なうことなく、宿主が侵入する微生物に対して、効率良く反応することを保証するために、その生成と制御の均衡は、維持される。炎症反応の媒体であるので、TNFαは、適切な免疫応答をブーストすることによって、細菌性感染および組織損傷に対する戦いにおいて、身体を助る。しかし、その過生産は、慢性炎症をもたらし、身体に有害な効果を有し、いくつかの疾患の発症に主要な役割を果たす。
【0024】
IFNγは、TNFαの強力なエンハンサーである(Dealtry他、Eur J Immunol、17、689〜693、1987)。TNFαが細胞アポトーシスを引き起こす場合、細胞の生存を促進する転写因子である、NF−кBの活性化は、TNFα誘発性アポトーシスを抑制する可能性がある(Van Antwerp他、Science、274、787〜789、1996)。
【0025】
TNFαは、増殖、活性化、分化など細胞応答の他、プログラムされた細胞死をももたらす、幅広い種類の細胞性シグナルを誘導する。TNFαに対する細胞シグナリングは、キナーゼ、ホスファターゼ、リパーゼ、プロテアーゼ、転写因子の活性化などの初期応答、ならびに、後期応答、従って、ミトコンドリア内の電子伝達鎖の摂動、ラジカル生成、オキシド生成、および様々な物質の放出などの、より間接的な応答に分類される。死亡ドメイン含有アダプタータンパク質の供給、NFкBの活性化、カスパーゼ活性化などの初期細胞応答の多くもまた、TNFリガンドファミリーの他のメンバーがそれぞれの受容体に結合することによって開始される。従って、リンホトキシン、FasリガンドやTRAILなどの分子は、TNFとともに、余分に作用することができる(GrellおよびClauss、I.c.)。
【0026】
インテグリンによって媒介される細胞外基質(ECM)への接着は、内皮細胞を含めたほとんどの細胞の生存にとって、必須である。例えば、血管性インテグリンαVβ3は、血管新生内皮細胞の増殖および生存を促進し、αVβ3拮抗剤は、血管新生内皮細胞のアポトーシスを誘導し、血管新生を抑制する(Brooks他、Cell、79、1157〜1164、1994)。PI 3−K/AKT(Khwaja他、Embo Journal、16、2783〜2793、1997)ならびにNF−кB(Scatena他、J Cell Biol、141、1083〜1093、1998)のシグナル経路の活性化を含む、インテグリン媒介細胞生存に関連する生化学現象のいくつかが同定された。インテグリンの他に、PECAM−1およびVEカドヘリンの細胞−細胞接着分子も、内皮細胞生存を促進する(Bird他、J Cell Sci、112、1989〜1997、1999;Carmeliet他、Cell、98、147〜157、1999)。
【0027】
TNFは、一部の腫瘍細胞系にとって細胞傷害性であるが、これらのほとんどは、増殖には影響を受けない。従って、一部の動物モデルにおけるTNFの抗腫瘍性効果(Balkwill他、Cancer Res.、46:3990〜3993、1986)は、腫瘍細胞に対するサイトカインの直接的な作用に起因するとは考えにくい。いくつかの研究では、宿主媒介機構が、TNFによって誘起された腫瘍退行に関与していることが示された(Manda他、Cancer Res.47:3707〜3711、1987)。累積されたデータは、TNFによる腫瘍の出血性壊死は、腫瘍内血管の内皮細胞レベルで開始されていることを示唆している(Havell他、J.Exp.Med.、167:1967〜1985、1988)。
【0028】
癌患者における、TNFの臨床研究の結果は、概して、期待はずれである(Haranaka、J.Biol.Response Mod.、7:525〜534、1988の総説)。一般的に、TNFの抗腫瘍性効果は、相当な副作用によって制限されている。TNFの副作用を制限する1つのアプローチは、TNF受容体型1に特異的な活性あるいは異なった薬力学特性を示しているTNF突然変異体の創製であった(Brouckaert他、Circ.Shock、43:185〜190、1994;Eggermont、Anticancer Res.、18:3899〜3905、1998;Lucas他、Int.J.Cancer、15:543〜549、2001)。最近、黒色腫や末肢の肉腫を患っている患者において、進展が見られた。分離灌流技術(isolation perfusion technique)によって、有意で有益な効果を得ることができる。細胞増殖抑制剤またはIFNと組み合わせて、4mgに達するTNFの極端な用量が利用される(Lienard他、J.Clin.Oncol.、10:52〜60、1992)。局部応答には、ネズミの系におけるTNF媒介抗腫瘍効果と類似する、強い炎症応答に付随した、腫瘍の急性軟化および赤色化が含まれる。
【0029】
肢部の転移性黒色腫を有する患者に対するこの処置は、腫瘍血管構造を選択的に破壊するが、静止状態の血管を無傷のままに残すことが示された。この効果は、TNFおよびIFNγによって誘発された、in vitroにおける、内皮細胞中のインテグリンαVβ3機能の抑制、ならびにin vivoでの内皮細胞アポトーシスの誘発に関連している(Ruegg他、Nature Med、4、408〜414、1998)。これらの結果は、付加的な治療薬と組み合わせた、TNFは、全身性毒性を制御できることを条件として、一部の腫瘍の治療において、臨床的に非常に効果的となりえることを証明している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
本発明では次に、インテグリンなどの、血管新生に寄与する分子は、TNFα活性を調節するが、抗癌剤としての、TNFαの臨床的使用に直接関与している可能性があることを説明する。TNFαとともに、抗血管新生剤、好ましくは、インテグリン拮抗剤を共投与すると、血管新生受容体を有する内皮細胞を、TNFのアポトーシス活性に対して、選択的に感受性とさせ、その結果、改良された腫瘍血管破壊を起こせる可能性がある。従って、この組合せ療法では、TNFの用量削減を可能とし、TNFの全身性副作用の回避が可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明は、初めて、TNFα、TNF突然変異体またはTNF様分子とともに、血管新生を妨害または抑制する薬剤を個体に投与するという、腫瘍の治療における新しい着想を記載する。場合によっては、本発明にかかる組成物は、下記により詳細に記載するように、好ましくは、細胞傷害剤、化学療法剤、ならびに、ErbB受容体チロシンキナーゼ・ファミリーの阻害剤または拮抗剤からなる群から選択される、治療上活性のある化合物をさらに含む。
【0032】
従って、本発明は、好ましい抗血管新生剤として、インテグリン(受容体)拮抗剤、ならびに、TNFα、TNF突然変異体またはTNF様分子を治療有効量含んでなる医薬組成物に関する。より具体的には、本発明は、直鎖または環状のRGDペプチドおよびTNFαを、場合によっては、IFNγと一緒に含んでなる医薬組成物に関する。本発明にかかる好ましい組成物は、環状ペプチド シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMe−Val)、TNFαおよびIFNγが含まれる。本発明によれば、前記治療的に活性のある薬剤は、1つまたは複数の抗血管新生剤、TNFα、ならびに、場合によっては、1つまたは複数の細胞傷害剤/化学療法剤/抗ErbB剤を、単一のパッケージまたは別個の容器中に含んでなる、パッケージを含む製薬キットによって、提供することもできる。
【0033】
より具体的には、本発明は、それぞれ、少なくとも、一つの分子は、血管新生阻害活性を有し、他の一つは、TNFαである、2つまたはそれ以上の分子の適用および投与からなる、組合せ療法に関する。また、本発明はさらに、抗血管新生活性およびTNFα活性を有する、単一の(融合)分子のみの、場合によっては、1つまたは複数の細胞傷害剤/化学療法剤と共に、投与することからなる、組合せ療法に関する。例えば、実質的に、TNFαに対して、直接またはリンカー分子を介して融合された、シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMe−Val)からなるタンパク質を患者に施用することができる。別の例は、そのFc部分のC末端において、TNFαと融合されている、以下に記載するLM609のような、抗インテグリン抗体である。さらなる例は、特異性の1つは、インテグリン受容体またはVEGF受容体に向けられ、もう1つは、EGF受容体に向けられる、TNFαと融合された、二重特異性抗体である。
【0034】
一般に、投与は、放射線療法を伴って行うことができ、放射線治療は、薬物投与と実質的に同時に、あるいはその前または後に行うことができる。本発明かかる組合せ療法の異なる薬剤の投与もまた、実質的に同時にあるいは順序に従って行うことができる。腫瘍の血管発生に関与する、受容体をその細胞表面に具えている腫瘍は、本発明の組合せ療法によりうまく治療することができる。
【0035】
腫瘍は、その発生および増殖のため、代替ルートを誘導することが知られている。1つの経路が阻害された場合、これらは、しばしば、他の受容体とシグナル経路とを発現および利用して、別のルートに切り替える能力を有している。従って、本発明の薬剤組合せでは、腫瘍のこのような可能な発生戦略のいくつかを妨害して、その結果、様々な利点を提供する。本発明にかかる組合せは、下により詳細に記載するように、腫瘍、腫瘍様ならびに異常増殖性疾患、および腫瘍転移の治療および防止に有用である。好ましくは、本発明の組み合わせられる、個々の薬剤は、低用量、すなわち臨床の場で従来使用されてきた用量より低い用量で、組み合わせて投与する。個体に投与される、本発明の化合物、組成物、薬剤、および療法の用量を低下させることの利点には、より高い用量に付随する副作用の影響を低下させることが含まれる。例えば、メトトレキセートなどの化学療法剤の用量を減らすことによって、より高い用量において観察されるものに比べて、嘔気および嘔吐の頻度および重篤度の軽減がもたらされる。副作用の影響を軽減させることによって、癌患者の生活の質(quality of life)の改善が図られる。副作用の影響を低下させるさらなる利点には、患者の負担の改善、副作用の治療のために必要な入院回数の減少、副作用に付随する苦痛を治療するのに必要な鎮痛剤の投与の低減が含まれる。あるいは、本発明の方法および組合せは、より高い用量では、治療効果を最大限にすることもできる。
【0036】
本発明にかかる組合せは、驚くほどの相乗効果を示す。この薬剤の組合せを投与すると、顕著な薬物の悪い反応は検出できなかったが、臨床研究中に現実の腫瘍縮小および分解が観察される。
【0037】
詳細には、本発明は、下記のものに関する:
・少なくとも(i)1つの抗血管新生剤および(ii)腫瘍壊死因子α(TNFα)またはTNFαの生物活性を有する分子を、治療有効量で、場合によっては、製薬的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤と共に含んでなる医薬組成物;
・前記抗血管新生剤は、インテグリン(受容体)阻害剤/拮抗剤またはVEGF(受容体)阻害剤/拮抗剤であることを特徴とする、対応の医薬組成物;
・前記インテグリン受容体阻害剤/拮抗剤は、RGD含有の直鎖または環状のペプチドであることを特徴とする、対応の医薬組成物;
・前記RGD含有ペプチドは、シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)であることを特徴とする、対応の医薬組成物;
・前記抗血管新生剤は、インテグリン受容体またはVEGF受容体と結合する、抗体あるいは免疫療法的に活性なその断片であることを特徴とする、対応の医薬組成物;
・前記抗血管新生剤とTNFαとが連結されて、1つの融合分子を形成することを特徴とする、対応の医薬組成物;
・少なくとも1つの細胞傷害剤およびまたは化学療法剤をさらに含むことを特徴とする、対応の医薬組成物;
・前記細胞傷害剤は、インターフェロン・ガンマ(IFNγ)および/または別の効果的なサイトカインであることを特徴とする、対応の医薬組成物;
・前記化学療法化合物は、シスプラチン、ドキソルビシン、ゲムシタビン、ドセタキセル、パクリタキセル(タキソール)、ブレオマイシンからなる群から選択されることを特徴とする、対応の医薬組成物;
・ErbB受容体チロシンキナーゼ・ファミリーの阻害剤または拮抗剤をさらに含むことを特徴とする、対応の医薬組成物;
・前記阻害剤は、抗EGFR抗体、抗HER−2抗体あるいは免疫療法的に活性なその断片であることを特徴とする、対応の医薬組成物;
・(i)少なくとも1つの抗血管新生剤、好ましくはインテグリン受容体阻害剤/拮抗剤、(ii)TNFα、ならびに、場合によっては、(iii)さらに細胞傷害剤および/または化学療法剤を含んでなるパッケージからなる製薬キット;
・(i)シクロ(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)、(ii)TNFα、および(iii)IFNγ、ならびに、場合によっては、(iii)さらなる細胞傷害剤および/または化学療法剤および/またはErbB受容体チロシンキナーゼ・ファミリーの阻害剤または拮抗剤を含んでなる、対応の好ましい製薬キット;
・前記製薬的に活性な薬剤は、前記パッケージ中において、個別の容器内で提供されることを特徴とする、対応の製薬キット;
・腫瘍および腫瘍転移を治療するための医薬または医薬組成物の製造における、特許請求の範囲中、ならびに上に定義されている医薬組成物の使用;ならびに
・上に定義されている、治療的に有効な医薬組成物を、同時にまたは順序に従って、個体に投与することを含む、個体中における腫瘍または腫瘍転移を治療する方法。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1a】HUVEC球状体の形成および生存は、インテグリン・ライゲーションを必要としない。(a)阻害性の抗VEカドヘリン(75)mAbまたはCa2+欠乏(EDTA、EDTA/Ca2+)は、HUVEC球状体の形成を阻害したが、インテグリンα1(Lia1/2)、α5(SAM−1)、αVβ3(LM609)およびPECAM−1(10D9)やRGDペプチドに対する阻害性mAbは、阻害しなかった。
【図1b】(b)生存度。球状体(○)またはフィブロネクチン(●)培養物から回収されたHUVECは、類似の生存プロフィールを有していた。
【図2a】インテグリン依存性接着は、HUVECをTNF誘発性アポトーシスから保護する。(a)YoPro−1の取り込み:TNF(T)およびTNF/IFNγ(TI)への暴露は、フィブロネクチン接着性HUVEC中でYoPro−1染色を誘発しなかったが、HUVEC球状体中では、強いYoPro−1染色を引き起こし、カスパーゼ阻害剤BOCおよびZVADにより抑制された。TNF±IFNγ(TI)。C、非処理の培養物
【図2b】(b)TNF/IFNγで処理した(TI)球状体における、ウェスタン・ブロッティングによる、カスパーゼ−3の活性化とPARPの切断(矢印)を示し、しかし、フィブロネクチン接着性HUVEC中では生じていない。C、非処理の培養物。
【図2c】(c)TNF(■)、TNF/IFNγ(▲)、対照培地(○)に暴露させた、HUVECの生存度曲線である。
【図2d】(d)TNF(■)、TNF/IFNγ(▲)、対照培地(○)に暴露させた、HUVECの生存度曲線である。
【図2e】(e)α1(△/▲)、αVβ3(□/■)、α4インテグリン(○/●)に対する特異的な固定化抗体(imAbs)上で、TNF/IFNγの非存在下(中空記号)または存在下(中実記号)で培養したHUVECの生存度である。
【図3a】TNF誘発性のNF−κB活性化はインテグリン・ライゲーションを必要としない。(a)ウエスタン・ブロットおよび(b)電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)は、TNF/IFNγに暴露させた球状体ならびにフィブロネクチン接着性HUVECにおける、I−κBリン酸化(Pi−κB)、I−κB分解(I−κB)およびNF−κB核移行(EMSA)の平行した動態を示す。
【図3b】(a)ウエスタン・ブロットおよび(b)電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)は、TNF/IFNγに暴露させた球状体ならびにフィブロネクチン接着性HUVECにおける、I−κBリン酸化(Pi−κB)、I−κB分解(I−κB)およびNF−κB核移行(EMSA)の平行した動態を示す。
【図3c】(c)TNF(−−−)またはTNF/IFNγ(−)に暴露させたフィブロネクチンおよび球状体HUVEC培養物上における、ICAM−1の細胞表面発現の、同一の誘導を示すフロー・サイトメトリー解析。(...)非処理の細胞。PECAM−1の発現を、対照として示す。
【図4a】Aktの活性化は、HUVECの生存に必須であり、インテグリン・ライゲーションを要する。(a)表示の時間、TNF/IFNγで刺激したフィブロネクチン接着性および球状体HUVECの培養物中のリン酸化Akt(Pi−Akt)および全Akt(Akt)。
【図4b】(b)左パネル:PI−3キナーゼ阻害剤ワートマニン(W)およびLY294002(LY)は、フィブロネクチン接着性HUVECをTNF(T)およびTNF/IFNγ(TI)誘発性アポトーシスに対して、感受性とさせた。死亡細胞を、YoPro−1染色によって可視化した。右パネル:LY294002(●)、TNF/IFNγ(△)、LY294002/TNF/IFNγ(▲)に曝した、フィブロネクチン接着性HUVECの生存曲線である。(○)、非処理培養物。
【図4c】(c)構成的に活性な、PI−3キナーゼ(p110*)およびAkt(Aktmp)は、TNF(●)またはTNF/IFNγ(▲)に曝した球状体の生存を促進したが、野生型Akt(Aktwt)または対照プラスミド(pBS)は促進しなかった。(○)非処理の培養物。挿入は、形質移入された細胞のEGFP蛍光のフロー・サイトメトリー解析を示す(%陽性細胞)。
【図4d】(d)対照プラスミド(pBS)または構成的に活性のあるAkt(Akt*)を用いて電気穿孔し、AdΔNI−κBまたはAdLacZで感染させたHUVECを、TNF(T)またはTNF/IFNγ(TI)の存在下、あるいは非存在下(C)において、フィブロネクチン接着性単層または球状体として、培養した。アポトーシス細胞を、YoPro−1染色によって検出した。生存しているフィブロネクチン接着性細胞は、クリスタル・バイオレットによって染色した。
【図4e】(e)対照プラスミド(中空記号)およびpAktmp(中実記号)を用いて電気穿孔し、AdΔNI−κB(○/●)またはAdLacZ(△/▲)で感染させたHUVECをフィブロネクチン上、段階的な濃度のTNFの存在下で培養し、生存している接着細胞を、クリスタル・バイオレットで染色したウェルのO.D.を測定することによって決定した。
【図4f】(f)非処理のHUVEC(...)、ならびにTNF(−−−)およびTNF/LY294002(−)で処置したHUVEC中(左パネル)、ならびにTNF(−−−)およびTNF/IFNγ(−)に曝した、AdΔNI−κB(中央パネル)またはAdLacZで感染させたHUVEC中における、ICAM−1発現のフロー・サイトメトリー解析。
【図5a】(a〜c)表示した時間、TNF/IFNγに曝した、フィブロネクチンならびに球状体HUVEC培養物中における、Pi−Akt、MDM2、p53、Pi−FKHR/FRKHL1(a)、およびPi−MEK、Pi−p38、Pi−JNK(b)、およびPi−ERK(c)のウエスタン・ブロット分析。全Akt、FKHR、MEK、p38、ERK、およびJNKタンパク質は、等量の全タンパク質を証明するため、示されている。球状体培養物は、フィブロネクチン接着性細胞に比べて、TNF/IFNγへの応答において、AktおよびFKHR/FKRL1のリン酸化の欠乏、増大したレベルのp53、およびMEK、p38、ERK、JNKのリン酸化の増強を有する。
【図5b】(a〜c)表示した時間、TNF/IFNγに曝した、フィブロネクチンならびに球状体HUVEC培養物中における、Pi−Akt、MDM2、p53、Pi−FKHR/FRKHL1(a)、およびPi−MEK、Pi−p38、Pi−JNK(b)、およびPi−ERK(c)のウエスタン・ブロット分析。全Akt、FKHR、MEK、p38、ERK、およびJNKタンパク質は、等量の全タンパク質を証明するため、示されている。球状体培養物は、フィブロネクチン接着性細胞に比べて、TNF/IFNγへの応答において、AktおよびFKHR/FKRL1のリン酸化の欠乏、増大したレベルのp53、およびMEK、p38、ERK、JNKのリン酸化の増強を有する。
【図5c】(a〜c)表示した時間、TNF/IFNγに曝した、フィブロネクチンならびに球状体HUVEC培養物中における、Pi−Akt、MDM2、p53、Pi−FKHR/FRKHL1(a)、およびPi−MEK、Pi−p38、Pi−JNK(b)、およびPi−ERK(c)のウエスタン・ブロット分析。全Akt、FKHR、MEK、p38、ERK、およびJNKタンパク質は、等量の全タンパク質を証明するため、示されている。球状体培養物は、フィブロネクチン接着性細胞に比べて、TNF/IFNγへの応答において、AktおよびFKHR/FKRL1のリン酸化の欠乏、増大したレベルのp53、およびMEK、p38、ERK、JNKのリン酸化の増強を有する。
【図6a】低下したインテグリン・ライゲーションは、in vitroでTNFの細胞傷害を増強させる。(a)フィブロネクチンまたはPLL上で16時間、TNF(T)またはTNF/IFNγ(TI)の存在下、あるいは非存在下(C)、HUVECを培養する。アポトーシスおよび生存の接着性細胞を、それぞれ、YoPro−1およびクリスタル・バイオレット染色により明らかにした。
【図6b】(b)EMD121974は、αVβ3媒介のHUVECのゼラチンへの接着(■)を破壊したが、α5β1/αVβ3に媒介されたフィブロネクチンへの接着のα5β1成分(●)では、これは起こらなかった。対照ペプチドEMD135981は、効果がなかった(中空記号)。
【図6c】(c)HUVECをフィブロネクチン上で、表示するように、TNF/IFNγ(TI)、EMD121974、EMD135981の存在下、または非存在下(C)に培養した。アポトーシスおよび接着細胞は、それぞれ、YoPro−1染色および対比顕微鏡観察によって明らかにした。
【図6d】(d)パネルcの実験におけるHUVECの生存曲線。ペプチドなし(○/●);EMD121974(△/▲);EMD135981(□/■)。非処理培養物、中空記号。TNF/IFNγで処置した培養物、中実記号。
【図6e】(e)Aktmp(中空記号)またはpBS(中実記号)を用いて電気穿孔し、フィブロネクチン上で培養し、そのまま、(○/●)、またはEMD121974(△/▲)、EMD135981(□/■)ペプチドの存在下において、TNF/IFNγに曝したのHUVECの生存曲線を示す。Aktmpは、EMD121974とTNF/IFNγとの組合せ治療によって誘発された細胞死を防止した。
【図7】インテグリン・ライゲーションの減少は、in vivoでのTNF細胞傷害を増強させる。BN−175同系軟組織肉腫を保有するBNラットを、ILP技術によってEMD121974(□)、TNF(△)、EMD121974/TNF(■)を用いて治療した。(○)偽治療のラット。ILP後の6日間腫瘍の増殖を測定した。結果は、腫瘍体積の平均±平均値の標準誤差(n=6)を表す。同系軟組織肉腫BN−175の小さな断片を雄MNラットの右後肢に移植し、直径が12〜14mmに達した時に治療を開始した(Manusama他、Oncol.Rep.、6、173〜177、1999)。大腿動脈および静脈をシラスチック・チューブを用いてカニューレ処置し、圧迫帯を用いて側肢を閉塞させた。30分間、5mlのHeamaccel(登録商標)(2.4ml/分)を用いて灌流を実施し、薬剤は大量瞬時投与として加えた(EMD121974、500μg、灌流液での最終濃度170μM;TNF、50μg)。灌流液に酸素添加し、肢を暖かいマットレス上で38〜39℃に保った。EMD121974を用いて灌流したラットには、ILPの2時間前および3時間後にペプチドの全身投与も受けさせた(100mg/kg、腹腔内)。カリパー測定によって腫瘍の直径を2方向で測定し、腫瘍体積(V)を計算した(V=0.4)(A2×B、式中Bはより長い直径、AはBに垂直な直径)。各グループ6匹のラットを治療した。局所的および全身性の副作用を、記載のように評価した(Manusama他、Oncol.Rep.、6、173〜177、1999)。
【図8】インテグリン・ライゲーションの低下はin vitroでTNF、TRAIL、およびFasL誘発性細胞傷害を増強させる。HUVECを終夜、フィブロネクチンでコーティングしたマイクロタイタープレート上で、EMD121974(300μM)、TNF(200ng/ml)、FasL(200ng/ml)、TRAIL(200ng/ml)、LIGHT(200ng/ml)、IFNγ(330ng/ml)の存在下、または存在させずに、指示どおり培養した。生存度はMSTアッセイによって評価した。
【発明を実施するための形態】
【0039】
別段に指示しない限り、本発明中で使用される用語および表現は、以下に与える意味および定義を有する。さらに、これらの定義および意味は、本発明、含まれる、好ましい態様をより詳細に説明する。
【0040】
「生体分子」には、原則として、約300より大きい分子量を有する、天然または合成された分子が含まれ、好ましくは、ポリ−およびオリゴ糖類、オリゴ−およびポリペプチド、タンパク質、ペプチド、ポリ−およびオリゴヌクレオチド、ならびにそれらのグリコシル化された脂質誘導体である。最も典型的には、生体分子には、免疫療法薬剤、上記の全ての抗体またはその断片、あるいは、融合タンパク質を含む、これら抗体または断片の機能的な誘導体断片が含まれる。
【0041】
「受容体」または「受容体分子」とは、リガンドが結合して、受容体−リガンド複合体を形成する、1つまたは複数のドメインを含んでなる、可溶性または膜結合型/連結型のタンパク質あるいは糖タンパク質である。受容体の作用剤または拮抗剤である可能性のある、リガンドと結合することで、該受容体は、活性化または不活性化され、信号伝達の経路を開始あるいは妨害する可能性がある。
【0042】
「リガンド」または「受容体リガンド」とは、受容体分子と結合して、受容体−リガンド複合体を形成する、天然または合成の化合物を意味する。リガンドの用語は、作用剤、拮抗剤、ならびに、部分的な作用剤/拮抗剤作用を有する化合物を含む。本発明の具体的な分野によると、この用語には、特に、TNF様リガンドが含まれる。
【0043】
本明細書中で使用する用語「TNFα」は、具体的に限定されていなければ、天然および合成の、ペプチド性または非ペプチド性のTNF突然変異体、変異体またはTNF様リガンドを含む、全ての種類のTNF分子ならびにTNFαの生物活性を有する分子を含む。好ましくは、この用語は、天然のペプチド性TNFαを意味する。
【0044】
「作用剤」または「受容体作用剤」とは、前記受容体および受容体−作用剤複合体を活性化させることによって、それぞれ、信号伝達の経路ならびにさらなる生体プロセスを開始させる、受容体と結合して、受容体−作用剤複合体を形成する、天然または合成の化合物である。
【0045】
「拮抗剤」または「受容体拮抗剤」とは、作用剤と反対の生物学的効果を有する天然または合成化合物を意味する。拮抗剤は、受容体と結合して、受容体に対する作用剤と競合することによって、受容体作用剤の作用を妨害する。拮抗剤は、作用剤の作用を妨害するその能力によって、定義される。受容体拮抗剤は、抗体や免疫療法上有効なその断片であってもよい。本発明にかかる、好ましい拮抗剤は、以下に列挙し、論じる。
【0046】
用語「治療上有効」または「治療有効量」とは、哺乳動物中の疾患または傷害を治療するのに有効な薬物の量をいう。癌の場合、薬物の治療有効量は、癌細胞の数を減らす、腫瘍の大きさを縮小させる、癌細胞の末梢組織への浸潤を阻害する(すなわち、ある程度まで減速させ、好ましくは停止させる)、腫瘍転移を阻害する(すなわち、ある程度まで減速させ、好ましくは停止させる)、ある程度まで腫瘍増殖を阻害する、および/または癌に付随する1つまたは複数の症状をある程度まで軽減させることができる。この薬物が、存在する癌細胞の増殖を阻止かつ/または死滅させる限り、これは、細胞増殖抑制的および/または細胞傷害性であるあってもよい。癌の療法では、有効性は、例えば、疾病の進行までの時間(TTP)の評価、および/または応答速度(RR)の決定により、測定することができる。
【0047】
用語「免疫療法上効果的」とは、哺乳動物内で免疫応答を引き起こす生物学的分子をいう。より具体的には、この用語は、抗原を認識して結合することができる分子をいう。通常は、その抗原結合部位(相補性決定領域、CDR)を含む抗体、抗体断片、および抗体融合タンパク質は、免疫療法上効果的である。
【0048】
本出願中で使用する用語「プロドラッグ」とは、親薬物に比べて、腫瘍細胞に対する細胞傷害性は低いが、酵素的に活性化されるまたはより活性のある親の形態へと変換され得る、製薬的に活性な物質の前駆体または誘導体形態を意味する(例えば、「Prodrugs in Cancer Chemotherapy」、Biochemical Society Transactions、14、ページ375〜382、615th Meeting Belfast、1986参照)。
【0049】
「抗血管新生剤」とは、血管の発生を妨害する、またはある程度まで妨げる、天然または合成化合物をいう。抗血管新生分子は、例えば、血管新生増殖因子または増殖因子受容体に結合して、妨害する生物学的分子であってもよい。本明細書中において、好ましい抗血管新生分子は、受容体、好ましくは、インテグリン受容体またはVEGF受容体に結合する。本発明によれば、この用語は、前記血管新生剤のプロドラッグも含む。
【0050】
抗血管新生特性を発揮する、異なる構造および起源を有する多くの分子が存在する。本発明に適した、血管新生阻害または妨害剤の最も適切なクラスは、例えば、以下のものある。
(i)抗有糸分裂剤:フルロウラシル、マイトマイシン−C、タキソールなど;
(ii)エストロゲン代謝産物:2−メトキシエストラジオールなど;
(iii)マトリックス・メタロプロテイナーゼ(MMP)阻害剤:亜鉛メタロプロテイナーゼ(メタロプロテアーゼ)(例えば、ベチマスタット(betimastat)、BB16、TIMP類、ミノサイクリン、GM6001)を阻害するもの、あるいは「Inhibition of Matrix Metalloproteinases:Therapeutic Applications」(Golub、Annals of the New York Academy of Science、第878a巻、Greenwald、Zucker(編集)、1999)に記載のもの;
(iv)抗血管新生性多機能薬剤および因子:IFNα(米国特許第4,530,901号、米国特許第4,503,035号、米国特許第5,231,176号);アンギオスタチンおよびプラスミノーゲン断片(例えば、クリングル1−4、クリングル5、クリングル3(O’Reilly、M.S.他、Cell(マサチューセッツ州ケインブリッジ)、79(2):315〜328、1994;Cao他、J.Biol.Chem.、271:29461〜29467、1996;Cao他、J.Biol.Chem、272:22924〜22928、1997);エンドスタチン(O’Reilly,M.S.他、Cell、88(2)、277、1997および国際公開公報WO 97/15666号);トロンボスポンジン(TSP−1;Frazier、1991、Curr Opin Cell Biol、3(5):792);血小板因子4(PF4)など;
(v)プラスミノーゲン活性化剤/ウロキナーゼ阻害剤
(vi)ウロキナーゼ受容体拮抗剤
(vii)ヘパリナーゼ
(viii)フマギリン類似体:TNP−470など;
(ix)チロシンキナーゼ阻害剤:SUI01など(上および下に述べるErbB受容体拮抗剤(EGFR/HER2拮抗剤)の多くも、チロシンキナーゼ阻害剤であり、従って、腫瘍増殖の阻害をもたらす抗EGF受容体阻害活性と同様に、血管および内皮細胞の発生の阻害をもたらす、抗血管形新生活性をも示す可能性がある);
(x)スラミンおよびスラミン類似体
(xi)血管新生抑制性ステロイド
(xii)VEGFおよびbFGF拮抗剤
(xiii)VEGF受容体拮抗剤:抗VEGF受容体抗体(DC−101)など;
(xiv)flk−1およびflt−1拮抗剤
(xv)シクロオキシゲナーゼ−II阻害剤:COX−IIなど;
(xvi)インテグリン拮抗剤およびインテグリン受容体拮抗剤:αv拮抗剤およびαv受容体拮抗剤、例えば、抗αv受容体抗体およびRGDペプチドなど。本発明によれば、インテグリン(受容体)拮抗剤が好ましい。
【0051】
用語「インテグリン拮抗剤/阻害剤」または「インテグリン受容体拮抗剤/阻害剤」とは、インテグリン受容体を妨害および阻害する、天然または合成分子をいう。ある場合には、この用語には、前記インテグリン受容体のリガンドに対する拮抗剤を含む(例えば、αVβ3に対しては:ビトロネクチン、フィブリン、フィブリノーゲン、フォンウィルブランド因子、トロンボスポンジン、ラミニン、αVβ5に対しては:ビトロネクチン、αVβ1に対しては:フィブロネクチンおよびビトロネクチン、αVβ6に対しては:フィブロネクチン)。
【0052】
本発明によれば、インテグリン受容体に対する拮抗剤が好ましい。インテグリン(受容体)拮抗剤は、天然または合成ペプチド、非ペプチド、ペプチド擬態、免疫グロブリン、抗体やその機能的断片などの、あるいは、免疫複合体(融合タンパク質)であってよい。
【0053】
本発明の好ましいインテグリン阻害剤は、αVインテグリン(例えば、αVβ3、αVβ5、αVβ6、およびサブクラス)受容体に対するものである。好ましいインテグリン阻害剤は、αV拮抗剤、特に、αVβ3拮抗剤である。本発明にかかるαV拮抗剤は、RGDペプチド、ペプチド擬態(非ペプチド)拮抗剤、およびαV受容体を阻害する抗体などの、抗インテグリン受容体抗体である。
【0054】
例示すれは、非免疫性αVβ3拮抗剤は、米国特許第5,753,230号および米国特許第5,766,591号の教示に記載されている。好ましい拮抗剤は、直鎖および環状のRGD含有ペプチドである。環状ペプチドは、一般的に、より安定であり、延長された血清半減期を発揮する。しかし、本発明の最も好ましいインテグリン拮抗剤は、インテグリンαVβ3、αVβ1、αVβ6、αVβ8、αIIbβ3の阻害に効果的である、シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)(EMD121974、Cilengitide(登録商標)、Merck KgaA、ドイツ;ヨーロッパ特許第0770 622号)である。
【0055】
αVβ3/αVβ5/αVβ6インテグリン受容体の適切なペプチド型およびペプチド擬態(非ペプチド)拮抗剤は、科学文献ならびに特許文献のいずれかに記載されている。例えば、HoekstraおよびPoulter、1998、Curr.Med.Chem.、5、195;国際公開 WO 95/32710号;国際公開 WO 95/37655号;国際公開 WO 97/01540号;国際公開 WO 97/37655号;国際公開 WO 97/45137号;国際公開 WO 97/41844号;国際公開 WO 98/08840号;国際公開 WO 98/18460号;国際公開 WO 98/18461号;国際公開 WO 98/25892号;国際公開 WO 98/31359号;国際公開 WO 98/30542号;国際公開 WO 99/15506号;国際公開 WO 99/15507号;国際公開 WO 99/31061号;国際公開 WO 00/06169号パンフレット;ヨーロッパ特許第0853 084号;ヨーロッパ特許第0854 140号;ヨーロッパ特許第0854 145号;米国特許第5,780,426号;および米国特許第6,048,861号を参照する。また、本発明中での使用に適する、ベンズアゼピン、ならびに、関連するベンゾジアゼピンおよびベンゾシクロヘプテンαVβ3インテグリン受容体拮抗剤を開示する特許には、国際公開 WO 96/00574号、国際公開 WO 96/00730号、国際公開 WO 96/06087号、国際公開 WO 96/26190号、国際公開 WO 97/24119号、国際公開 WO 97/24122号、国際公開 WO 97/24124号、国際公開 WO 98/15278号、国際公開 WO 99/05107号、国際公開 WO 99/06049号、国際公開 WO 99/15170号、国際公開 WO 99/15178号、国際公開 WO 97/34865号、国際公開 WO 97/01540号、国際公開 WO 98/30542号、国際公開 WO 99/11626号、および国際公開 WO 99/15508号パンフレットが含まれる。主鎖の立体的な環状パッキングを特徴とする他のインテグリン受容体拮抗剤は、国際公開 WO 98/08840号;国際公開 WO 99/30709号;国際公開 WO 99/30713号;国際公開 WO 99/31099号;国際公開 WO 00/09503号パンフレット;米国特許第5,919,792号;米国特許第5,925,655号;米国特許第5,981,546号;および米国特許第6,017,926号に開示されている。米国特許第6,048,861号および国際公開 WO 00/72801号パンフレットには、強力なαVβ3インテグリン受容体拮抗剤である、一連のノナン酸誘導体が開示されている。他の化学的な低分子インテグリン拮抗剤(ほとんどは、ビトロネクチン拮抗剤)は、国際公開 WO 00/38665号パンフレットに記載されている。他のαVβ3受容体拮抗剤は、血管新生の阻害に効果的であることが示された。例えば、合成受容体拮抗剤、(S)−10,11−ジヒドロ−3−[3−(ピリジン−2−イルアミノ)−1−プロピロキシ]−5H−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−10−酢酸(SB−265123として知られる)は、様々な哺乳動物モデルシステムで試験されてきた(Keenan他、1998、Bioorg.Med.Chem.Lett.、8(22)、3171;Ward他、1999、Drug Metab.Dispos.、27(11)、1232)。拮抗剤として使用するのに適したインテグリン拮抗剤を同定するためのアッセイは、例えば、Smith他、1990、J.Biol.Chem.、265、12267、および参照されている特許文献中に記載されている。
【0056】
抗インテグリン受容体抗体も、よく知られている。適切な抗インテグリン(例えば、αVβ3、αVβ5、αVβ6)モノクローナル抗体は、F(ab)2、F(ab)、および遺伝子操作したFvや一本鎖抗体などを含む、その抗原結合断片を含むように改変することができる。インテグリン受容体αVβ3に対する、適切な、好んで使用されるモノクローナル抗体の1つは、LM609と同定された(Brooks他、1994、Cell、79、1157;ATCC HB9537)。強力な特異的抗αVβ5抗体、P1F6は、やはり本発明によって好ましく、国際公開 WO 97/45447号パンフレットに開示されている。さらなる、適切なαVβ6選択的抗体は、MAb14D9.F8(国際公開 WO 99/37683号、DSM ACC2331、Merck KGaA、ドイツ)、ならびにインテグリン受容体のαV鎖に選択的に向けられる、MAb17.E6(ヨーロッパ特許第0719 859、DSM ACC2160、Merck KGaA)である。別の適切な抗インテグリン抗体は、商品化されている、Vitraxin(登録商標)である。
【0057】
「血管新生増殖因子または増殖因子受容体」とは、その活性化によって血管の増殖および発生を促進する因子または受容体である。通常、血管内皮増殖因子(VEGF)およびその受容体がこの群に属する。
【0058】
本明細書中の用語「抗体」または「免疫グロブリン」は、最も広い意味で使用され、具体的には、完全な抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2つの完全型抗体から作製された多特異的抗体(例えば、二重特異的抗体)、および、所望する生物学的活性を示す限り、抗体断片をもカバーする。この用語は一般的に、2つまたはそれ以上の抗体から構成されるヘテロ抗体や、互いに連結された、異なる結合特異性のその断片を含む。
【0059】
定常領域のアミノ酸配列に応じて、完全型の抗体は、様々な「抗体(免疫グロブリン)クラス」に帰属させることができる。
【0060】
完全型の抗体には、5つの主要なクラス、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMがあり、これらのいくつかは、「サブクラス」(イソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、およびIgA2にさらに区分することができる。抗体の様々なクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γ、およびμと呼ばれている。本発明にかかる、好ましい主要な抗体クラスは、IgG、より詳細には、IgG1とIgG2である。
【0061】
抗体は、通常、分子量約150,000の糖タンパク質で、2つの同一の軽(L)鎖および2つの同一の重(H)鎖で構成される。各軽鎖は、1つのジスルフィド共有結合によって、重鎖と連結されているが、ジスルフィド連結の数は、様々な免疫グロブリンのイソタイプの重鎖の間で異なる。各重鎖および軽鎖はまた、一定の間隔を有する鎖内ジスルフィド架橋を有する。各重鎖は、一端に可変ドメイン(VH)を有し、いくつかの定常ドメインがそれに続く。各軽鎖は、一端に可変ドメイン(VL)を有し、他端に定常ドメインを有する。軽鎖の定常ドメインは、重鎖の第1定常ドメインと整列しており、軽鎖の可変ドメインは重鎖の可変ドメインと整列している。特定のアミノ酸残基が軽鎖および重鎖の可変ドメインの間で境界面を形成すると考えられている。任意の脊椎動物由来の抗体の「軽鎖」を、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)およびラムダ(λ)と呼ばれている2つの明確に異なるタイプの一方に帰属することができる。
【0062】
本明細書中で使用する用語「モノクローナル抗体」とは、実質的に同種な抗体の集団をいう。すなわち、集団を構成する個々の抗体は、少量存在する可能性がある、自然に存在する突然変異を除けば、同一である。モノクローナル抗体は、単一の抗原部位に向けられているので、高度に特異的である。
【0063】
さらに、様々な決定基(エピトープ)に対する様々な抗体を含むポリクローナル抗体の調製物とは異なり、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に向けられている。その特異性に加えて、モノクローナル抗体は、他の抗体に汚染されることなく合成することができるという点で有利である。モノクローナル抗体を作製する方法には、KohlerおよびMilstein(1975、Nature、256、495)、ならびに「Monoclonal Antibody Technology, The Production and Characterization of Rodent and Human Hybridomas」(1985、Burdon他、編集、Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology、第13巻、Elsevier Science Publishers、アムステルダム)に記載される、ハイブリドーマ法が含まれ、または周知の組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号参照)によって作製することができる。モノクローナル抗体はまた、例えば、Clackson他、Nature、352:624〜628、1991、およびMarks他、J.Mol.Biol.、222:58、1〜597、1991に記載されている手法を使用して、ファージ抗体ライブラリから単離することもできる。
【0064】
用語「キメラ抗体」とは、重鎖および/または軽鎖の一部は、特定の種由来の抗体内の、対応する配列に同一または相同的、あるいは特定の抗体クラスまたはサブクラスに属すが、鎖の残りは、別の種由来の抗体内の、対応する配列に同一または相同的、あるいは別の抗体クラスまたはサブクラスに属している抗体、ならびに、所望する生物学的活性を示す限り、かかる抗体の断片を意味する(例えば、米国特許第4,816,567号;Morrison他、Proc.Nat.Acad.Sci.USA、81:6851〜6855、1984)。
【0065】
キメラ抗体およびヒト化抗体を作製する方法も、当分野で周知である。例えば、キメラ抗体を作製する方法には、Boss(Celltech)およびCabilly(Genentech)(米国特許第4,816,397号;米国特許第4,816,567号)による特許に記載されているものを含む。
【0066】
「ヒト化抗体」とは、非ヒト免疫グロブリンに由来する配列を最小限含む、非ヒト(例えば、げっ歯類)キメラ抗体の形態である。たいていは、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変性領域(CDR)由来の残基を、マウス、ラット、ウサギ、または所望の特異性、親和性、能力を有する、ヒトでない霊長類など非ヒト種(ドナー抗体)の超可変領域(CDR)由来の残基で置き換えられている、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。ある場合には、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基が、対応する非ヒト残基によって置き換えられる。
【0067】
さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体またはドナー抗体内には見つからない残基を含むこともできる。これらの改変は、抗体性能がさらに洗練されるように行う。一般的に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、通常は2つの可変領域の全体を実質的に含み、その内、超可変性のループの全体または実質上全体が非ヒト免疫グロブリンのそれに対応し、FRの全体または実質上全体がヒト免疫グロブリン配列のものである。ヒト化抗体は、場合によっては、免疫グロブリン、通常はヒト免疫グロブリンの定常領域(Fc)の少なくとも一部も含む。ヒト化抗体を作製する方法は、例えば、Winter(米国特許第5,225,539号)およびBoss(Celltech、米国特許第4,816,397号)に記載されている。
【0068】
用語「可変」または「FR」とは、可変ドメインの特定部分の配列は、抗体間で大幅に異なっており、特定の抗原に対する、特定の抗体夫々の結合および特異性に利用されている事実をいう。
【0069】
しかし、可変性は、抗体の可変ドメイン内に均等に分布しているわけではない。それは、軽鎖ならびに重鎖の可変ドメイン中の双方にある、超可変領域と呼ばれる3つのセグメント内に集中している。可変ドメインのより高度に保存されている部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。
【0070】
天然の重鎖および軽鎖の可変ドメインは、それぞれ、βシート構造を連結するループを形成する、またはある場合にはβシート構造の一部を形成する、3つの超可変領域によって連結されている、概ねβシート立体配置を採っている、4つのFR(FR1〜FR4)を含む。各鎖の超可変領域は、FRによって、緊密にホールディングされており、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat他、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service、National Institutes of Health、メリーランド州ベセズダ、1991)。
【0071】
定常ドメインは、抗体を抗原に結合するのに直接関与していないが、抗体依存性細胞傷害(ADCC)における抗体の関与など様々な効果機能を示す。
【0072】
本明細書中で使用する場合の用語「超可変領域」または「CDR」とは、抗原結合を担っている、抗体中のアミノ酸残基をいう。
【0073】
超可変領域は一般的に、「相補性決定領域」または「CDR」由来のアミノ酸残基(例えば、軽鎖可変ドメイン内の残基24〜34(L1)、50〜56(L2)、89〜97(L3)、および重鎖可変ドメイン内の残基31〜35(H1)、50〜65(H2)、95〜102(H3))、および/または「超可変ループ」由来のアミノ酸残基(例えば、軽鎖可変ドメイン内の残基26〜32(L1)、50〜52(L2)、91〜96(L3)および重鎖可変ドメイン内の残基26〜32(H1)、53〜55(H2)、96〜101(H3)、ChothiaおよびLesk、J.Mol.Biol.、196:901〜917、1987)を含む。
【0074】
「フレームワーク領域」または「FR」残基とは、本明細書中で定義した超可変領域残基以外の可変ドメインの残基である。
【0075】
「抗体断片」は、好ましくは、その抗原結合領域または可変領域を含んでいる、完全型の抗体の一部を含んでなる。抗体断片の例には、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、Fcの断片、二重抗体、直鎖抗体、単鎖抗体分子、および抗体断片から作成された多重特異性抗体が含まれる。「完全型」の抗体は、抗原結合可変領域のみならず、軽鎖定常ドメイン(CL)および重鎖定常ドメイン、CH1、CH2、CH3を含む抗体である。好ましくは、完全型の抗体は1つまたは複数のエフェクター機能を有する。
【0076】
抗体をパパイン消化すると、「Fab」断片と呼ばれる、それぞれが単一の抗原結合部位とCLおよびCH1領域とを含む2つの同一の抗原結合断片、ならびに容易に結晶化する能力が命名に反映されている残留「Fc」断片を含む断片が生成される。
【0077】
抗体の「Fc」領域は、原則として、CH2、CH3、およびIgG1またはIgG2抗体主要クラスのヒンジ領域を含む。ヒンジ領域とは、CH1領域をCH2〜CH3領域に結合させる約15アミノ酸残基の群である。
【0078】
ペプシン処理により、2つの抗原結合部位を有し、依然として抗原と交差結合することができる「F(ab’)2」断片が得られる。「Fv」は、完全な抗原認識および抗原結合部位を含む最小抗原断片である。この領域は、1つの重鎖と1つの軽鎖可変ドメインとが、密な非共有結合をしている二量体からなる。それは、各可変ドメインの3つの超可変領域(CDR)が相互作用して、VH−VL二量体の表面の抗原結合部位を定義する、立体配置をとっている。集合的に、6つの超可変領域は、抗体に抗原結合特異性を与える。しかし、単一の可変ドメイン(または、抗原に特異的な3つの超可変領域のみを含んでなる、Fvの半分)は、全結合部位に比べて、低い親和性ではあるものの、抗原を認識して結合する能力を有している。Fab断片はまた、軽鎖の定常ドメインおよび重鎖の第1定常ドメイン(CH1)も含む。「Fab’」断片は、重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端に、抗体ヒンジ領域由来の1つまたは複数のシステインを含む、いくつかの残基の付加がある点で、Fab断片と異なっている。F(ab’)2抗体は、最初、その間にシステイン・ヒンジを有するFab’断片の対として生成された。抗体断片の他の化学的カップリング法も知られている(例えば、Hermanson、Bioconjugate Techniques、Academic Press、1996;米国特許第4,342,566号参照)。
【0079】
「一本鎖Fv」または「scFv」抗体断片は、抗体のVHとVLのドメインを含んでなり、これらドメインは、単一ポリペプチド鎖として存在している。好ましくは、Fvポリペプチドは、VHおよびVLドメインの間に、抗原結合に所望される構造をscFvが形成することを可能にするポリペプチドリンカーをさらに含む。一本鎖FV抗体は、例えば、Pluckthun(The Pharmacology of Monoclonal Antibodies、第113巻、RosenburgおよびMoore編、Springer−Verlag、ニューヨーク、ページ269〜315、1994)、国際公開 WO 93/16185号、米国特許第5,571,894号、米国特許第5,587,458号、Huston他(1988、Proc.Natl.Acad.Sci.、85、5879)またはSkerraおよびPlueckthun(1988、Science、240、1038)から知られている。
【0080】
用語「二重抗体」とは、2つの抗原結合部位を有する小さな抗体断片をいい、断片は、同一ポリペプチド鎖(VH−VL)内に、可変軽鎖ドメイン(VL)に結合した可変重鎖ドメイン(VH)を含む。同一鎖上の2つのドメイン間での対形成には短すぎるリンカーをに使用することによって、このドメインは、別の鎖の相補性ドメインと対になって、二つの抗原結合部位を形成することを強いられている。二重抗体は、例えば、ヨーロッパ特許第404,097号、国際公開 WO 93/11161号に、より十分的に記載されている。
【0081】
「二重特異性抗体」とは、2つの異なる特異的抗原結合部位を有する単一の2価の抗体(または免疫療法上効果的なその断片)である。例えば、第1抗原結合部位は、血管新生受容体(例えば、インテグリンやVEGF受容体)に向けられるが、第2抗原結合部位は、ErbB受容体(例えば、EGFRやHER2)に向けられる。
【0082】
二重特異性抗体は、全て、それ自体は既知である、化学的技術(例えば、Kranz他、1981、Proc.Natl.Acad/Sci.USA、78、5807参照)、「ポリドーマ」技術(米国特許第4,474,893号参照)、または組換えDNA技術によって作製することができる。さらなる方法は、国際公開 WO 91/00360号、国際公開 WO 92/05793号、および国際公開 WO 96/04305号に記載されている。二重特異性抗体はまた、一本鎖抗体から調製することもできる(例えば、Huston他、1988、Proc.Natl.Acad.Sci.、85、5879;SkerraおよびPlueckthun、1988、Science、240、1038)。単一ポリペプチド鎖として生成された抗体可変領域の類似体もある。二重特異性結合剤を形成するためには、一本鎖抗体を、当分野で既知の化学的方法または遺伝工学方法によって、共にカップリングさせる。ロイシン・ジッパー配列を使用することによって、本発明にかかる、二重特異性抗体を作製することも可能である。利用される配列は、転写因子FosおよびJunのロイシン・ジッパー領域に由来する(Landschulz他、1988、Science、240、1759;総説には、ManiatisおよびAbel、1989、Nature、341、24参照)。ロイシン・ジッパーは、ロイシンが7残基毎に起こる、約20〜24残基長の特異的なアミノ酸配列である。このようなジッパー配列では、二量体形成のためにロイシン残基が疎水性側に並んで両親媒性のαへリックスを形成する。FosおよびJunタンパク質のロイシン・ジッパーに対応するペプチドは、優先的にヘテロ二量体を形成する(O’Shea他、1989、Science、245、646)。ジッパーを含む二重特異性抗体およびそれらを作製する方法も、国際公開 WO 92/10209号および国際公開 WO 93/11162号に開示されている。本発明にかかる、二重特異性抗体は、単一の特異性を有する抗体に関しては、上に記載したVEGF受容体およびαVβ3受容体に対する抗体にすることができる。
【0083】
用語「免疫複合体(immunoconjugate)」とは、免疫的な効果を示さない分子に対して、共有結合によって融合された、それぞれ、抗体または免疫グロブリン、あるいは免疫学的に効果的なその断片をいう。好ましくは、この融合パートナーは、グリコシル化されていてもよい、ペプチドまたはタンパク質である。前記非抗体分子は、抗体の定常重鎖のC末端、あるいは可変軽鎖および/または重鎖のN末端に連結することができる。融合パートナーは、一般的に、3〜15個のアミノ酸残基を含有するペプチドである、リンカー分子を介して、連結することができる。本発明にかかる、免疫複合体は、好ましくは、血管新生受容体、好ましくは、インテグリンまたはVEGF受容体に対する、免疫グロブリンまたは免疫療法上効果的なその断片と、TNFαとからなる融合タンパク質、あるいは、前記免疫グロブリンのC末端、好ましくはそのFc部分にそのN末端が連結されている、TNFαおよびIFNγまたは別の適切なサイトカインとから実質的になる融合タンパク質を包含している。
【0084】
用語「融合タンパク質」とは、異なる特異性を有する1つまたは複数の免疫療法的な効果を有さない(非抗体の)タンパク質またはペプチドからなり、場合によっては、リンカー分子によって融合されている、天然または合成分子をいう。本発明にかかる融合タンパク質は、例えば、TNFαおよび/またはIFNγに融合されたシクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)からなる分子でもよい。
【0085】
「ヘテロ抗体」とは、それぞれが異なる結合特異性を有する、互いに連結されている、2つまたはそれ以上の抗体または抗原結合性抗体断片である。ヘテロ抗体は、2つまたはそれ以上の抗体または抗体断片を互いに結合させることによって調製することができる。好ましいヘテロ抗体は、交差結合されたFab/Fab’断片を含んでなる。様々なカップリングまたは交差結合剤を使用して、抗体複数を結合させることができる。一例は、タンパク質A、カルボイイミド(carboiimide)、N−コハク酸イミジル−S−アセチル−チオ酢酸(SATA)、N−コハク酸イミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオン酸(SPDP)(例えば、Karpovsky他、1984、J.EXP.Med.、160、1686;Liu他、1985、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、82、8648参照)である。その他の手法には、Paulus、Behring Inst.Mitt.、第78号、118、1985;Brennan他、1985、Science、30m:81、またはGlennie他、1987、J.Immunol.、139、2367に記載されているものが含まれる。別の方法では、3つのFab’断片をカップリングするために、o−フェニレンジマレイン酸イミド(oPDM)を利用する(国際公開 WO 91/03493号)。本発明に関係して、多重特異性抗体もまた適切であり、国際公開 WO 94/13804号および国際公開 WO 98/50431号の教示に従って調製することができる。
【0086】
抗体の「エフェクター機能」とは、抗体のFc領域(Fc領域の天然配列または変異Fc領域のアミノ酸配列)に由来する生物学的な活性をいう。抗体のエフェクター機能の例には、相補性依存的細胞傷害、Fc受容体結合、抗体依存性細胞媒介細胞傷害(ADCC)、食作用、細胞表面受容体の下方制御(例えば、B細胞受容体)などが含まれる。
【0087】
用語「ADCC」(抗体依存性細胞媒介細胞傷害)とは、Fc受容体(FcR)を発現する非特異的な細胞傷害細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、マクロファージ)が、標的細胞上に結合された抗体を認識し、次いで標的細胞の溶解を引き起こす、細胞に媒介された反応をいう。ADCCを媒介する主要な細胞である、NK細胞は、FcγRIIIのみを発現するが、単球は、FcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIを発現する。目的とする分子のADCC活性を評価するために、先行技術(米国特許第5,500,362号、米国特許第5,821,337号)に記載されているようなin vitro ADCCアッセイを実施することができる。このようなアッセイに有用なエフェクター細胞には、末梢血単核細胞(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる。
【0088】
「ヒト・エフェクター細胞」は、1つまたは複数のFcRを発現し、エフェクター機能を発現する白血球である。好ましくは、細胞は、少なくともFcγRIIIを発現し、ADCCエフェクター機能を遂行する。ADCCを媒介する、ヒト白血球の例には、末梢血単球細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞傷害性T細胞および好中球が含まれる。
【0089】
用語「Fc受容体」または「FcR」は、抗体のFc領域に結合する受容体を記述するために使用される。好ましいFcRは、天然配列のヒトFcRである。さらに、好ましいFcRは、IgG抗体と結合する(γ受容体)ものであり、FcγRI、FcγRIIおよびFcγRIIIサブクラスの受容体を含み、これら受容体の対立変異体ならびに選択的スプライシングされた形態も含まれる。FcRは、例えば、RavatchおよびKinet、Annu.Rev.Immunol、9:457〜92、1991に、その総説が記載されている。
【0090】
用語「サイトカイン」とは、細胞間媒体として別の細胞に作用する、一細胞集団から放出されたタンパク質の総称的な用語である。このようなサイトカインの例は、リンホカイン、モノカイン、および従来のポリペプチドホルモンである。サイトカインには、ヒト成長ホルモン、N−メチオニルヒト成長ホルモン、ウシ成長ホルモンなど成長ホルモン;副甲状腺ホルモン;チロキシン;インスリン;プロインスリン;リラキシン;プロリラキシン:濾胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、黄体形成ホルモン(LH)など糖タンパク質ホルモン;線維芽細胞成長因子;プロラクチン;胎盤性ラクトゲン;マウス・ゴナドトロピン関連ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮成長因子(VEGF);インテグリン;トロンボポエチン(TPO);NGFβなど神経成長因子;血小板成長因子;TGFαやTGFβなどトランスフォーミング成長因子(TGF);エリスロポエチン(EPO);INFα、IFNβ、IFNγなどインターフェロン;M−CSF、GM−CSF、G−CSFなどコロニー刺激因子;IL−1、IL−1a、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12などインターロイキン;およびTNFαやTNFβが含まれる。本発明にかかる、好ましいサイトカインは、インターフェロンおよびTNFαである。
【0091】
本明細書中で使用する用語「細胞傷害剤」とは、細胞の機能を阻害または抑制し、かつ/あるいは細胞の破壊を引き起こす物質をいう。この用語は、放射性同位体、化学療法剤、および細菌、真菌、植物、動物起源の酵素的に活性のある毒素など毒素、あるいは。その断片を含めるつもりである。この用語は、サイトカイン・ファミリーの成員、好ましくはIFNγを含むことができる。
【0092】
用語「化学療法剤」または「抗異常増殖剤」には、抗異常増殖性作用を及ぼす、すなわち、生物学的応答の改変など機構を介した間接的にではなく、例えば、細胞増殖抑制または細胞傷害効果によって、腫瘍細胞に直接的に、異常増殖細胞の発生、成熟、拡散を阻止する化学薬剤が含まれる。本発明にかかる、適当な化学療法剤は、好ましくは、天然または合成化学化合物であるが、タンパク質、ポリペプチドなどの生物学的分子も、明示的に排除されていない。TNFαと上に列挙した抗血管新生剤、場合によっては、EGF受容体拮抗剤など他の薬剤をも一緒に用いる組合せ治療による、腫瘍/異常増殖の治療のための本発明に含めることができる、市販、臨床評価および前臨床開発段階の、入手可能な、多数の抗異常増殖剤が存在する。化学療法剤は、場合によっては、上述する薬物の組合せと一緒に投与することができることは、指摘すべき点である。
【0093】
化学療法剤または薬剤の例には、アルキル化剤、例えば、窒素マスタード、エチレンイミン化合物、アルキルスルホン酸、およびニトロソ尿素、シスプラチン、ダカルバジンなどのアルキル化作用を有する他の化合物;抗代謝剤、例えば、葉酸、プリンまたはピリミジン拮抗剤;有糸分裂阻害剤、例えば、ビンカ・アルカロイドおよびポドフィロトキシンの誘導体;細胞傷害抗生物質およびカンプトセチン誘導体が含まれる。好ましい化学療法剤または化学療法には、amifostine(ethyol)、シスプラチン、ダカルバジン(DTIC)、ダクチノマイシン、メクロレタミン(窒素マスタード)、ストレプトゾシン、シクロホスファミド、カルヌシチン(carrnustine)(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、ドキソルビシン・リポ(doxil)、ゲムシタビン(gemzar)、ダウノルビシン、ダウノルビシン・リポ(daunoxome)、プロカルバジン、マイトマイシン、シタラビン、エトポシド、メトトレキセート、5−フルオロウラシル(5−FU)、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ブレオマイシン、パクリタキセル(タキソール)、ドセタキセル(タキソテール)、アルデスロイキン(aldesleukin)、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、クラドリビン、カンプトセシン、CPT−11、10−ヒドロキシ−7−エチル−カンプトセシン(SN38)、ダカルバジン、フロクスウリジン、フルダラビン、ヒドロキシ尿素、イホスファミド、イダルビシン、メスナ、インターフェロンα、インターフェロンβ、イリノテカン、ミトキサントロン、トポテカン、ロイプロリド、メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、プリカマイシン、ミトタン、pegaspargase、ペントスタチン、ピポブロマン、ピリカマイシン、ストレプトゾシン、タモキシフェン、テニポシド、テストラクトン、チオグアニン、チオテパ、ウラシルマスタード、ビノレルビン、クロラムブシル、ならびに、それらの組合せが含まれる。
【0094】
本発明にかかる、最も好ましい化学療法剤は、シスプラチン、ゲムシタビン、ドキソルビシン、パクリタキセル(タキソール)およびブレオマイシンである。
【0095】
用語「癌」および「腫瘍」とは、典型的には、制御されない細胞増殖によって特徴づけられる、哺乳類の生理学的状態のことを意味し、または述べる。乳房、心臓、肺、小腸、大腸、脾臓、腎臓、膀胱、頭部および頚部、卵巣、前立腺、脳、膵臓、皮膚、骨、骨髄、血液、胸腺、子宮、精巣、子宮頚部、および肝臓の腫瘍などの、腫瘍は、本発明にかかる医薬組成物によって、治療することができる。より具体的には、腫瘍は、腺腫、血管肉腫、星状細胞腫、上皮癌腫、胚細胞腫、グリア芽細胞腫、過誤腫、血管内皮腫、血管肉腫、血腫、肝芽腫、白血病、リンパ腫、髄芽腫、黒色腫、神経芽細胞腫、骨肉腫、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、肉腫および奇形腫からなる群から選択される。
【0096】
詳細には、腫瘍は、末端黒子型黒色腫、光線性角化症、腺癌腫、腺様嚢胞癌腫、脂肪腫、腺肉腫、腺扁平上皮癌腫、星錠腫瘍、バルトリン腺癌腫、基底細胞癌腫、気管支腺癌腫、毛細血管、癌様体、癌腫、癌肉腫、海綿状、胆管癌腫、軟骨芽肉腫、脈絡叢乳頭腫/癌腫、明細胞癌腫、嚢胞腺腫、内胚葉洞腫瘍、子宮内膜増殖症、子宮内膜間質部肉腫、子宮内膜様卵巣癌腫、脳質上皮、類上皮細胞、ユーイング肉腫、繊維性層状(fibrolamellar)、巣状結節性過形成、ガストリン産生腫瘍、生殖細胞腫瘍、グリア細胞腫、グルカゴン産生腫瘍、血管芽細胞腫、血管内皮腫、血管腫、肝細胞腺腫、肝細胞腺腫症、肝細胞癌腫、膵島細胞腺腫、上皮内異常増殖、上皮間扁平細胞異常増殖、浸潤性扁平細胞癌腫、大細胞癌腫、平滑筋肉腫、悪性黒色黒色腫、悪性黒色腫、悪性中皮腫瘍、髄芽腫、髄上皮腫、黒色腫、髄膜、中皮、転移性癌腫、粘膜表皮性癌腫、神経細胞腫、神経上皮腺癌腫結節性癌腫、燕麦細胞癌腫、オリゴデンドログリア、骨肉腫、膵臓ポリペプチド、乳頭漿液腺癌腫、松果体細胞、下垂体腫瘍、プラズマ細胞腫、偽肉腫、肺性細胞腫、腎細胞癌腫、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、肉腫、漿液癌腫、小細胞癌腫、軟組織癌腫、ソマトスタチン分泌腫瘍、扁平上皮癌腫、扁平上皮細胞癌腫、中皮下、表在性拡大型癌腫、未分化癌腫、ブドウ膜黒色腫、いぼ状癌腫、ビポーマ、高分化癌腫、ウィルムス腫瘍からなる群から選択される。
【0097】
「ErbB受容体」とは、ErbB受容体ファミリーに属す受容体タンパク質チロシンキナーゼであり、EGFR(ErbB1)、ErbB2、ErbB3、ErbB4受容体および将来同定されるであろう、該ファミリーの他のメンバーを含む。ErbB受容体は一般的に、ErbBリガンドと結合し得る細胞外ドメイン;親油性膜貫通ドメイン;保存された細胞内チロシンキナーゼドメイン;リン酸化され得るいくつかのチロシン残基を有するカルボキシ末端のシグナル伝達ドメインを含む。ErbB受容体は「天然配列」のErbB受容体またはその「アミノ酸配列変異体」であってよい。好ましくは、ErbB受容体は、天然配列のヒト・ErbB受容体である。ErbB1は、EGFRタンパク質産物をコードする遺伝子をいう。最も好ましいのは、EGF受容体(HER1)である。表現「ErbB1」と「HER1」は、本明細書中で互換的に使用されており、ヒトHER1タンパク質を指す。表現「ErbB2」と「HER2」は、本明細書中で互換的に使用されており、ヒトHER2タンパク質を指す。本発明によれば、ErbB1受容体(EGFR)が好ましい。
【0098】
「ErbBリガンド」とは、ErbB受容体に結合し、かつ/または活性化させるポリペプチドである。EGFRと結合するErbBリガンドには、EGF、TGF−α、アンフィレギュリン、ベータセルリン、HB−EGF、エピレギュリンが含まれる。
【0099】
用語「ErbB受容体拮抗剤/阻害剤」とは、ErbB受容体に結合して、妨害または阻害する、天然または合成分子をいう。従って、受容体を妨害することによって、拮抗剤は、ErbBリガンド(作用剤)の結合、および作用剤/リガンド受容体複合体の活性化を防止する。ErbB拮抗剤は、HER1(EGFR)またはHER2に特異的できる。本発明の好ましい拮抗剤は、EGF受容体(EGFR、HER1)に特異的である。このErbB受容体は、抗体または免疫療法上効果的なその断片、あるいはペプチド、ポリペプチドタンパク質など非免疫性生物学的分子であってもよい。化学的分子も含まれるが、抗EGFR抗体および抗HER2抗体が、本発明にかかる、好ましい拮抗剤である。
【0100】
本発明の好ましい抗体は、抗Her1および抗Her2抗体、より好ましくは、抗Her1抗体である。好ましい抗Her1抗体は、MAb425、好ましくは、ヒト化MAb425(hMAb425、米国特許第5,558,864号;ヨーロッパ特許第0531 472号)、およびキメラMAb225(cMAb225、米国特許第4,943,533号およびヨーロッパ特許第0359 282号)である。最も好ましいのは、単一薬物治療においても、抑制された有害ならびに副作用とともに、高い効果を示した、モノクローナル抗体h425である。最も好ましい抗HER2抗体は、Genentech/Rocheにより商品化されている、HERCEPTIN(登録商標)である。
【0101】
本発明にかかる、有効なEGF受容体拮抗剤は、天然または合成の化学化合物であってもよい。この種の好ましい分子の一例には、有機化合物、有機金属化合物、有機化合物および有機金属化合物の塩が含まれる。
【0102】
HER2受容体拮抗剤の例は、スチリル置換の複素芳香族化合物(米国特許第 5,656,655号);ビス単環式および/または二環式アリール−ヘテロアリール、炭素環、およびヘテロ炭素環化合物(米国特許第5,646,153号);三環式ピリミジン化合物(米国特許第5,679,683号);受容体型チロシンキナーゼ阻害活性を有するキナゾリン誘導体(米国特許第5,616,582号);ヘテロアリールエテネジイルまたはヘテロアリールエテネジイル アリール化合物(米国特許第5,196,446号);受容体のEGFR、PDGFR、FGFRファミリーを阻害する、6−(2,6−ジクロロフェニル)−2−(4−(2−ジエチル−アミノエトキシ)フェニルアミノ)−8−メチル−8H−ピリド(2,3)−5−ピリミジン−7−オン(Panek他、1997、J.Pharmacol.Exp.Therap.、283、1433)と命名された化合物である。
【0103】
「放射線療法」:本発明にかかる医薬組成物を用いて治療することができる腫瘍は、さらに、放射線または放射性薬剤により処置することができる。放射線源は、治療される患者の外部または内部のどちらでもよい。放射線源が患者の外部の場合、この療法は外部照射放射線療法(EBRT)として知られている。放射線源が患者の内部の場合、この療法は近接照射療法(BT)と呼ばれている。利用されてきた典型的な放射性原子には、ラジウム、セシウム−137、およびイリジウム−192、アメリシウム−241、および金−198、コバルト−57;銅−67;テクネチウム−99;ヨウ素−123;ヨウ素−131;およびインジウム−111が含まれる。本発明にかかる薬剤を、放射性同位元素を用いて標識することも可能である。
【0104】
今日では、放射線療法は、切除不能や手術不能な腫瘍および/または腫瘍転移を抑制するための、標準的な治療法である。放射線治療を、化学療法と組み合わせると、改善された結果が見られる。放射線療法は、標的区域に照射された高線量の放射線が、腫瘍組織と正常組織のどちらもの再生細胞の死滅をもたらすという原理に基づいている。
【0105】
放射線線量処方は、一般的に、放射線吸収線量(rad)、時間、および画分の点から決定され、癌専門医によって注意深く決定されなければならない。患者が受ける放射線の量は、様々な考慮事項に依存するが、最も重要な2つの考慮事項は、身体の他の重要な構造または組織に対する、腫瘍の位置、ならびに、腫瘍が拡散している範囲である。放射線療法を受ける患者に対する、好ましい治療過程は、5〜6週間の期間にわたり、総線量50〜60Gyを、1.8〜2.0Gyの単一の一日画分を、週に5日、患者に施す治療スケジュールである。Gyは、グレイの略記であり、100radの照射量をいう。好ましい実施態様では、ヒト患者の腫瘍を、血管新生拮抗剤とTNFα/IFNγならびに放射線で治療した際には、相乗効果がある。言い換えれば、前記化合物による腫瘍増殖の阻害は、放射線および/または化学療法剤と組み合わせた場合に増強される。本発明に従って、場合によっては、放射線療法を使用することができる。それは、本発明かかる薬剤を、十分な量患者に投与することができない場合に、推奨され、また、好ましい。
【0106】
「薬剤治療」:本発明の方法は、本発明を実施するためのステップとして、様々な形式を含む。例えば、本発明にかかる薬剤は、同時に、順序に従って、あるいは、個別に、投与することができる。さらに、該薬剤は、投与間に、約3週間までの時間間隔内で、すなわち、実質的に、第1活性薬剤を投与した直後から、第1薬剤を投与した後、約3週間までに、個別に投与することもできる。この方法は、外科的処置に引き続いて、実施することができる。あるいは、第1活性薬剤と第2活性薬剤の投与の間に、外科的処置を実施することができる。この方法の典型は、本発明の方法と、外科的な腫瘍除去との組合せである。この方法による治療は、一般的に、1つまたは複数の投与サイクルにおける、治療組成物の投与を含む。例えば、同時投与を実施した場合、両方の薬剤を含む治療組成物を、約2日〜約3週間の期間を、一サイクルとして、投与する。
【0107】
その後は、該治療サイクルを、担当する医者の判断に従って、必要に応じて、繰り返すことができる。同様に、順序に従った施用を計画する場合、それぞれの個々の療法剤の投与時間が、一般的に同じ期間に及ぶように調整する。サイクル間の間隔は、約0から2カ月まで変えることができる。
【0108】
本発明の薬剤を、非経口的に注入、または時間をかけたゆっくりしたインフージョンによって投与することができる。一般的に、治療すべき組織には、通常全身投与によって、身体内から接近することができ、従って、最も頻繁には、治療組成物の静脈内投与によって治療されるが、標的組織のみが標的分子を含むような、他の組織的な送達手段も予期される。従って、本発明の薬剤は、眼内、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、腔内、経皮、または正所位注入およびインフージョンによって投与することができ、または蠕動手段によって送達することもできる。例えば、本発明のインテグリン拮抗剤を含む治療的組成物は、従来、例えば、単位用量の注入として静脈内に投与されてきた。
【0109】
本発明の治療組成物は、生理的に許容される担体を、有効成分として、本明細書中に記載されている好適な薬剤を、それの中に溶解または分散させ、共に含んでいる。本明細書中で使用する用語「製薬的に許容される」とは、嘔気、眩暈、胃のむかつきなども望ましくない生理効果を生じることなしに、哺乳動物内またはその表面に投与することが可能な物質を表している、組成物、担体、希釈剤、および試薬をいう。その中に有効成分を溶解または分散させた薬理組成物の調製は、当分野でよく理解されており、処方に基づいたものに限定する必要はない。通常、このような組成物は、液体溶液または懸濁液のいずれかのような、注射可能なものに調製されるが、使用に先立ち、液体中に加えて、溶液または懸濁液とするのに適した固体形状に調製することもできる。この調製物は、エマルジョン状とすることもできる。有効成分を、製薬的に許容され、有効成分に適合する賦形剤と共に、本明細書中に記載する治療方法での使用に適した量で、混合することができる。適切な賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール等、ならびにそれらを組み合わせたものである。加えて、必要に応じて、組成物は、有効成分の有効性を増強させる、浸潤剤や乳化剤、pH緩衝剤等の補助的な物質を少量含有することができる。本発明の治療組成物は、それに含まれる成分の製薬的に許容される塩を含むこともできる。製薬的に許容される塩には、例えば、塩酸またはリン酸などの無機酸、または酢酸、酒石酸、マンデル酸等の有機酸を用いて形成される、酸付加塩(ポリペプチドの遊離アミノ基と形成される)が含まれる。遊離カルボキシ基と形成される塩は、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、二価の鉄の水酸化物などの、無機塩基、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩基から誘導することもできる。特に好ましいのは、環状ポリペプチドαv拮抗剤の調製に使用する場合には、HCl塩である。生理的に許容される担体は、当分野で周知である。液体担体の例は、有効成分と水以外の追加の物質を含まない、または生理的pH値のリン酸ナトリウムなどの緩衝成分、生理的食塩、あるいは、リン酸緩衝生理食塩水などの双方を含む、無菌水性溶液である。さらに、水性担体は、1つ以上の緩衝塩だけでなく、塩化ナトリウムや塩化カリウムなど塩、デキストロース、ポリエチレングリコール、および他の溶質を含むこともできる。液体組成物はまた、水に加えて、また、水を含まない液相を含むこともできる。このような追加の液相の典型は、グリセリン、綿実油など植物油、水−油エマルジョンである。
【0110】
通常、例えば、インテグリン受容体阻害抗体、抗体断片または抗体複合体、あるいは抗VEGF受容体阻害抗体、断片または複合体の形態の、免疫療法剤の治療有効量は、生理的に許容される組成物として投与した際、血漿濃度を、1ミリリットル(ml)あたり約0.01マイクログラム(μg)〜約100μg/ml、好ましくは、約1μg/ml〜約5μg/ml、通常は、約5μg/mlとするために、十分な量である。
【0111】
言い換えれば、一日または複数日、一日当たり、1つまたは複数回の用量投与においては、用量は、約0.1mg/kg〜約300mg/kg、好ましくは、約0.2mg/kg〜約200mg/kg、最も好ましくは、約0.5mg/kg〜約20mg/kgの範囲で変動させることができる。免疫療法剤が、モノクローナル抗体の断片または複合体である場合、この量は、完全な抗体の質量に対する、断片/複合体の質量の比に基づいて、容易に調節することができる。好ましい血漿中のモル濃度は、約2マイクロモーラー(μM)〜約5ミリモーラー(mM)であり、好ましくは、約100μM〜1mMの抗体型拮抗剤である。
【0112】
非免疫療法性ペプチドまたはタンパク質ペプチド(例えば、TNFα、IFNγ)、あるいは類似した大きさの他の生物学的分子である、本発明にかかる薬剤の療法的に有効な量は、通常、生理的に許容される組成物として投与した際に、血漿濃度を、1ミリリットル(ml)あたり約0.1マイクログラム(μg)〜約200μg/ml、好ましくは約1μg/ml〜約150μg/mlとするために、十分なポリペプチド量である。1モルあたり約500グラムの質量を有するポリペプチドに基づくと、好ましい血漿中モル濃度は、約2マイクロモーラー(μM)〜約5ミリモーラー(mM)、好ましくは約100μM〜1mMのポリペプチド拮抗剤である。
【0113】
好ましくは、本発明にかかる、化学的拮抗剤または(化学的)化学療法剤(免疫療法剤でも非免疫療法性ペプチド/タンパク質でもない)である、活性薬剤の通常用量は、1日あたり、体重1キログラムあたり10mg〜1000mg、好ましくは約20〜200mg、より好ましくは50〜100mgである。
【0114】
本発明の医薬組成物には、それに限定はされないが、例えば、骨吸収阻害剤、心保護剤など、抗癌剤の毒性を軽減させる薬剤を含む、本発明の組合せ療法に付随する副作用を軽減または回避する薬剤(「アジュバント療法」)を用いる、患者の包括的な治療を含むことができる。前記アジュバント剤は、化学療法、放射線療法、手術に付随する嘔気や嘔吐の頻度を阻止または軽減する、あるいは骨髄抑制性抗癌剤の投与に付随する感染症の発生率を軽減させる。アジュバント剤は当分野で周知である。
【0115】
本発明による免疫療法剤はさらに、BCGや免疫系刺激剤などのアジュバントと一緒に投与することができる。
【0116】
さらに、この組成物は、細胞傷害効果の放射標識同位元素を含有する免疫療法剤または化学療法剤、あるいは、細胞傷害性ペプチド(例えば、サイトカイン)、細胞傷害性薬剤などの、他の細胞傷害性剤を含んでいてもよい。
【0117】
腫瘍または腫瘍転移を治療するための「製薬キット」という用語は、腫瘍および腫瘍転移を治療する方法において、該試薬を使用するための、パッケージ、および、原則として、指示書をいう。本発明のキット内の試薬は通常、本明細書中に記載の治療組成物として、処方されており、従って、キットにおいて、配布に適した様々な形態のいずれであってもよい。このような形態には、本発明の拮抗剤および/または融合タンパク質を提供するためには、液体、粉末、錠剤、懸濁液などの剤形が含まれる。試薬は、本発明の方法に従って、個別の投与に適した個別の容器として提供することができ、あるいは、パッケージ中において、単一の容器内の組成物として、組み合わせて提供することもできる。このパッケージは、本明細書中に記載の治療方法に従って、1つまたは複数回の用量に十分な量の試薬を含むことができる。本発明のキットはまた、パッケージに含まれる物質の「使用説明書」も含む。
【実施例】
【0118】
以下の実施例によって、本発明をより詳細に説明する。
【0119】
実施例1
TNFα誘発性アポトーシスに対する内皮細胞のインテグリン依存性接着
HUVEC球状体の形成および生存にはインテグリンは必要ない
TNF誘発性アポトーシスに対するインテグリン・ライゲーションの効果を試験するために、本発明者らは、インテグリン依存性の接着なしに内皮細胞を培養できる条件を同定した。内皮細胞の単一細胞懸濁液は、アノイキスによって急速に死滅し(Meredith他、Mol.Biol Cell.、4、953〜961、1993)、従ってさらなる分析が妨げられた。しかし、BSAでコーティングしたウェルにヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)を高密度(1.0×106個の細胞/ml)で播種することにより、2〜4時間以内に多細胞性球状体が形成され、インテグリンからの検出可能な寄与なしに、24時間以上、VE−カドヘリンに依存して維持することができた。モノクローナル抗体(mAb)を妨害すること、またはEDTAを用いたCa2+−Mg2+の欠乏によるVE−カドヘリン活性の阻害は球状体の形成を妨害したが、α2、α3、α5、α6、β1、αVβ3、αVβ5インテグリンに対する阻害性mAb、RGDに基づいた妨害ペプチド、および妨害性抗PECAM−1mAbの単体または組合せは、HUVEC球状体に影響を与えなかった(図1a、データは示さず)。
【0120】
細胞生存度に対する球状体培養物の影響を決定するために、球状体およびフィブロネクチン接着性HUVECをプレートした6〜72時間後に回収し、連続的に希釈し、相対細胞数を決定する前に追加の48時間さらに培養した。左寄りの曲線、すなわち希釈曲線の平坦化は、生存度の低下を示す。プレートした6、12、16、24時間後に球状体培養物から回収したHUVECの生存度はフィブロネクチン接着性培養物と比較可能であったが、36時間以降では、徐々に低下した(図1bは16時間、データは示さず)。
【0121】
総合すると、これらの結果は、HUVECは球状体を形成することができ、インテグリン依存性の接着なしに24時間以上生存可能であることを実証している。
【0122】
実施例2
フィブロネクチンへの接着はHUVECをTNF誘発性アポトーシスから保護する
インテグリンがTNF誘発性アポトーシスを変調させるかどうかを試験するために、本発明者らはHUVECをフィブロネクチン上で(インテグリン依存性接着)、または球状体として(インテグリン非依存性接着)、TNF(200ng/ml)およびTNF細胞傷害の増強剤であるIFNγ(330ng/ml)(Dealtry他、Eur.J.Immunol.、17、689〜693、1987)を存在させてまたは存在させずに培養した。フィブロネクチン上のHUVECの単層(「フィブロネクチン接着性HUVEC」)をTNF±IFNγに暴露させることによっては、YoPro−1が取り込まれていないことにより実証されたアポトーシス(Idziorek他、J.Immunol.Methods、185、249〜258、1995)、アネキシンVの細胞表面結合、カスパーゼ−3の活性化およびその基質PARPの切断は、増大されなかった(図2a、2b、データは示さず)。
【0123】
それとは反対に、TNF±IFNγを用いて処置した球状体は、YoPro−1の取り込みが増加し(BOC、Z−VAD、IETD、DVEDのカスパーゼ阻害剤によって抑制された増加)、DNAの断片化、カスパーゼ−3活性化およびPARPの切断が増大した(図2a、2b、データは示さず)。細胞生存度に対するTNF±IFNγの効果を検査するために、本発明者らは非処理および処理した培養物の生存度を決定した。フィブロネクチン接着性HUVECをTNF±IFNγに暴露しても、細胞生存度に影響は与えられなかった(図2c)。TNFを用いた球状体の処置は80%を超える細胞の死滅をもたらし、組み合わせたTNF/IFNγの処置は完全な細胞死滅を引き起こした(図2d)。IFNγのみを用いた処置は細胞傷害性ではなかった(データ示さず)。HUVECは、αVβ3およびα5β1インテグリンを介して、固定したフィブロネクチンに接着する(Ruegg他、Nature Med.、4、408〜414、1998)。フィブロネクチン上の細胞生存度に対するこれらインテグリンの個々の寄与を試験するために、本発明者らは、プラスチックに固定した、αVβ3、α1、α5、α4インテグリンに対するmAbs(imAbs)上でHUVECを培養した。固定化抗αVβ3、抗α5、抗α1 mAbsはHUVECをTNF誘発性細胞死から保護したが、抗α4 mAbsは保護しなかった(図2e、データ示さず)。
【0124】
これらの結果から、本発明者らは、αVβ3およびαVβ1インテグリンに媒介される接着がTNF誘発性アポトーシスを抑制し、それが欠乏するとHUVECがTNFおよびカスパーゼ媒介アポトーシスに対して感作されることを結論づけた。
【0125】
実施例2
インテグリン依存性シグナリングは内皮細胞をTNFα誘発性アポトーシスから保護する
TNF誘発性のNF−κB活性化はインテグリン・ライゲーションを必要としない
核因子κB(NF−κB)は、TNFに暴露させた細胞の生存を促進する(BegおよびBaltimore、Science、274、782〜784;Van Antwerp他、Science、274、787〜789、1996)。インテグリンを介した細胞接着がNF−κBを活性化させるので(Scatena他、J.Cell Biol.、141、1083〜1093、1998)、本発明者らは、TNF誘発性アポトーシスに対する球状体の感受性がNF−κB活性化の不足によるものかどうかを調査した。NF−κB活性化は、I−κBのリン酸化および解離、NF−κB核転移、ならびにNF−κB誘発性遺伝子であるICAM−1の細胞表面での発現(Collins他、Faseb J.、9、899〜909、1995)を、TNF±IFNγに暴露させた球状体およびフィブロネクチン接着性HUVEC培養物で測定することで評価した。I−κBのリン酸化および解離、NF−κBの核転移またはICAM−1の発現で有意な差は観察されず(図3a〜c)、これは、球状体中で培養したHUVECのTNF誘発性アポトーシスは、損なわれたNF−κB活性化によるものではないことを示す。
【0126】
実施例3
活性化はインテグリン・ライゲーションに依存し、細胞の生存に重要である
次に、内皮細胞の生存を促進する、TNFによって活性化されるタンパク質キナーゼであるAkt/PKBの活性化を分析した(MadgeおよびPober、J.Biol.Chem.、275、15458〜15465、2000)。フィブロネクチン接着性HUVECのAktの基礎的リン酸化は、TNF/IFNγへの暴露によって増加し、これは構成的なAktの活性化およびTNF誘発性のAkt活性化に矛盾しない。反対に、非処理の球状体ではAktのリン酸化は観察されず、TNF/IFN□への暴露は弱いリン酸化のみを誘発した(図4a)。HUVECの生存に対するAkt活性化の関連性を評価するために、本発明者らは、ホスホイノシチド−3(PI−3)キナーゼであり、Aktの上流活性化因子である2つの薬理的阻害剤、ワートマニンおよびLY294002を用いてフィブロネクチン接着性細胞を処置した(KandelおよびHay、Exp.Cell Res.、253、210〜229、1999)。
【0127】
本発明者らはまた、球状体中で、構成的に活性のある形のAkt(Aktmp)およびPI−3キナーゼ触媒サブユニット(p110*)を発現させた。ワートマニンおよびLY294002の治療はアポトーシスを引き起こし、TNF±IFNγに暴露させたフィブロネクチン接着性細胞の生存度を低下させたが(図4b)、野生型Akt(Aktwt)や対照プラスミド(pBS)はそうではないが、Aktmpおよびp110*は球状体をTNF±IFNγ誘発性アポトーシスから保護した(図4c)。
【0128】
これらの結果から、本発明者らは、Aktの活性化がTNF+IFNγに暴露されたHUVECの生存に重要であり、基礎的Akt活性化およびTNF誘発性のAkt活性化のどちらもがインテグリン・ライゲーションに依存していたことを結論づけた。
【0129】
実施例4
TNFで処置したHUVECの生存にはAktおよびNF−κBの活性化が必要
Aktmpは、活性NF−κBの存在下で球状体のTNF誘導アポトーシスを抑制する。本発明者らはまた、NF−κB活性化および活性Aktシグナリングのどちらもが生存に必要かどうか、または活性Aktのみで十分かどうかを試験した。本発明者らは、非分解性I−κBを発現しているアデノウイルスでHUVECを感染させることによって(IkB−NFκBの解離を防止するAdΔNI−κB(Brown他、Science、267、1485〜1488、1995)、構成的に活性のあるAkt(Aktmp)を発現している細胞のNF−κB活性化を妨害した。AdΔNI−κBは、フィブロネクチン接着性HUVECをTNF±IFNγ誘発性アポトーシスに感作させ、これはAktmpに影響を受けなかった。対照の電気穿孔(pBS)またはアデノウイルス感染(AdLacZ)は効果がなかった。AdΔNI−κBはまた、Aktmpを過発現している球状体をTNF+IFNγ誘発性アポトーシスに感作させた(図4d)。NF−κBの活性化を欠いているHUVEC中でAktが低用量のTNFに対して保護できるかどうかを試験するために、wtおよびAktmpを発現しているHUVECの単層をAdΔNI−κBで感染させ、TNF(0.33〜100ng/ml)に暴露させた。AdΔNI−κBはHUVECをアポトーシスに感作させたが(TNF>0.1ng/ml)、AktmpはこのようなHUVECを、低用量のTNFでさえも保護しなかった(図4e)。さらに、LY294002およびワートマニンはTNFに誘導されるICAM−1の発現を阻害せず、これはHUVEC中のNF−κB活性化にはAktシグナリングが必要なかったことを示し(図4f、データは示さず)、球状体中のICAM−1の誘発に矛盾しない(図3c参照)。対照的に、AdΔNI−κBを用いたHUVECの感染では、TNF±IFNγに応答してICAM−1の発現が抑制された(図4f)。
【0130】
総合すると、これらの結果により、TNF±IFNγに暴露させたHUVECの生存には、AktおよびNF−κBの同時活性化が必要であることが実証された。
【0131】
実施例5
インテグリン・ライゲーションはFKHRおよびMDM2の活性化を促進し、MEK、p38、JNKのリン酸化を抑制する
Aktの抗アポトーシス活性は最初、そのカスパーゼ−9およびBadのリン酸化および阻害に起因しているとされていた(Datta他、Genes Dev.、13、2905〜2927、1999)。しかし、現在では、Akt依存性の生存には、フォークヘッド転写因子(FKHR/FKHRL1)(Datta他、Genes Dev.、13、2905〜2927、1999;Brunet他、Cell、96、857〜868、1999)およびMDM2のリン酸化および阻害、p53の分解(MayoおよびDonner、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、98、11598〜11603、2001)、ならびにタンパク質キナーゼERK、p38、JNKの活性化の抑制(Rommel他、Science、286、1738〜1741、1999;Gratton他、J.Biol.Chem.、276、30359〜30365、2001;Park他、J.Biol.Chem.、277、2573〜2578、2002;MadgeおよびPober、J.Biol.Chem.、275、15458〜15465、2000)が必要であることが示されている。本発明者らは、インテグリン・ライゲーションおよびAktシグナリングの欠乏が、これらシグナル経路の改変に関連しているかどうかを調査した。本発明者らは、TNF/IFNγに暴露させた接着性HUVECおよび球状体中のMDM2、p53、リン酸化FKHR/FRKHL1、MEK、p38、−JNKのレベルを決定した。
【0132】
このような球状体は、フィブロネクチン接着性細胞と比べてFKHR/FKRL1のリン酸化が不足しており、MDM2レベルが低下しており、p53が蓄積している(図5a)。さらに、球状体は、MEK、p38、JNKの基礎的なリン酸化およびTNF/IFNγ誘発性リン酸化が増加している(図5b)。
【0133】
これらの結果は、FKHR/FKHRL1を阻害することによって、p53レベルを低下させることによって、およびMEK、p38、JNKのリン酸化を抑制することによって生存を促進する点で、Aktの役割と矛盾しない。
【0134】
実施例6
小さな分子化合物によるインテグリン依存性接着の阻害は、in vitroおよびin vivoで内皮細胞をTNFα誘発性アポトーシスに感作させる
インテグリン・ライゲーションの低下は接着性HUVECのTNF誘発性アポトーシスを感作させる
インテグリン・ライゲーションが減少した条件下でTNFに対する感受性が増加することは、球状体に独特なことではない。インテグリン依存性接着を促進する基質であるポリL−リシン(PLL)(Bershadsky他、Curr.Biol.、6、1279〜1289、1996)上で培養したHUVECはPLL上で生存し、TNF±IFNγの添加は大量死滅を引き起こし(図6a)、これはAktmpの発現により防止された(示さず)。さらに、本発明者らは、フィブロネクチン上へのα5β1/αVβ3依存性接着の□5□1成分に影響を与えないEMD121974((シクロ(Arg−Gly−Asp−D−Phe−[N−Me]−Val)、αVβ3/αVβ5拮抗性環状ペプチド)(Dechantsreiter他、J.Med.Chem.、42、3033〜3040、1999)を用いて、フィブロネクチン上のHUVEC中のインテグリンαVβ3選択的に阻害した(図6b)。TNF/IFNγおよびEMD121974のいずれもが単体では生存に影響を与えなかったが、TNF/IFNγとEMD121974に組み合わせて暴露させると(非阻害性対照ペプチドEMD135981ではない)、アポトーシスおよび解離が増加し(図6c)、生存度が低下した(図6d)。Aktmpの発現は、フィブロネクチン接着性HUVECを、TNF、IFNγ、EMD121974に誘発されたアポトーシスから保護した(図6e)。
【0135】
実施例7:
インテグリン・ライゲーションの低下は、TNFリガンドファミリーの様々なデスリガンドに誘発されるアポトーシスに接着性HUVECを感作させる
インテグリン・ライゲーションの低下の際の、デス受容体シグナリングのプロアポトーシスに対する感受性の増大はTNFに限定されておらず、フィブロネクチン上で培養したHUVECをEMD121974の存在下TRAILおよびFasLに暴露させた場合も観察された。デスドメインを欠いた受容体に結合するリガンドであるLIGHTは、αVβ3妨害に相乗効果をまったく示さなかった(図7)。
【0136】
実施例8
EMD121974が確立した腫瘍をTNFの抗腫瘍活性に感作させた
血管新生内皮細胞はαVβ3インテグリンを発現し、αVβ3ライゲーションは内皮細胞の生存を促進する(Brooks他、Cell、79、1157〜1164、1994;Brooks他、Science、264、569〜571、1994)。EMD121974がin vitroで内皮細胞をTNF誘発性アポトーシスに感作させたという観察は、この化合物がTNFの抗腫瘍活性を増強させることができることを示唆した。この仮定を試験するために、本発明者らは、in vitroおよびin vivoでTNFの細胞傷害に耐性の腫瘍である、高度に活動的で血管形成された同系BN175軟組織肉腫を有するラットを処置した(Manusama他、Oncol.Rep.、6、173〜177、1999)。本発明者らは、分離肢灌流(ILP)技術を使用して、TNF、EMD121974、またはその組合せを腫瘍を有する肢に投与した。TNFまたはペプチドのみを用いた治療では、腫瘍の増殖にまったく影響が与えられなかった。対照的に、TNFとEMD121974を組み合わせた投与では、50%の動物で完全な腫瘍退行、および全体的に有意な腫瘍増殖の低下がもたらされた(図8)。局部または全身性の毒性は、EMD121974/TNFで治療した動物で観察されず、これは、EMD121974が腫瘍を選択的にTNF細胞傷害に対して感作させたことを示す。BN175腫瘍細胞はTNFに非感受性であり、高いMn2+の存在下ででもフィブリノーゲンへの接着が弱いこと、およびEMD121974などαVβ3選択的阻害剤に対する感受性が低いことから評価されるように、活性のあるαVβ3インテグリンを発現しないので(発表していない観察)、相乗強化的な抗腫瘍効果が腫瘍血管形成の破壊を要することが最も可能性が高いと結論づけられる。
【0137】
本発明者らのin vitroデータをまとめると、このことは、内皮生存を制御するこのシステムにおいてインテグリンαVβ3がαVβ1より重要であることを強く支持する。
【0138】
実施例9
HUVECの培養および電気穿孔
既に記載のようにHUVECを調製し(Ruegg他、Nature Med、4、408〜414、1998)、パッセージ(passage)3と7の間で使用した。完全な培地は、M199(Life technologies、スイス、バーゼル)、10%のFCS(Seromed、ドイツ、ベルリン)、12μg/mlのウシ脳抽出物(Clonetics−Bio Whittaker、米国メリーランド州ウォーカーズビル)、10ng/mlのヒト組換えEGF(human rec. EGF(Peprotech、英国ロンドン)、25U/mlのヘパリン、1μg/mlのヒドロコルチゾン(Sigma Chemie)、2mMのL−グルタミン、100μg/mlのストレプトマイシン、100U/mlのペニシリン(Life Technologies)である。電気穿孔には、HUVECを完全培地に再懸濁させ、氷上で5分間、DNA(20μgの指定したプラスミドおよび5μgのpEGFP−C1)と共にインキュベートし、Gene Pulser(Biorad、スイス、Glattbrugg、)を用いて電気穿孔した。電気穿孔したHUVECを使用前に48時間培養した。細胞の約80%が電気穿孔の40時間後にEGFPを発現した。
【0139】
実施例10
球状体の形成
トリプシン処理によってHUVECを回収し、完全培地に1.0×106個の細胞/mlで再懸濁させ、事前に1%のBSAでコーティングした12ウェルの非組織培養プレート(Evergreen Scientific、米国カリフォルニア州ロサンゼルス)に1ml/ウェルで播種した。凝集体の調査には、200μlの細胞懸濁液を1%のBSAでコーティングしたELISAプレート(MaxisorpII、NUNC、デンマーク、ロスキレ)のマイクロウェルに、単独で、あるいはmAbs(10μg/ml)、EDTA(5mM)、またはCa2+/EDTA(10/5mM)の存在下で播種した。球状体の形成を6時間および16時間に評価した。Televal31顕微鏡(Carl Zeiss AG、スイス、チューリッヒ)を用いてマイクログラフを記録した。
【0140】
実施例11
球状体の形態学分析
形態学の評価のために、球状体をEpon(Fluka Chemie)に包埋し、厚い部分を1%のメチレン/アズールブルーを用いて染色した。免疫染色には、凍結させた球状体の切片を4%の(Fluka Chemis、スイス、ブーフス)ホルムアルデヒド中で固定した。1%のBSAでブロックした後、切片を連続的に1時間、一次mAb(20μg/ml)およびCyan3で標識したGaM抗血清(米国ペンシルベニア州ウェストグローブ)と共にインキュベートした。TUNEL反応には、凍結させた球状体切片を4%のパラホルムアルデヒド中で固定し、記載のように処理した(Ruegg他、I.c.)。
【0141】
全DNA含量のために、ヨウ化プロピジウムを用いて球状体を対比染色した。
【0142】
CCDカメラ(Photonic Science、英国Milham)を備えた落射蛍光顕微鏡(Axioskop、Carl Zeiss AG)、またはレーザー共焦点顕微鏡(LSM410、Carl Zeiss AG)を用いて切片を視察した。アポトーシス指数は、緑(断片化されたDNAのTUNEL染色)と赤(全DNAによるヨウ化プロピジウム染色)のピクセルの比を計算することによって決定した。
【0143】
各条件で分析した球状体の数は、C、31;T、21;TI、12であった。培養物中のアポトーシス細胞の検出には、全培養物または回収した浮遊細胞にDNA染料YoPro−1(250nM)を加えた(Delhase,M.、Li,N.およびKarin,M.、「Kinase regulation in inflammatory response.」、Nature、406、367〜368、2000)。培養物は、倒立蛍光顕微鏡観察(Leica DM IRB、スイス、Heerbrugg)によって視察した。電子顕微鏡観察には、2.5%のグルタルアルデヒドを用いて100mMのカコジレート緩衝液中で球状体を固定し、1%のOsO4中で後固定した。細胞をエタノール中で脱水し、Eponに包埋した。Philips CM10透過型電子顕微鏡を使用して、超薄の切片を検査した。
【0144】
実施例12
細胞の生存および増殖
生存度には、1%のBSAでコーティングした24mmのウェルに1×106個の細胞/mlでプレートしたHUVEC球状体、または3μg/mlのフィブロネクチンでコーティングした35mmの非組織培養プレート(Evergreen Scientific)のウェル中の4×105個の細胞を、TNFα(200ng/ml=104U/ml)±IFNγ(330ng/ml=104U/ml)を用いて刺激した。キナーゼ阻害剤またはEMDペプチドを以下の濃度、すなわち、ワートマニン、100nM;LY294002、20μM;EMDペプチド、300μMで、それぞれ刺激の1時間または4時間前に加えた。16時間の培養後、5mMのEDTAを用いて(球状体、20℃で5分間)、または1×トリプシン(接着培養物)を用いて解離することによって細胞を収穫し、洗浄し、完全培地に4×105個の細胞/mlで再懸濁させ、マイクロタイター組織培養プレート(Falcon、Becton Dickinson)に100μl/ウェルでアリコートし、3つ組、1:2ステップで滴定した。48時間後に、最後の4時間の間のMTT変換を測定することによって相対的な細胞数を評価した。結果を540nmでのO.D.値で示し(Packard Spectra Count、米国コネチカット州メリディアン)、これは3つ組のウェルの平均値±標準偏差を示す。
【0145】
実施例13
細胞脱離アッセイ
1μg/ウェルのフィブロネクチンまたは0.5%のゼラチンを用いて、Maxisorp II ELISAプレートを終夜、4℃、PBS中でコーティングした。コーティングしたウェルを洗浄し、1%のBSAを用いて2時間、37℃でブロックし、使用前に洗浄した。FCSなしの基礎培地中で2×104c/ウェルを加え、遠心分離(40×g)によって手短に沈降させた。段階的な濃度でペプチドを加える前に、細胞を37℃で2時間接着させた。2時間後、温かいPBSを用いてウェルを洗浄し、接着した細胞を2%のパラホルムアルデヒドで固定し、0.5%のクリスタルバイオレット(Sigma Chemie)で染色し、620nmでのO.D.読み取り値によって定量した(Packard Spectra Count)。結果をO.D.値として示し、これは、2つ組ウェルの平均±特定の接着の標準偏差(=ECMタンパク質への接着マイナスBSAへの接着)を表す。
【0146】
実施例14
フロー・サイトメトリー法
HUVECおよびEGFP発現の間接的な免疫染色を、以下の標準プロトコルに従って実施した(Ruegg他、I.c.)。ヨウ化プロピジウム染色によって死亡細胞を排除した。すべての試料は、FACScanII(登録商標)およびCell Quest(登録商標)ソフトウェア(Becton Dickinson、米国カリフォルニア州マウンテンビュー)を用いて分析した。
【0147】
実施例15
電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)
HUVEC(各条件1×106個の細胞)を記載のように調製し(Cai他、J Biol Chem、272、96〜101、1997)、T4キナーゼで末端を[γ−32P]標識したヒトHIV末端反復配列のkB配列を含む合成二本鎖31量体のオリゴヌクレオチドと共にインキュベートした。NF−κBが32P標識オリゴヌクレオチドに結合したことは、PAGEおよびオートラジオグラフィーによって決定された。
【0148】
実施例16
ウェスタン・ブロッティング
50μlの細胞溶解物上清(250μlの2×Laemmli緩衝液中に1×106)を、7.5%〜12.5%のSDS−PAGEで分離し、ウェットブロット(Bio Rad)によってImmobilon−P膜(Millipore、スイス、フォルケツヴィル)に移した。膜を連続的に、5%の乾燥乳中で1時間、一次抗体と共に終夜4℃で、およびHRP標識GaM(Dako、スイス、ツーク)と共に1時間インキュベートした。検出にはECLシステム(Amersham−Pharmacia Biotech)を使用した。再プロービングには、膜を2%のSDS、50mMのトリスおよび100mMのBME中、50℃で30分間ストリップした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも(i)抗血管新生剤、および(ii)腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)またはTNFαの生物活性を有する分子を、治療有効量において、場合によっては、製薬的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤を共に含んでなる、医薬組成物。
【請求項2】
前記抗血管新生剤は、インテグリン(受容体)阻害剤/拮抗剤、またはVEGF(受容体)阻害剤/拮抗剤であることを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記血管新生剤は、インテグリン受容体阻害剤/拮抗剤であることを特徴とする、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記インテグリン受容体阻害剤/拮抗剤は、RGD含有の直鎖または環状ペプチドであることを特徴とする、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記RGD含有ペプチドは、シクロ(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)であることを特徴とする、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記血管新生剤は、インテグリン受容体またはVEGF受容体に対して結合する、抗体あるいは、免疫療法上有効な、その断片であることを特徴とする、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記血管新生剤およびTNFαは、互いに連結されて、1つの融合分子を形成していることを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
細胞傷害剤および/または化学療法剤を少なくとも1つ、さらに含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記細胞傷害剤は、インターフェロン・ガンマ(IFNγ)であることを特徴とする、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記化学療法化合物は、シスプラチン、ドキソルビシン、ゲムシタビン、ドセタキセル、パクリタキセル(タキソール)、ブレオマイシンからなる群より選択されることを特徴とする、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
ErbB受容体・チロシンキナーゼ・ファミリーの阻害剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記阻害剤は、抗EGFR抗体、抗HER−2抗体、または免疫療法上活性を示す、その断片であることを特徴とする、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
(i)少なくとも1つの抗血管新生剤、
(ii)TNFαまたはTNFαの生物活性を有する分子、および
場合によっては、(iii)さらに細胞傷害剤および/または化学療法剤を含んでなるパッケージを含む製薬キット。
【請求項14】
(i)インテグリン受容体阻害剤/拮抗剤
(ii)TNFα
(iii)IFNγ
を含んでなる、請求項13に記載の製薬キット。
【請求項15】
(i)シクロ(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)
(ii)TNFα
(iii)IFNγ
を含んでなる、請求項14に記載の製薬キット。
【請求項16】
前記パッケージ中において、前記製薬的に活性な薬剤複数は、個別の容器内にて提供されることを特徴とする、請求項13〜15のいずれか一項に記載の製薬キット。
【請求項17】
腫瘍ならびに腫瘍転移を治療するための医薬品または医薬組成物の製造を目的とする、請求項1〜12のいずれか一項に定義される医薬組成物、あるいは、請求項13〜16のいずれか一項に定義される製薬キットの使用。
【請求項18】
(i)抗血管新生剤、および
(ii)TNFα
の治療有効量を、同時または連続的に、該個体に対して投与することを含む、個体における腫瘍または腫瘍転移を治療する方法。
【請求項19】
細胞傷害剤および/または化学療法剤の治療有効量を、前記個体に対してさらに投与することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記細胞傷害剤は、IFNγであることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記化学療法化合物は、シスプラチン、ドキソルビシン、ゲムシタビン、ドセタキセル、パクリタキセル(タキソール)、ブレオマイシンからなる群より選択されることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
(i)シクロ(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)
(ii)TNFα、および
(iii)IFNγ
の治療有効量を、同時または連続的に、前記個体に対して投与することを含む、請求項18〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記個体に対して、ErbB受容体チロシンキナーゼ・ファミリーの阻害剤の治療有効量をさらに投与することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記阻害剤は、抗EGFR抗体、抗HER2抗体、または免疫療法上活性な、それらの断片であることを特徴とする、請求項23に記載の方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図2e】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図4d】
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【図4e】
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【図4f】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【図6d】
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【図6e】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−256373(P2009−256373A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−181445(P2009−181445)
【出願日】平成21年8月4日(2009.8.4)
【分割の表示】特願2002−582978(P2002−582978)の分割
【原出願日】平成14年4月18日(2002.4.18)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】