説明

抗血管新生方法及び組成物

色素上皮由来タンパク質(PEDF)遺伝子の特定の標的部位に結合し、そしてその発現を調節するジンクフィンガータンパク質が提供される。これらのジンクフィンガータンパク質は、血管新生を調節する方法及び組成物において使用される。顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)に結合し、発現を調節するジンクフィンガー、及び腫瘍を治療する方法及び組成物におけるそれらの使用も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、抗血管新生治療の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
異常又は過剰な血管新生は、広範囲の疾患、例えば癌(特に固形癌)、盲目、関節炎、及び多くの他の疾患に関与し又はこれらの疾患に付随する。その結果、抗血管新生治療は、このような疾患を治療するのに潜在的に有効であると考えられている。現在の抗血管新生治療は、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)などの血管新生因子の活性を拮抗作用することに主に焦点を当てる。このような治療薬(例えば、抗VEGF抗体)が特定の状況において有効であると示されてきた一方、血管新生の阻害を維持するために繰り返しの投与が必要とされる。さらに、血管新生は多数の血管新生促進性因子及び抗血管新生因子により調節される複雑な過程であるので、1の血管新生因子の活性のみを標的とする薬剤は、多くの状況において血管新生を予防するために十分ではないかもしれない。こうして、1の血管新生因子の活性を阻害する現在のアプローチは有効ではないことが多いので、より有効な抗血管新生治療についての必要性が存在する。複数の血管新生因子の活性を調節することにより血管新生を阻害することができる治療、及び繰り返しの処置を行うことなく長期間の効果を与えることができる治療がより望ましい。
【0003】
色素上皮由来因子(PEDF)は、50kDa(403アミノ酸)の糖タンパク質である。PEDFは、網膜色素上皮(RPE)細胞により分泌されることが最初に発見され、そして目における天然の強力な抗血管新生因子である。加齢性黄斑変性症(AMD)の場合において、PEDFの低下したレベルが報告され、そしてPEDFcDNAの過発現が、マウスのAMDモデルにおいて新血管形成を阻害した。例えば、Dawson, D.W.ら、(1999) "Pigment epithelium-derived factor: a potent inhibitor of angiogenesis." Science 285(5425):245-248; Stellmach, V.ら、(2001) "Prevention of ischemia-induced retinopathy by the natural ocular antiangiogenic agent pigment epithelium-derived factor." Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98(5):2593-2597、及びMori, K.ら、(2002) "AAV-mediated gene transfer of pigment epithelium-derived factor inhibits choroidal neovascularization." Invest. Ophthalmol. Vis. Sci 43(6): 1994-2000を参照のこと。
【0004】
PEDFの抗血管新生機能は、様々な癌に関与してきた。PEDFレベルの低下は、前立腺癌などの特定の癌の転移表現型と関連することが発見され、そしてPEDFの過発現が異種移植片モデルにおいて腫瘍の増殖を阻害した。例えば、Halin S.ら、(2004) "Decreased pigment epithelium-derived factor is associated with metastatic phenotype in human and rat prostate tumors." Cancer Res. 64(16):5664-71、及びAbe Rら、(2004) Overexpression of pigment epithelium-derived factor decreases angiogenesis and inhibits the growth of human malignant melanoma cells in vivo." Am. J. Pathol. 164(4): 1225-1232を参照のこと。
【0005】
PEDFは、複製している内皮細胞のアポトーシスを誘導することによって機能するので、血管内皮細胞の増殖を促進する多くの異なる血管新生因子、例えば血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、及びインスリン様増殖因子(IGF)など、の活性に拮抗作用することができる。Tombran-Tink, J.ら、(2003) "Therapeutic prospects for PEDF: more than a promising angiogenesis inhibitor." Trends Mol. Med. 9(6):244-250. その結果PEDFに基づく抗血管新生治療(つまり、PEDF発現の活性化)は、1の血管新生促進因子の発現が阻害される治療(例えば、VEGF抗体治療)より広く適用可能であり、そしてより効果的であるようである。
【発明の開示】
【0006】
本開示は、部分的に、PEDF遺伝子の発現を調節する組成物、特に遺伝子操作されたジンクフィンガータンパク質に関する。これらの組成物は、新血管形成及び/又は過剰血管新生により特徴つけられる症状を含む様々な症状を治療するのに有用である。特にPEDF遺伝子の発現を調節することにより、血管形成を調節する方法、及び新血管形成を治療する方法も提供される。
【0007】
1の態様では、色素上皮由来因子(PEDF)をコードする遺伝子に結合し、そしてその発現を調節する遺伝子操作されたジンクフィンガータンパク質であって、当該タンパク質が、6個のジンクフィンガーを含み、そして当該ジンクフィンガーの認識領域のアミノ酸配列は、以下の:F1:RSDALSR(配列番号14);F2:QSGDLTR(配列番号15);F3:QSGDLTR(配列番号15);F4:TSGHLSR(配列番号16);F5:RSDHLSN(配列番号17);F6:QSATRIT(配列番号18)である、ジンクフィンガータンパク質が本明細書に提供される。本明細書に記載される遺伝子操作されたジンクフィンガータンパク質のいずれかは、さらに、1以上の機能ドメイン、例えば1以上の活性化ドメイン(例えばVP16及び/又はp65活性化ドメイン)又は1以上の抑制ドメインを含んでもよい。ある実施態様では、遺伝子操作されたジンクフィンガータンパク質は、2個のp65活性化ドメインを含む。
【0008】
別の態様では、PEDFをコードする遺伝子に結合し、そして発現を調節する遺伝子操作されたジンクフィンガータンパク質のいずれかをコードするポリヌクレオチドが提供される。当該ポリヌクレオチドは、さらに、追加のタンパク質をコードする配列、例えば、更なるジンクフィンガータンパク質、例えば血管新生に関与する1以上の遺伝子(例えば1以上のVEGF遺伝子)及び/又は癌に関与する1以上の遺伝子(1以上のサイトカインをコードする遺伝子)に結合し、そして発現を調節する遺伝子操作されたジンクフィンガータンパク質、をコードする配列をさらに含んでもよい。
【0009】
こうして、ある実施態様では、2個の遺伝子操作されたジンクフィンガータンパク質をコードするポリヌクレオチドが提供される。ここで、当該第一ジンクフィンガータンパク質は、6個のジンクフィンガーを含み、そしてジンクフィンガーの認識領域のアミノ酸配列は以下の通りである:F1:RSDALSR(配列番号14);F2:QSGDLTR(配列番号15);F3:QSGDLTR(配列番号15);F4:TSGHLSR(配列番号16);F5:RSDHLSN(配列番号17);F6:QSATRIT(配列番号18)。そしてここで、当該第二ジンクフィンガータンパク質は3個のジンクフィンガーを含み、そして当該ジンクフィンガーの認識領域のアミノ酸配列は以下の通りである:F1:DRSNLTR(配列番号83);F2:TSGHLSR(配列番号16);F3:RSDHLSR(配列番号84)。
【0010】
別の実施態様では、2個の遺伝子操作されたジンクフィンガータンパク質をコードするポリヌクレオチドが本明細書に提供される。ここで当該第一ジンクフィンガーが6個のジンクフィンガーを含み、そして当該ジンクフィンガーの認識領域のアミノ酸配列が以下の通りであり:F1:RSDALSR(配列番号14);F2:QSGDLTR(配列番号15);F3:QSGDLTR(配列番号15);F4:TSGHLSR(配列番号16);F5:RSDHLSN(配列番号17);F6:QSATRIT(配列番号18)、そしてここで当該第二ジンクフィンガータンパク質が6個のジンクフィンガーを含み、そして各ジンクフィンガーの認識配列のアミノ酸配列が以下の通りである:F1:RSDALSE(配列番号65);F2:DSSHRTR(配列番号60);F3:RSDHLSA(配列番号61);F4:ANSNRIK(配列番号62);F5:QSSDLSR(配列番号58);F6:RSDALAR(配列番号32)。
【0011】
2個のジンクフィンガータンパク質をコードするポリヌクレオチドは、内部リボソーム侵入部位(IRES)、或いは第一及び第二ジンクフィンガータンパク質をコードする配列の間に配置される2Aペプチドをコードする配列を含む。さらに、遺伝子操作されたジンクフィンガータンパク質の1つ又は両方をコードする配列は、誘導プロモーター又は組織特異的プロモーターに作用可能なように結合されてもよい。例えば、第一及び/又は第二ジンクフィンガータンパク質をコードする配列は、腫瘍特異的プロモーター(例えば、E2Fプロモーター、スルビビン(survivin)プロモーター、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)プロモーター、COX-2プロモーター、EGD-2プロモーター、又はELF-1プロモーター)、又は低酸素特異的プロモーターに作用可能なように結合されても良い。
【0012】
別の態様では、内在性PEDF遺伝子の発現を調節することにより生物において血管新生を調節する方法が提供される。ある実施態様では、内在性PEDF遺伝子は、本明細書に記載される遺伝子操作されたジンクフィンガータンパク質により調節される。PEDF遺伝子は、例えば遺伝子操作されたジンクフィンガータンパク質が1以上の活性化ドメインを含む場合活性化されてもよいし、又は遺伝子操作されたジンクフィンガータンパク質が1以上の抑制ドメインを含む場合抑制されてもよい。
【0013】
別の態様では、生物における眼の新血管形成の治療方法であって、当該生物の1以上の細胞において内在性PEDF遺伝子の発現を活性化することを含む方法が提供される。好ましい実施態様では、内在性PEDF遺伝子の発現は、本明細書に記載された遺伝子操作されたジンクフィンガータンパク質のいずれかを用いて活性化され、ここで当該遺伝子操作されたジンクフィンガータンパク質はPEDF遺伝子の標的部位に結合する。ある実施態様では、当該方法はさらに、当該生物の1以上の細胞において血管内皮増殖因子(VEGF)、例えばVEGF-A、をコードする内在遺伝子の発現を阻害することを含む。VEGF遺伝子の抑制は、内在性VEGF(例えばVEGF-A)中の標的部位に第二遺伝子操作されたジンクフィンガータンパク質を結合することにより達成されてもよい。ある実施態様では、第二ジンクフィンガータンパク質は、3個のジンクフィンガーを含み、そして各ジンクフィンガーの認識領域のアミノ酸配列は以下の通りである:F1:DRSNLTR(配列番号83);F2:TSGHLSR(配列番号16);及びF3:RSDHLSR(配列番号84)。第二ジンクフィンガータンパク質は、さらに抑制ドメイン、例えばv-erbA抑制ドメイン及び/又はKOX抑制ドメインを含んでもよい。これらの方法のいずれかにおいて、眼の新血管形成は、加齢性黄斑変性症(AMD、糖尿病性網膜症(DR)及び/又は未熟児網膜症である。
【0014】
さらに別の態様では、生物における悪性腫瘍を治療する方法であって、当該生物の1以上の細胞において内在性PEDF遺伝子の発現を活性化させることを含む方法が提供される。ある実施態様では、内在性PEDF遺伝子の発現は、第一遺伝子操作ジンクフィンガータンパク質、本明細書に記載される任意の遺伝子操作ジンクフィンガータンパク質、を内在性PEDF遺伝子の標的部位に結合させることにより活性化される。これらの方法のいずれかは、生物の1以上の細胞においてサイトカイン(例えば、GM-CSF)をコードする内在性遺伝子の発現を、例えば、第二の遺伝子操作されたジンクフィンガータンパク質を内在性GM-CSF遺伝子の標的部位に結合させることによって、活性化するステップを含む。ある実施態様では、第二ジンクフィンガータンパク質は、6個のジンクフィンガーを含み、そして各ジンクフィンガーの認識領域のアミノ酸配列は以下の通りである:F1:RSDALSE(配列番号65);F2:DSSHRTR(配列番号60);F3:RSDHLSA(配列番号61);F4:ANSNRIK(配列番号62);F5:QSSDLSR(配列番号58);F6:RSDALAR(配列番号32)。第二ジンクフィンガータンパク質はさらに、機能ドメイン、例えばp65及び/又はVP16などの活性化ドメインを含んでもよい。例えば頭部及び頸部癌、膠芽細胞腫(glioblastoma)、前立腺癌、及び膵臓癌を含む任意の悪性腫瘍が治療されてもよい。
【0015】
本明細書に記載される任意の方法において、ジンクフィンガータンパク質は、タンパク質及び/又はポリヌクレオチド形態で導入されてもよい。さらに、タンパク質及び/又はポリヌクレオチドは、任意の様式で、例えば1以上の網膜上皮細胞に又は直接腫瘍に導入されてもよい。導入は、ex vivoで、例えば内皮又は間葉幹細胞及び幹細胞にされてもよく、続いて当該幹細胞が当該生物に導入される。
【0016】
遺伝子操作されたジンクフィンガータンパク質をコードするポリヌクレオチドは、ウイルスベクター、例えばアデノ随伴ウイルス(AAV、例えば2型AAV、4型AAV)、複製性アデノウイルス、非複製アデノウイルス(例えば、5型アデノウイルス)、レンチウイルス、及び単純ヘルペスウイルス、にキャプシド化されて導入されてもよい。ある実施態様では、ウイルスベクターは、選択的に腫瘍細胞中で複製される。本明細書に記載される任意の方法において、生物は哺乳動物、例えばヒトであってもよい。
【0017】
こうして、本発明は、非限定的に以下の番号が付された実施態様を含む:
1.色素上皮由来因子(PEDF)をコードする遺伝子に結合し、そして発現を調節する遺伝子操作ジンクフィンガータンパク質であって、当該タンパク質が6個のジンクフィンガーを含み、そして当該ジンクフィンガーの認識領域のアミノ酸配列が以下の通り:
F1:RSDALSR(配列番号14)
F2:QSGDLTR(配列番号15)
F3:QSGDLTR(配列番号15)
F4:TSGHLSR(配列番号16)
F5:RSDHLSN(配列番号17)
F6:QSATRIT(配列番号18)
である、前記遺伝子操作ジンクフィンガータンパク質。
2. 機能ドメインをさらに含む、1に記載の遺伝子操作ジンクフィンガータンパク質。
3. 前記機能ドメインが活性化ドメインである、2に記載の遺伝子操作ジンクフィンガータンパク質。
4. 前記活性化ドメインが、VP16活性化ドメイン、VP64活性化ドメイン、及びp65活性化ドメインからなる群から選ばれる、3に記載の遺伝子操作ジンクフィンガータンパク質。
5. 2個のp65活性化ドメインを含む、4に記載の遺伝子操作ジンクフィンガータンパク質。
6. 前記機能ドメインが抑制ドメインである、2に記載の遺伝子操作ジンクフィンガータンパク質。
6A. 1-6のいずれか1つに記載の遺伝子操作ジンクフィンガータンパク質をコードするポリヌクレオチド。
6B. 1-6のいずれか1つに記載の遺伝子操作ジンクフィンガータンパク質、又は6Aのポリヌクレオチドを含む細胞。
7. 内在性PEDF遺伝子の発現を調節することにより生物において血管新生を調節する方法。
8. 内在性PEDF遺伝子の発現が、遺伝子操作ジンクフィンガータンパク質により調節される、7に記載の方法。
9. 前記ジンクフィンガータンパク質が、1〜6のいずれか1つである、8に記載の方法。
10. 前記PEDF遺伝子の発現が活性化される、7に記載の方法。
【0018】
11. 前記ジンクフィンガータンパク質が4のタンパク質である、10に記載の方法。
12. 前記ジンクフィンガータンパク質が5のタンパク質である、10に記載の方法。
13. 前記PEDF遺伝子の発現が抑制される、7に記載の方法。
14. 前記生物が哺乳動物である、7に記載の方法。
15. 前記哺乳動物がヒトである、14に記載の方法。
16. 生物において眼の新血管形成の治療方法であって、当該生物の1以上の細胞において内在性PEDF遺伝子の発現を活性化することを含む、前記方法。
17. 前記内在性PEDF遺伝子の発現が、第一遺伝子操作ジンクフィンガータンパク質を内在性PEDF遺伝子の標的部位に結合させることにより活性化される、16に記載の方法。
18. 前記ジンクフィンガータンパク質が1〜6のいずれか1つのタンパク質である、17に記載の方法。
19. 前記ジンクフィンガータンパク質が4のタンパク質である、17に記載の方法。
20. 前記ジンクフィンガータンパク質が5のタンパク質である、17に記載の方法。
【0019】
21. 前記方法が、前記生物の1以上の細胞において血管内皮細胞増殖因子(VEGF)をコードする内在遺伝子の発現を抑制することをさらに含む、16に記載の方法。
22. VEGFをコードする前記内在遺伝子が、血管内皮細胞増殖因子A(VEGF-A)をコードする、21に記載の方法。
23. 内在性VEGF-A遺伝子の発現が、内在性VEGF-A遺伝子の標的部位に第二ジンクフィンガータンパク質を結合させることにより抑制される、22に記載の方法。
24. 前記第二ジンクフィンガータンパク質が、3個のジンクフィンガーを含み、そして各ジンクフィンガーの認識領域のアミノ酸配列が以下の通り:
F1:DRSNLTR(配列番号83)
F2:TSGHLSR(配列番号16)
F3:RSDHLSR(配列番号84)
である、23に記載の方法。
25. 前記第二ジンクフィンガータンパク質が、抑制ドメインをさらに含む、24に記載の方法。
26. 前記抑制ドメインが、v-erbA抑制ドメイン及びKOX抑制ドメインからなる群から選ばれる、25に記載の方法。
27. 眼の新血管形成が、加齢性黄斑変性症(AMD)、糖尿病性網膜症(DR)、及び未熟児網膜症からなる群から選ばれる疾患において生じる、16に記載の方法。
28. 2個の遺伝子操作ジンクフィンガータンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、第一ジンクフィンガータンパク質が6個のジンクフィンガーを含み、そして当該ジンクフィンガーの認識領域のアミノ酸配列は以下の通り:
F1:RSDALSR(配列番号14)
F2:QSGDLTR(配列番号15)
F3:QSGDLTR(配列番号15)
F4:TSGHLSR(配列番号16)
F5:RSDHLSN(配列番号17)、及び
F6:QSATRIT(配列番号18)
であり、並びに、第二ジンクフィンガータンパク質が3個のジンクフィンガーを含み、そして当該ジンクフィンガーの認識領域のアミノ酸配列が以下の:
F1:DRSNLTR(配列番号83)
F2:TSGHLSR(配列番号16)
F3:RSDHLSR(配列番号84)
通りである、前記ポリヌクレオチド。
29. 前記第一ジンクフィンガータンパク質と第二ジンクフィンガータンパク質をコードする配列の間に配置される内部リボソーム侵入部位(IRES)をさらに含む、28に記載のポリヌクレオチド。
30. 前記第一ジンクフィンガータンパク質と第二ジンクフィンガータンパク質をコードする配列の間に配置される2Aペプチドをコードする配列をさらに含む、28に記載のポリヌクレオチド。
【0020】
31. 生物において眼の新血管形成の治療方法であって、当該方法が、28、29、又は30のいずれか一つのポリヌクレオチドを当該生物の1以上の細胞に導入することを含む、前記方法。
32. 前記ポリヌクレオチドが1以上の網膜内皮細胞中に導入される、31に記載の方法。
33. 前記ポリヌクレオチドが、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アデノウイルス、及びレンチウイルスからなる群から選ばれるウイルスベクター中にキャプシド化される、31に記載の方法。
34. 前記ウイルスベクターが、アデノ随伴ウイルス(AAV)である、33に記載の方法。
35. 前記ウイルスベクターが、2型AAV又は4型AAVである、34に記載の方法。
36. 前記生物が哺乳動物である、31に記載の方法。
37. 前記哺乳動物がヒトである、36に記載の方法。
38. 生物における悪性腫瘍の治療方法であって、当該方法が、当該生物の1以上の細胞において内在性PEDF遺伝子の発現を活性化することを含む、前記方法。
39. 前記内在性PEDF遺伝子の発現が、第一遺伝子操作ジンクフィンガータンパク質を内在性PEDF遺伝子内の標的部位に結合させることにより活性化される、38に記載の方法。
40. 前記ジンクフィンガータンパク質が1〜6のいずれか1つのタンパク質である、39に記載の方法。
【0021】
41. 前記ジンクフィンガータンパク質が4のタンパク質である、39に記載の方法。
42. 前記ジンクフィンガータンパク質が5のタンパク質である、39に記載の方法。
43. 前記方法が、前記生物の1以上の細胞においてサイトカインをコードする内在性遺伝子の発現を活性化することをさらに含む、38に記載の方法。
44. 前記サイトカインが顆粒球-マクロファージ・コロニー刺激因子(GM-CSF)である、43に記載の方法。
45. 内在性GM-CSF遺伝子の発現が、内在性GM-CSF遺伝子の標的部位に第二遺伝子操作ジンクフィンガータンパク質を結合させることにより活性化される、44に記載の方法。
46. 前記第二ジンクフィンガータンパク質が、6個のジンクフィンガーを含み、そして各ジンクフィンガーの認識領域のアミノ酸配列が以下の通り:
F1:RSDALSE(配列番号65)
F2:DSSHRTR(配列番号60)
F3:RSDHLSA(配列番号61)
F4:ANSNRIK(配列番号62)
F5:QSSDLSR(配列番号58)
F6:RSDALAR(配列番号32)
である、45に記載の方法。
47. 前記第二ジンクフィンガータンパク質が、活性化ドメインをさらに含む、46に記載の方法。
48. 前記活性化ドメインが、p65活性化ドメイン及びVP16活性化ドメインからなる群から選ばれる、47に記載の方法。
49. 前記悪性腫瘍が、頭部及び頸部癌、膠芽細胞腫、前立腺癌、及び膵臓癌からなる群から選ばれる疾患において生じる、38に記載の方法。
50. 2個の遺伝子操作ジンクフィンガータンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、第一ジンクフィンガータンパク質が6個のジンクフィンガーを含み、そして当該ジンクフィンガーの認識領域のアミノ酸配列が以下の通り:
F1:RSDALSR(配列番号14)
F2:QSGDLTR(配列番号15)
F3:QSGDLTR(配列番号15)
F4:TSGHLSR(配列番号16)
F5:RSDHLSN(配列番号17)
F6:QSATRIT(配列番号18)
であり、そしてここで第二ジンクフィンガータンパク質が6個のジンクフィンガーを含み、そして各ジンクフィンガーの認識領域のアミノ酸配列は以下の通り:
F1:RSDALSE(配列番号65)
F2:DSSHRTR(配列番号60)
F3:RSDHLSA(配列番号61)
F4:ANSNRIK(配列番号62)
F5:QSSDLSR(配列番号58)
F6:RSDALAR(配列番号32)
である、前記ポリヌクレオチド。
【0022】
51. 前記第一ジンクフィンガータンパク質と第二ジンクフィンガータンパク質をコードする配列の間に配置される内部リボソーム侵入部位(IRES)をさらに含む、50に記載のポリヌクレオチド。
52. 前記第一ジンクフィンガータンパク質と第二ジンクフィンガータンパク質をコードする配列の間に配置される2Aペプチドをコードする配列をさらに含む、50に記載のポリヌクレオチド。
53. 前記第一ジンクフィンガータンパク質をコードする配列が、腫瘍特異的プロモーターに作用可能なように結合される、50に記載のポリヌクレオチド。
54. 前記第二ジンクフィンガータンパク質をコードする配列が、腫瘍特異的プロモーターに作用可能なように結合される、50に記載のポリヌクレオチド。
55. 前記第一及び第二ジンクフィンガータンパク質をコードする配列が、腫瘍特異的プロモーターに作用可能なように結合されている、50に記載のポリヌクレオチド。
56. 前記腫瘍特異的プロモーターが、E2Fプロモーター、スルビビンプロモーター、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)プロモーター、COX-2プロモーター、EGD-2プロモーター及びELF-1プロモーターからなる群から選ばれる、53、54、又は55のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド。
57. 前記腫瘍特異的プロモーターがE2Fプロモーターである、56に記載のポリヌクレオチド。
58. 前記第一ジンクフィンガータンパク質をコードする配列が、低酸素特異的プロモーターに作用可能なように結合される、50に記載のポリヌクレオチド。
59. 前記第二ジンクフィンガータンパク質をコードする配列が、低酸素特異的プロモーターに作用可能なように結合される、50に記載のポリヌクレオチド。
60. 前記第一ジンクフィンガータンパク質をコードする配列が、組織特異的プロモーターに作用可能なように結合される、50に記載のポリヌクレオチド。
【0023】
61. 前記第二ジンクフィンガータンパク質をコードする配列が、組織特異的プロモーターに作用可能なように結合される、50に記載のポリヌクレオチド。
62. 生物において悪性腫瘍を治療する方法であって、50〜56のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを、当該生物の1以上の細胞に導入することを含む、前記方法。
63. 生物において悪性腫瘍を治療する方法であって、57に記載のポリヌクレオチドを、当該生物の1以上の細胞に導入することを含む、前記方法。
64. 前記ポリヌクレオチドが腫瘍に導入される、62に記載の方法。
65. 前記ポリヌクレオチドを内皮又は間葉幹細胞に導入し、そして当該幹細胞が続いて当該生物に導入される、62に記載の方法。
66. 前記ポリヌクレオチドが、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アデノウイルス、及び単純ヘルペスウイルスからなる群から選ばれるウイルスベクター中にキャプシド化される、62に記載の方法。
67. 前記ウイルスベクターがアデノウイルスである、66に記載の方法。
68. 前記アデノウイルスベクターが、選択的に腫瘍細胞において複製する、67に記載の方法。
69. 前記アデノウイルスベクターが、非複製アデノウイルスベクターである、67に記載の方法。
70. 前記ウイルスベクターが5型アデノウイルスである、69に記載の方法。
71. 前記生物がヒトである、62に記載の方法。
72. 前記悪性腫瘍が、頭部及び頸部癌、膠芽細胞腫、前立腺癌、及び膵臓癌からなる群から選ばれる疾患において生じる、62に記載の方法。
73. 1〜6のいずれか一つに記載の遺伝子操作ジンクフィンガータンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
PEDF遺伝子の発現を調節する組成物が本明細書に開示される。PEDFは、通常、様々な細胞型で発現され、そして異常な新血管形成及び血管新生を阻害するように作用する。その結果、PEDF発現を活性化する本明細書に記載される組成物は、過剰な血管新生に関与するか又は示す様々な症状、例えば非限定的に、加齢性黄斑変性症及び悪性腫瘍(例えば頭部及び頸部癌、膠芽細胞腫、前立腺癌、及び膵臓癌)を治療するのに有用である。
【0025】
全般
本方法の実施、並びに本明細書に開示される組成物の調製及び使用、他に特記がない限り、分子生物学、生化学、クロマチン構造及び分析、コンピューター化学、細胞培養、組換えDNA及び関連する分野における慣用技術の使用は、当業者の範囲内である。これらの技術は、文献に完全に説明されている。例えば、Sambrookら、MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL, 第二版, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989; Ausubel ら、CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY, John Wiley & Sons, New York, 1987 及び提起更新;METHODS IN ENZYMOLOGYのシリーズ, Academic Press, San Diego; Wolffe, CHROMATIN STRUCTURE AND FUNCTION、第三版、Academic Press, San Diego, 1998; METHODS IN ENZYMOLOGY, Vol. 304, "Chromatin" (P.M. Wassarman及びA. P. Wolffe編), Academic Press, San Diego, 1999;並びにMETHODS IN MOLECULAR BIOLOGY, Vol. 119, "Chromatin Protocols" (P .B. Becker編) Humana Press, Totowa, 1999を参照のこと。
【0026】
定義
「ジンクフィンガータンパク質」又は「ZFP」は、亜鉛により安定化されるDNA結合ドメインを有するタンパク質を指す。個々のDNA結合ドメインは、一般的に、「フィンガー」と呼ばれる。ZFPは、少なくとも1のフィンガー、典型的には2、3、4、5、6、又はそれより多くのフィンガーを有する。個々のフィンガーは、F1、F2などとも呼ばれる。各フィンガーは、2〜4塩基対のDNA、一般的には3又は4塩基対のDNAに結合する。ZFPは、標的部位又は標的断片と呼ばれる核酸配列に結合する。各フィンガーは典型的に、約30個のアミノ酸、亜鉛キレート剤、DNA結合サブドメインを含む。これらのタンパク質のうちの1のクラス(C22クラス)を特徴付ける代表的なモチーフは、-Cys-(X)2-4-Cys(X)12-His(X)3-5-His(ここで、Xは任意のアミノ酸である)(配列番号1)である。ジンクフィンガータンパク質の更なるクラスが知られており、そして当該方法の実施において有用であり、そして本明細書に開示される組成物の製造及び使用において有用である(例えば、Rhodesら、(1993) Scientific American 268:56-65を参照のこと)。これらの研究により、このクラスの1のジンクフィンガーが、2個の不変のヒスチジン残基であって、1のベーターターンの2個のシステイン残基にそって亜鉛に配位するヒスチジン残基を含むアルファヘリックスからなるということを示した(例えば、Berg & Shi, Science 271:1081-1085 (1996)を参照のこと)。
【0027】
「標的部位」は、ZFPにより認識される核酸配列である。1の標的部位は典型的に、約4〜約10塩基対を有する。典型的に、2本指のZFPは、4〜7個の塩基対の標的部位、3本指のZFは6〜10塩基対の標的部位、及び6本指のZFPは2個の隣接する9〜10塩基対の標的部位を認識する。
【0028】
「標的亜部位(target subsite)」又は「亜部位」は、1のジンクフィンガーにより結合されるDNA標的部位の位置であり、交差鎖相互作用を除外する。こうして、交差鎖相互作用がない場合、亜部位は、一般的に3のヌクレオチド長である。交差鎖相互作用が生じる場合(つまり、「D-エーブル亜部位(D-able subsite)」、共願のWO00/42219を参照のこと)、亜部位は4ヌクレオチド長であり、そして別の3-又は4-ヌクレオチド亜部位と重複する。「Kd」は、結合分子に対する解離定数を指し、つまり、所定のアッセイシステム(例えば、米国特許第5,789,538号を参照のこと)を用いて計測した際に、所定の条件下(つまり、[標的]<<Kd)で当該化合物のその標的への最大結合の半分を与える化合物(例えばジンクフィンガータンパク質)の濃度を指す。Kdを計測するために使用されるアッセイシステムは、ZFPの実際のKdの最も正確な計測を与えるように選択されるべきである。ZFPの実際のKdの正確な計測を可能にする限り、任意のアッセイシステムが使用されてもよい。1の実施態様では、ZFPのKdが、電気泳動シフトアッセイ(EMSA)を用いて計測される。ZFP純度又は活性について調節がなされない限り、Kdの計算は、所定のZFPの真のKdの過大評価をもたらすこともある。好ましくは、遺伝子の転写を調節するために使用されるZFPのKdは、約100nM未満であり、より好ましくは約75nm未満、より好ましくは約50nM未満、最も好ましくは約25nm未満である。
【0029】
本開示の目的で「遺伝子」は、遺伝子産物をコードするDNA領域、並びに調節配列がコード配列及び/又は転写配列に隣接していようがいまいが、遺伝子産物の産生を調節する全てのDNA領域を含む。従って、遺伝子は、非限定的に、プロモーター配列、ターミネーター、翻訳調節配列、例えばリボソーム結合部位及び内部リボソーム侵入部位、エンハンサー、サイレンサー、インスレーター、境界要素(boundary element)、複製起点、マトリックス結合部位、及び遺伝子座調節領域を含む。
【0030】
「PEDF遺伝子」という用語は、PEDFファミリーの遺伝子の任意のメンバー又は天然のPEDFヌクレオチド配列を有するPEDFファミリー由来の遺伝子の集合、並びに起源又は調製法に関わらずバリアント及び改変形態を一般的に指す。PEDF遺伝子は、任意の起源由来であってもよい。一般的に、PEDF遺伝子は、哺乳動物、特にヒトのPEDF遺伝子を指す。天然のヌクレオチド配列を有するPEDF遺伝子は、天然から得られたPEDF遺伝子(天然PEDF遺伝子)と同じヌクレオチド配列を有する遺伝子である。当該用語は、特定のアイソフォームのバリアントを含む。当該用語はまた、対立遺伝子多型、オルタナティブ・エキソン・スプライシングから得られる他のアイソフォーム、天然配列に機能的に同等である型、及び天然PEDF遺伝子に実質的に同一である核酸も包含する。
【0031】
「VEGF遺伝子」という用語は、VEGFファミリーの遺伝子の任意のメンバー又は天然のVEGFヌクレオチド配列を有するVEGFファミリー由来の遺伝子の集合、並びに起源又は調製様式に関わらず改変された形態及びバリアントを一般的に指す。VEGF遺伝子は、任意の起源由来であってもよい。一般的に、VEGF遺伝子は、哺乳動物、特にヒトにおけるVEGF遺伝子を指す。天然ヌクレオチド配列を有するVEGF遺伝子は、天然から得られたVEGF遺伝子(つまり、天然VEGF遺伝子)と同じヌクレオチド配列を有する遺伝子である。より具体的に、当該用語は、VEGF-A(例えばアイソフォームVEGF-A121、VEGF-A145、VEGF-A165、VEGF-A189、及びVEGF-A206を含む。Leungら、(1989) Science 246:1306-1309; Keck,ら、(1989) Science 246:1309-1312; Connら、(1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2628-2632; 米国特許第5,240,848号;第5,194,596号;第5,219,739号;及び第5,332,671号を参照のこと); VEGF-B(例えば、アイソフォームVEGF-B167及びVEGF-B186を含む。PCT出願公開WO 96/26736号、WO 96/27007号, WO 00/09148号、及び米国特許第5,840,693号、第5,607,918号、及び第5,928,939号); VEGF-C(Joukovら、(1996) EMBO J. 15:290-298; Leeら、(1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:1988-1992; 米穀特許第5,935,820号; 第6,130,071号; 第5,776,755号; 第5,932,540号; 第5,994,300号、及び第6,040,157号; 並びにPCT出願公開WO95/24473号;WO 96/39515号;WO 97/05250号;WO 97/09427号;WO 97/17442号;WO 98/33917号;WO 00/45835、及びWO 99/46364号、EP 0 476 983 B1号を参照のこと);VEGF-D(PCT出願公開WO 98/07832号、WO 98/24811号;及びWO 99/33485号);VEGF-E(例えばWO 99/4767号に記載されるorfウイルス株由来の様々なVEGF様タンパク質);VEGF-H;VEGF-R;VEGF-X;VEGF-138;及びP1GF(P1GF-1及びP1GF-2の両方)を含む。当該用語は特定のアイソフォームのバリアントも含む。例えば、アイソフォームVEGF-145のみではなく、VEGF145-I、VEGF-145-II、及びVEGF-145-IIIを含む。当該用語はまた、対立遺伝子多型、オルタナティブ・エキソン・スプライシングから得られる他のアイソフォーム、天然配列と機能的に同等である形態、及び天然VEGF遺伝子に実質的に同一である核酸を包含する。
【0032】
「遺伝子発現」は、遺伝子内に含まれる情報の遺伝子産物への変換を指す。遺伝子産物は、遺伝子の直接的な転写産物(例えばmRNA、tRNA、rRNA、アンチセンスRNA、リボザイム、構造RNA、又は他のタイプのRNA)、又はmRNAの翻訳により産生されるタンパク質であってもよい。遺伝子産物はまた、キャップ付加、ポリアデニル化、メチル化、及び編集(editing)などのプロセスにより修飾されるRNA、並びに例えばメチル化、アセチル化、リン酸化、ユビキチン化、ADP-リボシル化、ミリスチル化、及びグリコシル化により修飾されるタンパク質を含む。
【0033】
「遺伝子活性化」及び「上方調節」は、遺伝子産物の産生の増加をもたらす全ての過程を指す。遺伝子産物は、RNA(非限定的に、mRNA、rRNA、tRNA、及び構造RNAを含む)又はタンパク質であってもよい。従って、遺伝子の活性化は、遺伝子の転写及び/又はmRNAの翻訳を増加させる過程を含む。転写を増加させる遺伝子活性化過程の例は、非限定的に、転写開始複合体の形成を促進する過程、転写開始率を増加させる過程、転写伸張率を増加させる過程、転写の進行(processivity)を増加させる過程、及び(例えば、転写リプレッサーの結合をブロックすることにより)転写抑制を開放する過程を含む。遺伝子活性化は、例えば、抑制の阻害並びに現存するレベルを超える発現の刺激から構成されうる。翻訳を増加させる遺伝子活性化過程の例として、翻訳開始を増加させる過程、翻訳伸張を増加させる過程、及びmRNAの安定性を増加させる過程が挙げられる。一般的に、遺伝子活性化は、遺伝子産物の産生の任意の検出可能な増加を含み、幾つかの場合約2倍、別の場合約2倍〜約5倍又はその間の任意の整数倍、さらに別の場合約5倍〜約10倍又はその間の任意の整数倍、さらに別の場合約10倍〜約20倍又はその間の任意の整数倍、ある場合約20倍〜約50倍又はその間の任意の整数倍、別の場合約50倍〜約100倍又はその間の任意の整数倍、そしてさらに別の場合100倍以上の遺伝子産物産生の増加を含む。
【0034】
「遺伝子抑制」、「遺伝子発現の抑制」、及び「下方調節」は、遺伝子産物の産生の低下をもたらす任意の過程を指す。遺伝子産物は、いずれかのRNA(例えば非限定的に、mRNA、rRNA、tRNA、及び構造RNAを含む)又はタンパク質でありうる。従って、遺伝子抑制は、遺伝子の転写及び/又はmRNAの翻訳の低下させる過程を含む。転写を低減させる遺伝子抑制過程の例として、非限定的に、転写開始複合体の形成を阻害する過程、転写開始率を低減させる過程、転写伸張率を低減させる過程、転写の進行を低減する過程、及び(例えば、転写アクチベーターの結合を阻害することにより)転写の活性化に拮抗作用する過程が挙げられる。遺伝子抑制は、例えば、活性化の防止、並びに現存レベル未満の発現阻害から構成されうる。転写を低減させる遺伝子抑制過程の例は、翻訳開始を低減する過程、翻訳伸張を低減する過程、及びmRNA安定性を低減する過程を含む。転写抑制は、遺伝子転写の可逆的及び不可逆的不活性化の両方を含む。一般的に、遺伝子抑制は、遺伝子産物の産生の検出できる全ての低下、幾つかの場合、約2倍、別の場合約2倍〜約5倍又はその間の任意の整数倍、さらに別の場合約5倍〜約10倍又はその間の任意の整数倍、さらに別の場合約10倍〜約20倍又はその間の任意の整数倍、ある場合約20倍〜約50倍又はその間の任意の整数倍、別の場合約50倍〜約100倍又はその間の任意の整数倍、そしてさらに別の場合100倍以上の遺伝子産物の産生の低下を含む。さらに別の例では、遺伝子抑制は、遺伝子産物が検出されないように遺伝子発現を完全に阻害することをもたらす。
【0035】
「調節」は、活性化又は過程のレベル又は程度の変化を指す。変化は、増加又は低下のどちらであってもよい。例えば、遺伝子発現の調節は、遺伝子活性化と遺伝子抑制の両方を含む。調節は、標的遺伝子の発現により間接的に又は直接的に影響される任意のパラメーターを測定することによりアッセイすることができる。このようなパラメーターは、例えば、RNA又はタンパク質レベルの変化、タンパク質活性の変化、産物レベルの変化、下流遺伝子発現の変化、レポーター遺伝子転写産物(ルシフェラーゼ、CAT、β-ガラクトシダーゼ、βグルクロニダーゼ、緑色蛍光タンパク質(例えば、Mistili & Spector, Nature Biotechnology 15:961-964 (1997)を参照のこと);シグナル伝達、リン酸化、及び脱リン酸化、レポーターリガンド相互作用、第二メッセンジャー濃度(例えば、cGMP、cAMP、IP3、及びCa2+)、細胞増殖、及び新血管形成の変化を含む。これらのアッセイは、in vitro、in vivo、及びex vivoであってもよい。このような機能効果は、当業者に知られている任意の手段、例えば、RNA又はタンパク質レベルの計測、RNA安定性の計測、例えば、化学発光、蛍光、比色分析反応、抗体結合、誘導マーカー、リガンド結合アッセイを介した下流又はレポーター遺伝子発現の同定;細胞内第二メッセンジャー、例えばcGMP及びイノシトール三リン酸(IP3)の変化;細胞内カルシウムレベルの変化:サイトカイン放出などにより計測することができる。
【0036】
「同一」又は「同一性」割合という用語は、2以上の核酸又はポリペプチドに関して、同じである2以上の配列又はサブ配列であって、同一であるか、或いは例えば以下に記載される配列比較アルゴリズムなどを用いて又は視覚による観察により計測した場合に、最大一致になるように整列され比較された際に、同一となるヌクレオチド又はアミノ酸残基の特定の割合を有する2以上の配列又はサブ配列を指す。
【0037】
「実質的に同一」という語句は、2個の核酸又はポリペプチドに関して、例えば以下に記載される配列比較アルゴリズムを用いて又は視覚による観察により計測した場合に、最大一致になるように整列されそして比較された場合、少なくとも75%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、95%、又はそれより高割合、又はその間の任意の整数値のヌクレオチド又はアミノ酸残基の同一性を有する2以上の配列又はサブ配列を指す。好ましくは、実質的な同一性は、約10、好ましくは約20、より好ましくは約40〜60又はその間の任意の整数値の残基である配列の領域に渡り、好ましくは60〜80残基を超える長い領域に渡り、より好ましくは少なくとも約90〜100残基、そして最も好ましくは当該配列は、実質的に比較される配列の全長、例えばヌクレオチド配列のコード領域に渡り存在する。
【0038】
配列比較について、一般的には1の配列が、参照配列として作用し、それに対して試験配列が比較される。配列比較アルゴリズムを用いる場合、試験配列と参照配列がコンピューター内に入力され、サブ配列の座標が必要に応じて指定され、そして配列アルゴリズムプログラムパラメーターが指定される。当該配列比較アルゴリズムは次に、参照配列に対する試験配列の配列同一性割合を、指定されたプログラムパラメーターに基づいて計算する。
【0039】
比較のための最適配列整列は、例えば、Smith & Waterman, Adv. Appl. Math. 2:482 (1981)のローカルホモロジーアルゴリズムにより、Needleman & Wunsch, J. MoI. Biol. 48:443 (1970)のホモロジーアライメントアルゴリズムにより、Pearson & Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2444 (1988)の類似法についてのサーチにより、これらのアルゴリズムのコンピューターによる実現(Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, Wis.におけるGAP、BESTFIT、FASTA、及びTFASTA)により、又は視覚による観察 [一般的に、Current Protocols in Molecular Biology, (Ausubel, F. M.ら編.) John Wiley & Sons, Inc., New York (1987-1999)、補遺46などの補遺を含む(1999年4月)を参照のこと]により行うことができる。これらのプログラムを用いて配列比較を行うことは、一般的に各プログラムについてデフォルトのパラメーターを用いて行われる。
【0040】
配列同一性割合及び配列類似性割合を測定するために適しているアルゴリズムの別の例は、BLASTアルゴリズムであり、当該アルゴリズムは、Altschulら、J. Mol. Biol. 215:403-410 (1990)において記載されている。BLAST分析を実施するためのソフトウェアは、全米バイオテクノロジー情報センターを通じて公共利用可能である。当該アルゴリズムは、クエリー配列中の長さWのショートワード(short words)であって、データーベース配列中の同じ長さのワードとアラインした場合に適合するか又はいくらかの正値の閾値Tを満たすショートワードを同定することにより高スコア配列ペア(HSP)を最初に同定することを含む。これは、近隣ワードスコア閾値と呼ばれる(上記Altschulら)。これらの最初の近隣ワードヒットは、それらを含むより長いHSPを発見するためのサーチの開始のための種として働く。次にワードヒットは、累積的なアライメントスコアが増加する限り、各配列に沿って両方向に伸張する。
【0041】
ヌクレオチド配列について、パラメーターM(マッチする残基の対についての報酬スコア(reward score);常に>0)及びN(ミスマッチ残基についてのペナルティスコア;常に<0)を用いて累積スコアが計算される。アミノ酸配列については、スコアリングマトリックスが累積的スコアを計算するために使用される。各方向へのワードヒットの伸張は、最大達成値から数量Xだけ落ち込んだ場合;1以上のマイナススコアの残基のアライメントの増加のため、累積スコアが0以下になった場合;又はいずれかの配列の末端に到達した場合に止められる。配列類似性を決定するために、BLASTプログラムのデフォルトパラメーターが適している。(ヌクレオチド配列についての)BLASTNプログラムは、デフォルトとしてワード長(W)11、期待値(E)10、M=5、N=-4、及び両方の鎖の比較を使用する。アミノ酸配列では、BLASTPプログラムは、デフォルトとしてワード長(W)3、期待値(E)10、及びBLOSUM62スコアリングマトリクスを用いる。TBLATNプログラム(ヌクレオチド配列についてタンパク質配列を用いる)は、デフォルトとしてワード長(W)3、期待値(E)10、及びBLOSUM62スコアリングマトリクスを用いる(Henikoff & Henikoff, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 10915-11171 (1989)を参照のこと)。配列同一性割合を計算することに加えて、BLASTアルゴリズムは、2個の配列間の類似性の統計的分析を行う(例えば、Karlin & Altschul, Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 90:5873-5787 (1993)を参照のこと)。BLASTアルゴリズムにより提供される類似性の1の計測は、最小和確率(P(N))である。これは、2個のヌクレオチド又はアミノ酸配列の間の適合が偶然生じる確率の提示を提供する。例えば、試験核酸の参照核酸との比較において最小和確率が約0.1未満、より好ましくは約0.01未満、そして最も好ましくは約0.001未満である場合、核酸は参照配列に類似していると考えられる。
【0042】
2個の核酸配列が実質的に同一であるという別の指摘は、2個の分子が互いにストリンジェント条件下で互いにハイブリダイズするということである。「実質的にハイブリダイズする」は、プローブ核酸と標的核酸との間の相補的ハイブリダイゼーションを指し、そして当該ハイブリダイゼーション培地のストリンジェンシーを低減することにより収容することができ、標的ポリヌクレオチド配列の所望の検出を達成する少しのミスマッチを包含する。「特異的にハイブリダイズする」という語句は、当該配列が複合混合物(例えば全細胞)DNA又はRNA中に存在する場合、ある分子を、ストリンジェント条件下で特定のヌクレオチド配列にのみ結合させ、二本鎖を形成させ、又はハイブリダイズさせることを指す。
【0043】
2個の核酸配列又はポリペプチドが実質的に同一であるというさらなる指摘は、以下に記載される様に第一核酸によりコードされるポリペプチドが、第二核酸によりコードされるポリペプチドと免疫学的に交差反応性であるということである。
【0044】
特定のポリヌクレオチド配列の「保存的改変バリエーション」は、同一又は実質的に同一のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを指すか、又は当該ポリヌクレオチドがアミノ酸配列をコードしない場合、実質的に同一な配列を指す。遺伝コードの縮重のため、多数の機能的に同一な核酸が、ある所定のポリペプチドをコードする。例えば、コドンCGU、CGC、CGA、CGG、AGA、及びAGGは全てアミノ酸であるアルギニンをコードする。こうして、アルギニンがコドンにより特定される全ての場合において、当該コドンは、コードするポリペプチドを変化させることなく記載された対応するコドンのいずれかに変えることができる。このような核酸のバリエーションは、「サイレントバリエーション」であり、「保存的に改変されたバリエーション」の一種である。ポリペプチドをコードする本明細書中に記載される全てのポリヌクレオチド配列の全ては、他に記載される場合を除き全ての可能なサイレントバリエーションを記載する。核酸における各コドン(通常メチオニンのための唯一のコドンAUGを除く)が、標準技術により機能的に同一な分子を産生するために改変することができるということが当業者に認識されよう。従って、ポリペプチドをコードする核酸の各「サイレントバリエーション」は、各々記載された配列中に暗示される。
【0045】
ポリペプチドは、例えば2つのペプチドが保存的置換によってのみ異なる場合、第二ポリペプチドに対して実質的に同一である。タンパク質を記載する場合「保存的置換」は、当該タンパク質の活性を実質的に変化させないタンパク質のアミノ酸組成の変化を指す。こうして、特定のアミノ酸配列の「保存的改変バリアント」は、タンパク質活性に重要ではないアミノ酸置換、又は重要なアミノ酸の置換であっても実質的に活性を変化させないようにアミノ酸を同様の性質(例えば、酸性、塩基性、正荷電又は負荷電、極性又は非極性など)を有する他のアミノ酸へと置換することを指す。機能的に同様のアミノ酸を提供する保存的置換表は、当該技術分野に知られている。例えば、Creighton (1984) Proteins, W. H. Freeman and Companyを参照のこと。さらに、個々の置換、欠失、又は付加であって、1のアミノ酸又はわずかな比率のアミノ酸を、コードされた配列において変更し、加え、又は欠失することも、「保存的に改変されたバリエーション」である。
【0046】
タンパク質、ポリペプチド、又は核酸の「機能的断片」又は「機能的同等物」は、その配列が全長タンパク質、ポリペプチド、又は核酸に同一ではないが、全長タンパク質、ポリペプチド、又は核酸などと同じ機能を保持するタンパク質、ポリペプチド、又は核酸である。機能的な断片は、対応する天然分子より多くの、少ない、又は同じ数残基を有することができ、及び/又は1以上のアミノ酸又はヌクレオチド置換を含むことができる。核酸の機能を測定する方法(例えば、コードする機能、別の核酸にハイブリダイズする能力、調節分子への結合)は、当該技術分野に周知である。同様に、タンパク質機能を測定する方法は、周知である。例えば、ポリペプチドのDNA結合性の機能は、ろ過結合、電気泳動シフト、又は免疫沈降アッセイにより測定することができる。例えば、上記Ausbelらを参照のこと。別のタンパク質と相互作用するタンパク質の能力は、共免疫沈降、ツーハイブリッドアッセイ、又は遺伝的及び生化学的の両方の相補性により決定することができる。例えば、Fieldsら(1989)Nature 340:245-246; 米国特許第5,585,245号及びPCT第WO 98/44350号を参照のこと。
【0047】
「核酸」、「ポリヌクレオチド」、及び「オリゴヌクレオチド」という用語は、互換性を持って使用され、そして一本鎖又は二本鎖形態のデオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドを指す。本開示の目的では、これらの用語は、ポリマーの長さに関して制限するものとして解釈されるべきではない。当該用語は、天然ヌクレオチドの既知のアナログ、並びに塩基、糖、及び/又はリン酸モチーフにおいて改変されるヌクレオチドを包含できる。一般的に、特定のヌクレオチドのアナログは、同じ塩基対特異性を有する。つまり、AのアナログはTと塩基対形成する。こうして、ポリヌクレオチドの配列という用語は、ポリヌクレオチド分子のアルファベット表示である。当該アルファベット表示は、中央演算処理装置を有するコンピューターのデーターベース中に入力でき、そして機能ゲノミクス及びホモロジー検索などのバイオインフォマティクスの用途に使用される。さらに当該用語は、既知のヌクレオチドアナログ又は改変骨格残基又は結合を含む核酸であって、合成、天然、及び非天然型であり、参照核酸と同様の結合性質を有し、そして参照ヌクレオチドに類似の様式で代謝される核酸を包含する。このようなアナログの例として、非限定的に、ホスホロチオエート、ホスホロアミデート、メチルホスホネート、キラル-メチルホスホネート、2-O-メチルリボヌクレオチド、及びペプチド核酸(PNA)を含む。ヌクレオチド配列は、慣用される5'-3'の向きで本明細書に示されている。
【0048】
「外因性分子」は、細胞内に通常存在しないが、1以上の遺伝学、生化学、又は他の方法により導入することができる分子である。細胞内における通常の存在は、当該細胞の特定の発達段階及び環境条件に関して決定される。こうして、例えば、筋肉の胎生発達の間にのみ存在する分子は、成体の筋肉細胞に関しては外因性である。外因性分子は、例えば、機能不全内在性分子の機能しているバージョン、或いは通常機能の内在性分子の機能不全バージョンを含むことができる。
【0049】
外因性分子は、とりわけ、小分子、例えばコンビナトリアル化学プロセスにより作製されるものであってもよいし、又は大分子、例えばタンパク質、核酸、炭水化物、脂質、糖タンパク質、リポタンパク質、多糖、上記分子の任意の改変された誘導体、又は上記分子の1以上を含む任意の複合体であってもよい。DNA及びRNAを含む核酸は、一本鎖又は二本鎖であってもよく;直線、分岐状、又は環状であってもよいし;そして任意の長さであってもよい。核酸は、二本鎖を形成できる核酸、並びに三重鎖を形成できる核酸を含んでもよい。例えば、米国特許第5,176,996号及び第5,422,251号を参照のこと。タンパク質は非限定的に、DNA結合タンパク質、転写因子、クロマチンリモデリング因子、メチル化DNA結合タンパク質、ポリメラーゼ、メチラーゼ、デメチラーゼ、アセチラーゼ、デアセチラーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ、インテグラーゼ、リコンビナーゼ、リガーゼ、トポイソメラーゼ、ギラーゼ及びヘリカーゼを含む。
【0050】
外因性分子は、当該分子が内在性分子とは異なる配列を有するという場合には、内在性分子と同じタイプの分子、例えばタンパク質又は核酸(つまり、外因性遺伝子)であってもよい。外因性分子を細胞内に導入する方法は、当業者に知られており、そして非限定的に脂質媒介性の輸送(つまり、リポソーム、例えば中性及びカチオン性脂質)、電気穿孔、直接注射、細胞融合、粒子照射、リン酸カルシウム共沈、DEAE-デキストラン媒介性輸送、及びウイルス-ベクター媒介性輸送を含む。
【0051】
対照的に、「内在性分子」は、特定の環境条件下で特定の発生段階における特定の細胞において通常存在する分子である。
【0052】
「転写開始部位に隣接する」という語句は、転写開始部位の上流又は下流のいずれか約50塩基内に存在する標的部位を指す。転写開始部位の「上流」は、転写開始部位の5'側における約50を超える塩基である標的部位(つまり、遺伝子の非転写領域)を指す。転写開始部位の「下流」は、転写開始部位の3'側の約50を超える塩基である。
【0053】
「融合分子」は、2以上のサブユニット分子が、典型的に共有結合により結合される分子である。サブユニット分子は、同じ化学型の分子であってもよいし、又は異なる化学型の分子であってもよい。第一タイプの融合分子の例は、非限定的に融合ポリペプチド(例えば、ZFP・DNA結合ドメインと転写活性化ドメインとの間の融合である)及び融合核酸(例えば、上記融合ポリペプチドをコードする核酸)を含む。融合分子の第二タイプの例は、非限定的に、三本鎖形成核酸とポリペプチドとのあいだの融合、及びマイナー・グルーブ結合物質と核酸との間の融合を含む。
【0054】
「調節ドメイン」又は「機能ドメイン」は、DNA結合ドメイン、つまりZFP、にくっ付けたときに転写調節活性を有するタンパク質又はタンパク質ドメインを指す。典型的に、調節ドメインは、(例えば、融合分子を形成するために)ZFPに共有結合又は非共有結合されて、転写調節を生じさせる。調節ドメインは、活性化ドメイン又は抑制ドメインであってもよい。活性化ドメインは、非限定的に、核因子κ-BのVP16、VP64、及びp65サブユニットを含む。抑制ドメインは、非限定的に、KRAB、MBD2B、及びv-ErbAを含む。さらなる調節ドメインは、例えば、転写因子及びコファクター(例えば、MAD、ERD、SID、初期成長応答因子1、及び核ホルモン受容体)、エンドヌクレアーゼ、インテグラーゼ、リコンビナーゼ、メチルトランスフェラーゼ、ヒストン・アセチルトランスフェラーゼ、ヒストンデアセチラーゼなどを含む。アクチベーター及びリプレッサーは、コアクチベーター及びコリプレッサーを含む(例えば、Utleyら、Nature 394:498-502(1998))。或いは、ZFPは、調節ドメインなしで単独で役割を果たして、転写調節を生じさせる。
【0055】
「作用可能な様に結合される」又は「動作可能な様に結合される」という用語は、2以上の構成要素(例えば、配列要素)の並列に関して使用され、ここで、当該構成要素は、両方の構成要素が通常に機能し、そして少なくとも1の構成要素が少なくとも1の他の構成要素上で発揮される機能を媒介できるという可能性を許容するように配置される。例示の目的で、転写調節配列、例えばプロモーターは、1以上の転写調節因子の有無に応答してコード配列の転写レベルを調節する場合、コード配列に作用可能な様に結合されている。作用可能なように結合された転写調節配列は、一般的にコード配列に対しシス配置で結合されるが、当該配列に直接隣接する必要はない。例えば、エンハンサーは、隣接していなくとも、コード配列に作用可能な様に結合される転写調節配列を構成しうる。
【0056】
融合ポリペプチドに関して、「作用可能な様に結合される」又は「動作可能な様に結合される」という用語は、各構成要素が、他の構成要素に結合された状態において、その様に結合されていない場合に当該各構成要素が発揮するのと同じ機能を発揮するということを指す。例えば、ZFP・DNA結合ドメインが転写活性化ドメイン(又はその機能断片)に融合される融合ポリペプチドについて、ZFP・DNA結合ドメイン及び転写活性化ドメイン(又は、その機能断片)は、当該融合ポリペプチドにおいて、ZFP・DNA結合ドメイン部位がその標的部位及び/又はその結合部位に結合でき、その一方、転写活性化ドメイン(又はその機能断片)が転写を活性化できる場合、作用可能な結合状態である。
【0057】
「組換え」という用語は、細胞に関して使用される場合、当該細胞が外来性核酸を複製するか、又は外来性核酸によりコードされるペプチド又はタンパク質を発現することを指す。組換え細胞は、当該細胞の生来の(非組換え)形態では見られない遺伝子を含むことができる。組換え細胞は、当該細胞の生来の形態において見られる遺伝子であって、当該遺伝子が改変されそして人工的方法により当該細胞へと再導入された遺伝子を含むことができる。当該用語はまた、当該細胞から当該核酸を取り除くことなく改変された細胞に内在する核酸を含む細胞を含む。このような改変は、遺伝子置換、部位特異的突然変異、及び関連技術により得られる改変を含む。
【0058】
「組換え発現カセット」、「発現カセット」、又は「発現コンストラクト」は、組換え又は合成により作成された調節エレメントを有する核酸コンストラクトである。当該調節エレメントは、このような配列に適合する宿主において当該調節エレメントに作用可能な様に結合している構造遺伝子の発現に影響できる。発現カセットは、少なくともプロモーターと、場合により転写終結シグナルを含む。典型的に、組換え発現カセットは、転写される少なくとも1の核酸(例えば、所望のポリペプチドをコードする核酸)及びプロモーターを含む。発現を生じさせるのに必須又は役立つ更なる因子は、本明細書に記載される様に使用されてもよい。例えば、発現カセットはまた、宿主細胞から発現されるタンパク質の分泌を誘導するシグナル配列をコードするヌクレオチド配列を含むことができる。転写終結シグナル、エンハンサー、及び他の核酸配列であって遺伝子発現に影響するものは、また発現カセット内に含めることができる。
【0059】
「プロモーター」は、転写を導く核酸調節配列の配列として定義される。本明細書で使用されるとき、プロモーターは典型的に転写開始部位の近くの必須核酸配列、例えば、あるRNAポリメラーゼII型のプロモーターの場合、TATAエレメント、CCAATボックス、SP-1サイトなどを含む。本明細書に使用されるとき、プロモーターはまた場合により遠位のエンハンサー又はリプレッサー・エレメントを含む。これらは、転写開始部位から最大で数千塩基対の位置に位置しうる。プロモーターは、ポリペプチドなどのDNA結合成分、例えば核レセプター、Gal4、lacリプレッサーなどによるトランス活性化に応答するエレメントを有する。
【0060】
「構成的」プロモーターは、多くの環境及び発生条件下で活性であるプロモーターである。「誘導性」プロモーターは、特定の環境又は発生条件下で活性であるプロモーター、例えば、低酸素応答エレメント(HRE)(例えば、プラスミノーゲン活性化阻害因子-1(PAI-1)プロモーター(Finkら、(2002) Blood 99 (6): 2077-83));ADH2プロモーター(Passothら、(2003)Yeast 20 (1): 39-51)を含む低酸素依存性プロモーターである。
【0061】
「組織特異的」プロモーターは、特定の組織においてのみ活性であるプロモーターである。例えば、腫瘍特異的プロモーターの非限定的な例は、E2F-1、スルビビン、シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)、上皮糖タンパク質2(EGP-2)、及びTERTを含む。Luら、(2005) Gene Ther. 12 (4):330-338.
【0062】
「弱いプロモーター」は、Eisenberg & Mcknight, Mol. Cell. Biol. 5:1940-1947(1985)に記載されるように、野生型単純ヘルペスウイルス(HSV)チミジン・キナーゼ(tk)プロモーター又は変異型HSVtkプロモーターとおよそ同じ活性を有するプロモーターを指す。
【0063】
「発現ベクター」は、組換え又は合成により作成された核酸コンストラクトであって、宿主細胞において特定の核酸の転写を許容し、そして場合により当該宿主細胞において発現ベクターの組み込み又は発現を許容する一連の特定の核酸要素を有する核酸コンストラクトである。当該発現ベクターは、プラスミド、ウイルス、又はウイルス若しくは非ウイルス起源の核酸断片の一部でありうる。典型的に、発現ベクターは、プロモーターに作用可能な様に結合する転写される核酸を含む「発現カセット」を含む。「発現ベクター」という用語はまたプロモーターに作用可能な様に結合された裸のDNAを含む。
【0064】
「宿主細胞」は、発現ベクター又は核酸を含む細胞を意味し、その各々は、場合によりZFP又はZFP融合タンパク質をコードする。宿主細胞は、典型的に発現ベクターの複製又は発現を支持する。宿主細胞は、原核細胞、例えば、大腸菌(E.coli)であるか、又は真核細胞、例えば酵母、細菌、プロトゾア、高等植物細胞、昆虫細胞、又は両生類細胞、或いは哺乳動物細胞、例えばCHO、HeLa、293、COS-1など、例えば培養細胞(in vitro)、移植片及び初代培養物(in vitro及びex vivo)、及び細胞(in vivo)でありうる。
【0065】
「天然」という用語は、物に対して適用されるとき、当該物が自然界に見出せることを意味し、人間により人工的に作り出されたものとは区別される。
【0066】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」という用語は、本明細書中で互換性を持って使用されて、アミノ酸残基のポリマーを指す。当該用語は、1以上のアミノ酸残基が対応する天然アミノ酸のアナログ又はミメティクスであるアミノ酸ポリマー、並びに天然アミノ酸ポリマーに適用される。ポリペプチドは、例えば、糖残基を加えることにより改変されて、糖タンパク質を形成しうる。「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」という用語は、糖タンパク質並びに糖タンパク質でないものを含む。ポリペプチド配列は、慣用されるN-末端からC末端への向きで本明細書に表示される。
【0067】
核酸又はポリペプチドに関して使用されるとき、「サブ配列」又は「断片」は、それぞれ、ヌクレオチド又はアミノ酸の長い配列(例えばポリペプチド)の一部を含むヌクレオチド又はアミノ酸の配列を指す。
【0068】
「血管新生」は、新たな血管を発達させる過程を広く指す。当該過程は、既に存在する血管からの血管内皮細胞の増殖、移行、及び組織浸潤に関与する。血管新生は、通常の生理学的過程、例えば、卵胞発育、胎児発育、及び創傷治癒、並びに病理的過程、例えば腫瘍増殖及び転移において重要である。「調節」という用語は、生理学的過程の程度、器官、レベル、又は性質の変化を指す。例えば、血管新生の調節は、新たな血管の形成の増加又は新たな血管形成の現象を含みうる。血管新生の調節は、不透過又は非高浸透性血管の形成の刺激を指すことができる。血管新生についての様々なアッセイは、本明細書において、及び米国特許公開20030021776において開示され、その全てを本明細書に援用する。
【0069】
「新血管形成」という用語は、一般的に新たな血管の形成を指し、特に異常組織(例えば新生物組織)又は異常な位置における血管形成を指す。
【0070】
「悪性腫瘍」という用語は、退生(脱分化)、浸潤及び/又は転移できる腫瘍を指す。
【0071】
本明細書に使用される「治療する」及び「治療」という用語は、症状の重篤度及び/又は頻度の低減、症状及び/又は原因の除去、症状及び/又はその原因の発生の予防、並びに損傷の改善又は寛解を指す。
【0072】
医薬組成物の「有効量」は、所望の効果を提供するための薬剤の十分であるが無毒性である量を意味する。当該用語は、対象を治療するために十分な量を指す。こうして、治療「有効量」という用語は、疾患又は他の不所望な症状の進行を予防し、妨げ、遅延し、又は回復させることによる、疾患状態又は症状を治療するために十分な量を指す。予防有効量という用語は、疾患を有していない対象に与えられる量を指し、そうして疾患の開始を予防し、妨げ、遅延するために有効な量である。
【0073】
II.要旨
PEDF発現を調節するこれらのタンパク質、及びこれらのタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む組成物が本明細書に記載される。血管新生を調節するための様々な方法;眼の新血管形成を治療するための方法;並びに悪性腫瘍を治療する方法も記載されている。特定の実施態様では、このような方法は、ある生物中の細胞又は細胞集合を、1以上のPEDF遺伝子に特異的な配列に結合する1以上の組成物と接触させることを含む。ある方法では、2以上のこのような組成物が投与され、ここで少なくとも1のZFPが、PEDF遺伝子の標的部位に結合できる。
【0074】
こうして、特定の核酸断片(標的部位)を特異的に認識し、そして結合するように遺伝子操作された様々な組成物が本明細書に提供され、それにより1以上のPEDF遺伝子の発現が調節される。当該組成物は、ジンクフィンガータンパク質を含んでもよく、当該タンパク質は、調節ドメインに結合されて、PEDF遺伝子の転写を活性化又は抑制するキメラ転写因子を作製してもよい。その様なZFPでは、PEDF遺伝子の発現を高めることができ、特定の他のZFPでは、発現を抑制することができる。一般的に、ZFPが結合する標的部位は、PEDF遺伝子の活性化又は抑制をもたらす部位である。標的部位は、転写開始部位(ヌクレオチド0と定義される)の上流及び/又は下流に隣接していてもよい。上で記載されるように、本ZFPの幾つかは1のPEDF遺伝子の発現を調節する。他のZFPは、複数のPEDF遺伝子の発現を調節する。
【0075】
標的部位に結合し、そしてPEDF遺伝子の発現に影響するZFPの能力のおかげで、本明細書に提供されるZFPは、様々な適用で使用することができる。一般的に、ZFPは、増殖を活性化又は抑制することにより様々な内皮細胞の増殖を制御するために使用することができる。ある適用では、ZFPは、PEDF遺伝子の発現を活性化して、in vitro及びin vivoの両方において細胞増殖の危険な血管新生を抑制するために使用することができる。そのような活性化は、異常な血管形成を伴う病気の治療において、新たな血管及び毛細血管の形成を阻害するために使用することができる。例えば、ZFPは、過剰に血管形成される腫瘍を有する個体において側副血行の発達を阻害するために、及び/又は糖尿病性網膜症及び関節炎に付随する病的血管新生などの病変において微小血管系の増殖を予防する際に使用することができる。
【0076】
ZFPはまた、治療適用以外の適用において使用することもできる。例えば、ZFPは、PEDF遺伝子発現の活性化又は抑制のいずれかに抵抗することができる薬剤をスクリーニングするために使用することができる。ジンクフィンガータンパク質をコードする核酸も本明細書に記載されている。さらに、スクリーニング法を通じて同定される薬剤、ZFPをコードする核酸及び/又はZFP自身が、記載された様々な疾患を治療する医薬組成物において利用することができる。
【0077】
ジンクフィンガータンパク質
好ましい態様では、PEDF発現を調節できる本明細書に記載される組成物はジンクフィンガータンパク質を含む。こうして、配列特異的な様式でPEDF遺伝子内のDNAに結合できるジンクフィンガータンパク質(ZFP)が開示される。記載される様に、これらのZFPは、血管新生の調節を含む様々な適用において、並びに不所望の新血管形成及び悪性腫瘍の治療において使用することができる。これらのタンパク質の1のクラスを特徴付けする代表的なモチーフであるC22クラスは、-Cys-(X)2-4-Cys-(X)12-His-(X)3-5-His(ここで、Xは任意のアミノ酸である)(配列番号1)である。幾つかの構造研究により、フィンガードメインが、2個の不変ヒスチジン残基を含むαヘリックスと、亜鉛を配位するβターン中の2個の不変システイン残基とを含むということが示された。しかしながら、本明細書に提供されるZFPは、この特定のクラスに限られない。ジンクフィンガ-タンパク質の更なるクラスが知られており、そして本明細書に開示される当該方法及び組成物において使用されうる(例えば、Rhodesら、(1993) Scientific American 268:56-65を参照のこと)。あるZFPにおいて、1つのフィンガー・ドメインは約30アミノ酸長である。ジンク・フィンガー・ドメインは、DNA認識だけではなく、RNA結合及びタンパク質-タンパク質結合にも関与する。
【0078】
Zif268、つまりマウス転写因子由来の3本のフィンガー・ドメインのX線結晶構造が、同族のDNA配列と組み合わせて解読され、そして各々のフィンガーが、周期的な回転により次のフィンガーに重なりうるということが示される。当該構造により、各フィンガーが、3塩基対の間隔にわたりDNAと独立して相互作用し、各認識ヘリックス上の-1、2、3、及び6の位置での側鎖がそれぞれのDNAトリプレット・亜部位と接触している。Zif268のアミノ末端は、DNA鎖の3'末端に位置し、当該3'末端に当該アミノ酸が最も接触する。幾つかのジンクフィンガーは、標的断片の4番目の塩基に結合できる。ジンクフィンガー・タンパク質が最も密接に接触する鎖が標的鎖に指定されたならば、幾つかのジンクフィンガー・タンパク質は、標的鎖の3塩基トリプレット及び標的ではない鎖の4番目の塩基に結合する。当該4番目の塩基は、3塩基亜部位の3'側の次の塩基に相補的である。
【0079】
標的部位は、標的遺伝子(PEDF)の転写開始部位(ヌクレオチド0と定義される)の上流又は下流に位置することができ、そして実際、開始部位のかなり上流又は下流であってもよい。幾つかの標的部位は、9個のヌクレオチドを含み、一方他の部位は18個のヌクレオチドを含む(表3を参照のこと)。これらの標的部位の1の特徴は、ZFP、又はZFP及び1以上の調節ドメインを含む融合タンパク質を標的部位に結合させることにより、1以上のPEDF遺伝子の発現レベルに影響することができるということである。標的部位は、特定のPEDF遺伝子に固有の部位であってもよいし、或いは、複数のPEDF遺伝子中に、又は1のPEDF遺伝子中の複数の位置に生じてもよい。
【0080】
ジンクフィンガータンパク質は、ジンクフィンガー要素から形成される。例えば、ジンクフィンガータンパク質は、1〜37本のフィンガーを有することができ、一般的に2、3、4、5、又は6本のフィンガーを有する。ジンクフィンガータンパク質は、標的遺伝子内のかなり小さいサブ配列を表す標的部位(標的断片と呼ばれることもある)を認識し、そして結合する。ジンクフィンガータンパク質の各要素のフィンガーは、標的部位の亜部位に結合できる。亜部位は、同じ鎖(標的鎖とも呼ばれる)上の3個の連続塩基のトリプレットを含む。当該亜部位は、当該標的鎖上の3個の連続塩基の3'側の次の塩基の相補塩基である反対側の鎖上の第4の塩基を含んでも含まなくてもよい。多くのジンクフィンガー・タンパク質において、ジンクフィンガーは、同じジンクフィンガー・タンパク質中の他のフィンガーとは実質的に無関係であるトリプレット亜部位に結合する。従って、複数のフィンガーを含むジンクフィンガーの結合特異部は、通常、概ねその構成フィンガーの特異部の集合である。例えば、ジンクフィンガー・タンパク質が、トリプレットXXX、YYY、ZZZに独立して結合する第一、第二、及び第三フィンガーから形成される場合、ジンクフィンガー・タンパク質の結合特異部は、3'XXXYYYZZZ5'である。
【0081】
N末端からC末端へのジンクフィンガー・タンパク質中のフィンガーの相対順番は、標的における3'から5'への方向のトリプレットの相対順番を決定する。Berg & Shi, Science 271, 1081-1086(1996)を参照のこと。その構成フィンガーの集合としてジンクフィンガータンパク質の結合性質を評価することは、いくつかの場合、同じタンパク質において結合している複数のフィンガーの前後関係に依存する相互作用により影響されてもよい。
【0082】
2以上のジンクフィンガー・タンパク質は、構成ジンクフィンガー・タンパク質の標的の集合体である標的特異性を有するように結合されうる(例えば、Kim & Pabo, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 95, 2812-2817(1998)を参照のこと)。例えば、第一、第二、及び第三構成フィンガーであって、それぞれXXX、YYY、及びZZZに結合するフィンガーを有する第一ジンクフィンガー・タンパク質は、第一、第二、及び第三構成フィンガーであって、結合特異部AAA、BBB、及びCCCを有するフィンガーを有する第二ジンクフィンガー・タンパク質に結合できる。組み合わされた第一及び第二タンパク質の結合特異部は、3'XXXYYYZZZ_AAABBBCCC5'であり、ここで下線は短い介在領域(典型的には0〜5個の任意のタイプの塩基)を指し示す。この状況では、標的部位は、介在断片により分離された2個の標的断片を含むものと見られうる。
【0083】
結合は、以下の:
TGEKP:(配列番号2)(Liuら、1997,上記);
(G4S)n(配列番号3)(Kimら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 93:1156-1160 (1996);
GGRRGGGS:(配列番号4)
LRQRDGERP:(配列番号5)
LRQKDGGGSERP:(配列番号6)
LRQKD(G3S)2ERP(配列番号7)
で表されるペプチドリンカーのいずれかを用いて達成されうる。或いは、可動性のリンカーは、DNA結合部位及びペプチド自身をモデリングできるコンピューター・プログラムを用いて、又はファージディスプレイ法により合理的に設計できる。他の変法では、非共有結合は、2個のジンクフィンガー・タンパク質間のヘテロダイマー形成を促進するドメインを有する2個のジンクフィンガー・タンパク質を融合することにより達成されうる。例えば、1のジンクフィンガー・タンパク質は、fosと融合され、そしてもう一方はjunと融合される(Barbasら、WO95/119431を参照のこと)。
【0084】
ZFPは、任意の適切な方法により設計され又は選択されてもよい。ある実施態様では、そして米国特許公開20030021776中に記載される様に、ZFPは、所定の結合特異性を与えるために、ZFPフレームワークの非保存位置を規定及び置換することにより設計されてもよい(つまり、Sp-1又はTFIIIAなどのZFPの-1位〜+6位)。当該文献はその全てを本明細書に援用される。ジンクフィンガータンパク質の合理的な設計を手助けするために多くの置換則が、例えば、国際特許公開WO 00/42219、WO 00/41566、WO 95/19431、WO 98/54311、WO 96/06166、WO 00/23464及びWO 00/27878;米国特許第5,789,538号;第6,007,408号;第6,013,453号;第6,140,081号;及び第6,140,466号; Desjarlais & Berg, PNAS 90, 2256- 2260 (1993); Choo & Klug, PNAS 91, 11163-11167 (1994); Desjarlais & Berg, PNAS 89, 7345-7349 (1992); Jamiesonら、Biochemistry 33:5689-5695 (1994);及びChooら、WO 98/53057、WO 98/53058号、第WO 98/53059、WO 98/53060において記載されている。
【0085】
さらに、ZFPをコードする核酸を設計及び構築するために、当該技術分野に知られている任意の適切な方法、例えば、ファージディスプレイ、ランダム突然変異誘導、コンビナトリアルライブラリー、コンピューター/合理的設計、アフィニティ-選別、PCR、cDNA又はゲノムライブラリーからのクローニング、合成構築など(例えば、米国特許第5,786,538号;Wuら、PNAS 92:344-348 (1995); Jamiesonら、Biochemistry 33:5689-5695 (1994); Rebar & Pabo, Science 263:671-673 (1994); Choo & Klug, PNAS 91:11163-11167 (1994); Choo & Klug, PNAS 91: 11168-11172 (1994); Desjarlais & Berg, PNAS 90:2256-2260 (1993); Desjarlais & Berg, PNAS 89:7345- 7349 (1992); Pomerantzら、Science 267:93-96 (1995); Pomerantzら、PNAS 92:9752-9756 (1995); 及びLiuら、PNAS 94:5525-5530 (1997); Griesman & Pabo, Science 275:657-661 (1997); Desjarlais & Berg, PNAS 91:11-99-11103 (1994))を参照のこと)を使用することができる。米国特許公開第20030021776号も参照のこと。当該文献は、その全てを本明細書に援用する。
【0086】
ジンクフィンガータンパク質の製造
ZFPポリペプチド及び当該ポリペプチドをコードする核酸は、組換え遺伝学の分野における通常の技術を用いて作られうる。一般的な方法を開示する基本書は、Sambrookら、Molecular Cloning, A Laboratory Manual (第二版、1989);Kriegler, Gene Transfer and Expression: A Laboratory Manual (1990);及びCurrent Protocols in Molecular Biology (Ausubelら編、1994))を含む。さらに、約100塩基未満の核酸は、様々な販売元、例えばThe Midland Certified Reagent Company (mcrc@oligos.com)、The Great American Gene Company (http://www.genco.com)、ExpressGen Inc.(www.expressgen.com)、Operon Technologies Inc.(Alameda, Calif.)のいずれかから特注販売されうる。同様に、ペプチドは、様々な販売元、例えばPeptidoGenic (pkim@ccnet.com)、HTI Bio-products, inc. (http://www.htibio.com)、BMA Biomedicals Ltd (U.K.)、Bio.Synthesis, Inc.から特注販売されうる。
【0087】
オリゴヌクレオチドは、Beaucage & Caruthers, Tetrahedron Letts. 22:1859-1862(1981)により最初に記載された固相ホスホールアミダイト・トリエステル法に従って、Van Devneterら、Nucleic Acids Res. 12:6159-6168(1984)に記載される自動合成機を用いて化学的に合成されうる。オリゴヌクレオチドの精製は、変性ポリアクリルアミド・ゲル電気泳動によるか又は逆相HPLCによる。クローン化された遺伝子及び合成オリゴヌクレオチドの配列は、Wallecら、Gene 16:21-26(1981)の二本鎖テンプレート配列決定のためのチェーン・ターミネーション法を用いてクローニングした後に確かめられる。
【0088】
新たに設計されたDNA結合性ペプチドを発現するために必要とされるコード配列を作成するために、二者択一の方法が典型的に使用される。1のプロトコルは、6個の重なり合うオリゴヌクレオチドを利用するPCRに基づく組立方法である。3個のオリゴヌクレオチドが、認識ヘリックス内のDNA結合性ドメインの一部をコードする「共通」配列に対応する。これらのオリゴヌクレオチドは、典型的に全てのジンクフィンガーコンストラクトについて一定のままである。他の3個の「特異的」オリゴヌクレオチドは、認識ヘリックスをコードする様に設計される。これらのオリゴヌクレオチドは、認識ヘリックス上の主に-1、2、3、及び6位で置換を含み、当該ヘリックスを、異なるDNA結合性ドメインの各々について特異的にする。
【0089】
PCR合成は、2回のステップで行われる。第一に、二本鎖DNAテンプレートは、低い温度のアニーリングステップで、4サイクルのPCR反応において6個のオリゴヌクレオチド(3個が共通、3個が特異的)を混合することにより作成され、それによりオリゴヌクレオチドをアニーリングさせて、DNA骨格を形成する。骨格におけるギャップは、高フィデリティ熱安定ポリメラーゼにより満たされる。当該ポリメラーゼとして、TaqとPfuポリメラーゼの組合せで十分である。構築の第二フェーズでは、ジンクフィンガー・テンプレートは、シャトルベクターに又は直接発現ベクターにクローニングするため、いずれかの末端で制限酵素切断部位を取り込む様に設計された外部プライマーにより増幅される。
【0090】
新たに設計されたDNA結合タンパク質をクローニングする代わりの方法は、所望されるZFPの特異的領域をコードする相補的オリゴヌクレオチドをアニーリングさせることによる。この用途では、当該オリゴヌクレオチドが最後のライゲーション・ステップの前にリン酸化されていることが必要とされる。リン酸化は、通常、アニーリング反応を始める前に行われる。簡潔に記載すると、タンパク質の定常領域をコードする「共通の」オリゴヌクレオチド(オリゴ1、2、及び3)は、その相補オリゴヌクレオチドとアニールする。さらにフィンガー認識ヘリックスをコードする「特異的」オリゴヌクレオチドが、それぞれの相補的オリゴヌクレオチドとアニールする。これらの相補的オリゴは、上記プロトコルにおいてポリメラーゼによりすでにうめられた領域をうめるように設計される。オリゴ1及び6に相補的なオリゴヌクレオチドは、以下のステップで選択されるベクター中にクローニングする際に使用される制限酵素部位に特異的な突出配列を残すように遺伝子操作される。第二の組立プロトコルは、以下の点で最初のプロトコルとは異なっている。新たに設計されたZFPをコードする「骨格」が、合成DNAから完全に構成されており、それにより、ポリメラーゼ・フィルイン・ステップを排除でき、さらにベクター内にクローニングされる断片が増幅を必要としない点である。最後に、配列特異的突出部を残す設計が、インサート断片を制限酵素切断する必要性を除外する点である。或いは、ZFP認識ヘリックスの変更は、慣用の部位特異突然変異法を用いて作成することができる。
【0091】
上記両方の組立方法は、新たに設計されたZFPをコードする得られた断片がベクターにライゲーションされることを必要とする。最終的に、ZFPをコードする配列は、発現ベクターにクローニングされる。一般的に利用される発現ベクターは、非限定的に、改変されたpMAL-c2細菌発現ベクター(New England Biolabs, Beverly, Mass.)又は真核発現ベクターpcDNA(Promega、Madison、Wis.)を含む。最終的なコンストラクトはシーケンス解析により確かめられる。
【0092】
当業者に知られているタンパク質精製の適した方法は、ZFPを精製するために使用することができる(上記Ausubel、Sambrookを参照のこと)。さらに、任意の適切な宿主が発現に使用できる。例えば、細菌細胞、昆虫細胞、酵母細胞、哺乳動物細胞などである。
【0093】
細菌株JM109のマルトース結合タンパク質に融合されたジンクフィンガー・タンパク質(MBP-ZFP)の発現は、アミロースカラム(New England Biolabs, Beverly, Mass.)を通した直接的な精製を可能にする。ジンクフィンガーキメラタンパク質の高発現レベルは、IPTGでの誘導により得ることができる。なぜなら、pMal-c2発現プラスミド中のMBP-ZFP融合体は、tacプロモーター(New England Biolabs, Beverly, Mass.)の制御下に存在するからである。MBP-ZFP融合プラスミドを含む細菌は、10μM ZnCl2、0.02%グルコース、50μg/mlアンピシリンを含む2xYT培地中に植菌され、そして37℃で振盪した。指数関数増殖期の途中で、IPTGを0.3mMまで加え、そして培養物をシェイクさせた。3時間後、細菌を遠心により回収し、超音波処理により又は圧力セルを通過させることにより、又はライソザイムの使用を介して破壊し、そして不溶性の物質を遠心により取り除いた。MBP-ZFPタンパク質を、アミロース結合性レジン上にとり、20mM・Tris-HCl(pH7.5)、200mM・NaCl、5mM・DTT、及び50μM・ZnCl2を含む緩衝液で十分に洗浄し、次に実質的に同じマルトースを含む緩衝液で溶出した(精製は、New England Biolabsの標準プロトコルに基づいた)。精製されたタンパク質を定量し、そして生化学分析用に貯蔵した。
【0094】
精製タンパク質の解離定数、例えばKdは、典型的に電気泳動移動シフト・アッセイ(EMSA)を介して特徴付けられる(Buratowski & Chodosh, in Current Protocols in Molecular Biology pp. 12.2.1-12.2.7 (Ausubel編, 1996))。アフィニティーは、一定量の標識された二本鎖オリゴヌクレオチド標識に対して精製されたタンパク質を滴定することにより計測される。標的は、典型的に天然配列に見られる3bp及び更に一定の隣接配列により繋がれた天然結合部位配列を含む。天然の結合部位は、典型的に3本フィンガーのタンパク質について9bpであり、そして6本フィンガーのZFPについて9bpの2倍+介在配列である。アニールされたオリゴヌクレオチド標的は、T4ファージポリヌクレオチドキナーゼを用いた標的の十分な標識を可能にする1塩基の5'側の突出部を有する。標的が1nM以下の濃度で加えられたアッセイでは(実際の濃度は予期された解離定数より少なくとも10倍低く維持されている)、精製されたZFPを様々な濃度で加え、そして、反応を少なくとも45分間平衡にさせた。さらに、反応混合液は10mM・Tris (pH7.5)、100mM・KCl、1mM・MgCl2、0.1mM・ZnCl2、5mM・DTT、10%グリセロール、0.02%・BSAを含む。
【0095】
平衡化された反応液を、予めTris/グリシン緩衝液中で45分間泳動した10%ポリアクリルアミド・ゲル上にロードし、次に結合及び未結合の標識された標的を150Vで電気泳動により分離した。或いは10〜20%の勾配のTris-HClゲルであって、4%ポリアクリルアミド・スタッキングゲルを含むゲルを使用することができる。乾燥したゲルをオートラジオグラフィ又はホスホールイメージングにより可視化し、そして明らかなKdは、最大結合の半分をもたらすタンパク質濃度を計算することにより決定される。
【0096】
当該アッセイは、タンパク質調製品における活性画分を決定することを含みうる。活性画分は、タンパク質が高濃度の標的DNAに対して滴定される化学量論的なゲル・シフトにより決定される。標的の100、50、25%で(通常マイクロモル・レベルで)滴定は行われる。
【0097】
ファージ・ディスプレイの技術は、所望の標的特異性を有するジンクフィンガー・タンパク質を広く実験的に得る手段を提供する(例えば、Rebar,米国特許第5,789,538号;Chooら、WO 96/06166;Barbasら、WO 95/19431及びWO 98/543111; 上記Jamiesonらを参照のこと)。当該方法は、合理的デザインと併せて、又は合理的デザインの代わりに用いられうる。当該方法は、突然変異を起こさせたジンクフィンガー・タンパク質の多様なライブラリーを作成し、続いてアフィニティー選別方法を用いて所望のDNA結合性質でタンパク質を単離することに関与する。
【0098】
調節ドメイン
ある実施態様において、本明細書に開示される組成物及び方法は、PEDF遺伝子の1以上の調節領域に特異的に標的されたDNA結合ドメインと、機能(例えば、抑制又は活性化)ドメインとの間の融合物(又は、その様な融合物をコードするポリヌクレオチド)に関する。当該方法において、抑制又は活性化ドメインは、DNA-結合ドメインにより結合されるPEDF遺伝子において配列の近くに持ち込まれうる。機能ドメインの転写調節機能は、次に、PEDF調節配列上で作用できる。
【0099】
従って、ジンクフィンガータンパク質は、融合タンパク質として外因性ドメイン(又はその機能断片)を伴って発現されることが多い。ZFPに加えて、一般的なドメインは、例えば、転写因子ドメイン(アクチベーター、リプレッサー、コアクチベーター、コリプレッサー)、サイレンサー、癌遺伝子(例えば、myc、jun、fos、myb、max、mad、rel、ets、bcl、myb、mosファミリーメンバーなど);DNA修復酵素及びその関連因子及び修飾因子;DNA再構築酵素(DNA rearrangement enzyme)及びその関連因子及び修飾因子;クロマチン関連タンパク質及びその調節因子(例えば、キナーゼ、アセチラーゼ、及びデアセチラーゼ);並びにDNA修飾酵素(例えば、メチルトランスフェラーゼ、トポイソメラーゼ、ヘリカーゼ、リガーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ、ポリメラーゼ、エンドヌクレアーゼ)及びそれらの関連因子及び修飾因子を含む。ZFPが標的遺伝子の発現を抑制するために使用されるとき、ZFPと融合する好ましいドメインは、ヒトKOX-1タンパク質由来のKRAB抑制ドメインである(Thiesenら、New Biologist 2, 363-374 (1990); Margolinら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91, 4509-4513 (1994); Pengueら、Nucl. Acids Res. 22:2908-2914 (1994); Witzgallら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91, 4514-4518 (1994))。活性化を達成するための好ましいドメインは、HSV VP16活性化ドメイン(例えば、Hagmannら、J. Virol. 71, 5952-5962 (1997)を参照のこと);核ホルモン受容体(例えば、Torchiaら、Curr. Opin. Cell. Biol. 10:373-383 (1998)を参照のこと);核因子カッパーBのp65サブユニット(Bitko & Barik, J. Virol. 72:5610-5618 (1998) 及び Doyle & Hunt, Neuroreport 8:2937-2942 (1997)); Liuら、Cancer Gene Ther. 5:3-28 (1998))、又はVP64などの人工キメラ機能ドメイン(Seifpalら、EMBO J. 11, 4961-4968 (1992))を含む。
【0100】
融合分子は、当業者に周知のクローニング及び生化学結合の方法により構築される。融合分子は、DNA結合ドメイン及び機能ドメイン(例えば、転写活性化又は抑制ドメイン)を含む。融合分子はまた、場合により、核局在化シグナル(例えば、SV40中型T抗原)及びエピトープ・タグ(例えば、FLAG及びヘマググルチニン)を含む。融合タンパク質(及びそれをコードする核酸)は、転写リーディング・フレームが融合体の構成要素間で保存される様に設計される。
【0101】
一方で機能ドメイン(又はその機能断片)のポリペプチド構成要素と、他方で非タンパク質DNA結合性ドメイン(例えば、抗生物質の、インターカレーター、マイナー・グルーブ結合物質、核酸)との間の融合は、当業者に知られている生化学的な結合方法により構築される。例えば、Pierce Chemical Company (Rockford, IL) のカタログを参照のこと。マイナーグルーブ結合物質とポリペプチドとの間を融合させるための方法及び組成物が記載された(Mappら(2000) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:3930-3935)。
【0102】
本明細書に開示される融合分子は、PEDF遺伝子の標的部位に結合するDNA結合ドメインを含む。ある実施態様では、標的部位は、細胞クロマチンの近接可能な領域に存在する。近接可能な領域は、共有の国際公開WO 01/83732に記載される様に決定することができる。標的部位が細胞クロマチンの近接可能な領域に存在しない場合、1以上の近接可能な領域が国際公開WO 01/83793に記載される様に作製することができる。さらなる実施態様では、融合分子のDNA結合ドメインは、その標的部位が近接可能領域に存在するかしないかに関わらず、細胞クロマチンに結合できる。例えば、このようなDNA結合性ドメインは、リンカーDNA及び/又はヌクレオソームDNAに結合できる。このタイプの「パイオニア(pioneer)」DNA結合性ドメインの例は、あるステロイド受容体において及び肝細胞核因子3(HNF3)において見られる(Cordingley ら、(1987) Cell 48:261-270; Pinaら、(1990) Cell 60:719-731;及びCirilloら、(1998) EMBO J. 17:244-254)。
【0103】
このような適用では、当業者に知られているように、一般に融合分子は典型的に医薬として許容される担体と剤形されている。例えば、RemingtonのPharmaceutical Sciences、第17版、1985;及び共有のWO 00/42219を参照のこと。
【0104】
融合分子の機能構成要素/ドメインは、一度融合分子がそのDNA結合性ドメインを介して標的配列に結合した場合、遺伝子の転写に影響できる様々な異なる構成要素のいずれかから選ばれうる。それゆえ、機能構成要素は、非限定的に様々な転写因子ドメイン、例えばアクチベーター、リプレッサー、コ-アクチベーター、コ-リプレッサー、及びサイレンサーを含みうる。
【0105】
DNA結合ドメイン、例えばZFPと融合するための代表的な機能ドメインであって、遺伝子の発現を抑制するために使用される機能ドメインは、ヒトKOX-1タンパク質由来のKRAB抑制ドメインである(例えば、Thiesenら、New Biologist 2, 363-374 (1990); Margolinら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91, 4509- 4513 (1994); Pengueら、Nucl. Acids Res. 22:2908-2914 (1994);Witzgallら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91, 4514-4518 (1994)を参照のこと)。別の適切な抑制ドメインは、メチル結合ドメインタンパク質2B(MBD-2B)である(MBDタンパク質の記載についてHendrichら、(1999) Mamm Genome 10:906-912を参照のこと)。別の有用な抑制ドメインは、v-ErbAタンパク質と会合するドメインである。例えば、Dammら、(1989) Nature 339:593-597; Evans (1989) Int. J. Cancer Suppl. 4:26-28; Painら、(1990) New Biol. 2:284-294; Sapら、(1989) Nature 340:242-244; Zenkeら、(1988) Cell 52:107-119;並びにZenkeら、(1990) Cell 61:1035-1049を参照のこと。
【0106】
活性化を達成するために適したドメインは、HSV・VP16活性化ドメイン(例えば、Hagmannら、J. Virol. 71, 5952-5962 (1997)を参照のこと)、核ホルモンレセプター(例えば、Torchiaら、Curr. Opin. Cell. Biol. 10:373-383 (1998)を参照のこと);核因子κBのp65サブユニット(Bitko & Barik, J. Virol. 72:5610-5618 (1998) 及びDoyle & Hunt, Neuroreport 8:2937-2942 (1997)); Liuら、Cancer Gene Ther. 5:3- 28 (1998))、又は人工的なキメラ機能ドメイン、例えばVP64(Seifpalら、EMBO J. 11, 4961-4968 (1992))を含む。
【0107】
さらなる典型的な活性化ドメインは、非限定的にVP16、VP64、p300、CBP、PCAF、SRC1 PvALF、AtHD2A、及びERF-2を含む。例えば、Robyrら、(2000) Mol. Endocrinol. 14:329-347; Collingwoodら、(1999) J. MoI. Endocrinol. 23:255-275; Leoら、(2000) Gene 245:1-11; Manteuffel-Cymborowska (1999) Acta Biochim. Pol. 46:77-89; McKennaら、(1999) J. Steroid Biochem. Mol. Biol. 69:3-12; Malikら、(2000) Trends Biochem. Sci. 25:277-283;並びにLemonら、(1999) Curr. Opin. Genet Dev. 9:499- 504を参照のこと。さらなる典型的な活性化ドメインは、非限定的にOsGAI、HALF-1、C1、AP1、ARF-5,-6,-7,及び-8、CPRF1、CPRF4、MYC-RP/GP、及びTRAB1を含む。例えば、Ogawaら、(2000) Gene 245:21-29; Okanamiら、(1996) Genes Cells 1:87-99; Goffら. (1991) Genes Dev. 5:298-309; Choら、(1999) Plant MoI. Biol. 40:419-429; Ulmasonら、(1999) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96:5844-5849; Sprenger-Hausselsら、(2000) Plant J. 22:1-8; Gongら、(1999) Plant MoI. Biol. 41:33-44; 及びHoboら、(1999) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96:15,348-15,353を参照のこと。
【0108】
さらに代表的な抑制ドメインは、非限定的にKRAB、SID、MBD2、MBD3、DNMTファミリーのメンバー(例えば、DNMT1、DNMT3A、DNMT3B)、Rb、及びMeCP2を含む。例えば、Birdら、(1999) Cell 99:451-454; Tylerら、(1999) Cell 99:443-446; Knoepflerら、(1999) Cell 99:447-450;並びにRobertsonら、(2000) Nature Genet. 25:338-342を参照のこと。さらなる代表的な抑制ドメインは、非限定的にROM2及びAtHD2Aを含む。例えば、Chemら、(1996) Plant Cell 8:305-321; 及びWuら、(2000) Plant J. 22:19-27を参照のこと。
更なる例示的な機能ドメインは、例えば共有のWO00/41566に開示される。
【0109】
発現ベクター
選択したZFPをコードする核酸は、典型的に、例えばKdの測定のため、複製及び/又は発現のために原核細胞又は真核細胞に形質転換するための中間ベクター中にクローン化される。中間ベクターは、典型的に、ZFPをコードする核酸の貯蔵又は操作用又はタンパク質産生用の原核ベクター、例えばプラスミド、又はシャトル・ベクター、又は昆虫ベクターである。ZFPをコードする核酸は、植物細胞、動物細胞、好ましくは哺乳動物細胞、又はヒト細胞、真菌細胞、細菌細胞、又は原生細胞に投与するための発現ベクターに典型的にクローン化される。
【0110】
クローン化された遺伝子又は核酸を発現させるために、ZFPは典型的に転写を仕向けるためにプロモーターを含む発現ベクター中にサブクローニングされる。適切な細菌及び真核細胞プロモーターは、当該技術分野に知られており、そして、例えば、Sambrookら、Molecular Cloning, A Laboratory Manual (第二版、1989); Kriegler, Gene Transfer and Expression: A Laboratory Manual (1990);並びにCurrent Protocols in Molecular Biology (Ausubelら編、1994)に記載されている。ZFPを発現するための細菌発現システムは、例えば大腸菌、バチルス種(Bacillus sp.)、及びサルモネラ(Salmonella)で利用される(Palvaら、Gene 22:229-235 (1983))。このような発現システム用のキットが市販されている。哺乳動物細胞、酵母、及び昆虫細胞用の真核細胞発現系は、当該技術分野に周知であり、そして市販されている。
【0111】
ZFP核酸の発現を仕向けるために使用されるプロモーターは、特定の適用に左右される。例えば、強力な構成的プロモーターは、ZFPの発現及び精製に典型的に使用される。
【0112】
対照的に、ZFPがin vivoで遺伝子調節に投与される場合、構成的又は誘導性又は組織特異的プロモーターのいずれかが、ZFPの特定用途に基づいて使用される。さらに、ZFPの投与用の好ましいプロモーターは、弱いプロモーター、例えばHSV TK又は同様の活性を有するプロモーターでありうる。当該プロモーターは、典型的に、転写活性化に応答するエレメント、例えば、低酸素応答エレメント、Gal4応答エレメント、lacリプレッサー応答エレメント、及び低分子制御システム、例えばtet調節システム及びRU486システムを含みうる(例えば、Gossen & Bujard, PNAS 89:5547 (1992); Oligino ら、Gene Ther. 5:491-496 (1998); Wangら、Gene Ther. 4:432-441 (1997); Neering ら、Blood 88:1147-1155 (1996);並びにRendahlら、Nat. Biotechnol. 16:757-761 (1998)を参照のこと)。
【0113】
プロモーターに加えて、発現ベクターは、原核生物又は真核生物であれ、典型的に宿主細胞における核酸の発現に必要とされる全ての付随的エレメントを含む転写ユニット又は発現カセットを含む。典型的な発現カセットは、例えばZFPをコードする核酸配列に発現可能な様に結合するプロモーター、及び転写産物の十分なポリアデニル化、転写終結、リボソーム結合部位、又は翻訳終結に必要とされるシグナルを含む。カセットの更なるエレメントは、例えば、エンハンサー及び外来性のスプライシングされたイントロン・シグナルを含んでもよい。
【0114】
遺伝情報を細胞へと輸送するために使用される特定の発現ベクターは、ZFPの意図した用途に関して選択される。標準的な細菌発現ベクターは、pBR322に基づくプラスミド、pSKF、pET23D、及び市販の融合発現系、例えばGST及びLacZを含む。好ましい融合タンパク質は、マルトース結合性タンパク質「MBP」である。このような融合タンパク質は、ZFPの精製に使用される。エピトープ・タグは、都合よい単離法を提供するために、発現をモニターするために、そして細胞及び細胞内の局在をモニターするために組換えタンパク質に加えることができる。例えば、c-myc又はFLAGである。
【0115】
真核細胞ウイルス由来の調節エレメントを含む発現ベクターは、しばしば真核生物発現ベクター、例えばSV40ベクター、パピローマ・ウイルスベクター、及びエプステイン-バーウイルスに由来するベクターにおいて使用される。他の例示的な真核ベクターは、pMSG、pAV009/A+、pMTO10/A+、pMAMneo-5、バキュロウイルスpDSVE、並びに、他のベクターであって、SV40初期プロモーター、SV40後期プロモーター、メタロチオネイン・プロモーター、マウス哺乳動物腫瘍ウイルスプロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、ポリへドリン・プロモーター、又は他のプロモーターであって、真核細胞中の発現に有効性を示すプロモーターの指揮監督下でタンパク質の発現を許容するベクターにおいて使用されることが多い。
【0116】
幾つかの発現系は、安定に形質転換された細胞株を選別するためのマーカー、例えば、チミジンキナーゼ、ハイグロマイシンB・ホスホトランスフェラーゼ、及びジヒドロ葉酸レダクターゼを有する。高収量の発現系、例えばポリへドリン・プロモーター又は他の強力なバキュロウイルス・プロモーターの支配下にZFPをコードする配列を有するバキュロウイルスを昆虫細胞で使用することが適している。
【0117】
発現ベクター内に典型的に含まれるエレメントは、大腸菌内で機能するレプリコン、組換えプラスミドを有する細菌の選択を可能にする抗生物質抵抗性をコードする遺伝子、及び組換え配列の挿入を可能にするためのプラスミドの非必須領域内における固有の制限酵素部位を含む。
【0118】
標準形質転換法は、細菌、哺乳動物、酵母、又は昆虫細胞株であって、大量のタンパク質を発現するものを産生するために使用され、当該タンパク質は標準技術を用いて精製される(例えば、Colleyら、J. Biol. Chem. 264:17619- 17622 (1989); タンパク質精製の指針、Methods in Enzymology, vol. 182 (Deutscher, ed., 1990)を参照のこと)。真核細胞及び原核細胞の形質転換は、標準技術に従って行われる(例えば、Morrison, J. Bact. 132:349-351 (1977); Clark-Curtiss & Curtiss, Methods in Enzymology 101:347-362 (Wuら編、1983)。
【0119】
外来のヌクレオチド配列を宿主細胞に導入するための周知の方法のいずれかが、使用されてもよい。これらは、リン酸カルシウム形質転換、ポリブレン、プロトプラスト融合、電気穿孔、リポソーム、マイクロインジェクション、裸のDNA、プラスミド・ベクター、ウイルスベクター(エピソーム性及び統合型の両方)、クローン化されたゲノムDNA、cDNA、合成DNA、又は他の外来性の遺伝物質を宿主細胞中に導入するための他の周知の方法のいずれか、の使用を含む(例えば、上記Sambrookらを参照のこと)。使用される特定の遺伝子操作法が、少なくとも1の遺伝子を、選択したタンパク質を発現できる宿主細胞にうまく導入できることのみが必要である。
【0120】
アッセイ
ひとたび、ZFPが記載された方法に従って設計され、そして調製されると、設計されたZFPの活性の初期評価が行われる。関心遺伝子の発現を調節する能力を示すZFPタンパク質は、ZFPの設計用途に依存したより特異的な活性についてさらに評価されうる。こうして、例えば、本明細書に提供されるZFPは、VEGF発現を調節する能力について最初に評価されうる。当該ZFPが血管新生を調節し及び/又は虚血を治療するZFPの能力のより特異的なアッセイが一般的に次ぎに行われる。これらのより具体的なアッセイの記載は、本明細書及び米国特許公開第20030021776において記載されている。
【0121】
特定のZFPの活性は、様々なin vitro及びin vivoアッセイを用いて、例えば、免疫アッセイ(例えば抗体を用いたELISA及び免疫組織学的アッセイ)、ハイブリダイゼーション・アッセイ(例えば、RNase保護、ノーザン、in situハイブリダイゼーション、オリゴヌクレオチド・アレイ試験)、比色アッセイ、増幅アッセイ、酵素活性アッセイ、腫瘍増殖アッセイ、表現系アッセイなどを用いて、例えばタンパク質又はmRNAレベル、産物レベル、酵素活性、腫瘍増殖、転写活性化、又はレポーター遺伝子の抑制、第二メッセンジャー・レベル(例えば、cGMP、cAMP、IP3、DAG、Ca2+);サイトカイン及びホルモン産生レベル;及び血管新生を評価することができる。
【0122】
ZFPは、典型的に、培養細胞、例えば、293細胞、CHO細胞、VERO細胞、BHK細胞、HeLa細胞、COS細胞などを用いてin vitroで活性を試験する。好ましくは、ヒトの細胞を使用する。ZFPを、レポーター遺伝子を用いて一過性発現システムを用いて最初に試験し、そして次に標的内在遺伝子をin vivo及びex vivoの両方において細胞及び動物内で試験する。ZFPは細胞内で組換え発現でき、動物内に移植された細胞内で組換え発現し、又はトランスジェニック動物中で組換え発現し、並びに以下に記載されるデリバリービヒクルを用いて動物又は細胞にタンパク質として投与される。細胞は固定されうるし、溶液内に存在しうるし、動物に注射されうるし、又はトランスジェニック又は非トランスジェニック動物中内に生じうる。
【0123】
遺伝子発現の調節を、本明細書に記載されるin vitro又はin vivoアッセイを使用して試験する。サンプル又はアッセイをZFPで処理し、そして未処理の対照サンプルと比較して、調節の程度を試験する。上に記載される様に、内在遺伝子発現の調節では、ZFPは、典型的に200nM以下、より好ましくは100nM以下、より好ましくは50nM、最も好ましくは25nM以下のKdを有する。
【0124】
ZFPの効果は、上記パラメーターのいずれかを試験することにより計測することができる。任意の適切な遺伝子発現、表現形、又は生理的変化は、ZFPの影響を評価するために使用できる。機能的な因果関係が未処理の細胞又は動物を用いて決定される場合、様々な効果、例えば、腫瘍増殖、創傷治癒、新血管形成、ホルモン放出、既知かつ特徴付けされていない遺伝マーカー(例えば、ノーザンブロット又はオリゴヌクレオチドアレイ試験)についての転写の変化、細胞増殖などの細胞代謝、又はpH変化、及びcGMPなどの細胞内第二メッセンジャーの変化を計測することができる。
【0125】
ZFPの効果は、上記パラメーターのいずれかを試験することにより計測することができる。任意の適切な遺伝子発現、表現形、又は生理的変化が、ZFPの影響を評価するために使用できる。機能的な因果関係が未処理の細胞又は動物を用いて計測される場合、様々な効果、例えば、腫瘍増殖、創傷治癒、新血管形成、ホルモン放出、既知及び特徴付けされていない遺伝マーカーについての転写変化(例えば、ノーザンブロット又はオリゴヌクレオチドアレイ試験)、細胞増殖などの細胞代謝の変化、又はpH変化、及びcGMPなどの細胞内第二メッセンジャーの変化を計測できる。
【0126】
内在遺伝子発現のZFPによる調節についての好ましいアッセイは、in vitroで行われうる。1の好ましいin vitroアッセイ形式では、培養細胞における内在遺伝子発現のZFPによる調節は、ELISAアッセイを用いてタンパク質産生を試験することにより計測される。試験サンプルは、ZFPをコードする配列を欠くベクター又は別の遺伝子に対し標的化される無関係なZFPをコードするベクターで処理された対照細胞と比較される。
【0127】
別の実施態様では、内在遺伝子発現のZFPによる調節は、遺伝子のmRNA発現レベル(例えば、標的PLN遺伝子の発現レベル)を計測することによりin vitroで測定される。遺伝子発現レベルは、増幅を用いて、例えば、PCR、LCR、又はハイブリダイゼーション・アッセイ、例えばノーザンハイブリダイゼーション、ドット・ブロット及びRNase防御を用いて計測される。定量的RT-PCR技術(つまり、いわゆるTaqMan(登録商標)アッセイ)を使用することは、転写レベルを定量するために利用されうる。タンパク質又はmRNAのレベルは、本明細書に記載されるように、直接又は間接標識された検出試薬、例えば、蛍光又は放射性標識された核酸、放射性又は酵素標識された抗体などを用いて検出される。このような方法は、Gelfandに対する米国特許第5,210,015号、Livakらに対する米国特許第5,538,848号、及びHaalandに対する米国特許第5,863,736、並びにHeid, C. A.,ら、Genome Research, 6:986-994 (1996); Gibson, U. E. M,ら, Genome Research 6:995-1001 (1996); Holland, P. M.,ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:7276-7280, (1991); 及びLivak, K. J.ら、PCR Methods and Applications 357-362 (1995)に記載されており、各文献は、その全てを援用される。
【0128】
或いは、レポーター遺伝子システムは、ルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質、CAT、又はβgalなどのレポーター遺伝子に作用可能な様に結合されるVEGF遺伝子プロモーターを用いて改良されうる。レポーター・コンストラクトは、典型的に培養細胞にコ-トランスフェクションされる。選んだZFPで処理した後に、レポーター遺伝子の転写、翻訳、又は活性の量は、当業者に既知の標準技術に従って計測される。
【0129】
内在遺伝子発現のZFP調節をモニターするのに有用な好ましいアッセイ形式の別の例は、in vivoで行われる。このアッセイは、新血管形成を介して腫瘍の支持(tumor support)に関するVEGFなどの遺伝子を試験するために特に有用である。このアッセイにおいて、選んだZFPを発現する培養腫瘍細を皮下的に、胸腺欠損マウス、照射マウス、又はSCIDマウスなどの免疫低下マウスに注射する。適切な期間の経過後、好ましくは4〜8週後に、体積又はその二次元面積により腫瘍増殖を計測し、そして対照と比較する。統計的に有意な低下(スチューデントのT検定を用いる)を有する腫瘍は、増殖を阻害されたと言われる。或いは、腫瘍新血管形成の程度も計測することができる。内皮細胞特異的抗体を用いた免疫アッセイを使用して、腫瘍の血管形成及び腫瘍内の血管数を染色する。血管数の統計的に有意な減少を有する腫瘍(例えばスチューデントのT検定を用いる)は、新血管形成の阻害を有すると言われる。
【0130】
トランスジェニック及び非トランスジェニック動物はまた、in vivoにおいてVEGF遺伝子発現の調節を試験するために使用される。トランスジェニック動物は典型的に、選択されたZFPを発現する。或いは、選択されたZFPを一過的に発現する動物、又はデリバリービヒクル中でZFPが投与された動物を使用することができる。内在遺伝子発現の調節は、本明細書に記載されるアッセイのいずれか一つを用いて試験される。
【0131】
医薬組成物
本明細書に提供されるZFP、そしてより典型的には当該ZFPをコードする核酸は、医薬組成物として医薬として許容される担体と場合により剤形されうる。当該組成物は、1以上の遺伝子に結合し、そして発現を調節する複数のZFPを含むか又はコードしてもよい。
【0132】
核酸に基づく組成物
本明細書に提供されるZFPをコードする核酸のウイルスによらないデリバリー法は、リポフェクション、マイクロインジェクション、遺伝子銃、ビロソーム(virosome)、リポソーム、免疫リポソーム、ポリカチオン又は脂質:核酸複合体、裸のDNA、人工ビリオン、及び薬剤により高められたDNA取り込みを含む。リポフェクションは、米国特許第5,049,386号、第4,946,787号;及び第4,897,355号に記載され、そして、リポフェクション試薬は市販されている(例えば、Transfectam(登録商標)及びLipofectin(商標))。ポリヌクレオチドの効果的な受容体認識リポフェクションに適したカチオン性及び天然脂質は、FelgnerのWO 91/17424、WO 91/16024の脂質を含む。デリバリーは、細胞(ex vivo投与)又は標的組織(in vitro投与)に対するものでありうる。
【0133】
免疫脂質複合体などの標的リポソームを含む脂質:核酸複合体の調製は、当業者に知られている(例えば、Crystal, Science 270:404-410 (1995); Blaeseら、Cancer Gene Ther. 2:291-297 (1995); Behrら, Bioconjugate Chem. 5:382-389 (1994); Remyら、Bioconjugate Chem. 5:647-654 (1994); Gaoら、Gene Therapy 2:710-722 (1995); Ahmad ら、Cancer Res. 52:4817-4820 (1992); 米国特許第4,186,183号、第4,217,344号、第4,235,871号、第4,261,975号、第4,485,054号、第4,501,728号、第4,774,085号、第4,837,028号、及び第4,946,787号を参照のこと)。
【0134】
遺伝子操作されたZFPをコードする核酸をデリバリーするためのRNA又はDNAウイルスに基づくシステムの使用は、体内の特異的細胞にウイルスを標的化し、そして核にウイルス負荷量を輸送する高度に進化した方法を利用する。ウイルスベクターは、患者に直接投与されうるか(in vivo)又はウイルスベクターは、in vitroで細胞を処理するために使用され、そして改変された細胞が患者に投与されうる(ex vivo)。ZFPのデリバリーのために慣用されるウイルスに基づくシステムは、遺伝子輸送のためのレトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、及び単純ヘルペスウイルスベクターを含みうる。ウイルスベクターは、標的細胞及び組織に遺伝子輸送する現在における最も効果的かつ多用途の方法である。宿主ゲノムへの取り込みは、レトロウイルス、レンチウイルス、及びアデノ随伴ウイルスの遺伝子輸送方法を用いて可能であり、挿入されたトランス遺伝子の長期間の発現をもたらすことが多い。さらに、高い導入効率が、多くの異なる細胞型及び標的組織において観察された。
【0135】
レトロウイルスの指向性は、外来のエンベロープ・タンパク質を取り込むことにより変更することができ、標的細胞集合の潜在的な標的を広げることができる。レンチウイルス・ベクターは、分裂しない細胞に形質導入できるか又は感染でき、そして典型的に高いウイルス・タイターをもたらすことができるレトロウイルス・ベクターである。レトロウイルス・遺伝子輸送システムの選択は、それゆえ標的組織に左右されうる。レトロウイルス・ベクターは、最大6〜10kbの外来配列を取り込む能力を有する、シス作用性の末端反復配列から構成される。最小のシス作用性のLTRは、ベクターの複製及びパッケージングに十分であり、次に当該LTRは、標的細胞に治療遺伝子を組み入れるために使用されて、永続的なトランス遺伝子発現を提供する。広く使用されるレトロウイルス・ベクターは、マウス白血病ウイルス(MuLV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、及びそれらの組合せを含む(例えば、Buchscherら、J. Virol. 66:2731-2739 (1992); Johannら、J. Virol. 66:1635-1640 (1992); Sommerfeltら、Virol. 176:58-59 (1990); Wilsonら、J. Virol. 63:2374-2378 (1989); Millerら、J. Virol. 65:2220- 2224 (1991); PCT/US94/05700を参照のこと)。
【0136】
一過的なZFPの発現が好ましい場合の適用では、アデノウイルスに基づくシステムが典型的に使用される。アデノウイルスに基づくベクターは、多くの細胞タイプにおいてかなり高い導入効率を可能とし、そして細胞分裂を必要としない。このようなベクターを用いて高タイターかつ高レベルの発現が得られる。当該ベクターは、比較的単純な系で多くの量を産生可能である。アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターは、例えば核酸及びペプチドのin vitro産生において、標的核酸で細胞を形質導入するために使用され、そしてin vivo及びex vivo遺伝子治療法に使用される。(例えば、Westら、Virology 160:38-47 (1987);米国特許第4,797,368号;WO 93/24641; Kotin, Human Gene Therapy 5:793-801 (1994); Muzyczka, J. Clin. Invest. 94:1351 (1994)を参照のこと)。組換えAAVベクターの構築は、多くの刊行物に記載され、米国特許第5,173,414号;Tratschinら、Mol. Cell. Biol. 5:3251-3260 (1985); Tratschinら、Mol. Cell. Biol. 4:2072-2081 (1984); Hermonat & Muzyczka, PNAS 81:6466-6470 (1984);及びSamulskiら、J. Virol. 63:03822-3828 (1989)を含む。
【0137】
特に、少なくとも6個のウイルスベクターのアプローチが、現在、臨床試験において遺伝子輸送に利用でき、レトロウイルス・ベクターが、最も頻繁に使用されるシステムである。これらのウイルスベクターの全ては、ヘルパー細胞株に挿入された遺伝子により欠損のあるベクターを補完して、形質導入作用物を作り出すことを含むアプローチを用いる。
【0138】
pLASN及びMFG-Sは、臨床試験において使用されたレトロウイルス・ベクターの例である(Dunbarら、Blood 85:3048-305 (1995); Kohnら、Nat. Med. 1:1017-102 (1995); Malechら、PNAS 94:22 12133-12138 (1997))。PA317/pLASNは、遺伝子治療の臨床試験で使用された最初の治療ベクターであった(Blaeseら、Science 270:475-480 (1995))。50%以上の形質導入効率が、MFG-Sパッケージされたベクターについて観察された(Ellemら、Immunol Immunother. 44(1): 10-20 (1997); Dranoffら、Hum. Gene Ther. 1:111-2 (1997))。
【0139】
組換えアデノ随伴ウイルスベクター(rAAV)は、欠損がありかつ非病原性のパルボウイルス・アデノ随伴2型ウイルスに基づく代替遺伝子デリバリーシステムである。ベクターは、トランス遺伝子発現カセットに隣接するAAV145bpの反転された末端繰り返しのみを保持するプラスミドに由来する。形質導入された細胞のゲノム中への組み込みのため、効率的な遺伝子転写及び安定したトランス遺伝子のデリバリーは、ベクター・システムについての重要な特徴である(Wagnerら、Lancet 351:9117 1702-3 (1998), Kearnsら、Gene Ther. 9:748-55 (1996))。
【0140】
さらなるアデノ随伴ウイルスビヒクルは、AAA血清型1、2、5、6、7、8、及び9、並びにキメラAAV血清型、例えばAAV2/1及びAAV2/5を含む。一本鎖及び二本鎖(例えば、自己相補性)AAVベクターの両方を使用することができる。
【0141】
複製欠損組換えアデノウイルスベクター(Ad)は、大腸癌遺伝子治療に主に使用される。なぜなら、当該ベクターは、高いタイターで産生され、そして当該ベクターは多くの異なる細胞型に容易に感染するからである。多くのアデノウイルス・ベクターは、トランス遺伝子がAdE1a、E1b、及びE3遺伝子を置換し、続いて複製欠損ベクターが、欠損された遺伝子機能をトランスで供給するヒト293細胞において増殖するように遺伝子操作される。Adベクターは、in vivoで組織の複数のタイプに形質導入でき、当該タイプは、非分裂性の分化細胞、例えば肝臓、腎臓及び筋肉系組織で見られる細胞を含む。慣用されるAdベクターは、高い運搬能力を有する。臨床試験においてAdベクターを使用する例は、筋肉内注射での抗腫瘍免疫化のためのポリヌクレオチド治療に関する(Stermanら、Hum. Gene Ther. 7:1083-9 (1998))。臨床試験において遺伝子輸送のためにアデノウイルスベクターを使用する更なる例は、Rosenecker ら、Infection 24:1 5-10 (1996); Stermanら、Hum. Gene Ther. 9:7 1083-1089 (1998); Welshら、Hum. Gene Ther. 2:205-18 (1995); Alvarezら、Hum. Gene Ther. 5:597-613 (1997); Topfら、Gene Ther. 5:507-513 (1998); Stermanら、 Hum. Gene Ther. 7:1083-1089 (1998)を含む。
【0142】
パッケージング細胞は、宿主細胞に感染可能なウイルス粒子を形成するために使用される。このような細胞は、アデノウイルスをパッケージする293細胞、レトロウイルスをパッケージする.psi.2細胞又はPA317細胞を含む。遺伝子治療に使用されるウイルスベクターは、核酸ベクターをウイルス粒子中にパッケージするプロデューサー細胞株によって通常作成される。ベクターは、パッケージングし、続いて宿主細胞中への組み込みのために必要とされる最小限のウイルス配列しか含まず、他のウイルス配列は、発現されるタンパク質についての発現カセットにより置換されている。失われたウイルス機能は、パッケージング細胞株によりトランスで供給される。例えば、遺伝子治療において使用されるAAVベクターは、典型的にAAVゲノムのうち、パッケージング及び宿主ゲノムへの組み込みに必要とされるAAVゲノム由来のITR配列のみを有する。ウイルスDNAは、他のAAV遺伝子、つまりrep及びcapをコードするがITR配列を欠くヘルパープラスミドを含む細胞株中でパッケージされる。当該細胞株はまた、ヘルパーとしてアデノウイルスで感染される。ヘルパー・ウイルスは、AAVベクターの複製及びヘルパープラスミドからのAAV遺伝子の発現を促進する。ヘルパープラスミドは、ITR配列を欠くため、有意な量でパッケージされることはない。アデノウイルスでの汚染は、例えば、アデノウイルスがAAVよりも感受性である熱処理によって低減されうる。
【0143】
多くの遺伝子治療適用において、遺伝子治療ベクターが、特定の組織タイプに高い程度の特異性でデリバリーされることが望ましい。ウイルスベクターは、ウイルス外膜上のウイルス被膜タンパク質との融合タンパク質としてリガンドを発現することにより、一般的に所定の細胞型への特異性を有するように改変される。リガンドは、関心の細胞タイプ上に存在することが知られている受容体に対する親和性を有するように選択される。例えばHanら、PNAS 92:9747-9751(1995)は、Moloneyマウス白血病ウイルスが、gp70に融合するヒト・ヘレグリンを発現するように改変することができ、そして当該組換えウイルスがヒト上皮増殖因子受容体を発現する特定のヒト乳癌細胞に感染することが報告される。この原理は、リガンド融合タンパク質を発現するウイルスと、受容体を発現する標的細胞の他のペアに広げることができる。例えば、線状ファージは、任意の選択された細胞受容体に実際特異的結合親和性を有する抗体断片(例えばFAB又はFv)をディスプレイするように遺伝子操作できる。上の記載は、ウイルスベクターに主に適用されるが、同じ原理は、非ウイルスベクターに適用できる。このようなベクターは、特定の標的細胞による取り込みを選好すると考えられている特異的取り込み配列を含むように遺伝子操作することができる。
【0144】
遺伝子治療ベクターは、以下に記載される様に、個々の患者に、一般的に全身投与(例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、又は頭蓋内輸液)により又は局所適用により、in vivoでデリバリーすることができる。或いは、ベクターは、細胞、例えば、個々の患者から取り出した細胞(例えばリンパ球、骨髄吸引液、組織生検)又は万能供血者幹細胞にex vivoでデリバリーし、続いて、通常当該ベクターを取り込んだ細胞を選別した後に当該細胞を患者に再移植することができる。
【0145】
診断、研究、又は遺伝子治療のためのex vivo細胞トランスフェクション(例えば、トランスフェクションされた細胞を宿主生物へと再び注入することを介する)は、当業者に周知である。幾つかの例では、細胞は、対象生物から単離され、ZFP核酸(遺伝子又はcDNA)でトランスフェクションされ、そして対象生物(例えば患者)に再注入で戻される。ex vivoトランスフェクションに適した様々な細胞型は、当業者に周知である(例えば、Freshneyら、Culture of Animal Cells, A Manual of Basic Technique (第三版、1994)、並びに当該文献において引用される、患者から細胞の単離し、そして培養する方法について記載される参考文献を参照のこと)。
【0146】
1の実施態様では、幹細胞は、細胞トランスフェクション及び遺伝子治療のex vivo法において使用される。幹細胞を用いる利点は、in vitroで他の細胞型に分化できること又は、骨髄に移植する場合、哺乳動物(例えば細胞のドナーなど)に導入することができることである。GM-CSF、IFN-Y、及びTNF-αなどのサイトカインを用いて、in vitroでCD34+細胞を臨床的に重要な免疫細胞型に分化させる方法は知られている(例えば、Inabaら、J. Exp. Med. 176:1693-1702 (1992)を参照のこと)。
【0147】
幹細胞は、既知の方法を用いて、形質導入及び分化のために単離される。例えば、幹細胞は、不所望な細胞、例えばCD4+及びCD8+(T細胞)、CD45+(panB細胞)、GR-1(顆粒球)、及びlad(分化抗原提示細胞)などに結合する抗体で骨髄細胞を選別することにより、骨髄細胞から単離される(Inabaら、J. Exp. Med. 176:1693-1702 (1992)を参照のこと)。
【0148】
治療ZFP核酸を含むベクター(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、リポソームなど)は、in vivoにおいて細胞を形質導入するために生物体に直接投与することができる。或いは、裸のDNAが投与されうる。投与は、分子を最終的に血液又は組織細胞と接触させるために通常使用される経路のいずれかによる。このような核酸を投与する適切な方法が利用でき、そして当業者に周知である。そして1より多い経路が、特定の組成物を投与するために使用することができるが、特定の経路は、他の経路より即効性かつ有効な反応を提供する。
【0149】
医薬として許容される担体は、投与される特定の組成物により、並びに当該組成物を投与するために使用される特定方法によりある程度決定される。従って、以下に記載されるように、医薬組成物の多くの適切な剤形が存在する(例えば、RemingtonのPharmaceutical Science、第17版、1989を参照のこと)。
【0150】
B.タンパク質組成物
本発明のZFPなどのポリペプチド化合物の投与において重要な因子は、ポリペプチドが細胞の原形質膜、又は核などの細胞内区画の膜を横切る能力を有することを保証する。細胞膜は、小さい非イオン性の脂溶性化合物を自由に透過でき、そして本来、極性化合物、巨大分子、及び治療又は診断薬を透過しない脂質-タンパク質二重膜から構成される。しかしながら、ZFPなどのポリペプチドを細胞膜を通して移動させる能力を有するタンパク質及び他の構成要素、例えば、リポソームが記載される。
【0151】
例えば、「膜移動ポリペプチド」は、両親媒性又は疎水性アミノ酸サブ配列であって、膜移動運搬体として作用する能力を有する配列を有する。一の実施態様では、ホメオドメインタンパク質は、細胞膜を通して移動する能力を有する。ホメオドメインタンパク質であるアンテナペディアの最も短い内在化ペプチドは、43〜58のアミノ酸位由来のタンパク質の第三ヘリックスであると分かっている(例えば、Prochiantz, Current Opinion in Neurobiology 6:629-634 (1996)を参照のこと)。別のサブ配列であるシグナルペプチドのh(疎水性)ドメインは、同様の細胞膜移動特性を有すると分かっている(例えば、Linら、J. Biol. Chem. 270:14255-14258 (1995)を参照のこと)。
【0152】
ZFPの細胞内への取り込みを促進するためにZFPに結合できるペプチド配列の例は、非限定的に以下の:HIVのtatタンパク質の11アミノ酸のペプチド;p16タンパク質のアミノ酸84〜103に対応する20残基のペプチド配列(Fahraeusら、Current Biology 6:84 (1996)を参照のこと) ;アンテナペディアの60アミノ酸長のホメオドメインの第三ヘリックス(Derossiら、J. Biol. Chem. 269:10444 (1994));カポジ線維芽細胞成長因子(K-FGF)h領域などのシグナルペプチドのh領域(上記Linら);又はHSV由来のVP22のトランスロケーション・ドメイン(Elliot & O'Hare, Cell 88:223-233 (1997))を含む。細胞取り込みの増加をもたらす他の適した化学成分が、化学的にZFPに結合されてもよい。
【0153】
トキシン分子はまた、細胞膜を介してポリペプチドを輸送する能力を有する。多くの場合、このような分子は、少なくとも2個の部品:トランスロケーション又は結合ドメイン又はポリペプチドと分離トキシンドメイン又はポリペプチドから構成される(いわゆる「バイナリー・トキシンである)。典型的に、ポリペプチドのトランスロケーション・ドメイン又はポリペプチドは細胞受容体に結合し、次にトキシンは細胞内へと輸送される。クロストリジウム・パーフリンゲンス(Clostridium perfringens)イオタ・トキシン、ジフテリア・トキシン(DT)、シュードモナス・エキソトキシンA(PE)、パーツシス・トキシン(PT)、バチルス・アンスラシス(Bacillus anthracis)トキシン、及びパーツシス・アデニレート・シクラーゼ(CYA)を含むいくつかの細菌トキシンは、細胞質にペプチドをデリバリーする試みにおいて、内部又はアミノ末端融合体として使用された(Aroraら、J. Biol. Chem., 268:3334-3341 (1993); Perelleら、Infect Immun., 61:5147-5156 (1993); Stemnarkら、J. Cell Biol. 113:1025-1032 (1991); Donnellyら、PNAS 90:3530-3534 (1993); Carbonettiら、Abstr. Annu. Meet. Am. Soc. Microbiol. 95:295 (1995); Seboら、Infect. Immun. 63:3851-3857 (1995); Klimpelら、PNAS U.S.A. 89:10277-10281 (1992);及びNovakら、J. Biol. Chem. 267:17186-17193 1992))。
【0154】
このようなサブ配列は、細胞膜を通してZFPを移動させるために使用されうる。ZFPは、このような配列に融合されるか、又はこのような配列で都合よく誘導体化されうる。典型的に、トランスロケーション配列は、融合タンパク質の一部として提供される。場合により、リンカーは、ZFPとトランスロケーション配列とをつなぐために使用されうる。任意の適したリンカー、例えばペプチドリンカーが使用されうる。
【0155】
ZFPは、動物細胞、好ましくは哺乳動物細胞中に、リポソーム及びリポソーム誘導体、例えば免疫リポソームを介して取り込まれうる。「リポソーム」という用語は、同心円状に整えられた1以上の脂質二重層であって、水相を封入している二重層から構成されるベシクルを指す。水相は、典型的に、細胞へとデリバリーされる化合物(つまりZFP)を含む。リポソームは、原形質膜と融合し、それにより薬剤を細胞質内へと放出する。或いは、当該リポソームは、細胞により輸送ベシクル内に貪食されるか又は取り込まれる。エンドソーム又はファゴソーム内に入ると、当該リポソームは分解するか、又は輸送ベシクルの膜と融合し、そして内容物を放出する。
【0156】
リポソームを介したドラッグデリバリーの現在の方法では、リポソームは、標的組織又は細胞において最終的に浸透性となり、そして封入された化合物(この場合、ZFP)を放出する。全身性又は組織特異的デリバリーでは、当該機構は、例えば、リポソーム二重層が体内の様々な作用物質の作用を介して時間をかけて分解する受動的な様式で達成される。或いは、活性薬剤の放出は、リポソーム・ベシクルにおける浸透性の変化を誘導する薬剤を使用することを含む。リポソーム膜は、リポソーム膜付近で周囲環境が酸性になった際に不安定化されるように構築されうる(例えば、PNAS 84:7851 (1987); Biochemistry 28:908 (1989)を参照のこと)。リポソームが標的細胞によりエンドサイトーシスされると、リポソームは不安定になり、そしてその中身を放出する。この不安定化はフソジェネシス(fusogenesis)と名付けられる。ジオレオイル・ホスファチジルエタノールアミン(DOPE)は、多くの「融合性」システムの基剤となる。
【0157】
このようなリポソームは、典型的に、ZFP及び脂質構成要素、例えば中性及び/又はカチオン性脂質であって、場合により受容体認識分子、例えば予め決められた細胞表面受容体又はリガンド(例えば抗原)に結合する抗体などを含む脂質構成要素を含む。例えば、Szokaら、Ann. Rev. Biophys. Bioeng. 9:467 (1980)、米国特許第4,186,183号、第4,217,344号、第4,235,871号、第4,261,975号、第4,485,054号、第4,501,728号、第4,774,085号、第4,837,028号、第4,235,871号、第4,261,975号、第4,485,054号、第4,501,728号、第4,774,085号、第4,837,028、第4,946,787号、PCT出願公開WO/17424号、Deamer & Bangham, Biochim. Biophys. Acta 443:629-634 (1976); Fraleyら、PNAS 76:3348-3352 (1979); Hopeら、Biochim. Biophys. Acta 812:55-65 (1985); Mayerら、Biochim. Biophys. Acta 858: 161-168 (1986); Williamsら、PNAS 85:242- 246 (1988); Liposomes (Ostro (編)、1983, Chapter 1); Hopeら、Chem. Phys. Lip. 40:89 (1986); Gregoriadis, Liposome Technology (1984)、及びLasic, Liposomes: from Physics to Applications (1993)に記載されるように、様々な方法がリポソームを調製するために利用できる。適切な方法は、例えば、超音波処理、押出し、高圧/ホモジェナイズ、マイクロ流動化、デタージェント透析、小リポソーム・ベシクルのカルシウム誘導性の融合、及びエーテル融合法を含み、その全てが当該技術分野に周知である。
【0158】
幾つかの例では、リポソームは、特定の細胞型、組織などに特異的である標的化成分を使用して標的付けされる。様々な標的成分(例えば、リガンド、レセプター、及びモノクローナル抗体)を用いたリポソームの標的化は、以前に記載された(例えば、米国特許第4,957,773号及び第4,603,044号を参照のこと)。
【0159】
標的化剤をリポソームへとカップリングする標準的な方法が使用されうる。これらの方法は、一般的にリポソームに、標的剤を取り付けるために活性化されうる脂質構成要素、例えばホスファチジル・エタノール・アミン、又は誘導化された脂溶性化合物、例えば脂質誘導化ベロマイシンを取り込むことに関する。抗体標的化リポソームは、例えば、タンパク質Aを取り込んだリポソームを使用して構築されうる(Renneisenら、J. Biol. Chem., 265:16337-16342 (1990)及びLeonettiら、PNAS 87:2448-2451 (1990)を参照のこと)。
【0160】
C.用量
ZFPの治療適用のため、患者へ投与される用量は、長期間に渡り患者に有効な治療応答を与えるために十分であるべきである。当該用量は、使用される特定のZFPの有効性及びKd、標的細胞の核体積、及び患者の病状、並びに治療される患者の体重又は表面積により決定されよう。用量は、個々の患者への特定の化合物又はベクターの投与に付随する副作用の存在、性質、及び程度のいずれかにより決定されよう。
【0161】
疾患の治療又は予防において投与されるZFPの有効量を測定する際に、医師はZFP又はZFPをコードする核酸、潜在的なZFPの毒性、疾患の進行、及び抗ZFP抗体の産生を評価する。投与は一回又は分割用量を介して達成されうる。
【0162】
投与
ZFP及びZFPをコードする核酸は、遺伝子発現を調節するため、並びに本明細書に記載される適用などの治療又は予防適用のために、患者に直接投与することができる。
【0163】
一般的に、そして本明細書の議論の観点から、ZFPを動物又は患者に導入することを指すフレーズは、ZFP又はZFP融合タンパク質が導入されること、及び/又はZFP又はZFP融合タンパク質をコードする核酸が、動物において発現できる形態で導入されることを意味する。
【0164】
治療有効量の投与は、ZFPを治療される組織と最終的に接触させるために通常使用される経路のいずれかによる。ZFPは、適切な様式で投与され、好ましくは医薬として許容される担体とともに投与される。複数のZFP含有組成物が、同じ又は異なる経路により、同時に又は離して投与されてもよい。このような組成物を投与する適切な方法が利用でき、そして当業者に周知であるが、1超の経路は、特定の組成物を投与するために使用できるが、特定の経路は、他の経路よりもより迅速かつより有効な反応を提供することができる。
【0165】
医薬として許容される担体は、投与される特定の組成物により、並びに組成物を投与するために使用される特定の方法によりある程度は決定される。従って、医薬組成物の様々な適切な製剤が存在する(例えば、RemingtonのPharmaceutical Sciences, 第17版、1985)を参照のこと)。
【0166】
ZFPは、単独で又は他の適切な構成要素と組み合わせて、エアロゾル製剤(当該製剤は噴霧される)に作られて、吸入を介して投与されうる。エアロゾル製剤は、許容される高圧ガス、例えばジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素などの中に配置されうる。
【0167】
非経口投与、例えば静脈内、筋肉内、皮内、及び皮下経路による投与、に適した製剤は、水性及び非水性の等張滅菌注射溶液であって、抗酸化物質、緩衝剤、静菌剤、及び予定された受容者の血液と製剤を等張にする溶質を含む溶液、並びに水性及び非水性滅菌懸濁液であって、懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤、及び保存剤を含みうる懸濁液を含む。開示された方法を実行する際に、組成物は、例えば静脈注入、経口、局所、腹腔内、膀胱内、又はくも膜下内に投与されうる。化合物の製剤は、単位用量又は複数用量で密閉された容器、例えばアンプル及びバイアル内に存在してもよい。注射溶液及び懸濁液は、以前に記載された種類の滅菌粉末、顆粒、及び錠剤から調製されうる。様々なデリバリー・オプションが、血管新生を調節し、そうして、例えば虚血状態の治療のために、本明細書に提供される医薬組成物のデリバリーに利用できる。特定の適応症に依存して、当該組成物は、対象の特定の領域又は組織を標的化できる。対照的に、他の治療は、特定の領域、例えば目への標的デリバリーを探すことなく一般的な様式で組成物を投与することに関する。例えば、アデノ随伴ウイルスベクターは、網膜上非細胞及び光受容細胞に高効率で形質導入する。例えば、Martinら(2002) Methods 28 (2): 267-75; Hansenら、(2003) Invest Ophthalmol Vis Sci. 44 (2):772-80を参照のこと。
【0168】
適用
本明細書に開示される遺伝子発現を調節するZFP、及び当該ZFPをコードする核酸は、様々な適用において利用できる。以下に詳細に記載されるように、特定の方法は、調節が1以上のPEDFの活性化に関与するように行われる。上で記載された医薬組成物中などにおいて本明細書に提供されるZFP及び当該ZFPをコードする核酸は、細胞培養(つまりin vitro適用において)及びin vivo、例えば眼、の両方において血管新生を阻害するように作用できるPEDF遺伝子の発現を活性化するために使用できる。このような活性化は、有害な血管新生を阻害できる。それゆえ、血管新生を阻害する特定の方法は、ZFPを動物、例えば哺乳動物、例えばヒトに導入することに関する。活性化ドメインを有するZFPをPEDF遺伝子に結合することは、抗血管新生の天然の方法を高めることができる。例えば、増大した新血管形成により引き起こされる眼の疾患(加齢性黄斑変性症、糖尿病性網膜症、及び未熟児網膜症)は、血管新生因子の上方制御を伴って、PEDF下方制御を示す。
【0169】
従って本明細書に記載されるPEDF-ZFPアクチベーターは、眼の疾患を治療するために、例えば眼に対するウイルス性ベクターデリバリーにより、他の治療薬(例えば、VEGF/P1GFの阻害剤、VEGF/P1GF遺伝子のZFPリプレッサー)と組み合わせて又は単独で有利に使用することができる。PEDFの生理学的に関連のあるレベルは、新たな血管の形成を予防するために産生することができ、それにより疾患の進行を停止することができる。PEDFが神経向性の活性も有するので、光受容体細胞の保護を提供することも同様に予期される。
【0170】
本明細書に記載される様にPEDF-ZFPは、腫瘍増殖を含む血管新生を調節するためにも使用されうる。腫瘍の進行及び転移には血管新生の増加が必要とされる。そうして、PEDF発現を活性化するZFPは、腫瘍特異的プロモーターを用いてZFPの発現を腫瘍に標的することにより、及び/又は腫瘍細胞において選択的に複製するウイルスベクター(例えばアデノウイルス)を介して血管新生を抑制するPEDF・ZFPをデリバリーすることにより、腫瘍における血管新生を阻害するために有利に使用できる。このような方法はまた、腫瘍増殖を阻害するさらなる分子、例えば、腫瘍増殖を阻害する抗体及び/又は腫瘍阻害に関する遺伝子産物、例えば非限定的にGM-CSFなどのサイトカイン、の発現を上方制御するZFPを利用することもある。
【0171】
本明細書に記載される組成物は、PEDF発現を抑制するために、そしてそのようなものとして血管新生の増大させるためにも使用できる。血管新生を評価するための様々なアッセイが知られている。例えば、血管新生を促進するZFP及び/又は核酸の能力が、Leungら、(1989) Science 246: 1306-1309により記載される様に、トリ絨毛尿膜において評価することができる。別のオプションは、Ratinejadら(1989) Cell 56: 345-355により記載される様に、ラット角膜についてアッセイを行うことである。他のアッセイは、米国特許第5,840,693号において開示されている。
【0172】
ZFPは、非治療適用、例えば、PEDF遺伝子の発現を活性化又は抑制する薬剤を同定するか、又は標的配列を含有する標的核酸を検出するスクリーニング方法に使用することができる
【0173】
抗血管新生治療についてのPEDF発現の活性化
色素上皮由来因子(PEDF)は抗血管新生因子であるので、生物体の1以上の細胞によるPEDFタンパク質の産生を増加させることは、異常に高度の血管形成により特徴付けられる状態を治療するために、及び/又は当該腫瘍に対して血管供給を低下させることにより腫瘍増殖を阻害するために使用することができる。抗血管新生治療の当該タイプについての以前のアプローチは、PEDFタンパク質又はPEDFをコードするcDNAを治療される生物体の1以上の細胞に導入することに関した。例えば、米国特許第5,840,686号;第6,288,024号;第6,391,850号;第6,451,763号;第6,573,092号;第6,670,333号;及び第6,797,691号を参照のこと。
【0174】
本明細書に開示される抗血管新生治療用の方法は、生物の1以上の細胞に、PEDF遺伝子に結合する融合タンパク質を導入することにより、PEDFをコードする内在性細胞遺伝子を発現する調節に関する。ある実施態様では、このようなタンパク質は、DNA結合ドメイン及び機能ドメイン(例えば、転写活性化ドメイン又は転写抑制ドメイン)を含む。DNA結合ドメインは、共有の米国特許第6,453,242号;第6,534,261号;第6,607,882号;第6,785,613号;第6,794,136号及び第6,824,978号に開示される遺伝子操作されたジンクフィンガー結合ドメインでありうる。例えば、米国特許第5,789,538号;第6,007,988号;第6,013,453号;第6,140,466号;第6,242,568号;第6,410,248号;第6,479,626号;第6,746,838号及び第6,790,941号を参照のこと。
【0175】
DNA結合ドメインは、PEDF遺伝子の転写又は非転写領域において任意の配列に、又はPEDF遺伝子の転写が制御される限り、他の任意の配列に結合することができる。ジンクフィンガーにより結合する標的部位を選択する方法が、共有の米国特許第6,453,242号において開示される。特定の実施態様では、当該標的部位は、共有の米国特許出願公開第2002/0064802A1号において記載されているように、細胞クロマチンの近接可能領域に存在する。
【0176】
DNA結合ドメインが遺伝子操作されたジンクフィンガー結合ドメインであるこれらの実施態様では、ジンクフィンガードメインは、PEDF遺伝子の特定の標的部位に結合するように遺伝子操作される。結合ドメインは、複数のジンクフィンガー(例えば、2、3、4、5、6又はそれより多くのジンクフィンガー)を含む。一般的に個々のジンクフィンガーは3〜4個のヌクレオチドの亜部位に結合する。亜部位は、標的部位に隣接してもよく(及び幾つかの場合重なり合っている);或いは任意の2以上の亜部位は、1、2、3、又はそれより多くのヌクレオチドにより分離されてもよい。例えば、US2003/0119023(2003年6月26日)を参照のこと。
【0177】
ヒトPEDF(Gen Bank寄託番号第U29953号)及びマウスPEDF遺伝子(Gen Bank寄託番号第NT-039515号)における代表的な標的部位が表1に示される。
【0178】
ヒト及びマウスPEDF遺伝子の標的部位に結合する代表的なジンクフィンガー結合ドメインは表2に示される。
【0179】
【表1】

【0180】
【表2】

【0181】
このような分子の任意の機能ドメインは、単純ヘルペスウイルスVP16活性化ドメイン、合成VP64活性化ドメイン(つまり、VP16度メインの4つのタンデムコピー)及び/又はNF-κB調節因子由来のp65活性化ドメインなどの転写活性化ドメインでありうる。1より多くの機能ドメインが融合タンパク質中に存在してもよく、そしてこれらの場合、複数コピーの同一の機能ドメインが示されうる(例えば、2コピーのp65活性化ドメイン)。或いは、1の又は複数コピーの複数の異なる機能ドメインは、1の融合タンパク質中に存在してもよい。
【0182】
更なるドメイン、例えばエピトープタグ(例えば、FLAG、ヘマググルチニン、myc)及び核局在化シグナルは、本明細書に開示されるように融合タンパク質中に存在してもよい。
【0183】
新血管形成の治療
別の態様では、本明細書に記載されるPEDFの発現を調節する組成物は、新血管形成により特徴付けられる状態を治療するために使用される。新血管形成により特徴付けられる病気の非制限的な例は、加齢性黄斑変性症である。さらなる病気は、糖尿病性網膜症及びリューマチ様関節炎である。
【0184】
特定の実施態様では、新血管新生により特徴付けられる病気の治療は、PEDF遺伝子の発現を活性化する本明細書に記載される組成物の投与、及びVEGF遺伝子の発現を抑制する第二組成物の投与に関する。当該組成物は、任意の順番で連続して又は同時に投与されてもよい。特定の実施態様では、両方の組成物はZFPを含む。別の実施態様では、両方の組成物は、ZFPをコードするポリヌクレオチドを含む。さらなる実施態様では、1の組成物が、ZFPをコードするポリヌクレオチドを含み、別の組成物はタンパク質形態のZFPを含む。ZFPがポリヌクレオチドとして投与される実施態様では、1のヌクレオチド(例えば発現ベクター)は、両方のZFPをコードするものとして使用することができる。
【0185】
1以上のVEGF遺伝子の標的部位に結合するジンクフィンタータンパク質は、例えば、米国特許出願公開第20030021776号に記載された。当該文献はその全てを本明細書に援用する。これらのZFPは、2、3、4、5、6本、又はさらに多くのフィンガーを含んでもよく、そして上に記載される抑制ドメインなどの機能ドメインを含んでもよい。
【0186】
例えば、1の実施態様では、本明細書に記載される組成物と組み合わせて使用されうる遺伝子操作されたZFPは、3本のジンクフィンガーを含み、そして各ジンクフィンガーの認識領域のアミノ酸配列は以下の通りである:F1:DRSNLTR(配列番号83);F2:TSGHLSR(配列番号16);F3:RSDHLSR(配列番号84)。当該ZFPは、標的部位GGGGGTGAC(配列番号85)を認識する。
【0187】
上で記載される様に、新血管形成により特徴付けられる病気の治療は、典型的に、PEDF発現を活性化するZFPの使用、並びに場合によりVEGF発現を抑制するZFPの使用に関する。従って、ZFPは好ましくは、適切な機能ドメイン、つまりPEDF標的化ZFPについての活性化ドメイン及びVEGF標的ZFPの抑制ドメインを含む。
【0188】
悪性腫瘍の治療
さらなる実施態様では、本明細書に記載される組成物は、腫瘍、特に悪性腫瘍の治療に有用である。こうして、PEDF-ZFPアクチベーターは、悪性腫瘍の増殖及び/又は転移を抑制するために、悪性腫瘍を患う患者に投与することができる。
【0189】
PEDF-ZFPアクチベーターは、腫瘍細胞中で選択的に複製するウイルスデリバリービヒクルを介して、又はZFPの発現を調節するための腫瘍特異的プロモーターを使用する複製欠損ウイルスベクターを介してデリバリーすることができる。腫瘍特異的プロモーターの例は、例えば:E2F-1、スルビビン、シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)、上皮糖タンパク質2(EGP-2)、及びTERT(他の物の中で特に)を含む。ZFPの選択的発現は、前立腺、又は低酸素依存性プロモーターなどの上で記載される組織特異的プロモーターを用いて達成することができる。多くの悪性腫瘍は、PEDFアクチベーターとして作用するZFPを用いて有利に治療されうる。さらに、PEDFがニューロンを分化させるので、血管新生を抑制し、そして腫瘍を潜在的に活動的でないものとすることができる分化を誘導することによる治療は、神経起源の腫瘍において特に有用であってもよい。
【0190】
本明細書に記載されるPEDF ZFPアクチベーターは単独で使用されてもよい。或いは、これらのZFPは、異なる態様の腫瘍形成を標的とする他の治療(例えば免疫刺激)と組み合わせて使用されてもよい。このような組み合わせ治療の1の非限定的な例は、サイトカイン、例えば顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)の転写を活性化するZFP転写因子と組み合わせてPEDF ZFPアクチベーターを使用することに関する。PEDF活性化が腫瘍の拡大に必要とされる血管新生を阻害する一方、GM-CSFは、腫瘍特異的抗原に対する免疫応答を刺激することにより、腫瘍進行を阻害する。PEDF及びGM-CSF転写を活性化するZFPは、存在する腫瘍を効果的に殺傷し、そして腫瘍進行を予防する能力を有する。さらに、PEDF及びGM-CSFの両方が分泌され、そうしてPEDF及び/又はGM-CSF遺伝子が活性化されていない細胞上で「第三者(bystander)」効果を発揮する能力を有する。
【0191】
ヒトGM-CSF遺伝子(Gen Bank寄託番号第M13207号)及びマウスGM-CSF遺伝子(Gen Bank寄託番号第X03020号)における代表的な標的部位が表3に示される。
【0192】
ヒト及びマウスGM-CSF遺伝子において標的部位に結合する代表的なジンクフィンガー結合ドメインは、表4に示される。
【0193】
【表3】

【0194】
【表4】

【0195】
PEDF及び/又はGM-CSFを活性化するZFPはex vivoで、例えば単離された間葉幹細胞で使用されうる。間葉幹細胞が体に戻される場合、当該幹細胞は、腫瘍増殖部位に標的化され、そして従って、これらの部位にPEDF活性化ZFPを標的化する。Studenyら、(2004) J Natl Cancer Inst. 96(21): 1593-603。
【0196】
他の実施態様では、本明細書に記載されるPEDF ZFPアクチベーターは、他の血管新生阻害剤と組み合わせて使用される。そのような阻害剤の非限定的な例は、VEGFに結合する抗体(例えば、Genentech, Inc, South San Francisco, CAによりAvastin(登録商標)として製造されるベバシツマブ及び/又はHanahanら、(2003) Cancer Res. 63(ll):3005-8.により記載される抗CTLA4抗体)を含む。
【実施例】
【0197】
以下の実施例は、例示として示されており、特許請求の対象を制限するものではない。
実施例1:PEDFに結合するZFPのデザイン
4種の6本フィンガーのZFPを、上の表1で示したヒト及びマウスPEDF遺伝子を標的するために設計した。特に、ZFP6961〜6981はヒトPDEDFプロモーターを標的化した一方、ZFP6078及び6969はマウスPEDFプロモーターを標的化する。これらのZFPの標的配列を表1に示す。ZFP6961、6981、6078、及び6969は、各々6本フィンガーのZFPであって、PEDFの活性化又は抑制のどちらが所望されるかに依存して、転写活性化ドメイン(例えば、VP16の活性化ドメイン、NF-κB p65の活性化ドメイン)又は転写抑制ドメイン(例えば、KOX1タンパク質のKRAB-ABボックス抑制ドメイン)のいずれかに結合されうるZFPである。
【0198】
これらのZFPは、例えば、以下の実施例2に記載される核局在化配列(NLS)を含んでもよい。
2コピーのNF-κB p65活性化ドメインに結合されたZFP6961のアミノ酸配列は以下に示される:
【化1】

【0199】
1コピーのNF-κBp65活性化ドメインに結合された6078のアミノ酸配列は以下の通りである:
【化2】

【0200】
実施例2:PEDF結合性ZFPの構築
実施例1及び表1に記載されるZFPをコードするポリヌクレオチドを調製し、そして標準的な分子生物学的技術を用いて発現カセット中に挿入した。
【0201】
簡潔に記載すると、ZFPはMooreら、(2001) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98:437-1441; Isalan及びChoo (2001) Methods Enzymol 340:593-609に記載されるin vitro選別されたモジュールのアーカイブから組み立てられた。組み立てられたZFPを、機能ドメイン(例えば、NF-κB p65の活性化ドメイン)へのフレーム内(in-frame)NH2末端融合としてpcDNA3.1(Invitrogen)にクローニングした。
【0202】
レトロウイルス及びアデノウイルスベクターも調製される。簡単に記載すると、全てのZFPコンストラクトは、SV40大T抗原(SV40 large T antigen)由来のN末端核局在化シグナル(Pro-Lys-Lys-Lys-Arg-Lys-Val)(配列番号72)、ジンクフィンガーDNA結合ドメイン、アミノ酸413〜490の活性化ドメイン、及びFLAGペプチド(Asp-Tyr-Lys-Asp-Asp-Asp-Asp-Lys)(配列番号73)を含んだ。レトロウイルスベクターは、293AMPHO-PAK(登録商標)細胞株中で産生される。ウイルス含有上清をトランスフェクション後48時間で回収し、0.45mm孔サイズのフィルターを通してろ過し、そして標的細胞の形質導入のために新鮮なうちに使用するか、又は一定量とって-80℃で貯蔵した。同様に、組換えアデノウイルス・ベクターを、Ad-Easy Systemを用いて調製する(T.C. He.ら(1998) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 95:2509-2514)。
【0203】
実施例3:PEDFの活性化
細胞培養及びトランスフェクション:
マウスNeuro2a細胞を10%FBSを加えたDMEM中で培養した。ヒトHEK293細胞を、10%FBSを加えたDMEM中で培養した。ヒトARPE19細胞(上でRPEと記載される)を、10%FBSを添加したDMEM/F12(50-50混合液)中で培養した。細胞を〜1.5×105細胞/ウェルの密度でトランスフェクションの16〜24時間前に撒いた。2回のトランスフェクションを、Lipofectamine(登録商標)2000(Invitrogen, Carlsbad, CA)を用いて各コンストラクトについて行った。1μgのZFP-TE発現プラスミド又は対照プラスミドを、3μlのlipofectamine2000試薬を用いて各ウェル中にトランスフェクションした。トランスフェクション試薬を含有する培地を8時間後に取り除き、そして新たな培地を加えた。RNA単離及びTaqman分析のためにトランスフェクション後48〜72時間で細胞を回収した。ウエスタンブロットにより分泌されたPEDFを分析するために培養培地を回収した。
【0204】
Taqman分析:
High Pure RNA単離キット(Roche, Indianapolis, IN)を用いてRNAを単離した。Taqman分析を以前に記載される様に行った(J. Biol. Chem. 275 33850)。簡潔に記載すると、ABI7700SDS機械(Perkin Elmer, Boston, MA)において96ウェルプレートフォーマットでTaqManを実行し、そしてSDSバージョン1.6.3ソフトウェアで分析した。RNAサンプル(25ng)を0.1μMのプローブ及び最適量の各プライマー、5.5mM・MgCl2、及び0.3mM・dNTP(各々)、0.625ユニットのAmpliTqq Gold DNAポリメラーゼ、6.25ユニットのMultiScribe逆転写酵素、及び5ユニットのRNase阻害剤をPE由来の1×TaqMan緩衝液A中に混合した。逆転写反応を48℃で30分間行った。95℃で10分間変性させた後に、PCR増幅反応を95℃で15秒間及び60℃で1分間40サイクル行った。PEDF(ヒト又はマウス)及び18S RNAのレベルを、標準曲線を用いて125倍の濃度範囲(1回の反応当たり1〜125ngのトータルRNA)にわたる標準曲線を用いて定量した。各RNAサンプルをTaqman反応で二回行った。PEDF/18Sの比率を使用して、様々なサンプル中でのPEDF発現の相対レベルを測定するために使用した。プライマー及びプローブの配列及び濃度を表5に与える。
【0205】
【表5】

【0206】
ウェスタンブロット分析:
ZFPをコードするプラスミド又は空ベクターでトランスフェクトされたNeuro2A、HEK293、及びARPE19から得た培養培地を、トランスフェクション後48〜72時間で回収した。30μlの培地及び10μlのLDSサンプル緩衝液(Invitrogen, Carlsbad, CA)を混合し、75℃で10分間加熱し、そして4〜12%ビス-トリスNuPAGEゲル(Invitrogen, Carlsbad, CA)上にロードした。150vにて1時間の電気泳動後、XCellトランスファー・モジュール(Invitrogen, Carlsbad, CA)を用いて、30vで2時間タンパク質をニトロセルロース膜に転写した。4%乾燥ミルクを溶解したTBST(0.1%Tween20を伴うTBS)中で1時間室温にてブロッキングし、次に、室温で1時間、ポリクローナル抗PEDF抗体(Bioproducts MD, Middletown, MD,1:1000希釈)を溶解した4%ミルクを含むTBSTでインキュベートし;次に膜を3回4%乾燥ミルクを含むTBST中で洗浄し(各々10分)、HRP結合抗ラビット抗体(Pierce Biotechnology, Rockford, IL, 1:2000希釈)を溶解した4%ミルクを含むTBSTでインキュベートし、TBSTで3回洗浄し(各々10分)、そしてSuperSignal West Femto試薬(Pierce Biotechnology, Rockford, IL)で5分間インキュベートし、そしてX線フィルムに感光させた。
【0207】
結果
図1、2、及び3に示される様に、結果は、本明細書に記載されるZFPがPEDF転写を活性化し、そしてPEDF分泌を増加させたことを示す。図1A及び図1Bにより、ヒト細胞株HEK293(図1A)及びRPE(図1B)中でのp65/ZFP6961融合タンパク質の発現が、空ベクターでトランスフェクトされた対照細胞に比べて増加されたPEDF RNAレベルをもたらすということが示される。図3Aにより、p65/ZFP6078融合体をコードする発現ベクターでトランスフェクトされたマウスNeuro2A細胞において、増加されたPEDFレベルが示される。
【0208】
図2A、2B、及び4により、2xp65/ZFP6961融合体(つまり、6961ZFPに融合された2コピーのp65活性化ドメイン;図2A)をコードするベクターでトランスフェクトされたヒトHEK293細胞、2xp65/ZFP6961融合体(図2B)をコードするベクターでトランスフェクトされたヒトRPE細胞、及びp65/ZFP6078融合体(図4)をコードするベクターでトランスフェクトされたマウスNeuro2AからのPEDF分泌のタンパク質ブロット分析を示す。PEDFバンドは矢印で示される。
【0209】
更なる実験により、p65/ZFP6961融合体が、ヒト腫瘍細胞株U87MG、SCC9、及びHLACにおいてPEDF転写を活性化したことが示された。
【0210】
低酸素がPEDFタンパク質を不安定化するので、低酸素状態で培養された細胞を、PEDF標的ZFP活性因子をコードするベクターでトランスフェクトすることは、PEDF転写を活性化し、そしてPEDFタンパク質の産生を増加させる能力の厳しい検査を提供する。そのような実験が行われ、マウスNeuro2A細胞中でp65/ZFP6078が発現した場合、分泌されたPEDFのレベルは、正常酸素圧及び低酸素条件の両方の下で培養された細胞で同様であるということが観察された。
【0211】
実施例4:PEDF遺伝子に標的化されるZFPをコードするアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターの調製
(1)p65転写活性化ドメインに融合された6078ZFP又は(2)緑色蛍光タンパク質(GFP)のいずれかをコードする配列をAAV-TetO2-MCSベクターにクローニングした。当該ベクターは、2コピーのTetオペレーター配列3'を、AAV-MCSベクターのCMVプロモーターに挿入することにより構築された(Stratagene, La Jolla, CA)。HEK293-TRex細胞株(Invitrogen, Carlsbad, CA)をAAVのパッケージング細胞株として用いた;当該細胞株は、構成的にTetリプレッサーを発現し、当該リプレッサーはAAV産生の間に6078-p65の発現を抑制し、そしてウイルスタイターを改善する。ヘルパープラスミド(pRC及びpHelper)とAAVコンストラクトとのコトランスフェクト、AAV精製、及びウイルスゲノム定量を、Gene Therapy 5:938-945に記載される方法と類似の方法を用いて行った。
【0212】
実施例5:マウスの眼におけるPEDF遺伝子発現のin vivo活性化
AAV2-6078p65及びAAV2-GFP(実施例4に記載される)をこれらの実験に用いた。網膜下注射を、GFP又はZFPウイルスのいずれか1μlで行った(〜5×108ベクターゲノム)。注射後6週間で、Trizol試薬(Invitrogen,Carlsbad, CA)を用いて後眼盃(posterior eye cup)(AAV-2GFP注射用に3個の眼及びAAV-26078p65注射用に5個の眼)からRNAを単離した。Taqmanアッセイを、以前に記載されたように行った(J. Biol. Chem. 275:33850)。マウスPEDF及び18S RNAのレベルを、125倍の濃度範囲(1回の反応あたり1〜125ngのトータルRNA)までの標準曲線を用いて定量した。各RNAサンプルを2回のTaqman反応でアッセイした。PEDF/18Sの割合を使用して、PEDF発現の相対レベルを測定した。図5により、対照GFPコードウイルスで注射された眼と比較して、6078-p65ウイルスで注射された眼においてPEDF・mRNAの高いレベルに対する傾向が示される。
【0213】
実施例6:マウスにおけるレーザー誘導性脈絡膜新血管形成の低下
AAV2-GFP(5個の眼)及びAAV2-6078p65(5個の眼)の網膜下注射を受けたマウスの分離群において、注射後6週目に1つの眼あたり4個の位置でレーザーによりブルッフ膜を破裂させる。これは、加齢性黄斑変性症(AMD)に付随する新血管新生をかなり模倣する脈絡膜新血管形成(CNV)を誘導する。レーザーを用いた傷害の2週間後に、蛍光標識されたデキストランでマウスをかん流し、そしてCNV障害の大きさ(高蛍光領域)を脈絡膜平坦マウント(Choroidal flat mount)において計測した。マウントの視覚による検査により、PEDFアクチベーターウイルスで注射された眼は対照GFPウイルスを注射された眼に比べて小さくなった病変を含み、CNVの低下を指し示した。結果を定量し、そして図6に示される様に、統計的に有意であることを示す。
【0214】
実施例7:デュアルPEDFアクチベーター/VEGFリプレッサーコンストラクト
2個のジンクフィンガー融合タンパク質、つまり1つはPEDFアクチベーターでありもう一方はVEGFリプレッサーである、をコードするヒト及びマウス特異的ベクターを構築した。2Aペプチド配列を2個のジンクフィンガータンパク質をコードする配列間に配置した。コンストラクトの一般的な構造は:NH2-VEGFリプレッサー-2Aペプチド配列-PEDFアクチベーター-COOHであった。VEGFリプレッサー、PEDFアクチベーター、及び機能ドメインの情報を以下の表6に与える。
【0215】
【表6】

【0216】
両方のコンストラクトは、適切な(ヒト又はマウスの)細胞型においてPEDF発現を活性化することができる。
【0217】
実施例8:アデノウイルス・デリバリー・ビヒクルを用いたヒト細胞におけるPEDF及びGM-CSF遺伝子の協調的活性化
PEDFアクチベーター及びGM-CSFアクチベーターをコードする配列をハイブリッドアデノウイルスデリバリービヒクル中に挿入した。当該ウイルスはAd5に由来するが、Ad35ファイバーを含んだ。当該ウイルスを用いて、2個のヒト細胞株:A2058メラノーマ株及びSCC9扁平上皮癌細胞株に感染させた。
【0218】
PEDFアクチベーターは6961ZFPドメイン(上記表2)及び2個のタンデムp65活性化ドメインを含んだ。GM-CSFアクチベーターは、7905ZFPドメイン(上記表4)及びVP64活性化ドメイン(つまり、4個のタンデムVP16活性化ドメイン)を含んだ。
【0219】
上記Ad5/35ウイルスで感染することによりデリバリーされる当該デュアルアクチベーターコンストラクトは、A2058及びSCC9細胞の両方においてPEDF及びGM-CSF遺伝子の両方の転写を活性化することができる。
【0220】
本明細書において言及される全ての特許、特許出願及び公開は、その全てを本明細書に援用する。
【0221】
理解を明確にする目的のために、実例及び一例としてある程度詳細に開示をしたが、様々な変更及び改変が開示の本質又は範囲から逸脱することなく行うわれうるということが当業者に明らかであろう。従って、前述の記載及び実施例は、制限として解釈すべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0222】
【図1】図1A及び1Bは、Taqman(登録商標)分析により計測した際のZFP No.6961をコードする発現ベクター又は空ベクターでトランスフェクトされた細胞におけるPEDFのmRNAレベルを示すグラフである。ZFP No.6961は、空ベクターの対照トランスフェクションで見られるレベルに比べて、HEK293細胞において(図1A)及びARPE-19(RPE)細胞において(図1B)PEDF発現のレベルを増加させた。
【図2】図2A及び2Bは、タンパク質ブロットの再現であり、そして分泌されたPEDFのレベルを記載する。当該PEDFのRNA分析は図1に示されている。ZFP No6961は、対照に比較してHEK293細胞(図2A)及びRPE細胞(図2B)においてPEDFのレベルを増加させた。
【図3】図3は、Taqman(登録商標)分析により計測された場合の、ZFP No.6078をコードする発現ベクター又は空ベクターでトランスフェクトされたマウスNeuro2A細胞におけるPEDF RNAのレベル(18S RNAレベルに対して標準化)を示すグラフである。
【図4】図4は、タンパク質ブロットの再現であり、マウスNeuro2a細胞において分泌されたPEDFのレベルを示す。ZFP6078は、対照に比べて分泌されたPEDFのレベルを増大させた。
【図5】図5は、GFP(左側)又はp65転写活性化ドメインに融合されたPEDF-標的化ZFP(6087)(右側)をコードするAAV2ベクターで注射されたマウスの眼におけるPEDF・mRNA(18S RNAレベルに対して標準化)を示す。
【図6】図6は、GFP(左側)又はp65転写活性化ドメインに融合されたPEDF標的化ZFP(6078)(右側)をコードするAAV2ベクターで注射されたマウスの眼における脈絡膜の新血管形成領域を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
色素上皮由来因子(PEDF)をコードする遺伝子に結合し、そして発現を調節する遺伝子操作されたジンクフィンガータンパク質であって、当該タンパク質が6本のジンクフィンガーを含み、そして各ジンクフィンガーの認識領域のアミノ酸配列は以下の:
F1:RSDALSR(配列番号14)
F2:QSGDLTR(配列番号15)
F3:QSGDLTR(配列番号15)
F4:TSGHLSR(配列番号16)
F5:RSDHLSN(配列番号17)
F6:QSATRIT(配列番号18)
で表される、前記ジンクフィンガータンパク質。
【請求項2】
機能ドメインをさらに含む、請求項1に記載の遺伝子操作されたジンクフィンガータンパク質。
【請求項3】
前記機能ドメインが活性化ドメインである、請求項2に記載の遺伝子操作されたジンクフィンガータンパク質。
【請求項4】
前記活性化ドメインが、VP16活性化ドメイン、VP64活性化ドメイン、及びp65活性化ドメインからなる群から選ばれる、請求項3に記載の遺伝子操作されたジンクフィンガータンパク質。
【請求項5】
2個のp65活性化ドメインを含む、請求項4に記載の遺伝子操作されたジンクフィンガータンパク質。
【請求項6】
前記機能ドメインが、抑制ドメインである、請求項2に記載の遺伝子操作されたジンクフィンガータンパク質。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の遺伝子操作されたジンクフィンガータンパク質を含む細胞。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の遺伝子操作された第一ジンクフィンガータンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【請求項9】
請求項8に記載されるポリヌクレオチドを含む細胞。
【請求項10】
内在性PEDF遺伝子の発現を調節することにより生物において血管新生を調節する方法。
【請求項11】
前記PEDF遺伝子の発現が活性化される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記PEDF遺伝子の発現が抑制される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記内在性PEDF遺伝子の発現が、遺伝子操作されたジンクフィンガータンパク質により調節される、請求項10〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記遺伝子操作されたジンクフィンガータンパク質が、請求項1〜6のいずれか一項に記載されるタンパク質を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記生物が哺乳動物である、請求項10〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記哺乳動物がヒトである、請求項17に記載の方法。
【請求項17】
生物において眼の新血管形成を治療する方法であって、当該生物の1以上の細胞において内在性PEDF遺伝子の発現を活性化させることを含む、前記方法。
【請求項18】
前記内在性PEDF遺伝子の発現が、遺伝子操作された第一ジンクフィンガータンパク質の内在性PEDF遺伝子内の標的部位への結合により活性化される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記遺伝子操作された第一ジンクフィンガータンパク質が、請求項1〜5のいずれか一項に記載のタンパク質を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記方法が、前記生物の1以上の細胞において血管新生因子をコードする内在性遺伝子の発現を抑制することを含む、請求項17〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記血管新生因子が血管内皮細胞増殖因子(VEGF)である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記VEGFが、血管内皮増殖因子A(VEGF-A)である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記内在性VEGF-A遺伝子が、第二遺伝子操作ジンクフィンガータンパク質を当該内在性VEGF-A遺伝子内の標的部位に結合させる事により阻害される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記第二遺伝子操作されたジンクフィンガータンパク質が、3本のジンクフィンガーを含み、そして各ジンクフィンガーの認識領域のアミノ酸配列は以下の:
F1:DRSNLTR(配列番号83)
F2:TSGHLSR(配列番号16)
F3:RSDHLSR(配列番号84)
で表される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記第二フィンガータンパク質がさらに抑制ドメインを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記抑制ドメインが、v-erbA抑制ドメイン及びKOX抑制ドメインからなる群から選ばれる、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記眼の新血管形成が、加齢性黄斑変性症(AMD)、糖尿病性網膜症(DR)、及び未熟児網膜症からなる群から選ばれる疾患において生じる、請求項17〜26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
第二ジンクフィンガータンパク質をコードする配列をさらに含み、ここで当該第二ジンクフィンガータンパク質が、3本のジンクフィンガーを含み、そして当該各ジンクフィンガーの認識領域のアミノ酸配列が以下の:
F1:DRSNLTR(配列番号83)
F2:TSGHLSR(配列番号16)
F3:RSDHLSR(配列番号84)
で表される、請求項8に記載のポリヌクレオチド。
【請求項29】
前記第一ジンクフィンガータンパク質と第二ジンクフィンガータンパク質をコードする配列の間に配置される内部リボソーム侵入部位(IRES)をさらに含む、請求項28に記載のポリヌクレオチド。
【請求項30】
前記第一ジンクフィンガータンパク質と第二ジンクフィンガータンパク質をコードする配列の間に配置された2Aペプチドをコードする配列をさらに含む、請求項28に記載のポリヌクレオチド。
【請求項31】
請求項8又は28〜30のいずれか一項に記載されるポリヌクレオチドを、生物の1以上の細胞に導入することを含む、生物において眼の新血管形成を治療する方法。
【請求項32】
前記ポリヌクレオチドが、1以上の網膜上皮細胞に導入される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記ポリヌクレオチドが、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アデノウイルス及びレンチウイルスからなる群から選ばれるウイルスベクター中にキャプシド形成する、請求項31又は32に記載の方法。
【請求項34】
前記ウイルスベクターが、アデノ随伴ウイルス(AAV)である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記ウイルスベクターが、2型AAV又は4型AAVである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記生物が哺乳動物である、請求項31〜35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記哺乳動物がヒトである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
生物において悪性腫瘍を治療する方法であって、当該生物の1以上の細胞において内在性PEDF遺伝子の発現を活性させることを含む、前記方法。
【請求項39】
前記内在性PEDF遺伝子が、遺伝子操作された第一ジンクフィンガータンパク質を当該内在性PEDF遺伝子内の標的部位に結合させる事により活性化される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記遺伝子操作された第一ジンクフィンガータンパク質が、請求項1〜5のいずれか一項に記載のジンクフィンガータンパク質を含む、請求項38又は39に記載の方法。
【請求項41】
前記方法が、生物の1以上の細胞においてサイトカインをコードする内在性遺伝子の発現を活性化することをさらに含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記サイトカインが顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記内在性GM-CSF遺伝子の発現が、遺伝子操作された第二ジンクフィンガータンパク質を当該内在性GM-CSF遺伝子内の標的部位に結合させる事により活性化される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記第二ジンクフィンガータンパク質が、6本のジンクフィンガーを含み、そして当該各ジンクフィンガーの認識領域のアミノ酸配列が以下の:
F1:RSDALSE(配列番号65)
F2:DSSHRTR(配列番号60)
F3:RSDHLSA(配列番号61)
F4:ANSNRIK(配列番号62)
F5:QSSDLSR(配列番号58)
F6:RSDALAR(配列番号32)
で表される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記第二ジンクフィンガータンパク質が、活性化ドメインをさらに含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記活性化ドメインが、p65活性化ドメイン、VP64活性化ドメイン、及びVP16活性化ドメインからなる群から選ばれる、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記悪性腫瘍が、頭部及び頸部癌、膠芽細胞腫、前立腺癌及び膵臓癌からなる群から選ばれる、請求項38〜46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
生物の悪性腫瘍を治療する方法であって、生物の1以上の細胞においてサイトカインをコードする内在性遺伝子の発現を活性化することを含む、前記方法。
【請求項49】
前記サイトカインが顆粒球-マクロファージコリニー刺激因子(GM-CSF)である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記内在性GM-CSF遺伝子の発現が、遺伝子操作されたジンクフィンガータンパク質を内在性GM-CSF遺伝子内の標的部位に結合することにより活性化される、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記遺伝子操作されたジンクフィンガータンパク質が、6本のジンクフィンガーを含み、そして各ジンクフィンガーの認識領域のアミノ酸配列が以下の:
F1:RSDALSE(配列番号65)
F2:DSSHRTR(配列番号60)
F3:RSDHLSA(配列番号61)
F4:ANSNRIK(配列番号62)
F5:QSSDLSR(配列番号58)
F6:RSDALAR(配列番号32)
で表される、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記遺伝子操作されたジンクフィンガータンパク質が、活性化ドメインをさらに含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記活性化ドメインが、p65活性化ドメイン、VP64活性化ドメイン、及びVP16活性化ドメインからなる群から選ばれる、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記悪性腫瘍が、頭部及び頸部癌、膠芽細胞腫、前立腺癌、及び膵臓癌からなる群から選ばれる疾患において生じる、請求項48〜53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記遺伝子操作されたジンクフィンガータンパク質が、前記生物の1以上の細胞に導入される、請求項38〜54に記載の方法。
【請求項56】
前記ポリヌクレオチドが、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アデノウイルス及びレンチウイルスからなる群から選ばれるウイルスデリバリービヒクル中でキャプシド形成される、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記ウイルスデリバリービヒクルが、アデノウイルスである、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記ウイルスデリバリービヒクルが、5型アデノウイルス又は35型アデノウイルス、又は5/35型アデノウイルスのハイブリッドである、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記デリバリービヒクルが、腫瘍細胞において選択的に複製するウイルスである、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記生物が哺乳動物である、請求項38〜59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記哺乳動物がヒトである、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
第二ジンクフィンガータンパク質をコードする配列をさらに含み、ここで、当該第二ジンクフィンガータンパク質が6本のジンクフィンガーを含み、そして当該各ジンクフィンガーの認識領域のアミノ酸配列が以下の:
F1:RSDALSE(配列番号65)
F2:DSSHRTR(配列番号60)
F3:RSDHLSA(配列番号61)
F4:ANSNRIK(配列番号62)
F5:QSSDLSR(配列番号58)
F6:RSDALAR(配列番号32)
で表される、請求項8に記載のポリヌクレオチド。
【請求項63】
前記第一及び第二ジンクフィンガータンパク質をコードする配列の間に配置される内部リボソーム進入部位(IRES)をさらに含む、請求項62に記載のポリヌクレオチド。
【請求項64】
第一及び第二ジンクフィンガータンパク質をコードする配列の間に配置された2Aペプチドをコードする配列をさらに含む、請求項62に記載のポリヌクレオチド。
【請求項65】
前記第一及び/又は第二ジンクフィンガータンパク質をコードする配列が、腫瘍特異的プロモーターに作用可能なように結合される、請求項62〜64のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項66】
前記腫瘍特異的プロモーターが、E2Fプロモーター、スルビビンプロモーター、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)プロモーター、COX-2プロモーター、EGD-2プロモーター及びELF-1プロモーターからなる群から選ばれる、請求項65に記載のポリヌクレオチド。
【請求項67】
前記第一ジンクフィンガータンパク質が、低酸素特異的プロモーターに作用可能なように結合される、請求項62〜64のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項68】
前記第二ジンクフィンガータンパク質が、低酸素特異的プロモーターに作用可能なように結合される、請求項62〜64のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項69】
前記第一ジンクフィンガータンパク質が、組織特異的プロモーターに作用可能なように結合される、請求項62〜64のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項70】
前記第二ジンクフィンガータンパク質が、組織特異的プロモーターに作用可能なように結合される、請求項62〜64のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項71】
生物において悪性腫瘍を治療する方法であって、請求項62〜70のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを生物の1以上の細胞に導入することを含む、前記方法。
【請求項72】
前記ポリヌクレオチドが腫瘍に導入される、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記ポリヌクレオチドが、内皮又は間葉幹細胞に導入され、そして続いて当該幹細胞が前記生物中に導入される、請求項71に記載の方法。
【請求項74】
前記ポリヌクレオチドが、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アデノウイルス及び単純ヘルペスウイルスからなる群から選ばれるウイルスデリバリービヒクル中にキャプシド形成される、請求項72又は73に記載の方法。
【請求項75】
前記ウイルスデリバリービヒクルがアデノウイルスである、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記アデノウイルスが好ましくは腫瘍細胞中で複製する、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記アデノウイルスベクターが、非複製アデノウイルスベクターである、請求項75に記載の方法。
【請求項78】
前記ウイルスベクターが5型アデノウイルスである、請求項76に記載の方法。
【請求項79】
前記生物がヒトである、請求項71〜78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項80】
前記悪性腫瘍が、頭部及び頸部癌、膠芽細胞腫、前立腺癌、及び膵臓癌からなる群から選ばれる疾患において生じる、請求項79に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−531056(P2008−531056A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−558205(P2007−558205)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【国際出願番号】PCT/US2006/007382
【国際公開番号】WO2006/094106
【国際公開日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(302043837)サンガモ バイオサイエンシズ インコーポレイテッド (11)
【Fターム(参考)】