説明

抗C5aR抗体及びその使用

【課題】C5aRに結合し、かつ診断及び治療方法に有用な抗体を提供する。
【解決手段】C5aRのN末端ドメイン以外の細胞外ループと反応する、かつ、C5aのC5aRへの結合を低減又は阻害する抗体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、C5aRに結合し、かつ診断方法及び治療方法に有用な抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
補体タンパク質C3〜C5の各々がタンパク質分解すると、アナフィラトキシンと呼ばれるシグナル伝達分子を有するアミノ末端カチオン性断片が生じる(非特許文献6〜9)。これらの中で最も強力なC5aは最も広範な反応を誘導する。白血球の辺縁趨向(margination)及び浸潤、顆粒結合タンパク質分解酵素の放出、活性酸素及び窒素誘導ラジカルの生成、血流及び毛細管漏出の変化、ならびに平滑筋の収縮能力などの炎症反応の要素を考えれば、C5a分子は「完全な」前炎症媒介因子である。ナノモル以下からナノモルのレベルでは、C5a分子は、すべての骨髄性細胞系(好中球、好酸球及び好塩基球、マクロファージ及び単球)の走化性を誘導し、また、プロスタグランジンによって有意に増強される血管透過性と白血球循環を引き起こす。ナノモル濃度が高くなると、顆粒消失とNADPHオキシダーゼの活性化が誘導される。生物活性のこの範囲は、他の炎症媒介因子とは対照的である。C5aは、慢性関節リウマチ、乾癬、敗血症、再潅流傷害及び成人型呼吸窮迫症候群の発症に関与するとされている(非特許文献1、2)。
【0003】
このC5aの活性は、C5aがその受容体(C5aR)に結合することによって媒介されている。C5aRは、7回膜貫通型のGタンパク質共役型受容体のファミリーに属している。C5aRは、Kdが約1nM以下のC5aに対する高親和性受容体であり、白血球をはじめとする多数の異なる細胞型にある。細胞1個当たりの受容体の数は、白血球当たり最大200,000部位と非常に多い。この受容体の生物学的活性化は、結合が飽和する範囲を上回って起こる。
【0004】
C5aRは伸長されたN末端細胞外ドメインを含んでいる。この大型のN末端ドメインは、IL−8及びfMet−Leu−Phe(FMLP)受容体ファミリーをはじめとするペプチドと結合する、Gタンパク質共役型受容体に特有である。C5aR構造は7回膜貫通型の受容体ファミリーに同じであり、細胞外N末端を有し、その後に細胞内ループ及び細胞外ループとして交互に並んでいる相互螺旋形ドメインでつながっている7回膜貫通型ヘリックスが続き、細胞内C末端ドメインで終止する。
【0005】
C5aRアンタゴニストによりC5a応答が阻害されると、他の補体成分に影響を及ぼすことなく、C5aによって媒介される急性炎症反応が低減されるはずである。この目的に対して、C5aRペプチドアンタゴニスト及び抗C5a受容体抗体がこれまでに報告されている(非特許文献3〜7)。例えば、特許文献1には、C5a受容体のN末端ペプチド(残基9〜29)に対する抗体が記載されている。しかし、目下、さらに改変かつ/又は改良されたC5aRアンタゴニストが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO95/00164号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Gerard, C. and N.P. Gerard, C5A anaphylatoxin and its seven transmembrane-segment receptor. Annual Review of Immunology, 1994. 12: p. 775-808
【非特許文献2】Murdoch, C. and A. Finn, Chemokine receptors and their role in inflammation and infectious diseases. Blood, 2000. 95(10): p. 3032-43
【非特許文献3】Watanabe, H., et al., Analysis of C5a receptor by monoclonal antibody. Journal of Immunological Methods, 1995. 185(1): p. 19-29
【非特許文献4】Pellas, T.C., et al., Novel C5a receptor antagonists regulate neutrophil functions in vitro and in vivo. Journal of Immunology, 1998. 160(11): p. 5616-21
【非特許文献5】Konteatis, Z.D., et al., Development of C5a receptor antagonists. Differential loss of functional responses. Journal of Immunology, 1994. 153(9): p. 4200-5
【非特許文献6】Kaneko, Y., et al., Antagonistic peptides against human anaphylatoxin C5a. Immunology, 1995. 86(1): p. 149-54
【非特許文献7】Morgan, E.L., et al., Anti-C5a receptor antibodies. Characterization of neutralizing antibodies specific for a peptide, CDaR-(9-29), derived from the predicted amino-terminal sequence of the human C5a receptor. Journal of Immunology, 1993. 151(1): p. 377-88
【非特許文献8】Campbell, J.J., et al., Biology of chemokine and classical chemoattractant receptors: differential requirements for adhesion-triggering versus chemotactic responses in lymphoid cells. J Cell Biol, 1996. 134(1): p. 255-66
【非特許文献9】Heath, H., et al., Chemokine receptor usage by human eosinophils. The importance of CCR3 demonstrated using an antagonistic monoclonal antibody. J Clin Invest, 1997. 99(2): p. 178-84
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らはここに、N末端ドメイン以外のC5aRの領域と反応し、C5aのC5aRへの結合を阻害するのに非常に有効である新規なモノクローナル抗体を開発した。これらのモノクローナル抗体は、7F3、6C12及び12D4と命名されている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本発明の一態様では、N末端ドメイン以外の1又は複数のC5aRの細胞外ループと反応し、C5aのC5aRへの結合を低減又は阻害する抗体を提供する。
【0010】
「細胞外ループ」とは、C5aRの第1の細胞外ループ(残基95〜110)、第2の細胞外ループ(残基175〜206)、又は第3の細胞外ループ(残基265〜283)を意味する。
【0011】
好ましい一実施形態では、抗体は、C5aRの第2の細胞外ループ(残基175〜206)を含むエピトープと反応するものである。
【0012】
別の態様では、本発明は、モノクローナル抗体7F3と同じC5aRのエピトープと反応し、C5aのC5aRへの結合を低減又は阻害する抗体を提供する。
【0013】
別の態様では、本発明は、モノクローナル抗体6C12と同じC5aRのエピトープと反応し、C5aのC5aRへの結合を低減又は阻害する抗体を提供する。
【0014】
別の態様では、本発明は、モノクローナル抗体12D4と同じC5aRのエピトープと反応し、C5aのC5aRへの結合を低減又は阻害する抗体を提供する。
【0015】
別の態様では、本発明は、C5aRに結合し、C5aRへのモノクローナル抗体7F3の結合を競合的に阻害する抗体を提供する。
【0016】
別の態様では、本発明は、C5aRに結合し、C5aRへのモノクローナル抗体6C12の結合を競合的に阻害する抗体を提供する。
【0017】
別の態様では、本発明は、C5aRに結合し、C5aRへのモノクローナル抗体12D4の結合を競合的に阻害する抗体を提供する。
【0018】
本発明のこれらの態様の好ましい実施形態では、この比較(comparative)結合特異性は、C5aR、又はC5aRの細胞外ループを含むポリペプチドの存在下における抗体−抗体競合アッセイによって決定される。
【0019】
また別の態様では、本発明は、配列番号19及び配列番号21にそれぞれ示される軽鎖配列及び/又は重鎖配列と実質的に同じ配列を含み、C5aのC5aRへの結合を低減又は阻害する抗体を提供する。
【0020】
また別の態様では、本発明は、配列番号26、配列番号27又は配列番号28にそれぞれ示される可変重鎖配列CDR1、CDR2又はCDR3ループ配列と実質的に同じである少なくとも1つのCDRループ配列を含み、C5aのC5aRへの結合を低減又は阻害する抗体を提供する。
【0021】
また好ましい態様では、前記抗体は、配列番号26、配列番号27及び配列番号28にそれぞれ示される可変重鎖CDR1、CDR2又はCDR3ループ配列と実質的に同じである少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも3つのCDRループ配列を含む。
【0022】
さらなる好ましい実施形態では、前記抗体は、配列番号19に示される可変軽鎖配列のアミノ酸残基24〜39、55〜61又は94〜102により実質的に特定される少なくとも1つのCDRループ配列を含む。好ましくは、前記抗体は、配列番号19に示される可変軽鎖配列のアミノ酸残基24〜39、55〜61及び94〜102により実質的に特定される少なくとも2つ、さらに好ましくは少なくとも3つのCDRループ配列を含む。
【0023】
さらに別の態様では、本発明は、配列番号15及び配列番号17にそれぞれ示される軽鎖配列及び/又は重鎖配列と実質的に同じ配列を含み、C5aのC5aRへの結合を低減又は阻害する抗体を提供する。
【0024】
さらに別の態様では、本発明は、配列番号29、配列番号30又は配列番号31にそれぞれ示される可変重鎖CDR1、CDR2又はCDR3ループ配列と実質的に同一である少なくとも1つのCDRループ配列を含み、C5aのC5aRへの結合を低減又は阻害する抗体を提供する。
【0025】
好ましい態様では、前記抗体は、配列番号29、配列番号30及び配列番号31にそれぞれ示される可変重鎖CDR1、CDR2又はCDR3ループ配列と実質的に同じである少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも3つのCDRループ配列を含む。
【0026】
さらなる好ましい実施形態では、前記抗体は、配列番号15に示される可変軽鎖配列のアミノ酸残基24〜39、55〜61又は94〜102により実質的に特定される少なくとも1つのCDRループ配列を含む。好ましくは、前記抗体は、配列番号15に示す可変軽鎖配列のアミノ酸残基24〜39、55〜61及び94〜102により実質的に特定される少なくとも2つ、さらに好ましくは少なくとも3つのCDRループ配列を含む。
【0027】
さらに別の態様では、本発明は、配列番号23及び配列番号25にそれぞれ示される軽鎖配列及び/又は重鎖配列と実質的に同じ配列を含み、C5aのC5aRへの結合を低減又は阻害する抗体を提供する。
【0028】
さらに別の態様では、本発明は、配列番号32、配列番号33又は配列番号34にそれぞれ示される可変重鎖CDR1、CDR2又はCDR3ループ配列と実質的に同一である少なくとも1つのCDRループ配列を含み、C5aのC5aRへの結合を低減又は阻害する抗体を提供する。
【0029】
好ましい態様では、前記抗体は、配列番号32、配列番号33及び配列番号34にそれぞれ示される可変重鎖CDR1、CDR2又はCDR3ループ配列と実質的に同じである少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも3つのCDRループ配列を含む。
【0030】
さらなる好ましい実施形態では、前記抗体は、配列番号23に示される可変軽鎖配列のアミノ酸残基24〜39、55〜61又は94〜102により実質的に特定される少なくとも1つのCDRループ配列を含む。好ましくは、前記抗体は、配列番号23に示される可変軽鎖配列のアミノ酸残基24〜39、55〜61及び94〜102により実質的に特定される少なくとも2つ、さらに好ましくは少なくとも3つのCDRループ配列を含む。
【0031】
本発明の好ましい実施形態では、C5aRはヒトC5aRである。
【0032】
本発明の一実施形態では、本抗体はさらに他の好中球走化因子、特にCXCR1及びCXCR2リガンド、例えばIL−8などによる好中球の活性化をも阻害する。
【0033】
本発明の好ましい一実施形態では、抗体はモノクローナル抗体又は組換え型抗体である。好ましくは、モノクローナル抗体又は組換え抗体は、キメラ抗体又はヒト化抗体である。
【0034】
また、抗体は任意のアイソタイプであってよい。しかし、本発明のさらなる好ましい実施形態では、抗体はクラスIgG2a抗体又はクラスIgG3抗体である。
【0035】
本発明の別の好ましい実施形態では、抗体は、モノクローナル抗体7F3、モノクローナル抗体6C12及びモノクローナル抗体12D4からなる群より選択されるモノクローナル抗体である。
【0036】
さらなる態様では、本発明はECACCに受託番号00110609として寄託されているハイブリドーマを提供する。
【0037】
さらなる態様では、本発明はECACCに受託番号02090226として寄託されているハイブリドーマを提供する。
【0038】
さらなる態様では、本発明はECACCに受託番号02090227として寄託されているハイブリドーマを提供する。
【0039】
本発明の抗体の種々の化学的誘導体もまた得ることができることが理解されうる。例えば、放射性同位体又は他のトレーサー分子などの標識に結合された本発明の抗体からなる免疫複合体は、当技術分野で周知の技術によって調製することができる。あるいは、本抗体は、抗体の結合特異性によってその所望の作用部位を標的とする治療上有用な分子と結合していてもよい。
【0040】
したがって、さらに別の態様では、本発明は、本発明の抗体と治療剤とを含む複合体を提供する。
【0041】
一連の治療剤が本発明の趣旨の中で用いられ得ることは明らかであろう。好ましい治療剤としては、細胞死又はタンパク質不活性化を媒介する薬剤が挙げられる。治療剤は当技術分野で周知である数多くのトキシンのいずれであってもよい。このトキシンは、シュードモナスエキソトキシン又はその誘導体であってよい。好ましい実施形態では、トキシンはPE40である。
【0042】
さらに別の態様では、本発明は、本発明の抗体及び検出用標識を含む複合体を提供する。
【0043】
検出用標識は当技術分野で周知の任意の好適な標識であってよい。例えば、標識は、放射性標識、蛍光標識、酵素標識又は造影剤であってよい。
【0044】
さらに別の態様では、本発明は、本発明の抗体をコードする配列を含む、単離された核酸分子を提供する。
【0045】
さらに別の態様では、本発明は、本発明の抗体及び薬学的に許容される担体を含む組成物を提供する。
【0046】
さらに別の態様では、本発明は、細胞を本発明の抗体に暴露することを含む、C5aRを担持する細胞とそのリガンドとの相互作用を阻害する方法を提供する。
【0047】
さらに別の態様では、本発明は、細胞においてC5aR活性を阻害する方法であって、該細胞を本発明の抗体に暴露することを含む、上記方法を提供する。
【0048】
さらに別の態様では、本発明は、被験体における好中球の移動(遊走)に関する疾患の治療方法であって、該被験体に本発明の抗体を投与することを含む、上記方法を提供する。
【0049】
本発明の抗体を用いてC5aRを発現する細胞を検出し、定量し、かつ/又は位置を確定することができるということは当業者には明らかであろう。
【0050】
したがって、さらなる態様では、本発明は、被験体における好中球の移動に関する疾患の診断方法であって、該被験体から得られたサンプルと本発明の複合体とを接触させるステップ、及び該複合体とサンプルとの免疫特異的結合を検出するステップを含む、上記方法を提供する。
【0051】
この診断方法では種々のイムノアッセイを用いることができる。かかるイムノアッセイとしては、ラジオイムノアッセイ、ELISA、「サンドイッチ」イムノアッセイ、沈降反応、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ、凝集アッセイ、補体結合アッセイ、イムノラジオメトリックアッセイ、蛍光イムノアッセイなどの技術を用いた競合的及び非競合的定量法が挙げられる。また、in vitroアッセイ及びin vivoアッセイの両方を用いることができる。
【0052】
被験体から得られたサンプルには、すべての体液、例えば、末梢血、血漿、リンパ液、腹水、脳脊髄液、又は胸膜液、あるいはすべての体組織が含まれ得る。in vitroにおける結合では、組織又は液体の組織学的標本又は細分画を用いて行うことができる。in vivoにおける結合では、免疫特異的結合を検出可能なように当技術分野で周知の任意の手段によって複合体を投与すること(静脈内、腹腔内、筋肉内など)により達成することができる。
【0053】
さらに、画像処理技術を用いることができるが、この場合、第1の態様の抗体が好適な画像標識に結合している。この標識抗体はin vivoにおいて投与され、被験体におけるC5aRの局在化を検出することができる。
【0054】
したがって、さらなる態様では、本発明は、被験体における好中球の移動に関する疾患の診断方法であって、該被験体において抗体とC5aR提示細胞との複合体が形成されるような条件下にて、被験体に造影剤で標識した本発明の抗体を投与するステップ、及び該複合体を画像化するステップを含む、上記方法を提供する。
【0055】
本発明の好ましい一実施形態では、好中球の移動が関与する疾患は、C5aR媒介による疾患である。好ましくは、疾患は免疫病理学的疾患である。
【0056】
さらなる態様では、本発明は、治療剤を被験体の炎症部位に送達する方法であって、該被験体に本発明の複合体を投与するステップを含む、上記方法を提供する。
【0057】
さらなる態様では、本発明は、C5aRを提示する細胞に遺伝物質を導入する方法であって、該細胞と本発明の抗体とを接触させるステップを含み、該抗体が遺伝物質と結合又は会合されているものである、上記方法を提供する。
【0058】
好ましい実施形態では、C5aRを提示する細胞は、顆粒球、白血球(例えば、単球、マクロファージ、好塩基球及び好酸球)、肥満細胞及びリンパ球(T細胞を含む)、樹状細胞、ならびに非骨髄性細胞(例えば、内皮細胞及び平滑筋細胞)からなる群より選択される。
【0059】
さらに、本発明には、哺乳動物のC5aR機能の阻害剤及び/又は促進剤をはじめとする、C5aRと結合する追加のリガンド又は他の物質を同定する方法が含まれる。例えば、本発明の抗体又はその機能的なフラグメントと同一又は類似の結合特異性を有する薬剤は、前記抗体又はフラグメントとの競合アッセイによって同定することができる。したがって、本発明はまた、受容体機能の阻害剤(例えば、アンタゴニスト)又は促進剤(例えば、アゴニスト)をはじめとする、C5aRと結合するリガンド又は他の物質を同定する方法をも含む。一実施形態では、C5aRを天然で発現する細胞、又はC5aRを発現するように操作された好適な宿主細胞、又は前記細胞へ導入された核酸によってコードされている変異体は、リガンドの効果、受容体機能の阻害剤又は促進剤を同定し、評価するためのアッセイで用いられる。さらに、かかる細胞は、発現された受容体タンパク質又はポリペプチドの機能を評価するのにも有用である。
【0060】
本発明の特定の特徴を以下にまとめて記載するが、本発明はこの範囲に制限されないものとする。
【0061】
(1)N末端ドメイン以外の1又は複数のC5aRの細胞外ループと反応し、C5aのC5aRへの結合を少なくとも20%まで低減又は阻害する抗体。
(2)C5aRの第2の細胞外ループ(残基175〜206)を含むエピトープと反応するものである、上記(1)記載の抗体。
(3)モノクローナル抗体7F3と同じC5aRのエピトープと反応し、C5aのC5aRへの結合を低減又は阻害する抗体。
(4)モノクローナル抗体6C12と同じC5aRのエピトープと反応し、C5aのC5aRへの結合を低減又は阻害する抗体。
(5)モノクローナル抗体12D4と同じC5aRのエピトープと反応し、C5aのC5aRへの結合を低減又は阻害する抗体。
(6)C5aRに結合し、モノクローナル抗体7F3のC5aRへの結合を競合的に阻害する抗体。
(7)C5aRに結合し、モノクローナル抗体6C12のC5aRへの結合を競合的に阻害する抗体。
(8)C5aRに結合し、モノクローナル抗体12D4のC5aRへの結合を競合的に阻害する抗体。
(9)比較結合特異性が、C5aR、又はC5aRの細胞外ループを含むポリペプチド、の存在下における抗体−抗体競合アッセイにより決定される、上記(6)〜(8)のいずれかに記載の抗体。
(10)配列番号19及び配列番号21にそれぞれ示される軽鎖及び/又は重鎖配列と少なくとも80%の同一性を有する配列を含み、C5aのC5aRへの結合を低減又は阻害する抗体。
(11)配列番号26、配列番号27又は配列番号28にそれぞれ示される可変重鎖CDR1、CDR2又はCDR3ループ配列と少なくとも80%の同一性を有する、少なくとも2つのCDRループ配列を含む可変重鎖配列を含む、C5aのC5aRへの結合を低減又は阻害する抗体。
(12)可変重鎖配列が、配列番号26、配列番号27及び配列番号28にそれぞれ示される可変重鎖CDR1、CDR2及びCDR3ループ配列と少なくとも80%の同一性を有する、3つのCDRループ配列を含む、上記(11)記載の抗体。
(13)配列番号19に示される可変軽鎖配列のアミノ酸残基24〜39、55〜61又は94〜102と少なくとも80%の同一性を有する、少なくとも1つのCDRループ配列を含む可変軽鎖配列をさらに含む、上記(11)又は(12)記載の抗体。
(14)可変軽鎖配列が、配列番号19に示される可変軽鎖配列のアミノ酸残基24〜39、55〜61又は94〜102と少なくとも80%の同一性を有する、少なくとも2つのCDRループ配列を含む、上記(13)記載の抗体。
(15)配列番号15及び配列番号17にそれぞれ示される軽鎖及び/又は重鎖配列と少なくとも80%の同一性を有する配列を含む、C5aのC5aRへの結合を低減又は阻害する抗体。
(16)配列番号29、配列番号30又は配列番号31にそれぞれ示される可変重鎖CDR1、CDR2又はCDR3ループ配列と少なくとも80%の同一性を有する、少なくとも2つのCDRループ配列を含む可変重鎖配列を含み、C5aのC5aRへの結合を低減又は阻害する抗体。
(17)可変重鎖配列が、配列番号29、配列番号30及び配列番号31にそれぞれ示される可変重鎖CDR1、CDR2及びCDR3ループ配列と少なくとも80%の同一性を有する、少なくとも3つのCDRループ配列を含む、上記(16)記載の抗体。
(18)配列番号15に示される可変軽鎖配列のアミノ酸残基24〜39、55〜61及び94〜102と少なくとも80%の同一性を有する、少なくとも1つのCDRループ配列を含む可変軽鎖配列をさらに含む、上記(16)又は(17)記載の抗体。
(19)可変軽鎖配列が、配列番号15に示される可変軽鎖配列のアミノ酸残基24〜39、55〜61又は94〜102と少なくとも80%の同一性を有する、少なくとも2つのCDRループ配列を含む、上記(18)記載の抗体。
(20)配列番号23及び配列番号25にそれぞれ示される軽鎖及び/又は重鎖配列と少なくとも80%の同一性を有する配列を含む、C5aのC5aRへの結合を低減又は阻害する抗体。
(21)配列番号32、配列番号33又は配列番号34にそれぞれ示される可変重鎖CDR1、CDR2又はCDR3ループ配列と少なくとも80%の同一性を有する、少なくとも2つのCDRループ配列を含む可変重鎖配列を含む、C5aのC5aRへの結合を低減又は阻害する抗体。
(22)可変重鎖配列が、配列番号32、配列番号33及び配列番号34にそれぞれ示される可変重鎖CDR1、CDR2又はCDR3ループ配列と少なくとも80%の同一性を有する、少なくとも3つのCDRループ配列を含む、上記(21)記載の抗体。
(23)配列番号23に示される可変軽鎖配列のアミノ酸残基24〜39、55〜61又は94〜102と少なくとも80%の同一性を有する、少なくとも1つのCDRループ配列を含む可変軽鎖配列をさらに含む、上記(21)又は(22)記載の抗体。
(24)前記可変軽鎖配列が、配列番号23に示される可変軽鎖配列のアミノ酸残基24〜39、55〜61又は94〜102と少なくとも80%の同一性を有する、少なくとも2つのCDRループ配列を含む、上記(23)記載の抗体。
(25)C5a以外の走化因子リガンドによる好中球の活性化をも阻害する、上記(1)〜(24)のいずれかに記載の抗体。
(26)モノクローナル抗体又は組換え抗体である、上記(1)〜(25)のいずれかに記載の抗体。
(27)キメラ抗体又はヒト化抗体である、上記(1)〜(25)のいずれかに記載の抗体。
(28)クラスIgG2a又はクラスIgG3抗体である、上記(1)〜(27)のいずれかに記載の抗体。
(29)モノクローナル抗体7F3、モノクローナル抗体6C12及びモノクローナル抗体12D4からなる群より選択されるモノクローナル抗体。
(30)ECACCに受託番号00110609で寄託されているハイブリドーマ。
(31)ECACCに受託番号02090226で寄託されているハイブリドーマ。
(32)上記(1)〜(29)のいずれか1項に記載の抗体と治療剤とを含む複合体。
(33)治療剤がトキシンである、上記(32)記載の複合体。
(34)トキシンがシュードモナスエキソトキシン又はその誘導体である、上記(32)記載の複合体。
(35)上記(1)〜(29)のいずれか1項に記載の抗体と検出用標識を含む複合体。
(36)標識が、放射性標識、蛍光標識、酵素標識及び造影剤からなる群より選択される、上記(35)記載の複合体。
(37)上記(1)〜(29)のいずれかに記載の抗体をコードする配列を含む、単離された核酸分子。
(38)上記(1)〜(29)のいずれかに記載の抗体と薬学的に許容される担体を含む組成物。
(39)C5aR含有細胞とそのリガンドとの相互作用をインビトロで阻害する方法であって、該細胞を上記(1)〜(29)のいずれかに記載の抗体に曝露するステップを含む、上記方法。
(40)細胞においてC5aR活性をインビトロで阻害する方法であって、該細胞を上記(1)〜(29)のいずれかに記載の抗体に曝露するステップを含む、上記方法。
(41)免疫病理学的疾患の治療用薬剤の製造における、上記(1)〜(29)のいずれかに記載の抗体の使用。
(42)被験体における好中球の移動に関する疾患を検出する方法であって、該被験体から得たサンプルと上記(36)又は(35)記載の複合体とをインビトロで接触させるステップ、及び該複合体と該サンプルとの免疫特異的結合を検出するステップを含む、上記方法。
(43)好中球の移動に関する疾患の治療用薬剤の製造における、上記(1)〜(29)のいずれかに記載の抗体をコードするポリヌクレオチドの使用。
【0062】
配列リスト情報
配列番号1 ヒトC5aRタンパク質配列
配列番号2 6C12可変軽鎖用のPCRプライマー
配列番号3 6C12可変軽鎖用のPCRプライマー
配列番号4 6C12可変重鎖用のPCRプライマー
配列番号5 6C12可変重鎖用のPCRプライマー
配列番号6 7F3可変軽鎖用のPCRプライマー
配列番号7 7F3可変軽鎖用のPCRプライマー
配列番号8 7F3可変重鎖用のPCRプライマー
配列番号9 7F3可変重鎖用のPCRプライマー
配列番号10 12D4可変軽鎖用のPCRプライマー
配列番号11 12D4可変軽鎖用のPCRプライマー
配列番号12 12D4可変重鎖用のPCRプライマー
配列番号13 12D4可変重鎖用のPCRプライマー
配列番号14 6C12可変軽鎖(DNA)配列
配列番号15 6C12可変軽鎖(タンパク質)配列
配列番号16 6C12可変重鎖(DNA)配列
配列番号17 6C12可変重鎖(タンパク質)配列
配列番号18 7F3可変軽鎖(DNA)配列
配列番号19 7F3可変軽鎖(タンパク質)配列
配列番号20 7F3可変重鎖(DNA)配列
配列番号21 7F3可変重鎖(タンパク質)配列
配列番号22 12D4可変軽鎖(DNA)配列
配列番号23 12D4可変軽鎖(タンパク質)配列
配列番号24 12D4可変重鎖(DNA)配列
配列番号25 12D4可変重鎖(タンパク質)配列
配列番号26 7F3可変重鎖CDR1ループ
配列番号27 7F3可変重鎖CDR2ループ
配列番号28 7F3可変重鎖CDR3ループ
配列番号29 6C12可変重鎖CDR1ループ
配列番号30 6C12可変重鎖CDR2ループ
配列番号31 6C12可変重鎖CDR3ループ
配列番号32 12D4可変重鎖CDR1ループ
配列番号33 12D4可変重鎖CDR2ループ
配列番号34 12D4可変重鎖CDR3ループ
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】モノクローナル抗体7F3のフローサイトメトリー分析の結果を示す図である。これらの結果は、7F3が、C5aRでトランスフェクトしたL1.2細胞と特異的に反応することを示している。
【図2】7F3をはじめとする一連のモノクローナル抗体に関する125I C5aリガンド結合アッセイの結果を示す図である。
【図3】モノクローナル抗体7F3による125I C5aリガンド結合の用量反応阻害を示す図である。
【図4】C5aRでトランスフェクトしたL1.2細胞、ならびに7F3、6C12及び12D4をはじめとする一連のモノクローナル抗体を用いて実施した走化性実験の結果を示す図である。
【図5】モノクローナル抗体7F3によってL1.2 C5aRトランスフェクタントの走化性が完全に阻害されたことを示す図である。
【図6】モノクローナル抗体7F3によってC5a指向性好中球走化性が完全に阻害されたことを示す図である。
【図7】モノクローナル抗体7F3、6C12及び12D4によってC5a指向性好中球走化性が阻害されたことを示す図である。
【図8】モノクローナル抗体7F3、6C12及び12D4によってIL−8定方向好中球走化性が阻害されたことを示す図である。
【図9a】C5aR N末端ペプチドPEPIによる、ヒトC5aRでトランスフェクトしたL1.2細胞への抗C5aRモノクローナル抗体結合の競合阻害を測定した実験結果を示す図である。
【図9b】C5aR N末端ペプチドPEPIの存在または不在下におけるモノクローナル抗体7F3による精製好中球のFACS染色を測定した実験の結果を示す図である。
【図10】C5aR N末端ペプチド9〜29(“PEPI”)及びOPGに対するモノクローナル抗体の6C12、7F3及び12D4の活性を測定したELISAアッセイの結果を示す。
【図11】モノクローナル抗体7F3、6C12及び12D4の可変軽鎖DNA配列のアライメントを示す図である。
【図12】モノクローナル抗体7F3、6C12及び12D4の可変重鎖DNA配列のアライメントを示す図である。
【図13】モノクローナル抗体7F3、6C12及び12D4の可変軽鎖タンパク質配列のアライメントを示す図である。
【図14】モノクローナル抗体7F3、6C12及び12D4の可変重鎖タンパク質配列のアライメントを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
C5aR構造
ヒトC5aRのアミノ酸配列は配列番号1に示す。
このヒトC5aRの各種ドメインは以下のように定義する:
アミノ酸1−37 細胞外ドメインN末端
アミノ酸38−61 膜貫通ドメイン
アミノ酸62−71 細胞内ドメイン
アミノ酸72−94 膜貫通ドメイン
アミノ酸95−110 細胞外ドメイン−細胞外ループ1
アミノ酸111−132 膜貫通ドメイン
アミノ酸133−149 細胞内ドメイン
アミノ酸150−174 膜貫通ドメイン
アミノ酸175−206 細胞外ドメイン−細胞外ループ2
アミノ酸207−227 膜貫通ドメイン
アミノ酸228−242 細胞内ドメイン
アミノ酸243−264 膜貫通ドメイン
アミノ酸265−283 細胞外ドメイン−細胞外ループ3
アミノ酸284−307 膜貫通ドメイン
アミノ酸308−350 細胞内ドメイン−C末端
【0065】
微生物寄託の説明
7F3と呼称するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、ECACCに2000年11月6日付けで受託番号00110609として寄託された。
6C12(6C12 M12)と呼称するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、ECACCに2002年9月2日付けで受託番号02090226として寄託された。
12D4(12D4−P9)と呼称するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、ECACCに2002年9月2日付けで受託番号02090227として寄託された。
【0066】
これらの寄託物は、特許手続上の微生物の寄託の国際承認に関するブダペスト条約の条項及びその下位の規則に従って行った。これにより、寄託の日から30年間にわたり生存培養の維持が保証される。この生物体は、関係する特許の発行時に培養物の後代を一般に安定的かつ無制限的に利用できることを保証する、ブダペスト条約の条項に基づいてECACCから入手することができる。
【0067】
本出願の譲受人は、好適な条件下で培養した場合に万一寄託培養物が死滅又は喪失又は破壊されることがあれば、届けを出して、それと同じ培養物の生存可能な標本と速やかに取り替えることに合意している。なお、寄託株の入手は、その国の特許法に従ってすべての政府の権限のもとに許可した権利の抵触に関して、本発明を実施するための特許使用権として解釈されるものではない。
【0068】
モノクローナル抗体及び組換え抗体
7F3、6C12及び12D4と呼称するC5aRに特異的なマウスモノクローナル抗体は、本明細書に記載されているとおり、本発明者らによって得られたものである。驚いたことに、これらのモノクローナル抗体(Mab)は、C5aRへのC5aの結合を実質的に又は完全に遮断することができる。特に、モノクローナル抗体7F3は完全に中和するものである。
【0069】
他の周知の抗C5aR抗体とは対照的に、モノクローナル抗体7F3、6C12及び12D4は、N末端領域以外のC5aRの領域と反応する。モノクローナル抗体7F3、6C12及び12D4は、主として、C5aRの第2の細胞外ループ(残基175〜206)と反応すると考えられる。例えば、モノクローナル抗体12D4のC5aRとの反応性は、第2の細胞外ループ残基181及び192がチロシンからフェニルアラニンへ突然変異することによってほとんど完全に消失する。この阻害は、C5aR突然変異体L2−FFをはじめとする結合試験において確認されている(Farzan et al.、J.Exp.Med.、193:1059-1065、2001)。
【0070】
この細胞外ループ及びN末端ドメインの類似するコンホメーション及び近接性を考えると、モノクローナル抗体は、他の細胞外ループ又はN末端ドメインの1つの領域にさらに同時に結合してもよい。
【0071】
さらに、驚いたことに、モノクローナル抗体7F3、6C12及び12D4は、他の走化因子リガンドによる好中球活性化を阻害し得ることが確認された。これらの他の走化因子リガンドの例としては、CXCR1及びCXCR2リガンドであるIL−8、ENA−78及びGPC−2が挙げられる。異なる走化因子受容体の機能を阻害するというこの能力によって、他の周知の抗C5aR分子を超えた、珍しくかつ予期しない利点が得られる。特に、複数の好中球走化因子受容体の機能を阻害し得る抗C5aR分子は、免疫病理学的疾患の治療において非常に有効な治療剤となるであろう。
【0072】
一態様では、本発明は、細胞外ループ(好ましくは、C5aRの第2の細胞外ループ)に単独で又は他のループもしくはドメインと共に結合する抗体を提供する。好ましい態様では、本発明は、C5aRに結合し、かつモノクローナル抗体7F3、6C12又は12D4のうちのいずれか1種のエピトープ特異性と同一又は類似の特異性を有する抗体を提供する。
【0073】
本発明で使用する「抗体」という用語には、完全な分子ならびにそのフラグメント、例えば、エピトープ決定基と結合し得るFab、F(ab’)2、及びFvなどが含まれる。これらの抗体フラグメントは、その抗原又は受容体と選択的に結合するある能力を保持し、以下のように定義される:
(1)Fab、抗体分子の1価抗原結合性フラグメントを含有するこのフラグメントは、酵素パパインにより全抗体を消化することによって生成され、完全な軽鎖と1本の重鎖の一部が得られる
(2)Fab’、抗体分子のこのフラグメントは、ペプシンで完全抗体を処理し、続いて還元することにより得られ、完全な軽鎖と重鎖の一部が得られる。抗体一分子当たり2個のFab’フラグメントが得られる
(3)(Fab’)2、抗体のこのフラグメントは、酵素ペプシンで完全抗体を処理するが、その後還元を行わないことにより得られる。F(ab)2は、2個のジスルフィド結合により互いに結合されている2個のFab’フラグメントからなる二量体である
(4)Fv、2本の鎖として発現される軽鎖の可変領域及び重鎖の可変領域を含有する遺伝子組換えフラグメントとして定義される
(5)一本鎖抗体(「SCA」)、遺伝学的に結合された一本鎖分子としての、好適なポリペプチドリンカーによって結合されている軽鎖の可変領域及び重鎖の可変領域を含有する遺伝子組換え分子として定義される。
【0074】
これらのフラグメントを作製する方法は当技術分野で周知である。(例えば、Harlow and Lane、Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、New York(1988)を参照されたい。なお、これは引用により本明細書に援用するものとする)。
【0075】
本発明で使用する「エピトープ」という用語は、抗体のパラトープが結合する抗原上のすべての抗原決定基を意味する。エピトープの決定基は、通常、化学的に活性である、アミノ酸又は糖側鎖などの分子の表面の集合からなり、通常、特異的な三次元構造特性と比電荷特性を有している。
【0076】
本発明の抗体は、C5sR発現細胞、完全なC5aR、又は免疫抗原として1以上の細胞外ループを含有するフラグメントを用いて調製することができる。動物を免疫するために用いられるペプチドは、cDNAの翻訳又は化学合成由来であり得る。また、所望ならば、精製し、担体タンパク質に結合させることができる。ペプチドに化学的に結合される一般に用いられているかかる担体としては、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、チログロブリン、ウシ血清アルブミン(BSA)及び破傷風トキソイドが挙げられる。次いで、この結合ペプチドは、動物(例えば、マウス又はウサギ)を免疫するために用いることができる。
【0077】
さらに、所望ならば、ポリクローナル抗体を、例えば、抗体が得られたペプチドを結合したマトリックスに結合させ、そこから溶出させることによって、さらに精製することができる。
【0078】
当業者には、ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体の精製及び/又は濃縮に関する免疫学分野において一般的な種々の技術は周知である(例えば、Coligan,et al.、Unit 9、Current Protocols in Immunology、Wiley Interscience、1991を参照されたい。なお、これは引用により本明細書に援用するものとする)。
【0079】
モノクローナル抗体は、培養における連続継代細胞系による抗体分子の作製を提供するすべての技術、例えば、ハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術、及びEBVハイブリドーマ技術を用いて調製することができる(Kohler et al.Nature 256、495-497、1975;Kozbor et al.、J.Immunol.Methods 81、31-42、1985;Cote et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80、2026-2030、1983;Cole et al.、Mol.Cell Biol.62、109-120、1984)。
【0080】
当技術分野で周知の方法により、C5aR細胞外ループに対して結合性を示す抗体を抗体発現ライブラリーから同定、単離することができる。例えば、C5aR細胞外ループに対して結合性を示す抗体結合ドメインの同定及び分離方法は、バクテリオファージベクター系である。このベクター系は、大腸菌におけるマウス抗体レパートリー由来の(Huse,et al.、Science、246:1275-1281、1989)、及びヒト抗体レパートリー由来の(Mullinax,et al.、Proc.Nat.Acad.Sci.、87:8095-8099、1990)Fabフラグメントのコンビナトリアルライブラリーを発現させるために用いられている。また、この方法は、予め選択したリガンドに対して結合性のあるモノクローナル抗体を発現するハイブリドーマ細胞系にも適用することができる。所望のモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマは、当技術分野において通常の技術を有する者によって十分に理解されている技術を用いる種々の方法で産生することができるが、ここでは繰り返さない。これらの技術の詳細は、Monoclonal Antibodies-Hybridomas:A New Dimension in Biological Analysis、Edited by Roger H.Kennett,et al.、Plenum Press、1980;及び米国特許第4,172,124号などの文献に記載されている。なお、これらは参照により本明細書に援用する。
【0081】
さらに、「ヒト化」抗体の種々の組み合わせによりキメラ抗体分子を産生する方法は、当技術分野で周知であり、ヒト定常領域とマウス可変領域との組み合わせ(Cabily,et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA、81:3273、1984)、又はヒトフレームワーク上にマウス抗体相補性決定領域(CDR)を結合させること(Riechmann,et al.、Nature 332:323、1988)が含まれる。
【0082】
さらに、本発明は、本発明の抗C5aR抗体のキメラ抗体又はその生物学的活性フラグメントを提供する。本明細書では、「キメラ抗体」という用語は、ある種に由来する抗体の可変領域が別の種に由来する抗体の定常領域と組み合わされている抗体を意味するか、あるいはCDR移植抗体を意味する。キメラ抗体は組換DNA技術によって構築されるが、それは例えば、Shaw,et al.、J.Immun.、138:4534(1987);Sun,LK.,et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、84:214-218(1987)に記載されている。
【0083】
移植CDR及びキメラ抗体は、上に記載されている抗体又は生物学的活性抗体フラグメントのいずれかを用いて得ることができる。「CDR」又は「相補性決定領域」又は「超可変領域」は、抗原結合部位の形成に寄与する三次元ループ構造を形成する、抗体の軽鎖及び重鎖のアミノ酸配列として定義する。
【0084】
本明細書では、「CDR移植」抗体とは、少なくとも軽鎖及び/又は可変ドメインの1以上のCDR配列の少なくとも一部が、所与の抗原又は受容体に対して異なる結合特異性を有する抗体由来のCDR配列の類似部分で置換されているアミノ酸配列を有する抗体を意味する。
【0085】
「軽鎖可変領域」及び「重鎖可変領域」という用語は、各抗体についての可変一次アミノ酸配列を有する軽鎖及び重鎖のN末端部分の領域又はドメインをそれぞれ意味する。抗体の可変領域は、抗体に三次元的結合部位を形成するために互いに折り重なるような、軽鎖と重鎖のアミノ末端ドメインからなる。
【0086】
類似CDR配列は、基質(substrate)又は宿主抗体上に「移植された」と称する。「ドナー」抗体はCDR配列を提供する抗体である。また、置換配列を受け取る抗体は「基質」抗体である。当業者は、当技術分野でよく知られている方法(Borrebaeck,C.A.、Antibody Engineering:A Practical Guide、W.H.Freeman and Company、New York、1992を参照されたい。なお、これは引用により本明細書に援用する)と組み合わせ、本明細書に提示した技術を用いて、これらのCDR移植抗体を容易に得ることができる。
【0087】
また、本発明は、本発明のモノクローナル抗体を産生する細胞系を提供する。本発明のモノクローナル抗体を産生する細胞系の単離は、目的のモノクローナル抗体の素反応パターンを検出可能なルーチンのスクリーニング技術を用いて行うことができる。したがって、試験しているモノクローナル抗体がC5aRと結合し、C5aが媒介する生物活性を阻害する場合、そのとき、試験しているモノクローナル抗体と本発明の細胞系により産生されたモノクローナル抗体は同等である。
【0088】
モノクローナル抗体7F3、6C12又は12D4のエピトープ特異性と同一又は類似の特異性を有する抗体は、C5aR(例えば、C5aR含有(担持)細胞、例えば、C5aR含有トランスフェクタント、単球、樹状細胞、マクロファージ及び好塩基球など)への結合に対して、その特定のモノクローナル抗体と競合する能力により同定することができる。また、受容体キメラ(Rucker et al.、Cell 87:437-446(1996))又は当業者に周知の他の技術を用いて、モノクローナル抗体7F3、6C12又は12D4のうちの任意の1つの結合部位をマッピングしてもよい。
【0089】
さらに、モノクローナル抗体が本発明のモノクローナル抗体と同一の特異性を有しているかどうかについて、後者がC5aR細胞外ループを含むペプチドに結合するのを前者が阻害するかどうか確認することにより、過度の実験を行うことなく決定することができる。試験対象のモノクローナル抗体が本発明のモノクローナル抗体と競合する場合、本発明のモノクローナル抗体による結合に低下が見られると、それら2種類のモノクローナル抗体は、同一エピトープか、あるいは近縁関係にあるエピトープと結合する。
【0090】
さらに、モノクローナル抗体が本発明のモノクローナル抗体の特異性を有しているかどうかを検出する別の方法は、試験対象のモノクローナル抗体を、その抗体が反応すると推定されるペプチドと予めインキュベートし、次いで、本発明のモノクローナル抗体がそのペプチドと結合する能力が阻害されるかどうかを検出するために、本発明のモノクローナル抗体を添加することである。その際、本発明のモノクローナル抗体が阻害された場合には、試験しているモノクローナル抗体は本発明のモノクローナル抗体と同一であるか、あるいは機能的に同等なエピトープ特異性をおそらく有している。また、本発明のモノクローナル抗体のスクリーニングは、好適なペプチドを利用し、モノクローナル抗体がC5aRへのC5aの結合を阻害するかどうかを検出することにより実施することができる。
【0091】
本発明のモノクローナル抗体を用いることにより、抗体が本発明のモノクローナル抗体と同一の結合特異性を有しているかどうかを同定するためのモノクローナル抗体のスクリーニングに利用可能な、抗イディオタイプ抗体を産生することが可能である。また、これらの抗体は免疫目的に用いることも可能である(Herlyn,et al.、Science、232:100、1986)。かかる抗イディオタイプ抗体は、よく知られているハイブリドーマ技術を用いて得ることができる(Kohler and Milstein、Nature、256:495、1975)。抗イディオタイプ抗体は、目的の細胞系によって産生されたモノクローナル抗体上に存在する特有の決定基を認識する抗体である。これらの決定基は抗体の超可変領域に位置する。一定のエピトープに結合し、したがって、抗体の特異性に寄与するのはこの領域(パラトープ)である。抗イディオタイプ抗体は、目的のモノクローナル抗体で動物を免疫することにより調製することができる。免疫した動物は、免疫抗体のイディオタイプ決定基を認識して応答し、かつこれらのイディオタイプ決定基の抗体を産生する。免疫動物の抗イディオタイプ抗体(第2の動物の免疫に用いられた細胞系により産生され、本発明のモノクローナル抗体に特異的である)を用いることによって、免疫に用いるハイブリドーマの抗体と同一イディオタイプを有する他のクローンを同定することが可能である。2つの細胞系のモノクローナル抗体間におけるイディオタイプの相同性により、2つのモノクローナル抗体が、同一のエピトープ決定基の認識に関して同じであるということが証明される。したがって、抗イディオタイプ抗体を用いることによって、同一のエピトープ特異性を有するモノクローナル抗体を発現する別のハイブリドーマを同定することができる。
【0092】
さらに、エピトープを模倣するモノクローナル抗体を産生するために、抗イディオタイプ技術を用いることが可能である。例えば、第1のモノクローナル抗体に対して作製された抗イディオタイプモノクローナル抗体は、第1のモノクローナル抗体によって結合されるエピトープの「イメージ(image)」である超可変領域中の結合ドメインを有する。したがって、抗イディオタイプモノクローナル抗体結合ドメインは抗原として効果的に作用するので、抗イディオタイプモノクローナル抗体は免疫化に用いることができる。
【0093】
本発明のモノクローナル抗体のうち任意の1つのエピトープ結合部位を含有する抗体フラグメントは、周知の技術によって得ることができる。例えば、好適な抗体フラグメントは、最初に寄託ハイブリドーマからモノクローナル抗体7F3を得るステップと、それから超可変領域を得るために抗体を処理する(例えば、タンパク分解消化による)ステップによって得ることができる。
【0094】
あるいは、超可変領域をコードするDNAは、好適な宿主中で、本明細書に記載されているような標準の組換DNA方法を用いてクローニングすることができる。
【0095】
本発明の好ましい抗体は、モノクローナル抗体7F3、6C12又は12D4のものと実質的に同一である1以上のCDRループ又は可変領域を含む。配列表に示した可変領域又はCDRループは、本発明での使用において改変され得ることは理解されよう。典型的には、改変は、配列の結合特異性を保持するように行われる。例えば、保存的置換は、抗体の結合特異性に影響を及ぼすことなく行われる。したがって、一実施形態では、例えばアミノ酸置換は、改変した配列が同一の結合特異性を実質的に保持する条件で、1個、2個又は3個から10個、20個又は30個の置換を実施することができる。しかし、別の実施形態では、本発明の抗体のアミノ酸配列への改変は、抗体の生物活性を低減するように意図的に実施することができる。例えば、C5aRに対する結合を保持し続けることはできるが、機能的エフェクタードメインを欠失している改変抗体は、C5aRの生物活性の阻害剤として有用であり得る。
【0096】
また、アミノ酸置換には、例えば、治療上投与される抗体の血漿半減期を高める非天然類似体の使用も含まれる。
【0097】
一般に、配列表に示す、対応する可変領域又はCDRループと比較して変異体又は誘導体の20%、10%又は5%未満のアミノ酸残基が改変されているのが好ましい。
【0098】
本発明においては、配列表に示した可変領域のうちの1つに「実質的に同じ」である配列には、少なくとも20個、好ましくは少なくとも50個のアミノ酸にわたり、アミノ酸レベルで、その可変領域と少なくとも80%、85%、又は90%の同一性、好ましくは少なくとも95%又は98%の同一性を有するアミノ酸配列が含まれ得る。一般に、相同性は、非必須の近隣配列よりもむしろ結合特異性について不可欠であることが知られている配列のそれらの可変領域に関して考慮されるべきである。
【0099】
相同性比較は目視によって、あるいは、通常、容易に利用することができる配列比較プラグラムを活用して行うことができる。これらの市販のコンピュータプログラムは、2つ以上の配列間の%相同性を計算することができる。
【0100】
%相同性は、連続する配列にわたって計算することができる。すなわち、1つの配列を別の配列と並べて、1つの配列中の各アミノ酸は、一度に、別の配列中の対応するアミノ酸(1残基)と直接比較する。これは「ギャップなし(ungapped)」アライメントと呼ばれている。典型的には、かかるギャップなしアライメントは、比較的短い数の残基(例えば、50個未満の連続アミノ酸)についてのみ行われる。
【0101】
これは非常に簡単で一貫性のある方法であるが、この方法には、例えば、他の同一ペアの配列中、1個の挿入又は欠失がアラインメントからはずれるように後続のアミノ酸残基に生じており、その結果、全体的なアライメントを実施した際に%相同性に大幅な低下が生じる可能性があることが考慮されていない。したがって、ほとんどの配列比較法は、全体にわたる相同性スコアに過度に不利益をもたらすことなく、挿入及び欠失の可能性を考慮した最適のアライメントが得られるように作製されている。これは、配列アライメントに「ギャップ」を挿入し、局所的(local)ホモロジーを最大限にしようとすることにより達成される。
【0102】
ほとんどのアライメントプログラムは、ギャップペナルティーが変更可能である。しかし、かかるソフトウェアを配列比較に用いる場合、デフォルト値を用いることが好ましい。例えば、GCG Wisconsin Bestfitパッケージ(以下を参照)を用いる場合、アミノ酸配列用のデフォルトギャップペナルティーは、ギャップについては−12、各伸張については−4である。
【0103】
したがって、最大%相同性の計算は、まず最適のアライメントを得て、次いでギャップペナルティーを考慮することが必要である。かかるアライメントを実施するのに好適なコンピュータプログラムは、GCG Wisconsin Bestfitパッケージである(University of Wisconsin、U.S.A.;Devereux et al.、1984、Nucleic Acids Research 12:387)。配列比較を行うことができるそれ以外のソフトウェアの例としては、これらに限定されるものではないが、BLASTパッケージ(Ausubel et al.、1999 前掲 - Chapter 18を参照)、FASTA(Atschul et al.、1990、J.Mol.Biol.、403-410)、及び比較ツールのGENEWORKS一式が挙げられる。BLASTとFASTAはともにオフライン及びオンライン検索が利用可能である(Ausubel et al.、1999、前掲、p.7-58〜p.7-60を参照)。しかし、GCG Bestfitプログラムを用いるのが好ましい。
【0104】
同一性の点から最終の%相同性を測定することができるが、アライメント方法それ自体は、通常、オールオアナッシングのペア比較に基づくものではない。代わりに、化学的類似性又は進化距離に基づいた個々のペアワイズ比較についてスコアが割り当てられる、縮小(scaled)類似性スコアマトリックスが一般に用いられる。一般に用いられるかかるマトリックスの例は、BLOSUM62マトリックス−プログラムのBLAST一式に対するデフォルトマトリックスである。GCG Wisconsinプログラムは、もし提供されれば、公式デフォルト値又はカスタムシンボル比較表のいずれかを通常用いる(その他の詳細に関してはユーザーマニュアルを参照)。GCGパッケージに対して、又は他のソフトウェアの場合には公式デフォルト値、BLOSUM62などのデフォルトマトリックスを用いるのが好ましい。
【0105】
一度ソフトウェアによって最適のアライメントが得られたならば、%相同性(好ましくは%配列同一性)を計算することができる。通常、ソフトウェアは配列比較の一部としてこれを行い、数値結果を算出する。
【0106】
抗体のヒト化
本発明の抗体は、ヒト化抗体、すなわち、ヒト抗体の含量を最大限にし、一方、マウス抗体の可変領域による結合能がほとんどあるいは全く生じない、分子モデリング技術によって作製された抗体であることが好ましい。したがって、一実施形態では、本発明は、ヒトフレームワーク領域のアミノ酸配列と、ヒト抗体由来の定常領域のアミノ酸配列とを含み、7F3、6C12又は12D4などのマウスモノクローナル抗体由来の超可変領域をヒト化又は非免疫原性とするキメラ抗体を提供する。
【0107】
下に記載されている方法は、種々の動物抗体のヒト化に適用可能である。(a)ヒトフレームワークとしてヒト化に用いられるヒト抗体配列を選択するステップと、(b)選択されたヒトフレームワークへの挿入に対して動物モノクローナル抗体のどの可変領域残基を選択すべきかについて決定するステップとを含む、ツーステップ手法を採用することができる。
【0108】
第1のステップは、配列情報が利用可能である最良に利用可能なヒトフレームワーク配列の選択が含まれる。この選別過程は以下の選択基準に基づく。
【0109】
(1)パーセント同一性
ヒト化される動物モノクローナル抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の配列は、アライメントを行って配列比較されるのが好適であり、好ましくは、すべての既知のヒト抗体重鎖可変領域配列及び軽鎖可変領域配列と比較する。
【0110】
したがって、一度配列を比較すれば、残基の同一性に着目し、パーセント同一性を決定する。他のすべての因子が等しい場合、動物抗体と最も高いパーセント同一性を有するヒト抗体を選択するのが望ましい。
【0111】
(2)配列不確定性
次いで、周知のヒト抗体鎖配列について、未確認の残基及び/又は不確定性の存在を評価する。前記不確定性は配列不確実性である。最も多く共通するかかる不確実性は、シーケンシング法の実施時にアンモニアが消失することによりアミドアミノ酸についての酸性アミノ酸の同定に誤りが生じるものであり、例えば、タンパク質中に実際に存在する残基がグルタミン残基であった場合の、グルタミン酸残基の同定における誤りである。他のすべての因子が等しい場合、かかる不確定性をほとんど持たないヒト抗体鎖をできるだけ選択することが望ましい。
【0112】
(3)ピン領域間隔(Pin-region Spacing)
抗体鎖可変領域は、ドメイン内ジスルフィド架橋を有している。これらの架橋を含むシステイン残基間の距離(残基数)をピン領域間隔と称する[Chothia et al、J.Mol.Biol.196:901(1987)]。他のすべての因子が等しい場合、選択するヒト抗体のピン領域間隔は、動物抗体のものに類似しているか、又は同じであることが最も望ましい。さらに、コンピュータモデリングを容易にするために、ヒト配列のピン領域間隔が、公知の抗体の三次元構造のものに類似していることが望ましい。
【0113】
先の基準に基づいた、総合的に最良である望ましい特性の組み合わせを有する1種又は複数のヒト抗体は、動物抗体のヒト化におけるフレームワークとして選択される。選択した重鎖及び軽鎖は、同一の又は異なるヒト抗体由来のものであってよい。
【0114】
本発明のこの方法の第2のステップは、ヒトフレームワークへ移植するために動物抗体可変領域配列のどれを選択すべきかを決定することを含んでいる。この選択過程は以下の選択基準に基づく。
【0115】
(1)残基選択
2種類のタイプの潜在的可変領域残基を動物抗体配列で評価する。そのうちの第1の残基は「最小残基(minimal residues)」と呼ばれる。これらの最小限の残基は、CDR構造ループと、コンピュータモデリングによって示した場合に、CDR構造ループを支え、かつ/又は配列させるのに必要な任意の追加残基とを含む。
【0116】
別のタイプの可能性のある可変領域残基は「最大残基(maximal residues)」と呼ばれる。最大残基は、最小残基と、コンピュータモデリングによって判定した場合に、CDR構造ループ残基の約10オングストロームの範囲内に入り、かつ水溶媒接触可能表面を保持するすべての追加残基とを含む[Lee et al、J.Biol.Chem.55:379(1971)]。
【0117】
(2)コンピュータモデリング
潜在的可変領域残基を同定するために、(a)ヒト化しようとする動物抗体の可変領域配列、(b)選択したヒト抗体フレームワーク配列、ならびに(c)種々の最小及び最大動物抗体残基が移植されているヒト抗体フレームワーク配列を含むすべての可能性ある組換え抗体において実施した。
【0118】
コンピュータモデリングは、タンパク質モデリングに好適なソフトウェアと、(a)動物抗体とほとんど同一の可変領域アミノ酸配列を有し、かつ(b)既知の三次元構造を有している抗体から得られた構造の情報とを用いて行われる。使用可能なソフトウェアの例としては、SYBYL Biopolymer Moduleソフトウエア(Tripos Associates)がある。構造の情報を取得可能な抗体はヒト抗体であってよいが、必ずしもヒト抗体である必要はない。
【0119】
先の解析で得られた結果に基づき、ヒト化に関して、ほとんど動物抗体に近いコンピュータモデルリング構造をもたらす動物可変領域を含有する組換え鎖を選択する。
【0120】
抗体アイソタイプ
ある状況下では、ある種のアイソタイプのモノクローナル抗体は、それらの診断又は治療効果の点で他の抗体の効果よりも好適であり得る。例えば、抗体媒介性細胞溶解に関する研究から、ガンマ−2a及びガンマ−3アイソタイプの未改変マウスモノクローナル抗体は、一般に、ガンマ−1アイソタイプの抗体よりも標的細胞を溶解するのに有効であることが知られている。この効果の差異は、ガンマ−2a及びガンマ−3アイソタイプが、より活性的に標的細胞の細胞溶解による破壊に関与する能力を有することに基づいていると考えられる。モノクローナル抗体の特定のアイソタイプは、クラススイッチ変異体を単離するための同胞選抜技術を用いることにより、異なるアイソタイプのモノクローナル抗体を分泌する親ハイブリドーマから二次的に調製することができる(Steplewski,et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,82:8653, 1985;Spira,et al.、J.Immunol.Methods, 74:307, 1984)。したがって、本発明のモノクローナル抗体には、モノクローナル抗体7F3、6C12及び12D4のうちのいずれか1種の特異性を有するクラススイッチ変異体が含まれ得る。
【0121】
in vitroアッセイ
本発明のモノクローナル抗体は、in vitroにおける使用、例えば、抗体を液相中で利用し得る、あるいは固相単体に結合し得るイムノアッセイに好適である。本抗体は、サンプル中のC5aRの濃度をモニターするのに有用であり得る。同様に、抗イディオタイプ抗体は、サンプル中のC5aの濃度を測定するのに有用である。さらに、これらのイムノアッセイにおけるモノクローナル抗体は、検出可能なように種々の方法で標識することができる。本発明のモノクローナル抗体を利用可能なイムノアッセイのタイプの例としては、直接又は間接形式の競合イムノアッセイ及び非競合イムノアッセイがある。かかるイムノアッセイの例としては、ラジオイムノアッセイ(RIA)及びサンドイッチ(免疫定量)アッセイである。本発明のモノクローナル抗体を用いる抗原の検出は、前モード、逆モード、又は同時モードのいずれかで行うイムノアッセイを利用して実施することができ、例えば生理学的サンプルについての免疫組織化学的アッセイが含まれる。当業者は、過度な実験を行うことなく、他のイムノアッセイ形式が分かり、あるいは容易に理解することができる。
【0122】
本発明の抗体は多数の異なる担体に結合させ、C5aRの存在を検出するために用いることができる。周知の担体の例としては、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然セルロース及び加工セルロース、ポリアクリルアミド、アガロースならびにマグネタイトが挙げられる。この担体の性質は、本発明の目的においては可溶性であっても不溶性であってもよい。当業者には、モノクローナル抗体に結合するのに好適な他の担体は周知であり、ルーチンの実験により、かかる抗体を確認することができるであろう。
【0123】
一実施形態では、C5aRを天然で発現する細胞、あるいはC5aR又はこれらの変異体をコードする組換え核酸配列を含む細胞を本発明の結合アッセイで用いる。これらの細胞は、受容体の発現に適当な条件下で維持する。これらの細胞は、結合に好適な条件下(例えば、好適な結合バッファー中)で抗体又はフラグメントと接触させ、次いで結合を標準技術により検出する。結合を判定するには、結合の程度を好適な対照と比較して(例えば、抗体の不在下で測定されたバックグラウンドとの比較、二次抗体(すなわち基準抗体)の結合との比較、トランスフェクトされていない細胞に対する抗体の結合との比較)、検出することができる。受容体を含有する細胞画分(例えば、細胞膜画分)、又は受容体を含むリポソームは、細胞全体の代わりとして用いることができる。
【0124】
また、結合阻害アッセイは、C5aRと結合し、かつC5aR又は機能的変異体へのC5aの結合を阻害する抗体又はそれらのフラグメントを同定するために用いることができる。例えば、抗体の不在下におけるC5aの結合と比較して、(抗体の存在下における)C5aの結合の低下を検出又は測定する結合アッセイを行うことができる。単離され、かつ/又は組換えられた哺乳動物C5aR又はその機能的変異体を含む組成物は、C5a及び抗体と、同時に又は交互に、いずれかの順で接触させることができる。抗体の存在下におけるリガンドの結合程度の低下は、抗体による結合の阻害を示す。例えば、リガンドの結合は、減少するか、あるいは無くなり得る。
【0125】
C5aRと結合する抗体の存在を同定する別の方法は、他の好適な結合アッセイ、又はシグナル伝達機能及び/又は細胞応答の刺激(例えば、白血球の輸送)をはじめとする、受容体結合が引き金となって起きる現象をモニターする方法などが利用可能である。さらに、このようにして同定される抗体は、結合の後に、それらの抗体がC5aRの他の機能を阻害するように作用するかどうかを判定し、かつ/又はそれらの治療の有用性を判断するために評価され得る。
【0126】
シグナル伝達アッセイ
C5aRへリガンド又は促進剤(例えば、アゴニスト)が結合すると、Gタンパク質共役型受容体によるシグナル伝達が生じ、他の細胞内シグナル伝達分子と同様にGタンパク質の活性を刺激する。化合物(例えば、抗体又はそのフラグメント)によるシグナル伝達機能の誘導は、すべての好適な方法を用いてモニターすることができる。かかるアッセイを用いてC5aRの抗体アゴニストを同定することができる。抗体又はその機能的フラグメントの阻害活性は、アッセイでリガンド又は促進剤を用い、リガンド又は促進剤によって誘導された活性を阻害する抗体の能力を評価することにより判定することができる。
【0127】
Gタンパク質活性(例えば、GTPのGDPへの加水分解)、又は受容体結合が引き金となって起きる遅発性シグナル伝達現象(例えば、細胞内(細胞質)遊離カルシウム濃度の迅速かつ一過性増加の誘導)は、当技術分野で周知の方法、又は他の好適な方法によって分析することができる(例えば、Neote,K.et al.、Cell、72:415-425,1993;Van Riper et al.、J.Exp.Med.、177:851-856、1993;Dahinden,C.A.et al.、J.Exp.Med.、179:751-756、1994を参照)。
【0128】
例えば、ハイブリッドGタンパク質共役型受容体を用いるSledziewskiらの機能アッセイは、リガンド又は促進剤が受容体と結合し、Gタンパク質を活性化する能力をモニターするために用いることができる(Sledziewski et al.、米国特許第5,284,746号)。
【0129】
かかるアッセイは、評価しようとする抗体又はそのフラグメントの存在下で実施することができ、抗体又はフラグメントがリガンド又は促進剤によって誘導される活性を阻害する能力は、周知の方法及び/又は本明細書に記載されている方法を用いて検出される。
【0130】
走化性及び細胞刺激のアッセイ
また、走化性アッセイは、C5aRへのリガンドの結合を遮断し、かつ/又は受容体へのリガンドの結合に関する機能を阻害する抗体又はその機能的フラグメントの能力を評価するために用いることができる。これらのアッセイは、化合物によって誘導されたin vitro又はin vivoにおける細胞の機能的移動(遊走)に基づいている。走化性は、すべての好適な手段によって、例えば、96ウェル走化性プレートを利用するアッセイ、又は走化性評価のための他の当技術分野で理解されている方法を用いるアッセイにおいて、評価することができる。例えば、in vitroにおける経内皮走化性アッセイの使用は、Springer et al.によって記載されている(Springer et al.、WO94/20142、1994年9月15日発行;さらにBerman et al.、Immunol.Invest.17:625-677(1988)を参照)。また、内皮を通過するコラーゲンゲルへの移動(遊走)も記載されている(Kavanaugh et al.、J.Immunol.、146:4149-4156(1991))。マウスL1−2前駆B細胞の安定したトランスフェクタント、又は走化性能力のある他の好適な宿主細胞の安定なトランスフェクタントは、走化性アッセイに用いることができる。
【0131】
一般に、走化性アッセイは、好適な細胞(白血球など(例えば、リンパ球、好酸球、好塩基球))が、バリアー(例えば内皮、フィルター)の中へ、又はバリアーを介して、化合物の上昇した濃度の方へ、バリアーの表面から反対の裏面へ、指向性運動又は移動(遊走)するのをモニターする。膜又はフィルターは、好適な細胞が、フィルターの中へ、又はフィルターを介して、化合物の上昇した濃度の方へ、フィルターの表面から反対の裏面へ、指向性運動又は遊走するのをモニターするために都合のよいバリアーを提供する。あるアッセイでは、膜は、例えば、ICAM−1、フィブロネクチン又はコラーゲンなどの接着を促進するための物質で被覆される。かかるアッセイは、白血球「ホーミング」のin vitroにおける近似値を提供する。
【0132】
例えば、好適な容器(含有手段)中、第1のチャンバーから微小孔性膜に入って、又は微小孔性膜を介して、試験しようとする抗体を含有し、かつその膜によって第1のチャンバーと区別されている第2のチャンバーへ細胞が移動(遊走)するのを阻害することを検出又は測定することができる。例えば、ニトロセルロース、ポリカーボネートをはじめとする、化合物に応答した特定の遊走をモニターするのに好適な細孔径を有する好適な膜を選択する。例えば、約3〜8ミクロン、好ましくは約5〜8ミクロンの細孔径を用いることができる。細孔径は、フィルター上で、又は一連の好適な細孔径内で均一となり得る。
【0133】
遊走及び遊走の阻害を評価するために、フィルター内への遊走距離、フィルターを通過し、フィルターの裏面への接着が保たれている細胞数、及び/又は第2のチャンバー内に蓄積する細胞数を標準の技術(例えば、顕微鏡使用)を用いて判定することができる。一実施形態では、細胞は、検出可能な標識(例えば放射性同位体、蛍光標識、抗原又はエピトープ標識)で標識されており、かつ移動(遊走)は、抗体又はフラグメントの存在下及び不在下で適当な方法を用いて、膜へ接着している、及び/又は第2のチャンバー内に含まれる標識の存在を検出することによって(例えば放射活性、蛍光、イムノアッセイの検出によって)、評価することができる。抗体アゴニストによって誘導される遊走の程度は、好適な対照と比較(例えば、抗体の不在下において検出されるバックグラウンド遊走との比較、第2の化合物(すなわち基準)によって誘導される遊走の程度の比較、抗体によって誘導されるトランスフェクトされていない細胞の遊走との比較)を行い検出することができる。一実施形態では、特に、C5aRを発現する細胞、T細胞又は単球に対して、経内皮の遊走をモニターすることができる。この実施形態において、内皮細胞層を通過した遊出(transmigration)を評価する。細胞層を調製するために、内皮細胞は、内皮細胞の接着を促進するために、コラーゲン、フィブロネクチン又は他の細胞外マトリックスタンパク質などの物質で被覆されていてもよい、微小孔性フィルター又は膜上で培養することができる。好ましくは、コンフルエントな単分子層を形成するまで内皮細胞を培養する。種々の哺乳動物内皮細胞は、ヒト臍静脈内皮細胞(Clonetics Corp、San Diego、Calif.)などの、例えば、静脈内皮、動脈内皮又は微小血管内皮をはじめとする単分子層の形成に利用可能である。特定の哺乳動物受容体に応じた走化性を分析するには、同一の哺乳動物の内皮細胞が好ましいが、しかし異種の哺乳動物の種又は属由来の内皮細胞を用いることもできる。
【0134】
一般に、このアッセイは、細胞が、化合物の上昇した濃度の方向へ、膜又はフィルターの中へ、あるいは膜又はフィルターを介して、フィルターの表面からフィルターの反対の裏面に向かって指向性遊走するのを検出することにより行う。なお、この場合、フィルターは表面上に内皮細胞層を含有している。指向性遊走は、表面に隣接している領域から、膜の中へ、又は膜を介して、フィルターの反対側に位置する化合物の方へ起こる。裏面に隣接している領域に存在する化合物の濃度は、表面に隣接している領域に存在する濃度よりも高い。
【0135】
一実施形態では、抗体阻害剤についての試験に用いる場合、遊走可能であり、かつ、C5aRを発現する細胞を含む組成物を第1のチャンバー内に置くことができる。第1のチャンバー内で細胞の走化性を誘導することができる1種又は複数のリガンド又は促進剤を含む(走化因子機能を有している)組成物は、第2のチャンバー内に置く。好ましくは、第1のチャンバー内に細胞を置く直前又は同時に、第1のチャンバーに、被験抗体を含む組成物を置くことが好ましい。受容体と結合可能であり、このアッセイにおいてC5aRを発現する細胞の、リガンド又は促進剤による走化性の誘導を阻害することが可能な抗体又はその機能的フラグメントは、受容体機能の阻害剤(例えば、刺激的機能の阻害剤)である。抗体又はフラグメントの存在下においてリガンド又は促進剤によって誘導される遊走程度の低下は阻害活性を示す。個別の結合試験を行うことにより、阻害が、受容体に抗体が結合する結果であるかどうか、又は異なる機構によって生じるかどうかを決定することができる。
【0136】
組織における化合物(例えば、ケモカイン又は抗体)の注入に対応した組織の白血球浸潤をモニターするin vivoアッセイは、後述している(炎症のモデルを参照)。これらのin vivoホーミングのモデルは、細胞が遊出によってリガンド又は促進剤に応答し、炎症の部位へ走化する能力を測定し、かつ抗体又はそのフラグメントがこの遊出を遮断する能力を評価する。
【0137】
記載している方法の他に、C5aRの刺激的機能に対する抗体又はフラグメントの影響は、受容体を含有する好適な宿主細胞を用いて、活性受容体により誘導される細胞の応答をモニタリングすることによって評価することができる。
【0138】
C5aRの追加のリガンド、阻害剤及び/又は促進剤の同定
本発明の抗体及びフラグメントの結合及び機能を評価するために用いることができる上に記載したアッセイは、C5aRと結合する追加のリガンド若しくは他の物質又はその機能的変異体、ならびにC5aR機能の阻害剤及び/又は促進剤を同定するために改良することができる。例えば、本発明の抗体又はその機能的部分の結合特異性と同一又は類似の特異性を有する薬剤は、前記抗体又はその一部による競合アッセイにより同定することできる。したがって、さらに、本発明は、C5aRと結合する受容体のリガンド又は他の物質、ならびに受容体機能の阻害剤(例えばアンタゴニスト)又は促進剤(例えばアゴニスト)を同定する方法を含む。一実施形態では、C5aRタンパク質又はその機能的変異体を担持する細胞(例えば、細胞へ導入された核酸によってコードされている哺乳動物のC5aRタンパク質又は機能的変異体を発現するように遺伝子操作される白血球、細胞系又は好適な宿主細胞)は、受容体機能の阻害剤又は促進剤をはじめとする、受容体と結合するリガンド又は他の物質の効果を同定及び評価するためのアッセイにおいて用いられる。さらに、かかる細胞は、発現された受容体タンパク質又はポリペプチドの機能を評価するのに有用である。
【0139】
本発明によれば、受容体と結合するリガンド及び他の物質、受容体機能の阻害剤及び促進剤は好適なアッセイで同定され、さらには治療効果についても評価することができる。受容体機能のアンタゴニストは受容体活性を阻害(低減又は阻止)するために用いることができ、リガンド及び/又はアゴニストは示した正常な受容体機能を誘導(誘発又は増強)するために用いることができる。したがって、本発明は、個体(例えば、哺乳動物)に受容体機能のアンタゴニストを投与することを含む、自己免疫性疾患及び移植片拒絶をはじめとする炎症性疾患を治療する方法を提供する。さらに、本発明は、新規なリガンド又は受容体機能のアゴニストを個体に投与することによって受容体機能を刺激する方法を提供し、これにより、例えば、感染症及び癌の治療において有用な白血球機能の選択的刺激に関する新規手法が得られる。
【0140】
本明細書では、C5aRタンパク質の「リガンド」とは、哺乳動物のC5aRタンパク質に結合する特定クラスの物質を意味し、それには、天然リガンド、ならびに天然リガンドの合成形態及び/又は組換え形態が含まれる。好ましい実施形態では、高親和性を有するC5aRタンパク質のリガンド結合が生じる。
【0141】
本明細書では、「アンタゴニスト」は、C5aRタンパク質の少なくとも1つの機能特性、例えば、結合活性(例えばリガンド結合、促進剤結合、抗体結合)、シグナル伝達活性(例えば、哺乳動物Gタンパク質の活性化、細胞質ゾルの遊離カルシウムの濃度の迅速かつ一過性上昇の誘導)、及び/又は細胞応答機能(例えば、走化性の刺激、細胞外放出又は白血球による炎症性媒介因子の放出)を阻害(低減又は阻止)する物質を意味する。アンタゴニストという用語には、受容体と結合する物質(例えば抗体、天然リガンドの突然変異体、分子量の小さい有機分子、リガンド結合の他の競合阻害剤)、ならびに受容体に結合することなく受容体機能を阻害する物質(例えば、抗イディオタイプ抗体)が含まれる。
【0142】
本明細書では、「アゴニスト」とは、C5aRタンパク質の少なくとも1つの機能特性、例えば、結合活性(例えば、リガンド、結合阻害剤及び/又は促進剤)、シグナル伝達活性(例えば、哺乳動物Gタンパク質の活性化、細胞質ゾルの遊離カルシウムの濃度の迅速かつ一過性上昇)、及び/又は細胞応答機能(例えば、走化性の刺激、細胞外放出又は白血球による炎症性媒介因子放出)を促進(誘導、誘発、増強又は増大)する物質である。アゴニストという用語には、受容体と結合する物質(例えば抗体、他の種由来の天然リガンドの相同体)、ならびに受容体に結合することなく(例えば、関連のタンパク質を活性化することにより)受容体機能を促進する物質が含まれる。好ましい実施形態では、アゴニストは天然リガンドの相同体以外のものである。
【0143】
したがって、さらに、本発明は、C5aR又は機能的変異体と結合するリガンド、アンタゴニスト、アゴニスト、及び他の物質をはじめとする、C5aRと結合する薬剤、又はそのリガンド結合変異体を検出又は同定する方法に関する。本方法によれば、試験する薬剤、本発明の抗体又は抗原結合性フラグメント(例えば、7F3及びその抗体結合性フラグメントのエピトープ特異性と同一又は類似の特異性を有する抗体)、ならびにC5aR又はそのリガンド結合変異体を含む組成物を組み合わせることができる。この先述の成分は、C5aRに対する抗体又は抗原結合性フラグメントの結合に好適な条件下で組み合わされ、本明細書に記載している方法又は他の好適な方法に従って、直接的又は間接的に、C5aRに対する抗体又はフラグメントの結合を検出又は測定する。好適な対照(例えば、試験する薬剤の不在下におけるもの)に対して形成された複合体の量が低下した場合、それは、その薬剤が前記受容体又は変異体と結合することを表している。C5aRを含む組成物は、組換えC5aRタンパク質又はそのリガンド結合変異体を担持する細胞の膜画分であってよい。抗体又はそのフラグメントは、放射性同位体、スピン標識、抗原又はエピトープ標識、酵素標識、蛍光性基及び化学発光性基などの標識により標識することができる。
【0144】
炎症のモデル
治療剤としてin vivoにおける本発明の抗体及びフラグメントの効果を評価するために炎症のin vivoモデルを用いることができる。例えば、ケモカイン及びC5aRと反応する抗体又はそのフラグメントを好適な動物(例えば、ウサギ、マウス、ラット、モルモット又はアカゲザルなど)へ皮内注射した場合の白血球浸潤をモニターすることができる(例えば、Van Damme,J.et al.、J.Exp.Med.、176:59-65(1992);Zachariae,C.O.C.et al.、J.Exp.Med.171:2177-2182(1990);Jose,P.J.et al.、J.Exp.Med.179:881-887(1994)を参照)。一実施形態では、白血球(例えば、好酸球、顆粒球)の浸潤について皮膚生検を組織学的に評価する。別の実施形態では、走化能及び血管外遊走能のある標識細胞(例えば、C5aRを発現する、トランスフェクトした安定性のある細胞)を動物に投与する。評価する抗体又はフラグメントは、標識細胞を試験動物に投与する前後に、あるいは同時に投与することができる。阻害剤不在時の浸潤の程度と比較して抗体存在時の浸潤の程度が低減している場合、それは阻害を表している。
【0145】
診断及び治療用途
本発明の抗体及びフラグメントは、研究、診断及び治療用途をはじめとする、種々の用途に有用である。一実施形態では、抗体は好適な標識(例えば、蛍光標識、化学発光標識、アイソトープ標識、抗原又はエピトープ標識、あるいは酵素標識)で標識する。例えば、それらは、受容体又はその部分を単離及び/又は精製し、かつ受容体構造(例えばコンホメーション)及び機能を研究するために用いることができる。
【0146】
さらに、本発明の種々の抗体は、C5aRの検出に、あるいは、例えばT細胞(例えば、CD8+細胞、CD45RO+細胞)、単球、及び/又は受容体遺伝子でトランスフェクトした細胞における受容体の発現の測定に用いることができる。したがって、本発明の種々の抗体は、さらに、診断又は研究目的における細胞選別(例えば、フローサイトメトリー、蛍光活性化細胞選別)などの用途において有用である。
【0147】
本発明の抗C5aR抗体は、診断用途において有用性がある。典型的には、診断アッセイでは、C5aRへ抗体又はそのフラグメントが結合することによって生じる複合体の形成を検出することが必要である。診断の目的においては、抗体又は抗原結合性フラグメントは標識されていても、未標識であってもよい。抗体又はフラグメントは直接的に標識することができる。種々の標識を用いることができ、放射性核種、蛍光剤、酵素、酵素基質、酵素補因子、酵素阻害剤及びリガンド(例えばビオチン、ハプテン)が挙げられるが、これに限定されるものではない。多数の適当なイムノアッセイが当業者には周知である(例えば、米国特許第3,817,827号、第3,850,752号、第3,901,654号及び第4,098,876号)。また、組織サンプルの免疫組織化学を本発明の診断法で用いることができる。未標識の場合、抗体又はフラグメントは、例えば、凝集アッセイなどの好適な手段を用いて検出することができる。また、未標識抗体又はフラグメントは、第1抗体(例えば、抗イディオタイプ抗体又は未標識免疫グロブリンに特異的な他の抗体)あるいは他の好適な試薬(例えば標識プロテインA)と反応する標識抗体(例えば、二次抗体)などの抗体を検出するために使用可能な別の(すなわち、1種又は複数の)好適な試薬と組み合わせて用いることができる。
【0148】
また、生体サンプル中のC5aRタンパク質の存在の検出において使用するキットを調製することができる。かかるキットには、C5aRに結合する抗体又はその機能的フラグメント、ならびに抗体又はフラグメントとC5aRとの複合体の存在を検出するのに好適な1種又は複数の助剤が含まれる。本発明の抗体組成物は、凍結乾燥形態にて、単独で又は他のエピトープに特異的な追加の抗体と組み合わせて提供することができる。抗体(標識抗体又は未標識抗体であってよい)は、添加剤成分(例えば、トリス、リン酸塩及び炭酸塩などのバッファー、安定剤、添加剤、殺菌剤及び/又は不活性タンパク質、例えば、ウシ血清アルブミン)とともにこのキットに含めることができる。例えば、抗体は添加剤成分とともに凍結乾燥混合物として提供することができる。あるいは、添加剤成分は、ユーザーが組み合わせるように別々に提供することができる。一般に、これらの添加剤原料は、活性抗体の量に対して約5重量%未満で存在し、通常、抗体濃度に対して少なくとも約0.001重量%の総量で存在する。モノクローナル抗体に結合可能な二次抗体を用いる場合、かかる抗体はキットで、例えば個別のバイアル又は容器で提供することができる。所望により、二次抗体は一般には標識され、上に記載している抗体製剤と同様の方法で製剤化することができる。
【0149】
同様に、また、本発明は、抗体又はフラグメントの結合に適当な条件下で、細胞又はその画分(例えば、細胞膜画分)を含む組成物をC5aRに結合する抗体又はその機能的フラグメントと接触させ、結合をモニターする、C5aRの発現を細胞により検出及び/又は定量する方法に関する。抗体の検出(抗体とC5aRとの複合体の形成を示す)は、受容体の存在を表す。抗体と細胞との結合は、例えば、先の標題「結合アッセイ」のところで記載されているようにして測定することができる。この方法は、個体由来の(例えば、血液、唾液又は他の好適なサンプルなどの体液のようなサンプル中の)細胞上のC5aR発現の検出に用いることができる。また、T細胞又は単球表面上のC5aRの発現のレベルは、例えばフローサイトメトリーによって検出することが可能であり、その発現のレベル(例えば染色度)は疾患罹病性、進行又はリスクと関連し得る。
【0150】
走化因子受容体は、身体の全体にわたる(特に炎症性部位への)白血球の移動(遊走)に関して機能する。炎症細胞の脈管構造からの遊出は、白血球及び内皮細胞接着タンパク質並びに細胞特異的走化因子及び活性化因子の相互作用を含む3ステップの方法によって調節される(Springer,T.A.、Cell、76:301-314(1994);Butcher,E.C.、Cell、67:1033-1036(1991);Butcher,E.C.and Picker,L.J.、Science(Wash.D.C.)、272:60-66(1996))。これらは以下のとおりである:(a)白血球選択と内皮細胞炭水化物の間の低親和性相互作用;(b)白血球走化因子受容体と走化因子/活性化因子の間の高親和性相互作用;(c)白血球インテグリンと免疫グロブリンスーパーファミリーの内皮細胞接着タンパク質の間の強固な結合。異なる白血球サブセットは、セレクチン、走化因子受容体及びインテグリンの異なるレパートリーを発現する。さらに、炎症は、内皮接着タンパク質の発現と走化因子及び白血球活性化因子の発現を変化させる。その結果、脈管外部位への白血球補充の選択性を調節することに関してはかなりの多様性がある。第2のステップは、白血球走化因子受容体の活性化が、セレクチンが媒介する細胞ローリングからインテグリンが媒介する強固結合への変化を引き起こすと考えられ、重要である。これによって、血管周囲の部位へ移動する状態にある白血球が得られる。さらに、走化因子/走化因子受容体相互作用は、組織内の経内皮遊走及び局在化に重要である(Campbell,J.J.,et al.、J.Cell Biol.、134:255-266(1996);Carr,M.W.,et al.、Immunity、4:179 187(1996))。この遊走は、炎症性病巣方向に至る走化因子の濃度勾配により誘導される。
【0151】
C5aRは、白血球輸送において重要な機能を有している。C5aRは、ある炎症性部位への好中球、好酸球、T細胞もしくはT細胞サブセット又は単球遊走に関する重要な走化因子受容体であり、それ故、抗C5aRモノクローナル抗体は、特に、再潅流傷害及び卒中などの好中球性組織損傷、自己免疫性疾患などのT細胞機能不全、又はアレルギー反応、又はアテローム性動脈硬化などの単球媒介性疾患に関連する白血球遊走を阻害(低減又は防止)するために用いることができる可能性がある。
【0152】
したがって、さらに本発明の抗体及びそのフラグメントは、研究及び治療用途において受容体機能を調節するために用いることができる。例えば、本明細書に記載されている抗体及び機能的フラグメントは、阻害剤として、(a)受容体への結合(例えば、リガンド、阻害剤又は促進剤)、(b)受容体シグナル伝達機能、及び/又は(c)刺激機能、を阻害(低減又は阻止)するように作用し得る。受容体機能の阻害剤として作用する抗体は、(例えば、コンホメーション変化をもたらすことによって)直接又は間接的にリガンド又は促進剤の結合を遮断し得る。例えば、抗体は、リガンドの結合を阻害することによって、又は(リガンドの結合を伴った、あるいは伴わない)脱感作によって受容体機能を阻害し得る。さらに、受容体と結合する抗体は、例えば、受容体に結合した場合の受容体のシグナル伝達及び/又は刺激機能(例えば、白血球輸送)などのように、受容体機能のアゴニストとして、受容体機能を誘発又は刺激するように作用し得る。
【0153】
したがって、本発明は、有効量の本発明の抗体又は機能的フラグメントを哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物(例えば、ヒト患者)中の白血球輸送を阻害する方法を提供する。さらに、本発明は、好塩基球からのヒスタミン放出、ならびに好酸球、好塩基球及び好中球からの顆粒放出など、C5aR活性に関連する他の作用を阻害する方法を提供する。本発明の抗体又はフラグメントを投与することにより、疾患の状態を改善又は解消することができる。
【0154】
また、本モノクローナル抗体を免疫病理学上関連のある疾患に対する免疫療法に用いることができる。本発明のモノクローナル抗体と共に本明細書で用いられる「免疫療法に」あるいは「免疫療法」という用語は、治療投与だけでなく予防投与も意味する。したがって、本モノクローナル抗体は、免疫病理学上の疾患の可能性及び/又は重篤度を低減させるためにハイリスクの患者に投与することが可能であり、あるいは、グラム陰性細菌感染が原因ですでに活性疾患(例えば、敗血症)の症状のある患者に投与することができる。
【0155】
本抗体又はその機能的フラグメントは、アレルギー、アテローム発生、アナフィラキシー、悪性炎症、慢性炎症及び急性炎症、ヒスタミン及びIgEを媒介とするアレルギー反応、ショック、及び慢性関節リウマチ、アテローム性動脈硬化、多発性硬化症、同種異系移植片拒絶反応、線維症疾患、喘息、炎症性糸球体症、あるいは、すべての免疫複合体関連疾患を治療するために用いることができる。
【0156】
抗体又はその好適なフラグメントをはじめとするC5aR受容体機能の阻害剤により治療可能なヒト又は他種の疾患又は症状には、これらに限定的されるものではないが、以下のものが挙げられる:
(a)炎症性又はアレルギー性疾患及び症状、例えば、呼吸器系アレルギー性疾患、例えば、喘息、アレルギー性鼻炎、過敏性肺疾患、過敏性肺炎、間質性肺疾患(ILD)(例えば、特発性肺線維症、又は慢性関節リウマチを随伴するILD、全身性紅斑性狼瘡、強直性脊椎炎、全身性硬化症、シェーグレン症候群、多発性筋炎又は皮膚筋炎);アナフィラキシー又は過敏性応答、薬物アレルギー(例えば、ペニシリン、セファロスポリンに対するもの)、虫刺されによるアレルギー;クローン病及び潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患;脊椎関節症;硬皮症;乾癬及び炎症性皮膚病、例えば、皮膚炎、湿疹、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、蕁麻疹;脈管炎(例えば、壊死性脈管炎、皮膚血管炎及び過敏性血管炎);
(b)自己免疫性疾患、例えば、関節炎(例えば、慢性関節リウマチ、乾癬性関節炎)、多発性硬化症、全身性紅斑性狼瘡、重症筋無力症、若年性糖尿病、糸球体腎炎などの腎炎網膜炎、自己免疫性甲状腺炎、ベーチェット病;
(c)移植片拒絶(例えば、移植時の)、例えば、同種異系移植片拒絶反応又は移植片対宿主疾患;
(d)アテローム性動脈硬化;
(e)皮膚又は器官の白血球浸潤のある癌;
(f)他の疾患又は症状(C5aRを媒介とした疾患又は症状を含む)、この場合、これらに限定されるものではないが、再潅流傷害、卒中、成人型呼吸窮迫症候群、ある種の血液悪性腫瘍、サイトカイン誘導型毒性(例えば、敗血症性ショック、内毒素性ショック)、多発性筋炎、皮膚筋炎、天疱瘡様、アルツハイマー疾患、サルコイドーシスをはじめとする肉芽腫性疾患をはじめとする、阻害される不適当な炎症反応は治療することができる。
【0157】
本発明の抗C5aR抗体は、1種又は複数のリガンドの結合を遮断し、その結果、上記の疾患に至る1種又は複数の現象の下流カスケードを遮断することができる。
【0158】
好ましい実施形態では、本発明の抗体は、敗血症、卒中又は成人型呼吸窮迫症候群の治療に用いられる。
【0159】
抗体又はそのフラグメントをはじめとするC5aR機能の促進剤により治療可能なヒト又は他種の疾患又は症状は、これらに限定されるものではないが、免疫抑制、例えば、免疫不全症候群(AIDSなど)に罹患している個体における免疫抑制、免疫抑制を誘発する放射線治療、化学療法、自己免疫性疾患の治療又は他の薬物治療(例えば、コルチコステロイド治療)を受けている個体、ならびに受容体機能の先天性欠損又は他の原因による免疫抑制が挙げられる。
【0160】
投与方法
本発明の免疫療法の方法は、免疫病理学上の疾患の発症の前(予防)又は後(治療)に、本発明の治療剤の注射又は注入により投与することを必要とする。
【0161】
本発明の1種又は複数の抗体又はフラグメントは、適当な経路によって、単独で、あるいは別の医薬品又は薬剤と組み合わせて(前後に、又は同時に)個体に投与することができる。例えば、また本発明の抗体は、他のモノクローナル又はポリクローナル抗体と組み合わせて(例えば、これらに限定するものではないが、CCR2及びCCR3をはじめとする、ケモカイン受容体を結合する抗体と組み合わせて)、あるいは抗TNF抗炎症薬又は他の抗炎症薬と組み合わせて、あるいは例えば、予防又は治療の処置において使用されている市販のガンマグロブリン及び免疫グロブリン製品などの既存の血漿製品と組み合わせて用いることができる。本発明の抗体又はフラグメントは、抗生物質及び/又は抗菌剤と共に用いられる、個別投与の組成物として用いることができる。
【0162】
有効量の抗体又はフラグメント(すなわち、1種又は複数の抗体又はフラグメント)が投与される。有効量とは、投与条件下で所望の治療効果(予防効果を含む)を達成するのに十分な量(例えば、C5aR機能を阻害し、それにより炎症反応を阻害するのに十分な量)である。
【0163】
種々の投与経路が利用可能であり、例えば、治療する疾患又は症状に基づいて、経口投与、食事による投与、局所投与、非経口投与(例えば、静脈内注射、動脈内注射、筋肉注射、皮下注射)、吸入投与(例えば、気管支内吸入、眼内吸入、鼻腔内吸入、又は経口吸入、鼻腔内滴下)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。さらに、好適な他の投与方法には、再充填可能な器具又は生物分解性器具、及び徐放性ポリマー製器具が含まれる。また、本発明の医薬組成物は、他の薬剤との併用療法の一部として投与することができる。投与する抗体又はフラグメントの製剤化は、選択する投与経路及び剤形(例えば、溶液、エマルジョン、カプセル)により変わる。投与する抗体又はその機能的フラグメントを含む好適な医薬組成物は、生理学上許容可能なビヒクル又は担体中で製造することができる。抗体及び/又はフラグメントの混合物もまた用いることができる。溶液又はエマルジョンについては、好適な担体としては、例えば、生理食塩水及びバッファー媒体をはじめとする、水溶液又はアルコール/水溶液、エマルジョン又は懸濁液が挙げられる。非経口ビヒクルとしては、塩化ナトリウム溶液、リンガーデキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、乳酸加リンガー溶液又は固定油が挙げられる。種々の好適な水溶性担体は当業者には周知であるが、水、緩衝水、緩衝生理食塩水、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール)、デキストロース溶液及びグリシンが挙げられる。静脈内ビヒクルとしては、種々の添加剤、防腐剤、又は液体、栄養補充剤もしくは電解質補充剤が挙げられる(一般には、Remington's Pharmaceutical Science、16th Edition、Mack、Ed.1980を参照されたい)。本組成物は、場合によっては、生理学的条件に近づけることが必要とされる場合に、pH調節及びバッファー及び毒性調節剤(例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム及び乳酸ナトリウム)などの製薬上許容可能な助剤を含有することができる。本発明の抗体及びフラグメントは、周知の凍結乾燥技術及び再構成技術に従って、保存用に凍結乾燥し、使用前に好適な担体中で再構成することができる。選択した媒体中の有効成分の最適濃度は、当業者によく知られている方法に従って経験的に決定することが可能であり、かつ所望する最終的医薬品によって決まる。吸入においては、抗体又はフラグメントを溶解させ、投与に好適なディスペンサー(例えば、アトマイザー、ネブライザー、又は気圧調節型エアロゾルディスペンサー)に充填することができる。
【0164】
本発明のモノクローナル抗体を投与するための投与量範囲は、免疫病理学上の疾患の徴候が改善され、あるいは、感染の、又は免疫系の刺激に関する可能性が低減するといった、所望の効果を得るのに十分なそれらの最大量である。その用量は、ヒーペル粘度症候群、肺水腫、心不全徴候等の副作用が生じるほどの最大量であってはならない。一般に、用量は、患者の年齢、症状、性別、及び疾患の程度に応じて変更され、それは当業者により決定することが可能である。また、用量は、すべての併発症の場合において、各医師により調節することができる。用量は、1日又は数日間、毎日単回又は複数回投与で、約0.1mg/kgから約300mg/kg、好ましくは約0.2mg/kgから約200mg/kg、最も好ましくは約0.5mg/kgから約20mg/kgの範囲で変更することができる。
【0165】
また、本発明の抗体は、抗体をコードする配列を含む核酸分子を投与することにより、被験体へ導入され得ることは当業者には理解されよう。核酸分子は、DNA又はRNAの形態であってよく、あるいはDNA又はRNAを含むキメラ分子であってよい。抗体をコードしているヌクレオチド配列は、発現ベクターにクローニングされていてもよく、その場合、薬剤をコードする配列は発現調節エレメントと機能しうる形で連結される。発現調節エレメントは当技術分野でよく知られており、例えば、プロモーター、エンハンサー、及び好適な開始コドン及び停止コドンが含まれる。
【0166】
in vivoにおいて標的細胞に抗体をコードする核酸を導入するには種々の方法を用いることができる。例えば、裸の核酸を標的部位に入れてもよく、あるいはリポソームへ封入してもよく、あるいはウイルスのベクターにより導入されてもよい。
【0167】
単独の、あるいは例えば、カチオン性リポソーム中に封入された核酸分子の直接的注入を用いて、in vivoにおける非分裂細胞又は分裂細胞にTSP−1をコードする核酸を安定的に遺伝子導入することができる(Ulmer et al.、Science 259:1745-1748(1993))。さらに、核酸は、粒子ボンバードメント法を用いてin vivoの各種組織へ導入することができる(Williams et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:2726-2730(1991))。
【0168】
ウイルスベクターは、抗体をコードする核酸分子をin vivoの特定の細胞型へ遺伝子導入するのに有用である。ウイルスは、特定の細胞型中で感染、増殖が可能な特殊な感染性物質である。特定の細胞型を感染させるこの特異性は、in vivoの選択した細胞に抗体を標的化するのに特に好適である。ウイルス系ベクターは、ある程度は、標的とする細胞型に基づいて選択される。
【0169】
特定の細胞型を標的とすることができる特定のウイルス系ベクターは、当技術分野で周知である。かかるベクターには、例えば、一般的プロモーター又は組織特異的プロモーターを有する組換えアデノ随伴ウイルス系ベクターが挙げられる(Lebkowski et al.、米国特許第5,354,678号)。組換えアデノ随伴ウイルス系ベクターは、組換えウイルスが静止期の増殖していない細胞のクロマチンへも安定的に導入され得るというもう1つの長所を有する(Lebkowski et al.、Mol.Cell.Biol.8:3988-3996(1988))。
【0170】
さらにウイルス系ベクターは、組織特異的プロモーター又はエンハンサーをベクターに組み入れることによって、コードされた抗体を発現する細胞型を調節するように構築することができる(Dai et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10892-10895(1992))。
【0171】
さらに、レトロウイルスのベクターは、in vivoにおいて抗体をコードする核酸分子を送達する方法に好適である。かかるベクターは、最初の一回の感染しか受けない感染性粒子として、又は非感染性粒子として機能するように構築され得る。
【0172】
また、受容体を媒介としたDNA送達方法は、架橋分子によって核酸分子と非共有結合的に複合体を形成する組織特異的リガンド又は抗体を用いる組織特異的方法で抗体をコードする核酸分子を細胞に送達するために用いることができる(Curiel et al.、Hum.Gene Ther.3:147-154(1992);Wu and Wu、J.Biol.Chem.262:4429-4432(1987))。
【0173】
また、被験体における抗体の発現を得るための遺伝子導入は、例えば、自己由来の細胞のex vivoにおけるトランスフェクションによって実施することができる。かかるex vivoのトランスフェクションに好適な細胞としては血球が挙げられる。その理由は、これらの細胞が、当技術分野で周知の方法による操作と被験体への再導入に利用しやすいからである。
【0174】
ex vivoでの細胞のトランスフェクションによる遺伝子導入は種々の方法によって実施可能であるが、例えば、リン酸カルシウム沈澱、ジエチルアミノエチルデキストラン、エレクトロポレーション、リポフェクション、又はウイルス感染が挙げられる。かかる方法は当技術分野で周知である(例えば、Sambrook et al.、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Springs Harbour Laboratory Press(1989)を参照)。一度細胞がトランスフェクトされたならば、その後、治療する被験体にそれらの細胞を再び移植又は接合する。一度身体へ導入された細胞は、循環流動に入り込み、疾患又は症状の部位における血小板凝集を抑制する抗体を産生し得る。
【0175】
この明細書の全体にわたって、「含む(comprise)」という用語、又は「含む(comprises)」もしくは「含んでいる(comprising)」といった活用形は、定義した要素、整数又はステップ、あるいは要素、整数又はステップの群を含むことを意味すると理解する。しかし、他の要素、整数又はステップ、あるいは要素、整数又はステップの群を除外するものではない。
【0176】
本明細書に含まれる文書、操作、材料、装置、物品等のすべての記載は、単に本発明の内容を提供することを目的としたものである。先行技術の一部を形成するこれらの内容のいずれか又は全部は、本出願の各請求項の優先日前にオーストラリアに存在していたとして、本発明に関連する分野における共通の一般的知識である、あるいはそれに基づいているということを承認するものではない。
【0177】
ここで、本発明を以下の実施例によって説明するが、これは決してこれらに限定することを意図しているものではない。また、本明細書に引用されたすべての文献の開示は、参照により本明細書に援用する。
(実施例)
【0178】
材料及び方法
1.モノクローナル抗体の作製とフローサイトメトリー
C5aRと反応するモノクローナル抗体(MAb)は、C57BL/6マウスに10個のL1.2 C5aRトランスフェクト細胞[8]を2週間間隔で5〜6回腹腔内に免疫にすることにより得た。最終免疫は静脈注射で行った。4日後、脾臓を取り出し、[9]に記載されているようにして、細胞をSP2/0細胞系と融合させた。C5aRと反応するモノクローナル抗体は、免疫蛍光検査法染色及びFACScan(登録商標)(Becton Dickinson & Co.、Mountain View、CA)を用いる分析を用いて、C5aRトランスフェクトL1.2細胞及び非トランスフェクトL1.2細胞、あるいはCXCR2又はCX3CR1(V28)などの無関係な受容体でトランスフェクトしたL1.2細胞を用いて同定した。細胞のモノクローナル抗体染色は、すでに報告のある[10]に記載されているようにして標準的方法により実施した。
【0179】
2.リガンド結合アッセイ
組換えヒトC5aは、Sigma Chemical Co.(St.Louis、MO)から入手した。2200Ci/mMの比活性を有する125I−ボルトンハンター標識補体C5aは、NEN-Dupont(Boston, MA)から購入した。L1.2 C5aRトランスフェクタントへのC5a結合は、すでに報告のある[9、11]に記載されているようにして実施した。簡単に説明すると、細胞をPBS中で一回洗浄し、結合バッファー(50mM Hepes、pH7.5、1mM CaCl、5mM MgCl、0.5%BSA、及び0.05%アジ化物)中、10細胞/mlの濃度で再懸濁させた。50ml(5×10細胞)のアリコートを遠心管へ入れ、その後、冷競合因子と放射性標識した1nMのC5aを添加した。最終反応容量は200μlであった。室温にて60分間インキュベーションした後、0.5MのNaClを含有する結合バッファー1mlで細胞を3回洗浄した。次いで、細胞ペレットをカウントした。バックグラウンド結合は、放射性標識したC5aと少なくとも400倍過剰の未標識C5aと共に細胞をインキュベートすることにより得た。実験はすべて二重反復試験を用い、標準偏差は常に平均値の<10%であった。
【0180】
3.トランスフェクタント走化性アッセイ
C5aRトランスフェクトL1.2細胞を遠沈させ、遊走培地(MM=RPMI1640、0.5%BSA)中で洗浄し、10細胞/mlで再懸濁した。組織培養インサート(Becton Dickinson & Co.、Mountain View、CA)を、3mm直径の孔を有するポリエチレンテレフタレート膜によって分離されて上部及び下部チャンバーを形成している、24ウェルの組織培養プレートの各ウェルに置いた。走化性C5a(アッセイ培地で希釈されているもの)を24ウェル組織培養プレート中のアッセイ培地600μlに添加し、最終濃度1nMとした。100μl中の100万個の細胞を、抗体を含有するハイブリドーマ由来の上清と30分間予めインキュベートした。細胞−上清混合物又は精製モノクローナル抗体をウェル中の上部チャンバーに添加し、5%CO、37℃のインキュベーター内で18時間、細胞を下部チャンバーまで遊走させた。遊走後にインサートを取り出し、FACScan(登録商標)により細胞をカウントした。設定時間30秒の現象を取得することにより、相対的細胞数を得た。この方法は高度に再現可能であることが分かり、かつ白血球のゲーティングと組織片の除外が可能であった。
【0181】
4.好中球走化性アッセイ
細胞調製:室温で40分間、デキストラン沈降ステップによって白血球画分を最初に得ることにより、末梢血から好中球を単離した。次いで、室温にて15分間、2500rpmで密度勾配遠心法を行い、Ficoll−Paque(Amersham Biosciences)上に細胞の層を形成させた。残留している赤血球を低張溶解した後、等量のRPMI1640(Invitrogen Inc.)、M199(Invitrogen Inc.)及び2%FCS(HyClone)中に好中球を再懸濁した。
【0182】
走化性アッセイ:抗C5aRモノクローナル抗体の6C12、7F3及び12D4を0.5〜10μg/mlの範囲の濃度で好中球(1×10細胞/ml)に添加した。次いで、孔隙率3.0μmのポリカーボネート膜を備えた24ウェルインサート(Corning Inc.、NY)の上部チャンバーに細胞を充填し、室温にて10分間インキュベートした。次いで、C5a(0.1〜100nM)及びIL−8(1.12ng/ml〜11.2μg/ml)などのヒト好中球走化因子を含有する下部チャンバー上にインサートを置いた。次いで、37℃にて30分間、好中球をインキュベートした。下部チャンバーへ膜を介して遊走(移動)している好中球の数は、フローサイトメトリー(FACSCalibur;BD Biosciences)によって定量した。
【0183】
5.競合阻害アッセイ
1〜100μMの範囲の濃度で、「PEPI」(Biosource;Eldridge)として知られているC5aR N末端合成的産生ペプチド(残基9〜29)に抗C5aRモノクローナル抗体を50ug/ml添加した。マウスL1.2細胞をヒトC5a受容体でトランスフェクトし、1%ウシセリンアルブミン(BSA;GibcoBRL)中に再懸濁し(1×10細胞/ml)、次いで、100μlの全容量が得られるように添加した。4℃にて30分間、細胞をインキュベートし、0.1%BSAで一回洗浄した。フルオレセイン(FITC)結合のヒツジ抗マウスIgGのF(ab’)2(Jackson Immunoresearch Laboratories Inc.)を二次抗体(1:200)として用い、4℃にて15分間インキュベートし、0.1%BSAを用いてさらに洗浄ステップを行った。0.1%BSA中に細胞を再懸濁し、フローサイトメトリーによって分析した。
【0184】
6.ELISAアッセイ
ELISAは、Current Protocols in Immunology(Unit 2.1)(J.F.Coligan,A.M.Kruisbeek,D.B.Margulies,E.M.Shevach and W.Strober編)、John Wiley and Sons、New Yorkに記載されているようにして行った。簡単に説明すると、96ウェルの平底ELISAプレート(Maxisorp;Nunc)を、37℃にて1時間かけてPBSに溶解した1μg/mlのタンパク質(PEPI又はOPG)でコーティングし、次いで、4℃にて一晩BSAでブロッキングした。次いで、プレートを洗浄し、抗体と共にインキュベートし、その後洗浄し、ペルオキシダーゼ結合のヒツジ抗マウスIgG抗体と共にインキュベートした。用いた基質はTMB基質試薬(PharMingen)であった。
【実施例1】
【0185】
モノクローナル抗体の作製とフローサイトメトリー
高レベルのC5aRを発現するL1.2トランスフェクタント[8]をマウスの免疫に用い、フローサイトメトリーによって、C5aRでトランスフェクトしたL1.2細胞と特異的に反応するが、CX3CR1(V28)又はCXCR2でトランスフェクトしたL1.2細胞とは反応しなかった10個のモノクローナル抗体を同定した。これらの10個のモノクローナル抗体は、12D4、10G1、5H11、6C12、10D4、5F3、7F3、8D6、11B9及び1D12と命名した。
【0186】
図1は、モノクローナル抗体7F3が、C5aRトランスフェクタント(L1.2C5aR)及びヒト好中球と反応するが、CX3CR1でトランスフェクトした細胞(L1.2 V28)又はCXCR2でトランスフェクトした細胞(L1.2CXCR2)とは反応しなかったことを示す1組のヒストグラムである。これらのモノクローナル抗体7F3の結果は、同定された10個のモノクローナル抗体の例である。
【実施例2】
【0187】
C5aRでトランスフェクトした細胞へのC5a結合の阻害
C5aRトランスフェクタントへの125I標識C5a結合を阻害するモノクローナル抗体の能力を試験した。図2は、モノクローナル抗体7F3が、トランスフェクタントへの125I標識C5aの結合を完全に阻害したことを示しており、この阻害は、400nMの冷却C5aで得られた阻害よりも大きかった。このことは、モノクローナル抗体7F3がC5aRへのC5aの結合を完全に遮断し得ることを示唆している。さらに、モノクローナル抗体6C12及び12D4は、C5aRトランスフェクタントへの125I標識C5aの結合を実質的に阻害することがわかった。モノクローナル抗体7F3によるC5aRトランスフェクタントへのC5a結合の用量反応阻害を図3に示す。
【実施例3】
【0188】
モノクローナル抗体7F3によるヒトC5a指向性C5aRトランスフェクタント遊走(移動)の阻害
走化性実験は、C5aRでトランスフェクトしたL1.2細胞を用いて、上に記載したようにして実施した。図4は、モノクローナル抗体7F3、6C12及び12D4が、C5aへのC5aR−L1.2細胞の走化性を完全に又は実質的に阻害したことを示す。図5は、モノクローナル抗体7F3によるC5aへのC5aR−L1.2細胞の走化性の用量反応阻害を示す。
【実施例4】
【0189】
モノクローナル抗体7F3によるヒトC5a指向性好中球遊走(移動)の阻害
抗C5aRモノクローナル抗体を1×PBS(GibcoBRL)中で透析させ、透析済み及び未透析の7F3モノクローナル抗体双方を5ug/mlで好中球に添加した(1×10細胞/ml)。陰性対照(抗体無添加、及び1×PBS添加)も含めた。次いで、孔隙率3.0μmのポリカーボネート膜を備えた24ウェルインサート(Corning Inc.、NY)の上部チャンバーに細胞を充填し、室温にて10分間インキュベートした。次いで、ヒト好中球走化因子C5a(0.1〜100nM)を含有する下部チャンバーにインサートを置いた。次いで、37℃にて30分間、好中球をインキュベートした。下部チャンバーへ膜を介して遊走している好中球の数は、フローサイトメトリー(FACSCalibur;BD Biosciences)により定量した。
【0190】
図6は、モノクローナル抗体7F3(透析済み又は未透析のいずれか)の添加により、2つの陰性対照と比較して、好中球遊走に阻害が生じたことを示す。
【実施例5】
【0191】
モノクローナル抗体7F3、6C12及び12D4によるヒトC5a指向性好中球遊走の阻害
3種類の抗C5aRモノクローナル抗体7F3、12D4及び6C12を5ug/mlで好中球に添加した(1×10細胞/ml)。陰性対照(抗体無添加、及び1×PBS添加)も含めた。次いで、孔隙率3.0μmのポリカーボネート膜を備えた24ウェルインサート(Corning Inc.、NY)の上部チャンバーに細胞を充填し、室温にて10分間インキュベートした。次いで、ヒト好中球走化因子C5a(1.12〜1120ng/ml)を含有する下部チャンバーにインサートを置いた。次いで、37℃にて30分間、好中球をインキュベートした。下部チャンバーへ膜を介して遊走している好中球の数は、フローサイトメトリー(FACSCalibur;BD Biosciences)により定量した。
【0192】
図7に示す結果は、3種類のモノクローナル抗体すべてが、2つの陰性対照と比較して、C5a指向性好中球遊走を阻害することを示す。特に、7F3モノクローナル抗体は最も有効な阻害を示し、バックグラウンドレベルに対して好中球遊走数が140倍も低減していた。
【実施例6】
【0193】
モノクローナル抗体7F3、12D4及び6C12によるヒトIL−8指向性好中球遊走の阻害
3種類の抗C5aRモノクローナル抗体7F3、12D4及び6C12と、7F3の透析済みサンプルを5ug/mlで精製好中球に添加し(1×10細胞/ml)、24ウェルインサートの上部チャンバーに充填した。陰性対照(抗体無添加、及び1×PBS添加)も再度含めた。室温にて10分間インキュベーションを行った。次いで、IL−8(1.12〜1120ng/ml)を含有する下部チャンバーにインサートを置いたところ、CXCR1及びCXCR2受容体と結合するヒト好中球走化因子は好中球の表面上に発現した。次いで、37℃にて30分間好中球をインキュベートした。下部チャンバーへ膜を介して遊走している好中球の数は、フローサイトメトリー(FACSCalibur;BD Biosciences)により定量した。
【0194】
図8は、3種類のモノクローナル抗体がすべてIL−8への好中球遊走を阻害していることを示している。7F3モノクローナル抗体(透析済み及び未透析)は、好中球遊走数において5倍の低減を示す、最も有効な阻害剤であった。
【0195】
また、モノクローナル抗体7F3について、他の好中球走化因子、特にCXCR1及びCXCR2リガンドを阻害する能力を試験した。表1は、好中球走化性アッセイにおける、多数の好中球走化因子、特にCXCR1及びCXCR2リガンドへの好中球遊走の本質的阻害を示す。
【0196】
表1
走化因子(112ng/ml) 阻害率%
C5a 98
IL−8 81
GCP−2 91
ENA−78 83
【実施例7】
【0197】
C5aR N末端ペプチド(9〜29)による、C5aRトランスフェクタントへのモノクローナル抗体7F3、12D4及び6C12の結合の競合阻害
C5aRでトランスフェクトした細胞へのモノクローナル抗体7F3、12D4及び6C12の結合は、フルオレセイン(FITC)結合ヒツジ抗マウスIgGで染色することにより測定した。次いで、C5aR N末端ペプチド(残基9〜29)がこの結合を阻害する能力は、上に記載されている方法に従って評価した。このC5aR N末端ペプチドは、配列:PDYGHYDDKDTLDLNTPVDKTを有しており、本明細書では「PEPI」と称している。
【0198】
図9(a)は、PEPIの増加する濃度が、3種類の抗C5aRモノクローナル抗体の蛍光染色を阻害しなかったことを示す。この蛍光染色は、PEPI濃度が100μMである場合であっても、安定が維持されていた。
【0199】
図9(b)は、PEPI(50μM濃度における)が、モノクローナル抗体7F3による精製好中球のFACS染色を阻害しなかったことを示す。
【実施例8】
【0200】
C5aR N末端ペプチド9〜29(「PEPI」)及びOPGによるモノクローナル抗体7F3、12D4及び6C12の反応性
ELISAアッセイは、PEPI及びOPGを用いて、モノクローナル抗体6C12、12D4、7F3の反応性を測定するために上に記載されているようにして実施した。OPGは、そのリガンドTNFSF11/OPGLに特異的に結合する、TNF受容体スーパーファミリーのメンバーである。より詳しくは、OPGは、骨吸収の負の調節因子として機能する骨芽細胞分泌デコイ受容体である。
【0201】
モノクローナル抗体6C12、12D4及び7F3は、1μg/mLの濃度で精製タンパク質としてELISAで用いた。モノクローナル抗体9C1(OPGに特異的である)及びモノクローナル抗体11B9(PEPIを認識する)は陽性対照として用いた。これらの対照モノクローナル抗体は、未希釈の組織培養上清の形態で用いた。
【0202】
図10は、モノクローナル抗体6C12、12D4及び7F3がPEPIと反応しなかったことを示す。モノクローナル抗体7F3は、OPGとの交差反応性の程度が小さいことを示した。
【実施例9】
【0203】
抗C5aRモノクローナル抗体7F3、12D4及び6C12の配列決定
抗C5aR抗体7F3、12D4及び6C12のヌクレオチド配列は、抗体を発現するハイブリドーマ細胞から抽出したRNAから決定した。重鎖及び軽鎖の可変領域を増幅するために使用するプライマーを決定するため、3つの抗体の可変領域のタンパク質配列をBiogen Incにより決定し、該抗体のアイソタイプはマウスモノクローナル抗体アイソタイプ決定キットIsoStrip(Rocheカタログ番号1 493 027)を使用して決定した。従って、5’フレームワーク1プライマーは、Biogen Inc.のタンパク質配列から誘導し、3’プライマーは抗体のアイソタイプに基づいた。
【0204】
各抗C5aR抗体のアイソタイプは以下のとおりである:
6C12:軽鎖κ
6C12:重鎖IgG3
7F3: 軽鎖κ
7F3: 重鎖IgG2a
12D4:軽鎖κ
12D4:重鎖IgG3
【0205】
Trizol試薬(Invitrogenカタログ番号15596-018)を使用してハイブリドーマ細胞から総RNAを単離した。RNAは、製造業者の記載の通りに単離した。簡単に説明すると、約5×10個の細胞を1mlのTrizol試薬に溶解した。200μlのクロロホルムと遠心分離により細胞破砕物を除去した。水性RNAを含有する層を取り出し、250μlのプロパノールを用いてRNAを沈殿させた。
【0206】
総RNA(2μg)を用いて、AMV逆転写酵素(Promegaカタログ番号M5101)でcDNAを合成した。次に、cDNAを鋳型として用いて、以下のプライマーを用いて可変領域をコードする配列を増幅した:
6C12可変軽鎖のプライマー:
mIgkapFR15':GATGTTTTGATGACCCAAACTCC (配列番号2)
mIgkapcon3':ACACTCATTCCTGTTGAAGCTCTTG (配列番号3)
6C12可変重鎖のプライマー:
mIgVh2 5':SAGGTCCAGCTGCARCAGTC(配列番号4)FR1 VhIIA ファミリー
mIgG3con3':TGGGCATGAAGAACCTGG(配列番号5)ヒンジ領域
7F3可変軽鎖のプライマー:
mIgkapFR15':GATGTTTTGATGACCCAAACTCC(配列番号6)
mIgkapcon3':ACACTCATTCCTGTTGAAGCTCTTG(配列番号7)
7F3可変重鎖のプライマー:
mIgVh2 5':SAGGTCCAGCTGCARCAGTC(配列番号8)FR1 VhIIA ファミリー
mIgG2acon3':TTTGCATGGAGGACAGGG(配列番号9)
12D4可変軽鎖のプライマー:
mIgkapFR15':GATGTTTTGATGACCCAAACTCC(配列番号10)
mIgkapcon3':ACACTCATTCCTGTTGAAGCTCTTG(配列番号11)
12D4可変重鎖のプライマー:
mIgVh1 5':CAGGTGCAGCTGAAGSAGTC(配列番号12)FR1 VhIB ファミリー
mIgG3con3’:TGGGCATGAAGAACCTGG(配列番号13)ヒンジ領域
【0207】
高忠実度Pfuポリメラーゼ(Promegaカタログ番号M7741)を用いて、アニーリング温度60℃及びプライマー伸長72℃にて3分間かけてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行った。得られた約700bpのPCR断片はpGEM−Teasy(Promegaカタログ番号A1360)にクローニングした。単一コロニーを単離し、市販の配列決定装置(SUPAMAC)で配列決定した。
【0208】
得られた配列を以下に示す:
6C12 可変軽鎖(DNA)配列: 配列番号14
6C12 可変軽鎖(タンパク質)配列:配列番号15
6C12 可変重鎖(DNA)配列: 配列番号16
6C12 可変重鎖(タンパク質)配列:配列番号17
7F3 可変軽鎖(DNA)配列: 配列番号18
7F3 可変軽鎖(タンパク質)配列:配列番号19
7F3 可変重鎖(DNA)配列: 配列番号20
7F3 可変重鎖(タンパク質)配列:配列番号21
12D4 可変軽鎖(DNA)配列: 配列番号22
12D4 可変軽鎖(タンパク質)配列:配列番号23
12D4 可変重鎖(DNA)配列: 配列番号24
12D4 可変重鎖(タンパク質)配列:配列番号25
【実施例10】
【0209】
モノクローナル抗体7F3、12D4及び6C12のDNA及びタンパク質配列の同一性及び類似性の解析
3つの抗C5aR抗体(7F3、12D4及び6C12)のDNA及びタンパク質の配列をMacVector6.5.3を用いて比較した。この解析には、ClustalW(1.4)マルチプルアライメントプログラムを利用した。
【0210】
(i)可変軽鎖DNA配列の解析:
7F3、12D4及び6C12の可変軽鎖DNA配列のアライメントを図11に示す。
Clustal W(1.4)マルチプル配列アライメント解析により以下の結果が得られた:
3つの配列のアライメントを行った アライメントスコア=6612
挿入したギャップ=0 保存された同一性=315

ペアワイズアライメントモード:Slow
ペアワイズアライメントパラメータ:
オープンギャップペナルティ=10.0 伸長ギャップペナルティ=5.0

マルチプルアライメントパラメータ:
オープンギャップペナルティ=10.0 伸長ギャップペナルティ=5.0
後発多様性(Delay Divergent)=40% 遷移(Transitions)=重み付

処理時間:0.4秒
【0211】
1.7F3 Vkと6C12 Vk
アライメントを行った長さ=336 ギャップ=0
同一性=329(95%)

2.7F3 Vkと12D4 Vk
アライメントを行った長さ=336 ギャップ=0
同一性=320(95%)

3.6C12 Vkと12D4 Vk
アライメントを行った長さ=336 ギャップ=0
同一性=326(97%)
【0212】
(ii)可変重鎖DNA配列の解析
7F3、12D4及び6C12の可変重鎖DNA配列のアライメントを図12に示す。
Clustal W(1.4)マルチプル配列アライメント解析により以下の結果が得られた:
3つの配列のアライメントを行った アライメントスコア=5346
挿入したギャップ=3 保存された同一性=200

ペアワイズアライメントモード:Slow
ペアワイズアライメントパラメータ:
オープンギャップペナルティ=10.0 伸長ギャップペナルティ=5.0

マルチプルアライメントパラメータ:
オープンギャップペナルティ=10.0 伸長ギャップペナルティ=5.0
後発多様性=40% 遷移=重み付
処理時間:0.5秒
【0213】
1.7F3 Vhと6C12 Vh
アライメントを行った長さ=363 ギャップ=0
同一性=333(91%)

2.7F3 Vhと12D4 Vh
アライメントを行った長さ=363 ギャップ=3
同一性=210(57%)

3.6C12 Vhと12D4 Vh
アライメントを行った長さ=363 ギャップ=3
同一性=210(57%)
【0214】
(iii)可変軽鎖タンパク質配列の解析
7F3、12D4及び6C12の可変軽鎖タンパク質配列のアライメントを図13に示す。
Clustal W(1.4)マルチプル配列アライメント解析により以下の結果が得られた:
3つの配列のアライメントを行った アライメントスコア=1902
挿入したギャップ=0 保存された同一性=99

ペアワイズアライメントモード:Slow
ペアワイズアライメントパラメータ:
オープンギャップペナルティ=10.0 伸長ギャップペナルティ=0.1
類似性行列:blosum

マルチプルアライメントパラメータ:
オープンギャップペナルティ=10.0 伸長ギャップペナルティ=0.1
後発多様性=40% ギャップ距離=8
類似性行列:blosum

処理時間:0.1秒
【0215】
1.7F3 Vkと6C12 Vk
アライメントを行った長さ=112 ギャップ=0
同一性=102(91%) 類似性=5(4%)

2.7F3 Vkと12D4 Vk
アライメントを行った長さ=112 ギャップ=0
同一性=103(91%) 類似性=4(3%)

3.6C12 Vkと12D4 Vk
アライメントを行った長さ=112 ギャップ=0
同一性=104(92%) 類似性=4(3%)
【0216】
(iv)可変重鎖タンパク質配列の解析
7F3、12D4及び6C12の可変重鎖タンパク質配列のアライメントを図14に示す。
Clustal W(1.4)マルチプル配列アライメント解析により以下の結果が得られた:
3つの配列のアライメントを行った アライメントスコア=1432
挿入したギャップ=2 保存された同一性=51

ペアワイズアライメントモード:Slow
ペアワイズアライメントパラメータ:
オープンギャップペナルティ=10.0 伸長ギャップペナルティ=0.1
類似性行列:blosum

マルチプルアライメントパラメータ:
オープンギャップペナルティ=10.0 伸長ギャップペナルティ=0.1
後発多様性=40% ギャップ距離=8
類似性行列:blosum

処理時間:0.1秒
【0217】
1.7F3 Vhと6C12 Vh
アライメントを行った長さ=121 ギャップ=0
同一性=107(88%) 類似性=6(4%)

2.7F3 Vhと12D4 Vh
アライメントを行った長さ=121 ギャップ=2
同一性=52(42%) 類似性=25(20%)

3.6C12 Vhと12D4 Vh
アライメントを行った長さ=121 ギャップ=2
同一性=54(44%) 類似性=25(20%)
【0218】
当業者であれば、広く記載された本発明の精神又は範囲を逸脱することなく、特定の実施形態に示したように、本発明に種々の変更及び/又は改変をなしうることは明らかであろう。従って、本発明の実施形態は、あらゆる点において例示目的であって限定を意図するものではないと考えられよう。
【0219】
参考文献
1.Gerard, C. and N.P. Gerard, C5A anaphylatoxin and its seven transmembrane-segment receptor. Annual Review of Immunology, 1994. 12: p. 775-808.
2.Murdoch, C. and A. Finn, Chemokine receptors and their role in inflammation and infectious diseases. Blood, 2000. 95(10): p. 3032-43.
3.Watanabe, H., et al., Analysis of C5a receptor by monoclonal antibody. Journal of Immunological Methods, 1995. 185(1): p. 19-29.
4.Pellas, T.C., et al., Novel C5a receptor antagonists regulate neutrophil functions in vitro and in vivo. Journal of Immunology, 1998. 160(11): p. 5616-21.
5.Konteatis, Z.D., et al., Development of C5a receptor antagonists. Differential loss of functional responses. Journal of Immunology, 1994. 153(9): p. 4200-5.
6.Kaneko, Y., et al., Antagonistic peptides against human anaphylatoxin C5a. Immunology, 1995. 86(1): p. 149-54.
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8.Campbell, J.J., et al., Biology of chemokine and classical chemoattractant receptors: differential requirements for adhesion-triggering versus chemotactic responses in lymphoid cells. J Cell Biol, 1996. 134(1): p. 255-66.
9.Heath, H., et al., Chemokine receptor usage by human eosinophils. The importance of CCR3 demonstrated using an antagonistic monoclonal antibody. J Clin Invest, 1997. 99(2): p. 178-84.
10.Ponath, P.D., et al., Molecular cloning and characterization of a human eotaxin receptor expressed selectively on eosinophils [see comments]. J Exp Med, 1996. 183(6): p. 2437-48.
11.Ponath, P.D., et al., Cloning of the human eosinophil chemoattractant, eotaxin. Expression, receptor binding, and functional properties suggest a mechanism for the selective recruitment of eosinophils. J Clin Invest, 1996. 97(3): p. 604-12.
【受託番号】
【0220】
1: ECACC 00110609 (ハイブリドーマ7F3)
2: ECACC 02090226 (ハイブリドーマ6C12(6C12 M12))
3: ECACC 02090227 (ハイブリドーマ12D4(12D4−P9))
【配列表フリーテキスト】
【0221】
配列番号2〜13: PCRプライマー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
N末端ドメイン以外の1又は複数のC5aRの細胞外ループと反応し、C5aのC5aRへの結合を低減又は阻害する抗体。
【請求項2】
C5aRの第2の細胞外ループ(残基175〜206)を含むエピトープと反応するものである、請求項1記載の抗体。
【請求項3】
モノクローナル抗体7F3と同じC5aRのエピトープと反応し、C5aのC5aRへの結合を低減又は阻害する抗体。
【請求項4】
モノクローナル抗体6C12と同じC5aRのエピトープと反応し、C5aのC5aRへの結合を低減又は阻害する抗体。
【請求項5】
モノクローナル抗体12D4と同じC5aRのエピトープと反応し、C5aのC5aRへの結合を低減又は阻害する抗体。
【請求項6】
C5aRに結合し、モノクローナル抗体7F3のC5aRへの結合を競合的に阻害する抗体。
【請求項7】
C5aRに結合し、モノクローナル抗体6C12のC5aRへの結合を競合的に阻害する抗体。
【請求項8】
C5aRに結合し、モノクローナル抗体12D4のC5aRへの結合を競合的に阻害する抗体。
【請求項9】
比較結合特異性が、C5aR又はC5aRの細胞外ループを含むポリペプチドの存在下における抗体−抗体競合アッセイにより決定される、請求項6〜8のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項10】
配列番号19及び配列番号21にそれぞれ示される軽鎖及び/又は重鎖配列と実質的に同じ配列を含み、C5aのC5aRへの結合を低減又は阻害する抗体。
【請求項11】
配列番号26、配列番号27又は配列番号28にそれぞれ示される可変重鎖CDR1、CDR2又はCDR3ループ配列と実質的に同じである少なくとも1つのCDRループ配列を含み、C5aのC5aRへの結合を低減又は阻害する抗体。
【請求項12】
配列番号26、配列番号27及び配列番号28にそれぞれ示される可変重鎖CDR1、CDR2又はCDR3ループ配列と実質的に同じである少なくとも2つのCDRループ配列を含む、請求項11記載の抗体。
【請求項13】
配列番号19に示される可変軽鎖配列のアミノ酸残基24〜39、55〜61又は94〜102により実質的に特定される少なくとも1つのCDRループ配列をさらに含む、請求項11又は12記載の抗体。
【請求項14】
配列番号19に示される可変軽鎖配列のアミノ酸残基24〜39、55〜61及び94〜102により実質的に特定される少なくとも2つのCDRループ配列を含む、請求項13記載の抗体。
【請求項15】
配列番号15及び配列番号17にそれぞれ示される軽鎖及び/又は重鎖配列と実質的に同じ配列を含み、C5aのC5aRへの結合を低減又は阻害する抗体。
【請求項16】
配列番号29、配列番号30又は配列番号31にそれぞれ示される可変重鎖CDR1、CDR2又はCDR3ループ配列と実質的に同じである少なくとも1つのCDRループ配列を含み、C5aのC5aRへの結合を低減又は阻害する抗体。
【請求項17】
配列番号29、配列番号30及び配列番号31にそれぞれ示される可変重鎖CDR1、CDR2又はCDR3ループ配列と実質的に同じである少なくとも2つのCDRループ配列を含む、請求項16記載の抗体。
【請求項18】
配列番号15に示される可変軽鎖配列のアミノ酸残基24〜39、55〜61又は94〜102により実質的に特定される少なくとも1つのCDRループ配列をさらに含む、請求項16又は17記載の抗体。
【請求項19】
配列番号15に示される可変軽鎖配列のアミノ酸残基24〜39、55〜61及び94〜102により実質的に特定される少なくとも2つのCDRループ配列を含む、請求項18記載の抗体。
【請求項20】
配列番号23及び配列番号25にそれぞれ示される軽鎖及び/又は重鎖配列と実質的に同じ配列を含み、C5aのC5aRへの結合を低減又は阻害する抗体。
【請求項21】
配列番号32、配列番号33又は配列番号34にそれぞれ示される可変重鎖CDR1、CDR2又はCDR3ループ配列と実質的に同じである少なくとも1つのCDRループ配列を含み、C5aのC5aRへの結合を低減又は阻害する抗体。
【請求項22】
配列番号32、配列番号33及び配列番号34にそれぞれ示される可変重鎖CDR1、CDR2又はCDR3ループ配列と実質的に同じである少なくとも2つのCDRループ配列を含む、請求項21記載の抗体。
【請求項23】
配列番号23に示される可変軽鎖配列のアミノ酸残基24〜39、55〜61又は94〜102により実質的に特定される少なくとも1つのCDRループ配列をさらに含む、請求項21又は22記載の抗体。
【請求項24】
配列番号23に示される可変軽鎖配列のアミノ酸残基24〜39、55〜61及び94〜102により実質的に特定される少なくとも2つのCDRループ配列を含む、請求項23記載の抗体。
【請求項25】
C5a以外の走化因子リガンドによる好中球の活性化をも阻害する、請求項1〜24のいずれか1項に記載の抗体
【請求項26】
モノクローナル抗体又は組換え抗体である、請求項1〜25のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項27】
キメラ抗体又はヒト化抗体である、請求項1〜25のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項28】
クラスIgG2a又はクラスIgG3抗体である、請求項1〜27のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項29】
モノクローナル抗体7F3、モノクローナル抗体6C12及びモノクローナル抗体12D4からなる群より選択されるモノクローナル抗体。
【請求項30】
ECACCに受託番号00110609で寄託されているハイブリドーマ。
【請求項31】
ECACCに受託番号02090226で寄託されているハイブリドーマ。
【請求項32】
ECACCに受託番号02090227で寄託されているハイブリドーマ。
【請求項33】
請求項1〜29のいずれか1項に記載の抗体と治療剤とを含む複合体。
【請求項34】
治療剤がトキシンである、請求項33記載の複合体。
【請求項35】
トキシンがシュードモナスエキソトキシン又はその誘導体である、請求項33記載の複合体。
【請求項36】
請求項1〜29のいずれか1項に記載の抗体と検出用標識を含む複合体。
【請求項37】
標識が、放射性標識、蛍光標識、酵素標識及び造影剤からなる群より選択される、請求項36記載の複合体。
【請求項38】
請求項1〜29のいずれか1項に記載の抗体をコードする配列を含む、単離された核酸分子。
【請求項39】
請求項1〜29のいずれか1項に記載の抗体と薬学的に許容される担体を含む組成物。
【請求項40】
C5aR含有細胞とそのリガンドとの相互作用を阻害する方法であって、該細胞を請求項1〜29のいずれか1項に記載の抗体に暴露するステップを含む、上記方法。
【請求項41】
細胞においてC5aR活性を阻害する方法であって、該細胞を請求項1〜29のいずれか1項に記載の抗体に暴露するステップを含む、上記方法。
【請求項42】
被験体における好中球の移動に関する疾患の治療方法であって、該被験体に請求項1〜29のいずれか1項に記載の抗体を投与するステップを含む、上記方法。
【請求項43】
被験体における好中球の移動に関する疾患の診断方法であって、該被験体から得たサンプルと請求項36又は37記載の複合体とを接触させるステップ、及び該複合体と該サンプルとの免疫特異的結合を検出するステップを含む、上記方法。
【請求項44】
被験体から得た組織又は液体の組織学的標本又は細分画を用いてin vitroで実施する、請求項43記載の方法。
【請求項45】
in vivoで実施する、請求項43記載の方法。
【請求項46】
被験体における好中球の移動に関する疾患の診断方法であって、造影剤で標識した請求項1〜19のいずれか1項に記載の抗体を、被験体において抗体とC5aR提示細胞の複合体が形成されるような条件下にて該被験体に投与するステップ、及び該複合体を画像化するステップを含む、上記方法。
【請求項47】
疾患が免疫病理学的疾患である、請求項42〜46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
治療剤を被験体の炎症部位に送達する方法であって、該被験体に請求項33〜35のいずれか1項に記載の複合体を投与するステップを含む、上記方法。
【請求項49】
C5aRを提示する細胞に遺伝物質を導入する方法であって、該細胞と請求項1〜29のいずれか1項に記載の抗体とを接触させるステップを含み、該抗体が遺伝物質と結合又は会合されているものである、上記方法。
【請求項50】
C5aRを提示する細胞が、顆粒球、白血球(単球、マクロファージ、好塩基球及び好酸球など)、肥満細胞、並びにリンパ球(T細胞など)、樹状細胞、非骨髄性細胞(内皮細胞及び平滑筋細胞など)からなる群より選択される、請求項49記載の方法。
【請求項51】
被験体における好中球の移動に関する疾患の治療方法であって、請求項1〜29のいずれか1項に記載の抗体をコードするポリヌクレオチドを該被験体の細胞に導入するステップを含み、該抗体がin vivoで発現されるものである、上記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9a】
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【図9b】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−51323(P2010−51323A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−271989(P2009−271989)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【分割の表示】特願2003−562155(P2003−562155)の分割
【原出願日】平成15年1月24日(2003.1.24)
【出願人】(504280300)ジーツー セラピーズ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】