抗IL1−β抗体の併用療法
本発明は、治療上有効量の抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片と、少なくとも1種の抗糖尿病薬とを含む新規な組み合わせに関する。抗糖尿病薬は、インスリンシグナル伝達経路モジュレーター、例えば、タンパク質チロシンホスファターゼ(PTPases)阻害剤、非低分子模倣化合物およびグルタミン−フルクトース−6−リン酸アミドトランスフェラーゼ(GFAT)阻害剤、DPP−IV阻害剤、肝グルコース産生の調節異常に作用する薬剤、例えば、グルコース−6−ホスファターゼ(G6Pase)阻害剤、フルクトース−1,6−ビスホスファターゼ(F−1,6−BPase)阻害剤、グリコーゲンホスホリラーゼ(GP)阻害剤、グルカゴン受容体アンタゴニストおよびホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PEPCK)阻害剤、ピルビン酸デヒドロゲナーゼキナーゼ(PDHK)阻害剤、インスリン感受性増強薬、インスリン分泌促進薬、α−グルコシダーゼ阻害剤、胃内容排出阻害剤、インスリンおよびα2−アドレナリンアンタゴニストからなる群より選択することができ、特にIL1βが介在する代謝症状、例えば、グルコース耐性異常(IGT)の症状、空腹時血漿グルコース異常の症状、代謝性アシドーシス、ケトーシス、関節炎、肥満および骨粗鬆症、特に糖尿病、具体的には1型糖尿病または2型糖尿病の予防、進行遅延または治療において、抗IL−1β抗体またはその抗原結合性断片と、少なくとも1種の抗糖尿病薬とを同時に、別々に、または、続けて使用する。本発明はまた、本発明の組み合わせを含む医薬組成物、並びに、IL1βが介在する代謝症状(例えば、糖尿病)の予防、進行遅延もしくは治療のために、または、ベータ細胞機能の機能改善のために当該組み合わせを使用する処置方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療上有効量の抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片と、少なくとも1種の抗糖尿病薬とを含む新規な組み合わせに関する。抗糖尿病薬は、インスリンシグナル伝達経路モジュレーター、例えば、タンパク質チロシンホスファターゼ(PTPases)阻害剤、非低分子模倣化合物およびグルタミン−フルクトース−6−リン酸アミドトランスフェラーゼ(GFAT)阻害剤、DPP−IV阻害剤、肝グルコース産生の調節異常に作用する薬剤、例えば、グルコース−6−ホスファターゼ(G6Pase)阻害剤、フルクトース−1,6−ビスホスファターゼ(F−1,6−BPase)阻害剤、グリコーゲンホスホリラーゼ(GP)阻害剤、グルカゴン受容体アンタゴニストおよびホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PEPCK)阻害剤、ピルビン酸デヒドロゲナーゼキナーゼ(PDHK)阻害剤、インスリン感受性増強薬、インスリン分泌促進薬、α−グルコシダーゼ阻害剤、胃内容排出阻害剤、インスリンおよびα2−アドレナリンアンタゴニストからなる群より選択することができ、特にIL1βが介在する代謝症状、例えば、グルコース耐性異常(IGT)の症状、空腹時血漿グルコース異常の症状、代謝性アシドーシス、ケトーシス、関節炎、肥満および骨粗鬆症、特に糖尿病、具体的には1型糖尿病または2型糖尿病の予防、進行遅延または治療において、抗IL−1β抗体またはその抗原結合性断片と、少なくとも1種の抗糖尿病薬とを同時に、別々に、または、続けて使用する。本発明はまた、本発明の組み合わせを含む医薬組成物、並びに、IL1βが介在する代謝症状(例えば、糖尿病)の予防、進行遅延もしくは治療のために、または、ベータ(β)細胞機能の機能改善のために当該組み合わせを使用する処置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インターロイキン1(IL1)は、免疫系の細胞によって産生され、炎症応答の急性期の介在物質として作用するサイトカインである。IL1、特にIL1βの不適切な産生または過剰産生は、様々な疾患や障害、例えば、敗血症、敗血症性もしくは内毒素性ショック、アレルギー、喘息、虚血、卒中、関節リウマチおよび前糖尿病または糖尿病の病理と関連している。前糖尿病または糖尿病に関しては、異なる人種での研究から、グルコース耐性が正常な被験者や低下した被験者では、膵臓のβ細胞が経口グルコース耐性の主要な決定因子であることが判明しており、また、全ての集団で、正常からグルコース耐性異常への進行とこれに続く2型糖尿病への進行が、インスリン感受性の低下やβ細胞機能の低下と関連していることが判明している(非特許文献1)。
【0003】
糖尿病等のIL1、特にIL1βに伴う疾患または症状を治療するために、代替または改良された治療方法が常に求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Kahn, S. E., 2003, Diabetologia 46(1):3-19
【発明の概要】
【0005】
本発明は、一つの態様において、治療上有効量の抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片と、少なくとも1種の抗糖尿病薬と含む組み合わせを提供する。
【0006】
本発明は、さらなる態様において、2型糖尿病の予防、進行遅延または治療に使用する、治療上有効量の抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片と、少なくとも1種の抗糖尿病薬とを含む組み合わせを提供する。
【0007】
本発明また、膵臓のβ細胞の機能を向上させるのに使用する、治療上有効量の抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片と、少なくとも1種の抗糖尿病薬とを含む組み合わせを提供する。
【0008】
また、さらなる態様において、治療上有効量の抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片と、少なくとも1種の抗糖尿病薬と抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片と、少なくとも1種の抗糖尿病薬と、薬学的に許容される担体、賦形剤または希釈剤とを含む医薬組成物を提供する。
【0009】
別の態様では、本発明は、2型糖尿病を予防、進行遅延もしくは治療する方法、または、患者のβ細胞機能を向上させる方法であって、当該方法を必要とする患者に、治療上有効量の抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片と、少なくとも1種の抗糖尿病薬とを含む組み合わせを投与することを含む前記方法を提供する。
【0010】
本発明また、さらなる態様において、治療上有効量の抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片と、少なくとも1種の抗糖尿病薬と、使用説明書とを含むキットを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1A】図1Aは、用量漸増評価を示す。
【図1B】図1Bは、用量応答の直線的な低下傾向を示す。
【図2A】図2Aは、OGTT−グルコースを示す。
【図2B】図2Bは、OGTT−C−ペプチドを示す。
【図2C】図2Cは、OGTT−グルカゴンを示す。
【図3A】図3Aは、ACZ885の静脈内単回投与(10mg/kg)を示す。
【図3B】図3Bは、空腹時血漿グルコースを示す。
【図4A】図4Aは、空腹時血漿グルコースを示す。
【図4B】図4Bは、ピーク血漿グルコースを示す。
【図4C】図4Cは、ヘモグロビンA1cを示す。
【図5】図5は、ACZ885の重鎖可変領域(配列番号1)の核酸配列および推定アミノ酸配列を示す。
【図6】図6は、ACZ885の軽鎖可変領域(配列番号2)の核酸配列および推定アミノ酸配列を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の組み合わせは、治療上有効量の抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片と、少なくとも1種の抗糖尿病薬とを含むものである。
【0013】
抗糖尿病薬は、インスリンシグナル伝達経路モジュレーター、例えば、タンパク質チロシンホスファターゼ(PTPases)阻害剤、非低分子模倣化合物およびグルタミン−フルクトース−6−リン酸アミドトランスフェラーゼ(GFAT)阻害剤、DPP−IV阻害剤、肝グルコース産生の調節異常に作用する薬剤、例えば、グルコース−6−ホスファターゼ(G6Pase)阻害剤、フルクトース−1,6−ビスホスファターゼ(F−1,6−BPase)阻害剤、グリコーゲンホスホリラーゼ(GP)阻害剤、グルカゴン受容体アンタゴニストおよびホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PEPCK)阻害剤、ピルビン酸デヒドロゲナーゼキナーゼ(PDHK)阻害剤、インスリン感受性増強薬、インスリン分泌促進薬、α−グルコシダーゼ阻害剤、胃内容排出阻害剤、インスリンおよびα2−アドレナリンアンタゴニスト、または、このような化合物の薬学的に許容される塩からなる群より選択することができる。
【0014】
好ましくは、抗糖尿病薬は、GSK−3阻害剤、レチノイドX受容体(RXR)アゴニスト、ベータ(β)−3ARアゴニスト、インスリン、UCPアゴニスト、抗糖尿病性チアゾリジンジオン(グリタゾン)、非グリタゾン系PPARγアゴニスト、PPARγ/PPARαデュアルアゴニスト、抗糖尿病性バナジウム含有化合物、ビグアナイド薬(例えば、メトホルミン)からなる群より選択される。
【0015】
用語「抗糖尿病薬」は、以下、併用相手と云う場合もある。本明細書中、用語「抗糖尿病薬」とは、IL−1介在性疾患または症状、例えば、1型糖尿病または2型糖尿病等を治療するのに適した薬剤を含むことを意味する。
【0016】
併用相手と組み合わされる抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片は、IL1βへ特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片である。
【0017】
好ましくは、抗体またはその抗原結合性断片は、ヒトIL1βへ結合するヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片である。
【0018】
好ましくは、抗体またはその抗原結合性断片は、以下の特性のうち少なくとも1つを有する:
a)IL1βリガンドまたはIL1β受容体へ結合する;
b)IL1βに対する選択性を有する;
c)3×10−10M以下のKdでヒトIL1βへ結合する;
d)IL1経路の活性化を阻害する。
【0019】
好ましくは、抗体またはその抗原結合性断片は、ヒトIL1βリガンドとIL−1β受容体との結合を阻害し、かつ、以下の特性のうち少なくとも1つを有する:
a)IL1βリガンドまたはIL1β受容体への結合に関して基準抗体と交叉競合する;
b)IL1βリガンドまたはIL1β受容体への結合に関して基準抗体と競合する;
c)基準抗体と同一のIL1βリガンドのエピトープまたはIL1β受容体へ結合する;
d)基準抗体と実質的に同一のKdでIL1βリガンドまたはIL1β受容体へ結合する;
e)基準抗体と実質的に同一の解離速度(off rate)でIL1βリガンドまたはIL1β受容体へ結合する;
(ここで、基準抗体には、超可変領域であるCDR1、CDR2およびCDR3を順番に含む少なくとも1つの免疫グロブリン重鎖可変ドメイン(VH)を含む抗原結合部位が含まれ、CDR1のアミノ酸配列はVal−Tyr−Gly−Met−Asnであり、CDR2のアミノ酸配列はIle−Ile−Trp−Tyr−Asp−Gly−Asp−Asn−Gln−Tyr−Tyr−Ala−Asp−Ser−Val−Lys−Glyであり、CDR3のアミノ酸配列はAsp−Leu−Arg−Thr−Gly−Proである);
および、これらに直接相当するもの。
【0020】
好ましくは、抗体またはその抗原結合性断片はヒトIL1βの結合を阻害し、抗体またはその抗原結合性断片には、
a)超可変領域であるCDR1、CDR2およびCDR3を順番に含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン(VH)であって、CDR1のアミノ酸配列はVal−Tyr−Gly−Met−Asnであり、CDR2のアミノ酸配列はIle−Ile−Trp−Tyr−Asp−Gly−Asp−Asn−Gln−Tyr−Tyr−Ala−Asp−Ser−Val−Lys−Glyであり、CDR3のアミノ酸配列はAsp−Leu−Arg−Thr−Gly−Proである、前記ドメインと
b)超可変領域であるCDR1’、CDR2’およびCDR3’を順番に含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン(VL)であって、CDR1’のアミノ酸配列はArg−Ala−Ser−Gln−Ser−Ile−Gly−Ser−Ser−Leu−Hisであり、CDR2’のアミノ酸配列はAla−Ser−Gln−Ser−Phe−Serであり、CDR3’のアミノ酸配列はGln−Gln−Arg−Ser−Asn−Trp−Met−Phe−Proである、前記ドメインと、
これらに直接相当するもの
を含む少なくとも1つの抗原結合部位が含まれる。
【0021】
特に明記しない限り、本明細書中では、いずれのポリペプチド鎖もN末端で始まってC末端で終わるアミノ酸配列を有するものとして記載する。
【0022】
抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片は、好ましくはWO02/16436(引用により全内容が本明細書に含まれるものとする)に記載されているような抗体である。特に、本明細書中で参照する配列番号は全て、WO0216436に実際に開示されている配列と関連する。
【0023】
抗体またはその抗原結合性断片がVHおよびVLドメインの双方を含む場合、これらのドメインは同一のポリペプチド分子上に存在してもよく、あるいは、好ましくは各ドメインは異なる鎖上に存在してもよく、VHドメインは免疫グロブリン重鎖またはその断片の一部であり、VLは免疫グロブリン軽鎖またはその断片の一部である。
【0024】
抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片とは、IL1β抗原(単独でも、他の分子、例えば足場系の分子と会合した状態でも)と結合または相互作用もしくは会合可能な分子を意味する。結合反応の判定は、標準的な方法(定性系のアッセイ)、例えば、IL1βとその受容体との結合の阻害を判定するバイオアッセイ、または、特異性に関連性はないが同一のアイソタイプである抗体(例えば、抗CD25抗体)を使用するネガティブコントロール試験を基準とした任意の種類の結合アッセイによって行うことができる。有利には、抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片とIL1βとの結合は、競合結合アッセイで判定可能である。
【0025】
抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片の例としては、B細胞またはハイブリドーマによって産生されるような抗体や断片およびキメラ抗体、CDRグラフト化もしくはヒト抗体、または、その任意の断片、例えば、F(ab’)2およびFab断片、並びに、一本鎖抗体またはシングルドメイン抗体が挙げられる。
【0026】
一本鎖抗体は、抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメインを、通常10〜30アミノ酸、好ましくは15〜25アミノ酸からなるペプチドリンカーによって共有結合したものからなる。従って、このような構造には重鎖および軽鎖の定常部は含まれず、小型のペプチドスペーサーであれば、定常部丸ごとよりも抗原性が低いはずであると考えられる。
【0027】
「キメラ抗体」とは、重鎖または軽鎖または双方の定常領域がヒト由来であり、重鎖および軽鎖双方の可変ドメインが非ヒト(例えば、マウス)由来であるか、または、ヒト由来であっても異なるヒト抗体に由来する抗体を意味する。
【0028】
「CDRグラフト化抗体」とは、超可変領域(CDR)がドナー抗体、例えば、非ヒト(例えば、マウス)抗体または異なるヒト抗体に由来し、免疫グロブリンの残りの部分(例えば、定常領域や、可変ドメインの高度に保存された部分、即ち、フレームワーク領域)の全てまたは実質的に全てがアクセプター抗体(例えば、ヒト由来の抗体)に由来する抗体を意味する。しかしながら、CDRグラフト化抗体は、フレームワーク領域中(例えば、超可変領域に隣接するフレームワーク領域の部分)にドナー配列のアミノ酸を数個含んでいてもよい。
【0029】
「ヒト抗体」とは、重鎖および軽鎖双方の定常領域および可変領域が全てヒト由来であるか、または、ヒト由来の配列と実質的に同一である抗体を意味し、必ずしも同一の抗体に由来するわけではなく、マウス免疫グロブリンの可変部および定常部の遺伝子がヒトの対応物と置き換わっているマウス産生抗体、例えば、一般的に見てEP0546073B1、USP5545806、USP5569825、USP5625126、USP5633425、USP5661016、USP5770429、EP0438474B1およびEP0463151B1に記載のものが挙げられる。
【0030】
従って、好ましいキメラ抗体では、重鎖および軽鎖双方の可変ドメインがヒト由来であり、例えば、配列番号1および配列番号2に示すACZ885抗体(カナキヌマブとも呼ばれる)の重鎖および軽鎖可変ドメインである。
【0031】
本明細書中、用語「抗原結合性断片」とは、IL1β抗原(単独でも、他の分子、例えば足場系の分子と会合した状態でも)と結合または相互作用もしくは会合する能力を保持する1つ以上の抗体断片を云う。抗体の抗原結合機能は、完全長抗体の断片でも果たせることが判っている。抗体の、用語「抗原結合性断片」に包含される結合性断片の例としては以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:
i)抗原結合性断片であるVL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる一価断片であるFab断片;
ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結した2つのFab断片を含む二価断片であるF(ab’)2断片;
iii)VHおよびCH1ドメインからなるFd断片;
iv)抗体(Ab)の同一アームのVLおよびVHドメインからなるFv断片;
v)VHドメインからなるdAb断片(Ward et al., 1989, Nature341;544-546);および
vi)単離された相補性決定領域(CDR)。
【0032】
好ましくは、抗原結合性断片はACZ885に由来する。
【0033】
一本鎖抗体も、抗体の、用語「抗原結合性断片」に包含されるものとする。一本鎖抗体の他の形態、例えばダイアボディも包含される。ダイアボディは二価であり、VLおよびVHドメインが一本のポリペプチド鎖上で発現する二重特異性抗体であるが、同一鎖上の2つのドメインが対合してしまうほど短いリンカーを使用しているため、当該ドメインを強制的に別の鎖の相補性ドメインと対合させて2つの抗原結合部位を作出する(Holliger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6444-6448)。
【0034】
定常領域ドメインには、好ましくは、適切なヒト定常領域ドメイン、例えば「Sequences of Proteins of Immunological Interest」Kabat E. A. et al(米国保健福祉省、公衆衛生局、国立衛生研究所)に記載されているものも含まれる。超可変領域は任意の種類のフレームワーク領域と連結可能であるが、好ましくはヒト由来である。適切なフレームワーク領域は、Kabat E. A. et al.(前掲)に記載されている。好ましい重鎖フレームワークはヒト重鎖フレームワークであり、例えば、配列番号1に示すACZ885抗体の重鎖フレームワークである。FR1、FR2、FR3およびFR4領域から順番になる。同様に、配列番号2には、FR1’、FR2’、FR3’およびFR4’領域から順番になる、好ましいACZ885軽鎖フレームワークを示す。
【0035】
従って、本発明は、1位のアミノ酸で始まり118位のアミノ酸で終わる配列番号1に示すアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を有する第一ドメインを含むか、または、前記第一ドメインと、1位のアミノ酸で始まり107位のアミノ酸で終わる配列番号2に示すアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を有する第二ドメインとを含む、少なくとも1つの抗原結合部位を含む抗体またはその抗原結合性断片を含む組み合わせを提供する。
【0036】
全てのヒトに元々存在するタンパク質に対して生成したモノクローナル抗体は、通常非ヒトシステム(例えば、マウス)で開発されたものであり、そのままでは通常非ヒトタンパク質である。その結果、ハイブリドーマによって産生されるような異種抗体をヒトへ投与した場合、主に異種免疫グロブリンの定常部によって仲介される望ましくない免疫応答が惹起される。このため、長期間にわたって投与することができないため、このような抗体の利用には明らかに限界がある。従って、ヒトへ投与した際に実質的な同種異系応答を惹起しにくい、一本鎖抗体、シングルドメイン抗体、キメラ抗体、CDRグラフト化抗体、とりわけヒト抗体を使用するのが特に好ましい。
【0037】
以上のことから、本発明のより好ましい抗体または抗原結合性断片は、少なくとも以下のものを含むヒト抗IL1β抗体:
a)以下のものを含む免疫グロブリン重鎖またはその断片:
(i)超可変領域CDR1、CDR2およびCDR3を順番に含む可変ドメインと、
(ii)ヒト重鎖の定常部またはその断片
(ここで、CDR1のアミノ酸配列はVal−Tyr−Gly−Met−Asnであり、CDR2のアミノ酸配列はIle−Ile−Trp−Tyr−Asp−Gly−Asp−Asn−Gln−Tyr−Tyr−Ala−Asp−Ser−Val−Lys−Glyであり、CDR3のアミノ酸配列はAsp−Leu−Arg−Thr−Gly−Proである);および
b)以下のものを含む免疫グロブリン軽鎖またはその断片:
(i)上記超可変領域と必要に応じてCDR1’、CDR2’およびCDR3’の超可変領域も順番に含む可変ドメインと、
(ii)ヒト軽鎖の定常部またはその断片
(ここで、CDR1’のアミノ酸配列はArg−Ala−Ser−Gln−Ser−Ile−Gly−Ser−Ser−Leu−Hisであり、CDR2’のアミノ酸配列はAla−Ser−Gln−Ser−Phe−Serであり、CDR3’のアミノ酸配列はHis−Gln−Ser−Ser−Ser−Leu−Proである);
並びに、これらに直接相当するものから選択される。
【0038】
あるいは、当該組み合わせの抗体または抗原結合性断片は、以下のものを含む抗原結合部位を含む一本鎖結合性分子:
a)超可変領域CDR1、CDR2およびCDR3を順番に含む第一ドメイン(当該超可変領域は配列番号1に示すアミノ酸配列を有する)、
b)超可変領域CDR1’、CDR2’およびCDR3’を含む第二ドメイン(当該超可変領域は配列番号2に示すアミノ酸配列を有する)、および
c)第一ドメインのN末端と第二ドメインのC末端とへ結合した、または、第一ドメインのC末端と第二ドメインのN末端とへ結合したペプチドリンカー;
並びに、これらに直接相当するものから選択することも可能である。
【0039】
当該技術分野で周知なように、アミノ酸配列の軽微な変化、例えば、1個、数個または複数個のアミノ酸の欠失、付加または置換によって、元のタンパク質と実質的に同一の特性を有するアレル体を誘導することができる。
【0040】
抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片は、天然および/または非天然アミノ酸を含むことができる。本明細書中、用語「天然および非天然アミノ酸」とは、合成類似体または天然由来ペプチド(D体およびL体を含む)を調製する際にペプチド化学の当業者によって一般に利用される、天然由来のアミノ酸と、タンパク質を構成しない他のα−アミノ酸との両方を云う。天然由来のアミノ酸はグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、メチオニン、トレオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、シスレイン、プラリン、ヒスチジン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、アルギニン、オルニチン、リシンおよびγ−カルボキシグルタミン酸である。非天然α−アミノ酸の例としては、ヒドロキシリシン、シトルリン、キヌレニン、メチオニンスルフェート、アミノアラニン、フェニルグリシン、ビニルアラニン、その他が挙げられる。
【0041】
本発明では、配列を最適にアライメントしてアミノ酸配列中のギャップや挿入を非同一残基としてカウントした場合に、少なくとも80%同一のアミノ酸残基を似たような位置に有していれば、アミノ酸配列は互いに少なくとも80%相同であると考える。
【0042】
ヒトIL1βとその受容体との結合の阻害は、様々なアッセイ、例えばWO02/16436に記載のアッセイで簡便に試験可能である。
【0043】
本明細書中、用語「同程度」とは、基準分子と等価分子とが、統計的に見て、上述のアッセイの1つにおいて本質的に同一のIL1β結合阻害曲線を示すことを意味する。例えば、本発明のIL1β結合性分子は、典型的には、上述のようにアッセイした際に、IL1βとその受容体との結合の阻害に対して、対応の基準分子のIC50の±5倍以内、好ましくは実質的に同一のIC50を有する。
【0044】
例えば、使用するアッセイは、可溶性IL1受容体または標的エピトープと、抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片とによるIL1β結合の競合阻害アッセイであってよい。
【0045】
最も好ましくは、本発明の組み合わせに含まれる抗IL1β抗体は、少なくとも以下のものを含む:
a)1位のアミノ酸で始まり118位のアミノ酸で終わる配列番号1に示すアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を有する可変ドメインと、ヒト重鎖の定常部とを含む1つの重鎖;および
b)1位のアミノ酸で始まり107位のアミノ酸で終わる配列番号2に示すアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を有する可変ドメインと、ヒト軽鎖の定常部とを含む1つの軽鎖。
【0046】
最も好ましくは、本発明の組み合わせに含まれるIL1β結合性分子はACZ885である。
【0047】
ヒト重鎖の定常部はγ1、γ2、γ3、γ4、μ、α1、α2、δまたはε型であってよく、好ましくはγ型であり、より好ましくはγ1型であるのに対し、ヒト軽鎖の定常部はκまたはλ型(λ1、λ2およびλ3サブタイプを含む)であってよいが、好ましくはκ型である。これらの全ての定常部のアミノ酸配列はKabat et al.(前掲)に記載されている。
【0048】
本発明の抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片は、WO02/16436等に記載されているような組換えDNA技術によって生成可能である。
【0049】
抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片が、成熟ヒトIL1βのGlu64残基(成熟ヒトIL1βの残基Glu64はヒトIL1β前駆体の残基180に相当)を含むループを含むヒトIL1βの抗原性エピトープに対して結合特異性を有することも、本発明の範囲内である。このエピトープは、IL1ベータ受容体の認識部位の外側にあり、そのため、このエピトープに対する抗体(例えば、ACZ885抗体)が、ヒトIL1βとその受容体との結合を阻害できることは予想外である。従って、このような抗体またはその抗原結合性断片を糖尿病(特に1型または2型糖尿病)の治療に用いることは、本発明の組み合わせに含まれる。
【0050】
従って、さらなる実施態様において、本発明には、成熟ヒトIL1βの残基Glu64を含むループを含むヒトIL1βの抗原性エピトープに対する抗原結合特異性を有し、かつ、IL−1βとその受容体との結合を阻害し得る、糖尿病(特に1型または2型糖尿病)の治療ための抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片を含む組み合わせが含まれる。
【0051】
さらなる実施態様において、本発明は、抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片と、少なくとも1種の抗糖尿病薬とを含む組み合わせを意図し、
i)Glu64を含むループを含む成熟ヒトIL1βの抗原性エピトープに対する結合特異性を有し、かつ、IL1βとその受容体との結合を阻害し得る、糖尿病の予防および/または治療のための抗体またはその抗原結合性断片;
ii)Glu64を含むループを含む成熟ヒトIL1βの抗原性エピトープに対する結合特異性を有し、かつ、IL1βとその受容体との結合を阻害し得る抗体またはその抗原結合性断片の有効量を患者へ投与することを含む、患者の糖尿病を予防および/または治療する方法;
iii) Glu64を含むループを含む成熟ヒトIL1βの抗原性エピトープに対する結合特異性を有し、かつ、ヒトIL1βとその受容体との結合を阻害し得る抗体またはその抗原結合性断片を、薬学的に許容される賦形剤、希釈剤または担体と組み合わせて含む、患者の糖尿病を治療するための医薬組成物
を含む。
【0052】
本記載の目的では、抗体またはその抗原結合性断片が、ACZ885抗体と実質的に同程度にIL1βとその受容体との結合を阻害し得る場合、即ち、実施例で開示する標準的なBIAcore分析等で測定した解離平衡定数(KD)が10nM以下、例えば1nM以下、好ましくは100pM以下、より好ましくは50pM以下、より好ましくは40pM以下、より好ましくは30pM以下、より好ましくは約10pMである場合、抗体は「ヒトIL1βの結合を阻害し得る」。
【0053】
従って、さらなる態様において本発明は、IL1βへの結合のKDが約10nM、1nM、好ましくは100pM、より好ましくは50pM以下、より好ましくは40pM以下、より好ましくは30pM以下、より好ましくは約10pMであるIL1βへの抗体またはその抗原結合性断片の糖尿病(特に2型糖尿病)の治療への使用を提供する。本発明のこの態様には、Glu64を含むループを含む成熟ヒトIL1βの抗原決定基に対して結合特異性を有する上述したような高親和性抗体またはその抗原結合性断片についての使用、方法および組成物も含まれる。
【0054】
抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片には、保存的修飾を導入することが可能である。本明細書中、用語「保存的修飾」とは、抗IL1β抗体またはそのアミノ酸配列を含有する抗原結合性断片の結合特性に顕著に影響または変化を与えないアミノ酸修飾を指すものとする。このような保存的修飾としては、アミノ酸の置換、付加および欠失が挙げられる。修飾は、当該技術分野で公知の標準的な技術、例えば、部位特異的変異処理やPCRによる変異処理によって開示の抗体へ導入することができる。保存的アミノ酸置換とは、アミノ酸残基を類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えるものである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは当該技術分野で定義済みである。これらのファミリーとしては、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電の極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β分岐側鎖を有するアミノ酸(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が挙げられる。従って、開示の抗体またはその抗原結合性断片のCDR領域内の1個以上のアミノ酸残基を、同じ側鎖ファミリーの他のアミノ酸残基で置き換えることが可能であり、改変した抗体またはその抗原結合性断片を、保持されている機能について試験することが可能である。保持されている機能を試験するためのアッセイは当業者に公知である。様々な場合で、抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片の重鎖および軽鎖は、必要に応じてシグナル配列を含んでいてもよい。
【0055】
本発明の態様の一つによれば、IL1介在性疾患(特に1型および/または2糖尿病)を予防、進行遅延もしくは治療する方法、または、患者のベータ細胞機能を向上させる方法であって、当該方法を必要とする患者に、抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片と、少なくとも1種の抗糖尿病薬と含む組み合わせを治療上有効量で投与することを含む前記方法が提供される。
【0056】
本出願では、用語「IL1介在性疾患」には、直接的か間接的かに拘わらず、IL1が疾患または医学的症状において、その因果関係、発症、進行、残留または病理などの役割を果たす全ての疾患および医学的症状が包含される。このような疾患としては、敗血症、敗血症性もしくは内毒素性ショック、アレルギー、喘息、骨喪失、虚血、卒中、関節リウマチおよび糖尿病(例えば、1型糖尿病または2型糖尿病)が挙げられる。
【0057】
本発明の方法の一つの好ましい実施態様によれば、IL1介在性疾患は1型糖尿病および/または2型糖尿病である。
【0058】
本記載では、用語「治療」とは、予防または防止処置、並びに、治癒または疾患緩和処置の双方を指し、疾患に罹患する危険性のある患者または疾患に罹患した疑いのある患者、並びに、発症した患者または疾患もしくは医学的症状に罹患したと診断された患者の処置を含み、かつ、臨床上の再発を抑えることを含む。
【0059】
当該組み合わせの成分である抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片は、簡便には、非経口、静脈内(例えば、前肘(antercubital)静脈または他の末梢静脈)、筋肉内または皮下へ投与する。好ましくは、抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片は静脈内へ投与する。治療には、典型的には、本発明の抗体またはその抗原結合性断片を2〜3ヶ月に1回、好ましくは1ヶ月に1回、好ましくはより短い頻度(less frequently)(例えば週に1回)で投与することが含まれる。治療レジメンは医師により症例ごとに応じて決定、修正または変更可能である。
【0060】
本発明の組み合わせの成分である抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片は、従来の方法で製造可能である。
【0061】
抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片は、好ましくは、凍結乾燥された形態で提供する。即時投与の場合には、本発明の組み合わせのこの成分を適切な水性担体、例えば、注射用滅菌水または滅菌緩衝化生理食塩水に溶解する。ボーラス注射ではなく輸注(infusion)での投与用に溶液を大量に作るのが望ましいと考えられる場合には、製剤化の際にヒト血清アルブミンまたは患者自身のヘパリン化血液を生理食塩水へ添加するのが有利である。このような生理学的に不活性なタンパク質を過剰に存在させることで、輸液と一緒に使用される容器やチューブの壁に吸着して抗体が目減りするのを防ぐ。アルブミンを使用する場合、適切な濃度は生理食塩水溶液の0.5〜4.5重量%である。
【0062】
本発明の組み合わせのもう一方の成分は、少なくとも1種の抗糖尿病薬(上述したように併用相手とも云う)である。用語「抗糖尿病薬」は本明細書中では用語「抗糖尿病性化合物」と区別なく使用され、この2つは同じ意味を持つ、即ち、IL−1介在性疾患または症状(例えば、1型糖尿病および/または2型糖尿病等)を治療するのに適した併用相手を意味すると理解されたい。
【0063】
少なくとも1種の併用相手は、インスリンシグナル伝達経路モジュレーター、例えば、タンパク質チロシンホスファターゼ(PTPases)阻害剤、非低分子模倣化合物およびグルタミン−フルクトース−6−リン酸アミドトランスフェラーゼ(GFAT)阻害剤、肝グルコース産生の調節異常に作用する化合物、例えば、グルコース−6−ホスファターゼ(G6Pase)阻害剤、フルクトース−1,6−ビスホスファターゼ(F−1,6−BPase)阻害剤、グリコーゲンホスホリラーゼ(GP)阻害剤、グルカゴン受容体アンタゴニストおよびホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PEPCK)阻害剤、ピルビン酸デヒドロゲナーゼキナーゼ(PDHK)阻害剤、インスリン感受性増強薬、インスリン分泌促進薬、α−グルコシダーゼ阻害剤、胃内容排出阻害剤、インスリンおよびα2−アドレナリンアンタゴニスト、または、このような化合物の薬学的に許容される塩および必要に応じて少なくとも1種の薬学的に許容される担体からなる群より選択することができる。
【0064】
「PTPase阻害剤」の例としては、米国特許第6,057,316号、米国特許第6,001,867号、WO99/58518、WO99/58522、WO99/46268、WO99/46267、WO99/46244、WO99/46237、WO99/46236、WO99/15529およびPoucheret et al., Mol. Cell Biochem. 1998, 188, 73-80に開示のものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0065】
「非低分子模倣化合物」の例としては、Science1999, 284; 974-97(特にL−783,281)およびWO99/58127(特にCLX−901)に開示のもの挙げられるが、これらに限定されない。
【0066】
「GFAT阻害剤」の例としては、Mol. Cell. Endocrinol. 1997,135(1), 67-77に開示のもの挙げられるが、これらに限定されない。
【0067】
本明細書中、用語「G6Pase阻害剤」とは、G6Paseの活性を低下または阻害することにより、肝臓でのグリコーゲン合成を低下または阻害する化合物または組成物を意味する。このような化合物の例は、WO00/14090、WO99/40062、WO98/40385、EP682024およびDiabetes 1998, 47, 1630-1636に開示されている。
【0068】
本明細書中、用語「F−1,6−BPase阻害剤」とは、F−1,6−BPaseの活性を低下または阻害することにより、肝臓でのグリコーゲン合成を低下または阻害する化合物または組成物を意味する。このような化合物の例は、WO00/14095、WO99/47549、WO98/39344、WO98/39343およびWO98/39342に開示されている。
【0069】
本明細書中、用語「GP阻害剤」とは、GPの活性を低下または阻害することにより、肝臓でのグリコーゲン分解を低下または阻害する化合物または組成物を意味する。このような化合物の例は、EP978279、米国特許第5998463号、WO99/26659、EP846464、WO97/31901、WO96/39384、WO9639385に開示されており、特にProc. Natl. Acad Sci USA 1998, 95, 1776-1781に記載のCP−91149である。
【0070】
本明細書中、用語「グルカゴン受容体アンタゴニスト」は、WO98/04528に記載の化合物(特にBAY27−9955)や、Bioorg Med. Chem. Lett 1992, 2, 915-918(特にCP−99,711)、J. Med. Chem. 1998, 41, 5150-5157(特にNNC92−1687)およびJ. Biol Chem. 1999, 274; 8694-8697(特にL−168,049)に記載の化合物、また、US5,880,139、WO99/01423、US5,776,954、WO98/22109、WO98/22108、WO98/21957およびWO97/16442に開示の化合物に特に関する。
【0071】
本明細書中、用語「PEPCK阻害剤」とは、PEPCKの活性を低下または阻害することにより、肝臓でのグリコーゲン合成を低下または阻害する化合物または組成物を意味する。このような化合物の例は、米国特許第6,030,837号およびMol. Biol. Diabetes 1994, 2, 283-99に開示されている。
【0072】
本明細書中、用語「PDHK阻害剤」とは、ピルビン酸デヒドロゲナーゼキナーゼ阻害剤を意味し、Aicher et al., J. Med. Chem. 42 (1999) 2741-2746に開示の化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0073】
本明細書中、用語「インスリン感受性増強薬」とは、インスリンに対する組織感受性を増強する任意かつ全ての薬理学的に活性な化合物を意味する。インスリン感受性増強薬としては、例えば、GSK−3阻害剤、レチノイドX受容体(RXR)アゴニスト、ベータ−3ARアゴニスト、UCPアゴニスト、抗糖尿病性チアゾリジンジオン(グリタゾン)、非グリタゾン系PPARγアゴニスト、PPARγ/PPARαデュアルアゴニスト、抗糖尿病性バナジウム含有化合物およびビグアナイド薬(例えば、メトホルミン)が挙げられる。
【0074】
ビグアナイド薬(例えば、メトホルミン)は通常、500mg、750mg、850mg、1000mgおよび2000mg以上を含有する剤形で投与される。好ましくは、メトホルミンは1000mg/日以上の投与量で投与される。
【0075】
インスリン感受性増強薬は、好ましくは、抗糖尿病性チアゾリジンジオン、抗糖尿病性バナジウム含有化合物およびビグアナイド薬であるメトホルミンからなる群より選択される。
【0076】
一つの好ましい実施態様では、インスリン感受性増強薬はメトホルミンである。
【0077】
メトホルミン(ジメチルジグアニド)およびその塩酸塩の調製は最新技術であり、最初に開示したのはEmil A. WernerおよびJames Bell(J. Chem. Soc. 121, 1922, 1790-1794)である。メトホルミンは、GLUCOPHAGETM等の商標名で販売されている形態で使用が可能である。
【0078】
「GSK−3阻害剤」の例としては、WO00/21927およびWO97/41854に開示のものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0079】
「RXRアゴニスト」とは、RXRホモダイマーまたはヘテロダイマーと組み合わせた際に、当業者に公知のアッセイで測定してRXRの転写調節活性を増加させる化合物または組成物を意味し、このようなアッセイとしては、米国特許第4,981,784号、同第5,071,773号、同第5,298,429号、同第5,506,102号、WO89/05355、WO91/06677、WO92/05447、WO93/11235、WO95/18380、PCT/US93/04399、PCT/US94/03795およびCA2,034,220(引用により本明細書に含まれるものとする)に記載または開示の「同時トランスフェクション」または「シス−トランス」アッセイが挙げられるが、これらに限定されない。RXRアゴニストとしては、RXRをRARよりも優先的に活性化する化合物(即ち、RXR特異的アゴニスト)や、RXRとRARの両方を活性化する化合物(即ち、パンアゴニスト)が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、ある特定の細胞状況(cellular context)でのみRXRを活性化する化合物(即ち、部分アゴニスト)も挙げられる。以下の文献、特許および特許出願に開示または記載されたRXRアゴニスト活性を有する化合物も、引用によりに含まれるものとする:米国特許第5,399,586号および同第5,466,861号、WO96/05165、PCT/US95/16842、PCT/US95/16695、PCT/US93/10094、WO94/15901、PCT/US92/11214、WO93/11755、PCT/US93/10166、PCT/US93/10204、WO94/15902、PCT/US93/03944、WO93/21146、仮出願第60,004,897号および同第60,009,884号、Boehm, et al., J. Med. Chem. 38(16):3146-3155, 1994、Boehm, et al., J. Med. Chem. 37(18):2930-2941, 1994、Antras et al., J. Biol. Chem. 266:1157-1161 (1991)、Salazar-Olivo et al., Biochem. Biophys. Res. Commun.204:157-263 (1994)およびSafanova, Mol. Cell. Endocrin. 104:201-211 (1994)。RXR特異的アゴニストとしては、LG100268(即ち、2−[1−(3,5,5,8,8−ペンタメチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−2−ナフチル)−シクロプロピル]−ピリジン−5−カルボン酸)およびLGD1069(即ち、4−[(3,5,5,8,8−ペンタメチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−2−ナフチル)−2−カルボニル]−安息香酸)、並びに、これらの類似体、誘導体および薬学的に許容される塩が挙げられるが、これらに限定されない。LG100268およびLGD1069の構造および合成は、Boehm, et al., J. Med. Chem. 38(16):3146-3155, 1994(引用により本明細書に含まれるものとする)に開示されている。パンアゴニストとしては、ALRT1057(即ち、9−シスレチノイン酸)、並びに、その類似体、誘導体および薬学的に許容される塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0080】
「ベータ−3ARアゴニスト」の例としては、CL−316,243(Lederle Laboratories)やWO99/29672、WO98/32753、WO98/20005、WO98/09625、WO97/46556、WO97/37646および米国特許第5,705,515号に開示のものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0081】
本明細書中、用語「UCPアゴニスト」とは、UCP−1、UCP−2およびUCP−3のアゴニストを意味する。UCPはVidal-Puig et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., Vol. 235(1) pp. 79-82 (1997)に開示されている。このようなアゴニストは、UCPの活性を増加させる化合物または組成物である。
【0082】
抗糖尿病性チアゾリジンジオン(グリタゾン)は、例えば、(S)−((3,4−ジヒドロ−2−(フェニル−メチル)−2H−1−ベンゾピラン−6−イル)メチル−チアゾリジン−2,4−ジオン(エングリタゾン)、5−{[4−(3−(5−メチル−2−フェニル−4−オキサゾリル)−1−オキソプロピル)−フェニル]−メチル}−チアゾリジン−2,4−ジオン(ダルグリタゾン)、5−{[4−(1−メチル−シクロヘキシル)メトキシ)−フェニル]メチル}−チアゾリジン−2,4−ジオン(シグリタゾン)、5−{[4−(2−(1−インドリル)エトキシ)フェニル]メチル}−チアゾリジン−2,4−ジオン(DRF2189)、5−{4−[2−(5−メチル−2−フェニル−4−オキサゾリル)−エトキシ)]ベンジル}−チアゾリジン−2,4−ジオン(BM−13.1246)、5−(2−ナフチルスルホニル)−チアゾリジン−2,4−ジオン(AY−31637)、ビス{4−[(2,4−ジオキソ−5−チアゾリジニル)メチル]フェニル}メタン(YM268)、5−{4−[2−(5−メチル−2−フェニル−4−オキサゾリル)−2−ヒドロキシエトキシ]ベンジル}−チアゾリジン−2,4−ジオン(AD−5075)、5−[4−(1−フェニル−1−シクロプロパンカルボニルアミノ)−ベンジル]−チアゾリジン−2,4−ジオン(DN−108)、5−{[4−(2−(2,3−ジヒドロインドール−1−イル)エトキシ)フェニルメチル}−チアゾリジン−2,4−ジオン、5−[3−(4−クロロ−フェニル])−2−プロピニル]−5−フェニルスルホニル)チアゾリジン−2,4−ジオン、5−[3−(4−クロロフェニル])−2−プロピニル]−5−(4−フルオロフェニル−スルホニル)チアゾリジン−2,4−ジオン、5−{[4−(2−(メチル−2−ピリジニル−アミノ)−エトキシ)フェニル]メチル}−チアゾリジン−2,4−ジオン(ロシグリタゾン)、5−{[4−(2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ)フェニル]−メチル}チアゾリジン−2,4−ジオン(ピオグリタゾン)、5−{[4−((3,4−ジヒドロ−6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチル−2H−1−ベンゾピラン−2−イル)メトキシ)−フェニル]−メチル}−チアゾリジン−2,4−ジオン(トログリタゾン)、5−[6−(2−フルオロ−ベンジルオキシ)ナフタレン−2−イルメチル]−チアゾリジン−2,4−ジオン(MCC555)、5−{[2−(2−ナフチル)−ベンゾオキサゾール−5−イル]−メチル}チアゾリジン−2,4−ジオン(T−174)および5−(2,4−ジオキソチアゾリジン−5−イルメチル)−2−メトキシ−N−(4−トリフルオロメチル−ベンジル)ベンズアミド(KRP297)である。
【0083】
好ましくは、抗糖尿病性チアゾリジンジオンは下記式Iの化合物:
【0084】
【化1】
【0085】
[式中、
Mは、ナフチル、ベンゾオキサゾリル、ジヒドロベンゾピラニル、インドール、フェニル(ハロゲンで置換されていてもよい)またはフェニルエチニル(ハロゲンで置換されていてもよい)を表し;
Rβ1はハロゲンまたは−QRβ4基を表し、ここで
Qは酸素、低級アルキレン、カルボニルまたは−NH−であってよく、
Rβ4は、
ナフチル;
未置換または2,4−ジオキソ−5−チアゾリジニルで置換されたフェニル;または
未置換または以下の基で置換された低級アルキルまたはヒドロキシ低級アルキルであり:
a)インドールまたは2,3−ジヒドロインドール、
b)ピリジル、低級アルキル−ピリジル、N−低級アルキル−N−ピリジルアミノまたはハロゲンフェニル、
c)未置換ジヒドロベンゾピラニルまたはヒドロキシと低級アルキルとで置換されたジヒドロベンゾピラニル、
d)低級アルキルとフェニルとで置換されたオキサゾリル、
e)未置換シクロアルキルまたは低級アルキルで置換されたシクロアルキル、または
f)アリールシクロアルキルカルボニル;
Rβ2は、水素またはトリフルオロメチルフェニル−低級アルキルカルバモイルを表し;
Rβ3は、水素またはアリールスルホニルを表す]
または、その薬学的に許容される塩である。
【0086】
好ましくは、式VIIIの化合物は、(S)−((3,4−ジヒドロ−2−(フェニル−メチル)−2H−1−ベンゾピラン−6−イル)メチル−チアゾリジン−2,4−ジオン(エングリタゾン)、5−{[4−(3−(5−メチル−2−フェニル−4−オキサゾリル)−1−オキソプロピル)−フェニル]−メチル}−チアゾリジン−2,4−ジオン(ダルグリタゾン)、5−{[4−(1−メチル−シクロヘキシル)メトキシ)−フェニル]メチル}−チアゾリジン−2,4−ジオン(シグリタゾン)、5−{[4−(2−(1−インドリル)エトキシ)フェニル]メチル}−チアゾリジン−2,4−ジオン(DRF2189)、5−{4−[2−(5−メチル−2−フェニル−4−オキサゾリル)−エトキシ)]ベンジル}−チアゾリジン−2,4−ジオン(BM−13.1246)、5−(2−ナフチルスルホニル)−チアゾリジン−2,4−ジオン(AY−31637)、ビス{4−[(2,4−ジオキソ−5−チアゾリジニル)メチル]フェニル}メタン(YM268)、5−{4−[2−(5−メチル−2−フェニル−4−オキサゾリル)−2−ヒドロキシエトキシ]ベンジル}−チアゾリジン−2,4−ジオン(AD−5075)、5−[4−(1−フェニル−1−シクロプロパンカルボニルアミノ)−ベンジル]−チアゾリジン−2,4−ジオン(DN−108)、5−{[4−(2−(2,3−ジヒドロインドール−1−イル)エトキシ)フェニル]メチル}−チアゾリジン−2,4−ジオン、5−[3−(4−クロロ−フェニル])−2−プロピニル]−5−フェニルスルホニル)チアゾリジン−2,4−ジオン、5−[3−(4−クロロフェニル])−2−プロピニル]−5−(4−フルオロフェニル−スルホニル)チアゾリジン−2,4−ジオン、5−[6−(2−フルオロ−ベンジルオキシ)ナフタレン−2−イルメチル]−チアゾリジン−2,4−ジオン(MCC555)、5−{[2−(2−ナフチル)−ベンゾオキサゾール−5−イル]−メチル}チアゾリジン−2,4−ジオン(T−174)および5−(2,4−ジオキソチアゾリジン−5−イルメチル)−2−メトキシ−N−(4−トリフルオロメチル−ベンジル)ベンズアミド(KRP297)またはその薬学的に許容される塩からなる群より選択される。
【0087】
より好ましくは、式VIIIの化合物は、5−{[4−(2−(メチル−2−ピリジニル−アミノ)−エトキシ)フェニル]メチル}−チアゾリジン−2,4−ジオン(ロシグリタゾン)、5−{[4−(2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ)フェニル]−メチル}チアゾリジン−2,4−ジオン(ピオグリタゾン)および5−{[4−((3,4−ジヒドロ−6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチル−2H−1−ベンゾピラン−2−イル)メトキシ)−フェニル]−メチル}−チアゾリジン−2,4−ジオン(トログリタゾン)、MCC555、T−174およびKRP297、特にロシグリタゾン、ピオグリタゾンおよびトログリタゾン、または、その薬学的に許容される塩からなる群より選択される。
【0088】
グリタゾンである5−{[4−(2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ)フェニル]−メチル}チアゾリジン−2,4−ジオン(ピオグリタゾン、EP0193256A1)、5−{[4−(2−(メチル−2−ピリジニル−アミノ)−エトキシ)フェニル]メチル}−チアゾリジン−2,4−ジオン(ロシグリタゾン、EP0306228A1)、5−{[4−((3,4−ジヒドロ−6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチル−2H−1−ベンゾピラン−2−イル)メトキシ)−フェニル]−メチル}チアゾリジン−2,4−ジオン(トログリタゾン、EP0139421)、(S)−((3,4−ジヒドロ−2−(フェニル−メチル)−2H−1−ベンゾピラン−6−イル)メチル−チアゾリジン−2,4−ジオン(エングリタゾン、EP0207605B1)、5−(2,4−ジオキソチアゾリジン−5−イルメチル)−2−メトキシ−N−(4−トリフルオロメチル−ベンジル)ベンズアミド(KRP297、JP10087641−A)、5−[6−(2−フルオロ−ベンジルオキシ)ナフタレン−2−イルメチル]チアゾリジン−2,4−ジオン(MCC555、EP0604983B1)、5−{[4−(3−(5−メチル−2−フェニル−4−オキサゾリル)−1−オキソプロピル)−フェニル]−メチル}−チアゾリジン−2,4−ジオン(ダルグリタゾン、EP0332332)、5−(2−ナフチルスルホニル)−チアゾリジン−2,4−ジオン(AY−31637、US4,997,948)、5−{[4−(1−メチル−シクロヘキシル)メトキシ)−フェニル]メチル}−チアゾリジン−2,4−ジオン(シグリタゾン、US4,287,200)はそれぞれ各物質について括弧内に示した文献に一般的および具体的に開示されており、各場合とも特に化合物の請求項および実施例の最終生成物に開示されており、最終生成物、医薬品および請求項の内容はこれらの刊行物を引用することで本出願に含まれるものとする。DRF2189および5−{[4−(2−(2,3−ジヒドロインドール−1−イル)エトキシ)フェニル]メチル}−チアゾリジン−2,4−ジオンの調製は、B.B. Lohray et al., J. Med. Chem. 1998, 41, 1619-1630;1627頁と1628頁のExample 2dおよび3gに記載されている。5−[3−(4−クロロフェニル])−2−プロピニル]−5−フェニルスルホニル)−チアゾリジン−2,4−ジオンおよび本明細書で言及されるAがフェニルエチニルである他の化合物の調製は、J. Wrobel et al., J. Med. Chem. 1998, 41, 1084-1091に記載の方法に従って行うことができる。
【0089】
特に、MCC555はEP0604983B1の49頁30〜45行に開示された通りに製剤化が可能であり;エングリタゾンはEP0207605B1の6頁52行〜7頁6行に開示された通りに、または、24頁の実施例27または28と同様にして製剤化が可能であり;ダルグリタゾンおよび5−{4−[2−(5−メチル−2−フェニル−4−オキサゾリル)−エトキシ)]ベンジル}−チアゾリジン−2,4−ジオン(BM−13.1246)は、EP0332332B1の8頁42〜54行に開示された通りに製剤化が可能である。AY−31637はUS4,997,948の4欄32〜51行に開示された通りに投与可能であり、ロシグリタゾンはEP0306228A1の9頁32〜40行に開示された通りに投与可能であり、後者は好ましくはマレイン酸塩として投与する。ロシグリタゾンは、AVANDIATM等の商標名で販売されている形態で投与することができる。トログリタゾンは、ReZulinTM、PRELAYTM、ROMOZINTM(英国)またはNOSCALTM(日本)等の商標名で販売されている形態で投与することができる。ピオグリタゾンはEP0193256A1の実施例2に開示された通りに投与可能であり、好ましくは一塩酸塩の形態で投与する。個々の患者のニーズに対応して、ピオグリタゾンをACTOSTM等の商標名で販売されている形態で投与することができる。シグリタゾンは、例えば、US4,287,200の実施例13に開示された通りに製剤化が可能である。
【0090】
非グリタゾン系PPARγアゴニストは、特にN−(2−ベンゾイルフェニル)−L−チロシン類似体、例えばGI−262570およびJTT501である。
【0091】
本明細書中、用語「PPARγ/PPARαデュアルアゴニスト」とは、同時にPPARγアゴニストであり、かつ、PPARαアゴニストである化合物を意味する。好ましいPPARγ/PPARαデュアルアゴニストは、特にω−[(オキソキナゾリニルアルコキシ)フェニル]アルカノエートおよびその類似体であり、とりわけWO99/08501に記載の化合物DRF−554158およびFukui, Diabetes 2000, 49(5), 759-767に記載の化合物NC−2100である。
【0092】
好ましくは、抗糖尿病性バナジウム含有化合物は、二座モノプロトン性キレート剤(bidentate monoprotic chelant)の生理学的に許容されるバナジウム錯体であり、当該キレート剤はα−ヒドロキシピロンまたはα−ヒドロキシピリジノン、特にUS5,866,563の実施例に開示のもの(実施例は引用により本明細書に含まれるものとする)またはその薬学的に許容される塩である。
【0093】
インスリン分泌促進薬は、膵β細胞からのインスリンの分泌を促進する特性を有する薬理学的に活性な化合物である。インスリン分泌促進薬の例としては、グルカゴン受容体アンタゴニスト(上記参照)、スルホニル尿素誘導体、インクレチンホルモン、特にグルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)またはGLP−1アゴニスト、β細胞イミダゾリン受容体アンタゴニスト、並びに、短時間作用型インスリン分泌促進薬、例えば、抗糖尿病性フェニル酢酸誘導体、抗糖尿病性D−フェニルアラニン誘導体およびT. Page et al., Br. J. Pharmacol. 1997, 122, 1464-1468に記載のBTS67582が挙げられる。
【0094】
スルホニル尿素誘導体は、例えば、グリソキセピド、グリブリド、グリベンクラミド、アセトヘキサミド、クロロプロパミド、グリボルヌリド、トルブタミド、トラザミド、グリピザイド、カルブタミド、グリキドン、グリヘキサミド、フェンブタミドまたはトルシクラミドであり、好ましくはグリメピリドまたはグリクラジドである。トルブタミド、グリベンクラミド、グリクラジド、グリボルヌリド、グリキドン、グリソキセピドおよびグリメピリドは、RASTINON HOECHSTTM、AZUGLUCONTM、DIAMICRONTM、GLUBORIDTM、GLURENORMTM、PRO−DIABANTMおよびAMARYLTMの商標名でそれぞれ販売されている形態等で投与可能である。
【0095】
GLP−1は、例えばW.E. Schmidt et al., Diabetologia 28, 1985, 704-707およびUS5,705,483に記載のインスリン分泌刺激タンパク質である。本明細書中、用語「GLP−1アゴニスト」とは、GLP−1(7−36)NH2の変異体および類似体を意味し、特にUS5,120,712、US5,118,666、US5,512,549、WO91/11457およびC. Orskov et al., J. Biol. Chem. 264 (1989) 12826に開示されている。用語「GLP−1アゴニスト」には、特にGLP−1(7−37)(Arg36のカルボキシ末端のアミド官能基がGLP−1(7−36)NH2分子の37位でGlyに置換)様の化合物、その変異体および類似体が含まれ、例えば、GLN9−GLP−1(7−37)、D−GLN9−GLP−1(7−37)、アセチルLYS9−GLP−1(7−37)、LYS18−GLP−1(7−37)、特にGLP−1(7−37)OH、VAL8−GLP−1(7−37)、GLY8−GLP−1(7−37)、THR8−GLP−1(7−37)、MET8−GLP−1(7−37)および4−イミダゾプロピオニル−GLP−1が挙げられる。GLPアゴニスト類似体であるエキセンジン−4(Greig et al., Diabetologia 1999, 42, 45-50に記載)も特別に好ましい。
【0096】
本明細書中、用語「β細胞イミダゾリン受容体アンタゴニスト」とは、WO00/78726およびWang et al., J. Pharmacol. Exp. Ther. 1996; 278; 82-89に記載されているような化合物(例えば、PMS812)を意味する。
【0097】
抗糖尿病性フェニル酢酸誘導体は、好ましくは式IIの化合物:
【0098】
【化2】
【0099】
[式中、
Rδ1は、未置換またはC1−C3アルキルで一置換もしくは二置換された、分岐していないC4−C6アルキレンイミノ基であり;
Rδ2は、水素、ハロゲン、メチルまたはメトキシであり;
Rδ3は、水素、C1−C7アルキル、または、未置換またはハロゲン、メチルもしくはメトキシで置換されたフェニルであり;
Rδ4は、水素、アリル、アセチルまたはプロピオニル、または、未置換もしくはフェニルで置換されたC1−C3アルキルであり;
Wは、メチル、ヒドロキシメチル、ホルミル、カルボキシ、または、2〜5個の炭素原子を含むアルコキシカルボニルであって、アルコキシ基のアルキル部分が未置換またはフェニルで置換されているアルコキシカルボニルである]
または、その薬学的に許容される塩である。
【0100】
最も好ましくは、式IIの化合物はレパグリニドまたはその薬学的に許容される塩である。
【0101】
抗糖尿病性D−フェニルアラニン誘導体は、好ましくは式IIIの化合物:
【0102】
【化3】
【0103】
[式中、Phはフェニルを意味し、
Rγ1は、水素、C1−C5アルキル、C6−C12アリール、C6−C12アリールアルキル、
【0104】
【化4】
【0105】
−CH2CO2Rγ3、−CH(CH3)−OCO−Rγ3および−CH2−OCO−C(CH3)3から選択され;
Rγ2は、C6−C12アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルまたはシクロアルケニル(いずれの基も1個以上の置換基を有していてもよい)を含む群から選択され;
Rγ3は、水素およびC1−C5アルキルから選択される(但し、Rγ1およびRγ3が双方とも水素である場合、Rγ2は置換または未置換フェニルまたはナフチル以外である)]
または、その薬学的に許容される塩、または、ヒトもしくは動物の体内で当該化合物に変換可能な前駆体である。
【0106】
Rγ2がヘテロアリールを表す場合、Rγ2は好ましくはキノリニル、ピリジルまたは2−ベンゾフラニルである。
【0107】
最も好ましくは、抗糖尿病性D−フェニルアラニン誘導体はナテグリニドまたはその薬学的に許容される塩である。
【0108】
ナテグリニド(N−[(トランス−4−イソプロピルシクロヘキシル)−カルボニル]−D−フェニルアラニン、EP196222およびEP526171)およびレパグリニド((S)−2−エトキシ−4−{2−[[3−メチル−1−[2−(1−ピペリジニル)フェニル]ブチル]アミノ]−2−オキソエチル}安息香酸、EP0147850A2(特に61頁の実施例11)およびEP0207331A1)はそれぞれ各物質について括弧内に示した文献に一般的および具体的に開示されており、各場合とも特に化合物の請求項および実施例の最終生成物に開示されており、最終生成物、医薬品および請求項の内容はこれらの刊行物を引用することで本出願に含まれるものとする。本明細書中、用語「ナテグリニド」には、結晶修飾体(多形体)、例えば、EP0526171B1またはUS5,488,510にそれぞれ開示のものが含まれ、その内容は本出願、特に請求項8〜10の内容、並びに、B型結晶修飾体に関して言及する際に含まれるものとする。好ましくは、本発明では、B型またはH型、より好ましくはH型を使用する。レパグリニドは、NovoNormTM等の商標名で販売されている形態で投与することができる。ナテグリニドは、STARLIXTM等の商標名で販売されている形態で使用することができる。
【0109】
α−グルコシダーゼ阻害剤は、非吸収性の複合糖質を吸収性の単糖類へ分解する小腸のα−グルコシダーゼ酵素を阻害する薬理学的に活性な化合物である。このような化合物の例は、アカルボース、N−(1,3−ジヒドロキシ−2−プロピル)バリオラミン(ボグリボース)および1−デオキシノジリマイシン誘導体のミグリトールである。アカルボースは、4”,6”−ジデオキシ−4”−[(1S)−(1,4,6/5)−4,5,6−トリヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−2−シクロ−ヘキセニルアミノ}マルトトリオースである。アカルボースの構造はO−4,6−ジデオキシ−4−{[1S,4R,5S,6S]−4,5,6−トリヒドロキシ−3−(ヒドロキシメチル)−2−シクロヘキセン−1−イル]−アミノ}−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−O−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−D−グルコピラノースとしても記載できる。アカルボース(US4,062,950およびEP0226121)は括弧内に示した文献に一般的および具体的に開示されており、特に化合物の請求項および実施例の最終生成物に開示されており、最終生成物、医薬品および請求項の内容はこれらの刊行物を引用することで本出願に含まれるものとする。個々の患者のニーズに対応して、アカルボースをGLUCOBAYTM等の商標名で販売されている形態で投与することができる。ミグリトールは、DIASTABOL 50TM等の商標名で販売されている形態で投与することができる。
【0110】
α−グルコシダーゼ阻害剤は好ましくは、アカルボース、ボグリボースおよびミグリトールからなる群より選択される。
【0111】
「胃内容排出阻害剤」のGLP−1以外の例としては、J. Clin. Endocrinol. Metab. 2000, 85(3), 1043-1048(特にCCK−8)およびDiabetes Care 1998; 21; 897-893(特にアミリンおよびその類似体、例えばプラムリンチド)に開示のもの挙げられるが、これらに限定されない。アミリンは、O.G. Kolterman et al., Diabetologia 39, 1996, 492-499等にも記載されている。
【0112】
「α2−アドレナリンアンタゴニスト」の例としては、Diabetes 36, 1987, 216-220に記載のミダグリゾールが挙げられるが、これに限定されない。
【0113】
同様に、引用特許文献に開示された対応する立体異性体や対応する多形体(例えば、結晶修飾体)も含まれる。
【0114】
本発明の非常に好ましい実施態様では、DPP−IV阻害剤は、(S)−1−[(3−ヒドロキシ−1−アダマンチル)アミノ]アセチル−2−シアノ−ピロリジンおよび(S)−1−{2−[5−シアノピリジン−2−イル)アミノ]エチル−アミノアセチル}−2−シアノ−ピロリジンから選択され、さらに抗糖尿病性化合物は、ナテグリニド、レパグリニド、メトホルミン、ロシグリタゾン、ピオグリタゾン、トログリタゾン、グリソキセピド、グリブリド、グリベンクラミド、アセトヘキサミド、クロロプロパミド、グリボルヌリド、トルブタミド、トラザミド、グリピザイド、カルブタミド、グリキドン、グリヘキサミド、フェンブタミド、トルシクラミド、グリメピリドおよびグリクラジド、または、このような化合物の薬学的に許容される塩からなる群より選択される。
【0115】
用語「予防」とは、当該組み合わせを健常患者へ予防的に投与し、本明細書に記載の症状の発生を抑えることを意味する。また、用語「予防」とは、当該組み合わせを、治療対象の症状(特に糖尿病)の前段階にある患者へ予防的に投与することを意味する。
【0116】
本明細書中、用語「進行遅延」とは、抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片と、少なくとも1種の抗糖尿病薬とを含む本発明の組み合わせを、治療対象の医学的症状(特に糖尿病、さらには2型糖尿病)の前段階にあり、かつ、対応の症状が既に形成されていると診断されている患者へ投与することを意味する。
【0117】
PTPase阻害剤、GSK−3阻害剤、非低分子模倣化合物、GFAT阻害剤、G6Pase阻害剤、グルカゴン受容体アンタゴニスト、PEPCK阻害剤、F−1,6−BPase阻害剤、GP阻害剤、RXRアゴニスト、ベータ−3ARアゴニスト、PDHK阻害剤、胃内容排出阻害剤およびUCPアゴニストの調製および製剤化の例は、本明細書中で列挙した各物質について示した特許および出願に開示されている。
【0118】
コード番号、一般名または商品名によって特定されている活性物質の構造は、標準的な解説書である「メルクインデックス」の現行版から、または、Patents International(例えば、IMS World Publications)等のデータベースから取得可能である。その対応する部分の内容は、引用により本明細書に含まれるものとする。当業者であれば、これらの参考文献に基づいて活性物質を特定することが十分に可能であり、同様に、活性物質を製造し、かつ、薬学的な指標および特性を標準的な試験モデルにてインビトロおよびインビボの双方で試験することも可能である。
【0119】
本発明の組み合わせにおいて意図される抗糖尿病薬または抗糖尿病性化合物は、薬学的に許容される塩として存在可能である。これらの化合物が、例えば、少なくとも1つの塩基性中心を有する場合、酸付加塩を形成することができる。対応の酸付加塩は、必要に応じて追加の塩基性中心を有するよう形成することもできる。酸基(例えば、COOH)を有する化合物も、塩基と塩を形成することができる。例えば、組み合わせるべき化合物は、ナトリウム塩として、マレイン酸塩または二塩酸塩として存在可能である。活性成分またはその薬学的に許容される塩は、水和物の形態で使用することもでき、また、結晶化に使用する他の溶剤を含んでいてもよい。
【0120】
併用相手は好ましくは、インスリンシグナル伝達経路モジュレーター、例えば、タンパク質チロシンホスファターゼ(PTPases)阻害剤、非低分子模倣化合物およびグルタミン−フルクトース−6−リン酸アミドトランスフェラーゼ(GFAT)阻害剤、肝グルコース産生の調節異常に作用する化合物、例えば、グルコース−6−ホスファターゼ(G6Pase)阻害剤、フルクトース−1,6−ビスホスファターゼ(F−1,6−BPase)阻害剤、グリコーゲンホスホリラーゼ(GP)阻害剤、グルカゴン受容体アンタゴニストおよびホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PEPCK)阻害剤、ピルビン酸デヒドロゲナーゼキナーゼ(PDHK)阻害剤、インスリン感受性増強薬、インスリン分泌促進薬、α−グルコシダーゼ阻害剤、胃内容排出阻害剤、インスリンおよびα2−アドレナリンアンタゴニスト、または、このような化合物の薬学的に許容される塩からなる群より選択される。
【0121】
好ましくは、併用相手はGSK−3阻害剤、レチノイドX受容体(RXR)アゴニスト、ベータ−3ARアゴニスト、UCPアゴニスト、抗糖尿病性チアゾリジンジオン(グリタゾン)、非グリタゾン系PPARγアゴニスト、PPARγ/PPARαデュアルアゴニスト、抗糖尿病性バナジウム含有化合物、ビグアナイド薬およびメトホルミンからなる群より選択される。
【0122】
さらに別の態様によれば、本発明は、抗IL1βモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片と、少なくとも1種の抗糖尿病薬とを含む組み合わせであって、抗IL1βモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片と、少なくとも1種の抗糖尿病薬とを同時に、別々に、または、続けて投与する前記組み合わせに関する。
【0123】
用語「同時」とは、本発明において使用する場合、当該組み合わせの少なくとも2つの成分を同一の経路で同時にまたは実質的に同時に投与することを意味する。
【0124】
用語「別々に」とは、本発明において使用する場合、当該組み合わせの少なくとも2つの成分を同時にまたは実質的に同時に異なる経路で投与することを意味する。
【0125】
用語「続けて」とは、本発明において使用する場合、当該組み合わせの少なくとも2つの成分を異なる時点で投与することを意味し、投与経路は同一でも、異なっていてもよい。特に、この場合の投与方法は、当該組み合わせの成分のうちの1つ(例えば、抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片)の全量投与を、残りの成分またはその他の投与を開始する前に行うことを意味する。従って、当該組み合わせの活性成分の1つを、残りの活性成分を投与する前に数ヶ月にわたって投与することが可能である。この場合、同時処置は行われない。当該組み合わせの各活性成分を交互に数週間にわたって投与することも考えられる。
【0126】
本発明は、2型糖尿病を予防、進行遅延もしくは治療する方法、または、患者のベータ細胞機能を向上させる方法であって、当該方法を必要とする患者に、抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片と、少なくとも1種の抗糖尿病薬とを含む組み合わせを治療上有効量で投与することを含む前記方法を提供する。
【0127】
別の態様によれば、同時に、別々に、または、続けて使用するための、抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片と、少なくとも1種のさらなる併用相手と、必要に応じて少なくとも1種の、即ち、1種以上、例えば2種の薬学的に許容される担体とを含む組み合わせ製剤は、「キット」または「キット・オブ・パーツ(kit of parts)」の形態である。当該キットには、ラベルまたは使用説明書を備えるものとする。ラベルまたは説明書は、抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片と少なくとも1種のさらなる併用相手とを独立して投与する、または、当該成分を区別できる量で様々に組み合わせて使用する、即ち、異なる時点に、同時に、または、続けて使用するための手引きを提供することができる。一つの実施態様では、キットのラベルまたは説明書には、本明細書に記載の用量、後続の投与回数および投薬の間隔のいずれかに従って、あるいは、本明細書に記載の用量、後続の投与回数および投薬の間隔のいずれかの組み合わせに従って、抗体または断片を投与するための説明書が含まれる。
【0128】
本明細書中、用語「薬学的に許容される担体」とは、生理学的に適合性のある任意かつ全ての溶剤、分散媒、コーティング、抗細菌・抗真菌剤、等張剤、および、吸収亢進剤または吸収遅延剤等を意味する。このような薬学的に許容される担体の例は、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、アセテート緩衝液(塩化ナトリウム含有)、デキストロース、グリセロール、PEG、エタノール等、並びに、これらの組み合わせである。薬学的に許容される担体物質の別の例は、界面活性剤、湿潤剤、または、微量物質もしくは補助物質、例えば、湿潤剤または乳化剤、抗体またはその断片の貯蔵寿命や有効性を高める保存剤または緩衝剤である。
【0129】
本発明の組み合わせの抗体は、当該技術分野で公知の様々な方法で投与できるが、多くの治療用途にとって好ましい投与経路/投与形態は皮下、筋肉内、皮内または静脈内輸注である。当業者には明らかなように、投与経路および/または投与形態は、どのような結果を望むかに応じて変わる。ある実施態様では、抗体を急激な放出から保護する担体を用いて抗体組成物を調製すればよく、例としては制御放出製剤、例えば、インプラント、経皮パッチおよびマイクロカプセル送達システムが挙げられる。生分解性・生体適合性のポリマーが使用可能であり、例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸が挙げられる。このような製剤を調製する多くの方法は特許されているか、または、通常当業者に公知である。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems(J. R. Robinson, ed., Marcel Dekker, Inc., New York (1978))を参照されたい。
【0130】
キット・オブ・パーツのパーツを次いで、例えば、同時に投与するか、または、時間をずらして(即ち、キット・オブ・パーツの任意のパーツについて異なる時点で同一または異なる時間間隔で)投与することができる。好ましくは、時間間隔は、パーツの併用による処置疾患または処置症状に対する効果が、成分のいずれか一つのみを用いて得られる効果よりも大きくなるよう選択する。ある実施態様では、本発明の組み合わせの抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片は、例えば、不活性希釈剤または吸収可能な食用担体を用いて経口投与することができる。化合物(および必要に応じて他の成分)は、硬質または軟質ゼラチンカプセルへ封入したり、錠剤へ圧縮したり、被験者の食事へ直接混ぜ込むこともできる。治療目的の経口投与の場合、抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片は賦形剤と配合して内服錠、バッカル錠、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、カシェ剤等の形態で使用することができる。本発明の化合物を非経口投与以外で投与するには、不活性化を防ぐ材料で化合物を被覆するか、または、化合物をこのような材料と一緒に投与する必要がある。
【0131】
本発明はまた、「治療上有効量」または「予防上有効量」の抗体またはその抗原結合性部分に関する。「治療上有効量」とは、必要な投与量および必要な期間にて、所望の治療結果を達成するのに有効な量を云う。治療上有効量の抗体またはその抗原結合性部分は、個人の疾患の状態、年齢、性別および体重、並びに、個人に所望の応答を惹起する抗体または抗体部分の能力といった要因に応じて変わる。治療上有効量はまた、治療上有利な作用が抗体または抗体部分のいずれの毒性または有害作用にも勝る量である。「予防上有効量」とは、必要な投与量および必要な期間にて、所望の予防結果を達成するのに有効な量を云う。典型的には、予防用量を疾患前または疾患の初期段階で被験者に使用するため、予防上有効量は治療上有効量より少ない量であってよい。
【0132】
本発明の組み合わせの各成分の治療上有効量を、同時にまたは続けてまたは別々に投与することが可能である。例えば、本発明の治療方法は、(i)抗体またはその抗原結合性断片の投与と、(ii)少なくとも1種のさらなる併用相手の投与とを同時に、続けて、または、別々に、合計して治療上有効量で、好ましくは相乗効果量で、例えば、本明細書に記載の用法に相当する一日投与量で投与することを含んでいてもよい。
【0133】
用法を調整して最適な所望の応答(例えば、治療または予防応答)を得ることができる。例えば、一回に大量投与したり、複数回に分けて経時的に投与したり、または、治療状況の危急に応じて用量を比例的に増減したりすることができる。投与の簡便性と投与量の均一性の面から、非経口組成物を投与単位剤形で製剤化するのが特に有利である。本明細書中、「投与単位剤形」とは、治療対象の被験哺乳動物それぞれで物理的に異なるが、単位投与量として適した単位を云い、各単位には、所望の治療効果をもたらすよう計算された所定量の活性化合物が必要な薬学的担体と共に含まれる。本発明の投与単位剤形は、(a)抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片に特有の特性と達成すべき特定の治療または予防効果、および、(b)個人の感受性を治療するために、このような抗体を配合する分野に特有の制限に応じて特定され、かつ、直接左右される。
【0134】
抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片の適切な投与量は、当然のことながら、使用する特定の抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片、宿主、投与形態および治療中の症状の性質や重篤度等に応じて変わる。しかしながら、予防に使用する場合、満足のいく結果は、通常体重1kg当たり約0.05mg〜約10mg、より一般的には体重1kg当たり約0.1mg〜約5mgの投与量で得られると考えられる。予防に使用する際の投薬の頻度は、通常、約1週間に1回〜約3ヶ月に1回の範囲、より一般的には約2週間に1回〜約10週間に1回の範囲、例えば、4〜8週間に1回である。
【0135】
限定するわけではないが、抗体またはその抗原結合性断片の治療上または予防上有効量のさらなる範囲は、0.025〜50mg/kg、より好ましくは0.1〜50mg/kg、より好ましくは0.1〜25、0.1〜10または0.1〜3mg/kgである。一部の実施態様では、製剤は、5mg/mLの抗体を20mM酢酸ナトリウム(pH5.5)、140mM NaClおよび0.2mg/mLポリソルベート80の緩衝液に含有する。他の実施態様では、例えば静脈内に使用する場合、製剤は、10mg/mlの抗体を2.73mg/mlの酢酸ナトリウム三水和物、45mg/mlのマンニトール、0.02mg/mlのEDTA二ナトリウム二水和物、0.2mg/mlのポリソルベート80中(氷酢酸でpH5.5へ調整)に含有する。他の実施態様では、例えば皮下または皮内に使用する場合、製剤は、50mg/mlの抗体を2.73mg/mlの酢酸ナトリウム三水和物、45mg/mlのマンニトール、0.02mg/mlのEDTA二ナトリウム二水和物、0.4mg/mlのポリソルベート80中(氷酢酸でpH5.5へ調整)に含有する。投与量の値は、緩和すべき症状の種類や重篤度に伴って変わる場合があることに注意されたい。個々のニーズや組成物を投与する者または組成物の投与を管理する者の専門的な判断に応じて、いずれの特定の被験者に対しても特定の用法を経時的に調整すべきである点、本明細書に記載の投与量の範囲が例示に過ぎず、請求項に記載の組成物の範囲または実施を制限するものではない点をさらに理解されたい。
【0136】
好ましい実施態様では、抗体またはその抗原結合性断片の治療上または予防上有効量は0.03mg/kgである。
【0137】
より好ましい実施態様では、抗体またはその抗原結合性断片の治療上または予防上有効量は0.1mg/kgである。
【0138】
より一層好ましい実施態様では、抗体またはその抗原結合性断片の治療上または予防上有効量は0.3mg/kgである。
【0139】
より一層好ましい実施態様では、抗体またはその抗原結合性断片の治療上または予防上有効量は1.5mg/kgである。
【0140】
より一層好ましい実施態様では、抗体またはその抗原結合性断片の治療上または予防上有効量は10mg/kgである。
【0141】
好ましい実施態様では、抗体またはその抗原結合性断片の治療上または予防上有効量は0.03mg/kgであり、メトホルミンの量は1000mg/日以上である。
【0142】
より好ましい実施態様では、抗体またはその抗原結合性断片の治療上または予防上有効量は0.1mg/kgであり、メトホルミンの量は1000mg/日以上である。
【0143】
より一層好ましい実施態様では、抗体またはその抗原結合性断片の治療上または予防上有効量は0.3mg/kgであり、メトホルミンの量は1000mg/日以上である。
【0144】
より一層好ましい実施態様では、抗体またはその抗原結合性断片の治療上または予防上有効量は1.5mg/kgであり、メトホルミンの量は1000mg/日以上である。
【0145】
より一層好ましい実施態様では、抗体またはその抗原結合性断片の治療上または予防上有効量は10mg/kgであり、メトホルミンの量は1000mg/日以上である。
【0146】
本発明の一つの態様によれば、本発明の組み合わせと、使用説明書と、必要に応じて用量を選択するための説明書とを含むキットまたはキット・オブ・パーツが提供される。
【0147】
当該キットはさらに、1種以上の追加の試薬(例えば、免疫抑制試薬、細胞傷害剤もしくは放射性毒性剤)、または、1種以上の追加の開示のヒト抗体またはその抗原結合性断片(例えば、第一のヒト抗体とは別個の、IL1β抗原のエピトープに結合する相補的な活性を有するヒト抗体)と、最低でも1種類のさらなる併用相手とを含有する。
【0148】
好ましくは、本発明の組み合わせによって少なくとも1つの有利な作用が見られ、例えば、抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片と少なくとも1種のさらなる併用相手との作用の相互増強、追加の有利な作用、少ない副作用、当該組み合わせの成分のうちの1つまたは各々が有効投与量でなくても得られる併用治療効果、特に、抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片と少なくとも1種のさらなる併用相手との間の相乗作用(例えば、相加効果よりも大きい作用)などが見られる。
【0149】
予想外にも、治療上有効な組み合わせを患者へ投与する場合、1.5mg/kgの抗IL1β抗体と約1000mg/日以上の用量のメトホルミン(例えば、1500mg/日または2000mg/日)とを組み合わせて投与すると、抗IL1β抗体またはメトホルミンの各々一方を単独で試験した場合(対照患者群)に比べ、患者群においてヘモグロビンA1c(HbA1c)が統計学的に有意に低下することが観察された。この知見は驚くべきであり、かつ、予想外であった。
【0150】
また、長期(例えば、1ヶ月以上、好ましくは2ヶ月以上、より好ましくは4ヶ月以上、より一層好ましくは6ヶ月以上)にわたる治療を受けている患者が、T2DM患者における膵臓のベータ細胞機能の改善の指標である食後グルコース(PPG)を維持していることも予想外にも観察された。
【0151】
本発明の態様のうちの一つによれば、患者の膵臓のベータ細胞機能を向上させるために使用する、治療上有効量の抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片と、メトホルミンとを含む組み合わせが提供される。
【0152】
IL1、特にIL1βが介在する症状(例えば、糖尿病)の性質は多因子的である。ある一定の状況下では、作用機序の異なる薬物を組み合わせればよい。しかしながら、作用機序は異なるが、同様の領域で作用する薬物を任意に組み合わせても、有利な作用を持つ組み合わせが必ずしも得られるわけではないことを、当然考慮すべきである。
【0153】
さらに驚くべきことは、実験から以下の知見が得られたことである:抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片と少なくとも1種のさらなる併用相手とを組み合わせて投与すると、有利な(特に相乗的な)治療効果だけでなく、併用処置に由来する別の利益も得られ、例えば、効力が驚くほど持続する、治療処置が一層広がる、糖尿病に関連する疾患や症状に対して驚くほど有利な作用(例えば、体重増加が少ない)が見られる、などである。
【0154】
本発明の組み合わせは、最も重要な抗糖尿病療法(例えば、メトホルミン)を受けた結果消化器系の副作用を示す患者にも有利である。このような消化器系の副作用は、メトホルミンを使うにしてもその用量や効力にも影響を及ぼしかねない。有利には、本発明の組み合わせは、メトホルミンに伴う消化器系の副作用の軽減だけでなく、より高用量のメトホルミンの許容に繋がり、従って、より有効な糖尿病療法をもたらすことができる。
【0155】
さらなる利益は、当該組み合わせの個々の成分(例えば、抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片と、本発明に従って組み合わせるべき少なくとも1種のさらなる併用相手)をより低用量で、低減型の剤形(reduced dosage form)(例えば、投与量を少なくするだけでなく、頻度も減らして適用する剤形)に使用したり、望ましくない副作用の発生を減らすために使用することができる点にある。この点は、主要な事項の一つであり、治療対象の患者が望む要件であると認められる。
【0156】
確立した試験モデル、特に本明細書に記載の試験モデルによって、抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片と少なくとも1種のさらなる併用相手との組み合わせが、IL1βが介在する症状(特に糖尿病、とりわけ2型糖尿病)をより効果的に予防または好ましくは治療することを示すことができる。
【0157】
当業者であれば、該当する動物試験モデルを選択して、本明細書に示す治療適応症と有利な作用を証明することが十分可能である。薬理活性は、例えば、マウスまたは本明細書に記載の臨床研究において本質的にはインビボ試験を行うことで実証可能である。
【0158】
本明細書中で特に定義しない限り、本発明に関連して使用する科学用語および技術用語は、当業者に通常理解される意味を有するものとする。さらに、文脈上要求されない限り、単数形の用語には複数形が含まれるものとし、複数形の用語には単数形が含まれるものとする。一般に、本明細書に記載する細胞・組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学およびタンパク質・核酸化学、並びに、ハイブリダイゼーションに関連して使用する専門用語やこれらの技術は、当該技術分野で周知かつ通常に使用されるものである。
【実施例】
【0159】
以下の実施例において例を挙げて本発明をさらに記載する。
【0160】
方法および例示
血中グルコースの制御に関するマウスでのインビボ試験
ICR−CDIマウス(オス、5週齢、体重:約20g)を18時間絶食させた後、被験動物として使用する。本発明の組み合わせと、活性成分単独とを0.5%CMC−0.14M塩化ナトリウム緩衝液(pH7.4)に懸濁する。このようにして得られた溶液を一定の容量でへ被験動物へ経口投与する。所定時間後、対照群に対する血中グルコースの減少率(%)を求める。インビトロ試験のさらなる詳細は、Osborn et al., 2008(引用により全内容が本明細書に含まれるものとする)題名:Treatment with Interleukin 1 beta antibody improves glycemic control in diet-induced obesityにおいて入手可能である。
【0161】
ヘモグロビンA1c
ヘモグロビンA1cアッセイは、コバンス中央研究所サービス(Covance Central Laboratory Services;CLS)にてFDA認可のBio−Rad VariantTM分析装置で行う。この分析装置は、イオン交換高速液体クロマトグラフィー(HPLC)とマイクロコンピュータ技術の原理を利用したものである。検出は415nmと690nmの2つの波長で行い、ベースラインを安定させる。吸光度変化のクロマトグラムを保持時間に対してプロットする。各クロマトグラムのプリントアウトには、各検出ピークを同定したレポートの他、各ピークの相対的な比率と保持時間も表示される。
【0162】
当該方法は、アッセイ間の精度が1.7〜2.1%CVであり、アッセイ内の精度が0.9〜1.1%である(サンプルのアッセイを15回繰り返し行って変動係数を評価することにより判定)。
【0163】
高感度C反応性タンパク質(hsCRP)
CRPは「急性期」タンパク質の一つであり、その血清中またはタンパク質レベルは、感染性・非感染性の炎症過程(例えば、関節リウマチ、心臓血管疾患および末梢血管疾患)に対する通常の非特異的応答時に上昇する。CRPは肝臓で合成され、血清中または血漿中に微量で存在する。
【0164】
C反応性タンパク質HSアッセイは、コバンス中央研究所サービスにてシーメンスBNII比濁計を用いた免疫比濁分析により行う。CRPを含むサンプルと混合すると、抗CRPモノクローナル抗体で被覆したポリスチレン粒子が凝集する。比濁計の散乱光強度は、サンプルのCRP含量に依存するため、既知濃度の標品の希釈物との比較からCRP濃度を求めることができる。
当該方法は、アッセイ間の精度が2.1〜5.7%CVであり、アッセイ内の精度が2.3〜4.4%である(サンプルのアッセイを10回繰り返し行って変動係数を評価することにより判定)。CRPの精度は米国病理医協会(College of American Pathologists;CAP)の心臓リスク調査との比較により評価する。
【0165】
血漿グルコース
グルコースアッセイはヘキソキナーゼ酵素法である。ヘキソキナーゼは、アデノシン三リン酸によるグルコースのリン酸化を触媒する。グルコース−6−リン酸は次いでNADの存在下で酵素のグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼによって6−ホスホグルコネートへ酸化される。当該反応時に形成したNADPH量は、検体中のD−グルコース量に相当し、吸光度の増加量により光分析的に測定する。
【0166】
当該方法は、アッセイ間の精度が5.1〜6.2%CVであり、アッセイ内の精度が1.7〜2.5%である(サンプルのアッセイを50回繰り返し行って変動係数を評価することにより判定)。当該方法はグルコース特異的であり、他の炭水化物はいずれも酸化されない。
【0167】
Cペプチド
膵臓のベータ細胞では、プロインスリン分子が切断されてインスリンとCペプチドを形成する。Cペプチドは31個のアミノ酸からなるポリペプチドであり、ベータ細胞の分泌顆粒内に貯蔵され、インスリンと等モル量で血液循環へ放出される。
【0168】
Cペプチドを判定することで、糖尿病患者の内在性インスリンの分泌予備量を評価するが、インスリン自身よりも信頼性の高いインスリン分泌の指標と考えられる。
【0169】
ADVIAケンタウルスCペプチドアッセイは、直接的な化学発光技術を用いた二部位サンドイッチイムノアッセイであり、一定量の2種類の抗体を用いる。第一の抗体(Lite試薬中)は、アクリジニウムエステルで標識されたモノクローナルマウス抗Cペプチド抗体である。第二の抗体(固相中)は、モノクローナルマウス抗Cペプチド抗体である。固相中のストレプトアビジンを共有結合させる。患者サンプルに存在するCペプチドの量と当該システムで検出される相対発光量(RLU)との間には直接的な関係が存在する。
【0170】
当該方法は、アッセイ間の精度が1.69〜1.81%CVであり、アッセイ内の精度が3.7〜4.1%である(サンプルのアッセイを20回繰り返し行って変動係数を評価することにより判定)。精度は米国病理医協会(CAP)のリガンドとの比較により評価する。
【0171】
グルカゴン
グルカゴンは、膵ランゲルハンス島のアルファ細胞によって分泌されるホルモンである。低血糖に応答して分泌され、血中グルコースを増加させる。血液中で血清グルコースレベルが上昇するにつれ、ネガティブフィードバック機構によりグルカゴンが阻害される。ミリポア/LINCOグルカゴンラジオイムノアッセイキットではI125標識グルカゴンとグルカゴン抗血清を用い、二重抗体/PEG技術により血漿中のグルカゴンレベルを判定する。当該抗体は膵グルカゴンに特異的である。濃度を増加させた未標識抗原標品を用いて標準曲線を準備し、この曲線から未知サンプル中の抗原量を算出することができる。
【0172】
当該方法は、アッセイ間の精度が7.3〜13.5%CVであり、アッセイ内の精度が4.0〜6.8%である(アッセイを繰り返し行って変動係数を評価することにより判定)。精度は米国病理医協会(CAP)のリガンドとの比較により評価する。
【0173】
実施例
実施例1 臨床研究の設計
2型糖尿病患者の静脈内に投与したACZ885の安全性、忍容性、薬物動態および薬力学を検討する多施設無作為化二重盲検プラセボ対照用量漸増試験。本検討の目的は、2型糖尿病(T2DM)患者において、ACZ885を5回投与(静脈内投与)した際の薬物動態および薬力学的作用をプラセボと比較することである。
【0174】
並行群のT2DM被験者にはメトホルミンを安定的に投与した(850mg/日以上)。ベースライン、投与後4週目および12週目にOGTTを行った。
【0175】
検討の第一の目的
・ T2DM患者のグリセミック指数およびOGTTに対するグルコース応答に及ぼすACZ885のPD作用を評価すること。
第二の目的
・ β細胞分泌能およびインスリン感受性に及ぼすACZ885の薬力学的作用を評価すること。
・ グリセミック指数に及ぼすACZ885の単回静脈内投与(0.03、0.1、0.3、1.5または10mg/kg)の効力の持続期間を評価すること。
・ T2DMにおけるACZ885の薬物動態作用を評価すること。
コホート1は15人のT2DM患者からなり、投与用量は0.3mg/kgのACZ885またはプラセボとし、主な評価は安全性および忍容性とした。
【0176】
以下のコホートは、薬力学、薬物動態、薬理ゲノミクスおよび薬理遺伝学の評価に含めた。
【0177】
・ コホート2(n=90;1:1=ACZ885:Plb)には、ACZ885(10mg/kg)またはプラセボを単回投与した。
【0178】
・ コホート3(n=96)には、ACZ885(0.1、0.3、1.5mg/kg)またはプラセボを単回投与した(1:1:1:1)。
【0179】
・ コホート4(n=30;2:1=ACZ885:Plb)には、ACZ885(0.03mg/kg)またはプラセボを単回投与した。
【0180】
統計的分析:
本検討は、単回静脈内投与後に患者を24週間(168日間)追跡するよう設計した。
【0181】
処置を分類変数とし、ベースラインを共変量とした共分散分析(ANCOVA)を用い、これらのパラメータについて処置を比較する。
【0182】
実施例2 HbA1cレベルおよびhsCRPレベルの結果
メトホルミンを安定的に投与したT2DM被験者では、0.03、0.1、0.3、1.5mg/kgのACZ885で処置後4週目に、以下の結果が得られた:
・ 1.5mg/kgの用量でヘモグロビンA1c(HbA1c)が統計学的に有意に減少した(図1A)。
・ 図1Bに示すように、高感度C反応性タンパク質(hsCRP)が(用量に比例して)直線的に低下した。
【0183】
実施例3 グルコースレベル、Cペプチドレベルおよびグルカゴンレベルの結果
4時間間隔の曲線下面積(AUC0−4h)を比較することで、他のOGTTパラメータでも用量漸増と一致する明確な傾向が報告された:グルコース(図2A)、Cペプチド(図2B)およびグルカゴン(図2C)。
【0184】
実施例4 空腹時血漿グルコースの結果
【0185】
メトホルミンを安定的に投与したT2DM被験者では、10mg/kgのACZ885で処置後4週目に、図3Aに示すように、OGTT後の血漿AUCグルコースが統計学的に有意に減少し、空腹時血漿グルコース(FPG)が減少した。
【0186】
OGTTグルコース:ACZ885を10mg/kg単回投与した4週間後に、プラセボと比較して食後グルコースが有意に低下したことが報告された(図3B)。
【0187】
実施例5 グリセミックパラメータ
さらに、ACZ885を10mg/kg静脈内へ単回投与した際のグリセミックパラメータに及ぼす薬力学的作用について投与後6ヶ月にわたる推移を図4A、4Bおよび4Cに示す。
【0188】
空腹時血漿グルコース:
空腹時血漿グルコースに及ぼす作用は、処置群では投与後4週目で統計学的に有意となり、4週〜12週にかけて減少した(図4A)。
【0189】
ピーク血漿グルコース:
OGTT後のピーク血漿グルコースの低下は、処置群では4週目で統計学的に有意となり、12週目でも維持されていた(図4B)。記号(*)は、ベースラインからの変化量についてACZ885(10mg/kg)をプラセボと比較した場合にP<0.05であることを示す。
【0190】
ヘモグロビンA1c:
処置群では、4週〜12週にかけてHbA1cのさらなる低下が観察された(−0.32% p=0.032)(図4C)。記号(*)は、ベースラインからの変化量についてACZ885(10mg/kg)をプラセボと比較した場合にP<0.05であることを示す。
【0191】
結論:
・ ACZ885(1.5mg/kg)では4週目にHbA1cの有意な低下が観察された。これらの結果から、ACZ885の単回投与により、プラセボと比較して統計学的に有意なHbA1cの低下をもたらし得ることが明らかである。
【0192】
・ hsCRPの用量応答は、4週目で直線的な減少傾向を示した。これらの結果からも、4週目でピーク血漿グルコース(PPG、OGTT後)が低下することが明らかである。
【0193】
・ 食後グルコース、Cペプチド、プロインスリンまたはグルカゴンにおいてプラセボと比較して、統計学的に有意ではないながらも投与後4週目で明確な傾向が観察された。
【0194】
・ 単回投与後に効力が持続することが報告された:10mg/kgのACZ885を単回投与することで、プラセボと比較してHbA1cが統計学的に有意に低下し(−0.32% p=0.032)、かつ、ピーク血漿グルコース(PPG、OGTT後)の低下が4週目で観察され、12週目でも維持されていた。
【0195】
OGTT後のピークグルコースレベルの逸脱が改善することでも分かるように、PPGが長期間維持されることからT2DM患者におけるベータ細胞機能の改善が明らかである。
【0196】
これらの予備的なデータは、HbA1cの向上から分かるように、かつ、投与後4週目のOGTT後パラメータの傾向に裏付けられるように、T2DM患者におけるベータ細胞機能の改善を示唆するものである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療上有効量の抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片と、少なくとも1種の抗糖尿病薬とを含む新規な組み合わせに関する。抗糖尿病薬は、インスリンシグナル伝達経路モジュレーター、例えば、タンパク質チロシンホスファターゼ(PTPases)阻害剤、非低分子模倣化合物およびグルタミン−フルクトース−6−リン酸アミドトランスフェラーゼ(GFAT)阻害剤、DPP−IV阻害剤、肝グルコース産生の調節異常に作用する薬剤、例えば、グルコース−6−ホスファターゼ(G6Pase)阻害剤、フルクトース−1,6−ビスホスファターゼ(F−1,6−BPase)阻害剤、グリコーゲンホスホリラーゼ(GP)阻害剤、グルカゴン受容体アンタゴニストおよびホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PEPCK)阻害剤、ピルビン酸デヒドロゲナーゼキナーゼ(PDHK)阻害剤、インスリン感受性増強薬、インスリン分泌促進薬、α−グルコシダーゼ阻害剤、胃内容排出阻害剤、インスリンおよびα2−アドレナリンアンタゴニストからなる群より選択することができ、特にIL1βが介在する代謝症状、例えば、グルコース耐性異常(IGT)の症状、空腹時血漿グルコース異常の症状、代謝性アシドーシス、ケトーシス、関節炎、肥満および骨粗鬆症、特に糖尿病、具体的には1型糖尿病または2型糖尿病の予防、進行遅延または治療において、抗IL−1β抗体またはその抗原結合性断片と、少なくとも1種の抗糖尿病薬とを同時に、別々に、または、続けて使用する。本発明はまた、本発明の組み合わせを含む医薬組成物、並びに、IL1βが介在する代謝症状(例えば、糖尿病)の予防、進行遅延もしくは治療のために、または、ベータ(β)細胞機能の機能改善のために当該組み合わせを使用する処置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インターロイキン1(IL1)は、免疫系の細胞によって産生され、炎症応答の急性期の介在物質として作用するサイトカインである。IL1、特にIL1βの不適切な産生または過剰産生は、様々な疾患や障害、例えば、敗血症、敗血症性もしくは内毒素性ショック、アレルギー、喘息、虚血、卒中、関節リウマチおよび前糖尿病または糖尿病の病理と関連している。前糖尿病または糖尿病に関しては、異なる人種での研究から、グルコース耐性が正常な被験者や低下した被験者では、膵臓のβ細胞が経口グルコース耐性の主要な決定因子であることが判明しており、また、全ての集団で、正常からグルコース耐性異常への進行とこれに続く2型糖尿病への進行が、インスリン感受性の低下やβ細胞機能の低下と関連していることが判明している(非特許文献1)。
【0003】
糖尿病等のIL1、特にIL1βに伴う疾患または症状を治療するために、代替または改良された治療方法が常に求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Kahn, S. E., 2003, Diabetologia 46(1):3-19
【発明の概要】
【0005】
本発明は、一つの態様において、治療上有効量の抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片と、少なくとも1種の抗糖尿病薬と含む組み合わせを提供する。
【0006】
本発明は、さらなる態様において、2型糖尿病の予防、進行遅延または治療に使用する、治療上有効量の抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片と、少なくとも1種の抗糖尿病薬とを含む組み合わせを提供する。
【0007】
本発明また、膵臓のβ細胞の機能を向上させるのに使用する、治療上有効量の抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片と、少なくとも1種の抗糖尿病薬とを含む組み合わせを提供する。
【0008】
また、さらなる態様において、治療上有効量の抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片と、少なくとも1種の抗糖尿病薬と抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片と、少なくとも1種の抗糖尿病薬と、薬学的に許容される担体、賦形剤または希釈剤とを含む医薬組成物を提供する。
【0009】
別の態様では、本発明は、2型糖尿病を予防、進行遅延もしくは治療する方法、または、患者のβ細胞機能を向上させる方法であって、当該方法を必要とする患者に、治療上有効量の抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片と、少なくとも1種の抗糖尿病薬とを含む組み合わせを投与することを含む前記方法を提供する。
【0010】
本発明また、さらなる態様において、治療上有効量の抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片と、少なくとも1種の抗糖尿病薬と、使用説明書とを含むキットを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1A】図1Aは、用量漸増評価を示す。
【図1B】図1Bは、用量応答の直線的な低下傾向を示す。
【図2A】図2Aは、OGTT−グルコースを示す。
【図2B】図2Bは、OGTT−C−ペプチドを示す。
【図2C】図2Cは、OGTT−グルカゴンを示す。
【図3A】図3Aは、ACZ885の静脈内単回投与(10mg/kg)を示す。
【図3B】図3Bは、空腹時血漿グルコースを示す。
【図4A】図4Aは、空腹時血漿グルコースを示す。
【図4B】図4Bは、ピーク血漿グルコースを示す。
【図4C】図4Cは、ヘモグロビンA1cを示す。
【図5】図5は、ACZ885の重鎖可変領域(配列番号1)の核酸配列および推定アミノ酸配列を示す。
【図6】図6は、ACZ885の軽鎖可変領域(配列番号2)の核酸配列および推定アミノ酸配列を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の組み合わせは、治療上有効量の抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片と、少なくとも1種の抗糖尿病薬とを含むものである。
【0013】
抗糖尿病薬は、インスリンシグナル伝達経路モジュレーター、例えば、タンパク質チロシンホスファターゼ(PTPases)阻害剤、非低分子模倣化合物およびグルタミン−フルクトース−6−リン酸アミドトランスフェラーゼ(GFAT)阻害剤、DPP−IV阻害剤、肝グルコース産生の調節異常に作用する薬剤、例えば、グルコース−6−ホスファターゼ(G6Pase)阻害剤、フルクトース−1,6−ビスホスファターゼ(F−1,6−BPase)阻害剤、グリコーゲンホスホリラーゼ(GP)阻害剤、グルカゴン受容体アンタゴニストおよびホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PEPCK)阻害剤、ピルビン酸デヒドロゲナーゼキナーゼ(PDHK)阻害剤、インスリン感受性増強薬、インスリン分泌促進薬、α−グルコシダーゼ阻害剤、胃内容排出阻害剤、インスリンおよびα2−アドレナリンアンタゴニスト、または、このような化合物の薬学的に許容される塩からなる群より選択することができる。
【0014】
好ましくは、抗糖尿病薬は、GSK−3阻害剤、レチノイドX受容体(RXR)アゴニスト、ベータ(β)−3ARアゴニスト、インスリン、UCPアゴニスト、抗糖尿病性チアゾリジンジオン(グリタゾン)、非グリタゾン系PPARγアゴニスト、PPARγ/PPARαデュアルアゴニスト、抗糖尿病性バナジウム含有化合物、ビグアナイド薬(例えば、メトホルミン)からなる群より選択される。
【0015】
用語「抗糖尿病薬」は、以下、併用相手と云う場合もある。本明細書中、用語「抗糖尿病薬」とは、IL−1介在性疾患または症状、例えば、1型糖尿病または2型糖尿病等を治療するのに適した薬剤を含むことを意味する。
【0016】
併用相手と組み合わされる抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片は、IL1βへ特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片である。
【0017】
好ましくは、抗体またはその抗原結合性断片は、ヒトIL1βへ結合するヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片である。
【0018】
好ましくは、抗体またはその抗原結合性断片は、以下の特性のうち少なくとも1つを有する:
a)IL1βリガンドまたはIL1β受容体へ結合する;
b)IL1βに対する選択性を有する;
c)3×10−10M以下のKdでヒトIL1βへ結合する;
d)IL1経路の活性化を阻害する。
【0019】
好ましくは、抗体またはその抗原結合性断片は、ヒトIL1βリガンドとIL−1β受容体との結合を阻害し、かつ、以下の特性のうち少なくとも1つを有する:
a)IL1βリガンドまたはIL1β受容体への結合に関して基準抗体と交叉競合する;
b)IL1βリガンドまたはIL1β受容体への結合に関して基準抗体と競合する;
c)基準抗体と同一のIL1βリガンドのエピトープまたはIL1β受容体へ結合する;
d)基準抗体と実質的に同一のKdでIL1βリガンドまたはIL1β受容体へ結合する;
e)基準抗体と実質的に同一の解離速度(off rate)でIL1βリガンドまたはIL1β受容体へ結合する;
(ここで、基準抗体には、超可変領域であるCDR1、CDR2およびCDR3を順番に含む少なくとも1つの免疫グロブリン重鎖可変ドメイン(VH)を含む抗原結合部位が含まれ、CDR1のアミノ酸配列はVal−Tyr−Gly−Met−Asnであり、CDR2のアミノ酸配列はIle−Ile−Trp−Tyr−Asp−Gly−Asp−Asn−Gln−Tyr−Tyr−Ala−Asp−Ser−Val−Lys−Glyであり、CDR3のアミノ酸配列はAsp−Leu−Arg−Thr−Gly−Proである);
および、これらに直接相当するもの。
【0020】
好ましくは、抗体またはその抗原結合性断片はヒトIL1βの結合を阻害し、抗体またはその抗原結合性断片には、
a)超可変領域であるCDR1、CDR2およびCDR3を順番に含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン(VH)であって、CDR1のアミノ酸配列はVal−Tyr−Gly−Met−Asnであり、CDR2のアミノ酸配列はIle−Ile−Trp−Tyr−Asp−Gly−Asp−Asn−Gln−Tyr−Tyr−Ala−Asp−Ser−Val−Lys−Glyであり、CDR3のアミノ酸配列はAsp−Leu−Arg−Thr−Gly−Proである、前記ドメインと
b)超可変領域であるCDR1’、CDR2’およびCDR3’を順番に含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン(VL)であって、CDR1’のアミノ酸配列はArg−Ala−Ser−Gln−Ser−Ile−Gly−Ser−Ser−Leu−Hisであり、CDR2’のアミノ酸配列はAla−Ser−Gln−Ser−Phe−Serであり、CDR3’のアミノ酸配列はGln−Gln−Arg−Ser−Asn−Trp−Met−Phe−Proである、前記ドメインと、
これらに直接相当するもの
を含む少なくとも1つの抗原結合部位が含まれる。
【0021】
特に明記しない限り、本明細書中では、いずれのポリペプチド鎖もN末端で始まってC末端で終わるアミノ酸配列を有するものとして記載する。
【0022】
抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片は、好ましくはWO02/16436(引用により全内容が本明細書に含まれるものとする)に記載されているような抗体である。特に、本明細書中で参照する配列番号は全て、WO0216436に実際に開示されている配列と関連する。
【0023】
抗体またはその抗原結合性断片がVHおよびVLドメインの双方を含む場合、これらのドメインは同一のポリペプチド分子上に存在してもよく、あるいは、好ましくは各ドメインは異なる鎖上に存在してもよく、VHドメインは免疫グロブリン重鎖またはその断片の一部であり、VLは免疫グロブリン軽鎖またはその断片の一部である。
【0024】
抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片とは、IL1β抗原(単独でも、他の分子、例えば足場系の分子と会合した状態でも)と結合または相互作用もしくは会合可能な分子を意味する。結合反応の判定は、標準的な方法(定性系のアッセイ)、例えば、IL1βとその受容体との結合の阻害を判定するバイオアッセイ、または、特異性に関連性はないが同一のアイソタイプである抗体(例えば、抗CD25抗体)を使用するネガティブコントロール試験を基準とした任意の種類の結合アッセイによって行うことができる。有利には、抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片とIL1βとの結合は、競合結合アッセイで判定可能である。
【0025】
抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片の例としては、B細胞またはハイブリドーマによって産生されるような抗体や断片およびキメラ抗体、CDRグラフト化もしくはヒト抗体、または、その任意の断片、例えば、F(ab’)2およびFab断片、並びに、一本鎖抗体またはシングルドメイン抗体が挙げられる。
【0026】
一本鎖抗体は、抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメインを、通常10〜30アミノ酸、好ましくは15〜25アミノ酸からなるペプチドリンカーによって共有結合したものからなる。従って、このような構造には重鎖および軽鎖の定常部は含まれず、小型のペプチドスペーサーであれば、定常部丸ごとよりも抗原性が低いはずであると考えられる。
【0027】
「キメラ抗体」とは、重鎖または軽鎖または双方の定常領域がヒト由来であり、重鎖および軽鎖双方の可変ドメインが非ヒト(例えば、マウス)由来であるか、または、ヒト由来であっても異なるヒト抗体に由来する抗体を意味する。
【0028】
「CDRグラフト化抗体」とは、超可変領域(CDR)がドナー抗体、例えば、非ヒト(例えば、マウス)抗体または異なるヒト抗体に由来し、免疫グロブリンの残りの部分(例えば、定常領域や、可変ドメインの高度に保存された部分、即ち、フレームワーク領域)の全てまたは実質的に全てがアクセプター抗体(例えば、ヒト由来の抗体)に由来する抗体を意味する。しかしながら、CDRグラフト化抗体は、フレームワーク領域中(例えば、超可変領域に隣接するフレームワーク領域の部分)にドナー配列のアミノ酸を数個含んでいてもよい。
【0029】
「ヒト抗体」とは、重鎖および軽鎖双方の定常領域および可変領域が全てヒト由来であるか、または、ヒト由来の配列と実質的に同一である抗体を意味し、必ずしも同一の抗体に由来するわけではなく、マウス免疫グロブリンの可変部および定常部の遺伝子がヒトの対応物と置き換わっているマウス産生抗体、例えば、一般的に見てEP0546073B1、USP5545806、USP5569825、USP5625126、USP5633425、USP5661016、USP5770429、EP0438474B1およびEP0463151B1に記載のものが挙げられる。
【0030】
従って、好ましいキメラ抗体では、重鎖および軽鎖双方の可変ドメインがヒト由来であり、例えば、配列番号1および配列番号2に示すACZ885抗体(カナキヌマブとも呼ばれる)の重鎖および軽鎖可変ドメインである。
【0031】
本明細書中、用語「抗原結合性断片」とは、IL1β抗原(単独でも、他の分子、例えば足場系の分子と会合した状態でも)と結合または相互作用もしくは会合する能力を保持する1つ以上の抗体断片を云う。抗体の抗原結合機能は、完全長抗体の断片でも果たせることが判っている。抗体の、用語「抗原結合性断片」に包含される結合性断片の例としては以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:
i)抗原結合性断片であるVL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる一価断片であるFab断片;
ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結した2つのFab断片を含む二価断片であるF(ab’)2断片;
iii)VHおよびCH1ドメインからなるFd断片;
iv)抗体(Ab)の同一アームのVLおよびVHドメインからなるFv断片;
v)VHドメインからなるdAb断片(Ward et al., 1989, Nature341;544-546);および
vi)単離された相補性決定領域(CDR)。
【0032】
好ましくは、抗原結合性断片はACZ885に由来する。
【0033】
一本鎖抗体も、抗体の、用語「抗原結合性断片」に包含されるものとする。一本鎖抗体の他の形態、例えばダイアボディも包含される。ダイアボディは二価であり、VLおよびVHドメインが一本のポリペプチド鎖上で発現する二重特異性抗体であるが、同一鎖上の2つのドメインが対合してしまうほど短いリンカーを使用しているため、当該ドメインを強制的に別の鎖の相補性ドメインと対合させて2つの抗原結合部位を作出する(Holliger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6444-6448)。
【0034】
定常領域ドメインには、好ましくは、適切なヒト定常領域ドメイン、例えば「Sequences of Proteins of Immunological Interest」Kabat E. A. et al(米国保健福祉省、公衆衛生局、国立衛生研究所)に記載されているものも含まれる。超可変領域は任意の種類のフレームワーク領域と連結可能であるが、好ましくはヒト由来である。適切なフレームワーク領域は、Kabat E. A. et al.(前掲)に記載されている。好ましい重鎖フレームワークはヒト重鎖フレームワークであり、例えば、配列番号1に示すACZ885抗体の重鎖フレームワークである。FR1、FR2、FR3およびFR4領域から順番になる。同様に、配列番号2には、FR1’、FR2’、FR3’およびFR4’領域から順番になる、好ましいACZ885軽鎖フレームワークを示す。
【0035】
従って、本発明は、1位のアミノ酸で始まり118位のアミノ酸で終わる配列番号1に示すアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を有する第一ドメインを含むか、または、前記第一ドメインと、1位のアミノ酸で始まり107位のアミノ酸で終わる配列番号2に示すアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を有する第二ドメインとを含む、少なくとも1つの抗原結合部位を含む抗体またはその抗原結合性断片を含む組み合わせを提供する。
【0036】
全てのヒトに元々存在するタンパク質に対して生成したモノクローナル抗体は、通常非ヒトシステム(例えば、マウス)で開発されたものであり、そのままでは通常非ヒトタンパク質である。その結果、ハイブリドーマによって産生されるような異種抗体をヒトへ投与した場合、主に異種免疫グロブリンの定常部によって仲介される望ましくない免疫応答が惹起される。このため、長期間にわたって投与することができないため、このような抗体の利用には明らかに限界がある。従って、ヒトへ投与した際に実質的な同種異系応答を惹起しにくい、一本鎖抗体、シングルドメイン抗体、キメラ抗体、CDRグラフト化抗体、とりわけヒト抗体を使用するのが特に好ましい。
【0037】
以上のことから、本発明のより好ましい抗体または抗原結合性断片は、少なくとも以下のものを含むヒト抗IL1β抗体:
a)以下のものを含む免疫グロブリン重鎖またはその断片:
(i)超可変領域CDR1、CDR2およびCDR3を順番に含む可変ドメインと、
(ii)ヒト重鎖の定常部またはその断片
(ここで、CDR1のアミノ酸配列はVal−Tyr−Gly−Met−Asnであり、CDR2のアミノ酸配列はIle−Ile−Trp−Tyr−Asp−Gly−Asp−Asn−Gln−Tyr−Tyr−Ala−Asp−Ser−Val−Lys−Glyであり、CDR3のアミノ酸配列はAsp−Leu−Arg−Thr−Gly−Proである);および
b)以下のものを含む免疫グロブリン軽鎖またはその断片:
(i)上記超可変領域と必要に応じてCDR1’、CDR2’およびCDR3’の超可変領域も順番に含む可変ドメインと、
(ii)ヒト軽鎖の定常部またはその断片
(ここで、CDR1’のアミノ酸配列はArg−Ala−Ser−Gln−Ser−Ile−Gly−Ser−Ser−Leu−Hisであり、CDR2’のアミノ酸配列はAla−Ser−Gln−Ser−Phe−Serであり、CDR3’のアミノ酸配列はHis−Gln−Ser−Ser−Ser−Leu−Proである);
並びに、これらに直接相当するものから選択される。
【0038】
あるいは、当該組み合わせの抗体または抗原結合性断片は、以下のものを含む抗原結合部位を含む一本鎖結合性分子:
a)超可変領域CDR1、CDR2およびCDR3を順番に含む第一ドメイン(当該超可変領域は配列番号1に示すアミノ酸配列を有する)、
b)超可変領域CDR1’、CDR2’およびCDR3’を含む第二ドメイン(当該超可変領域は配列番号2に示すアミノ酸配列を有する)、および
c)第一ドメインのN末端と第二ドメインのC末端とへ結合した、または、第一ドメインのC末端と第二ドメインのN末端とへ結合したペプチドリンカー;
並びに、これらに直接相当するものから選択することも可能である。
【0039】
当該技術分野で周知なように、アミノ酸配列の軽微な変化、例えば、1個、数個または複数個のアミノ酸の欠失、付加または置換によって、元のタンパク質と実質的に同一の特性を有するアレル体を誘導することができる。
【0040】
抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片は、天然および/または非天然アミノ酸を含むことができる。本明細書中、用語「天然および非天然アミノ酸」とは、合成類似体または天然由来ペプチド(D体およびL体を含む)を調製する際にペプチド化学の当業者によって一般に利用される、天然由来のアミノ酸と、タンパク質を構成しない他のα−アミノ酸との両方を云う。天然由来のアミノ酸はグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、メチオニン、トレオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、シスレイン、プラリン、ヒスチジン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、アルギニン、オルニチン、リシンおよびγ−カルボキシグルタミン酸である。非天然α−アミノ酸の例としては、ヒドロキシリシン、シトルリン、キヌレニン、メチオニンスルフェート、アミノアラニン、フェニルグリシン、ビニルアラニン、その他が挙げられる。
【0041】
本発明では、配列を最適にアライメントしてアミノ酸配列中のギャップや挿入を非同一残基としてカウントした場合に、少なくとも80%同一のアミノ酸残基を似たような位置に有していれば、アミノ酸配列は互いに少なくとも80%相同であると考える。
【0042】
ヒトIL1βとその受容体との結合の阻害は、様々なアッセイ、例えばWO02/16436に記載のアッセイで簡便に試験可能である。
【0043】
本明細書中、用語「同程度」とは、基準分子と等価分子とが、統計的に見て、上述のアッセイの1つにおいて本質的に同一のIL1β結合阻害曲線を示すことを意味する。例えば、本発明のIL1β結合性分子は、典型的には、上述のようにアッセイした際に、IL1βとその受容体との結合の阻害に対して、対応の基準分子のIC50の±5倍以内、好ましくは実質的に同一のIC50を有する。
【0044】
例えば、使用するアッセイは、可溶性IL1受容体または標的エピトープと、抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片とによるIL1β結合の競合阻害アッセイであってよい。
【0045】
最も好ましくは、本発明の組み合わせに含まれる抗IL1β抗体は、少なくとも以下のものを含む:
a)1位のアミノ酸で始まり118位のアミノ酸で終わる配列番号1に示すアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を有する可変ドメインと、ヒト重鎖の定常部とを含む1つの重鎖;および
b)1位のアミノ酸で始まり107位のアミノ酸で終わる配列番号2に示すアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を有する可変ドメインと、ヒト軽鎖の定常部とを含む1つの軽鎖。
【0046】
最も好ましくは、本発明の組み合わせに含まれるIL1β結合性分子はACZ885である。
【0047】
ヒト重鎖の定常部はγ1、γ2、γ3、γ4、μ、α1、α2、δまたはε型であってよく、好ましくはγ型であり、より好ましくはγ1型であるのに対し、ヒト軽鎖の定常部はκまたはλ型(λ1、λ2およびλ3サブタイプを含む)であってよいが、好ましくはκ型である。これらの全ての定常部のアミノ酸配列はKabat et al.(前掲)に記載されている。
【0048】
本発明の抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片は、WO02/16436等に記載されているような組換えDNA技術によって生成可能である。
【0049】
抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片が、成熟ヒトIL1βのGlu64残基(成熟ヒトIL1βの残基Glu64はヒトIL1β前駆体の残基180に相当)を含むループを含むヒトIL1βの抗原性エピトープに対して結合特異性を有することも、本発明の範囲内である。このエピトープは、IL1ベータ受容体の認識部位の外側にあり、そのため、このエピトープに対する抗体(例えば、ACZ885抗体)が、ヒトIL1βとその受容体との結合を阻害できることは予想外である。従って、このような抗体またはその抗原結合性断片を糖尿病(特に1型または2型糖尿病)の治療に用いることは、本発明の組み合わせに含まれる。
【0050】
従って、さらなる実施態様において、本発明には、成熟ヒトIL1βの残基Glu64を含むループを含むヒトIL1βの抗原性エピトープに対する抗原結合特異性を有し、かつ、IL−1βとその受容体との結合を阻害し得る、糖尿病(特に1型または2型糖尿病)の治療ための抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片を含む組み合わせが含まれる。
【0051】
さらなる実施態様において、本発明は、抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片と、少なくとも1種の抗糖尿病薬とを含む組み合わせを意図し、
i)Glu64を含むループを含む成熟ヒトIL1βの抗原性エピトープに対する結合特異性を有し、かつ、IL1βとその受容体との結合を阻害し得る、糖尿病の予防および/または治療のための抗体またはその抗原結合性断片;
ii)Glu64を含むループを含む成熟ヒトIL1βの抗原性エピトープに対する結合特異性を有し、かつ、IL1βとその受容体との結合を阻害し得る抗体またはその抗原結合性断片の有効量を患者へ投与することを含む、患者の糖尿病を予防および/または治療する方法;
iii) Glu64を含むループを含む成熟ヒトIL1βの抗原性エピトープに対する結合特異性を有し、かつ、ヒトIL1βとその受容体との結合を阻害し得る抗体またはその抗原結合性断片を、薬学的に許容される賦形剤、希釈剤または担体と組み合わせて含む、患者の糖尿病を治療するための医薬組成物
を含む。
【0052】
本記載の目的では、抗体またはその抗原結合性断片が、ACZ885抗体と実質的に同程度にIL1βとその受容体との結合を阻害し得る場合、即ち、実施例で開示する標準的なBIAcore分析等で測定した解離平衡定数(KD)が10nM以下、例えば1nM以下、好ましくは100pM以下、より好ましくは50pM以下、より好ましくは40pM以下、より好ましくは30pM以下、より好ましくは約10pMである場合、抗体は「ヒトIL1βの結合を阻害し得る」。
【0053】
従って、さらなる態様において本発明は、IL1βへの結合のKDが約10nM、1nM、好ましくは100pM、より好ましくは50pM以下、より好ましくは40pM以下、より好ましくは30pM以下、より好ましくは約10pMであるIL1βへの抗体またはその抗原結合性断片の糖尿病(特に2型糖尿病)の治療への使用を提供する。本発明のこの態様には、Glu64を含むループを含む成熟ヒトIL1βの抗原決定基に対して結合特異性を有する上述したような高親和性抗体またはその抗原結合性断片についての使用、方法および組成物も含まれる。
【0054】
抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片には、保存的修飾を導入することが可能である。本明細書中、用語「保存的修飾」とは、抗IL1β抗体またはそのアミノ酸配列を含有する抗原結合性断片の結合特性に顕著に影響または変化を与えないアミノ酸修飾を指すものとする。このような保存的修飾としては、アミノ酸の置換、付加および欠失が挙げられる。修飾は、当該技術分野で公知の標準的な技術、例えば、部位特異的変異処理やPCRによる変異処理によって開示の抗体へ導入することができる。保存的アミノ酸置換とは、アミノ酸残基を類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えるものである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは当該技術分野で定義済みである。これらのファミリーとしては、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電の極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β分岐側鎖を有するアミノ酸(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が挙げられる。従って、開示の抗体またはその抗原結合性断片のCDR領域内の1個以上のアミノ酸残基を、同じ側鎖ファミリーの他のアミノ酸残基で置き換えることが可能であり、改変した抗体またはその抗原結合性断片を、保持されている機能について試験することが可能である。保持されている機能を試験するためのアッセイは当業者に公知である。様々な場合で、抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片の重鎖および軽鎖は、必要に応じてシグナル配列を含んでいてもよい。
【0055】
本発明の態様の一つによれば、IL1介在性疾患(特に1型および/または2糖尿病)を予防、進行遅延もしくは治療する方法、または、患者のベータ細胞機能を向上させる方法であって、当該方法を必要とする患者に、抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片と、少なくとも1種の抗糖尿病薬と含む組み合わせを治療上有効量で投与することを含む前記方法が提供される。
【0056】
本出願では、用語「IL1介在性疾患」には、直接的か間接的かに拘わらず、IL1が疾患または医学的症状において、その因果関係、発症、進行、残留または病理などの役割を果たす全ての疾患および医学的症状が包含される。このような疾患としては、敗血症、敗血症性もしくは内毒素性ショック、アレルギー、喘息、骨喪失、虚血、卒中、関節リウマチおよび糖尿病(例えば、1型糖尿病または2型糖尿病)が挙げられる。
【0057】
本発明の方法の一つの好ましい実施態様によれば、IL1介在性疾患は1型糖尿病および/または2型糖尿病である。
【0058】
本記載では、用語「治療」とは、予防または防止処置、並びに、治癒または疾患緩和処置の双方を指し、疾患に罹患する危険性のある患者または疾患に罹患した疑いのある患者、並びに、発症した患者または疾患もしくは医学的症状に罹患したと診断された患者の処置を含み、かつ、臨床上の再発を抑えることを含む。
【0059】
当該組み合わせの成分である抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片は、簡便には、非経口、静脈内(例えば、前肘(antercubital)静脈または他の末梢静脈)、筋肉内または皮下へ投与する。好ましくは、抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片は静脈内へ投与する。治療には、典型的には、本発明の抗体またはその抗原結合性断片を2〜3ヶ月に1回、好ましくは1ヶ月に1回、好ましくはより短い頻度(less frequently)(例えば週に1回)で投与することが含まれる。治療レジメンは医師により症例ごとに応じて決定、修正または変更可能である。
【0060】
本発明の組み合わせの成分である抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片は、従来の方法で製造可能である。
【0061】
抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片は、好ましくは、凍結乾燥された形態で提供する。即時投与の場合には、本発明の組み合わせのこの成分を適切な水性担体、例えば、注射用滅菌水または滅菌緩衝化生理食塩水に溶解する。ボーラス注射ではなく輸注(infusion)での投与用に溶液を大量に作るのが望ましいと考えられる場合には、製剤化の際にヒト血清アルブミンまたは患者自身のヘパリン化血液を生理食塩水へ添加するのが有利である。このような生理学的に不活性なタンパク質を過剰に存在させることで、輸液と一緒に使用される容器やチューブの壁に吸着して抗体が目減りするのを防ぐ。アルブミンを使用する場合、適切な濃度は生理食塩水溶液の0.5〜4.5重量%である。
【0062】
本発明の組み合わせのもう一方の成分は、少なくとも1種の抗糖尿病薬(上述したように併用相手とも云う)である。用語「抗糖尿病薬」は本明細書中では用語「抗糖尿病性化合物」と区別なく使用され、この2つは同じ意味を持つ、即ち、IL−1介在性疾患または症状(例えば、1型糖尿病および/または2型糖尿病等)を治療するのに適した併用相手を意味すると理解されたい。
【0063】
少なくとも1種の併用相手は、インスリンシグナル伝達経路モジュレーター、例えば、タンパク質チロシンホスファターゼ(PTPases)阻害剤、非低分子模倣化合物およびグルタミン−フルクトース−6−リン酸アミドトランスフェラーゼ(GFAT)阻害剤、肝グルコース産生の調節異常に作用する化合物、例えば、グルコース−6−ホスファターゼ(G6Pase)阻害剤、フルクトース−1,6−ビスホスファターゼ(F−1,6−BPase)阻害剤、グリコーゲンホスホリラーゼ(GP)阻害剤、グルカゴン受容体アンタゴニストおよびホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PEPCK)阻害剤、ピルビン酸デヒドロゲナーゼキナーゼ(PDHK)阻害剤、インスリン感受性増強薬、インスリン分泌促進薬、α−グルコシダーゼ阻害剤、胃内容排出阻害剤、インスリンおよびα2−アドレナリンアンタゴニスト、または、このような化合物の薬学的に許容される塩および必要に応じて少なくとも1種の薬学的に許容される担体からなる群より選択することができる。
【0064】
「PTPase阻害剤」の例としては、米国特許第6,057,316号、米国特許第6,001,867号、WO99/58518、WO99/58522、WO99/46268、WO99/46267、WO99/46244、WO99/46237、WO99/46236、WO99/15529およびPoucheret et al., Mol. Cell Biochem. 1998, 188, 73-80に開示のものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0065】
「非低分子模倣化合物」の例としては、Science1999, 284; 974-97(特にL−783,281)およびWO99/58127(特にCLX−901)に開示のもの挙げられるが、これらに限定されない。
【0066】
「GFAT阻害剤」の例としては、Mol. Cell. Endocrinol. 1997,135(1), 67-77に開示のもの挙げられるが、これらに限定されない。
【0067】
本明細書中、用語「G6Pase阻害剤」とは、G6Paseの活性を低下または阻害することにより、肝臓でのグリコーゲン合成を低下または阻害する化合物または組成物を意味する。このような化合物の例は、WO00/14090、WO99/40062、WO98/40385、EP682024およびDiabetes 1998, 47, 1630-1636に開示されている。
【0068】
本明細書中、用語「F−1,6−BPase阻害剤」とは、F−1,6−BPaseの活性を低下または阻害することにより、肝臓でのグリコーゲン合成を低下または阻害する化合物または組成物を意味する。このような化合物の例は、WO00/14095、WO99/47549、WO98/39344、WO98/39343およびWO98/39342に開示されている。
【0069】
本明細書中、用語「GP阻害剤」とは、GPの活性を低下または阻害することにより、肝臓でのグリコーゲン分解を低下または阻害する化合物または組成物を意味する。このような化合物の例は、EP978279、米国特許第5998463号、WO99/26659、EP846464、WO97/31901、WO96/39384、WO9639385に開示されており、特にProc. Natl. Acad Sci USA 1998, 95, 1776-1781に記載のCP−91149である。
【0070】
本明細書中、用語「グルカゴン受容体アンタゴニスト」は、WO98/04528に記載の化合物(特にBAY27−9955)や、Bioorg Med. Chem. Lett 1992, 2, 915-918(特にCP−99,711)、J. Med. Chem. 1998, 41, 5150-5157(特にNNC92−1687)およびJ. Biol Chem. 1999, 274; 8694-8697(特にL−168,049)に記載の化合物、また、US5,880,139、WO99/01423、US5,776,954、WO98/22109、WO98/22108、WO98/21957およびWO97/16442に開示の化合物に特に関する。
【0071】
本明細書中、用語「PEPCK阻害剤」とは、PEPCKの活性を低下または阻害することにより、肝臓でのグリコーゲン合成を低下または阻害する化合物または組成物を意味する。このような化合物の例は、米国特許第6,030,837号およびMol. Biol. Diabetes 1994, 2, 283-99に開示されている。
【0072】
本明細書中、用語「PDHK阻害剤」とは、ピルビン酸デヒドロゲナーゼキナーゼ阻害剤を意味し、Aicher et al., J. Med. Chem. 42 (1999) 2741-2746に開示の化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0073】
本明細書中、用語「インスリン感受性増強薬」とは、インスリンに対する組織感受性を増強する任意かつ全ての薬理学的に活性な化合物を意味する。インスリン感受性増強薬としては、例えば、GSK−3阻害剤、レチノイドX受容体(RXR)アゴニスト、ベータ−3ARアゴニスト、UCPアゴニスト、抗糖尿病性チアゾリジンジオン(グリタゾン)、非グリタゾン系PPARγアゴニスト、PPARγ/PPARαデュアルアゴニスト、抗糖尿病性バナジウム含有化合物およびビグアナイド薬(例えば、メトホルミン)が挙げられる。
【0074】
ビグアナイド薬(例えば、メトホルミン)は通常、500mg、750mg、850mg、1000mgおよび2000mg以上を含有する剤形で投与される。好ましくは、メトホルミンは1000mg/日以上の投与量で投与される。
【0075】
インスリン感受性増強薬は、好ましくは、抗糖尿病性チアゾリジンジオン、抗糖尿病性バナジウム含有化合物およびビグアナイド薬であるメトホルミンからなる群より選択される。
【0076】
一つの好ましい実施態様では、インスリン感受性増強薬はメトホルミンである。
【0077】
メトホルミン(ジメチルジグアニド)およびその塩酸塩の調製は最新技術であり、最初に開示したのはEmil A. WernerおよびJames Bell(J. Chem. Soc. 121, 1922, 1790-1794)である。メトホルミンは、GLUCOPHAGETM等の商標名で販売されている形態で使用が可能である。
【0078】
「GSK−3阻害剤」の例としては、WO00/21927およびWO97/41854に開示のものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0079】
「RXRアゴニスト」とは、RXRホモダイマーまたはヘテロダイマーと組み合わせた際に、当業者に公知のアッセイで測定してRXRの転写調節活性を増加させる化合物または組成物を意味し、このようなアッセイとしては、米国特許第4,981,784号、同第5,071,773号、同第5,298,429号、同第5,506,102号、WO89/05355、WO91/06677、WO92/05447、WO93/11235、WO95/18380、PCT/US93/04399、PCT/US94/03795およびCA2,034,220(引用により本明細書に含まれるものとする)に記載または開示の「同時トランスフェクション」または「シス−トランス」アッセイが挙げられるが、これらに限定されない。RXRアゴニストとしては、RXRをRARよりも優先的に活性化する化合物(即ち、RXR特異的アゴニスト)や、RXRとRARの両方を活性化する化合物(即ち、パンアゴニスト)が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、ある特定の細胞状況(cellular context)でのみRXRを活性化する化合物(即ち、部分アゴニスト)も挙げられる。以下の文献、特許および特許出願に開示または記載されたRXRアゴニスト活性を有する化合物も、引用によりに含まれるものとする:米国特許第5,399,586号および同第5,466,861号、WO96/05165、PCT/US95/16842、PCT/US95/16695、PCT/US93/10094、WO94/15901、PCT/US92/11214、WO93/11755、PCT/US93/10166、PCT/US93/10204、WO94/15902、PCT/US93/03944、WO93/21146、仮出願第60,004,897号および同第60,009,884号、Boehm, et al., J. Med. Chem. 38(16):3146-3155, 1994、Boehm, et al., J. Med. Chem. 37(18):2930-2941, 1994、Antras et al., J. Biol. Chem. 266:1157-1161 (1991)、Salazar-Olivo et al., Biochem. Biophys. Res. Commun.204:157-263 (1994)およびSafanova, Mol. Cell. Endocrin. 104:201-211 (1994)。RXR特異的アゴニストとしては、LG100268(即ち、2−[1−(3,5,5,8,8−ペンタメチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−2−ナフチル)−シクロプロピル]−ピリジン−5−カルボン酸)およびLGD1069(即ち、4−[(3,5,5,8,8−ペンタメチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−2−ナフチル)−2−カルボニル]−安息香酸)、並びに、これらの類似体、誘導体および薬学的に許容される塩が挙げられるが、これらに限定されない。LG100268およびLGD1069の構造および合成は、Boehm, et al., J. Med. Chem. 38(16):3146-3155, 1994(引用により本明細書に含まれるものとする)に開示されている。パンアゴニストとしては、ALRT1057(即ち、9−シスレチノイン酸)、並びに、その類似体、誘導体および薬学的に許容される塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0080】
「ベータ−3ARアゴニスト」の例としては、CL−316,243(Lederle Laboratories)やWO99/29672、WO98/32753、WO98/20005、WO98/09625、WO97/46556、WO97/37646および米国特許第5,705,515号に開示のものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0081】
本明細書中、用語「UCPアゴニスト」とは、UCP−1、UCP−2およびUCP−3のアゴニストを意味する。UCPはVidal-Puig et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., Vol. 235(1) pp. 79-82 (1997)に開示されている。このようなアゴニストは、UCPの活性を増加させる化合物または組成物である。
【0082】
抗糖尿病性チアゾリジンジオン(グリタゾン)は、例えば、(S)−((3,4−ジヒドロ−2−(フェニル−メチル)−2H−1−ベンゾピラン−6−イル)メチル−チアゾリジン−2,4−ジオン(エングリタゾン)、5−{[4−(3−(5−メチル−2−フェニル−4−オキサゾリル)−1−オキソプロピル)−フェニル]−メチル}−チアゾリジン−2,4−ジオン(ダルグリタゾン)、5−{[4−(1−メチル−シクロヘキシル)メトキシ)−フェニル]メチル}−チアゾリジン−2,4−ジオン(シグリタゾン)、5−{[4−(2−(1−インドリル)エトキシ)フェニル]メチル}−チアゾリジン−2,4−ジオン(DRF2189)、5−{4−[2−(5−メチル−2−フェニル−4−オキサゾリル)−エトキシ)]ベンジル}−チアゾリジン−2,4−ジオン(BM−13.1246)、5−(2−ナフチルスルホニル)−チアゾリジン−2,4−ジオン(AY−31637)、ビス{4−[(2,4−ジオキソ−5−チアゾリジニル)メチル]フェニル}メタン(YM268)、5−{4−[2−(5−メチル−2−フェニル−4−オキサゾリル)−2−ヒドロキシエトキシ]ベンジル}−チアゾリジン−2,4−ジオン(AD−5075)、5−[4−(1−フェニル−1−シクロプロパンカルボニルアミノ)−ベンジル]−チアゾリジン−2,4−ジオン(DN−108)、5−{[4−(2−(2,3−ジヒドロインドール−1−イル)エトキシ)フェニルメチル}−チアゾリジン−2,4−ジオン、5−[3−(4−クロロ−フェニル])−2−プロピニル]−5−フェニルスルホニル)チアゾリジン−2,4−ジオン、5−[3−(4−クロロフェニル])−2−プロピニル]−5−(4−フルオロフェニル−スルホニル)チアゾリジン−2,4−ジオン、5−{[4−(2−(メチル−2−ピリジニル−アミノ)−エトキシ)フェニル]メチル}−チアゾリジン−2,4−ジオン(ロシグリタゾン)、5−{[4−(2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ)フェニル]−メチル}チアゾリジン−2,4−ジオン(ピオグリタゾン)、5−{[4−((3,4−ジヒドロ−6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチル−2H−1−ベンゾピラン−2−イル)メトキシ)−フェニル]−メチル}−チアゾリジン−2,4−ジオン(トログリタゾン)、5−[6−(2−フルオロ−ベンジルオキシ)ナフタレン−2−イルメチル]−チアゾリジン−2,4−ジオン(MCC555)、5−{[2−(2−ナフチル)−ベンゾオキサゾール−5−イル]−メチル}チアゾリジン−2,4−ジオン(T−174)および5−(2,4−ジオキソチアゾリジン−5−イルメチル)−2−メトキシ−N−(4−トリフルオロメチル−ベンジル)ベンズアミド(KRP297)である。
【0083】
好ましくは、抗糖尿病性チアゾリジンジオンは下記式Iの化合物:
【0084】
【化1】
【0085】
[式中、
Mは、ナフチル、ベンゾオキサゾリル、ジヒドロベンゾピラニル、インドール、フェニル(ハロゲンで置換されていてもよい)またはフェニルエチニル(ハロゲンで置換されていてもよい)を表し;
Rβ1はハロゲンまたは−QRβ4基を表し、ここで
Qは酸素、低級アルキレン、カルボニルまたは−NH−であってよく、
Rβ4は、
ナフチル;
未置換または2,4−ジオキソ−5−チアゾリジニルで置換されたフェニル;または
未置換または以下の基で置換された低級アルキルまたはヒドロキシ低級アルキルであり:
a)インドールまたは2,3−ジヒドロインドール、
b)ピリジル、低級アルキル−ピリジル、N−低級アルキル−N−ピリジルアミノまたはハロゲンフェニル、
c)未置換ジヒドロベンゾピラニルまたはヒドロキシと低級アルキルとで置換されたジヒドロベンゾピラニル、
d)低級アルキルとフェニルとで置換されたオキサゾリル、
e)未置換シクロアルキルまたは低級アルキルで置換されたシクロアルキル、または
f)アリールシクロアルキルカルボニル;
Rβ2は、水素またはトリフルオロメチルフェニル−低級アルキルカルバモイルを表し;
Rβ3は、水素またはアリールスルホニルを表す]
または、その薬学的に許容される塩である。
【0086】
好ましくは、式VIIIの化合物は、(S)−((3,4−ジヒドロ−2−(フェニル−メチル)−2H−1−ベンゾピラン−6−イル)メチル−チアゾリジン−2,4−ジオン(エングリタゾン)、5−{[4−(3−(5−メチル−2−フェニル−4−オキサゾリル)−1−オキソプロピル)−フェニル]−メチル}−チアゾリジン−2,4−ジオン(ダルグリタゾン)、5−{[4−(1−メチル−シクロヘキシル)メトキシ)−フェニル]メチル}−チアゾリジン−2,4−ジオン(シグリタゾン)、5−{[4−(2−(1−インドリル)エトキシ)フェニル]メチル}−チアゾリジン−2,4−ジオン(DRF2189)、5−{4−[2−(5−メチル−2−フェニル−4−オキサゾリル)−エトキシ)]ベンジル}−チアゾリジン−2,4−ジオン(BM−13.1246)、5−(2−ナフチルスルホニル)−チアゾリジン−2,4−ジオン(AY−31637)、ビス{4−[(2,4−ジオキソ−5−チアゾリジニル)メチル]フェニル}メタン(YM268)、5−{4−[2−(5−メチル−2−フェニル−4−オキサゾリル)−2−ヒドロキシエトキシ]ベンジル}−チアゾリジン−2,4−ジオン(AD−5075)、5−[4−(1−フェニル−1−シクロプロパンカルボニルアミノ)−ベンジル]−チアゾリジン−2,4−ジオン(DN−108)、5−{[4−(2−(2,3−ジヒドロインドール−1−イル)エトキシ)フェニル]メチル}−チアゾリジン−2,4−ジオン、5−[3−(4−クロロ−フェニル])−2−プロピニル]−5−フェニルスルホニル)チアゾリジン−2,4−ジオン、5−[3−(4−クロロフェニル])−2−プロピニル]−5−(4−フルオロフェニル−スルホニル)チアゾリジン−2,4−ジオン、5−[6−(2−フルオロ−ベンジルオキシ)ナフタレン−2−イルメチル]−チアゾリジン−2,4−ジオン(MCC555)、5−{[2−(2−ナフチル)−ベンゾオキサゾール−5−イル]−メチル}チアゾリジン−2,4−ジオン(T−174)および5−(2,4−ジオキソチアゾリジン−5−イルメチル)−2−メトキシ−N−(4−トリフルオロメチル−ベンジル)ベンズアミド(KRP297)またはその薬学的に許容される塩からなる群より選択される。
【0087】
より好ましくは、式VIIIの化合物は、5−{[4−(2−(メチル−2−ピリジニル−アミノ)−エトキシ)フェニル]メチル}−チアゾリジン−2,4−ジオン(ロシグリタゾン)、5−{[4−(2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ)フェニル]−メチル}チアゾリジン−2,4−ジオン(ピオグリタゾン)および5−{[4−((3,4−ジヒドロ−6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチル−2H−1−ベンゾピラン−2−イル)メトキシ)−フェニル]−メチル}−チアゾリジン−2,4−ジオン(トログリタゾン)、MCC555、T−174およびKRP297、特にロシグリタゾン、ピオグリタゾンおよびトログリタゾン、または、その薬学的に許容される塩からなる群より選択される。
【0088】
グリタゾンである5−{[4−(2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ)フェニル]−メチル}チアゾリジン−2,4−ジオン(ピオグリタゾン、EP0193256A1)、5−{[4−(2−(メチル−2−ピリジニル−アミノ)−エトキシ)フェニル]メチル}−チアゾリジン−2,4−ジオン(ロシグリタゾン、EP0306228A1)、5−{[4−((3,4−ジヒドロ−6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチル−2H−1−ベンゾピラン−2−イル)メトキシ)−フェニル]−メチル}チアゾリジン−2,4−ジオン(トログリタゾン、EP0139421)、(S)−((3,4−ジヒドロ−2−(フェニル−メチル)−2H−1−ベンゾピラン−6−イル)メチル−チアゾリジン−2,4−ジオン(エングリタゾン、EP0207605B1)、5−(2,4−ジオキソチアゾリジン−5−イルメチル)−2−メトキシ−N−(4−トリフルオロメチル−ベンジル)ベンズアミド(KRP297、JP10087641−A)、5−[6−(2−フルオロ−ベンジルオキシ)ナフタレン−2−イルメチル]チアゾリジン−2,4−ジオン(MCC555、EP0604983B1)、5−{[4−(3−(5−メチル−2−フェニル−4−オキサゾリル)−1−オキソプロピル)−フェニル]−メチル}−チアゾリジン−2,4−ジオン(ダルグリタゾン、EP0332332)、5−(2−ナフチルスルホニル)−チアゾリジン−2,4−ジオン(AY−31637、US4,997,948)、5−{[4−(1−メチル−シクロヘキシル)メトキシ)−フェニル]メチル}−チアゾリジン−2,4−ジオン(シグリタゾン、US4,287,200)はそれぞれ各物質について括弧内に示した文献に一般的および具体的に開示されており、各場合とも特に化合物の請求項および実施例の最終生成物に開示されており、最終生成物、医薬品および請求項の内容はこれらの刊行物を引用することで本出願に含まれるものとする。DRF2189および5−{[4−(2−(2,3−ジヒドロインドール−1−イル)エトキシ)フェニル]メチル}−チアゾリジン−2,4−ジオンの調製は、B.B. Lohray et al., J. Med. Chem. 1998, 41, 1619-1630;1627頁と1628頁のExample 2dおよび3gに記載されている。5−[3−(4−クロロフェニル])−2−プロピニル]−5−フェニルスルホニル)−チアゾリジン−2,4−ジオンおよび本明細書で言及されるAがフェニルエチニルである他の化合物の調製は、J. Wrobel et al., J. Med. Chem. 1998, 41, 1084-1091に記載の方法に従って行うことができる。
【0089】
特に、MCC555はEP0604983B1の49頁30〜45行に開示された通りに製剤化が可能であり;エングリタゾンはEP0207605B1の6頁52行〜7頁6行に開示された通りに、または、24頁の実施例27または28と同様にして製剤化が可能であり;ダルグリタゾンおよび5−{4−[2−(5−メチル−2−フェニル−4−オキサゾリル)−エトキシ)]ベンジル}−チアゾリジン−2,4−ジオン(BM−13.1246)は、EP0332332B1の8頁42〜54行に開示された通りに製剤化が可能である。AY−31637はUS4,997,948の4欄32〜51行に開示された通りに投与可能であり、ロシグリタゾンはEP0306228A1の9頁32〜40行に開示された通りに投与可能であり、後者は好ましくはマレイン酸塩として投与する。ロシグリタゾンは、AVANDIATM等の商標名で販売されている形態で投与することができる。トログリタゾンは、ReZulinTM、PRELAYTM、ROMOZINTM(英国)またはNOSCALTM(日本)等の商標名で販売されている形態で投与することができる。ピオグリタゾンはEP0193256A1の実施例2に開示された通りに投与可能であり、好ましくは一塩酸塩の形態で投与する。個々の患者のニーズに対応して、ピオグリタゾンをACTOSTM等の商標名で販売されている形態で投与することができる。シグリタゾンは、例えば、US4,287,200の実施例13に開示された通りに製剤化が可能である。
【0090】
非グリタゾン系PPARγアゴニストは、特にN−(2−ベンゾイルフェニル)−L−チロシン類似体、例えばGI−262570およびJTT501である。
【0091】
本明細書中、用語「PPARγ/PPARαデュアルアゴニスト」とは、同時にPPARγアゴニストであり、かつ、PPARαアゴニストである化合物を意味する。好ましいPPARγ/PPARαデュアルアゴニストは、特にω−[(オキソキナゾリニルアルコキシ)フェニル]アルカノエートおよびその類似体であり、とりわけWO99/08501に記載の化合物DRF−554158およびFukui, Diabetes 2000, 49(5), 759-767に記載の化合物NC−2100である。
【0092】
好ましくは、抗糖尿病性バナジウム含有化合物は、二座モノプロトン性キレート剤(bidentate monoprotic chelant)の生理学的に許容されるバナジウム錯体であり、当該キレート剤はα−ヒドロキシピロンまたはα−ヒドロキシピリジノン、特にUS5,866,563の実施例に開示のもの(実施例は引用により本明細書に含まれるものとする)またはその薬学的に許容される塩である。
【0093】
インスリン分泌促進薬は、膵β細胞からのインスリンの分泌を促進する特性を有する薬理学的に活性な化合物である。インスリン分泌促進薬の例としては、グルカゴン受容体アンタゴニスト(上記参照)、スルホニル尿素誘導体、インクレチンホルモン、特にグルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)またはGLP−1アゴニスト、β細胞イミダゾリン受容体アンタゴニスト、並びに、短時間作用型インスリン分泌促進薬、例えば、抗糖尿病性フェニル酢酸誘導体、抗糖尿病性D−フェニルアラニン誘導体およびT. Page et al., Br. J. Pharmacol. 1997, 122, 1464-1468に記載のBTS67582が挙げられる。
【0094】
スルホニル尿素誘導体は、例えば、グリソキセピド、グリブリド、グリベンクラミド、アセトヘキサミド、クロロプロパミド、グリボルヌリド、トルブタミド、トラザミド、グリピザイド、カルブタミド、グリキドン、グリヘキサミド、フェンブタミドまたはトルシクラミドであり、好ましくはグリメピリドまたはグリクラジドである。トルブタミド、グリベンクラミド、グリクラジド、グリボルヌリド、グリキドン、グリソキセピドおよびグリメピリドは、RASTINON HOECHSTTM、AZUGLUCONTM、DIAMICRONTM、GLUBORIDTM、GLURENORMTM、PRO−DIABANTMおよびAMARYLTMの商標名でそれぞれ販売されている形態等で投与可能である。
【0095】
GLP−1は、例えばW.E. Schmidt et al., Diabetologia 28, 1985, 704-707およびUS5,705,483に記載のインスリン分泌刺激タンパク質である。本明細書中、用語「GLP−1アゴニスト」とは、GLP−1(7−36)NH2の変異体および類似体を意味し、特にUS5,120,712、US5,118,666、US5,512,549、WO91/11457およびC. Orskov et al., J. Biol. Chem. 264 (1989) 12826に開示されている。用語「GLP−1アゴニスト」には、特にGLP−1(7−37)(Arg36のカルボキシ末端のアミド官能基がGLP−1(7−36)NH2分子の37位でGlyに置換)様の化合物、その変異体および類似体が含まれ、例えば、GLN9−GLP−1(7−37)、D−GLN9−GLP−1(7−37)、アセチルLYS9−GLP−1(7−37)、LYS18−GLP−1(7−37)、特にGLP−1(7−37)OH、VAL8−GLP−1(7−37)、GLY8−GLP−1(7−37)、THR8−GLP−1(7−37)、MET8−GLP−1(7−37)および4−イミダゾプロピオニル−GLP−1が挙げられる。GLPアゴニスト類似体であるエキセンジン−4(Greig et al., Diabetologia 1999, 42, 45-50に記載)も特別に好ましい。
【0096】
本明細書中、用語「β細胞イミダゾリン受容体アンタゴニスト」とは、WO00/78726およびWang et al., J. Pharmacol. Exp. Ther. 1996; 278; 82-89に記載されているような化合物(例えば、PMS812)を意味する。
【0097】
抗糖尿病性フェニル酢酸誘導体は、好ましくは式IIの化合物:
【0098】
【化2】
【0099】
[式中、
Rδ1は、未置換またはC1−C3アルキルで一置換もしくは二置換された、分岐していないC4−C6アルキレンイミノ基であり;
Rδ2は、水素、ハロゲン、メチルまたはメトキシであり;
Rδ3は、水素、C1−C7アルキル、または、未置換またはハロゲン、メチルもしくはメトキシで置換されたフェニルであり;
Rδ4は、水素、アリル、アセチルまたはプロピオニル、または、未置換もしくはフェニルで置換されたC1−C3アルキルであり;
Wは、メチル、ヒドロキシメチル、ホルミル、カルボキシ、または、2〜5個の炭素原子を含むアルコキシカルボニルであって、アルコキシ基のアルキル部分が未置換またはフェニルで置換されているアルコキシカルボニルである]
または、その薬学的に許容される塩である。
【0100】
最も好ましくは、式IIの化合物はレパグリニドまたはその薬学的に許容される塩である。
【0101】
抗糖尿病性D−フェニルアラニン誘導体は、好ましくは式IIIの化合物:
【0102】
【化3】
【0103】
[式中、Phはフェニルを意味し、
Rγ1は、水素、C1−C5アルキル、C6−C12アリール、C6−C12アリールアルキル、
【0104】
【化4】
【0105】
−CH2CO2Rγ3、−CH(CH3)−OCO−Rγ3および−CH2−OCO−C(CH3)3から選択され;
Rγ2は、C6−C12アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルまたはシクロアルケニル(いずれの基も1個以上の置換基を有していてもよい)を含む群から選択され;
Rγ3は、水素およびC1−C5アルキルから選択される(但し、Rγ1およびRγ3が双方とも水素である場合、Rγ2は置換または未置換フェニルまたはナフチル以外である)]
または、その薬学的に許容される塩、または、ヒトもしくは動物の体内で当該化合物に変換可能な前駆体である。
【0106】
Rγ2がヘテロアリールを表す場合、Rγ2は好ましくはキノリニル、ピリジルまたは2−ベンゾフラニルである。
【0107】
最も好ましくは、抗糖尿病性D−フェニルアラニン誘導体はナテグリニドまたはその薬学的に許容される塩である。
【0108】
ナテグリニド(N−[(トランス−4−イソプロピルシクロヘキシル)−カルボニル]−D−フェニルアラニン、EP196222およびEP526171)およびレパグリニド((S)−2−エトキシ−4−{2−[[3−メチル−1−[2−(1−ピペリジニル)フェニル]ブチル]アミノ]−2−オキソエチル}安息香酸、EP0147850A2(特に61頁の実施例11)およびEP0207331A1)はそれぞれ各物質について括弧内に示した文献に一般的および具体的に開示されており、各場合とも特に化合物の請求項および実施例の最終生成物に開示されており、最終生成物、医薬品および請求項の内容はこれらの刊行物を引用することで本出願に含まれるものとする。本明細書中、用語「ナテグリニド」には、結晶修飾体(多形体)、例えば、EP0526171B1またはUS5,488,510にそれぞれ開示のものが含まれ、その内容は本出願、特に請求項8〜10の内容、並びに、B型結晶修飾体に関して言及する際に含まれるものとする。好ましくは、本発明では、B型またはH型、より好ましくはH型を使用する。レパグリニドは、NovoNormTM等の商標名で販売されている形態で投与することができる。ナテグリニドは、STARLIXTM等の商標名で販売されている形態で使用することができる。
【0109】
α−グルコシダーゼ阻害剤は、非吸収性の複合糖質を吸収性の単糖類へ分解する小腸のα−グルコシダーゼ酵素を阻害する薬理学的に活性な化合物である。このような化合物の例は、アカルボース、N−(1,3−ジヒドロキシ−2−プロピル)バリオラミン(ボグリボース)および1−デオキシノジリマイシン誘導体のミグリトールである。アカルボースは、4”,6”−ジデオキシ−4”−[(1S)−(1,4,6/5)−4,5,6−トリヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−2−シクロ−ヘキセニルアミノ}マルトトリオースである。アカルボースの構造はO−4,6−ジデオキシ−4−{[1S,4R,5S,6S]−4,5,6−トリヒドロキシ−3−(ヒドロキシメチル)−2−シクロヘキセン−1−イル]−アミノ}−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−O−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−D−グルコピラノースとしても記載できる。アカルボース(US4,062,950およびEP0226121)は括弧内に示した文献に一般的および具体的に開示されており、特に化合物の請求項および実施例の最終生成物に開示されており、最終生成物、医薬品および請求項の内容はこれらの刊行物を引用することで本出願に含まれるものとする。個々の患者のニーズに対応して、アカルボースをGLUCOBAYTM等の商標名で販売されている形態で投与することができる。ミグリトールは、DIASTABOL 50TM等の商標名で販売されている形態で投与することができる。
【0110】
α−グルコシダーゼ阻害剤は好ましくは、アカルボース、ボグリボースおよびミグリトールからなる群より選択される。
【0111】
「胃内容排出阻害剤」のGLP−1以外の例としては、J. Clin. Endocrinol. Metab. 2000, 85(3), 1043-1048(特にCCK−8)およびDiabetes Care 1998; 21; 897-893(特にアミリンおよびその類似体、例えばプラムリンチド)に開示のもの挙げられるが、これらに限定されない。アミリンは、O.G. Kolterman et al., Diabetologia 39, 1996, 492-499等にも記載されている。
【0112】
「α2−アドレナリンアンタゴニスト」の例としては、Diabetes 36, 1987, 216-220に記載のミダグリゾールが挙げられるが、これに限定されない。
【0113】
同様に、引用特許文献に開示された対応する立体異性体や対応する多形体(例えば、結晶修飾体)も含まれる。
【0114】
本発明の非常に好ましい実施態様では、DPP−IV阻害剤は、(S)−1−[(3−ヒドロキシ−1−アダマンチル)アミノ]アセチル−2−シアノ−ピロリジンおよび(S)−1−{2−[5−シアノピリジン−2−イル)アミノ]エチル−アミノアセチル}−2−シアノ−ピロリジンから選択され、さらに抗糖尿病性化合物は、ナテグリニド、レパグリニド、メトホルミン、ロシグリタゾン、ピオグリタゾン、トログリタゾン、グリソキセピド、グリブリド、グリベンクラミド、アセトヘキサミド、クロロプロパミド、グリボルヌリド、トルブタミド、トラザミド、グリピザイド、カルブタミド、グリキドン、グリヘキサミド、フェンブタミド、トルシクラミド、グリメピリドおよびグリクラジド、または、このような化合物の薬学的に許容される塩からなる群より選択される。
【0115】
用語「予防」とは、当該組み合わせを健常患者へ予防的に投与し、本明細書に記載の症状の発生を抑えることを意味する。また、用語「予防」とは、当該組み合わせを、治療対象の症状(特に糖尿病)の前段階にある患者へ予防的に投与することを意味する。
【0116】
本明細書中、用語「進行遅延」とは、抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片と、少なくとも1種の抗糖尿病薬とを含む本発明の組み合わせを、治療対象の医学的症状(特に糖尿病、さらには2型糖尿病)の前段階にあり、かつ、対応の症状が既に形成されていると診断されている患者へ投与することを意味する。
【0117】
PTPase阻害剤、GSK−3阻害剤、非低分子模倣化合物、GFAT阻害剤、G6Pase阻害剤、グルカゴン受容体アンタゴニスト、PEPCK阻害剤、F−1,6−BPase阻害剤、GP阻害剤、RXRアゴニスト、ベータ−3ARアゴニスト、PDHK阻害剤、胃内容排出阻害剤およびUCPアゴニストの調製および製剤化の例は、本明細書中で列挙した各物質について示した特許および出願に開示されている。
【0118】
コード番号、一般名または商品名によって特定されている活性物質の構造は、標準的な解説書である「メルクインデックス」の現行版から、または、Patents International(例えば、IMS World Publications)等のデータベースから取得可能である。その対応する部分の内容は、引用により本明細書に含まれるものとする。当業者であれば、これらの参考文献に基づいて活性物質を特定することが十分に可能であり、同様に、活性物質を製造し、かつ、薬学的な指標および特性を標準的な試験モデルにてインビトロおよびインビボの双方で試験することも可能である。
【0119】
本発明の組み合わせにおいて意図される抗糖尿病薬または抗糖尿病性化合物は、薬学的に許容される塩として存在可能である。これらの化合物が、例えば、少なくとも1つの塩基性中心を有する場合、酸付加塩を形成することができる。対応の酸付加塩は、必要に応じて追加の塩基性中心を有するよう形成することもできる。酸基(例えば、COOH)を有する化合物も、塩基と塩を形成することができる。例えば、組み合わせるべき化合物は、ナトリウム塩として、マレイン酸塩または二塩酸塩として存在可能である。活性成分またはその薬学的に許容される塩は、水和物の形態で使用することもでき、また、結晶化に使用する他の溶剤を含んでいてもよい。
【0120】
併用相手は好ましくは、インスリンシグナル伝達経路モジュレーター、例えば、タンパク質チロシンホスファターゼ(PTPases)阻害剤、非低分子模倣化合物およびグルタミン−フルクトース−6−リン酸アミドトランスフェラーゼ(GFAT)阻害剤、肝グルコース産生の調節異常に作用する化合物、例えば、グルコース−6−ホスファターゼ(G6Pase)阻害剤、フルクトース−1,6−ビスホスファターゼ(F−1,6−BPase)阻害剤、グリコーゲンホスホリラーゼ(GP)阻害剤、グルカゴン受容体アンタゴニストおよびホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PEPCK)阻害剤、ピルビン酸デヒドロゲナーゼキナーゼ(PDHK)阻害剤、インスリン感受性増強薬、インスリン分泌促進薬、α−グルコシダーゼ阻害剤、胃内容排出阻害剤、インスリンおよびα2−アドレナリンアンタゴニスト、または、このような化合物の薬学的に許容される塩からなる群より選択される。
【0121】
好ましくは、併用相手はGSK−3阻害剤、レチノイドX受容体(RXR)アゴニスト、ベータ−3ARアゴニスト、UCPアゴニスト、抗糖尿病性チアゾリジンジオン(グリタゾン)、非グリタゾン系PPARγアゴニスト、PPARγ/PPARαデュアルアゴニスト、抗糖尿病性バナジウム含有化合物、ビグアナイド薬およびメトホルミンからなる群より選択される。
【0122】
さらに別の態様によれば、本発明は、抗IL1βモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片と、少なくとも1種の抗糖尿病薬とを含む組み合わせであって、抗IL1βモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片と、少なくとも1種の抗糖尿病薬とを同時に、別々に、または、続けて投与する前記組み合わせに関する。
【0123】
用語「同時」とは、本発明において使用する場合、当該組み合わせの少なくとも2つの成分を同一の経路で同時にまたは実質的に同時に投与することを意味する。
【0124】
用語「別々に」とは、本発明において使用する場合、当該組み合わせの少なくとも2つの成分を同時にまたは実質的に同時に異なる経路で投与することを意味する。
【0125】
用語「続けて」とは、本発明において使用する場合、当該組み合わせの少なくとも2つの成分を異なる時点で投与することを意味し、投与経路は同一でも、異なっていてもよい。特に、この場合の投与方法は、当該組み合わせの成分のうちの1つ(例えば、抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片)の全量投与を、残りの成分またはその他の投与を開始する前に行うことを意味する。従って、当該組み合わせの活性成分の1つを、残りの活性成分を投与する前に数ヶ月にわたって投与することが可能である。この場合、同時処置は行われない。当該組み合わせの各活性成分を交互に数週間にわたって投与することも考えられる。
【0126】
本発明は、2型糖尿病を予防、進行遅延もしくは治療する方法、または、患者のベータ細胞機能を向上させる方法であって、当該方法を必要とする患者に、抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片と、少なくとも1種の抗糖尿病薬とを含む組み合わせを治療上有効量で投与することを含む前記方法を提供する。
【0127】
別の態様によれば、同時に、別々に、または、続けて使用するための、抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片と、少なくとも1種のさらなる併用相手と、必要に応じて少なくとも1種の、即ち、1種以上、例えば2種の薬学的に許容される担体とを含む組み合わせ製剤は、「キット」または「キット・オブ・パーツ(kit of parts)」の形態である。当該キットには、ラベルまたは使用説明書を備えるものとする。ラベルまたは説明書は、抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片と少なくとも1種のさらなる併用相手とを独立して投与する、または、当該成分を区別できる量で様々に組み合わせて使用する、即ち、異なる時点に、同時に、または、続けて使用するための手引きを提供することができる。一つの実施態様では、キットのラベルまたは説明書には、本明細書に記載の用量、後続の投与回数および投薬の間隔のいずれかに従って、あるいは、本明細書に記載の用量、後続の投与回数および投薬の間隔のいずれかの組み合わせに従って、抗体または断片を投与するための説明書が含まれる。
【0128】
本明細書中、用語「薬学的に許容される担体」とは、生理学的に適合性のある任意かつ全ての溶剤、分散媒、コーティング、抗細菌・抗真菌剤、等張剤、および、吸収亢進剤または吸収遅延剤等を意味する。このような薬学的に許容される担体の例は、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、アセテート緩衝液(塩化ナトリウム含有)、デキストロース、グリセロール、PEG、エタノール等、並びに、これらの組み合わせである。薬学的に許容される担体物質の別の例は、界面活性剤、湿潤剤、または、微量物質もしくは補助物質、例えば、湿潤剤または乳化剤、抗体またはその断片の貯蔵寿命や有効性を高める保存剤または緩衝剤である。
【0129】
本発明の組み合わせの抗体は、当該技術分野で公知の様々な方法で投与できるが、多くの治療用途にとって好ましい投与経路/投与形態は皮下、筋肉内、皮内または静脈内輸注である。当業者には明らかなように、投与経路および/または投与形態は、どのような結果を望むかに応じて変わる。ある実施態様では、抗体を急激な放出から保護する担体を用いて抗体組成物を調製すればよく、例としては制御放出製剤、例えば、インプラント、経皮パッチおよびマイクロカプセル送達システムが挙げられる。生分解性・生体適合性のポリマーが使用可能であり、例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸が挙げられる。このような製剤を調製する多くの方法は特許されているか、または、通常当業者に公知である。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems(J. R. Robinson, ed., Marcel Dekker, Inc., New York (1978))を参照されたい。
【0130】
キット・オブ・パーツのパーツを次いで、例えば、同時に投与するか、または、時間をずらして(即ち、キット・オブ・パーツの任意のパーツについて異なる時点で同一または異なる時間間隔で)投与することができる。好ましくは、時間間隔は、パーツの併用による処置疾患または処置症状に対する効果が、成分のいずれか一つのみを用いて得られる効果よりも大きくなるよう選択する。ある実施態様では、本発明の組み合わせの抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片は、例えば、不活性希釈剤または吸収可能な食用担体を用いて経口投与することができる。化合物(および必要に応じて他の成分)は、硬質または軟質ゼラチンカプセルへ封入したり、錠剤へ圧縮したり、被験者の食事へ直接混ぜ込むこともできる。治療目的の経口投与の場合、抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片は賦形剤と配合して内服錠、バッカル錠、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、カシェ剤等の形態で使用することができる。本発明の化合物を非経口投与以外で投与するには、不活性化を防ぐ材料で化合物を被覆するか、または、化合物をこのような材料と一緒に投与する必要がある。
【0131】
本発明はまた、「治療上有効量」または「予防上有効量」の抗体またはその抗原結合性部分に関する。「治療上有効量」とは、必要な投与量および必要な期間にて、所望の治療結果を達成するのに有効な量を云う。治療上有効量の抗体またはその抗原結合性部分は、個人の疾患の状態、年齢、性別および体重、並びに、個人に所望の応答を惹起する抗体または抗体部分の能力といった要因に応じて変わる。治療上有効量はまた、治療上有利な作用が抗体または抗体部分のいずれの毒性または有害作用にも勝る量である。「予防上有効量」とは、必要な投与量および必要な期間にて、所望の予防結果を達成するのに有効な量を云う。典型的には、予防用量を疾患前または疾患の初期段階で被験者に使用するため、予防上有効量は治療上有効量より少ない量であってよい。
【0132】
本発明の組み合わせの各成分の治療上有効量を、同時にまたは続けてまたは別々に投与することが可能である。例えば、本発明の治療方法は、(i)抗体またはその抗原結合性断片の投与と、(ii)少なくとも1種のさらなる併用相手の投与とを同時に、続けて、または、別々に、合計して治療上有効量で、好ましくは相乗効果量で、例えば、本明細書に記載の用法に相当する一日投与量で投与することを含んでいてもよい。
【0133】
用法を調整して最適な所望の応答(例えば、治療または予防応答)を得ることができる。例えば、一回に大量投与したり、複数回に分けて経時的に投与したり、または、治療状況の危急に応じて用量を比例的に増減したりすることができる。投与の簡便性と投与量の均一性の面から、非経口組成物を投与単位剤形で製剤化するのが特に有利である。本明細書中、「投与単位剤形」とは、治療対象の被験哺乳動物それぞれで物理的に異なるが、単位投与量として適した単位を云い、各単位には、所望の治療効果をもたらすよう計算された所定量の活性化合物が必要な薬学的担体と共に含まれる。本発明の投与単位剤形は、(a)抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片に特有の特性と達成すべき特定の治療または予防効果、および、(b)個人の感受性を治療するために、このような抗体を配合する分野に特有の制限に応じて特定され、かつ、直接左右される。
【0134】
抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片の適切な投与量は、当然のことながら、使用する特定の抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片、宿主、投与形態および治療中の症状の性質や重篤度等に応じて変わる。しかしながら、予防に使用する場合、満足のいく結果は、通常体重1kg当たり約0.05mg〜約10mg、より一般的には体重1kg当たり約0.1mg〜約5mgの投与量で得られると考えられる。予防に使用する際の投薬の頻度は、通常、約1週間に1回〜約3ヶ月に1回の範囲、より一般的には約2週間に1回〜約10週間に1回の範囲、例えば、4〜8週間に1回である。
【0135】
限定するわけではないが、抗体またはその抗原結合性断片の治療上または予防上有効量のさらなる範囲は、0.025〜50mg/kg、より好ましくは0.1〜50mg/kg、より好ましくは0.1〜25、0.1〜10または0.1〜3mg/kgである。一部の実施態様では、製剤は、5mg/mLの抗体を20mM酢酸ナトリウム(pH5.5)、140mM NaClおよび0.2mg/mLポリソルベート80の緩衝液に含有する。他の実施態様では、例えば静脈内に使用する場合、製剤は、10mg/mlの抗体を2.73mg/mlの酢酸ナトリウム三水和物、45mg/mlのマンニトール、0.02mg/mlのEDTA二ナトリウム二水和物、0.2mg/mlのポリソルベート80中(氷酢酸でpH5.5へ調整)に含有する。他の実施態様では、例えば皮下または皮内に使用する場合、製剤は、50mg/mlの抗体を2.73mg/mlの酢酸ナトリウム三水和物、45mg/mlのマンニトール、0.02mg/mlのEDTA二ナトリウム二水和物、0.4mg/mlのポリソルベート80中(氷酢酸でpH5.5へ調整)に含有する。投与量の値は、緩和すべき症状の種類や重篤度に伴って変わる場合があることに注意されたい。個々のニーズや組成物を投与する者または組成物の投与を管理する者の専門的な判断に応じて、いずれの特定の被験者に対しても特定の用法を経時的に調整すべきである点、本明細書に記載の投与量の範囲が例示に過ぎず、請求項に記載の組成物の範囲または実施を制限するものではない点をさらに理解されたい。
【0136】
好ましい実施態様では、抗体またはその抗原結合性断片の治療上または予防上有効量は0.03mg/kgである。
【0137】
より好ましい実施態様では、抗体またはその抗原結合性断片の治療上または予防上有効量は0.1mg/kgである。
【0138】
より一層好ましい実施態様では、抗体またはその抗原結合性断片の治療上または予防上有効量は0.3mg/kgである。
【0139】
より一層好ましい実施態様では、抗体またはその抗原結合性断片の治療上または予防上有効量は1.5mg/kgである。
【0140】
より一層好ましい実施態様では、抗体またはその抗原結合性断片の治療上または予防上有効量は10mg/kgである。
【0141】
好ましい実施態様では、抗体またはその抗原結合性断片の治療上または予防上有効量は0.03mg/kgであり、メトホルミンの量は1000mg/日以上である。
【0142】
より好ましい実施態様では、抗体またはその抗原結合性断片の治療上または予防上有効量は0.1mg/kgであり、メトホルミンの量は1000mg/日以上である。
【0143】
より一層好ましい実施態様では、抗体またはその抗原結合性断片の治療上または予防上有効量は0.3mg/kgであり、メトホルミンの量は1000mg/日以上である。
【0144】
より一層好ましい実施態様では、抗体またはその抗原結合性断片の治療上または予防上有効量は1.5mg/kgであり、メトホルミンの量は1000mg/日以上である。
【0145】
より一層好ましい実施態様では、抗体またはその抗原結合性断片の治療上または予防上有効量は10mg/kgであり、メトホルミンの量は1000mg/日以上である。
【0146】
本発明の一つの態様によれば、本発明の組み合わせと、使用説明書と、必要に応じて用量を選択するための説明書とを含むキットまたはキット・オブ・パーツが提供される。
【0147】
当該キットはさらに、1種以上の追加の試薬(例えば、免疫抑制試薬、細胞傷害剤もしくは放射性毒性剤)、または、1種以上の追加の開示のヒト抗体またはその抗原結合性断片(例えば、第一のヒト抗体とは別個の、IL1β抗原のエピトープに結合する相補的な活性を有するヒト抗体)と、最低でも1種類のさらなる併用相手とを含有する。
【0148】
好ましくは、本発明の組み合わせによって少なくとも1つの有利な作用が見られ、例えば、抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片と少なくとも1種のさらなる併用相手との作用の相互増強、追加の有利な作用、少ない副作用、当該組み合わせの成分のうちの1つまたは各々が有効投与量でなくても得られる併用治療効果、特に、抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片と少なくとも1種のさらなる併用相手との間の相乗作用(例えば、相加効果よりも大きい作用)などが見られる。
【0149】
予想外にも、治療上有効な組み合わせを患者へ投与する場合、1.5mg/kgの抗IL1β抗体と約1000mg/日以上の用量のメトホルミン(例えば、1500mg/日または2000mg/日)とを組み合わせて投与すると、抗IL1β抗体またはメトホルミンの各々一方を単独で試験した場合(対照患者群)に比べ、患者群においてヘモグロビンA1c(HbA1c)が統計学的に有意に低下することが観察された。この知見は驚くべきであり、かつ、予想外であった。
【0150】
また、長期(例えば、1ヶ月以上、好ましくは2ヶ月以上、より好ましくは4ヶ月以上、より一層好ましくは6ヶ月以上)にわたる治療を受けている患者が、T2DM患者における膵臓のベータ細胞機能の改善の指標である食後グルコース(PPG)を維持していることも予想外にも観察された。
【0151】
本発明の態様のうちの一つによれば、患者の膵臓のベータ細胞機能を向上させるために使用する、治療上有効量の抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片と、メトホルミンとを含む組み合わせが提供される。
【0152】
IL1、特にIL1βが介在する症状(例えば、糖尿病)の性質は多因子的である。ある一定の状況下では、作用機序の異なる薬物を組み合わせればよい。しかしながら、作用機序は異なるが、同様の領域で作用する薬物を任意に組み合わせても、有利な作用を持つ組み合わせが必ずしも得られるわけではないことを、当然考慮すべきである。
【0153】
さらに驚くべきことは、実験から以下の知見が得られたことである:抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片と少なくとも1種のさらなる併用相手とを組み合わせて投与すると、有利な(特に相乗的な)治療効果だけでなく、併用処置に由来する別の利益も得られ、例えば、効力が驚くほど持続する、治療処置が一層広がる、糖尿病に関連する疾患や症状に対して驚くほど有利な作用(例えば、体重増加が少ない)が見られる、などである。
【0154】
本発明の組み合わせは、最も重要な抗糖尿病療法(例えば、メトホルミン)を受けた結果消化器系の副作用を示す患者にも有利である。このような消化器系の副作用は、メトホルミンを使うにしてもその用量や効力にも影響を及ぼしかねない。有利には、本発明の組み合わせは、メトホルミンに伴う消化器系の副作用の軽減だけでなく、より高用量のメトホルミンの許容に繋がり、従って、より有効な糖尿病療法をもたらすことができる。
【0155】
さらなる利益は、当該組み合わせの個々の成分(例えば、抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片と、本発明に従って組み合わせるべき少なくとも1種のさらなる併用相手)をより低用量で、低減型の剤形(reduced dosage form)(例えば、投与量を少なくするだけでなく、頻度も減らして適用する剤形)に使用したり、望ましくない副作用の発生を減らすために使用することができる点にある。この点は、主要な事項の一つであり、治療対象の患者が望む要件であると認められる。
【0156】
確立した試験モデル、特に本明細書に記載の試験モデルによって、抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片と少なくとも1種のさらなる併用相手との組み合わせが、IL1βが介在する症状(特に糖尿病、とりわけ2型糖尿病)をより効果的に予防または好ましくは治療することを示すことができる。
【0157】
当業者であれば、該当する動物試験モデルを選択して、本明細書に示す治療適応症と有利な作用を証明することが十分可能である。薬理活性は、例えば、マウスまたは本明細書に記載の臨床研究において本質的にはインビボ試験を行うことで実証可能である。
【0158】
本明細書中で特に定義しない限り、本発明に関連して使用する科学用語および技術用語は、当業者に通常理解される意味を有するものとする。さらに、文脈上要求されない限り、単数形の用語には複数形が含まれるものとし、複数形の用語には単数形が含まれるものとする。一般に、本明細書に記載する細胞・組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学およびタンパク質・核酸化学、並びに、ハイブリダイゼーションに関連して使用する専門用語やこれらの技術は、当該技術分野で周知かつ通常に使用されるものである。
【実施例】
【0159】
以下の実施例において例を挙げて本発明をさらに記載する。
【0160】
方法および例示
血中グルコースの制御に関するマウスでのインビボ試験
ICR−CDIマウス(オス、5週齢、体重:約20g)を18時間絶食させた後、被験動物として使用する。本発明の組み合わせと、活性成分単独とを0.5%CMC−0.14M塩化ナトリウム緩衝液(pH7.4)に懸濁する。このようにして得られた溶液を一定の容量でへ被験動物へ経口投与する。所定時間後、対照群に対する血中グルコースの減少率(%)を求める。インビトロ試験のさらなる詳細は、Osborn et al., 2008(引用により全内容が本明細書に含まれるものとする)題名:Treatment with Interleukin 1 beta antibody improves glycemic control in diet-induced obesityにおいて入手可能である。
【0161】
ヘモグロビンA1c
ヘモグロビンA1cアッセイは、コバンス中央研究所サービス(Covance Central Laboratory Services;CLS)にてFDA認可のBio−Rad VariantTM分析装置で行う。この分析装置は、イオン交換高速液体クロマトグラフィー(HPLC)とマイクロコンピュータ技術の原理を利用したものである。検出は415nmと690nmの2つの波長で行い、ベースラインを安定させる。吸光度変化のクロマトグラムを保持時間に対してプロットする。各クロマトグラムのプリントアウトには、各検出ピークを同定したレポートの他、各ピークの相対的な比率と保持時間も表示される。
【0162】
当該方法は、アッセイ間の精度が1.7〜2.1%CVであり、アッセイ内の精度が0.9〜1.1%である(サンプルのアッセイを15回繰り返し行って変動係数を評価することにより判定)。
【0163】
高感度C反応性タンパク質(hsCRP)
CRPは「急性期」タンパク質の一つであり、その血清中またはタンパク質レベルは、感染性・非感染性の炎症過程(例えば、関節リウマチ、心臓血管疾患および末梢血管疾患)に対する通常の非特異的応答時に上昇する。CRPは肝臓で合成され、血清中または血漿中に微量で存在する。
【0164】
C反応性タンパク質HSアッセイは、コバンス中央研究所サービスにてシーメンスBNII比濁計を用いた免疫比濁分析により行う。CRPを含むサンプルと混合すると、抗CRPモノクローナル抗体で被覆したポリスチレン粒子が凝集する。比濁計の散乱光強度は、サンプルのCRP含量に依存するため、既知濃度の標品の希釈物との比較からCRP濃度を求めることができる。
当該方法は、アッセイ間の精度が2.1〜5.7%CVであり、アッセイ内の精度が2.3〜4.4%である(サンプルのアッセイを10回繰り返し行って変動係数を評価することにより判定)。CRPの精度は米国病理医協会(College of American Pathologists;CAP)の心臓リスク調査との比較により評価する。
【0165】
血漿グルコース
グルコースアッセイはヘキソキナーゼ酵素法である。ヘキソキナーゼは、アデノシン三リン酸によるグルコースのリン酸化を触媒する。グルコース−6−リン酸は次いでNADの存在下で酵素のグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼによって6−ホスホグルコネートへ酸化される。当該反応時に形成したNADPH量は、検体中のD−グルコース量に相当し、吸光度の増加量により光分析的に測定する。
【0166】
当該方法は、アッセイ間の精度が5.1〜6.2%CVであり、アッセイ内の精度が1.7〜2.5%である(サンプルのアッセイを50回繰り返し行って変動係数を評価することにより判定)。当該方法はグルコース特異的であり、他の炭水化物はいずれも酸化されない。
【0167】
Cペプチド
膵臓のベータ細胞では、プロインスリン分子が切断されてインスリンとCペプチドを形成する。Cペプチドは31個のアミノ酸からなるポリペプチドであり、ベータ細胞の分泌顆粒内に貯蔵され、インスリンと等モル量で血液循環へ放出される。
【0168】
Cペプチドを判定することで、糖尿病患者の内在性インスリンの分泌予備量を評価するが、インスリン自身よりも信頼性の高いインスリン分泌の指標と考えられる。
【0169】
ADVIAケンタウルスCペプチドアッセイは、直接的な化学発光技術を用いた二部位サンドイッチイムノアッセイであり、一定量の2種類の抗体を用いる。第一の抗体(Lite試薬中)は、アクリジニウムエステルで標識されたモノクローナルマウス抗Cペプチド抗体である。第二の抗体(固相中)は、モノクローナルマウス抗Cペプチド抗体である。固相中のストレプトアビジンを共有結合させる。患者サンプルに存在するCペプチドの量と当該システムで検出される相対発光量(RLU)との間には直接的な関係が存在する。
【0170】
当該方法は、アッセイ間の精度が1.69〜1.81%CVであり、アッセイ内の精度が3.7〜4.1%である(サンプルのアッセイを20回繰り返し行って変動係数を評価することにより判定)。精度は米国病理医協会(CAP)のリガンドとの比較により評価する。
【0171】
グルカゴン
グルカゴンは、膵ランゲルハンス島のアルファ細胞によって分泌されるホルモンである。低血糖に応答して分泌され、血中グルコースを増加させる。血液中で血清グルコースレベルが上昇するにつれ、ネガティブフィードバック機構によりグルカゴンが阻害される。ミリポア/LINCOグルカゴンラジオイムノアッセイキットではI125標識グルカゴンとグルカゴン抗血清を用い、二重抗体/PEG技術により血漿中のグルカゴンレベルを判定する。当該抗体は膵グルカゴンに特異的である。濃度を増加させた未標識抗原標品を用いて標準曲線を準備し、この曲線から未知サンプル中の抗原量を算出することができる。
【0172】
当該方法は、アッセイ間の精度が7.3〜13.5%CVであり、アッセイ内の精度が4.0〜6.8%である(アッセイを繰り返し行って変動係数を評価することにより判定)。精度は米国病理医協会(CAP)のリガンドとの比較により評価する。
【0173】
実施例
実施例1 臨床研究の設計
2型糖尿病患者の静脈内に投与したACZ885の安全性、忍容性、薬物動態および薬力学を検討する多施設無作為化二重盲検プラセボ対照用量漸増試験。本検討の目的は、2型糖尿病(T2DM)患者において、ACZ885を5回投与(静脈内投与)した際の薬物動態および薬力学的作用をプラセボと比較することである。
【0174】
並行群のT2DM被験者にはメトホルミンを安定的に投与した(850mg/日以上)。ベースライン、投与後4週目および12週目にOGTTを行った。
【0175】
検討の第一の目的
・ T2DM患者のグリセミック指数およびOGTTに対するグルコース応答に及ぼすACZ885のPD作用を評価すること。
第二の目的
・ β細胞分泌能およびインスリン感受性に及ぼすACZ885の薬力学的作用を評価すること。
・ グリセミック指数に及ぼすACZ885の単回静脈内投与(0.03、0.1、0.3、1.5または10mg/kg)の効力の持続期間を評価すること。
・ T2DMにおけるACZ885の薬物動態作用を評価すること。
コホート1は15人のT2DM患者からなり、投与用量は0.3mg/kgのACZ885またはプラセボとし、主な評価は安全性および忍容性とした。
【0176】
以下のコホートは、薬力学、薬物動態、薬理ゲノミクスおよび薬理遺伝学の評価に含めた。
【0177】
・ コホート2(n=90;1:1=ACZ885:Plb)には、ACZ885(10mg/kg)またはプラセボを単回投与した。
【0178】
・ コホート3(n=96)には、ACZ885(0.1、0.3、1.5mg/kg)またはプラセボを単回投与した(1:1:1:1)。
【0179】
・ コホート4(n=30;2:1=ACZ885:Plb)には、ACZ885(0.03mg/kg)またはプラセボを単回投与した。
【0180】
統計的分析:
本検討は、単回静脈内投与後に患者を24週間(168日間)追跡するよう設計した。
【0181】
処置を分類変数とし、ベースラインを共変量とした共分散分析(ANCOVA)を用い、これらのパラメータについて処置を比較する。
【0182】
実施例2 HbA1cレベルおよびhsCRPレベルの結果
メトホルミンを安定的に投与したT2DM被験者では、0.03、0.1、0.3、1.5mg/kgのACZ885で処置後4週目に、以下の結果が得られた:
・ 1.5mg/kgの用量でヘモグロビンA1c(HbA1c)が統計学的に有意に減少した(図1A)。
・ 図1Bに示すように、高感度C反応性タンパク質(hsCRP)が(用量に比例して)直線的に低下した。
【0183】
実施例3 グルコースレベル、Cペプチドレベルおよびグルカゴンレベルの結果
4時間間隔の曲線下面積(AUC0−4h)を比較することで、他のOGTTパラメータでも用量漸増と一致する明確な傾向が報告された:グルコース(図2A)、Cペプチド(図2B)およびグルカゴン(図2C)。
【0184】
実施例4 空腹時血漿グルコースの結果
【0185】
メトホルミンを安定的に投与したT2DM被験者では、10mg/kgのACZ885で処置後4週目に、図3Aに示すように、OGTT後の血漿AUCグルコースが統計学的に有意に減少し、空腹時血漿グルコース(FPG)が減少した。
【0186】
OGTTグルコース:ACZ885を10mg/kg単回投与した4週間後に、プラセボと比較して食後グルコースが有意に低下したことが報告された(図3B)。
【0187】
実施例5 グリセミックパラメータ
さらに、ACZ885を10mg/kg静脈内へ単回投与した際のグリセミックパラメータに及ぼす薬力学的作用について投与後6ヶ月にわたる推移を図4A、4Bおよび4Cに示す。
【0188】
空腹時血漿グルコース:
空腹時血漿グルコースに及ぼす作用は、処置群では投与後4週目で統計学的に有意となり、4週〜12週にかけて減少した(図4A)。
【0189】
ピーク血漿グルコース:
OGTT後のピーク血漿グルコースの低下は、処置群では4週目で統計学的に有意となり、12週目でも維持されていた(図4B)。記号(*)は、ベースラインからの変化量についてACZ885(10mg/kg)をプラセボと比較した場合にP<0.05であることを示す。
【0190】
ヘモグロビンA1c:
処置群では、4週〜12週にかけてHbA1cのさらなる低下が観察された(−0.32% p=0.032)(図4C)。記号(*)は、ベースラインからの変化量についてACZ885(10mg/kg)をプラセボと比較した場合にP<0.05であることを示す。
【0191】
結論:
・ ACZ885(1.5mg/kg)では4週目にHbA1cの有意な低下が観察された。これらの結果から、ACZ885の単回投与により、プラセボと比較して統計学的に有意なHbA1cの低下をもたらし得ることが明らかである。
【0192】
・ hsCRPの用量応答は、4週目で直線的な減少傾向を示した。これらの結果からも、4週目でピーク血漿グルコース(PPG、OGTT後)が低下することが明らかである。
【0193】
・ 食後グルコース、Cペプチド、プロインスリンまたはグルカゴンにおいてプラセボと比較して、統計学的に有意ではないながらも投与後4週目で明確な傾向が観察された。
【0194】
・ 単回投与後に効力が持続することが報告された:10mg/kgのACZ885を単回投与することで、プラセボと比較してHbA1cが統計学的に有意に低下し(−0.32% p=0.032)、かつ、ピーク血漿グルコース(PPG、OGTT後)の低下が4週目で観察され、12週目でも維持されていた。
【0195】
OGTT後のピークグルコースレベルの逸脱が改善することでも分かるように、PPGが長期間維持されることからT2DM患者におけるベータ細胞機能の改善が明らかである。
【0196】
これらの予備的なデータは、HbA1cの向上から分かるように、かつ、投与後4週目のOGTT後パラメータの傾向に裏付けられるように、T2DM患者におけるベータ細胞機能の改善を示唆するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療上有効量の抗IL1βモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片と、少なくとも1種の抗糖尿病薬とを含む組み合わせ。
【請求項2】
前記抗糖尿病薬が、GSK−3阻害剤、レチノイドX受容体(RXR)アゴニスト、ベータ−3ARアゴニスト、UCPアゴニスト、抗糖尿病性チアゾリジンジオン(グリタゾン)、非グリタゾン系PPARγアゴニスト、PPARγ/PPARαデュアルアゴニスト、抗糖尿病性バナジウム含有化合物およびビグアナイド薬からなる群より選択される、請求項1に記載の組み合わせ。
【請求項3】
前記ビグアナイド薬が、メトホルミン、フェンホルミンおよびブホルミンまたはその薬学的に許容される塩からなる群より選択される、請求項2に記載の組み合わせ。
【請求項4】
前記抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片が、ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【請求項5】
前記ヒトモノクローナル抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片が以下の特性を有する、請求項4に記載の組み合わせ:
a)IL1βリガンドまたはIL1β受容体へ結合する;
b)IL1βに対する選択性を有する;
c)3×10−10M以下のKdでヒトIL1βへ結合する;または
d)IL1経路の活性化を阻害する。
【請求項6】
前記抗IL1βモノクローナル抗体がACZ885である、請求項5に記載の組み合わせ。
【請求項7】
前記治療上有効量の抗IL1βモノクローナル抗体が1.5mg/kgまたは10mg/kgである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【請求項8】
2型糖尿病の予防、進行遅延または治療に使用する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【請求項9】
ベータ細胞の機能を向上させるために使用する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【請求項10】
前記抗IL1βモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片と、前記少なくとも1種の抗糖尿病薬とを、同時に、別々に、または、続けて投与する、請求項8または9のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の組み合わせと、薬学的に許容される担体、賦形剤または希釈剤とを含む、医薬組成物。
【請求項12】
2型糖尿病を予防、進行遅延もしくは治療する方法、または、患者のベータ細胞機能を向上させる方法であって、当該方法を必要とする患者に、治療上有効量の請求項1〜7のいずれか一項に記載の組み合わせまたは請求項11に記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項13】
i)請求項6に記載の抗IL1β抗体;
ii)メトホルミン;および
iii)使用説明書
を含むキット。
【請求項1】
治療上有効量の抗IL1βモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片と、少なくとも1種の抗糖尿病薬とを含む組み合わせ。
【請求項2】
前記抗糖尿病薬が、GSK−3阻害剤、レチノイドX受容体(RXR)アゴニスト、ベータ−3ARアゴニスト、UCPアゴニスト、抗糖尿病性チアゾリジンジオン(グリタゾン)、非グリタゾン系PPARγアゴニスト、PPARγ/PPARαデュアルアゴニスト、抗糖尿病性バナジウム含有化合物およびビグアナイド薬からなる群より選択される、請求項1に記載の組み合わせ。
【請求項3】
前記ビグアナイド薬が、メトホルミン、フェンホルミンおよびブホルミンまたはその薬学的に許容される塩からなる群より選択される、請求項2に記載の組み合わせ。
【請求項4】
前記抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片が、ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【請求項5】
前記ヒトモノクローナル抗IL1β抗体またはその抗原結合性断片が以下の特性を有する、請求項4に記載の組み合わせ:
a)IL1βリガンドまたはIL1β受容体へ結合する;
b)IL1βに対する選択性を有する;
c)3×10−10M以下のKdでヒトIL1βへ結合する;または
d)IL1経路の活性化を阻害する。
【請求項6】
前記抗IL1βモノクローナル抗体がACZ885である、請求項5に記載の組み合わせ。
【請求項7】
前記治療上有効量の抗IL1βモノクローナル抗体が1.5mg/kgまたは10mg/kgである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【請求項8】
2型糖尿病の予防、進行遅延または治療に使用する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【請求項9】
ベータ細胞の機能を向上させるために使用する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【請求項10】
前記抗IL1βモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片と、前記少なくとも1種の抗糖尿病薬とを、同時に、別々に、または、続けて投与する、請求項8または9のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の組み合わせと、薬学的に許容される担体、賦形剤または希釈剤とを含む、医薬組成物。
【請求項12】
2型糖尿病を予防、進行遅延もしくは治療する方法、または、患者のベータ細胞機能を向上させる方法であって、当該方法を必要とする患者に、治療上有効量の請求項1〜7のいずれか一項に記載の組み合わせまたは請求項11に記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項13】
i)請求項6に記載の抗IL1β抗体;
ii)メトホルミン;および
iii)使用説明書
を含むキット。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【公表番号】特表2012−526080(P2012−526080A)
【公表日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−509036(P2012−509036)
【出願日】平成22年5月5日(2010.5.5)
【国際出願番号】PCT/EP2010/056133
【国際公開番号】WO2010/128092
【国際公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月5日(2010.5.5)
【国際出願番号】PCT/EP2010/056133
【国際公開番号】WO2010/128092
【国際公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】
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