説明

抗IL2抗体

本発明は、ヒトインターロイキン-2(IL2)に特異的に結合するヒト化モノクローナル抗体またはその断片であって、該ヒト化モノクローナル抗体が、ヒトIL2のヒトIL2受容体への結合前、結合中、および/または結合後に、ヒトIL2に結合することによって、ヒトIL2の活性を中和し、かつ該ヒト化モノクローナル抗体の軽鎖可変領域が、その第二のフレームワーク領域中、アミノ酸42〜46位に、隣接アミノ酸配列KAPKAを含む、ヒト化モノクローナル抗体またはその断片に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトサイトカインIL2に特異的に結合する抗体およびその断片に関する。本発明はさらに、こうした抗体およびその断片をコードするポリヌクレオチド、これらを含む薬学的組成物、ならびにこれらを伴う医学的使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトIL2は、他のいかなる因子にも有意な配列相同性を保持しない、アミノ酸133個(15.4 kDa)のタンパク質である。IL2は、アミノ酸153個の前駆体タンパク質として合成され、最初の20個のアミノ末端アミノ酸は、疎水性分泌シグナル配列として機能する。このタンパク質は、生物学的活性に必須の単一ジスルフィド結合(Cys58/105位を連結)を含有する。
【0003】
IL2の生物学的活性は、活性化T細胞上にほぼ独占的に発現されるが休止T細胞上には発現されない膜受容体によって仲介される。完全IL2受容体は、3つのI型膜貫通タンパク質サブユニット:α、β、およびγからなり;より低い親和性の機能性受容体は、βおよびγ受容体タンパク質のみによって構成されることも可能である。休止B細胞および休止単核白血球は、この受容体を稀にしか発現しない。IL2受容体、特にαサブユニットの発現は、複数の因子、例えばIL5、IL6、およびL2R/p55誘導因子によって調節される。
【0004】
マウスおよびヒトのIL2は、どちらも高い効率で、相同種のT細胞の増殖を引き起こす。ヒトIL2はまた、マウス細胞に対しても機能するが、逆は当てはまらない。IL2はTリンパ球の下位集団すべてに対する増殖因子である。IL2は、T細胞の抗原非特異的増殖因子であり、休止細胞において細胞周期進行を誘導し、したがって、活性化Tリンパ球のクローン性増殖を可能にする。IL2はまた、活性化B細胞の増殖および分化も促進する。T細胞の増殖と同様、この活性はまた、さらなる因子、例えばIL4の存在も必要とする。
【0005】
IL2は、そのT細胞およびB細胞に対する影響ゆえに、免疫応答の中心的な制御因子である。獲得免疫応答の開始および増幅におけるIL2の中心的な重要性は、移植拒絶などの望ましくない免疫応答を抑制するために最も一般的に用いられる薬剤の臨床的有効性によって、よく例示される。免疫抑制薬剤、シクロスポリンAおよびFK506(タクロリムス)は、T細胞受容体を通じたシグナル伝達を破壊することによって、IL2産生を阻害し、一方、ラパマイシン(シロリムス)は、IL2受容体を通じたシグナル伝達を阻害する。シクロスポリンAおよびラパマイシンは、相乗的に作用して、IL2が駆動するT細胞のクローン性増殖を防ぐことによって、免疫応答を制限する。しかし、これらの化合物はすべて、IL2に独占的に干渉するのではなく、他の因子にも干渉する、細胞内シグナル伝達経路を標的とする。これによって、これらの薬剤の臨床適用は、これらの限定された標的特異性のため、望ましくない副作用のかなりのリスクを課すと暗示される。
【0006】
IL2活性の抗体阻害剤の複数の例もまた、当技術分野に公知であり、例えば、市販の抗体ダクリズマブ(Zenapax(登録商標)、Protein Design Lab, Inc.)がある。しかし、IL2活性の公知の抗体阻害剤は、抗原自体よりも、IL2受容体に結合することによって、生物学的効果を発揮する。IL2活性の阻害剤の重要な臨床適用に鑑みて、本発明の目的は、IL2活性の別の特異的阻害剤を提供することである。
【発明の開示】
【0007】
したがって、本発明の1つの局面は、ヒトインターロイキン-2(IL2)に特異的に結合するヒト化モノクローナル抗体またはその断片であって、該ヒト化モノクローナル抗体が、ヒトIL2のヒトIL-2受容体への結合前、結合中、および/または結合後に、ヒトIL2に結合することによって、ヒトIL2の活性を中和し、かつ該ヒト化モノクローナル抗体の軽鎖可変領域が、その第二のフレームワーク領域中に、好ましくはアミノ酸42〜46位に、隣接アミノ酸配列KAPKAを含む、ヒト化モノクローナル抗体またはその断片を提供する。
【0008】
本明細書において、「ヒト化モノクローナル抗体」もしくは「ヒト化抗体」もしくは「ヒト化免疫グロブリン」という用語、またはそれらに文法的に関連する変形は、互換的に用いられ、一つまたは複数の非ヒト免疫グロブリン由来の抗原結合部位を含む分子を指し、該分子は、少なくとも1つの部分、例えば一つまたは複数のヒト免疫グロブリンまたはその生殖系列配列由来の軽鎖可変ドメインまたは重鎖可変ドメインの少なくとも1つのフレームワーク領域をさらに含む。「ヒト化抗体」は、本明細書において、ヒト化軽鎖可変ドメイン免疫グロブリンおよびヒト化重鎖可変ドメイン免疫グロブリンを含む。ヒト化抗体は、一つまたは複数のヒト遺伝子配列に部分的にまたは完全に由来する(合成類似体を含む)定常領域を含んでもよい。ヒト化抗体は、CDRを供給するドナー抗体と同じ標的抗原に結合すると予期される。典型的には、CDRを除く、ヒト化抗体または免疫グロブリンのすべてのセグメントまたは部分は、天然またはコンセンサス ヒト免疫グロブリン配列の対応するセグメントまたは部分に実質的に同一であるかまたは実質的に相同である。
【0009】
ヒト化モノクローナル抗体の軽鎖可変領域(VL)は、その第二のフレームワーク領域中に、好ましくはアミノ酸42〜46位に、隣接アミノ酸配列KAPKAを含む。この好ましい配列番号付け、すなわち42〜46位は、インターネットアドレスhttp://www.mrc-cpe.cam.ac.ukのもとで入手可能な「VBase」データベース((著作権)MRC Center for Protein Engineering)に示されるような番号付けを指す。明確にするために、ヒト生殖系列VL(V-κおよびV-λ配列として)およびVH領域のフレームワーク領域の配列アラインメントを、Vbaseに現れるように、本出願に含む(それぞれ、図7、8、および9を参照されたい;特に、ヒト生殖系列V-κおよびV-λ配列中の第二の軽鎖フレームワーク領域の番号付けに関しては、図8aおよび9aを参照されたい)。
【0010】
上記に引用する参考資料との相関関係を簡略化するため、アミノ酸配列KAPKA(すなわちLys-Ala-Pro-Lys-Ala)の好ましい番号付け(すなわちアミノ酸42〜46位)を本明細書に提供するが、配列番号付け自体よりもむしろ、この部分的配列内のアミノ酸の同一性が、本発明のヒト化モノクローナル抗体の活性を決定する要因であることを理解すべきである。当業者が知るように、ヒト生殖系列抗体配列を番号付けるには、複数の慣例があり、上記に引用する参考資料(VBase)は、これらのうちの1つに過ぎない。したがって、特定のヒト生殖系列軽鎖可変領域の第二のフレームワーク領域内に含まれる部分的アミノ酸配列KAPKAは、上記引用に明記されるもの以外の番号付け慣例にしたがって別の番号付けを割り当てることも可能である。こうした場合、部分的アミノ酸配列KAPKAが、好ましいアミノ酸42〜46位以外の番号付けを保持する一方、他のこの番号付け慣例のもとでは、好ましいアミノ酸42〜46位に対応する配列が、KAPKA以外のアミノ酸配列である可能性が高い。こうした場合、当業者が理解すると考えられるように、「正しい」配列(KAPKA)を持つが逸脱した番号付け(好ましいアミノ酸42〜46位以外の何か)を持つ部分的アミノ酸配列は、その番号付けが「正しい」(好ましいアミノ酸42〜46位である)がその同一性がKAPKAではない別の部分的アミノ酸配列よりも、本発明の本質的な特徴であると見なすべきである。
【0011】
驚くべきことに、第二の軽鎖フレームワーク領域中に、コンセンサス配列KAPKAを欠く抗体またはその断片、特に、この伸長中の末端アラニン残基を欠くものは、IL2に特異的に結合可能であるが、その活性を中和することが不可能であることが観察された。これは、ヒト化モノクローナル抗体の軽鎖および重鎖の可変鎖に含まれるCDR領域が、配列番号1〜3(それぞれ、軽鎖可変領域CDR 1〜3に関して)、および配列番号4〜6(それぞれ、重鎖可変領域CDR 1〜3に関して)に示すとおりである場合、特に当てはまる。理論に束縛されることなく、本発明者らは、コンセンサス配列KAPKAの除外に際する、特にこの伸長中の末端アラニン残基の、アラニン以外の別のアミノ酸での置換に際する、この中和活性の喪失が、中和に対して不都合な影響を有するが、結合活性に対しては不都合な影響を持たない、不安定化および/またはコンホメーション再編成に起因すると考えている。
【0012】
本明細書において、「特異的に結合する」または「特異的結合」、「特異的に結合すること」、「特異的結合因子」などの用語は、ヒト化モノクローナル抗体またはその断片が、潜在的な結合パートナーとしての多数の異なる抗原のプールから、ヒトIL2のみが結合するかまたは有意に結合する度合いまで、ヒトIL2とヒトIL2とは異なる任意の数の他の潜在的抗原とを区別する能力を指す。本発明の意味の中で、潜在的な結合パートナーとして等しく利用可能な多数の異なる抗原のプールの中から、ヒトIL2が、ヒトIL2とは異なる他の抗原よりも、少なくとも10倍、好ましくは50倍、最も好ましくは100倍またはそれより高く、より頻繁に(動力学的意味で)結合する場合、ヒトIL2は「有意に」結合する。当業者が理解するように、例えばBiacore装置上で、こうした動力学的測定を行ってもよい。
【0013】
本発明記載のヒト化抗体またはその断片はモノクローナルである。本明細書において、「モノクローナル」という用語は、当技術分野において、それに典型的に付与される意味を有する、すなわち、結合する抗原上の単一のエピトープを認識する抗体と理解すべきである。これはポリクローナル抗体とは対照的であり、ポリクローナル抗体は、この抗原上の異なるエピトープではあるが、同じ抗原に結合する、別個の抗体のコレクションに相当する。このため、抗原の単一の分子は、この抗原に特異的なポリクローナル抗体の複数の分子に同時に結合され得るが、この抗原に特異的な特定のモノクローナル抗体の単一の分子によってのみ結合可能である;モノクローナル抗体の単一の分子が結合した後、結合されたエピトープはブロックされ、したがって、同一のモノクローナル抗体の別の分子による結合にはもはや利用可能ではない。抗体がモノクローナル性であると、こうした抗体は、よく特徴付けられ、かつ再生可能に作製および精製可能である、単一の均質な分子種として存在すると考えられるため、抗体は治療的薬剤として使用するのに特によく適したものとなる。これらの要因は、その生物学的活性を高レベルの正確さで予測することができる産物を生じ、これは、こうした分子が、哺乳動物、特にヒトにおける治療的投与に関する規制認可を得ようとしているならば、非常に重要な検討事項である。
【0014】
本明細書において、「中和」、「中和剤」、「中和すること」、およびそれに文法的に関連する変形は、IL2の生物学的効果の部分的または完全な減弱を指す。IL2の生物学的効果のこうした部分的または完全な減弱は、細胞内シグナル伝達、細胞増殖、可溶性物質の放出、細胞内遺伝子活性化、例えばIL2以外のリガンドに対する表面受容体の発現を生じる細胞内遺伝子活性化の上方制御または下方制御で明らかになるような、IL2が仲介するシグナル伝達の修飾、中断、および/または抑止から生じる。当業者が理解するように、薬剤、例えば問題の抗体またはその断片が、中和剤として分類されるものであるかどうかを決定する、複数の様式が存在する。一般的に、これは、以下のように一般的に行われる標準的インビトロ試験によって達成可能である。第一の増殖実験において、増殖の度合いが、IL2の活性に依存することが公知である細胞株を、多様な濃度のIL2を含む一連の試料中でインキュベーションし、このインキュベーション後、細胞株の増殖の度合いを測定する。この測定から、細胞の最大増殖の半分を可能にするIL2の濃度を決定する。次いで、一連の試料各々において、第一の増殖実験で用いたものと同じ数の細胞、上記で決定したIL2濃度、および今度は、IL2の中和剤であると推測される抗体またはその断片の多様な濃度を使用して、第二の増殖実験を行う。再び、細胞増殖を測定して、最大増殖の半分の阻害を達成するのに十分な抗体またはその断片の濃度を決定する。増殖阻害対抗体(またはその断片)濃度の生じたグラフが、シグモイド形状であるならば、ある程度の抗体依存性増殖阻害が達成されており、すなわちIL2の活性が、ある程度、中和されている。こうした場合、抗体またはその断片は、本発明の意味において、「中和剤」と見なされるものとする。その増殖の度合いが、IL2活性に依存することが公知である細胞株の一例は、LGC Promochemから市販されているCTLL-2細胞株である。適切な細胞株の別の例は、NK92(DSMZ)である。
【0015】
驚くべきことに、本発明のヒト化モノクローナル抗体は、ヒトIL2のヒトIL2受容体への結合前、結合中、および/または結合後に、ヒトIL2に結合することによって、ヒトIL2の活性を中和する。この中和様式は非常に予期せぬものである。慣例的には、受容体へのリガンドの結合に依存するリガンドの生物学的活性の、抗体が仲介する中和は、こうしたリガンド-受容体複合体が形成されることを防ぐことによって達成される。中和のこの古典的なシナリオによれば、中和抗体は、リガンド-受容体界面の位置で、リガンドまたは受容体に結合する。この方式では、抗体の存在は、立体的におよび/または静電的に、リガンド-受容体複合体の形成を防ぐ。すなわち、リガンド-受容体複合体は形成されず、かつ受容体へのリガンドによる結合に通常起因する、生物学的活性は達成されない。
【0016】
本発明記載のヒト化モノクローナル抗体に関して観察される中和の様式は、IL2に通常起因する生物学的活性の抑止が、IL2およびその受容体間の複合体形成の防止に依存しない点で、この古典的シナリオとは著しく異なる。これは、IL2の生物学的活性が、IL2がIL2受容体にすでに結合していたかまたはいなかったかに関わらず、IL2の生物学的活性が抑止されることを意味し、本発明のヒト化モノクローナル抗体によって認識されるエピトープが、IL2受容体と相互作用するIL2の部分上に位置しないことを暗示する。こうしたものとして、IL2中和は、いくつかの様式を介して、本発明のヒト化モノクローナル抗体で達成され得る。
【0017】
第一の様式によれば、抗体は、IL2およびその受容体間の複合体形成前に、溶液中のIL2に結合し、したがってIL2がその受容体に結合した場合でも、IL2が仲介するシグナル伝達が起こらない。
【0018】
第二の様式によれば、抗体は、IL2がその受容体と複合体を形成するのと同時にIL2に結合する。ここでもやはり、受容体-IL2-抗体の三元複合体が同時に形成され、いかなるシグナル伝達も、または少なくともいかなる有意なシグナル伝達も生じない。
【0019】
第三の様式によれば、IL2はその受容体との複合体をすでに形成しており、かつ抗体がIL2に結合し、一方、IL2は、IL2受容体保持細胞の表面上の受容体との複合体中に存在する。この第三のシナリオにおいて、抗体がIL2に結合する前にすでに起きていた、IL2が仲介するシグナル伝達はいずれも、抗体が結合すると抑止される。
【0020】
こうした非古典的中和、すなわち本発明のヒト化モノクローナル抗体によって達成されるような中和は、非常に驚くべきものであり、かついくつかの治療的利点を有する。
【0021】
第一に、本発明のヒト化モノクローナル抗体は、IL2受容体との接触に直接関与しないIL2のエピトープを認識し、一方の治療的抗体および他方のIL2受容体間に競合はまったく生じない。このことは、さもなければ同じエピトープに関する結合競合が抗体とIL2受容体との間に存在する場合に可能となると考えられる濃度より、より低い濃度の治療的抗体を患者に投与しうるという効果を有する。これは、生物学的効果を失うことなく、投与する濃度を(古典的中和様式と仮定して、必要とされるものに比較して)減少させ得るため、本発明のヒト化モノクローナル抗体の治療有効性を効果的に増加させる。患者耐容性の観点からのみでなく、経済的観点からも、より少量の治療薬剤の投与が非常に望ましく、これは所与の治療のコスト負荷が減少するか、または逆に、所与の量の治療的抗体から、より多数の患者が利益を受け得るためである。
【0022】
第二に、上記で暗示したように、本発明のヒト化モノクローナル抗体が、すでにその受容体との複合体中にあるIL2に結合し、かつその生物学的活性を中和する能力は、IL2をその受容体結合パートナーからまず解離させる必要を伴わずに、IL2が仲介するすでに実行中のシグナル伝達を遮断し得るという大きな利点を有する。これは、いかなる治療効果を誘発するよりも前に、IL2上の結合エピトープに関して、IL2受容体とまず競合しなければならない、他の「古典的」抗体中和剤で可能であるよりも、本発明のヒト化モノクローナル抗体の所望の中和生物学的活性が、インビボでより迅速に達成されるという究極の効果を有する。この作用スピードは、抗IL2治療の公知の分野である、臓器移植の免疫拒絶などの急性のシナリオにおいて、特に好都合であり得る。
【0023】
上述のような、こうした非典型的な中和様式の第三の利点は、IL2受容体がT細胞表面に位置するという事実に関する。T細胞はそれ自体、IL2を産生し、かつまた、増殖によってIL2に応答し、それによって、それ自体の増殖を増強する。移植手術後の組織拒絶などの特定の急性炎症性応答において、存在するT細胞に起因する炎症性応答の度合いを減少させるだけでなく、免疫応答を生じるT細胞の数を減少させることが望ましい。本発明のヒト化モノクローナル抗体は、この目的を達成する際に特に有効である。上記で説明したように、T細胞表面上の受容体にすでに結合しているIL2の生物学的活性が抑止されると考えられる。しかし、こうした抑止後、本発明のヒト化モノクローナル抗体は、典型的には、特定の時間、IL2(それ自体、IL2受容体に結合している)に結合したままであり、したがって、抗体依存性細胞傷害(「ADCC」)を介した破壊に向けてT細胞を標的化する。ADCCにおいて、免疫グロブリンでコーティングされた標的細胞は、標的細胞をコーティングしている免疫グロブリンのFc部分を認識するFc受容体を持つエフェクター細胞によって殺される。大部分の場合、ADCCに関与するエフェクター細胞は、その表面上に例えばFc受容体Fc-γ-RIIIを保持するナチュラルキラー(「NK」)細胞である。このように、免疫グロブリンにコーティングされている細胞のみが殺され、したがって、殺細胞の特異性は、抗体の結合特異性に直接相関する。次いで、本発明の関連において、その受容体との複合体中にあるIL2を介して、本発明のヒト化モノクローナル抗体で装飾されているT細胞は、上記の意味で標的細胞となり、次いで、例えばNK細胞によって溶解される。効果は、T細胞などの、IL2受容体を保持する細胞に起因する免疫応答の迅速かつ有効な減弱である。
【0024】
本発明の1つの態様にしたがって、ヒトモノクローナル抗体またはその断片中に含まれる、第一、第三、および/または第四の軽鎖フレームワーク領域の少なくとも1つは、その領域に関するヒト生殖系列配列に対応する。
【0025】
本発明のさらなる態様にしたがって、本発明のヒト化モノクローナル抗体またはその断片の軽鎖可変領域は、そのCDR1領域中に配列番号1に示すようなアミノ酸配列を含む。本発明のさらなる態様にしたがって、本発明のヒト化モノクローナル抗体またはその断片の軽鎖可変領域は、そのCDR2領域中に配列番号2に示すようなアミノ酸配列を含む。本発明のさらなる態様にしたがって、本発明のヒト化モノクローナル抗体またはその断片の軽鎖可変領域は、そのCDR3領域中に配列番号3に示すようなアミノ酸配列を含む。
【0026】
本発明のさらなる態様にしたがって、本発明のヒト化モノクローナル抗体またはその断片の軽鎖可変領域は、そのCDR1領域中に配列番号1に示すようなアミノ酸配列を、そのCDR2領域中に配列番号2に示すようなアミノ酸配列を、かつそのCDR3領域中に配列番号3に示すようなアミノ酸配列をさらに含む。
【0027】
本発明のさらなる態様にしたがって、重鎖可変領域は、そのCDR1領域中に配列番号4に示すようなアミノ酸配列を含む。本発明のさらなる態様にしたがって、重鎖可変領域は、そのCDR2領域中に配列番号5に示すようなアミノ酸配列を含む。本発明のさらなる態様にしたがって、重鎖可変領域は、そのCDR3領域中に配列番号6に示すようなアミノ酸配列を含む。
【0028】
本発明のさらなる態様にしたがって、重鎖可変領域は、そのCDR1領域中に配列番号4に示すようなアミノ酸配列を、そのCDR2領域中に配列番号5に示すようなアミノ酸配列を、かつそのCDR3領域中に配列番号6に示すようなアミノ酸配列を含む。
【0029】
本発明のさらなる態様にしたがって、本発明のヒト化モノクローナル抗体またはその断片の軽鎖可変領域は、そのCDR1領域中に配列番号1に示すようなアミノ酸配列を、そのCDR2領域中に配列番号2に示すようなアミノ酸配列を、かつそのCDR3領域中に配列番号3に示すようなアミノ酸配列をさらに含み、かつ重鎖可変領域は、そのCDR1領域中に配列番号4に示すようなアミノ酸配列を、そのCDR2領域中に配列番号5に示すようなアミノ酸配列を、かつそのCDR3領域中に配列番号6に示すようなアミノ酸配列を含む。これらのCDR領域は、上述の方式で、IL2に結合し、かつその生物学的効果を中和する際に、特に好都合であることが見出されている。
【0030】
本発明のさらなる態様にしたがって、第一の軽鎖フレームワーク領域のアミノ酸配列、第二の軽鎖フレームワーク領域の残りのアミノ酸配列、および第三の軽鎖フレームワーク領域のアミノ酸配列は、遺伝子座O12、O2、O18、O8、A30、L1、L15、L4、L18、L5、L19、L8、L23、L9、L11、もしくはL12でヒト生殖系列サブグループVKIの任意のものに;または遺伝子座1aでヒト生殖系列サブグループVL1の任意のものに;または遺伝子座2c、2e、2a2、もしくは2b2でヒト生殖系列サブグループVL2の任意のものに対応する。この態様において、「第二の軽鎖フレームワーク領域の残りのアミノ酸配列」は、配列KAPKA以外の第二の軽鎖フレームワーク領域中のアミノ酸を指す。VBaseデータベースの番号付けを用いると、この軽鎖フレームワーク領域が、V-κまたはV-λフレームワーク領域であるかどうかに関わらず、「第二の軽鎖フレームワーク領域の残りのアミノ酸配列」は、両端を含めて、35〜41位および47〜49位のアミノ酸を示す(V-κおよびV-λフレームワーク領域に関するヒト生殖系列配列の番号付けに関しては、それぞれ、図7aおよび8aを参照されたい)。この態様において好ましいのは、第四の軽鎖フレームワーク領域中に、ヒト生殖系列配列JK4中に見られるものに対応する配列、特にFGGGTKVEIKをさらに組み入れることである。第四の軽鎖フレームワーク領域として使用するのに適した他のアミノ酸配列には、限定されるわけではないが、

が含まれる。
【0031】
さらなる態様にしたがって、ヒトモノクローナル抗体またはその断片に含まれる、第一、第二、および/または第三の重鎖フレームワーク領域の少なくとも1つが、その領域に関するヒト生殖系列配列に対応する。
【0032】
さらなる態様にしたがって、第一の重鎖フレームワーク領域のアミノ酸配列、第二の重鎖フレームワーク領域のアミノ酸配列、および第三の重鎖フレームワーク領域のアミノ酸配列が、ヒト生殖系列サブグループVH3の任意のものに、特に、遺伝子座3-07のものに対応し、第一の重鎖フレームワーク領域のアミノ酸配列は、

であり、第二の重鎖フレームワーク領域のアミノ酸配列は、

であり、かつ第三の重鎖フレームワーク領域のアミノ酸配列は、

である。第四の重鎖フレームワーク領域のアミノ酸配列を、例えば生殖系列遺伝子座3-07内の上記に引用する3つのフレームワーク配列と組み合わせて、以下の配列の1つから、好都合に選択してもよい。

【0033】
好ましい態様において、ヒト化モノクローナル抗体またはその断片は、配列番号7に示すようなアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域および配列番号8に示すようなアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。特に好ましいのは、配列番号9に示すようなアミノ酸配列を含む軽鎖および配列番号10に示すようなアミノ酸配列を含む重鎖を含む、ヒト化モノクローナル抗体である。以下で、配列番号9および10ならびに/または配列番号7および8を含むヒト化抗IL2 IgG1抗体は、「抗IL2」と称される。
【0034】
ヒト化モノクローナル抗体は、IgG抗体、特に、IgG1抗体またはIgG4抗体の形であってもよい。当技術分野に周知であるように、IgGは、非常に識別性が高い抗原認識および結合に関与する可変抗体領域だけでなく、内因性に産生される抗体に通常存在する重鎖および軽鎖抗体ポリペプチド鎖の定常領域、およびある場合には、さらに、炭水化物での一つまたは複数の部位での装飾も含み、こうしたグリコシル化は、通常、IgGのFc部分上にある。これらのFc部分は、ADCCおよび補体依存性細胞傷害(「CDC」)など、インビボの多様なエフェクター機能を誘発することが公知である。ADCCの機序を上記に記載する。CDCでは、それぞれのFc部分が互いに近接するように、2つの同一の免疫グロブリンが、標的細胞表面上の2つの同一抗原(例えば、ここでは、T細胞上のIL2)に結合する。このシナリオは、補体タンパク質を誘引し、これらの中には、補体タンパク質、例えばC1q、C3、C4、およびC9があり、この後者が、標的細胞中に孔を生成する。標的細胞は、この穿孔によって殺される。同時に、標的細胞はまた、その表面上の他の位置でも装飾される。この装飾はエフェクター細胞を誘引し、次いで、ADCC機序に関連して上述したものと類似の方式で、エフェクター細胞が標的細胞を殺す(例えばGelderman et al. (2004), Trends Immunology 25, 158-64を参照されたい)。
【0035】
好都合なことに、IgG抗体は、IgG1抗体またはIgG4抗体であり、インビボでのこれらの作用機序が特によく理解されかつ特徴付けられているため、これらの形式が好ましい。これは、IgG1抗体について特によく当てはまる。
【0036】
本発明のさらなる態様にしたがって、ヒト化モノクローナル抗体の断片は、scFv、単一ドメイン抗体、Fv、ダイアボディ、タンデムダイアボディ、Fab、Fab’、またはF(ab)2であってもよい。これらの形式を、一般的に2つのサブクラス、すなわち一本鎖ポリペプチドからなるもの、および少なくとも2つのポリペプチド鎖を含むものに分けてもよい。前者のサブクラスのメンバーには、scFv(ポリペプチドリンカーを介して単一のポリペプチド鎖に連結される、1つのVH領域および1つのVL領域を含む);および単一ドメイン抗体(ヒトIL2に特異的に結合する単一の抗体可変ドメインを含む)が含まれる。後者のサブクラスのメンバーには、Fv(互いに非共有的に会合する、別個のポリペプチド鎖として、1つのVH領域および1つのVL領域を含む);ダイアボディ(各々、2つの抗体可変領域(ポリペプチド鎖あたり、通常、1つのVHおよび1つのVL)を含む、2つの非共有的に会合したポリペプチド鎖を含み、かつ一方のポリペプチド鎖上のVHと、それぞれの他方のポリペプチド鎖上のVLとの、およびその逆の非共有的会合に際して、二価抗体分子が生じるように配置される);タンデムダイアボディ(2つの異なる特異性の、4つの共有結合免疫グロブリン可変(VHおよびVL)領域を含み、上述のダイアボディの2倍大きいホモ二量体を形成する、二重特異性一本鎖Fv抗体);Fab(1つのポリペプチド鎖として、それ自体、VL領域および完全軽鎖定常領域を含む完全抗体軽鎖、ならびに別のポリペプチド鎖として、完全VH領域および重鎖定常領域の一部を含む抗体重鎖の一部を含み、2つの該ポリペプチド鎖が、鎖間ジスルフィド結合を介して分子間連結されている);Fab’(抗体重鎖上に、さらなる還元ジスルフィド結合が含まれる以外、上述のFab同様);およびF(ab)2(2つのFab’分子を含み、各Fab’分子は、鎖間ジスルフィド結合を介して、それぞれの他方のFab’分子に連結される)が含まれる。一般的に、上述の種類の抗体断片は、例えば、目下の特定の緊急事態における治療的投与に望ましい抗体の薬物動態学的特性を調製する際に、より大きい柔軟性を可能にする。例えば、あまり血管形成されていないことが公知である組織(例えば関節)を治療する際に、組織浸透の度合いを増加させるため、投与する抗体のサイズを減少させることが望ましいこともあり得る。特定の状況下では、治療的抗体が体から除去される速度を増加させることが望ましい可能性もまたあり、この速度は、一般的に、投与する抗体のサイズを減少させることによって、加速させることができる。
【0037】
本発明のさらなる態様にしたがって、ヒト化モノクローナル抗体は、一価単一特異性、または多価単一特異性もしくは多価多重特異性、特に二価単一特異性もしくは二価二重特異性型で存在してもよい。一般的に、多価単一特異性抗体、特に二価単一特異性抗体は、こうした抗体によって達成される中和が、アビディティー効果、すなわち同じ抗原、ここではヒトIL2の複数の分子への、同じ抗体による結合によって増強されるという治療的利点をもたらし得る。本発明の抗体のいくつかの一価単一特異性型が上記に記載されている(例えばscFv、Fv、または単一ドメイン抗体)。本発明のヒト化モノクローナル抗ヒトIL2抗体の多価多重特異性、特に二価二重特異性型には、一方の結合アームがヒトIL2に結合し、一方、他方の結合アームがヒトIL2とは異なる別の抗原に結合する、完全IgGが含まれてもよい。さらなる多価多重特異性、特に、二価二重特異性型は、好都合に、ヒト化一本鎖二重特異性抗体、すなわち、上述のような2つのscFv実体を含み、当技術分野に公知であるように、2つの該scFv実体間の短いポリペプチドスペーサーによって1つの連続ポリペプチド鎖に連結される、組換えヒト化抗体構築物であってもよい。ここでは、二重特異性一本鎖抗体内に含まれる二重特異性一本鎖抗体の1つのscFv部分が、上記に示すようなヒトIL2に特異的に結合し、一方、この二重特異性一本鎖抗体のそれぞれの他方のscFv部分が、治療的利点があることが決定された別の抗原に結合すると考えられる。
【0038】
さらなる態様にしたがって、ヒト化モノクローナル抗体またはその断片を、例えば有機ポリマーで、例えばポリエチレングリコール(「PEG」)の一つまたは複数の分子で、誘導体化してもよい。当技術分野に公知であるように、こうした誘導体化は、抗体またはその断片の薬力学的特性を調節する際に好都合であり得る。
【0039】
scFvが特に好ましい(一価単一特異性)抗体断片であり、特に、配列番号11または配列番号12に示すようなアミノ酸配列を含むscFvが好ましい。
【0040】
本発明のさらなる局面は、配列番号1〜12のいずれかに示すようなアミノ酸配列に、少なくとも70%の相同性、好ましくは少なくとも80%、90%、またはさらにより好ましくは少なくとも95%の相同性を有するアミノ酸配列を含む、ヒトモノクローナル抗体またはその断片を提供する。Vector NTI(InforMax(商標), Maryland, USA)などの標準的配列アラインメントプログラムによって、相同性を決定してもよい。こうしたプログラムは、整列した配列をアミノ酸ごとに比較し、かつ比較のため、多様なレベルのストリンジェンシーに設定可能である(例えば同一アミノ酸、保存的アミノ酸置換等)。この用語を本明細書で用いる場合、問題の2つのアミノ酸は、これらが同じメイングループに属するならば、互いに「保存的置換」であると見なされる。非限定的な例として、非極性アミノ酸群に属する2つの異なるアミノ酸は、これらの2つのアミノ酸が同一でなかった場合であっても、互いに「保存的置換」と見なされ、しかし、片方の上の非極性アミノ酸および他方の上の塩基性アミノ酸は、互いに「保存的置換」とは見なされない。Alberts、Johnson、Lewis、Raff、Roberts、およびWalterによる、"Molecular Biology of the Cell", 4th Edition (2002)のパネル3.1は、アミノ酸を4つのメイングループ:酸性、非極性、非荷電極性、および塩基性にグループ分けする。本発明の目的のため、特定のアミノ酸が、問題の別のアミノ酸の「保存的置換」であるかどうかを決定する目的のために、こうしたグループ分けを用いてもよい。
【0041】
本発明の別の局面は、ポリヌクレオチド分子を提供する。このポリヌクレオチド分子は、配列番号1〜12のいずれかに示すようなアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列、または該ヌクレオチド配列に少なくとも60%、好ましくは少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%の相同性を示すヌクレオチド配列を含む。ここで、配列番号1〜12のいずれかのアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド分子を、配列アラインメントにより、問題のヌクレオチド配列(「試験配列」)を有するポリヌクレオチド分子と比較することによって、相同性を決定してもよく、かつ試験配列中のヌクレオチドが、配列番号1〜12のいずれかの対応するアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列中の対応するヌクレオチドに同一であるか、または配列番号1〜12のいずれかのアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列中の対応するヌクレオチドからの、試験配列中の一つもしくは複数のヌクレオチド逸脱がヌクレオチドトリプレットを生じ、ここでヌクレオチドトリプレットが、翻訳された際に、配列番号1〜12のいずれかの対応するアミノ酸配列中の対応するアミノ酸に同一である(縮重トリプレットのため)か、もしくはそのアミノ酸の保存的置換を生じるかのいずれかであるならば、試験配列中のヌクレオチドは相同であると見なされる。ここで、「保存的置換」という用語は、上述のように理解されるものとする。
【0042】
本発明のさらなる局面は、ヒト化モノクローナル抗体もしくはその断片、または配列番号1〜12のいずれかに示すようなアミノ酸配列をコードするか、もしくは配列番号1〜12のいずれかに対して、少なくとも70%の相同性を保持するアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド分子を含む、薬学的組成物を提供し、「相同性」は上記で説明するように理解されるものとする。
【0043】
本発明にしたがって、「薬学的組成物」という用語は、哺乳動物患者、好ましくはヒト患者に投与するための組成物に関する。好ましい態様において、薬学的組成物は、非経口注射用または注入用の組成物を含む。こうした非経口注射または注入は、例えば皮内、皮下、筋内、および/または腹腔内の注射または注入の形の吸収プロセスを利用してもよい。あるいは、こうした非経口注射または注入は、吸収プロセスを迂回し、かつ心臓内、動脈内、静脈内、腰内、および/またはクモ膜下腔内の注射または注入の形であってもよい。別の好ましい態様において、薬学的組成物は、皮膚を介した投与用の組成物を含む。皮膚を介した投与の一例は、皮膚上投与であり、ここで、薬学的組成物を、例えば溶液、懸濁物、エマルジョン、泡、軟膏、軟膏剤、ペースト剤、および/またはパッチとして皮膚に適用する。あるいは、一つまたは複数の粘膜を介して、薬学的組成物の投与を達成してもよい。例えば、投与は、頬側、舌、または舌下であってもよく、すなわち口および/または舌の粘膜を介してもよく、例えば錠剤、ロゼンジ、糖衣丸薬(すなわち糖衣剤)、および/またはうがい用溶液として適用してもよい。あるいは、投与は、経腸であってもよく、すなわち胃および/または腸管の粘膜を介してもよく、例えば錠剤、糖衣丸薬(すなわち糖衣剤)、カプセル、溶液、懸濁物、および/またはエマルジョンとして適用してもよい。あるいは、投与は直腸であってもよく、例えば座薬、直腸カプセル、および/または軟膏剤もしくは軟膏として適用してもよい。あるいは、投与は鼻内であってもよく、例えば点鼻剤、軟膏剤もしくは軟膏、および/またはスプレーとして適用してもよい。あるいは、投与は肺であってもよく、すなわち気管支および/または肺胞の粘膜を介してであってもよく、例えばエアロゾルおよび/または吸入剤として適用してもよい。あるいは、投与は結膜であってもよく、例えば点眼剤、目の軟膏、および/または目のすすぎ剤として適用してもよい。あるいは、投与は、尿生殖路の粘膜を介して達成してもよく、例えば膣内または尿道内であってもよく、例えば座薬、軟膏剤、および/または棒状薬剤(stylus)として適用してもよい。上記の投与代替物は、互いに排他的ではなく、これらの任意の数の組み合わせが、有効な治療措置を構成しうることを理解すべきである。
【0044】
本発明の薬学的組成物は、薬学的に許容可能な担体をさらに含んでもよい。適切な薬学的担体の例は、当技術分野に周知であり、かつリン酸緩衝生理食塩水溶液、水、エマルジョン、例えば油/水エマルジョン、多様な種類の湿潤剤、無菌溶液等が含まれる。周知の慣例的な方法によって、こうした担体を含む組成物を調製してもよい。これらの薬学的組成物を、適切な用量で被験体に投与してもよい。担当医および臨床的要因によって投薬措置を決定する。医療分野で周知であるように、任意の1人の患者の投薬量は、患者の大きさ、体表面積、年齢、投与しようとする特定の化合物、性別、投与時間および投与経路、全身の健康状態、ならびに同時に投与する他の薬剤に依存する。例えば非経口投与のための調製物には、無菌水性または非水性溶液、懸濁物、エマルジョン、およびリポソームが含まれる。非水性溶液の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注射可能有機エステルである。水性担体には、水、アルコール/水性溶液、エマルジョン、または生理食塩水および緩衝媒体を含む懸濁物が含まれる。一般的な非経口投与に適したビヒクルには、塩化ナトリウム溶液、リンゲルのデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸化リンゲル溶液、または不揮発性油が含まれる。静脈内投与または動脈内投与に適したビヒクルには、流体および栄養素補充剤、電解質補充剤(リンゲルのデキストロースに基づくものなど)等が含まれる。保存剤および他の添加剤、例えば抗微生物剤、酸化防止剤、キレート剤、不活性ガス等もまた、存在してもよい。さらに、本発明の薬学的組成物は、好ましくはヒト起源の、例えば、血清アルブミンまたは免疫グロブリンのような、タンパク質性担体を含んでもよい。本発明の薬学的組成物は、ヒト化モノクローナル抗体またはその断片(本発明に記載するようなもの)に加えて、薬学的組成物の意図される使用に応じた、さらなる生物学的活性剤を含んでもよいことが想定される。こうした薬剤は、胃腸系に作用する薬剤、細胞分裂阻害剤として作用する薬剤、高尿酸血症を予防する薬剤、免疫反応を阻害する薬剤(例えばコルチコステロイド)、免疫応答を調節する薬剤、循環系に作用する薬剤、および/または当技術分野に公知であるサイトカインなどの薬剤であってもよい。
【0045】
本発明のさらなる局面は、哺乳動物、好ましくはヒトにおいて、炎症性疾患を治療するため、任意で、一つまたは複数のさらなる抗炎症剤を含む、薬剤の製造における、上記に示すようなヒト化モノクローナル抗体もしくはその断片、または上記に示すようなポリヌクレオチド分子の使用を提供する。好都合なことに、こうした炎症性疾患は、関節リウマチ(RA)、喘息、多発性硬化症(MS)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、特発性肺線維症(IPF)、炎症性腸疾患(IBD)、ブドウ膜炎、黄斑変性、結腸炎、乾癬、ウォーラー変性、抗リン脂質症候群(APS)、急性冠症候群、再狭窄、アテローム性動脈硬化症、再発性多発性軟骨炎(RP)、急性もしくは慢性肝炎、整形外科移植物不全、糸球体腎炎、ループス、自己免疫障害、急性膵炎、または強直性脊椎炎(AS)からなる群より選択される。
【0046】
本発明のさらなる局面は、哺乳動物、好ましくはヒトにおいて、腫瘍性疾患、または細胞アポトーシス遅延、細胞生存増加、もしくは細胞増殖増加を伴う別の状態を治療するため、任意で、一つまたは複数のさらなる抗癌剤を含む、薬剤の製造における、上記に示すようなヒト化モノクローナル抗体もしくはその断片、または上記に示すようなポリヌクレオチド分子の使用を提供する。好ましくは、腫瘍性疾患は癌であり、好ましくは、癌は、白血病、多発性骨髄腫、胃癌、または皮膚癌である。
【0047】
本発明のさらなる局面は、上記に示すようなヒト化モノクローナル抗体もしくはその断片、または上記に示すようなポリヌクレオチド分子を(任意で、一つまたは複数のさらなる抗炎症剤と共に)、哺乳動物被験体、好ましくはヒト被験体に、炎症性疾患を予防および/または改善するのに十分な量で、かつ十分な時間、投与する、炎症性疾患を治療する方法を提供する。好都合なことに、こうした炎症性疾患は、関節リウマチ(RA)、喘息、多発性硬化症(MS)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、特発性肺線維症(IPF)、炎症性腸疾患(IBD)、ブドウ膜炎、黄斑変性、結腸炎、乾癬、ウォーラー変性、抗リン脂質症候群(APS)、急性冠症候群、再狭窄、アテローム性動脈硬化症、再発性多発性軟骨炎(RP)、急性もしくは慢性肝炎、整形外科移植物不全、糸球体腎炎、ループス、自己免疫障害、急性膵炎、または強直性脊椎炎(AS)からなる群より選択される。
【0048】
本発明のさらなる局面は、上記に示すようなヒト化モノクローナル抗体もしくはその断片、または上記に示すようなポリヌクレオチド分子を(任意で、一つまたは複数のさらなる抗癌剤と共に)、哺乳動物被験体、好ましくはヒト被験体に、腫瘍性疾患、または細胞アポトーシス遅延、細胞生存増加、もしくは細胞増殖増加を伴う別の状態を予防および/または改善するのに十分な量で、かつ十分な時間、投与する、腫瘍性疾患を治療する方法を提供する。好ましくは、腫瘍性疾患は癌であり、好ましくは、癌は、白血病、多発性骨髄腫、胃癌または皮膚癌である。
【0049】
本発明はここで、以下の非限定的な図および実施例によって例示されうる。図の概説は下記に示す。
【0050】
実施例1:ヒトIL2(「hIL2」)抗原の調達
実施例1a、1b、および1cにおいて、以下に記載する、実験アプローチの目的は、異なる供給源から得られる組換えIL2抗原物質:原核細胞において、真核細胞において発現される抗原、および認定された治療薬剤として市販され得る組換えタンパク質抗原を提供することであった。
【0051】
実施例1a:大腸菌(E. coli)からの組換え体発現
成熟hIL2(すなわちアミノ酸残基APTSSS…IISTLTをコードする)を、標準的PCRおよび分子生物学技術を用いて、原核発現ベクターpBAD(Invitrogen)内に、単一のオープンリーディングフレーム(「ORF」)としてクローニングした。5’端で、メチオニンをコードする3ヌクレオチドを付加し、3’端で、ヘキサヒスチジンタグをタンパク質のC末端に融合させるヌクレオチド配列を、停止コドンの前に挿入した。
【0052】
この構築物を用いて、製造者に提供される使用説明書を用いて、コンピテント大腸菌(株BL21(DE3), Stratagene)を形質転換した。標準的LB培地中で、細菌をOD(600nm)=0.5の密度まで増殖させ、次いで、L-アラビノースを0.2% w/vの濃度まで添加して、発現を5時間誘発した。10,000 g、15分間の遠心分離によって、大腸菌の回収を行った。次いで、製造者の使用説明書にしたがって、BugBuster試薬およびプロトコル(Novagen)を用いて、不溶性分画(封入体)を調製した。
【0053】
6Mグアニジン-塩酸(「GuHCl」)中で封入体を可溶化し、次いで、2M GuHCl(pH=8.0)/1mMグルタチオン-ox/10mMグルタチオン-redを含有する緩衝液で、0.1mg/mlに希釈し、20℃で16時間インキュベーションした。インキュベーション後、徹底的に攪拌しながら氷酢酸をゆっくりと添加することによって、pHを6.0に調整した。最後に、3回の逐次的なクロマトグラフィーアプローチを適用して、非常に精製され、かつ均質な、hIL2hisのタンパク質調製物を得た:固定金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)、逆相HPLC、イオン交換クロマトグラフィー。細胞増殖実験において、精製タンパク質の機能性を検証した(以下を参照されたい)。
【0054】
実施例1b:哺乳動物細胞からの組換え体発現
成熟hIL2(すなわちアミノ酸残基APTSSS…IISTLTをコードする)を、標準的PCRおよび分子生物学技術を用いて、真核発現ベクターpEFdhrf(Mack M. et al. (1995) PNAS 92, 7021-5)内にクローニングした。5’端で、ヒトIgGのリーダーペプチドをコードするヌクレオチド配列を付加して、効率的なプロセシングおよび分泌を可能にし、3’端で、ヘキサヒスチジンタグをタンパク質のC末端に融合させるヌクレオチド配列を、停止コドンの前に挿入した。
【0055】
293細胞(DSMZ、注文番号ACC305)を、プレート表面被覆密度25〜35%で播種し、24時間培養した。次いで、製造者の使用説明書にしたがって、「Transfast」試薬(Promega)を用いて、pEFdhfr-hIL2発現ベクターで細胞をトランスフェクションした。さらなる60時間の培養期間後、細胞上清を回収し、IMACアプローチ、その後、イオン交換クロマトグラフィーを用いて、hIL2-hisタンパク質を精製した。細胞増殖実験において、精製タンパク質の機能性を検証した。
【0056】
実施例1c:Proleukinとしての購入
Proleukin(大腸菌中で発現された、調製組換えhIL2)をChironから購入した。
【0057】
上記アプローチを用いて、完全に機能する組換えhIL2抗原の3つの異なる供給が利用可能になった。
【0058】
実施例2:ヒト化モノクローナル抗hIL2抗体の生成
特に好ましい作用様式を持ち、かつヒトhIL2を特異的に標的化し、かつその生物活性を中和する、ヒト化モノクローナル抗体(「mAb」)を生成することが求められた。一般的に、サイトカインhIL2などの分泌可溶性タンパク質を標的化する中和mAbは、対応するサイトカイン受容体の構成要素によって認識されるエピトープと少なくとも部分的に重複するエピトープを認識する。したがって、mAbは、サイトカインへの結合に関して、受容体と直接競合する。この作用機序は、中和を有効に達成可能であることを暗示する。サイトカイン受容体を競合して追い出すために、mAbは、十分に高い用量で適用されなければならない。
【0059】
実施例2a:出発点-->タンパク質としての市販されているモノクローナル抗hIL2抗体
異なる抗hIL2 mAbが上述のように中和可能である度合いの理解を得るために、すべて標準的プロトコルにしたがって、マウスの免疫後、脾臓細胞の回収およびハイブリドーマ融合によって、抗hIL2 mAbを産生した。さらに、市販されている抗hIL2 mAbを購入した。入手可能なmAbのプールを用いて、3つのアッセイ中で、異なる抗体の特徴を比較した:ELISAによって試験した際の可溶性抗原への結合、FACSによって試験した際の細胞表面に会合する抗原への結合、および細胞増殖アッセイによって試験した際のhIL2生物活性の中和能。
【0060】
ELISAアッセイを以下のように行った:
すべてのインキュベーションを20℃で行った。ストレプトアビジンをコーティングした96ウェルELISAプレート(Nunc)を用いて、ウェルあたり100μlのPBS-TB(リン酸緩衝生理食塩水、pH=7.4、0.05% v/v Tween-20、1% w/v BSA)中、0.1μgのPEG-ビオチン化Proleukinを30分間付着させた。次いで、ウェルあたり200μlのPBS-T(リン酸緩衝生理食塩水、pH=7.4、0.05% v/v Tween-20)でプレートを3回洗浄した。ウェルあたり100μlで、異なるmAb試料を添加し、試料を1時間インキュベーションした。次いで、ウェルあたり200μlのPBS-Tでプレートを3回洗浄した。適用した検出抗体は、ウェルあたり100μlのPBS-TB中で1:1000に希釈したヤギ抗ヒトIgG HRP抱合mAb(Jackson Immunoresearch)であり、1時間インキュベーションした。次いで、ウェルあたり200μlのPBS-Tでプレートを3回洗浄した。HRP基質:100μlの2,2’-アジノ-ジ[3-エチル-ベンズチアゾリン-6-スルホン酸](「ABTS」)基質緩衝液(Roche Diagnostics、ABTS錠剤)とインキュベーションすることによって、抗原への抗体結合を最終的に定量化し、緑色色素が発色するまで、プレートを5〜10分間インキュベーションした。96ウェルプレートリーダー上、405nmで染色を測定した。
【0061】
FACSアッセイを以下のように行った:
細胞培養条件下での最適増殖のため、ヒトナチュラルキラーリンパ腫細胞株NKLは、培地(Iscoveの基本培地(Biochrom AG);10% v/vウシ胎児血清(Biochrom AG);100μg/mlペニシリン/ストレプトマイシン(Biochrom AG))中の約5ng/mlのhIL2の存在に依存する。実験の準備中に、hIL2不含培地中で培養することによって、mlあたり1x106のNKL細胞を24時間、hIL2に関して欠乏させた。実験直前、hIL2不含培地で細胞を洗浄した。以下のすべてのインキュベーションを、4℃で30分間行った;洗浄には、PBS-F緩衝液(リン酸緩衝生理食塩水、3% v/vウシ胎児血清)を同じく4℃で用いた。最初に200μl培地中の2x105 NKL細胞を、1μgの組換えヒトhIL2とインキュベーションするか、または同じ条件下でhIL2を伴わずに放置した。続いて、各々2mlのPBS-Fで、細胞を3回洗浄した。次いで、200μl培地中、1μgの異なるマウス抗hIL2 mAbと2x105細胞を、4℃で30分間インキュベーションした。再び、上記に示すように、細胞を3回洗浄し、最後に、200μl PBS-F中、1:1000に希釈したFITC抱合ヤギ抗マウスIgG検出mAb (Jackson Immunoresearch)とインキュベーションした。さらに3回洗浄した後、プレーンな細胞に対して、表面上にhIL2を保持する細胞の細胞蛍光をFACS装置上で分析した。
【0062】
増殖アッセイを以下のように行った:
細胞培養条件下での最適な増殖のため、マウスCTL細胞株CTLL-2(LGCPromochem)は、培地(Iscoveの基本培地(Biochrom AG);10% v/vウシ胎児血清(Biochrom AG);100μg/mlペニシリン/ストレプトマイシン(Biochrom AG);0.5mM 2-メルカプトエタノール(Gibco))中の約5ng/mlのhIL2の存在に依存する。マウスおよびヒト両方のhIL2は、等しくよく働き、CTLL-2細胞の生存および増殖を維持する。実験の準備中に、hIL2不含培地中で培養することによって、mlあたり1x106のCTLL-2細胞を12時間、hIL2に関して欠乏させた。
【0063】
実験直前、hIL2不含培地で細胞を洗浄した。96ウェル組織培養プレートを用いて、増殖実験を行い、異なるmAbによってhIL2生物活性の阻害を評価した。ウェルあたり200μlの最終アッセイ体積を適用し、この体積には:5x104 CTLL-2細胞、2ng/ml hIL2(最大増殖のおよそ半分を可能にする)ならびに5000ng/ml、1000ng/ml、200ng/ml、および40ng/mlの濃度の異なる抗hIL2 mAbが含まれた。すべての試料を三つ組で調製した。5%二酸化炭素の存在下の加湿チャンバー中、それぞれの混合物を、37℃で48時間インキュベーションした。次いで、製造者の推奨にしたがって、AlamarBlue蛍光色素読取り値(Biosource International)および96ウェル蛍光プレートリーダーを用いて、生存細胞を検出した。
【0064】
mAb202(R&D Systemsから市販されている)は、(i)可溶性抗原に結合し、(ii)細胞表面に会合する抗原に結合し、かつ(iii)hIL2生物活性を効率的に中和することが見出された。試験した抗体のうち、mAb 202のみが、すべての3つのアッセイで得点し、したがって、上記に定義するような特徴にしたがって有望な候補と見なされ、したがって、以下の実験の出発点として選択された。
【0065】
実施例2b:配列決定による抗hIL2抗体の一次配列決定:重鎖可変領域(「VH」)および軽鎖可変領域(「VL」)由来の配列の同定
mAb202ハイブリドーマクローンが入手不能であるため、このmAbを配列決定して、VHおよびVLアミノ酸配列を同定した。この目的に向けて、mAb202のFab断片を調製した。ペプチド分離用のオンラインHPLCを用いて、これらの断片をタンパク質分解消化に供した。続いて、アミノ酸組成および配列に関して、MS/MS質量分析装置によって、個々のペプチドを分析した。このアプローチは、VHおよびVLタンパク質配列の同定につながった。
【0066】
実施例2c:機能性保持の対照:公知のマウス定常領域と、配列決定したVH/VL領域の融合
上述のmAb202タンパク質配列決定から得られる配列決定結果の機能的検証が求められた。したがって、配列決定したVHをコードする遺伝子を合成し、マウスIgG1の定常領域を提供する発現ベクター内にクローニングした。同様に、配列決定したVLをコードする遺伝子を合成し、マウスCκドメインを提供する発現ベクター内にクローニングした。これらの2つの発現ベクターは、理想的には、元来のmAb202の再構築を可能にし、次いで、その機能性を上述のように再試験してもよい。293細胞で両方のベクターを同時発現した後、元来のmAb202で観察されるものに匹敵する特徴を持つ、細胞上清中の抗IL2 mAbを検出した。タンパク質配列決定後の再構築mAbに関して観察される活性(ELISAによって、ならびにCTLL-2細胞株を用いた増殖アッセイにおいて)と親mAb202のものが一致していれば、この抗体のVHおよびVL領域に関して決定した配列が正しいことの確認となると解釈してもよい。
【0067】
実施例2d:重鎖のヒト化
ヒト化の目的は、抗体の結合特異性および生物学的活性を完全に保持しつつ、mAbに存在する非ヒト配列の含量を最小限にすることである。後者の目的は、非ヒト起源の親抗体よりも、ヒト被験体に投与した際の免疫応答を誘発する可能性がより低い抗体を生じる。最初に、ヒトIgG1アイソタイプのC1、C2、およびC3ドメインと共に元来のマウスVHを含む、キメラ重鎖の発現ベクターを生成した。キメラ重鎖の発現後、キメラ軽鎖(以下を参照されたい)と組み合わせた際、元来のマウスmAbの特徴を再現可能であった(以下を参照されたい)。次の論理的段階は、VH領域をヒト化することであった。特異性の変化を回避するため、CDR配列は変化しないままであった。したがって、元来のマウスVHに基づいて、最も緊密に関連するヒトVHフレームワーク配列を検索した。すべてのヒトVHフレームワークのうち、ヒトフレームワーク1-3/3-07/J6は、元来のマウスフレームワークに最高の度合いの相同性を保持することが見出された。ヒトフレームワーク1-3/3-07/J6は、対応するマウスVHフレームワークと16アミノ酸残基、異なることが見出された。以下のアラインメントは、元来のマウスおよびヒト1-3/3〜07/J6 VHフレームワーク間の直接比較を示す;元来のCDR配列を下線で示し、両配列間のアミノ酸同一性をアステリスクで示す。

【0068】
元来のマウスVHまたはヒト化VHを含有する構築物は、以下のテキストにおいて、それぞれ、cHC(マウスVHおよびヒトC1、C2、C3を含むキメラ重鎖)およびhHC(ヒトVHフレームワーク内にマウスCDR領域を含有するVH、およびヒトC1、C2、C3を含むヒト化重鎖)と称される。ヒト化重鎖の組換えタンパク質発現の目的のため、ヒトIgG1アイソタイプのC1、C2、およびC3ドメインと組み合わせてヒト化VHをコードするオープンリーディングフレームを適切なベクター内にクローニングした(Raum T et al. (2001) Cancer Immunol Immunother. 50, 141〜50)。
【0069】
実施例2e:軽鎖のヒト化
重鎖に関して上述したアプローチと同様に、ヒト化を行った。簡潔には、ヒトCkドメインと共に元来のマウスVLを含む、キメラ軽鎖の発現ベクターを生成し、キメラ重鎖(上記を参照されたい)との同時発現後に試験した。再び、第二の工程として、元来のマウスVLに基づいて、最も緊密に関連するヒトVLフレームワーク配列を検索した。3つのCDRすべてを保持した。ヒトVLフレームワークO12/Jk4の配列が最も近い類縁体であることが分かった。マウスVLおよびヒトO12/Jk4間で、VLフレームワーク中、総数22のアミノ酸残基が異なっていた。以下のアラインメントは、元来のマウスおよびヒトO12/Jk4フレームワーク間の直接比較を示す;元来のCDR配列を下線で示し、両配列間のアミノ酸同一性をアステリスクで示す。

【0070】
元来のマウスVLまたはヒト化VLを含有する構築物は、以下のテキストにおいて、それぞれ、cLC(マウスVLおよびヒトCκを含むキメラ軽鎖)およびhLC(ヒトVLフレームワーク内にマウスCDR領域を含有するVL、およびヒトCκを含むヒト化軽鎖)と称される。ヒト化軽鎖の組換えタンパク質発現の目的のため、ヒトCkドメインと組み合わせてヒト化VLをコードするオープンリーディングフレームを適切なベクター内にクローニングした(Raum T et al. (2001) Cancer Immunol Immunother. 50, 141-50)。
【0071】
実施例2e.1:完全フレームワーク領域としてのヒトおよびマウス配列の置換;増殖アッセイによる結合および中和の評価
重鎖および軽鎖両方のヒト化に成功した後、生じたヒト化mAbの特徴をキメラmAb、すなわち完全マウス可変ドメインを含有する抗体分子に比較して試験した。キメラmAbは、元来のmAbに匹敵するIL2生物活性の中和を示すため、これらの実験に関する参照として用いた。293細胞の一過性同時トランスフェクションのため、重鎖および軽鎖をコードする発現ベクター対を用いた(適用するプロトコルは、2つのプラスミドで同時に細胞をトランスフェクションすることを除いて、実施例1bに記載するトランスフェクション法と同一であった)。
【0072】
293細胞中で発現させた後、以下のように行う、抗hIgG ELISAによって、細胞上清中の異なるmAb型が同程度の量であることを検証した:
96ウェルELISAプレート(Nunc)を、ウェルあたり100μlのPBS中の1:2,000希釈の抗hIgG mAb(Abcam LTD)と4℃で12時間インキュベーションした。200μlのPBS-T緩衝液で、各ウェルを3回洗浄し、次いで、293細胞から100μlの希釈しない上清を回収し、培地中の上清の連続希釈を各ウェルに満たし、20℃で1時間インキュベーションした。再び、200μlのPBS-T緩衝液で、各ウェルを3回洗浄した。ウェルあたり100μlのPBS-TB中の1:1,000希釈のヤギ抗ヒトIgG HRP抱合mAb (Jackson Immunoresearch)をウェルに添加し、20℃で1時間インキュベーションした。次いで、ウェルあたり200μlのPBS-Tでプレートを3回洗浄した。HRP基質:100μlのABTS基質緩衝液(Roche Diagnostics、ABTS錠剤)とインキュベーションすることによって、hIgGへの抗体結合を最終的に定量化し、緑色色素が発色するまで、プレートを5〜10分間インキュベーションした。96ウェルプレートリーダー上、405nmで染色を測定した。すべての追跡実験には、同程度の量のmAbを含む上清のみを用いた。ELISAによって、多様なmAbの抗原結合を試験した(上記を参照されたい)。
【0073】
ELISAおよびCTLL-2増殖アッセイによって、それぞれ、可溶性抗原の結合に関して、およびIL2生物活性の中和に関して、生成したmAbの特徴を分析した(詳細な実験プロトコルに関しては、上記の実施例2aを参照されたい)。ELISA実験において、吸光度単位増加は、hIL2抗原へのmAb結合量増加の指標である。CTLL-2増殖アッセイにおいて、蛍光単位増加は、代謝的に活性である(=生存)細胞数増加の指標である。以下の実験に供する前に、抗hIgG ELISAによって等しいmAb濃度になるように、異なるmAb型を含有する細胞上清(「SN」)すべてを調節した。代表的な実験の結果を図1に示す。ここでは、hLC+hHC(hLC=ヒト化軽鎖、hHC=ヒト化重鎖)およびcLC+hHC(cLC=キメラ軽鎖)の組み合わせの両方が、hIL2抗原への同程度の結合を示す。CTLL-2アッセイからの結果(図2)は、検出された蛍光が対照SNと異ならないため、hLH+hHCがhIL2生物活性のいかなる検出可能な中和も導かないことを示す。対照的に、cLH+hHCは、mAb濃度に依存する蛍光の減少によって明らかであるように、生存細胞数を減少させる。このアッセイにおいて、2つの個々の鎖、cLCまたはhHCの適用は、hIL2依存性細胞生存にまったく影響を及ぼさなかった(データ非提示)。図2に示す代表的な実験の各データ点は、二つ組試料の平均結果に相当する。記載するアッセイの結果を表1に要約する。
【0074】
【表1】

【0075】
これらの結果は、可溶性抗原への結合が、異ならないようであるにもかかわらず、ヒト化重鎖変異体とともにhLCを用いると直ちに中和が喪失することを立証する。VLのヒト化がmAbの何らかの機能障害を伴ったと結論付けられる。
【0076】
どこで、すなわちどのフレームワーク領域内で、この障害が導入されたかを決定するため、異なるセグメントで、cLCのVLフレームワークのヒト化を行い、マウスからヒトに、一度に3つのフレームワークすべてではなく、一度に単一のフレームワークのみ(すなわちフレームワーク領域1、フレームワーク領域2またはフレームワーク領域3)を変化させた。これらのヒト化変異体を命名する際に、短縮命名法を生み出し、これを以下で用いる。この命名法にしたがって、3つの大文字を用いて、第一の3つのフレームワーク領域1、2、および3の各々を示すトリプレットを生成し、トリプレットの第一の位置は、フレームワーク領域1の性質を示し、トリプレットの第二の位置は、フレームワーク領域2の性質を示し、トリプレットの第三の位置は、フレームワーク領域3の性質を示す。例えば「HMM」は、そうでなければマウス起源であるVL中のヒトフレームワーク領域1を示し、一方、「MHM」は、フレームワーク領域2のみがヒトである一方、フレームワーク領域1および3がマウス起源であることを示す。
【0077】
異なるヒト/マウス ハイブリッドVLドメインの特徴を、効果に関して分析した。この場合も同様に、ELISAおよびCTLL-2増殖アッセイによって、それぞれ、hIL2抗原の結合およびIL2生物活性の中和を分析した(詳細な実験プロトコルに関しては、上記の実施例2aを参照されたい)。ELISA実験において、吸光度単位増加は、hIL2抗原へのmAb結合量増加の指標である。CTLL-2増殖アッセイにおいて、蛍光単位増加は、代謝的に活性である(=生存)細胞数増加の指標である。以下の実験に供する前に、抗hIgG ELISAを用いて、均一なmAb濃度になるように、異なるmAb型を含有する細胞上清(「SN」)すべてを調節した。図3は、代表的な比較実験からの結果を示す。ここでは、ヒト/マウス ハイブリッドVL型すべてが、hHCと組み合わされた際に、hIL2抗原への同程度の結合を示す。CTLL-2アッセイの結果(図4)は、VLフレームワーク2がマウスである場合にのみ、hIL2生物活性の中和が観察されることを示し;MHM+hHCは、対照SNに比較して、生存細胞数を変化させなかった。図4に示す代表的な実験の各データ点は、二つ組試料の平均に相当する。記載するアッセイの結果を表2に要約する。
【0078】
【表2】

【0079】
これらの実験は、mAbがIL2生物活性を中和可能であるかどうかを、VLのフレームワーク2が決定することを非常に明らかに示す。フレームワーク2のマウスおよびヒト配列のより詳細な比較によって、これらの配列が3アミノ酸異なることが明らかになる。具体的には、マウスフレームワーク2は、部分的アミノ酸配列QSPKAを含み、一方、対応するヒト配列はKAPKLである(明確にするため、ヒトおよびマウス種間で異なるアミノ酸を下線で示す)。
【0080】
実施例2e.2:フレームワーク2内のヒトおよび任意のマウス配列の置換;増殖アッセイおよび標的遺伝子誘導アッセイによる結合および中和の評価
3つのアミノ酸変化すべてまたはいくつかのみが、中和mAb提供に関して決定的であるのかどうかを決定するため、さらなる一連の実験を行った。この目的のため、マウス由来のアミノ酸残基QSまたはAをhLC内に再導入した。
【0081】
ELISAおよびCTLL-2増殖アッセイによって、それぞれ、可溶性抗原の結合およびIL2生物活性の中和に関して、生じたmAbの特徴を分析した(詳細な実験プロトコルに関しては、上記の実施例2aを参照されたい)。ELISA実験において、吸光度単位増加は、hIL2抗原へのmAb結合量増加の指標である。CTLL-2増殖アッセイにおいて、蛍光単位増加は、代謝的に活性である(=生存)細胞数増加の指標である。以下の実験に供する前に、抗hIgG ELISAによって均一なmAb濃度になるように、異なるmAb型を含有する細胞SNすべてを調節した。代表的な実験の結果を図5に示す。明らかにわかるように、QSPKL+hHCおよびKAPKA+hHCの両方の型が、hIL2抗原への同程度の結合を示す。CTLL-2アッセイ(図6)は、検出された蛍光が対照SNと異ならないため、QSKPL+hHCがhIL2生物活性のいかなる検出可能な中和も導かないことを示す。対照的に、KAPKA+hHCは、mAb濃度に依存する蛍光の減少によって明らかであるように、生存細胞数を減少させる。図6に示す代表的な実験の各データ点は、二つ組試料の平均に相当する。記載するアッセイの結果を表3に要約する。
【0082】
【表3】

【0083】
これは、mAbがIL2生物活性を中和するかどうかを、VLフレームワーク2に位置する単一のアミノ酸残基が決めることを示す:マウスフレームワーク2由来のこの位のアラニン残基は、中和を可能にし、ヒトフレームワーク2由来のロイシン残基は、中和を可能にしない。
【0084】
実施例3:中和様式の決定
以下において、「抗IL2」という用語は、配列番号9(それ自体、配列番号7に示すようなアミノ酸配列を持つVL領域を含む)に示すようなアミノ酸配列を含む軽鎖および配列番号10(それ自体、配列番号8に示すようなアミノ酸配列を持つVL領域を含む)に示すようなアミノ酸配列を含む重鎖を含む、ヒト化抗IL2抗体を示す。抗IL2のVLは、上記実施例2e.2で説明するように、アミノ酸配列「KAPKA」を含む。
【0085】
抗IL2によるhIL2の中和様式をよりよく理解することが求められた。この目的に向けて、実験を行って、hIL2が、一方でhIL2受容体の構成要素に、他方で抗IL2に結合する性質を研究した。
【0086】
NKL細胞は、生存にIL2を必要とするため、これらの細胞がIL2の機能性受容体を発現すると推測し得る。上述の方法にしたがって、FACS実験を行った。簡潔には、抗hIL2 mAbおよび種特異的二次検出抗体の混合物(「プレミックス」)と細胞をインキュベーションした。二次抗体を蛍光標識に抱合させた。FACSを用いて、hIL2の存在下および非存在下で、細胞蛍光を監視した。以下の実験シナリオを実行して、効果を観察するために、特定のインキュベーション順序が必要であるかどうかという問題に取り組んだ。
【0087】
第一のシナリオにおいて、hIL2を伴ってまたは伴わずにプレミックスを30分間インキュベーションし、次いで、NKL細胞を添加した。hIL2依存性様式で、細胞蛍光が観察された。第二のシナリオにおいて、hIL2を伴ってまたは伴わずにNKL細胞を30分間インキュベーションし、次いで、プレミックスを添加した。この場合も同様に、hIL2依存性様式で、細胞蛍光が観察された。
【0088】
これらの実験は、hIL2が抗IL-2に結合した際、その受容体になお結合可能であり、さらに、hIL2がその受容体と会合した際、抗IL2となお相互作用可能であることを示す。
【0089】
これらの結果は、上述のように生成した抗IL2が結合したhIL2エピトープがhIL2受容体が結合したhIL2エピトープとは(少なくとも部分的に)異なることを立証する。この中和様式は、可溶性型または受容体結合型のいずれかのこの分子が結合することによって、hIL2の中和を達成可能であることを暗示する点で、注目に値する。次いで、時間順に見ると、これは、hIL2およびhIL2受容体間の複合体の形成前または形成後のいずれにhIL2および抗IL2間の結合事象が起きてもよいことを意味し;どちらの場合でも、hIL2の生物活性の中和が達成される。したがって、推定によって、2つの関連する結合事象、すなわち、hIL2およびhIL2受容体間の複合体、ならびにhIL2および抗IL2間の複合体の形成が、同時に生じる事象においてもまた、中和が達成されると仮定し得る。
【0090】
抗IL2に関して観察されるようなこうした中和様式は、中和抗リガンド抗体およびリガンド受容体が結合するエピトープが1つであり、かつ同じである、他の公知の中和様式とは、際立って対照的であり;こうした慣例的なシナリオでは、リガンド、リガンド受容体、および中和抗リガンド抗体間の三元複合体は存在不能である。別の言い方をすると、こうした慣例的な中和様式では、リガンドがなお可溶性型である間に、リガンドが、中和抗リガンド抗体によって結合されるはずであり、したがって、リガンドおよびリガンド受容体間の複合体の形成は、排除される。
【0091】
実施例4:ヒトナチュラルキラーリンパ腫細胞株NKLへの抗IL2のIL2依存性結合
この実施例において、細胞表面に会合したhIL2への抗IL2結合の特異性を研究した。抗IL2親Ab(mAb202)は、NKL細胞の細胞表面への、厳密にIL2依存性の結合を示した。したがって、この特定の特徴を、抗IL2に関して確認する必要があった。
【0092】
NKL細胞を、実験前に24時間、hIL2に関して欠乏させた。2倍モル過剰のhIL2の非存在下または存在下で、抗IL2またはヒトIgG1アイソタイプ対照抗体を20℃で60分間インキュベーションした。次いで、それぞれの混合物をNKL細胞(試料あたり105細胞)に添加し、氷上でさらに30分間インキュベーションした。続いて、細胞を徹底的に洗浄し、蛍光標識ヤギ抗ヒトIgG検出抗体を添加し、その後、氷上で30分間インキュベーションした。再び、細胞を洗浄し、次いで、FACS分析に供して、細胞に会合する蛍光を研究した。
【0093】
予期されるように、hIL2の非存在下では、抗IL2または対照抗体のいずれでも、細胞に会合する有意な蛍光は検出不能であった(図10、左図)。hIL2の存在下では、対照抗体での、細胞に会合する蛍光は不変であった(図10、右図、影付きのピーク)。対照的に、hIL2および抗IL2とのインキュベーションは、蛍光の実質的な増加を生じ(図10、右図、黒で縁取ったピーク)、細胞表面への抗IL2の特異的IL2依存性結合を示す。したがって、細胞表面に会合するhIL2を認識する能力は、抗IL2において保存された。この実験は、抗IL2が溶液中のhIL2を認識するだけでなく、一つまたはいくつかのその受容体構成要素と会合しているhIL2も認識する証拠を提供した。その結果、hIL2は、非排他的な様式で、抗IL2およびIL2受容体構成要素と会合可能である。
【0094】
実施例5:抗IL2は、CTLL-2細胞上のCD124細胞表面発現のIL2依存性上方制御を抑止する
hIL2での刺激後、CTLL-2細胞は、増殖し、CD124(IL-4R α)の細胞表面発現を上方制御する(Puri, R. K., et al. (1990). Immunology 70, 492)。その結果、CTLL-2細胞は、IL2刺激を介して、IL-4を通じた同時刺激に対する感受性増加を獲得する。したがって、抗IL2は、IL2が仲介する増殖を制限するだけでなく、CD124発現にも影響を及ぼし得る。
【0095】
この仮説を試験するため、実験前に12時間、hIL2の非存在下でCTLL-2細胞を培養し、次いで、用量設定した抗IL2濃度の存在下または非存在下で、0.5ng/ml hIL2で5時間刺激した。蛍光標識CD124特異的抗体を用いたFACS分析によって、CD124発現レベルを評価した。検出した平均蛍光強度を、異なる抗IL2濃度に対して描き(図11、黒い線の白抜き四角);抗IL2の非存在下(図11、黒塗りのひし形)またはIL2の非存在下(図11、黒塗りの三角形)の非存在下で記録した平均蛍光値を、対照として含めた。図11から明らかであるように、抗IL2は、用量依存性様式で、CD124発現を減少させ;このアッセイから計算されるIC50は、およそ3.3x10-10Mであった。これらのデータは、抗IL2がCTLL-2細胞の増殖に影響を及ぼすだけでなく、CD124発現などの他のIL2依存性細胞応答にも影響を及ぼすことを暗示する。
【0096】
実施例6:抗IL2は、IL2RのIL2シグナル伝達下流を特異的に遮断する
抗IL2が、部分的に、何らかの細胞傷害性機序によって、hIL2依存性細胞応答への影響を仲介する可能性をさらに排除し、抗IL2作用の機序が、hIL2が駆動するシグナルに非常に特異的であるが、関連経路に影響を及ぼさないことを確認するため、この実験を行った。IL2が仲介する細胞シグナルの最も迅速な細胞事象の中には、転写因子STAT3のチロシンリン酸化がある(Leonard, W. J. 2000. IL2 Family Cytokines and their Receptors)。IL-6などの他のサイトカインは、STAT3をまた伴う、部分的に重複する細胞シグナル伝達経路を誘発する(Hemmann, U., et al. (1996). J Biol Chem 271, 12999; Stahl, N., et al. (1995). Science 267, 1349)。
【0097】
したがって、STAT3のIL2およびIL6駆動性チロシンリン酸化に対する影響に関して、抗IL2を試験した。末梢血リンパ球を新鮮ドナー血液から単離し、2x106細胞/mlでインキュベーションし、レクチンで48時間、あらかじめ刺激し、次いで、刺激前に24時間、培地中で休止させた。次いで、mAbの非存在下または抗IL2もしくはアイソタイプ対照モノクローナル抗体の存在下、飽和濃度のIL2またはIL6/sIL6Rαで、15分間、細胞を刺激した。SDS-PAGEによって細胞質抽出物を分離した後、STAT3チロシンリン酸化特異的抗体を用いた免疫ブロッティングによって、STAT3のリン酸化状態を調べた(図12、上のパネル)。同程度の装填になるように調節するため、総STAT3タンパク質に関するブロットもまた行った(図12、下のパネル)。図12の各パネルの左側に、標準タンパク質の電気泳動移動度を示す。
【0098】
IL2およびIL-6刺激の両方が、抗IL2の非存在下で、STAT3の細胞チロシンリン酸化を非常に増進させた(図12、レーン1に対する2および3、またはレーン1に対する6および7)。したがって、抗IL2は、IL2刺激後のSTAT3チロシンリン酸化に特異的に影響を及ぼすが、IL6刺激後のものには影響を及ぼさなかった(図12、レーン5に対する4)。これらのデータは、抗IL2がhIL2の生態への干渉に対し非常に特異的であり、他の因子によって制御される経路には影響を及ぼさず、また抗IL2が明らかな細胞傷害効果を保持することもないことを立証する。
【0099】
実施例7:抗IL2およびダクリズマブの有効性は、CD25発現レベルによって、異なる影響を受ける
IL2依存性細胞株NKLを用いた増殖アッセイにおいて、ヒト化抗CD25 mAbであるダクリズマブの阻害活性を、抗IL2およびアイソタイプ対照抗体のものと、並べて比較した(図13)。
【0100】
抗IL2またはダクリズマブのいずれかによる、IL2が誘導する細胞増殖の阻害に対するCD25細胞表面発現レベルの影響を調べるため、CD25の低レベルまたは高レベル発現に関して、NKL細胞をFACS選別し、両方の細胞集団を、この実験において、並べて研究した。FACS選別に用いた抗CD25 mAbは、CD25へのIL2またはダクリズマブの結合に干渉しなかった(データ非提示)。選別直後、FACSによって、CD25およびCD25集団の明らかな区別が可能であり、5日間の実験の経過中、2つの集団は収束し、選別前の集団に匹敵するCD25発現レベルが導かれた。これは、このアッセイで得た結果が、この実験の初期段階に関してのみ、明らかに分離されたCD25対CD25集団を反映するが、後期段階に関しては反映しないことを暗示する。したがって、CD25およびCD25集団を比較する、抗IL2またはダクリズマブによる増殖の阻害に関して観察しようとする相違は、不安定なCD25発現レベルによって限定され;それでもなお、これらのデータからは、ダクリズマブおよび抗IL2有効性の異なるCD25依存性を示す明らかな傾向が推定可能である。実験の準備中に、hIL2不含培地中で培養することによって、NKL細胞を16時間欠乏させた。ウェルあたり200μlの最終アッセイ体積を適用し、これには、1x104 NKL細胞、2ng/ml hIL2(最大増殖の半分を可能にする)、および用量設定した濃度の異なるモノクローナル抗体が含まれた。すべての試料を二つ組で調製した。それぞれの混合物のインキュベーションには120時間かかり、次いで、蛍光色素を用いて、生存細胞を視覚化した。
【0101】
一般的に、このアッセイにおいて、IL2が仲介する増殖の中和において、ダクリズマブに比較して、抗IL2がより効率的であった。予期されるように、抗IL2の有効性は、CD25発現レベルによって影響を受けなかった:CD25およびCD25NKL細胞において、抗IL2で得た曲線は、本質的に、互いに重なる。対照的に、ダクリズマブで得た曲線は、CD25に比較してCD25NKL細胞で明らかな相違を示す。アイソタイプ対照Abは、影響を持たなかった(図13)。要約すると、この実験は、ダクリズマブの有効性がCD25レベルに依存するが、抗IL2はCD25レベルに依存しないという、インビトロの証拠を提供した。
【0102】
実施例8:初代ヒトNK細胞のIL2依存性増殖に対する抗IL2またはダクリズマブの影響
初代T細胞だけでなく、初代NK細胞も、IL2刺激に応答して増殖可能である。したがって、さらなる実験において、新たに単離したヒトNK細胞のIL2が誘導する増殖の阻害を研究した。
【0103】
ドナー血液からのネガティブ単離によって細胞を得て、用量設定した抗IL2またはダクリズマブの存在下または非存在下で、hIL2(5.5ng/ml)とインキュベーションした。対照抗体は、最高濃度でのみ適用し;IL2および抗体の非存在下の細胞で、別の対照を実行した。1週間のインキュベーション期間終了時、蛍光色素を用いて、生存細胞を定量化した。この実験において、抗IL2は、初代ヒトNK細胞のIL2駆動性増殖を実質的に減少させた。高い抗IL2濃度で、増殖は、本質的に、IL2の非存在下で観察されるレベルに限定され、これは、このアッセイにおいて、抗IL2が、存在するすべてのIL2応答性NK細胞に影響を及ぼすことを示す。対照的に、ダクリズマブは、非常に減少した度合いの影響しか示さず、この抗体の存在によって、NK細胞の一部のみが影響を受けたことが示唆される(図14)。この知見をさらに調べるため、IL2および抗体との1週間のインキュベーション中、CD25発現レベルを監視した:ドナー由来の総NK細胞の約11%のみが、CD25発現獲得を示し、第3日に最大であり、第7日に2%に低下した。一貫して、すべてのドナーから新たに単離されたNK細胞は、検出可能なCD25発現を欠き、CD25発現の類似のレベルおよび動力学が、分析したすべてのドナー由来のNK細胞で見られた(データ非提示)。これは、ダクリズマブが、NK細胞の一部のみの増殖を阻害可能である理由を説明した(図14)。抗IL2は再び、CD25発現レベルに独立であることが示され、およそ3x10-10 MのIC50値で、すべてのNK細胞の増殖を遮断した。これらの結果は、抗IL2が、CD25とは独立に、中間親和性IL2受容体CD122/CD132を通じてIL2が仲介するシグナルに干渉可能であるが、ダクリズマブはそうではないことの強い徴候を提供する。
【0104】
実施例9:NK細胞による、IFN-γのIL2依存性放出に対する抗IL2またはダクリズマブの影響
増殖に加えて、サイトカイン刺激に対する初代NK細胞の典型的でかつ迅速な応答は、IFN-γの放出である。抗IL2およびダクリズマブ両方に依存するように、さらなる実験において、後者の放出を測定した。
【0105】
このアッセイにおいて、hIL2(5.5ng/ml)、hIL12(5ng/ml)およびhIL18(5ng/ml)を含むカクテルで、新たに単離したヒトNK細胞を刺激し、これらの細胞によるIFN-γの効率的な産生および放出を誘発した。用量設定した抗IL2、ダクリズマブおよびアイソタイプ対照抗体の、インキュベーション最初の48時間以内のIFN-γ放出に対する影響を比較した。抗IL2およびダクリズマブの両方が、用量依存様式で、IFN-γの発現を減少させる一方、対照抗体はいかなる影響も持たなかった(図15)。抗IL2は、IFN-γ放出のより強力な阻害剤であり、ダクリズマブのおよそ1.1x10-9 Mに比較して、およそ1.3x10-10MのIC50のスコアを得た(図15)。先の実施例に記載する実験とは対照的に、この実験設定のNK細胞はすべて、CD25発現を獲得し(データ非提示)、このことは、NK細胞増殖に比較した、IFN-γに対するダクリズマブのさらに著しい影響を説明する。
【0106】
表4は、抗IL2およびダクリズマブの平衡結合定数(KD)を要約する。さらに、実施例8および9に上述したような両方のAbでの並列比較実験において、IC50値を得た。
【0107】
【表4】

# Junghans, R. P., et al. (1990). Cancer Res 50, 1495による。
* CD25を発現する総NK細胞集団の約10%に基づく。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】VL領域のヒト化後の保持される抗原結合。
【図2】VL領域のヒト化後の中和活性の喪失。
【図3】IL2の結合は、VL領域内のヒト/マウス フレームワーク交換によって影響を受けない。
【図4】ヒトの第二の軽鎖フレームワークの取り込み後の中和活性の喪失。
【図5】VL領域の42〜46位(第二の軽鎖フレームワーク内)のアミノ酸変化は、抗原結合に影響を及ぼさない。
【図6】第二の軽鎖フレームワークの46位のロイシンからアラニンへの突然変異は、中和活性の再獲得を導く。
【図7】(図7a)第一および第二の軽鎖フレームワーク領域に関するヒト生殖系列アミノ酸配列(V-κ)。CDR領域が除外されており;残りのフレームワーク領域の残りの番号付けは、オンライン「Vbase」データベース中に公表されるとおりである(ウェブリンクに関しては上記を参照されたい)。(図7b)第三の軽鎖フレームワーク領域に関するヒト生殖系列アミノ酸配列(V-κ)。CDR領域が除外されており;残りのフレームワーク領域の残りの番号付けは、オンライン「Vbase」データベース中に公表されるとおりである(ウェブリンクに関しては上記を参照されたい)。
【図8】(図8a)第一および第二の軽鎖フレームワーク領域に関するヒト生殖系列アミノ酸配列(V-λ)。CDR領域が除外されており;残りのフレームワーク領域の残りの番号付けは、オンライン「Vbase」データベース中に公表されるとおりである(ウェブリンクに関しては上記を参照されたい)。(図8b)第三の軽鎖フレームワーク領域に関するヒト生殖系列アミノ酸配列(V-κ)。CDR領域が除外されており;残りのフレームワーク領域の残りの番号付けは、オンライン「Vbase」データベース中に公表されるとおりである(ウェブリンクに関しては上記を参照されたい)。
【図9】(図9a)第一および第二の重鎖フレームワーク領域に関するヒト生殖系列アミノ酸配列。CDR領域が除外されており;残りのフレームワーク領域の残りの番号付けは、オンライン「Vbase」データベース中に公表されるとおりである(ウェブリンクに関しては上記を参照されたい)。(図9b)第三の重鎖フレームワーク領域に関するヒト生殖系列アミノ酸配列。CDR領域が除外されており;残りのフレームワーク領域の残りの番号付けは、オンライン「Vbase」データベース中に公表されるとおりである(ウェブリンクに関しては上記を参照されたい)。
【図10】天然キラーリンパ腫細胞株NKLに対するヒト化抗IL2抗体「抗IL2」の結合の特異性。
【図11】抗IL2は、CTLL-2細胞上のCD124細胞表面発現のIL2依存性上方制御を抑止する。
【図12】抗IL2はIL2受容体のIL2シグナル伝達下流を特異的に遮断する。
【図13】抗IL2およびダクリズマブの有効性は、CD25発現レベルによって、異なった影響を受ける。
【図14】初代ヒトNK細胞のIL2依存性増殖に対する、抗IL2およびダクリズマブの影響を示す結果。
【図15】NK細胞によるIFN-γのIL2依存性放出に対する、抗IL2およびダクリズマブの影響を示す結果。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトインターロイキン-2(IL2)に特異的に結合するヒト化モノクローナル抗体またはその断片であって、
該ヒト化モノクローナル抗体が、ヒトIL2のヒトIL2受容体への結合前、結合中、および/または結合後に、ヒトIL2に結合することによって、ヒトIL2の活性を中和し;かつ
該ヒト化モノクローナル抗体の軽鎖可変領域が、その第二のフレームワーク領域中に隣接アミノ酸配列KAPKAを含む、
ヒト化モノクローナル抗体またはその断片。
【請求項2】
隣接アミノ酸配列KAPKAが、第二のフレームワーク領域のアミノ酸42〜46位に位置する、請求項1記載のヒト化モノクローナル抗体またはその断片。
【請求項3】
第一、第三、および/または第四の軽鎖フレームワーク領域の少なくとも1つが、その/それらの領域に関するヒト生殖系列配列に対応する、請求項1または2記載のヒト化モノクローナル抗体またはその断片。
【請求項4】
軽鎖可変領域が、そのCDR1領域中に配列番号1に示すようなアミノ酸配列を、そのCDR2領域中に配列番号2に示すようなアミノ酸配列を、かつそのCDR3領域中に配列番号3に示すようなアミノ酸配列をさらに含み;かつ重鎖可変領域が、そのCDR1領域中に配列番号4に示すようなアミノ酸配列を、そのCDR2領域中に配列番号5に示すようなアミノ酸配列を、かつそのCDR3領域中に配列番号6に示すようなアミノ酸配列を含む、前記請求項のいずれか一項記載のヒト化モノクローナル抗体またはその断片。
【請求項5】
第一、第三、および/または第四の軽鎖フレームワーク領域の少なくとも1つが、その/それらの領域に関するヒト生殖系列配列に対応する、前記請求項のいずれか一項記載のヒト化モノクローナル抗体またはその断片。
【請求項6】
第一の軽鎖フレームワーク領域のアミノ酸配列、第二の軽鎖フレームワーク領域の残りのアミノ酸配列(すなわち、両端を含めて、アミノ酸35〜41位および47〜49位)、および第三の軽鎖フレームワーク領域のアミノ酸配列が、遺伝子座O12、O2、O18、O8、A30、L1、L15、L4、L18、L5、L19、L8、L23、L9、L11、もしくはL12でヒト生殖系列サブグループVKIの任意のものに;または遺伝子座1aでヒト生殖系列サブグループVL1の任意のものに;または遺伝子座2c、2e、2a2、もしくは2b2でヒト生殖系列サブグループVL2の任意のものに対応する、前記請求項のいずれか一項記載のヒト化モノクローナル抗体またはその断片。
【請求項7】
第一の重鎖フレームワーク領域のアミノ酸配列、第二の重鎖フレームワーク領域のアミノ酸配列、および第三の重鎖フレームワーク領域のアミノ酸配列が、独立に、ヒト生殖系列サブグループVH3の任意のものに対応する、前記請求項のいずれか一項記載のヒト化モノクローナル抗体またはその断片。
【請求項8】
第一の重鎖フレームワーク領域のアミノ酸配列、第二の重鎖フレームワーク領域のアミノ酸配列、および第三の重鎖フレームワーク領域のアミノ酸配列が、ヒト生殖系列サブグループVH3の遺伝子座3-07中のとおりである、請求項7記載のヒト化モノクローナル抗体またはその断片。
【請求項9】
第四の軽鎖フレームワーク領域のアミノ酸配列が、ヒトJK4のもの(FGGGTKVEIK)に対応する、請求項6〜8のいずれか一項記載のヒト化モノクローナル抗体またはその断片。
【請求項10】
配列番号7に示すようなアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域および配列番号8に示すようなアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む、前記請求項のいずれか一項記載のヒト化モノクローナル抗体またはその断片。
【請求項11】
配列番号9に示すようなアミノ酸配列を含む軽鎖および配列番号10に示すようなアミノ酸配列を含む重鎖を含む、前記請求項のいずれか一項記載のヒト化モノクローナル抗体またはその断片。
【請求項12】
IgGである、前記請求項のいずれか一項記載のヒト化モノクローナル抗体。
【請求項13】
IgGがIgG1またはIgG4である、請求項12記載のヒト化モノクローナル抗体。
【請求項14】
scFv、単一ドメイン抗体、Fv、ダイアボディ、タンデムダイアボディ、Fab、Fab’、またはF(ab)2である、請求項1〜10のいずれか一項記載のヒト化モノクローナル抗体の断片。
【請求項15】
断片がscFvであり、特にscFvが、その軽鎖可変領域中に配列番号7に示すようなアミノ酸配列を含み、かつその重鎖可変領域中に配列番号8に示すようなアミノ酸配列を含む、請求項14記載のヒト化モノクローナル抗体の断片。
【請求項16】
scFvが、配列番号11または配列番号12に示すようなアミノ酸配列を含む、請求項15記載のヒト化モノクローナル抗体の断片。
【請求項17】
配列番号1〜12のいずれかに示すようなそれぞれのアミノ酸配列に対し、少なくとも70%の相同性、好ましくは少なくとも80%、90%、またはさらにより好ましくは少なくとも95%の相同性を保持するアミノ酸配列を含む、前記請求項のいずれか一項記載のヒト化モノクローナル抗体またはその断片。
【請求項18】
配列番号1〜12のいずれかに示すようなアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列、または該ヌクレオチド配列と少なくとも60%、好ましくは65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%の相同性を示すヌクレオチド配列を含む、ポリヌクレオチド分子であって、
配列番号1〜12のいずれかのアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド分子を、問題のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド分子と配列アラインメントにより比較することによって、相同性を決定してもよく;
問題の配列中のヌクレオチドが、配列番号1〜12のいずれかの対応するアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列中の対応するヌクレオチドに同一であるか、または配列番号1〜12のいずれかのアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列中の対応する一つもしくは複数のヌクレオチドからの、問題の配列中の一つもしくは複数のヌクレオチド逸脱が、ヌクレオチドトリプレットを生じ、ここでヌクレオチドドリプレットは、翻訳された際に、配列番号1〜12のいずれかの対応するアミノ酸配列中の対応するアミノ酸に同一である(縮重トリプレットのため)か、もしくはそのアミノ酸の保存的置換であるかのいずれかであるアミノ酸を生じるのであるならば、問題の配列中のヌクレオチドが相同であると見なされる、
ポリヌクレオチド分子。
【請求項19】
請求項1〜17のいずれか一項記載のヒト化モノクローナル抗体もしくはその断片、または請求項18記載のポリヌクレオチド分子を含む、薬学的組成物。
【請求項20】
一つまたは複数の抗炎症薬剤または抗癌薬剤をさらに含む、請求項19記載の薬学的組成物。
【請求項21】
哺乳動物、好ましくはヒトにおいて、炎症性疾患を治療するための、一つまたは複数のさらなる抗炎症剤を任意で含む、薬剤の製造における、請求項1〜17のいずれか一項記載のヒト化モノクローナル抗体もしくはその断片の使用、または請求項18記載のポリヌクレオチド分子の使用。
【請求項22】
炎症性疾患が、関節リウマチ(RA)、喘息、多発性硬化症(MS)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、特発性肺線維症(IPF)、炎症性腸疾患(IBD)、ブドウ膜炎、黄斑変性、結腸炎、乾癬、ウォーラー変性、抗リン脂質症候群(APS)、急性冠症候群、再狭窄、アテローム性動脈硬化症、再発性多発性軟骨炎(RP)、急性もしくは慢性肝炎、整形外科移植物不全、糸球体腎炎、ループス、自己免疫障害、急性膵炎、または強直性脊椎炎(AS)からなる群より選択される、請求項21記載の使用。
【請求項23】
哺乳動物、好ましくはヒトにおいて、腫瘍性疾患、または細胞アポトーシス遅延、細胞生存増加、もしくは細胞増殖増加を伴う別の状態を治療するため、任意で、一つまたは複数のさらなる抗癌剤を含む、薬剤の製造における、請求項1〜17のいずれか一項記載のヒト化モノクローナル抗体もしくはその断片、または請求項18記載のポリヌクレオチド分子の使用。
【請求項24】
腫瘍性疾患が癌である、請求項23記載の使用。
【請求項25】
癌が白血病、多発性骨髄腫、胃癌または皮膚癌である、請求項24記載の使用。
【請求項26】
請求項1〜17のいずれか一項記載のヒト化モノクローナル抗体もしくはその断片、または請求項18記載のポリヌクレオチド分子を(任意で、一つまたは複数のさらなる抗炎症剤と共に)、哺乳動物被験体、好ましくはヒト被験体に、炎症性疾患を予防および/または改善するのに十分な量で、かつ十分な時間、投与する、炎症性疾患を治療する方法。
【請求項27】
炎症性疾患が、関節リウマチ(RA)、喘息、多発性硬化症(MS)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、特発性肺線維症(IPF)、炎症性腸疾患(IBD)、ブドウ膜炎、黄斑変性、結腸炎、乾癬、ウォーラー変性、抗リン脂質症候群(APS)、急性冠症候群、再狭窄、アテローム性動脈硬化症、再発性多発性軟骨炎(RP)、急性もしくは慢性肝炎、整形外科移植物不全、糸球体腎炎、ループス、自己免疫障害、急性膵炎、または強直性脊椎炎(AS)からなる群より選択される、請求項26記載の方法。
【請求項28】
上記に示すようなヒト化モノクローナル抗体もしくはその断片、または上記に示すようなポリヌクレオチド分子を(任意で、一つまたは複数のさらなる抗癌剤と共に)、哺乳動物被験体、好ましくはヒト被験体に、腫瘍性疾患、または細胞アポトーシス遅延、細胞生存増加、もしくは細胞増殖増加を伴う別の状態を予防および/または改善するのに十分な量で、かつ十分な時間、投与する、腫瘍性疾患を治療する方法。
【請求項29】
腫瘍性疾患が癌である、請求項28記載の方法。
【請求項30】
癌が白血病、多発性骨髄腫、胃癌、または皮膚癌である、請求項29記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8a】
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【図8b】
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【図9a】
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【図9b】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2008−542321(P2008−542321A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−514011(P2008−514011)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【国際出願番号】PCT/EP2006/005194
【国際公開番号】WO2006/128690
【国際公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(505298825)マイクロメット アクツィエン ゲゼルシャフト (14)
【Fターム(参考)】