説明

折り畳み作業機

【課題】走行機体のタイヤ跡を埋め戻すことができる折り畳み作業機を提供すること。
【解決手段】作業機本体10の幅方向に延出する延長作業機体(左作業体20L)が、作業機本体10側に折り畳み可能に構成され、延長作業機体が展開された状態で、作業機本体10の耕耘ロータ30Cに設けられた駆動クラッチ18と延長作業機体の耕耘ロータ30Lに設けられた従動クラッチ31Lとが連結可能に構成され、走行機体90から作業機本体10に伝達された動力が駆動クラッチ18及び従動クラッチ31Lを介して延長作業機体の耕耘ロータ30Lに伝達され、従動クラッチ31Lには少なくとも3以上の耕耘爪43を固定できるフランジ40が設けられ、耕耘爪43は、先端側が作業機本体側に湾曲した耕耘爪43aと、先端側が作業機本体と逆側に湾曲した耕耘爪43bと、からなり、耕耘爪43bより耕耘爪43aの数が多いこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折り畳み作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、折り畳み作業機として、例えば、トラクタの後部に連結され、トラクタとともに移動しながら代掻き作業を行う代掻き作業機が知られている。このような代掻き作業機では、トラクタが通過した後の圃場を代掻き作業するため、圃場にタイヤ跡やクローラ跡(タイヤやクローラが通過した際にその両側にできる土の盛り上がり)が残っていることがあり、効率良く代掻き作業が行われない虞があった。また、特に、作業機本体とこの左右に配置される左作業体及び右作業体とからなる作業部を備える折り畳み代掻き作業機の場合には、作業機本体と左作業体(又は右作業体)との間にチェーンケースが配置されることがあり、このチェーンケースによって圃場にチェーンケース跡が残ることがあった。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1には、トラクタに連結され、このトラクタの走行により圃場を移動する代掻き作業機であって、スタンドホルダ部を有しトラクタの後部に連結される機体と、この機体に設けられ耕耘作業をする耕耘体と、この耕耘体の後方で整地作業をする整地体と、スタンドホルダ部に脱着可能に取り付けられ、耕耘体の前方でタイヤの通過により圃場表面に形成された土盛上り部の土をタイヤの通過により圃場表面に形成されたタイヤ跡凹部に寄せる土寄せ体とを備える代掻き作業機が開示されている。
【0004】
このような代掻き作業機によれば、確かに、耕耘体の前方でタイヤの通過により圃場表面に形成された土盛上り部の土が、土寄せ体によってタイヤ跡凹部に寄せられると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−11750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された代掻き作業機は、土寄せ体が機体の前方に設けられた取付部材に支持される棒状部材からなるため、圃場の藁等が引っかかる等の不具合が生じる虞があった。また、特許文献1に記載された代掻き作業機は、土寄せ体が機体の前方に配置される構成であるため、これより後方に配置されるチェーンケースによるチェーンケース跡を埋め戻すことはできなかった。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、上述のような問題を解決することを課題の一例とし、効率良く耕耘(代掻き)作業が行える折り畳み作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するため、本発明による折り畳み作業機は、走行機体の後部に設けられた連結機構を介して作業機本体が装着され、前記作業機本体の幅方向の端部から幅方向外側に延出している延長作業機体が、前記作業機本体側に折り畳み可能に構成され、前記延長作業機体が前記作業機本体の幅方向外側に配置された状態で、前記作業機本体の耕耘軸に設けられた駆動クラッチと前記延長作業機体の耕耘軸に設けられた従動クラッチとが連結可能に構成され、前記走行機体から前記作業機本体に伝達された動力が前記駆動クラッチ及び前記従動クラッチを介して前記延長作業機体の耕耘軸に伝達される折り畳み作業機であって、前記従動クラッチには少なくとも3以上の耕耘爪を固定できるフランジが設けられ、前記耕耘爪は、先端側が前記作業機本体側に湾曲した第1耕耘爪と、先端側が前記作業機本体と反対側に湾曲した第2耕耘爪と、からなり、前記フランジに固定される前記耕耘爪は、前記第2耕耘爪より前記第1耕耘爪の数が多いことを特徴とする。
また、前記耕耘爪は、フランジに対して均等の間隔で周方向に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、効率良く耕耘(代掻き)作業が行える折り畳み作業機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る代掻き作業機(作業体展開位置)の外観を示す平面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る代掻き作業機(作業体格納位置)の外観を示す側面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る代掻き作業機の動力伝達系を示す部分断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る代掻き作業機の動力伝達系を示す拡大図である。
【図5】(a)本発明の一実施形態に係る代掻き作業機における左作業体を示す側面図である。(b)本発明の他の実施形態に係る代掻き作業機における左作業体を示す側面図である。
【図6】走行機体のタイヤと耕耘ロータとの位置関係を示す平面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。便宜上、同一又は対応する要素には同一の符号を付け、その説明を省略する場合がある。なお、本発明は、作業機本体と延長作業機体との間にクラッチを備えた折り畳み作業機に広く適用可能であるが、ここでは本発明を折り畳み代掻き作業機に適用した場合の一例について説明する。
図1に代掻き作業機1の外観を表す平面図を、図2に代掻き作業機1の外観を表す側面図をそれぞれ示す。代掻き作業機1は、走行機体90の後部に対して3点リンク連結機構(図示省略)によって連結され、走行機体90の前進走行とともに進行して代掻き作業を行うものであり、機体前進方向に対して左右方向の中央部に配置された作業機本体10と、この左右両端部に上下方向に対して回動可能に取り付けられた延長作業機体としての左作業体20L及び右作業体20Rと、からなる3分割構造のロータリ作業部を備えている。
【0012】
作業機本体10の左右両端部には、前後方向に延びる軸部14,14が設けられ、この軸部14,14を中心として左作業体20L、右作業体20Rが上下方向に回動自在に設けられている。作業機本体10と左作業体20Lとの上部間及び作業機本体10と右作業体20Rとの上部間にはそれぞれ油圧シリンダ(図示省略)が設けられ、この油圧シリンダの伸縮によって、図2に示される左作業体20L及び右作業体20Rが作業機本体10の上方に折り畳まれる格納位置と、図1に示される左作業体20L及び右作業体20Rが作業機本体10の側方に展開される展開位置との間を移動する。
【0013】
図3、図4に示すように、作業機本体10は、左右方向に延びる主フレーム11を備えており、この主フレーム11の左右方向の中央部にはギヤボックス13が設けられている。このギヤボックス13には、前方側に突出する入力軸17が設けられており、この入力軸17によって走行機体90のPTO軸からの動力がユニバーサルジョイント等の動力伝達手段を介してギヤボックス13に伝達されるようになっている。入力軸17の後端と、主フレーム11内に設けられた動力伝達軸15の右側端部とは、ギヤボックス13内でベベルギヤ17a,15aによって噛み合っており、これによって、入力軸17の動力が動力伝達軸15に伝えられることになる。
【0014】
主フレーム11の左側端部にはチェーンケース8が、右側端部には側部フレーム9がそれぞれ垂設されている。チェーンケース8と側部フレーム9との下部間には多数の耕耘爪(図面上一部省略)が取り付けられた耕耘ロータ30Cが回転自在に支持されている。動力伝達軸15の左側端部(ベベルギヤ15aが設けられているのと反対側の端部)は、チェーンケース8内に挿入されており、この左側端部には、動力伝達軸15に対して固定され動力伝達軸15とともに回転する入力側スプロケット60が設けられている。入力側スプロケット60にはチェーン68が掛け回され、このチェーン68はチェーンケース8の下部に設けられた出力側スプロケット69に掛け回されている(図面上チェーン68は一部省略している)。出力側スプロケット69は、作業機本体10の耕耘ロータ30Cに接続されており、これにより、耕耘ロータ30cが所定方向に回転するように構成されている。
【0015】
左作業体20L及び右作業体20Rは、展開位置における外側端部にそれぞれ側部フレーム21L,21Rを備えており、この側部フレーム21L,21Rに設けられた支持部23L,23Rに、多数の耕耘爪(図面上一部省略)が取り付けられた耕耘ロータ30L,30Rの一端側(展開位置における外側端)が回転自在に支持されている。耕耘ロータ30L、30Rの他端側(展開位置における内側端側)は、左作業体20L及び右作業体20Rにおける展開位置での左右方向内側に設けられた支持フレーム25L、25Rに回転自在に支持されており、その端部には、従動クラッチ31L,31Rが連結されている。なお、従動クラッチ31L,31Rは、それぞれ支持フレーム25L、25Rよりも作業機本体10側に配置されているものである。
【0016】
左作業体20Lの従動クラッチ31Lは展開位置における内側面にクラッチ爪33Lを備え、該クラッチ爪33Lは、出力側スプロケット69に連結されチェーンケース8から外方(左側)に向かって露出された駆動クラッチ18のクラッチ爪18aと展開位置において噛み合うものである。また、同様に、右作業体20Rの従動クラッチ31Rは展開位置における内側面にクラッチ爪33Rを備え、該クラッチ爪33Rは、耕耘ロータ30cの右端部に接続され側部フレーム9から外方(右側)に向かって露出された駆動クラッチ19のクラッチ爪19aと展開位置において噛み合うものである。これにより、耕耘ロータ30L,30C,30Rは出力側スプロケット69の回転にともなって、同方向に連動して回転することになる。
【0017】
従動クラッチ31Lのクラッチ爪33Lが設けられている側面と反対側の側面(展開位置における外側面)には、ボルト等の締結部材41によって耕耘爪43を取り付けるためのフランジが固定されている。フランジは、外周側に耕耘爪を取り付けるための複数の取付部が均等に配置され、内周側に締結部材41を挿入するための孔部が設けられている。フランジは、等間隔で少なくとも3枚以上の耕耘爪が固定できるように構成される。この耕耘爪は、先端側が作業機本体10側(チェーンケース8側)に湾曲した第1耕耘爪と、先端側が作業機本体10と反対側に湾曲した第2耕耘爪と、からなり、第2耕耘爪より第1耕耘爪の数が多くなるように配置される。
【0018】
図5(a)の例では、フランジ40に対して4枚の耕耘爪43が周方向に90度間隔となるように固定されている。この4枚の耕耘爪43のうち、3枚の耕耘爪43aは、展開位置において湾曲部がチェーンケース8側を向くように固定されており、展開位置において湾曲部がチェーンケース8側と反対側を向く耕耘爪43bは1枚のみである。なお、この耕耘爪43bは、図4に示されるように、支持フレーム25Lと干渉しないように、平面視において鉤型となっている。また、フランジ40を従動クラッチ31Lに締結するための締結部材41は、内周側に90度間隔で4箇所設けられている孔部に挿入されるものである。
【0019】
また、図5(b)の例では、フランジ50に対して3枚の耕耘爪43が周方向に120度間隔となるように固定されている。この3枚の耕耘爪43のうち、2枚の耕耘爪43aは、展開位置において湾曲部がチェーンケース8側を向くように固定されており、展開位置において湾曲部がチェーンケース8側と反対側を向く耕耘爪43bは1枚のみである。なお、フランジ50を従動クラッチ31Lに締結するための締結部材41は、図5(a)の例と同様に、内周側に90度間隔で4箇所設けられている孔部に挿入されるものである。また、図5(a)、(b)のいずれの例においても、フランジ40,50に対する耕耘爪の固定は、ボルト等の締結部材47によってなされているものである。
【0020】
このように、チェーンケース8側に湾曲する耕耘爪43aが、チェーンケースと反対側に湾曲する耕耘爪43bより多く配設されていることにより、フランジ40(50)の下方の土は、チェーンケース8側に向かって放擲される割合が高くなる。これにより、例えば、図6に示すように、走行機体90のタイヤTの外端がチェーンケース8の位置と略同じになる場合は、タイヤTによってフランジ40(50)の下方に土が盛り上げられるため、この盛り上げられた土Fの所定量がチェーンケース8側に湾曲する耕耘爪43aによってタイヤ跡に戻されることになる。また、フランジ40(50)にはチェーンケース8と反対側に湾曲する耕耘爪43bも設けられているため、これによって、一定量の土Fがタイヤ跡と反対側に放擲されるものである。
【0021】
また、このような耕耘爪43の配置により、タイヤTによって盛り上げられた土Fだけでなく、チェーンケース8によって圃場にチェーンケース跡が残った場合でも、これを埋め戻すことができるものである。このように実施例によれば、圃場の藁等が引っかかる等の不具合が生じることなく、タイヤ跡及びチェーンケース跡並びにこれらが重なって耕耘が十分できず、かつ土の片寄りが発生し易い位置を効率良く埋め戻すことができる。
【0022】
なお、タイヤTによって盛り上げられる土Fの量は、圃場の土の状態によって変化するものであるが、盛り上げられる土Fの量によっては、タイヤ跡に土を戻し過ぎることがある。このような場合には、湾曲部がチェーンケース8側を向く耕耘爪43aの割合を小さくすればよい。例えば、図5(a)のように湾曲部がチェーンケース側を向く耕耘爪43aが3枚配置されている場合に、タイヤ跡に土を戻しすぎると判断されるときには、図5(b)のように湾曲部がチェーンケース側を向く耕耘爪43aが2枚配置されているフランジ50に交換することにより、埋め戻しの土量を容易に調整することができる。図5(a)の例と図5(b)の例とは、フランジ40,50を従動クラッチ31Lに締結するための孔部の位置が同じであるため、フランジごと交換することができる。
【0023】
なお、本実施例では、従動クラッチ31Lに固定されたフランジ40(50)及び耕耘爪43と同様の構成が、従動クラッチ31R側にも設けられており、これにより、走行機体90の右側のタイヤTによるタイヤ跡の埋め戻し等が行われるものである。
【0024】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。例えば、フランジに対して3枚又は4枚の耕耘爪が固定された例を示したが、これに限定されない。例えば、フランジに対して5枚以上の耕耘爪が固定されていても構わない。フランジに対して5枚の耕耘爪が固定される場合は、第1耕耘爪は、3枚又は4枚となる。なお、第1耕耘爪が3枚のときには、第2耕耘爪が2枚設けられることになるが、この2枚の第2耕耘爪が配置される位置は任意であり、周方向に連続して設けられても構わないし、その間に第1耕耘爪をはさんで配置しても構わない。
【符号の説明】
【0025】
1 代掻き作業機(折り畳み作業機)
8 チェーンケース
10 作業機本体
15 動力伝達軸
18 駆動クラッチ
20L 左作業体
20R 右作業体
30L 耕耘ロータ
30C 耕耘ロータ
31L 従動クラッチ
31R 従動クラッチ
40 フランジ
43a 耕耘爪(第1耕耘爪)
43b 耕耘爪(第2耕耘爪)
60 スプロケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体の後部に設けられた連結機構を介して作業機本体が装着され、
前記作業機本体の幅方向の端部から幅方向外側に延出している延長作業機体が、前記作業機本体側に折り畳み可能に構成され、
前記延長作業機体が前記作業機本体の幅方向外側に配置された状態で、前記作業機本体の耕耘軸に設けられた駆動クラッチと前記延長作業機体の耕耘軸に設けられた従動クラッチとが連結可能に構成され、
前記走行機体から前記作業機本体に伝達された動力が前記駆動クラッチ及び前記従動クラッチを介して前記延長作業機体の耕耘軸に伝達される折り畳み作業機であって、
前記従動クラッチには少なくとも3以上の耕耘爪を固定できるフランジが設けられ、
前記耕耘爪は、先端側が前記作業機本体側に湾曲した第1耕耘爪と、先端側が前記作業機本体と反対側に湾曲した第2耕耘爪と、からなり、
前記フランジに固定される前記耕耘爪は、前記第2耕耘爪より前記第1耕耘爪の数が多いことを特徴とする折り畳み作業機。
【請求項2】
前記耕耘爪は、フランジに対して均等の間隔で周方向に配置されていることを特徴とする請求項1記載の折り畳み作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−200179(P2012−200179A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66641(P2011−66641)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(390010836)小橋工業株式会社 (198)
【Fターム(参考)】