説明

折板屋根上緑化用植生基盤土壌充填袋

【課題】折板屋根の上で植物を栽培する際に使用する土壌入り植生基盤袋であって、植生土壌厚が極めて薄層であるにもかかわらず、従来の土壌内温度をより低減できる植生基盤袋を提供する。
【解決手段】折板屋根の上で植物を栽培する際に使用する土壌入り植生基盤袋であって、その上面側(植生側)の袋地として、織物の交点を熱融着させた遮光率70%以上のネットが使用されていること特徴とする折板屋根上緑化用植生基盤土壌充填袋。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋上積荷荷重の制限がある折板屋根上の緑化資材として用いられる植生基盤土壌充填袋に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、都市部における身近な緑への要求が高まっており、またヒートアイランド現象対策の一つとして、都市緑化が推進されている。この都市緑化を推進する上において、特に屋上緑化などの人工地盤の緑化が重要となっており、これには、軽量で植生の植え付けが容易である点から、芝生などの地面を覆う地被植物(グランドカバープランツ)などが植生植物として多用されている。
【0003】
また、工場立地法の運用変更後、最近は折板屋根を有する大型商業施設が増加しており、そして工場建屋や倉庫などにおいても、さらには駐車場・駐輪場、汚水処理場などにも折板屋根を有する建造物が増加してきており、これら建造物の折板屋根の上を緑化することが環境問題の上で好ましいこととなる。
【0004】
しかしながら、これらの折板屋根を用いた建築物の場合には、構造上、屋根の上で多大な荷重をかけることが出来ず、従来の屋上緑化システム、すなわちユニットトレーに軽量土壌を入れたものや、植生下敷きを敷いて、直接、土壌を乗せる工法などを用いた場合には、折板屋根建物の屋上積荷重量の制約上、非常に薄層の土壌厚とならざるを得ない。
【0005】
しかし、これら薄層の土壌の場合には、気温の上昇により土壌内温度(地温)が上昇し、この地温上昇が植生の発根に負担をかけ、また植物の初期育成時に大きなストレスを与える。したがって、このような従来の屋上緑化システムをそのまま折板屋根からなる建造物に用いることは出来ない。
【0006】
従来の屋上緑化に使用される軽量人工土壌としては、木片・木繊維を混合した土壌、発泡スチロールを混合した土壌、真珠岩パーライトを熱処理により発泡させた土壌などが公知である。また、発泡スチロール表面に特殊処理を施して土壌成分を付着させたもの(特許文献1)、あるいは数種の軽量土壌の発泡体粒子と砂状物質などを混合したもの(特許文献2)なども知られている。
【0007】
しかしながら、これらの人工土壌は、軽量、通気性・保水性に優れているものの、外気気温の土壌内伝達が良く、屋上緑化に用いた場合、植生の成育発根にストレスを与える。特に折板屋根からなる建造物の屋上緑化に用いた場合には、太陽光による温度上昇が通常建物の屋上緑化より激しく、植物成育発根に大きな支障となる。
【0008】
一方、人工土壌が風により飛散することを防止する技術として、特許文献3には、軽量土壌を袋に充填することが提案されている。しかしながら、この特許発明で用いられている袋は、親根性と透水性とを有する透水不織布(スパンボンド)や、経糸と緯糸を織ることにより得られる織物からなる袋であり、これらの袋の場合には、直射日光或いは外気温により充填された土壌の温度が上昇し、土壌内の水分が蒸散し植生の成育にストレスをかけることを見出した。
【0009】
また、特許文献4には、土壌充填袋をユニットトレーに入れユニットトレー同士を結合することにより固定することが提案されているが、この技術における袋は、経糸と緯糸を通常の方法により織ることにより得られる織物からなり、この文献に記載されている織物では、直射日光或いは外気気温により充填土壌の温度が上昇し、土壌内の水分が蒸散し植生の成育にストレスをかけることとなる。
【0010】
以上要するに、折板屋根の屋根上は、構造上、積荷荷重重量制限の問題点があり、それをクリアーできる重量では、植生が有効に成育できる土壌厚を確保しにくく、また、折板屋根の場合には、通常の土壌充填袋を使用した場合には、太陽光や太陽熱などによる温度上昇や土壌温度上昇が激しく、植栽植付け当初の初期発育段階における植生の妨げとなり、さらに植生に必要な水分確保のために特殊な構造が必要となる。
【0011】
【特許文献1】特開平5−219833号公報
【特許文献2】特公昭55−40005号公報
【特許文献3】特開平8−149905号公報
【特許文献4】特開2006−320243号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明者等は、建物強度の点で屋上緑化など到底不可能と思われていた折板屋根の上を緑化することが都市緑化を進める上で必要であることを見出した。本発明は、そのために好適に用いられる植生システム、特に好適な土壌充填袋を提供することにあり、すなわち植生土壌厚が極めて薄層であるにもかかわらず、従来の土壌内温度をより低減できる植生基盤袋を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、折板屋根の上で植物を栽培する際に使用する土壌入り植生基盤袋であって、その上面側(植生側)の袋地として、織物の交点を熱融着させた遮光率70%以上のネットが使用されていること特徴とする折板屋根上緑化用植生基盤土壌充填袋である。そして、好ましくは、上記袋の底面側(折板屋根側)の袋地が、芝生の根を通すことが出来ない耐根性と透水性とを兼ね備えるシートからなる場合であり、また、袋の四隅に、隣接する袋を連結できるハトメが設けられている場合である。
【0014】
本発明の袋を構成する、織物の交点を熱融着させた遮光率70%以上のネット(以下、遮熱・遮光ネットと称する場合がある)を有する植生基盤土壌充填袋は、従来の軽量人工土壌を入れた場合、土壌内の植生根の生育を好適にし、また軽量人工土壌の欠点も補うことができる。また、袋の上面側(すなわち植物の生い茂る側)に遮熱・遮光の特殊ネットを使用することで、屋根上における太陽熱・太陽光を軽減し、初期植生成育のための条件を改善することができる。本発明に使用する遮熱・遮光ネットは、好適には遮光率が70%〜95%である。
【0015】
本発明を構成する袋に用いる遮熱・遮光ネットは、織物の交点を熱融着させたネットであり、このようなネットの場合、袋地をカットしてもほつれることがないことから、ネットに切れ目を入れ、そこに花物や地被類などのポット植物を入れ、袋内にこれら植物を植えつけることもできる。また、経糸と緯糸の交点が溶融接着されていることから、目ズレを生じることがなく、従って、袋に充填された土壌が目ズレして大きく開いた目からこぼれ落ちることが少ない。
【0016】
また本発明において、袋の底面側(折板屋根側)を構成する袋地が、好適には、芝生の根を通すことが出来ない耐根性と透水性とを兼ね備えるシートであることから、袋内に余分な水が溜まり植物が根腐れを起こす心配も非常に少ない。
また、袋体が非常に軽いことから、袋体が風等により容易に移動する恐れがあるが、本発明の袋体では、袋四隅にハトメを設け、糸や針金または、結束バンド、設置金具など、隣接する袋体のハトメを固定、連結できる資材によって、隣接する袋体を連結することで袋体が風等により飛散・移動することを抑制できる。
【0017】
本発明を構成する植生基盤土壌充填袋に用いられる好適な軽量土壌としては、例えば、軽量人工土壌のヤシガラやココピートが用いられる。これらの軽量人工土壌は、乾燥時の嵩比重が約0.12g/cmで、範囲で表せば例えば0.09〜0.18g/cm、含水時の嵩比重も約0.5g/cm、範囲で表せば0.4〜0.6g/cmである。
【0018】
このように本発明では、袋内に充填される人工土壌は、比重が軽いため、このような人工土壌を袋に充填することなく、折板屋根上に載せると、風による飛散や、潅水時に水よりも比重が軽いため、浮き上がり、流れ出し、排水管を詰まらせる原因を起こしたり、軽量人工土壌の浮き上がりにより、生育する植物根にストレスをかけることがある。本発明では、このような風による飛散や水による流出等を防ぐためからも、特定の袋に充填して用いる。
【0019】
本発明は、前記したように、折板屋根を有する建物の屋上緑化に関するものであるが、折板屋根の上部は、もともと植物を植付ける場所ではなく、植物を上部に載せるような強固な構造でもない。そんな場所に植栽するためには、植え付ける植物の重量の軽減が重要課題になる。折板屋根の上部植栽として最も多い施工例は、セダム類であるが、折板屋根の上部環境は過酷なため枯死するケースが多い。ヒートアイランド抑制効果を考えると、気化熱による温度低下が重要である。芝生や花・地被類などの植物は、葉からの気孔蒸散が多く、環境温度を下げる効果が高いことから、折板屋根上に植生する植物としては、これらの植物を植え付けるのが好ましいが、これらの植物は成育過程において、セダム同様、成育するために有効な土壌厚や土壌保水水分量がなければ、生育が困難になることが多い。本発明の土壌充填袋を用いると、これらの問題点が解消する。
【0020】
次に本発明に用いられる土壌充填袋について詳細に説明する。本発明に用いられる袋には、その上面側(植生側)の袋地として、遮熱・遮光ネットを使用したもので、織物の交点を熱融着させた遮光率70%以上のネットが使用される。このようなネットは、例えば、芝生は根が通りやすく、かつ径8mm以下の繊維状軽量土壌などが用いられていても、土壌が袋体外側に出にくい目合いを有している。そして、上面側の遮熱ネットは、カッターナイフ・はさみなどで簡単に切り込みを入れることが出来るため、花類や、地被などのポット植物なども、植えつけることが容易である。この時、織物の交点が熱融着されていることから、表面の織物ネットがほつれることはない。
【0021】
具体的な上面側(植生側)の袋地は、遮熱・遮光性繊維からなる織物であって、遮熱・遮光性繊維としては、繊維形成性の樹脂に遮熱・遮光性物質を添加した組成物から得られる繊維やテープ状繊維が代表例として挙げられる。
【0022】
具体的に袋地を構成する繊維形成性の樹脂としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン類、ナイロンで代表されるポリアミド類、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル類、ポリビニルアルコール等が挙げられる。特に、表面をスパッタリング処理した幅0.5〜3mm程度のテープを経糸および緯糸に使用し、スパッタリング処理したテープ表面が織物表面(袋表面)を形成するように織ったネットで代表される金属光沢を有する織物が挙げられる。そして、スパッタリング処理に用いられる金属としてはステンレスが代表例として挙げられ、このような金属処理織物は、加工面が熱線を受け止め、反射することで遮熱効果が高い。
【0023】
より詳細にスパッタリング処理織物ネットについて説明すると、スパッタリングシートは、ポリエチレンで代表される繊維形成性繊維(テープ)から構成されるネットを後加工あるいは織物化する前にスパッタリング処理したものである。スパッタリングとは、真空内のターゲット素材(ステンレス・チタン・銅など)に電界・磁界を利用して高密度のプラズマ放電を作り、イオン化されたガスイオン(アルゴンガスなど)が電界によりターゲットに衝突し、そのエネルギーによってステンレスなどのターゲットが分子または原子状で叩き出されて布に付着する工法である。このように、本発明では、上面の袋地に用いられる遮光・遮熱ネットとしては、表面が金属光沢を有している繊維形成性樹脂からなる幅0.5〜3mm、好ましくは1〜2mmのテープを経糸および緯糸として使用した織物であって、その交点(経糸と緯糸の交点)が熱融着により固定されている構造が好ましい。
【0024】
上記したスパッタリングの他に、繊維や糸やテープの表面に、遮光・遮熱性物質を被覆したもの、例えば金属光沢を有するフィルムを覆ったものでも構わない。この場合の繊維や糸やテープとしては、合成繊維のほか、天然繊維や、再生繊維や同繊維からなる糸やテープであっても良い。さらに、繊維やテープ中に、金属光沢物質を練り込み紡糸してテープ化や繊維化したものも使用できる。
【0025】
なお、本発明では、上面袋地は遮光率70%以上という条件を満足していることが必要であり、遮光率70%以上を満足するためには、金属被覆或いは金属含有させた繊維やテープを用い、織物ネットの繊維被覆率を増加させることにより達成される。一例を挙げれば、ステンレスをスパッタリングした幅1.5mm前後のテープを経糸密度10本/インチ、緯糸密度7本/インチ程度の織密度で平織りに織り、経糸と緯糸の交点を融着により固定したものは上記遮光率70%以上を満足している。
【0026】
本発明では、経糸と緯糸(以下、糸、繊維という語は上記したようなテープを包含する)の交点を熱融着させたネットであることが好適であるが、熱融着させるための具体的手段としては、繊維表面に熱融着性の樹脂が存在しているか、或いは、繊維そのものが熱融着性樹脂からなるか、あるいは熱融着性樹脂を一成分とする複合紡糸繊維や混合紡糸繊維などが挙げられる。更に、熱融着性繊維を非熱融着性繊維と混繊、混紡、交撚、交織等により、袋地に熱融着性を付与してもよい。もちろん、袋地を構成する繊維を熱融着させることにより繊維同士を融着させるとともに糸の交点を熱接着させることができる。袋地を構成する繊維は上記したようなテープであることが、遮光・遮熱の点で好ましく、テープ幅及び目合いを変えることによって遮光率70%以上を容易に達成できる。
【0027】
植生側の袋地は、遮光率70%以上が必要で、遮光率70%〜95%が好ましく、また袋地を構成する織物の目合い(経糸と緯糸により構成される空間)としては、3〜1mm2が好ましい。そして目合いは経緯いずれの方向にも3mmを超えない形状で、かつ織物1平方インチ当たり40〜180個存在するのが充填土壌のこぼれ防止と均一な温度保持の点から好ましい。なお、本発明で規定する遮光率はJISL1055A法1万Luxにより測定される。
【0028】
一方、袋の底面側(折板屋根側)に用いられるシートは、植生の根を通すことが出来ない耐根性と透水性とを兼ね備えているのが好ましい。そのようなシートの好適例として、低融点の樹脂からなる繊維と高融点の樹脂からなる繊維からなる不織布、例えば太さ1〜50デシテックスのポリエチレン繊維と太さ1〜50デシテックスのポリエステル繊維からなる目付30〜100g/mの不織布の表面をアイロン加熱加工することで、低融点樹脂を溶融させ、具体的にはポリエチレン繊維を溶かし、ポリエステル繊維を溶かすことなく、不織布を緻密化して、不織布内の空隙を小さくしたシートが挙げられる。また、水耕栽培用に用いられている耐根シートを用いることもできる。低融点の樹脂からなる繊維と、高融点の樹脂からなる繊維の重量比としては、1:0.5〜1:2の範囲が好適である。
【0029】
本発明において、折板屋根側の袋地を、水を通すシートが好ましいとした理由は、本発明において袋に充填される軽量土壌は保水性が良好な土壌であるため、袋内に水が溜まる構造にすれば、植物が根腐れを起こし、枯れる原因になるからである。本発明では、上面側から入る雨水や潅水には、新鮮な酸素がふくまれていて植物の根の成育に好適であることから、通常は、水は上から入り下に抜ける構造となる。したがって本発明では、植生側に、遮光・遮熱性を有し、根を貫通する目合いの織物を用い、折板屋根側に、根を通さないが、水は貫通できる緻密な不織布を用いるのが好ましい。
折板屋根側の袋地の透水性耐根シートは、目付けが30〜100g/m、特に40〜70g/mであることが好適である。
【0030】
更に、本発明では、袋に充填する軽量土壌として、好適には、ヤシガラやココピートが用いられるが、このような軽量土壌は、通気性・保水性・軽量性に優れるため、袋体の通気性・通水性との相乗効果により、植生に極めて適していることとなる。土壌厚さとしては、5cm以上が好ましく、5cm未満の場合には、外気気温の上昇で植生基盤土壌内の温度は急上昇し、土壌内の水分は蒸発する。これにより、植生は大きなストレスがかかり、場合によっては枯死する可能性もある。土壌厚さは10cm前後がもっとも好適である。しかしながら、20cmを超えると重量が高くなり、折板屋根上の緑化のためには適したものとは言えなくなる。より好ましくは7〜15cmの厚さである。
【0031】
本発明において、袋の大きさとしては、縦30〜50cm、横50〜100cm、厚み5〜15cmが適当である。
【0032】
本発明を構成する袋の上面側のネットと底面側にシートは、耐候性のある糸で縫い合わされて袋とされているのが好ましい。耐候性のある糸としては、黒色系に着色されたビニロン糸が好ましい。このようなビニロン糸を使用し、2本張りで袋体底及び両側面の3方向を縫製して袋とするのが好ましい。そして、袋内に軽量人工土を充填した後、袋体上部をヒートシールにより、接着することが好ましい。
【0033】
さらに、本発明の袋の四隅には、隣接する袋を連結できるハトメが設けているのが好ましい。そして、隣接する袋体のハトメに糸や針金等を通して連結することにより、袋同士の引張力に耐えることが出来るように、3方向の周囲を2重針で縫製しているのが好ましい。
【0034】
また、施工者が上面側と底面側を容易に区別理解できるように、上面側と底面側の色を区別するのが好ましく、その点で本発明に用いる袋は、上面側には遮光性物質が添加或いは遮光性物質層が付与されており、それが底面側と相違する色をもたらすようなものが好ましい。例えば、上面側が遮熱の銀色(金属色)で、底面側は白となる。
【0035】
次に、そのような袋を用いて折板屋根で植生するための好適な方法について説明する。
まず、折板屋根は、凸凹の屋根のため、屋上緑化のためには屋根上を平らにするのが好ましく、具体的には、平らにするために発泡スチロールなどの軽量ボードを用い、それで凹部を埋め、植生できる平らな基盤を作る。そして、軽量ボードの表面には防根シートを張るのが好ましい。これは、土壌袋の上面からはみ出した根が発泡スチロール等に入り込まないためである。具体的には、本発明の袋の底面側を構成する繊維シートと同様なものが使用できる。
【0036】
ボードは、折板屋根勾配であるため、場合により排水性が悪いことがある。そのような場合には、屋根勾配方向と平行に排水性のパイプを軽量ボード内に入れたり、あるいはボード表面に排水用の溝を設けたりするのが好ましい。
そして、その上に、植生基盤袋を植生面側を上面にして均一に敷き詰める。そして、隣接する袋体同士を、ハトメを用いて連結するか、あるいは袋上部側に複数の袋を被う大きなネットを張って袋毎を押さえ込む方法を用いる。さらに、潅水チューブを屋根勾配と直角に配置し、屋根上側から一定のピッチで平行に並べる。特に植栽初期(植え付けから1ヶ月間)は、手撒きで十分潅水を行なうのが好ましい。
【0037】
上記したように、本発明の折板屋根用植物基盤袋は、植生基盤袋の上面側(植生側)に、遮熱・遮光ネットを使用した遮光率70%以上の織物の交点を熱融着させたネットを使用することで、土壌の温度上昇を抑制し、植生基盤土壌の水分蒸散速度を抑制することができる。また、袋体底面部のシートは、水を透水するが植生根を耐根するシートを使用することで、土壌内の余剰な水分は、下部から排出し、植生根が成育に必要な水分を確保でき、植生根を袋外側に貫通させないことで、下部の構造物を守る役目もある。また、上面側が通水性の低い不織布などの場合には、気温の上昇により土壌温度が上昇して水分が蒸発し、不職布に留まり土壌表面が濡れる状態になり、湿気から不織布にカビが生えたりすることもあるが、本発明の袋の場合には、遮熱・遮光ネットは織物構造であることから、蒸散した水分は、網目を抜けて外部に抜けることでカビが生えることはない。
【0038】
本発明において、袋体の内部に充填する土壌としては超軽量人工土壌が好ましく、超軽量人工土壌は、粒度が3mm〜20mmと比較的大きいものを用いるのが好ましく、このような大きい超軽量人工土は、乾燥しても粉塵のような粉が出にくく、本発明の袋を構成している織物の交点を融着させたネットから出ることは殆どない。
【0039】
本発明の植生袋の場合、折板屋根専用植物基盤袋の上面側を被う遮熱・遮光シートにより、通常の通気性シートを用いた場合と比べて2℃以上土壌内部の温度が低くなる。また、下部側のシートが余剰水を排出することにより、充填されている土壌の過剰含水を抑えてこともできる。特に、比重の軽い、保水性・通気性の高い超軽量人工土壌を入れた場合には、この効果が大きい。
更に超軽量人工土壌を袋に充填することにより、芝生や花・地被類などの植物も生育できる土壌厚が確保でき、超軽量人工土壌を袋体に充填することにより、潅水や降雨時に、袋体内部で軽量土壌の飽和含水量が上がる。そして裏面側のシートから余剰の水が排除できることにより、袋内に水が溜まるような現象が起こることはない。
【0040】
また、本発明を構成する土壌入り袋体は超軽量であるがゆえに、風等により容易に移動し易いという問題点を有しているが、隣接する袋体を結合できるように、袋体の四隅にハトメを付け、袋同士を連結することにより風による飛散を防止できる。また、袋体は太陽光や太陽熱を遮光・遮熱する効果がある、交点を融着させた特殊ネットを使用しており、これにより、植生が袋体表面部を全面覆うまでの期間や、一度袋体の全体を覆った植物が、何らかの外的要因により、枯死或いは病気で生育不良を起こした場合などに対しても、袋体内の超軽量人工土の温度上昇を、抑制することができる。また、この袋体の上面部は、織物の交点を融着させた特殊なネットであり、太陽光及び太陽熱により、暖められた袋体内部の軽量人工土から蒸発した水分は、表面のネットを通過し、外部へ蒸散することにより、袋体内部の人工軽量土壌の保水量は全体的に均一な状態となり、織物の交点を融着させた特殊なネット表面部にカビが生えるのを抑制できる。さらに、織物の交点が融着されていることにより、袋に充填されている土壌の粒子が袋から出るのを減少させており、それにより風により土壌が空中に飛ばされ、近隣に迷惑がかかることを極小化できる。
【0041】
本発明に適用される植物としては、地面を覆う各種の地被植物や、花類など栽培に使用できる。例えば、リュウノヒゲ・マツバギク・ヤブランなどの他、高麗芝・姫高麗芝・野芝類や、ハーブ類・ベゴニア・ペチュニア・野菜(果菜類、芋類他)などが挙げられる。
【0042】
図1は、本発明の植生基盤袋の断面図を表すものであって、図2におけるA−A´線の横断面図である。図1において、1は植生基盤袋本体を示すもので、2は、織物の交点を融着させた遮光・遮熱性のネットを示す。3は植生基盤袋内部に充填されている超軽量人工土壌(軽量土壌)を示す。4は植生根を通すことができない、耐根性と透水性とを兼ね備えたシートを示す。5は、2と4を縫い合わせる縫製部分を示す。6は、植生基盤袋に軽量土壌を入れた上部上口部分であり、軽量土壌を入れた後に、ヒートシールにより止めた部分を示す。
【0043】
図2は、本発明の植生基盤袋の斜視図である。図2のA−A´線の断面図は、図1を示す。図2の1〜6は図1の符号と同じものを示す。7は植生基盤袋の四隅に植生基盤袋を連結及び、固定するためのハトメを示す。
【0044】
図3は織物の交点を融着させたネットの拡大図である。同図において、経糸と緯糸が平織で織られており、その交点は熱融着により融着固定されている。
【0045】
図4は、本発明の植生基盤袋の使用例の一例を示す斜視図であり、植生するまでの状況を示すものである。図4の1〜7は、図1及び図2の符号と同じものを示す。
植生基盤袋は、上面側ネット2と、耐根性と透水性とを兼ね備えたシート4を合わせ、縫い合わせた袋体であり、袋体内部には、軽量土壌(ココチップ4S等)を充填した後に、縫製していない上部分をヒートシールにより、袋閉じした植生基盤袋で、四隅にハトメ7を設けている。図4の8は折板屋根、9は折板屋根上部に設置する下地ボードである。この下地ボードは、植生基盤袋を均一に並べ、隣接設置させるための下地ボードであり、屋根の上における、施工の安全性及び施工簡易性を増大させる。10は、下地ボードの上部に敷く耐根防水シート(アスファルト系防水も可能)を示す。11は、植生基盤袋の下部に貯まった余剰水を流す排水ドレーンパイプを示す。
12は、植生基盤袋に根を生育させるために植物に水を与える給水パイプを示す。
給水パイプは、ドリップ式ホース・点滴ホース・スプリンクラー式など状況に応じて使用できる。
【0046】
図5や図6は、植生基盤袋を固定するためのハトメを用いて同袋を連結する手段を示す斜視図である。同図で示すように、隣接する植生基盤袋のハトメ部分を、糸・針金または結束バンドや固定金具15のような資材で設置する。
【実施例】
【0047】
以下に、本発明を実施例により説明する。
【0048】
実施例1
以下の順序で実施した。
1.折板屋根に、下地ボードを設置する。
2.下地ボード上部に、耐根防水シートを敷設する。
3.排水ドレーンパイプ敷設する。
4.植生基盤袋を均一に並べる。
5.隣接する植生基盤袋を固定する。
6.給水パイプを敷設する。
7.植生(芝生等)を植える。
8.芝生を敷いた後、目地砂を覆土する。
9.芝生の上に飛散防止ネットを敷設する。
【0049】
より詳細には、以下のように実施した。
本実施例において、織物の交点を融着させた植生側となるネット2として、ステンレスをスパッタリングした幅1.5mmのポリエチレン製テープを経糸および緯糸に使用し、織密度経糸10本/インチ、緯糸8本/インチで平織し、織物の交点を融着させたネット(クラレトレーディング社製、商品名:かるが〜る)を使用した。遮光率は75%、織物の目合いは約1mm×1.6mmで、1平方インチ当たり目合いが10×8個存在している。一方、折板屋根側のシートとして、ポリエチレン繊維50重量%、ポリエステル繊維50重量%を混合した不織布からなるシートで、同不織布を熱処理により、低融点樹脂のポリエチレン繊維を溶かし、ポリエステル繊維を溶かすことなく、不織布を緻密化させ、不織布内の空隙を小さくしている目付50g/mの繊維シート(クラレトレーディング社製、商品名:KTJP50)を用いた。
【0050】
また、袋体下部に設置する排水管としては、クラレプラスチックス社製、商品名:クラドレーンを使用した。この排水管は、リサイクルペット100%から製造された排水性ドレン管である。また、袋体は、500×1000×100mmの袋体(50〜100mm均一に入る土壌の厚み)とし、袋体に入れる軽量人工土容量は、1袋当たり50Lとした。
【0051】
この袋に充填した超軽量人工土は、100L当たり乾燥時5〜10kg、湿潤時35〜50kgである。サイズは、約3mmのものと5〜8mmのものの2種類の混合品である。超軽量土壌として用いたココナッツは、分離器で繊維層と微粒子に分けられ、残った微粒子は1〜3年発酵させるために堆積させ、さらにこれにファイバー(繊維部分)を混合して、完全乾燥後、水分調整を行い、水洗い悪抜きを行なったものである。
【0052】
このような植物基盤袋を、図4の示すように、折板屋根上に並べて配置した。配置の手順としては、先ず、折板屋根の上に折板屋根専用植物基盤袋を敷並べることが可能となるボード9を設置し、屋根勾配と平行に排水管を300mm〜500mmピッチで配置し、外側端上部を基準に順次下方側に向けて均一に順序良く並べた。この時、袋体左右両端及び、上下部に隣接する袋体と密に合わせ表面隣接部の袋体間に谷部が出来ないように密に合わせた。
【0053】
隣接する板屋根専用植物基盤袋の四隅を袋の設けたハトメを用いて針金で結合したのち、袋体表面部に潅水チューブを設置して、植生を植え付け、タップリ水を与えた。そして、折板屋用植物基盤袋を使用して、上部に切り芝を設置したところ、切り芝は、袋体の上面の接着性ネットを貫通し、袋体内部の超軽量人工土へ根を活着させた。
【0054】
同様に、折板屋根専用植物基盤袋の表面部の上に、芝生の種子・花・ハーブ類種子などを配した場合、それらの種子は、成長により根が袋体の上面部のネットを通り、袋体内の軽量人工土に達し、この土壌から養分を吸収してさらに成長した。このようにして、多数の種子の根がネットを通り、軽量人工土に達することになり、それらの種子の根は、折板屋根専用植物基盤袋に安定的に定着し、移動することがなかった。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明を構成する植生基盤袋の一例の断面図を表す。
【図2】本発明を構成する植生基盤袋の一例の斜視図である。
【図3】本発明を構成する植生基盤袋の上面側(植生側)を構成するネットの一例の拡大図である。
【図4】本発明を構成する植生基盤袋を使用した好適例の斜視図を示す。
【図5】本発明を構成する植生基盤袋を連結している個所の一例の斜視図である。
【図6】本発明を構成する植生基盤袋を連結している個所の他の一例の斜視図である。
【符号の説明】
【0056】
1 植生基盤袋
2 織物の接点を融着させた特殊ネット
3 超軽量土壌(軽量土壌)
4 耐根透水シート
5 縫製部
6 ヒートシール部
7 ハトメ
8 折板屋根
9 下地ボード
10 耐根防水シート
11 排水ドレーンパイプ
12 給水パイプ
13 固定金具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
折板屋根の上で植物を栽培する際に使用する土壌入り植生基盤袋であって、その上面側(植生側)の袋地として、織物の交点を熱融着させた遮光率70%以上のネットが使用されていること特徴とする折板屋根上緑化用植生基盤土壌充填袋。
【請求項2】
袋の底面側(折板屋根側)の袋地が、芝生の根を通すことが出来ない耐根性と透水性とを兼ね備えるシートからなる請求項1記載の折板屋根上緑化用植生基盤土壌充填袋。
【請求項3】
袋の四隅に、隣接する袋を連結できるハトメが設けられている請求項1または2に記載の折板屋根上緑化用植生基盤土壌充填袋。
【請求項4】
織物が、ステンレスを表面に付与した幅0.5〜3mmのテープを経糸および緯糸に用いた織物であって、目合いが1〜3mmで、かつ織物1平方センチ当たり40〜180個存在させた織物である請求項1に記載の折板屋根上緑化用植生基盤土壌充填袋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−55820(P2009−55820A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−225097(P2007−225097)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(591121513)クラレトレーディング株式会社 (30)
【Fターム(参考)】