説明

折畳式携帯無線装置

【課題】 通話状態において高いアンテナ性能を確保できる折畳式携帯無線装置を提供する。
【解決手段】 上部筐体1に装着された導電性の金属フレーム12と下部筐体2内に固定された軸部33とを回動可能に連結して電気的に接続し、筐体幅方向の一方の端に配設された軸部33と他方の端に配設された回路基板22上の整合回路22Aとを少なくとも一部は筐体幅方向に平行になるように配置された板金4を介して電気的に接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高いアンテナ性能を有する折畳式携帯無線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、折畳式の携帯電話機(以下、「折畳式携帯電話機」とよぶ)が多数開発されている。この折畳式携帯電話機は、一般に、第1筐体(上部筐体)と第2筐体(下部筐体)をヒンジ部で連結して開閉自在に構成したものであり、開いた状態(「開状態」)と閉じた状態(「閉状態」)の2つの状態をとり得る。このため、開いて使用する開状態では視認する表示画面を大型化できるとともに、閉じて使用する閉状態ではコンパクトな形状にまとめることができる利点を有している。
【0003】
このような折畳式携帯電話機に内蔵するアンテナとしては、例えば、特許文献1又は特許文献2に開示されているように、上部筐体内部にアンテナ素子を配設して、ヒンジ部内を通過させた給電線を介してこのアンテナ素子に給電する構成のものが知られている。さらに、折畳式携帯電話機に内蔵するアンテナとしては、例えば、図7に示すような内蔵型アンテナが提案されている。ここで、この折畳式携帯電話機について説明する。
【0004】
図7に示す従来の内蔵型アンテナは、上部筐体101を構成している導電性の金属フレーム101Aと、この金属フレーム101Aに電気的に接続され導電性金属で形成されたヒンジ部103と、このヒンジ部103に電気的に接続された給電用素子104とで構成される上側素子と、下部筐体102に内蔵された板状素子105で構成された下側素子とでダイポールアンテナを構成しており、上部筐体101と下部筐体102が開かれた開状態のときに、高いアンテナ性能が得られるものである。
ところで、上記した従来の内蔵型アンテナでは、上部筐体101と下部筐体102が開かれた開状態のときにダイポールアンテナとして動作するため、主偏波は筐体の長手方向と平行になる。
【特許文献1】特開2001−156898号公報
【特許文献2】特開2002−335180号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、図8に示すように、使用者が折畳式携帯電話機を手200で保持して通話を行う状態のときには、主偏波が、地面Gに対して垂直な法線Nに対して傾いてしまう(本発明者らによると、使用中の折畳式携帯電話機は、一般的に筐体部分がα度(=60度前後)に傾斜していることが統計的に確認されている)。その結果、基地局からの到来波(主偏波が地面に対して垂直である)と異なるため、アンテナ性能を高くできないという問題があった。
【0006】
さらに、図7に示すように、給電用素子104が筐体幅方向の一方の端に偏って配置されている構成のものにあっては、図9(A)に示すようにユーザが一方の手(右手)200Rで携帯無線機を持った場合、給電用素子104と指は比較的大きく離れているためアンテナ性能の大きな劣化はない。ところが、同図(B)に示すように、他方の手(左手)200Lで携帯無線機を持つ場合には、給電用素子104と指が近接するため、アンテナ性能が劣化するという問題があった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、通話状態において高いアンテナ利得を得ることができ、特に、筐体を左右のいずれの手で把持した通話状態においても高いアンテナ利得を得ることができる折畳式携帯無線装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の折畳式携帯無線装置は、第1筐体と、第2筐体と、前記第1筐体と前記第2筐体とを回動自在に連結するヒンジ部と、前記第1筐体に設けるアンテナ素子と、前記第2筐体内部に設けた、グランドパターンを有する回路基板と、この回路基板上に設けた無線回路とを備え、前記ヒンジ部は、導電性の金属で構成した第1ヒンジ部及び第2ヒンジ部と、前記第1ヒンジ部と前記第2ヒンジ部とを電気的に接続すると共に回動可能に支持する連結部とを有し、前記第1ヒンジ部は、前記第1筐体に設けて前記アンテナ素子の前記ヒンジ部側の端部と電気的に接続し、前記第2ヒンジ部は、前記第2筐体に設けて前記回路基板上のグランドパターンと所定の間隔を隔てて配置し、前記第2ヒンジ部の筐体幅方向の一方の端部側にヒンジ給電部を配置し、前記ヒンジ給電部に対して筐体幅方向の反対側の端部側の前記回路基板上に前記無線回路と接続した回路側給電部を配置し、前記ヒンジ給電部と前記回路側給電部に電気的に接続するとともに少なくとも一部が筐体幅方向と平行に配設したことを特徴としている。上記構成によれば、少なくともその一部が筐体幅方向に平行になるように配設された給電用素子にアンテナ電流が流れるため、主偏波を筐体幅方向に傾けることができ、通話状態において高いアンテナ性能を確保できる。
【0009】
また、本発明に係る折畳式携帯無線装置は、前記第1筐体と前記第2筐体の開閉状態を検出する開閉状態検出手段と、前記開閉状態検出手段の検出結果に応じて前記ヒンジ給電部と前記給電用素子とを電気的接続又は絶縁する切替え手段とを備え、前記切替え手段は、前記第1筐体と前記第2筐体が開いたときには、前記ヒンジ給電部と前記給電用素子とを電気的に接続させるとともに、前記第1筐体と前記第2筐体が閉じたときには、前記ヒンジ給電部と前記給電用素子とを絶縁させることを特徴としている。この構成によれば、第1筐体と第2筐体の開閉状態に関わらず高いアンテナ性能を確保しつつ、特に、開いた状態の通話状態において高いアンテナ性能を確保できる。
【0010】
また、本発明に係る折畳式携帯無線装置は、第1筐体と、第2筐体と、前記第1筐体と前記第2筐体とを回動自在に連結するヒンジ部と、前記第1筐体に設けるアンテナ素子と、前記第2筐体内部に設けグランドパターンを有する回路基板と、前記回路基板上の無線回路とを備え、前記ヒンジ部は、導電性の金属で構成した第1ヒンジ部及び第2ヒンジ部と、前記第1ヒンジ部と前記第2ヒンジ部とを電気的に接続すると共に回動可能に支持する連結部とを有し、前記第1ヒンジ部は、前記第1筐体に設けて前記アンテナ素子の前記ヒンジ部側の端部と電気的に接続し、前記第2ヒンジ部は、前記第2筐体に設けて前記回路基板上のグランドパターンと所定の間隔を隔てて配置し、前記第2ヒンジ部の筐体幅方向の一方の端部側に第1ヒンジ給電部を配置し、前記第2ヒンジ部の筐体幅方向の他方の端部側に第2ヒンジ給電部を配置し、前記回路基板上に前記無線回路と接続された前記回路側給電部を配置し、前記第1ヒンジ給電部、前記第2ヒンジ給電部及び前記回路側給電部と電気的に接続するとともに少なくとも一部が筐体幅方向と平行になるよう配設された給電用素子を備えることを特徴としている。この構成によれば、左右のいずれの手で握られた通話状態においても高いアンテナ性能を確保できる。
【0011】
また、本発明に係る折畳式携帯無線装置は、前記第1筐体と前記第2筐体の開閉状態を検出する開閉状態検出手段と、前記開閉状態検出手段の検出結果に応じて前記第1ヒンジ給電部と前記給電用素子とを電気的に接続又は絶縁する第1切替え手段と、前記開閉状態検出手段の検出結果に応じて前記第2ヒンジ給電部と前記給電用素子とを電気的に接続又は絶縁する第2切替え手段とを備え、前記第1切替え手段は、前記開閉状態検出手段が、開状態を検出したときに前記第1ヒンジ給電部と前記給電用素子とを電気的に接続するとともに、閉状態を検出したときに前記第1ヒンジ給電部と前記給電用素子とを絶縁し、前記第2切替え手段は、前記開閉状態検出手段が、開状態を検出したときに前記第2ヒンジ給電部と前記給電用素子とを電気的に接続するとともに、閉状態を検出したときに前記第2ヒンジ給電部と前記給電用素子とを絶縁することを特徴としている。この構成によれば、第1筐体と第2筐体の開閉状態に関わらず高いアンテナ性能を確保しつつ、特に、左右のいずれの手で握られた通話状態においても高いアンテナ性能を確保できる。
【0012】
また、本発明に係る折畳式携帯無線装置は、前記給電用素子が、前記第2筐体内部の、操作キーが配置されている筐体面に対して反対側の筐体面側に近接して配設することを特徴としている。この構成によれば、通話状態のときはアンテナ電流が流れる給電用素子を人体頭部から一定距離を隔てることができるため、人体の影響によるアンテナ性能の低下を軽減でき、通話状態において高いアンテナ性能を確保できる。
【0013】
また、本発明に係る折畳式携帯無線装置は、前記給電用素子が、少なくとも一部を前記回路基板上の印刷パターンで構成すことを特徴としている。この構成によれば、部品点数を削減した上で、高いアンテナ性能を確保できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、通話状態において高いアンテナ性能を得られ、特に、左右のいずれの手で把持された通話状態においても、高いアンテナ性能を確保することができる折畳式携帯無線装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
[第1の実施形態]
図1は本発明の第1の実施形態に係る折畳式携帯無線機を示すものであり、この折畳式携帯無線機は、第1筐体(以下、「上部筐体」とよぶ)1と第2筐体(以下、「下部筐体」とよぶ)2とがヒンジ部3で連結された構造になっており、ヒンジ部3の回転軸を中心に回動することにより、開いた状態(以下、「開状態」とよぶ)と閉じた状態(以下、「閉状態」とよぶ)になる。
【0016】
上部筐体1は、表示部11を設けた一面(以下、「上側内面」とよぶ)1Aに「アンテナ素子」を構成する金属フレーム12を設けている。この金属フレーム12には、一般に、高い導電性を有し、かつ軽量で強度が高い金属、例えばマグネシウム合金を用いている。これにより、上部筐体1の強度を確保するとともに金属フレーム12がアンテナ素子としても動作する。なお、一般に、金属フレーム12の外装面には化粧用の塗装が施されている。
【0017】
下部筐体2には、筐体を折畳んだときに上部筐体1の上側内面1Aと対向する一面(以下、「下側内面」とよぶ)2Aに操作部21が設置されているとともに、下部筐体2の内部に所定の印刷パターを設けた回路基板22が設置されている。
このうち、操作部21は、本実施形態の折畳式携帯無線機とユーザとのインターフェースであり、プッシュボタンで構成した複数の操作キーを備えており、通話状態の際にユーザ(人体)の頬に近接する下側内面2Aに配置されている。また、この下部筐体2には、一般に、この通話状態においてユーザ(人体)の頬に近接する下側内面2Aには、送話部25の音孔が設けられている。
【0018】
ヒンジ部3は、軸受けを設けた軸受部31、32と、軸を設けた軸部33,34と、「連結部」であるネジ33A,34Aとを備えている。
即ち、金属フレーム12のヒンジ部3寄りの筐体幅方向に対する一方の端側には、「第1ヒンジ部」を構成する軸受部31が金属フレーム12と一体で設けられている。軸受部31の中心には、下部筐体2に設けた「第2ヒンジ部」を構成する軸部33が挿通する孔が設けられており、軸受部31と軸部33とはネジ33Aによって回動自在に連結される。ここで、軸部33は、軸受部31に設けた前述の孔の内部で、少なくとも軸の一部が接触するため、電気的に接続されており、その結果、金属フレーム12と軸部33とは軸受部31を介して電気的に接続されている。
また、金属フレーム12のヒンジ3寄りの筐体幅方向に対する他方の端側にも、軸受部32が金属フレーム12と一体で設けられている。この軸受部32の中心には軸部34が挿通する孔が設けられており、軸受部32と軸部34とはネジ34Aによって回動自在に連結される。また、軸部34は、軸受部32に設けられた孔の内部で少なくとも軸の一部が接触するため、電気的に接続されており、その結果、金属フレーム12と軸部34とは軸受部32を介して電気的に接続されている。
【0019】
一方、軸部33は、取付ネジ33Bによって下部筐体2の固定部2Cに取り付けてあり、下部筐体2に機械的に固定される。また、軸部34は、取付ネジ34Bによって下部筐体2の固定部2Cに取り付けられてあり、下部筐体2に機械的に固定される。軸部34の材質は、上部筐体1と下部筐体2の回動の際に必要な強度を考慮して金属としているが、軸部33とは異なり、この強度が保たれるならば非導電性の樹脂であってもよい。要するに、軸部34と金属フレーム12とは電気的に絶縁されていてもよい。
【0020】
また、軸部33には、「給電用素子」を構成する導電性の板金4が一体に螺着されている。即ち、軸部33と板金4とは取付ネジ33Bにより同時に固定され、取付ネジ33Bの締付力によって電気的に接続される。ここで、取付ネジ33Bは「ヒンジ給電部」を構成している。この板金4は、その少なくとも一部が下部筐体2の幅方向に対して平行になるように配置してあるとともに、軸部33に固定された側から下部筐体2の幅方向に対してこれとは反対側へ引き回されている。また、板金4は、この一端に設けたバネ構造により、回路基板22上に配置された「回路側給電部」を構成する端子23にバネ接触しており、この端子23を介して回路基板22上の印刷パターンに設けた整合回路22Aと接続している。
【0021】
板金4は、下部筐体2内の回路基板22において、操作部21が配置されている下側内面2Aとは反対側の面22B(これを「下側外面」とよぶ)2Bに、一端部が取り付けられている。
【0022】
回路基板22には、前述の整合回路22Aと、無線回路22Bと、この無線回路22Bの接地電位をもつ回路基板22上の導体パターンであるグランドパターン22Cなどが配置される。無線回路22Bと整合回路22Aは、回路基板22上に配設された印刷パターンで電気的に接続されている。
【0023】
次に、本実施形態に係る折畳式携帯無線機の作用について説明する。
上記のように構成された折畳式携帯無線機において、金属フレーム12と軸受部31と軸部33と板金4とが長さ約135mm(L1+L2:L1=90mm、L2=45mm)の「上側アンテナ素子」として動作する。そして、整合回路10が、この上側アンテナ素子のインピーダンスを無線回路22Bの入力インピーダンス(一般には50Ω)に整合する機能を果たす。また、グランドパターン22Cは、長さ約90mmの「下側アンテナ素子」を構成する。即ち、上側アンテナ素子と下側アンテナ素子とは、筐体が開いた開状態のときには、ダイポールアンテナとして動作し、特に板金4の筐体幅(X)方向に対し平行な部分にアンテナ電流が強く流れるため、主偏波が筐体幅方向に傾いたダイポールアンテナとして動作する。なお、板金4において筐体幅(X)方向に対し平行に配置されている部分と、軸部33、金属フレーム12及びグランドパターン22Cとの距離は、それぞれ、極力離す(例えば2mm以上)ことがアンテナ性能上望ましい。
このようにアンテナが構成された折畳式携帯無線機では、主偏波が筐体幅(X)方向に傾くため、図1に示すような通話状態(筐体が開いた開状態)においては、基地局アンテナの主偏波である垂直偏波を送受信し易くなり、通話状態において高いアンテナ性能が得られる。
このように、本実施形態の折畳式携帯無線機では、従来のダイポールアンテナとは異なり、通話状態において高いアンテナ性能を得ることができる。
【0024】
なお、本実施形態の折畳式携帯無線機では、軸部33を筐体幅方向に対する一方の端部に配置し、かつ、端子23を他方の端部に配置しているため、板金4が筐体幅(Y)方向全体に亙って配置されているが、これに限るものではない。即ち、少なくとも筐体幅(Y)方向の中央に位置する中心線Aよりも一方側に偏って軸部33を配置するとともに、他方側に偏って端子23を配置し、かつ、板金4が筐体幅方向の全体長の30%以上に亙って配置されていれば、従来のダイポールアンテナと比較し、通話状態において高いアンテナ性能を得ることができる。
【0025】
また、本実施形態の折畳式携帯無線機では、アンテナ素子として金属フレーム12を用いているが、これに限るものではない。例えば、上部筐体1に取り付けられた板金を、アンテナ素子として、軸部33に電気的に接続してもよく、また、上部筐体1内部に配置された図示外の回路基板上のグランドパターンをアンテナ素子として、軸部33に電気的に接続しても、通話状態において高いアンテナ性能を得ることができる。このようにアンテナ素子として板金やグランドパターンを用いる場合には、金属フレーム12は、導電性の金属である必要はなく、例えば非導電性の材質である樹脂などであってもよい。
【0026】
また、本実施形態の折畳式携帯無線機では、板金4を操作部21の操作キーが配置された下側内面2Aとは対向する下側外面2B側に配置しているが、これに限るものではない。即ち、板金4が金属フレーム12や軸部33やグランドパターン22Cと充分な距離(例えば2mm以上)を隔てて配置されていればよい。この場合、操作キーが配置された下側内面2Aとは対向する下側外面2B側に板金4の一端部を配置した場合に比べると、若干効果は下がるが、従来のダイポールアンテナと比較して、通話状態において高いアンテナ性能を得ることができる。特に、図2に示すように、板金4の一部を回路基板22上の印刷パターン41で形成した場合には、折畳式携帯無線機を組み立て易くできる。
【0027】
なお、本実施形態の折畳式携帯無線機では、図3に示すように、板金4の替わりに第1板金4A,第2板金4Bを設け、この第1、第2板金4A,4Bの電気長を調整するため、第1、第2板金4A,4Bの間に、リアクタンス素子9を挿入し、第1、第2板金4A,4Bにより多くのアンテナ電流を流すよう調整すれば、さらに通話状態のアンテナ性能を高めることができる。
また、本実施形態では、軸部33と軸部34とを筐体幅方向の両端に配置したヒンジ構造としているが、これに限るものではない。例えば、上部筐体1と下部筐体2とが回動可能であり、金属フレーム12と電気的に接続できるような構造を有する導電性の金属で構成されたヒンジ構造であれば、特にヒンジ金具の数には関係がなく通話状態において高いアンテナ性能を得ることができる。
【0028】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本実施形態において、第1の実施形態と同一部分には同一符号を付して重複説明を避ける。
図4は本発明の第2の実施形態に係る折畳式携帯無線機を示すものであり、本実施形態の折畳式携帯無線機は、第1の実施形態の板金4の替わりに、板金5を「給電用素子」として用いている。即ち、本実施形態の折畳式携帯無線機では、「第1ヒンジ給電部」を構成する板金5及び軸部33が、取付ネジ51で電気的に接続されている点と、「第2ヒンジ給電部」を構成する板金5及び軸部34が、取付ネジ52で電気的に接続されている点と、軸部34には必ず導電性の金属を用いる点が、図1、図2に示す第1の実施形態の折畳式携帯無線機と相異する。
【0029】
軸受部32と軸部34とは、軸受部32に設けられた孔の内部で少なくとも一部が接触するため、電気的に接続される。同様に、軸受部31と軸部33とは、軸受部31に設けられた孔の内部で少なくとも一部が接触するため、電気的に接続される。
軸部33,34には、「給電用板金」を構成する導電性の板金5が重ねて配置されている。軸部33,34と板金5とは、それぞれ取付ネジ51,52により、同時に下部筐体2に固定されており、取付ネジ51,52の締付力によって電気的に接続される。
【0030】
板金5は、第1の実施形態と同様に、少なくともその一部が下部筐体2の幅方向に対して平行になるように配置してある。また、板金5は、この一端に設けたバネ構造により回路基板22上に配置された端子23にバネ接触しており、第1の実施形態と同様に、この端子23を介して回路基板22上の印刷パターンに設けた整合回路22Aと接続される。
【0031】
次に、本実施形態の折畳式携帯無線機の作用について説明する。
上記のように構成された折畳式携帯無線機において、金属フレーム12と、軸受部31,32及び軸部33,34と、板金5とが「上側アンテナ素子」として動作し、この上側アンテナ素子のインピーダンスを無線回路22Bの入力インピーダンス(一般には50Ω)に整合する機能を整合回路22Aが果たす。
また、グランドパターン22Cを「下側アンテナ素子」とする。すなわち、本実施形態の折畳式携帯無線機では、筐体が開状態の場合、下側アンテナ素子から上側アンテナ素子までは、筐体幅(Y)方向の両端に分配して給電するダイポールアンテナとして動作し、アンテナ電流の一部が板金5の筐体幅方向に対し平行な部分に流れるため、主偏波が筐体幅方向に傾いたダイポールアンテナとして動作する。また、通話状態(筐体が開状態)のときに、下部筐体2を、図5(A)に示すように右手22で把持した場合でも、或いは同図(B)に示すように左手23で把持した場合でも、板金5のいずれか一方の端が手や指から離れるため、手や指の近接による放射抵抗の低下を招き難いダイポールアンテナとして動作する。なお、板金5の筐体幅方向に対し平行に配置されている部分と、軸部33,34、金属フレーム12或いはグランドパターン22Cとの間の距離は極力離す(例えば2mm以上)ことがアンテナ性能上望ましい。
【0032】
このように構成されたアンテナを備える本実施形態の折畳式携帯無線機では、主偏波が筐体幅方向に傾くため、通話状態においては、基地局アンテナの主偏波である垂直偏波を送受信し易くなり、通話状態において高いアンテナ性能が得られる。また、手や指の近接による放射抵抗の低下を招き難いため、いずれの手で把持された場合でも、通話状態において高いアンテナ性能が得られる。このように、本実施形態の折畳式携帯無線機では、従来のダイポールアンテナとは異なり、左右いずれの手で把持された場合でも、通話状態のときに高いアンテナ性能を得ることができる。
【0033】
なお、本実施形態の折畳式携帯無線機では、軸部33を筐体幅方向に対する一方の端部に配置するとともに、軸部34を他方の端部に配置し、かつ、整合回路10を他方の端部に配置しているため、板金5が筐体幅方向全体に亙って配置されているが、これに限るものではない。即ち、少なくとも筐体幅方向に対する中心線A(図4(A)参照)の一方の側に軸部33を配置するとともに、他方の側に軸部34と整合回路22Aを配置し、かつ、板金5が筐体幅方向の全体長の30%以上に亙って配置されてあれば、従来のダイポールアンテナと比較して通話状態において高いアンテナ性能を得ることができる。
なお、本実施形態の折畳式携帯無線機では、アンテナ素子として金属フレーム12を用いているがこれに限るものではない。例えば、上部筐体1に取り付けられた適宜の板金をアンテナ素子として軸部33,34に電気的に接続してもよく、また、上部筐体1内に配置された回路基板上のグランドパターンをアンテナ素子として軸部33,34に電気的に接続しても、通話状態において高いアンテナ性能を得ることができる。このようにアンテナ素子として適宜の板金やグランドパターンを用いる場合には、金属フレーム12は、導電性の金属である必要はなく、例えば非導電性の材質である樹脂などであってもよい。
なお、本実施形態の折畳式携帯無線機では、軸部33と軸部34とを筐体幅方向の両端に配置したヒンジ構造としているが、これに限るものではない。即ち、上部筐体1と下部筐体2とが回動可能であり、かつ、金属フレーム12の両端に電気的に接続できるような構造を有する導電性の金属で構成されたヒンジ構造であれば、ヒンジ金具の数に関係がなく、通話状態において高いアンテナ性能を得ることができる。
【0034】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本実施形態において、第1、第2の実施形態と同一部分には同一符号を付して重複説明を避ける。
図6に示す本発明の第3の実施形態に係る折畳式携帯無線機は、給電用素子として、板金4及び板金5の替わりに板金6を用いている点と、上部筐体1と下部筐体2の開閉状態を検出する開閉状態検出手段7としてホール素子71及び永久磁石72を用いている点と、開閉状態の検出結果に基づき、板金6と軸部34の電気的な接続又は未接続を切替える切替え手段である第1高周波スイッチ81と、同様に開閉状態の検出結果に基づき、板金6と軸部33の電気的な接続又は未接続を切り替える切替え手段である第2高周波スイッチ82とを備えている点が、第1、第2の実施形態に係る折畳式携帯無線機と相異する。
【0035】
板金6は、整合回路22A、第1高周波スイッチ8及び第2高周波スイッチ9にそれぞれ電気的に接続されており、少なくともその一部が筐体幅方向と平行になるようにして配置される。このうち、第1高周波スイッチ81及び第2高周波スイッチ82は、ホール素子71によって制御される。
【0036】
このホール素子71は、下部筐体2内に配置されている。一方、上部筐体1には永久磁石72が内蔵されており、折畳式携帯無線機の筐体を閉じた場合には、永久磁石72とホール素子71が近接するが、筐体を開いた場合には、永久磁石72とホール素子71との間隔が大きくなる。なお、ホール素子71の近傍に磁界(即ち、永久磁石72)がない場合に、高周波スイッチ82が板金6と軸部33とを接続させるとともに、高周波スイッチ81が板金6と軸部34とを接続させるよう構成すると、折畳式携帯無線機の筐体を開いた状態では、第2の実施形態で説明したダイポールアンテナと同様の構成にできる。
【0037】
ここで、本実施形態に係る折畳式携帯無線機の動作について説明する。
本実施形態でも、金属フレーム12と軸部33,34と板金6とは、前述したように、上側アンテナ素子として動作する。また、整合回路22Aは、この上側アンテナ素子のインピーダンスを無線回路22Bの入力インピーダンス(一般には50Ω)に整合する機能を果たす。一方、グランドパターン13は、下側アンテナ素子として動作する。
従って、筐体を開いたときに、下側アンテナ素子から上側アンテナ素子までは、筐体幅方向の両端に分配して給電するダイポールアンテナとして動作し、アンテナ電流の一部が板金6の筐体幅方向に対し平行な部分に流れるため、主偏波が筐体幅方向に傾いたダイポールアンテナとして動作する。
ここで、ホール素子71は、近傍に磁界がある場合に、第2高周波スイッチ82が板金6と軸部33とを絶縁するよう構成するとともに、第1高周波スイッチ81が板金6と軸部34とを絶縁するよう構成すると、筐体を閉じた状態のときには、板金6は整合回路22Aに接続されたモノポールアンテナ素子として動作する。そして、このモノポールアンテナ素子のインピーダンスを無線回路22Bの入力インピーダンス(一般には50Ω)に整合する機能を整合回路22Aが果たす。なお、このモノポールアンテナ素子として動作する板金6の長さは、使用する電波のλ/4波長以上(2GHzの場合で37.5mm)であることがアンテナ性能上望ましい。
【0038】
従って、このようなアンテナを備えた本実施形態の折畳式携帯無線機では、筐体を開いた状態では、主偏波が筐体幅方向に傾くため、通話状態のときに高いアンテナ性能が得られる。また、手や指の近接による放射抵抗の低下を招き難いため、左右のいずれの手で把持した場合でも通話状態において高いアンテナ性能が得られる。一方、筐体を閉じた状態では、板金6がモノポールアンテナとして動作するため、同様に高いアンテナ性能が得られる。
【0039】
上記説明したように、本実施形態の折畳式携帯無線機では、筐体の開閉状態に関わらず高いアンテナ性能を得ることができ、さらに、筐体を開いた状態では左右のいずれの手でその筐体を把持した場合でも、通話状態において高いアンテナ性能を得ることができる。
なお、本実施形態の折畳式携帯無線機では、軸部33を筐体幅方向に対する一方の端部に配置し、軸部34を他方の端部に配置し、かつ、端子23を他方の端部に配置しているため、板金6が筐体幅方向全体に亙って配置されているが、これに限るものではない。即ち、少なくとも筐体幅方向に対する中央部である中心線Aよりも一方側に偏って軸部33を配置するとともに、他方側に偏って軸部34と端子23を配置し、かつ、板金6が筐体幅方向の全体長の30%以上に亙って配置されれば、従来のダイポールアンテナと比較して、通話状態において高いアンテナ性能を得ることができる。
なお、本実施形態の折畳式携帯無線機では、アンテナ素子として金属フレーム12を用いているがこれに限るものではなく、上部筐体1に貼り付けられた適宜の板金をアンテナ素子として軸部33,34に電気的に接続してもよい。また、上部筐体1内部に配置した回路基板上のグランドパターンをアンテナ素子として軸部33,34に電気的に接続しても、通話状態において高いアンテナ性能を得ることができる。このようにアンテナ素子として板金やグランドパターンを用いる場合には、金属フレーム12は、導電性の金属である必要はなく、例えば非導電性の材質である樹脂であってもよい。
なお、本実施形態の折畳式携帯無線機では、軸部33と軸部34とを筐体幅方向の両端に配置したヒンジ構造としているが、これに限るものではない。即ち、上部筐体1と下部筐体2とが回動可能であり、金属フレーム12の両端に電気的に接続できるような構造を有する導電性の金属で構成されたヒンジ構造であれば、特にヒンジ金具の数には関係がなく、通話状態において高いアンテナ性能を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の折畳式携帯無線装置は、筐体を開いた通話状態において高いアンテナ性能を得られ、特に、左右のいずれの手で握られた通話状態においても高いアンテナ性能を確保することができる効果を有し、筐体を閉じた場合でも高いアンテナ性能を確保することができるので、折畳式携帯電話機等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】(A)は本発明の第1の実施形態に係る折畳式携帯無線機の背面図、(B)はその折畳式携帯無線機の側面図
【図2】(A)はその折畳式携帯無線機の変形例を示す背面図、(B)はその折畳式携帯無線機の側面図
【図3】その折畳式携帯無線機の他の変形例を示す背面図
【図4】(A)は本発明の第2の実施形態に係る折畳式携帯無線機の背面図、(B)はその折畳式携帯無線機の側面図
【図5】(A)は第2の実施形態に係る折畳式携帯無線機の下部筐体を右手で把持した状態を示す説明図、(B)は同じく左手で把持した状態を示す説明図
【図6】本発明の第3の実施形態に係る折畳式携帯無線機の背面図
【図7】(A)及び(B)は従来の折畳式携帯無線機の側面図及び背面図
【図8】その折畳式携帯無線機の通話状態での姿勢を示した説明図
【図9】(A)及び(B)は従来の折畳式携帯無線機の下部筐体を右手及び左手で把持した状態を示す説明図
【符号の説明】
【0042】
1 第1筐体(「上部筐体」)
2 第2筐体(「下部筐体」)
2C 固定部
21 操作部
22 回路基板
22A 整合回路
22B 無線回路
22C グランドパターン
23 端子(回路側給電部)
3 ヒンジ部
31、32 軸受部
33,34 軸部(第1、第2ヒンジ給電部)
33A,34A ネジ(連結部)
33B 取付ネジ(ヒンジ給電部)
4 板金(給電用素子)
4A,4B 第1板金,第2板金(給電用素子)
5 板金(第1、第2ヒンジ給電部)
51,52 取付ネジ
6 板金(給電用素子)
7 開閉状態検出手段
71 ホール素子
72 永久磁石
81 第1高周波スイッチ(第2切替え手段)
82 第2高周波スイッチ(第1切替え手段)
9 リアクタンス素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1筐体と、
第2筐体と、
前記第1筐体と前記第2筐体とを回動自在に連結するヒンジ部と、
前記第1筐体に設けるアンテナ素子と、
前記第2筐体内部に設けた、グランドパターンを有する回路基板と、
前記回路基板上に設けた無線回路と
を備え、
前記ヒンジ部は、導電性の金属で構成した第1ヒンジ部及び第2ヒンジ部と、前記第1ヒンジ部と前記第2ヒンジ部とを電気的に接続すると共に回動可能に支持する連結部とを有し、
前記第1ヒンジ部は、前記第1筐体に設けて前記アンテナ素子の前記ヒンジ部側の端部と電気的に接続し、
前記第2ヒンジ部は、前記第2筐体に設けて前記回路基板上のグランドパターンと所定の間隔を隔てて配置し、
前記第2ヒンジ部の筐体幅方向の一方の端部側にヒンジ給電部を配置し、
前記ヒンジ給電部に対して筐体幅方向の反対側の端部側の前記回路基板上に前記無線回路と接続した回路側給電部を配置し、
前記ヒンジ給電部と前記回路側給電部に電気的に接続するとともに少なくとも一部が筐体幅方向と平行に配設した給電用素子を備える折畳式携帯無線装置。
【請求項2】
前記第1筐体と前記第2筐体の開閉状態を検出する開閉状態検出手段と、
前記開閉状態検出手段の検出結果に応じて前記ヒンジ給電部と前記給電用素子とを電気的接続又は絶縁する切替え手段と
を備え、
前記切替え手段は、前記第1筐体と前記第2筐体が開いたときには、前記ヒンジ給電部と前記給電用素子とを電気的に接続させるとともに、前記第1筐体と前記第2筐体が閉じたときには、前記ヒンジ給電部と前記給電用素子とを絶縁させる請求項1に記載の折畳式携帯無線装置。
【請求項3】
第1筐体と、
第2筐体と、
前記第1筐体と前記第2筐体とを回動自在に連結するヒンジ部と、
前記第1筐体に設けるアンテナ素子と、
前記第2筐体内部に設けグランドパターンを有する回路基板と、
前記回路基板上に設けた無線回路と
を備え、
前記ヒンジ部は、導電性の金属で構成した第1ヒンジ部及び第2ヒンジ部と、前記第1ヒンジ部と前記第2ヒンジ部とを電気的に接続すると共に回動可能に支持する連結部とを有し、
前記第1ヒンジ部は、前記第1筐体に設けて前記アンテナ素子の前記ヒンジ部側の端部と電気的に接続し、
前記第2ヒンジ部は、前記第2筐体に設けて前記回路基板上のグランドパターンと所定の間隔を隔てて配置し、
前記第2ヒンジ部の筐体幅方向の一方の端部側に第1ヒンジ給電部を配置し、
前記第2ヒンジ部の筐体幅方向の他方の端部側に第2ヒンジ給電部を配置し、
前記回路基板上に前記無線回路と接続された前記回路側給電部を配置し、
前記第1ヒンジ給電部、前記第2ヒンジ給電部及び前記回路側給電部と電気的に接続するとともに少なくとも一部が筐体幅方向と平行になるよう配設された給電用素子を備える折畳式携帯無線装置。
【請求項4】
前記第1筐体と前記第2筐体の開閉状態を検出する開閉状態検出手段と、
前記開閉状態検出手段の検出結果に応じて前記第1ヒンジ給電部と前記給電用素子とを電気的に接続又は絶縁する第1切替え手段と、
前記開閉状態検出手段の検出結果に応じて前記第2ヒンジ給電部と前記給電用素子とを電気的に接続又は絶縁する第2切替え手段と
を備え、
前記第1切替え手段は、前記開閉状態検出手段が、開状態を検出したときに前記第1ヒンジ給電部と前記給電用素子とを電気的に接続するとともに、閉状態を検出したときに前記第1ヒンジ給電部と前記給電用素子とを絶縁し、
前記第2切替え手段は、前記開閉状態検出手段が、開状態を検出したときに前記第2ヒンジ給電部と前記給電用素子とを電気的に接続するとともに、閉状態を検出したときに前記第2ヒンジ給電部と前記給電用素子とを絶縁する請求項3に記載の折畳式携帯無線装置。
【請求項5】
前記給電用素子は、前記第2筐体内部の、操作キーが配置されている筐体面に対して反対側の筐体面側に近接して配設することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の折畳式携帯無線装置。
【請求項6】
前記給電用素子は、少なくとも一部を前記回路基板上の印刷パターンで構成する請求項1から5のいずれか1項に記載の折畳式携帯無線装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−197339(P2006−197339A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−7676(P2005−7676)
【出願日】平成17年1月14日(2005.1.14)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】