説明

抵抗器の製造方法

【課題】本発明は、スパッタ工法により端面電極を形成する場合、シート状の絶縁基板の裏面に設置されるマスクの位置ずれを抑制することができ、これにより、微小サイズでの端面電極の寸法精度が優れている抵抗器の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の抵抗器の製造方法は、シート状の絶縁基板11aの上面に形成された抵抗体13のパターンを基準にシート状の絶縁基板11aの少なくとも一端を切断して基準辺18を形成する工程と、基準辺18を基準としてシート状の絶縁基板11aに複数本のスリット20を形成する工程と、複数本のスリット20が形成されたシート状の絶縁基板11aの裏面に基準辺18を基準として開口部21を有するマスク22を設置する工程と、マスク22を設置した状態でシート状の絶縁基板11aの裏面および複数本のスリット20の内面にスパッタ工法により複数対の端面電極15を形成する工程とを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抵抗器の製造方法に関するものであり、特に微小サイズの抵抗器の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
以下、従来の抵抗器の製造方法について、図面を参照しながら説明する。
【0003】
図5(a)〜(d)および図6(a)〜(c)は従来の抵抗器の製造工程図を示したもので、この図5(a)〜(d)および図6(a)〜(c)に基づいて、その製造方法を以下に説明する。
【0004】
まず、図5(a)に示すように、純度96%のアルミナからなるシート状の絶縁基板1の上面に、複数の上面電極2と複数の抵抗体3をスクリーン印刷工法で、規則的に整列された升目状に形成する。この場合、抵抗体3はその両端部を上面電極2に重ねて電気的に接続するように形成する。
【0005】
次に、図5(b)に示すように、複数の抵抗体3を覆うようにスクリーン印刷工法によりプリコートガラス(図示せず)を形成し、ピーク温度600℃の焼成プロファイルで焼成することにより、プリコートガラス(図示せず)を安定な膜とした後、複数の上面電極2間の抵抗体3の抵抗値を一定の値に調整するために、レーザトリミング工法によりプリコートガラス(図示せず)の上から抵抗体3にトリミングを行って、トリミング溝4を形成する。
【0006】
次に、図5(c)に示すように、複数の抵抗体3を切断せず複数の上面電極2を切断するようにシート状の絶縁基板1に複数本のスリット5を形成し、その後図5(d)に示すように、複数の抵抗体3を覆うように樹脂からなる保護層6を形成する。
【0007】
次に、図6(a)に示すように、シート状の絶縁基板1の裏面に開口部6を有するマスク7を設置した状態で、シート状の絶縁基板1の裏面および複数本のスリット5の内面に、図6(b)に示すようにスパッタ工法により複数対の端面電極8を形成する。
【0008】
次に、図6(c)に示すように、複数本のスリット5と直交する二次分割ライン9に沿ってシート状の絶縁基板1をダイシングで切断し、個片状の基板10を得る。その後、個片状の基板10にバレルめっきを施し、さらにその後、完成検査工程を経ることにより、従来の抵抗器を製造していた。
【0009】
なお、この出願の発明に関する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開2004−179678号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記した従来の抵抗器の製造方法においては、シート状の絶縁基板1の一端を基準として絶縁基板1の上面に上面電極2と抵抗体3のスクリーン印刷を行ってから上面電極2を切断するようにスリット5を形成し、その後、絶縁基板1の裏面にマスク7を設置するようにしているが、シート状の絶縁基板1の端部にうねりが生じたりスクリーン印刷時のチャッキング精度が不十分な場合、高精度に位置合わせすることができず、そのため、図6(a)に示すようにマスク7の開口部6の中央部がシート状の絶縁基板1に形成されたスリット5の中央部と一致せずにずれてしまい、これにより、図6(b)に示すように端面電極8が所望の位置からずれて形成されてしまうという不具合が生じていた。この位置ずれによって電極寸法がばらつく影響は、抵抗器のサイズが微小になるほど大きく、例えば、電極寸法の公差が0603サイズでは±50μm、0402サイズでは±30μmであり、スリット5を基準にマスク7の位置合わせをしようとしても、スリット5の間隔も微小であるため画像認識のコストが増大するとともに、精度も十分なものではなかった。
【0011】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、スパッタ工法により端面電極を形成する場合、シート状の絶縁基板の裏面に設置されるマスクの位置ずれを抑制することができ、これにより、微小サイズでの端面電極の寸法精度が優れている抵抗器の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成を有するものである。
【0013】
本発明の請求項1に記載の発明は、シート状の絶縁基板の上面に複数の上面電極を形成する工程と、前記複数の上面電極を橋絡するように複数の抵抗体を形成する工程と、前記複数の抵抗体のパターンを基準に前記シート状の絶縁基板の少なくとも一端を切断して基準辺を形成する工程と、前記基準辺を基準として前記複数の抵抗体を切断することなく、前記複数の上面電極を切断するように前記シート状の絶縁基板に複数本のスリットを形成する工程と、前記複数本のスリットが形成されたシート状の絶縁基板の裏面に前記基準辺を基準として開口部を有するマスクを設置する工程と、前記マスクを設置した状態で前記シート状の絶縁基板の裏面および前記複数本のスリットの内面にスパッタ工法により複数対の端面電極を形成する工程とを備えたもので、この製造方法によれば、複数の抵抗体のパターンを基準にシート状の絶縁基板の少なくとも一端を切断して基準辺を形成する工程と、前記基準辺を基準として前記複数の抵抗体を切断することなく、複数の上面電極を切断するように前記シート状の絶縁基板に複数本のスリットを形成する工程と、前記複数本のスリットが形成されたシート状の絶縁基板の裏面に前記基準辺を基準として開口部を有するマスクを設置する工程を備えているため、マスクの開口部の位置とスリットの形成位置を対応させた所望の位置にマスクを設置することができ、これにより、端面電極の寸法精度が優れている微小サイズの抵抗器を製造できるという作用効果を有するものである。
【発明の効果】
【0014】
以上のように本発明の抵抗器の製造方法は、複数の抵抗体のパターンを基準にシート状の絶縁基板の少なくとも一端を切断して基準辺を形成する工程と、前記基準辺を基準として前記複数の抵抗体を切断することなく、複数の上面電極を切断するように前記シート状の絶縁基板に複数本のスリットを形成する工程と、前記複数本のスリットが形成されたシート状の絶縁基板の裏面に前記基準辺を基準として開口部を有するマスクを設置する工程を備えているため、マスクの開口部の位置とスリットの形成位置を対応させた所望の位置にマスクを設置することができるもので、これにより、端面電極の寸法精度が優れている微小サイズの抵抗器を製造できるという優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施の形態における抵抗器の製造方法について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は本発明の一実施の形態における抵抗器の断面図、図2(a)〜(c)、図3(a)〜(c)および図4(a)〜(d)は同抵抗器の製造方法を示す製造工程図である。
【0017】
図1において、11は純度96%のアルミナからなる矩形状の絶縁基板、12は絶縁基板11の上面両端部に設けられた一対の上面電極、13は一対の上面電極12と電気的に接続され、かつ一対の上面電極12を橋絡するように設けられた厚膜導電性ペーストあるいは導電性薄膜からなる抵抗体、14は抵抗体13を覆うように設けられた樹脂またはガラスからなる保護層である。15は前記一対の上面電極12と電気的に接続されるように絶縁基板11の裏面から端面にかけて設けられた導電性薄膜からなる一対の端面電極、16は一対の上面電極12と端面電極15の上に形成されたニッケルめっき層、17はニッケルめっき層16の上に形成された錫めっき層である。
【0018】
次に、図2(a)〜(c)、図3(a)〜(c)および図4(a)〜(d)を用いて、本発明の一実施の形態における抵抗器の製造方法を説明する。
【0019】
まず、図2(a)に示すように、純度96%のアルミナ等からなるシート状の絶縁基板11aを用意し、そしてこのシート状の絶縁基板11aの上面に、銀を主成分とする導電性ペーストをスクリーン印刷し、ピーク温度850℃の焼成プロファイルで焼成することにより、複数の上面電極12を升目状に並べて形成する。なお、この上面電極12は銀以外の材料を主成分とする導電性ペーストをスクリーン印刷し、かつ焼成することにより形成してもよく、また金レジネート、マスクスパッタ、フォトリソエッチング等の手法を用いて導電性薄膜により形成してもよいものである。
【0020】
次に、図2(b)に示すように、複数の上面電極12を橋絡して電気的に接続されるように、スクリーン印刷工法により酸化ルテニウム等の厚膜導電性ペーストからなる複数の抵抗体13を前記シート状の絶縁基板11aの上面に形成し、ピーク温度850℃の焼成プロファイルで焼成することにより、抵抗体13を安定な膜とする。この抵抗体13の形成により、上面電極12と抵抗体13は一列につながって形成されるもので、この列が多数平行に並んだ状態となるように形成する。なお、この抵抗体13は厚膜導電性ペーストを印刷・焼成して形成するものに限定されるものではなく、マスクスパッタやフォトリソエッチング等の手法を用いて導電性薄膜により形成してもよいものである。また、上面電極12と抵抗体13の形成順序は上記したものに限定されるものではなく、例えば、抵抗体13を形成した後にこの抵抗体13と電気的に接続されるように上面電極12を形成してもよいものである。
【0021】
次に、図2(c)に示すように、複数の抵抗体13のパターンを基準にしてシート状の絶縁基板11aの少なくとも一端をレーザーカットまたはダイシングで切断することにより、シート状の絶縁基板11aに基準辺18を形成する。この基準辺18を形成することにより、基準辺18と抵抗体13の位置関係は常に一定に保たれることになり、これにより、シート状の絶縁基板11aの端部のうねりや上面電極12、抵抗体13を形成する際にシート状の絶縁基板11aを保持するチャッキングの精度に起因する位置ずれの影響がなくなるものである。
【0022】
次に、図3(a)に示すように、複数の抵抗体13を覆うようにスクリーン印刷工法によりプリコートガラス(図示せず)を形成し、ピーク温度600℃の焼成プロファイルで焼成することにより、プリコートガラス(図示せず)を安定な膜とした後、複数の上面電極12間の抵抗体13の抵抗値を一定の値に調整するために、レーザトリミング工法によりプリコートガラス(図示せず)の上から抵抗体13にトリミングを行って、トリミング溝19を形成する。なお、シート状の絶縁基板11aの一端を切断して基準辺18を形成する前にトリミング溝19を形成して抵抗値を調整しておいてもよいものである。
【0023】
次に、図3(b)に示すように、複数の抵抗体13を切断することなく、複数の上面電極12を切断するように、シート状の絶縁基板11aに複数本のスリット20を形成する。この複数本のスリット20の形成においては、基準辺18を基準にして位置決めを行い、上面電極12ならびに抵抗体13に対して位置ずれが生じないようにするものである。また複数本のスリット20は、シート状の絶縁基板11aの端部に達しないように形成されるものであり、これにより、複数本のスリット20が形成されても、シート状の絶縁基板11aは分割されることなく、シート状の形態を保っているものである。
【0024】
次に、図3(c)に示すように、複数の抵抗体13とプリコートガラス(図示せず)を覆うように、スクリーン印刷工法によりエポキシ系樹脂を主成分とする保護層16を形成し、ピーク温度200℃の硬化プロファイルで硬化することにより、保護層16を安定な膜とする。なお、この保護層16はエポキシ系樹脂に限定されるものではなく、ポリイミド系樹脂等の他の樹脂を用いてもよいものであり、またこの場合、樹脂ではなくガラスペーストを印刷・焼成して形成してもよいものである。
【0025】
次に、図4(a)の断面図および図4(b)の平面図に示すように、複数本のスリット20が形成されたシート状の絶縁基板11aの裏面に接するように、基準辺18を基準として開口部21を有するマスク22を設置する。このマスク22の設置は、まず、シート状の絶縁基板11aに抵抗体13のパターンを基準として基準辺18を形成し、その後基準辺18を基準としてシート状の絶縁基板11aに複数本のスリット20を形成し、そして前記基準辺18を基準としてマスク22を設置するため、マスク22に形成された開口部21の間隔が複数本のスリット20の間隔に対応して正確であるならば、マスク22の開口部21の中心とシート状の絶縁基板11aに形成された複数本のスリット20の中心とがほぼ一致することになり、これにより、マスク22の位置ずれは生じないものである。
【0026】
次に、図4(a)の断面図および図4(c)の平面図に示すように、マスク22によってシート状の絶縁基板11aの裏面側をマスクした状態で、シート状の絶縁基板11aの裏面側から薄膜形成技術であるスパッタを行うことにより、シート状の絶縁基板11aの裏面の一部と複数本のスリット20の内面にニッケルクロム合金等のスパッタ膜からなる端面電極15を形成する。なお、この端面電極15はニッケルクロム合金のスパッタ膜に限定されるものではなく、これ以外の他の材料で形成してもよく、例えばクロムからなる第1層と、銅ニッケル合金からなる第2層の2層構造で形成してもよいものである。
【0027】
次に、図4(d)に示すように、端面電極15を形成した後、マスク22を外し、そしてこのマスク22を外したシート状の絶縁基板11aに、複数本のスリット20と直交する二次分割ライン23に沿って第2のスリットを形成することにより、シート状の絶縁基板11aは個片状の基板11bに分離される。そして最後に、チップ抵抗器本体となる個片状の基板11bにおける上面電極12の露出部分と端面電極15の表面に、ニッケルめっき層と錫めっき層からなるめっき層を形成して、本発明の一実施の形態における抵抗器を製造するものである。
【0028】
上記した本発明の一実施の形態における抵抗器の製造方法においては、シート状の絶縁基板11aの裏面に開口部21を有するマスク22を設置した状態で前記シート状の絶縁基板11aの裏面および複数本のスリット20の内面にスパッタ工法により端面電極15を形成する場合、マスク22の開口部21の位置とスリット20の形成位置を対応させた所望の位置にマスク22を設置することができるため、シート状の絶縁基板11aの裏面に設置されるマスク22の位置がずれるということはなく、これにより、端面電極15の寸法精度は従来の抵抗器に比べて極めて優れたものとなるものである。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明に係る抵抗器の製造方法は、スパッタ工法により端面電極を形成する場合、シート状の絶縁基板の裏面に設置されるマスクの位置がずれるということがないため、端面電極の寸法精度が極めて優れたものとなるという効果を有するものであり、特に微小サイズの抵抗器の製造方法に適用することにより有用となるものである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施の形態における抵抗器の製造方法によって製造された抵抗器の断面図
【図2】(a)〜(c)本発明の一実施の形態における抵抗器の製造方法を示す製造工程図
【図3】(a)〜(c)同抵抗器の製造方法を示す製造工程図
【図4】(a)〜(d)同抵抗器の製造方法を示す製造工程図
【図5】(a)〜(d)従来の抵抗器の製造方法を示す製造工程図
【図6】(a)〜(c)同抵抗器の製造方法を示す製造工程図
【符号の説明】
【0031】
11 絶縁基板
11a シート状の絶縁基板
11b 個片状の基板
12 上面電極
13 抵抗体
15 端面電極
18 基準辺
20 スリット
21 開口部
22 マスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の絶縁基板の上面に複数の上面電極を形成する工程と、前記複数の上面電極を橋絡するように複数の抵抗体を形成する工程と、前記複数の抵抗体のパターンを基準に前記シート状の絶縁基板の少なくとも一端を切断して基準辺を形成する工程と、前記基準辺を基準として前記複数の抵抗体を切断することなく、前記複数の上面電極を切断するように前記シート状の絶縁基板に複数本のスリットを形成する工程と、前記複数本のスリットが形成されたシート状の絶縁基板の裏面に前記基準辺を基準として開口部を有するマスクを設置する工程と、前記マスクを設置した状態で前記シート状の絶縁基板の裏面および前記複数本のスリットの内面にスパッタ工法により複数対の端面電極を形成する工程とを備えた抵抗器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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