説明

押しボタンスイッチ

【課題】LED,白熱ランプなどの照光光源を要さずに、スイッチの動作状態を前方から目視確認できる簡易な機械式の表示手段を備えた押しボタンスイッチを提供する。
【解決手段】押しボタン部1と、操作部2と、接点部との組立体からなるプッシュロック式の押しボタンスイッチにおいて、押しボタン部のボタンの前面に表示窓4を設けるとともに、該表示窓に臨ませて押しボタン部の内側に、押しボタン部のプッシュ/リセット操作に連動してスイッチ動作状態の表示を機械的に切替える表示切替機構を備えるものとし、この表示切替機構を押しボタン部の内筒5の鍔部5aに形成した「ノーマル表示部」(例えば、“緑色”に着色)と、前記内筒鍔部の前面に案内支持し、押しボタン部のプッシュ操作に連動して待機位置から表示窓4へ臨む位置に移動するカム付きインジケータ6に形成した「動作表示部」(例えば、“赤色”に着色)とで構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非常停止用押しボタンスイッチなどを対象とするプッシュロック式押しボタンスイッチに関し、詳しくは押しボタンのプッシュ/リセット操作に連動してスイッチ接点の状態表示を切替え表示する表示機構に係わる。
【背景技術】
【0002】
頭記の非常停止用押しボタンスイッチは機械設備の緊急,保守点検時に押しボタンを押動操作して負荷(機械設備)の給電回路を強制断路するとともに、押しボタンを押動操作した後は押しボタンから手を離しても接点機構を開路位置に自己保持するセーフティロック機能を持たせたプッシュロック式のコマンドスイッチである。
【0003】
また、押しボタンスイッチとして、スイッチ接点のON/OFF動作状態を目視確認するために、押しボタンの内部にLED,白熱ランプなどの照光光源を組み込んでおき、押しボタンのプッシュ/リセット操作により光源を点灯制御してスイッチ接点の動作状態を表示するようにした照光式押しボタンスイッチが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
次に、プッシュロック・ターンリセット式の非常停止用押しボタンスイッチを例に、そのスイッチの一般的な組立構造を図5に示す。図5において、1は押しボタン部、2は押しボタン部1に連結した操作部、3は操作部2の後部に連結し、押しボタン部1のプッシュ/リセット操作に応動して開閉動作する接点部である。
【0005】
ここで、押しボタン部1は中空構造の樹脂成形品で構成されたボタン1Aを備え、その前面中央には照光グローブ1aが装着され、外周域にはスイッチのリセット操作方向を表示するリセット矢印1bがマーキングされている。また、操作部2には、図示してないが押しボタン部1を押動操作した際に押しボタン部1を押し込み位置に自己保持させるロック機構、および照光用LED,白熱ランプなどの光源のソケットを内蔵しており、2aが押しボタン部1をスライド可能に案内支持する筒形フレーム、2bが押しボタン部1と接点部3との間を連繋する筒形の操作ロッドであり、該操作ロッド2bの後端が接点部3に組み込んだ接点機構のアクチュエータロッド3aに対峙している。
【0006】
上記構成になる非常停止用押しボタンスイッチの動作は周知の通りで、常時は操作部2に組み込まれた復帰ばねにより押しボタン部1がノーマル位置に突き出しており、接点部3のスイッチ接点はON状態に保持されている。ここで、非常時に押しボタン部1をプッシュ操作すると、操作ロッド2aが押し込まれて接点部3の接点(常閉接点)をOFFに切替えて負荷(機械設備)の運転を緊急停止すると同時に、操作部2に内蔵した操作ロッド2aのロック機構が押しボタン部1を押し込み位置に自己保持させる。また、この状態になると前記の負荷接点とは別な接点(常開接点)がONとなって照光光源が点灯し、押しボタン部1の押ボタン1Aの照光グローブ1aを通して接点OFFの状態を前方に表示する。
【0007】
また、接点OFFの動作状態から押しボタンスイッチをリセットするには、押しボタン部1をリセット矢印1bの方向に捻回操作する。これにより操作部2に内蔵したロック機構が釈放動作して押しボタン部1が当初のノーマル位置に戻るとともに、接点部3の接点が復帰動作して照光光源も消灯する。
【特許文献1】特開平9−213161号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、前記のようにスイッチ内部に照光光源を組込み、押しボタン部のプッシュ/リセット操作により光源を点灯制御させる照光式押しボタンスイッチでは、LED,白熱ランプの寿命、あるいは点灯回路の不具合が原因で非常操作時に点灯しないことがある。このような不具合が不測に発生すると、保守,点検員はスイッチの動作状態を誤認し、機械設備の運転操作を誤って人身事故を引き起こすおそれがある。そのほか、スイッチ本体には前記の照光光源,およびその点灯回路を付設するために製品コストが高くなり、またスイッチ設置後も光源の交換,点灯回路の点検などにメンテナンス費用も発生する。
【0009】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、その目的はLED,白熱ランプなどの照光光源およびその点灯回路を要さずに、スイッチの動作状態をスイッチの前方から目視確認できる簡易な表示手段を備えた押しボタンスイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明によれば、押しボタン部と、操作部と、接点部との組立体からなり、押しボタン部を押し込んだ際に操作部を介してスイッチ接点を切換動作させると同時に、押しボタン部を押し込み位置に自己保持させるプッシュロック式の押しボタンスイッチにおいて、
押しボタン部のボタンの前面に表示窓を設けるとともに、該表示窓に臨ませて押しボタン部のボタンの内側に、押しボタン部のプッシュ/リセット操作に連動してスイッチ動作状態の表示を機械的に切替える表示切替機構を備えるものとし(請求項1)、その表示切替機構は具体的に次記のような態様で構成する。
(1)前記の表示切替機構を、表示窓の背後に臨ませて固定配置した「ノーマル表示部」と、常時は表示窓から後退した位置に待機し、押しボタン部のプッシュ操作に連動して表示窓へ臨む位置に移動する「動作表示部」とから構成する(請求項2)。
(2)前項(1)において、「ノーマル表示部」は押しボタン部のボタンの内側に設けた内筒の前端鍔部に形成し、また「動作表示部」は前記内筒の前端鍔部に復帰ばねを介して半径方向に案内支持され、かつ押しボタン部のプッシュ操作により操作部のフレームにカム部を押し当てて待機位置から表示位置に移動するインジケータ部材に形成する(請求項3)。
(3)前記の表示窓を、プッシュロック・ターンリセット式押しボタンスイッチの押しボタン部前面にマーキングしたリセット矢印の部分に形成する(請求項4)。
【発明の効果】
【0011】
上記の構成によれば、押しボタン部のボタンの前面に形成した表示窓を通してその背後に臨む表示部(色分けした「ノーマル表示部」,「動作表示部」)からその時のスイッチ動作状態を的確に目視確認することができる。したがって、在来の照光式押しボタンスイッチのように照光光源の寿命,不具合が原因でスイッチ動作状態を誤認するおそれもなくて安全性,信頼性が向上する。
【0012】
また、スイッチ本体にLED,白熱ランプなどの光源、および光源の点灯回路を搭載する必要がなく、これにより製品コストの低減化が図れ、また照光光源を定期的に交換するなどのメンテナンス費用も発生しない。
【0013】
しかも、前記の表示切替機構は簡易な構造であり、既存の押しボタンスイッチに装備されている押しボタン部のボタンと同じ形状のボタンに前記の表示窓を追加形成した上で、その内方に表示切替機構を組み込むことで対応できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図4に示す実施例に基づいて説明する。なお、図1は押しボタン部,操作部の組立構造およびその動作の説明図、図2,図3は図1(b),(c)におけるA部の拡大図、図4は押しボタン部1に設けた表示窓,表示切替機構の部品構造を表した分解斜視図であり、実施例の図中で図5に対応する部材には同じ符号を付している。
【0015】
まず、図1(a)〜(c)において、押しボタン部1と連結した操作部2について、その内部構造を説明する。すなわち、操作部2は、押しボタン部1に向けて突き出した円筒形のフレーム2aを有し、その内周側に組み込んだ円筒形の操作ロッド2bが、ロックピン2c,係合突起2d,付勢ばね2eからなる自己保持用のロック機構2fを介して操作部2のケース内に係合支持されている。また、この操作ロッド2bの上端に嵌合してスライド可能に案内支持した押しボタン部1のボタン1Aを、操作部2のフレーム2aとの間に介挿した復帰ばね(圧縮コイルばね)2gで前方に向けて突き出すようばね付勢している。
【0016】
一方、上記のようにして操作部2の前端に結合した押しボタン部1に対し、そのボタン1Aの前面には表示窓4を形成し、該表示窓4の背後に臨ませてボタンの内方に詳細を後記する表示切替機構が装備されている。
【0017】
ここで、表示窓4は押しボタン部1のボタン1Aの前面にマーキングしたリセット矢印1bに位置を合わせて、ボタン1Aの外周3箇所に分散形成されており、具体的には図4に示した透明樹脂の円弧状セグメント4aをボタン1Aの前面に開口した窓穴に嵌め込んで接合するか、あるいはボタン1Aとの二重成型により形成する。
【0018】
また、表示切替機構は、後記のように表示窓4の背後に臨ませてボタン1Aの内方に固定配置した「ノーマル表示部」と、常時は表示窓4から後退した位置に待機し、押しボタン部1のボタン1Aのプッシュ操作に連動して表示窓へ臨む位置に移動する「動作表示部」とからなる。
【0019】
ここで、「ノーマル表示部」はボタン1Aの内側に嵌入設置した内筒5の前端鍔部5aを例えば“緑色”に着色して形成されている。なお、5cは内筒5を押しボタン部1のボタン1Aに固定する係止爪である。一方、「動作表示部」は、表示窓4に対応して前記内筒5の鍔部5aの周上3箇所に分けて分散配置し、後記のようにボタン1Aの半径方向へスライド可能に案内支持されたインジケータ6の表面を例えば“赤色”に着色して形成されている。このインジケータ6は、図4で示すように内筒5の鍔部5aの周上に形成したレール5bに沿って半径方向へスライド可能に案内支持されており、復帰ばね(圧縮コイルばね)6aを介してボタン1Aの中央に向けて押圧付勢されている。また、インジケータ6はその内周側端部が下方に向けてL字形に突き出しており、その先端にはテーパーカム部6bを形成して操作部2の円筒状フレーム2aの先端に対峙させている。
【0020】
上記の構成で、押しボタンスイッチのノーマル状態(押しボタン部1のボタン1Aが操作部2の前方に突き出している状態)では、図1(b),図2で示すようにインジケータ6が復帰ばね6aのばね力を受けて表示窓4に臨む位置より内周側に後退している。したがって、この状態では表示窓4を通じて内筒5の鍔部5aに形成した“緑色”の「ノーマル表示部」が前方に表示される。これにより、押しボタンスイッチがノーマル状態(接点ON)であることを目視確認できる。
【0021】
一方、押しボタン部1のボタン1Aをプッシュ操作してそのボタン1Aを図1(c),図3の位置に押し込むと、これに従動して操作部2の操作ロッド2bが図示位置に移動し、ロックピン2cが係合突起2dを乗り越えて押し込み位置に自己保持される。これにより、操作部2の後部に連結した接点部3(図5参照)の接点がONからOFFに切り換わると同時に、押しボタン部1に組み込んだ前記インジケータ6のテーパーカム部6bが操作部2のフレーム2aの先端に突き当たり、復帰ばね6aに抗してインジケータ6を図3の位置に押し出す。したがって、この状態では表示窓4を通してインジケータ6の表面に形成した“赤色”の「動作表示部」が前方に表示されることになる。これにより、押しボタンスイッチが動作状態(接点OFF)にあることが目視確認できる。
【0022】
また、前記の動作状態から押しボタン部1をリセット矢印1bの方向に捻回してリセット操作すると、先記した操作部2のロック機構2fが釈放動作し(ロックピン2cが係合突起2dの周上に形成した切欠部を擦り抜ける)、押しボタン部1が復帰ばね2gのばね力を受けてノーマル位置に復帰(リターンリセット)する。これにより、接点部3の接点がOFFからONに復帰動作すると同時に、いままで表示窓4に臨んでいたインジケータ6が復帰ばね6aのばね力を受けて待機位置に後退し、表示窓4を通しての表示が図1(b),図2に示したノーマル表示に切り替わる。
【0023】
なお、図示実施例で述べた機械式表示切替機構付きの押しボタン部1は、既存の照光式押しボタンスイッチに装備した押しボタン部のボタン形状と基本的に同じである。したがって、既存の照光式押しボタンスイッチから押しボタン部1を取り外して図示実施例の押しボタン部と交換することで、LED,白熱ランプなどの光源による調光式表示と機械的な状態表示を併用して使うことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施例による押しボタンスイッチの押しボタン部,操作部の構造,動作の説明図で、(a)は正面図、(b),(c)はそれぞれノーマル状態,プッシュ操作状態を表す内部構造の側視断面図
【図2】図1(b)におけるA部の拡大図
【図3】図1(c)におけるA部の拡大図
【図4】図1における押しボタン部の表示切替機構を表す部品の分解斜視図
【図5】プッシュロック・ターンリセット式押しボタンスイッチの全体構造を表す分解斜視図
【符号の説明】
【0025】
1 押しボタン部
1A ボタン
1a グローブ
1b リセット矢印
2 操作部
2a フレーム
2b 操作ロッド
2c ロックピン
2d 係合突起
2e 付勢ばね
2f 押しボタン部の自己保持用ロック機構
2g 復帰ばね
3 接点部
3a アクチュエータロッド
4 表示窓
4a 透明樹脂の円弧状セグメント
5 押しボタン部の内筒
5a 鍔部(ノーマル表示部)
5b レール
5c 係止爪
6 インジケータ(動作表示部)
6a 復帰ばね
6b テーパーカム部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押しボタン部と、操作部と、接点部との組立体からなり、押しボタン部を押し込んだ際に操作部を介してスイッチ接点を切換動作させると同時に、押しボタン部の押し込み位置に自己保持させるプッシュロック式の押しボタンスイッチにおいて、
押しボタン部のボタンの前面に表示窓を設けるとともに、該表示窓に臨ませて押しボタン部のボタンの内側に、押しボタン部のプッシュ/リセット操作に連動してスイッチ動作状態の表示を機械的に切替える表示切替機構を備えたことを特徴とする押しボタンスイッチ。
【請求項2】
請求項1に記載の押しボタンスイッチにおいて、表示切替機構が、表示窓の背後に臨ませてボタンの内方に設置した「ノーマル表示部」と、常時は表示窓から後退した位置に待機し、押しボタン部のプッシュ操作に連動して表示窓へ臨む位置に移動する「動作表示部」とからなることを特徴とする押しボタンスイッチ。
【請求項3】
請求項2に記載の押しボタンスイッチにおいて、「ノーマル表示部」が押しボタン部のボタンの内側に設けた内筒の前端鍔部に形成されており、「動作表示部」は、前記内筒の前端鍔部に復帰ばねを介して半径方向に案内支持され、かつ押しボタン部のプッシュ操作により操作部のフレームにカム部を押し当てて待機位置から表示位置に移動するインジケータ部材に形成されていることを特徴とする押しボタンスイッチ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の押しボタンスイッチにおいて、表示窓を、プッシュロック・ターンリセット式押しボタンスイッチの押しボタン部の押ボタンの前面にマーキングしたリセット矢印の部分に形成したことを特徴とする押しボタンスイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−277012(P2008−277012A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−116625(P2007−116625)
【出願日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(390021186)株式会社秩父富士 (54)
【出願人】(503361927)富士電機機器制御株式会社 (402)
【Fターム(参考)】