説明

押し出し装置

【課題】押し出しユニットおよび収容ユニットを有する押し出し装置において、収容部の構成が容易であり、押し出しユニットと収容ユニットとの間の遊びが生じないものを提案する。
【解決手段】押し出し装置が、少なくとも1つのピストンロッド13を備えた前送り機構を有する押し出しユニット12と、少なくとも1つのピストンロッドによって押し出し可能なパッケージ33のための収容部34を備えた収容ユニット32とを有する。収容部は、頭部35により制限された一端36と頭部に向いていない他端37とを有し、押し出しユニットに配置される保持装置21を備えた収容ユニット32は押し出し装置に解除可能に固定される。収容ユニットの収容部に沿って頭部に固定された引っ張り素子38の端部にはそれぞれ1つの後方係合部39が設けられ、保持装置の係止手段が、収容ユニットと押し出しユニットとをロックするために後方係合部と係止可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押し出しユニットおよび収容ユニットを有する押し出し装置であって、押し出しユニットが、少なくとも1つのピストンロッドを備えた前送り機構を有し、収容ユニットが、少なくとも1つのピストンロッドにより押し出し可能なパッケージのための収容部を備え、収容部が、一端では頭部により制限されており、かつ頭部に向いていない端部を有し、収容ユニットが、押し出しユニットに配置された保持装置によって、押し出しユニットに解除可能に固定されている形式のものに関する。
【背景技術】
【0002】
このような押し出し装置は、パッケージ、例えば薄膜バッグまたはカートリッジ内に包装された質量体、例えばモルタルまたはシール材を塗布場所で放出するために働く。前送り機構の操作により、少なくとも1つのピストンロッドが所定の程度だけ前方のスライドされ、この場合にピストンロッドに配置された押圧皿がパッケージに作用し、パッケージ内に存在している質量体の相当量が、頭部に設けられた放出開口を通って放出される。
【0003】
特開平6−147382号公報(EP0543776A1)につき、押し出し装置が公知である。この押し出し装置は、押し出しユニットおよび収容ユニットを有し、押し出しユニットは、2つのピストンロッド有する前送り機構を備え、収容ユニットは、ピストンロッドによって押し出し可能なカートリッジのための収容部を備えている。収容部は、一端では頭部によって制限されており、かつ頭部に向いていない他端を有している。収容ユニットは、押し出しユニットに配置された保持ユニットによって、押し出しユニットに解除可能に固定されている。頭部に向いていない他端にはフランジが設けられており、このフランジは、押し出しユニットに設けられたU字形に互いに整列された3つの溝に係合し、第4の側では押し出しユニットに配置されたスナップレバーによって後方から係合される。溝およびスナップレバーは、押し出しユニットに配置されて収容ユニットを押し出しユニットに解除可能に固定する保持装置、ひいては押し出し装置のインターフェースを形成している。
【0004】
異なった種類およびサイズのパッケージまたはカートリッジを押し出しユニットに固定することができる。
【0005】
公知の解決策では、収容部の当該端部の構成に手間がかかることが欠点である。上位概念部に記載の押し出し装置では、大きい力が押し出し装置のインターフェースに作用し、このことが、押し出し装置の耐用寿命経過後に押し出しユニットと収容ユニットとの間に遊びをもたらしかねない。
【特許文献1】特開平6−147382号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明の課題は、押し出しユニットと収容ユニットとの間に解除可能なインターフェースを有する押し出し装置において、信頼性良い結合および高い耐用寿命を有するものを形成することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、収容ユニットが、収容部に沿って延びる、頭部に固定された引っ張り素子を有しており、これらの引っ張り素子が、頭部に向いていない端部にそれぞれ1つの後方係合部を備え、保持装置が係止手段を有しており、この係止手段が、収容ユニットと押し出しユニットとをロックするために、引っ張り素子の後方係合部に係止可能であることにより解決される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によるインターフェースは、簡単な構成と、押し出しユニットと収容ユニットとの間で確実な結合が得られることにより優れている。例えば、薄膜バッグまたはカートリッジのような種々異なったパッケージを収容するための種々異なった長さの収容ユニットを簡単に押し出しユニットに解除可能に固定することができる。
【0009】
有利には、引っ張り素子が引っ張りロッドの形で形成されており、これらの引っ張りロッドは、頭部に向いている方の端部にねじ山部を有し、このねじ山部には、緊締素子、例えば、引っ張りロッドを頭部に固定するためのナットを配置することができる。収容部内には、有利にはカートリッジが収容され、カートリッジは、押し出された質量体のための少なくとも1つの管状の収容室を有している。カートリッジは、収容ユニットが押し出しユニットに固定された状態で、有利には収容ユニットの頭部および押し出しユニットのストッパ面に接触し、軸線方向にスライド不能に収容部内に保持される。有利には、カートリッジは、収容部にクランプされて保持される。
【0010】
引っ張り素子の後方係合部は、引っ張り素子に後方から係合する係止手段と結合して遊びのない結合部を保証し、この場合に結合部は収容ユニットと押し出しユニットとの間でロック時に有利にセンタリングされる。結合部のロック解除時には、係止手段は、引っ張り素子の後方係合部を再び解放し、収容ユニットは押し出しユニットから除去可能である。
【0011】
有利には、引っ張り素子の後方係合部は、それぞれ1つの後方係合開口を備えたアイであり、係止手段は、旋回軸を中心として旋回可能な、係止部を有するロック鉤であり、係止部は、収容ユニットと押し出しユニットとをロックするためにアイの後方係合開口内へ旋回可能である。旋回軸を中心とした鉤の旋回により、収容ユニットと押し出しユニットとの間の結合部は、ロックまたはロック解除される。ロック時には、鉤の保持部が引っ張りロッドのアイの後方係合開口内へ進入し、収容ユニットが押し出しユニットに確実に遊びなしに結合されることを保証する。ロック鉤の旋回時には、引っ張り素子は押し出しユニットの方向に緊締され、このことは、収容部内に挿入されたパッケージが、特に押し出し工程中に確実に保持されることを保証する。ロック解除時には、ロック鉤の係止部は引っ張り素子のアイの後方係合開口から外側へ旋回され、これにより、収容ユニットは押し出しユニットから分離される。
【0012】
有利には、ロック鉤にはそれぞれ1つの案内斜面が設けられており、ロック鉤はロック位置に向けてばね負荷されている。収容ユニットと押し出しユニットとをつなぎ合わせる場合には、引っ張り素子のアイの自由な端部が、当該ロック鉤の案内斜面と接触し、ロック鉤を所定の位置に移動させる。この位置では、ロック鉤の係止部は、収容ユニットと押し出しユニットとをロックするためにアイの後方係合開口内へ進入することができる。ロック鉤がばね負荷されることに基づき、収容ユニットと押し出しユニットとがつなぎ合わされる場合に旋回されたロック鉤は、アイの後方係合開口内に後方から係合する位置に移動し、収容ユニットと押し出しユニットとが自動的にロックされることが確保される。
【0013】
有利には、保持装置は、収容ユニットを押し出しユニットからロック解除するために係止手段に作用する操作素子を有している。この操作素子の操作時には、保持装置の係止手段は、引っ張り素子の後方係合部から係合解除される。操作素子によって、収容ユニットと押し出しユニットとの間の急速切換ロックが形成される。
【0014】
有利には、操作素子には伝達素子が設けられており、この伝達素子は、係止手段と接触可能な伝達面を有している。これらの伝達面は、有利には、引っ張り素子、または少なくとも1つのピストンロッドの縦方向延びに対して垂直方向に突出する、伝達素子の部分に設けられている。特に有利には、伝達素子はU字形に形成されており、この場合に、係止手段と接触可能な伝達面は、有利には、U字形に形成された伝達素子の自由な端部に設けられている。
【0015】
保持手段が、旋回軸を中心として旋回可能な、係止部を備えるロック鉤の形で形成されている場合には、収容ユニットをロック解除するための操作素子の伝達素子は、有利には、旋回軸と係止部との間でロック鉤に作用する。
【0016】
有利には、操作素子はばね負荷されており、収容ユニットと押し出しユニットとの間のロックを解除するためには、ばね素子のばね力に抗して運動させられる必要がある。操作素子の操作後には、操作素子は再び出発位置に戻り、この出発位置では、操作素子はもはや係止手段には作用しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に本発明の実施の形態を図面につき更に詳しく説明する。
【0018】
基本的に図面において等しい部分には等しい符号を付す。
【0019】
図1、図2および図3に示した押し出し装置11は、押し出しユニット12、および、パッケージ33のための収容部34を備えた収容ユニット32を有している。パッケージ33は、押し出し可能な質量体を直接に収容するために、または押し出し可能な質量体を間接的に収容するために、互いに隣接して配置された管状の2つの収容体を有する複数チャンバ式カートリッジである。質量体は、使用者にはフィルムバッグ内に包装されて提供される。押し出しユニット12は、2つのピストンロッド13を備えた前送り機構を有しており、ピストンロッド13の自由な端部には押圧皿が設けられている。ハンドグリップ15に設けられた手動で操作可能なレバー14によって、前送り機構が操作され、ピストンロッド13は、前送り機構によって決定された程度だけ収容ユニット32の方向に送られる。
【0020】
収容ユニット32の収容部34は、一端36では頭部35によって制限されており、かつ頭部35に向いていない他端37を有している。頭部35は、放出ノズル42を備えた出口開口35を有しており、放出ノズル42内には、パッケージ33から押し出された質量体のための混合素子が設けられている。収容ユニット32には、収容部34に沿って側方に延びる2つの引っ張りロッドが引っ張り素子38として設けられている。引っ張り素子38には、後方から係合するそれぞれ1つの後方係合部39が、頭部35に向いていない方の端部に設けられている。引っ張り素子38の後方係合部39は、それぞれ1つの後方係合開口43を有するアイ40の形でそれぞれ形成されている。引っ張り素子38は、端部に設けられた頭部35の領域にそれぞれねじ山部を有しており、ナット41により頭部35に固定されている。
【0021】
収容ユニット32は、押し出しユニット12に配置された保持装置21により、押し出しユニット12に解除可能に固定されている。保持装置21は、係止手段として、旋回軸23を中心として旋回可能な、係止部24を備えるロック鉤22を有している。係止部24は、収容ユニット32と押し出しユニット12とをロックするために、アイ40の後方係合開口43内に後方から係合する。アイ40は、引っ張り素子38の後方係合部39を形成している。係止部24は、アイ40の後方係合開口43内へ旋回可能である。ロック鉤22は、それぞれ1つの案内斜面25を有しており、ロック位置(図2参照)に向けてばね負荷されている。
【0022】
さらに保持装置21は、係止手段に作用する操作素子26を有している。操作素子26は、収容ユニット32を押し出しユニット12からロック解除するためのU字形の伝達素子28を備えている。矢印27の方向に操作素子26を押圧することにより、伝達素子28の自由な端部29は、旋回軸23と係止部24との間でロック鉤22に作用し、これにより、ロック鉤22はばね力に抗して旋回され、収容ユニット32は押し出しユニット12からロック解除される(図3参照)。操作素子26にはばね素子30が作用し、ばね素子30は、押圧力除去後に操作素子26を矢印27の方向とは反対に出発位置に移動させる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】押し出し装置の斜視図である。
【図2】収容ユニットと押し出しユニットとの間のインターフェースがロックされた状態を示す部分斜視図である。
【図3】図2に示した収容ユニットと押し出しユニットとの間のインターフェースがロック解除された状態を示す部分斜視図である
【符号の説明】
【0024】
11 押し出し装置
12 押し出しユニット
13 ピストンロッド
14 レバー
15 ハンドグリップ
21 保持装置
22 ロック鉤
23 旋回軸
24 係止部
25 案内斜面
26 操作素子
27 矢印
28 伝達素子
29 端部
30 ばね素子
32 収容ユニット
33 パッケージ
34 収容部
35 頭部
36 一端
37 他端
38 引っ張り素子
39 後方係合部
40 アイ
41 ナット
42 放出ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのピストンロッド(13)を備えた前送り機構を有する押し出しユニット(12)と、
前記少なくとも1つのピストンロッド(13)によって押し出し可能なパッケージ(33)のための収容部(34)を備えた収容ユニット(32)とが設けられており、前記収容部(34)が、一端(36)で頭部(35)により制限されており、かつ該頭部(35)に向いていない他端(37)を有し、
前記押し出しユニット(12)に配置された保持装置(21)を備えた前記収容ユニット(32)が、押し出し装置(12)に解除可能に固定されている押し出し装置において、
前記収容ユニット(32)に、収容部(34)に沿って延び、前記頭部(35)に固定された引っ張り素子(38)が設けられており、該引っ張り素子(38)が、前記頭部(35)に向いていない端部にそれぞれ1つの後方係合部(39)を備え、
前記保持装置(21)が、係止手段を有しており、該係止手段が、収容ユニット(32)と押し出しユニット(12)とをロックするために、前記引っ張り素子(38)の後方係合部(39)に係止可能であることを特徴とする押し出し装置。
【請求項2】
前記引っ張り素子(38)の後方係合部(39)が、それぞれ1つの後方係合開口を備えたアイ(40)であり、前記係止手段が、旋回軸(23)を中心として旋回可能な、係止部(24)を備えたロック鉤(22)であり、前記係止部が、収容ユニット(32)と押し出しユニット(12)とをロックするために、アイ(40)の後方係合開口内へ旋回可能である、請求項1記載の押し出し装置。
【請求項3】
前記ロック鉤(22)に、それぞれ1つの案内斜面(25)が設けられており、前記ロック鉤(22)が、ロック位置に向けてばね負荷されている、請求項2記載の押し出し装置。
【請求項4】
前記保持装置(21)が、前記収容ユニット(32)を前記押し出しユニット(12)からロック解除するために、前記係止手段に作用する操作素子(26)を有している、請求項1から3までのいずれか1項記載の押し出し装置。
【請求項5】
前記操作素子(26)に伝達素子(28)が設けられており、該伝達素子(28)が、前記係止手段と接触可能な伝達面を有している、請求項4記載の押し出し装置。
【請求項6】
前記操作素子(26)が、ばね負荷されている、請求項4または5記載の押し出し装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−90284(P2009−90284A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−259992(P2008−259992)
【出願日】平成20年10月6日(2008.10.6)
【出願人】(591010170)ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト (339)
【Fターム(参考)】