説明

押出原料供給装置及びこれを用いた光伝送体の製造方法

【課題】 製品品質及び生産性をより高いレベルで両立させることができる押出原料供給装置及びこれを用いた光伝送体の製造方法を提供する。
【解決手段】 押出原料供給装置1は、原料ロッドRが収納されるホッパー2と、ホッパー2のプラスチック原料収納部3の下流側に設けられて原料ロッドRの下端部分を加熱溶融させる加熱溶融部4と、加熱溶融部4を加熱する加熱手段8と、ガス圧で溶融樹脂Mを順次金型へ供給するためのガス加圧手段5とを備えている。プラスチック原料収納部3の下端部内面は、原料ロッドRを遊嵌可能な一定な断面形状を有している。加熱溶融部4の上端内径とプラスチック原料収納部3の下端内径とが等しくなされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出原料供給装置及び光学用途や光ファイバー用途などに用いられる光伝送体の製造方法に関し、より詳細には、溶融押出成形により得られ、この製造過程において主には光学的な信号伝達損失の悪化が少ない光伝送体の製造に好適な押出原料供給装置及びこれを用いた光伝送体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
溶融押出成形で使用する押出原料供給装置として、特許文献1には、ロッド状プラスチック原料が収納される容器と、容器のプラスチック原料収納部の下流側に設けられてロッド状プラスチック原料の下端部分を加熱溶融させる加熱溶融部と、加熱溶融部を加熱する加熱手段と、ガス圧で溶融樹脂を順次金型へ供給するためのガス加圧手段とを備えているものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2010/109938号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の押出原料供給装置によると、ロッド状プラスチック原料の下端部分を加熱溶融させることで、それ以前のプラスチック原料全体を溶融するものに比べて、光信号の伝達損失の問題を解消し、しかも、優れた生産性を併せ持ったものとなっている。しかしながら、光信号の伝達損失の問題および生産性のいずれについても、さらなる向上が望まれている。
【0005】
すなわち、特許文献1のものでは、加熱溶融部内周面の断面積がロッド状プラスチック原料の断面積よりも大きいものとされることで、ロッド状プラスチック原料の外周と溶融樹脂の外周面との間の環状部分がガス加圧面とされている。したがって、溶融樹脂が上方(冷却部側)に移動(逆流)することがあり、この場合には、劣化異物が形成されて、製品品質が低下することになる。そこで、特許文献1のものでは、アクチュエータを使用して、ロッド状プラスチック原料を制御しながら下方に送る構成とされているが、そのため、生産性に関しては、装置の複雑化及び高コスト化という問題があった。
【0006】
本発明の目的は、上述した従来技術の現状に鑑み、製品品質及び生産性をより高いレベルで両立させることができる押出原料供給装置及びこれを用いた光伝送体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明による押出原料供給装置は、ロッド状プラスチック原料が収納される容器と、容器のプラスチック原料収納部の下流側に設けられてロッド状プラスチック原料の下端部分を加熱溶融させる加熱溶融部と、加熱溶融部を加熱する加熱手段と、ガス圧で溶融樹脂を順次金型へ供給するためのガス加圧手段とを備えている押出原料供給装置において、プラスチック原料収納部の下端部内面は、プラスチック原料を遊嵌可能な一定な断面形状を有しており、加熱溶融部の上端内径とプラスチック原料収納部の下端内径とが等しくなされていることを特徴とするものである。
【0008】
プラスチック原料収納部の下端部内面が一定な断面形状を有しており、加熱溶融部の上端内径とプラスチック原料収納部の下端内径とが等しくなされていることにより、プラスチック原料収納部の下端部から加熱溶融部の上端部にかけての部分の断面形状が一定となる。「遊嵌」とは、プラスチック原料が下方に移動可能でかつ傾きが防止される程度の隙間に嵌め入れられた状態を意味する。プラスチック原料収納部の下端部内径は、プラスチック原料収納部の最小内径に等しいか僅かに(1mm程度)大きいものとされる。これにより、プラスチック原料収納部の下端部とロッド状プラスチック原料との径方向の隙間が一様(プラスチック原料収納部の下端において隙間が大きくなることがない)となるとともに、ロッド状プラスチック原料の下端部の外径と加熱溶融状態にあるプラスチック(溶融樹脂)の上端部の外径とがほぼ等しいものとなる。プラスチック原料収納部は、その上端から下端までが一定な断面形状(内径)を有するものとされてもよいが、下端部よりも上方の部分は、下端部よりも内径が大きくなされてもよい。
【0009】
この発明の押出原料供給装置によると、ロッド状プラスチック原料の下端部分を加熱溶融させることで、必要量のみ溶融させることができ、これにより、プラスチック原料が溶融している時間が短くなり、熱安定性に優れないプラスチックに対しても、劣化異物による信号伝達の損失悪化を防ぐことができる。そして、プラスチック原料収納部の下端部内面がプラスチック原料を遊嵌可能な一定な断面形状を有しており、加熱溶融部の上端内径とプラスチック原料収納部の下端内径とが等しくなされていることにより、加熱溶融部の上面ほぼ全面にロッド状プラスチック原料の自重が負荷され、溶融樹脂を下方に送り出す力は、ガス加圧手段のガス圧とロッド状プラスチック原料の自重とを合わせたものとなり、ロッド状プラスチック原料の上面をガスで加圧することによって、加熱溶融部内の溶融樹脂が下方に送り出される。プラスチック原料収納部の内周とロッド状プラスチック原料の外周との間には、ロッド状プラスチック原料の移動の妨げにならない程度に小さい隙間(例えば、0.2mm〜2mm程度の隙間)が形成され、これにより、溶融樹脂の上方への移動(逆流)が防止される。ロッド状プラスチック原料は、プラスチック原料収納部に摺動可能なように遊嵌されていることがより好ましい。
【0010】
溶融樹脂が上方に移動することを防止する点からは、プラスチック原料収納部の内周とロッド状プラスチック原料の外周との隙間は小さい方が好ましいが、隙間を小さくすると、プラスチック原料収納部の内周とロッド状プラスチック原料の外周とが干渉して、ロッド状プラスチック原料の下方への移動が妨げられる可能性がある。
【0011】
そこで、ロッド状プラスチック原料の下方への移動をスムーズに行わせるために、プラスチック原料収納部内周に、滑り加工が施されていることが好ましい。容器を金属製の外筒と摩擦係数が小さいフッ素樹脂製などの内筒とで構成するようにしてもよい。また、隙間を大きめに設定して、ロッド状プラスチック原料の上端に、プラスチック原料収納部の内周に摺接してロッド状プラスチック原料と一体で下方に移動する環状の摺接部材が嵌められるようになされているようにしてもよい。摺接部材は、摩擦係数が小さいフッ素樹脂製などとされ、摺接部材の外周がプラスチック原料収納部の内周に接することで、ロッド状プラスチック原料は、その傾きが防止されて、スムーズに下方に移動する。また、下端部よりも上方の部分が下端部よりも内径が大きくなされているプラスチック原料収納部を有している場合には、ロッド状プラスチック原料の傾きを防止してロッド状プラスチック原料がスムーズに下方に移動することができるように、内径が大きい上方の部分の内周に、波形の面を形成したり、所定間隔で凸部を設けるようにしてもよい。
【0012】
ロッド状プラスチック原料の下方への降下は、溶融量制御手段(各種のアクチュエータ)によって、制御された速度で行うようにしてもよいが、アクチュエータのような機械的な手段を用いることなく、加圧ガスの調整またはおもりのような補助的な負荷手段だけで行うことが好ましい。
【0013】
ガス加圧手段のガス圧は、常時一定とするようにしてもよいが、加熱溶融部に負荷される圧力が略一定となるように、ロッド状プラスチック原料の自重の減少に伴って、ガス圧が増加させられることがより好ましい。このようにするには、適宜なセンサ手段によって、溶融樹脂圧、ロッド状プラスチック原料の位置、溶融樹脂吐出量のいずれかを検出するとともに、この検出に応じて、ガス圧を変化させればよい。
【0014】
ロッド状プラスチック原料の上端に、おもりが載せられるようになされていることがある。このようにすると、溶融を開始した時点とロッド状プラスチック原料のほとんどを溶融させた時点とにおいて、ロッド状プラスチック原料+おもりの自重の変化量が小さくなり、ガス加圧手段のガス圧の調整が容易となる。
【0015】
容器(以下、「ホッパー」ということがある。)としては、全体がロッド状プラスチック原料の形状に対応して形成されたもの(ロッド状プラスチック原料の長さに加熱溶融部の長さを加えた程度の長さを有し、かつ、ロッド状プラスチック原料の外径よりも若干大きい内径を有するもの)とされるが、これに限定されるものではない。
【0016】
プラスチック原料の断面形状およびホッパーの内周断面形状は、相似形とされ、その形状は、例えば、円形状とされるが、多角形状とされてもよい。
【0017】
ガス加圧手段で供給されるガス圧は、押出量などに応じて適宜設定することができ、例えば0.01〜3MPa程度に設定される。ガス圧が0.01MPa未満だとプラスチック原料を押し出すことが難しくなり、3MPaを超えると耐圧構造の装置にする必要があり好ましくない。
【0018】
ガスは特に限定されないが、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスがプラスチック原料を変質させることがないので好ましい。
【0019】
加熱溶融部の内周面形状は、特に限定されず、円筒形状や逆円錐形状が用いられる。四角筒状、逆四角錐形状、開口が方形で対向する2辺がテーパ状などとすることもできる。好ましくは、逆円錐形状(幾何学的な円錐に限られるものではなく、下端排出口の径が上端の径よりも小さくなっている先細り状であればよい)、または、逆円錐形状の上端部分に若干の円筒状部分がある形状とされる。このようにすると、樹脂に熱がかけられている時間が短くなるので、品質向上の点で有利となる。
【0020】
ロッド状プラスチック原料の断面形状が円形状の場合、その直径は限定されないが、20〜60mmが好ましい。20mmより小さいと一定量の光伝送体を製造するためには長尺のロッド状プラスチック原料を準備する必要があり、60mmを超えると溶融樹脂の体積が大きくなるので、プラスチック原料が溶融している時間が短くなくなり、熱安定性に優れないプラスチックでは劣化異物による信号伝達の損失悪化を招く恐れがある。上記直径は、ロッド状プラスチック原料の断面形状が多角形状の場合には、外接円の直径に相当する。
【0021】
加熱する手段は特に限定されないが、電気ヒーターを使用してホッパーを加熱してもよく、遠赤外線ヒーターを使用してもよく、また、電気ヒーターと遠赤外線ヒーターとを組み合わせて使用してもよい。誘電加熱を使用する方法も挙げられ、特にポリ塩素化スチレンなどの塩素原子を含むプラスチック原料に対しては、高周波による誘電加熱が有効である。
【0022】
加熱溶融部の上流側に、ロッド状プラスチック原料を冷却する冷却手段が設けられていることが好ましい。冷却手段は、加熱溶融部のすぐ上だけを冷却するものであってもよく、プラスチック原料収納部全体を冷却するものであってもよい。
【0023】
この発明による光伝送体の製造方法は、コア層およびクラッド層からなる光伝送体の製造方法において、少なくともコア原料供給装置として、上記のいずれかに記載の押出原料供給装置を使用し、コア原料がロッド状プラスチック原料となされ、該ロッド状プラスチック原料とプラスチック原料収納部の下端部との隙間が0.2〜2mmとされていることを特徴とするものである。
【0024】
光伝送体の製造装置は、コア層及びクラッド層用の2層金型の上流側にコア原料供給装置及びクラッド原料供給装置を配置し、2層金型内においてコア層およびクラッド層からなる光伝送体を溶融押出するものとされ、コア原料供給装置及びクラッド原料供給装置のいずれもが上記の押出原料供給装置とされてもよく、また、共押出の金型を使用して、コア原料供給装置だけが上記の押出原料供給装置とされて、クラッドについては、押出機によって供給するようにしてもよい。
【0025】
光伝送体の製造で使用されるプラスチックの種類は、透明性が高く光伝送に用いることができるものであれば限定されない。例えば、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーの重合体、スチレン系モノマーの重合体が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとして、トリクロロエチルメタクリレート、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル等;スチレン系モノマーとして、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン等が挙げられ、これらの共重合体でも構わない。その他共重合成分として、ビニルアセテート、ビニルベンゾエート、ビニルフェニルアセテート、ビニルクロロアセテート等のビニルエステル類;N―n−ブチルマレイミド、N―tert−ブチルマレイミド、N―イソプロピルマレイミド、N―シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド類等が例示される。その他、ポリカーボネート系プラスチック、シクロオレフィン系プラスチック、非晶フッ素系プラスチックなどを用いることもできる。
【0026】
光ファイバーは、通常、マルチモード光ファイバーと、シングルモード光ファイバーとに分類され、さらにマルチモード光ファイバーは、ステップインデックス(SI)型と屈折率分布を有するグレーデッドインデックス(GI)型に分類されるが、本発明の光伝送体の製造方法は、GI型(中心から半径方向外側に向かって屈折率の大きさに分布を有するコアを備えたタイプの)光ファイバーの製造により有利である。
【0027】
コア層およびクラッド層からなる光伝送体の製造に際しては、光伝送体の径は例えば数十μm〜1mm程度の大きさであるのに対し、製品の品質向上の点から、数十mm程度の径のロッド状プラスチック原料を使用することが好ましい。この場合、ロッド状プラスチック原料の径が溶融樹脂の排出量に比して非常に大きいものとなるため、これに対応するには、ロッド状プラスチック原料の送り速度を遅いもの(例えば分速で1mm以下)とする必要がある。上記押出原料供給装置によると、溶融樹脂の排出速度をガス加圧手段によるガス圧で制御するとともに、ロッド状プラスチック原料の自重を利用することで、このような遅い速度での移動も容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、ロッド状プラスチック原料の下端部分を加熱溶融させて、これをガス圧で順次金型へ供給するので、プラスチック原料が加熱溶融している時間が短時間に抑えられ、さらに、プラスチック原料収納部の下端部内面は、プラスチック原料を遊嵌可能な一定な断面形状を有しており、加熱溶融部の上端内径とプラスチック原料収納部の下端内径とが等しくなされているので、溶融樹脂の逆流が防止されることで、光信号の伝達損失悪化の原因となる劣化異物が極めて少なくなるとともに、アクチュエータを使用しての高度な制御が不要となるので、装置の簡素化及び低コスト化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、本発明による押出原料供給装置の第1実施形態を示す縦断面図である。
【図2】図2は、本発明による押出原料供給装置の第2実施形態を示す縦断面図である。
【図3】図3は、本発明による押出原料供給装置が使用される1例である溶融押出装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して、この発明の実施形態について説明する。以下の説明において、図の上下を上下というものとする。
【0031】
図3は、この発明による押出原料供給装置が使用される1例である光伝送体製造用の溶融押出装置を示している。この装置(70)は、屈折率分布を有するプラスチック光ファイバーを溶融押出法で製造するもので、コア層及びクラッド層用の2層金型(73)の上流側に、コア原料供給装置(71)及びクラッド原料供給装置(72)が連結されている。2層金型(73)の下流側には、ドーパント(屈折率調整剤)を拡散するためのドーパント拡散管(74)が備えられており、その下流にロール(75)を介して、テイクアップロール(76)が配置されている。
【0032】
この装置(70)によると、コア層及びクラッド層用の材料は、まず、各原料供給装置(71)(72)内において加熱されて溶融状態とされ、次いで、2層金型(73)内において、コア層の外周にクラッド層を有する2層構造とされ、次いで、ドーパント拡散管(74)内において、ドーパントが拡散することで屈折率分布が形成され、次いで、ロール(75)によって所定径とされることで、プラスチック製光伝送体としてのGI型光ファイバ(F)が製造される。
【0033】
この発明による押出原料供給装置(1)は、上記のコア原料供給装置(71)及びクラッド原料供給装置(72)に好適なもので、図1は、その第1実施形態を示している。
【0034】
図1に示すように、第1実施形態の押出原料供給装置(1)は、円筒状のプラスチック原料収納部(3)およびその下方に連なる筒状の加熱溶融部(4)を有する垂直状のホッパー(容器)(2)と、加熱溶融部(4)内の溶融樹脂(M)をガス圧で順次金型へ供給するためのガス加圧手段(5)とを備えている。
【0035】
プラスチック原料収納部(3)の内径は、ロッド状プラスチック原料(以下では、「原料ロッドと称す)(R)の外径にほぼ等しくなされている。
【0036】
プラスチック原料収納部(3)の上端部には、その開口を閉鎖する頂壁(6)が設けられている。ガス加圧手段(5)の加圧ガス導入管(5a)は、頂壁(6)を貫通して、プラスチック原料収納部(3)の上端部内にガスを導入する。
【0037】
プラスチック原料収納部(3)の内周(3a)には、テフロン(登録商標)加工による滑り加工が施されている。
【0038】
プラスチック原料収納部(3)の下端部外周には、冷却手段(7)が設けられている。
【0039】
加熱溶融部(4)は、プラスチック原料収納部(3)と別部材とされて、その上端部がボルト(図示略)でプラスチック原料収納部(3)の下端部に結合されている。加熱溶融部(4)の外周には、加熱手段(8)が設けられている。
【0040】
加熱溶融部(4)の外周は、円周面とされている。加熱溶融部(4)の内周は、プラスチック原料収納部(3)の下端内径と内径が等しい円筒部(4a)と、円筒部(4a)の下端に連なる逆円錐部(4b)とからなり、下方に行くに連れて径が小さくなっている逆円錐部(4b)の下端部に設けられた溶融プラスチック排出口(4c)から溶融プラスチック(M)が下流側に供給される。
【0041】
加熱手段(8)は、電気ヒーターとされて、加熱溶融部(4)を囲むように配置されるとともに、加熱溶融部(4)の上端部を除く加熱溶融部(4)全域を加熱するようになされている。
【0042】
特許文献1に記載の従来のものでは、原料ロッド下端部の外周と溶融樹脂の外周面との間の環状部分がガス加圧面となるように、プラスチック原料収納部の下端部に、それよりも上方の部分に比べて内径が大きい拡径部が設けられており、加熱溶融部の上端内径が拡径部の内径に等しくされている。これに対し、この発明による押出原料供給装置(1)では、プラスチック原料収納部(3)に拡径部が設けられておらず(プラスチック原料収納部(3)の下端部の内径は、これよりも上の部分と同じであり、プラスチック原料収納部(3)の最小内径に等しい内径となっており)、プラスチック原料収納部(3)の下端部内面は、原料ロッド(R)を遊嵌可能な一定な断面形状を有しており、加熱溶融部(4)の上端内径(円筒部(4a)の径)とプラスチック原料収納部(3)の下端内径とが等しくなされている。これにより、加熱溶融部(4)の上面ほぼ全面に原料ロッド(R)の自重が負荷され、溶融樹脂(M)を下方に送り出す力は、ガス加圧手段(5)のガス圧と原料ロッド(R)の自重とを合わせたものとなっている。なお、プラスチック原料収納部(3)は、その下端部が一定な断面形状を有していればよく、下端部よりも上方の部分は、下端部よりも内径が大きくなされていてもよい。
【0043】
プラスチック原料収納部(3)の内周と原料ロッド(R)の外周との間の隙間は、原料ロッド(R)の移動の妨げにならない程度に小さくされており、具体的には、0.2mm〜2mmとされている。これにより、原料ロッド(R)は、プラスチック原料収納部(3)に摺動可能なように遊嵌される。
【0044】
ガス加圧手段(5)は、センサ手段の出力値に応じて、ガス圧を変化させるものとされている。センサ手段は、図示省略するが、ホッパー(2)に内蔵され、溶融樹脂圧、原料ロッド位置および溶融樹脂吐出量のいずれかを検出するものとされている。
【0045】
上記押出原料供給装置(1)によると、ガス加圧手段(5)によって原料ロッド(R)の上面をガスで加圧することによって、加熱溶融部(4)内の溶融樹脂(M)が下方に送り出され、排出口(4c)から金型へ供給される。この際、プラスチック原料収納部(3)の内周と原料ロッド(R)の外周との間の隙間が小さいことにより、溶融樹脂(M)の上方への移動(逆流)が防止される。また、溶融樹脂(M)を下方に排出するに連れて、原料ロッド(R)は徐々に短くなって軽くなるが、これに伴って、ガス加圧手段(5)のガス圧が増加させられることで、溶融樹脂(M)の排出量がほぼ一定に保たれる。
【0046】
図2は、この発明による押出原料供給装置(1)の第2実施形態を示している。以下の説明において、第1実施形態と同じ構成のものには、同じ符号を付してその説明を省略する。
【0047】
図2に示すように、第2実施形態の押出原料供給装置(1)では、原料ロッド(R)の上端部に、ホッパー(2)内周に摺接して原料ロッド(R)と一体で下方に移動する環状の摺接部材(11)が嵌められているとともに、原料ロッド(R)の上端に、おもり(12)が載せられている。
【0048】
摺接部材(11)は、円筒状の周壁(11a)及びその上端に設けられた頂壁(11b)からなり、テフロン(登録商標)製とされている。原料ロッド(R)の外径は、所要の隙間が形成されるように、プラスチック原料収納部(3)の内径よりも小さくなされており、摺接部材(11)の周壁(11a)の外径は、すきまばめ程度の嵌め合いとなるように、プラスチック原料収納部(3)の内径にほぼ等しくなされている。したがって、周壁(11a)の外周がプラスチック原料収納部(3)の内周に接することで、原料ロッド(R)は、その傾きが防止され、スムーズに下方に移動することができる。
【0049】
また、おもり(12)無し(第1実施形態)の場合には、原料ロッド(R)の自重が溶融開始時の100%から全てが溶融したときの0%にまで変化するのに対し、原料ロッド(R)+おもり(12)とすることで、原料ロッド(R)のほぼ全てが溶融したときであってもおもり(12)の自重が残ることになり、溶融を開始した時点と原料ロッド(R)のほとんどを溶融させた時点とにおいて、原料ロッド(R)とおもり(12)とを合わせた自重の変化量が小さくなり、ガス加圧手段(5)のガス圧の調整が容易となる。
【0050】
なお、図2では、環状の摺接部材(11)とおもり(12)とを併用する実施形態が示されているが、環状の摺接部材(11)を使用して、おもり(12)を使用しないようにしてもよく、また、おもり(12)を使用して、環状の摺接部材(11)を使用しないようにしてもよい。
【符号の説明】
【0051】
(1) 押出原料供給装置
(2) ホッパー(容器)
(3) プラスチック原料収納部
(4) 加熱溶融部
(5) ガス加圧手段
(8) 加熱手段
(11) 摺接部材
(12) おもり
(70) 押出装置
(71) コア原料供給装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロッド状プラスチック原料が収納される容器と、容器のプラスチック原料収納部の下流側に設けられてロッド状プラスチック原料の下端部分を加熱溶融させる加熱溶融部と、加熱溶融部を加熱する加熱手段と、ガス圧で溶融樹脂を順次金型へ供給するためのガス加圧手段とを備えている押出原料供給装置において、
プラスチック原料収納部の下端部内面は、プラスチック原料を遊嵌可能な一定な断面形状を有しており、加熱溶融部の上端内径とプラスチック原料収納部の下端内径とが等しくなされていることを特徴とする押出原料供給装置。
【請求項2】
ロッド状プラスチック原料の減少に伴って、ガス加圧手段のガス圧が増加させられる請求項1記載の押出原料供給装置。
【請求項3】
容器のプラスチック原料収納部の内周に、滑り加工が施されている請求項1または2記載の押出原料供給装置。
【請求項4】
ロッド状プラスチック原料の上端部に、容器のプラスチック原料収納部の内周に摺接してロッド状プラスチック原料と一体で下方に移動する環状の摺接部材が嵌められるようになされている請求項1または2記載の押出原料供給装置。
【請求項5】
ロッド状プラスチック原料の上端に、おもりが載せられるようになされている請求項1〜4のいずれかに記載の押出原料供給装置。
【請求項6】
コア層およびクラッド層からなる光伝送体の製造方法において、少なくともコア原料供給装置として、請求項1〜5のいずれかに記載の押出原料供給装置を使用し、コア原料がロッド状プラスチック原料となされ、該ロッド状プラスチック原料とプラスチック原料収納部の下端部との隙間が0.2〜2mmとされていることを特徴とする光伝送体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−255881(P2012−255881A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128351(P2011−128351)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【出願人】(899000079)学校法人慶應義塾 (742)
【Fターム(参考)】