説明

押出成形チューブの製造方法及びその装置

【課題】押出成形機から押出されたチューブを効率よく冷却することのできる小型の冷却
機を備えた押出成形チューブの製造装置を提供する。
【解決手段】冷却機20の冷却槽22内に第1〜第3のローラ23A〜23Cを設け、か
つ、上流側の第1のローラ23Aと下流側の第3のローラ23Cの水面からの深さを同じ
とし、その中間にある第2のローラ23Bを上記第1及び第3のローラ23A,23Cよ
りも下側に配置して、押出成形機10から押出されるチューブ1を各ローラ23A〜23
Cの上,下を交互に通して屈曲させながら冷却するとともに、上記上流側の第1のローラ
23Aをチューブ1を当該冷却槽22に導入するチューブ導入口22cから所定距離L以
上離れた位置に配置して、屈曲開始までの一定区間を直進させて、チューブ1が固化温度
である80℃以下に冷却された後に屈曲させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出成形されたチューブを冷却機で冷却した後に引取機で引取る押出成形チ
ューブの製造装置に関するもので、特に、押出成形チューブを効率よく冷却することので
きる冷却機を備えた押出成形チューブの製造方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタ等のインクチューブなどに用いられる可撓性の中空チューブは
、通常、押出成形装置を用いて製造される。この押出成形装置は、図9に示すように、押
出成形機50と冷却機60と引取機70とを備えている。
押出成形機50は、可撓性を有する樹脂をシリンダ51内で加熱・溶融し、これを押出
ヘッド52の先端に設けられた成形用金型53により所望の断面形状を有するチューブの
形態に成形して押出す。上記冷却機60は、冷却槽61とこの冷却槽61に15℃程度の
冷却水62を循環させるための冷却水供給装置63とを備えたもので、押出成形機50か
ら押出された製品温度が約190℃のチューブ1は冷却機60で常温近傍まで冷却され引
取機70に送られる。
また、引取機70は、上記冷却機60から送られてくるチューブ1を引取りベルト71
,72により上下から挟持するとともに、上記引取りベルト71,72を互いに逆方向に
搬送することにより、上記チューブ1を引取る装置で、上記引取りベルト71,72間の
隙量を調整して上記チューブ1をその厚み方向に所定量潰すような方向に力を加えながら
引取る。これにより、上記押出成形機50から連続的に押出され、冷却機60で常温付近
まで冷却されたチューブ1を所定の張力を加えながら引取ることができる(例えば、特許
文献1〜3参照)。
【特許文献1】特開2002−355881号公報
【特許文献2】特開2003−260730号公報
【特許文献3】特開2006−7754号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の冷却機ではチューブ1を、直線を維持した状態で送る形態である
ため、上記チューブ1の温度を約190℃から常温近傍まで冷却するためには、冷却距離
となる冷却槽61の長さを長くする必要があり、そのため、装置が大型化してしまってい
た。
【0004】
本発明は、従来の問題点に鑑みてなされたもので、押出成形機から押出されたチューブ
を効率よく冷却することのできる小型の冷却機を備えた押出成形チューブの製造装置を提
供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願の発明は、冷却機中で押出成形チューブを上,下に屈曲して変形させることとし、
屈曲開始までの一定区間、押出成形チューブを直線を維持して送るようにしたことを特徴
とするものである。これにより、冷却機の長さを短くしても、押出成形チューブを変形さ
せることなく、所定の温度まで効率的に冷却することができる。
他の発明は、屈曲開始までの一定区間を、樹脂が冷却機投入後、固化するまでの区間と
したもので、これにより、屈曲による押出成形チューブの変形を確実に防止することがで
きる。
他の発明は、冷却機中の押出成形チューブの屈曲曲率を、押出成形チューブが冷却中に
変形しない程度の曲率に設定したもので、これにより、屈曲による押出成形チューブの変
形を確実に防止できる。
【0006】
他の発明は、押出成形チューブが冷却機に軟化点以上の製品温度で投入されたとき、屈
曲開始の製品温度が樹脂の軟化点温度より略10℃低い温度に設定されることを特徴とす
るもので、これにより、効率よく押出成形チューブを冷却することができる。
他の発明は、冷却機中に押出成形チューブの進行方向に直角なローラを複数個配設して
、各ローラの上,下を交互に通すことで押出成形チューブを所定の曲率に屈曲するように
したもので、これにより、簡単な構成で押出成形チューブを所定の曲率に屈曲させること
ができる。
他の発明は、押出成形チューブの全高、または、押出成形チューブの穴径と上,下の肉
厚との和、または、ローラ間に掛けられた押出成形チューブの水平に対する屈曲角度のい
ずれか1つまたは複数の組み合わせにより、上記ローラの半径を設定するようにしたもの
である。これにより、押出成形チューブを変形させることなく所定の曲率で屈曲させるこ
とができる。
他の発明は、冷却機中で押出成形チューブを上,下に屈曲して変形させることとし、屈
曲開始までの一定区間、押出成形チューブを直線を維持して送るようにしたことを特徴と
する押出成形チューブの製造装置である。これにより、冷却機の長さを短くしても、押出
成形チューブを変形させることなく、所定の温度まで効率的に冷却することができる押出
成形チューブの製造装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の最良の形態について、図面に基づき説明する。
図1は、本発明の最良の形態に係る押出成形チューブの製造方法及びその装置を示す図
で、各図において、10は可撓性を有する樹脂を加熱・溶融して所望の断面形状を有する
中空のチューブの形態で押出す押出成形機、20は上記押出成形機10から押出された押
出成形チューブ(以下、チューブという)1を所定の温度まで冷却する冷却機、30は上記
冷却されたチューブ1を所定の張力で引取ってこれを、図示しない切断装置等を備えた後
工程に送る引取機である。
図2(a),(b)は押出成形チューブの製造装置により製造されるチューブ1の一例
を示す図で、このチューブ1は可撓性の樹脂2により周囲が覆われた、当該チューブ1の
長手方向に延長する断面が円形の中空の流路(以下、穴という)3が4列形成された4連チ
ューブである。このチューブ1の外周面は、長手方向と垂直な断面で見ると、上記穴3と
同心円状の円弧が繋がった波状になっており、図2(b)に示すように、これらの円弧の
直径Hは当該チューブ1の厚みに等しい。以下、このHを当該チューブ1の全高と呼ぶ。
また、チューブ1の配列方向の寸法Wを当該チューブ1の幅という。
本例のチューブ1の特徴は、穴径をDとしたとき、隣接する穴3,3間の寸法λが、当
該チューブ1の肉厚h=(H−D)/2を2倍した値よりも小さいことである。すなわち
、本例のチューブ1は隣接する穴3,3間の肉厚を重ねるように成形することで、その全
幅Wを直径Hのチューブを4本合わせたものよりも短くしたもので、これにより、インク
チューブを小型化することが可能となる。
このようなインクチューブ1は、図3(6連チューブを示す)に示すように、所定長さ
に切断したものの両側にコネクタ1mを付加し、一方のコネクタ1mを図外のインクタン
ク側に、他方のコネクタ1mを雄コネクタ1nを介してキャリッジ1c側に接続し、イン
クタンク側のインクをキャリッジ1cで保持される記録ヘッドに輸送する部材として使わ
れる。
しかし、本発明ではこのようなプリンタに適用することに限らず、医療用とか他の工業
用等種々に適用可能である。
【0008】
上記チューブ1を構成する樹脂としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(P
E)、オレフィン系の可塑性エラストマー(TPE)、スチレン系のTPE、ポリアミド
系のTPE、及び、ウレタン系のTPEなどの、固化後に可撓性を有する樹脂が用いられ
る。
上記チューブ1を成形する際には、図1に示すように、上記樹脂を押出成形機10のホ
ッパ11からシリンダ12内に投入し、これを加熱・溶融しながらスクリュー13により
押出ヘッド14の吐出口から吐出させる。この押出ヘッド14の先端側には、上記押出ヘ
ッド14から吐出された液状の樹脂を図2(a),(b)に示すような4連チューブの形
態で押出成形機10から押出すための成形用金型であるヘッドダイ15が取付けられてい
る。
図4はヘッドダイ15の一構成例を示す図で、このヘッドダイ15は、押出されるチュ
ーブ1の断面外形状と同じ断面外形状を有する貫通孔15mが形成された円筒状の外型1
5aと、この外型15aを支持するホルダ15bと、上記外型15aの貫通孔15m内に
挿入される4本の穴成形用のコアピン15nを備えた内型15cと、上記ホルダ15bの
後端側に取付けられて、上記押出ヘッド14から吐出された液状の樹脂を当該ヘッドダイ
15の内部へ導入するスパイダと称される樹脂導入部材15dとを備えており、この樹脂
導入部材15dに上記内型15cが取付けられる。
このとき、ヘッドダイ15の中心軸を、押出ヘッド14の中心軸に一致させるように調
整することが肝要で、本例では、図5(a)に示すように、押出ヘッド14に位置決め調
整用の貫通ねじ孔14hを設けるとともに、ホルダ15bの装着時には、この貫通ねじ孔
14hにボルト14bを螺入して上記ホルダ15bとの相対位置を調整しながら軸合わせ
して固定するとよい。これにより、後工程の冷却機20に送るチューブ1を中心軸に沿っ
て確実に前方に送ることができる。
上記押出ヘッド14から吐出されてヘッドダイ15の内部へ注入された樹脂は、図5(
b),(c)に示すように、樹脂導入部材15dから外型15aと内型15cとの間に形
成される空隙(キャビティ)を通って、上記貫通孔15mとコアピン15nとの間の空隙か
らヘッドダイ15の外部へと押出される。
【0009】
冷却機20は、図1に示すように、冷却水21を収納する冷却槽22とこの冷却槽22
内に設置された第1〜第3のローラ23A〜23Cとを備えている。
図6は冷却機20の詳細を示す図で、上記冷却槽22には冷却水供給装置22mの図示
しない冷却水タンクから送られてくる15℃程度の冷却水21を当該冷却槽22内に導入
するための給水口22aと、冷却槽22内の冷却水21を上記冷却タンクに戻すための排
水口22bと、押出成形機10から押出されたチューブ1を当該冷却槽22内に導入する
ためのチューブ導入口22cと、冷却槽22内で冷却されたチューブ1を当該冷却槽22
から引取機30に送るためのチューブ排出口22dとが設けられている。
上記冷却槽22内のチューブ導入口22c側がチューブ進行に対して上流側で、チュー
ブ排出口22d側が下流側である。本例では、上記給水口22aは冷却槽22の上流側の
壁面22pの当該冷却槽22の底面22rに近い位置に設けられており、排水口22bは
下流側の壁面22qの水面側寄りに設けられている。そして、上記冷却槽22の下流側に
は、当該冷却槽22の底面22rから水面側に傾斜して冷却水21が下槽に滞留しないよ
うにするための滞留防止用の仕切板22kが設けられている。なお、各ローラ23A〜2
3Cには羽根車を外周(チューブ1に対応しない位置)に設けて、これで冷却水21を攪
拌してm冷却水21が下槽に滞留しないようにしてもよい。
【0010】
第1のローラ23Aは、上記冷却槽22の上流側で、上記チューブ導入口22cから所
定距離L以上離れた位置に配置されている。この所定の距離Lは、押出成形機10のヘッ
ドダイ15から押出された190℃程度の製品が固化する温度である80℃以下(軟化点
温度より略10℃低い温度)に冷却されるのに必要な距離で、例えば、冷却水21の温度
を15℃とし、上記チューブ1がこの距離Lを8.5秒以上かかって進むとした場合、上
記距離Lは425mmか、または、それ以上の長さに設定することが必要である。このよ
うに、軟化点温度以上の温度で投入されたとき、屈曲開始の製品温度は軟化点温度略80
℃より略10℃低い温度(一例として70℃)に設定される。軟化点温度は、荷重たわみ
温度として知られ、この温度を10℃程度下回ることで、樹脂が固化して型くずれを生じ
ない。
上記第1のローラ23Aの下流側には第2及び第3のローラ23B,23Cが順に配置
されている。これらのローラ23A〜23Cの回転軸の方向は同図の紙面に垂直な方向で
ある上記チューブ1の幅方向と同じ方向に向いており、同図の左右方向である上記チュー
ブ1の進行方向に対して直角である。本例では、上流側に位置する第1のローラ23Aと
下流側に位置する第3のローラ23Cの水面からの深さを同じとし、その中間に位置する
第2のローラ23Bを上記第1及び第3のローラ23A,23Cよりも下側(冷却槽22
の底部22r側)に配置するとともに、上記チューブ1を各ローラ23A〜23Cの上,
下を交互に通すようにしている。このとき、第1のローラ23Aの頂部Pに水平に入り込
んだチューブ1が当該第1のローラ23Aから離れる点Qとのなす角度をθ=60°とす
ると、第2のローラ23Bは上記第1のローラ23Aの斜め下方で、上記点Qから当該第
1のローラ23Aに引いた接線と接する位置に配置される。上記第2のローラ23Bと第
3のローラ23Cとの位置関係も同様である。
これにより、チューブ1は第1のローラ23Aの上側から冷却槽22の底部22r側に
所定の角度θ=60°だけ屈曲して第2のローラ23Bの下側に上記角度θと同じ角度で
入り込む。その後、第2のローラ23Bの下側から冷却槽22の上側に上記角度θで屈曲
して第3のローラ23Cの上側間で導かれ、ここで、進行方向を水平方向に転じてチュー
ブ排出口22dから当該冷却槽22の外側へと送られる。なお、第2のローラ23Bでは
、チューブ1は角度θ=60°で入って角度θ=60°で出て行くので、屈折角度は12
0°となる。
本例では、上記第2のローラ23Bは昇降手段24に取付けられており、押出成形機1
0から押出されたチューブ1の先端が引取機30にセッティングされるまでは、上記第2
のローラ23Bは上記冷却槽22の上部側に持ち上げられており、チューブ1が第1のロ
ーラ23Aと第3のローラ23Cとの間に張られてから、上記昇降手段24を用いて上記
冷却槽22内に降ろされ、上記第1及び第3のローラ23A,23Cよりも下側にセッテ
ィングされる。この状態でチューブ送りが本格的に開始される。
【0011】
チューブ導入口22cから冷却槽22内に導かれたチューブ1は、チューブ導入口22
cから所定距離Lまでの区間は直線状を保って送られる。すなわち、押出成形機10のヘ
ッドダイ15から押出されたときのチューブ1の製品温度は約190℃であるが、上記区
間では、チューブ1は直線状を保って送られるので、上記チューブ1に不要な変形を与え
ることなく、上記チューブ1を固化温度である80℃以下までに直線状態を保って冷却す
ることができる。
上記固化温度以下に冷却された直線状のチューブ1は、上記ローラ23A〜23Cによ
り、上,下に屈曲して変形させられながら冷却槽22中で冷却され、チューブ排出口22
dから引取機30に送られる。
引取機30では上記冷却機20で常温まで冷却されたチューブ1を上下の引き取り用ベ
ルト31,32で挟持しながら、上記ベルト31,32を移動させて、上記チューブ1を
所定の張力で引張りながら、上記チューブ1を押出成形機10とは反対側に送り出す(図
1参照)。
このように、チューブ1を上,下に屈曲して変形させながら冷却槽22中を通過させる
ようにすれば、チューブ1の冷却経路の長さを、従来と同じ長さに保持しつつ、冷却槽2
2の長さを短くすることができる。したがって、チューブ1を効率よく冷却することがで
きる。また、本例では、冷却槽22の排水口22b近傍に滞留防止用の仕切板22kが設
けられて、給水口22aから冷却槽22内に送られてくる冷却水21が冷却槽22の底部
22rに滞留しないようにしているので、冷却効率を高めることができる。
【0012】
このように、本最良の形態によれば、冷却機20の冷却槽22内に第1〜第3のローラ
23A〜23Cを設け、かつ、上流側に位置する第1のローラ23Aと下流側に位置する
第3のローラ23Cの水面からの深さを同じとし、その中間に位置する第2のローラ23
Bを上記第1及び第3のローラ23A,23Cよりも下側に配置して、押出成形機10か
ら押出されるチューブ1を各ローラ23A〜23Cの上,下を交互に通して屈曲させなが
ら冷却するとともに、上記上流側の第1のローラ23Aをチューブ1を当該冷却槽22に
導入するチューブ導入口22cから所定距離L以上離れた位置に配置して、屈曲開始まで
の一定区間を直進させて、チューブ1が固化温度である80℃以下(軟化点温度より10
℃程度低い温度で例えば70℃)に冷却された後に屈曲させるようにしたので、冷却槽2
2の長さを短くしても、押出成形チューブ1を変形させることなく、所定の温度まで冷却
することができる。
【0013】
なお、上記最良の形態では、チューブ1として、長手方向に延長する4列の穴3を備え
た4連チューブについて説明したが、これに限るものではなく、本発明は、6連あるいは
9連のチューブや単管のチューブにも適用可能であることは言うまでもない。
また、チューブ1の屈折角度やそのときのローラ23(23A〜23C)の径としては
、チューブ1が屈曲により変形しない程度に設定すればよく。そのためには、冷却される
チューブ1の全高Hや断面形状によって、ローラ23の径を選択することが望ましい。
すなわち、上記チューブ1をローラ23に面接触させながら屈曲させるときは、図7(
a)に示すように、チューブ1の屈曲曲率はローラ23の半径Rと当該チューブ1の全高
Hとにより決まる。すなわち、チューブ1のローラ23との接触部1aの屈曲曲率は当該
ローラ23の半径Rに等しいが、上記接触部1aとは反対側の屈曲した部分(非接触部)
1b側の屈曲曲率は、上記チューブ1の厚み方向の縮みが小さいとするとR+Hで表わせ
る。すなわち、チューブ1は非接触部1b側が伸ばされる。したがって、全高Hの大きな
チューブを屈曲させる場合には、非接触部1bの長さと接触部1aの長さとの差を小さく
するようにローラ23の径を選択することが望ましい。すなわち、全高Hが大きい場合に
は、接触させるローラ23の半径を大きくすることが望ましい。
また、チューブ1を屈曲させると、図7(b)に示すように、チューブ1は、円形であ
った穴3の形状がローラ23の径方向に垂直な方向が長軸である楕円形のような偏平な形
状に変形する。この変形量は、チューブ1の長手方向に垂直な断面で見た場合、穴径Dの
上,下の肉厚t1,t2の和に対する比が大きいほど大きい。したがって、穴径Dの大き
な(もしくは、肉厚の薄い)チューブを屈曲させるときには径の大きなローラを用いること
が好ましい。これにより、チューブ1の変形量を穴径Dによらず同じ程度にすることがで
きる。なお、通常は、上,下の肉厚t1,t2は等しいので、穴径Dの肉厚t1に対する
比に基づいてローラ径を設定してもよい。
また、図7(c)に示すように、チューブ1の伸ばされている部分の長さは水平に対す
る屈曲角度が大きいほど大きい。例えば、R=50mmの場合、屈曲角度が45°なら屈
曲している部分の長さは39.3mmであるが、屈曲角度が90°になると屈曲している
部分の長さは78.5mmと倍になる。上記伸ばされている部分の長さを少なくするには
屈曲角度を小さくする必要があるが、屈曲角度を小さくすると冷却経路が長く必要になる
。そこで、屈曲角度を大きくする場合には、接触させるローラ23の半径を大きくして、
非接触部1bの長さと接触部1aの長さとの差を小さくすることが望ましい。すなわち、
全高Hが大きい場合には、接触させるローラ23の半径を大きくすることが望ましい。
【0014】
また、ローラ23の数についても3個に限定されるものではなく、4個以上であっても
よい。具体的には、図8に示すように、チューブ1を屈曲開始までの一定区間(距離L)を
直進させた後に、チューブ1を上,下に屈曲して変形させることができればよい。
また、図8の例では、4個のローラ23a〜23dをチューブ1の屈曲角度θが90°
になるように配置しているが、同じ4個のローラを用いた場合でも、例えば、チューブ1
を中間のローラ23bにθ=60°で入り込ませ、θ=90°で送り出すようにするよう
にしてもよい。
また、各ローラ23A,23B,23Cのうちいずれか1個を駆動ローラとし、他を従
動ローラとしてもよいが、全て従動ローラとすることにより、従動ローラ23Bの上下操
作によりテンションを調整して張力設定が可能となる。
また、軟化点温度は本実施例では80℃として説明したが、樹脂の種別に応じて多少のバ
ラツキがあるので、80℃に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0015】
このように、本発明によれば、冷却機の長さを短くしても、押出成形チューブを変形さ
せることなく、所定の温度まで冷却することができるので、製造ラインを簡素化すること
ができ、作業スペースを確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明による押出成形チューブの製造方法及びその装置を示す図である。
【図2】本発明に係るチューブの一例を示す図である。
【図3】中空のチューブをプリンタのインクチューブに適用した例を示す図である。
【図4】ヘッドダイの一構成例を示す図である。
【図5】ヘッドダイの取付方法を説明するための図である。
【図6】冷却機の構成を示す図である。
【図7】チューブの屈曲とロール径との関係を説明するための図である。
【図8】冷却機の他の構成を示す図である。
【図9】従来の押出成形装置の概略構成を示す図である。
【符号の説明】
【0017】
10 押出成形機、14 押出ヘッド、15 ヘッドダイ、
20 冷却機、21 冷却水、22 冷却槽、22a 給水口、
22b 排水口、22c チューブ導入口、22d チューブ排出口、
22m 冷却水供給装置、23,23A〜23C ローラ、24 昇降手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂を押出成形した後、冷却機で冷却後に引取機で引取るようにした押出成形チューブ
の製造方法において、冷却機中で押出成形チューブを上,下に屈曲して変形させることと
し、屈曲開始までの一定区間、押出成形チューブを直線を維持して送るようにしたことを
特徴とする押出成形チューブの製造方法。
【請求項2】
屈曲開始までの一定区間は、樹脂が冷却機投入後固化するまでの区間であることを特徴
とする請求項1に記載の押出成形チューブの製造方法。
【請求項3】
冷却機中の押出成形チューブの屈曲曲率は、押出成形チューブが冷却中に変形しない程
度の曲率に設定されたことを特徴とする請求項1に記載の押出成形チューブの製造方法。
【請求項4】
押出成形チューブが冷却機に軟化点以上の製品温度で投入されたとき、屈曲開始の製品
温度が樹脂の軟化点温度より略10℃低い温度に設定されることを特徴とする請求項1に
記載の押出成形チューブの製造方法。
【請求項5】
冷却機中に押出成形チューブの進行方向に直角なローラを複数個配設して、各ローラの
上,下を交互に通すことで押出成形チューブを所定の曲率に屈曲するようにしたことを特
徴とする請求項3に記載の押出成形チューブの製造方法。
【請求項6】
押出成形チューブの全高、または、押出成形チューブの穴径と上,下の肉厚の和、また
は、ローラ間に掛けられた押出成形チューブの水平に対する屈曲角度のいずれか1つまた
は複数の組み合わせにより、上記ローラの径を設定するようにしたことを特徴とする請求
項5に記載の押出成形チューブの製造方法。
【請求項7】
樹脂を押出成形した後、冷却機で冷却後に引取機で引取るようにした押出成形チューブ
の製造装置において、冷却機中で押出成形チューブを上,下に屈曲して変形させることと
し、屈曲開始までの一定区間、押出成形チューブを直線を維持して送るようにしたことを
特徴とする押出成形チューブの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−72943(P2009−72943A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−241914(P2007−241914)
【出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】