説明

押出成形用樹脂組成物、成形品及び積層品

【課題】光輝性模様を形成するために配合されたメタリック顔料を含む樹脂組成物を用いた押出成形により、優れた生産性をもって、表面にスジ等の不良現象を発生させることなく、また、表面からのメタリック顔料の脱離が抑制された、鮮明な光輝性模様を有する成形品及び積層品を製造することができる押出成形用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】本発明の押出成形用樹脂組成物は、熱可塑性樹脂と、メタリック顔料と、不飽和二重結合を有する含リン化合物と、を含有し、上記含リン化合物が、リン酸モノエステル等の化合物であり、上記メタリック顔料及び上記含リン化合物の含有割合が、これらの合計を100質量%とした場合に、それぞれ、95〜99.95質量%及び0.05〜5質量%であり、且つ、上記メタリック顔料及び上記含リン化合物の含有量の合計が、上記熱可塑性樹脂の量を100質量部とした場合に、0.1〜10質量部である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出成形用樹脂組成物、成形品及び積層品に関し、更に詳しくは、意匠性を付与する、即ち、光輝性模様を形成するために配合されたメタリック顔料を含む樹脂組成物を用いた押出成形により、優れた生産性をもって、表面にスジ等の不良現象を発生させることなく、鮮明な光輝性模様を有する成形品及び積層品を製造することができる押出成形用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光輝性模様を有する成形品及び積層品を製造するために、メタリック顔料等が配合された成形材料が用いられている(例えば、特許文献1,2等参照。)。近年、熱可塑性樹脂組成物の適用範囲が広くなり、形状等に応じた成形方法が選択され、例えば、メタリック顔料を含有する組成物を押出成形により、外観性等に優れた成形品を得るべく検討されてきた。
【0003】
【特許文献1】特開平8−120115号
【特許文献2】特開2001−261978号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
メタリック顔料は、平均粒径が比較的大きく、種類によっては、比重も大きい性質を有する。そのため、押出成形の際に、溶融樹脂が、例えば、サイジングダイを流れるとき、メタリック顔料が析出(ブリードアウト)することがあり、サイジングダイに溝等がある場合には、メタリック顔料が堆積し、成形品表面にスジ、ムラ等の不良現象を引き起こすといった問題を生じることがあった。また、成形品及び積層品の表面に不良現象が確認されるたびに、製造を中断しなければならず、高い生産性をもって製品を製造することができない場合があった。
本発明の目的は、光輝性模様を形成するために配合されたメタリック顔料を含む樹脂組成物を用いた押出成形により、優れた生産性をもって、表面にスジ等の不良現象を発生させることなく、表面からのメタリック顔料〔B〕の脱離が抑制されて耐摩耗性に優れ、鮮明な光輝性模様を有し外観性に優れる成形品及び積層品を製造することができる押出成形用樹脂組成物及びそれを含む成形品並びに積層品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討した結果、予め、メタリック顔料を、特定の、不飽和二重結合を有する含リン化合物により処理して得られた処理済みメタリック顔料と、熱可塑性樹脂とを用いて、樹脂組成物を調製し、押出成形装置に供したところ、優れた生産性をもって、表面にスジ等の不良現象を発生させることなく、表面からのメタリック顔料の脱離が抑制されて耐摩耗性に優れ、鮮明な光輝性模様を有する成形品及び積層品を製造することができたことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明は、以下に示される。
1.〔A〕熱可塑性樹脂と、〔B〕メタリック顔料と、〔C〕不飽和二重結合を有する含リン化合物と、を含有する押出成形用樹脂組成物であって、上記含リン化合物〔C〕が、リン酸モノエステル、リン酸ジエステル、ホスホン酸モノエステル及びホスホン酸ジエステルから選ばれた少なくとも1種の化合物であり、上記メタリック顔料〔B〕及び上記含リン化合物〔C〕の含有割合が、これらの合計を100質量%とした場合に、それぞれ、95〜99.95質量%及び0.05〜5質量%であり、且つ、上記メタリック顔料〔B〕及び上記含リン化合物〔C〕の含有量の合計が、上記熱可塑性樹脂〔A〕の量を100質量部とした場合に、0.1〜10質量部であることを特徴とする押出成形用樹脂組成物。
2.上記熱可塑性樹脂〔A〕が、ゴム質重合体の存在下に、芳香族ビニル化合物を含むビニル系単量体を重合して得られたゴム強化ビニル系樹脂(A1)、又は、該ゴム強化ビニル系樹脂(A1)とビニル系単量体の(共)重合体(A2)との混合物、からなるゴム強化樹脂を含む上記1に記載の押出成形用樹脂組成物。
3.上記1又は2に記載の押出成形用樹脂組成物を押出成形してなることを特徴とする成形品。
4.上記1又は2に記載の押出成形用樹脂組成物を押出成形してなる層と、他の材料からなる層とが積層されていることを特徴とする積層品。
5.上記他の材料が、上記1又は2に記載の押出成形用樹脂組成物と異なる熱可塑性樹脂組成物である上記4に記載の積層品。
【発明の効果】
【0007】
本発明の押出成形用樹脂組成物によれば、押出成形時の優れた生産性をもって、表面にスジ等の不良現象を発生させることなく、また、表面からのメタリック顔料〔B〕の脱離が抑制されて耐摩耗性に優れ、鮮明な光輝性模様を有する成形品及び積層品を製造することができる。
本発明の成形品によれば、表面において、スジ等の不良現象が抑制されており、成形品表面からのメタリック顔料〔B〕の脱離が抑制されて耐摩耗性に優れ、光輝性模様が鮮明であり、外観性に優れる。
本発明の積層品によれば、押出成形用樹脂組成物を押出成形してなる層の表面において、スジ等の不良現象が抑制されており、耐摩耗性に優れ、光輝性模様が鮮明であり、外観性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明において、「(共)重合」とは、単独重合及び共重合を意味し、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルを意味する。
【0009】
1.押出成形用樹脂組成物
本発明の押出成形用樹脂組成物(以下、「本発明の組成物」ともいう。)は、〔A〕熱可塑性樹脂と、〔B〕メタリック顔料と、〔C〕不飽和二重結合を有する含リン化合物と、を含有し、上記含リン化合物〔C〕が、リン酸モノエステル、リン酸ジエステル、ホスホン酸モノエステル及びホスホン酸ジエステルから選ばれた少なくとも1種の化合物であり、上記メタリック顔料〔B〕及び上記含リン化合物〔C〕の含有割合が、これらの合計を100質量%とした場合に、それぞれ、95〜99.95質量%及び0.05〜5質量%であり、且つ、上記メタリック顔料〔B〕及び上記含リン化合物〔C〕の含有量の合計が、上記熱可塑性樹脂〔A〕の量を100質量部とした場合に、0.1〜10質量部であることを特徴とする。
【0010】
1−1.熱可塑性樹脂〔A〕
この熱可塑性樹脂〔A〕としては、熱可塑性を有する重合体を含むものであれば、特に限定されず、ABS樹脂、ASA樹脂、AES樹脂等のゴム強化樹脂;ポリスチレン、スチレン・アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)、スチレン・無水マレイン酸共重合体、(メタ)アクリル酸エステル・スチレン共重合体等のスチレン系(共)重合体;ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂;環状ポリオレフィン樹脂;ポリエステル系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリアリレート樹脂;ポリアセタール樹脂;ポリ塩化ビニル、エチレン・塩化ビニル重合体、ポリ塩化ビニリデン等の塩化ビニル系樹脂;ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等の(メタ)アクリル酸エステルの1種以上を用いた(共)重合体等のアクリル系樹脂;ポリフェニレンエーテル;ポリフェニレンサルファイド;ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素樹脂;液晶ポリマー;ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド等のイミド系樹脂;ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン等のケトン系樹脂;ポリスルホン、ポリエーテルスルホン等のスルホン系樹脂;ウレタン系樹脂;ポリ酢酸ビニル;ポリエチレンオキシド;ポリビニルアルコール;ポリビニルエーテル;ポリビニルブチラール;フェノキシ樹脂;感光性樹脂;生分解性プラスチック等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのうち、ゴム強化樹脂、スチレン系(共)重合体、環状ポリオレフィン樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、アクリル系樹脂、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルスルホン並びにゴム強化樹脂及びポリカーボネート樹脂のアロイが好ましく、特に、ゴム強化樹脂、スチレン系(共)重合体、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート樹脂及びアロイが好ましい。
以下、これらの好ましい樹脂について説明する。
【0011】
1−1−1.ゴム強化樹脂
このゴム強化樹脂は、ゴム質重合体(以下、「ゴム質重合体(a)」という。)の存在下に、芳香族ビニル化合物を含むビニル系単量体(以下、「ビニル系単量体(b)」という。)を重合して得られるゴム強化ビニル系樹脂(以下、「ゴム強化ビニル系樹脂(A1)」という。)、又は、このゴム強化ビニル系樹脂(A1)とビニル系単量体の(共)重合体(以下、「(共)重合体(A2)」という。)との混合物、からなるものである。
【0012】
上記ゴム質重合体(a)は、単独重合体であってよいし、共重合体であってもよいが、ジエン系重合体及び非ジエン系重合体が挙げられる。また、これらは、単独で用いてよいし、組み合わせて用いてもよい。更に、このゴム質重合体(a)は、非架橋重合体であってよいし、架橋重合体であってもよい。
【0013】
上記ジエン系重合体としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン等の単独重合体;スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、アクリロニトリル・スチレン・ブタジエン共重合体等のスチレン・ブタジエン系共重合体;スチレン・イソプレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレン共重合体、アクリロニトリル・スチレン・イソプレン共重合体等のスチレン・イソプレン系共重合体;上記各(共)重合体の水素化物等が挙げられる。
また、上記非ジエン系重合体としては、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・ブテン−1共重合体等のエチレン・α−オレフィン共重合体;エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体、エチレン・ブテン−1・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体等のエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体;ウレタン系ゴム;アクリル系ゴム;シリコーンゴム;シリコーン・アクリル系IPNゴム等が挙げられる。
尚、上記各共重合体は、ブロック共重合体でもよいし、ランダム共重合体でもよい。
【0014】
上記ゴム質重合体(a)として、ジエン系重合体を用いた場合に得られるゴム強化ビニル系樹脂(A1)は、ジエン系ゴム強化ビニル系樹脂であり、一般に、「ABS樹脂」といわれている。また、上記ゴム質重合体(a)として、エチレン・α−オレフィン及び/又はエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体を用いた場合に得られるゴム強化ビニル系樹脂(A1)は、一般に、「AES樹脂」といわれている。更に、上記ゴム質重合体(a)として、アクリル系ゴムを用いた場合に得られるゴム強化ビニル系樹脂(A1)は、アクリル系ゴム強化ビニル系樹脂であり、一般に、「ASA樹脂」といわれている。
【0015】
上記ゴム質重合体(a)の大きさ及び形状は、特に限定されないが、粒子状であることが好ましく、その体積平均粒子径は、好ましくは50〜3,000nmであり、より好ましくは100〜2,000nm、更に好ましくは150〜800nmである。体積平均粒子径が50nm未満では、耐衝撃性が低下する傾向にあり、3,000nmを超えると、剛性が低下し、表面外観(光沢)が低下する傾向にある。上記体積平均粒子径は、レーザー回折散乱法、動的光散乱法等により測定することができる。
【0016】
上記ゴム質重合体(a)は、その体積平均粒子径が上記範囲内にあるものであれば、例えば、特開昭61−233010号公報、特開昭59−93701号公報、特開昭56−167704号公報等に記載されている方法等の公知の方法により肥大化したものを用いることもできる。
【0017】
上記ゴム質重合体(a)を製造する方法としては、乳化重合、溶液重合等が挙げられる。これらのうち、平均粒子径の調整等が容易であることから、乳化重合が好ましい。この場合、平均粒子径は、乳化剤の種類及びその使用量、開始剤の種類及びその使用量、重合時間、重合温度、攪拌条件等の製造条件を選択することにより調整することができる。上記平均粒子径(粒子径分布)の他の調整方法としては、異なる粒子径を有するゴム質重合体(a)の2種類以上をブレンドする方法でもよい。乳化重合により製造して得られたゴム質重合体(a)は、ゴム強化ビニル系樹脂(A1)を乳化重合により製造するのに好適である。
また、溶液重合等によりゴム質重合体(a)を製造した場合には、再乳化等の方法により、所定の平均粒子径を有する重合体とさせることができる。再乳化により得られたゴム質重合体(a)の分散液も、ゴム強化ビニル系樹脂(A1)を乳化重合により製造するのに好適である。
【0018】
尚、上記ゴム強化樹脂に含有されるゴム質重合体(a)、上記熱可塑性樹脂に含有されるゴム質重合体(a)、本発明の組成物に含有されるゴム質重合体(a)、及び、本発明の組成物を用いて得られる成形品に含有されるゴム質重合体(a)の数平均粒子径は、いずれも、上記体積平均粒子径等から換算して得られる長さであり、これらの範囲にあることにより、耐衝撃性、剛性及び表面外観性に優れた成形品とすることができる。上記数平均粒子径は、電子顕微鏡写真から求めることができる。
【0019】
上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)の形成に用いられるビニル系単量体(b)は、芳香族ビニル化合物(以下、「芳香族ビニル化合物(b1)」ともいう。)のみでもよいし、該芳香族ビニル化合物(b1)と、例えば、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、マレイミド系化合物、酸無水物等の該芳香族ビニル化合物と共重合可能な化合物とを、それぞれ、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
従って、上記ビニル系単量体(b)としては、芳香族ビニル化合物(b1)の1種以上、あるいは、芳香族ビニル化合物の1種以上と、該芳香族ビニル化合物と共重合可能な化合物の1種以上とを組み合わせた単量体を用いることができる。
【0020】
上記芳香族ビニル化合物(b1)としては、少なくとも1つのビニル結合と、少なくとも1つの芳香族環とを有する化合物であれば、特に限定されることなく用いることができる。その例としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、β−メチルスチレン、エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、モノブロモスチレン、ジブロモスチレン、フルオロスチレン等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのうち、スチレン及びα−メチルスチレンが好ましい。
【0021】
上記シアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。これらのうち、アクリロニトリルが好ましい。また、これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸tert−ブチル等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0022】
上記マレイミド系化合物としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(2−メチルフェニル)マレイミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。尚、マレイミド系化合物からなる単位を導入する他の方法としては、例えば、無水マレイン酸を共重合し、その後イミド化する方法でもよい。
上記酸無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
また、上記化合物以外に、必要に応じて、ヒドロキシル基、アミノ基、エポキシ基、アミド基、カルボキシル基、オキサゾリン基等の官能基を有するビニル系化合物を用いることができる。例えば、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、ヒドロキシスチレン、メタクリル酸N,N−ジメチルアミノメチル、アクリル酸N,N−ジメチルアミノメチル、N,N−ジエチル−p−アミノメチルスチレン、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸3,4−オキシシクロヘキシル、アクリル酸3,4−オキシシクロヘキシル、ビニルグリシジルエーテル、メタリルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、メタクリルアミド、アクリルアミド、メタクリル酸、アクリル酸、ビニルオキサゾリン等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)の形成に用いるビニル系単量体(b)としては、下記の組み合わせで用いることが好ましい。シアン化ビニル化合物を用いることにより、耐薬品性及び耐変色性の物性バランスが向上する。
(1)芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物。
(2)芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物及び他の化合物。
【0025】
上記ビニル系単量体(b)として、芳香族ビニル化合物(b1)と他のビニル系単量体(以下、「ビニル系単量体(b2)」ともいう。)とを併用する場合、芳香族ビニル化合物(b1)と、ビニル系単量体(b2)との重合割合(b1)/(b2)は、これらの合計を100質量%とした場合、好ましくは(50〜95)質量%/(50〜5)質量%、より好ましくは(60〜90)質量%/(40〜10)質量%である。芳香族ビニル化合物(b1)の使用量が少なすぎると、成形加工性が劣る傾向にあり、多すぎると、本発明の組成物及びそれを含む成形品の耐薬品性、耐熱性等が十分でない場合がある。
【0026】
上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)は、ゴム質重合体(a)の存在下に、ビニル系単量体(b)を重合して得られたものである。このゴム強化ビニル系樹脂(A1)は、ビニル系単量体(b)として芳香族ビニル化合物のみを用いて得られたゴム強化ビニル系樹脂(i)の1種以上であってよいし、ビニル系単量体(b)として上記(1)の単量体を用いて得られたゴム強化ビニル系樹脂(ii)の1種以上であってよいし、ビニル系単量体(b)として上記(2)の単量体を用いて得られたゴム強化ビニル系樹脂(iii)の1種以上であってもよい。更には、これらを適宜、組み合わせたものであってもよい。
【0027】
尚、前述のように、上記成分〔A〕としてゴム強化樹脂を用いる場合には、該ゴム強化樹脂が、ゴム強化ビニル系樹脂(A1)のみであってもよく、ゴム強化ビニル系樹脂(A1)と、ビニル系単量体の重合によって得られた(共)重合体(A2)とからなる混合物であってもよい。このビニル系単量体としては、上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)の形成に用いた化合物、即ち、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、マレイミド系化合物、酸無水物及び官能基を有する化合物から選ばれる1種以上を用いることができる。従って、上記(共)重合体(A2)は、上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)の形成に用いたビニル系単量体(b)と全く同じ組成の成分を重合して得られる重合体であってもよいし、異なる組成で同じ種類の単量体を重合して得られる重合体であってもよいし、更には、異なる組成で異なる種類の単量体を重合して得られる重合体であってもよい。これらの各重合体が2種以上含まれるものであってもよい。
【0028】
上記(共)重合体(A2)としては、下記(3)〜(8)に例示される。尚、各単量体は、上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)の形成に用いられる化合物を適用でき、好ましい化合物も同様である。
(3)芳香族ビニル化合物のみを重合して得られた(共)重合体の1種以上。
(4)(メタ)アクリル酸エステル化合物のみを重合して得られた(共)重合体の1種以上。
(5)芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を重合して得られた共重合体の1種以上。
(6)芳香族ビニル化合物及び(メタ)アクリル酸エステル化合物を重合して得られた共重合体の1種以上。
(7)芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物及び他の化合物を重合して得られた共重合体の1種以上。
(8)芳香族ビニル化合物と、シアン化ビニル化合物を除く他の化合物とを重合して得られた共重合体の1種以上。
これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
従って、上記(共)重合体(A2)の具体例としては、アクリロニトリル・スチレン共重合体、アクリロニトリル・α−メチルスチレン共重合体、アクリロニトリル・スチレン・メタクリル酸メチル共重合体、スチレン・メタクリル酸メチル共重合体、アクリロニトリル・スチレン・N−フェニルマレイミド共重合体等が挙げられる。
【0030】
次に、上記のゴム強化ビニル系樹脂(A1)及び(共)重合体(A2)の製造方法について説明する。
上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)は、ゴム質重合体(a)の存在下に、ビニル系単量体(b)を、好ましくは乳化重合、溶液重合、塊状重合することにより、製造することができる。
尚、ゴム強化ビニル系樹脂(A1)の製造の際には、ゴム質重合体(a)及びビニル系単量体(b)は、反応系において、ゴム質重合体(a)全量の存在下に、ビニル系単量体(b)を一括添加してもよいし、分割又は連続添加してもよい。また、これらを組み合わせた方法でもよい。更に、ゴム質重合体(a)の全量又は一部を、重合途中で添加して重合してもよい。
ゴム強化ビニル系樹脂(A1)を100質量部製造する場合、ゴム質重合体(a)の使用量は、好ましくは5〜80質量部、より好ましくは10〜70質量部、更に好ましくは15〜60質量部である。
【0031】
乳化重合によりゴム強化ビニル系樹脂(A1)を製造する場合には、重合開始剤、連鎖移動剤(分子量調節剤)、乳化剤、水等が用いられる。
上記重合開始剤としては、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物と、含糖ピロリン酸処方、スルホキシレート処方等の還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤;過硫酸カリウム等の過硫酸塩;ベンゾイルパーオキサイド(BPO)、ラウロイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシラウレイト、tert−ブチルパーオキシモノカーボネート等の過酸化物等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。更に、上記重合開始剤は、反応系に一括して又は連続的に添加することができる。また、上記重合開始剤の使用量は、上記ビニル系単量体(b)全量に対し、通常、0.1〜1.5質量%である。
【0032】
上記連鎖移動剤としては、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、tert−テトラデシルメルカプタン等のメルカプタン類、ターピノーレン、α−メチルスチレンのダイマー等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。上記連鎖移動剤の使用量は、上記ビニル系単量体(b)全量に対して、通常、0.05〜2.0質量%である。
【0033】
乳化重合の場合に使用する乳化剤としては、高級アルコールの硫酸エステル、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム等の脂肪族スルホン酸塩、高級脂肪族カルボン酸塩、リン酸系等のアニオン性界面活性剤;ポリエチレングリコールのアルキルエステル型、アルキルエーテル型等のノニオン系界面活性剤等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。上記乳化剤の使用量は、上記ビニル系単量体(b)全量に対して、通常、0.3〜5.0質量%である。
【0034】
乳化重合により得られたラテックスは、通常、凝固剤により凝固させ、重合体成分を粉末状とし、その後、これを水洗、乾燥することによって精製される。この凝固剤としては、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム等の無機塩;硫酸、塩酸等の無機酸;酢酸、乳酸等の有機酸等が用いられる。
尚、複数のゴム強化ビニル系樹脂(A1)を併用する場合には、単離した後、混合してもよいが、他の方法として、各樹脂を各々含むラテックスを製造してから混合し、その後、凝固する等により、混合されたゴム強化ビニル系樹脂(A1)とすることができる。
【0035】
溶液重合及び塊状重合によるゴム強化ビニル系樹脂(A1)の製造方法は、公知の方法を適用することができる。溶液重合及び塊状重合によりゴム強化ビニル系樹脂(A1)を製造する場合には、どの方法により得られたゴム質重合体(a)を用いてもよい。即ち、乳化重合により得られたラテックス(ゴム質重合体(a)の粒子を含む)をそのまま用いてよいし、その媒体を除去してなるゴム質重合体(a)を用いてもよい。また、溶液重合により得られたゴム質重合体(a)をそのまま用いてよいし、その再乳化液を用いてもよい。
【0036】
上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)のグラフト率は、好ましくは10〜180質量%、より好ましくは20〜150質量%、更に好ましくは30〜120質量%である。上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)のグラフト率が10質量%未満では、本発明の組成物及びそれを含む成形品の表面外観性及び耐衝撃性が低下することがある。また、180質量%を超えると、成形加工性が劣る。
ここで、グラフト率とは、上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)1グラム中のゴム成分をxグラム、上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)1グラムをアセトン(但し、ゴム質重合体(a)がアクリル系ゴムである場合には、アセトニトリルを使用。)に溶解させた際の不溶分をyグラムとしたときに、次式により求められる値である。
グラフト率(質量%)={(y−x)/x}×100
【0037】
また、上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)のアセトン(但し、ゴム質重合体(a)がアクリル系ゴムである場合には、アセトニトリルを使用。)による可溶成分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃で測定)は、好ましくは0.2〜1.2dl/g、より好ましくは0.2〜1.0dl/g、更に好ましくは0.3〜0.8dl/gである。この範囲とすることにより、本発明の組成物は、成形加工性に優れ、本発明の組成物及びそれを含む成形品の耐衝撃性にも優れる。
尚、上記グラフト率及び極限粘度[η]は、上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)を製造するときの、重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤、溶剤等の種類や量、更には重合時間、重合温度等を変えることにより、容易に制御することができる。
【0038】
上記(共)重合体(A2)は、上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)の製造に適用される重合開始剤等を用いて、単量体成分を、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合等で重合することにより、あるいは、重合開始剤を用いない熱重合により、製造することができる。また、これらの重合方法を組み合わせてもよい。
【0039】
上記(共)重合体(A2)の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃で測定)は、好ましくは0.2〜1.2dl/g、より好ましくは0.2〜1.0dl/gである。極限粘度[η]が上記範囲内であると、成形加工性及び耐衝撃性の物性バランスに優れる。尚、この(共)重合体(A2)の極限粘度[η]は、上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)の場合と同様、製造条件を調整することにより制御することができる。
【0040】
上記ゴム強化樹脂のアセトン(但し、ゴム質重合体(a)がアクリル系ゴムである場合には、アセトニトリルを使用。)による可溶成分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃で測定)は、好ましくは0.2〜1.2dl/g、より好ましくは0.2〜1.0dl/gである。極限粘度[η]が上記範囲内であると、成形加工性と耐衝撃性との物性バランスに優れる。
【0041】
ここで、上記ゴム強化樹脂が、ゴム強化ビニル系樹脂(A1)である場合、及び、ゴム強化ビニル系樹脂(A1)と、ビニル系単量体の重合によって得られた(共)重合体(A2)とよりなる混合物である場合のいずれにおいても、本発明の組成物中のゴム質重合体(a)の含有量は、好ましくは5〜30質量%、より好ましくは10〜28質量%、更に好ましくは15〜25質量%である。上記ゴム質重合体(a)の含有量が少なすぎると、本発明の組成物及びそれを含む成形品の耐衝撃性が劣る傾向にあり、多すぎると、成形加工性、成形品の表面外観性、剛性、耐熱性等が劣る傾向にある。
【0042】
1−1−2.スチレン系(共)重合体
このスチレン系(共)重合体は、上記ゴム強化樹脂を構成する(共)重合体(A2)をそのまま用いることができる。上記スチレン系(共)重合体の極限粘度[η]も、上記(共)重合体(A2)と同様とすることができる。
【0043】
1−1−3.ポリエステル系樹脂
このポリエステル系樹脂は、分子の主鎖中にエステル結合を有する樹脂であれば、特に限定されず、飽和ポリエステル樹脂であってよいし、不飽和ポリエステル樹脂であってもよい。これらのうち、飽和ポリエステル樹脂が好ましい。また、単独重合ポリエステルであってよいし、共重合ポリエステルであってもよい。更に、結晶性樹脂であってよいし、非晶性樹脂であってもよい。
【0044】
上記ポリエステル系樹脂は、例えば、ジカルボン酸成分とジヒドロキシ成分との重縮合、オキシカルボン酸成分又はラクトン成分の重縮合等により得られたものを用いることができる。
上記ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸(2,6−ナフタレンジカルボン酸等)、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルメタンジカルボン酸、ジフェニルエタンジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸等の炭素数8〜16程度の芳香族ジカルボン酸又はその誘導体等、シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ハイミック酸等の炭素数8〜12程度の脂環式ジカルボン酸又はその誘導体等、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、ダイマー酸等の炭素数2〜40程度の脂肪族ジカルボン酸又はその誘導体等が挙げられる。
【0045】
尚、上記誘導体には、エステル形成可能な誘導体、例えば、ジメチルエステル等の低級アルキルエステル、酸無水物、酸クロライド等の酸ハライド等が含まれる。
これらジカルボン酸成分は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0046】
また、上記ジヒドロキシ成分としては、エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール等の直鎖状又は分岐鎖状の炭素数2〜12程度のアルキレンジオール等の脂肪族アルキレンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA等の脂環族ジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、ジヒドロキシフェニル、ナフタレンジオール、ジヒドロキシジフェニルエーテル、ビスフェノールA、ビスフェノールAに対してエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドが付加した付加体(ジエトキシ化ビスフェノールA等)等の芳香族ジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、ジテトラメチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等のポリオキシアルキレングリコール等が挙げられる。
【0047】
尚、上記ジヒドロキシ成分は、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン等の置換体であってもよい。
これらジヒドロキシ成分は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0048】
上記オキシカルボン酸成分としては、オキシ安息香酸、オキシナフトエ酸、ジフェニレンオキシカルボン酸等のオキシカルボン酸及びその誘導体等が挙げられる。
これらオキシカルボン酸成分は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0049】
上記ラクトン成分としては、プロピオラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン、ε−カプロラクトン等が挙げられる。
これらラクトン酸成分は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0050】
また、上記ポリエステル系樹脂が共重合ポリエステルである場合、その形成に用いられる共重合可能な単量体としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール等の直鎖状アルキレングリコール等のアルキレングリコール、ジエチレングリコール等のポリ(オキシ−アルキレン)単位を含み、繰り返し数が2〜4程度のオキシアルキレン単位を有するポリオキシアルキレングリコール、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸等の非対称構造の芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。
更に、上記化合物以外に、必要に応じて、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸等の多価カルボン酸、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール等の多官能性単量体を併用してもよい。
【0051】
上記ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート(PPT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサン−1,4−ジメチルテレフタレート、ポリネオペンチルテレフタレート等のポリアルキレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリヘキサメチレンナフタレート等のポリアルキレンナフタレート等の単独重合ポリエステル、アルキレンテレフタレート単位及び/又はアルキレンナフタレート単位を主として含有する共重合ポリエステル、液晶ポリエステル等が挙げられる。これらのうち、ポリブチレンテレフタレートが好ましい。また、これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
1−1−4.ポリカーボネート樹脂
このポリカーボネート樹脂は、主鎖にカーボネート結合を有するものであれば、特に限定されず、芳香族ポリカーボネートでよいし、脂肪族ポリカーボネートでもよい。また、これらを組み合わせて用いてもよい。本発明においては、耐衝撃性、耐熱性等の観点から、芳香族ポリカーボネートが好ましい。尚、このポリカーボネート樹脂は、末端が、R−CO−基、R’−O−CO−基(R及びR’は、いずれも有機基を示す。)に変性されたものであってもよい。このポリカーボネート樹脂は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0053】
上記芳香族ポリカーボネートとしては、芳香族ジヒドロキシ化合物及び炭酸ジエステルを溶融によりエステル交換(エステル交換反応)して得られたもの、ホスゲンを用いた界面重縮合法により得られたもの、ピリジンとホスゲンとの反応生成物を用いたピリジン法により得られたもの等を用いることができる。
【0054】
芳香族ジヒドロキシ化合物としては、分子内にヒドロキシル基を2つ有する化合物であればよく、ヒドロキノン、レゾルシノール等のジヒドロキシベンゼン、4,4’−ビフェノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、「ビスフェノールA」という。)、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3、5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、9,9−ビス(p−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(p−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、ビス(p−ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(p−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)エステル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(p−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルフィド、ビス(p−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)スルホキシド等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0055】
上記芳香族ジヒドロキシ化合物のうち、2つのベンゼン環の間に炭化水素基を有する化合物が好ましい。尚、この化合物において、炭化水素基は、ハロゲン置換された炭化水素基であってもよい。また、ベンゼン環は、そのベンゼン環に含まれる水素原子がハロゲン原子に置換されたものであってもよい。従って、上記化合物としては、ビスフェノールA、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3、5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ブタン等が挙げられる。これらのうち、特に、ビスフェノールAが好ましい。
【0056】
芳香族ポリカーボネートをエステル交換反応により得るために用いる炭酸ジエステルとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−tert−ブチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0057】
上記ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、溶媒として塩化メチレンを用い、温度20℃で測定された溶液粘度より換算した場合、好ましくは12,000〜40,000、より好ましくは14,000〜30,000、特に好ましくは16,000〜26,000である。この粘度平均分子量が高すぎると、流動性が十分でなく、成形加工性が低下する場合がある。一方、低すぎると、耐衝撃性、靭性及び耐薬品性が十分でない場合がある。
上記ポリカーボネート樹脂は、全体としての粘度平均分子量が上記範囲に入るものであれば、異なる粘度平均分子量を有するポリカーボネート樹脂の2種以上を混合して用いてもよい。
【0058】
上記ポリカーボネート樹脂は、上述のように、ゴム強化樹脂(好ましくはABS樹脂)と、あるいは、ポリエステル系樹脂と、あるいは、ゴム強化樹脂及びポリエステル系樹脂と組み合わせて、アロイとして用いることもできる。上記アロイを構成する成分の含有割合は、特に限定されない。
【0059】
1−2.メタリック顔料〔B〕
このメタリック顔料〔B〕は、成形品表面に光輝性模様を形成することができるものであれば、特に限定されず、金属、合金、酸化物、窒化物、炭化物、硫化物、ガラス等からなるもの;金属粒子、金属箔又はガラスフレークの表面を、金属、合金等により被覆したもの;無機化合物粒子又は高分子粒子をコア部とし、金属、合金等からなるシェル部とした複合物であってもよい。
【0060】
上記金属としては、Ni、Al、Ag、Cu、Cr、Zn、Sn、Pb、Co、Fe、Mo、Mn、W、Au、Ti、Sb、Si、Pt、Mg等が挙げられる。上記合金としては、これらの金属元素の2種以上を含む化合物が挙げられる。また、上記の酸化物、窒化物、炭化物、硫化物は、上記金属元素を含む化合物が挙げられる。
上記メタリック顔料〔B〕の具体例としては、アルミニウム箔、ガラスフレーク等の表面に金属被覆を施してなるメタリック顔料;ウェルド外観を改良するために使用されている球状のアルミニウム顔料;パール調メタリック顔料用のマイカ粉;ブロンズ色調を得るための銅粉及び真鍮粉;ガラス等からなる多面体粒子に、メッキ、スパッタリング等により金属被覆したもの等が挙げられる。
【0061】
上記メタリック顔料〔B〕の形状は、特に制限されず、球状、略球状、多面体、板状(扁平形状)、線状等とすることができる。本発明の組成物を用いて成形品とする際に、溶融した組成物の流れにより、上記メタリック顔料〔B〕が規則的配向を示さないものとするために、粒径の大きなものを用いることが好ましい。従って、上記メタリック顔料〔B〕の形状が球状である場合には、平均粒径は、好ましくは10〜500μm、より好ましくは15〜300μmである。板状(扁平形状)である場合には、平均粒径は、好ましくは10〜1,000μm、より好ましくは20〜700μmである。また、径/厚さ比は、好ましくは1/100〜1/15である。
【0062】
本発明においては、上記例示したメタリック顔料における金属光沢面の保護のために、脂肪酸等の有機化合物や、酸化チタン、シリカ等で被覆したものを用いることもできる。尚、メタリック顔料の種類によって、本発明の組成物を含む成形品が呈する色調が異なるため、被覆材料は、所望の色調に応じて、適宜、選択される。また、通常、樹脂に配合される、メタリック顔料でない既存の着色剤と、上記メタリック顔料とを組み合わせ、それぞれの種類及び配合量を、適宜、調整することによって、所望の色調にすることも可能である。
上記着色剤としては、無機顔料、有機顔料、染料等が挙げられる。カラーインデックスに記載された顔料では、無機顔料として酸化チタン、チタンイエロー、酸化鉄系顔料、群青、コバルトブルー、酸化クロム、スピネルグリーン、コロム酸鉛系顔料、カドミウム系顔料が含まれる。また、有機顔料としては、アゾレーキ顔料、ベンゾイミダゾロン顔料、ジアリリド顔料、縮合アゾ系顔料等のアゾ系顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料、キナクリドン顔料、ペリレン顔料、アントラキノン顔料、ペリノン顔料、ジオキサジンバイオレット等の縮合多環系顔料が含まれる。
染料としては、ニトロソ染料、ニトロ染料、アゾ染料、スチルベンアゾ染料、ケトイミン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料、アクリジン染料、キノリン染料、メチン/ポリメチン染料、チアゾール染料、インダミン/インドフェノール染料、アジン染料、オキサジン染料、チアジン染料、硫化染料、アミノケトン/オキシケトン染料、アントラキノン染料、インジゴイド染料、フタロシアニン染料等が挙げられる。
【0063】
本発明の組成物に含有される上記メタリック顔料〔B〕の含有量は、このメタリック顔料〔B〕及び上記含リン化合物〔C〕の合計を100質量%とした場合に、95〜99.95質量%であり、好ましくは97〜99.9質量%、より好ましくは98〜99.9質量%である。
上記メタリック顔料〔B〕の含有量が少なすぎると、本発明の組成物を用いて押出成形により成形品を製造した場合に、鮮明な光輝性模様を発現せず、一方、多すぎると、スジ等が発生し、成形品表面からメタリック顔料〔B〕が脱離し易く、また、優れた生産性をもって成形品及び積層品を製造することができない。
【0064】
1−3.含リン化合物〔C〕
この含リン化合物〔C〕は、少なくとも1つの不飽和二重結合を有する含リン化合物であって、リン酸モノエステル、リン酸ジエステル、ホスホン酸モノエステル及びホスホン酸ジエステルから選ばれた少なくとも1種の化合物である。
【0065】
上記含リン化合物〔C〕としては、下記一般式[1]〜[5]等で表される化合物が挙げられる。
【化1】

(式中、Rは、水素原子又は炭素原子数1〜6の1価の炭化水素基であり、Rは、炭素原子数2〜20の2価の有機基であり、mは、1又は2である。)
【化2】

(式中、Rは、水素原子又は炭素原子数1〜6の1価の炭化水素基であり、Rは、炭素原子数2〜20の2価の有機基であり、Rは、炭素原子数1〜8の1価の有機基である。)
【化3】

(式中、Rは、水素原子又は炭素原子数1〜6の1価の炭化水素基であり、Rは、炭素原子数2〜20の2価の有機基である。)
【化4】

(式中、Rは、水素原子又は炭素原子数1〜6の1価の炭化水素基であり、Rは、炭素原子数2〜20の2価の有機基であり、Rは、水素原子又は炭素原子数1〜8の1価の有機基である。)
【化5】

(式中、Rは、水素原子又は炭素原子数1〜6の1価の炭化水素基であり、Rは、炭素原子数2〜20の2価の有機基である。)
【化6】

(式中、Rは、水素原子又は炭素原子数1〜6の1価の炭化水素基であり、Rは、水素原子又は炭素原子数1〜8の1価の有機基である。)
【0066】
上記リン酸モノエステルは、上記一般式[1]において、m=1のときの化合物である。上記リン酸ジエステルは、上記一般式[1]において、m=2のときの化合物、及び、上記一般式[2]で表される化合物である。
また、上記ホスホン酸モノエステルは、上記一般式[3]で表される化合物、及び、上記一般式[4]において、Rが水素原子であるときの化合物である。上記ホスホン酸ジエステルは、上記一般式[4]において、Rが炭素原子数1〜8の1価の有機基であるときの化合物、上記一般式[5]で表される化合物、及び、上記一般式[6]で表される化合物である。
【0067】
上記一般式[1]〜[6]におけるRは、水素原子又は炭素原子数1〜6の1価の炭化水素基(直鎖状、分岐状及び環状のいずれでもよい)であり、好ましくは水素原子又はメチル基である。
上記一般式[1]〜[5]におけるRは、炭素原子数2〜20の2価の有機基(直鎖状及び分岐状のいずれでもよく、環構造を含んでもよい)であり、アルキレン基、シクロアルキレン基、フェニレン基及びこれらの誘導体(水素原子が、ハロゲン原子、ヒドロキシル基等に置換されたもの等)の少なくとも1つを含むことが好ましい。
上記アルキレン基としては、ジメチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、2−メチルトリメチレン基、3−メチルトリメチレン基等が挙げられる。
上記シクロアルキレン基としては、1,4−シクロへキシレン基、1,3−シクロヘキシレン基等が挙げられる。
【0068】
上記一般式[2]におけるRは、炭素原子数1〜8の1価の有機基であり、通常、炭化水素基(直鎖状及び分岐状のいずれでもよく、環構造を含んでもよい)であり、水素原子が、ハロゲン原子、ヒドロキシル基等に置換されたものでもよい。
上記一般式[4]及び[6]におけるRは、水素原子又は炭素原子数1〜8の1価の有機基であり、有機基である場合には、通常、炭化水素基(直鎖状及び分岐状のいずれでもよく、環構造を含んでもよい)であり、水素原子が、ハロゲン原子、ヒドロキシル基等に置換されたものでもよい。尚、上記一般式[6]における2つのRは、同一であってよいし、異なってもよい。
【0069】
上記一般式[1]において、m=1のときのリン酸モノエステルとしては、2−(メタクリロイルオキシ)エチルホスフェート、2−(アクリロイルオキシ)エチルホスフェート、2−(メタクリロイルオキシ)プロピルホスフェート、2−(アクリロイルオキシ)プロピルホスフェート、[2−(メタクリロイルオキシ)ポリエチレングリコール]ホスフェート、[2−(アクリロイルオキシ)ポリエチレングリコール]ホスフェート、3−クロロ−2−(メタクリロイルオキシ)プロピルホスフェート、3−クロロ−2−(アクリロイルオキシ)プロピルホスフェート等が挙げられる。
【0070】
上記一般式[1]において、m=2のときのリン酸ジエステルとしては、ジ−[2−(メタクリロイルオキシ)エチル]ホスフェート、ジ−[2−(アクリロイルオキシ)エチル]ホスフェート、ジ−[2−(メタクリロイルオキシ)プロピル]ホスフェート、ジ−[2−(アクリロイルオキシ)プロピル]ホスフェート等が挙げられる。
【0071】
上記一般式[4]で表されるホスホン酸モノエステルとしては、2−(メタクリロイルオキシ)エチルホスホネート、2−(アクリロイルオキシ)エチルホスホネート、2−(メタクリロイルオキシ)プロピルホスホネート、2−(アクリロイルオキシ)プロピルホスネート等が挙げられる。
【0072】
上記一般式[5]で表されるホスホン酸ジエステルとしては、ジ−[2−(メタクリロイルオキシ)エチル]ホスホネート、ジ−[2−(アクリロイルオキシ)エチル]ホスホネート、ジ−[2−(メタクリロイルオキシ)プロピル]ホスホネート、ジ−[2−(アクリロイルオキシ)プロピル]ホスホネート等が挙げられる。
また、上記一般式[6]で表されるホスホン酸ジエステルとしては、ビス(2−クロロエチル)ビニルホスホネート等が挙げられる。
【0073】
本発明において、上記含リン化合物〔C〕は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、上記のうち、リン酸モノエステル、リン酸ジエステル及びホスホン酸モノエステルの少なくとも1種を含むことが好ましく、特にリン酸モノエステルを含むことが好ましい。
【0074】
本発明の組成物に含有される上記含リン化合物〔C〕の含有量は、上記メタリック顔料〔B〕及びこの含リン化合物〔C〕の合計を100質量%とした場合に、0.05〜5質量%であり、好ましくは0.1〜3質量%、より好ましくは0.1〜2質量%である。
上記含リン化合物〔C〕の含有量が少なすぎると、本発明の組成物を用いて押出成形により成形品を製造した場合に、表面にスジ等が発生し、表面からメタリック顔料〔B〕が脱離し易く、また、優れた生産性をもって成形品及び積層品を製造することができない。他方、上記含リン化合物〔C〕を、5質量%を超えて含有させても、配合の効果が更に改良されることはなく、また、光輝性外観が低下する。
【0075】
本発明の組成物において、上記メタリック顔料〔B〕及び上記含リン化合物〔C〕の含有量の合計は、上記熱可塑性樹脂〔A〕の量を100質量部とした場合に、0.1〜10質量部であり、好ましくは0.3〜7質量部、より好ましくは0.5〜5質量部、更に好ましくは1〜4質量部である。
上記合計量が少なすぎると、本発明の組成物を用いて押出成形により成形品を製造した場合に、成形品表面の金属光沢を損ない、スジ等が発生し、優れた生産性をもって成形品及び積層品を製造することができない。尚、上記合計量が10質量部を超えても、配合の効果が更に改良されることはない。
【0076】
1−4.添加剤
本発明の組成物は、目的、用途等に応じて、添加剤を含有したものとすることができる。この添加剤としては、充填剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、老化防止剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、抗菌剤、着色剤、蛍光増白剤、蓄光顔料、蛍光染料、光拡散剤、結晶核剤、流動改質剤、衝撃改質剤、赤外線吸収剤、フォトクロミック剤、光触媒系防汚剤、重合開始剤等が挙げられる。
【0077】
上記充填剤としては、タルク、クレー、ワラストナイト、炭酸カルシウム、ガラス繊維、ガラスビーズ、ガラスバルーン、ミルドファイバー、ガラスフレーク、炭素繊維、炭素フレーク、カーボンビーズ、カーボンミルドファイバー、金属フレーク、金属繊維、金属コートガラス繊維、金属コート炭素繊維、金属コートガラスフレーク、シリカ、セラミック粒子、セラミック繊維、アラミド粒子、アラミド繊維、ポリアリレート繊維、グラファイト、導電性カーボンブラック、各種ウィスカー等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記充填剤の含有量は、上記熱可塑性樹脂〔A〕の量を100質量部とした場合に、通常、0.1〜5質量部である。
【0078】
上記熱安定剤としては、ホスファイト類、ヒンダードフェノール類、チオエーテル類等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記熱安定剤の含有量は、上記熱可塑性樹脂〔A〕の量を100質量部とした場合に、通常、0.01〜2質量部である。
【0079】
上記酸化防止剤としては、ヒンダードアミン類、ハイドロキノン類、ヒンダードフェノール類、硫黄含有化合物等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記酸化防止剤の含有量は、上記熱可塑性樹脂〔A〕の量を100質量部とした場合に、通常、0.01〜2質量部である。
【0080】
上記紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、サリチル酸エステル類、金属錯塩類等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、ヒンダードアミン類と併用すると好ましい場合がある。
上記紫外線吸収剤の含有量は、上記熱可塑性樹脂〔A〕の量を100質量部とした場合に、通常、0.05〜2質量部である。
【0081】
上記老化防止剤としては、例えば、ナフチルアミン系化合物、ジフェニルアミン系化合物、p−フェニレンジアミン系化合物、キノリン系化合物、ヒドロキノン誘導体系化合物、モノフェノール系化合物、ビスフェノール系化合物、トリスフェノール系化合物、ポリフェノール系化合物、チオビスフェノール系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、亜リン酸エステル系化合物、イミダゾール系化合物、ジチオカルバミン酸ニッケル塩系化合物、リン酸系化合物等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記老化防止剤の含有量は、上記熱可塑性樹脂〔A〕の量を100質量部とした場合に、通常、0.01〜2質量部である。
【0082】
上記帯電防止剤としては、帯電防止剤としては、低分子型帯電防止剤、高分子型帯電防止剤等が挙げられる。また、これらは、イオン伝導型でもよいし、電子伝導型でもよい。
低分子型帯電防止剤としては、アニオン系帯電防止剤;カチオン系帯電防止剤;非イオン系帯電防止剤;両性系帯電防止剤;錯化合物;アルコキシシラン、アルコキシチタン、アルコキシジルコニウム等の金属アルコキシド及びその誘導体;コーテッドシリカ、リン酸塩、リン酸エステル等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、高分子型帯電防止剤としては、分子内にスルホン酸金属塩を有するビニル共重合体、アルキルスルホン酸金属塩、アルキルベンゼンスルホン酸金属塩、ベタイン等が挙げられる。更に、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー等を用いることもできる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記帯電防止剤の含有量は、上記熱可塑性樹脂〔A〕の量を100質量部とした場合に、通常、0.1〜5質量部である。
【0083】
上記可塑剤としては、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ブチルオクチルフタレート、ジ−(2−エチルヘキシル)フタレート、ジイソオクチルフタレート、ジイソデシルフタレート等のフタル酸エステル類;ジメチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ジ−(2−エチルヘキシル)アジペート、ジイソオクチルアジペート、ジイソデシルアジペート、オクチルデシルアジペート、ジ−(2−エチルヘキシル)アゼレート、ジイソオクチルアゼレート、ジイソブチルアゼレート、ジブチルセバケート、ジ−(2−エチルヘキシル)セバケート、ジイソオクチルセバケート等の脂肪酸エステル類;トリメリット酸イソデシルエステル、トリメリット酸オクチルエステル、トリメリット酸n−オクチルエステル、トリメリット酸系イソノニルエステル等のトリメリット酸エステル類;ジ−(2−エチルヘキシル)フマレート、ジエチレングリコールモノオレート、グリセリルモノリシノレート、トリラウリルホスフェート、トリステアリルホスフェート、トリ−(2−エチルヘキシル)ホスフェート、エポキシ化大豆油、ポリエーテルエステル等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記可塑剤の含有量は、上記熱可塑性樹脂〔A〕の量を100質量部とした場合に、通常、0.5〜5質量部である。
【0084】
上記滑剤としては、脂肪酸エステル、炭化水素樹脂、パラフィン、高級脂肪酸、オキシ脂肪酸、脂肪酸アミド、アルキレンビス脂肪酸アミド、脂肪族ケトン、脂肪酸低級アルコールエステル、脂肪酸多価アルコールエステル、脂肪酸ポリグリコールエステル、脂肪族アルコール、多価アルコール、ポリグリコール、ポリグリセロール、金属石鹸、シリコーン、変性シリコーン等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記滑剤の含有量は、上記熱可塑性樹脂〔A〕の量を100質量部とした場合に、通常、0.5〜5質量部である。
【0085】
上記難燃剤としては、有機系難燃剤、無機系難燃剤、反応系難燃剤等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
有機系難燃剤としては、臭素化エポキシ系化合物、臭素化アルキルトリアジン化合物、臭素化ビスフェノール系エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノール系フェノキシ樹脂、臭素化ビスフェノール系ポリカーボネート樹脂、臭素化ポリスチレン樹脂、臭素化架橋ポリスチレン樹脂、臭素化ビスフェノールシアヌレート樹脂、臭素化ポリフェニレンエーテル、デカブロモジフェニルオキサイド、テトラブロモビスフェノールA及びそのオリゴマー等のハロゲン系難燃剤;トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリプロピルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トキヘキシルホスフェート、トリシクロヘキシルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジクレジルフェニルホスフェート、ジメチルエチルホスフェート、メチルジブチルホスフェート、エチルジプロピルホスフェート、ヒドロキシフェニルジフェニルホスフェート等のリン酸エステルやこれらを各種置換基で変性した化合物、各種の縮合型のリン酸エステル化合物、リン元素及び窒素元素を含むホスファゼン誘導体等のリン系難燃剤;ポリテトラフルオロエチレン、グアニジン塩、シリコーン系化合物、ホスファゼン系化合物等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0086】
無機系難燃剤としては、水酸化アルミニウム、酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、ジルコニウム系化合物、モリブデン系化合物、スズ酸亜鉛等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
反応系難燃剤としては、テトラブロモビスフェノールA、ジブロモフェノールグリシジルエーテル、臭素化芳香族トリアジン、トリブロモフェノール、テトラブロモフタレート、テトラクロロ無水フタル酸、ジブロモネオペンチルグリコール、ポリ(ペンタブロモベンジルポリアクリレート)、クロレンド酸(ヘット酸)、無水クロレンド酸(無水ヘット酸)、臭素化フェノールグリシジルエーテル、ジブロモクレジルグリシジルエーテル等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0087】
上記難燃剤の含有量は、上記熱可塑性樹脂〔A〕の量を100質量部とした場合に、通常、0.5〜30質量部である。
尚、本発明の組成物に難燃剤を含有させる場合には、難燃助剤を用いることが好ましい。この難燃助剤としては、三酸化二アンチモン、四酸化二アンチモン、五酸化二アンチモン、アンチモン酸ナトリウム、酒石酸アンチモン等のアンチモン化合物や、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、水和アルミナ、酸化ジルコニウム、ポリリン酸アンモニウム、酸化スズ、酸化鉄等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0088】
上記抗菌剤としては、銀系ゼオライト、銀−亜鉛系ゼオライト等のゼオライト系抗菌剤、錯体化銀−シリカゲル等のシリカゲル系抗菌剤、ガラス系抗菌剤、リン酸カルシウム系抗菌剤、リン酸ジルコニウム系抗菌剤、銀−ケイ酸アルミン酸マグネシウム等のケイ酸塩系抗菌剤、酸化チタン系抗菌剤、セラミック系抗菌剤、ウィスカー系抗菌剤等の無機系抗菌剤;ホルムアルデヒド放出剤、ハロゲン化芳香族化合物、ロードプロパルギル誘導体、チオシアナト化合物、イソチアゾリノン誘導体、トリハロメチルチオ化合物、第四アンモニウム塩、ビグアニド化合物、アルデヒド類、フェノール類、ピリジンオキシド、カルバニリド、ジフェニルエーテル、カルボン酸、有機金属化合物等の有機系抗菌剤;無機・有機ハイブリッド抗菌剤;天然抗菌剤等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記抗菌剤の含有量は、上記熱可塑性樹脂〔A〕の量を100質量部とした場合に、通常、0.1〜5質量部である。
【0089】
上記着色剤としては、上記メタリック顔料〔B〕の発する色が干渉により減衰したときの色と、補色の関係にあるものであれば、無機顔料、有機顔料及び染料のいずれを用いてもよい。また、これらを組み合わせて用いてもよい。
無機顔料としては、亜鉛華、二酸化チタン、べんがら、酸化クロム、鉄黒等の酸化物、カドミウムイエロー、カドミウムオレンジ、カドミウムレッド等の硫化物、黄鉛、亜鉛黄、クロムバーミリオン等のクロム酸塩、紺青等のフェロシアン化物、群青等の珪酸塩、カーボンブラック、金属粉等の無機系色剤が挙げられる。
有機顔料としては、フタロシアニン系顔料、縮合アゾ系顔料、アゾレーキ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、縮合多環系顔料等が挙げられる。
染料としては、アントラキノン系染料、ペリレン系染料、ペリノン系染料、キノリン系染料、ニトロ系染料、ニトロソ系染料、アゾ系染料、トリフェニル系染料、チアゾール系染料、メチン系染料、オキサジン系染料、インドフェノール系染料、ケトン系染料、チアジン系染料、インジゴ系染料等が挙げられる。
これらの着色剤を用いると、光学的な変化をより強調することが可能となると共に、より高度な意匠性を達成することができる。特に、色調の変化を容易に向上させることができる、染料、有機顔料、粒子径の小さい顔料(カーボンブラック等)等が好ましい。
上記着色剤の含有量は、上記熱可塑性樹脂〔A〕の量を100質量部とした場合に、通常、10質量部以下、好ましくは0.0005〜5質量部、より好ましくは0.001〜2質量部である。10質量部を超えると、成形品表面に光輝性模様が十分に形成されず、また、熱可塑性樹脂〔A〕本来の特性を損ねることがある。
【0090】
上記光拡散剤としては、アクリル架橋粒子、シリコーン架橋粒子、極薄ガラスフレーク、炭酸カルシウム粒子等が挙げられる。
上記光触媒系防汚剤としては、微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛等が挙げられる。
上記衝撃改質剤としては、グラフトゴム等が挙げられる。
上記重合開始剤としては、上記熱可塑性樹脂〔A〕に含まれるゴム強化ビニル系樹脂(A1)の製造に用いられる重合開始剤が挙げられる。この重合開始剤の含有量は、上記含リン化合物〔C〕の量を100質量部とした場合に、通常、0.1〜50質量部である。
【0091】
1−5.組成物の製造方法
本発明の組成物は、原料成分を、押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール、フィーダールーダー等に供給し、混練することにより製造することができるが、好ましい製造方法は、まず、上記メタリック顔料〔B〕と、上記含リン化合物〔C〕とを、タンブラー、リボンブレンダー、高速ミキサー等を用いて混合し、その後、この混合物と、上記熱可塑性樹脂〔A〕とを、混練する方法である。
尚、混練温度は、上記熱可塑性樹脂〔A〕の種類により選択されるが、例えば、ABS樹脂を用いる場合、通常、180〜280℃であり、AES樹脂を用いる場合、通常、180〜280℃であり、ASA樹脂を用いる場合、通常、180〜280℃である。また、スチレン系(共)重合体を用いる場合、通常、180〜280℃である。
更に、ポリカーボネート樹脂を用いる場合、通常、210〜310℃であり、ABS樹脂及びポリカーボネート樹脂からなるアロイを用いる場合、通常、210〜280℃であり、ポリエステル系樹脂を用いる場合、通常、240〜300℃である。
本発明の組成物は、上記熱可塑性樹脂〔A〕をマトリックスとして、上記のメタリック顔料〔B〕及び含リン化合物〔C〕が均一に分散している。上記のように、予め、上記メタリック顔料〔B〕と、上記含リン化合物〔C〕とを混合して、その後、上記熱可塑性樹脂〔A〕と混練することにより得られた組成物は、上記のメタリック顔料〔B〕及び含リン化合物〔C〕の親和性が高く、メタリック顔料〔B〕粒子の表面の少なくとも一部に上記含リン化合物〔C〕が被覆していると考えられ、結果として、上記熱可塑性樹脂〔A〕中におけるこのメタリック顔料〔B〕の分散性も向上するものと考えられる。従って、本発明の組成物を押出加工する場合には、サイジングダイに減圧用の溝等があっても、そこにメタリック顔料〔B〕が沈降して堆積することがないため、得られる成形品の表面にスジ、ムラ等の不良現象が発現することなく、また、上記メタリック顔料〔B〕が表面から脱離することもなく、鮮明な光輝性模様を有する成形品を得ることができる。
【0092】
2.成形品
本発明の成形品は、上記本発明の組成物を押出成形してなることを特徴とする。即ち、本発明の成形品は、上記本発明の組成物を含む。
【0093】
本発明の成形品は、表面が光輝性模様を有することから、シート押出、パイプ押出、Tダイ押出、異形押出、インフレーション、カレンダー等により製造される、土木・建設関連資材;車両用内外装関連資材;日用雑貨用品;電気・電子部品;スポーツ用品;壁、床、枠、家具、化粧シート、ラティス、フェンス、雨樋、サイジングボード等の住宅・事務所用内外装材;玩具等に好適である。
従って、本発明の成形品の形状は、目的、用途に応じて選択され、平板状体(フィルム、シート等)、筒状体、半筒状体等の長尺物;異形物等とすることができる。この長尺物の概略断面を図4〜図9に例示する。
また、本発明の成形品が、平板状体である場合、その形状、厚さ等によらず、また、他の部材へ接合、巻き付け等を行った場合であっても、上記メタリック顔料〔B〕の脱離がなく、鮮明な光輝性模様を保持する。
【0094】
本発明の成形品が平板状体である場合、この平板状体の厚さは、通常、0.5〜15mmである。
また、本発明の成形品が筒状体又は半筒状体である場合、その肉厚は、通常、0.5〜30mmである。
本発明の成形品は、必要に応じて、コロナ放電処理、火炎処理、酸化処理、プラズマ処理、UV処理、イオンボンバード処理、電子線処理、溶剤処理、アンカーコート処理等の処理がなされていてもよい。上記処理をした場合には、印刷適性;粘着層又は接着層を形成する場合の粘着剤又は接着剤との密着性;プライマー層等を配設する場合の接着性等を向上させることができる。
更に、本発明の成形品は、用途によっては、本発明の成形品を、他の成形品、部材等と一体化させ、複合化させてなる物品として、これを用いることもできる。
【0095】
3.積層品
本発明の積層品は、上記本発明の組成物を押出成形してなる層(以下、「層[X]」という。)と、他の材料からなる層(以下、「層[Y]」という。)とが積層してなることを特徴とする。
本発明の積層品は、上記本発明の成形品と同じ用途に好適である。その形状も上記本発明の成形品と同じとすることができ、長尺物である場合には、図4〜図9に例示した概略断面を有するものとすることができる。
【0096】
上記層[Y]を構成する他の材料は、上記本発明の組成物を除くものであれば、特に限定されず、樹脂(組成物)からなるもの、他の有機材料からなるもの、無機材料からなるもの等が挙げられる。
樹脂(組成物)は、熱可塑性樹脂(組成物)であってよいし、硬化樹脂(組成物)であってもよい。熱可塑性樹脂(組成物)である場合には、上記本発明の押出成形用樹脂組成物と異なる熱可塑性樹脂組成物(以下、「熱可塑性樹脂組成物(N)」という。)である。この熱可塑性樹脂組成物(N)に含まれる熱可塑性樹脂としては、本発明の積層品の用途等により選択されるが、上記本発明の押出成形用樹脂組成物と同じ樹脂であってよいし、異なる樹脂であってもよい。
無機材料は、金属、合金、酸化物、炭化物、窒化物、金属塩等が挙げられる。
尚、本発明の積層品において、上記層[Y]の層数は、1層でも、2層でも、3層以上でもよいし、上記層[X]の両面に備えてもよい(図1〜図3参照)。
【0097】
本発明の積層品が、例えば、図1のような断面構造を有する(層[X]11と、その表面の層[Y]12とを備える)積層品1であって、図1の上方から層[X]11の表面における光輝性模様を認識する態様である場合、層[Y]12は、透明性を有する熱可塑性樹脂組成物(N)からなることが好ましい。このような性質を有することで、成形体表面に発現される光輝性模様を不鮮明とすることがなく、また、上記層[X]11の表面を保護することができる。尚、この層[Y]12は、層[X]11の全面にあってよいし、一部にあってもよい。また、層[X]11及び層[Y]12の各厚さは、特に限定されない。更に、積層品として、均一の厚さであってよいし、部分的に異なる厚さであってもよい。
上記熱可塑性樹脂組成物(N)としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の塩化ビニル系樹脂;ポリカーボネート樹脂;ASA樹脂;ポリスチレン、ポリスルホン等を含む組成物が挙げられる。各種添加剤が配合されたものであってもよい。尚、上記の場合、上記層[Y]12は、透明性を損なわない程度に着色されていてもよく、2層以上であってもよい。また、この態様における上記の層[X]11及び層[Y]12の好ましい厚さは、それぞれ、0.1〜15mm、及び、0.1〜1mmである。
上記態様の積層品の製造方法としては、上記本発明の組成物を用いて層[X]11を形成した後、別途、作製した層[Y]12を配設する方法;上記本発明の組成物と、上記層[Y]12を形成することとなる熱可塑性樹脂組成物(N)とを用いて、共押出する方法;予め形成した層[Y]12の表面に、上記本発明の組成物を用いて得られた層[X]11を配設する方法等が挙げられる。
【0098】
また、本発明の積層品が、例えば、図2のような断面構造を有する(層[Y]12と、その表面の層[X]11とを備える)積層品1’であって、図2の上方から光輝性模様を認識する態様である場合、上記層[Y]を構成する材料は、透明性を与える組成物であってよいし、与えない組成物であってもよい。尚、この層[X]11は、層[Y]12の全面にあってよいし、一部にあってもよい。また、層[X]11及び層[Y]12の各厚さは、特に限定されない。更に、積層品として、均一の厚さであってよいし、部分的に異なる厚さであってもよい。
【0099】
図2で示される積層品1’が、粘着用フィルム(粘着用シート)又は接着用フィルム(接着用シート)である場合には、層[Y]12は、粘着層又は接着層である。
上記層[Y]12が粘着層である場合、層[X]11及び層[Y]12(粘着層)の好ましい厚さは、それぞれ、0.1〜15mm、及び、0.02〜0.1mmである。また、上記層[Y]12(粘着層)を形成する粘着剤組成物としては、スクリーン法、グラビア法、メッシュ法、バー塗工法等で塗工するエマルジョン型組成物;有機溶剤型組成物;押出ラミネート法、ドライラミネート法、共押出法等で形成する熱溶融型組成物等があり、いずれも用いることができる。例えば、公知のアクリル系重合体、ジエン系重合体、水素添加ジエン系重合体等を含む組成物を用いることができる。尚、上記層[X]11と、上記粘着剤組成物との接着性を向上させるために、上記層[Y]12の形成前に、上記層[X]11に直接、又は、上記層[X]11の表面に、コロナ処理等を行ってよいし、アンカーコート層を形成してもよい。アンカーコート層とする場合には、ポリエチレンイミン、ポリウレタン、ポリエステル又はアクリル樹脂が用いられ、厚さが0.1〜5μm程度の層である。尚、上記アンカーコート層は、水性溶液又は溶剤溶液として塗布し、乾燥することにより形成することができる。上記層[Y]12(粘着層)の形成後、この層を保護するために、保護層として、通常、剥離紙等を配設してもよい。
【0100】
更に、上記層[Y]12が接着層である場合、層[X]11及び層[Y]12(接着層)の好ましい厚さは、それぞれ、0.1〜15mm、及び、0.02〜0.1mmである。また、上記層[Y]12(接着層)を形成する接着剤組成物としては、公知のエポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル系樹脂等を含む組成物を用いることができる。尚、上記層[Y]12(接着層)の形成後、本発明の積層品をすぐに使用しない場合には、接着が発現しない状態としておく必要がある。
更に、上記層[Y]12が粘着層又は接着層である場合、通常、その表面に、更に剥離紙等が配設される。
【0101】
図2で示される積層品1’が、層[Y]12によって補強されたものである場合、又は、層[Y]12を加飾するものである場合、換言すれば、層[Y]12を支持層とした積層品である場合、上記層[Y]12を構成する材料としては、熱可塑性樹脂(組成物)及び硬化樹脂(組成物)のいずれでもよいが、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の塩化ビニル系樹脂;ポリカーボネート樹脂;ASA樹脂;ポリスチレン、ポリスルホン等から選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含有する熱可塑性樹脂組成物(N)であることが好ましい。各種添加剤が配合されたものであってもよい。尚、この場合の層[X]11及び層[Y]12の好ましい厚さは、それぞれ、0.1〜15mm、及び、0.1〜15mmである。
【0102】
上記層[X]11が、上記熱可塑性樹脂組成物(N)を含む層[Y]12を支持層とする態様の積層品1’の製造方法としては、上記本発明の組成物を用いて層[X]11を形成した後、層[Y]12を配設する方法;上記本発明の組成物と、上記層[Y]12を形成することとなる熱可塑性樹脂組成物(N)とを用いて、共押出する方法;予め形成した層[Y]12の表面に、上記本発明の組成物を用いて得られた層[X]11を配設する方法等が挙げられる。
【0103】
本発明の積層品は、更に、図3のような断面構造を備える積層品(図3の上方及び/又は下方から光輝性模様を認識する態様)とすることができる。即ち、図3の積層品1"は、層[X]11の両面に層[Y]12a及び12bを備える。
図3の態様の場合、例えば、層[Y]12aが、透明性を有し、層[Y]12bを支持層とした積層品とすることができる。また、層[Y]12aが、透明性を有し、層[Y]12bを粘着層又は接着層とした積層品とすることもできる。
【0104】
本発明の積層品1"が、透明性を有する層[Y]12aと、上記本発明の組成物を用いて得られた層[X]11と、層[Y]12b(支持層)とを備える態様である場合、その製造方法としては、各層を個別に作製した後、積層する方法;予め、層[X]11を作製した後、層[Y]12a及び12bを、同時に又は別々に形成する方法;各層を形成する組成物を共押出する方法等が挙げられる。
【0105】
本発明の積層品1"が、透明性を有する層[Y]12aと、上記本発明の組成物を用いて得られた層[X]11と、層[Y]12b(粘着層又は接着層)とを備える態様である場合、その製造方法としては、層[X]11及び層[Y]12aを個別に作製した後、積層し、次いで、層[Y]12bを形成する方法;予め、層[X]11を作製した後、層[Y]12a及び12bを、同時に又は別々に形成する方法;層[X]11及び層[Y]12aを形成する組成物を共押出した後、層[Y]12bを形成する方法等が挙げられる。
尚、上記層[Y]12bが粘着層又は接着層である場合、通常、その表面に、更に剥離紙等が配設される。
【実施例】
【0106】
以下に、実施例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明の主旨を超えない限り、本発明はかかる実施例に限定されるものではない、尚、下記において、部及び%は、特に断らない限り、質量基準である。
【0107】
1.評価項目及びその測定方法
1−1.成形性
押出成形用樹脂組成物からなるペレットを、80℃で24時間乾燥した後、Tダイ(スリットのサイズ;45mm×2mm)及び真空サイジングダイを取り付けたφ50mmの単軸押出機(「GT−50−A」、プラスチック光学研究所製)に導入し、下記条件で、幅40mm、厚さ1.5mmのシートを成形した。Tダイから出てきたシート表面にスジが5本出始めるまでの時間を目視観察し、下記判定基準で評価した。
<成形条件>
(1)シリンダー温度
押出成形用樹脂組成物に含有される熱可塑性樹脂の種類によって選択した。
ASA樹脂;200℃
ABS樹脂;200℃
AES樹脂;200℃
AS樹脂;180℃
PC樹脂;240℃
PBT樹脂;270℃
PC/ABS樹脂;240℃
(2)Tダイ温度;220℃
<判定基準>
◎:成形開始から5時間以上たってもスジが出なかった
○:成形開始から2時間以上5時間未満の間にスジが出た
×:成形開始から2時間までにスジが出た
【0108】
1−2.耐摩耗性
東洋精機社製クロスカット試験機を用い、荷重400gでガーゼを100回往復した後、ガーゼ表面を目視観察し、下記判定基準で評価した。
◎:ガーゼにメタリック顔料が付着していなかった
○:ガーゼにメタリック顔料がわずかに付着していた
×:ガーゼにメタリック顔料が多量に付着していた
【0109】
1−3.外観性
上記1−1により得られたシートの表面を目視観察し、下記判定基準で評価した。
○:光輝性模様が鮮明であった
×:光輝性模様がくすんでいた、又は、不鮮明であった
【0110】
2.樹脂組成物の原料成分
2−1.熱可塑性樹脂〔A〕
(1)A−1
テクノポリマー社製ASA樹脂「テクノASA AR74」(商品名)を用いた。
(2)A−2
テクノポリマー社製ABS樹脂「テクノABS 600」(商品名)を用いた。
(3)A−3
テクノポリマー社製AES樹脂「テクノAES W270」(商品名)を用いた。
(4)A−4
三菱エンジニアリングプラスチックス社製PC樹脂「ノバレックス7022A」(商品名)を用いた。
(5)A−5
三菱エンジニアリングプラスチックス社製PBT樹脂「ノバデュラン5020」(商品名)を用いた。
(6)A−6
テクノポリマー社製AS樹脂「サンレックスSAN−C」(商品名)を用いた。
(7)A−7
テクノポリマー社製PC/ABSアロイ「エクセロイCK20」(商品名)を用いた。
【0111】
2−2.メタリック顔料〔B〕
大和金属粉社製アルミニウム粉(平均粒径35〜50μm)を用いた。
【0112】
2−3.含リン化合物〔C〕
城北化学工業社製モノ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)ホスフェート「JAMP−514」(商品名)を用いた。
【化7】

【0113】
3.押出成形用樹脂組成物の製造並びに成形品及び積層品の評価
3−1.複合体の作製
製造例1
上記メタリック顔料〔B〕99.93部をヘンシェルミキサーに仕込み、100rpmで撹拌した。その5分後、上記含リン化合物〔C〕0.07部を1分かけて添加し、更に5分間撹拌混合し、複合体P−1を得た(表1参照)。
【0114】
製造例2〜6
上記のメタリック顔料〔B〕及び含リン化合物〔C〕を表1に示す割合で用いた以外は、製造例1と同様にして複合体P−2〜P−6を得た(表1参照)。
【0115】
【表1】

【0116】
3−2.押出成形用樹脂組成物の製造並びに成形品の製造及び評価
実施例1〜10及び比較例1〜4
熱可塑性樹脂A−1等と、表1に示す複合体P−1等とを、表2に示す割合でタンブラーに投入して予備混合した。その後、2軸同方向スクリュー回転型2軸押出機(「TEM35」、東芝機械社製、L/D=47.6(D=37mmφ))に供給し、下記条件で、溶融混練を行った。次いで、先端ノズルからストランド状にポリマーを排出(押出速度;60kg/hr)し、水冷、カッティングを行い、ペレットを作製した。
その後、得られたペレットを用い、上記評価項目に関する試験を行った。その結果を表2に示した。
<混練条件>
シリンダー温度は、押出成形用樹脂組成物に含有される熱可塑性樹脂の種類によって選択した。
ASA樹脂;220℃
ABS樹脂;220℃
AES樹脂;220℃
AS樹脂;220℃
PC樹脂;260℃
PBT樹脂;270℃
PC/ABS樹脂;240℃
【0117】
【表2】

【0118】
表2から明らかなように、比較例1、3及び4は、含リン化合物の含有量が少ない例であり、いずれも、成形性及び耐摩耗性に劣っていた。比較例2は、含リン化合物の含有量が多すぎる例であり、外観性に劣っていた。
一方、実施例1〜10は、いずれも、成形性及び耐摩耗性に優れ、表面の光輝性模様も鮮明であった。
【0119】
3−3.積層品の製造及び評価
実施例11
上記実施例2で得られた樹脂組成物と、下記塩化ビニル樹脂組成物(支持層形成用組成物)とを、それぞれ、20mmφ押出機(シリンダー設定温度200℃)及び40mmφ押出機(シリンダー設定温度170℃)に供給し、各押出機のスクリュー回転数及び引取速度を適宜、調節することで共押出し、各層の厚さが、それぞれ、0.2mm及び2.3mmである2層型積層シートを製造した。
この2層型積層シートについて、成形性、耐摩耗性及び外観性の評価を、上記と同様にして行ったところ、成形性「◎」、耐摩耗性「◎」及び外観性「○」の結果を得た。
<塩化ビニル樹脂組成物の組成>(単位;部)
ポリ塩化ビニル(分子量1000) 100
ポリメタクリル酸メチル(分子量200万) 2
強化剤(アクリル系ゴム) 4
炭酸カルシウム 10
安定剤(Ca/Zn、ワンパック品) 4.2
【0120】
実施例12
支持層形成用組成物として、塩化ビニル樹脂組成物に代えて、上記熱可塑性樹脂A−2を用いた以外は、実施例11と同様にして、2層型積層シートを製造し、評価したところ、成形性「◎」、耐摩耗性「◎」及び外観性「○」の結果を得た。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明の押出成形用樹脂組成物は、押出成形による製造に好適である。従って、これを用いて、特に、長尺状の成形品及び積層品を、優れた生産性をもって製造することができる。例えば、土木・建設関連資材;車両用内外装関連資材;日用雑貨用品;電気・電子部品;スポーツ用品;壁、床、枠、家具、化粧シート、ラティス、フェンス、雨樋、サイジングボード等の住宅・事務所用内外装材;玩具等に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】本発明の積層品(積層シート等)の断面構造の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の積層品(積層シート等)の断面構造の他の例を示す概略図である。
【図3】本発明の積層品(積層シート等)の断面構造の他の例を示す概略図である。
【図4】本発明の成形品及び積層品の断面形状の一例を示す概略図である。
【図5】本発明の成形品及び積層品の断面形状の他の例を示す概略図である。
【図6】本発明の成形品及び積層品の断面形状の他の例を示す概略図である。
【図7】本発明の成形品及び積層品の断面形状の他の例を示す概略図である。
【図8】本発明の成形品及び積層品の断面形状の他の例を示す概略図である。
【図9】本発明の成形品及び積層品の断面形状の他の例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0123】
1,1’及び1";積層品
11;層[X](本発明の組成物を押出成形してなる層)
12,12a及び12b;層[Y](他の材料からなる層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
〔A〕熱可塑性樹脂と、〔B〕メタリック顔料と、〔C〕不飽和二重結合を有する含リン化合物と、を含有する押出成形用樹脂組成物であって、
上記含リン化合物〔C〕が、リン酸モノエステル、リン酸ジエステル、ホスホン酸モノエステル及びホスホン酸ジエステルから選ばれた少なくとも1種の化合物であり、
上記メタリック顔料〔B〕及び上記含リン化合物〔C〕の含有割合が、これらの合計を100質量%とした場合に、それぞれ、95〜99.95質量%及び0.05〜5質量%であり、且つ、
上記メタリック顔料〔B〕及び上記含リン化合物〔C〕の含有量の合計が、上記熱可塑性樹脂〔A〕の量を100質量部とした場合に、0.1〜10質量部であることを特徴とする押出成形用樹脂組成物。
【請求項2】
上記熱可塑性樹脂〔A〕が、ゴム質重合体の存在下に、芳香族ビニル化合物を含むビニル系単量体を重合して得られたゴム強化ビニル系樹脂(A1)、又は、該ゴム強化ビニル系樹脂(A1)とビニル系単量体の(共)重合体(A2)との混合物、からなるゴム強化樹脂を含む請求項1に記載の押出成形用樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の押出成形用樹脂組成物を押出成形してなることを特徴とする成形品。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の押出成形用樹脂組成物を押出成形してなる層と、他の材料からなる層とが積層されていることを特徴とする積層品。
【請求項5】
上記他の材料が、請求項1又は2に記載の押出成形用樹脂組成物と異なる熱可塑性樹脂組成物である請求項4に記載の積層品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−106154(P2008−106154A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−290537(P2006−290537)
【出願日】平成18年10月25日(2006.10.25)
【出願人】(396021575)テクノポリマー株式会社 (278)
【Fターム(参考)】