説明

押出成形装置

【課題】反りや歪み等の変形を生じさせることなく,強度に優れた成形体を生産性を低下させることなく製造する押出成形装置を提供する。
【解決手段】スクリュ式の押出機12により押し出された成形生地25aを冷却固化して成形する成形ダイ30間に,押出ダイ20を配置し,この押出ダイ20で押出機12によって押し出された前記成形生地25aの溶融状態を維持しながら前記成形ダイに導入する。押出ダイ20内に形成された空間21内には,成形生地に流動抵抗を与える抵抗体26を配置し,該抵抗体26の外周と前記押出ダイ内周間の間隔を前記成形生地の流路21aと成すと共に,前記抵抗体26の前記押出機12側の端部に,前記成形生地25aの押出方向に対して直交方向を成す端面261aを設け,押出ダイ20内を流れる成形生地を前記端面と衝突させて攪拌し,これにより成形生地の流れを成形ダイに導入する前に均一化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,押出成形装置に関し,例えば熱可塑性樹脂と木粉とを主成分とした押出成形材料のように,溶融状態にある成形生地の状態で押出機や成形ダイ内での流動抵抗が大きい成形材料の押出成形に使用するに適した押出成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂と木粉を共に溶融混練して得た成形生地を所望の形状に成形して得られる成形体(木質成形体)は,各種の用途に使用されており,腐敗し難く長期に亘る使用が可能であることから,例えばコンクリートの成形型枠(所謂「コンパネ」)等として使用されている。
【0003】
この種の木質成形体を押出成形によって製造する際に使用される押出成形装置の一例を示せば図11に示す通りである。
【0004】
この押出成形装置641は,円筒状のバレル643とこのバレル643内部に回転可能に設けられるスクリュ645を備えた押出機642と,前記押出機642のスクリュ645を回転駆動させる駆動源(図示せず)を有すると共に,この押出機642のバレル643に設けた出口643aより押し出された成形生地625aを導入して成形するダイ650を備えている。
【0005】
このような構成の押出成形装置641を用いた木質成形体(板材)の成形は,例えば,木粉,熱可塑性樹脂,顔料,強化剤等の必要な材料を所定の配合比で配合したものを混合原料として押出機のバレル643内に連通するホッパ644内に投入し,このホッパ644を介して成形材料をバレル643内に供給すると共に,駆動源によって回転駆動された押出機のスクリュ645によって混合原料を加熱混練しながらスクリュ645の先端方向に押出し力を与えて圧送し,溶融可塑化した成形生地625aをバレル643の出口643aよりダイ650内に押し出すと共に押出ダイ650内で冷却して固化することにより行われ,これにより押出ダイ650内に形成された成形室650aの断面形状に合致した断面形状の木質成形体を製造することができるようになっている(例えば,特許文献1の図1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−118452号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述のような押出成形装置を使用して成形体を製造する場合,得られた成形体には反りや歪み等の変形が生じ易く,特に成形材料中に木粉やパルプ,タルク等の成形生地の流動性を低下させる充填材が多量に混入されている場合,このような変形は更に生じ易くなる。
【0008】
また,前述のような変形は,板材等のような長尺の成形体において生じ易く,しかも,板厚が増す程顕著に表れる。
【0009】
そのため,前述したように木粉等の充填材を多量に含む木質合成板等の製造において,前述した押出成形装置を使用して比較的肉厚で,長尺の製品を製造することが困難となっており,押出成形によってこのような製品を製造しようとすれば,成形後に製品に生じた反りや歪みを除去するための矯正作業が必要となり,製造工程が増えるためにコスト高となる。
【0010】
しかも,このようにして成形品の変形を矯正したとしても,矯正後の成形体は使用条件によっては経時により反りや歪みが再発する場合があり,また,得られた成形体は機械的強度等においても劣るものとなることから,前述のような反りや歪み等の変形を生じさせることなく,かつ,機械的強度においても優れた成形体の製造が要望される。
【0011】
本発明は,上記従来技術における欠点を解消するためになされたものであり,得られた成形体に反りや歪み等の変形を生じさせることなく,又は,生じ得る変形を実用上問題の無い程度に低減することにより,押出成形後の矯正等の作業を不要とし,しかも強度的に優れた成形体を生産性を低下させることなく製造することができる押出成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以下に,課題を解決するための手段を,発明を実施するための形態における符号を付して記載する。この符号は,特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態の記載との対応を明らかにするためのものであり,言うまでもなく,本願発明の特許請求の範囲の技術的範囲の解釈に制限的に用いられるものではない。
【0013】
上記課題を解決するために,本発明の押出成形装置11は,熱可塑性樹脂を主成分とする成形材料を溶融混練して押し出すスクリュ式の押出機12と,前記押出機12により押し出された成形生地25aを導入し,該導入した成形生地25aを内部に形成された成形室31の内部形状に対応した形状に成形しながら冷却固化する成形ダイ30を備えた押出成形装置11において,
前記押出機12の出口13aと前記成形ダイ30の入口間を連通し,前記押出機12によって押し出された前記成形生地25aの溶融状態を維持しながら前記成形ダイ30に導入する押出ダイ20を設け,
前記押出ダイ20内に形成された空間21内に,該押出ダイ20内を流れる成形生地25aに対し流動抵抗を与える抵抗体26を配置し,前記抵抗体26の外周と前記押出ダイ20の内周間に形成された間隔を前記成形生地の流路21aと成すと共に,
前記抵抗体26の前記押出機12側の端部に,前記成形生地25aの押出方向に対して直交方向を成す端面261aを設けたことを特徴とする(請求項1)。
【0014】
前記構成の押出成形装置11は,前記押出ダイ20の幅方向の断面において,前記押出ダイ20の断面内周形状と前記抵抗体26の断面外周形状を略相似形に形成すると共に,前記抵抗体26を前記押出ダイ20内に形成された前記空間21の中央に配置した構成とすることができる(請求項2)。
【0015】
更に,前記抵抗体26の外周と,前記押出ダイ20の内周間の間隔を,前記押出機12側から前記成形ダイ30側に向かって狭まる形状に形成するものとしても良い(請求項3)。
【0016】
また,前記抵抗体26に対し前記押出機12側に位置する成形生地の流路内に,多数の小孔22aが形成されたブレーカプレート22を配置するものとしても良い(請求項4)。
【0017】
更に,前記抵抗体26は,前記押出機12側の端部から前記成形ダイ30側に向かって,徐々に幅及び高さを拡大する第1テーパ部261と,前記第1テーパ部261の前記成形ダイ30側の端部と同一の一定幅及び一定高さを有する第1平坦部262と,前記第1平坦部262の前記成形ダイ30側の端部に連続して,前記成形ダイ30側に向かって徐々に幅及び高さを減じる第2テーパ部263と,前記第2テーパ部263の前記成形ダイ30側の端部と同一の一定幅及び一定高さを有する第2平坦部264を備えた形状に形成することができる(請求項5)。
【0018】
また,前記成形ダイ30側における前記抵抗体26の上面及び底面(実施形態において第2テーパ部263から第2平坦部264にかけての上面及び底面)に,前記成形生地25aの流れ方向を長さ方向とする溝266を形成するものとしても良い(請求項6)。
【発明の効果】
【0019】
以上説明した本発明の構成により,前述した端面261aを備えた抵抗体26を押出ダイ20内の空間21に配置したことにより,得られた成形体に反りや歪み等の変形が発生することを防止でき,また,成形体の機械的な強度を向上させることができた。
【0020】
前記押出ダイ20の幅方向の断面において,前記押出ダイ20の断面内周形状と前記抵抗体26の断面外周形状を略相似形に形成すると共に,抵抗体26を押出ダイ20の内部中央に配置した構成では,抵抗体26の外周と押出ダイ20の内周間に形成される流路21aの形成幅が周方向に一定の幅となり,流路幅の相違により成形生地に偏りが発生することを防止できた。
【0021】
前記抵抗体26の外周と,前記押出ダイ20の内周間の間隔が,前記押出機12側から前記成形ダイ30側に向かうに従い狭まるように形成したことにより,抵抗体26の上流側における成形生地の圧力の増大により成形生地内における圧力の偏りを均一化できるだけでなく,成形生地内に含まれる各成分乃至は材料の分散状態が流路面積の減少に従って均一化され,例えば成形材料に発泡材を添加することにより成形生地が発泡ガスを含む場合等において,発泡ガスの分散状態を均一化して,発泡ガスの偏在に伴う巣の発生等を好適に防止することができた。
【0022】
前記抵抗体に対し前記押出機側にブレーカプレート22を設けた構成にあっては,抵抗体によって成形生地の流れが均一化される前に,ブレーカプレート22によって成形生地に生じている流れの偏りが緩和される結果,両者の相乗効果によって成形体に生じる変形の発生を更に減少させることができた。
【0023】
更に,前記抵抗体26が,前述した第1テーパ部261と,第1平坦部262と,第2テーパ部263,第2平坦部264を備えた形状としたことにより,成形生地25aの流れをより好適に均一化することができ,特に,発泡材の添加によって発泡成形体を成形する場合であっても,発泡ガスの均一な分散と発泡タイミングを制御して成形体内の気泡以上の大きな巣が発生することを防止することができた。
【0024】
特に,成形ダイ30側における前記抵抗体26の上面及び底面,例えば前記第2テーパ部263から第2平坦部264にかけての上面及び底面に,成形生地25aの流動方向を長手方向とする溝266を形成した構成にあっては,成形体,特に発泡剤を添加して製造される発泡成形体内に巣が発生することを好適に防止することができた。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の押出成形装置の一実施形態を示す概略図。
【図2】押出ダイの(A)は側面断面図,(B)は平面断面図,(C)は(B)のC−C線断面図。
【図3】ブレーカプレートの(A)は正面図,(B)は(A)のB−B線断面図。
【図4】抵抗体の(A)は平面図,(B)は正面図,(C)は背面図,(D)は側面図,(E)は(A)のE−E線断面図。
【図5】抵抗体による成形生地の攪拌の様子を示した模式図。
【図6】ペレット製造装置の概略説明図。
【図7】実施例及び比較例の製造に使用した押出成形装置の押出機から押出ダイに至る部分の概略説明図であり,(A)は実施例1,(B)は実施例2,(C)は比較例1,(D)は比較例2の成形体に使用したものをそれぞれ示す。
【図8】比較試験結果の測定方法の説明図であり,(A)は反りの測定,(B)は曲げ弾性率の測定方法の説明図。
【図9】成形体の変形メカニズムの説明図であり,(A)はスクリュ押出機(異方向回転二軸型)による成形生地の加圧状態の説明図,(B)はバレル出口付近における成形生地の流れの説明図,(C)は成形体の変形原理の説明図。
【図10】ブレーカプレート及び先端が尖った抵抗体を使用した場合の成形生地の流れを説明した模式図であり,(A)はブレーカプレートのみ,(B)は先の尖った抵抗体のみ,(C)はブレーカプレートと先の尖った抵抗体の双方を使用した場合をそれぞれ示す。
【図11】従来の押出成形装置の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に,本発明の実施形態を添付図面を参照しながら説明するが,本発明の押出成形装置を説明する前に,先ず,押出成形によって得られた成形体に変形が発生する原理についての考察と,この考察に基づいて本発明を成すに至る過程で発明者等が試みた対応策について若干の説明を加える。
【0027】
変形の発生原理の考察
押出成形によって得られる成形体に変形が発生する原理を考察するにあたり,発明者等は,まず押出成形に使用するスクリュ押出機の特性に着目した。
【0028】
すなわち,成形体に生じる反りや歪み等の変形は,一軸,二軸いずれのスクリュ押出機を使用した場合においても生じるものであるが,一軸押出機を使用した場合に比較して,二軸押出機を使用した場合にはより明確な規則性を以て反りの発生が確認されており,一例として図9(A)に矢印で示す方向に異方向回転する二軸押出機を使用する場合には,得られた成形体(板材)は,極めて高い確率で長手方向の両端を上方に変位するように反りが生じる〔図9(C)参照〕。
【0029】
これらの事実から,成形体に前述した反りが発生する原因を,以下のように考察した。
【0030】
図9(A)に示すように異方向に回転する二軸スクリュ押出機よる成形生地25aの押し出しは,スクリュ15,15の噛み合いが開始する部分〔図9(A)中のX〕において成形生地25aが押し潰されることによりスクリュ15の歯溝に沿って前方へ押し出されることにより行われるために,押出機12のバレル内を流れる成形生地25aは,図9(B)に示すように図中上側と下側とで流れに偏りが生じ,図中下側の流れが強く(速く)なる。
【0031】
そのため,このように流れに偏りが生じた状態で押し出された成形生地25aをそのまま成形ダイの成形室内に導入して冷却,固化して成形体を製造する場合,得られた成形体は,上面側に対して底面側が高密度となり,成形ダイより押し出されて圧力が開放された成形体には,高密度である底面側に膨張が生じ,その結果,長手方向の両端が上方に変位するように反りが発生するものと考えられる〔図9(C)参照〕。
【0032】
上記考察に従えば,一軸,二軸の別の拘わらず,押出機12により押し出された成形生地25aに生じている流れの偏りを成形ダイ30に導入する前に均一化することができれば,得られた成形体に反りや歪み等の変形が生じることを防止できることになる。
【0033】
本発明を成す過程で試みた対応
そこで,本発明の発明者等は,押出成形装置11に下記の改良を加えることで,成形生地の流れを均一化することによる成形体の変形防止を試みた。
【0034】
改良1(ブレーカプレートの使用)
押出機12のバレル13の出口13a部分に図10(A)に示すように多数の小孔22aが形成されたメッシュ状の円盤であるブレーカプレート22を取り付け(ブレーカプレート22の構造については図3参照),ブレーカプレート22を通過した後の成形生地25aを成形ダイ30に導入した。
【0035】
すなわち,この構造では,ブレーカプレート22を取り付けることで,成形生地25aは成形ダイ30に導入される前にブレーカプレート22に形成した小孔22aを必ず通過することとなり,小孔22aを通過する際に成形生地25aの流れに抵抗を与えることにより,成形生地25aの流れを均一化することを図ったものである。
【0036】
このようにブレーカプレート22を設けた押出成形装置によって製造した成形体では,ブレーカプレート22を備えていない押出成形装置で製造した場合に比較して成形体に生じる変形を減少させることはできたものの,変形の発生を無くし,又は矯正等を行うことなく使用できる程度まで変形を減少させることはできなかった。
【0037】
このことから,ブレーカプレート22を通過させることにより,図10(A)に示すように成形生地25aに生じている流れの偏りはある程度改善されるものの,偏りを完全に解消するには至っていないものと考えられる。
【0038】
ここで,ブレーカプレート22の設置が成形体に生じる変形の減少に有効である点に鑑み,ブレーカプレート22に設ける小孔22aの径をより小さくすることで,成形生地25aの流れに与える抵抗を更に大きなものとすることを試みた。
【0039】
この方法では,ブレーカプレート22に設ける小孔22aの径を小さくする程,成形体に生じる変形を小さくできるものの,ブレーカプレート22に設ける小孔22aの径を小さくすればする程,成形生地25aの押出量が減少するために,生産能力が低下するという新たな課題が生じる結果となった。
【0040】
改良2(抵抗体の使用)
前述のように,成形生地25aの流れに抵抗を与えることが成形体に生じる変形の抑制に有効である点に鑑み,押出機12のバレル出口13aと成形ダイ30の入口30a間に両者間を連通する押出ダイ20を設け,この押出ダイ20内に形成された空間21内に,図10(B)に示すように押出機側に向かって尖った先端形状を有する抵抗体26’を配置して,抵抗体26’の外周と押出ダイ20の内周間の比較的狭い間隔に形成された流路21’内に成形生地25aを導入することで,抵抗体26’の表面に対する接触抵抗と,流路面積の減少により成形生地25aの流れに抵抗を与えることで,流れを均一化することを試みた。
【0041】
このような抵抗体26’を設けた押出成形装置を使用して製造された成形体においても,抵抗体26’を用いずに製造した成形体に比較して変形の発生を減少できることが確認されたものの,変形の発生を完全に防止し,又は実用上問題のない程度にまで減少させることができず,依然として成形体には反りや歪み等の変形が生じた。
【0042】
このことから,このような抵抗体26’を設けた押出成形装置では,押出ダイ20内を流れる成形生地25aは,抵抗体26’の上流側で充分に均一化される前に,図10(B)に示すように抵抗体26’によって流れが上下に分断されてしまい,その結果,成形生地25aに生じた流れの偏りが維持されたまま成形ダイ30に導入され,得られた成形体に変形が生じたものと予想される。
【0043】
改良3(ブレーカプレートと抵抗体の組合せ使用)
更に,発明者等は,図10(C)に示すように前述したブレーカプレート22と抵抗体26’の双方を押出成形装置に設ける改良についても行った。
【0044】
この押出成形装置では,ブレーカプレート22,又は抵抗体26’をそれぞれ単独で使用した場合に比較して,更に成形体に生じる変形を減少することができるものであったが,この方法によっても変形の発生を完全に防止し,又は実用上問題のない程度にまで変形を減少させることはできなかった。
【0045】
このことから,図10(C)に示すように,ブレーカプレート22や抵抗体26’を単独で使用した場合の問題点をそのまま引き継いでいるものと考えられる。
【0046】
上記結果に基づく知見
以上のように,ブレーカプレート22や前述した形状の抵抗体26’を使用して成形生地25aの流れに抵抗を与えることは,成形体に生じる変形を減少する上で一定の効果があることが確認されており,成形ダイ30に導入する前に成形生地25aの流れを均一化することが変形の発生防止に有効であることが判った。
【0047】
しかし,ブレーカプレート22や前記形状の抵抗体26’を単独で追加するのみでは,変形の発生を無くし,又は,変形を実用上問題がない程度に留めるまでには至らず,成形生地25aの流れに抵抗を与えることによる変形の発生防止には限界があることも判った。
【0048】
一方,抵抗体26’の上流側にブレーカプレート22を配置し,ブレーカプレート22で成形生地25aの流れに生じている偏りを緩和した後に,抵抗体26’による均一化を行った例では,抵抗体26’を単独で使用した場合に比較して成形体の変形が減少することが確認されている。
【0049】
以上の点から,抵抗体を配置して成形生地25aの流れに抵抗を与えるだけでなく,抵抗体の上流側で成形生地25aを攪拌することができれば,成形体に生じる変形を更に低減できる筈であり,このような抵抗体の作用は,抵抗体の形状を見直すことにより実現できるのではないかとの考えに至った。
【0050】
本発明の押出成形装置11は,上記の観点から成されたものであり,スクリュ押出機12によって流れに偏りが生じた状態で押し出された成形生地25aを,成形ダイ30に導入する前にその流れを均一化することで変形の発生を防止しようとするものである。
【0051】
そして,このような均一化を実現するために,成形生地25aを成形するための成形ダイ30の他に,押出機12の出口13aと前記成形ダイ30の入口30a間を連通する押出ダイ20を設け,押出ダイ20内を通過する成形生地25aの溶融状態を維持して,この押出ダイ20において流れの均一化を図っている。
【0052】
更に,押出ダイ20内で成形生地25aの流れを均一化するために,押出ダイ20内の空間21に,該押出ダイ20内を流れる成形生地25aに対し流動抵抗を与える抵抗体26を配置して押出生地25aの流れに抵抗を与えるだけでなく,抵抗体26の押出機12側の端部に成形生地25aの押出方向に対して直交方向を成す端面261aを設け,この端面261aに成形生地25aを衝突させることで抵抗体26の上流側で成形生地を攪拌することにより,成形生地25aの流れを略完全に均一化して,成形体に対する変形の発生防止を実現しようというものである。
【0053】
押出成形装置の全体構成
以下に,このような押出生地の均一化を可能とする構成を備えた本発明の押出成形装置11の構成例を図1〜5を参照して説明する。
【0054】
図1に示す押出成形装置11は,成形材料を定量ずつ供給する定量供給装置14を備えると共に,この定量供給装置14を介して供給された成形材料を溶融混練して押し出すスクリュ式の押出機12と,前記押出機12によって押し出された押出生地を導入する押出ダイ20,前記押出ダイ20を通過した成形生地25aを所定の形状に成形すると共に冷却して固化する成形ダイ30,及び成形ダイ30を通過して冷却固化された押出生地(成形体)を引き取る引取機50を備えている。
【0055】
なお,押出成形によって得る成形体を発泡成形体とする場合には,前述の定量供給装置に,発泡剤,例えば後述する発泡剤のマスタバッチを成形材料に対して定量ずつ混入する手段(後述の発泡剤フィーダ14b)を設けるものとしても良い。
【0056】
以下の説明では成形材料に発泡剤を添加して発泡成形体を製造する例について説明するが,本発明の押出成形装置11は,発泡を伴わない押出成形に対して使用することもできる。
【0057】
定量供給装置
前述の定量供給装置14は,成形材料,本実施形態にあっては成形材料のペレットを定量ずつ押出機12に供給する成形材料フィーダ14aと,この成形材料フィーダ14aによって押出機12に向かって搬送される成形材料に本実施形態にあってはマスタバッチである発泡剤を定量ずつ合流させる発泡剤フィーダ14bが設けられており,前記各フィーダ14a,14bに設けたホッパ内にそれぞれ成形材料と発泡剤を投入しておくことで,このホッパの下部に設けられたモータMによる搬送スクリュの回転によって,成形材料のペレットと発泡剤とが所定の配合比で押出機12に供給できるようになっている。
【0058】
押出機
このようにして,成形材料及び発泡剤が投入される押出機12は,成形材料のペレットと発泡剤との混合材料を加熱混練して溶融可塑化し,この溶融可塑化した成形生地25aを押し出すスクリュ15を備えるスクリュ式の押出機12である。なお,本実施形態においては押出成形装置11として2軸型のスクリュ押出機12を適用した例について説明しているが,1軸型,多軸型,それらを組み合わせたスクリュ押出機等の各種のスクリュ押出機を使用しても良い。
【0059】
もっとも,前述したように二軸スクリュ押出機は,スクリュ15の噛み合い構造による強制的な押出力と独特な混練効果を持っており,原料の分散に非常に有利であると共に,回転数を小さくしても必要な押出力を確保することができるために,摩擦による材料の温度上昇を抑えることができることから,押出機12のバレル13外周に設けたヒータ(図示せず)等による材料温度の制御を行い易い等の利点があることから,好ましくは,押出成形装置11の押出機12として,二軸型のスクリュ押出機を使用する。
【0060】
図1に示す2軸型のスクリュ押出機12は,バレル13と,該バレル13内に回転可能に設けられる一対のスクリュ15と,該スクリュ15を回転駆動させる減速機,モータ等からなる駆動源Mとを備え,バレル13の先端側(押出方向前方,図1中右側)に後述する押出ダイ20及び成形ダイ30が設けられている。
【0061】
バレル13は,押出方向先端が開放されて出口13aを形成しており,後端(押出方向後方,図1中左側)が閉塞された筒状に形成されており,後端の上部にバレル13の内外を貫通する原料の投入口13bが設けられ,この投入口13bを介して前述の定量供給装置14による成形材料と発泡剤との混合材料の投入が行われる。
【0062】
バレル13の外周部には,バンドヒータ等の加熱手段(図示せず)がバレル13の全長に亘ってバレル13を巻回ないしは外環するように設けられており,この加熱手段によってバレル13の内部に供給された混合材料が加熱される。
【0063】
バレル13は,全長が複数のゾーン(例えば,溶解ゾーン131,発泡剤の分解ゾーン132,発泡ガスの混合ゾーン133)に分けられ,加熱手段により各ゾーン131〜133毎に個別に温度制御が可能に構成されている。
【0064】
スクリュ15のそれぞれは,丸棒状の回転軸と,該回転軸の周囲に螺旋状に一体に設けられる,スクリュ15のネジ山部分を構成するスクリュとから構成されている。各スクリュ15の後端に設けた回転軸(図1中左側)はバレル13の後端から後方に突出し,その突出している部分が駆動源であるモータMに連結され,駆動源により各スクリュ15に形成された傾斜したネジ山とネジ溝とが対称の状態で噛合回転する,先端側に向かって先細りの形状を成す二軸コニカルスクリュとして構成されている。
【0065】
スクリュ15のバレル13内に位置する部分は,溶融ゾーン131に配置されて加熱された原料を溶融混練する溶融混練部151と,発泡剤の分解ゾーン132に配置されて発泡剤の分解を促進する分解促進部152と,発泡ガスの混合ゾーン133に配置されて発泡ガスの分散を促進する分散促進部153によって構成され,スクリュの歯形が,各部分において上記機能に対応した形状に形成されている。
【0066】
駆動源Mの作動によってスクリュ15を回転駆動させることにより,定量供給装置14を介してバレル13内に供給された混合材料が加熱混練されながらスクリュ15のスクリュ間の溝に沿ってスクリュ15の先端方向に圧送され,溶融可塑化状態の成形生地25aとなって成形生地25aに対して加えられる押出力により,スクリュ15の先端側からバレル13外に押し出される。
【0067】
押出ダイ
押出ダイ20は,押出機12のバレル13より押し出された成形生地25aを溶融状態を維持しつつ後述する成形ダイ30に導入するものであり,この押出ダイ20内を通過する際に,成形生地25aの流れを均一化することにより,このようにして均一化された成形生地25aを成形ダイ30に導入するために設けられている。
【0068】
図示の実施形態にあっては押出機12のバレル13の先端側にアダプタ16を介してボルト等によって着脱可能に押出ダイ20を取り付けている。
【0069】
この押出ダイ20の外周にも,押出機12のバレル13同様,図示せざるバンドヒータ等が巻き付けられており,押出ダイ20内を通過する成形生地が溶融状態を維持できるよう,成形生地25aを加熱乃至は保温することができるようになっている。
【0070】
この押出ダイ20は,前記押出機12のバレル13の出口13a形状と一致した形状の入口20aと,後述する成形ダイ30の入口形状と一致した形状の出口20bを備えており,図2(A),(B)に示すように,縦方向の断面(図2(A)参照)において,入口20a側において内部空間21の上下方向における幅が出口20b側に向かって減少する形状に形成されていると共に,横方向の断面(図2(B)参照)において,入口20a側から出口20b側に向かって空間21の幅が徐々に広がった後,出口20b近くにおいて僅かに狭まり,その後,後述する成形ダイ30の入口30aの幅と同一幅となるように形成され,この空間21によって押出機12のバレル13の出口13aと,成形ダイ30の入口30a間を連通することができるようになっている。
【0071】
この押出ダイ20の入口20a側に取り付けられた前述のアダプタ16には,必要に応じてブレーカプレート22が嵌合装着されていると共に,押出ダイ20内の空間21内には,成形生地25aの流れを均一化する抵抗体26が配置されている。
【0072】
ブレーカプレート
このうちのブレーカプレート22は,一例として図3(A),(B)に示すように,多数の小孔22aがメッシュ状に形成された円盤状の部材である。
【0073】
アダプタ16に対して前記ブレーカプレート22を取り付けるために,アダプタ16には,図2(A),(B)に示すように押出ダイ20側におけるアダプタ16の端面から押出機12側に向かってブレーカプレート22の外周と略同一径を成す取付穴16aが形成されており,この取付孔16a内に押出ダイ20側より前述のブレーカプレート22を挿入すると共に,押出ダイ20側よりさらにこの取付穴16a内に固定リング17を挿入することで,アダプタ16内の所定の位置に取り付けられている。
【0074】
従って,図示の例では,このブレーカプレート22の小孔22aと前記固定リング17の内周が,アダプタ16内における成形生地25aの流路の一部を形成している。
【0075】
このようにして,押出機12の出口13aと押出ダイ20の入口20a間にブレーカプレート22を取り付けたことにより,押出機12より押し出される成形生地25aは,ブレーカプレート22に形成された小孔22aを通過した後に押出ダイ20内に導入されるものとなっており,押出機12によって押し出されようとする押出生地25aは,このブレーカプレート22に形成された小孔22aを通過する際に抵抗を受けることから,押出機12のバレル13内の成形生地25aに対して圧力をかけることができるようになっていると共に,このようにして成形生地に加えられる抵抗により,押出生地の流れの均一性が改善される。
【0076】
なお,図示の実施形態にあっては本発明の押出成形装置11にこのようなブレーカプレート22を設けるものとしているが,前述したようにブレーカプレート22は必要に応じて設けるものであり,これを省略しても良い。
【0077】
抵抗体
押出ダイ20の空間21内に設けられた前述の抵抗体26は,押出ダイ20内の成形生地25aの流れに抵抗を与えることにより,押出ダイ20内における成形生地25aの流れを均一化すると共に,抵抗体26の上流側において成形生地を攪拌する作用を有するものであり,この抵抗体26によって後述する成形ダイ30に導入する前に成形生地を均一化することで,得られる成形体に変形が生じることを防止できるものとなっている。
【0078】
このように抵抗体26を押出ダイ20内に配置することにより,この抵抗体26の外周と,押出ダイ20の空間21の内周間に,他の部分に比較して幅狭に形成された成形生地の流路21aが形成され,抵抗体26に対する接触抵抗と流路面積の減少によって成形生地の流れに抵抗が与えられるように構成されていると共に,押出機12側における抵抗体26の端部に,成形生地25aの流れ方向に対して直交方向を成す端面261aを設け,この端面261aに成形生地25aを衝突させることにより,抵抗体26の上流側において成形生地25aが攪拌されるものとなっている。
【0079】
先に考察したように,異方向回転型の二軸スクリュ押出機12より押し出された成形生地25aは,押出ダイ20の上側と下側とで流れの強さ(速さ)が異なるものとなっているが〔図9(B)参照〕,図10(B),(C)に示したように先端が尖った形状を有する抵抗体26’を使用した場合には,この抵抗体26’によって成形生地25aの流れが上下に分割されると共に,抵抗体26’の表面形状に沿って分割された流れが分割された状態を維持しながら成形ダイ30に導入されて冷却・固化されることで,得られた成形体には反りや変形が生じるものと考えられる。
【0080】
しかし,図2,図4及び図5に示すように端面261aを備えた抵抗体26を設ける場合,成形生地25aは,この流れに対して抵抗が与えられることにより均一化が行われるだけでなく,図5に示すように押出ダイ20内を流れる成形生地25aが抵抗体26の端面261aと衝突して,上層側及び下層側の流れが攪拌により混ざり合うことにより,成形生地25aの流れがより一層均一化される。
【0081】
ここで,抵抗体26に形成する端面261aの面積が小さすぎると効果的な攪拌を行い得ないことから,抵抗体26の端面261aを通る押出ダイの断面〔図2(C)参照〕における空間21の開口面積に対し,抵抗体26の端面261aの面積を例えば,1/3以上,好ましくは1/2以上になるように形成する。
【0082】
前述の抵抗体26は,図5に示すように略直方体に形成された単純な形状のものとしても良いが,本実施形態にあっては,図3及び図4に示すように押出ダイ20の入口20a側に設けた端面261aから出口20b側に向かって徐々に幅及び厚みを増加する第1テーパ部261と,この第1テーパ部261の端部を延長する直方体状に形成された第1平坦部262を有すると共に,前記第1平坦部262から押出ダイ20の出口20bに向かって僅かに厚み及び幅を狭める第2テーパ部263と,前記第2テーパ部263に連通し,一定の幅及び厚みに形成された第2平坦部264を備え,前記第2平坦部の端部が押出ダイ20の出口20b内に配置されている。
【0083】
前述の第1平坦部262には,抵抗体を押出ダイ20内の所定の位置に固定するためのリブ265が設けられており,このリブ265によって,抵抗体26が押出ダイ20内に形成された空間21の中央に配置されて,抵抗体26の外周と押出ダイ20の空間21内周間に成形生地25aが流れる間隔が形成されている。
【0084】
抵抗体26の外周と押出ダイ20内の空間21内周間に形成される前述の間隔は,押出ダイ20の入口20a側から出口20b側に向かって徐々に流路面積を狭めた後,前述の第2平坦部の外周位置において一定幅に形成されるように構成されている。
【0085】
この抵抗体26を通り,成形生地25aの流れ方向に対して直交方向を成す押出ダイ20の幅方向のいずれの断面においても,押出ダイ20の空間21の開口形状と,抵抗体26の外周の断面形状とは,相似形となるように形成することが好ましく,これにより押出ダイ20の空間21内周と抵抗体26の外周間に形成される前述の隙間が,幅方向の断面〔一例として図2(C)〕において全周に亘り均一な幅を有するものとして形成され,部分的に流路の間隔が変化することにより新たに成形生地に不均一な流れが発生することを防止している。
【0086】
なお,押出ダイ30側における抵抗体26の上面及び底面,本実施形態にあっては第2テーパ部263から第2平坦部264にかけての上面及び低面には,図4に示すように成形生地25aの流動方向を長さ方向とする溝266を形成することができ,この溝266の形成によって得られた成形体の断面中心部分に巣が発生することを防止でき,特に成形材料に発泡剤を添加して得られる成形体を押出発泡成形体とする場合に好適に巣の発生を防止することができる。
【0087】
この溝266は,図4(C)に示すように幅方向の断面において溝底側を幅狭とした台形状に形成されていると共に,第2テーパ部263に形成された部分は,図4(D)に示すように第1平坦部262側から第2平坦部264側に向かって徐々に深さを増す形状に形成されており,第2平坦部264において一定深さに形成されており,このような溝を形成することにより,得られた成形体の中央部分に前述のような大きな巣が発生することを防止することができる。
【0088】
なお,図示の実施形態にあっては,2本の溝266を平行に配置した構成を示しているが,この溝は,幅方向の中央に1本形成されたものであっても良く,又は3本以上の溝を形成したものであっても良く,形成する成形体のサイズ等に応じて溝の形成本数や幅等を適宜変更することが可能である。
【0089】
以上のように,第1テーパ部261,第1平坦部262,第2テーパ部263及び第2平坦部264を備えた抵抗体26を押出ダイ20内に配置することで,押出ダイ20を通過する成形生地25aは,第1テーパ部261に設けた端面261aとの衝突によって攪拌されると共に,抵抗体26によって押出ダイ20の空間21の内壁に沿った流れとなり,押出ダイ20の出口20b内周と第2平坦部264の外周間の隙間に形成された流路21aを通過する際に比較的細い流れに集束されることで,成形生地25bの流れが更に均一な流れとなる。
【0090】
特に,成形材料に発泡剤を添加して押出発泡成形体を得る場合には,押出機内での加熱,混練の際の熱により分解された発泡して発泡ガスが成形生地内に含まれたものとなっているが,抵抗体26の外周と成形ダイ20内の空間21内周間に形成された前述の間隔を通過することにより,成形生地25a内の発泡ガスの均一な分散が助長されると共に,押出ダイ20を通過する成形生地には圧力がかかった状態に維持されることから,押出ダイ20内における発泡ガスの膨張が抑制されて,押出ダイ20より押し出された後に発泡ガスが膨張を開始することで,全体に均一な気泡が形成された成形体を得ることができるものとなっている。
【0091】
成形ダイ
以上のように,押出ダイ20を通過して流れが均一化された成形生地25aは,成形ダイ30内に導入されて,成形ダイ30内に形成された成形室の形状によって決定される所定の形状に成形されると共に冷却固化され木質発泡成形体となる。
【0092】
この成形ダイ30は,本実施形態において図1に示すように複数の金型の集合体によって形成されており,押出ダイ20の出口に入口を連通させた第1の成形ダイ301を備えると共に,この第1の成形ダイ301の出口側に所定間隔を介して配置された第2成形ダイ302,第2成形ダイ302の出口側に所定間隔を介して配置された第3成形ダイ303と,図示の実施形態にあっては,第7成形ダイ307までを連続して配置した構成としている(図1参照)。
【0093】
個々の成形ダイ301〜307には,前述した押出ダイ20の出口20b形状に対応した断面形状の成形室31aが形成されていると共に,本実施形態にあっては,第1〜第3成形ダイ301〜303の肉厚内に冷却媒体の流路32を設け,この冷却媒体の流路32内に冷却水等の冷却媒体を導入することで,第1から第3成形ダイ301〜303に至るに従って,徐々に押出生地25aの温度を低下させて固化して,所望の発泡成形体が得られるように構成されている。
【0094】
なお,本実施形態にあっては,第4〜第7成形ダイ304〜307の肉厚内には,冷却媒体の流路を設けていない。
【0095】
以上のように形成された成形ダイ20の第1成形ダイ301内に,押出ダイ20より導入された成形生地25aを導入すると,前述した押出ダイ20の構成により,第1成形ダイ301内に押し出された成形生地25aは,急激に圧力が開放されて,成形ダイ内に形成された成形室の形状に成形され,冷却・固化される。
【0096】
発泡成形体を得るために,成形材料に発泡剤を添加している場合には,押出機12内での溶融混練の際に分解した発泡剤によって発生した発泡ガスがこの位置で急激に膨張して成形生地25aを発泡させる。
【0097】
第1成形ダイ301で成形,冷却されて成形体となった成形生地は,引取機50による引取りによって第1成形ダイ301を通過した後,第2成形ダイ302,第3成形ダイ303・・・と,第7成形ダイ307迄を順次通過する際に冷却されて,木質発泡成形体の製造が完了する。
【実施例】
【0098】
次に,本発明の押出成形装置を使用した成形体(板材)の製造実施例,及び,これにより得られた成形体の比較試験を行った結果を以下に示す。
【0099】
製造条件
成形材料
製造試験に使用した原材料の成分表を表1に示す。
【表1】

【0100】
ペレットの製造
上記原材料のうち,発泡剤を除くその他の原料は,押出成形装置の押出機に投入する前に,図6に示すペレット製造装置40を使用してペレットにした。
【0101】
具体的には,図6に示すペレット製造装置40の定量供給装置41に前述した各原料を投入し,投入された原料をロスインウエイト方式によって前記配合比となるよう押出機に定量供給し,異方向回転型の二軸スクリュ式の押出機42(スクリュ直径:65mm)によって170〜180℃程の温度で溶融混練して押出機42のバレル42a先端に設けたダイノズル43の小孔より直径4mmのストランドを熱水中に押し出し,押し出されたストランドを熱水中にてカッタ44の回転するカッタ刃44aにより6mm毎に切断した〔水中(アンダーウォーター)ホットカット法〕。
【0102】
得られたペレットは,遠心分離機45によって水分を2%以下に脱水してペレットとした。
【0103】
押出成形条件
共通する条件
以上のようにして得られたペレットを,120℃の温度の熱間乾燥機47に2時間以上かけて含水率が0.2wt%以下となる迄乾燥させた後,押出成形装置11に設けた定量供給装置14のフィーダ14aに投入し,これとは別のフィーダ14bに投入された発泡剤と前記ペレットとを前記配合比となるように調整して,押出機12に供給した。
【0104】
使用した押出機12は,シンシナティ・エクストルージョン(Cincinnati Extrusion)社製の異方向回転コニカル2軸スクリュ押出機「T−58」である。
【0105】
押出温度(押出機〜押出ダイの設定温度)を180〜190℃とし,成形ダイ(第1〜第3成形ダイ)を90℃の水冷ジャケットとした。
【0106】
また,成形の際,押出機12のバレル13に設けられている脱気孔ベントを介した真空引きを行わず,脱気孔ベントを大気開放した状態とした。
【0107】
以上のようにして,幅145mm,厚み25mmの板状に形成された木質発泡成形体を長さ方向に連続して成形した。
【0108】
実施例及び比較例
以上の製造条件を共通とし,それぞれ下記の点で構造を異にする押出成形装置を使用して実施例1,2,及び比較例1,2の板材を製造した(図7参照)。
【0109】
実施例1;ブレーカプレート22と,端面261aを備えた抵抗体26の双方を設けた押出成形装置〔図7(A)参照〕を使用。
【0110】
実施例2;端面261aを備えた抵抗体26のみを設けた押出成形装置〔図7(B)参照〕を使用。
【0111】
比較例1;ブレーカプレート22と,先端の尖った抵抗体26’の双方を設けた押出成形装置〔図7(C)参照〕を使用。
【0112】
比較例2;先端の尖った抵抗体26’のみを設けた押出成形装置〔図7(D)参照〕を使用。
【0113】
測定方法
製造後,24時間経過した成形体に対し,下記の測定を行った。
【0114】
反り
押出方向における長さを2mでカットした成形体の反りを,図8(A)中のδとして測定した。
【0115】
曲げ弾性率
押出方向に支点間距離Lを400mmとした支持台上に成形体を載置し,支点間距離Lの中間位置(L/2)に配置された加圧くさびにより荷重(F)をかけて曲げ弾性率を測定した〔図8(B)参照〕。
【0116】
なお,曲げ弾性率は,曲げ応力−たわみ曲線の始めの直線部分を使用して,
=Δσ/Δε により算出した。
ここに,E:曲げ弾性率
Δσ:直線部分の2点間の応力の差
Δε:同じ2点間のひずみの差
また,曲げ応力は,
σ=3F・L/2bh
により算出した。
ここに,σ:曲げ応力
F:荷重
L:支点間距離
b:試験片の幅
h:試験片の高さ
【0117】
測定結果
実施例1,2,及び比較例1,2の各成形体の反り及び曲げ弾性率の測定結果を,下記の表2に示す。
【0118】
なお,2m当たりの反りは,実施例1,2,比較例1,2共にそれぞれ5つの試料を測定した平均値として表示すると共に,( )内に5つの試料の測定によって得た上下限の数値を記載した。
【0119】
【表2】

【0120】
考察
以上の結果より,実施例1,2の成形体は,比較例1,2の成形体に対し,反りの発生が大幅に減少していることが確認された。
【0121】
前述したように,成形体の反りは,成形時における成形生地の流れに偏りが生じることにより二軸押出機を使用して製造した成形体では上面側と下面側とにおいて密度に差が生じる結果発生するものと考えられるところ,本発明の押出成形装置を使用して得た成形体では,反りの発生が大幅に減少していることから,成形生地に生じる流れの偏りが解消されて,均一な流れとなり,その結果,成形後の反りの発生が大幅に減少されたものであると考えられる。
【0122】
また,曲げ弾性率(Ec)は,曲げ比例限度内における曲げ応力(Δσ)とこれに対応するひずみ(Δε)との比(Ec=Δσ/Δε)として定義されるものであることから(JIS 7221-1995における「曲げ弾性率」の用語の定義),曲げ弾性率の数値が高いことは,対比する成形体のひずみが一定の状態では応力が大きいことを,応力が一定の状態ではひずみが小さいことを表すものとなっており,引用文献1,2の成形体は,引用文献1,2の成形体に比較して機械的強度においても優れていることが確認された。
【0123】
なお,抵抗体のみを使用した場合に比較し,抵抗体とブレーカプレートを組合せて使用した場合の方が,より一層,反りの発生が少なく,かつ,高い数値の曲げ弾性率となることが確認されていることから,前述の抵抗体を,ブレーカプレートと組合せて使用する場合には,両者の相乗効果により,成形生地の流れがより一層均一なものとなり,前述のような高い効果が得られたものと考えられる。しかも,本実施例で使用したブレーカプレート(直径80mm,孔径4mm)では,ブレーカプレートの取り付けにより懸念される生産性の低下を伴うことなく,より一層の反りの発生低減と,曲げ弾性率の向上を得ることができるものであることが確認された。
【符号の説明】
【0124】
11 押出成形装置
12 (スクリュ式)押出機
13 バレル
13a 出口(バレル13の)
13b 投入口(バレル13の)
131 溶解ゾーン
132 発泡剤分解ゾーン
133 発泡ガス混合ゾーン
14 定量供給装置
14a 成形材料フィーダ
14b 発泡剤フィーダ
15 スクリュ(押出機12の)
151 溶融混練部
152 分解促進部
153 分散促進部
16 アダプタ
16a 取付穴
17 固定リング
20 押出ダイ
20a 入口(押出ダイ20の)
20b 出口(押出ダイ20の)
21 空間(押出ダイ20内の)
21a,21’ 流路
22 ブレーカプレート
22a 小孔
25a 成形生地
26 抵抗体(本願)
26’ 抵抗体(比較例)
261 第1テーパ部
261a 端面
262 第1平坦部
263 第2テーパ部
264 第2平坦部
265 リブ
266 溝
30 成形ダイ
30a 入口(成形ダイの)
301 第1成形ダイ
302 第2成形ダイ
303 第3成形ダイ
304 第4成形ダイ
305 第5成形ダイ
306 第6成形ダイ
307 第7成形ダイ
31 成形室
32 流路
40 ペレット製造装置
41 定量供給装置
42 押出機
42a バレル
43 ダイノズル
44 カッタ
44a カッタ刃
45 遠心分離機
47 乾燥機
50 引取機
625a 成形生地
641 押出成形装置
642 押出機
643 バレル
643a 出口(バレル643の)
644 ホッパ
645 スクリュ
650 ダイ
650a 成形室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂を主成分とする成形材料を溶融混練して押し出すスクリュ式の押出機と,前記押出機により押し出された成形生地を導入し,該導入した成形生地を内部に形成された成形室の内部形状に対応した形状に成形しながら冷却固化する成形ダイを備えた押出成形装置において,
前記押出機の出口と前記成形ダイの入口間を連通し,前記押出機によって押し出された前記成形生地の溶融状態を維持しながら前記成形ダイに導入する押出ダイを設け,
前記押出ダイ内に形成された空間内に,該押出ダイ内を流れる成形生地に対し流動抵抗を与える抵抗体を配置し,前記抵抗体の外周と前記押出ダイの内周間に形成された間隔を前記成形生地の流路と成すと共に,
前記抵抗体の前記押出機側の端部に,前記成形生地の押出方向に対して直交方向を成す端面を設けたことを特徴とする押出成形装置。
【請求項2】
前記押出ダイの幅方向の断面において,前記押出ダイの断面内周形状と前記抵抗体の断面外周形状を略相似形に形成すると共に,前記抵抗体を前記押出ダイ内に形成された前記空間の中央に配置したことを特徴とする請求項1記載の押出成形装置。
【請求項3】
前記抵抗体の外周と,前記押出ダイの内周間の間隔を,前記押出機側から前記成形ダイ側に向かって狭まる形状に形成したことを特徴とする請求項1又は2記載の押出成形装置。
【請求項4】
前記抵抗体に対し前記押出機側に位置する成形生地の流路内に,多数の小孔が形成されたブレーカプレートを配置したことを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の押出成形装置。
【請求項5】
前記抵抗体が,前記押出機側の端部から前記成形ダイ側に向かって,徐々に幅及び高さを拡大する第1テーパ部と,前記第1テーパ部の前記成形ダイ側の端部と同一の一定幅及び一定高さを有する第1平坦部と,前記第1平坦部の前記成形ダイ側の端部に連続して,前記成形ダイ側に向かって徐々に幅及び高さを減じる第2テーパ部と,前記第2テーパ部の前記成形ダイ側の端部と同一の一定幅及び一定高さを有する第2平坦部を備えたことを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の押出成形装置。
【請求項6】
前記成形ダイ側における前記抵抗体の上面及び底面に,前記成形生地の流れ方向を長さ方向とする溝を形成したことを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載の押出成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−62936(P2011−62936A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−216216(P2009−216216)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(506007046)WPCコーポレーション株式会社 (8)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】