説明

押出成形設備

【課題】カップリングスリーブの摩耗負荷が十二分に排除されるように構成された押出成形設備を提供する。
【解決手段】押出成形設備は、駆動モータ、入力軸21と出力軸35とを持つ切換え式変速機3、および押出機を有する。前記入力軸21の周囲に、二段切換え式ピニオン25が回転不能であるように、しかし二つの切換え位置の間で軸方向に変位可能であるように配置される。それぞれの切換え位置においては、一方の切換えピニオン41、42が中間軸29、29’の切換え歯車33、33’と直接噛み合って、そこから前記出力軸35へのトルク伝達が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念(所謂おいて部分、プリアンブル部分)に係る、押出成形設備に関する。
【背景技術】
【0002】
そのような押出成形設備では、実地においては切換え式変速機が導入されるが、その入力軸の周囲には、転がり軸受を介して自由に回転可能であるように二つのピニオンが支持されており、これらのピニオンは、入力軸と平行に配置された出力軸の周囲に相対回転不能に取り付けられた歯車と常時噛み合っている。入力軸の周囲に配置された二つのピニオンの間には、一つのカップリングスリーブが、内歯を利用して、入力軸に相対回転不能に連結されている。入力軸を長手方向に変位させることにより、ピニオンの一方または他方を、カップリングスリーブを利用して入力軸に相対回転不能に接続できるようになっている。カップリングスリーブによって入力軸に連結されない方のピニオンは、入力軸に対して相対回転運動を行うことになる。それにより、これらのピニオンを入力軸に対して支持している転がり軸受の領域内およびカップリングスリーブに、問題を生じることがある。その理由は、回転数が高いときに転がり軸受が入力軸に対して無負荷状態となったり、相対回転数がゼロであるときに転がり軸受に高負荷が加わったりすることにある。またカップリングスリーブも、その全周にわたり半径方向の負荷が加わるために、摩耗率が高くなっている。それに加えてさらに、このシステムだと振動に鋭敏に応答しかねないという事情がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許発明第0962298号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上のような背景から、本発明が解決しようとする課題は、カップリングスリーブの摩耗負荷が十二分に排除されるように、冒頭に記した種類の押出成形設備を構成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、請求項1の特徴部分の各特徴構成により解決される。本発明にしたがった対策により、高負荷が加わるが相対的に静止している転がり軸受や、無負荷状態ではあるが回転している転がり軸受を回避した、ことのほか簡単な解決策が見出されることになる。カップリグスリーブが一つも存在していないために、冒頭に掲げた問題は回避される。それ以外にも、カップリングスリーブをなくしたことにより、全周にわたり半径方向に加えられる負荷が回避されることになる。当然ながら本発明は、そのような切換え式変速機にも関するものである。
【0006】
請求項2および3に記載される構成方式により、二段切換え式ピニオンを第1または第2の切換え位置に別々に固定する必要はなくなる。
請求項4および5に記載される対策により、入力軸および出力軸に負荷が対称に加えられることになる。
【0007】
この二段切換え式ピニオンの作動は、請求項6から8に記載されるようにして、非常に簡単に実現することができる。
本発明のその他の長所、特徴および細部については、以下の図面に基づく実施例の説明から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】部分的に切り開いた状態にある本発明にしたがった押出成形設備を示す上面概略図である。
【図2】切り開いた状態にある切換え式変速機を示す側面図である。
【図3】第1の切換え位置にある切換え式変速機の上面図である。
【図4】第2の切換え位置にある切換え式変速機の上面図である。
【図5】切換え式変速機が第1の切換え位置にあるときの、押出成形設備の概略図である。
【図6】図5に示される押出成形設備の、切換え式変速機が中立の切換え位置にあるときの図である。
【図7】図5および6に示される押出成形設備の、切換え式変速機が第2の切換え位置にあるときの図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1に示される押出成形設備は電気式駆動モータ1を有しており、これにクラッチ2を介在させて切換え式変速機3が後置されている。切換え式変速機(Schalt-Getriebe)3には、通常の荷重分配変速機(Verteiler-Getriebe/transfer gearbox)4が続いており、そこから同じ向きに回転する二本の被動軸5、6が延びて、押出機9のスクリューシャフト7、8に連結されている。押出機9はハウジング10を有しており、その内部には、互いの中に食い込んで8の字を形成している二つのボア11、12が構成されているが、これらは、ハウジング10の内部に、被動軸5、6およびスクリューシャフト7、8の軸線13、14に対して共軸に構成されている。それぞれのスクリューシャフト7、8の周囲にはいずれも、スクリュー要素15と混練要素16の対が配置されている。ハウジング10のスクリューシャフト7、8のフィード方向17で下流側の端部には、この押出機9の内部で処理される、荷重分配変速機4に隣接したところで供給用ホッパー19により供給される材料の押出口18が備えられている。すなわちこの押出機9は、同一方向に回転する密に噛み合ったスクリューシャフト7、8を備えて構成される、通常の二軸押出機である。
【0010】
切換え式変速機3はハウジング20を有しており、その内部には入力軸21が、転がり軸受22、23を利用して半径方向および軸方向に回転可能であるように、しかしその軸線24の向きには変位不能であるように、支承されている。これらの転がり軸受22、23はハウジング20に支持されている。入力軸21の周囲には、一つの二段切換え式ピニオン25が二つの切換え位置間で変位可能であるように支承されているが、これについては後ほど詳しく説明する。そこではこの二段切換え式ピニオン25が、図2および3のほぼ中央に示される第1の切換え位置においては、第1の止めつば26に当接している。図4に示される第2の切換え位置においては、第2の止めつば27に当接している。これらの止めつば26、27は、入力軸21に固定して接続されている。二段切換え式ピニオン25は、これらの止めつば26、27の間を、一つの長手方向に延びる歯切り部28を利用して、相対回転不能に、しかし軸線24の向きには変位可能であるように、入力軸21の周囲に配置されている。
【0011】
ハウジング20の内部には、入力軸21を挟んでその両側に、二本の中間軸29、29’が転がり軸受30、30’および31、31’を利用して回転可能であるように支承されているが、それぞれの軸線32、32’は、入力軸21の軸線24と同一面上に位置しており、また軸線24までの距離aないしはa’を有している。これらは、軸線24に対して線対称に、同一直径上で対向するように配置されている。したがって次式が成立する:a=a’。
【0012】
これらの中間軸29、29’には、第1の切換え位置に対応するほぼ中央のところに、同一直径D33を持つ二つの第1の切換え歯車33、33’が配置されている。それ以外にも、―第2の切換え位置に対して配置される―同一直径D34を持つ第2の切換え歯車34ないしは34’が、それぞれの中間軸29、29’の周囲に一つずつ配置されている。
【0013】
それ以外にもハウジング20の内部には、軸線24と同一線上に出力軸35が二つのラジアル軸受36、37と一つのスラスト軸受38とを利用して支承されている。出力軸35には、両方のラジアル軸受36、37の間に、直径D39を持つ中央出力歯車39が相対回転不能に配置されている。この出力歯車39には、二つの出力ピニオン40、40’が噛み合っているが、これらはいずれも相対回転不能にそれぞれ対応する中間軸29、29’に取り付けられており、同一直径D40を有している。
【0014】
切換え用二段式ピニオン25は、一体式に構成された二つの切換えピニオン、具体的には直径D41を持つ第1の切換えピニオン41と、直径D42を持つ第2の切換えピニオン42とを有しており、これらは、上記で言及した第1の切換え位置においては、第1の切換えピニオン41が両方の第1の切換え歯車33、33’と噛み合う一方で、第2の切換え位置においては、第2の切換えピニオン42が第2の切換え歯車34、34’と噛み合うように構成されている。
【0015】
この二段切換え式ピニオン25の両方の切換えピニオン41、42の間を、シフトフォーク43が把持するようになっている。両方の切換え段と中央の中立切換え位置間の位置調節は、切換え駆動装置44を利用して行われるが、これは、シフトフォーク43を把持するピストントロッド45と、ステイ47を利用してハウジング20に対して支持されるシリンダ46とを有している、油圧を加えられるようになっているピストンシリリンダ型の駆動装置から成るとよい。切換え駆動装置44は、いわゆる3ポジション・アクチュエータとして構成されている。
【0016】
切換えピニオン41、42と、切換え歯車33、33’および34、34’はいずれも、はす歯を有している。第1の切換えピニオン41のはす歯48と、これに対応する第1の切換え歯車33、33’のはす歯49、49’は、入力軸21が回転方向50に駆動されると、二段切換え式ピニオン25が第1の止めつば26に対して押し付けられるようなものとなっている。これに対して第2の切換えピニオン42のはす歯51と、第2の切換え歯車34、34’のはす歯52、52’は、入力軸21が回転方向50に回転駆動されると、二段切換え式ピニオン25が第2の止めつば27に向かって押し付けられるようなものとなっている。したがって両方の切換え位置においては、シフトフォーク43、ひいては切換え駆動装置44が、負荷運転の間の軸線24の向きの力から自由となる。
【0017】
図5から7には、二つの荷重切換え位置と中立切換え位置にあるときのシフトフォーク3が、後置される荷重分配変速機4ともども概略図で示されている。
図5に示される第1の切換え位置においては、駆動が、入力軸21から第1の切換えピニオン41を介して第1の切換え歯車33、33’へと行われ、そこから中間軸29、29’を介して出力ピニオン40、40’へ、さらにそこから出力歯車39へと行われることによって、出力軸35へと行われるようになっている。この出力軸35は、荷重分配変速機4の被動軸5に直接取り廻されている。ほかにも出力軸35には、相対回転不能に取り付けられる一つの荷重分配ピニオン53が荷重分配変速機4の内部に備えられており、これは、二本の荷重分配軸55、55’に配置された二つの荷重分配歯車54、54’と噛み合っている。これらによって、それぞれ一つの荷重分配被動ピニオン56、56’と被動軸6に相対回転不能に接続された一つの荷重分配被動歯車57とを介して、被動軸6が、被動軸5と同一回転数で同一回転方向に駆動されるようになっている。これらの荷重分配軸55、55’は、被動ピニオン56、56’が両方とも被動歯車57と噛み合うように配置されている。そのような荷重分配変速機4の構成例は、たとえば特許文献1(US 6,106,426 B、特開2000-46147号公報に相当)から知られている。当然ながら、同様に知られている限りにおいて、荷重分配歯車54、54’を出力歯車39に直接係合させてこれと噛み合わせる、すなわちこれにより回転駆動されるようにすることも可能である。これは特に、切換え式変速機が一つのモジュラーユニットに統合され、それにより荷重分配変速機についてもこのモジュラーユニットに統合される場合に、検討されるものである。
【0018】
両方の被動軸5、6が同じ回転数を持つようにするために、被動ピニオン56、56’および被動歯車57は通例、不等の直径D56およびD57を有しており、また荷重分配ピニオン53および荷重分配歯車54、54’も同様に、不等の直径D53およびD54を有しているが、これについては次式が成立する:D53/D54=D57/D56。被動軸6は、荷重分配変速機4の内部にスラスト軸受58を利用して支持されている。
【0019】
二段切換え式ピニオン25が図6に示される中立切換え位置にあるときには、両方の切換えピニオン41、42がそれぞれと組み合わされる切換え歯車33、33’ないしは34、34’との係合状態から離脱している。したがって駆動モータ1から押出機9へのトルク伝達は一切行われないことになる。
【0020】
図7に示される第2の切換え位置においては、第2の切換えピニオン42が第2の切換え歯車34、34’に噛み合っているが、そこでは押出機9へのトルク伝達が上記で説明したように行われるようになっている。第1の切換えピニオン41の直径D41が第2の切換えピニオン42の直径D42よりも小さく、またそれに応じて第1の切換え歯車33、33’の互いに不等な直径D33が、第2の切換え歯車34、34’の同様に互いに不等な直径D34よりも大きいために、図5に示される第1の切換え位置にあるときの出力軸35の第1切換え段における被動回転数は、図7に示される第2の切換え段よりも低くなる。次式が成立する:D41+D33=D42+D34=D39+D40=a=a’、式中、aは軸線24および32間の相互距離に等しく、またa’は軸線24および32’間の相互距離に等しい。
【符号の説明】
【0021】
1 電気式駆動モータ
2 クラッチ
3 切換え式変速機
4 荷重分配変速機(トランスファー変速機)
5 被動軸
6 被動軸
7 スクリューシャフト
8 スクリューシャフト
9 押出機
10 ハウジング
11 ボア
12 ボア
13 軸線
14 軸線
15 スクリュー要素
16 混練要素
17 フィード方向
18 押出口
19 供給用ホッパー
20 ハウジング
21 入力軸
22 転がり軸受
23 転がり軸受
24 軸線
25 二段切換え式ピニオン
26 第1止めつば
27 第2止めつば
28 長手方向に延びる歯切り部
29、29’ 中間軸
30、30’ 転がり軸受
31、31’ 転がり軸受
32、32’ 軸線
33、33’ 第1切換え歯車
34、34’ 第2切換え歯車
35 出力軸
36 ラジアル軸受
37 ラジアル軸受
38 スラスト軸受
39 中央出力歯車
40、40’ 出力ピニオン
41 第1切換えピニオン
42 第2切換えピニオン
43 シフトフォーク
44 切換え駆動装置
45 ピストンロッド
46 シリンダ
47 ステイ
48 はす歯
49、49’ はす歯
50 回転方向
51 はす歯
52、52’ はす歯
53 荷重分配ピニオン
54、54’ 荷重分配歯車
55、55’ 荷重分配軸
56、56’ 荷重分配被動ピニオン
57 荷重分配被動歯車
58 スラスト軸受
a、a’ 距離
D 直径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動モータ(1)と切換え式変速機(3)と押出機(9)とを有する押出成形設備であって、
前記切換え式変速機(3)は、前記駆動モータ(1)に連結された一本の入力軸(21)と、出力軸(35)を有しており、さらに、前記切換え式変速機(3)は、第1の切換え位置と第2の切換え位置とを備えて構成されており、
前記押出機(9)の少なくとも一本のスクリューシャフト(7、8)が、前記出力軸(35)に回転駆動されるように接続されている、
押出成形設備において、
前記入力軸(21)に、二段切換え式ピニオン(25)が前記入力軸(21)に対して回転不能であるように、前記第1および第2の切換え位置間で変位可能であるように配置されること、
前記二段切換え式ピニオン(25)が、異なる直径D41およびD42を持つ第1の切換えピニオン(41)と第2の切換えピニオン(42)とを有すること、
前記入力軸(21)と軸平行に、少なくとも一本の中間軸(29、29’)が回転可能であるように配置されていること、
前記中間軸(29、29’)に、第1の切換え歯車(33、33’)と第2の切換え歯車(34、34’)とが、相対回転不能に、かつ軸方向に変位不能であるように配置されていること、
前記第1の切換えピニオン(41)と前記第1の切換え歯車(33、33’)、または前記第2の切換えピニオン(42)と前記第2の切換え歯車(34、34’)のいずれかを、係合状態に持っていくことができること、および、
前記少なくとも一本の中間軸(29、29’)が、前記出力軸(35)に回転駆動されるように接続されること
を特徴とする、押出成形設備。
【請求項2】
請求項1に記載の押出成形設備において、
前記入力軸(21)に第1の止めつば(26)が備えられること、および、
前記第1の切換え位置において回転方向(50)に駆動されると、前記第1の切換えピニオン(41)を前記第1の前記第1の止めつば(26)に対して押し付けるようなはす歯(48)が、前記第1の切換えピニオン(41)に備えられること
を特徴とする、押出成形設備。
【請求項3】
請求項1に記載の押出成形設備において、
前記入力軸(21)に第2の止めつば(27)が備えられること、および、
前記第2の切換え位置において回転方向(50)に駆動されると、前記第2の切換えピニオン(42)を前記第2の止めつば(27)に対して押し付けるようなはす歯(48)が、前記第2の切換えピニオン(42)に備えられること
を特徴とする、押出成形設備。
【請求項4】
請求項1に記載の押出成形設備において、
互いに正反対に対向する、それぞれ前記第1の切換え歯車(33、33’)と前記第2の切換え歯車(3434’)とを有している二本の中間軸(29、29’)が備えられていることを特徴とする、押出成形設備。
【請求項5】
請求項4に記載の押出成形設備において、
前記中間軸(29、29’)それぞれに、前記出力軸(35)に相対回転不能に取り付けられた出力歯車(39)と噛み合う出力ピニオン(40、40’)が備えられていることを特徴とする、押出成形設備。
【請求項6】
請求項1に記載の押出成形設備において、
前記二段切換え式ピニオン(25)が、前記第1の切換え位置と前記第2の切換え位置との間で中立切換え位置をとることを特徴とする、押出成形設備。
【請求項7】
請求項1に記載の押出成形設備において、
前記二段切換え式ピニオン(25)が、切換え駆動装置(44)に接続されることを特徴とする、押出成形設備。
【請求項8】
請求項7に記載の押出成形設備において、
前記切換え駆動装置(44)が、3ポジション・アクチュエータとして構成されることを特徴とする、押出成形設備。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−76444(P2010−76444A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−205865(P2009−205865)
【出願日】平成21年9月7日(2009.9.7)
【出願人】(501164665)コペリオン ゲーエムベーハー (20)
【Fターム(参考)】