説明

押圧スイッチ機構

【課題】 弾性材を利用してクリック感を生じさせる押圧スイッチ機構において、そのクリック感が発生する直前のピーク荷重を高く保持しながら当該クリック感をよりクリアにして操作性を向上させる。
【解決手段】 押圧操作を受けるスイッチノブ14と、基板側接点を有する回路基板18との間に弾性材20を介在させる。弾性材20は、回路基板18上に広がるベース22と、その貫通孔22a,22b内で押圧操作方向に変位する押圧変位部24と、ベース22と押圧変位部24とを連結する連結部26とを有し、連結部26は、その撓み変形により前記押圧変位部24の変位を許容しかつその変位が一定量に達した段階で座屈変形することによりクリック感を発生させるものとする。この連結部26及び押圧変位部24を一つのスイッチノブ14について複数組設け、これにより、座屈発生直前のピーク荷重を高く確保しながら連結部26を薄肉にしてクリック感の向上を図る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の操作パネルに設けられる押圧スイッチ機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のインストゥルメントパネル等に設けられる操作機構として、押圧操作を受ける操作部材とその裏側に配される回路基板の接点との間にゴム等の弾性材からなる押圧変位部を介在させ、前記操作部材の操作時に前記弾性材の弾性変形を利用してクリック感を生じさせるようにしたものが知られている。
【0003】
その一例として、下記特許文献1に記載されたスイッチ機構に用いられる弾性材の形状を図5に示す。図示の弾性材は、板状のベース1を有し、このベース1が図略の回路基板上に配設されている。前記ベース1には円形の貫通孔5が設けられ、その貫通孔5の内側の領域に円柱状の押圧変位部6が配され、この押圧変位部6が連結部2を介して前記貫通孔5の上端周縁部に連結されている。連結部2は微小な肉厚tをもつ薄肉で円錐台状に形成されており、前記押圧変位部6の軸方向すなわち押圧操作方向に対して角度αだけ傾斜している。
【0004】
図において、前記押圧変位部6の上端は図略の操作部材(例えば操作パネルに設けられるスイッチノブ)に当接する操作部材側当接部3とされ、下端は前記回路基板に設けられた接点と当接する可動接点部4とされている。そして、図示のような無変形状態で前記押圧変位部6の可動接点部4が回路基板上の接点に対して距離δだけ離間するように、前記連結部2の形状及び位置が設定されている。
【0005】
この構造において、図略の操作部材が押圧されると、その押圧力を受けて前記連結部2が撓み変形しながら押圧変位部6が図の下方に変位し始め、その変位が一定量に達した段階で前記連結部2が座屈することにより押圧荷重が急減して操作者にクリック感が与えられる。そして、前記押圧変位部6の可動接点部4が回路基板上の接点に到達し、そのまま押圧力が加えられることにより、スイッチの切換がなされる。
【0006】
このときの押圧ストロークと押圧荷重との関係を図6に示す。図において、押圧初期の段階では押圧抵抗が大きく、押圧ストロークに対する押圧荷重の増加率が大きくなっているが、押圧ストロークがS1に達した時点で連結部2に座屈が生じ、押圧荷重が急減することにより、操作者にクリック感が与えられる。具体的には、前記座屈が発生した時点から押圧ストロークの増加にかかわらず押圧荷重が前記座屈時の押圧荷重F0から極小荷重F1まで急減する。このようにして、押圧ストロークが前記距離δに等しいS2に達した時点で押圧変位部6の可動接点部4が回路基板の接点に当接し、それ以降は最終ストロークS3に到達するまでの間に押圧荷重がF1から最終値F2へ大きく跳ね上がる。この最終領域(押圧ストロークがS2〜S3の領域)における押圧ストロークと押圧荷重との関係は前記押圧変位部6の弾性変形の特性とほぼ等しくなる。
【0007】
その後、前記操作部材の押圧を解除すると、弾性材自身のもつ弾性復帰力により押圧変位部6が図5に示す初期位置まで復帰するが、その際には、図6に示すように、押圧ストロークと押圧荷重との関係は前記押圧操作時の軌跡と類似する軌跡を辿って逆行する。
【特許文献1】特開平7−201249号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記スイッチ機構において、連結部2の座屈によるクリック感をよりクリアにするためには、座屈発生直前の荷重F0とその後の極小荷重F1との落差(F0−F1)をなるべく大きくすればよい。このような荷重落差を拡大する手段としては、a)連結部2の肉厚tを小さくするか、あるいはb)当該連結部2の軸方向に対する傾斜角度αを小さくすることが考えられる。
【0009】
しかしながら、前記連結部2の肉厚tを小さくすると、その分だけ座屈発生直前の(すなわちクリック感が発生する直前の)ピーク荷重F0が低くなってしまい、操作者に十分な操作感触を与えることが難しくなる。また、連結部2の軸方向に対する傾斜角度αを小さくし過ぎると、座屈が生じなくなるおそれがあるため、当該傾斜角度αを小さく設定するには限界がある。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑み、弾性材を利用してクリック感を生じさせる押圧スイッチ機構において、そのクリック感が発生する直前のピーク荷重を高く保ちながら当該クリック感をよりクリアにして操作性の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するための手段として、本発明は、操作パネルに設けられて押圧操作を受ける操作部材と、前記操作パネルの裏側に配置され、基板側接点を有する回路基板と、この回路基板の面のうち前記操作パネルに対向する側の面に配設され、前記回路基板の基板側接点に対応する可動接点を有する弾性材とを備え、この弾性材は、前記回路基板上に広がる形状をなしてその厚み方向に貫通する貫通孔を有するベースと、前記貫通孔内に挿入可能な形状を有し、前記操作部材と前記回路基板との間に介在して当該操作部材に加えられる押圧力を前記回路基板側に伝達する押圧変位部と、この押圧変位部と前記ベースとを連結して当該押圧変位部を前記回路基板から離間する位置に保持する連結部とを備え、この連結部は、当該連結部の撓み変形により前記押圧変位部が前記操作部材の操作方向に変位して前記回路基板に到達するのを許容するとともに、その変位が一定量に達した段階で座屈変形することによりクリック感を発生させる形状を有しており、かつ、前記操作部材について複数の前記貫通孔、前記押圧変位部、及び前記連結部が設けられ、その複数の押圧変位部のうちの少なくとも一つの押圧変位部に前記可動接点が設けられ、この可動接点と接触可能な位置に前記基板側接点が設けられているものである。
【0012】
この構成によれば、一つの操作部材について複数の押圧変位部及び連結部が設けられているので、各連結部の肉厚を小さくしてもこれら連結部が座屈する直前のピーク荷重を高く保つことができ、その連結部の薄肉化によって前記ピーク荷重から座屈発生後の極小荷重までの荷重落差を拡大し、これによりクリック感をよりクリアにすることができる。すなわち、この構成によれば、クリック感の明確化と高いピーク荷重の確保とを両立させることができる。
【0013】
ここで、一つの操作部材について複数の押圧変位部及び連結部を設けるには、例えば単一の押圧変位部及び連結部をもつ弾性材を一つの操作部材について複数個具備するようにしてもよいが、一つの操作部材について一つの弾性材が配設され、かつ、この弾性材におけるベースの複数の箇所に、前記貫通孔、前記押圧変位部、及び連結部が設けられている構成とすれば、部品点数を減らして構造の簡素化及び組付作業の容易化を図ることができる。
【0014】
また、前記連結部が前記ベースにつながる箇所は適宜設定可能であるが、当該連結部が前記貫通孔の内周面のうち前記操作部材側の開口よりも奥側の箇所につながっており、その箇所からベース裏面までの距離よりも当該ベースの肉厚が大きくなっている構成とすれば、前記のつながり箇所からベース裏面までの距離は小さくしてこの部分の圧縮変形量を抑えながら、ベース全体の肉厚は大きく確保してその強度を高めることにより、押圧操作時に前記ベースと連結部とのつながり部分が弾性材の弾性変形によって押圧方向に変位する(すなわち逃げる)のを有効に抑止することができ、これにより、連結部の座屈が発生する押圧ストロークを安定させることができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、弾性材を利用してクリック感を生じさせる押圧スイッチ機構において、そのクリック感が発生する直前のピーク荷重を高く保持しながら当該クリック感をよりクリアにして操作性を向上させることができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の好ましい実施の形態を図1〜図4を参照しながら説明する。
【0017】
図1は、自動車等に設置される操作パネル10を示しており、この操作パネル10には、押圧操作を受ける操作部材として4個のスイッチノブ12,14,15,16が設けられている。
【0018】
これらのスイッチノブ12,14〜16は、その押圧方向(図1(a)では奥行き方向、同図(b)では上方向)に移動可能となるように操作パネル10に保持されている。このうちスイッチノブ12は正面視円形状をなし、これを囲むようにスイッチノブ14〜16が周方向に並設されており、スイッチノブ14〜16全体は前記スイッチノブ12を取り巻くドーナツ状をなしている。
【0019】
一方、前記操作パネル10の裏側にはこれと略平行に回路基板18(図1(b))が配設されている。この回路基板18上には、前記各スイッチノブ12,14〜16に対応してスイッチ接点が設けられており、そのスイッチ接点と各スイッチノブ12,14〜16との間にそれぞれ駆動ピン19及び弾性材20が介在している。
【0020】
前記駆動ピン19は、前記スイッチノブ12,14〜16の押圧操作方向に延び、その軸方向に移動可能となるように前記操作パネル10に保持されている。前記弾性材20は、前記回路基板18の面のうち操作パネル10に向かう側の面の上に配設されており、この弾性材20及び前記駆動ピン19を媒介として、前記各スイッチノブ12,14〜16の押圧力が前記回路基板18に伝達されるようになっている。
【0021】
次に、前記各弾性材20の具体的構造を説明する。ここでは、前記スイッチノブ14の裏側に設けられる弾性材20を例にとって図2(b)(c)及び図3を併せて参照しながら説明する。
【0022】
この弾性材20は、例えばシリコーンゴムのように適当な硬さをもつ弾性材料からなり、ベース22と、押圧変位部24と、これら押圧変位部24及びベース22を相互に連結する連結部26とが一体に成形されたものとなっている。しかも、この押圧スイッチ機構の特徴として、前記駆動ピン19がスイッチノブ14の裏側の左右2箇所に設けられるとともに、これら駆動ピン19の配設位置に対応して前記押圧変位部24及び連結部26もベース22の左右2箇所に設けられており、一つのスイッチノブ14について2つの駆動ピン19、押圧変位部24、及び連結部26を具備する構成となっている。
【0023】
なお、本発明では必ずしも前記スイッチノブ14等の操作部材と別に駆動ピン19を設けなくてもよく、例えば操作部材が直接弾性材20に当接するものであってもよい。
【0024】
前記ベース22は、回路基板18上に広がる板状をなし、このベース22の左右に貫通孔が設けられている。各貫通孔は、図3に示す例では、直径Daのパネル側(操作部材側)貫通孔22aとそれよりも僅かに小さい直径Dbの回路基板側貫通孔22bとが軸方向につながったものとなっており、両貫通孔22a,22bの境界部分に段差が存在している。
【0025】
前記押圧変位部24は、概ね円柱状をなし、前記貫通孔22a,22b内に挿入可能となるように当該貫通孔22a,22bの孔径よりも小さな外径を有している。この押圧変位部24は、前記各駆動ピン19と回路基板18との間に介在する位置に存しており、当該押圧変位部24の軸方向の一端は前記駆動ピン19の端部に当接する被押圧部24aとされ、他端は前記回路基板18上に対して接離する基板押圧部24bとされている。図3に示す例では、前記被押圧部24aが直径dの円形孔を囲む高さhの中空円筒状に形成され、基板押圧部24bの外径D2は前記被押圧部24aの外径D1よりも少し小さく設定されている。
【0026】
連結部26は、薄肉でかつパネル側(図2(b)(c)では下側、図3では左側)に向かうに従って縮径する向きの略円錐台状をなし、この連結部26のパネル側の端部は前記押圧変位部24の外周面において前記基板押圧部24b寄りの箇所につながっており、当該連結部26の回路基板側の端部は前記貫通孔の内周面において前記パネル側貫通孔24aと回路基板側貫通孔22bとの間の段差部分につながっている。
【0027】
つまり、前記連結部26は、前記貫通孔22a,22bの内周面のうち前記パネル側(操作部材側)貫通孔22aの開口よりも奥側の箇所につながっており、その箇所からベース裏面22cまでの距離よりも当該ベースの肉厚t1(図3)の方が大きくなっている。
【0028】
この連結部26は、図2(b)及び図3に示すように変形していない状態で、前記押圧変位部24の基板押圧部24bが回路基板18から軸方向すなわち押圧方向に距離δだけ離間するように、当該押圧変位部24を保持する形状をなしている。また、この連結部26は、後述のような撓み変形さらには座屈変形が確実になされる程度に、その肉厚t2が小さく設定され、かつ、軸方向に対する傾斜角度αが確保されている。
【0029】
前記両押圧変位部24のうち、一方の押圧変位部24(図1(b)の例では右側の押圧変位部24)の基板押圧部24bにカーボン薄膜等からなる可動接点が設けられている。また、これに対応して、回路基板18側では、前記基板押圧部24bの可動接点が当接する位置に基板側接点18aが設けられている。
【0030】
次に、この押圧スイッチ機構の作用を説明する。
【0031】
図1(a)(b)、図2(a)(b)、及び図3に示す初期状態から使用者によりスイッチノブ14が押圧操作されると、その押圧方向にスイッチノブ14さらには左右の駆動ピン19が変位し、各ピン19から押圧変位部24の被押圧部24aに伝えられ、これにより、連結部26の撓み変形を伴いながら押圧変位部24が前記押圧方向に変位する。そして、その変位が一定量に達した時点で連結部26が図2(c)に示すように座屈変形し、このときに押圧荷重が急減することにより操作者にクリック感が伝えられるとともに、押圧変位部24が急速に変位してその基板押圧部24bが回路基板18側に到達する。そして、可動接点をもつ押圧変位部24の当該可動接点とこれに対応する基板側接点18aとの接触圧が一定以上高まった時点でスイッチがオフからオンに切換えられる。
【0032】
ここで、前記クリック感をクリアにするためには、前記図6に示したように座屈発生直前の押圧荷重(ピーク荷重)F0から座屈発生後の極小荷重F1までの落差を大きくするのが有効であり、この落差を大きくするには前記連結部26の肉厚t2を小さくすればよいのであるが、従来は単一の操作部材について一組の押圧変位部24及び連結部26しか設けられていなかったので、前記肉厚t2を小さくすると前記ピーク荷重F0を高く保持することができず、よって当該肉厚t2を小さくするには著しい制限があった。これに対し、図示の押圧スイッチ機構では、一つの操作部材(図ではスイッチノブ14)について複数組(図例では2組)の押圧変位部24及び連結部26が設けられているので、各連結部26の肉厚t2を小さくしても座屈発生直前のピーク荷重F0は左右の押圧変位部24及び連結部26の協働によって高く保持することが可能であり、よって、高いピーク荷重とクリック感の明確化とを両立させることが可能になる。
【0033】
特に、図示の連結部26は、パネル側(操作部材側)貫通孔22aの開口よりも奥側の箇所(図ではパネル側貫通孔22aと回路基板側貫通孔22bとの段差部分)につながっており、そのつながり箇所からベース裏面22cまでの距離よりも当該ベースの肉厚t1(図3)の方が大きくなっているので、ベース22全体の肉厚t1は大きく確保しながら前記つながり箇所からベース裏面22cまでの距離を抑えてその部分の変形量を少なくすることにより、前記つながり箇所の押圧方向への変位を抑えて連結部26が座屈するまでの押圧ストロークS2及び押圧荷重F0をより安定させることが可能になる。
【0034】
なお、この実施の形態では、2つの押圧変位部24のうちの一方の押圧変位部24の基板押圧部24bに可動接点が設けられている構成となっているが、例えば双方の押圧変位部24の基板押圧部24bにそれぞれ可動接点を設け、各可動接点に対応する位置に基板側接点18aを設けるようにしてもよい。この場合、例えば双方の接点が閉じたときにのみ、あるいは少なくとも一方の接点が閉じたときに、スイッチがオンに切換わるように設定を行えばよい。
【0035】
また、本発明において押圧変位部24の具体的な個数や形状は問わず、適宜設定可能である。連結部26の形状についても、その撓み変形により前記押圧変位部24の変位を許容し、かつ、適当なタイミングで座屈を生じるものであればよく、例えばドーム状に湾曲したものや、ベース貫通孔の周方向に間欠的に配されたものであってもよい。
【0036】
また、弾性材20の具体的な材質も適宜設定可能であり、前記シリコーンゴムの他、例えばエチレンプロピレンゴム(EPDM)や熱可塑性エラストマー(TPE)が適用可能である。一般的には、国際ゴム硬さ(JIS K 6253)が60〜70程度のものが好ましい。
【実施例1】
【0037】
まず、本発明の実施例に対する比較例として、一つの操作部材についての押圧変位部24及び連結部26の個数を1個とし、かつ、図4に示すように連結部26がベース22の貫通孔22bの内周面に対しそのパネル側開口(図では左側開口)の周縁につながった形状の弾性材20′を設定する(ただし、本願請求項1及び2に係る発明はかかる形状の弾性材20′を除外する趣旨ではない。)。この比較例に係る弾性材20′の仕様は次のとおりである。
【0038】
・弾性材20′の材質…シリコーンゴム(国際ゴム硬さ60)
・ベース22の肉厚t1…1.2mm
・貫通孔…回路基板側貫通孔22bのみで直径Db=5mm
・ベース裏面22cから押圧変位部24の頂部までの高さ寸法H…5mm
・被押圧部24aの外径D1…4mm
・被押圧部24aの内径d…2mm
・基板押圧部24bの外径D2…3mm
・基板押圧部24bから回路基板18までの距離δ…1.2mm
・連結部26の肉厚t2…0.36mm
・軸方向に対する連結部26の傾斜角度α…35°
このような仕様に基づきシミュレーションを行ったところ、前記図6に示す押圧ストロークと押圧荷重の特性について次のような結果が得られた。
【0039】
・座屈発生直前のピーク荷重F0…3.0N
・ピーク荷重F0から極小荷重F1までの荷重落差(F0−F1)…1.0N
・座屈発生に至るまでの押圧ストロークS1…0.8mm
・回路基板に到達するまでのストロークS2(=δ)…1.3mm
・最終押圧ストロークS3…1.8mm
・最終押圧荷重F2…10.0N
これに対し、本発明の実施例として、1つの操作部材についての押圧変位部24及び連結部26の個数を2個とし、かつ、前記図1〜図3に示すように連結部26がベース22の貫通孔に対し両貫通孔22a,22bの段差部分につながった形状の弾性材20について、次のような仕様を設定する。なお、弾性材20の材質、押圧変位部24の形状及び寸法、ベース裏面22cから押圧変位部24の頂部までの高さ寸法H、基板押圧部24bから回路基板18までの距離δ、及び軸方向に対する連結部26の傾斜角度αは前記比較例と全く同一である。
【0040】
・ベース22の肉厚t1…2mm
・パネル側貫通孔22aの直径Da…6.2mm
・回路基板側貫通孔22bの直径Db…5.5mm
・連結部26の肉厚t2…0.27mm
このような仕様に基づきシミュレーションを行ったところ、前記図6に示す押圧ストロークと押圧荷重の特性について次のような結果が得られた。
【0041】
・座屈発生直前のピーク荷重F0…3.0N
・ピーク荷重F0から極小荷重F1までの荷重落差(F0−F1)…1.8N
・座屈発生に至るまでの押圧ストロークS1…0.6mm
・回路基板に到達するまでのストロークS2(=δ)…1.2mm
・最終押圧ストロークS3…1.7mm
・最終押圧荷重F2…5.4N
この実施例と前記比較例とを比較参照して明らかなように、同実施例では、連結部26の肉厚t2を0.27mmとして比較例での肉厚t2(=0.36mm)よりも0.09mm薄くしているので、その分、荷重落差(F0−F1)を比較例の1.0Nから1.8Nまで拡大することができ、クリック感をきわめて顕著にすることが可能となる。しかも、一つの操作部材について2組の押圧変位部24及び連結部26を設けているので、前記のように連結部26の肉厚t2を薄くしているにも関わらず座屈発生直前のピーク荷重F0を比較例と同等の荷重(=3.0N)に保つことができる。
【0042】
また、実施例では、連結部26と貫通孔内周面とのつながり箇所からベース裏面22cまでの距離を比較例と同じく短く保ちながら、ベース22全体の肉厚t1を比較例の1.2mmよりも大幅に増やすことができるので(実施例では2mm)、ベース22の強度を高めて当該ベース22と連結部26とのつながり箇所が押圧方向に変位する(すなわち押圧方向に逃げる)のを抑止することにより、押圧開始から座屈発生に至るまでの押圧ストロークS1を比較例の0.8mmから0.6mmまで短縮して早めにクリック感を発生させることが可能となっている。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】(a)は本発明の押圧スイッチ機構が設けられた操作パネルの正面図、(b)は(a)のA−A線断面図である。
【図2】(a)は前記押圧スイッチ機構に設けられる弾性材の正面図、(b)は(a)のB−B線断面図である。(c)は当該B−B線断面図に相当する断面図であって前記弾性材の連結部が座屈した状態を示す図である。
【図3】前記弾性材の主要寸法を示す断面側面図である。
【図4】比較例における弾性材の主要寸法を示す断面側面図である。
【図5】従来の押圧スイッチ機構における弾性材の形状を示す断面図である。
【図6】弾性材を利用した押圧スイッチ機構の押圧ストロークと押圧荷重との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0044】
10 操作パネル
12,14〜16 スイッチノブ(操作部材)
18 回路基板
20 弾性材
22 ベース
22a,22b 貫通孔
24 押圧変位部
26 連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作パネルに設けられて押圧操作を受ける操作部材と、前記操作パネルの裏側に配置され、基板側接点を有する回路基板と、この回路基板の面のうち前記操作パネルに対向する側の面に配設され、前記回路基板の基板側接点に対応する可動接点を有する弾性材とを備え、この弾性材は、前記回路基板上に広がる形状をなしてその厚み方向に貫通する貫通孔を有するベースと、前記貫通孔内に挿入可能な形状を有し、前記操作部材と前記回路基板との間に介在して当該操作部材に加えられる押圧力を前記回路基板側に伝達する押圧変位部と、この押圧変位部と前記ベースとを連結して当該押圧変位部を前記回路基板から離間する位置に保持する連結部とを備え、この連結部は、当該連結部の撓み変形により前記押圧変位部が前記操作部材の操作方向に変位して前記回路基板に到達するのを許容するとともに、その変位が一定量に達した段階で座屈変形することによりクリック感を発生させる形状を有しており、かつ、前記操作部材について複数の前記貫通孔、前記押圧変位部、及び前記連結部が設けられ、その複数の押圧変位部のうちの少なくとも一つの押圧変位部に前記可動接点が設けられ、この可動接点と接触可能な位置に前記基板側接点が設けられていることを特徴とする押圧スイッチ機構。
【請求項2】
請求項1記載の押圧スイッチ機構において、一つの操作部材について一つの弾性材が配設され、かつ、この弾性材におけるベースの複数の箇所に、前記貫通孔、前記押圧変位部、及び連結部が設けられていることを特徴とする押圧スイッチ機構。
【請求項3】
請求項1または2記載の押圧スイッチ機構において、前記連結部は、前記貫通孔の内周面のうち前記操作部材側の開口よりも奥側の箇所につながっており、その箇所からベース裏面までの距離よりも当該ベースの肉厚が大きくなっていることを特徴とする押圧スイッチ機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−92907(P2006−92907A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−276958(P2004−276958)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】