説明

押圧スイッチ装置

【課題】平面視(幅方向)で、コンパクトにした押圧スイッチ装置の提供。
【解決手段】平面視で下側バネ接点12aと上側バネ接点12bの縁部どうしが重なるように配置しているため、下側バネ接点12aと上側バネ接点12bの間のピッチを従来に比べて小さくすることができる。よってバネ接点12a,12bを高密度に効率的に設けることができる。したがって押圧スイッチ装置9の幅を従来より小さくすることができ、小型化された電子機器に好適に装備することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機、PDA、リモコン、デジタルカメラ、AV機器、車載電装機器等の各種電子機器の入力に用いられ、押圧操作でバネ接点を変形させて入力を行う押圧スイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種電子機器には、その機器の多機能化に伴って押圧スイッチ装置が装備されている。例えば図12で示すような携帯電話機1の押圧スイッチ装置2は、外形表面に表れるキートップ3が筐体4の操作開口4aより複数表出しており、これらキートップ3は方向指示入力や決定指示入力などの機能操作を行う第1群と、数字入力や英文字入力などを行う第2群とで入力操作部を構成している。このうち第1群には、上下左右の方向操作を行う円環状のキートップ3aと、その中央にあって決定操作を行う中央キートップ3bとがあり、多方向入力を行う押圧スイッチ装置として用いられる。
【0003】
この押圧スイッチ装置2は、図13で示すように、キートップ3がゴム状弾性体でなるベースシート5に対し接着剤6で一体に固着されており、各キートップ3に対応して基板7上に接点スイッチとしてのバネ接点8が配置されている。例えば特許文献1,特許文献2に記載の多方向入力スイッチは、図14で示すように、基板7上では中央キートップ3bに対応して1個のバネ接点8aが配置され、このバネ接点8aを囲むように円環状のキートップ3aに対応する4個のバネ接点8bが中央のバネ接点8aと接触しないようバネ接点8aを取り囲む環状に配置されている。そして操作者がキートップ3を押圧すれば、ベースシート5に形成した押し子5aによってバネ接点8が押圧されて入力される。
【特許文献1】特開2001−101956号公報
【特許文献2】特開2003−272485号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電子機器の小型化に伴い押圧スイッチ装置の平面視で、即ち押圧スイッチ装置の押圧方向に対する交差方向で入力操作部を縮小化する必要がある。しかしながら、上記第1群の入力操作部では、多数(図14では5個)のバネ接点8を配置する必要があり縮小することが難しい。
【0005】
以上のような背景の下になされたのが本発明である。すなわち本発明は、平面視で、換言すれば、幅方向にコンパクトにした押圧スイッチ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく本発明は以下のように構成される。即ち、本発明は、押圧操作でバネ接点を変形させて入力を行う押圧スイッチ装置について、押圧操作側に位置する上側基板と機器内側に位置する下側基板とを有し、上側基板と下側基板の各々の対向面に、上側基板に固着する上側バネ接点と、下側基板に固着する下側バネ接点とを設け、上下方向で上側バネ接点と下側バネ接点が重なりを有することを特徴とする押圧スイッチ装置を提供する。
【0007】
本発明では、基板に対する平面視で上側バネ接点と下側バネ接点が重なりを有することとしたため、相互に対向するように配置したバネ接点のピッチは、接触しないように配置した従来技術におけるバネ接点のピッチに比べて小さくでき、バネ接点を高密度に、効率的に配置でき、押圧スイッチ装置の幅を小さくすることができる。
【0008】
上側バネ接点と下側バネ接点がともに円形ドーム状であり、両バネ接点の径方向の重なり長さが両バネ接点の半径の長さよりも短い押圧スイッチ装置とすることができる。上側バネ接点と下側バネ接点がともに円形ドーム状であり、両バネ接点の径方向の重なり長さが両バネ接点の半径の長さよりも短くすることで、バネ接点の頂部中心が対向するバネ接点と重ならないため、対向するバネ接点に干渉されることなく押圧操作することができる。よって確実な入力操作を実現することができる。
【0009】
上側基板が押圧操作で変形する可撓性を有する押圧スイッチ装置とすることができる。上側基板が押圧操作で変形する可撓性を有するため、上側基板を押圧することでスイッチ入力することができる。
【0010】
上側基板と下側基板が一枚の基板の曲げ形成による連続面として形成されている押圧スイッチ装置とすることができる。上側基板と下側基板が一枚の基板の曲げ形成による連続面として形成されているため、対向する基板を一枚の材料で構成でき、部品点数を少なくすることができる。また曲げ形成によって基板を対向させることができるため、簡単に位置決めすることができる。
【0011】
バネ接点を押圧する押し子を該バネ接点の頂部中心に設ける押圧スイッチ装置とすることができる。バネ接点を押圧する押し子を該バネ接点の頂部中心に設けたため、押し子とバネ接点との位置ずれによる誤動作を少なくすることができる。また、押し子とバネ接点とを同一部材で一体に形成することができ、部品点数を減らすことができる。
【0012】
そして本発明は、上側基板と下側基板の何れか一方に方向指示入力を担う複数のバネ接点を環状に設け、上側基板と下側基板の何れか他方に決定指示入力を担う一つのバネ接点を前記環状の中心と対向する位置に設ける押圧スイッチ装置とすることができる。
【0013】
上側基板と下側基板の何れか一方に方向指示入力を担う複数のバネ接点を環状に設け、上側基板と下側基板の何れか他方に決定指示入力を担う一つのバネ接点を前記環状の中心と対向する位置に設けたため、決定指示入力と方向指示入力を行うことができる押圧スイッチ装置を幅方向で小さくすることができる。
【0014】
また、本発明は、上側基板と下側基板の双方に方向指示入力を担う複数のバネ接点を設け、上側基板と下側基板の何れか一方に決定指示入力を担う一つのバネ接点を設ける押圧スイッチ装置とすることができる。
【0015】
上側基板と下側基板の双方に方向指示入力を担う複数のバネ接点を設け、上側基板と下側基板の何れか一方に決定指示入力を担う一つのバネ接点を設けたため、決定指示入力と多数の方向指示入力を行うことができる押圧スイッチ装置を幅方向で小さくすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の押圧スイッチ装置では、相互に対向するように配置したバネ接点の配置ピッチを小さくでき、バネ接点を高密度に効率的に配置でき、平面視で、即ち押圧スイッチ装置の幅方向でその大きさを小さくすることができる。よって小型化された電子機器に好適に装備することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態の例について図面を参照しつつ説明する。なお、各実施形態で共通する構成については、同一符号を付して重複説明を省略する。また「電子機器」としての携帯電話機1に本発明の押圧スイッチ装置を適用する場合について説明する。
【0018】
第1実施形態〔図1〜図3〕: 図1には第1実施形態の押圧スイッチ装置9の断面図を示す。図1で示すように第1実施形態の押圧スイッチ装置9は、携帯電話機1の内側に位置する下側基板10と、押圧操作側に位置する上側基板11、下側基板10の上面10aに固着される下側バネ接点12a、上側基板11の下面11aに固着される上側バネ接点12b、バネ接点12a,12bを固着する固定テープ13、そして、各バネ接点12a,12bを押圧する押し子14を備えている。
【0019】
下側基板10は、上側基板11と対向する上面10aに、下側バネ接点12aとその下側バネ接点12aを固定する固定テープ13と上側バネ接点12bを押圧する押し子14とを備えている。また、下側バネ接点12aの座屈により下側バネ接点12aと接触する回路接点(図示せず)や回路(図示せず)が形成されている。下側基板10は、金属箔や導電インクにて回路接点を形成できる絶縁性の樹脂を材料として用いることが好ましい。これらの樹脂には例えばガラスエポキシ樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ナイロン樹脂、これらのアロエ樹脂などが挙げられる。
【0020】
上側基板11は、下側基板10と対向する下面11aに、上側バネ接点12bとその上側バネ接点12bを固定する固定テープ13と下側バネ接点12aを押圧する押し子14とを備えている。そして、上側バネ接点12bの座屈により上側バネ接点12bと接触する回路接点(図示せず)や回路(図示せず)が形成されている。また、上側基板11の上面11bには、押圧操作位置に入力内容を表す文字や記号、数字などを表す表示層(図示せず)を形成していても良い。この上側基板11も下側基板10と同一の材料を用いて形成することができるが、下側基板10が押圧しても変形しない程度の剛性を有する基板である場合には、上側基板11は、押圧操作で変形できる程度の可撓性を有する必要があり、下側基板10とは異なる樹脂や、異なる厚みの樹脂を用いることもできる。厚さ0.01mm〜0.3mmのPET樹脂フィルムを用いることが好ましいく、本実施形態では厚さ0.1mmのPET樹脂フィルムを用いている。
【0021】
バネ接点12a,12bの形状として円形ドーム状とすることが好ましい。本実施形態ではバネ接点12a,12bともに同径、同高である同じ大きさのバネ接点を用いているが、異なる大きさのバネ接点を用いることも可能である。下側基板10の上面10aに設けられている下側バネ接点12aと、上側基板11の下面11aに設けられている上側バネ接点12bとは、平面視で、換言すれば上下方向で縁の部分(縁部)どうしが重なるように配置されている。すなわち、上側バネ接点12bを下側基板10に対向する方向に投影すると、投影された上側バネ接点12bは下側バネ接点12aとその縁部において重なるのである。図2には、下側基板10の上面10aへ上側バネ接点12bを投影した図を表す。この図2で示すように、このバネ接点12a,12bの径方向の重なり長さLは、下側バネ接点12aや上側バネ接点12bの半径より小さい。
【0022】
バネ接点12a,12bの材質は、繰り返し屈曲変形できる弾性材料であることが好ましい。例えば金属、樹脂、ゴム状弾性体などを用いることができる。金属では、ステンレス鋼、リン青銅などを使用でき、樹脂では、PET樹脂、PBT樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂などを使用でき、ゴム状弾性体では、シリコーンゴムなどの合成ゴム、天然ゴム、熱可塑性エラストマーなどを使用できる。バネ接点12a,12bを、金属、樹脂、ゴム状弾性体などの押圧変形可能な材料でしたため、バネ接点12a,12bがクリック感を発現する屈曲変形を繰り返し実現することができる。なかでも、金属でなるバネ接点12a,12bは他材料に比べクリック感が明確に伝わり易く、確実な入力操作を行うことができる。またゴム状弾性体でなるバネ接点12a,12bはドーム形状の頂部に押し子14を突出成形し易い。バネ接点12a,12bの大きさは適宜要求される押圧スイッチ装置9の大きさに依存するが、コンパクトな押圧スイッチ装置9に用いるバネ接点12a,12bとして、直径約4mm、高さ約0.3mm程度の金属バネ接点を用いることは好ましい。
【0023】
バネ接点12a,12bを基板10,11に固着する固定テープ13は、バネ接点12a,12bの頂部が表出するように、バネ接点12a,12bの縁部を基板10,11に固定している。即ち、バネ接点12a,12bの直径よりやや小さく形成された固定テープ13の透孔13aからバネ接点12a,12bの頂部が露出するようにしているが、バネ接点12a,12bを基板10,11に固定できればバネ接点12a,12bの縁の一部を固着するものであっても良いし、バネ接点12a,12bの頂部を含めバネ接点12a,12b全体を覆うように固定するものであっても良い。但し、バネ接点12a,12bの頂部を覆わずにバネ接点12a,12bの縁で固着する方が厚み方向に厚くならず好ましい。固定テープ13には、アクリル系粘着層とPET基材を積層した粘着テープを用いることができる。
【0024】
押し子14は、対向するバネ接点12a,12bを的確に押圧するように、押圧するバネ接点12a,12bの頂部と整合する位置に設けられている。即ち、下側バネ接点12aを押圧する押し子14(押し子14b)は下側バネ接点12aの中心に対向する上側基板10の下面11aに、上側バネ接点12bを押圧する押し子14(押し子14a)は上側バネ接点12bの中心に対向する下側基板11の上面10aに、それぞれ設けられている。押し子14の大きさ、形状はバネ接点12a,12bの大きさに応じた適度な大きさ、形状とすることができるが、直径約4mm、高さ約0.3mm程度の金属バネ接点に対しては、幅1mm、高さ0.3mm程度の円柱状とするのは好ましく、形状は円柱状のほか、半球状、ドーム状、円錐台状などとしてもよい。押し子14の材質は、バネ接点に損傷を与えることなく押圧できる樹脂又はゴム状弾性体が好ましい。具体的には熱硬化型、光硬化型、湿気硬化型などの反応硬化性樹脂や反応硬化性ゴム、又は加熱溶融後に冷却固化される熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマーなどを使用できる。例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、シリコーンゴムなどが挙げられる。
【0025】
押圧スイッチ装置9の製造方法を説明する。図3には押圧スイッチ装置9における製造工程の説明図を示す。先ず図3(A)で示すように、固定テープ13に形成した透孔13aから頂部が表出するように、固着テープ13で下側バネ接点12aを下側基板10の上に固着する。この際、下側基板10に形成した回路接点(図示せず)と下側バネ接点12aの頂部の中心とを整合させる。同様にして、上側基板11に上側バネ接点12bを固着する。
【0026】
次に、図3(B)で示すように、押し子成形型に液状の紫外線硬化樹脂を注入したのち、下側基板10に押し子成形型を整合して紫外線を照射する。そして紫外線硬化樹脂を硬化させて、図3(C)で示すように押し子14を形成する。この場合、押し子14を固定テープ13上に設けても良いし、固定テープ13のない基板10上に設けても良い。しかしながら、押し子14の固着性の観点からは、押し子14を形成する部位に固着テープ13がこないよう、予め押し子部分をくりぬいた固着テープ13を用い、固着テープ13のない下側基板10上に押し子14を設けることが好ましい。押し子成形型は、透明シリコーン樹脂などの透明樹脂、又はガラスなどで形成できる。光硬化型樹脂を用いない場合は、押し子成形型に金属や有色樹脂などの不透明樹脂を用いてもよい。同様にして、上側基板11にも押し子14を形成する。最後に下側基板10の下側バネ接点12aの頂部中心と上側基板11の押し子14の中心とを対向させるとともに、上側基板11の上側バネ接点12bの頂部中心と下側基板10の押し子14の中心とを対向させて固定して押圧スイッチ装置9を得る。
【0027】
本実施形態の押圧スイッチ装置9の作用・効果について説明する。本実施形態の押圧スイッチ装置9によれば、平面視で下側バネ接点12aと上側バネ接点12bの縁部どうしが重なるように配置しているため、下側バネ接点12aと上側バネ接点12bの間のピッチを従来に比べて小さくすることができる。よってバネ接点12a,12bを高密度に効率的に設けることができる。したがって押圧スイッチ装置9の幅を従来より小さくすることができ、小型化された電子機器に好適に装備することができる。
【0028】
下側バネ接点12aと上側バネ接点12bの重なりを径方向で相互にその半径よりも小さくしているため、下側バネ接点12aの頂部中心と上側バネ接点12b、または上側バネ接点12bの頂部中心と下側バネ接点12aを平面視で重ならないようにすることができる。よって下側バネ接点12aと上側バネ接点12bが相互に干渉することなくバネ接点12a,12bを押圧することができ、確実な入力操作を実現することができる。
【0029】
また、下側バネ接点12aと上側バネ接点12bの重なりを径方向で相互にその半径よりも小さくしているため、下側バネ接点12aに対向する押し子14を上側バネ接点12b上に、上側バネ接点12bに対向する押し子14を下側バネ接点12a上に設けることなく、押し子14を基板10,11または固定テープ13上に設けることができるため、確実な入力操作を実現することができる。
【0030】
第2実施形態〔図4,図5〕: 図4には第2実施形態の押圧スイッチ装置15の断面図を、図5は図2と同様に、下側基板10の上面10aへ上側バネ接点12bを投影した図を表す。第2実施形態の押圧スイッチ装置15が第1実施形態の押圧スイッチ装置9と異なるのは、図4や図5で示すように、下側基板10に設けられている下側バネ接点12aと、上側基板11に設けられている押し子14の数量及び配置である。
【0031】
下側基板10の上面10aに設けられている下側バネ接点12aは4個あり、同心円の円周状に等間隔で配置されている。そして上側基板11の下面11aに設けられている上側バネ接点12bは平面視でこれら4個の下側バネ接点12aで形成される該円周の中心と対向しており、下側バネ接点12aと上側バネ接点12bとの縁部どうしが重なるように配置され、この重なり長さは図5で示すように第1実施形態と同様にバネ接点12a,12bの半径より小さい。なお、下側基板10に設けた下側バネ接点12aは方向指示入力用であり、上側基板11に設けた上側バネ接点12bは決定指示入力用である。
【0032】
上側基板11の下面11aに設けた押し子14は4個あり、下側基板10に設けた下側バネ接点12aの頂部中心と整合するように、下側バネ接点12aが配置する円と同心円の円周状に等間隔で配置されている。
【0033】
第2実施形態の押圧スイッチ装置15の製造方法を説明する。先ず第1実施形態の押圧スイッチ装置9と同様に、4つの透孔13aを形成した固定テープ13で4個の下側バネ接点12aを下側基板10に固定し、1つの透孔13aを形成した固定テープ13で1個の上側バネ接点12bを上側基板11に固定する。そして、下側基板10に1個の押し子14を、上側基板11に4個の押し子14を形成したのち、下側基板10の下側バネ接点12aと上側基板11の押し子14、上側基板11の上側バネ接点12bと下側基板10の押し子14とをそれぞれ対向させて下側基板10と上側基板11とを整合、固定して押圧スイッチ装置15を得る。
【0034】
第2実施形態の押圧スイッチ装置15の作用・効果について説明する。第1実施形態の押圧スイッチ装置9の作用・効果に加え、第2実施形態の押圧スイッチ装置15によれば、平面視で方向指示入力用の下側バネ接点12aと決定指示入力用の上側バネ接点12bの縁部どうしを互いに重なるように配置しているため、下側バネ接点12aと上側バネ接点12bの間のピッチを図14で示す従来の多方向押圧スイッチ装置におけるピッチに比べて小さくすることができる。よって下側バネ接点12aと上側バネ接点12bを高密度に、効率的に設けることができる。したがって押圧スイッチ装置15の幅を従来より小さくすることができ、小型化された電子機器に好適に装備することができる。
【0035】
第3実施形態〔図6,図7〕: 図6には第3実施形態の押圧スイッチ装置20の断面図を、図7は図2と同様に、下側基板10の上面10aへ上側バネ接点12bを投影した図を表す。第3実施形態の押圧スイッチ装置20が第2実施形態の押圧スイッチ装置15と異なるのは、下側基板10に設けられている下側バネ接点12aの位置がやや離れて設けられていることと、上側基板11にも上側バネ接点12bが複数設けられていることである。こうして、第2実施形態の押圧スイッチ装置15では4方向指示入力が行えうるのに対して、第3実施形態の押圧スイッチ装置20では8方向指示入力を行うことができる。
【0036】
押圧スイッチ装置20の構造は次のとおりである。下側基板10の上面10aに設けられている下側バネ接点12aは5個あり、同心円の円周状に等間隔で配置されている4個の下側バネ接点12aと、その同心円の中心に配置されている1個の下側バネ接点12aとでなる。一方で、上側基板11の下面11aに設けられている上側バネ接点12bは4個あり、同心円の円周状に等間隔で配置されている。そして同心円上に配置された上側バネ接点12bと下側バネ接点12aは、平面視で同じ同心円の円周上に交互に配置されているとともに、下側バネ接点12aと上側バネ接点12bとの縁部どうしが重なるように配置されている。バネ接点12a,12bどうしの重なり長さもバネ接点12a,12bの半径より小さい。同心円上に設けられた下側バネ接点12aも上側バネ接点12bも方向指示入力用であり、同心円の中心に設けられた下側バネ接点12aが決定指示入力用である。
【0037】
第3実施形態の押圧スイッチ装置20も第1実施形態で示した押圧スイッチ装置9や第2実施形態で示した押圧操作スイッチ15と同様にして製造することができる。
【0038】
第3実施形態の押圧スイッチ装置15の作用・効果は、第2実施形態の押圧スイッチ装置15の作用・効果に加え、8方向の方向指示入力を行うことができる。
【0039】
第1変形例〔図8〕: 図8には第1実施形態の変形例である押圧スイッチ装置17の断面図を示す。第1実施形態では下側基板10と上側基板11を用いる例を示したが、押圧スイッチ装置17では下側基板10と上側基板11を同一の材料で形成し、一枚の基板18の曲げ形成による連続面として形成している。
【0040】
第1変形例の押圧スイッチ装置17では第1実施形態と同様の作用・効果を発揮できるほか、1つの基板18を曲げ形成して上側基板11と下側基板10を形成しているため、部品点数を少なくすることができる。
【0041】
押圧スイッチ装置17は、平面状の基板18の同一基板面18aに、下側バネ接点12aと上側バネ接点12b、そして押し子14形成し、その後基板18を曲げ形成して製造する。このためバネ接点12a,12bの形成および押し子14の形成を各々1工程で完結でき、簡単に製造することができる。さらに、曲げ形成によるため上側基板11と下側基板10の位置決めが容易である。
【0042】
第1変形例で説明した同一基板18からの曲げ形成は、第2実施形態や第3実施形態の押圧スイッチ装置15,16に対しても適用することができる。
【0043】
第2変形例〔図9〕: 図9には第1実施形態の変形である押圧スイッチ装置19の断面図を示す。第1実施形態では押し子14を基板10,11上に固定する例を示したが、第2変形例の押圧スイッチ装置19では、バネ接点12a,12bの各々の頂部中心に設けることとしている。このように構成しても第1実施形態と同様の作用・効果を奏することができる。また、押し子14をバネ接点12a,12bの頂部中心に設けたため、押し子14とバネ接点12a,12bを同一部材で一体に設けることができる。この場合、既存のバネ接点12a,12bとは別に押し子14を固着したような形状とすることもできるし、バネ接点12a,12b自体の頂部中心に突起を設けて押し子14とすることもできる。押し子14とバネ接点12a,12bを同一部材で一体に設けることによって、部品点数を減少し、組み立てを容易にすることができる。また、上側基板11と下側基板10との位置決めが厳密になされていなくても正確な押圧操作を行うことができる。
【0044】
第2変形例で説明したバネ接点12a,12b上に押し子14を設ける構成は、第2実施形態や第3実施形態の押圧スイッチ装置15,16に対しても適用することができる。
【0045】
第3変形例〔図10,図11〕: 図10には第3実施形態の押圧スイッチ装置20の断面図を、図11にはその上側基板21の平面図を示す。図10や図11で示すように第3変形例の押圧スイッチ装置20が第2実施形態の押圧スイッチ装置15と異なるのは、上側基板に切溝21cを設けた上側基板21としたことと、上側基板21のさらに上にキートップ22,23を設けたことである。
【0046】
上側基板21に設けた切溝21cは、図11に示すように、上側バネ接点12bと、その周りに位置する押し子14との間を通り上側バネ接点12bの3方向を囲むようにU字形状に、上側基板21の肉厚を貫通して形成されている。
【0047】
また、キートップ22,23は、平面視で円形状の中央キートップ22とその外周を囲む円環キートップ23から構成されている。中央キートップ22に設けた環状鍔部22aは円環キートップ23からの脱落を防止している。また、円環キートップ23に設けた環状鍔部23aは円環キートップ23の機器(図示せず)からの脱落を防止している。中央キートップ22は上側バネ接点12bに対応する位置に、円環キートップ23は下側バネ接点12aにそれぞれ対応する位置に設けられている。キートップ22,23は上側基板21に対して接着剤24で固定されている。
【0048】
第3変形例の押圧スイッチ装置20は、予め切溝21cを設けた上側基板21を用いて第2実施形態の押圧スイッチ装置15と同様に製造し、キートップ22,23のない押圧スイッチ装置を得る。そして、上側基板21の上面21bにキートップ22,23を接着剤24で固着することで押圧スイッチ装置20を得る。
【0049】
第3変形例の押圧スイッチ装置20は、第2実施形態の押圧スイッチ装置15と同様の作用・効果を奏するほか、上側基板21に切溝21cを形成するため、中央キートップ22が押圧変形し易くなり、低荷重で入力操作をすることができる。
【0050】
第3変形例で説明した上側基板に切溝21cを設ける構成や、キートップ22,23を設ける構成は、第1実施形態や第3実施形態の押圧スイッチ装置9,16に対しても適用することができる。
【0051】
その他の変形例: 上記各実施形態ではバネ接点12a,12bと押し子14との間に隙間が生じていたが、こうした隙間がなく、押圧操作しない場合においても、バネ接点12a,12bと押し子14とが接触する構成とすることもできる。このようにしても第1実施形態〜第3実施形態と同様の作用・効果を発揮することができる。
【0052】
第2実施形態や第3実施形態において、上側バネ接点12bを下側基板10の対向位置に、下側バネ接点12aを上側基板11の対向位置に設けるように変更することができる。
【0053】
第3変形例において切溝21cはU字形状としたが、押圧操作部分を撓み易くする形状であればそれ以外の形状であっても良い。例えば、コ字形状のようなU字形状に近い一辺で指示するような形状から、2本の平行線のような形状であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】第1実施形態の押圧スイッチ装置の断面図。
【図2】第1実施形態による押圧スイッチ装置の下側基板上に上側バネ接点を投影した状態を示す平面図。
【図3】第1実施形態による押圧スイッチ装置の製造工程の説明図であり、分図(A)はバネ接点を固定する工程を示し、分図(B)は押し子を形成する工程を示し、分図(C)は押し子を固着した状態を示す。
【図4】第2実施形態の押圧スイッチ装置の断面図。
【図5】第2実施形態による押圧スイッチ装置の下側基板上に上側バネ接点を投影した状態を示す平面図。
【図6】第3実施形態の押圧スイッチ装置の断面図。
【図7】第3実施形態による押圧スイッチ装置の下側基板上に上側バネ接点を投影した状態を示す平面図。
【図8】第1変形例による押圧スイッチ装置の断面図。
【図9】第2変形例による押圧スイッチ装置の断面図。
【図10】第3変形例による押圧スイッチ装置の断面図。
【図11】第3実施形態による押圧スイッチ装置の上側基板の平面図。
【図12】携帯電話機の平面図。
【図13】従来の押圧スイッチ装置の断面図。
【図14】従来の押圧スイッチ装置の基板の平面図。
【符号の説明】
【0055】
1 携帯電話機
2 押圧スイッチ装置(従来例)
3 キートップ
3a 円環状のキートップ
3b 中央キートップ
4 筐体
4a 操作開口
5 ベースシート
6 接着剤
7 基板
8 バネ接点
8a バネ接点(決定指示入力用)
8b バネ接点(方向指示入力用)
9 押圧スイッチ装置(第1実施形態)
10 下側基板
10a 上面
11 上側基板
11a 下面
12a 下側バネ接点
12b 上側バネ接点
13 固定テープ
14 押し子
15 押圧スイッチ装置(第2実施形態)
16 押圧スイッチ装置(第3実施形態)
17 押圧スイッチ装置(第1変形例)
18 基板
19 押圧スイッチ装置(第2変形例)
20 押圧スイッチ装置(第3変形例)
21 上側基板
21a 下面
21b 上面
21c 切溝
22 中央キートップ
22a 環状鍔部
23 円環キートップ
23a 環状鍔部
24 接着剤


【特許請求の範囲】
【請求項1】
押圧操作でバネ接点を変形させて入力を行う押圧スイッチ装置において、
押圧操作側に位置する上側基板と機器内側に位置する下側基板とを有し、
上側基板と下側基板の各々の対向面に、上側基板に固着する上側バネ接点と、下側基板に固着する下側バネ接点とを設け、上下方向で上側バネ接点と下側バネ接点が重なりを有することを特徴とする押圧スイッチ装置。
【請求項2】
上側バネ接点と下側バネ接点がともに円形ドーム状であり、両バネ接点の径方向の重なり長さが両バネ接点の半径の長さよりも短い請求項1記載の押圧スイッチ装置。
【請求項3】
上側基板が押圧操作で変形する可撓性を有する請求項1または請求項2記載の押圧スイッチ装置。
【請求項4】
上側基板と下側基板が一枚の基板の曲げ形成による連続面として形成されている請求項1〜請求項3何れか1項記載の押圧スイッチ装置。
【請求項5】
バネ接点を押圧する押し子を該バネ接点の頂部中心に設ける請求項1〜請求項4何れか1項記載の押圧スイッチ装置。
【請求項6】
上側基板と下側基板の何れか一方に方向指示入力を担う複数のバネ接点を環状に設け、上側基板と下側基板の何れか他方に決定指示入力を担う一つのバネ接点を前記環状の中心と対向する位置に設ける請求項1〜請求項5何れか1項記載の押圧スイッチ装置。
【請求項7】
上側基板と下側基板の双方に方向指示入力を担う複数のバネ接点を設け、上側基板と下側基板の何れか一方に決定指示入力を担う一つのバネ接点を設ける請求項1〜請求項5何れか1項記載の押圧スイッチ装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−153011(P2008−153011A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−338413(P2006−338413)
【出願日】平成18年12月15日(2006.12.15)
【出願人】(000237020)ポリマテック株式会社 (234)
【Fターム(参考)】