説明

押圧型スイッチ用基板及び多方向押圧型スイッチ

【課題】小型電子機器等に使用される多方向押圧型スイッチ(いわゆる十字キースイッチ)等の押圧型スイッチにおいて、部品点数の増大を抑え、組立製造の容易化や簡素化を実現する。
【解決手段】表面部に複数の下側導電部2bを有するフィルム状の下側回路基板1b及び裏面部に複数の上側導電部2aを有し該各上側導電部2aを各下側導電部2bに対向させている上側回路基板1aからなるメンブレンスイッチ1と、このメンブレンスイッチ1に連続して一体的に形成されメンブレンスイッチ1に対して折り曲げられて上側導電部2a及び下側導電部2bに対応する位置となされている切片部3と、この切片部3に形成された位置決め穴3bによりこの切片部3に対して位置決めされて設置された揺動つまみ4とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型電子機器等に使用される押圧型スイッチを構成するための押圧型スイッチ用基板及びこの押圧型スイッチ用基板を用いて構成された多方向押圧型スイッチ(いわゆる十字キースイッチ等)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パーソナルコンピュータや携帯電話装置などの小型電子機器においては、入力装置として、いわゆる皿バネ式スイッチやメンブレンスイッチ等のスイッチが使用されている。そして、近年、入力装置の多様化、多機能化に伴って、揺動つまみを多方向に揺動させることによってスイッチ操作を行う多方向押圧型スイッチが提案されている。例えば、特許文献1には、揺動つまみとしていわゆる「十字キー」を有し、この「十字キー」の揺動方向に応じてスイッチ操作がなされる多方向押圧型スイッチが記載されている。
【0003】
このような揺動つまみを介して操作されるメンブレンスイッチは、上側回路基板に設けられた上側導電部及び下側回路基板に設けられた下側導電部を有して構成されている。すなわち、上側回路基板には、円盤状の上側導電部と、この上側導電部を外部装置に接続するための配線部が形成されている。また、下側回路基板には、円盤状の下側導電部と、この下側導電部を外部装置に接続するための配線部が形成されている。そして、上側回路基板と下側回路基板とは、スペーサシートを挟んで粘着層により固定されている。上側回路基板の上側導電部と下側回路基板の下側導電部との間には、スペーサシートの厚さに相当する隙間が形成されている。
【0004】
このような構成のメンブレンスイッチにおいては、上側回路基板側から荷重が加えられると、上側回路基板の一部が変形し、上側導電部が下側導電部に接触するため、これら上側導電部及び下側導電部電極が導通状態となり、スイッチ操作が実行される。
【0005】
【特許文献1】特開2001−185004公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前述したような従来の多方向押圧型スイッチにおいては、揺動つまみは、下側回路基板を基準とする所定の範囲内において、移動操作(揺動)可能に支持されている必要がある。揺動つまみをこのような状態として支持するには、別個の固定用の部品等を用いる必要があり、部品点数が増大し、組立製造の困難化、煩雑化が招来され、また、製造コストの高騰が招来される。
【0007】
そこで、本発明は、前述の実情に鑑みて提案されるものであって、小型電子機器等に使用される多方向押圧型スイッチ(いわゆる十字キースイッチ)等の押圧型スイッチの部品点数の増大を抑え、組立製造の容易化や簡素化を実現することのできる押圧型スイッチ用基板を提供し、また、この押圧型スイッチ用基板を用いて構成され部品点数の増大が抑えられ組立製造の容易化や簡素化が実現された多方向押圧型スイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の構成のいずれかを有するものである。
【0009】
〔構成1〕
本発明に係る押圧型スイッチ用基板は、表面部に少なくとも一つの下側導電部を有するフィルム状の下側回路基板及び裏面部に少なくとも一つの上側導電部を有し該上側導電部を下側導電部に対向させている上側回路基板からなる基材部と、この基材部に連続して一体的に形成された切片部とを有し、切片部は、基材部に対して折り曲げられることにより、上側導電部及び下側導電部に対応する位置となされることを特徴とするものである。
【0010】
〔構成2〕
本発明に係る押圧型スイッチ用基板は、構成1を有する押圧型スイッチ用基板において、切片部は、基材部と同一の材料によって形成されていることを特徴とするものである。
【0011】
〔構成3〕
本発明に係る押圧型スイッチ用基板は、構成1、または、構成2を有する押圧型スイッチ用基板において、切片部には、この切片部を基材部に対して位置決めするための位置決め穴及び上側導電部を下側導電部に向けて押圧操作するつまみ部材をこの切片部に対して位置決めするための位置決め穴が形成されていることを特徴とするものである。
【0012】
〔構成4〕
本発明に係る多方向押圧型スイッチは、揺動つまみを多方向に揺動させることでその下に配置した上側導電部及び下側導電部を接触させて導通させる構造の多方向押圧型スイッチであって、表面部に複数の下側導電部を有するフィルム状の下側回路基板及び裏面部に複数の上側導電部を有し該各上側導電部を各下側導電部に対向させている上側回路基板からなる基材部と、基材部に連続して一体的に形成され基材部に対して折り曲げられて上側導電部及び下側導電部に対応する位置となされている切片部と、この切片部に形成された位置決め穴によりこの切片部に対して位置決めされて設置された揺動つまみとを備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る押圧型スイッチ用基板は、構成1を有することにより、切片部は、基材部に対して折り曲げられることにより、上側導電部及び下側導電部に対応する位置となされるので、上側導電部を下側導電部に向けて押圧操作するつまみ部材を支持することができ、押圧型スイッチの部品点数の増大を抑え、組立製造の容易化や簡素化を実現することができる。
【0014】
本発明に係る押圧型スイッチ用基板は、構成2を有することにより、切片部は、基材部と同一の材料によって形成されているので、切片部と基材部を一体的に容易に形成することができる。
【0015】
本発明に係る押圧型スイッチ用基板は、構成3を有することにより、切片部には、この切片部を基材部に対して位置決めするための位置決め穴及び上側導電部を下側導電部に向けて押圧操作するつまみ部材をこの切片部に対して位置決めするための位置決め穴が形成されているので、別途の部品を使用することなく、切片部の基材部に対する位置決め及びつまみ部材の切片部に対する位置決めを行うことができる。
【0016】
本発明に係る多方向押圧型スイッチは、構成4を有することにより、揺動つまみは、基材部に連続して一体的に形成され基材部に対して折り曲げられて上側導電部及び下側導電部に対応する位置となされている切片部に形成された位置決め穴により、この切片部に対して位置決めされて設置されているので、揺動つまみを支持するための別途の部品が不要であり、部品点数の増大が抑えられている。
【0017】
すなわち、本発明は、小型電子機器等に使用される多方向押圧型スイッチ(いわゆる十字キースイッチ)等の押圧型スイッチの部品点数の増大を抑え、組立製造の容易化や簡素化を実現することのできる押圧型スイッチ用基板を提供し、また、この押圧型スイッチ用基板を用いて構成され部品点数の増大が抑えられ組立製造の容易化や簡素化が実現された多方向押圧型スイッチを提供することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。
【0019】
図1は、本発明に係る多方向押圧型スイッチの実施の形態における構成を示す分解斜視図である。
【0020】
図2は、本発明に係る多方向押圧型スイッチの実施の形態における構成を示す分解平面図である。
【0021】
本発明に係る多方向押圧型スイッチは、本発明に係る押圧型スイッチ用基板を有して構成されるものであって、図1及び図2に示すように、基材部となるメンブレンスイッチ1を有して構成される。このメンブレンスイッチ1は、上側回路基板1a及び下側回路基板1bにより構成されている。上側回路基板1aの裏面部には、複数の円盤状の上側導電部2aが形成されている。また、下側回路基板1bの表面部には、複数の円盤状の下側導電部2bと、各上側導電部2a及び各下側導電部2bを図示しない外部装置に接続するための配線部が形成されている。上側回路基板1aの裏面部及び下側回路基板1bの表面部において、上側導電部2a及び下側導電部2b以外の部分には、レジスト層が形成されている。
【0022】
上側回路基板1a及び下側回路基板1bは、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド、ポリイミドなどの材料をフィルム状に加工して用いられるが、メンブレンスイッチに要求される耐熱性などの条件に応じて適宜選択された材料を用いることができる。これら上側回路基板1a及び下側回路基板1bの厚さは、50μm乃至100μm程度が望ましく、特に、75μm程度が好ましい。また、レジスト層の厚さは、25μm程度が好ましい。
【0023】
上側導電部2a及び下側導電部2bを形成する材料としては、銅、銀、金などの金属からなる金属箔、銀ペースト、カーボンインキなどの導電ペーストなどが用いられる。なお、各上側導電部2a及び各上側導電部2aの形状は、円形に限定されるものではなく、正方形、長方形、三角形などであってもよい。
【0024】
上側回路基板1aと下側回路基板1bとは、スペーサシートを挟んで粘着層により固定されており、各上側導電部2aと各下側導電部2bとを対応させて対向させている。各上側導電部2a及び各上側導電部2aとの間には、スペーサシートの厚さに相当する隙間が形成されている。
【0025】
スペーサシートとしては、上側回路基板1a及び下側回路基板1bと同様な材料が用いられる。また、上側回路基板1a及び下側回路基板1bに塗布されるレジスト層をスペーサシートとして機能させるようにしてもよい。粘着層を形成する材料としては、特に限定されるものではなく、天然ゴムにロジンおよびロジンエステルなどの粘着付与樹脂を加えたゴム系粘着剤、アクリル酸とそのエステルの共重合体で構成されるアクリル系粘着剤、ビニルエーテル系粘着剤、ウレタン系粘着剤などのエマルジョン型、溶剤型、ホットメルト型粘着剤などを使用することができる。
【0026】
図3は、本発明に係る押圧型スイッチ用基板の実施の形態における構成を示す平面図である。
【0027】
この多方向押圧型スイッチにおける押圧型スイッチ用基板は、図3に示すように、上側回路基板1a及び下側回路基板1bが繋がった状態で形成されており、上側回路基板1aと下側回路基板1bとの境界部分で折り曲げられることにより、メンブレンスイッチ1を構成する。そして、この押圧型スイッチ用基板は、切片部3を有している。この切片部3は、上側回路基板1a、または、下側回路基板1bに連続して一体的に形成され、十字型の形状を有している。この切片部3は、メンブレンスイッチ1の上側回路基板1a及び下側回路基板1bと同一の材料によって形成されている。そして、この切片部3は、図2に示すように、メンブレンスイッチ1に対して折り曲げられることにより、上側導電部2a及び下側導電部2bに対応する位置となされる。なお、この切片部3には、レジスト層は形成されていない。この切片部3は、この切片部3をメンブレンスイッチ1に対して位置決めするための位置決め穴3aを有している。
【0028】
図4は、本発明に係る多方向押圧型スイッチの実施の形態における要部の構成を示す断面図である。
【0029】
そして、メンブレンスイッチ1には、図4に示すように、上側導電部2aを下側導電部2bに向けて押圧操作するつまみ部材となる揺動つまみ(十字キー)4が装着されている。この揺動つまみ4は、切片部3に対して設置されている。切片部3は、揺動つまみ4をこの切片部3に対して位置決めするための位置決め穴3bを有している。すなわち、揺動つまみ4は、裏面部に突設されたボス4aを、切片部3に形成された位置決め穴3bに嵌合させることにより、この切片部3に対して位置決めされて支持されている。
【0030】
揺動つまみ4は、メンブレンスイッチ1の表面側から周辺側の所定の4箇所のいずれかの箇所を押圧操作されることにより、押圧された箇所をメンブレンスイッチ1側に変位させて揺動されるとともに、押圧操作を解除されることにより、切片部3の弾性力によって初期位置に戻るようになっている。
【0031】
このように、この多方向押圧型スイッチにおいては、揺動つまみ4が、切片部3に形成された位置決め穴3bによりこの切片部3に対して位置決めされて設置されるので、揺動つまみ4を支持するための別途の部品が不要であり、部品点数の増大が抑えられている。なお、上側回路基板1aと下側回路基板1bとは、前述したように、スペーサシートとして機能するレジスト層1c,1dを挟んで固定されている。
【0032】
また、切片部3には、図1及び図4に示すように、押釦5が取付けられている。この押釦5は、揺動つまみ4の中央部に設けられた開口部4bを介して、揺動つまみ4の表面側に臨んでいる。この押釦5は、表面側から押圧操作されることによりメンブレンスイッチ1側に変位されるとともに、押圧操作を解除されることにより切片部3の弾性力によって初期位置に戻るようになっている。
【0033】
そして、この多方向押圧型スイッチは、ベースプレート6を有している。このベースプレート6は、合成樹脂材料等により、略平板状に形成されている。このベースプレート6は、メンブレンスイッチ1の表面側を覆って、このメンブレンスイッチ1上に取付けられている。このベースプレート6は、裏面部に、位置決め穴3aに嵌合することによって切片部3をメンブレンスイッチ1に対して位置決めして固定するためのボス6aを有している。切片部3は、位置決め穴3aにボス6aを嵌合されることによって、メンブレンスイッチ1に対して位置決めして固定されている。揺動つまみ4は、ベースプレート6に設けられた開口部6bを介して、ベースプレート6の表面側に臨んでいる。
【0034】
また、このベースプレート6には、複数の押釦部6cが形成されている。これら押釦部6cは、ベースプレート6に対して、肉薄部を介して連続されており、ベースプレート6の表面側から押圧操作されることによりベースプレート6の裏面側に向けて変位されるとともに、押圧操作を解除されることにより肉薄部の弾性力によって初期位置に戻るようになっている。
【0035】
この多方向押圧型スイッチにおいて、ベースプレート6と下側回路基板1bの下側導電部2bとは、互いに固定された所定の位置関係となされている。そして、この多方向押圧型スイッチにおいては、揺動つまみ4を多方向に揺動させることにより、その下に配置された上側導電部2a及び下側導電部2bが接触されて導通される構造となっている。また、この多方向押圧型スイッチにおいては、複数の押釦部6c及び押釦5がそれぞれ押圧されることにより、その下に配置された上側導電部2a及び下側導電部2bが接触されて導通される構造となっている。
【0036】
なお、この多方向押圧型スイッチにおいて、上側導電部2a及び下側導電部2bは、前述した実施の形態におけるようにメンブレンスイッチ1を構成するものに限定されず、いわゆる皿バネ式スイッチを構成するものであってもよい。そして、この多方向押圧型スイッチは、携帯電話装置、パーソナルコンピュータ装置、ビデオカメラ装置、画像表示装置等、種々の小型電子機器に応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る多方向押圧型スイッチの実施の形態における構成を示す分解斜視図である。
【図2】前記多方向押圧型スイッチの実施の形態における構成を示す分解平面図である。
【図3】本発明に係る押圧型スイッチ用基板の実施の形態における構成を示す平面図である。
【図4】前記多方向押圧型スイッチの実施の形態における要部の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0038】
メンブレンスイッチ1
上側回路基板1a
下側回路基板1b
上側導電部2a
下側導電部2b
切片部3
揺動つまみ4
押釦5
ベースプレート6

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面部に少なくとも一つの下側導電部を有するフィルム状の下側回路基板及び裏面部に少なくとも一つの上側導電部を有し該上側導電部を前記下側導電部に対向させている上側回路基板からなる基材部と、
前記基材部に連続して一体的に形成された切片部と
を有し、
前記切片部は、前記基材部に対して折り曲げられることにより、前記上側導電部及び前記下側導電部に対応する位置となされる
ことを特徴とする押圧型スイッチ用基板。
【請求項2】
前記切片部は、前記基材部と同一の材料によって形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の押圧型スイッチ用基板。
【請求項3】
前記切片部には、この前記切片部を前記基材部に対して位置決めするための位置決め穴及び前記上側導電部を前記下側導電部に向けて押圧操作するつまみ部材をこの切片部に対して位置決めするための位置決め穴が形成されている
ことを特徴とする請求項1、または、請求項2記載の押圧型スイッチ用基板。
【請求項4】
揺動つまみを多方向に揺動させることで、その下に配置した上側導電部及び下側導電部を接触させて導通させる構造の多方向押圧型スイッチであって、
表面部に複数の下側導電部を有するフィルム状の下側回路基板及び裏面部に複数の上側導電部を有し該各上側導電部を前記各下側導電部に対向させている上側回路基板からなる基材部と、
前記基材部に連続して一体的に形成され、前記基材部に対して折り曲げられて前記上側導電部及び前記下側導電部に対応する位置となされている切片部と
前記切片部に形成された位置決め穴によりこの切片部に対して位置決めされて設置された前記揺動つまみと
を備えたことを特徴とする多方向押圧型スイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−165076(P2007−165076A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−358672(P2005−358672)
【出願日】平成17年12月13日(2005.12.13)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】