説明

拘束胸当て、車両防弾プレート、および防弾ヘルメット

弾道抵抗性の布帛積層物が提供される。より具体的には、耐層間剥離性で弾道抵抗性の強化複合物が提供される。耐層間剥離性で弾道抵抗性の材料と物品は、1つ以上の弾道抵抗性パネルを高強度のスレッドで縫い合わせること;弾道抵抗性パネルのエッジを溶融して、標準的なトリミング処理時に擦り切れていた可能性のある部分を補強すること;1つ以上のパネルを1つ以上の繊維ラップ織物もしくは不織繊維ラップで巻き付けること;およびこれらの手法の組み合わせ;を含めた種々の方法によって補強することができる。耐層間剥離性で弾道抵抗性のパネルはさらに、弾道抵抗性能を高めるために、パネルに貼り付けられた少なくとも1つの剛性プレートを含んでよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた弾道抵抗性を有する布帛積層体に関する。さらに詳細には、本発明は、補強された耐層間剥離性の弾道抵抗性複合物に関する。
【背景技術】
【0002】
変形可能な発射体に対して優れた抵抗性をもった高強度繊維を含有する弾道抵抗性物品が知られている。弾丸抵抗性ベスト、ヘルメット、車両パネル、軍用装備の構造部材は通常、高強度繊維から作られている。従来から使用されている高強度繊維としては、ポリエチレン繊維、パラ−アラミド繊維[例えばポリ(フェニレンジアミンテレフタルアミド)]、グラファイト繊維、ナイロン繊維、およびガラス繊維等がある。多くの用途(例えば、ベストもしくはベストの一部)に対し、繊維は、織物もしくは編物の形で使用することができる。他の用途の多くに対し、繊維は、剛性布帛または可撓性布帛を形成するよう、カプセル封入されるか、あるいは母材材料中に埋め込まれる。
【0003】
ヘルメット、車両パネル、およびベスト等の物品を作製するのに有用な種々の弾道抵抗性構造物が知られている。例えば、米国特許第4,403,012号、第4,457,985号、第4,613,535号、第4,623,574号、第4,650,710号、第4,737,402号、第4,748,064号、第5,552,208号、第5,587,230号、第6,642,159号、第6,841,492号、第6,846,758号(これら全ての特許を参照により本明細書に援用する)は、伸びきり鎖超高分子量ポリエチレン等の材料から製造される高強度繊維を含めた弾道抵抗性複合物を開示している。これらの複合物は、発射体(例えば、銃弾、弾丸、および爆弾の破片等)からの高速度衝撃による貫通に対して種々の抵抗度を示す。
【0004】
例えば米国特許第4,623,574号と第4,748,064号は、エラストマー母材中に埋め込まれた高強度繊維を含む単純な複合構造物を開示している。米国特許第4,650,710号は、高強度の伸びきり鎖ポリオレフィン(ECP)繊維で構成される複数の可撓性層を含む可撓性物品を開示している。繊維網が低モジュラスのエラストマー材料でコーティングされている。米国特許第5,552,208号と第5,587,230号は、ビニルエステルとジアリルフタレートを含む母材組成物と少なくとも1つの高強度繊維網とを含む物品、および前記物品の製造法を開示している。米国特許第6,642,159号は、母材中に配列されたフィラメント網を含む複数の繊維層(エラストマー層が間に存在する)を有する、耐衝撃性の剛性複合物を開示している。徹甲発射体に対する保護を強化するため、この複合物を硬質プレートに接着する。
【0005】
周知のとおり、先のとがった小さな発射体は、繊維を破断することなく繊維を横方向にずらすことによって、防護具を貫通することができる。したがって弾道貫通抵抗性は、繊維網の特性によって直接影響を受ける。例えば、弾道抵抗性に影響を及ぼす重要なファクターは、繊維組織の堅固さ、クロスプライ(cross-plied)一方向性複合物におけるクロスオーバーの周期性、ヤーンと繊維のデニール、繊維と繊維との摩擦、母材母材の特性、および層間の接着強さである。
【0006】
弾道抵抗性に影響を及ぼす他の重要なファクターは、弾道抵抗性材料が層間剥離に耐える能力である。従来の複合弾道パネルにおいては、弾道布帛層に及ぼす発射体の衝撃が層の幾つかを通過する一方で、取り巻いている布帛層が応力を受けるか又は引き伸ばされ、布帛層を擦り切れさせるか又は層間剥離を生じさせる。この層間剥離は、わずかな部分に限定される場合もあるし、あるいは大きな部分にわたって広がる場合もあり、この結果、材料の弾道抵抗性が低下し、複数の発射体の衝撃に耐える能力が低下する。このような層間剥離はさらに、弾道抵抗性材料のシートを所望の形状もしくはサイズに裁断した場合に起こることが知られており、切り取られたエッジが擦り切れ、これによって材料の安定性と弾道抵抗性が損なわれる。したがって当業界においては、これらの各問題点の解決が求められている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、これらの問題点に対する解決策を提供する。本発明は、1つ以上の弾道抵抗性パネルを高強度のスレッドで縫い合わせること、弾道抵抗性パネルのエッジを溶融して、標準的なトリミング処理時において擦り切れていた可能性のある部分を補強すること、1つ以上のパネルを1つ以上の繊維ラップ織物もしくは不織繊維ラップで巻き付けること、およびこれらの手法の組み合わせを含めた種々の手法によって補強される、耐層間剥離性及び弾道抵抗性を有する材料と物品を提供する。本発明はさらに、弾道抵抗性能を高めるために取り付けられる1つ以上の剛性プレートを含む1つ以上の弾道抵抗性パネルを提供し、これらの弾道抵抗性パネルはさらに、上記手法の1つ以上を使用して補強することができる。本発明は、パネルのエッジを溶融することによって補強される材料を開示していない米国特許第5,545,455号を上回る改善をもたらす。米国特許第5,545,455号は、異なった方向で巻き付けられる2種の繊維ラップを組み込むことについても開示していない。該米国特許はさらに、パネル上に外側ポリマーフィルムを組み込んだ構造物を開示していないし、またパネルに剛性プレートを取り付けた構造物も開示していない。本明細書に記載の材料から作製される物品は、多数の衝撃によって応力を受けた後でも保持される、優れた耐層間剥離性と弾道抵抗性を有することが見出されている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
a)前面、後面、および1つ以上のエッジを有するパネル、前記パネルは、
i)圧密化繊維網、前記圧密化繊維網は複数のクロスプライ繊維層を含み、各繊維層が整列状態で配列された複数の繊維を含む;このとき前記繊維は、約7g/デニール以上のテナシティと約150g/デニール以上の引張モジュラスを有し;前記繊維は、その上に母材組成物を有し;前記複数のクロスプライ繊維層は、圧密化繊維網を形成するように、前記母材組成物で圧密化されている;および
ii)前記圧密化繊維網の前記前面と前記後面のそれぞれに結合された少なくとも1つのポリマーフィルム層;
を含む;
b)前記パネルを取り巻いている第1の繊維ラップ、前記第1の繊維ラップは、前記パネルの前記前面、前記後面、および1つ以上のエッジの少なくとも一部を取り巻いている;ならびに
c)前記パネルを取り巻いている任意的な第2の繊維ラップ、前記第2の繊維ラップは、第1の繊維ラップの取り巻き方向に対して横断方向に第1の繊維ラップを取り巻いている;
を含む弾道抵抗性材料を提供する。
【0009】
本発明はさらに、
a)前面、後面、および1つ以上のエッジを有するパネル、前記パネルは、
i)圧密化繊維網、前記圧密化繊維網は複数のクロスプライ繊維層を含み、各繊維層が整列状態で配列された複数の繊維を含む;このとき前記繊維は、約7g/デニール以上のテナシティと約150g/デニール以上の引張モジュラスを有し;前記繊維は、その上に母材組成物を有し;前記複数のクロスプライ繊維層は、圧密化繊維網を形成するように、前記母材組成物で圧密化されている;および
ii)必要に応じて、前記圧密化繊維網の前記前面と前記後面のそれぞれに結合された少なくとも1つのポリマーフィルム層;
を含む;
b)前記パネルの前面に結合された少なくとも1つの剛性プレート;
c)前記パネルを取り巻いている第1の繊維ラップ、前記第1の繊維ラップは、前記パネルの前記前面、前記後面、および1つ以上のエッジの少なくとも一部を取り巻いている;ならびに
d)前記パネルを取り巻いている任意的な第2の繊維ラップ、前記第2の繊維ラップは、第1の繊維ラップの取り巻き方向に対して横断方向に第1の繊維ラップを取り巻いている;
を含む弾道抵抗性材料を提供する。
【0010】
本発明はさらに、
a)前面、後面、および1つ以上のエッジを有する少なくとも1つのパネルを作製する工程、前記パネルは、
i)圧密化繊維網、前記圧密化繊維網は複数のクロスプライ繊維層を含み、各繊維層は整列状態で配列された複数の繊維を含む;このとき前記繊維は、約7g/デニール以上のテナシティと約150g/デニール以上の引張モジュラスを有し;前記繊維は、その上に母材組成物を有し;前記複数のクロスプライ繊維層が、圧密化繊維網を形成するように、前記母材組成物で圧密化されている;および
ii)前記圧密化繊維網の前記前面と前記後面のそれぞれに結合された少なくとも1つのポリマーフィルム層;
を含む;
b)パネルを物品に成形する工程;
c)成形パネルの周りを第1の繊維ラップで取り巻く工程、前記第1の繊維ラップは、前記パネルの前記前面、前記後面、および1つ以上のエッジの少なくとも一部を取り巻いている;および
d)必要に応じて、成形パネルの周りを第2の繊維ラップで取り巻く工程、前記第2の繊維ラップは、第1の繊維ラップの取り巻き方向に対して横断方向に第1の繊維ラップを取り巻いている;
を含む、弾道抵抗性材料の製造方法を提供する。
【0011】
本発明はさらに、
a)前面、後面、および1つ以上のエッジを有するパネルを作製する工程、前記パネルは、i)圧密化繊維網、前記圧密化繊維網は複数のクロスプライ繊維層を含み、各繊維層は整列状態で配列された複数の繊維を含む;このとき前記繊維は、約7g/デニール以上のテナシティと約150g/デニール以上の引張モジュラスを有し;前記繊維は、その上に母材組成物を有し;前記複数のクロスプライ繊維層は、圧密化繊維網を形成するように、前記母材組成物で圧密化されている;および
ii)必要に応じて、前記圧密化繊維網の前記前面と前記後面のそれぞれに結合された少なくとも1つのポリマーフィルム層;
を含む;
b)パネルを成形する工程;
c)少なくとも1つの剛性プレートを前記成形パネルの前面に結合する工程;
d)成形パネルの周りを第1の繊維ラップで取り巻く工程、前記第1の繊維ラップは、前記パネルの前記前面、前記後面、および1つ以上のエッジの少なくとも一部を取り巻いている;および
e)必要に応じて、成形パネルの周りを第2の繊維ラップで取り巻く工程、前記第2の繊維ラップは、第1の繊維ラップの取り巻き方向に対して横断方向に第1の繊維ラップを取り巻いている;
を含む、弾道抵抗性材料の製造方法を提供する。
【0012】
本発明はさらに、
a)前面、後面、および1つ以上のエッジを有するパネル、前記パネルは、
i)圧密化繊維網、前記圧密化繊維網は複数のクロスプライ繊維層を含み、各繊維層は整列状態で配列された複数の繊維を含む;このとき前記繊維は、約7g/デニール以上のテナシティと約150g/デニール以上の引張モジュラスを有し;前記繊維は、その上に母材組成物を有し;前記複数のクロスプライ繊維層は、圧密化繊維網を形成するように、前記母材組成物で圧密化されている;および
ii)必要に応じて、前記圧密化繊維網の前記前面と前記後面のそれぞれに結合された少なくとも1つのポリマーフィルム層、このとき前記パネルの1つ以上のエッジが、前記1つ以上のエッジにて前記パネルの一部を溶融することによって補強される;
を含む;
b)前記パネルを取り巻いている任意的な第1の繊維ラップ、前記第1の繊維ラップは、前記パネルの前記前面、前記後面、および1つ以上のエッジの少なくとも一部を取り巻いている;ならびに
c)前記パネルを取り巻いている任意的な第2の繊維ラップ、前記第2の繊維ラップは、第1の繊維ラップの取り巻き方向に対して横断方向に第1の繊維ラップを取り巻いている;
を含む弾道抵抗性材料を提供する。
【0013】
本発明はさらに、
a)前面、後面、および1つ以上のエッジを有するパネル、前記パネルは、
i)圧密化繊維網、前記圧密化繊維網は複数のクロスプライ繊維層を含み、各繊維層は整列状態で配列された複数の繊維を含む;このとき前記繊維が、約7g/デニール以上のテナシティと約150g/デニール以上の引張モジュラスを有し;前記繊維は、その上に母材組成物を有し;前記複数のクロスプライ繊維層は、圧密化繊維網を形成するように、前記母材組成物で圧密化されている;および
ii)必要に応じて、前記圧密化繊維網の前記前面と前記後面のそれぞれに結合された少なくとも1つのポリマーフィルム層;
を含む;
b)前記パネルを取り巻いている第1の繊維ラップ、前記第1の繊維ラップは、前記パネルの前記前面、前記後面、および1つ以上のエッジの少なくとも一部を取り巻いている;ならびに
c)前記パネルを取り巻いている第2の繊維ラップ、前記第2の繊維ラップは、第1の繊維ラップの取り巻き方向に対して横断方向に第1の繊維ラップを取り巻いている;
を含む弾道抵抗性材料を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
発明の詳細な説明
本発明は、優れた弾道貫通抵抗性と優れた耐層間剥離性を有する布帛複合物を提供する。本発明の目的に適うよう、優れた弾道貫通抵抗性を有する本発明の材料は、変形可能な発射体に対する優れた抵抗性を示す材料を表わしている。
【0015】
本発明の弾道抵抗性の材料、構造物、および物品は、少なくとも1つの弾道抵抗性パネル(好ましくは、積み重なるように配列された2つ以上のパネルを)を含む。弾道抵抗性パネルのそれぞれが、前面、後面、および1つ以上のエッジを有しており、ここで四角形のパネルは4つのエッジを有し、三角形のパネルは3つのエッジを有する、等々。各パネルが圧密化繊維網を含み、ここで前記圧密化繊維網は複数のクロスプライ繊維層を含み、各繊維層が整列状態で配列された複数の繊維を含む。本発明に使用する上での適切な繊維は、約7g/デニール以上のテナシティと約150g/デニール以上の引張モジュラスを有する高強度・高引張モジュラスの繊維である。前記繊維は、その上に母材組成物を有し、前記複数のクロスプライ繊維層が、圧密化繊維網を形成するよう、前記母材組成物で圧密化されている。実施態様に応じて、パネルはさらに、前記圧密化繊維網の前記前面と前記後面のそれぞれに結合された少なくとも1つのポリマーフィルム層を含んでよい。
【0016】
本発明のそれぞれの個別パネルは、単層の圧密化繊維網をエラストマー組成物もしくは剛性ポリマー組成物中に含んでいる。本明細書では、このエラストマー組成物もしくは剛性ポリマー組成物を母材組成物と呼ぶ。圧密化繊維網が、一緒に積み重ねられた複数の繊維層を含み、各繊維層が、前記母材組成物でコーティングされた複数の繊維(実質的に平行に整列するように配列されているのが好ましいが、必ずしもそうである必要はない)を含み、前記繊維層が、前記単層圧密化繊維網を形成するよう圧密化されている。圧密化繊維網はさらに、このような母材組成物でコーティングされ、複数の層に作製され、そして布帛に圧密化される複数のヤーンを含んでよい。
【0017】
本発明の目的に適うよう、“繊維”は細長い物体であって、その長さ寸法は、幅や厚さの横方向寸法よりはるかに大きい。本発明において使用するための繊維の横断面は、広範囲にわたって変わってよい。横断面は、円形であっても、フラットであっても、あるいは長円形であってもよい。したがって、繊維という用語は、規則的もしくは不規則な横断面を有するフィラメント、リボン、およびストリップを含む。横断面はさらに、繊維の直線軸または縦軸から突き出ている規則的もしくは不規則な1つ以上のローブを有する、規則的もしくは不規則なマルチローバル(multi−lobal)横断面であってもよい。繊維は単一ローブであって、実質的に円形の断面を有するのが好ましい。
【0018】
本明細書で使用している“ヤーン(yarn)”は、絡まり合った繊維のストランドである。“整列(array)”は、繊維またはヤーンの規則的な配置を表わしており、“平行整列”は、繊維またはヤーンの規則的な平行配置を表わしている。繊維“層(layer)”は、不織もしくは織った繊維またはヤーンの平面的な配置を表わしている。本明細書で使用している“布帛”は、織布材料に関係していても、あるいは不織布材料に関係していてもよい。繊維“網(network)”は、相互に連結した複数の繊維層もしくはヤーン層を示している。繊維網は、種々の構造を有することができる。例えば、繊維またはヤーンは、フェルトまたは他の織布材料、不織布材料、もしくは編んだ材料として作製することもできるし、あるいは他の任意の従来法によってネットワークに作製することもできる。特定の好ましい圧密化網構造によれば、複数の繊維層が組み合わされ、これにより各繊維層は、繊維層が共通の繊維方向に沿って互いに実質的に平行となるように、一定方向に整列した繊維を含む。したがって“圧密化網”とは、繊維層と前記母材組成物との圧密化された組み合わせを表わしている。本明細書で使用している“単一層”構造物とは、単一の構造物に圧密化もしくは一体化されている、1つ以上の個別繊維層で構成される構造物を表わしている。“圧密化する(consolidating)”とは、母材材料とそれぞれの個別繊維層とを、乾燥、冷却、加熱、圧力、またはこれらの組み合わせによって結合して前記単一層を作製する、ということを意味している。
【0019】
本明細書で使用している“高強度・高引張モジュラスの繊維”は、約7g/デニール以上の好ましいテナシティと約150g/デニール以上の好ましい引張モジュラス(どちらもASTM D2256によって測定)、および約8J/g以上のエネルギー対破断(energy−to−break)を有する繊維である。本明細書で使用している“デニール”とは、線密度の単位を表わしており、繊維またはヤーンの9000メートル当たりの質量(g)に等しい。本明細書で使用している“テナシティ”とは、応力を受けていない試験片の、単位線密度(デニール)当たりの力(g)として表示される引張応力を表わしている。繊維の“初期モジュラス”は、ある材料の変形抵抗性を表わす特性である。“引張モジュラス”とは、テナシティの変化[1デニール当たりのグラム−力(g/d)で表示]と歪みの変化[元の繊維長さに対する分数として表示]との比を表わしている。
【0020】
特に好適な高強度・高引張モジュラスの繊維材料としては、伸びきり鎖ポリオレフィン繊維(例えば高延伸・高分子量のポリエチレン繊維、特に、超高分子量ポリエチレン繊維と超高分子量ポリプロピレン繊維)がある。さらに、伸びきり鎖ポリビニルアルコール繊維、伸びきり鎖ポリアクリロニトリル繊維、パラ−アラミド繊維、ポリベンザゾール繊維[例えば、ポリベンゾオキサゾール(PBO)繊維やポリベンゾチアゾール(PBT)繊維]、および液晶コポリエステル繊維も適している。これらの種類の繊維はいずれも、当業界において従来から知られている。
【0021】
ポリエチレンの場合、好ましい繊維は、少なくとも500,000(好ましくは少なくとも100万、さらに好ましくは200万〜500万)の分子量を有する伸びきり鎖ポリエチレンである。このような伸びきり鎖ポリエチレン(ECPE)繊維は、溶液紡糸法にて成長させることもできるし[例えば、米国特許第4,137,394号や第4,356,138号(これらの特許を参照により本明細書に援用する)に記載されている]、あるいはゲル構造物を形成する溶液から紡糸することもできる[例えば、米国特許第4,551,296号や第5,006,390号(これらの特許を参照により本明細書に援用する)に記載されている]。
【0022】
本発明において使用するための最も好ましいポリエチレン繊維は、ハネウェル・インターナショナル社からスペクトラ(Spectra)(登録商標)の商品名で販売されているポリエチレン繊維である。スペクトラ繊維は当業界でよく知られており、例えば、Harpellらの共有に係る米国特許第4,623,547号および第4,748,064号に記載されている。スペクトラ高性能繊維は、重量比ではスチールの10倍の強度を有する一方で、水に浮くほど充分に軽い。この繊維はさらに、耐衝撃性、耐湿性、耐磨耗薬品性、および耐破壊性を含めた他の重要な特性を有する。
【0023】
適切なポリプロピレン繊維としては、米国特許第4,413,110号(該特許を参照により本明細書に援用する)に記載の、高延伸の伸びきり鎖ポリプロピレン(ECPP)繊維がある。適切なポリビニルアルコール(PV−OH)繊維は、例えば米国特許第4,440,711号および第4,599,267号(該特許を参照により本明細書に援用する)に記載されている。適切なポリアクリロニトリル(PAN)繊維は、例えば米国特許第4,535,027号(該特許を参照により本明細書に援用する)に開示されている。これら種類の繊維はいずれも従来から知られており、広く市販されている。
【0024】
適切なアラミド(芳香族ポリアミド)繊維またはパラ−アラミド繊維は市販されており、例えば米国特許第3,671,542号に記載されている。例えば、有用なポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)フィラメントが、デュポン社からケブラー(KEVLAR)(登録商標)の商品名で工業的に製造されている。デュポン社からノメックス(NOMEX)(登録商標)の商品名で工業的に製造されているポリ(m−フェニレンイソフタルアミド)繊維も、本発明を実施する上で有用である。本発明を実施する上で適切なポリベンザゾール繊維は市販されており、例えば米国特許第5,286,833号、第5,296,185号、第5,356,584号、第5,534,205号、および第6,040,050号(これらの特許を参照により本明細書に援用する)に開示されている。好ましいポリベンザゾール繊維は、東洋紡(株)から市販のザイロン(ZYLON)(登録商標)繊維である。本発明を実施する上で適切な液晶コポリエステル繊維は市販されており、例えば米国特許第3,975,487号、第4,118,372号、および第4,161,470号(これらの特許を参照により本明細書に援用する)に開示されている。
【0025】
本発明に使用するための他の適切な繊維としては、ガラス繊維、炭素から作製される繊維、玄武岩もしくは他の鉱物から作製される繊維、M5(登録商標)繊維、およびこれらの組み合わせ(いずれも市販されている)などがある。M5繊維は、バージニア州リッチモンドのマゲラン・システムズ・インターナショナル社(Magellan Systems International)によって製造されており、例えば米国特許第5,674,969号、第5,939,553号、第5,945,537号、および第6,040,478号(これらの特許を参照により本明細書に援用する)に記載されている。特に好ましい繊維としては、M5繊維、ポリエチレンスペクトラ繊維、ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)繊維、およびポリ(p−フェニレン−2,6−ベンゾビスオキサゾール)繊維がある。繊維は、高強度で高モジュラスのポリエチレンスペクトラ繊維を含むのがさらに好ましい。
【0026】
本発明の目的に適う最も好ましい繊維は、高強度で高引張モジュラスの伸びきり鎖ポリエチレン繊維である。前述したように、高強度で高引張モジュラスの繊維は、約7g/デニール以上という好ましいテナシティ、約150g/デニール以上という好ましい引張モジュラス、および約8J/g以上という好ましい破断エネルギー(いずれも、ASTM D2256に従って測定)を有する繊維である。本発明の好ましい実施態様においては、繊維のテナシティは、約15g/デニール以上でなければならず、約20g/デニール以上であるのが好ましく、約25g/デニール以上であるのがさらに好ましく、約30g/デニール以上であるのが最も好ましい。本発明の繊維はさらに、約300g/デニール以上の引張モジュラスを有するのが好ましく、約400g/デニール以上の引張モジュラスを有するのがさらに好ましく、約500g/デニール以上の引張モジュラスを有するのがさらに好ましく、約1,000g/デニール以上の引張モジュラスを有するのがさらに好ましく、そして約1,500g/デニール以上の引張モジュラスを有するのが最も好ましい。本発明の繊維はさらに、約15J/g以上の破断エネルギーを有するのが好ましく、約25J/g以上のエネルギー対破断を有するのがさらに好ましく、約30J/g以上の破断エネルギーを有するのがさらに好ましく、そして約40J/g以上の破断エネルギーを有するのが最も好ましい。こうした組み合わさった高強度特性は、よく知られている溶液成長法またはゲル繊維法を使用することによって得られる。米国特許第4,413,110号、第4,440,711号、第4,535,027号、第4,457,985号、第4,623,547号、第4,650,710号、および第4,748,064号は、本発明において使用される好ましい高強度伸びきり鎖ポリエチレン繊維について一般的に説明している。
【0027】
本発明の布帛複合物は、低モジュラスのエラストマー母材材料と高モジュラスの剛性母材材料を含めた、種々の母材材料を使用して製造することができる。本明細書で使用している“母材”という用語は、当業界によく知られており、圧密化後に繊維を結合するバインダー材料(例えばポリマーバインダー材料)を表わすのに使用される。“複合物”という用語は、繊維と母材材料との圧密化された組み合わせを表わしている。適切な母材材料としては、約6,000psi(41.3MPa)未満の初期引張モジュラスを有する低モジュラスのエラストマー材料、および少なくとも約300,000psi(2068MPa)の初期引張モジュラスを有する高モジュラスの剛性材料などがあるが(引張モジュラスはいずれも、ASTM D638に従って37℃にて測定)、これらに限定されない。本明細書の全体にわたって使用されている“引張モジュラス”とは、繊維の場合はASTM2256に従って、そして母材材料の場合はASTM D638に従って測定される弾性率を表わしている。
【0028】
エラストマー母材組成物は、種々のポリマー材料や非ポリマー材料を含んでよい。好ましいエラストマー母材組成物は低モジュラスのエラストマー材料を含む。本発明の目的に適うよう、低モジュラスのエラストマー材料は、ASTM D638試験法に従って約6,000psi(41.4MPa)以下にて測定される引張モジュラスを有する。エラストマーの引張モジュラスは約4,000psi(27.6MPa)以下であるのが好ましく、約2400psi(16.5MPa)以下であるのがさらに好ましく、約1200psi(8.23MPa)以下であるのがさらに好ましく、約500psi(3.45MPa)以下であるのが最も好ましい。エラストマーのガラス転移温度(Tg)は約0℃未満であるのが好ましく、約−40℃未満であるのがさらに好ましく、約−50℃未満であるのが最も好ましい。エラストマーはさらに、少なくとも約50%の破断点伸びを有するのが好ましく、少なくとも約100%の破断点伸びを有するのがさらに好ましく、少なくとも約300%の破断点伸びを有するのが最も好ましい。
【0029】
低モジュラスの多種多様なエラストマー材料やエラストマー配合物を、母材として使用することができる。適切なエラストマーの代表的な例について、それらの構造、特性、および配合が、架橋方法と共に、エンサイクロペディア・オブ・ポリマーサイエンス,Vol.5のエラストマー−シンセティックというセクション(John Wiley & Sons Inc.,1964)にまとめられている。好ましい低モジュラスのエラストマー母材材料としては、ポリエチレン、架橋ポリエチレン、クロロスルフィネート化ポリエチレン、エチレンコポリマー、ポリプロピレン、プロピレンコポリマー、ポリブタジエン、ポリイソプレン、天然ゴム、エチレン−プロピレンコポリマー、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー、ポリスルフィドポリマー、ポリウレタンエラストマー、ポリクロロプレン、当業界においてよく知られている1種以上の可塑剤(例えばフタル酸ジオクチル)を使用した可塑化ポリ塩化ビニル、ブタジエンアクリロニトリルエラストマー、ポリ(イソブチレン−co−イソプレン)、ポリアクリレート、ポリエステル、不飽和ポリエステル、ポリエーテル、フルオロエラストマー、シリコーンエラストマー、エチレンのコポリマー、熱可塑性エラストマー、フェノール樹脂、ポリブチラール樹脂、エポキシポリマー、スチレンブロックコポリマー(例えば、スチレン−イソプレン−スチレンコポリマーやスチレン−ブタジエン−スチレンコポリマー)、および繊維の融点より低い温度で硬化可能な他の低モジュラスポリマーと低モジュラスコポリマーがある。これら材料のブレンド、またはエラストマー材料と1種以上の熱可塑性樹脂とのブレンドも好ましい。
【0030】
特に有用なのは、共役ジエンとビニル芳香族モノマーとのブロックコポリマーである。好ましい共役ジエンエラストマーはブタジエンとイソプレンである。好ましい共役芳香族モノマーは、スチレン、ビニルトルエン、およびt−ブチルスチレンである。ポリイソプレンを組み込んだブロックコポリマーを水素化して、飽和炭化水素エラストマーセグメントを有する熱可塑性エラストマーを得ることができる。これらのポリマーは、A−B−Aというタイプの単純なトリブロックコポリマーであっても、(AB)(n=2〜10)というタイプのマルチブロックコポリマーであっても、あるいはR−(BA)(x=3〜150)というタイプのラジアル構造コポリマーであってもよく、このときAは、ポリビニル芳香族モノマーからのブロックであり、Bは、共役ジエンエラストマーからのブロックである。これらのポリマーの多くは、テキサス州ヒューストンのクレイトン・ポリマーズ社によって工業的に製造されており、「“クレイトン・サーモプラスティック・ラバー”,SC−68−81」という公報に記載されている。最も好ましい母材ポリマーは、クレイトン・ポリマーズ社からクレイトン(Kraton)(登録商標)の商品名で販売されているスチレン系ブロックコポリマーを含む。
【0031】
本発明において有用な好ましい高モジュラス・剛性母材材料としては、ビニルエステルポリマーやスチレン−ブタジエンブロックコポリマー等の材料、およびビニルエステルとジアリルフタレートとの混合物やフェノールホルムアルデヒドとポリビニルブチラールとの混合物等のポリマー混合物がある。本発明において使用するための特に好ましい剛性母材材料は、好ましくは炭素−炭素飽和溶媒(例えばメチルエチルケトン)に可溶であって、少なくとも約1×10psi(6895MPa)で硬化させたときに高い引張モジュラス(ASTM D638に従って測定)を有する熱硬化性ポリマーである。特に好ましい剛性母材材料は、米国特許第6,642,159号(該特許を参照により本明細書に援用する)に記載の材料である。オプションとして、母材樹脂を硬化させるための触媒を使用することもできる。適切な触媒としては、例えば、過安息香酸tert−ブチル、2,5−ジメチル−2,5−ジ−2−エチルヘキサノイルペルオキシヘキサン、過酸化ベンゾイル、およびこれらの組み合わせなどがある。このような触媒は、一般には熱硬化性母材ポリマーと併せて使用される。
【0032】
本発明の布帛複合物から作製される物品の剛性、耐衝撃性、および弾道特性は、母材ポリマーの引張モジュラスによって影響を受ける。例えば米国特許第4,623,574号は、約6000psi(41,300kPa)未満の引張モジュラスを有するエラストマー母材で構成される繊維強化複合物のほうが、より高いモジュラスのポリマーで構成される複合物よりも、そして母材なしの同じ繊維構造物よりも優れた弾道特性を有する、ということを開示している。しかしながら、母材ポリマーの引張モジュラスが低いと、より低剛性の複合物が得られる。さらに、特定の用途[特に、複合物が、耐弾道的な面と構造面の両方に対して機能しなければならないような用途]においては、弾道抵抗性と剛性との優れた組み合わせが求められる。したがって、使用する上で最も適切なタイプの母材ポリマーは、本発明の布帛から作製される物品のタイプに応じて異なる。これら2つの特性において折り合いをつけるために、適切な母材組成物は、単一の母材組成物を形成するよう、低モジュラス材料と高モジュラス材料との両方を組み合わせてよい。前述したように、本発明の高強度繊維および圧密化繊維網の作製は当業界によく知られており、例えば米国特許第4,623,574号、第4,748,064号、および第6,642,159号に詳細に記載されている。
【0033】
本発明の好ましい実施態様においては、弾道抵抗性材料が、複数の個別パネルのスタック[すなわち、2つ以上の単層の圧密化繊維網が一緒になって(一方がもう一方の上に)積み重なっている]を含む。本明細書において使用している“個別”パネルとは、明確に別々となっているパネルを表わしており、このときそれぞれのパネルは互いに同一であっても異なっていてもよく、一方がもう一方の上に配置された個別パネルの組み合わせがスタックを形成し、前記スタックは、上面、下面、および1つ以上のエッジを有する。本発明の好ましい実施態様においては、弾道抵抗性材料または弾道抵抗性物品は約2〜約20個の個別パネルを含み、さらに好ましくは約4〜約12個の個別パネルを含み、最も好ましくは約4〜約8個の個別パネルを含む。パネルの寸法は、一般には変わってよく(所望の使用法に従って決まる)、スタックにおける個々のパネルは、サイズと形状が実質的に同様であるのが好ましい。小さなパネルは約10”×10”(25.4cm×25.4cm)の寸法を有してよく、大きなパネルは約60”×120”(152.4cm×304.8cm)の寸法を有してよい。これらの寸法は代表的なものであって、これらに限定されない。前記スタックの各パネルが圧密化繊維網を含み、前記圧密化繊維網が複数のクロスプライ繊維層を含み、各繊維層が実質的に平行な整列状態で配置された複数の繊維を含む。したがってパネルの厚さは一般に、任意的な外側ポリマー層の厚さ、および第1と第2の繊維ラップの厚さに加え、組み込まれている繊維層の数に応じて異なる。
【0034】
本発明の好ましい実施態様においては、繊維は、複合物の約70〜約95重量%を構成するのが好ましく、複合物の約79〜約91重量%を構成するのがさらに好ましく、そして複合物の約83〜約89重量%を構成するのが最も好ましく、このとき複合物の残部は、前記母材組成物、または前記母材と前記ポリマーフィルムとの組み合わせである。母材組成物はさらに、カーボンブラックやシリカ等の充填剤を含んでもよいし、オイルで増量してもよいし、あるいはイオウ、過酸化物、金属酸化物、もしくは当業界においてよく知られている放射線硬化システムによって加硫してもよい。母材組成物はさらに、例えばスイスのチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社からイルガノックス(Irganox)(登録商標)の商品名で市販されている酸化防止剤[特にイルガノックス1010、すなわち((テトラキス−(メチレン−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロシンナメート)メタン))]を含んでよい。
【0035】
一般には、本発明の弾道抵抗性材料は、高強度繊維を1つ以上の繊維層に配列することによって作製される。各層は、整列状態の個別繊維もしくは個別ヤーンを含んでよい。母材組成物は、層が作製される前、または層が作製された後に、高強度繊維に施すのが好ましく、次いで多層複合物が形成されるよう、母材材料−繊維組み合わせ物を圧密化する。本発明の繊維は、前記母材組成物でコーティングすることもできるし、前記母材組成物を含浸させることもできるし、前記母材組成物中に埋め込むこともできるし、あるいは当業界によく知られている方法によって(例えば、母材組成物の溶液を繊維の表面上に噴霧またはロール塗りし、次いで乾燥することによって)、前記母材組成物を施すこともできる。繊維から溶媒を除去する前もしくは後において、繊維を高温延伸操作にかける前に、高モジュラス前駆体でコーティングすること(ゲル繊維)を含めて(従来のゲル紡糸繊維作製法を使用する場合)、繊維にコーティングを施すための他の方法も使用することができる。このような方法は、当業界によく知られている。
【0036】
母材材料の付与は、繊維もしくはヤーンの少なくとも1つの表面を、選定された母材組成物でコーティングする(好ましくは、個々の繊維のそれぞれを実質的にコーティングもしくはカプセル封入する)ことが好ましい。母材材料を施した後、圧密化する前に、層状の個々の繊維を互いに接着させても、接着させなくてもよい。圧密化により、一緒にプレスされることで、そしてこのようなコーティングされた繊維として融合することによって、複数の繊維層またはヤーン層が一体となる。本発明の布帛複合物は、複数の織った繊維層もしくは不織繊維層を含むのが好ましく、これらの繊維層が圧密化されて、単層の圧密化繊維網となる。本発明の好ましい実施態様においては、繊維層が不織繊維を含み、前記圧密化繊維網のそれぞれの個別繊維層が、共通の繊維方向に沿って互いに平行に配列した繊維を含むのが好ましい。このような一方向に整列した繊維の連続層を、その前の層に対して回転させることができる。複合物の個々の繊維層は、各個別層の一方向繊維の繊維方向が、隣接層の一方向繊維の繊維方向に対して回転するようクロスプライされているのが好ましい。1つの例は5層物品であって、このとき第2層、第3層、第4層、および第5層が、第1層に対して+45°、−45°、90°、および0°回転しているが、必ずしもこの順序である必要はない。本発明の目的に適うよう、隣接層は、他の層の縦繊維方向に対して約0°と約90°との間の実質的にいかなる角度でも整列させることができる。好ましい例は、0°/90°の配向を有する2つの層を含む。このような回転した一方向整列が、例えば米国特許第4,457,985号、第4,748,064号、第4,916,000号、第4,403,012号、第4,623,573号、および第4,737,402号に記載されている。繊維網は、よく知られている種々の方法によって[例えば、米国特許第6,642,159号(該特許を参照により本明細書に含める)に記載の方法によって]作り上げることができる。理解しておかねばならないことは、本発明の単層圧密化網は一般に、いかなる数のクロスプライ層(例えば約2〜約1500、さらに好ましくは約10〜約1000、さらに好ましくは約20〜約40以上の層;種々の用途に応じて要求される層の数が異なる)を含んでもよい、という点である。
【0037】
本発明の特に好ましい実施態様においては、先ず本発明の繊維を、前述した方法の1つを使用してエラストマー母材組成物でコーティングし、次いで複数の繊維を不織繊維層に配置させる。個々の繊維は、互いに隣接するように並ぶのが好ましく、またシート様整列の繊維(このとき、該繊維は、共通の繊維方向に沿って実質的に互いに平行に整列されている)に配置されるのが好ましい。従来の方法を、少なくとも2つの一方向繊維層が形成されるように行うのが好ましく、これにより繊維は、全ての繊維表面が母材組成物で実質的にコーティングされる。次いで繊維層を、単層の圧密化繊維網に圧密化するのが好ましい。これは、個々の繊維層を、ある1つの層が他の層の上になるように積み重ね、次いで全体としての構造がヒートセットされるように熱と圧力をかけて接着し、母材材料が流動して残留ボイドスペースをすべて埋めるようにすることによって達成することができる。当業界において従来から知られているように、優れた弾道抵抗性は、ある1つの層の繊維配列方向が、他の層の繊維整列方向に対してある角度で回転されるように、個々の繊維層がクロスプライされている場合に達成される。例えば、好ましい構造体は、ある1つの層の縦繊維方向が、他の層の縦繊維方向に対して直角となるように配置された、本発明の2つの繊維層を有する。
【0038】
最も好ましい実施態様においては、一方向に整列した繊維の2層が0°/90°配置にてクロスプライされ、次いでこれを成形して前駆体を作製する。2つの繊維層の一方を、好ましくは、他方の層の幅に沿って0°/90°配向にて連続的に配置できる長さに切断することによって、2つの繊維層を連続的にクロスプライすることができ、当業界においてユニテープとして知られているものが形成される。米国特許第5,173,138号と第5,766,725号は、連続的なクロスプライするための装置を開示している。次いで、これらの装置により得られる連続的2層構造物を、それぞれの層の間に隔離材料層を組み込んだ状態でロールに巻き取ることができる。最終用途の構造物を作製する用意ができたら、ロールから巻き出し、隔離材料を剥ぎ取る。2層のサブアセンブリーをスライスして個別のシートとし、これらを積み重ねて多層にし、次いで最終形状品を作製するために、そして必要に応じて母材ポリマーを硬化させるために、熱と圧力を加えて処理する。同様に、複数のヤーンが、単層を形成するように配列される場合は、ヤーンを一方向に配置して、同様の仕方でクロスプライし、次いで圧密化することができる。
【0039】
繊維層を単層圧密化網もしくは布帛複合物に圧密化させるための、そして任意的なポリマーフィルム層を貼り付けるための適切な接着条件は、従来から知られている積層法を含む。一般的な積層法は、クロスプライ繊維層を、約110℃の温度および約200psi(1379kPa)の圧力にて約30分プレスすることを含む。本発明の繊維層の圧密化は、約25psi(〜172kPa)〜約500psi(3447kPa)の圧力またはそれ以上の圧力にて、約200°F(〜93℃)〜約350°F(〜177℃)の温度で行うのが好ましく、約200°F〜約300°F(〜149℃)の温度で行うのがさらに好ましく、そして約200°F〜約280°F(〜121℃)の温度で行うのが最も好ましい。当業界において従来から知られているように、圧密化は、オートクレーブ中にて行うことができる。
【0040】
加熱する際に、母材は、完全に溶融させることなく積み重ねたり、流動させたりすることができる。しかしながら一般には、母材材料を溶融させる場合は、複合物を作製するのに比較的小さな圧力しか必要とされないが、母材材料が粘着温度に加熱されるだけの場合は、一般にはより高い圧力が必要とされる。圧密化工程は、一般には約10秒〜約24時間かかる。しかしながら、温度、圧力、および時間は、一般には、ポリマーの種類、ポリマー含量、プロセス、および繊維の種類に依存する。
【0041】
個々の布帛層の厚さは、個々の繊維の厚さに対応する。したがって、本発明の単層圧密化網は、約25μm〜約500μmの厚さを有するのが好ましく、約75μm〜約385μmの厚さを有するのがさらに好ましく、約125μm〜約255μmの厚さを有するのが最も好ましい。このような厚さが好ましいけれども、ここで理解しておかねばならないことは、特定のニーズを満たすために他のフィルム厚さもつくり出すことができ、これらも本発明の範囲内に含まれる、という点である。
【0042】
繊維層を圧密化した後に、従来の方法によって、単層圧密化網の前面と後面のそれぞれにポリマー層を結合させるのが好ましい。パネルのスタックが形成されたときに、スタックの各個別パネルが、その前面と後面のそれぞれに結合されたポリマー層を有するのが好ましい。このポリマー層により、スタックのパネルの成形前に、パネルがくっつくのが防止される。前記ポリマー層に対する適切なポリマーとしては、熱可塑性ポリマーや熱硬化性ポリマーがあるが、これらに限定されない。適切な熱可塑性ポリマーは、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ビニルポリマー、フルオロポリマー、ならびにこれらのコポリマーと混合物(これらに限定されない)を含む群から選択することができる。これらのうち、好ましいのはポリオレフィン層である。好ましいポリオレフィンはポリエチレンである。ポリエチレンフィルムの例としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、線状中密度ポリエチレン(LMDPE)、線状超低密度ポリエチレン(VLDPE)、線状超超低密度ポリエチレン(ULDPE)、および高密度ポリエチレン(HDPE)などがあるが、これらに限定されない。これらのうち、最も好ましいポリエチレンはLLDPEである。適切な熱硬化性ポリマーとしては、熱硬化性のアリル樹脂、アミノ樹脂、シアネート(cyanate)、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、硬質ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ビニルエステル樹脂、およびこれらのコポリマーとブレンド(例えば、米国特許第6,846,758号、第6,841,492号、および第6,642,159号に記載の物質)などがあるが、これらに限定されない。本明細書に記載のように、ポリマーフィルムはポリマーコーティングを含む。
【0043】
ポリマーフィルム層を、よく知られている積層法を使用して、単層圧密化網に結合させるのが好ましい。積層は一般に、複数の層を合わせて単一のフィルムにするに足る熱と圧力の条件下にて、個々の層を互いの上に配置することによってなされる。個々の層を互いの上に配置し、次いで、通常はこの組み合わせ物を、当業界によく知られている方法によって、加熱した一対の積層ローラーのニップに通す。積層加熱は、約95℃〜約175℃(好ましくは、約105℃〜約175℃)の範囲の温度にて、約5psig(0.034MPa)〜約100psig(0.69MPa)の範囲の圧力で、約5秒〜約36時間(好ましくは、約30秒〜約24時間)行うことができる。本発明の好ましい実施態様においては、ポリマーフィルム層は、パネル全体の約2重量%〜約25重量%を構成するのが好ましく、パネル全体の約2重量%〜約17重量%を構成するのがさらに好ましく、そしてパネル全体の約2重量%〜約12重量%を構成するのが最も好ましい。ポリマーフィルム層の重量%は、一般には、多層フィルムを形成している布帛層の数に応じて変わる。圧密化工程と外側ポリマー積層工程が、ここでは2つの別個の工程として説明されているが、その代わりに、当業界における従来法によりこれらの工程を一体化して、単一の圧密化/積層工程にすることもできる。
【0044】
ポリマーフィルム層は非常に薄いのが好ましい。約1μm〜約250μmの層厚さを有するのが好ましく、約5μm〜約25μmの層厚さを有するのがさらに好ましく、約5μm〜約9μmの層厚さを有するのが最も好ましい。個々の繊維層の厚さは、個々の繊維の厚さに対応する。したがって本発明の単層圧密化網は、約25μm〜約500μmの厚さを有するのが好ましく、約75μm〜約385μmの厚さを有するのがさらに好ましく、約125μm〜約255μmの厚さを有するのが最も好ましい。このような厚さが好ましいけれども、ここで理解しておかねばならないことは、特定のニーズを満たすために他のフィルム厚さもつくり出すことができ、これらも本発明の範囲内に含まれる、という点である。
【0045】
本発明によれば、本明細書に記載のパネル、またはパネルのスタックが、種々の方法の少なくとも1つによって補強される。1つの好ましい実施態様においては、パネルまたはスタックを1つ以上のエッジにおいて補強することができ、このとき製造時に繊維をトリミングしたり切断したりすることができる。例えば、パネルまたはパネルのスタックは、パネルの1つ以上の少なくとも1つのエッジを高強度スレッドで縫い合わせて、あるいはパネルまたはパネルのスタックのエッジを溶融して、標準的なトリミング処理時において擦り切れていた可能性のある部位を補強することによって強化することができる。本縫い、手縫い、マルチスレッド縫い、オーバーエッジ縫い、平縫い、環縫い、およびジグザグ縫い等の方法を含めた、種々の縫い合わせ方法と縫い付け方法が業界によく知られている。本発明の好ましい実施態様において使用されるステッチを縫い合わせるのに利用されるスレッドのタイプは幅広く変更可能であるが、前述のような、約7g/デニール以上のテナシティと約150g/デニール以上の引張モジュラスを有する前記高強度・高モジュラス繊維のスレッドを含むのが好ましく、アラミド繊維もしくはポリエチレン繊維を含むのがさらに好ましく、そしてポリエチレン繊維を含むのが最も好ましい。スレッドは、モノフィラメントヤーンを含んでも、あるいはマルチフィラメントヤーンを含んでもよく、米国特許第5,545,455号(該特許の全開示内容を参照により本明細書に含める)に記載のマルチフィラメントヤーンを含むのが最も好ましい。ステッチの使用量は広い範囲で変動してよい。一般に貫通抵抗性の用途においては、ステッチの使用量は、縫い合わされた繊維層の全重量の約10%未満を構成するような使用量である。単一パネルは、圧密化繊維網の層のそれぞれを通して縫い合わされるのが好ましい。パネルのスタックが、個別に縫い合わされた複数のパネルを含んでもよいし、あるいはスタック全体を縫い合わせて、別個のパネルを圧密化させてもよい。
【0046】
その代わりに、パネルまたはパネルのスタックは、熱と圧力を加えた状態にて、1つ以上の個別パネルのエッジを溶融することによって、あるいはパネルのスタック全体のエッジを溶融することによって補強することができる。エッジは、例えば、エッジモールドを使用して、あるいは固体金属フレーム(例えば固体金属ピクチャーフレーム)を使用して溶融することができる。エッジモールドまたは固体金属フレームは、オーブンを使用して加熱することもできるし、あるいは加熱・冷却能力を有するプレス中に据え付けることもできる。エッジモールドまたは固体金属フレームは、エッジだけをプレスして成形する。温度、圧力、および持続時間等の溶融条件は、繊維層もしくはパネルの数、およびそれらの厚さ等のファクターに依存する。このような条件は、当業者によって容易に決定されるであろう。パネルもしくはスタックはさらに、1つ以上のエッジにて縫い合わせることも、溶融することもできる。
【0047】
パネルもしくはスタックを縫い合わせたり及び/又は溶融したりすることのほかに、前記1つ以上のパネルを1つ以上の織った繊維ラップもしくは不織繊維ラップで巻き付けることによって、パネルもしくはパネルのスタックを補強することができる。本発明の好ましい実施態様においては、パネルもしくはパネルのスタックが、前記パネルの前記前面、前記後面、および1つ以上のエッジの少なくとも一部を、あるいは前記スタックの前記上面、前記下面、および1つ以上のエッジの少なくとも一部を取り巻く第1の繊維ラップで補強される。さらに、オプションとして、第2の繊維ラップが、第1の繊維ラップの全体にわたってパネルもしくはパネルのスタックを取り巻いてよい。本明細書で使用されているように、第1の繊維ラップと任意的な第2の繊維ラップがパネルのスタックを“取り巻く”と記載されているときは、たとえスタックの上部パネルと下部パネルの外側表面だけがラップに接触しているとしても、前記スタックの各パネルは、取り巻かれるように圧密化されている。本発明の他の実施態様においては、1つ以上の追加の繊維ラップを、パネルもしくはスタックの周りにさらに巻き付けることができ、これにより前記第1の繊維ラップと前記第2の繊維ラップが取り巻かれることになる。一般には、弾道の脅威、および/または、セラミックの厚さと種類に基づいて、2つより多い繊維ラップを使用することができる。それぞれの追加繊維ラップは、最も近い下の繊維ラップの巻き付け方向に対して横断方向の巻き付け方向に、パネルもしくはスタックを取り巻くのが好ましい。
【0048】
第1と第2の繊維ラップのそれぞれが圧密化繊維網を含むのが好ましく、圧密化繊維網が複数のクロスプライ繊維層を含み、各繊維層が、整列状態で配列された複数の繊維を含み、このとき前記繊維が、約7g/デニール以上のテナシティと約150g/デニール以上の引張モジュラスを有し;前記繊維が、その上に母材組成物を有し;前記複数のクロスプライ繊維層が、圧密化繊維網を形成するよう、前記母材組成物で圧密化されている。繊維ラップは、パネルを形成する材料と類似していても、パネルを形成する材料と同一であっても、あるいはパネルを形成する材料とは異なっていてもよく、また互いに同一であっても、異なっていてもよい。
【0049】
本発明の好ましい実施態様においては、第1の繊維ラップと第2の繊維ラップが存在し、それぞれが同一である。ラッピング材料は、コーティングしたスペクトラ(SPECTRA)(登録商標)(HMPE)繊維、アラミド繊維、PBO繊維、M5(登録商標)繊維、EタイプとSタイプのガラス繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、天然繊維、またはこれらの組み合わせを含むのが好ましい。ラッピング材料は、スペクトラ・シールド、コーティングした布帛、コーティングしたフェルト、または布帛とフェルトの組み合わせをさらに含んでよい。繊維ラップは、多層構造物を含むのが好ましい。その代わりに、コーティングした単一層を、パネルもしくは他の物品の全ての方向に巻き付けることもできる。本発明の好ましい実施態様においては、第1と第2の繊維ラップのそれぞれが、平行整列状態にて一方向に整列した繊維の、複数のクロスプライ層を含むのが好ましく、また第1の繊維ラップの取り巻き方向が、第の繊維ラップの取り巻き方向に対してある角度をなすように、パネルもしくはスタックを取り巻くのが好ましい。第1の繊維ラップと第2の繊維ラップは、パネルもしくはスタックを直角方向に取り巻くのが最も好ましい。
【0050】
一般に、ポリマー層が組み込まれない場合は、前記第1の繊維ラップと前記第2の繊維ラップの両方を組み込むのが好ましい。ポリマー層が組み込まれる場合は、他の形態の補強が使用される限り、ラッピングは必ずしも必要ではない。一般に、エッジが溶融されるときは、ラッピングは必要とされない。第1の繊維ラップと任意的な第2の繊維ラップが組み込まれる場合、これらの繊維ラップは、パネルもしくはスタックを所望の形状に成形した後に、パネルもしくはスタックの周りに巻き付けなければならない。一般には、単一または複数の繊維(すなわちテープの形態のもの)は、いかなる形状の物品に対しても巻き付けることができる。ラッピングは、当業者が容易に理解できる方法を使用して(例えば、フラットパイプタイプ物品と対称パイプタイプ物品に対してはフィラメント巻取り機を使用して、あるいはミサイルや他の円錐状形状物もしくは非対称形状物に対しては玉巻き機を使用して)行うのが好ましい。
【0051】
第1の繊維ラップと任意的な第2の繊維ラップは、パネルもしくはスタックの周りに巻き付け、張力によって所定の位置に保持することもできるし、あるいは適切な結合手段によって(例えば、ポリスルフィド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、およびエラストマー等の接着剤を使用して)、または機械的手段(例えば、ステープル、リベット、ボルト、またはねじ等)によってパネル(またはスタックの上部パネル)に結合させることもできる。弾道抵抗性のパネルもしくはパネルのスタックは、縫い合わせることも、巻き付けることもでき、このときステッチを、第1の繊維ラップと任意的な第2の繊維ラップに通す。弾道抵抗性のパネルもしくはスタックはさらに、オプションとして、補強された溶融エッジを有してよく、引き続き前記第1のラップと前記任意的な第2のラップを巻き付けることができる。さらに、ラッピングした後に、パネル(もしくはスタック)、前記第1の繊維ラップ、および前記任意的な第2のラップを、圧密化によって一体化するのが好ましい。例えば、ラッピングした後に、4−パネルのスタックを、シール可能なバッグ中に移し、減圧にするのが好ましい。次いで減圧状態のバッグをオートクレーブに移し、ここで熱(240°F)と圧力(100psi)(689.5kPa)を加え、その後に室温に冷却する。
【0052】
別の実施態様においては、本発明はさらに、弾道抵抗特性を改良するために結合された少なくとも1つの剛性プレートを含む1つ以上の弾道抵抗性パネル(前記方法の1つ以上を使用して補強してもよい)を提供する。このような剛性プレートは、セラミック、ガラス、金属充填複合物、セラミック充填複合物、ガラス充填複合物、サーメット、高硬度鋼(HHS)、防弾アルミニウム合金、チタン、またはこれらの組み合わせを含み、このとき剛性プレートと本発明のパネルは、対面(face-to-face)配置をとるように一緒に積み重ねられる。複数の個別パネルのスタックが形成される場合は、スタックの各個別パネルにではなくスタック全体の上面に剛性プレートを1つだけ結合させるのが好ましい。最も好ましいタイプのセラミックとしては、酸化アルミニウム、炭化ケイ素、および炭化ホウ素がある。本発明の弾道パネルは、一体構造の単一セラミックプレートを組み込んでもよいし、あるいは小さなタイルもしくはセラミックボールを、軟質樹脂(例えばポリウレタン)中に懸濁した状態で含んでもよい。適切な樹脂は当業界によく知られている。さらに、タイルの複数層もしくは複数段を、本発明のプレートに結合させることができる。例えば、複数の3”×3”×0.1”(7.62cm×7.62cm×0.254cm)セラミックタイルを、薄いポリウレタン接着フィルムを使用して12”×12”(30.48cm×30.48cm)パネル上に据え付けることができ、このときセラミックタイルは全て、タイル同士の間に隙間が存在しないようにぴったり貼り合わせるのが好ましい。次いで第2のタイル段を、接合部が分散されるよう、オフセットと共に第1のセラミック段に結合させることができる。この操作を、防護具全体を端から端まで覆うように続ける。一般に、セラミックプレートが存在する場合には、ラッピングは必要とされないが、これは好ましいことである。できるだけ少ない重量で高い性能を得るためには、パネルもしくはスタックを高圧で成形してから、剛性プレートを結合させことが好ましい。しかしながら、大きなパネル[例えば、4’×6’(1.219m×1.829m)や4’×8‘(1.219m×2.438m)]の場合は、パネルもしくはスタックと剛性プレートは、単一低圧オートクレーブ法にて成形することができる。
【0053】
本発明の耐層間剥離性の弾道抵抗性布帛を作製した後、これらは種々の用途にて使用することができる。本発明の布帛複合物は、耐層間剥離性で弾道抵抗性の“硬質”防護具を作製するのに特に有用である。“硬質”防護具とは、ヘルメット、軍用車両用の防護プレートや防護パネル、または防護シールド等の物品を意味しており、これらの物品は、相当量の応力を受けたときに構造上の剛性を保持するよう、そして崩壊せずに自立できるよう、充分な機械的強度を有する。
【0054】
本発明の耐層間剥離性で弾道抵抗性の材料もしくは布帛複合物は、パネルもしくはパネルのスタックを加熱及び圧力下で処理することによって物品に成形することができる。前記単層圧密化繊維網の1つ以上のシートが成形のためにさらされる温度および/または圧力は、使用される高強度繊維のタイプに応じて異なる。例えば防護パネルは、前記シートのスタックを、約150〜約400psi(1,030〜2,760kPa)[好ましくは約180〜約250psi(1,240〜1,720kPa)]の圧力および約104℃〜約127℃の温度で成形することによって製造することができる。ヘルメットは、前記シートのスタックを、約1500〜約3000psi(10.3〜20.6MPa)の圧力および約104℃〜約127℃の温度で成形することによって製造することができる。成形温度は、一般には約20℃〜約175℃の範囲であり、好ましくは約100℃〜約150℃の範囲であり、さらに好ましくは約110℃〜約130℃の範囲である。例えば米国特許第4,623,574号、第4,650,710号、第4,748,064号、第5,552,208号、第5,587,230号、第6,642,159号、第6,841,492号、および第6,846,758号に記載の、物品を製造するのに適した方法も適切である。成形防護プレートも、従来から知られている方法と条件にしたがって製造することができる。
【0055】
本発明の衣服は、当業界において従来から知られている方法によって作製することができる。衣服は、本発明の耐層間剥離性布帛と衣料品とを接合することによって作製することができる。例えば、ベストは、本発明の耐層間剥離性布帛と接合される一般的な布帛ベストを含んでよく、これにより戦力的に配置されたポケット中に本発明の布帛の1つ以上が挿入される。これによってベストの重量をできるだけ低くしつつ、弾道防護性を最大に高めることが可能となる。本明細書において使用されている“接合する(adjoining)”または“接合された(adjoined)”という用語は、耐層間剥離性で弾道抵抗性の布帛を、オプションとして、ベストや他の衣料品から簡単に取り外せるように、例えば、縫い合わせたり、または接着したりなどすることによって取り付けること、ならびに他の布帛との未結合カップリングまたは並置によって取り付けることを含むものとする。柔軟性のあるシート、ベスト、および他の衣服等のフレキシブル構造物を作製する際に使用される布帛は、低引張モジュラス母材組成物を使用した布帛から作製するのが好ましい。ヘルメットや防護具等の硬質物品は、高引張モジュラス母材組成物を使用した布帛から作製するのが好ましい。
【0056】
弾道抵抗特性は、当業界においてよく知られている標準的な試験法を使用して決定される。例えば、弾道複合物のスクリーニング実験は通常、特定の重量、硬度、および寸法を有する、22口径の非変形性スチールフラグメントを使用する[Mil−Spec.MIL−P−46593A(ORD)]。試験はさらに、MIL−STD−662F標準法に従って(特に、発射バレルの速度測定スクリーンを組み立て、試験用の成形パネルを据え付けるために)、軟鋼ピン・ペネトレータ(重量:123グレイン)を取り付けたAK47弾丸(7.62mm×39mm)を使用して行うこともできる。
【0057】
ある構造物の防護力または貫通抵抗性は通常、発射体の50%が複合物を貫通し、発射体の50%がシールドで停止するときの衝撃速度(V50値としても知られている)を用いて表わされる。本明細書で使用している物品の“貫通抵抗性”とは、指定された脅威(例えば、弾丸、破片、および爆弾の金属片を含めた物理的物体、ならびに爆風のような非物理的物体)による貫通に対する抵抗性である。面密度(複合物パネルの重量を表面積で除して得られる)の等しい複合物の場合、V50が大きくなるほど、複合物の貫通抵抗性がより良好になる。本発明の布帛の弾道抵抗特性は、多くのファクター(特に、布帛を製造するのに使用される繊維の種類)によって変動する。
【0058】
本発明の布帛はさらに、優れた剥離強度を示す。剥離強度は、繊維層間の接着強さの指標である。一般には、母材ポリマーの含量が少なくなるほど、接着強さが低くなる。しかしながら、臨界接着強さ未満になると、弾道材料は、材料の切断と物品(例えばベスト)の集成時における耐久力を失い、したがって物品の長期耐久性が低下する。好ましい実施態様においては、スペクトラ・シールド(0°,90°)構造物におけるスペクトラ繊維材料に対する剥離強度は、少なくとも約0.17ポンド/ft(0.83kg/m)の良好なフラグメント抵抗性であるのが好ましく、少なくとも約0.188ポンド/ft(0.918kg/m)であるのがさらに好ましく、そして少なくとも約0.206ポンド/ft(1.006kg/m)であるのがさらに好ましい。
【0059】
以下に実施例を挙げて本発明を説明する。ただし、これらの実施例によって本発明が限定されるわけではない。
【実施例】
【0060】
実施例1
比較対照物である12”×12”(30.48cm×30.48cm)の試験パネルを、68層のスペクトラ・シールドを0°,90°の交互繊維配向に従って加熱圧力下にて積み重ねることによって成形した。成形プロセスは、材料のスタックを240°F(115.6℃)で10分予備加熱すること、次いで240°Fに保持したモールド中にて500psi(3447kPa)の成形圧力を10分加えることを含んでいた。10分後、冷却サイクルを開始し、パネルが150°F(65.56℃)に達したところで、モールドから成形パネルを引っ張り出した。外部から成形圧力を加えることなく、パネルをさらに室温に冷却した。
【0061】
試験のために、発射バレルの速度測定スクリーンの組み立て及び試験用成形パネルの据え付けを、MIL−STD−662F標準法に従って行った。パネルの弾道抵抗性を測定するために、軟鋼ピン・ペネトレータ(重量:123グレイン)を取り付けたAK47弾丸(7.62mm×39mm)を選択した。パネルに向けて幾つかのAK47弾丸を発射してV50を測定した。V50は、125fps(フィート/秒)(38.1m/秒)の速度広がり(velocity spread)以内に、弾丸の50%が停止し、弾丸の50%がパネルを貫通する速度である。クランプ止めしたエッジの全てから2インチ以上でパネルを撃たないように注意した。
【0062】
最初の弾丸がパネルに発射された後、パネルは、かなりの層間剥離と層分離を示し始めた。層間剥離していない領域に次の弾丸を撃つように注意した。試験が完了した後、パネルを、破損と層間剥離の状態に関して調べた。
【0063】
実施例2
12”×12”の4つのパネルを加熱圧力下にて成形した。各パネルは17層のスペクトラ・シールド(これらを積み重ね、0°,90°交互繊維配向に従ってLLDPEフィルムの薄いシート間にサンドイッチ状にはさんだ)からなった。成形プロセスは、材料の各スタックを240°Fで10分予熱すること、次いで240°Fに保持したモールド中にて500psiの成形圧力を10分間加えることを含んでいた。10分後、冷却サイクルを開始し、パネルが150°Fに達したところで、モールドから成形パネルを引っ張り出した。外部から成形圧力を加えることなく、パネルをさらに室温に冷却した。
【0064】
4つの成形パネルを互いに積み重ね、4層のスペクトラ・シールドを巻き付けた。第1の層を左から右まで巻き付け、次いでパネルの底部方向に対して横断方向の頂部において別の層を巻き付け、次いで再び左から右まで別の層を巻き付け、次いでパネルの頂部から底部まで別の層を巻き付けた。巻き付けた後、4−パネルのスタックをシール可能なバッグ中に移し、減圧にした。減圧状態のバッグをオートクレーブに移し、ここで熱(240°F)と圧力(100psi)を30分加え、次いで冷却サイクルを施した。4−パネルのスタックが室温に達したところで、スタックをオートクレーブから引っ張り出し、バッグから取り出した。
【0065】
試験に際しては、発射バレルの速度測定スクリーンの組み立て、及び、巻き付けた試験用4−パネルスタックの据え付けを、MIL−STD−662F標準法に従って行った。実施例1の場合と同様に、充分に巻き付けた4−パネルスタックの弾道抵抗性を測定するために、AK47弾丸(7.62mm×39mm)を選択した。幾つかの弾丸をパネルに向けて発射してV50を測定した。クランプ止めしたエッジの全てから2インチ以上でパネルを撃たないように注意した。
【0066】
幾つかの弾丸をパネルに向けて発射した後、パネルは、かなりの層間剥離と層分離を示した。
実施例3
40層のスペクトラ・シールドを、0°,90°交互繊維配向に従って積み重ねることによって、比較対照物としての12”×12”試験パネルを加熱圧力下にて成形した。成形プロセスは、材料の各スタックを240°Fで10分予熱すること、次いで240°Fに保持したモールド中にて500psiの成形圧力を10分間加えることを含んでいた。10分後、冷却サイクルを開始し、パネルが150°Fに達したところで、モールドから成形パネルを引っ張り出した。外部から成形圧力を加えることなく、パネルをさらに室温に冷却した。
【0067】
次いで、3”×3”×0.1”(7.62cm×7.62cm×0.254cm)のセラミックタイルを、薄いポリウレタン接着フィルムを使用してパネル上に据え付けた。全てのセラミックタイルが互いに一列に並ぶ(タイル間の隙間がない状態で、隣接したタイルが完全に接触する)ように注意を払った。次いで、一列のタイルを同様のやり方で据え付けた。但し、このとき、それまでのセラミックタイルの列と比較して接合部が分散するよう1.5”のオフセットを設けた。
【0068】
試験に際しては、発射バレルの速度測定スクリーンの組み立て、及び、試験用成形パネルの据え付けを、MIL−STD−662F標準法に従って行った。実施例1の場合と同様に、パネルの弾道抵抗性を測定するために、AK47弾丸を選択した。セラミックタイルを弾丸に対向させた状態で、幾つかの弾丸をパネルに向けて発射した。該パネルに関してV50を測定した。クランプ止めしたエッジの全てから2インチ以上でパネルを撃たないように注意した。
【0069】
最初の弾丸がパネルに発射された後、パネルは、かなりの層間剥離と層分離を示し始めた。層間剥離していない領域において次の弾丸を撃つように注意した。試験が完了した後、パネルを、破損と層間剥離の状態に関して調べた。
【0070】
実施例4
12”×12”の4つのパネルを加熱圧力下にて成形した。各パネルは10層のスペクトラ・シールド(これらを積み重ね、0°,90°交互繊維配向に従ってLLDPEフィルムの薄いシート間にサンドイッチ状にはさんだ)からなった。成形プロセスは、材料の各スタックを240°Fで10分予熱すること、次いで240°Fに保持したモールド中にて500psiの成形圧力を10分間加えることを含んていた。10分後、冷却サイクルを開始し、パネルが150°Fに達したところで、モールドから成形パネルを引っ張り出した。外部から成形圧力を加えることなく、パネルをさらに室温に冷却した。
【0071】
4つの成形パネルを互いに積み重ね、3”×3”×0.1”のセラミックタイルを、薄いポリウレタン接着フィルムを使用して集成パネル上に据え付けた。全てのセラミックタイルが互いに一列に並ぶ(タイル間の隙間がない状態で、隣接したタイルが完全に接触する)ように注意を払った。次いで、一列のタイルを同様のやり方で据え付けた。但し、このとき、それまでの列のセラミックタイルと比較して接合部が分散するよう1.5”(3.81cm)のオフセットを設けた。
【0072】
セラミックを含む集成パネルに、4層のスペクトラ・シールドを巻き付けた。第1の層を左から右まで巻き付け、次いでパネルの底部方向に対して横断方向の頂部において別の層を巻き付け、次いで再び左から右まで別の層を巻き付け、次いでパネルの頂部から底部まで別の層を巻き付けた。巻き付けた後、4−パネルのスタックをシール可能なバッグ中に移し、減圧にした。減圧状態のバッグをオートクレーブに移し、ここで熱(240°F)と圧力(100psi)を30分加え、次いで冷却サイクルを実施した。4−パネルのスタックが室温に達したところで、スタックをオートクレーブから引っ張り出し、バッグから取り出した。
【0073】
試験に際しては、発射バレルの速度測定スクリーンの組み立て、及び、巻き付けた試験用4−パネルスタックの据え付けを、MIL−STD−662F標準法に従って行った。実施例1の場合と同様に、充分に巻き付けたパネルの弾道抵抗性を測定するために、AK47弾丸を選択した。セラミックが弾丸に対向した状態で、幾つかの弾丸をパネルに向けて発射し、V50を測定した。クランプ止めしたエッジの全てから2インチ以上でパネルを撃たないように注意した。
【0074】
幾つかのAK47弾丸をパネルに向けて発射した後、パネルは層の分離を示さなかった。
上記実施例からの結果を下記の表1に示す。
【0075】
【表1】

【0076】
好ましい実施態様を挙げて本発明を説明してきたが、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の変更や改良を行ってよいことは当業者にとって自明のことである。特許請求の範囲は、開示されている実施態様、上記にて説明されている代替態様、およびこれらの実施態様に対するあらゆる等価な態様を含む、と解釈すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)前面、後面、および1つ以上のエッジを有するパネル、前記パネルは、
i)圧密化繊維網、前記圧密化繊維網は複数のクロスプライ繊維層を含み、各繊維層は整列状態で配列された複数の繊維を含む;このとき前記繊維は、約7g/デニール以上のテナシティと約150g/デニール以上の引張モジュラスを有し;前記繊維は、その上に母材組成物を有し;前記複数のクロスプライ繊維層が、圧密化繊維網を形成するよう、前記母材組成物で圧密化されている;および
ii)前記圧密化繊維網の前記前面と前記後面のそれぞれに結合された少なくとも1つのポリマーフィルム層;
を含む;
b)前記パネルを取り巻いている第1の繊維ラップ、前記第1の繊維ラップは、前記パネルの前記前面、前記後面、および1つ以上のエッジの少なくとも一部を取り巻いている;ならびに
c)前記パネルを取り巻いている任意的な第2の繊維ラップ、前記第2の繊維ラップは、第1の繊維ラップの取り巻き方向に対して横断方向にて第1の繊維ラップを取り巻いている;
を含む弾道抵抗性材料。
【請求項2】
パネルを取り巻いている第2の繊維ラップを含み、前記第2の繊維ラップが、前記第1の繊維ラップの取り巻き方向に対して横断方向にてパネルを取り巻いている、請求項1に記載の弾道抵抗性材料。
【請求項3】
前記第1の繊維ラップと前記第2の繊維ラップがそれぞれ圧密化繊維網を含み、圧密化繊維網は複数のクロスプライ繊維層を含み、各繊維層は整列状態で配列された複数の繊維を含み;このとき前記繊維は、約7g/デニール以上のテナシティと約150g/デニール以上の引張モジュラスを有し;前記繊維は、その上に母材組成物を有し;前記複数のクロスプライ繊維層は、圧密化繊維網を形成するように、前記母材組成物で圧密化されている、請求項1に記載の弾道抵抗性材料。
【請求項4】
前記パネルが圧密化繊維網を含み、前記圧密化繊維網が複数のクロスプライ繊維層を含み、各繊維層が、実質的に平行の整列状態で配列された複数の繊維を含む、請求項1に記載の弾道抵抗性材料。
【請求項5】
スタックにて配列された複数の個別パネルを含み、前記スタックが、上面、下面、および1つ以上のエッジを有し、第1の繊維ラップと任意的な第2の繊維ラップが、前記スタックの上面、下面、および1つ以上のエッジの少なくとも一部を取り巻いている、請求項1に記載の弾道抵抗性材料。
【請求項6】
前記パネルの1つ以上のエッジが補強される、請求項1に記載の弾道抵抗性材料。
【請求項7】
前記パネルの各エッジが、少なくとも1本のスレッドを使用して前記パネルの各エッジを縫い合わせることによって補強され、前記スレッドが、約7g/デニール以上のテナシティと約150g/デニール以上の引張モジュラスを有する高強度繊維を含む、請求項1に記載の弾道抵抗性材料。
【請求項8】
前記スタックの1つ以上のエッジが補強される、請求項5に記載の弾道抵抗性材料。
【請求項9】
前記スタックの各エッジが、少なくとも1本のスレッドを使用して前記スタックの各エッジを縫い合わせることによって補強され、前記スレッドが、約7g/デニール以上のテナシティと約150g/デニール以上の引張モジュラスを有する高強度繊維を含む、請求項5に記載の弾道抵抗性材料。
【請求項10】
前記スタックの前記1つ以上のエッジが、前記1つ以上のエッジにてスタックの一部を溶融することによって補強される、請求項5に記載の弾道抵抗性材料。
【請求項11】
前記繊維が、伸びきり鎖ポリオレフィン繊維、アラミド繊維、ポリベンザゾール繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリアミド繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリエチレンナフタレート繊維、ポリアクリロニトリル繊維、液晶コポリエステル繊維、ガラス繊維、および炭素繊維からなる群から選択される材料を含む、請求項1に記載の弾道抵抗性材料。
【請求項12】
前記繊維がポリエチレン繊維を含む、請求項1に記載の弾道抵抗性材料。
【請求項13】
前記母材組成物がエラストマー組成物を含む、請求項1に記載の弾道抵抗性材料。
【請求項14】
前記母材組成物が熱硬化性組成物を含む、請求項1に記載の弾道抵抗性材料。
【請求項15】
前記母材組成物がポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレンブロックコポリマーを含む、請求項1に記載の弾道抵抗性材料。
【請求項16】
前記繊維層のそれぞれが、各隣接繊維層の縦繊維方向に対して90°の角度でクロスプライされる、請求項1に記載の弾道抵抗性材料。
【請求項17】
請求項1に記載の弾道抵抗性材料から作製される弾道抵抗性物品。
【請求項18】
請求項5に記載の弾道抵抗性材料から作製される弾道抵抗性物品。
【請求項19】
請求項6に記載の弾道抵抗性材料から作製される弾道抵抗性物品。
【請求項20】
請求項8に記載の弾道抵抗性材料から作製される弾道抵抗性物品。
【請求項21】
前記ポリマーフィルム層が、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ビニルポリマー、フルオロポリマー、又はこれらのコポリマー若しくは組み合わせを含む、請求項1に記載の弾道抵抗性材料。
【請求項22】
前記ポリマーフィルム層が線状低密度ポリエチレンを含む、請求項1に記載の弾道抵抗性材料。
【請求項23】
a)前面、後面、および1つ以上のエッジを有するパネル、前記パネルは、
i)圧密化繊維網、前記圧密化繊維網が複数のクロスプライ繊維層を含み、各繊維層が整列状態で配列された複数の繊維を含む;このとき前記繊維は、約7g/デニール以上のテナシティと約150g/デニール以上の引張モジュラスを有し;前記繊維は、その上に母材組成物を有し;前記複数のクロスプライ繊維層は、圧密化繊維網を形成するように、前記母材組成物で圧密化されている;および
ii)必要に応じて、前記圧密化繊維網の前記前面と前記後面のそれぞれに結合された少なくとも1つのポリマーフィルム層;
を含む;
b)前記パネルの前面に結合された少なくとも1つの剛性プレート;
c)前記パネルを取り巻いている第1の繊維ラップ、前記第1の繊維ラップは、前記パネルの前記前面、前記後面、および1つ以上のエッジの少なくとも一部を取り巻いている;ならびに
d)前記パネルを取り巻いている任意的な第2の繊維ラップ、前記第2の繊維ラップは、第1の繊維ラップの取り巻き方向に対して横断方向に第1の繊維ラップを取り巻いている;
を含む弾道抵抗性材料。
【請求項24】
前記圧密化繊維層の前記前面と前記後面のそれぞれに結合された少なくとも1つのポリマーフィルム層をさらに含む、請求項23に記載の弾道抵抗性材料。
【請求項25】
前記パネルを取り巻いている第2の繊維ラップをさらに含み、前記第2の繊維ラップが、前記第1の繊維ラップの方向に対して横断方向にパネルを取り巻いている、請求項23に記載の弾道抵抗性材料。
【請求項26】
スタックにて配列された複数の個別パネルを含み、前記スタックが、上面、下面、および1つ以上のエッジを有し;少なくとも1つの剛性プレートが、前記スタックの上面に結合されており、第1の繊維ラップと任意的な第2の繊維ラップが、前記スタックの上面、下面、および1つ以上のエッジの少なくとも一部を取り巻いている、請求項23に記載の弾道抵抗性材料。
【請求項27】
前記パネルの1つ以上のエッジが補強される、請求項23に記載の弾道抵抗性材料。
【請求項28】
前記パネルの1つ以上のエッジが、前記1つ以上のエッジにて前記パネルを縫い合わせることによって補強される、請求項23に記載の弾道抵抗性材料。
【請求項29】
前記パネルの1つ以上のエッジが、前記1つ以上のエッジにて前記パネルの一部を溶融することによって補強される、請求項23に記載の弾道抵抗性材料。
【請求項30】
請求項23に記載の弾道抵抗性材料から作製される弾道抵抗性物品。
【請求項31】
請求項26に記載の弾道抵抗性材料から作製される弾道抵抗性物品。
【請求項32】
前記少なくとも1つの剛性プレートが、セラミック、ガラス、金属充填複合物、セラミック充填複合物、ガラス充填複合物、サーメット、高硬度鋼、防護アルミニウム合金、チタン、またはこれらの組み合わせを含む、請求項23に記載の弾道抵抗性材料。
【請求項33】
a)前面、後面、および1つ以上のエッジを有する少なくとも1つのパネルを作製する工程、前記パネルは、
i)圧密化繊維網、前記圧密化繊維網が複数のクロスプライ繊維層を含み、各繊維層が整列状態で配列された複数の繊維を含む;このとき前記繊維が、約7g/デニール以上のテナシティと約150g/デニール以上の引張モジュラスを有し;前記繊維が、その上に母材組成物を有し;前記複数のクロスプライ繊維層が、圧密化繊維網を形成するよう、前記母材組成物で圧密化されている;および
ii)前記圧密化繊維網の前記前面と前記後面のそれぞれに結合された少なくとも1つのポリマーフィルム層;
を含む;
b)パネルを物品に成形する工程;
c)成形パネルの周りを第1の繊維ラップで取り巻く工程、前記第1の繊維ラップは、前記パネルの前記前面、前記後面、および1つ以上のエッジの少なくとも一部を取り巻いている;および
d)必要に応じて、成形パネルの周りを第2の繊維ラップで取り巻く工程、前記第2の繊維ラップは、第1の繊維ラップの取り巻き方向に対して横断方向に第1の繊維ラップを取り巻いている;
を含む、弾道抵抗性材料の製造方法。
【請求項34】
パネルの周りを第2の繊維ラップで取り巻く工程をさらに含み、前記第2の繊維ラップは、第1の繊維ラップの取り巻き方向に対して横断方向に第1の繊維ラップを取り巻いている、請求項33に記載の製造方法。
【請求項35】
前記パネルの1つ以上のエッジを補強する工程をさらに含む、請求項33に記載の製造方法。
【請求項36】
複数の個別パネルのスタックを作製することをさらに含み、前記スタックが、上面、下面、および1つ以上のエッジを有しており;前記スタックが成形されていて、前記スタックは、その前記上面、前記下面、および1つ以上のエッジの少なくとも一部が、前記第1の繊維ラップと任意的な第2の繊維ラップで取り巻かれている、請求項33に記載の製造方法。
【請求項37】
a)前面、後面、および1つ以上のエッジを有するパネルを作製する工程、前記パネルは、i)圧密化繊維網、前記圧密化繊維網は複数のクロスプライ繊維層を含み、各繊維層が整列状態で配列された複数の繊維を含む;このとき前記繊維は、約7g/デニール以上のテナシティと約150g/デニール以上の引張モジュラスを有し;前記繊維は、その上に母材組成物を有し;前記複数のクロスプライ繊維層は、圧密化繊維網を形成するよう、前記母材組成物で圧密化されている;および
ii)必要に応じて、前記圧密化繊維網の前記前面と前記後面のそれぞれに結合された少なくとも1つのポリマーフィルム層;
を含む;
b)パネルを成形する工程;
c)少なくとも1つの剛性プレートを前記成形パネルの前面に結合する工程;
d)成形パネルの周りを第1の繊維ラップで取り巻く工程、前記第1の繊維ラップは、前記パネルの前記前面、前記後面、および1つ以上のエッジの少なくとも一部を取り巻いている;および
e)必要に応じて、成形パネルの周りを第2の繊維ラップで取り巻く工程、前記第2の繊維ラップは、第1の繊維ラップの取り巻き方向に対して横断方向に第1の繊維ラップを取り巻いている;を含む、弾道抵抗性材料の製造方法。
【請求項38】
前記圧密化繊維網の前記前面と前記後面のそれぞれに結合された少なくとも1つのポリマーフィルム層をさらに含む、請求項37に記載の製造方法。
【請求項39】
前記パネルを第2の繊維ラップで取り巻く工程をさらに含み、前記第2の繊維ラップは、第1の繊維ラップの取り巻き方向に対して横断方向に第1の繊維ラップを取り巻いている、請求項37に記載の製造方法。
【請求項40】
前記パネルの1つ以上のエッジを補強する工程をさらに含む、請求項37に記載の製造方法。
【請求項41】
複数の個別パネルのスタックを作製する工程、前記スタックが、上面、下面、および1つ以上のエッジを有している;ならびに、
前記スタックの前記上面、前記下面、および1つ以上のエッジの少なくとも一部を、前記第1の繊維ラップと任意的な第2の繊維ラップで取り巻く工程;
をさらに含む、請求項37に記載の製造方法。
【請求項42】
前記少なくとも1つの剛性プレートが、セラミック、ガラス、金属充填複合物、セラミック充填複合物、ガラス充填複合物、サーメット、高硬度鋼、防護アルミニウム合金、チタン、またはこれらの組み合わせを含む、請求項37に記載の製造方法。
【請求項43】
a)前面、後面、および1つ以上のエッジを有するパネル、前記パネルは、
i)圧密化繊維網、前記圧密化繊維網が複数のクロスプライ繊維層を含み、各繊維層は整列状態で配列された複数の繊維を含む;このとき前記繊維は、約7g/デニール以上のテナシティと約150g/デニール以上の引張モジュラスを有し;前記繊維は、その上に母材組成物を有し;前記複数のクロスプライ繊維層は、圧密化繊維網を形成するように、前記母材組成物で圧密化されている;および
ii)必要に応じて、前記圧密化繊維網の前記前面と前記後面のそれぞれに結合された少なくとも1つのポリマーフィルム層、このとき前記パネルの1つ以上のエッジが、前記1つ以上のエッジにて前記パネルの一部を溶融することによって補強される;
を含む;
b)前記パネルを取り巻いている任意的な第1の繊維ラップ、前記第1の繊維ラップは、前記パネルの前記前面、前記後面、および1つ以上のエッジの少なくとも一部を取り巻いている;ならびに
c)前記パネルを取り巻いている任意的な第2の繊維ラップ、前記第2の繊維ラップは、第1の繊維ラップの取り巻き方向に対して横断方向に第1の繊維ラップを取り巻いている;
を含む弾道抵抗性材料。
【請求項44】
スタックにて配列された複数の個別パネルを含み、前記スタックが、上面、下面、および1つ以上のエッジを有し、このとき前記パネルの前記1つ以上のエッジが、前記1つ以上のエッジにて前記パネルの一部を溶融することによって補強される、請求項43に記載の弾道抵抗性材料。
【請求項45】
請求項43に記載の弾道抵抗性材料から作製される弾道抵抗性物品。
【請求項46】
請求項44に記載の弾道抵抗性材料から作製される弾道抵抗性物品。
【請求項47】
前記少なくとも1つのポリマーフィルム層が存在する、請求項43に記載の弾道抵抗性材料。
【請求項48】
前記第2の繊維ラップが存在する、請求項43に記載の弾道抵抗性材料。
【請求項49】
a)前面、後面、および1つ以上のエッジを有するパネル、前記パネルは、
i)圧密化繊維網、前記圧密化繊維網が複数のクロスプライ繊維層を含み、各繊維層は整列状態で配列された複数の繊維を含む;このとき前記繊維は、約7g/デニール以上のテナシティと約150g/デニール以上の引張モジュラスを有し;前記繊維は、その上に母材組成物を有し;前記複数のクロスプライ繊維層は、圧密化繊維網を形成するように、前記母材組成物で圧密化されている;および
ii)必要に応じて、前記圧密化繊維網の前記前面と前記後面のそれぞれに結合された少なくとも1つのポリマーフィルム層;
を含む;
b)前記パネルを取り巻いている第1の繊維ラップ、前記第1の繊維ラップは、前記パネルの前記前面、前記後面、および1つ以上のエッジの少なくとも一部を取り巻いている;ならびに
c)前記パネルを取り巻いている第2の繊維ラップ、前記第2の繊維ラップは、第1の繊維ラップの取り巻き方向に対して横断方向に第1の繊維ラップを取り巻いている;
を含む弾道抵抗性材料。
【請求項50】
スタックにて配列された複数の個別パネルを含み、前記スタックが、上面、下面、および1つ以上のエッジを有し、このとき前記パネルの前記1つ以上のエッジが、前記1つ以上のエッジにて前記パネルの一部を溶融することによって補強される、請求項49に記載の弾道抵抗性材料。
【請求項51】
請求項49に記載の弾道抵抗性材料から作製される弾道抵抗性物品。
【請求項52】
請求項50に記載の弾道抵抗性材料から作製される弾道抵抗性物品。
【請求項53】
前記少なくとも1つのポリマーフィルム層が存在する、請求項49に記載の弾道抵抗性材料。

【公表番号】特表2009−524005(P2009−524005A)
【公表日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−501409(P2009−501409)
【出願日】平成18年12月8日(2006.12.8)
【国際出願番号】PCT/US2006/046869
【国際公開番号】WO2008/105754
【国際公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】