説明

拡大ヘッドにおける拡大翼拡開確認装置

【課題】 シリンダ一方駆動型流体圧式拡大ヘッドにおける拡大翼の拡開を、圧力計と流量計の目視により確認する欠点を除くことを課題とする。
【解決手段】 シリンダへの圧力流体供給管に、圧力発信器と流量発信器設け、
上記圧力信号及び流量信号を制御回路に送り、該制御回路により拡大翼拡開完了信号を発信し、
上記拡大翼拡開完了信号を報知器に送って作業員に拡大翼拡開を報知するようにした、
拡大ヘッドにおける拡大翼拡開確認装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、ヘッドロッドの外周面に拡縮揺動自在に支持された拡大翼と、ヘッドロッドに内装された流体圧シリンダとを、該シリンダの進退運動と拡大翼の拡縮運動とが連動できるように連継し、上記拡大翼の拡開は、圧力流体の供給による上記シリンダの一方向への駆動により行い、上記拡大翼の閉縮は、上記拡大翼の拡開時に上記シリンダの放出口を開いてシリンダ内の圧力流体を系外へ放出し、圧力流体供給路を開放した後、外力により行うタイプのシリンダ一方駆動型流体圧式拡大ヘッド(特許文献)において、上記拡大翼の地中における所期拡開を確認する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記シリンダ一方駆動型流体圧式拡大ヘッドにおいては、通常、上記拡大翼の所期位置への拡開時にシリンダの放出口が開き、該放出口から圧力流体を系外へ放出することによりシリンダ内圧力が急激に低下する。
【0003】
この知見に基づき、本出願人等は、さきに、上記拡大翼の所期位置への拡開を確認する手段として、上記シリンダにポンプからの圧力流体を供給すべく該シリンダに接続された圧力流体供給管に、該供給管内を流れる圧力流体の圧力を直示する圧力計、及び同じく圧力流体の流量を直示する流量計をそれぞれ接続した構成を採り、使用においては、上記拡大翼の所期位置への拡開時に上記圧力計の指針が示す急激な圧力低下を目視により捉え、それにより拡大翼が所期位置にひとまず拡開したことを検知し、ついで上記拡開検知後、直ちに圧力流体を上記シリンダ内に流し、該圧力流体の相当量を連続的に流し終えたとき、拡大翼の所期の拡開が完了したものと判断する方法を広く実施していた。
【0004】
しかし、上記のような従来の手段を用いた拡大翼拡開確認方法では、圧力流体供給管内への空気のかみ込み等により、圧力流体供給管内の圧力及び流量が変動したとき、目視では、拡大翼が所期位置に拡開したものと誤って判断してしまうおそれがあり、しかも圧力計の指針が常に動いているため、上記拡大翼拡開時の圧力低下を見過ごしてしまうおそれがあった。
【0005】
さらには、実際の作業現場において、作業員による圧力計及び流量計の目視判断に個人差が生じる難点があるばかりでなく、作業中圧力計及び流量計を注意深く目視し続けることは実際上容易なことではない。
【特許文献1】特開2006−194022
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明は、従来装置における作業員による目視判断の欠点を除き、拡大翼の拡開完了を確実に確認することができるように改善することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題解決の手段として、本発第1発明は、
シリンダ一方駆動型流体圧式拡大ヘッドにおいて、
上記シリンダに圧力流体を供給すべく該シリンダに接続された圧力流体供給管に、該供給管内を流れる圧力流体の圧力を計測し、該圧力を電気信号に変えて発信する圧力発信器と、該供給管内を流れる圧力流体の流量を計測し、該流量を電気信号に変えて発信する流量発信器とをそれぞれ接続し、
上記圧力信号及び流量信号を制御回路に送信し、
上記制御回路において、拡大翼が所期位置に拡開して上記シリンダ内圧力が急激低下したときの上記圧力発信器からの急激低下圧力信号を受信し、その受信時点から以後に上記流量発信器から受信する流量の積算を開始し、その積算量が一定量に達した時、拡開完了信号を発信するように構成し、
上記拡開完了信号を受信して、作業員に拡大翼の拡開完了を報知するための拡開完了報知器を備えた、
拡大ヘッドにおける拡大翼拡開確認装置を提案する。
【0008】
本願第2発明は、
上記第1発明における拡開完了報知器を除くと共に、上記圧力流体供給管に該供給管を開閉する電磁弁を接続し、上記拡開完了信号を上記電磁弁に送って該電磁弁を閉じるようにした、拡大ヘッドにおける拡大翼拡開確認装置を提案する。
【発明の効果】
【0009】
本願第1発明によれば、拡大翼のシリンダによる拡開時にシリンダ内の圧力流体が放出口から系外へ放出されたときのシリンダ内の急激な圧力低下を圧力発信器により確実に検出して制御回路に自動的に送信することができ、さらに制御回路において、上記シリンダ内の急激圧力低下の圧力信号を受信した時点から以後にシリンダ内に流す圧力流体の量は、制御回路による流量信号の積算によって画一的に一定流量に定めることができ、しかもシリンダ内に圧力流体を一定量流し終えたとき、拡大翼の拡開完了信号を報知器に発信して、拡開完了信号を作業員に知らせることができ、それに応じて作業員が手作業により圧力流体供給管を閉じることができるのである。
【0010】
このように、従来の作業員の目視によるへい害を解消することができるのである。
【0011】
本願第2発明によれば、上記拡大翼の拡開完了信号により圧力流体供給管の電磁弁を励磁して該供給管を自動的に閉じることができるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本願発明における「制御回路」には、電算機、シーケンサー、その他各種の機器、回路等を組合わせて構成したものを含む。
本願発明における「流体圧シリンダ」には、水圧シリンダ、油圧シリンダ、空圧シリンダが含まれる。
又、「拡開完了報知器」には、ランプ等の光による報知器、ブザー等の音による報知器その他種々のものがある。
さらに、拡大翼を閉縮する「外力」には、ヘッドロッドに固定された掘削ヘッド等の重量、拡大翼に及ぶ土砂抵抗、中空杭中掘り圧入に使用した場合の中空杭下端の押圧力等がある。
【実施例】
【0013】
シリンダ一方駆動型水圧式拡大ヘッドの一例を図2に示す。図において、中空ヘッドロッド(1)内に、ピストン固定型水圧シリンダのシリンダチューブ(2)を軸方向摺動自在に挿入すると共に、該シリンダチューブ(2)の下端部をヘッドロッド(1)の開口下端から進退自在に突出し、このチューブ(2)内のピストン(3)に一端を固定されたピストンロッド(4)を、上記シリンダチューブ(2)の閉成上端を摺動自在に貫通して上方へ突出し、突出上端部をヘッドロッド(1)内部に固定してあり、又上記シリンダチューブ(2)の突出下端に高重量の掘削ヘッド(5)を突設し、その上部に突設されたブラケットに拡大翼(6)、(6)の基部を揺動自在に軸支し、さらに上記ヘッドロッド(1)の下端部外周面に突設されたブラケットにリンク(7)、(7)の一端部を軸支すると共に他端部を上記拡大翼(6)、(6)の中間部にそれぞれ軸支してある。
【0014】
このような拡大ヘッドのヘッドロッド(1)に、掘削ロッド(R)に縦通された圧力水供給管(8)の下端部を挿入し、その挿入端に、上記ピストンロッド(4)に縦通された圧力水案内孔(9)を接続すると共に、上記ピストンロッド(4)の下端部に、上記シリンダチューブ(2)内のロッド側スペース(10)に開口する圧力水供給口(11)を開口し、又上記シリンダチューブ(2)及びヘッドロッド(1)の両周壁にそれぞれ圧力水放出口(12)、(13)を開設し、該放出口(12)、(13)は、図2のように上記シリンダチューブ(4)が上昇して拡大翼(6)、(6)が水平に拡開したとき、互に合致して上記ロッド側スペース(10)と開通し、それにより該スペース(10)内の圧力水を外部に放出する位置関係にある。
【0015】
拡大翼(6)、(6)の拡開確認装置は次のようである。
【0016】
掘削ロッド(R)に縦通された圧力水供給管(8)は、掘削ロッド(R)上端部において回転継手を介してフレキシブル圧力水供給管(8’)に接続し、該フレキシブル供給管(8’)を地上に導き、そこで図1に示すように、供給管(8’)後端に、供給管(8’)内に水を圧送する水圧ポンプ(14)を接続し、ついで上記供給管(8’)の開閉及び供給管内圧力水の水タンクへの戻し(開放)に切換える手動切換弁(15)、供給管(8’)を流れる圧力水の圧力を連続的に計測し、それを電気信号に変えて発信する圧力発信器(16)、及び供給管(8’)内を流れる圧力水の単位時間(例えば1秒間)ごとの流量を計測し、これを電気信号に変えて発信する流量発信器(17)をそれぞれ接続してある。
【0017】
又、上記圧力発信器(16)及び流量発信器(17)の各信号は、本例ではシーケンサー(18)に送信し、該シーケンサーは、所要プログラム、及び上記圧力発信器から送られる各圧力信号を受信して圧力の連続的変化を記録すると共に、流量発信器(17)からの単位時間ごとの流量信号を受信して流量を積算する演算器を有する。
【0018】
そして、上記プログラムにより、上記圧力水供給管(8’)内の水圧が急激に低下した際に、上記圧力発信器(16)から上記急激低下の圧力信号を受信すると、その受信時点から以後の流量の積算を開始し、その積算流量が一定流量(一例として、上記シリンダチューブ(2)の容量の約3倍量)に達した時、拡開完了信号を報知ランプ(19)に送って該ランプ(19)を点灯させるように構成してある。
【0019】
上例の作用を拡大掘削作業とともに説明する。
図2の拡大翼(6)、(6)を閉縮した状態で、掘削ロッド(R)を回転させて地盤への掘削を開始し、所定深さに掘進したら、まず水圧ポンプ(14)を始動すると共に、切換弁(15)を供給管(8’)の開通がわに切換えてポンプ(14)からの圧力水を供給管(8’)、(8)を経てピストンロッド(4)の案内孔(9)へ送り、その下端の供給口(11)からシリンダチューブ(2)のロッド側スペース(10)内に供給し、それによりシリンダチューブ(2)を上昇させて拡大翼(6)、(6)を開いていく。
【0020】
拡大翼(6)、(6)が図2のように水平に開いたとき、放出口(12)、(13)が合致し、シリンダのロッド側スペース(10)内の圧力水が上記放出口(12)、(13)から外部へ放出され、それによりロッド側スペース(10)内の水圧が急激に低下する。
【0021】
上記シリンダ内の急激な水圧低下は、圧力発信器(16)に計測され、その低下圧力信号がシーケンサー(18)に受信され、その受信時点から以後の圧力水流量の積算を開始する。その間ポンプ(14)から圧送される圧力水はシリンダチューブのロッド側スペース(10)内に送られ、そして放出口(12)、(13)から放出を継続して拡大翼(6)、(6)を拡開状態に保つ。
【0022】
シーケンサー(18)における圧力水の積算量が一定量に達した時は、上記拡大翼(6)、(6)の拡開は安定状態にあるとみてよい。そこで拡大翼の拡開は完了したものとして、報知ランプ(19)に拡開完了信号を送って点灯させる。
【0023】
上記報知ランプ(19)の点灯により、作業員が拡大翼(6)、(6)の拡開完了を知ったら、手作業により切換弁(15)を閉に切換えて圧力水供給を停止すると、シリンダチューブ(2)が掘削ヘッド(5)の重量により若干降下するが、放出口(12)が直ちに閉じて圧力水回路全体を閉成し、それにより拡大翼(6)、(6)が拡開状態に保持される。そこで、掘削ロッド(R)を回転させ、拡大翼(6)、(6)により拡大掘削を行う。
【0024】
拡大掘削を完了したら、切換弁(15)を圧力水のタンクへの戻しに切換えて圧力水回路を開放状態におけば、掘削ヘッド(5)の重量によりシリンダチューブ(2)が降下し、拡大翼(6)、(6)を閉縮する。それにより掘削ロッド(R)の地上への引抜きが可能となる。
【0025】
本発明の他の実施例として、上例における報知ランプ(19)を除き、又上例の手動切換弁(15)を電磁切換弁に代えると共に、シーケンサー(18)から拡大翼拡開完了信号を上記電磁切換弁に送って該切換弁を自動的に閉に切換えるようにし、他の構造は上例と実質的に同一とした例も得られる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明による拡大翼拡開確認装置の要部を示すブロック図である。
【図2】シリンダ一方駆動型水圧式拡大ヘッドの一部縦断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 ヘッドロッド
2 シリンダチューブ
3 ピストン
6 拡大翼
12、13 放出口
8 圧力水供給管
15 手動切換弁
16 圧力発信器
17 流量発信器
18 シーケンサー
19 報知ランプ
R 掘削ロッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ一方駆動型流体圧式拡大ヘッドにおいて、
上記シリンダに圧力流体を供給すべく該シリンダに接続された圧力流体供給管に、該供給管内を流れる圧力流体の圧力を計測し、該圧力を電気信号に変えて発信する圧力発信器と、該供給管内を流れる圧力流体の流量を計測し、該流量を電気信号に変えて発信する流量発信器とをそれぞれ接続し、
上記圧力信号及び流量信号を制御回路に送信し、
上記制御回路において、拡大翼が所期位置に拡開して上記シリンダ内圧力が急激低下したときの上記圧力発信器からの急激低下圧力信号を受信し、その受信時点から以後に上記流量発信器から受信する流量の積算を開始し、その積算量が一定量に達した時、拡開完了信号を発信するように構成し、
上記拡開完了信号を受信して、作業員に拡大翼の拡開完了を報知するための拡開完了報知器を備えた、
拡大ヘッドにおける拡大翼拡開確認装置。
【請求項2】
上記拡開完了報知器を除くと共に、上記圧力流体供給管に該供給管を開閉する電磁弁を接続し、上記拡開完了信号を上記電磁弁に送って該電磁弁を閉じるようにした、請求項1に記載の拡大ヘッドにおける拡大翼拡開確認装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−308819(P2008−308819A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−154830(P2007−154830)
【出願日】平成19年6月12日(2007.6.12)
【出願人】(000183082)住商鉄鋼販売株式会社 (6)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【出願人】(000177416)三和機材株式会社 (144)
【Fターム(参考)】