指向性アンテナ
【課題】電波の送受信を行う指向性アンテナであって、特にUHF帯の電波を受信するのに最適な指向性アンテナを提供する。
【解決手段】基本スリットと前記基本スリットの全長を延長した延長スリットとからなるH型形状のスリットと、前記H型形状のスリットの周囲に配置したループ状のスリットとを有している。更に、前記基本スリットと前記延長スリットとを同一の導体部材に形成している。したがって、導体部材にH型形状のスリットを形成し、かつその周囲にループ状のスリットを配置する構造であり、アンテナ構造を簡素化することができる。
【解決手段】基本スリットと前記基本スリットの全長を延長した延長スリットとからなるH型形状のスリットと、前記H型形状のスリットの周囲に配置したループ状のスリットとを有している。更に、前記基本スリットと前記延長スリットとを同一の導体部材に形成している。したがって、導体部材にH型形状のスリットを形成し、かつその周囲にループ状のスリットを配置する構造であり、アンテナ構造を簡素化することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波の送受信を行う指向性アンテナであって、特にUHF帯の電波を受信するのに最適な指向性アンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
既設のアナログTV放送がデジタルTV放送に切り替えられるのに伴って、UHF帯の地上デジタルTV放送に最適なアンテナの開発が必須となっている。
【0003】
アナログTV放送を受信するアンテナとしては、放射素子と反射素子とを組み合わせた八木・宇田アンテナが開発されている。そして、前記八木・宇田アンテナの動作原理を応用した地上デジタルTV放送を受信するアンテナが開発されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−73226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
放射素子と反射板との間隔を、基準とする中心周波数の波長をλとした場合にλ/4に設定することにより、反射板による反射効率が最大値を示すことが知られている。特許文献1のアンテナは、放射素子と、その放射素子の平面に配置した平面状の反射板とからなり、特許文献1は、前記反射板の両側部を前記放射素子における放射に寄与しない放射素子側に屈曲させ、前記反射板における前記放射素子側に屈曲されている両側部の先端と前記放射素子との間隔dを、前記放射素子と前記反射板との間隔D以下に設定することにより、アンテナの奥行きでの小型化を実現している。
【0006】
本発明の目的は、特許文献1に記載されたアンテナの構造を簡素化すると共に小型化・薄型化を実現した指向性アンテナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明に係る指向性アンテナは、基本スリットと前記基本スリットの全長を延長した延長スリットとからなるH型形状のスリットと、前記H型形状のスリットの周囲に配置した閉ループ状のスリットとを有し、前記基本スリットと前記延長スリットとを同一の導体部材に形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、特許文献1に記載されたアンテナと比較して、その構造を簡素化すると共に小型化・薄型化を実現できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】(a)は、本発明の実施形態1に係る指向性アンテナを示す平面図、(b)は(a)に示す指向性アンテナに追加する反射板を示す平面図である。
【図2】(a)は、本発明の実施形態1に係る指向性アンテナの変形例を示す平面図、(b)は(a)に示す指向性アンテナに追加する反射板を示す平面図である。
【図3】(a)は、本発明の実施形態1に係る指向性アンテナのVSWRを実測した特性図、(b)は、給電の整合を取る一例であるマッチング回路を示す図である。
【図4】(a)は、本発明の実施形態2に係る指向性アンテナを示す平面図、(b)は(a)に示す指向性アンテナに追加する反射板を示す平面図、(c)は(b)に示す反射板の変形例を示す平面図である。
【図5】(a)は、本発明の実施形態2に係る指向性アンテナに関するVSWRを実測した特性図、(b)は、図5(c)に示す変形例の反射板を用いたときの指向性アンテナに関するVSWRを実測した特性図である。
【図6】(a)は、本発明の実施形態3に係る指向性アンテナを示す斜視図、(b)は(a)に示す指向性アンテナに追加する反射板と導電部材との関係を示す図である。
【図7】(a)は、本発明の実施形態3に係る指向性アンテナを示す斜視図、(b)は(a)に示す指向性アンテナに追加する反射板と導電部材との関係を示す図である。
【図8】(a)は、本発明の実施形態3に係る指向性アンテナを示す斜視図、(b)は(a)に示す指向性アンテナに追加する反射板と導電部材との関係を示す図である。
【図9】(a)は、本発明の実施形態3に係る指向性アンテナを示す斜視図である。
【図10】アンテナのリアクタンスを微調整することを検証した特性図である。
【図11】(a)は、本発明の実施形態に係る指向性アンテナへ直接給電を行う給電構造を示す斜視図、(b)は、本発明の実施形態に係る指向性アンテナを支える支柱を示す斜視図である。
【図12】(a)は、本発明の実施形態に係る指向性アンテナに用いた給電基板を示す表面図、(b)は同裏面図、(c)は、(a)のA−A線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図に基づいて詳細に説明する。
【0011】
(実施形態1)
本発明の実施形態1に係る指向性アンテナは図1(a)に示す様に、基本スリット1a,1bと前記基本スリット1a,1bの全長を延長した延長スリット1c,1dとからなるH型形状のスリット1と、前記H型形状のスリット1の周囲に配置したループ形状のスリット2とを有している。
そして、前記基本スリット1a,1bと前記延長スリット1c,1dとを導体部材3上に形成している。
【0012】
本実施形態1では、前記導体部材3を長方形状に形成している。すなわち、前記導体部材3は、前記基本スリット1a,1bに沿う辺を長辺とし、延長スリット1c,1dに沿う辺を短辺とする長方形状に形成している。なお、導体部材3は、長方形状に形成しているが、これに限られるものではなく、前記H型形状のスリット1と前記ループ形状のスリット2とを盤面に形成できる面積を有するものであれば、特にその形状は長方形状に限られるものではない。また、図1に示す例では、前記導体部材3として一枚の金属板を用い、打ち抜き加工などにより前記金属板(3)に前記H型形状のスリット1と前記ループ形状のスリット2とを形成するようにしているが、これに限られるものではない。例えば、前記導体部材3として誘電体上に導電層を形成した構造のものを用い、その導電層上に前記H型形状のスリット1と前記ループ形状のスリット2とを形成するようにしてもよいものであり、前記導体部材3としては、その導体部分に前記H型形状のスリット1と前記ループ形状のスリット2とを開口して形成できるものであれば、特に限定されるものではない。
【0013】
前記基本スリット1a,1bは給電部4を中心として対称に形成している。図1(a)では、前記基本スリット1a,1bは給電部4を中心として上下に対称に形成してある。この場合、前記基本スリット1aと前記基本スリット1bとの長さは同一であることが望ましいものであるが、±数%の範囲での誤差は許容範囲である。
前記延長スリット1c,1dは、前記基本スリット1c,1dの開放端を中心として互いに逆向きで延長して形成している。前記延長スリット1c,1dは、前記基本スリット1a,1bに対して直角に配置することが望ましいものであるが、必ずしも直角に配置する必要はない。
前記基本スリット1a,1bは、その開放端に向けて給電部4からテーパ状にスリットの幅寸法が拡張する構造として形成したが、これに限られるものではない。例えば、前記基本スリット1a,1bを、その開放端と給電部4とでのスリット幅寸法が同一である長方形状の基本スリット1a,1bとして形成してもよいものである。
【0014】
前記H型形状のスリット1について説明する。本実施形態では、前記H型形状のスリット1は、受信周波数帯域における低周波数側をカバーする電気長に設定したH型形状のスリット1として形成している。
本実施形態では、受信周波数帯域として、地上デジタルTV放送の電波を受信するために低周波数側を470MHz且つ高周波数側を710MHzとした範囲に設定しており、その受信周波数帯域の中心周波数を590MHzに設定している。このため、前記H型形状のスリット1は、低周波数側の470MHzから高周波数側の710MHzに渡って高利得の下で地上デジタルTV放送の受信が可能な広帯域特性を有することが要求される。
H型形状のスリット1に代えて、基本スリット1a,1bのみをアンテナ素子として用いた場合を考える。
この場合、前記アンテナ素子の基本スリット1a,1bの全長を例えば590MHzでの地上デジタルTV放送の受信を可能な寸法に設定すると、基本スリット1a,1bのみのアンテナ素子では、低周波数側の470MHzの受信感度が劣化することになり、前記広帯域特性の要求に応えることができなくなる。
そこで、本実施形態におけるスリット1は、低周波数側の劣化を改善するために、前記基本スリット1a,1bと延長スリット1c,1dとをH型に組み合わせ、前記基本スリット1a,1bの全長を延長スリット1c,1dにより延長させることにより、受信周波数帯域の低周波数側から高周波数側までをカバーする電気長に設定したH型形状構造とし、インピーダンスの改善に寄与する構造としている。さらに前記延長スリット1cは、前記基本スリット1aの開放端を中心として対称に配置し、前記延長スリット1dは、前記基本スリット1bの開放端を中心として対称に配置している。図1(a)では、前記延長スリット1c,1dは、前記基本スリット1a,1bの開放端を中心として左右対称に配置している。
なお、図1(a)に示す様に前記延長スリット1c,1dは、前記基本スリット1a,1bに対してそれぞれ直角に配置していることが望ましいが、90°を基準として±数%の角度をもっていてもよいものである。また、図1(a)に示す様に前記延長スリット1c,1dは、直線状に形成したが、その先端側を若干折り曲げる或いは湾曲させてもよいものである。また、図1(a)に示す様に前記延長スリット1c,1dは、平行な縁部をもつ短冊状に形成したが、基本スリット1a,1b側の辺を直線とし、その対向辺側を湾曲させた半月形状に形成してもよいものである。
【0015】
前記H型形状のスリット1を寸法関係で説明すると、図2(a)(b)に示す様に、地上デジタルTV放送における受信周波数の中心周波数を590MHzに設定し、その中心周波数の波長をλとした場合、基本スリット1a,1bの全長を0.44λに設定し、延長スリット1c,1dのそれぞれの全長を0.36λに設定している。これにより、前記H型形状のスリット1は、地上デジタルTV放送の受信周波数帯域の低周波数側から高周波数側までをカバーする電気長に設定したH型形状スリット1の構造としている。
なお、地上デジタルTV放送の受信周波数帯域は、現在低周波数側が470MHzであって高周波数側が710MHzに設定されているので、それに準拠して設定している。
【0016】
前記ループ状のスリット2は、前記導体部材3の縁部に沿って開口形成することにより、前記H型形状のスリット1と前記ループ形状のスリット2との周囲を取り囲むように形成にしている。なお、前記ループ状スリット2は、その全周が開口したループ形状に形成しているが、これに限られるものではない。図2(a)(b)に示す様に前記ループ状のスリット2は、基本スリット1a,1bの延長上で短絡(S)したループ状として形成してもよいものである。
【0017】
さらに、本実施形態では図1(b)及び図2(b)に示す様に、前記導体部材3に沿う反射板5を有している。前記反射板5は、地上デジタルTV放送における受信周波数帯域の中心周波数の波長をλとした場合、1/4λ以下であって前記導体部材3に接触しない距離以上の範囲で前記導体部材3の後方に配置している。
次に前記反射板3の配置について説明する。前記導体部材3の後方位置に反射板5を配置することにより、利得を改善することができることは理論上に分かっている。したがって、前記反射板3を前記導体部材3に対して1/4λ以下の後方位置に配置した場合、前記導体部材3の後方の反射板5で反射した波が前記導体部材3での受信に影響を及ぼすこととなる。さらに、前記反射板5を前記導体部材3の後方に1/4λの距離を保って配置することは、前記反射板5と前記導体部材3との間隔を接近させてアンテナの小型化・薄型化を図るためには支障となるものである。
そこで、本実施形態では図1(b)及び図2(b)に示す様に、前記反射板5に1以上の矩形状のスリット5aを開口形成し、これらのスリット5aをラダー状に配置することにより、前記反射板5を、1/4λ以下であって前記導体部材3に接触しない距離以上の範囲で前記導体部材3の後方に配置している。なお、図1(b)及び図2(b)に示す例では、前記矩形状のスリット5aを前記反射板3に4個設けているが、この個数については4個に限られるものではない。
【0018】
次に、1つのアンテナは送信アンテナと受信アンテナとの可逆性を備えているものであるから、本発明の実施形態1に係る指向性アンテナを送信アンテナとして用いた場合における動作を図1(a)に基づいて説明する。
【0019】
本発明の実施形態1に係る指向性アンテナに給電部4から給電を行うと、指向性アンテナの導体部材3に電流が流れる。延長スリット1c,1dは、基本スリット1a,1bの開放端で左右に分岐しており、基本スリット1a,1bを挟んで位置する延長スリット1c,1dの部分で生じる電界の向きV1,V2は、互いに逆向きとなって互いに打ち消し合うこととなる。
したがって、指向性アンテナの正面側には水平偏波Hのみが放射されることとなる。
【0020】
次に図2(a)(b)に示す本実施形態に係る指向性アンテナを受信アンテナとして用いることにより、地上デジタルTV放送を受信した場合におけるVSWRを測定した結果について説明する。
図2(a)(b)では、テーパ状の基本スリット1a,1bを用い、測定するにあたって、地上デジタルTV放送における受信周波数帯域の中心周波数の波長をλとした場合、基本スリット1a,1bの全長L1を0.44λ、延長スリット1c,1dのそれぞれの全長L2を0.36λ、給電部4に相当する基本スリット1a,1bの最小スリット幅L3を0.006λ、基本スリット1a,1bの開放端の幅寸法L4を0.04λに設定した。
さらに、前記ループ状のスリット2の幅寸法L5を0.02λに設定し、前記ループ状のスリット2を前記基本スリット1a,1cの延長上で且つ幅0.01λの幅L6で短絡させている。さらに、前記反射板5には、0.36λ(L7)×0.14λ(L8)の2個のスリット5aと、0.36λ(L7)×0.16λ(L9)の2個のスリット5aとを設けた。
【0021】
図2(a)(b)に示す本実施形態に係る指向性アンテナを用い、給電部4での整合を行って地上デジタルTV放送を受信した場合におけるVSWRを測定した結果を図3に示す。図3の横軸は周波数、縦軸はVSWRを示している。前記給電部4における整合には、図3(b)に示す様なコンデンサC1,C2とインダクタンスIDとをT型に接続した一般的なマッチング回路を用いた。なお、給電部4での整合を取るには、図3(b)に示すマッチング回路以外のものを使ってもよいものである。
図3(a)から明らかなように、受信周波数帯域の低周波数側の470MHzでVSWRが約1.5を示し、中心周波数590MHzに向けてVSWRは小さくなり、中心周波数590MHzでVSWRが約1.3を示し、さらに高周波数側の710MHzでVSWRが約1.7を示ししており、地上デジタルTV放送における受信周波数帯域の低周波数側470MHzから高周波数側710MHzに至る帯域でVSWRを2以下であった。
地上デジタルTV放送の受信周波数帯域におけるVSWRを検討すると、地上デジタルTV放送を受信するには十分な数値であり、実用に供するものであることが分かった。
【0022】
(実施形態2)
次に、本発明の実施形態2に係る指向性アンテナを図に基づいて説明する。
本発明の実施形態2に係る指向性アンテナは図4(a)(b)に示す様に、基本スリット1a,1bと前記基本スリット1a,1bの全長を延長した延長スリット1c,1dとからなるH型形状のスリット1を導体部材3上に形成している。
【0023】
図4に示す本実施形態2では、前記導体部材3として一枚の金属板を用い、打ち抜き加工などにより前記金属板(3)に前記H型形状のスリット1を形成するようにしているが、これに限られるものではない。例えば、前記導体部材3として誘電体上に導電層を形成した構造のものを用い、その導電層上に前記H型形状のスリット1を形成するようにしてもよいものであり、前記導体部材3としては、その導体部分に前記H型形状のスリット1を開口して形成できるものであれば、特に限定されるものではない。
【0024】
前記基本スリット1a,1bは給電部4を中心として対称に形成している。図4(a)では、前記基本スリット1a,1bは給電部4を中心として上下に対称に形成してある。この場合、前記基本スリット1aと前記基本スリット1bとの長さは同一であることが望ましいものであるが、±数%の範囲での誤差は許容範囲である。
前記延長スリット1c,1dは、前記基本スリット1c,1dの開放端を中心として互いに逆向きで延長して形成している。前記延長スリット1c,1dは、前記基本スリット1a,1bに対して直角に配置することが望ましいものであるが、必ずしも直角に配置する必要はない。
前記基本スリット1a,1bは、その開放端に向けて給電部4からテーパ状にスリットの幅寸法が拡張する構造として形成したが、これに限られるものではない。例えば、前記基本スリット1a,1bを、その開放端と給電部4とでのスリット幅寸法が同一である長方形状の基本スリット1a,1bとして形成してもよいものである。
【0025】
前記H型形状のスリット1について説明する。本実施形態2では、前記H型形状のスリット1は、受信周波数帯域の低周波数側から高周波数側までをカバーする電気長に設定したH型形状のスリット1として形成している。
本実施形態2では、受信周波数帯域として、地上デジタルTV放送の電波を受信するために低周波数側を470MHz且つ高周波数側を710MHzとした範囲に設定しており、その受信周波数帯域の中心周波数を590MHzに設定している。このため、前記H型形状のスリット1は、低周波数側の470MHzから高周波数側の710MHzに渡って高利得の下で地上デジタルTV放送の受信が可能な広帯域特性を有することが要求される。
H型形状のスリット1に代えて、基本スリット1a,1bのみをアンテナ素子として用いた場合を考える。
この場合、前記アンテナ素子の基本スリット1a,1bの全長を例えば590MHzでの地上デジタルTV放送の受信を可能な寸法に設定すると、基本スリット1a,1bのみのアンテナ素子では、低周波数側の470MHzの受信感度が劣化することになり、前記広帯域特性の要求に応えることができなくなる。
そこで、本実施形態におけるスリット1は、低周波数側の劣化を改善するために、前記基本スリット1a,1bと延長スリット1c,1dとをH型に組み合わせ、前記基本スリット1a,1bの全長を延長スリット1c,1dにより延長させることにより、受信周波数帯域の低周波数側から高周波数側までをカバーする電気長に設定したH型形状構造とし、インピーダンスの改善に寄与する構造としている。さらに前記延長スリット1cは、前記基本スリット1aの開放端を中心として対称に配置し、前記延長スリット1dは、前記基本スリット1bの開放端を中心として対称に配置している。図4(a)では、前記延長スリット1c,1dは、前記基本スリット1a,1bの開放端を中心として左右対称に配置している。
なお、図4(a)に示す様に前記延長スリット1c,1dは、前記基本スリット1a,1bに対してそれぞれ直角に配置していることが望ましいが、90°を基準として±数%の角度をもっていてもよいものである。また、前記延長スリット1c,1dは、直線状に形成したが、その先端側を若干折り曲げる或いは湾曲させてもよいものである。また、前記延長スリット1c,1dは、平行な縁部をもつ短冊状に形成したが、基本スリット1a,1b側の辺を直線とし、その対向辺側を湾曲させた半月形状に形成してもよいものである。
なお、地上デジタルTV放送の受信周波数帯域は、現在低周波数側が470MHzであって高周波数側が710MHzに設定されているので、それに準拠して設定している。
【0026】
さらに、本実施形態では図4(a)に示す様に、前記導体部材3の一部に切り欠き6を形成している。図4(a)に示す例では、前記導体部材3を長方形状に形成し、その四隅の角部を円弧状に切り欠くことにより、前記導電部材3の一部に切り欠き6を形成している。
なお、図4(a)の例では、前記導体部材3の四隅の角部を円弧状に切り欠くことにより、切り欠き6を形成したが、これに限られるものではない。前記導体部材3の一部に切り欠き6を形成するにあたっては、前記導電部材3の四隅の角部を斜め直線状に切り欠いてもよく、さらには山形形状に切り欠いてもよく、さらには、前記導体部材3の四隅における全ての角部を切り欠く必要もないものである。
要は、前記導体部材3の一部に切り欠き6を形成することにより、アンテナのリアクタンスを調整することができるものであれば、その切り欠き6の形状に左右されるものではない。
【0027】
さらに、本実施形態では図4(b)に示す様に、前記導体部材3に沿う矩形状の反射板5を有している。前記反射板5は、地上デジタルTV放送における受信周波数帯域の中心周波数の波長をλとした場合、1/4λ以下であって前記導体部材3に接触しない距離以上の範囲で前記導体部材3の後方に配置している。
次に前記反射板3の配置について説明する。前記導体部材3の後方位置に反射板5を配置することにより、利得を改善することができることは理論的に分かっている。したがって、前記反射板3を前記導体部材3に対して1/4λ以下の後方位置に配置した場合、前記導体部材3の後方の反射板5で反射した波が前記導体部材3での受信に影響を及ぼすこととなる。さらに、前記反射板5を前記導体部材3の後方に1/4λの距離を保って配置することは、前記反射板5と前記導体部材3との間隔を接近させてアンテナの小型化・薄型化を図るためには支障となるものである。
そこで、本実施形態では、前記反射板5に1以上の矩形状のスリット5aを開口形成し、これらのスリット5aをラダー状に配置した構造にすることにより、前記反射板5を、1/4λ以下であって前記導体部材3に接触しない距離以上の範囲で前記導体部材3の後方に配置している。なお、図4(b)に示す例では、前記矩形状のスリット5aを前記反射板3に4個設けているが、この個数については4個に限られるものではない。
なお、図4(b)に示す反射板5は矩形状に形成しているが、これに限られるものではない。図4(c)に示す様に、前記反射板5を、角部に切り欠き6を形成した前記導体部材3の形状に一致させて角部に切り欠き6を有する形状に形成してもよいものである。この場合、反射板5の角部に隣接するスリット5bは、半月状に形成している。
図4(c)に示す様に、前記反射板5の形状を前記切り欠き6をもつ前記導体部材3の形状に合わせて形成することにより、切り欠き6に相当するアンテナの寸法を小さくすることができ、アンテナの小型化・薄型化に貢献できるものである。
【0028】
1つのアンテナは送信アンテナと受信アンテナとの可逆性を備えているものであるから、本発明の実施形態2に係る指向性アンテナは、送信アンテナと受信アンテナとに用いることができるものである。本発明の実施形態2に係る指向性アンテナを送信アンテナとして用いた場合における動作は、図1に示す実施形態1と同様であるので、その説明を省略する。
次に図4(a)(b)(c)に示す本実施形態に係る指向性アンテナを用いて地上デジタルTV放送を受信した場合におけるVSWRを測定した結果を説明する。
図4(a)(b)(c)では、テーパ状の基本スリット1a,1bを用い、前記導体部材3の四隅の角部を円弧状に切り欠くことにより、前記導体部材3の一部に切り欠き6を形成した。
さらに、図4(b)に示す前記反射板3には、図2に示すと同様に4個の矩形状のスリット5aを用いた。図4(c)に示す前記反射板3には、2個のスリット5aと、半月形状のスリット5bとを設けた。また、図4(a)(b)(c)における基本スリット1a,1b及び延長スリット1c,1dなどの寸法は、図2に示す実施形態1の寸法に準拠させてある。
【0029】
図4(a)(b)に示す本実施形態に係る指向性アンテナを用いて地上デジタルTV放送を受信した場合におけるVSWRを測定した結果を図5(a)に、図4(a)(c)に示す本実施形態に係る指向性アンテナを用い用い、給電部4での整合を行って地上デジタルTV放送を受信した場合におけるVSWRを測定した結果を図5(b)に示す。図5の横軸は周波数、縦軸はVSWRを示している。前記給電部4における整合には、図3(b)に示す様なコンデンサC1,C2とインダクタンスIDとをT型に接続した一般的なマッチング回路を用いた。なお、給電部4での整合を取るには、図3(b)に示すマッチング回路以外のものを使ってもよいものである。
図5(a)から明らかなように、地上デジタルTV放送の受信周波数帯域における低周波数側の470MHzでVSWRが約1.9を示し、中心周波数590MHzに向けてVSWRは小さくなり、中心周波数590MHzでVSWRが約1.6を示し、さらに高周波数側の710MHzでVSWRが約1.8を示した。
図4(a)(b)に示す本実施形態に係る指向性アンテナは、地上デジタルTV放送の受信周波数帯域におけるVSWRを検討すると、地上デジタルTV放送を受信するには十分な数値であり、実用に供するものであることが分かった。
図4(a)(c)による指向性アンテナについても、同様に給電部4での整合を行って地上デジタルTV放送を受信した場合におけるVSWRを測定した結果を図5(b)に示す。図5の横軸は周波数、縦軸はVSWRを示している。前記給電部4における整合には、図3(b)に示す様なコンデンサC1,C2とインダクタンスIDとをT型に接続した一般的なマッチング回路を用いた。なお、給電部4での整合を取るには、図3(b)に示すマッチング回路以外のものを使ってもよいものである。
図5(b)から明らかなように、地上デジタルTV放送の受信周波数帯域における低周波数側の470MHzでVSWRが約3.8を示し、中心周波数590MHzに向けてVSWRは小さくなり、中心周波数590MHzでVSWRが約3.0を示し、さらに高周波数側の710MHzでVSWRが約1.6を示した。
図4(a)(c)に示す本実施形態に係る指向性アンテナは、地上デジタルTV放送の受信周波数帯域におけるVSWRを検討すると、地上デジタルTV放送を受信するには十分な数値であり、実用に供するものであることが分かった。
【0030】
(実施形態3)
次に、本発明の実施形態3に係る指向性アンテナを図に基づいて説明する。
本発明の実施形態3に係る指向性アンテナは、広帯域化に加えてアンテナ自体のリアクタンスの調整を可能にしたものである。図6(a)(b)に示す本実施形態3に係る指向性アンテナは、基本スリット1a,1bと前記基本スリット1a,1bの全長を延長した延長スリット1c,1dとからなるH型形状のスリット1を導体部材3上に形成している。また、図6(a)(b)では、前記H型形状のスリット1の周囲にループ状のスリット2を設けている。前記ループ状スリット2の構造は図2(a)に示す実施形態と同様である。
【0031】
図6(a)(b)に示す本実施形態3では、前記導体部材3を長方形状に形成している。すなわち、前記導体部材3は、前記基本スリット1a,1bに沿う辺を長辺とし、延長スリット1c,1dに沿う辺を短辺とする長方形状に形成している。なお、導体部材3は、長方形状に形成しているが、これに限られるものではなく、前記H型形状のスリット1を盤面に形成できる面積を有するものであれば、特にその形状は長方形状に限られるものではない。また、図6に示す例では、前記導体部材3として一枚の金属板を用い、打ち抜き加工などにより前記金属板(3)に前記H型形状のスリット1と前記ループ形状のスリット2とを形成するようにしているが、これに限られるものではない。例えば、前記導体部材3として誘電体上に導電層を形成した構造のものを用い、その導電層上に前記H型形状のスリット1を形成するようにしてもよいものであり、前記導体部材3としては、その導体部分に前記H型形状のスリット1を開口して形成できるものであれば、特に限定されるものではない。
【0032】
前記基本スリット1a,1bは給電部4を中心として対称に形成している。図6(a)では、前記基本スリット1a,1bは給電部4を中心として上下に対称に形成してある。この場合、前記基本スリット1aと前記基本スリット1bとの長さは同一であることが望ましいものであるが、±数%の範囲での誤差は許容範囲である。
前記延長スリット1c,1dは、前記基本スリット1c,1dの開放端を中心として互いに逆向きで延長して形成している。前記延長スリット1c,1dは、前記基本スリット1a,1bに対して直角に配置することが望ましいものであるが、必ずしも直角に配置する必要はない。
前記基本スリット1a,1bは、その開放端に向けて給電部4からテーパ状にスリットの幅寸法が拡張する構造として形成したが、これに限られるものではない。例えば、前記基本スリット1a,1bを、その開放端と給電部4とでのスリット幅寸法が同一である長方形状の基本スリット1a,1bとして形成してもよいものである。
【0033】
前記H型形状のスリット1について説明する。本実施形態2では、前記H型形状のスリット1は、受信周波数帯域の低周波数側から高周波数側までをカバーする電気長に設定したH型形状のスリット1として形成している。
本実施形態2では、受信周波数帯域として、地上デジタルTV放送の電波を受信するために低周波数側を470MHz且つ高周波数側を710MHzとした範囲に設定しており、その受信周波数帯域の中心周波数を590MHzに設定している。このため、前記H型形状のスリット1は、低周波数側の470MHzから高周波数側の710MHzに渡って高利得の下で地上デジタルTV放送の受信が可能な広帯域特性を有することが要求される。
H型形状のスリット1に代えて、基本スリット1a,1bのみをアンテナ素子として用いた場合を考える。
この場合、前記アンテナ素子の基本スリット1a,1bの全長を例えば590MHzでの地上デジタルTV放送の受信を可能な寸法に設定すると、基本スリット1a,1bのみのアンテナ素子では、低周波数側の470MHzの受信感度が劣化することになり、前記広帯域特性の要求に応えることができなくなる。
そこで、本実施形態におけるスリット1は、低周波数側の劣化を改善するために、前記基本スリット1a,1bと延長スリット1c,1dとをH型に組み合わせ、前記基本スリット1a,1bの全長を延長スリット1c,1dにより延長させることにより、受信周波数帯域の低周波数側から高周波数側までをカバーする電気長に設定したH型形状構造とし、インピーダンスの改善に寄与する構造としている。さらに前記延長スリット1cは、前記基本スリット1aの開放端を中心として対称に配置し、前記延長スリット1dは、前記基本スリット1bの開放端を中心として対称に配置している。図6(a)では、前記延長スリット1c,1dは、前記基本スリット1a,1bの開放端を中心として左右対称に配置している。
なお、図6(a)に示す様に前記延長スリット1c,1dは、前記基本スリット1a,1bに対してそれぞれ直角に配置していることが望ましいが、90°を基準として±数%の角度をもっていてもよいものである。また、前記延長スリット1c,1dは、直線状に形成したが、その先端側を若干折り曲げる或いは湾曲させてもよいものである。また、前記延長スリット1c,1dは、平行な縁部をもつ短冊状に形成したが、基本スリット1a,1b側の辺を直線とし、その対向辺側を湾曲させた半月形状に形成してもよいものである。
なお、地上デジタルTV放送の受信周波数帯域は、現在低周波数側が470MHzであって高周波数側が710MHzに設定されているので、それに準拠して設定している。
【0034】
さらに、本実施形態では図6(a)(b),図7(a)(b),図8(a)(b)及び図9に示す様に、前記導体部材3の一部に補助板7を設けている。
図6(a)(b)に示す例では、前記補助板7は、前記基本スリット1a,1bを形成した導体部材3の対向する辺3a,3bの全長に渡って設けている。
図7(a)(b)に示す例では、前記補助板7は、前記基本スリット1a,1bを形成した導体部材3の対向する辺3a,3bの中央部分のみに設けている。
図8(a)(b)に示す例では、前記補助板7は、前記基本スリット1a,1bを形成した導体部材3の対向する辺3a,3bの全長に渡って設けているとともに、前記基本スリット1a,1bを挟んだ前記ループ状スロット2の辺2a,2bの全長に渡って設けている。
図9に示す例では、前記補助板7は、前記基本スリット1a,1bを形成した導体部材3の対向する辺3a,3bに設けている。また、導体部材3の角部を切り欠いて切り欠き6を形成している。前記切り欠き6の構成は図5(a)に示す例と同様である。
なお、図6(a)(b),図7(a)(b),図8(a)(b)及び図9に示す補助板7は、導体部材3を折り曲げることにより形成する、或いは別体の補助板7を前記導体部材3に結合させてよいものである。
【0035】
さらに、本実施形態では図6(b),図7(b),図8(b)及び図9に示す様に、前記導体部材3に沿う反射板5を有している。前記反射板5は、地上デジタルTV放送における受信周波数帯域の中心周波数の波長をλとした場合、1/4λ以下であって前記導体部材3に接触しない距離以上の範囲で前記導体部材3の後方に配置している。
次に前記反射板3の配置について説明する。前記導体部材3の後方位置に反射板5を配置することにより、利得を改善することができることは理論上に分かっている。したがって、前記反射板3を前記導体部材3に対して1/4λ以下の後方位置に配置した場合、前記導体部材3の後方の反射板5で反射した電波が前記導体部材3での受信に影響を及ぼすこととなる。さらに、前記反射板5を前記導体部材3の後方に1/4λの距離を保って配置することは、前記反射板5と前記導体部材3との間隔を接近させてアンテナの小型化・薄型化を図るためには支障となるものである。
そこで、本実施形態では図6(b),図7(b),図8(b)及び図9に示す様に、前記反射板5に1以上の矩形状のスリット5aを開口形成し、これらのスリット5aをラダー状に配置した構造にすることにより、前記反射板5を、1/4λ以下であって前記導体部材3に接触しない距離以上の範囲で前記導体部材3の後方に配置している。なお、図6(b),図7(b),図8(b)及び図9に示す例では、前記矩形状のスリット5aを前記反射板3に4個設けているが、この個数については4個に限られるものではない。
なお、図6(b),図7(b)及び図8(b)に示す反射板5は矩形状に形成しているが、これに限られるものではない。図9に示す様に、前記反射板5を、角部に切り欠き6を形成した前記導体部材3の形状に一致させて角部に切り欠き6を有する形状に形成してもよいものである。この場合、反射板5の角部に隣接するスリット5bは、半月状に形成している。前記切り欠き6の構成は図4(c)に示す例と同様である。
図9に示す様に、前記反射板5の形状を前記切り欠き6をもつ前記導体部材3の形状に合わせて形成することにより、切り欠き6に相当するアンテナの寸法を小さくすることができ、アンテナの小型化・薄型化に貢献できるものである。
【0036】
1つのアンテナは送信アンテナと受信アンテナとの可逆性を備えているものであるから、本発明の実施形態3に係る指向性アンテナは、送信アンテナと受信アンテナとに用いることができるものである。本発明の実施形態3に係る指向性アンテナを送信アンテナとして用いた場合における動作は、図1に示す実施形態1と同様であるので、その説明を省略する。
次に図6(a)(b)に示す本実施形態に係る指向性アンテナにおける補助板7により、アンテナのリアクタンスが微調整することができるか否かを検証した。図6(a)(b)での寸法は図2と同様に設定している。
【0037】
図10(a)(b)の横軸は周波数(MHz)を示す、縦軸は抵抗値(Ω)を示している。図10(a)(b)において、実線はアンテナのリアクタンスの実数部での抵抗値、一点鎖線はアンテナのリアクタンスの虚数部での抵抗値を示している。
図10(a)に示す様に、図1に示す指向性アンテナでは、例えば470MHzにおける実数部での抵抗値が約18Ωであったが、図6に示す様に補助板7を付加することにより、470MHzにおける実数部での抵抗値が約20Ωに改善されており、アンテナ自体のリアクタンスの調整が可能であることが確認できた。
また、図6に示す指向性アンテナは、補助板7を付加したが、地上デジタルTV放送を受信した際にVSWRは図5(a)と同様の特性を示した。
また、図6(a)(b),図7(a)(b),図8(a)(b)及び図10に示す本実施形態3では、補助板7の寸法を変更することにより、広帯域化するのに加えて、アンテナ自体のリアクタンスの調整を可能であることが確認できた。
【0038】
以上の様に本発明の実施形態1によれば、導体部材にH型形状のスリットを形成し、かつその周囲にループ状のスリットを配置する構造であり、アンテナ構造を簡素化することができる。
さらに、H型形状のスリットとループ状のスリットとを同一の導体部材上に形成するため、アンテナの構造が平面構造となるため、アンテナの高さ方向の寸法を極限まで低くすることができ、アンテナの小型化・薄型化を図ることができる。
さらに、前記H型形状スリットの周囲にループ状スリットを配置することにより、受信周波数帯域に対応した広帯域特性を付与することができる。
【0039】
さらに、本発明の実施形態2によれば、導体部材にH型形状スリットを形成し、前記導体部材の少なくとも一部に切り欠きを形成した構造であり、アンテナ構造を簡素化することができる。
さらに、H型形状スリットと前記切り欠きとを同一の導体部材上に形成するため、アンテナの構造が平面構造となるため、アンテナの高さ方向の寸法を極限まで低くすることができ、アンテナの小型化・薄型化を図ることができる。
さらに、前記導体部材の少なくとも一部に切り欠きを設けることにより、H型形状のスリットの周囲にループ状のスリットを配置する場合と同様に、受信周波数帯域に対応した広帯域特性を付与することができる。
【0040】
さらに、本発明の実施形態3によれば、導体部材にH型形状スリットを形成し、前記導体部材の一部に補助板を形成した構造であり、アンテナ構造を簡素化することができる。
さらに、H型形状のスリットと前記補助板とを同一の導体部材に形成するため、アンテナの構造が平面構造となるため、アンテナの高さ方向の寸法を極限まで低くすることができ、アンテナの小型化・薄型化を図ることができる。
さらに、前記導体部材の少なくとも一部に補助板を形成することにより、アンテナ自体のリアクタンスを調整することができる。
【0041】
また、反射板を設ける場合には、中心周波数の波長λの1/4程度の距離を保つ必要があるが、本発明の実施形態では、反射板にスリットを形成することにより、1/4λ以下での距離をもって反射板を導体部材に接近させて配置することができる。したがって、反射板を設けるに場合でも、アンテナの高さ方向の寸法を低くすることができ、アンテナの小型化・薄型化を図ることができる。
【0042】
次に、図11及び図12を用いて、本発明の実施形態における直接給電構造について説明する。図11(a)において、給電基板に関係する部品を実線で示し、指向性アンテナに関する部品を一点鎖線で示している。
【0043】
本発明の実施形態に係る指向性アンテナを収納するケースには、アンテナを支える複数の支柱8がケースと一体に樹脂成形されており、これらの支柱8を使って導体部材3を支えている。図11は、指向性アンテナの導体部材3を支える支柱8のうちの1本の支柱8を使って給電構造を構築した場合を示している。
前記支柱8の頂部8aは平坦になっており、その平坦な頂部8aのネジ孔9に図示しないビスをねじ込むことにより、給電基板10と導体部材3とをとも締めによって前記支柱8の頂部8aに固定している。
さらに、前記導体部材3に沿わせる反射板5は、前記支柱8にスリット5aを通してケースの内底に固定し、前記複数の支柱8により、前記導体部材3と前記反射板5との間の距離を設計値に保持している。この設計値の距離は、上述した様に、1/4λ以下であって前記反射板5が前記導体部材3に接触しない距離以上の範囲の距離を意味している。
従って、図11に示す様に、前記反射板5は、そのスリット5aが複数の支柱8に通した状態で設置されるため、水平面での動きが支柱8に規制されることとなり、導体部材3に対する反射板3の位置決めが固定され、反射特性に影響を与えることがない。
さらに、複数の支柱8により、導体部材3と反射板5との間の距離を設計値に保持することができ、アンテナの特性を安定に維持することができる。
【0044】
次に、図11及び図12に基づいて給電基板10の構造について説明する。本発明の実施形態に係る指向性アンテナは、直接給電により動作するものである。同軸ケーブルを直接導体部材3に接続することも考えられるが、製品化に当たっては給電部4での整合を図る必要があるからである。
【0045】
本実施形態では図11及び図12に示す給電基板10を用いることにより直接給電を行っている。すなわち、図11及び図12(a)(b)(c)に示す様に、給電基板10は、矩形状の絶縁基板11と、前記絶縁基板11の表面と裏面とに成型した銅箔12a,12b、12c,12dと、表裏面の銅箔12a,12bと12c,12dとを電気的に接続する多数のスルーホール13とを有している。
【0046】
図12(a)に示す様に、前記絶縁基板11の表面には、給電部4が設けられた前記導体部材3の形状に合わせて銅箔12a,12bが形成されている。すなわち、前記導電部材3の基本スリット1a,1bが形成された前記導体部材3の形状に合わせて銅箔12a,12bを左右対称に形成し、左右対称な一方の銅箔12aが給電面をなし、他方の銅箔12bがグランド面をなしている。また、左右対称の銅箔12a,12bには、前記支柱8のネジ孔9に一致させてネジ孔9aがそれぞれ開口されている。
【0047】
図12(b)に示す様に、前記絶縁基板11の裏面には、前記給電面用の銅箔12aとグランド面用の銅箔12bとに対応させて、給電面用の銅箔12cと、グランド面用の銅箔12dとが形成されている。さらに、前記給電面用の銅箔12cとグランド面用の銅箔12dとの間には、給電部4での整合を図る整合構造14が設けてある。
前記整合構造14を具体的に説明すると、前記給電面用の銅箔12cとグランド面用の銅箔12dとの間には、中間接続用の銅箔12e,12fを形成している。そして、前記銅箔12eと前記給電用銅箔12cとの間には図3(b)に示すコンデンサC2を接続し、前記銅箔12eと前記グランド用銅箔12dとの間には図3(b)に示すインダクタIDを接続し、前記銅箔12eと前記銅箔12fとの間には図3(b)に示すコンデンサC1を接続している。これにより、整合回路14の一例である図3(b)に示すマッチング回路が構築される。なお、前記整合構造14としては、上述した様に図3(b)に示すマッチング回路以外のものを用いても良いものである。
さらに、前記銅箔12fには同軸ケーブル15の給電芯線15aを半田付けし、前記銅箔12dには前記同軸ケーブル15の編組線15bを半田付けしている。
【0048】
また、前記整合構造14及び前記同軸ケーブル15は、給電基板10の盤面から立ち上がって取り付けられるものであり、これらはアンテナの高さを低くする上で支障となるものである。
そこで、本実施形態では、前記支柱8の頂部8aに、前記整合構造14及び前記同軸ケーブル15の先端部を収納するに十分な大きさの凹部8bを形成し、前記支柱の凹部8b内に前記整合構造14及び前記同軸ケーブル15の先端部を収納している。
【0049】
したがって、本実施形態によれば、前記整合構造14及び前記同軸ケーブル15の先端部の高さを前記支柱8の凹部8bにより吸収することができ、アンテナの高さ方向での寸法を低くすることができる。
【0050】
本実施形態において、前記給電基板10を使って指向性アンテナの導体部材3と同軸ケーブル15とを接続する場合について説明する。
前記給電基板10の裏面に設けた給電構造14及び同軸ケーブル15の先端部を前記支柱8の凹部8b内に収納し、前記給電基板10の孔9aを前記支柱8の頂部8aのネジ孔9に一致させる。
次に、前記導体部材3の基本スリット1a,1bを前記給電基板10の左右対称な銅箔12a、12b間に形成されたテーパ状の切り抜きに一致させ、前記導体部材3の基本スリット1a,1bに隣接した領域を前記給電基板10の左右対称な銅箔12a、12bに接触させる。
次に、前記給電基板10のネジ孔9aから前記支柱8のネジ孔9にビスを通してネジ止めすることにより、前記導体部材3と前記給電基板10とをとも締めして、前記導体部材3を前記給電基板10に圧着してこれらを前記支柱8に固定する。
【0051】
本実施形態によれば、給電基板10を矩形状に形成することにより、その表面に設けた銅箔12a,12bと導体部材3との接触面積が大きくなり、少ない本数のネジで締め付けても給電基板10と導体部材3とを確実に接続することができる。このことは部品点数を少なくすることができ、組立工数を単純化することができる。
【0052】
さらに、前記支柱8の凹部8b内に前記整合構造14及び前記同軸ケーブル15の先端部を収納して、これらが給電基板10及び支柱8から外部に飛び出して露出することはないため、前記整合構造14及び前記同軸ケーブル15の先端部が外力によって損傷することを回避することができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明によれば、電波の送受信を行う指向性アンテナであって、特にUHF帯の電波を受信するのに最適な指向性アンテナの提供に貢献するものである。
【符号の説明】
【0054】
1 H型形状のスリット
1a,1b 基本スリット
1c,1d 延長スリット
2 ループ状のスリット
3 導体部材
4 給電部
5 反射板
6 切り欠き
7 補助板
8 支柱
10 給電板
15 同軸ケーブル
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波の送受信を行う指向性アンテナであって、特にUHF帯の電波を受信するのに最適な指向性アンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
既設のアナログTV放送がデジタルTV放送に切り替えられるのに伴って、UHF帯の地上デジタルTV放送に最適なアンテナの開発が必須となっている。
【0003】
アナログTV放送を受信するアンテナとしては、放射素子と反射素子とを組み合わせた八木・宇田アンテナが開発されている。そして、前記八木・宇田アンテナの動作原理を応用した地上デジタルTV放送を受信するアンテナが開発されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−73226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
放射素子と反射板との間隔を、基準とする中心周波数の波長をλとした場合にλ/4に設定することにより、反射板による反射効率が最大値を示すことが知られている。特許文献1のアンテナは、放射素子と、その放射素子の平面に配置した平面状の反射板とからなり、特許文献1は、前記反射板の両側部を前記放射素子における放射に寄与しない放射素子側に屈曲させ、前記反射板における前記放射素子側に屈曲されている両側部の先端と前記放射素子との間隔dを、前記放射素子と前記反射板との間隔D以下に設定することにより、アンテナの奥行きでの小型化を実現している。
【0006】
本発明の目的は、特許文献1に記載されたアンテナの構造を簡素化すると共に小型化・薄型化を実現した指向性アンテナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明に係る指向性アンテナは、基本スリットと前記基本スリットの全長を延長した延長スリットとからなるH型形状のスリットと、前記H型形状のスリットの周囲に配置した閉ループ状のスリットとを有し、前記基本スリットと前記延長スリットとを同一の導体部材に形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、特許文献1に記載されたアンテナと比較して、その構造を簡素化すると共に小型化・薄型化を実現できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】(a)は、本発明の実施形態1に係る指向性アンテナを示す平面図、(b)は(a)に示す指向性アンテナに追加する反射板を示す平面図である。
【図2】(a)は、本発明の実施形態1に係る指向性アンテナの変形例を示す平面図、(b)は(a)に示す指向性アンテナに追加する反射板を示す平面図である。
【図3】(a)は、本発明の実施形態1に係る指向性アンテナのVSWRを実測した特性図、(b)は、給電の整合を取る一例であるマッチング回路を示す図である。
【図4】(a)は、本発明の実施形態2に係る指向性アンテナを示す平面図、(b)は(a)に示す指向性アンテナに追加する反射板を示す平面図、(c)は(b)に示す反射板の変形例を示す平面図である。
【図5】(a)は、本発明の実施形態2に係る指向性アンテナに関するVSWRを実測した特性図、(b)は、図5(c)に示す変形例の反射板を用いたときの指向性アンテナに関するVSWRを実測した特性図である。
【図6】(a)は、本発明の実施形態3に係る指向性アンテナを示す斜視図、(b)は(a)に示す指向性アンテナに追加する反射板と導電部材との関係を示す図である。
【図7】(a)は、本発明の実施形態3に係る指向性アンテナを示す斜視図、(b)は(a)に示す指向性アンテナに追加する反射板と導電部材との関係を示す図である。
【図8】(a)は、本発明の実施形態3に係る指向性アンテナを示す斜視図、(b)は(a)に示す指向性アンテナに追加する反射板と導電部材との関係を示す図である。
【図9】(a)は、本発明の実施形態3に係る指向性アンテナを示す斜視図である。
【図10】アンテナのリアクタンスを微調整することを検証した特性図である。
【図11】(a)は、本発明の実施形態に係る指向性アンテナへ直接給電を行う給電構造を示す斜視図、(b)は、本発明の実施形態に係る指向性アンテナを支える支柱を示す斜視図である。
【図12】(a)は、本発明の実施形態に係る指向性アンテナに用いた給電基板を示す表面図、(b)は同裏面図、(c)は、(a)のA−A線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図に基づいて詳細に説明する。
【0011】
(実施形態1)
本発明の実施形態1に係る指向性アンテナは図1(a)に示す様に、基本スリット1a,1bと前記基本スリット1a,1bの全長を延長した延長スリット1c,1dとからなるH型形状のスリット1と、前記H型形状のスリット1の周囲に配置したループ形状のスリット2とを有している。
そして、前記基本スリット1a,1bと前記延長スリット1c,1dとを導体部材3上に形成している。
【0012】
本実施形態1では、前記導体部材3を長方形状に形成している。すなわち、前記導体部材3は、前記基本スリット1a,1bに沿う辺を長辺とし、延長スリット1c,1dに沿う辺を短辺とする長方形状に形成している。なお、導体部材3は、長方形状に形成しているが、これに限られるものではなく、前記H型形状のスリット1と前記ループ形状のスリット2とを盤面に形成できる面積を有するものであれば、特にその形状は長方形状に限られるものではない。また、図1に示す例では、前記導体部材3として一枚の金属板を用い、打ち抜き加工などにより前記金属板(3)に前記H型形状のスリット1と前記ループ形状のスリット2とを形成するようにしているが、これに限られるものではない。例えば、前記導体部材3として誘電体上に導電層を形成した構造のものを用い、その導電層上に前記H型形状のスリット1と前記ループ形状のスリット2とを形成するようにしてもよいものであり、前記導体部材3としては、その導体部分に前記H型形状のスリット1と前記ループ形状のスリット2とを開口して形成できるものであれば、特に限定されるものではない。
【0013】
前記基本スリット1a,1bは給電部4を中心として対称に形成している。図1(a)では、前記基本スリット1a,1bは給電部4を中心として上下に対称に形成してある。この場合、前記基本スリット1aと前記基本スリット1bとの長さは同一であることが望ましいものであるが、±数%の範囲での誤差は許容範囲である。
前記延長スリット1c,1dは、前記基本スリット1c,1dの開放端を中心として互いに逆向きで延長して形成している。前記延長スリット1c,1dは、前記基本スリット1a,1bに対して直角に配置することが望ましいものであるが、必ずしも直角に配置する必要はない。
前記基本スリット1a,1bは、その開放端に向けて給電部4からテーパ状にスリットの幅寸法が拡張する構造として形成したが、これに限られるものではない。例えば、前記基本スリット1a,1bを、その開放端と給電部4とでのスリット幅寸法が同一である長方形状の基本スリット1a,1bとして形成してもよいものである。
【0014】
前記H型形状のスリット1について説明する。本実施形態では、前記H型形状のスリット1は、受信周波数帯域における低周波数側をカバーする電気長に設定したH型形状のスリット1として形成している。
本実施形態では、受信周波数帯域として、地上デジタルTV放送の電波を受信するために低周波数側を470MHz且つ高周波数側を710MHzとした範囲に設定しており、その受信周波数帯域の中心周波数を590MHzに設定している。このため、前記H型形状のスリット1は、低周波数側の470MHzから高周波数側の710MHzに渡って高利得の下で地上デジタルTV放送の受信が可能な広帯域特性を有することが要求される。
H型形状のスリット1に代えて、基本スリット1a,1bのみをアンテナ素子として用いた場合を考える。
この場合、前記アンテナ素子の基本スリット1a,1bの全長を例えば590MHzでの地上デジタルTV放送の受信を可能な寸法に設定すると、基本スリット1a,1bのみのアンテナ素子では、低周波数側の470MHzの受信感度が劣化することになり、前記広帯域特性の要求に応えることができなくなる。
そこで、本実施形態におけるスリット1は、低周波数側の劣化を改善するために、前記基本スリット1a,1bと延長スリット1c,1dとをH型に組み合わせ、前記基本スリット1a,1bの全長を延長スリット1c,1dにより延長させることにより、受信周波数帯域の低周波数側から高周波数側までをカバーする電気長に設定したH型形状構造とし、インピーダンスの改善に寄与する構造としている。さらに前記延長スリット1cは、前記基本スリット1aの開放端を中心として対称に配置し、前記延長スリット1dは、前記基本スリット1bの開放端を中心として対称に配置している。図1(a)では、前記延長スリット1c,1dは、前記基本スリット1a,1bの開放端を中心として左右対称に配置している。
なお、図1(a)に示す様に前記延長スリット1c,1dは、前記基本スリット1a,1bに対してそれぞれ直角に配置していることが望ましいが、90°を基準として±数%の角度をもっていてもよいものである。また、図1(a)に示す様に前記延長スリット1c,1dは、直線状に形成したが、その先端側を若干折り曲げる或いは湾曲させてもよいものである。また、図1(a)に示す様に前記延長スリット1c,1dは、平行な縁部をもつ短冊状に形成したが、基本スリット1a,1b側の辺を直線とし、その対向辺側を湾曲させた半月形状に形成してもよいものである。
【0015】
前記H型形状のスリット1を寸法関係で説明すると、図2(a)(b)に示す様に、地上デジタルTV放送における受信周波数の中心周波数を590MHzに設定し、その中心周波数の波長をλとした場合、基本スリット1a,1bの全長を0.44λに設定し、延長スリット1c,1dのそれぞれの全長を0.36λに設定している。これにより、前記H型形状のスリット1は、地上デジタルTV放送の受信周波数帯域の低周波数側から高周波数側までをカバーする電気長に設定したH型形状スリット1の構造としている。
なお、地上デジタルTV放送の受信周波数帯域は、現在低周波数側が470MHzであって高周波数側が710MHzに設定されているので、それに準拠して設定している。
【0016】
前記ループ状のスリット2は、前記導体部材3の縁部に沿って開口形成することにより、前記H型形状のスリット1と前記ループ形状のスリット2との周囲を取り囲むように形成にしている。なお、前記ループ状スリット2は、その全周が開口したループ形状に形成しているが、これに限られるものではない。図2(a)(b)に示す様に前記ループ状のスリット2は、基本スリット1a,1bの延長上で短絡(S)したループ状として形成してもよいものである。
【0017】
さらに、本実施形態では図1(b)及び図2(b)に示す様に、前記導体部材3に沿う反射板5を有している。前記反射板5は、地上デジタルTV放送における受信周波数帯域の中心周波数の波長をλとした場合、1/4λ以下であって前記導体部材3に接触しない距離以上の範囲で前記導体部材3の後方に配置している。
次に前記反射板3の配置について説明する。前記導体部材3の後方位置に反射板5を配置することにより、利得を改善することができることは理論上に分かっている。したがって、前記反射板3を前記導体部材3に対して1/4λ以下の後方位置に配置した場合、前記導体部材3の後方の反射板5で反射した波が前記導体部材3での受信に影響を及ぼすこととなる。さらに、前記反射板5を前記導体部材3の後方に1/4λの距離を保って配置することは、前記反射板5と前記導体部材3との間隔を接近させてアンテナの小型化・薄型化を図るためには支障となるものである。
そこで、本実施形態では図1(b)及び図2(b)に示す様に、前記反射板5に1以上の矩形状のスリット5aを開口形成し、これらのスリット5aをラダー状に配置することにより、前記反射板5を、1/4λ以下であって前記導体部材3に接触しない距離以上の範囲で前記導体部材3の後方に配置している。なお、図1(b)及び図2(b)に示す例では、前記矩形状のスリット5aを前記反射板3に4個設けているが、この個数については4個に限られるものではない。
【0018】
次に、1つのアンテナは送信アンテナと受信アンテナとの可逆性を備えているものであるから、本発明の実施形態1に係る指向性アンテナを送信アンテナとして用いた場合における動作を図1(a)に基づいて説明する。
【0019】
本発明の実施形態1に係る指向性アンテナに給電部4から給電を行うと、指向性アンテナの導体部材3に電流が流れる。延長スリット1c,1dは、基本スリット1a,1bの開放端で左右に分岐しており、基本スリット1a,1bを挟んで位置する延長スリット1c,1dの部分で生じる電界の向きV1,V2は、互いに逆向きとなって互いに打ち消し合うこととなる。
したがって、指向性アンテナの正面側には水平偏波Hのみが放射されることとなる。
【0020】
次に図2(a)(b)に示す本実施形態に係る指向性アンテナを受信アンテナとして用いることにより、地上デジタルTV放送を受信した場合におけるVSWRを測定した結果について説明する。
図2(a)(b)では、テーパ状の基本スリット1a,1bを用い、測定するにあたって、地上デジタルTV放送における受信周波数帯域の中心周波数の波長をλとした場合、基本スリット1a,1bの全長L1を0.44λ、延長スリット1c,1dのそれぞれの全長L2を0.36λ、給電部4に相当する基本スリット1a,1bの最小スリット幅L3を0.006λ、基本スリット1a,1bの開放端の幅寸法L4を0.04λに設定した。
さらに、前記ループ状のスリット2の幅寸法L5を0.02λに設定し、前記ループ状のスリット2を前記基本スリット1a,1cの延長上で且つ幅0.01λの幅L6で短絡させている。さらに、前記反射板5には、0.36λ(L7)×0.14λ(L8)の2個のスリット5aと、0.36λ(L7)×0.16λ(L9)の2個のスリット5aとを設けた。
【0021】
図2(a)(b)に示す本実施形態に係る指向性アンテナを用い、給電部4での整合を行って地上デジタルTV放送を受信した場合におけるVSWRを測定した結果を図3に示す。図3の横軸は周波数、縦軸はVSWRを示している。前記給電部4における整合には、図3(b)に示す様なコンデンサC1,C2とインダクタンスIDとをT型に接続した一般的なマッチング回路を用いた。なお、給電部4での整合を取るには、図3(b)に示すマッチング回路以外のものを使ってもよいものである。
図3(a)から明らかなように、受信周波数帯域の低周波数側の470MHzでVSWRが約1.5を示し、中心周波数590MHzに向けてVSWRは小さくなり、中心周波数590MHzでVSWRが約1.3を示し、さらに高周波数側の710MHzでVSWRが約1.7を示ししており、地上デジタルTV放送における受信周波数帯域の低周波数側470MHzから高周波数側710MHzに至る帯域でVSWRを2以下であった。
地上デジタルTV放送の受信周波数帯域におけるVSWRを検討すると、地上デジタルTV放送を受信するには十分な数値であり、実用に供するものであることが分かった。
【0022】
(実施形態2)
次に、本発明の実施形態2に係る指向性アンテナを図に基づいて説明する。
本発明の実施形態2に係る指向性アンテナは図4(a)(b)に示す様に、基本スリット1a,1bと前記基本スリット1a,1bの全長を延長した延長スリット1c,1dとからなるH型形状のスリット1を導体部材3上に形成している。
【0023】
図4に示す本実施形態2では、前記導体部材3として一枚の金属板を用い、打ち抜き加工などにより前記金属板(3)に前記H型形状のスリット1を形成するようにしているが、これに限られるものではない。例えば、前記導体部材3として誘電体上に導電層を形成した構造のものを用い、その導電層上に前記H型形状のスリット1を形成するようにしてもよいものであり、前記導体部材3としては、その導体部分に前記H型形状のスリット1を開口して形成できるものであれば、特に限定されるものではない。
【0024】
前記基本スリット1a,1bは給電部4を中心として対称に形成している。図4(a)では、前記基本スリット1a,1bは給電部4を中心として上下に対称に形成してある。この場合、前記基本スリット1aと前記基本スリット1bとの長さは同一であることが望ましいものであるが、±数%の範囲での誤差は許容範囲である。
前記延長スリット1c,1dは、前記基本スリット1c,1dの開放端を中心として互いに逆向きで延長して形成している。前記延長スリット1c,1dは、前記基本スリット1a,1bに対して直角に配置することが望ましいものであるが、必ずしも直角に配置する必要はない。
前記基本スリット1a,1bは、その開放端に向けて給電部4からテーパ状にスリットの幅寸法が拡張する構造として形成したが、これに限られるものではない。例えば、前記基本スリット1a,1bを、その開放端と給電部4とでのスリット幅寸法が同一である長方形状の基本スリット1a,1bとして形成してもよいものである。
【0025】
前記H型形状のスリット1について説明する。本実施形態2では、前記H型形状のスリット1は、受信周波数帯域の低周波数側から高周波数側までをカバーする電気長に設定したH型形状のスリット1として形成している。
本実施形態2では、受信周波数帯域として、地上デジタルTV放送の電波を受信するために低周波数側を470MHz且つ高周波数側を710MHzとした範囲に設定しており、その受信周波数帯域の中心周波数を590MHzに設定している。このため、前記H型形状のスリット1は、低周波数側の470MHzから高周波数側の710MHzに渡って高利得の下で地上デジタルTV放送の受信が可能な広帯域特性を有することが要求される。
H型形状のスリット1に代えて、基本スリット1a,1bのみをアンテナ素子として用いた場合を考える。
この場合、前記アンテナ素子の基本スリット1a,1bの全長を例えば590MHzでの地上デジタルTV放送の受信を可能な寸法に設定すると、基本スリット1a,1bのみのアンテナ素子では、低周波数側の470MHzの受信感度が劣化することになり、前記広帯域特性の要求に応えることができなくなる。
そこで、本実施形態におけるスリット1は、低周波数側の劣化を改善するために、前記基本スリット1a,1bと延長スリット1c,1dとをH型に組み合わせ、前記基本スリット1a,1bの全長を延長スリット1c,1dにより延長させることにより、受信周波数帯域の低周波数側から高周波数側までをカバーする電気長に設定したH型形状構造とし、インピーダンスの改善に寄与する構造としている。さらに前記延長スリット1cは、前記基本スリット1aの開放端を中心として対称に配置し、前記延長スリット1dは、前記基本スリット1bの開放端を中心として対称に配置している。図4(a)では、前記延長スリット1c,1dは、前記基本スリット1a,1bの開放端を中心として左右対称に配置している。
なお、図4(a)に示す様に前記延長スリット1c,1dは、前記基本スリット1a,1bに対してそれぞれ直角に配置していることが望ましいが、90°を基準として±数%の角度をもっていてもよいものである。また、前記延長スリット1c,1dは、直線状に形成したが、その先端側を若干折り曲げる或いは湾曲させてもよいものである。また、前記延長スリット1c,1dは、平行な縁部をもつ短冊状に形成したが、基本スリット1a,1b側の辺を直線とし、その対向辺側を湾曲させた半月形状に形成してもよいものである。
なお、地上デジタルTV放送の受信周波数帯域は、現在低周波数側が470MHzであって高周波数側が710MHzに設定されているので、それに準拠して設定している。
【0026】
さらに、本実施形態では図4(a)に示す様に、前記導体部材3の一部に切り欠き6を形成している。図4(a)に示す例では、前記導体部材3を長方形状に形成し、その四隅の角部を円弧状に切り欠くことにより、前記導電部材3の一部に切り欠き6を形成している。
なお、図4(a)の例では、前記導体部材3の四隅の角部を円弧状に切り欠くことにより、切り欠き6を形成したが、これに限られるものではない。前記導体部材3の一部に切り欠き6を形成するにあたっては、前記導電部材3の四隅の角部を斜め直線状に切り欠いてもよく、さらには山形形状に切り欠いてもよく、さらには、前記導体部材3の四隅における全ての角部を切り欠く必要もないものである。
要は、前記導体部材3の一部に切り欠き6を形成することにより、アンテナのリアクタンスを調整することができるものであれば、その切り欠き6の形状に左右されるものではない。
【0027】
さらに、本実施形態では図4(b)に示す様に、前記導体部材3に沿う矩形状の反射板5を有している。前記反射板5は、地上デジタルTV放送における受信周波数帯域の中心周波数の波長をλとした場合、1/4λ以下であって前記導体部材3に接触しない距離以上の範囲で前記導体部材3の後方に配置している。
次に前記反射板3の配置について説明する。前記導体部材3の後方位置に反射板5を配置することにより、利得を改善することができることは理論的に分かっている。したがって、前記反射板3を前記導体部材3に対して1/4λ以下の後方位置に配置した場合、前記導体部材3の後方の反射板5で反射した波が前記導体部材3での受信に影響を及ぼすこととなる。さらに、前記反射板5を前記導体部材3の後方に1/4λの距離を保って配置することは、前記反射板5と前記導体部材3との間隔を接近させてアンテナの小型化・薄型化を図るためには支障となるものである。
そこで、本実施形態では、前記反射板5に1以上の矩形状のスリット5aを開口形成し、これらのスリット5aをラダー状に配置した構造にすることにより、前記反射板5を、1/4λ以下であって前記導体部材3に接触しない距離以上の範囲で前記導体部材3の後方に配置している。なお、図4(b)に示す例では、前記矩形状のスリット5aを前記反射板3に4個設けているが、この個数については4個に限られるものではない。
なお、図4(b)に示す反射板5は矩形状に形成しているが、これに限られるものではない。図4(c)に示す様に、前記反射板5を、角部に切り欠き6を形成した前記導体部材3の形状に一致させて角部に切り欠き6を有する形状に形成してもよいものである。この場合、反射板5の角部に隣接するスリット5bは、半月状に形成している。
図4(c)に示す様に、前記反射板5の形状を前記切り欠き6をもつ前記導体部材3の形状に合わせて形成することにより、切り欠き6に相当するアンテナの寸法を小さくすることができ、アンテナの小型化・薄型化に貢献できるものである。
【0028】
1つのアンテナは送信アンテナと受信アンテナとの可逆性を備えているものであるから、本発明の実施形態2に係る指向性アンテナは、送信アンテナと受信アンテナとに用いることができるものである。本発明の実施形態2に係る指向性アンテナを送信アンテナとして用いた場合における動作は、図1に示す実施形態1と同様であるので、その説明を省略する。
次に図4(a)(b)(c)に示す本実施形態に係る指向性アンテナを用いて地上デジタルTV放送を受信した場合におけるVSWRを測定した結果を説明する。
図4(a)(b)(c)では、テーパ状の基本スリット1a,1bを用い、前記導体部材3の四隅の角部を円弧状に切り欠くことにより、前記導体部材3の一部に切り欠き6を形成した。
さらに、図4(b)に示す前記反射板3には、図2に示すと同様に4個の矩形状のスリット5aを用いた。図4(c)に示す前記反射板3には、2個のスリット5aと、半月形状のスリット5bとを設けた。また、図4(a)(b)(c)における基本スリット1a,1b及び延長スリット1c,1dなどの寸法は、図2に示す実施形態1の寸法に準拠させてある。
【0029】
図4(a)(b)に示す本実施形態に係る指向性アンテナを用いて地上デジタルTV放送を受信した場合におけるVSWRを測定した結果を図5(a)に、図4(a)(c)に示す本実施形態に係る指向性アンテナを用い用い、給電部4での整合を行って地上デジタルTV放送を受信した場合におけるVSWRを測定した結果を図5(b)に示す。図5の横軸は周波数、縦軸はVSWRを示している。前記給電部4における整合には、図3(b)に示す様なコンデンサC1,C2とインダクタンスIDとをT型に接続した一般的なマッチング回路を用いた。なお、給電部4での整合を取るには、図3(b)に示すマッチング回路以外のものを使ってもよいものである。
図5(a)から明らかなように、地上デジタルTV放送の受信周波数帯域における低周波数側の470MHzでVSWRが約1.9を示し、中心周波数590MHzに向けてVSWRは小さくなり、中心周波数590MHzでVSWRが約1.6を示し、さらに高周波数側の710MHzでVSWRが約1.8を示した。
図4(a)(b)に示す本実施形態に係る指向性アンテナは、地上デジタルTV放送の受信周波数帯域におけるVSWRを検討すると、地上デジタルTV放送を受信するには十分な数値であり、実用に供するものであることが分かった。
図4(a)(c)による指向性アンテナについても、同様に給電部4での整合を行って地上デジタルTV放送を受信した場合におけるVSWRを測定した結果を図5(b)に示す。図5の横軸は周波数、縦軸はVSWRを示している。前記給電部4における整合には、図3(b)に示す様なコンデンサC1,C2とインダクタンスIDとをT型に接続した一般的なマッチング回路を用いた。なお、給電部4での整合を取るには、図3(b)に示すマッチング回路以外のものを使ってもよいものである。
図5(b)から明らかなように、地上デジタルTV放送の受信周波数帯域における低周波数側の470MHzでVSWRが約3.8を示し、中心周波数590MHzに向けてVSWRは小さくなり、中心周波数590MHzでVSWRが約3.0を示し、さらに高周波数側の710MHzでVSWRが約1.6を示した。
図4(a)(c)に示す本実施形態に係る指向性アンテナは、地上デジタルTV放送の受信周波数帯域におけるVSWRを検討すると、地上デジタルTV放送を受信するには十分な数値であり、実用に供するものであることが分かった。
【0030】
(実施形態3)
次に、本発明の実施形態3に係る指向性アンテナを図に基づいて説明する。
本発明の実施形態3に係る指向性アンテナは、広帯域化に加えてアンテナ自体のリアクタンスの調整を可能にしたものである。図6(a)(b)に示す本実施形態3に係る指向性アンテナは、基本スリット1a,1bと前記基本スリット1a,1bの全長を延長した延長スリット1c,1dとからなるH型形状のスリット1を導体部材3上に形成している。また、図6(a)(b)では、前記H型形状のスリット1の周囲にループ状のスリット2を設けている。前記ループ状スリット2の構造は図2(a)に示す実施形態と同様である。
【0031】
図6(a)(b)に示す本実施形態3では、前記導体部材3を長方形状に形成している。すなわち、前記導体部材3は、前記基本スリット1a,1bに沿う辺を長辺とし、延長スリット1c,1dに沿う辺を短辺とする長方形状に形成している。なお、導体部材3は、長方形状に形成しているが、これに限られるものではなく、前記H型形状のスリット1を盤面に形成できる面積を有するものであれば、特にその形状は長方形状に限られるものではない。また、図6に示す例では、前記導体部材3として一枚の金属板を用い、打ち抜き加工などにより前記金属板(3)に前記H型形状のスリット1と前記ループ形状のスリット2とを形成するようにしているが、これに限られるものではない。例えば、前記導体部材3として誘電体上に導電層を形成した構造のものを用い、その導電層上に前記H型形状のスリット1を形成するようにしてもよいものであり、前記導体部材3としては、その導体部分に前記H型形状のスリット1を開口して形成できるものであれば、特に限定されるものではない。
【0032】
前記基本スリット1a,1bは給電部4を中心として対称に形成している。図6(a)では、前記基本スリット1a,1bは給電部4を中心として上下に対称に形成してある。この場合、前記基本スリット1aと前記基本スリット1bとの長さは同一であることが望ましいものであるが、±数%の範囲での誤差は許容範囲である。
前記延長スリット1c,1dは、前記基本スリット1c,1dの開放端を中心として互いに逆向きで延長して形成している。前記延長スリット1c,1dは、前記基本スリット1a,1bに対して直角に配置することが望ましいものであるが、必ずしも直角に配置する必要はない。
前記基本スリット1a,1bは、その開放端に向けて給電部4からテーパ状にスリットの幅寸法が拡張する構造として形成したが、これに限られるものではない。例えば、前記基本スリット1a,1bを、その開放端と給電部4とでのスリット幅寸法が同一である長方形状の基本スリット1a,1bとして形成してもよいものである。
【0033】
前記H型形状のスリット1について説明する。本実施形態2では、前記H型形状のスリット1は、受信周波数帯域の低周波数側から高周波数側までをカバーする電気長に設定したH型形状のスリット1として形成している。
本実施形態2では、受信周波数帯域として、地上デジタルTV放送の電波を受信するために低周波数側を470MHz且つ高周波数側を710MHzとした範囲に設定しており、その受信周波数帯域の中心周波数を590MHzに設定している。このため、前記H型形状のスリット1は、低周波数側の470MHzから高周波数側の710MHzに渡って高利得の下で地上デジタルTV放送の受信が可能な広帯域特性を有することが要求される。
H型形状のスリット1に代えて、基本スリット1a,1bのみをアンテナ素子として用いた場合を考える。
この場合、前記アンテナ素子の基本スリット1a,1bの全長を例えば590MHzでの地上デジタルTV放送の受信を可能な寸法に設定すると、基本スリット1a,1bのみのアンテナ素子では、低周波数側の470MHzの受信感度が劣化することになり、前記広帯域特性の要求に応えることができなくなる。
そこで、本実施形態におけるスリット1は、低周波数側の劣化を改善するために、前記基本スリット1a,1bと延長スリット1c,1dとをH型に組み合わせ、前記基本スリット1a,1bの全長を延長スリット1c,1dにより延長させることにより、受信周波数帯域の低周波数側から高周波数側までをカバーする電気長に設定したH型形状構造とし、インピーダンスの改善に寄与する構造としている。さらに前記延長スリット1cは、前記基本スリット1aの開放端を中心として対称に配置し、前記延長スリット1dは、前記基本スリット1bの開放端を中心として対称に配置している。図6(a)では、前記延長スリット1c,1dは、前記基本スリット1a,1bの開放端を中心として左右対称に配置している。
なお、図6(a)に示す様に前記延長スリット1c,1dは、前記基本スリット1a,1bに対してそれぞれ直角に配置していることが望ましいが、90°を基準として±数%の角度をもっていてもよいものである。また、前記延長スリット1c,1dは、直線状に形成したが、その先端側を若干折り曲げる或いは湾曲させてもよいものである。また、前記延長スリット1c,1dは、平行な縁部をもつ短冊状に形成したが、基本スリット1a,1b側の辺を直線とし、その対向辺側を湾曲させた半月形状に形成してもよいものである。
なお、地上デジタルTV放送の受信周波数帯域は、現在低周波数側が470MHzであって高周波数側が710MHzに設定されているので、それに準拠して設定している。
【0034】
さらに、本実施形態では図6(a)(b),図7(a)(b),図8(a)(b)及び図9に示す様に、前記導体部材3の一部に補助板7を設けている。
図6(a)(b)に示す例では、前記補助板7は、前記基本スリット1a,1bを形成した導体部材3の対向する辺3a,3bの全長に渡って設けている。
図7(a)(b)に示す例では、前記補助板7は、前記基本スリット1a,1bを形成した導体部材3の対向する辺3a,3bの中央部分のみに設けている。
図8(a)(b)に示す例では、前記補助板7は、前記基本スリット1a,1bを形成した導体部材3の対向する辺3a,3bの全長に渡って設けているとともに、前記基本スリット1a,1bを挟んだ前記ループ状スロット2の辺2a,2bの全長に渡って設けている。
図9に示す例では、前記補助板7は、前記基本スリット1a,1bを形成した導体部材3の対向する辺3a,3bに設けている。また、導体部材3の角部を切り欠いて切り欠き6を形成している。前記切り欠き6の構成は図5(a)に示す例と同様である。
なお、図6(a)(b),図7(a)(b),図8(a)(b)及び図9に示す補助板7は、導体部材3を折り曲げることにより形成する、或いは別体の補助板7を前記導体部材3に結合させてよいものである。
【0035】
さらに、本実施形態では図6(b),図7(b),図8(b)及び図9に示す様に、前記導体部材3に沿う反射板5を有している。前記反射板5は、地上デジタルTV放送における受信周波数帯域の中心周波数の波長をλとした場合、1/4λ以下であって前記導体部材3に接触しない距離以上の範囲で前記導体部材3の後方に配置している。
次に前記反射板3の配置について説明する。前記導体部材3の後方位置に反射板5を配置することにより、利得を改善することができることは理論上に分かっている。したがって、前記反射板3を前記導体部材3に対して1/4λ以下の後方位置に配置した場合、前記導体部材3の後方の反射板5で反射した電波が前記導体部材3での受信に影響を及ぼすこととなる。さらに、前記反射板5を前記導体部材3の後方に1/4λの距離を保って配置することは、前記反射板5と前記導体部材3との間隔を接近させてアンテナの小型化・薄型化を図るためには支障となるものである。
そこで、本実施形態では図6(b),図7(b),図8(b)及び図9に示す様に、前記反射板5に1以上の矩形状のスリット5aを開口形成し、これらのスリット5aをラダー状に配置した構造にすることにより、前記反射板5を、1/4λ以下であって前記導体部材3に接触しない距離以上の範囲で前記導体部材3の後方に配置している。なお、図6(b),図7(b),図8(b)及び図9に示す例では、前記矩形状のスリット5aを前記反射板3に4個設けているが、この個数については4個に限られるものではない。
なお、図6(b),図7(b)及び図8(b)に示す反射板5は矩形状に形成しているが、これに限られるものではない。図9に示す様に、前記反射板5を、角部に切り欠き6を形成した前記導体部材3の形状に一致させて角部に切り欠き6を有する形状に形成してもよいものである。この場合、反射板5の角部に隣接するスリット5bは、半月状に形成している。前記切り欠き6の構成は図4(c)に示す例と同様である。
図9に示す様に、前記反射板5の形状を前記切り欠き6をもつ前記導体部材3の形状に合わせて形成することにより、切り欠き6に相当するアンテナの寸法を小さくすることができ、アンテナの小型化・薄型化に貢献できるものである。
【0036】
1つのアンテナは送信アンテナと受信アンテナとの可逆性を備えているものであるから、本発明の実施形態3に係る指向性アンテナは、送信アンテナと受信アンテナとに用いることができるものである。本発明の実施形態3に係る指向性アンテナを送信アンテナとして用いた場合における動作は、図1に示す実施形態1と同様であるので、その説明を省略する。
次に図6(a)(b)に示す本実施形態に係る指向性アンテナにおける補助板7により、アンテナのリアクタンスが微調整することができるか否かを検証した。図6(a)(b)での寸法は図2と同様に設定している。
【0037】
図10(a)(b)の横軸は周波数(MHz)を示す、縦軸は抵抗値(Ω)を示している。図10(a)(b)において、実線はアンテナのリアクタンスの実数部での抵抗値、一点鎖線はアンテナのリアクタンスの虚数部での抵抗値を示している。
図10(a)に示す様に、図1に示す指向性アンテナでは、例えば470MHzにおける実数部での抵抗値が約18Ωであったが、図6に示す様に補助板7を付加することにより、470MHzにおける実数部での抵抗値が約20Ωに改善されており、アンテナ自体のリアクタンスの調整が可能であることが確認できた。
また、図6に示す指向性アンテナは、補助板7を付加したが、地上デジタルTV放送を受信した際にVSWRは図5(a)と同様の特性を示した。
また、図6(a)(b),図7(a)(b),図8(a)(b)及び図10に示す本実施形態3では、補助板7の寸法を変更することにより、広帯域化するのに加えて、アンテナ自体のリアクタンスの調整を可能であることが確認できた。
【0038】
以上の様に本発明の実施形態1によれば、導体部材にH型形状のスリットを形成し、かつその周囲にループ状のスリットを配置する構造であり、アンテナ構造を簡素化することができる。
さらに、H型形状のスリットとループ状のスリットとを同一の導体部材上に形成するため、アンテナの構造が平面構造となるため、アンテナの高さ方向の寸法を極限まで低くすることができ、アンテナの小型化・薄型化を図ることができる。
さらに、前記H型形状スリットの周囲にループ状スリットを配置することにより、受信周波数帯域に対応した広帯域特性を付与することができる。
【0039】
さらに、本発明の実施形態2によれば、導体部材にH型形状スリットを形成し、前記導体部材の少なくとも一部に切り欠きを形成した構造であり、アンテナ構造を簡素化することができる。
さらに、H型形状スリットと前記切り欠きとを同一の導体部材上に形成するため、アンテナの構造が平面構造となるため、アンテナの高さ方向の寸法を極限まで低くすることができ、アンテナの小型化・薄型化を図ることができる。
さらに、前記導体部材の少なくとも一部に切り欠きを設けることにより、H型形状のスリットの周囲にループ状のスリットを配置する場合と同様に、受信周波数帯域に対応した広帯域特性を付与することができる。
【0040】
さらに、本発明の実施形態3によれば、導体部材にH型形状スリットを形成し、前記導体部材の一部に補助板を形成した構造であり、アンテナ構造を簡素化することができる。
さらに、H型形状のスリットと前記補助板とを同一の導体部材に形成するため、アンテナの構造が平面構造となるため、アンテナの高さ方向の寸法を極限まで低くすることができ、アンテナの小型化・薄型化を図ることができる。
さらに、前記導体部材の少なくとも一部に補助板を形成することにより、アンテナ自体のリアクタンスを調整することができる。
【0041】
また、反射板を設ける場合には、中心周波数の波長λの1/4程度の距離を保つ必要があるが、本発明の実施形態では、反射板にスリットを形成することにより、1/4λ以下での距離をもって反射板を導体部材に接近させて配置することができる。したがって、反射板を設けるに場合でも、アンテナの高さ方向の寸法を低くすることができ、アンテナの小型化・薄型化を図ることができる。
【0042】
次に、図11及び図12を用いて、本発明の実施形態における直接給電構造について説明する。図11(a)において、給電基板に関係する部品を実線で示し、指向性アンテナに関する部品を一点鎖線で示している。
【0043】
本発明の実施形態に係る指向性アンテナを収納するケースには、アンテナを支える複数の支柱8がケースと一体に樹脂成形されており、これらの支柱8を使って導体部材3を支えている。図11は、指向性アンテナの導体部材3を支える支柱8のうちの1本の支柱8を使って給電構造を構築した場合を示している。
前記支柱8の頂部8aは平坦になっており、その平坦な頂部8aのネジ孔9に図示しないビスをねじ込むことにより、給電基板10と導体部材3とをとも締めによって前記支柱8の頂部8aに固定している。
さらに、前記導体部材3に沿わせる反射板5は、前記支柱8にスリット5aを通してケースの内底に固定し、前記複数の支柱8により、前記導体部材3と前記反射板5との間の距離を設計値に保持している。この設計値の距離は、上述した様に、1/4λ以下であって前記反射板5が前記導体部材3に接触しない距離以上の範囲の距離を意味している。
従って、図11に示す様に、前記反射板5は、そのスリット5aが複数の支柱8に通した状態で設置されるため、水平面での動きが支柱8に規制されることとなり、導体部材3に対する反射板3の位置決めが固定され、反射特性に影響を与えることがない。
さらに、複数の支柱8により、導体部材3と反射板5との間の距離を設計値に保持することができ、アンテナの特性を安定に維持することができる。
【0044】
次に、図11及び図12に基づいて給電基板10の構造について説明する。本発明の実施形態に係る指向性アンテナは、直接給電により動作するものである。同軸ケーブルを直接導体部材3に接続することも考えられるが、製品化に当たっては給電部4での整合を図る必要があるからである。
【0045】
本実施形態では図11及び図12に示す給電基板10を用いることにより直接給電を行っている。すなわち、図11及び図12(a)(b)(c)に示す様に、給電基板10は、矩形状の絶縁基板11と、前記絶縁基板11の表面と裏面とに成型した銅箔12a,12b、12c,12dと、表裏面の銅箔12a,12bと12c,12dとを電気的に接続する多数のスルーホール13とを有している。
【0046】
図12(a)に示す様に、前記絶縁基板11の表面には、給電部4が設けられた前記導体部材3の形状に合わせて銅箔12a,12bが形成されている。すなわち、前記導電部材3の基本スリット1a,1bが形成された前記導体部材3の形状に合わせて銅箔12a,12bを左右対称に形成し、左右対称な一方の銅箔12aが給電面をなし、他方の銅箔12bがグランド面をなしている。また、左右対称の銅箔12a,12bには、前記支柱8のネジ孔9に一致させてネジ孔9aがそれぞれ開口されている。
【0047】
図12(b)に示す様に、前記絶縁基板11の裏面には、前記給電面用の銅箔12aとグランド面用の銅箔12bとに対応させて、給電面用の銅箔12cと、グランド面用の銅箔12dとが形成されている。さらに、前記給電面用の銅箔12cとグランド面用の銅箔12dとの間には、給電部4での整合を図る整合構造14が設けてある。
前記整合構造14を具体的に説明すると、前記給電面用の銅箔12cとグランド面用の銅箔12dとの間には、中間接続用の銅箔12e,12fを形成している。そして、前記銅箔12eと前記給電用銅箔12cとの間には図3(b)に示すコンデンサC2を接続し、前記銅箔12eと前記グランド用銅箔12dとの間には図3(b)に示すインダクタIDを接続し、前記銅箔12eと前記銅箔12fとの間には図3(b)に示すコンデンサC1を接続している。これにより、整合回路14の一例である図3(b)に示すマッチング回路が構築される。なお、前記整合構造14としては、上述した様に図3(b)に示すマッチング回路以外のものを用いても良いものである。
さらに、前記銅箔12fには同軸ケーブル15の給電芯線15aを半田付けし、前記銅箔12dには前記同軸ケーブル15の編組線15bを半田付けしている。
【0048】
また、前記整合構造14及び前記同軸ケーブル15は、給電基板10の盤面から立ち上がって取り付けられるものであり、これらはアンテナの高さを低くする上で支障となるものである。
そこで、本実施形態では、前記支柱8の頂部8aに、前記整合構造14及び前記同軸ケーブル15の先端部を収納するに十分な大きさの凹部8bを形成し、前記支柱の凹部8b内に前記整合構造14及び前記同軸ケーブル15の先端部を収納している。
【0049】
したがって、本実施形態によれば、前記整合構造14及び前記同軸ケーブル15の先端部の高さを前記支柱8の凹部8bにより吸収することができ、アンテナの高さ方向での寸法を低くすることができる。
【0050】
本実施形態において、前記給電基板10を使って指向性アンテナの導体部材3と同軸ケーブル15とを接続する場合について説明する。
前記給電基板10の裏面に設けた給電構造14及び同軸ケーブル15の先端部を前記支柱8の凹部8b内に収納し、前記給電基板10の孔9aを前記支柱8の頂部8aのネジ孔9に一致させる。
次に、前記導体部材3の基本スリット1a,1bを前記給電基板10の左右対称な銅箔12a、12b間に形成されたテーパ状の切り抜きに一致させ、前記導体部材3の基本スリット1a,1bに隣接した領域を前記給電基板10の左右対称な銅箔12a、12bに接触させる。
次に、前記給電基板10のネジ孔9aから前記支柱8のネジ孔9にビスを通してネジ止めすることにより、前記導体部材3と前記給電基板10とをとも締めして、前記導体部材3を前記給電基板10に圧着してこれらを前記支柱8に固定する。
【0051】
本実施形態によれば、給電基板10を矩形状に形成することにより、その表面に設けた銅箔12a,12bと導体部材3との接触面積が大きくなり、少ない本数のネジで締め付けても給電基板10と導体部材3とを確実に接続することができる。このことは部品点数を少なくすることができ、組立工数を単純化することができる。
【0052】
さらに、前記支柱8の凹部8b内に前記整合構造14及び前記同軸ケーブル15の先端部を収納して、これらが給電基板10及び支柱8から外部に飛び出して露出することはないため、前記整合構造14及び前記同軸ケーブル15の先端部が外力によって損傷することを回避することができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明によれば、電波の送受信を行う指向性アンテナであって、特にUHF帯の電波を受信するのに最適な指向性アンテナの提供に貢献するものである。
【符号の説明】
【0054】
1 H型形状のスリット
1a,1b 基本スリット
1c,1d 延長スリット
2 ループ状のスリット
3 導体部材
4 給電部
5 反射板
6 切り欠き
7 補助板
8 支柱
10 給電板
15 同軸ケーブル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基本スリットと前記基本スリットの全長を延長した延長スリットとからなるH型形状のスリットと、
前記H型形状のスリットの周囲に配置したループ状のスリットとを有し、
前記基本スリットと前記延長スリットとを同一の導体部材に形成したことを特徴とする指向性アンテナ。
【請求項2】
基本スリットと前記基本スリットの全長を延長した延長スリットとからなるH型形状のスリットを導体部材に形成し、
前記導体部材の少なくとも一部に切り欠きを設けたことを特徴とする指向性アンテナ。
【請求項3】
基本スリットと前記基本スリットの全長を延長した延長スリットとからなるH型形状のスリットを導体部材に形成し、
前記導体部材の一部に補助板を設けたことを特徴とする指向性アンテナ。
【請求項4】
前記導体部材に沿う反射板を有する請求項1、2又は3のいずれか一項に記載の指向性アンテナ。
【請求項5】
前記導体部材の基本スリットの給電部に面接触する給電面とグランド面を設けた給電基板を有し、
前記給電基板の給電面とグランド面とに同軸ケーブルが半田付けされており、
前記導体部材を前記給電基板に圧着してこれらを固定した請求項1,2,3又は4のいずれか一項に記載の指向性アンテナ。
【請求項1】
基本スリットと前記基本スリットの全長を延長した延長スリットとからなるH型形状のスリットと、
前記H型形状のスリットの周囲に配置したループ状のスリットとを有し、
前記基本スリットと前記延長スリットとを同一の導体部材に形成したことを特徴とする指向性アンテナ。
【請求項2】
基本スリットと前記基本スリットの全長を延長した延長スリットとからなるH型形状のスリットを導体部材に形成し、
前記導体部材の少なくとも一部に切り欠きを設けたことを特徴とする指向性アンテナ。
【請求項3】
基本スリットと前記基本スリットの全長を延長した延長スリットとからなるH型形状のスリットを導体部材に形成し、
前記導体部材の一部に補助板を設けたことを特徴とする指向性アンテナ。
【請求項4】
前記導体部材に沿う反射板を有する請求項1、2又は3のいずれか一項に記載の指向性アンテナ。
【請求項5】
前記導体部材の基本スリットの給電部に面接触する給電面とグランド面を設けた給電基板を有し、
前記給電基板の給電面とグランド面とに同軸ケーブルが半田付けされており、
前記導体部材を前記給電基板に圧着してこれらを固定した請求項1,2,3又は4のいずれか一項に記載の指向性アンテナ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−217190(P2011−217190A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84365(P2010−84365)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(591250606)三省電機株式会社 (16)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(591250606)三省電機株式会社 (16)
【Fターム(参考)】
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