説明

指示位置検出装置

【課題】使用環境の制約が少なく、簡易な構成の指示位置検出装置により、安価に精度良く入力操作を検出する。
【解決手段】本発明は、入力面上での操作者による指示位置を、距離センサを用いた検出装置で検出する。指示位置は、光飛行型距離センサが算出した、検出装置から認識対象物までの距離値と、各距離値を得た素子位置とにより特定する。光飛行型距離センサには、電荷振分け型の撮像素子を用い、高周波成分のみ抽出し、距離値を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指示位置検出技術に関し、特に、光飛行時間型距離センサ(以下、距離センサと呼ぶ。)を指示位置検出に用い、操作者等の認識対象物による指示位置を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置と位置入力装置とを組み合わせ、操作者が表示装置に表示された画面に触れることにより指示を入力するタッチパネル等の入力装置がある。タッチパネルでは、例えば、操作者の指などが触れた位置を指示位置としてセンサなどの検出装置で検出して操作者による指示を解析する。用いられるセンサには、例えば、静電式、感圧式、赤外線センサ、COMSカメラを用いたものがある。
【0003】
対象物を検出するセンサには、対象物のセンサからの距離を検出する距離センサがある。距離センサでは、光源から照射した変調光と、当該変調光の対象物による反射光との位相差を用いて、受光素子毎に対象物の距離を算出する。位相差は、各受光素子で受光した反射光を光量に応じた電荷量に変換し、この電荷量に所定の演算を施すことにより算出される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−241435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
タッチパネルのセンサに静電式や感圧式のセンサを用いて入力面上の操作者による指示位置を検出する場合、表示装置上に設けられる入力面と同サイズのセンサが必要となり、高コストである。また、表示装置が液晶ディスプレイの場合、入力面上に配置されるセンサにより光量が減り、これを補うために消費電力が増大する。また、検出装置に赤外線センサやCOMSカメラを用いる場合、外乱光の影響を受けやすい。従って、使用環境が、光の変化量が少なく、照度が高くない場所に制限される。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、使用環境の制約が少なく、簡易な構成の指示位置検出装置により、安価に精度良く、操作者等の認識対象物による指示位置を検出する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、所定の平面上での操作者による指示位置を、距離センサを用いた検出装置で検出する。指示位置は、距離センサが算出した、検出装置から認識対象物までの距離値と、各距離値を得た素子位置とにより特定する。距離センサには、電荷振分け型の撮像素子を用い、高周波成分のみ抽出し、距離値を算出する。
【0008】
具体的には、所定の平面上の認識対象物による指示位置を検出する指示位置検出装置であって、前記平面上部の検出空間に変調光を照射する光源と、前記光源から照射され前記検出空間内の物体で反射した反射光を受光して電荷に変換する光電変換素子、前記光電変換素子毎に複数設けられ、前記変換された電荷を蓄積する電荷蓄積手段、および、前記光源の変調に同期して、前記変換された電荷を前記複数の電荷蓄積手段に振り分ける振分手段を備える撮像素子と、所定の時間毎に、前記複数の電荷蓄積部に蓄積された電荷から前記検出空間内の物体までの距離値を前記光電変換素子毎に算出する距離値算出手段と、前記距離画像を用い、前記指示位置を算出する位置算出手段と、を備えることを特徴とする指示位置検出装置を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、使用環境の制約が少なく、簡易な構成の指示位置検出装置により、安価に精度良く、操作者等の認識対象物による指示位置を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第一の実施形態の指示位置検出装置の機能ブロック図である。
【図2】(a)は、第一の実施形態の指示位置検出装置の光源と撮像素子との配置を説明するための説明図、(b)は、指示位置検出装置と仮想平面との関係を説明するための説明図である。
【図3】第一の実施形態の指示位置検出装置における抽出した電荷から距離値を算出する原理を説明するための図である。
【図4】(a)および(b)は、第一の実施形態の指示位置検出装置の配置位置、および指示位置算出処理を説明するための説明図である。
【図5】(a)は、第二の実施形態の指示位置検出装置の光源と撮像素子との配置を説明するための説明図、(b)は、第二の実施形態の撮像素子の光電変換素子の配置を説明するための説明図、(c)は指示位置検出装置と仮想平面との関係を説明するための説明図である。
【図6】(a)および(b)は、第二の実施形態の指示位置検出装置の配置位置、および指示位置算出処理を説明するための説明図である。
【図7】(a)は、本実施形態の指示位置検出部による認識対象物の検出時、(b)は、非認識対象物の検出時の様子をそれぞれ説明するための説明図である。
【図8】第三の実施形態の指示位置検出装置の機能ブロック図である。
【図9】(a)は、第三の実施形態の指示位置検出装置の光源と撮像素子との配置を説明するための説明図、(b)は、第三の実施形態の指示位置算出処理を説明するための説明図である。
【図10】(a)および(b)は、本発明の実施形態の指示位置検出装置の使用例を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<<第一の実施形態>>
以下、本発明を適用する実施形態について説明する。以下、本発明の実施形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0012】
本実施形態は、距離センサを用い、タッチパネル等の入力面上の、操作者の指等の認識対象物による指示位置を検出する。この指示位置を検出する指示位置検出装置に用いる距離センサは、撮像素子を構成する光電変換素子が、一列にライン状に配列されたものとする。図1は、これを実現する本実施形態の指示位置検出装置100のブロック図である。また、図2は、指示位置検出装置100の構成を説明するための説明図である。
【0013】
本実施形態の指示位置検出装置100は、図1に示すように、光源110と、撮像素子120と、距離値算出部130と、制御部140と、位置算出部150と、各部に電力を供給する電源(不図示)を備える。
【0014】
光源110は、検出空間に変調した光(例えば、正弦波もしくは矩形波等で高速に変調させた赤外光もしくは可視光;以下、変調光と呼ぶ。)111を照射する。光源110には、LED、レーザ等の高速変調が可能なデバイスが用いられる。
【0015】
図2(a)に示すように、本実施形態の光源110は、撮像素子120の端部に配置される。ただし、光源110の配置位置、個数はこれに限られない。検出空間全体に変調光を照射可能な配置、個数であればよい。
【0016】
撮像素子120は、光源110から照射された変調光111が検出空間内の物体400で反射された反射光を含む入射光112を受光し、電荷に変換する。これを実現するため、撮像素子120は、入射光112を受光し、受光量を電荷量に変換する複数の光電変換素子121と、光電変換素子121により得られた電荷量を蓄積する電荷蓄積部122と、電荷を各電荷蓄積部122に振り分ける振分部123と、を備える。
【0017】
後述の距離値算出部130では、この光電変換素子121毎に距離値を算出する。例えば、算出した距離値を画素値とする距離画像を生成する場合、各光電変換素子121が画素に対応する。図1では、2つの光電変換素子121を備える場合を例示しているが、光電変換素子121数はこれに限られない。なお、本実施形態では、図2(a)に示すように、各光電変換素子121は、一列に規則的に配置される。ここで、図2(a)に示す面が、光源110から変調光111を照射し、撮像素子120で入射光を受光する発光/受光面101である。
【0018】
また、電荷蓄積部122は、光電変換素子121毎に、少なくとも2つ以上設けられる。距離センサでは、距離値を算出する際に用いる変調光111と入射光112との位相差は、電荷蓄積部122に蓄積された電荷を用いて算出する。この位相差を算出するためには、少なくとも2つ以上の位相情報(電荷蓄積部に蓄積された電荷)が必要だからである。なお、本実施形態では、図1に示すように、1つの光電変換素子121毎に4つの電荷蓄積部122が設けられる場合を例にあげて説明する。
【0019】
なお、光源110と撮像素子120とは制御部140により同期制御される。光源110は、制御部140が出力する同期信号に従って、検出空間に変調光111を照射する。また、撮像素子120では、この同期信号に従って、光電変換素子121が、物体400により反射された反射光を含む入射光112を電荷量に変換する。そして、振分部123が、得られた電荷量を、この同期信号に従って、各光電変換素子121に対応づけて設けられる4つの電荷蓄積部122それぞれに振り分ける。ここでは、変調の1周期を4等分した期間毎に、これらの4つの電荷蓄積部122に振り分ける。なお、電荷蓄積部122には、電荷量そのものを蓄積してもよいし、この電荷量をAD変換後のデータを蓄積してもよい。
【0020】
距離値算出部130は、撮像素子120が所定期間電荷を蓄積する毎に、蓄積した電荷から、光電変換素子121毎に、距離値を算出する。距離値は、光電変換素子121毎に、各電荷蓄積部122に振り分けられた電荷量に所定の演算を施し、変調光111と入射光112との位相差から算出する。算出した距離値は、各光電変換素子121に対応づけて保持される。
【0021】
また、本実施形態では、距離値算出部130は、距離値を算出する際、各電荷蓄積部122に振り分けられた電荷に対して高速差分を取ることで、低周波成分を除去し、高周波成分のみ取り出す。ここでは、例えば、変調光111の周波数に同期して極性を反転させながら電荷蓄積部122から電荷を抽出して差分を計算する。これにより、光源110から照射される変調光111に非同期の背景光等の成分を除去し、光源110から照射した変調光111に由来する物体400からの反射光112を信号成分として有効に抽出することができ、高感度かつ低雑音化を図ることができる。
【0022】
図3は、抽出した電荷から距離画像を生成する原理を説明するための図である。光源110から出射される変調光111の強度が本図のような正弦曲線を描くように変化する場合、撮像素子120への入射光112の強度も同様に正弦曲線を描くよう変化する。
【0023】
このとき、変調光111と入射光112とには、光が物体400まで往復する飛行時間による位相の遅延(位相差φ)が生じる。光の速度cは既知であるため、この位相差φと変調周波数fとを用い、物体400までの距離値Dは、以下の式(1)で求めることができる。
【数1】

【0024】
ここで、変調光111の1周期を4等分した各期間をT1、T2、T3、T4とし、それぞれの期間に蓄積される電荷量をC1、C2、C3、C4とすると、変調光111と入射光112との位相差φは、以下の式(2)で表される。
【数2】

【0025】
なお、1周期を4等分した各期間T1、T2、T3、T4は、例えば、0度から90度の間、90度から180度の間、180度から270度の間、270度から0度の間とする。
【0026】
また、光源110の変調周波数は数十MHZである。従って、変調の1周期は数十ns程度である。このため、距離値を算出するためには、数百〜数十万周期の電荷蓄積時間を要する。本実施形態の距離値算出部130は、この電荷蓄積時間Δt間隔で電荷蓄積部122に蓄積された各電荷量C1、C2、C3、C4を用い、画素毎に、式(2)に従って位相差φを求め、式(1)に従って、物体400までの距離値Dを求める。
【0027】
なお、各電荷量C1、C2、C3、C4を用い、以下の式(3)に従って、照射光強度値Bを算出し、これを画素値とする照射光強度画像を生成することができる。
【数3】

【0028】
また、一般の画像の画素値として用いられるのは、以下の式(4)に従って、4つの電荷蓄積部122に振り分けられた電荷の平均値Aである。
【数4】

【0029】
位置算出部150は、距離値算出部130が距離値を算出する毎に、距離値算出部130が算出した距離値から、認識対象物の指示位置を特定する情報を算出する。算出された指示位置を特定する情報は、外部へ出力される。算出の詳細は具体例を用いて後述する。
【0030】
本実施形態では、指示位置を特定する情報として、予め定めた仮想平面上の、指示位置検出装置100を基準として予め定めた直交座標系(XY座標系)におけるXY座標を算出する。仮想平面500は、図2(b)に示すように、本実施形態の発光/受光面101の法線501方向に平行な面とする。また、仮想平面500上の直交座標系は、光電変換素子121の配列方向をX方向、それに直交する方向をY方向、光電変換素子121のいずれかの端部を原点とする。
【0031】
制御部140は、指示位置検出装置100全体の動作を制御する。本実施形態では、ユーザから処理開始の指示(例えば、電源ON)を受け付けると、光源110から変調光111の照射を開始させ、撮像素子120で入射光(反射光)112を受光させ、電荷として蓄積させる。そして、電荷蓄積時間Δt毎に、蓄積された電荷から、距離値算出部130に距離値を算出させ、距離値が算出される毎に、位置算出部150に認識対象物の指示位置の座標を算出させる。
【0032】
なお、光源110、撮像素子120、距離値算出部130および制御部140により、距離センサを構成する。
【0033】
次に、本実施形態の位置検出装置100の入力面に対する配置と、位置算出部150による認識対象物の指示位置の算出について説明する。ここでは、入力面として、携帯電話等の小型端末の入力面を例にあげて説明する。操作者は、指等により入力面上の所定の領域に触れることにより、指示を行う。従って、ここでは、認識対象物は指であり、指示位置として検出すべきは、指先である。
【0034】
図4は、指示位置が入力される入力面に対する本実施形態の位置検出装置100の配置と、位置算出部150による指示位置算出を説明するための図である。図4(a)は、指示位置検出装置100を、図2(b)の矢印Bの方向から見た図(入力面410を正面から見た図)である。図4(b)は、図2(b)の矢印Aの方向から見た図である。
【0035】
本実施形態の指示位置検出装置100は、仮想平面500が入力面410に略合致するよう配置する。例えば、図4(a)および(b)に示すように、入力面410上の端部に、入力面410に平行に、発光/受光面101が入力面410に略直交するよう配置する。
【0036】
本実施形態では、認識対象物420を操作者の指とし、指示位置430を指先としているため、位置算出部150は、距離値算出部130が算出した光電変換素子121毎の距離値の中で最小の値を選択し、Y座標の値とする。そして、当該距離値を有する光電変換素子121の位置をX座標の値とする。なお、各光電変換素子121の座標系上での位置は、予め保持しておく。
【0037】
なお、本実施形態の位置検出装置100は、CPUとメモリと記憶装置とを備え、予め記憶装置に保持されるプログラムを、CPUがメモリにロードして実行することにより、上記各部の機能を実現する。
【0038】
以上説明したように、本実施形態によれば、入力面上の操作者の指といった認識対象物による指示位置の検出に、検出空間の距離値を算出する距離センサによる指示位置検出装置を用いる。すなわち、指示位置を、距離センサが算出した距離値に基づいて算出し、それを特定する情報を出力する。従って、入力面と同じサイズのセンサを用意する必要がなく、コストを抑えることができる。
【0039】
また、指示位置検出装置で入力面を覆うことがないため、入力面が液晶ディスプレイであっても、指示位置検出装置で液晶の光量を減らすことがない。従って、消費電力が増大することはない。
【0040】
さらに、本実施形態の指示位置入力装置は、差分をとることで、背景光の影響を除去した電荷から距離値を算出する距離センサを用いる。従って、上述のように背景光の影響を受けにくく、使用環境の制約も少ない。
【0041】
従って、本実施形態によれば、使用環境の制約が少なく、簡易な構成で安価に高精度な入力操作検出装置を実現できる。
【0042】
なお、本実施形態では、距離値算出部130が算出した光電変換素子121毎の距離値の中で最小の値と、当該距離値を有する光電変換素子121の位置とを指示位置として算出しているが、指示位置の算出はこれに限られない。予め定められた算出規則に従って、算出する。
【0043】
<<第二の実施形態>>
次に、本発明を適用する第二の実施形態について説明する。第一の実施形態では、撮像素子を構成する光電変換素子がライン状に配置される指示位置検出装置を用いるが、本実施形態では、光電変換素子がアレイ状に配置される指示位置検出装置を用いる。
【0044】
以下、本実施形態について、第一の実施形態と異なる構成に主眼をおいて説明する。本実施形態の位置検出装置200の機能構成は、基本的に図1に示す第一の実施形態の位置検出装置100と同様である。ただし、本実施形態では、光電変換素子121の配列が異なるため、光電変換素子121毎に算出された距離値を用いて指示位置を算出する位置算出部150による位置算出処理が異なる。
【0045】
図5(a)は、本実施形態の位置検出装置200の光源110と光電変換素子121との配置を説明するための説明図である。また、図5(b)は、位置検出装置200の光電変換素子121との配置を説明するために、その一部を拡大した図である。これらの図に示すように、本実施形態では、撮像素子120を構成する複数の光電変換素子121は、第一の実施形態のようにライン状に規則的に配置された光電変換素子行121rが、複数積み重ねられ、全体としてアレイ状に規則的に配置される。図5(a)に示す面が、光源110からの変調光111を照射し、撮像素子120で入射光112を受光する発光/受光面201である。
【0046】
また、本実施形態においても、位置算出部150は、距離値算出部130が距離値を算出する毎に、当該距離値から認識対象物の指示位置を特定する情報を算出し、外部へ出力する。算出にあたり、本実施形態においても、第一の実施形態同様、図5(c)に示す、予め定めた仮想平面500を導入する。そして、この仮想平面500上の直交座標系(XY座標系)のXY座標を、指示位置を特定する情報として算出する。
【0047】
本実施形態では、仮想平面500は、発光/受光面201の法線501方向に平行な面であって、ライン状に配置された光電変換素子121列の一方の端部に接する面とする。また、仮想平面500上の直交座標系は、光電変換素子行121rの配列方向をX方向、それに直交する方向をY方向、光電変換素子121のいずれかの端部を原点とする。本実施形態では、さらに、仮想平面500の法線方向をZ方向とする。
【0048】
次に、本実施形態の位置検出装置200の配置と、位置算出部150による認識対象物の指示位置の算出について説明する。ここでは、第一の実施形態同様、入力面として、小型端末の入力面を例にあげて説明する。第一の実施形態同様、操作者は、指等により入力面上の所定の領域に触れることにより、指示を行う。従って、ここでは、認識対象物は指であり、指示位置として検出すべきは、その最先端である指先である。
【0049】
図6は、指示位置が入力される入力面410に対する本実施形態の位置検出装置200の配置と、位置算出部150による位置算出処理を説明するための図である。図6(a)は、図5(c)の矢印Bの方向から見た図(入力面410を正面から見た図)である。図6(b)は、図5(c)の矢印Aの方向から見た図である。
【0050】
本実施形態の指示位置検出装置200は、第一の実施形態同様、仮想平面500が入力面410に略合致するよう配置する。例えば、本図に示すように、入力面410上の端部に、入力面410に平行に、発光/受光面201が入力面410に略直交するよう配置する。
【0051】
本実施形態では、位置算出部150は、第一の実施形態同様、距離値算出部130が算出した距離値から、認識対象物420の指示位置430を算出する。ただし、本実施形態では、認識対象物420の指示位置候補を特定し、指示位置候補が、認識対象物420によるものであるか否かを判別し、認識対象物420によるものと判別された場合、当該指示位置候補を指示位置430とする。
【0052】
判別は、認識対象物420が全光電変換素子行121rに渡っているか否かで行う。これは、図7(a)に示すように、指等の認識対象物であれば、全光電変換素子行121rに渡って、同程度の距離値が得られる一方、図7(b)に示すように、水滴のような認識対象外のものの場合、入力面410近傍でしか同程度の距離値が得られないという特性を利用し、認識対象外のものを認識することを防ぐためである。
【0053】
位置算出部150は、まず、最も入力面410に近い光電変換素子行121r内で、距離値算出部130が算出した光電変換素子121毎の距離値の中で最小の値を選択する。そして、当該距離値を有する光電変換素子121を特定する。選択した最小の値を候補距離値、当該距離値を有する光電変換素子121を特定する情報を候補位置、両者を指示位置候補とする。なお、最も入力面410に近い光電変換素子行121rは、図5(b)において最下端の最も入力面410に近い光電変換素子行121rである。
【0054】
最下端の光電変換素子行121rで指示位置候補を決定すると、本実施形態の位置算出部150は、他の光電変換素子行121rの近傍領域に連続する距離値が存在するか否かを判別する判別処理を行う。
【0055】
具体的には、位置算出部150は、1つ上の光電変換素子行121rにおいて、候補位置の近傍の光電変換素子121に、候補距離値と同程度の距離値を有する光電変換素子121があるか否かを判別する。近傍の光電変換素子121であるか否か、および、同程度の距離値か否かは、予め定めた閾値を用いて判別する。例えば、候補位置±位置用閾値の範囲を近傍とし、候補距離値±距離値用閾値の範囲であれば同程度と判断する。
【0056】
1つ上の光電変換素子行121rにおいて、候補位置の近傍の光電変換素子121に、候補距離値と同程度の距離値を有する光電変換素子121があると判別した場合は、位置算出部150は、さらに、その上の光電変換素子行121rにおいて、同様の判別を行う。これを、最上段の光電変換素子行121rまで繰り返す。そして、最上段においても、有りと判別した場合は、指示位置候補を認識対象物420によるものと判別し、指示位置430と決定する。
【0057】
一方、無し、と判別した場合は、位置算出部150は、指示位置候補として特定した情報を破棄し、最下端の光電変換素子行121rに戻り、次に小さい距離値と、当該距離値を有する光電変換素子121とを、それぞれ、候補距離値、候補位置とし、また、両者を合わせて指示位置候補として、上記判別処理を繰り返す。
【0058】
位置算出部150による上記位置算出処理により、図7(a)に示すように、指等の場合、連続した値有りの判別結果を得、得られた指示位置候補が指示位置として決定される。一方、図7(b)に示すように、水滴などの場合、連続した値無しとの判別結果を得、指示位置候補は破棄される。
【0059】
本実施形態の光源110による変調光111の照射、撮像素子120における入射光112の受光と電荷の蓄積、距離値算出部130における距離値の算出、制御部140による各部の制御は、基本的に第一の実施形態と同様である。
【0060】
なお、本実施形態の位置検出装置200は、CPUとメモリと記憶装置とを備え、予め記憶装置に保持されるプログラムを、CPUがメモリにロードして実行することにより、上記各部の機能を実現する。
【0061】
以上説明したように、本実施形態の指示位置検出装置200は、第一の実施形態の指示位置検出装置100と同様の構成を有する。従って、第一の実施形態と同様の効果が得られる。
【0062】
さらに、本実施形態によれば、撮像素子120が、第一の実施形態の光電変換素子のようなライン状の光電変換素子行121rが入力面の法線方向に複数積み重ねられた構成を有し、また、位置算出部150は上述の指示位置算出処理を行い、指示位置を算出する。従って、入力面上の水滴といった、認識対象物以外の異物を指示位置として検出するといった誤検出を防ぐことができる。従って、さらに認識対象物の指示検出の精度が高まる。
【0063】
なお、本実施形態では、最小の距離値を示す領域が認識対象物であるか否かを判別するにあたり、全光電変換素子行121rに渡って、近傍領域に連続する値があるか否かで判別しているが、この手法に限られない。例えば、パターン認識を用いてもよい。入力面410に対して指示を行う認識対象物の形状候補をテンプレートとして予め保持しておき、合致する場合、認識対象物と判別し、その中の、最も入力面410に近い光電変換素子行121rで検出した最も小さい距離値と、それに対応する光電変換素子位置と、を指示位置として出力する。
【0064】
<<第三の実施形態>>
次に、本発明を適用する第三の実施形態を説明する。第一および第二の実施形態では、1の撮像素子120により認識対象物を検出し、それに基づき位置算出部150が指示位置を算出する。一方、本実施形態では、2つの撮像素子で認識対象物を検出し、それらに基づき位置算出部が指示位置を算出する。以下、本実施形態の指示位置検出装置について、第二の実施形態と異なる構成に主眼をおいて説明する。
【0065】
図8は、本実施形態の指示位置検出装置300の機能ブロック図である。本図に示すように、本実施形態の指示位置検出装置300は、光源110と、2つの撮像素子120(120aおよび120b)と、それぞれの撮像素子120aおよび120bで蓄積した電荷から距離値を算出する2つの距離値算出部130(130aおよび130b)と、位置算出部160と、制御部140とを備える。
【0066】
撮像素子120aおよび120bそれぞれの構成は、第二の実施形態の撮像素子120と同様である。また、距離値算出部130aおよび130bそれぞれの構成も第二の実施形態の距離値算出部130と同様である。
【0067】
図9(a)は、本実施形態の指示位置検出装置300の光源110と撮像素子120(光電変換素子121)との配置を説明するための説明図である。図9(a)に示す面が、光源110から変調光111を照射し、撮像素子120で入射光を受光する発光/受光面301である。本図に示すように、本実施形態の指示位置検出装置300は、光源110から照射した変調光111を、2つの撮像素子120aおよび120bで受光する。
【0068】
本実施形態の各機能は、基本的に第二の実施形態の同名の機能と同様である。ただし、本実施形態では、位置算出部160は、複数の距離センサからの情報を用いて、認識対象物420の指示位置430を特定する情報(仮想平面500上の座標)を算出する。ここでは、2つの距離値算出部130aおよび130bが算出した、光電変換素子121毎の距離値を用いて、認識対象物420の指示位置430を算出する。
【0069】
本実施形態の位置算出部160による位置算出処理を説明する。位置算出部160は、まず、第二の実施形態と同様の指示位置算出処理を行い、2つの距離値算出部130aおよび130bそれぞれの出力から、それぞれ指示位置を算出する。
【0070】
そして、本実施形態の位置算出部160は、2つの指示位置から、最終的に出力する指示位置を決定する。例えば、2つの指示位置の中で、Y方向の座標値がより小さい方を出力する指示位置として採用する。このように構成することで、一方の撮像素子による検出対象外に認識対象物の指示位置がある場合でも、誤認識することなく認識対象物の指示位置を検出することができる。
【0071】
なお、本実施形態の位置検出装置300は、CPUとメモリと記憶装置とを備え、予め記憶装置に保持されるプログラムを、CPUがメモリにロードして実行することにより、上記各部の機能を実現する。
【0072】
以上説明したように、本実施形態によれば、第二の実施形態同様の効果に加え、より広い範囲で精度よく指示位置を検出することができる。
【0073】
なお、本実施形態では、位置算出部160は、2つの認識対象物の指示位置を認識するよう構成してもよい。例えば、図9(b)に示すように、認識対象物と考えられるものの中で、最も指示位置検出装置300に近い認識対象物421と、次に近い認識対象物422、との2種の指示位置431および432を検出する。それぞれの検出手法は、第二の実施形態の検出手法と同様である。ただし、最も近い認識対象物421の指示位置431検出後、次に近い認識対象物422の指示位置432も同様の手法で検出する。
【0074】
一般に、単数のセンサを用いて認識対象による2つの指示位置を検出する場合、センサの法線方向に両指示位置が重なると、オクルージョンが発生し、認識ができない。しかし、本実施形態の指示検出装置300によれば、指示位置検出装置300自体が、それぞれ異なる位置に配置された2つの受光部として、撮像素子120aおよび撮像素子120bを備える。そして、これらの2つの撮像素子120a、120bによりそれぞれ検出空間の距離を取得し、その結果を用いて指示位置を検出するため、1つの指示検出装置300により、オクルージョンを防ぐことができる。
【0075】
これは、両方の撮像素子において、同時に、2つの指示位置が、オクルージョンが発生する配置となることがないためである。例えば、一方の撮像素子側で、2つの指示位置が、オクルージョンが発生する配置になった場合であっても、他方の撮像素子側では、2つの指示位置は、別個独立したものとして検出できる。
【0076】
なお、ここでは、光電変換素子121がアレイ状に配置された第二の実施形態の撮像素子120をそれぞれ用いる場合を例にあげて説明しているが、これに限られない。ライン状に配置された第一の実施形態の撮像素子120を用いてもよい。また、2つの撮像素子120a、120bは、それぞれ、同じサイズであることが望ましい。
【0077】
上記各実施形態では、各実施形態の位置検出装置100、200、300を、携帯電話等の小型端末の端部において、当該端末の入力面での操作を検出する場合を例にあげて説明しているが、本実施形態の距離センサの使用箇所はこれに限られない。
【0078】
例えば、ホワイトボードや大型モニタを用いた電子黒板等のシステムの入力検出装置として用いてもよい。図10(a)は、上記実施形態のいずれかの位置検出装置を電子黒板の上部に2つ取り付けた例であり、図10(b)は、左右の上部角に設置した例である。位置検出装置100、200、300は、着脱自在に構成し、使用時に取り付けるよう構成してもよいし、取り付け先の装置作製時に予め組み込んでもよい。
【0079】
取り付け対象は、電子黒板に限らず、デジタルサイネージや案内板など、面上で入力指示を行う各種の装置が可能である。これらの装置では、本実施形態の指示位置検出装置が検出した位置情報を受け取り処理に利用する。
【符号の説明】
【0080】
100:指示位置検出装置、101:受光面、110:光源、111:変調光、112:入射光、112:反射光、120:撮像素子、120a:撮像素子、120b:撮像素子121:光電変換素子、122:電荷蓄積部、123:振分部、130:距離値算出部、130a:距離値算出部、130b:距離値算出部140:制御部、150:位置算出部、170:位置算出部、200:位置検出装置、200:指示位置検出装置、201:受光面、300:指示位置検出装置、301:受光面、400:物体、410:入力面、420:認識対象物、421:認識対象物、422:認識対象物、430:指示位置、431:指示位置、432:指示位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の平面上の認識対象物による指示位置を検出する指示位置検出装置であって、
前記平面上部の検出空間に変調光を照射する光源と、
前記光源から照射され前記検出空間内の物体で反射した反射光を受光して電荷に変換する光電変換素子、前記光電変換素子毎に複数設けられ、前記変換された電荷を蓄積する電荷蓄積手段、および、前記光源の変調に同期して、前記変換された電荷を前記複数の電荷蓄積手段に振り分ける振分手段を備える撮像素子と、
所定の時間毎に、前記複数の電荷蓄積部に蓄積された電荷から前記検出空間内の物体までの距離値を前記光電変換素子毎に算出する距離値算出手段と、
前記距離画像を用い、前記平面上の指示位置を算出する位置算出手段と、を備えること
を特徴とする指示位置検出装置。
【請求項2】
請求項1記載の指示位置検出装置であって、
前記光電変換素子は、前記平面に平行な方向に一列に配置され、
前記位置算出手段は、前記距離値算出手段が算出した距離値の中の最小の値と、当該最小の値に対応する光電変換素子の位置とを前記指示位置とすること
を特徴とする指示位置検出装置。
【請求項3】
請求項1記載の指示位置検出装置であって、
前記光電変換素子は、前記平面に平行な方向と、当該平面に直交する方向に格子状に配列され、
前記位置算出手段は、前記平面上の距離値であって、前記認識対象物による距離値の中の最小の値と、当該最小の値に対応する光電変換素子の位置とを前記指示位置とすること
を特徴とする指示位置検出装置。
【請求項4】
請求項1から3いずれか1項記載の指示位置検出装置であって、
前記撮像素子を複数備えるとともに、当該複数の撮像素子各々に前記距離値算出手段を備え、
前記位置算出手段は、前記各距離値算出手段が算出した距離値を用い、前記指示位置を算出すること
を特徴とする指示位置検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−173098(P2012−173098A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34599(P2011−34599)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】