説明

振動アクチュエータ

【課題】小型であり、異音発生の少ない振動アクチュエータを提供する。
【解決手段】駆動信号により励振され、駆動面に振動波を生じる振動体1と、貫通孔部を有し、前記駆動面に加圧接触され、前記振動波により前記貫通孔部を中心として回転駆動される相対運動部材5と、前記振動体と前記相対運動部材とを加圧接触させる加圧部9と、前記貫通孔部の少なくとも一部と嵌合し、前記相対運動部材とともに回転運動することにより、前記相対運動部材の回転運動を取り出す出力取り出し部材14と、前記出力取り出し部材に嵌合し、前記出力取り出し部材の回転中心線方向に移動可能であり、前記出力取り出し部材とともに回転運動するフランジリング部11と、を備えた振動アクチュエータにおいて、前記出力取り出し部材と前記相対運動部材とは、前記出力取り出し部材の回転中心線と前記相対運動部材の回転中心線とが所定の範囲内の角度で、相対的に揺動しながら回転可能なように自由度を有して設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性体に振動を発生させて振動エネルギーを生じさせ、この振動エネルギーを出力として取り出し、駆動力を得る振動アクチュエータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の振動アクチュエータでは、特許文献1に開示されているように、圧電体の伸縮を利用して、弾性体の駆動面(移動子との接触面)に進行性振動波を発生させ、この進行性振動波によって、駆動面には楕円運動が生じ、楕円運動の波頭に加圧接触した移動子が駆動される。このような振動アクチュエータは、低回転でも高トルクを有するといった特徴があるので、駆動装置に搭載した場合に駆動装置のギアを省略することができるため、ギア騒音の静音化や、位置決め精度が向上できるといったような利点がある。
【0003】
しかし、特許文献1の振動アクチュエータは、その振動体、移動体等が中空であり、径が大きく、カメラのレンズ枠等を直接駆動するには適しているが、それ以外の用途等で小型の製品の駆動部に搭載するには大きいため、より小型化、軽量化された振動アクチュエータが提案されてきている。そのような振動アクチュエータでは、外力等により振動体の駆動面と移動体の摺動面とが角度をなし、振動体の駆動面と移動体の摺動面との摺動が安定せず、異音の発生や、駆動効率の低下等が生じるという問題があった。また、異音は、移動体の回転数を上げて高速で回転させた場合等に、より発生しやすくなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平1−17354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、小型であり、異音発生の少ない振動アクチュエータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、請求項1の発明は、駆動信号により励振され、駆動面に振動波を生じる振動体と、貫通孔部を有し、前記駆動面に加圧接触され、前記振動波により前記貫通孔部を中心として回転駆動される相対運動部材と、前記振動体と前記相対運動部材とを加圧接触させる加圧部と、前記貫通孔部の少なくとも一部と嵌合し、前記相対運動部材とともに回転運動することにより、前記相対運動部材の回転運動を取り出す出力取り出し部材と、前記出力取り出し部材に嵌合し、前記出力取り出し部材の回転中心線方向に移動可能であり、前記出力取り出し部材とともに回転運動するフランジリング部と、を備えた振動アクチュエータにおいて、前記出力取り出し部材と前記相対運動部材とは、前記出力取り出し部材の回転中心線と前記相対運動部材の回転中心線とが所定の範囲内の角度で、相対的に揺動しながら回転可能なように自由度を有して設けられていること、を特徴とする振動アクチュエータである。
請求項2の発明は、請求項1に記載の振動アクチュエータにおいて、前記加圧部による加圧方向において、前記出力取り出し部材に対する前記フランジリング部及び前記相対運動部材の位置を規制する規制部材を備えること、を特徴とする振動アクチュエータである。
請求項3の発明は、請求項2に記載の振動アクチュエータにおいて、前記規制部材は、前記出力取り出し部材に設けられた溝部に嵌まる止め輪であること、を特徴とする振動アクチュエータである。
請求項4の発明は、請求項2又は請求項3に記載の振動アクチュエータにおいて、前記フランジリング部と前記相対運動部材との間に設けられ、前記相対運動部材の回転中心線方向の振動を吸収する緩衝部材を備えること、を特徴とする振動アクチュエータである。
請求項5の発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の振動アクチュエータにおいて、前記振動体は、1つのベアリングを介して前記出力取り出し部材に回転可能に取り付けられていること、を特徴とする振動アクチュエータである。
請求項6の発明は、請求項5に記載の振動アクチュエータにおいて、前記加圧部による加圧方向において、前記相対移動部材と前記ベアリングとの間に前記振動体が配置されていること、を特徴とする振動アクチュエータである。
請求項7の発明は、請求項1から請求項6のいずれかに記載の振動アクチュエータにおいて、前記加圧部による加圧方向において、前記相対運動部材と前記加圧部との間に前記振動体が配置されていること、を特徴とする振動アクチュエータである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、出力取り出し部材と相対運動部材とは、出力取り出し部材の回転中心線と相対運動部材回転中心線とが所定の範囲内の角度で、相対的に揺動しながら回転可能なように自由度を有して設けられている。従って、出力取り出し部材にその回転中心線方向以外の外力が加わり、出力取り出し部材の回転中心線が相対運動部材と角度をなす場合にも、相対運動部材の摺動面は、振動体との駆動面と角度なすことなく安定して摺動するので、起動性や駆動効率が向上し、異音の発生を低減できる。また、振動体が、組立ばらつきや寸法不良等の理由により、出力取出し部材に対して垂直に固定されていない場合や、温度変化により振動体の駆動面が傾いた場合等にも、振動体の駆動面と相対運動部材との摺動面が安定して摺動し、起動性や駆動効率のよい、異音の発生が低減できる等々の効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明による振動アクチュエータの実施例1を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明による振動アクチュエータの比較例を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明による振動アクチュエータの実施例2を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、小型であり、異音発生が小さい振動アクチュエータを提供するという目的を、出力軸とロータとを、出力軸の回転中心線とロータの回転中心線とが所定の範囲内の角度をなす場合にも、相対的に揺動しながら、ともに回転可能なように自由度を有して設けることにより実現した。
【0010】
(実施例1)
以下、図面等を参照して、本発明の実施の形態について、さらに詳しく説明する。
図1は、本発明による振動アクチュエータの実施例1を模式的に示す断面図である。
実施例1の振動アクチュエータ100は、振動体1、ロータ5等を有し、振動体1側を固定とし、ロータ5側を回転駆動する形態となっている。
【0011】
振動体1は、弾性体2と、弾性体2に接合された圧電体3とを有するステータであり、圧電体3の弾性体2側とは反対側の面には、圧電体3を励振する駆動信号を供給するフレキシブルプリント基板4が接続されている。
振動体1は、圧電体3の励振により進行性振動波(以下、「進行波」とする)が発生する。一例として、1周あたり9波の進行波で説明する。
【0012】
弾性体2は、共振先鋭度の大きい金属材料からなり、その形状は、略円環形状である。弾性体2は、圧電体3が接合される面の反対側の面に、溝を切った櫛歯部12aが形成されており、この先端面が駆動面となり、ロータ5に加圧接触される。櫛歯部12aを設ける理由は、進行波の中立面をできる限り圧電体3側に近づけ、駆動面の進行波の振幅を増幅させるためである。
また、弾性体2は、その内周側に弾性体フランジ部2bが形成され、この弾性体フランジ部2bでステータ取付台6に取り付けられている。ステータ取付台6には、ベアリング7を介して、後述する出力軸13が回転可能に取り付けられている。
【0013】
圧電体3は、電気エネルギーを機械エネルギーに変換する電気機械変換素子であり、例えば、電歪素子や圧電素子等が用いられる。この圧電体3は、弾性体2の周方向に沿って2つの相(A相、B相)の電気信号が入力される範囲があり、各相に対応する範囲においては、1/2波長毎に分極が交互になった要素が並べられており、A相とB相との間には、1/4波長分間隔が空くようにしてある。
フレキシブルプリント基板4は、その配線が圧電体3の各相の電極に接続されており、このフレキシブルプリント基板4に外部から供給された駆動信号により、圧電体3は伸縮し、弾性体2を励振する。
【0014】
ロータ5は、例えば、アルミニウム等の軽金属により形成され、振動体1と加圧接触することにより、櫛歯部12aの先端面である弾性体2の駆動面に生じた進行波による楕円運動により回転駆動される相対運動部材である。
ロータ5は、回転中心線を中心軸として形成される回転体であり、その中心には略円筒形状の貫通孔部5aが形成されている。この貫通孔部5aは、後述する出力軸13と嵌合し、その径は出力軸13の径に対して公差分だけ大きい。
【0015】
出力軸13は、樹脂により形成された略円筒形状の部材であり、ロータ5の貫通孔部5aに嵌合し、ロータ5とともに回転運動することにより、ロータ5の回転運動を取り出す出力取り出し部材である。出力軸13は、ロータ5の貫通孔部5aと嵌合する端部の少なくとも一部にはDカットが施され、他方の端部は、不図示のギア等に接合され、ギアは被駆動部材に出力を伝える。
フランジリング11は、出力軸13に嵌合し、出力軸13の回転中心線方向に移動可能であり、出力軸13とともに回転する部材である。フランジリング11とロータ5との間には、緩衝部材10が設けられている。この緩衝部材10は、例えば、ゴム等により形成された略円環形状の部材であり、出力軸13に嵌合し、ロータ5の回転中心線方向の振動を吸収する。
Eリング12は、出力軸13の端部に設けられた溝部13aに嵌められ、後述する加圧部9の加圧方向において、出力軸13に対するフランジリング11及びロータ5の位置を規制する規制部材である。
【0016】
加圧部9は、振動体1とロータ5とを加圧接触させる機構であり、出力軸13に設けられている。この加圧部9は、加圧力を発生するバネ9aと、ベアリング7に接して配置され、バネ9aの一端を押さえる押さえリング9bと、バネ9aの他端を押さえる押さえリング9cと、出力軸13に形成された溝に挿入され、押さえリング9cの位置を規制するEリング9dとを備えている。
この加圧部9は、出力軸13の回転中心線方向に振動体1とロータ5とを加圧する。
【0017】
ここで、比較例の振動アクチュエータを用いて、本発明による振動アクチュエータの効果を説明する。
図2は、本発明による振動アクチュエータの比較例を模式的に示す断面図である。
比較例1の振動アクチュエータ300は、図1に示した実施例1の振動アクチュエータ100と出力軸8の形状等の点が相違する。よって、図1に示した実施例1の振動アクチュエータ100と略同様な機能を果たす部分には、同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
【0018】
出力軸8は、略円筒形状をしており、ロータ5の貫通孔部5aに嵌合し、ロータ5とともに回転運動し、ロータ5の回転運動を出力として取り出す出力取り出し部材である。出力軸8の貫通孔部5aと嵌合する側の端部には、略円盤形状のフランジ部8aが形成され、他方の端部には、不図示の被駆動部材に出力を伝達する不図示のギア等が接合されている。
このフランジ部8aとロータ5との間には、ロータ5の回転中心線方向の振動を吸収する緩衝部材10が設けられている。
【0019】
このような振動アクチュエータは、出力軸の回転中心線が、ロータの回転中心線と一致しており、ステータの駆動面に対して垂直な状態で駆動されると、ロータの駆動面と弾性体の駆動面との摺動が安定し、異音の発生がなく、起動性や駆動効率もよく、理想的な振動アクチュエータとなる。
【0020】
しかし、図2に示すような比較例の振動アクチュエータ300では、出力軸8のフランジ部8aが緩衝部材10等を介してロータ5の回転中心線方向の動きを規制しており、かつ、出力軸8の貫通孔部5aとの嵌合部分が、ロータ5の回転運動の径方向の動きを規制している。
そのため、例えば、出力軸8は、その回転中心線方向以外の方向からの外力、例えば、図中の矢印Fに示すような外力を受けると、出力軸8の回転中心線が傾いてロータ5の回転中心線と角度をなし、弾性体2の駆動面に対して垂直ではなくなる。ロータ5は、偏荷重を受けて、この出力軸8の傾きに追従して傾き、その摺動面が弾性体2の駆動面に対して角度をなすため、弾性体2の駆動面とロータ5の摺動面とが安定して摺動しない。
このような状態で比較例の振動アクチュエータ300を駆動すると、弾性体2の進行波が十分にロータ5に伝わらず、比較例の振動アクチュエータ300の駆動効率が下がるという問題や、異音が発生するという問題があった。
【0021】
また、弾性体2の駆動面が、製造の際の組立ばらつきや寸法不良等の理由により、出力軸8の回転中心線に対して垂直に固定されていない場合や、温度変化等により弾性体2の駆動面が傾いた場合等に、ロータ5の摺動面は弾性体2の駆動面に追従して傾き、ロータ5の傾きに追従して出力軸8の回転中心線が傾く。そのため、振動アクチュエータ300は、異音が発生したり、起動性や駆動効率が低下したりするという問題があった。
【0022】
しかし、実施例1の振動アクチュエータ100は、出力軸13とフランジリング11とが別部材であるので、例えば、出力軸13にその回転中心線方向以外の外力がかかって出力軸13が傾いた場合にも、フランジリング11は、出力軸13の傾きに追従して傾き難く、ロータ5を傾けることがない。
【0023】
従って、このような出力軸13、フランジリング11等を設けることにより、ロータ5と出力軸13とは、ともに回転しながら、相対的に揺動可能となり、ロータ5の摺動面と弾性体2の駆動面との摺動を安定させることができ、小型であり、ロータ5を駆動する速度領域に関わらず異音の発生がなく、起動性や駆動効率のよい振動アクチュエータを提供することができる。
また、実施例1の振動アクチュエータ100は、弾性体2が組立ばらつきや寸法不良等によって、出力軸13に対して垂直に固定されていない場合や、温度変化等により弾性体2の駆動面が傾く場合等に対しても、同様の効果が得られる。
【0024】
(実施例2)
図3は、本発明による振動アクチュエータの実施例2を模式的に示す断面図である。
実施例2の振動アクチュエータ200は、出力軸14の形状が、実施例1の振動アクチュエータ100と相違する。よって、図1に示した実施例1の振動アクチュエータ100と略同様な機能を果たす部分には、同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
【0025】
出力軸14は、樹脂により形成された略円筒形状の部材であり、一方の端部は、フランジ部14a、嵌合部14b、逃げ部14cを有し、他方の端部は、不図示のギアに接合されている。
フランジ部14aは、出力軸14の端部に設けられ、略円盤状であり、加圧部9の加圧方向において、出力軸14に対するロータ5の位置を規制している。このフランジ部14aとロータ5との間には、緩衝部材10が設けられている。
嵌合部14bは、フランジ部14aと後述する逃げ部14cとの間に設けられ、ロータ5の貫通孔部5aの内壁の一部と嵌合する部分である。
逃げ部14cは、貫通孔部5aの内壁と接しないようにその外形を十分小さく設けられた部分である。
【0026】
出力軸14とロータ5とは、図3に示すように、嵌合部14bと貫通孔部5aのフランジ部14a側の端部の内壁とでのみ嵌合しており、嵌合部14bよりベアリング側には逃げ部14cが設けられており、貫通孔部5aの内壁とは接していない。
【0027】
このような出力軸14とすることにより、嵌合部14bがロータ5の回転運動の径方向のロータ5の動きを規制する点と、フランジ部14aがロータ5の回転中心線方向のロータ5の動きを規制する点とが近くなるので、出力軸14とロータ5とは、ともに回転して駆動力を伝達しながら、より自由度を持つことができる。
また、出力軸14は、嵌合部14b、逃げ部14cを有しているので、出力軸14がロータ5に対して傾く等、ロータ5の回転中心線が出力軸14の回転中心線と角度をなした場合にも、嵌合部14b以外の部分がロータ5の貫通孔部5aの内壁に当接することがない。従って、ロータ5は、その駆動面を弾性体2の駆動面に対して角度をなすことなく、安定して摺動できる。
【0028】
よって、本実施例によれば、実施例1の振動アクチュエータ200と略同様に、ロータ5と出力軸14とがともに回転しながら相対的に揺動可能であり、起動性や駆動効率のよい、異音の発生しない振動アクチュエータを提供することができる。
また、実施例2の振動アクチュエータ200は、実施例1の振動アクチュエータ100に比べて部品数が少ないので、製造工程を簡素化でき、生産コストを抑えることができる。
以上、上述の実施例によれば、以下の効果を奏することができる。
【0029】
実施例1及び2によれば、出力軸13とロータ5とは、出力軸13の回転中心線とロータ5回転中心線とが所定の範囲内の角度で、相対的に揺動しながら回転可能なように自由度を有して設けられている。従って、出力軸13にその回転中心線方向以外の外力が加わり、出力軸13の回転中心線がロータ5と角度をなす場合にも、ロータ5の摺動面は、振動体1との駆動面と角度なすことなく安定して摺動するので、起動性や駆動効率が向上し、異音の発生を低減できる。また、振動体1が、組立ばらつきや寸法不良等の理由により、出力軸13に対して垂直に固定されていない場合や、温度変化により振動体1の駆動面が傾いた場合等にも、振動体1の駆動面とロータ5との摺動面が安定して摺動し、起動性や駆動効率のよい、異音の発生が低減できる。
実施例1によれば、フランジリング部11は、出力軸13に嵌合し、出力軸13の回転中心線方向に移動可能であり、出力軸13とともに回転運動し、規制部材12は、加圧部9の加圧方向において、出力軸13に対するフランジリング部11及びロータ5の位置を規制する。このような構造とすることにより、出力軸13にその回転中心線方向以外の外力がかかる等により、出力軸13の回転中心線が、ロータ5の回転中心線と角度をなし、振動体1の駆動面に対して垂直でない場合にも、フランジリング部11は、出力軸13とは別部材であるので、出力軸13の傾きに追従して傾き難く、振動体1の駆動面とロータ5の摺動面との摺動を安定させることができる。
実施例1によれば、規制部材12は、出力軸13に設けられた溝部に嵌まるEリング12であるので、汎用の部材を使用することができ、生産コストを抑えることができる。
実施例1によれば、緩衝部材10は、フランジリング部11とロータ5との間に設けられ、ロータ5の回転中心線方向の振動を吸収するので、駆動時に、ロータ5がその回転中心線方向に振動することにより発生する異音を低減でき、かつ、ロータ5の回転運動を安定させ、駆動効率を向上できる。
実施例2によれば、出力軸13は、ロータ5の貫通孔部5aの内壁の一部に嵌合する嵌合部14bと、貫通孔部5aの内壁と接しないように外形寸法が小さく設けられた逃げ部14cと、出力軸13の端部に設けられ、加圧部9の加圧方向において、出力軸13に対するロータ5の位置を規制するフランジ部14aとを有する。このような構造とすることにより、出力軸13の回転中心線とロータ5の回転中心線とが角度をなすときに、出力軸13がロータ5の貫通孔部5aの内壁に当接してロータ5を傾けることがない。従って、振動体1の駆動面とロータ5の摺動面とが安定して摺動し、起動性や駆動効率を向上でき、異音の発生を低減できる。
実施例2によれば、嵌合部14bは、フランジ部14aと逃げ部14cとの間に設けられ、貫通孔部5aのフランジ部14a寄りの内壁と嵌合するので、出力軸13の回転中心線とロータ5の回転中心線とが角度をなす場合に、嵌合部14bがロータ5の傾きを規制する点と、フランジ部14aがロータ5の傾きを規制する点とが近くなる。従って、出力軸13とロータ5とは、駆動力を伝達しつつ、より自由度を持った構造とすることができる。
実施例2によれば、緩衝部材10は、フランジ部14aと相対運度部材との間に設けられ、ロータ5の回転中心線方向の振動を吸収するので、ロータ5の回転中心線方向の振動により発生する異音を防止し、かつ、ロータ5の回転運動を安定させ、駆動効率を向上できる。
【0030】
(変形例)
以上説明した実施例に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
(1)各実施例において、出力軸13,14は樹脂により形成される例を示したが、これに限らず、例えば、金属等により形成してもよいし、特に限定しない。
【0031】
(2)実施例1において、出力軸13は、フランジリング11、Eリング12を有する例を示し、実施例2において、出力軸14は、フランジ部14a、嵌合部14b、逃げ部14cを有する例を示したが、これらを適宜組み合わせて実施してもよい。
【0032】
(3)実施例2において、出力軸14は、樹脂により一体成形された部材である例を示したが、これに限らず、例えば、フランジ部を、出力軸とは別体としてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1:振動体、2:弾性体、3:圧電体、5:ロータ、5a:貫通孔部、8,13,14:出力軸、9:加圧部、10:緩衝部材、11:フランジリング、12:Eリング、14a:フランジ部、14b:嵌合部、14c:逃げ部、100,200,300:振動アクチュエータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動信号により励振され、駆動面に振動波を生じる振動体と、
貫通孔部を有し、前記駆動面に加圧接触され、前記振動波により前記貫通孔部を中心として回転駆動される相対運動部材と、
前記振動体と前記相対運動部材とを加圧接触させる加圧部と、
前記貫通孔部の少なくとも一部と嵌合し、前記相対運動部材とともに回転運動することにより、前記相対運動部材の回転運動を取り出す出力取り出し部材と、
前記出力取り出し部材に嵌合し、前記出力取り出し部材の回転中心線方向に移動可能であり、前記出力取り出し部材とともに回転運動するフランジリング部と、
を備えた振動アクチュエータにおいて、
前記出力取り出し部材と前記相対運動部材とは、前記出力取り出し部材の回転中心線と前記相対運動部材の回転中心線とが所定の範囲内の角度で、相対的に揺動しながら回転可能なように自由度を有して設けられていること、
を特徴とする振動アクチュエータ。
【請求項2】
請求項1に記載の振動アクチュエータにおいて、
前記加圧部による加圧方向において、前記出力取り出し部材に対する前記フランジリング部及び前記相対運動部材の位置を規制する規制部材を備えること、
を特徴とする振動アクチュエータ。
【請求項3】
請求項2に記載の振動アクチュエータにおいて、
前記規制部材は、前記出力取り出し部材に設けられた溝部に嵌まる止め輪であること、
を特徴とする振動アクチュエータ。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の振動アクチュエータにおいて、
前記フランジリング部と前記相対運動部材との間に設けられ、前記相対運動部材の回転中心線方向の振動を吸収する緩衝部材を備えること、
を特徴とする振動アクチュエータ。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の振動アクチュエータにおいて、
前記振動体は、1つのベアリングを介して前記出力取り出し部材に回転可能に取り付けられていること、
を特徴とする振動アクチュエータ。
【請求項6】
請求項5に記載の振動アクチュエータにおいて、
前記加圧部による加圧方向において、前記相対移動部材と前記ベアリングとの間に前記振動体が配置されていること、
を特徴とする振動アクチュエータ。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の振動アクチュエータにおいて、
前記加圧部による加圧方向において、前記相対運動部材と前記加圧部との間に前記振動体が配置されていること、
を特徴とする振動アクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−167067(P2011−167067A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120191(P2011−120191)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【分割の表示】特願2005−155782(P2005−155782)の分割
【原出願日】平成17年5月27日(2005.5.27)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】