説明

振動制御装置

【課題】 振動制御手段の出力を低減することができ、小型の振動制御手段で実現できると共に、ノイズに対して制振性能が向上し、効率的な振動制御装置を提供する。
【解決手段】 設置部Fに設置された荷重支持部10と、荷重支持部10と連結され荷重と釣り合う負荷を与えるカウンタバランス部30と、荷重支持部10の設置部Fに対する振動を制御する振動制御手段21を有する振動制御部20と、荷重支持部10の加速度を検出する加速度センサ22と、ノイズ振動の振幅と周波数を取得するノイズ振幅周波数取得部63と、ノイズ振幅周波数取得部63の取得した信号からノイズキャンセル波形を形成するノイズキャンセル波形形成部65と、加速度センサ22の検出した信号にノイズキャンセル波形を付与する加速度信号修正部66と、を備え、振動制御手段21は、加速度信号修正部66の修正値に基づき作動することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座席等の搭乗部、特に移動体等に設置される座席等の搭乗部に加わる振動を抑制、又は低減する振動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、振動加速度に応じて 座席下の直動型電動アクチュエータを動作制御して座席に加わる振動を抑制する座席用振動制御装置がある(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−180202号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、図15(a)に示すように、座席Sの支持をアクチュエータ121のみでする場合、停止状態を含め常にアクチュエータ121の出力が必要となる。また、図15(b)に示すように、座席Sの支持をアクチュエータ121とトーションスプリング122でする場合、停止態ではアクチュエータ121の出力を0とすることができるが、座席Sの振動を制御する場合、トーションスプリング122のバネ力が反力となってしまい、振動制御分の出力の他にバネの反力分の出力がアクチュエータ121に必要となり、大きな出力が要求されていた。
【0004】
また、ノイズに対する制御が行われていないので、ノイズが原因で制御ゲインをあげることができず、ノイズにより制振性能が低下していた。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するものであって、振動制御手段の出力を低減することができ、小型の振動制御手段で実現できると共に、ノイズに対して制振性能が向上し、効率的な振動制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのために本発明は、設置部に設置された荷重支持部と、前記荷重支持部と連結され荷重と釣り合う負荷を与えるカウンタバランス部と、前記荷重支持部の前記設置部に対する振動を制御する振動制御手段を有する振動制御部と、前記荷重支持部の加速度を検出する加速度検出手段と、ノイズ振動の振幅と周波数を取得するノイズ振幅周波数取得部と、前記ノイズ振幅周波数取得部の取得した信号からノイズキャンセル波形を形成するノイズキャンセル波形形成部と、前記加速度検出手段の検出した信号に前記ノイズキャンセル波形を付与する加速度信号修正部と、を備え、前記振動制御手段は、前記加速度信号修正部の修正値に基づき作動することを特徴とする。
【0007】
また、前記荷重支持部を、前記設置部に対して相対移動させる第1案内手段を有することを特徴とする。
【0008】
また、前記カウンタバランス部を前記荷重支持部に対して相対移動させる第2案内手段を有することを特徴とする。
【0009】
また、前記設置部に一端を支持された付勢手段と、前記設置部に支点を枢支され、一端を前記第1案内手段に連結され、他端を付勢手段の他端に連結された天秤部と、前記天秤部の長さを変更する調整手段とを備えたことを特徴とする。
【0010】
また、前記荷重支持部上の状態を検知する検知手段を備え、前記検知手段で検知した状態に応じて前記調整手段を作動する制御手段を備えたことを特徴とする。
【0011】
また、前記加速度信号修正部は、ノイズ振動の周波数が第1の閾値以上の場合のみ前記ノイズキャンセル波形を付与することを特徴とする。
【0012】
また、前記加速度信号修正部は、前記ノイズ振動の周波数が第1の閾値以上であって、ノイズ振動の振幅が第2の閾値以上の場合のみ前記ノイズキャンセルは波形を付与することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明によれば、設置部に設置された荷重支持部と、前記荷重支持部と連結され荷重と釣り合う負荷を与えるカウンタバランス部と、前記荷重支持部の前記設置部に対する振動を制御する振動制御手段を有する振動制御部と、前記荷重支持部の加速度を検出する加速度検出手段と、ノイズ振動の振幅と周波数を取得するノイズ振幅周波数取得部と、前記ノイズ振幅周波数取得部の取得した信号からノイズキャンセル波形を形成するノイズキャンセル波形形成部と、前記加速度検出手段の検出した信号に前記ノイズキャンセル波形を付与する加速度信号修正部と、を備え、前記振動制御手段は、前記加速度信号修正部の修正値に基づき作動するので、振動制御手段の出力を低減することができ、小型の振動制御手段で実現できると共に、ノイズに対して制振性能が向上し、効率的な振動制御装置を提供することができる。
【0014】
請求項2記載の発明によれば、前記荷重支持部は、前記設置部に対して相対移動する第1案内手段を有するので、荷重支持部材が水平方向に移動しないようにすることができる。
【0015】
請求項3記載の発明によれば、前記カウンタバランス部は、前記荷重支持部に対して相対移動する第2案内手段を有するので、カウンタバランス部を移動させる必要がなくなる。
【0016】
請求項4記載の発明によれば、前記設置部に一端を支持された付勢手段と、前記設置部に支点を枢支され、一端を前記第1案内手段に連結され、他端を付勢手段の他端に連結された天秤部と、前記天秤部の長さを変更する調整手段とを備えたので、カウンタウエイト等の重量物を適用する必要がなくなる。
【0017】
請求項5記載の発明によれば、前記荷重支持部材上の荷重を検知する検知手段を備え、前記検知手段で検知した荷重に応じて前記調整手段を作動する制御手段を備えたので、初期荷重の変化に対して適切に対応することができる。
【0018】
請求項6記載の発明によれば、前記加速度信号修正部は、ノイズ振動の周波数が第1の閾値以上の場合のみ前記ノイズキャンセル波形を付与するので、効率的な制御をすることができる。
【0019】
請求項7記載の発明によれば、前記加速度信号修正部は、前記ノイズ振動の周波数が第1の閾値以上であって、ノイズ振動の振幅が第2の閾値以上の場合のみ前記ノイズキャンセルは波形を付与するので、より効率的な制御をすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照して説明する。
【0021】
図1は、本実施形態における振動制御装置1を示す。図中、1は振動制御装置、10は荷重支持部、11は荷重支持部材、Sは座席、20は振動制御部、21は振動制御手段の一例としての制振用アクチュエータ、22は加速度検出手段としての加速度センサ、24は荷重検出手段としての荷重センサ、30はカウンタバランス部、31は第2移動手段支持部の一例としての第2スライダ支持部、32は調整手段の一例としてのプリロード調整用アクチュエータ、33はねじりバネ、40は第1案内手段、41は第1スライダレール、42は第1スライダ、50は第2案内手段、51は第2スライダレール、52は第2スライダ、Fは設置部である。
【0022】
振動制御装置1は、荷重支持部10により床等の設置部Fに設置され、振動制御部20で振動制御装置1上の座席S等の荷重の振動をアクティブに制御すると共に、カウンタバランス部30で荷重に対する力の釣り合いを設定するものである。
【0023】
荷重支持部10は、例えば、座席S及び座席Sを支持する荷重支持部材11等を有する。荷重支持部材11は、座席Sの下方に設置され、振動制御部20及びカウンタバランス部30に載置されている。なお、座席を直接振動制御部20及びカウンタバランス部30に載置してもよい。
【0024】
振動制御部20は、例えば、ボイスコイルモータ等の制振用アクチュエータ21、加速度センサ22、荷重センサ24等を有する。制振用アクチュエータ21は、下部を設置部Fに設置、上部を荷重支持部材11に当接され、加速度センサ22等からの信号により、上下伸縮可能に制御される。加速度センサ22は、荷重支持部10の加速度を検出するものであり、荷重支持部10に載置される。荷重センサ24は、荷重支持部10上の荷重を検出するものである。なお、荷重センサ24は加速度センサ22があれば、必ずしも設ける必要はない。
【0025】
カウンタバランス部30は、例えば、天秤部31、プリロード調整用アクチュエータ32、スプリング33等を有する。
【0026】
天秤部31は、設置部Fに支点31aを有し、一端側31bを第2スライダ52に、他端側31cをプリロード調整用アクチュエータ32を介してスプリング33に回動可能に連結する。
【0027】
プリロード調整用アクチュエータ32は、長さを可変することができるもので、一端を天秤部31に連結され、他端をスプリング33に固着され、加速度センサ22や荷重センサ24等の信号により、伸縮可能に制御される。スプリング33は、一端をプリロード調整用アクチュエータ32に固着され、他端を設置部Fに固着されている。
【0028】
第1案内手段40は、例えば、設置部Fに設置された第1スライダレール41と、荷重支持部材11に設けた第1スライダ42とを有し、荷重支持部10を設置部Fに対して相対移動させるものである。第1スライダレール41は、設置部Fに設置され、第1スライダ42及び荷重支持部材11を上下方向に案内する。第1スライダ42は、荷重支持部材11に設けられ、第1スライダレール41により上下方向に案内される。
【0029】
第2案内手段50は、例えば、荷重支持部材11に設置された第2スライダレール51、天秤部33の一端に連結される第2スライダ52を有し、カウンタバランス部30を荷重支持部10に対して相対移動させるものである。第2スライダレール51は、荷重支持部材11に設置され、第2スライダ52を移動可能に案内する。第2スライダ52は、天秤部31の一端に連結されると共に、第2スライダレール51に案内され、荷重支持部材11に対して移動可能なものである。
【0030】
図2は、このような構造の振動制御装置1のブロック図を示す。加速度センサ22等からの入力信号を制御手段としてのECU60に入力し、制振用アクチュエータ21を制御することで、アクティブに振動を制御する。加速度センサ22や荷重センサ24等の入力信号を制御手段としてのECU60に入力し、プリロード調整用アクチュエータ32を制御する。
【0031】
次に、プリロード調整制御について説明する。図3は、プリロード調整制御のフローチャートを示す。まず、ステップ1で、荷重支持部10上の荷重を加速度センサ22又は荷重センサ24等により検出する(ST1)。次に、ステップ2で、検出した荷重値の一定時間分をECU60に読み込む(ST2)。続いて、ステップ3で、一定時間分の荷重値から例えば平均値を計算して基準荷重値を算出する(ST3)。次に、ステップ4で、算出した基準荷重値にあわせてプリロード調整用アクチュエータ32を作動制御する(ST4)。
【0032】
図4は、プリロード調整制御前後の本実施形態の振動制御装置1の状態を示すもので、図4(a)はプリロード調整制御前、図4(b)はプリロード調整制御後の状態を示すものである。図4(a)に示すプリロード調整制御前の状態から、例えば乗員Pが座席Sに座り、初期荷重に乗員Pの荷重が足されると、カウンタバランス部30の天秤部31が反時計方向に回転し、スプリング33に負荷がかかる。そこで、図4(b)に示すように、プリロード調整用アクチュエータ32を作動させ、天秤部31の長さを変えることにより、荷重とスプリング33による負荷とを釣り合わせる。
【0033】
このように、プリロード調整用アクチュエータ32を作動させることにより、荷重がキャンセルされ、その状態から振動制御をすることができるようになる。
【0034】
次に、本実施形態の振動制御について説明する。図5は、振動制御のフローチャートを示す。まず、ステップ11で、振動時の荷重支持部10の加速度を加速度センサ22により検出する(ST11)。次に、ステップ12で、ECU60において制振用アクチュエータ21の推力を計算する(ST12)。推力計算は、例えば、加速度×フリクション×ゲイン×(−1)等の計算式やあらかじめ加速度に対応する推力の値を記憶しておくことにより実行する。ここで、計算式におけるゲインは制御の遅れ分、−1は向きの反転を表す。続いて、ステップ13で、ステップ12において計算した推力を制振用アクチュエータ21に指示する。
【0035】
図6は、本実施形態の振動制御の状態を示すもので、図6(a)は制振用アクチュエータ21を収縮した状態、図6(b)は制振用アクチュエータ21を伸張した状態を示すものである。
【0036】
図6(a)はステップ14に対応する検出した荷重値がプリロード調整制御で求めた基準荷重値より大きい場合であり、座席S上の振動を0にするため制振用アクチュエータ21を収縮すると、第2スライダ52が前方に移動すると共に、カウンタバランス部30の天秤部31が反時計方向に回転する。この時、スプリング33は伸張するが、荷重とスプリング33による負荷は、ほぼ釣り合い状態を保つことができる。
【0037】
図6(b)はステップ15に対応する検出した荷重値がプリロード調整制御で求めた基準荷重値より小さい場合であり、座席S上の振動を0にするため制振用アクチュエータ21を伸張すると、第2スライダ52が後方に移動すると共に、カウンタバランス部30の天秤部31が時計方向に回転する。この時、スプリング33は収縮するが、荷重とスプリング33による負荷は、ほぼ釣り合い状態を保つことができる。
【0038】
図7は、本実施形態の振動制御装置1を用いた場合と、図11に示す従来技術の場合とをシミュレーションで比較した結果を示す。シミュレーションは、振幅25mm周期750mmの波状路を速度70km/hで走行する条件で、荷重の振動を0にするために必要な制振用アクチュエータを求めた。
【0039】
図7(a)は、図15(a)に示すように、座席の支持をアクチュエータのみでする場合、図7(b)は、図15(b)に示すように、座席の支持をアクチュエータとスプリングでする場合、図7(c)は、本実施形態の場合である。
【0040】
このように、本実施形態の振動制御装置1は、アクチュエータの出力を低減することができ、小型のアクチュエータで実現できる効率的なものである。
【0041】
次に、本実施形態におけるノイズ振動低減制御について説明する。
【0042】
例えば、振動制御装置を、エンジンを搭載した車両等に用いる場合、振動を制御する際に加速度信号を取得すると、エンジン振動が含まれて計測される。
【0043】
図8は、人間の不快周波数を示す乗り心地線図である。人間は、胃の共振周波数である4〜8Hzの振動に対して不快に感じることがわかっている。そのため、振動を制御する際の対象領域は、人間が不快に感じる4〜8Hzの領域が一般的である。
【0044】
これに対して、例えば、アイドル回転数約810rpmの4気筒4サイクルエンジンのエンジン振動周波数は、27Hz以上となる。このためエンジン振動は、制御対象領域から外れており、ノイズとして計測される。
【0045】
図9は、アイドル(低回転)時振動の波形図、図10はアクセルON(高回転)時振動の波形図である。図9及び図10に示すように、エンジン振動の周波数と振幅は回転数に依存する。そして、低回転時の振幅が大きく、高回転時の振幅は無視できる程度のものである。したがって、本実施形態では、エンジン低回転時の領域でのエンジン振動を低減させる制御を行う。
【0046】
図11は、ノイズ振動低減制御の例としてエンジン振動低減制御に関係する構成を示した図である。
【0047】
ECU60は、車両ECU70と同調するためのクロック同調部61と、加速度センサ22からの信号を取得する加速度信号取得部62と、図12に示すようなエンジン回転数に対するノイズ振幅と周波数のマップをメモリしたノイズ振幅周波数取得部63と、ノイズの位相を計算するノイズ位相計算部64と、ノイズキャンセル波形を付与するノイズキャンセル波形付与部65と、加速度信号取得部62の取得した加速度の値をノイズキャンセル波形付与部65の信号により修正する加速度信号修正部66と、制振アクチュエータ21の出力を算出する制振アクチュエータ出力算出部67と、制振アクチュエータの推力を出力する制振アクチュエータ推力出力部68とを有する。
【0048】
また、車両ECU70は、ECU60のクロック同調部61にクロック信号を発信するクロック発信部71と、ノイズ振幅周波数取得部63にエンジン回転数を発信するエンジン回転数情報発信部72と、ノイズ位相計算部64にエンジン点火信号を発信するエンジン点火信号発信部73とを有する。
【0049】
図13は、ノイズ振動低減制御の例としてエンジン振動低減制御のフローチャートを示す図である。まず、ステップ21で、ECU60のクロック同調部61に車両ECU70のクロック発信部71からクロック信号を発信し、ECU60と車両ECU70を同調させる(ST21)。続いて、ステップ22で、車両ECU70のエンジン回転数情報発信部72からエンジン回転数情報を取得する(ST22)。次に、ステップ23で、取得したエンジン回転数情報をノイズ振幅周波数取得部63に記憶したエンジン回転数に対するノイズ振幅と周波数のマップと照合し、ノイズの振幅と周波数を取得する(ST23)。なお、演算によりエンジン回転数に対するノイズ振幅と周波数を求めても良い。
【0050】
次に、ステップ24で、ステップ23において求めた回転数が第1の閾値以下、かつ、ノイズの振幅が第2の閾値以上か判断する(ST24)。
【0051】
第1の閾値と第2の閾値は、周波数で比較すると、第1の閾値の周波数が第2の閾値に対応する周波数より小さく設定されている。ステップ24で行われる判断は、ノイズキャンセルを実施するか否かを判断するために行われる。ノイズ周波数が第1の閾値以上の周波数である状態は、エンジンのアイドル回転数がこの第1の閾値以上の場合、エンジン振動が、人が体に感じるノイズ周波数である制御対象周波数以上の場合を表している。一方、ノイズ振幅が第2の閾値以上である状態は、高周波ノイズが生じてキャビンへの伝達位相が発生して予測が困難であり、振幅が小さければ無視できる場合を表している。言い換えると、人が体に感じるノイズ周波数以上でそのノイズが無視できるぐらいエンジンが回転している場合を表している。
【0052】
なお、ステップ24では、エンジン回転数が第1の閾値以下であるか否かを判断すること、すなわち、制御対象周波数以上であることを判断してノイズキャンセルを実施するか否かを判断してもよい。このようにするだけで、人が体に感じる周波数を防止することができるためである。そして、さらにノイズ振幅が第2の閾値以下である場合をその判断に加えてやることにより、不必要なノイズキャンセルを行うことが無くなるので制御性が向上するとともに、不必要な制御を行うことが無くなり効率的な制御を行うことができるようになる。
【0053】
次に、ステップ24において閾値以下と判断した場合、ステップ25で、エンジン点火信号発振部73から取得したタイミングに合わせたエンジン振動の逆位相をノイズ位相計算部64で計算し、ノイズキャンセル波形付与部65から取得したノイズキャンセル信号を、加速度センサ22から取得した信号に加速度信号修正部66で付与し、出力する(ST25)。
【0054】
また、ステップ24において閾値より大きいと判断した場合、ステップ26で、ノイズキャンセルをせず、出力する(ST26)。
【0055】
図14は、制御タイミングを示した図である。同期クロックがONされても、エンジン回転数が閾値より大きい場合、逆位相は付与しないが、同期クロックがONされ、エンジン回転数が閾値以下の場合、逆位相を付与する。
【0056】
最後に、ステップ27で、ステップ25又はステップ26において求めた出力値に基づいて制振アクチュエータ出力算出部67で出力を算出し、制振アクチュエータ推力出力部68で制振アクチュエータ21を作動する(ST27)。
【0057】
このように、本実施形態によれば、設置部Fに設置された荷重支持部10と、荷重支持部10と連結され荷重と釣り合う負荷を与えるカウンタバランス部30と、荷重支持部10の設置部Fに対する振動を制御する振動制御手段21を有する振動制御部20と、荷重支持部10の加速度を検出する加速度センサ22と、ノイズ振動の振幅と周波数を取得するノイズ振幅周波数取得部63と、ノイズ振幅周波数取得部63の取得した信号からノイズキャンセル波形を形成するノイズキャンセル波形形成部65と、加速度センサ22の検出した信号にノイズキャンセル波形を付与する加速度信号修正部66と、を備え、振動制御手段21は、加速度信号修正部66の修正値に基づき作動するので、振動制御手段21の出力を低減することができ、小型の振動制御手段21で実現できると共に、ノイズに対して制振性能が向上し、効率的な振動制御装置1を提供することができる。
【0058】
また、荷重支持部10は、設置部Fに対して相対移動する第1案内手段40を有するので、荷重支持部材11が水平方向に移動しないようにすることができる。
【0059】
また、カウンタバランス部30は、荷重支持部10に対して相対移動する第2案内手段50を有するので、カウンタバランス部30を移動させる必要がなくなる。
【0060】
また、設置部Fに一端を支持されたスプリング33と、設置部Fに支点を枢支され、一端を第1案内手段40に連結され、他端をスプリング33の他端に連結された天秤部31と、天秤部31の長さを変更するプリロード調整用アクチュエータ32とを備えたので、カウンタウエイト等の重量物を適用する必要がなくなる。
【0061】
また、荷重支持部材11上の荷重を検知する加速度センサ22又は荷重センサ24を備え、加速度センサ22又は荷重センサ24で検知した荷重に応じてプリロード調整用アクチュエータ32を作動するECU60を備えたので、初期荷重の変化に対して適切に対応することができる。
【0062】
また、加速度信号修正部66は、ノイズ振動の周波数が第1の閾値以上の場合のみ前記ノイズキャンセル波形を付与し、ノイズ振動の周波数が制御対象周波数の場合にノイズキャンセル波形を付与する。さらに、ノイズ振幅の振幅が、第2の閾値以上(ノイズ振動の周波数が第2の閾値に対応する周波数以下)であることを判断してノイズキャンセル波形を付与するので、効率的な制御をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】第1実施形態の振動制御装置を示す図である。
【図2】振動制御装置のシステム構成を示したブロック図である。
【図3】プリロード調整制御のフローチャートを示す図である。
【図4】プリロード調整制御時の振動制御装置の状態を示す図である。
【図5】振動制御のフローチャートを示す図である。
【図6】振動制御時の振動制御装置の状態を示す図である。
【図7】本実施形態の振動制御装置と従来の技術とを比較したシミュレーションを示す図である。
【図8】人間の不快周波数を示す乗り心地線図である。
【図9】アイドル(低回転)時振動の波形図である。
【図10】アクセルON(高回転)時振動の波形図である。
【図11】ノイズ振動低減制御に関係する構成を示した図である。
【図12】エンジン回転数に対するノイズ振幅と周波数のマップ
【図13】エンジン振動低減制御のフローチャートを示す図である。
【図14】制御タイミングを示す図である。
【図15】従来の技術を示す図である。
【符号の説明】
【0064】
1…振動制御装置、10…荷重支持部、11…荷重支持部材、20…振動制御部、21…制振用アクチュエータ(振動制御手段)、22…加速度センサ(加速度検出手段、検知手段)、24…荷重センサ(検知手段)、30…カウンタバランス部、31…天秤部、32…プリロード調整用アクチュエータ(調整手段)、33…スプリング(付勢手段)、40…第1案内手段、41…第1スライダレール、12…第1スライダ、50…第2案内手段、51…第2スライダレール、52…第2スライダ、60…ECU(制御手段)、61…クロック同調部、62…加速度信号取得部、63…ノイズ振幅周波数取得部、64…ノイズ位相計算部、65…ノイズキャンセル波形付与部、66…加速度信号修正部、67…制振アクチュエータ出力算出部、68…制振アクチュエータ推力出力部、70…車両ECU、71…クロック発信部、72…エンジン回転数情報発信部、73…エンジン点火信号発信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置部に設置された荷重支持部と、
前記荷重支持部と連結され荷重と釣り合う負荷を与えるカウンタバランス部と、
前記荷重支持部の前記設置部に対する振動を制御する振動制御手段を有する振動制御部と、
前記荷重支持部の加速度を検出する加速度検出手段と、
ノイズ振動の振幅と周波数を取得するノイズ振幅周波数取得部と、
前記ノイズ振幅周波数取得部の取得した信号からノイズキャンセル波形を形成するノイズキャンセル波形形成部と、
前記加速度検出手段の検出した信号に前記ノイズキャンセル波形を付与する加速度信号修正部と、を備え、
前記振動制御手段は、前記加速度信号修正部の修正値に基づき作動することを特徴とする振動制御装置。
【請求項2】
前記荷重支持部を、前記設置部に対して相対移動させる第1案内手段を有することを特徴とする請求項1に記載の振動制御装置。
【請求項3】
前記カウンタバランス部を前記荷重支持部に対して相対移動させる第2案内手段を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の振動制御装置。
【請求項4】
前記設置部に一端を支持された付勢手段と、前記設置部に支点を枢支され、一端を前記第1案内手段に連結され、他端を付勢手段の他端に連結された天秤部と、前記天秤部の長さを変更する調整手段とを備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の振動制御装置。
【請求項5】
前記荷重支持部上の状態を検知する検知手段を備え、前記検知手段で検知した状態に応じて前記調整手段を作動する制御手段を備えたことを特徴とする請求項4に記載の振動制御装置。
【請求項6】
前記加速度信号修正部は、ノイズ振動の周波数が第1の閾値以上の場合のみ前記ノイズキャンセル波形を付与することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の振動制御装置。
【請求項7】
前記加速度信号修正部は、前記ノイズ振動の周波数が第1の閾値以上であって、ノイズ振動の振幅が第2の閾値以上の場合のみ前記ノイズキャンセルは波形を付与することを特徴とする請求項6に記載の振動制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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