振幅制限増幅回路
【課題】同符号連続耐性と応答時間の短縮と残留オフセット電圧の抑圧とを同時に実現する。
【解決手段】バースト先頭においてはフィードフォワード型オフセット補償回路により瞬時にオフセットを補償し、その後フィードバック型オフセット補償回路によりフィードフォワード型オフセット補償回路で生じる長期的なオフセット変動を補償する。フィードフォワード型オフセット補償回路によるバースト先頭でのオフセット補償時には、フィードバック型オフセット補償回路のアナログスイッチ41をオフ、アナログスイッチ42をオンしておき、時定数の小さいローパスフィルタ22を必要な電圧に急速充電させる。この後オフセット補償回路のキャパシタへの瞬時的な充電が完了するタイミングで、アナログスイッチ41をオンしてローパスフィルタ22の出力電圧を差動増幅器13に入力させるとともに、時定数の大きなローパスフィルタ21を帰還ループに加える。
【解決手段】バースト先頭においてはフィードフォワード型オフセット補償回路により瞬時にオフセットを補償し、その後フィードバック型オフセット補償回路によりフィードフォワード型オフセット補償回路で生じる長期的なオフセット変動を補償する。フィードフォワード型オフセット補償回路によるバースト先頭でのオフセット補償時には、フィードバック型オフセット補償回路のアナログスイッチ41をオフ、アナログスイッチ42をオンしておき、時定数の小さいローパスフィルタ22を必要な電圧に急速充電させる。この後オフセット補償回路のキャパシタへの瞬時的な充電が完了するタイミングで、アナログスイッチ41をオンしてローパスフィルタ22の出力電圧を差動増幅器13に入力させるとともに、時定数の大きなローパスフィルタ21を帰還ループに加える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PON(受動光ネットワーク)等の光通信システムの受信器等に使用される振幅制限増幅回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バーストデータ信号を受信して一定の振幅まで増幅する振幅制限増幅回路において、受信信号の振幅がバースト毎に異なる場合、振幅に合わせて正相信号と逆相信号のそれぞれの平均電圧(中心電圧、直流レベルとも呼ばれる)のズレである差分(オフセット電圧)を無くし、両者を自動的に一致させるオフセット補償(AOC:Automatic Offset Compensation)回路が必要になる。
【0003】
このとき、オフセット補償回路の出力波形の平均電圧の一致度が悪いと、図5に示すように、オフセット補償回路の通過後の差動信号のクロスポイント間隔が一定でなくなり、その結果、振幅制限増幅回路の出力信号VOUT+,VOUT−のハイレベルとローレベルでの時間幅(例えば、時間T1,T2)が異なってしまう。すなわち、出力信号のデューティが悪化する。なお、図5において、Vm+は正相入力信号VIN+の平均電圧、Vm−は逆相入力信号VIN−の平均電圧であり、その差分がオフセット電圧である。
【0004】
一般に、差動型の振幅制限増幅回路においては、非特許文献1に示されているように、オフセット補償回路として、キャパシタと抵抗を用いたローパスフィルタにより、正相出力信号と逆相出力信号の各々の平均電圧を検出し、それを前段の差動増幅器にフィードバックすることでオフセット電圧をキャンセルするフィードバック型オフセット補償回路の構成がとられる。このような振幅制限増幅回路の例を図6に示す。
【0005】
図6のフィードバック型オフセット補償回路付き振幅制限増幅回路は、プリアンプなどの前段回路から出力された正相信号VIN+、逆相信号VIN−が正相入力端子1、逆相入力端子2から入力される差動増幅器13と、その差動増幅器13の差動出力信号を所定の振幅に増幅するための1段又は複数段の差動増幅器14を縦続接続し、その差動増幅器14の正相出力端子3、逆相出力端子4に現れる出力電圧VOUT+,VOUT−から、キャパシタと抵抗を用いたローパスフィルタ24,25により平均電圧を取り出し、差動振幅器13にフィードバックする構成となっている。
【0006】
また、バースト信号に対する応答性を高めるためには、非特許文献2に示されるように、差動入力信号電圧の最大値または最小値、あるいはその両方を瞬時に保持する保持回路を用い、保持された電圧値を元に、フィードフォワードを行なうことで、オフセット電圧をキャンセルするフィードフォワード型オフセット補償回路の構成がとられた振幅制限増幅回路が知られている。このような振幅制限増幅回路の例を図7に示す。
【0007】
図7のフィードフォワード型オフセット補償回路付き振幅制限増幅回路は、差動増幅器11の差動出力信号から、保持回路30により正相信号、逆相信号の各々の最大電圧値を検出して、キャパシタ素子等にそれら電圧値を保持し、この保持電圧を差動増幅器12に入力して、入力信号のオフセット電圧をキャンセルさせる構成となっている。
【0008】
後段の差動増幅器12の具体的回路の例として、図8のような回路が用いられる。トランジスタQ5,Q6とQ7,Q8からなる2組の差動対が、一組の負荷抵抗RL3,RL4に共通接続されている。差動入力端子12a,12bには差動増幅器11の出力側から正相信号と逆相信号のバースト信号が入力され、差動入力端子12c,12dには保持回路30に保持された最大電圧が入力される。保持回路30は、入力端子31から入力した正相信号の最大電圧が出力端子33に、入力端子32から入力した逆相信号の最大電圧が出力端子34に与えられるように接続されている。
【0009】
このため、端子31と端子32の差動信号の平均電圧の間にオフセットがあり、例えば、端子31の最大電圧が端子32の最大電圧よりも大きい場合、端子33の電圧のほうが端子34の電圧より大きくなる。これにより、トランジスタQ5に流れる電流とトランジスタQ7に流れる電流の和は、トランジスタQ6に流れる電流とトランジスタQ8に流れる電流の和に等しくなり、従って、負荷抵抗RL3,RL4に流れる平均電流が等しくなるので、差動増幅器12に入力した差動信号の平均電圧間のオフセットがキャンセルされることになる。
【非特許文献1】J.Savoj, B.Razavi, "High-Speed CMOS Circuits for Optical Receivers", KLUWER ACADEMIC PUBLISHERS, p.16
【非特許文献2】中村 他著、「PDS光加入者システム用CMOS瞬時応答利得制御増幅器IC」、1994年電子情報通信学会秋季大会、講演番号B−897
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上記した従来のフィードバック型やフィードフォワード型のオフセット補償回路を用いた振幅制限増幅回路において、バーストデータの正相入力信号と逆相入力信号間のオフセット電圧を瞬時に補償し、良好なデューティの出力信号を得るには、以下に述べるような問題点がある。
【0011】
まず、図9を使用してフィードバック型オフセット補償回路における問題点を説明する。図6で説明したフィードバック型オフセット補償回路付き振幅制限増幅回路では、ローパスフィルタ24,25により常に平均電圧が生成され、この電圧によりオフセットが補償されるため、入力データ信号に同符号連続があると、ローパスフィルタ24,25の出力電圧Vm+,Vm−は振幅の中心値から離れ、連続データの電圧値に近づいていく。
【0012】
このような出力電圧Vm+,Vm−が差動増幅器13に入力される結果、同符合が連続した直後のデータ部分では、図9に示すように、正相出力信号VOUT+、逆相出力信号VOUT−の平均電圧間のズレであるオフセットが大きくなる。このオフセットが大きくなった差動信号が振幅制限されるまで増幅されると、同図に示すようにデューティが非常に悪くなってしまう。もし、同符号連続がさらに長く続く場合には、差動増幅器13の出力信号でオフセットがさらに大きくなり振幅制限された出力信号が出てこなくなってしまう。
【0013】
そこで、ローパスフィルタ24,25の時定数を大きくして、差動増幅器13の出力が同符合連続信号に追随しないようにすれば、同符号連続時における上記問題は緩和されることになるが、この手法では、バースト信号の最初でのオフセット補償に時間がかかるようになるため、初期同期等のためにデータ信号の前に挿入されているプリアンブル信号の期間を長くする必要が生じ、データの伝送効率の低下を招く。このため、図6に示したフィードバック型オフセット補償回路付き振幅制限増幅回路のみでは、プリアンブル時間の短縮と同符号連続耐性を両立させることが難しい。
【0014】
一方、図7に示したフィードフォワード型オフセット補償回路付き振幅制限増幅回路は、原理的には数ビット内で信号電圧の最大値、最小値を保持することができるため、初期同期用のプリアンブル時間は短くて済み、また、同符号連続時においても、保持した電圧によりオフセットを補償し続けるため、フィードバック型オフセット補償回路付き振幅制限増幅回路で生じたようなオフセットの変動はない。
【0015】
しかし、実際の回路においては次のような問題がある。すなわち、最大、最小電圧を保持するために、保持回路30には、図10に示すように、ダイオードD1,D2と、リセット用のトランジスタM1,M2に並列接続されたキャパシタC3,C4との直列回路が用いられるが、充電開始から数ビットの経過後、キャパシタC3,C4に充電された電圧が最大(または最小)に近づくと、ダイオードD1,D2のアノード・カソード間電圧が拡散電位に近くなり、充電速度が低下する。このため、キャパシタC3,C4の電圧は初期の瞬時的な充電によりほぼ所定の電圧に達するものの、その後、長時間にわたり徐々に充電され、キャパシタ電圧が徐々に変動する。
【0016】
もし、この変動量が、正相信号側の保持電圧の出力端子33と逆相信号側の保持電圧の出力端子34で一致していれば、その差は一定に保たれるので、オフセット補償用の差動増幅器12でのオフセット補償結果に時間的変動は無い。しかし、保持回路30の入力端子31,32の平均電圧に差があると、図10におけるダイオードD1,D2のアノード・カソード間にかかる電圧が同じにならないために、上述の長時間にわたる充電の特性も同じにならず、上記出力端子33,34の電圧差が一定に保たれない。
【0017】
保持回路30における各電圧の時間的変化を図示したものが図11である。保持回路30への入力端子31,32に、バースト信号Va+、Va−が入力されると、キャパシタC3,C4の出力端子33,34に現れる電圧はVb+,Vb−のように、数ビット分の入力信号の時間t0でほぼ一定の値に達し、その後、徐々に上昇する。このとき電圧Vb+,Vb−のレベルが違うために、上記の理由により、電圧差ΔV1、ΔV2として図示するように、電圧Vb+,Vb−の差が広がっていく。電圧Vb+,Vb−は、オフセット補償用の差動増幅器12に入力されるので、電圧Vb+,Vb−の差分、つまりオフセット電圧が変動すると、補償量が徐々に変動して出力信号のデューティ変動を招く。
【0018】
このため、振幅制限増幅回路の出力が、例えばバースト初期の時刻において最適なデューティになっていても、バースト終端近くではデューティが大きくずれてしまい、後段に接続されるCDR(Clock Data Recovery)回路等で正しくデータ再生が行われなくなり、バースト終端に近づくにつれ、エラーレートが増大する可能性がある。
【0019】
本発明の目的は、同符号連続耐性を図り、バーストデータ転送における伝送効率の向上とエラーレートの低減を実現できるようにした振幅制限増幅回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するために、請求項1にかかる発明は、差動入力信号のそれぞれの最大電圧値を保持する保持回路と、該保持回路が保持した前記それぞれの最大電圧値を入力して前記差動入力信号のそれぞれの平均電圧の差分を補正する第1の差動増幅器とを備える第1の増幅回路、および、第2の差動増幅器と、該第2の差動増幅器の出力側に接続された第3の差動増幅器と、該第3の差動増幅器の差動出力信号のそれぞれの平均電圧を出力するローパスフィルタとを備え、該ローパスフィルタから出力する前記それぞれの平均電圧を前記第2の差動増幅器に入力してそこに入力する差動入力信号のそれぞれの平均電圧の差分を補正する第2の増幅回路、が直列接続された振幅制限増幅回路であって、前記ローパスフィルタから出力する前記それぞれの平均電圧を、前記第2の差動増幅器に対して、入力バースト信号が入力された時点では入力させず、前記入力バースト信号が入力されて所定の時間が経過した後に入力させることを特徴とする。
請求項2にかかる発明は、請求項1に記載の振幅制限増幅回路において、前記第1の増幅回路の出力側が、前記第2の増幅回路の前記第2の差動増幅器の入力側に接続されていることを特徴とする。
請求項3にかかる発明は、請求項1に記載の振幅制限増幅回路において、前記第2の増幅回路の前記第2の差動増幅器の出力側が、前記第1の増幅回路の入力側に接続され、前記第1の増幅回路の出力側が、前記第2の増幅回路の前記第3の差動増幅器の入力側に接続されていることを特徴とする。
請求項4にかかる発明は、請求項1乃至3のいずれか1つに記載の振幅制限増幅回路において、前記所定の時間は、前記入力バースト信号が入力された後、前記第2の増幅回路の前記ローパスフィルタから前記平均電圧が出力されるまでにかかる時間に相当する時間であることを特徴とする。
請求項5にかかる発明は、請求項1乃至4のいずれか1つに記載の振幅制限増幅回路において、さらに入力バースト信号のガードタイムを検出可能なガードタイム検出回路を備え、該ガードタイム検出回路が前記入力バースト信号のガードタイムを検出したとき、前記保持回路をリセットするとともに、前記ローパスフィルタの出力を前記第2の差動増幅器に対して切断することを特徴とする。
請求項6にかかる発明は、請求項5のに記載の振幅制限増幅回路において、前記ローパスフィルタは、大きな時定数と小さな時定数をもち、前記ガードタイムが検出されると小さな時定数で動作し、前記入力バースト信号が入力されて所定の時間が経過すると大きな時定数で動作することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、フィードバック型とフィードバック型のオフセット補償を組み合わせるので、同符号連続耐性と応答時間の短縮と残留オフセット電圧の抑圧とを同時に実現できる。その結果として、オフセット電圧補償に要するプリアンブル信号を短縮できるためデータの伝送効率の向上が図れるとともに、データ信号波形のデューティを改善できるためエラーレートの減少につながる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の振幅制限増幅回路では、フィードフォワード型オフセット補償回路とフィードバック型オフセット補償回路とを組み合わせる。そして、例えば、バースト先頭においてはフィードフォワード型オフセット補償回路により瞬時にオフセットを補償し、その後、フィードバック型オフセット補償回路によりフィードフォワード型オフセット補償回路で生じる上述の長期的なオフセット変動を補償する。フィードバック型オフセット補償回路のローパスフィルタの時定数は、最長の同符号連続信号長において生じるオフセット変動が所定の値よりも小さくなるような値に選ぶ。
【0023】
フィードフォワード型オフセット補償回路によるバースト先頭でのオフセット補償時には、フィードバック型オフセット補償回路の帰還ループを切り離しておき、フィードフォワード型オフセット補償回路のキャパシタへの瞬時的な充電が完了するタイミングで、帰還ループを形成させる。このとき、フィードバック型オフセット補償回路の帰還ループのローパスフィルタは、前記の理由から大きな時定数に設定されるが、そのローパスフィルタの出力側には、予め十分な電圧をプリ充電しておき、帰還ループを形成したときにフィードバック型オフセット補償回路が直ちに機能するようにすることが望ましい。
【0024】
このような構成にすることにより、上述したフィードフォワード型オフセット補償回路のキャパシタ電圧が上述の理由で徐々に変動してオフセット補償量の長時間変動が生じたとしても、フィードバック型オフセット補償回路で連続的に補償され、デューティ変動のない差動出力信号が得られる。
【0025】
<第1の実施例>
図1Aは本発明の第1の実施例の振幅制限増幅回路の構成を示すブロック図である。差動入力端子1,2と差動出力端子3,4の間に縦続接続された差動増幅器11〜14のうち、差動増幅器12は保持回路30との組み合わせでフィードフォワード型オフセット補償回路(請求項記載の「第1の増幅回路」の一例)を構成する。また、差動増幅器13,14とローパスフィルタ21,22およびアナログスイッチ41,42は、フィードバック型オフセット補償回路(請求項記載の「第2の増幅回路」の一例)を構成する。ローパスフィルタ21の時定数は大きく設定され、ローパスフィルタ22の時定数は小さく設定される。なお、差動増幅器12は請求項記載の「第1の差動増幅器」の一例、差動増幅器13は請求項記載の「第2の差動増幅器」の一例、差動増幅器14は請求項記載の「第3の差動増幅器」の一例である。
【0026】
50はガードタイム検出回路であり、入力信号のバースト間の無信号時間を検出する。このガードタイム検出回路50としては、ガードタイム開始から基準クロックをカウントして、そのカウント値が最大同一符号連続区間長を超える規定値に達した時点で出力パルスP1を出力するが、最大同一符号連続区間長を超えないうちに次のバースト信号が到来したときはリセットされるようなカウンタを設けた回路を用いてもよい。
【0027】
60はバースト開始検出回路であり、バースト先頭を検知してバースト先頭タイミングを示すパルスP2を発生する。70はバースト開始検出回路60から出力するパルスP2を所定時間遅延したパルスP3を出力する遅延回路である。80はSRラッチ回路であり、遅延回路70からの出力パルスP3によりセットされて、アナログスイッチ41をオンさせ、アナログスイッチ42をオフさせる。また、ガードタイム検出回路50の出力パルスP1によりリセットされて、アナログスイッチ41をオフさせ、アナログスイッチ42をオンフさせる。保持回路30は、ガードタイム検出回路50の出力パルスP1により、保持電圧がリセットされる。
【0028】
図2に、フィードバック型オフセット補償回路の差動増幅器13の具体例を示す。この差動増幅器13は、コレクタが負荷抵抗RL1,RL2および出力端子13e,13fに接続され、ベースが入力端子13a,13bに接続され、エミッタが電流源Iaに接続されたトランジスタQ1,Q2の差動対と、コレクタが出力端子13e,13fに接続され、ベースがフィードバック端子13c,13dに接続され、エミッタが電流源Ibに接続されたトランジスタQ3,Q4の差動対からなる。そして、トランジスタQ3,Q4のベースには、高抵抗R5とR6、R7とR8によって、同電位が印加されており、これによりアナログスイッチ40がオフの期間のバイアス電位が与えられるようになっている。この高抵抗R5〜R8はローパスフィルタ21,22の時定数に影響を及ぼさない程度に高い値に設定しておく。
【0029】
さて、新たなバースト信号が入力すると、保持回路30は内部のキャパシタに最大電圧を保持し、数ビットの時間内に差動増幅器12が差動信号のオフセット電圧を補償するように動作するので、差動増幅器12から出力する正相信号と逆相信号の各々の平均電圧が一時的に変動する。しかし、この間はアナログスイッチ41がオフとなって、フィードバック型オフセット補償回路のフィードバックループは開放状態になっているため、この時点では、フィードバック型オフセット補償回路のローパスフィルタ21,22の時定数が後段に影響を及ぼすことは無い。なお、このときアナログスイッチ42はオンしており、そのローパスフィルタ22の内蔵キャパシタへの充電が続行している。
【0030】
一方、このとき、バースト開始検出回路60は、バースト先頭を検知してバースト先頭タイミングを示すパルスP2を発生する。遅延回路70の遅延時間は、バースト信号が入力してからフィードバック型オフセット補償回路のローパスフィルタ22が出力端子3,4の出力電圧の平均電圧を出力するまでの時間に設定され、この遅延時間の経過後にパルスP3を出力し、SRラッチ回路70をセットする。ローパスフィルタ22の時定数は小さいので、遅延時間は短くて済む。
【0031】
これによりアナログスイッチ41はオン、アナログスイッチ42はオフになり、時定数の小さなローパスフィルタ22の出力電圧(平均電圧に達している)が差動増幅器13に入力する。また、時定数の大きなローパスフィルタ21によって、フィードバック型オフセット補償回路のフィードバックループが形成されるので、その後のバースト信号中にフィードフォワード型オフセット補償回路のオフセット補償電圧が上記課題の項で述べた原因により変動したとしても、その電圧を補償し、常に最適なオフセット補償が行われる。すなわち、アナログスイッチ41がオンになった以降は、フィードフォワード型オフセット補償回路の差動増幅器12でオフセットが発生したとしても、フィードバック型オフセット補償回路の差動増幅器13によってそのオフセットが補償される。このオフセット補償では、大きな時定数のローパスフィルタ21を使用するので、連続符号耐性を実現できる。
【0032】
アナログスイッチ41がオンになった直後の時点では、フィードフォワード型オフセット補償回路の差動増幅器12により、出力端子3,4の平均電圧は同じになっているから、ローパスフィルタ21の出力からフィードバック型オフセット補償回路の差動増幅器13のフィードバック端子13c、13dには同じ電圧が印加される。この電圧は、高抵抗R5〜R8によりアナログスイッチ41がオフ時に与えられていた値とは違う場合があるが、差動増幅器13は差動回路で構成されているので、差動入力間の電位差が同じであれば出力に影響はない。図3に上記動作の各信号のタイミングを示した。
【0033】
図1Bに図1Aに記載した振幅制限増幅回路の変形例を示す。ここでは、内部に、スイッチSW1によって時定数を切換可能な正相側ローパスフィルタをキャパシタC1と抵抗R1,R2によって構成し、スイッチSW2によって時定数を切換可能な逆相側ローパスフィルタをキャパシタC2,抵抗R3,R4によって構成したローパスフィルタ23を、フィードバック型オフセット補償回路の帰還ループに形成した。スイッチSW1,SW2は、SRラッチ回路80がリセットされるとオン、セットされるとオフになる。このローパスフィルタ23は、「C1=C2」、「R1=R3>R2=R4」に設定され、SRラッチ回路80がリセットされているときは時定数が小さく、セットされると時定数が大きくなる。よって、ローパスフィルタ23は、バースト開始から遅延時間の経過するまでは小さい時定数により急速に必要な電圧まで充電され、遅延時間の経過後は大きな時定数によって、連続符号耐性を実現できる。
【0034】
<第2の実施例>
図4Aは本発明の第2の実施例の振幅制限増幅回路の構成を示すブロック図である。ここでは、フィードバック型オフセット補償回路(第2の増幅回路)は、フィードフォワード型オフセット補償回路(第1の増幅回路)をフィードバックループに含むように構成されている。動作タイミングについては上記第1の実施例と同様である。
【0035】
本実施例では、フィードバック型オフセット補償回路の差動増幅器13によるオフセット補償動作により、フィードフォワード型オフセット補償回路の差動増幅器12への入力差動信号自体のオフセットを補償するように動作するので、結果としてフィードフォワード型オフセット補償回路で長期的に生じる変動を補償することができ、第1の実施例の振幅制限増幅回路と同様の作用効果が得られる。図4Bは図2Bと同様なローパスフィルタ23を用いた変形例である。
【0036】
<その他の実施例>
なお、第1あるいは第2の実施例の振幅制限増幅回路において、フィードフォワード型オフセット補償回路の差動増幅器12の前段あるいは後段に、出力レベルを所定の振幅値に増幅するための差動増幅器を1つあるいは複数段備えても良い。また、同様に、フィードバック型オフセット補償回路の差動増幅器13の前段あるいは後段、差動増幅器14の前段あるいは後段に、出力レベルを所定の振幅値に増幅するための差動増幅器を1つあるいは複数段備えても良い。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1A】本発明の第1の実施例の振幅制限増幅回路の構成を示すブロック図である。
【図1B】図1Aの振幅制限増幅回路の変形例の構成を示すブロック図である。
【図2】図1の振幅制限増幅回路の差動増幅器13の回路図である。
【図3】第1の実施例の振幅制限増幅回路の動作タイミングを示した波形図である。
【図4A】本発明の第2の実施例の振幅制限増幅回路の構成を示すブロック図である。
【図4B】図4Aの振幅制限増幅回路の変形例の構成を示すブロック図である。
【図5】オフセットがある差動入力信号とそれを増幅した差動出力信号の波形図である。
【図6】従来のフィードバック型オフセット補償回路付き振幅制限増幅回路の構成を示すブロック図である。
【図7】従来のフィードフォワード型オフセット補償回路付き振幅制限増幅回路の構成を示すブロック図である。
【図8】図7の振幅制限増幅回路の差動増幅器12の回路図である。
【図9】帰還回路のローパスフィルタの時定数が短い場合のフィードバック型オフセット補償回路の各部の差動信号の波形図である。
【図10】図7の振幅制限増幅回路の保持回路の回路図である。
【図11】図10の保持回路の入力差動信号と出力信号の波形図である。
【符号の説明】
【0038】
1:正相入力端子
2:逆相入力端子
3:正相出力端子
4:逆相出力端子
11〜14:差動増幅器
21〜25:ローパスフィルタ
30:保持回路
41,42:アナログスイッチ
50:ガードタイム検出回路
60:バースト開始検出回路
70:遅延回路
80:SRラッチ回路
【技術分野】
【0001】
本発明は、PON(受動光ネットワーク)等の光通信システムの受信器等に使用される振幅制限増幅回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バーストデータ信号を受信して一定の振幅まで増幅する振幅制限増幅回路において、受信信号の振幅がバースト毎に異なる場合、振幅に合わせて正相信号と逆相信号のそれぞれの平均電圧(中心電圧、直流レベルとも呼ばれる)のズレである差分(オフセット電圧)を無くし、両者を自動的に一致させるオフセット補償(AOC:Automatic Offset Compensation)回路が必要になる。
【0003】
このとき、オフセット補償回路の出力波形の平均電圧の一致度が悪いと、図5に示すように、オフセット補償回路の通過後の差動信号のクロスポイント間隔が一定でなくなり、その結果、振幅制限増幅回路の出力信号VOUT+,VOUT−のハイレベルとローレベルでの時間幅(例えば、時間T1,T2)が異なってしまう。すなわち、出力信号のデューティが悪化する。なお、図5において、Vm+は正相入力信号VIN+の平均電圧、Vm−は逆相入力信号VIN−の平均電圧であり、その差分がオフセット電圧である。
【0004】
一般に、差動型の振幅制限増幅回路においては、非特許文献1に示されているように、オフセット補償回路として、キャパシタと抵抗を用いたローパスフィルタにより、正相出力信号と逆相出力信号の各々の平均電圧を検出し、それを前段の差動増幅器にフィードバックすることでオフセット電圧をキャンセルするフィードバック型オフセット補償回路の構成がとられる。このような振幅制限増幅回路の例を図6に示す。
【0005】
図6のフィードバック型オフセット補償回路付き振幅制限増幅回路は、プリアンプなどの前段回路から出力された正相信号VIN+、逆相信号VIN−が正相入力端子1、逆相入力端子2から入力される差動増幅器13と、その差動増幅器13の差動出力信号を所定の振幅に増幅するための1段又は複数段の差動増幅器14を縦続接続し、その差動増幅器14の正相出力端子3、逆相出力端子4に現れる出力電圧VOUT+,VOUT−から、キャパシタと抵抗を用いたローパスフィルタ24,25により平均電圧を取り出し、差動振幅器13にフィードバックする構成となっている。
【0006】
また、バースト信号に対する応答性を高めるためには、非特許文献2に示されるように、差動入力信号電圧の最大値または最小値、あるいはその両方を瞬時に保持する保持回路を用い、保持された電圧値を元に、フィードフォワードを行なうことで、オフセット電圧をキャンセルするフィードフォワード型オフセット補償回路の構成がとられた振幅制限増幅回路が知られている。このような振幅制限増幅回路の例を図7に示す。
【0007】
図7のフィードフォワード型オフセット補償回路付き振幅制限増幅回路は、差動増幅器11の差動出力信号から、保持回路30により正相信号、逆相信号の各々の最大電圧値を検出して、キャパシタ素子等にそれら電圧値を保持し、この保持電圧を差動増幅器12に入力して、入力信号のオフセット電圧をキャンセルさせる構成となっている。
【0008】
後段の差動増幅器12の具体的回路の例として、図8のような回路が用いられる。トランジスタQ5,Q6とQ7,Q8からなる2組の差動対が、一組の負荷抵抗RL3,RL4に共通接続されている。差動入力端子12a,12bには差動増幅器11の出力側から正相信号と逆相信号のバースト信号が入力され、差動入力端子12c,12dには保持回路30に保持された最大電圧が入力される。保持回路30は、入力端子31から入力した正相信号の最大電圧が出力端子33に、入力端子32から入力した逆相信号の最大電圧が出力端子34に与えられるように接続されている。
【0009】
このため、端子31と端子32の差動信号の平均電圧の間にオフセットがあり、例えば、端子31の最大電圧が端子32の最大電圧よりも大きい場合、端子33の電圧のほうが端子34の電圧より大きくなる。これにより、トランジスタQ5に流れる電流とトランジスタQ7に流れる電流の和は、トランジスタQ6に流れる電流とトランジスタQ8に流れる電流の和に等しくなり、従って、負荷抵抗RL3,RL4に流れる平均電流が等しくなるので、差動増幅器12に入力した差動信号の平均電圧間のオフセットがキャンセルされることになる。
【非特許文献1】J.Savoj, B.Razavi, "High-Speed CMOS Circuits for Optical Receivers", KLUWER ACADEMIC PUBLISHERS, p.16
【非特許文献2】中村 他著、「PDS光加入者システム用CMOS瞬時応答利得制御増幅器IC」、1994年電子情報通信学会秋季大会、講演番号B−897
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上記した従来のフィードバック型やフィードフォワード型のオフセット補償回路を用いた振幅制限増幅回路において、バーストデータの正相入力信号と逆相入力信号間のオフセット電圧を瞬時に補償し、良好なデューティの出力信号を得るには、以下に述べるような問題点がある。
【0011】
まず、図9を使用してフィードバック型オフセット補償回路における問題点を説明する。図6で説明したフィードバック型オフセット補償回路付き振幅制限増幅回路では、ローパスフィルタ24,25により常に平均電圧が生成され、この電圧によりオフセットが補償されるため、入力データ信号に同符号連続があると、ローパスフィルタ24,25の出力電圧Vm+,Vm−は振幅の中心値から離れ、連続データの電圧値に近づいていく。
【0012】
このような出力電圧Vm+,Vm−が差動増幅器13に入力される結果、同符合が連続した直後のデータ部分では、図9に示すように、正相出力信号VOUT+、逆相出力信号VOUT−の平均電圧間のズレであるオフセットが大きくなる。このオフセットが大きくなった差動信号が振幅制限されるまで増幅されると、同図に示すようにデューティが非常に悪くなってしまう。もし、同符号連続がさらに長く続く場合には、差動増幅器13の出力信号でオフセットがさらに大きくなり振幅制限された出力信号が出てこなくなってしまう。
【0013】
そこで、ローパスフィルタ24,25の時定数を大きくして、差動増幅器13の出力が同符合連続信号に追随しないようにすれば、同符号連続時における上記問題は緩和されることになるが、この手法では、バースト信号の最初でのオフセット補償に時間がかかるようになるため、初期同期等のためにデータ信号の前に挿入されているプリアンブル信号の期間を長くする必要が生じ、データの伝送効率の低下を招く。このため、図6に示したフィードバック型オフセット補償回路付き振幅制限増幅回路のみでは、プリアンブル時間の短縮と同符号連続耐性を両立させることが難しい。
【0014】
一方、図7に示したフィードフォワード型オフセット補償回路付き振幅制限増幅回路は、原理的には数ビット内で信号電圧の最大値、最小値を保持することができるため、初期同期用のプリアンブル時間は短くて済み、また、同符号連続時においても、保持した電圧によりオフセットを補償し続けるため、フィードバック型オフセット補償回路付き振幅制限増幅回路で生じたようなオフセットの変動はない。
【0015】
しかし、実際の回路においては次のような問題がある。すなわち、最大、最小電圧を保持するために、保持回路30には、図10に示すように、ダイオードD1,D2と、リセット用のトランジスタM1,M2に並列接続されたキャパシタC3,C4との直列回路が用いられるが、充電開始から数ビットの経過後、キャパシタC3,C4に充電された電圧が最大(または最小)に近づくと、ダイオードD1,D2のアノード・カソード間電圧が拡散電位に近くなり、充電速度が低下する。このため、キャパシタC3,C4の電圧は初期の瞬時的な充電によりほぼ所定の電圧に達するものの、その後、長時間にわたり徐々に充電され、キャパシタ電圧が徐々に変動する。
【0016】
もし、この変動量が、正相信号側の保持電圧の出力端子33と逆相信号側の保持電圧の出力端子34で一致していれば、その差は一定に保たれるので、オフセット補償用の差動増幅器12でのオフセット補償結果に時間的変動は無い。しかし、保持回路30の入力端子31,32の平均電圧に差があると、図10におけるダイオードD1,D2のアノード・カソード間にかかる電圧が同じにならないために、上述の長時間にわたる充電の特性も同じにならず、上記出力端子33,34の電圧差が一定に保たれない。
【0017】
保持回路30における各電圧の時間的変化を図示したものが図11である。保持回路30への入力端子31,32に、バースト信号Va+、Va−が入力されると、キャパシタC3,C4の出力端子33,34に現れる電圧はVb+,Vb−のように、数ビット分の入力信号の時間t0でほぼ一定の値に達し、その後、徐々に上昇する。このとき電圧Vb+,Vb−のレベルが違うために、上記の理由により、電圧差ΔV1、ΔV2として図示するように、電圧Vb+,Vb−の差が広がっていく。電圧Vb+,Vb−は、オフセット補償用の差動増幅器12に入力されるので、電圧Vb+,Vb−の差分、つまりオフセット電圧が変動すると、補償量が徐々に変動して出力信号のデューティ変動を招く。
【0018】
このため、振幅制限増幅回路の出力が、例えばバースト初期の時刻において最適なデューティになっていても、バースト終端近くではデューティが大きくずれてしまい、後段に接続されるCDR(Clock Data Recovery)回路等で正しくデータ再生が行われなくなり、バースト終端に近づくにつれ、エラーレートが増大する可能性がある。
【0019】
本発明の目的は、同符号連続耐性を図り、バーストデータ転送における伝送効率の向上とエラーレートの低減を実現できるようにした振幅制限増幅回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するために、請求項1にかかる発明は、差動入力信号のそれぞれの最大電圧値を保持する保持回路と、該保持回路が保持した前記それぞれの最大電圧値を入力して前記差動入力信号のそれぞれの平均電圧の差分を補正する第1の差動増幅器とを備える第1の増幅回路、および、第2の差動増幅器と、該第2の差動増幅器の出力側に接続された第3の差動増幅器と、該第3の差動増幅器の差動出力信号のそれぞれの平均電圧を出力するローパスフィルタとを備え、該ローパスフィルタから出力する前記それぞれの平均電圧を前記第2の差動増幅器に入力してそこに入力する差動入力信号のそれぞれの平均電圧の差分を補正する第2の増幅回路、が直列接続された振幅制限増幅回路であって、前記ローパスフィルタから出力する前記それぞれの平均電圧を、前記第2の差動増幅器に対して、入力バースト信号が入力された時点では入力させず、前記入力バースト信号が入力されて所定の時間が経過した後に入力させることを特徴とする。
請求項2にかかる発明は、請求項1に記載の振幅制限増幅回路において、前記第1の増幅回路の出力側が、前記第2の増幅回路の前記第2の差動増幅器の入力側に接続されていることを特徴とする。
請求項3にかかる発明は、請求項1に記載の振幅制限増幅回路において、前記第2の増幅回路の前記第2の差動増幅器の出力側が、前記第1の増幅回路の入力側に接続され、前記第1の増幅回路の出力側が、前記第2の増幅回路の前記第3の差動増幅器の入力側に接続されていることを特徴とする。
請求項4にかかる発明は、請求項1乃至3のいずれか1つに記載の振幅制限増幅回路において、前記所定の時間は、前記入力バースト信号が入力された後、前記第2の増幅回路の前記ローパスフィルタから前記平均電圧が出力されるまでにかかる時間に相当する時間であることを特徴とする。
請求項5にかかる発明は、請求項1乃至4のいずれか1つに記載の振幅制限増幅回路において、さらに入力バースト信号のガードタイムを検出可能なガードタイム検出回路を備え、該ガードタイム検出回路が前記入力バースト信号のガードタイムを検出したとき、前記保持回路をリセットするとともに、前記ローパスフィルタの出力を前記第2の差動増幅器に対して切断することを特徴とする。
請求項6にかかる発明は、請求項5のに記載の振幅制限増幅回路において、前記ローパスフィルタは、大きな時定数と小さな時定数をもち、前記ガードタイムが検出されると小さな時定数で動作し、前記入力バースト信号が入力されて所定の時間が経過すると大きな時定数で動作することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、フィードバック型とフィードバック型のオフセット補償を組み合わせるので、同符号連続耐性と応答時間の短縮と残留オフセット電圧の抑圧とを同時に実現できる。その結果として、オフセット電圧補償に要するプリアンブル信号を短縮できるためデータの伝送効率の向上が図れるとともに、データ信号波形のデューティを改善できるためエラーレートの減少につながる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の振幅制限増幅回路では、フィードフォワード型オフセット補償回路とフィードバック型オフセット補償回路とを組み合わせる。そして、例えば、バースト先頭においてはフィードフォワード型オフセット補償回路により瞬時にオフセットを補償し、その後、フィードバック型オフセット補償回路によりフィードフォワード型オフセット補償回路で生じる上述の長期的なオフセット変動を補償する。フィードバック型オフセット補償回路のローパスフィルタの時定数は、最長の同符号連続信号長において生じるオフセット変動が所定の値よりも小さくなるような値に選ぶ。
【0023】
フィードフォワード型オフセット補償回路によるバースト先頭でのオフセット補償時には、フィードバック型オフセット補償回路の帰還ループを切り離しておき、フィードフォワード型オフセット補償回路のキャパシタへの瞬時的な充電が完了するタイミングで、帰還ループを形成させる。このとき、フィードバック型オフセット補償回路の帰還ループのローパスフィルタは、前記の理由から大きな時定数に設定されるが、そのローパスフィルタの出力側には、予め十分な電圧をプリ充電しておき、帰還ループを形成したときにフィードバック型オフセット補償回路が直ちに機能するようにすることが望ましい。
【0024】
このような構成にすることにより、上述したフィードフォワード型オフセット補償回路のキャパシタ電圧が上述の理由で徐々に変動してオフセット補償量の長時間変動が生じたとしても、フィードバック型オフセット補償回路で連続的に補償され、デューティ変動のない差動出力信号が得られる。
【0025】
<第1の実施例>
図1Aは本発明の第1の実施例の振幅制限増幅回路の構成を示すブロック図である。差動入力端子1,2と差動出力端子3,4の間に縦続接続された差動増幅器11〜14のうち、差動増幅器12は保持回路30との組み合わせでフィードフォワード型オフセット補償回路(請求項記載の「第1の増幅回路」の一例)を構成する。また、差動増幅器13,14とローパスフィルタ21,22およびアナログスイッチ41,42は、フィードバック型オフセット補償回路(請求項記載の「第2の増幅回路」の一例)を構成する。ローパスフィルタ21の時定数は大きく設定され、ローパスフィルタ22の時定数は小さく設定される。なお、差動増幅器12は請求項記載の「第1の差動増幅器」の一例、差動増幅器13は請求項記載の「第2の差動増幅器」の一例、差動増幅器14は請求項記載の「第3の差動増幅器」の一例である。
【0026】
50はガードタイム検出回路であり、入力信号のバースト間の無信号時間を検出する。このガードタイム検出回路50としては、ガードタイム開始から基準クロックをカウントして、そのカウント値が最大同一符号連続区間長を超える規定値に達した時点で出力パルスP1を出力するが、最大同一符号連続区間長を超えないうちに次のバースト信号が到来したときはリセットされるようなカウンタを設けた回路を用いてもよい。
【0027】
60はバースト開始検出回路であり、バースト先頭を検知してバースト先頭タイミングを示すパルスP2を発生する。70はバースト開始検出回路60から出力するパルスP2を所定時間遅延したパルスP3を出力する遅延回路である。80はSRラッチ回路であり、遅延回路70からの出力パルスP3によりセットされて、アナログスイッチ41をオンさせ、アナログスイッチ42をオフさせる。また、ガードタイム検出回路50の出力パルスP1によりリセットされて、アナログスイッチ41をオフさせ、アナログスイッチ42をオンフさせる。保持回路30は、ガードタイム検出回路50の出力パルスP1により、保持電圧がリセットされる。
【0028】
図2に、フィードバック型オフセット補償回路の差動増幅器13の具体例を示す。この差動増幅器13は、コレクタが負荷抵抗RL1,RL2および出力端子13e,13fに接続され、ベースが入力端子13a,13bに接続され、エミッタが電流源Iaに接続されたトランジスタQ1,Q2の差動対と、コレクタが出力端子13e,13fに接続され、ベースがフィードバック端子13c,13dに接続され、エミッタが電流源Ibに接続されたトランジスタQ3,Q4の差動対からなる。そして、トランジスタQ3,Q4のベースには、高抵抗R5とR6、R7とR8によって、同電位が印加されており、これによりアナログスイッチ40がオフの期間のバイアス電位が与えられるようになっている。この高抵抗R5〜R8はローパスフィルタ21,22の時定数に影響を及ぼさない程度に高い値に設定しておく。
【0029】
さて、新たなバースト信号が入力すると、保持回路30は内部のキャパシタに最大電圧を保持し、数ビットの時間内に差動増幅器12が差動信号のオフセット電圧を補償するように動作するので、差動増幅器12から出力する正相信号と逆相信号の各々の平均電圧が一時的に変動する。しかし、この間はアナログスイッチ41がオフとなって、フィードバック型オフセット補償回路のフィードバックループは開放状態になっているため、この時点では、フィードバック型オフセット補償回路のローパスフィルタ21,22の時定数が後段に影響を及ぼすことは無い。なお、このときアナログスイッチ42はオンしており、そのローパスフィルタ22の内蔵キャパシタへの充電が続行している。
【0030】
一方、このとき、バースト開始検出回路60は、バースト先頭を検知してバースト先頭タイミングを示すパルスP2を発生する。遅延回路70の遅延時間は、バースト信号が入力してからフィードバック型オフセット補償回路のローパスフィルタ22が出力端子3,4の出力電圧の平均電圧を出力するまでの時間に設定され、この遅延時間の経過後にパルスP3を出力し、SRラッチ回路70をセットする。ローパスフィルタ22の時定数は小さいので、遅延時間は短くて済む。
【0031】
これによりアナログスイッチ41はオン、アナログスイッチ42はオフになり、時定数の小さなローパスフィルタ22の出力電圧(平均電圧に達している)が差動増幅器13に入力する。また、時定数の大きなローパスフィルタ21によって、フィードバック型オフセット補償回路のフィードバックループが形成されるので、その後のバースト信号中にフィードフォワード型オフセット補償回路のオフセット補償電圧が上記課題の項で述べた原因により変動したとしても、その電圧を補償し、常に最適なオフセット補償が行われる。すなわち、アナログスイッチ41がオンになった以降は、フィードフォワード型オフセット補償回路の差動増幅器12でオフセットが発生したとしても、フィードバック型オフセット補償回路の差動増幅器13によってそのオフセットが補償される。このオフセット補償では、大きな時定数のローパスフィルタ21を使用するので、連続符号耐性を実現できる。
【0032】
アナログスイッチ41がオンになった直後の時点では、フィードフォワード型オフセット補償回路の差動増幅器12により、出力端子3,4の平均電圧は同じになっているから、ローパスフィルタ21の出力からフィードバック型オフセット補償回路の差動増幅器13のフィードバック端子13c、13dには同じ電圧が印加される。この電圧は、高抵抗R5〜R8によりアナログスイッチ41がオフ時に与えられていた値とは違う場合があるが、差動増幅器13は差動回路で構成されているので、差動入力間の電位差が同じであれば出力に影響はない。図3に上記動作の各信号のタイミングを示した。
【0033】
図1Bに図1Aに記載した振幅制限増幅回路の変形例を示す。ここでは、内部に、スイッチSW1によって時定数を切換可能な正相側ローパスフィルタをキャパシタC1と抵抗R1,R2によって構成し、スイッチSW2によって時定数を切換可能な逆相側ローパスフィルタをキャパシタC2,抵抗R3,R4によって構成したローパスフィルタ23を、フィードバック型オフセット補償回路の帰還ループに形成した。スイッチSW1,SW2は、SRラッチ回路80がリセットされるとオン、セットされるとオフになる。このローパスフィルタ23は、「C1=C2」、「R1=R3>R2=R4」に設定され、SRラッチ回路80がリセットされているときは時定数が小さく、セットされると時定数が大きくなる。よって、ローパスフィルタ23は、バースト開始から遅延時間の経過するまでは小さい時定数により急速に必要な電圧まで充電され、遅延時間の経過後は大きな時定数によって、連続符号耐性を実現できる。
【0034】
<第2の実施例>
図4Aは本発明の第2の実施例の振幅制限増幅回路の構成を示すブロック図である。ここでは、フィードバック型オフセット補償回路(第2の増幅回路)は、フィードフォワード型オフセット補償回路(第1の増幅回路)をフィードバックループに含むように構成されている。動作タイミングについては上記第1の実施例と同様である。
【0035】
本実施例では、フィードバック型オフセット補償回路の差動増幅器13によるオフセット補償動作により、フィードフォワード型オフセット補償回路の差動増幅器12への入力差動信号自体のオフセットを補償するように動作するので、結果としてフィードフォワード型オフセット補償回路で長期的に生じる変動を補償することができ、第1の実施例の振幅制限増幅回路と同様の作用効果が得られる。図4Bは図2Bと同様なローパスフィルタ23を用いた変形例である。
【0036】
<その他の実施例>
なお、第1あるいは第2の実施例の振幅制限増幅回路において、フィードフォワード型オフセット補償回路の差動増幅器12の前段あるいは後段に、出力レベルを所定の振幅値に増幅するための差動増幅器を1つあるいは複数段備えても良い。また、同様に、フィードバック型オフセット補償回路の差動増幅器13の前段あるいは後段、差動増幅器14の前段あるいは後段に、出力レベルを所定の振幅値に増幅するための差動増幅器を1つあるいは複数段備えても良い。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1A】本発明の第1の実施例の振幅制限増幅回路の構成を示すブロック図である。
【図1B】図1Aの振幅制限増幅回路の変形例の構成を示すブロック図である。
【図2】図1の振幅制限増幅回路の差動増幅器13の回路図である。
【図3】第1の実施例の振幅制限増幅回路の動作タイミングを示した波形図である。
【図4A】本発明の第2の実施例の振幅制限増幅回路の構成を示すブロック図である。
【図4B】図4Aの振幅制限増幅回路の変形例の構成を示すブロック図である。
【図5】オフセットがある差動入力信号とそれを増幅した差動出力信号の波形図である。
【図6】従来のフィードバック型オフセット補償回路付き振幅制限増幅回路の構成を示すブロック図である。
【図7】従来のフィードフォワード型オフセット補償回路付き振幅制限増幅回路の構成を示すブロック図である。
【図8】図7の振幅制限増幅回路の差動増幅器12の回路図である。
【図9】帰還回路のローパスフィルタの時定数が短い場合のフィードバック型オフセット補償回路の各部の差動信号の波形図である。
【図10】図7の振幅制限増幅回路の保持回路の回路図である。
【図11】図10の保持回路の入力差動信号と出力信号の波形図である。
【符号の説明】
【0038】
1:正相入力端子
2:逆相入力端子
3:正相出力端子
4:逆相出力端子
11〜14:差動増幅器
21〜25:ローパスフィルタ
30:保持回路
41,42:アナログスイッチ
50:ガードタイム検出回路
60:バースト開始検出回路
70:遅延回路
80:SRラッチ回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
差動入力信号のそれぞれの最大電圧値を保持する保持回路と、該保持回路が保持した前記それぞれの最大電圧値を入力して前記差動入力信号のそれぞれの平均電圧の差分を補正する第1の差動増幅器とを備える第1の増幅回路、および、
第2の差動増幅器と、該第2の差動増幅器の出力側に接続された第3の差動増幅器と、該第3の差動増幅器の差動出力信号のそれぞれの平均電圧を出力するローパスフィルタとを備え、該ローパスフィルタから出力する前記それぞれの平均電圧を前記第2の差動増幅器に入力してそこに入力する差動入力信号のそれぞれの平均電圧の差分を補正する第2の増幅回路、
が直列接続された振幅制限増幅回路であって、
前記ローパスフィルタから出力する前記それぞれの平均電圧を、前記第2の差動増幅器に対して、入力バースト信号が入力された時点では入力させず、前記入力バースト信号が入力されて所定の時間が経過した後に入力させることを特徴とする振幅制限増幅回路。
【請求項2】
請求項1に記載の振幅制限増幅回路において、
前記第1の増幅回路の出力側が、前記第2の増幅回路の前記第2の差動増幅器の入力側に接続されていることを特徴とする振幅制限増幅回路。
【請求項3】
請求項1に記載の振幅制限増幅回路において、
前記第2の増幅回路の前記第2の差動増幅器の出力側が、前記第1の増幅回路の入力側に接続され、前記第1の増幅回路の出力側が、前記第2の増幅回路の前記第3の差動増幅器の入力側に接続されていることを特徴とする振幅制限増幅回路。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1つに記載の振幅制限増幅回路において、
前記所定の時間は、前記入力バースト信号が入力された後、前記第2の増幅回路の前記ローパスフィルタから前記平均電圧が出力されるまでにかかる時間に相当する時間であることを特徴とする振幅制限増幅回路。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1つに記載の振幅制限増幅回路において、
さらに入力バースト信号のガードタイムを検出可能なガードタイム検出回路を備え、該ガードタイム検出回路が前記入力バースト信号のガードタイムを検出したとき、前記保持回路をリセットするとともに、前記ローパスフィルタの出力を前記第2の差動増幅器に対して切断することを特徴とする振幅制限増幅回路。
【請求項6】
請求項5のに記載の振幅制限増幅回路において、
前記ローパスフィルタは、大きな時定数と小さな時定数をもち、前記ガードタイムが検出されると小さな時定数で動作し、前記入力バースト信号が入力されて所定の時間が経過すると大きな時定数で動作することを特徴とする振幅制限増幅回路。
【請求項1】
差動入力信号のそれぞれの最大電圧値を保持する保持回路と、該保持回路が保持した前記それぞれの最大電圧値を入力して前記差動入力信号のそれぞれの平均電圧の差分を補正する第1の差動増幅器とを備える第1の増幅回路、および、
第2の差動増幅器と、該第2の差動増幅器の出力側に接続された第3の差動増幅器と、該第3の差動増幅器の差動出力信号のそれぞれの平均電圧を出力するローパスフィルタとを備え、該ローパスフィルタから出力する前記それぞれの平均電圧を前記第2の差動増幅器に入力してそこに入力する差動入力信号のそれぞれの平均電圧の差分を補正する第2の増幅回路、
が直列接続された振幅制限増幅回路であって、
前記ローパスフィルタから出力する前記それぞれの平均電圧を、前記第2の差動増幅器に対して、入力バースト信号が入力された時点では入力させず、前記入力バースト信号が入力されて所定の時間が経過した後に入力させることを特徴とする振幅制限増幅回路。
【請求項2】
請求項1に記載の振幅制限増幅回路において、
前記第1の増幅回路の出力側が、前記第2の増幅回路の前記第2の差動増幅器の入力側に接続されていることを特徴とする振幅制限増幅回路。
【請求項3】
請求項1に記載の振幅制限増幅回路において、
前記第2の増幅回路の前記第2の差動増幅器の出力側が、前記第1の増幅回路の入力側に接続され、前記第1の増幅回路の出力側が、前記第2の増幅回路の前記第3の差動増幅器の入力側に接続されていることを特徴とする振幅制限増幅回路。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1つに記載の振幅制限増幅回路において、
前記所定の時間は、前記入力バースト信号が入力された後、前記第2の増幅回路の前記ローパスフィルタから前記平均電圧が出力されるまでにかかる時間に相当する時間であることを特徴とする振幅制限増幅回路。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1つに記載の振幅制限増幅回路において、
さらに入力バースト信号のガードタイムを検出可能なガードタイム検出回路を備え、該ガードタイム検出回路が前記入力バースト信号のガードタイムを検出したとき、前記保持回路をリセットするとともに、前記ローパスフィルタの出力を前記第2の差動増幅器に対して切断することを特徴とする振幅制限増幅回路。
【請求項6】
請求項5のに記載の振幅制限増幅回路において、
前記ローパスフィルタは、大きな時定数と小さな時定数をもち、前記ガードタイムが検出されると小さな時定数で動作し、前記入力バースト信号が入力されて所定の時間が経過すると大きな時定数で動作することを特徴とする振幅制限増幅回路。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−278426(P2009−278426A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−128355(P2008−128355)
【出願日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
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