説明

振幅減衰機能付き同調回路、及び無線通信装置用集積回路

【課題】電力消費を低減する。
【解決手段】振幅減衰機能付き同調回路は、コイル及びコンデンサを有する同調回路の共振時における抵抗値を変化させるためのスイッチング素子がコイル及びコンデンサに並列に接続され、スイッチング素子で抵抗値を変化させることにより、同調回路の出力信号の振幅を変化させるのであって、スイッチング素子のオン抵抗について、当該スイッチング素子のスイッチング電圧の源泉となる電源電圧に対する依存特性、及び温度に対する依存特性を解消するためのオン抵抗一定化回路を備え、オン抵抗一定化回路は、スイッチング素子に対し、電源電圧に対する依存特性、及び温度に対する依存特性を解消したスイッチング電圧を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振幅減衰機能付き同調回路、及び無線通信装置用集積回路に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばASK(Amplitude Shift Keying)通信における同調回路及びAGC(Automatic Gain Control)回路の一般的な例を図16に示す。同調回路は、コイル(インダクタンス)L1及びコンデンサ(容量)C1の一端が基準電圧Vrefに接続されたLC並列共振回路で構成されている。AGC回路は、可変増幅器(Variable Gain Amp)、整流回路(REC)、及び比較器(COMP)で構成される。可変増幅器は、同調回路からのAC信号の振幅を調整して出力端子OUTへ出力する。この出力端子OUTには、増幅器や検波回路及び波形整形回路等が接続され、振幅調整されたAC信号が処理される(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
可変増幅器におけるAC(交流)信号の増幅率は、整流回路及び比較器で決定される。すなわち、整流回路によりAC信号の振幅を平滑化してDC信号として得た後、このDC信号をコンパレータで基準電圧VAGCと比較する。この比較の結果、例えばAC信号の振幅が過大な場合には、増幅率を低下させるための出力をコンパレータが増幅器へ帰還させる。この結果、過大なAC信号の振幅を抑え、常にある一定の出力レベルを維持する制御が行われる。
【0004】
このような同調回路及びAGC回路は、例えば遠隔操作システムの受信装置に用いられる。この遠隔操作システムには、例えば、車両や家屋等のドアの開閉や施錠、及び車両のエンジンの起動や停止等、種々の用途がある。
【特許文献1】特開平10−23084号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えばAC信号の振幅が大きい場合に下げる自動制御を行う等のAGCの機能を実現するにあたり、前述したような可変増幅器及び整流回路を含むアナログ制御系を用いると、消費電力(例えば電流値で1μA程度)が大きい。このような消費電力の大きい回路について、例えば電池駆動型の遠隔操作システムの受信装置に用いると、電池の消耗が早くなってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る振幅減衰機能付き同調回路では、コイル及びコンデンサを有する同調回路の共振時における抵抗値を変化させるためのスイッチング素子が前記コイル及び前記コンデンサに並列に接続され、前記スイッチング素子で前記抵抗値を変化させることにより、前記同調回路の出力信号の振幅を変化させるのであって、前記スイッチング素子のオン抵抗について、当該スイッチング素子のスイッチング電圧の源泉となる電源電圧に対する依存特性、及び温度に対する依存特性を解消するためのオン抵抗一定化回路を備え、前記オン抵抗一定化回路は、前記スイッチング素子に対し、前記電源電圧に対する依存特性、及び前記温度に対する依存特性を解消した前記スイッチング電圧を供給する。
よって、抵抗値調整回路でもって同調回路の抵抗値を変化させることにより、同調回路の出力信号の振幅を変化させることができる。したがって、同調回路の感度を上げて微小な出力信号の検出を可能としながらも、出力入力の振幅が過大となってもその振幅を抑制できる。すなわち、幅広いダイナミックレンジに対応できる。
【0007】
また、同調回路の抵抗値を変化させるスイッチング素子をオンオフするので、デジタル制御が可能となる。よって、その制御系の電力消費について、可変増幅器及び整流回路を含むアナログ制御系を用いた場合に比し、本発明では、可変増幅器及び整流回路等を用いないため、電力消費を低減できる。特に、本発明の回路が電池駆動型の製品に採用された場合、容量の限られた電池の消費電力の低減化が図れる。
【0008】
ところで、例えばスイッチング素子としてトランジスタを用いると、オン時のゲート電圧や温度の変化に応じ、オン抵抗(オン時の抵抗の値)が変動してしまう。したがって、同調回路の共振時における抵抗値調整のためのスイッチング素子として、このようなトランジスタを用いると、そのゲート電圧や温度の変化のため、同調回路の共振時における抵抗値を精度良く変化させることができなくなってしまう。
しかしながら、本発明では、同調回路の共振時における抵抗値を変化させるためのスイッチング素子のオン抵抗について、ゲート電圧(スイッチング電圧)の源泉となる電源電圧依存特性及び温度依存特性を解消するオン抵抗一定化回路を備える。このため、電源電圧や温度の変化による影響を受けることなく、同調回路の共振時における抵抗値を決定することができる。以て、電源電圧や温度の変化の影響を受けることなく、同調回路の出力たるAC信号の振幅を減衰することができる。
【0009】
また、前記スイッチング素子はトランジスタで構成され、前記同調回路の共振時における前記抵抗値を変化させるべく、前記トランジスタをオンオフする。
よって、同調回路の抵抗値を変化させるトランジスタをオンオフするので、デジタル制御が可能となる。よって、その制御系の電力消費について、アナログ制御系を用いた場合に比し、電力消費を低減できる。特に、本発明の回路が電池駆動型の製品に採用された場合、容量の限られた電池の消費電力の低減化が図れる。
【0010】
さらに、電源電圧たるVDDと前記トランジスタの閾値電圧Vとの差分電圧たるVDD−V電圧を発生させるVDD−V電圧発生回路と、所定の一定値Aをトランスコンダクタンス係数Kで除算した結果に相当する電圧たるA/K電圧を発生させるA/K電圧発生回路とを更に備え、前記オン抵抗一定化回路は、前記スイッチング素子たる前記トランジスタに印加する前記スイッチング電圧について、供給される前記VDD−VT電圧と前記A/K電圧とに基づき、前記閾値電圧VTと前記A/K電圧との和に相当するVT+A/K電圧とし、前記トランジスタのオン抵抗を前記所定の一定値Aの逆数とする。
【0011】
さらにまた、前記同調回路の前記出力信号の前記振幅が自動調整用基準振幅レベルを超えると出力を変化させるコンパレータと、前記コンパレータの前記出力の前記変化に応じ、前記トランジスタの前記制御電極への前記印加電圧を変化させるためのデジタル駆動信号を出力するトランジスタ駆動用デジタル回路とで構成される自動調整回路系を備える。
よって、同調回路の振幅減衰機能を実現するにあたり、電圧駆動可能なコンパレータやトランジスタ駆動用デジタル回路を含む自動調整回路系を備える。この結果、従来のアナログ制御系を用いた場合に比し、電力消費を格段に低減することができる。特に、本発明の回路が電池駆動型の製品に採用された場合、容量の限られた電池の消費電力の低減化が図れる。
【0012】
本発明に係る無線通信装置用集積回路では、前述した振幅減衰機能付き同調回路における前記抵抗値調整素子及び前記自動調整回路系を含む。
【発明の効果】
【0013】
電力消費を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
===原 理===
本実施の形態に係る振幅減衰機能付き同調回路の原理を説明するための原理図を図1に示す。この同調回路は、例えば通信システムの送受信装置におけるアンテナに用いられる。図1の回路図に示すように、同調回路を構成するLC並列共振回路におけるコイルL1及びコンデンサC1(図1の上段の回路図)に対し、抵抗値調整素子R’が並列に接続される(図1の下段の回路図)。この抵抗値調整素子R’は、それ自身で抵抗値(便宜上、この抵抗値をR’とする)を有しており、同調回路の共振時における抵抗成分の値(抵抗値)R0を変化させる。抵抗値調整素子R’が接続されていない同調回路は、もとより、共振時における抵抗成分Rの値を有している(図1の中段の回路図)。これに加えて抵抗値調整素子R’が接続された同調回路の抵抗値R0は、(1/R+1/R’)の逆数で表される。このように、同調回路の抵抗値R0を変化させることにより、Q=R0/(ωL1)の式(ωは角速度,L1は、コイルL1のインダクタンスの値)に基づき、同調回路のQ値を変化させる。このQ値の変化により、同調回路の出力信号の振幅のレベルを変化させることができる。なお、Q値とは、同調回路の特性を表す選択度である。
【0015】
抵抗値調整素子R’の抵抗値R’は正の値を有するため、抵抗値調整素子R’が接続された同調回路の抵抗値R0は、抵抗値調整素子R’が接続されていない場合の抵抗値Rに比し、小さくなる。この同調回路の抵抗値R0が小さくなるに伴い、Q値が小さくなる結果、過大なAC信号の振幅を抑える制御を行える。
【0016】
===基本回路===
前述した図1に示す回路について、原案となる基本回路を図2に示す。図1の抵抗値調整素子R’をトランジスタMP0で構成する。この実施例では、トランジスタMP0をp型チャネルMOSFETで構成する。そして、同調回路たるLC並列共振回路を構成するコイルL1及びコンデンサC1の一端(図面左側)に対し、基準電圧Vref(例えば3V)を印加する。このLC並列共振回路で共振されたAC信号がコイルL1及びコンデンサC1の出力端子(他端)OUTから出力される。
【0017】
そして、トランジスタMP0のゲート(制御電極)への印加電圧を変化させることにより、前述した同調回路の抵抗値R0を変化させる。このトランジスタMP0のゲートへの印加電圧を変化させるにあたり、トランジスタMP0をスイッチング素子とするデジタル駆動方式と、オンとオフとの間の中間状態で駆動するアナログ駆動方式の二通りの方式がある。例えば離散的なアナログ駆動方式については、トランジスタMP0のへの印加電圧を0V(オン電圧)乃至5V(オフ電圧)の範囲(例えば1V,2V,3V等)の値を設定する。このことで、トランジスタMP0のドレインとソース間において、複数の離散的な抵抗値が得られる。この複数の離散的な抵抗値に応じた精密なAC信号の振幅レベルの制御を行える。
【0018】
次に、トランジスタMP0をスイッチング素子としてオンオフ駆動するデジタル駆動方式について説明する。すなわち、トランジスタMP0について、そのゲートへの印加電圧を0V(オン電圧)あるいは5V(オフ電圧)のいずれかとする。例えば、トランジスタMP0がオンすることにより、同調回路の抵抗値が変化し、出力端子OUTからのAC信号の振幅レベルを調整できる。
【0019】
次に、図2に示す同調回路に対し、AGC回路系(自動調整回路系)を付加することにより、AGC機能付きの同調回路を実現する例について、図3を参照して説明する。同調回路に対して接続されるAGC回路系は、レベルシフト回路(図中、Level Shift Circuit)、ヒステリシスコンパレータ(図中、Hysteresis Comparater)、及びトランジスタ駆動用デジタル回路を備える。
【0020】
本発明では、図1を参照して説明した振幅減衰の原理により、図16に示す従来の回路のような可変増幅器及び整流回路のアナログ回路系を用いずに済む。このため、電力消費を格段に低減できる。
【0021】
まずAGC回路系の機能について説明する。ヒステリシスコンパレータは、同調回路からのAC信号(出力信号)の振幅が自動調整用の基準振幅レベル以上になると出力を変化させる。このヒステリシスコンパレータの出力の変化に応じ、トランジスタ駆動用デジタル回路は、トランジスタMP0のゲートへの印加電圧を変化させるためのデジタル駆動信号VAGCを出力する。
【0022】
レベルシフト回路は、同調回路からのAC信号をヒステリシスコンパレータに入力させるにあたり、AC信号の直流レベルをシフトし、両者の直流レベルの整合性を取る機能を有する。すなわち、本実施例では、3Vの基準電圧Vrefが同調回路に印加される。このため、トランジスタMP0をオンさせて抵抗値が変化すると、3V程度の直流電圧に重畳するAC信号が同調回路から出力される。レベルシフト回路は、同調回路からの3V程度の直流成分について、ヒステリシスコンパレータが動作するのに十分な直流レベルへシフトさせる。さらに、ヒステリシスコンパレータにおける比較基準となる自動調整用の基準振幅レベルの中心電圧も合わせて生成する。
【0023】
次いで、レベルシフト回路、ヒステリシスコンパレータ、及びトランジスタ駆動用デジタル回路の具体的な回路構成について説明する。まず、レベルシフト回路は、カレントミラー回路を含むレベルシフト回路で構成される。図3に示すように、レベルシフト回路は、レベルシフト本来の機能を奏するレベルシフター部と、カレントミラー回路部で構成される。
【0024】
レベルシフター部は、トランジスタ(n型チャネルMOSFET)MN1と、トランジスタ(n型チャネルMOSFET)MN2と、トランジスタ(n型チャネルMOSFET)MN3と、トランジスタ(n型チャネルMOSFET)MN4とで構成される。トランジスタMN2のゲートには、同調回路からのAC信号が入力される。トランジスタMN4は、ドレインとゲートが接続されており、ダイオード(抵抗成分)として機能する。
【0025】
カレントミラー回路部は、定電流I1を供給する定電流源と、トランジスタ(n型チャネルMOSFET)MN5で構成される。定電流源が供給する定電流I1は、ヒステリシスコンパレータの反転入力端子に印加される基準電圧(自動調整用の基準振幅レベル)の源泉となる。トランジスタMN5のドレインとゲートは、互いに接続されるとともに、トランジスタMN3のゲートに接続される。このトランジスタMN3のゲートは、レベルシフター部のトランジスタMN1のゲートにも接続されているとともに、トランジスタMN3のドレインは、トランジスタMN4のソースに接続される。また、トランジスタMN2及びトランジスタMN4の双方について整合性を取り、両者のソースの直流電圧が共に等しくなるように設定する。図3の回路例では、トランジスタMN2とトランジスタMN4のゲートソース間電圧VGSだけ3Vより低下した直流レベルがトランジスタMN2及びトランジスタMN4のソースに生成される。
【0026】
このような構成のレベルシフト回路において、トランジスタMN2のソースがヒステリシスコンパレータの非反転入力端子(+)に接続される一方、トランジスタMN4のソースがヒステリシスコンパレータの反転入力端子(−)に接続される。よって、このヒステリシスコンパレータの非反転入力端子及び反転入力端子の双方には、共に等しい3V−VGSの直流電圧が印加される。すなわち、ヒステリシスコンパレータの反転入力端子には、直流のみが印加され、ヒステリシスコンパレータは、この直流レベルを中心に高い側と低い側に基準電圧(自動調整用の基準振幅レベル)を持つ。一方、ヒステリシスコンパレータの非反転入力端子には、同調回路からのAC信号について直流レベルが3V−VGSにレベルシフトされた信号が入力される。すなわち、ヒステリシスコンパレータは、AC信号の振幅と基準電圧とを比較し、AC信号の振幅が基準電圧を超えると”L”から”H”へ出力を変化させる。このヒステリシスコンパレータの出力は、トランジスタ駆動用デジタル回路へ出力される。
【0027】
トランジスタ駆動用デジタル回路は、ヒステリシスコンパレータの出力の変化に応じ、トランジスタMP0のゲートへの印加電圧を変化させるためのデジタル駆動信号を出力する。このトランジスタ駆動用デジタル回路は、電圧駆動型の回路であり、リセット付D型フリップフロップ回路FD2、二つのNOR回路NR1,NR2で構成されるRSFF(セットリセットフリップフロップ)回路、及びNAND回路ND1を備える。
【0028】
D型フリップフロップ回路FD2のクロック端子Cには、ヒステリシスコンパレータの出力が印加される。このD型フリップフロップ回路FD2について、データ端子Dには電源VDDが接続され、出力端子QにはNOR回路NR1の一方の入力端子(リセット端子)が接続される。さらに、D型フリップフロップ回路FD2のリセット端子RNにはリセット端子RESETが接続される。このリセット端子RESETは、NAND回路ND1の一方の入力端子にも反転接続される。このNAND回路ND1について、その他方の入力端子には電源VDDが接続され、その出力端子は、RSFF回路のNOR回路NR2の一方の入力端子(セット端子)に接続される。また、このNAND回路ND1は、インバータの機能を奏する他の代替手段も適用可能である。なお、このRSFF回路は、よく知られているように、二つのNOR回路NR1,NR2を用いた基本的な構成である。NOR回路NR1の出力端子からデジタル駆動信号VAGCが出力される。また、このRSFF回路は、リセット型のD型フリップフロップ回路でもよい。
【0029】
このような構成のトランジスタ駆動用デジタル回路を中心にAGC動作について、図4に示す波形図を参照して説明する。まず、図4における時刻T0までの時点、すなわち、同調回路からのレベルシフトされたAC信号がヒステリシスコンパレータに入力されていない状態(リセット状態)における各信号の状態について述べる。ヒステリシスコンパレータの出力(図3及び図4中、”C”の波形)、D型フリップフロップ回路FD2の出力(図3及び図4中、”Q”の波形)、及びNAND回路ND1の出力(図3及び図4中、”NAND回路ND1の出力”の波形)は、”L”の状態である。一方、NOR回路NR1の出力(デジタル駆動信号VAGC,図3及び図4中、”VAGC”の波形)、及びリセット端子RESETへの印加電圧(図3及び図4中、”RESET”の波形)は”H”の状態である。
【0030】
そして、図4における時刻T0の時点以降、同調回路からAC信号が、レベルシフトされてヒステリシスコンパレータに入力され、このAC信号の振幅が過大な場合について説明する。ヒステリシスコンパレータに振幅の過大なAC信号が入力されてから最初の数msの時間内(時刻T0乃至T1)で、ヒステリシスコンパレータは、その非反転入力端子への入力レベルが反転入力端子への基準電圧より大となることにより、その出力Cは、”L”から”H”へ変化する。すると、D型フリップフロップ回路FD2の出力Qは反転し、”H”の状態となるとともに、RSFF回路がリセットされて、デジタル駆動信号VAGCも反転して”L”の状態となる。この結果、トランジスタMP0がオンとなり、前述したように、同調回路に対するAGCが機能し、AC信号の振幅が抑えられていく。
【0031】
なお、リセット端子RESETへの印加電圧について、”H”の状態を維持する。このことにより、デジタル駆動信号VAGCの”L”の状態を維持し、抵抗値調整素子たるトランジスタMP0のオン状態を維持(ホールド)でき、AGC動作が中断してしまうことを防止できる。
【0032】
その後、AGC動作を中断し、各部の信号状態を初期化する場合には、リセット端子RESETに”L”のリセット用パルス信号を印加する(時刻T2)。すると、D型フリップフロップ回路FD2の出力Qが”L”の状態に戻る。同時に、NAND回路ND1の出力もリセット用パルス信号に合わせて、”H”のパルス信号を出力する。このパルス信号の立ち上がりに合わせ、RSFF回路がセットされて、デジタル駆動信号VAGCも反転して”H”の状態となる。この結果、トランジスタMP0がオフとなり、前述したように、同調回路に対するAGC動作が停止する。
【0033】
また、図3のRSFF回路について、リセット付D型フリップフロップ回路が適用可能であり、その出力をVAGCとしても同様の動作が得られる。
【0034】
前述した図1乃至図4を参照して説明した実施例の変形例について、図5及び図6に示し、変形内容を説明する。すなわち、図5に示すように、前述した図1の抵抗値調整素子R’をn型チャネルMOSFETからなるトランジスタMN0で構成する。そして、同調回路たるLC並列共振回路を構成するコイルL1及びコンデンサC1の一端(図面左側)を接地(GND接続)する。このLC並列共振回路で共振されたAC信号がコイルL1及びコンデンサC1の出力端子(他端)OUTから出力される。
【0035】
抵抗値調整素子R’をn型チャネルMOSFETトランジスタMN0とするとともに、コイルL1及びコンデンサC1の一端を接地した変形により、図6に示すように、レベルシフト回路は、レベルシフター部がトランジスタ(p形チャネルMOSFET)MP1とトランジスタ(p形チャネルMOSFET)MP2とトランジスタ(p形チャネルMOSFET)MP3とトランジスタ(p形チャネルMOSFET)MP4とで構成される。カレントミラー回路部は、定電流I1を供給する定電流源と、トランジスタ(p形チャネルMOSFET)MP5で構成される。トランジスタMP5のドレインとゲートは、互いに接続されるとともに、トランジスタMP1とMP3のゲートに接続される。よって、MP2とMP4は、双方について整合性を取ることで、両者の直流電圧が共に等しくなるように設定する。図6の回路例では、MP2とMP4のゲートソース間電圧VGSだけGNDよりも高い直流レベルがMP2とMP4のソースに生成される。
【0036】
また、デジタル駆動信号VAGCを出力するRSFF回路の接続関係が図3の場合に比べて変更となる。このRSFF回路は、良く知られた基本的な構成及び接続状態である。すなわち、図6において、RSFF回路のNOR回路NR1の一方の入力端子をNAND回路ND1の出力端子と接続するとともに、RSFF回路のNOR回路NR2の一方の入力端子をD型フリップフロップ回路FD2のQ端子と接続する。つまり、D型フリップフロップ回路FD2の出力Qが”H”になると、RSFF回路はセットされ、”H”状態のデジタル駆動信号VAGCを出力する。
【0037】
この図6に示す回路の動作は、前述した図3の場合と同様である。すなわち、同調回路で共振されたAC信号が、レベルシフト回路により、ヒステリシスコンパレータに受け渡される。このAC信号の振幅レベルが過大となり、基準電圧(自動調整用の基準振幅レベル)を超えると、ヒステリシスコンパレータの出力が”L”から”H”に変化する。その結果、RSFF回路からのデジタル駆動信号VAGCが”L”から”H”に変化し、トランジスタMN0がオン状態となり、AGC動作が開始される。
なお、AGC動作を中断し、各部の信号状態を初期化する場合には、リセット端子RESETに印加している信号の状態を”H”から”L”に変化させる。
【0038】
ここで、前述した離散的なアナログ駆動方式の具体例について説明する。前述した図3や図6において、トランジスタMP0,MN0のへの印加電圧(駆動信号VAGC)について、例えば1V,2V,3Vの複数値を設定する。すなわち、前述した図3や図6において、図7に示すように、複数段のヒステリシスコンパレータCMP1,CMP2,CMP3に並列に接続するとともに、各ヒステリシスコンパレータCMP1乃至CMP3に対応してRS型フリップフロップ回路RSFF1,RSFF2,RSFF3を接続して複数段の構成とする。これらのRS型フリップフロップ回路RSFF1乃至RSFF3の出力端子はデコーダに接続される。このデコーダから駆動信号VAGCが出力される。
【0039】
ヒステリシスコンパレータCMP1の反転入力端子には、駆動信号VAGCを生成するための基準電圧Vref1が設定される。ヒステリシスコンパレータCMP2の反転入力端子には、2Vの駆動信号VAGCを生成するための基準電圧Vref2が設定される。ヒステリシスコンパレータCMP3の反転入力端子には、1Vの駆動信号VAGCを生成するための基準電圧Vref3が設定される。
【0040】
各ヒステリシスコンパレータCMP1乃至CMP3について、その各非反転入力端子には、前述したレベルシフト回路(図中、Level Shift Circuit)からの出力が印加され、各基準電圧Vref1乃至Vref3と比較した結果を出力する。これら各ヒステリシスコンパレータCMP1乃至CMP3の出力に応じ、各RS型フリップフロップ回路RSFF1乃至RSFF3は3ビットのデータ(4値:HHH,HHL,HLL,LLL)がデコーダへ出力される。このデコーダは、3ビットのデータに応じて一意的に定まる駆動信号VAGC(1V,2V,3Vのいずれか)を生成してトランジスタMP0,MN0に出力する。
【0041】
また、図6のRSFF回路について、リセット付D型フリップフロップ回路が適用可能であり、その出力をVAGCとしても同様の動作が得られる。
【0042】
===実施例1===
図2乃至図7を参照して前述した原案たる基本回路等では、次の通り、改良すべき事項がある。
【0043】
すなわち、例えば図5に示す基本回路では、n型チャネルMOSFETからなるトランジスタ(スイッチング素子)MN0は、オン時のゲート電圧や温度の変化に応じ、オン抵抗(オン時の抵抗の値)が変動してしまう。つまり、トランジスタMN0は、そのゲート電圧や温度の変化のため、同調回路の共振時における抵抗値R0を精度良く変化させることができなくなってしまう。
【0044】
具体的には、図8(a)の温度変化に対する抵抗値R0の特性図に示すように、−50℃乃至100℃の範囲において、一点鎖線で示す基本回路の場合、温度が高くなるに連れて抵抗値R0は大きくなってしまい、一定とはならない。また、図8(b)のゲート電圧として印加する電源電圧VDDの変化に対する抵抗値R0の特性図に示すように、電源電圧VDDの1.5ボルト乃至3.5ボルトの範囲において、一点鎖線で示す基本回路の場合、電源電圧VDDが高くなるに連れて抵抗値R0は小さくなってしまい、一定とはならない。
【0045】
そこで、図9の回路図に示すような改良発明がなされた。すなわち、同調回路の共振時における抵抗値を変化させるための抵抗値調整回路をコイルL1及びコンデンサC1に並列に接続する。この抵抗値調整回路は、抵抗器R1と、トランジスタ(スイッチング素子)MN0との直列回路を含んでいる。このトランジスタMN0は、抵抗器R1の抵抗の大きさよりオン抵抗の小さいn型チャネルMOSFETで構成される。
【0046】
このトランジスタMN0のオンオフにより、同調回路の共振時における抵抗値を変化させる。すなわち、出力端子OUTからのAC信号の振幅レベルを調整する必要がない場合には、トランジスタMN0のゲートを接地(GND)させてオフ状態となっている。
【0047】
トランジスタMN0をオンさせる際には、ゲートに電源電圧VDDの電圧を印加させる。この場合、同調回路の共振時における抵抗値は、変化し、抵抗器R1の抵抗の大きさと同調回路の抵抗成分との合成抵抗の値となる。その結果、出力端子OUTからのAC信号の振幅レベルを減衰すべく調整可能となる。
【0048】
このトランジスタMN0のオン時において、そのオン抵抗は、抵抗器R1の抵抗の大きさより小さいため、同調回路の共振時における抵抗値に対する寄与は小さい。すなわち、トランジスタMN0のゲート電圧や温度の変化に応じ、そのオン抵抗が変動しても、同調回路の共振時における抵抗値に対する影響をなくせるか、あるいは、無視できる程度に小さくできる。
【0049】
具体的には、図8(a)の温度変化に対する抵抗値R0の特性図に示すように、−50℃乃至100℃の範囲において、直線で示す実施例1の場合、温度が変化しても、抵抗R0は一定のままを維持することができる。また、図8(b)のゲート電圧として印加する電源電圧VDDの変化に対する抵抗値R0の特性図に示すように、電源電圧VDDの1.5ボルト乃至3.5ボルトの範囲において、直線で示す実施例1の場合、温度が変化しても、抵抗R0は一定のままを維持することができる。
【0050】
このように、ゲート電圧及び温度の変化に対し、抵抗値R0が影響を受けないことによる効果について、図10(a)(b)の波形図を参照して説明する。先ず、ゲート電圧(印加電圧VDD)が一定の下、温度の変化に対する抵抗値R0の特性について、図10(a)に示すように、同調回路から出力されるAC信号の波形は、AGC動作が働く前の減衰前の状態では、左側のグラフに示すように振幅が大きい。そして、AGC動作が働きAC信号が減衰されると、前述した基本回路では、中心のグラフに示すように、温度の変化(−50℃,25℃,100℃)によってその減衰の度合いが変動し、一定とはならない。これに対し、本実施例1の場合では、温度が変化しても、減衰されたAC信号の振幅を一定に維持することができる。
【0051】
次に、温度が一定の下、ゲート電圧(印加電圧VDD)の変化に対する抵抗値R0の特性について、図10(b)に示すように、同調回路から出力されるAC信号の波形は、AGC動作が働く前の減衰前の状態では、左側のグラフに示すように振幅が大きい。そして、AGC動作が働きAC信号が減衰されると、前述した基本回路では、中心のグラフに示すように、ゲート電圧の変化(1.5V,2.5V,3.5V)によってその減衰の度合いが変動し、一定とはならない。これに対し、本実施例1の場合では、ゲート電圧が変化しても、減衰されたAC信号の振幅を一定に維持することができる。
【0052】
なお、この図9に示す同調回路に対し、AGC回路系(自動調整回路系)を付加することにより、AGC機能付きの同調回路を実現する例は、前述した図6の場合や後述する図11の場合と同様である。
【0053】
また、前述した改良すべき事項についての本実施例に係る改良発明は、図2に示すタイプの基本回路の場合にも適用できる。
【0054】
===実施例2===
<<<概略>>>
実施例1で述べた改良すべき事項に対する別の改良発明について、図11の回路を参照にして説明する。なお、本回路は、前述した図6に示す基本回路を土台としており、これと相違する部分を中心に説明する。すなわち、同調回路の共振時における抵抗値R0を変化させるための抵抗値調整素子としてスイッチング素子をコイルL1及びコンデンサC1に並列に接続する。このスイッチング素子は、n型チャネルMOSFETからなるトランジスタMN0で構成される。そして、このトランジスタMN0で抵抗値R0を変化させることにより、同調回路の出力信号の振幅を変化させる。このとき、D型フリップフロップ回路FD2のQN(反転出力)端子からの出力信号をデジタル駆動信号VAGCとする。
【0055】
そして、このトランジスタMN0のオン抵抗について、スイッチング電圧の源泉となる電源電圧VDDに対する依存特性及び温度に対する依存特性を解消するオン抵抗一定化回路を設ける。このオン抵抗一定化回路は、トランジスタMN0のゲートに対し、電源電圧VDDと温度の影響を受けない印加電圧Voを供給する。
【0056】
<<<詳細説明>>>
図11に示すように、トランジスタMN0のオン抵抗(ドレイン−ソース間抵抗)R’は、1/(K(Vgs−V))の数式で表される。ここで、Kはトランスコンダクタンス係数、Vgsはゲート−ソース間電圧(ゲート電圧,スイッチング電圧)、及びVは閾値電圧である。前述した基本回路では、ゲート電圧Vgsは電源電圧VDDであるためこのVDDに依存するとともに、K及びVは温度に依存する。
そこで、本実施例2では、トランジスタMN0に対し、Vgs=V+A/Kとなるゲート電圧Voを供給することにより、オン抵抗R’=1/Aとし、その電源電圧VDD及び温度の依存を相殺する。なお、Aは定数である。
【0057】
まず、図11に示す回路図は、図6を参照して前述した回路図において、インバータINVとRSFF回路を無くし、D型フリップフロップ回路FD2のQN端子からの出力信号をデジタル駆動信号VAGCとしている。そして、図11に示す回路図は、Vgs=V+A/Kとなるゲート電圧Voを供給する構成要素として、さらに、n型チャネルMOSFETからなるトランジスタMN1、p型チャネルMOSFETからなるトランジスタMP6,MP7、VDD−V(図11中”VT”と表記)電圧発生回路、及びA/K電圧発生回路(A/K電圧を発生させる回路)を備える。後述するように、VDD−V電圧発生回路とは、VDDとVとの差分電圧を発生させる回路であり、A/K電圧発生回路とは、前述のA/Kに相当する電圧(以後、A/K電圧と称する。)を発生させる回路である。
【0058】
図11に示すように、ゲート電圧Voが印加されるトランジスタMN0のゲートには、トランジスタMN1のドレインが接続されるとともに、トランジスタMP6のソース及びトランジスタMN7のドレインが接続される。トランジスタMP6は、そのゲートには、A/K電圧発生回路からのA/K電圧が印加されるるとともに、そのドレインは接地される。また、トランジスタMP7は、そのゲートには、VDD−V電圧発生回路からのVDD−V電圧が印加されるるとともに、そのソースは電源VDDに接続される。
【0059】
VDD−V電圧発生回路からは、トランジスタMP7のゲートに対し、VDD−V電圧たる電圧Vo1が印加される。また、A/K電圧発生回路からは、トランジスタMP6のゲートに対し、A/K電圧たる電圧Vo2が印加される。その結果、電源電圧VDD及び温度の影響のないVgs=V+A/Kとなるゲート電圧VoをトランジスタMN0に印加することができる。
【0060】
このため、図8(a)(b)に示すように、前述した実施例1の場合と同様、本実施例2においても、電源電圧VDDや温度の変化による影響を受けることなく、同調回路の共振時における抵抗値を決定することができる。したがって、図10(a)(b)に示すように、前述した実施例1の場合と同様、本実施例2においても、電源電圧や温度の変化の影響を受けることなく、同調回路の出力たるAC信号の振幅を減衰することができる。
【0061】
VDD−V電圧発生回路の具体例としては、図12に示すような回路が挙げられる。同図に示すように、p型チャネルMOSFETからなるトランジスタMP1,MP2、n型チャネルMOSFETからなるトランジスタMN1,MN2,MN3を組み合わせて接続することで構成される回路に対し、定電流回路が接続される。この定電流回路は、その一端が接地され、定電流IBIASが流れる。トランジスタMP1,MN1,MN3は、そのゲートとソースが接続されてダイオードとして機能する。MN1、MN2、MN3のトランスコンダクタンス係数は、”MN1:MN2:MN3=4K:4K:K”とする。また、トランジスタMP1,MP2のドレイン及びトランジスタMN2のゲートには電源VDDが供給される。
【0062】
図12に示すような接続関係により、トランジスタMP1にはドレイン−ソース間電流I1が流れるとともに、トランジスタMP2にはドレイン−ソース間電流I2が流れる。その結果、トランジスタMN3のゲートより電圧Vo1が得られる。この電圧Vo1が、図11のトランジスタMP7のゲートに印加されるVDD−V電圧となる。
【0063】
詳しくは、IBIASは定電流でもって全てのTは飽和領域で動作させ、I1=I2となるようにKMP1=KMP2とする。トランジスタMP2のドレイン−ソース間電流I1は、4K{(VDD−V)/2−Vで表される。トランジスタMP3のドレイン−ソース間電流I2は、I2=K(Vo1−V−Vで表される。I1=Iであるため、4K{(VDD−V)/2−V=K(Vo1−V−Vとなり、その結果、(VDD−V−Vo1)*(VDD−3V−2V+Vo1)=0となる。よって、Vo1=VDD−V,3V+2V−VDDとなる。ここで、Vは約0.7V(定数)である。また、IBIASが一定であることから、Vは定数であり、VDDが変数であることから、VDD−3V−2V+Vo1はゼロとはならない。したがって、Vo1=VDD−Vとなる。
【0064】
一方、A/K電圧発生回路の具体例としては、図13に示すような回路が挙げられる。このA/K電圧発生回路は、n型チャネルMOSFETからなるトランジスタMN1乃至MN6と、電源VDDに接続された二つの定電流回路とを同図に示すように接続して構成され、電圧Vo2を生成する。この電圧Vo2が、図11のトランジスタMP6のゲートに印加されるA/K電圧となる。詳しくは、各定電流回路から供給される定電流は、I,I+Ictrlで表記され、すべてのTは飽和領域で動作させる。Vcnは定電圧であり、K’=KMn1=KMn2=KMn3=KMn4 ,K” =KMn5=KMn6とする。トランジスタMN1とMN3に流れる電流の和は、I+Ictrlであるから、I+Ictrl=K’(VGS1−V+K’(VGS3−Vとなる。ここで、VGS3=VGS4+Vcnであるから、I+Ictrl=K’(VGS1−V+K’(VGS4+Vcn−V・・・(式1)となる。また、Mn2とMn4に流れる電流の和はIであるため、I=K’(VGS2−V+K’(VGS4−Vとなる。ここで、VGS2=VGS1+Vcnであるため、I=K’(VGS1+Vcn−V+K’(VGS4−V・・・(式2)となる。そして、(式1)から(式2)を減算すると、Ictrl=2K’*Vcn(VGS4−VGS1)・・・(式3)となる。ここで、K” =KMn5=KMn6よりVth5=Vth6となるため、Vgs5=Vo2*Vth5,Vgs6=Vth6,Vo2=Vgs5−Vgs6,Vgs4=Vgs5 ,Vgs6=Vgs1より、Vo2=Vgs4−Vgs1となる。これを(式3)に代入すると、Vo2=Icn/(2K” Vcn)となり、A=Icn/2Vcnとすれば、A/KなるVo2が得られる。
【0065】
ここで、本実施例2のAGC動作につき、図11の回路図及び図14の波形図を参照して説明する。なお、前述した図6に示す回路動作に関する説明と相違する部分を中心に説明する。まず、図14における時刻T0までの時点、すなわち、同調回路からのレベルシフトされたAC信号がヒステリシスコンパレータに入力されていない状態(リセット状態)における各信号の状態について述べる。ヒステリシスコンパレータの出力(図11及び図14中、”C”)、及びトランジスタMN0のゲート電圧Voの波形は、”L”の状態である。一方、D型フリップフロップ回路FD2の出力(図11及び図14中、”QN(デジタル駆動信号VAGC)”)及びリセット端子RESETへの印加電圧(図11及び図14中、”RESET”の波形)は”H”の状態である。つまり、QN(VAGC)が”H”である結果、トランジスタMN1がオンとなり、トランジスタMN0は、そのゲートに略接地電圧が印加される結果、トランジスタMN0がオフとなる。この結果、同調回路に対するAGCは機能を開始しない。
【0066】
そして、図14における時刻T0の時点以降、同調回路からAC信号が、レベルシフトされてヒステリシスコンパレータに入力され、このAC信号の振幅が過大な場合について説明する。ヒステリシスコンパレータに振幅の過大なAC信号が入力されてから最初の数msの時間内(時刻T0乃至T1)で、ヒステリシスコンパレータは、その非反転入力端子への入力レベルが反転入力端子への基準電圧より大となることにより、その出力Cは、”L”から”H”へ変化する。すると、D型フリップフロップ回路FD2の出力QN(デジタル駆動信号VAGC)は反転し、”L”の状態となる。この結果、トランジスタMN1がオフとなり、トランジスタMN0のゲートには、前述したV+A/Kとなるゲート電圧Voが印加され、図6に示す回路と同様、同調回路に対するAGCが機能し、AC信号の振幅が抑えられて減衰していく。
【0067】
なお、リセット端子RESETへの印加電圧について、”H”の状態を維持する。このことにより、デジタル駆動信号VAGCの”L”の状態を維持し、抵抗値調整素子たるトランジスタMP0のオン状態を維持(ホールド)でき、AGC動作が中断してしまうことを防止できる。
【0068】
その後、AGC動作を中断し、各部の信号状態を初期化する場合には、リセット端子RESETに”L”のリセット用パルス信号を印加する(時刻T2)。すると、D型フリップフロップ回路FD2の出力QN(デジタル駆動信号VAGC)が”H”の状態に戻る。この結果、トランジスタMN1がオンとなり、トランジスタMN0は、そのゲートに略接地電圧が印加される結果、トランジスタMN0がオフとなる。よって、前述したように、同調回路に対するAGC動作が停止することとなる。
【0069】
なお、前述した改良すべき事項についての本改良発明は、図2に示すタイプの基本回路の場合にも適用できる。
【0070】
===遠隔操作システムへの応用例===
前述した実施例及び変形例で説明した振幅減衰機能付き同調回路の応用例について、図15を参照して説明する。この応用例では、キー100及び車両200用の例えばワイヤレス・ドアロック(あるいは、エンジンのスタート及びストップ)・リモコンシステム(双方向通信型キーレスエントリーシステム)において、本願発明を適用している。
【0071】
キー100には、受信用アンテナ部110、無線通信装置用集積回路たるRF(Radio Frequency)IC(Integrated Circuit)120、マイコン130、及びLC発振回路で構成される送信用アンテナ部140を備える。受信用アンテナ部110は、前述した本発明に係る図3、図6、図9、及び図11におけるコイルL1及びコンデンサC1を備える同調回路系である。RFIC120は、前述した本発明に係る図3や図6におけるAGC回路系に加え、トランジスタMP0,MN0を含んだAGCを備える。この他、RFIC120は、よく知られているように、AGCからのAC信号を増幅するアンプAMP、検波回路DET、比較器COMP、及びフリップフロップFFを備える。このフリップフロップFFからの出力信号をマイコン130は処理する。そして、このマイコン130のデータ出力端子DATAOUTから送信用アンテナ部140を通じてASK送信若しくはFSK(Frequency Shift Keying)送信を実行する。
【0072】
一方、車両200側には、受信用アンテナ部210、RFIC220、マイコン230及び送信用アンテナ部240で構成される。各構成要素210乃至240は、キー100の受信用アンテナ部110、RFIC120、マイコン130及び送信用アンテナ部140と同様に構成され、キー100側と通信処理を実行する。
【0073】
===その他===
本発明の抵抗値調整素子と同等の機能を有する代替的な回路等の均等物も、本願発明の技術的範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の一実施の形態に係る振幅減衰機能付き同調回路の原理を従来と対比して示すための図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る振幅減衰機能付き同調回路の回路図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係るAGC機能付きの同調回路の回路図である。
【図4】図3に示すトランジスタ駆動用デジタル回路の各部の信号の状態を示す波形図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係る変形例の原理図である。
【図6】本発明の一実施の形態に係る振幅減衰機能付き同調回路の変形例を示す回路図である。
【図7】本発明の一実施の形態に係る振幅減衰機能付き同調回路について、アナログ駆動方式とした場合の部分回路図である。
【図8】本発明の一実施の形態に係る振幅減衰機能付き同調回路の共振時における抵抗値R0の特性を示し、(a)は温度変化に対する特性図であり、(b)はゲート電圧たるVDDの変化に対する特性図である。
【図9】本発明の実施例1に係る振幅減衰機能付き同調回路の回路図である。
【図10】本発明の一実施の形態に係る振幅減衰機能付き同調回路におけるゲート電圧及び温度の変化に対する同調回路の抵抗値R0の特性を示すグラフである。
【図11】本発明の実施例2に係るAGC機能付きの振幅減衰機能付き同調回路の回路図である。
【図12】本発明の実施例2に係る振幅減衰機能付き同調回路におけるVDD−V電圧発生回路の具体例を示す回路図である。
【図13】本発明の実施例2に係る振幅減衰機能付き同調回路におけるA/K電圧発生回路の具体例を示す回路図である。
【図14】図11に示す回路の各部の信号の状態を示す波形図である。
【図15】本発明の一実施の形態に係る振幅減衰機能付き同調回路を車両用のワイヤレス・ドアロック・リモコンシステムへの応用した例を示すブロック図である。
【図16】従来の振幅減衰機能付き同調回路を示す回路図である。
【符号の説明】
【0075】
100 キー
110 受信用アンテナ部
120 RFIC(通信装置用集積回路)
123 検波回路DET
130 マイコン
140 送信用アンテナ部
200 車両
210 受信用アンテナ部
220 RFIC(通信装置用集積回路)
230 マイコン
240 送信用アンテナ部
AMP アンプ
COMP 比較器
FF フリップフロップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル及びコンデンサを有する同調回路の共振時における抵抗値を変化させるためのスイッチング素子が前記コイル及び前記コンデンサに並列に接続され、
前記スイッチング素子で前記抵抗値を変化させることにより、前記同調回路の出力信号の振幅を変化させるのであって、
前記スイッチング素子のオン抵抗について、当該スイッチング素子のスイッチング電圧の源泉となる電源電圧に対する依存特性、及び温度に対する依存特性を解消するためのオン抵抗一定化回路を備え、
前記オン抵抗一定化回路は、前記スイッチング素子に対し、前記電源電圧に対する依存特性、及び前記温度に対する依存特性を解消した前記スイッチング電圧を供給することを特徴とする振幅減衰機能付き同調回路。
【請求項2】
前記スイッチング素子はトランジスタで構成され、前記同調回路の共振時における前記抵抗値を変化させるべく、前記トランジスタをオンオフすることを特徴とする請求項1に記載の振幅減衰機能付き同調回路。
【請求項3】
電源電圧たるVDDと前記トランジスタの閾値電圧Vとの差分電圧たるVDD−V電圧を発生させるVDD−V電圧発生回路と、
所定の一定値Aをトランスコンダクタンス係数Kで除算した結果に相当する電圧たるA/K電圧を発生させるA/K電圧発生回路と、
を更に備え、
前記オン抵抗一定化回路は、前記スイッチング素子たる前記トランジスタに印加する前記スイッチング電圧について、供給される前記VDD−VT電圧と前記A/K電圧とに基づき、前記閾値電圧VTと前記A/K電圧との和に相当するVT+A/K電圧とし、
前記トランジスタのオン抵抗を前記所定の一定値Aの逆数とすることを特徴とする請求項2に記載の振幅減衰機能付き同調回路。
【請求項4】
前記同調回路の前記出力信号の前記振幅が自動調整用基準振幅レベルを超えると出力を変化させるコンパレータと、
前記コンパレータの前記出力の前記変化に応じ、前記トランジスタの前記制御電極への前記印加電圧を変化させるためのデジタル駆動信号を出力するトランジスタ駆動用デジタル回路と、
で構成される自動調整回路系、
をさらに備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の振幅減衰機能付き同調回路。
【請求項5】
請求項4に記載の振幅減衰機能付き同調回路における前記抵抗値調整素子及び前記自動調整回路系を含む無線通信装置用集積回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−50014(P2009−50014A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−257068(P2008−257068)
【出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【分割の表示】特願2003−402049(P2003−402049)の分割
【原出願日】平成15年12月1日(2003.12.1)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(803000115)学校法人東京理科大学 (545)
【Fターム(参考)】