説明

捩り振動低減装置

【課題】スプリングシートが傾いて遊動子の環状部に接触するのを回避する。
【解決手段】第1,第2サイドプレート1と、該第1,第2サイドプレート1の間に配置されたセンタープレート8と、第1,第2サイドプレート1に形成された長孔1a,膨らみ部と、センタープレート8に設けられ長孔1a,膨らみ部の両端に位置するハブアーム8aと、長孔1a,膨らみ部の内部でかつハブアーム8どうしの間に直列に配置された一対の第1ばね10と、ハブアーム8と第1ばね10の端部との間に介在されシート部と外周保持部とからなるスプリングシート11と、一対の第1ばね10の対向端部どうしの間に介在される連結アーム12aと環状部12bとからなる遊動子12と、スプリングシート11が装置の半径方向外側へ向かって傾くのを規制するためハブアーム8の先端部に形成された規制部どうしを連結する円弧部を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、捩り振動低減装置に関し、圧縮ばねとセンタープレートとの間に介在させたスプリングシートが、傾いて遊動子に接触するのを規制したものである。
【背景技術】
【0002】
従来の捩り振動低減装置としては、例えば特許文献1に記載のものが知られている。軸方向に沿って配置した一対のドライブプレート3の外周部どうしを連結し、該一対のドライブプレート3の軸方向間に同軸のハブ1を設け、一対のドライブプレート3とハブ1とを円周方向に配置した一対の圧縮ばね5を介して連結し、該一対の圧縮ばね5どうしの間を仕切る突部8と、該突部8を円周方向に連結する環状部7とからなる遊動子6が設けられている。一対の圧縮ばね5を円周方向に直列に配置して長くすることによって、一対のドライブプレート3とハブ1との捩り角度を大きくしたものである。
【0003】
一方、特許文献2には、ばねの摩耗抑制のために、圧縮ばね5の端部とアーム2との間にスプリングシート52を介在させたダンパーディスク組立体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平06−058256号公報
【特許文献2】特開2008−249007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1の図1に示すように、ばね座として機能するハブ1のアーム2よりも半径方向外側に、遊動子6の環状部7が配置されていることから、回転による遠心力が圧縮ばね5に作用して該圧縮ばね5の中間部が半径方向外側へ撓むと、圧縮ばね5とアーム2との間に特許文献2に記載のスプリングシート52を介在させた場合は、本願の図10に破線で示すようにスプリングシート52が半径方向外側へ傾いて該スプリングシート52の外周部54が遊動子6の環状部7の内周面に接触し、両者が摩耗する。
【0006】
そこで本発明は、上記の課題を解決し、スプリングシートが遊動子の環状部に接触することを回避した捩り振動低減装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、クランクシャフトに連結されて回転自在な入力部材と、トランスミッションの入力軸に連結されて回転自在な出力部材とのいずれか一方を、一対のサイドプレートを軸心に沿って配置すると共に該サイドプレートの外周部どうしを連結して構成し、他方は前記一対のサイドプレートの間に同心に配置したセンタープレートにより構成し、
前記一対のサイドプレートの対応する位置に円周方向に沿うばね収容部を夫々形成する一方、円周方向で前記ばね収容部の両端と対応する位置には前記センタープレートの外周部から半径方向外側へ突出するハブアームを設け、前記ばね収容部の内部であってかつ前記ハブアームどうしの間に一対の弾性部材を直列に配置し、
前記ハブアームと前記一対の弾性部材の端部との間にスプリングシートを介在させ、該スプリングシートは前記弾性部材の端部を受けるシート部と該端部における装置の半径方向外側を覆う外周保持部とにより構成し、
前記一対の弾性部材の対向する端部どうしの間に介在させる連結アームと該連結アームの半径方向外側を円周方向に連結する環状部とからなる遊動子を設けた捩り振動低減装置において、
前記スプリングシートが前記ハブアームに対して装置の半径方向外側へ向かって傾くのを規制する規制部を、前記ハブアームの先端部から円周方向に沿って突出形成したことを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、一対のサイドプレートおよびセンタープレートが回転して弾性部材の長さ方向の中間部が遠心力により装置の半径方向外側へ向かって撓むと、スプリングシートにはハブアームに対して装置の半径方向外側へ向かって傾こうとする力が作用する。この発明では、ハブアームの先端部に規制部が形成されているので、該規制部の存在により、スプリングシートが装置の半径方向外側へ向かって傾くのが規制される。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の捩り振動低減装置において、
前記遊動子は、前記ハブアームを軸方向から挟む状態で、一対設けられていることを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、ハブアームを軸方向から挟む状態で遊動子を一対設けたので、連結アームもハブアームの厚さ寸法だけ間隔をあけて一対存在し、相互に離れて存在するこの一対の連結アームが一対の弾性部材の対向する端部を支持する。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の捩り振動低減装置において、
前記規制部の内径寸法が、前記環状部の内径寸法よりも小さく設定されていることを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、前記規制部の内周面の位置と対応するスプリングシートの外周保持部の外周面よりも半径方向外側に環状部の内周面が存在するので、スプリングシートの外周保持部の外周面が環状部の内周面に接触することはない。
【0013】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の捩り振動低減装置において、
前記規制部における円周方向で対向するものどうしを、円周方向に繋いで円弧部を形成したことを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、ハブアームの先端部から円周方向に沿って規制部を突出形成したセンタープレートは、ハブアームを突出形成し、更に突出形成したハブアームに規制部を突出形成しているので規制部の曲げに対する強度が小さい一方、規制部における円周方向で対向するものどうしを円周方向に繋いで円弧部を形成したセンタープレートは、突出形成された部分が存在しなくなるので曲げに対する強度が大きくなる。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る捩り振動低減装置によれば、規制部の存在によりスプリングシートが装置の半径方向外側へ向かって傾くことはないので、スプリングシートの外周保持部が遊動子の環状部と接触して摩耗するという問題が解消される。
【0016】
請求項2に係る捩り振動低減装置によれば、一対の弾性部材の対向する端部を支持する連結アームが一対設けられているので、弾性部材の支持が安定して行われる。また、遊動子が単一の場合は遊動子をハブアームの半径方向外側に配置することになり遊動子の外径寸法は必然的にハブアームの外径寸法よりも大きくなり捩り振動低減装置の外径寸法が大きくなるが、ハブアームを軸方向から挟む状態で遊動子を一対設けることから、遊動子の外径寸法はハブアームの外径寸法と略同じ値に設定することができ捩り振動低減装置の外径寸法を小さくすることができる。
【0017】
請求項3に係る捩り振動低減装置によれば、スプリングシートの外周保持部の外周面が環状部の内周面に接触することはないので、スプリングシートおよび環状部が摩耗するという問題が解消される。
【0018】
請求項4に係る捩り振動低減装置によれば、センタープレートにおける規制部の円周方向での対向するものどうしを円周方向に繋いで円弧部を形成したので、突出形成された部分が存在しなくなり、曲げに対する強度が大きい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】捩り振動低減装置をP,Qの部分では部品を除去して示す正面図(実施の形態1)。
【図2】図1のA−B−C−0−D−E−F−G−H−I−J矢視図(実施の形態1)。
【図3】(a)は(b)のK−0−K矢視図、(b)はセンタープレートと一対のばねと一対の遊動子とを組み付けた状態を示す組付図(実施の形態1)。
【図4】センタープレートの正面図(実施の形態1)。
【図5】誘導子の正面図(実施の形態1)。
【図6】スプリングシートに係り、(a)は左側面図、(b)は正面図、(c)は右側面図、(d)は底面図(実施の形態1)。
【図7】スプリングガイドに係り、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は底面図、(d)は右側面図(実施の形態1)。
【図8】(a)は(b)のL−0−L矢視図、(b)はセンタープレートと一対のばねと一対の遊動子とを組み付けた状態を示す組付図(実施の形態2)。
【図9】スプリングガイドに係り、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図(実施の形態2)。
【図10】従来の捩り振動低減装置の課題を示す参考図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明による捩り振動低減装置の実施の形態を説明する。
(a)実施の形態1
まず、実施の形態1について説明する。
(構成)
図1,図2に示すように一対のサイドプレートとしての第1サイドプレート1と第2サイドプレート2とが軸心に沿って並べて配置され、第1サイドプレート1と第2サイドプレート2との外周部がリベット3を介してリング状のマス4の内周側に連結されている。該マス4の外周側には、リングギヤ5が圧入結合されている。そして、第1サイドプレート1の内周部は、リング状のレインフォースプレート6と共に、ボルト7を介して図2中の右側の図示しないクランクシャフトに連結されている。
【0021】
前記第1サイドプレート1と前記第2サイドプレート2との間には、第1サイドプレート1,第2サイドプレート2と同心にセンタープレート8が配置されている。該センタープレート8の内周部には筒形状のハブ9が圧入結合されており、該ハブ9の内面にスプライン部9aが形成され、該スプライン部9aには図2中の左側の図示しないトランスミッションの入力軸のスプライン部が噛み合う。
【0022】
前記第1サイドプレート1,第2サイドプレート2の外周側の対応する位置には、円周方向に沿ってばね収容部としての長孔1aと膨らみ部2aが夫々形成されている。図1に示すように、長孔1a,膨らみ部2aは外周側が円弧に形成され、内周側が略「へ」の字形に屈曲形成されている。長孔1aは、その内部にばねの一部を入り込ませることにより長孔1aの両端部でばねを受けることができ、膨らみ部2aはその内部にばねの一部を入り込ませることにより膨らみ部2aの両端部でばねを受けることができる。そして、円周方向で長孔1a,膨らみ部2aの両端と対応する位置には前記センタープレート8の外周部から半径方向外側へ突出するハブアーム8aが設けられている。長孔1a,膨らみ部2aの内部であってかつハブアーム8aどうしの間には、一対の弾性部材としての第1ばね10が直列に配置されている。該第1ばね10は、親ばね10aの内部に子ばね10bを挿入した入れ子ばねであり、親ばね10aが所定の長さだけ圧縮されてから子ばね10bが圧縮され始めるように、子ばね10bは親ばね10aよりも短く設定されている。
【0023】
前記ハブアーム8aと前記一対の第1ばね10の端部との間には、スプリングシート11が介在している。該スプリングシート11の構成を図6に示す。該スプリングシート11は第1ばね10の端部を受ける略楕円形の板状のシート部11aと、第1ばね10の端部における装置の半径方向外側を覆い円筒の一部を構成する外周保持部11bとにより構成されている。シート部11aの外周保持部11bを設けた側には、親ばね10aの内部に挿入して親ばね10aの端部を位置決めする円柱形の位置決め突起部11cが形成されている。ハブアーム8aの円周方向の側面に形成されている後述の凹部8bに嵌め込むための凸部11dが、シート部11aの背面に左右方向に沿って長く形成されている。そして、スプリングシート11が凸部11dの長さ方向である軸方向へ移動するのを規制するため、凸部11dを取り巻くように2本の規制部11eが形成されている。2本の規制部11eが、軸方向における前記ハブアーム8aの両側に位置することにより、スプリングシート11の軸方向への移動が規制される。
【0024】
図4に示すように、前記ハブアーム8aに対して円周方向の両側には、スプリングシート11の前記凸部11dを嵌合するための凹部8bが形成されている。そして、スプリングシート11がハブアーム8aに対して装置の半径方向外側へ向かって傾くのを規制する規制部8cが、ハブアーム8aの先端部から円周方向に沿って突出形成されている。本実施の形態では、これらの規制部8cにおける円周方向で対向するものどうしが円周方向に繋がれており、円弧部8dが形成されている。
【0025】
前記一対の第1ばね10の対向する端部が半径方向外側へ移動しないように支持するため、遊動子12が設けられている。図5に示すように、該遊動子12は、一対の第1ばね10の対向する端部どうしの間に介在させる連結アーム12aと該連結アーム12aの半径方向外側を円周方向に連結する環状部12bとから構成されている。連結アーム12aにおける円周方向の両側には、半径方向の幅寸法を大きくすることにより後述するスプリングガイド13を支持するため、内径寸法を小さくしたサポート部12cが形成されている。この遊動子12は、前記ハブアーム8aを軸方向の両側から挟むように、一対設けられている。図1は図2の右方から見た正面図であり、図1の円周方向の「P」の範囲は手前の第1サイドプレート1を除去して手前に一方の遊動子12が見える状態を示し、図1の「Q」の範囲は更に手前の一方の遊動子12を除去して手前にセンタープレート8が見える状態を示している。
【0026】
図3はセンタープレート8と一対の遊動子12との関係を示している。この実施の形態では、既に述べたように遊動子12は一対設けられており、センタープレート8の規制部8cの内径寸法r1は、遊動子12における環状部12bの内径寸法r2よりも小さく設定されている。また、規制部8cの外径寸法R1は、環状部12bの外径寸法R2よりも小さく設定されている。なお、外径寸法R1を、外径寸法R2と同じ値に設定してもよい。
【0027】
前記遊動子12の連結アーム12aの位置には、一対の第1ばね10の対向する端部の半径方向の位置を位置決めするスプリングガイド13が設けられている。該スプリングガイド13の構成を図7に示す。スプリングガイド13は、図7(b)の左右方向に伸びる長辺は、前記遊動子12のサポート部12cの内周面に密着する円弧状の外周面を備えており、図7(d)の左右方向に伸びる短辺は、前記第1ばね10を構成する素線の外周面に密着する円弧状の内周面を備えている。このスプリングガイド13を遊動子12の連結アーム12aに装着するため、一対の連結アーム12aを挿入するための2つの挿入孔13aが、図7(a)(c)に示すようにセンタープレート8の幅寸法と対応する間隔Wを設けて形成されている。挿入孔13aの形状は、図7(b)に示すように連結アーム12aの形状と対応し、円周方向の幅寸法が装置の中心へ向って逐次小さくなる。また、2つの挿入孔13aに対して軸方向の両側の強度を大きくするため、図7(d)に示すように上部および下部が平面になるように、補強部13b,13cが形成されている。前記スプリングシート11および前記スプリングガイド13は、樹脂を射出成形して製作されるが、強度向上や耐摩耗性向上のためにグラスファイバやカーボンファイバを添加してもよい。
【0028】
このほか、前記第1ばね10よりも半径方向内側には第2ばね14が設けられている。即ち、図2に示すようにセンタープレート8には円周方向に沿って3つの短い(膨らみ部1b,長孔2bと比較して短い)円弧形状の長孔8eが形成される一方、第1サイドプレート1,第2サイドプレート2の対応する位置にはばね収容部としての3つの長い円弧形状の膨らみ部1b,長孔2bが夫々形成され、膨らみ部1b,長孔8e,長孔2bに跨って第2ばね14が夫々収容されている。膨らみ部1b,長孔2bの構成は、前記第1ばね10のばね収容部と同じである。膨らみ部1b,長孔2bの長さは長孔8eの長さに対して円周方向により長く形成されており、第1サイドプレート1,第2サイドプレート2とセンタープレート8との捩り角度が所定の値になるまでは、第2ばね14が圧縮されないように構成されている。
【0029】
図1,図2に示すように、第1サイドプレート1における円周方向の膨らみ部1bどうしの間には3つの嵌合孔1dが形成され、該嵌合孔1dに軸方向の突起部を嵌合することにより、第1サイドプレート1とセンタープレート8との軸方向間隔を保持するため、3つの摺動部材15が円周方向へ略等間隔に設けられている。また、センタープレート8における円周方向の長孔8eどうしの間には、3つの嵌合孔8fが形成され、該嵌合孔8fには、第2サイドプレート2とセンタープレート8との軸方向間に介在するリング状の摺動部材16の片面に円周方向へ略等間隔に一体形成された3つの軸方向の突起部が嵌合されている。なお、前記ボルト7を回して第1サイドプレート1を図示しないクランクシャフトに結合することができるように、センタープレート8の半径方向中心側には、工具を挿入するための作業孔8gが形成されている。
(作用)
次に、捩り振動低減装置の作用を説明する。図示しないクランクシャフトからの入力が捩り振動低減装置を介して図示しないトランスミッションに出力される際に、捩り振動低減装置を構成する一対のサイドプレート1,2から第1ばね10を介してセンタープレート8に回転が伝達される。その際に、一対のサイドプレート1,2に対してセンタープレート8に捩れ角度が生じると、第1ばね10の親ばね10aが圧縮されてから子ばね10bが圧縮され、更に捩れ角度が大きくなると第2ばね14が圧縮される。一対の第1ばね10の両端部は、スプリングシート11を介してセンタープレート8または第1サイドプレート1,第2サイドプレート2に支持されているので、一対の第1ばね10の両端部が金属部品と摺動あるいは接触することはない。
【0030】
一対の第1ばね10の対向する端部と一対の連結アームとは、一対のサイドプレート1,2に対してセンタープレート8が正負のいずれの方向に捩れる場合でも、離れたり当接したりすることはないので、金属どうしの接触が問題となることはない。そして、一対の第1ばね10の対向する端部に対して装置の半径方向外側は、いずれもスプリングガイド13に当接してガイドされているので、一対の第1ばね10は直列に連結された状態を適正に保持する。
【0031】
この発明によれば、第1サイドプレート1,第2サイドプレート2およびセンタープレート8が回転して第1ばね10の長さ方向の中間部が遠心力により装置の半径方向外側へ向かって撓むと、スプリングシート11にはハブアーム8aに対して装置の半径方向外側へ向かって傾こうとする力が作用する。この発明では、ハブアーム8aの先端部に規制部8cが形成されているので、該規制部8cの存在により、スプリングシート11が装置の半径方向外側へ向かって傾くのが規制される。このため、スプリングシート11が一対の遊動子12の環状部12bと接触することはない。
【0032】
この捩り振動低減装置によれば、規制部8cの存在によりスプリングシート11が装置の半径方向外側へ向かって傾くことはないので、スプリングシート11の外周保持部11bが遊動子12の環状部12bと接触して摩耗するという問題が解消される。
【0033】
この発明によれば、ハブアーム8aの先端部から円周方向に沿って規制部8cを突出形成したセンタープレート8は、ハブアーム8aを突出形成し、更に突出形成したハブアーム8aに規制部8cを突出形成しているので、規制部8cの曲げに対する強度が小さい一方、規制部8cにおける円周方向で対向するものどうしを円周方向に繋いで円弧部8dを形成したセンタープレート8は、突出形成された部分が存在しなくなるので曲げに対する強度が大きくなる。
【0034】
この捩り振動低減装置によれば、センタープレート8における規制部8cの円周方向での対向するものどうしを円周方向に繋いで円弧部8dを形成したので、突出形成された部分が存在しなくなり、曲げに対する強度が大きい。
【0035】
この発明によれば、ハブアーム8aを軸方向から挟む状態で遊動子12を一対設けたので、連結アーム12aもハブアーム8aの厚さ寸法だけ間隔をあけて一対存在し、相互に離れて存在するこの一対の連結アーム12aが一対の第1ばね10の対向する端部を支持する。
【0036】
この捩り振動低減装置によれば、一対の第1ばね10の対向する端部を支持する連結アーム12aが一対設けられているので、第1ばね10の支持が安定して行われる。また、遊動子12が単一の場合は遊動子12をハブアーム8aの半径方向外側に配置することになり遊動子12の外径寸法は必然的にハブアーム8aの外径寸法よりも大きくなり捩り振動低減装置の外径寸法が大きくなるが、ハブアーム8aを軸方向から挟む状態で遊動子12を一対設けることから、遊動子12の外径寸法はハブアーム8aの外径寸法と略同じ値に設定することができ捩り振動低減装置の外径寸法を小さくすることができる。
【0037】
この発明によれば、前記規制部8cの内周面の位置と対応するスプリングシート11の外周保持部11bの外周面よりも半径方向外側に環状部12bの内周面が存在するので、スプリングシート11の外周保持部11bの外周面が環状部12bの内周面に接触することはない。
【0038】
この捩り振動低減装置によれば、スプリングシート11の外周保持部11bの外周面が環状部12bの内周面に接触することはないので、スプリングシート11および環状部12bが摩耗するという問題が解消される。
(b)実施の形態2
次に、実施の形態2について説明する。なお、実施の形態2は実施の形態1の一部を変更したものなので、同一部分には同一符号を付して説明を省略し、異なる部分のみを説明する。
【0039】
図8に示すように、この実施の形態では、遊動子12の数が単一になっている。そして、遊動子12は、センタープレート8の半径方向外側に配置され、遊動子12の板厚tがセンタープレート8の板厚tと略同じに設定されている。この実施の形態では、センタープレート8の規制部8cと規制部8cとを繋ぐ円弧部は形成されておらず、規制部8cがハブアーム8aから円周方向へ突出した状態になっている。実施の形態1である図3と比較すると、遊動子12における環状部12bのうちのハブアーム8aと対応する部分では、半径方向の幅寸法が円周方向での両側の部分よりも小さく設定されている。
【0040】
この実施の形態2では、図7に示すスプリングガイド13に代えて、図9に示すスプリングガイド13が用いられる。図9に示すスプリングガイド13に設けられている挿入孔13aの数は、図7の場合と異なって単一である。
【0041】
この発明によれば、遊動子12の外径寸法が実施の形態1の場合よりも大きくなるので、捩り振動低減装置の外径寸法も大きくなるが、一枚の部材からセンタープレート8と遊動子12との2つの部品の材料取りが可能となり、材料の歩留まりが高い。
【0042】
なお、本実施の形態では第1サイドプレート1と第2サイドプレート2とを入力部材としてクランクシャフトに接続し、センタープレート8を出力部材としてトランスミッションの入力軸に接続したが、これらの接続を入れ替えてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1…第1サイドプレート(入力部材)
1a…長孔(ばね収容部)
2…第2サイドプレート(入力部材)
2a…膨らみ部(ばね収容部)
8…センタープレート(出力部材)
8a…ハブアーム
8c…規制部
8d…円弧部
10…第1ばね(弾性部材)
11…スプリングシート
11a…シート部
11b…外周保持部
12…遊動子
12a…連結アーム
12b…環状部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランクシャフトに連結されて回転自在な入力部材と、トランスミッションの入力軸に連結されて回転自在な出力部材とのいずれか一方を、一対のサイドプレートを軸心に沿って配置すると共に該サイドプレートの外周部どうしを連結して構成し、他方は前記一対のサイドプレートの間に同心に配置したセンタープレートにより構成し、
前記一対のサイドプレートの対応する位置に円周方向に沿うばね収容部を夫々形成する一方、円周方向で前記ばね収容部の両端と対応する位置には前記センタープレートの外周部から半径方向外側へ突出するハブアームを設け、前記ばね収容部の内部であってかつ前記ハブアームどうしの間に一対の弾性部材を直列に配置し、
前記ハブアームと前記一対の弾性部材の端部との間にスプリングシートを介在させ、該スプリングシートは前記弾性部材の端部を受けるシート部と該端部における装置の半径方向外側を覆う外周保持部とにより構成し、
前記一対の弾性部材の対向する端部どうしの間に介在させる連結アームと該連結アームの半径方向外側を円周方向に連結する環状部とからなる遊動子を設けた捩り振動低減装置において、
前記スプリングシートが前記ハブアームに対して装置の半径方向外側へ向かって傾くのを規制する規制部を、前記ハブアームの先端部から円周方向に沿って突出形成したことを特徴とする捩り振動低減装置。
【請求項2】
請求項1に記載の捩り振動低減装置において、
前記中間部材は、前記ハブアームを軸方向から挟む状態で、一対設けられていることを特徴とする捩り振動低減装置。
【請求項3】
請求項2に記載の捩り振動低減装置において、
前記規制部の内径寸法が、前記環状部の内径寸法よりも小さく設定されていることを特徴とする捩り振動低減装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の捩り振動低減装置において、
前記規制部における円周方向で対向するものどうしを、円周方向に繋いで円弧部を形成したことを特徴とする捩り振動低減装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−251589(P2012−251589A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123894(P2011−123894)
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(300034334)ヴァレオユニシアトランスミッション株式会社 (45)
【Fターム(参考)】