説明

排ガス再循環ボイラ

【課題】 液体燃料を燃焼させる油焚きボイラは、排ガス中に腐食生成物や煤塵が含まれやすい。従って、排ガス再循環を行うと、送風機に排ガスが通されることで、送風機やバーナなどの各機器に悪影響を及ぼすおそれがある。そこで、排ガスが通る送風機を保護しつつ、排ガス再循環を行うボイラの実現が課題である。
【解決手段】 缶体2からの排ガスの一部は、排ガス戻し路29を介して送風機13へ供給される。この際、排ガスは、それに含まれる腐食生成物や煤塵を除去するフィルタ30を介して送風機13へ供給される。これにより、送風機13を保護しつつ、排ガス再循環を図ることができる。しかも、フィルタ30は、空気逆洗路34を介して送り込まれる送風機13からの空気により逆洗可能とされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、蒸気ボイラや温水ボイラなどの各種ボイラに関するものである。特に、排ガス中のNOx(窒素酸化物)を低減するために、排ガスの一部を燃焼用空気に混入して排ガス再循環を図るボイラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ボイラの排ガス中のNOxを低減するために、排ガス再循環が知られている。排ガス再循環とは、排ガスの一部を燃焼用空気に混入して燃焼室へ戻すことで、酸素濃度の低下や燃焼温度の低下により、NOxの発生を抑制する技術である。従来、排ガス再循環は、下記特許文献1に開示されるように、送風機を用いて排ガスの一部を、燃焼室への給気路へ戻している。
【特許文献1】特開平6−288511号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
排ガス再循環は、排ガスが送風機を通されるので、排ガス中の腐食生成物や煤塵が、送風機やバーナなどの各機器に悪影響を及ぼすおそれがある。たとえば、油焚きボイラの場合、排ガスには、硫黄などの腐食成分や、煤塵が含まれやすいので、そのような排ガスが送風機やバーナなどの各機器を通過すると、これら各機器に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0004】
この発明が解決しようとする課題は、腐食生成物や煤塵が通されることによる送風機への悪影響を抑制しつつ、排ガス再循環を図ることのできるボイラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、缶体からの排ガスの一部を、送風機を介して燃焼用空気の一部として、前記缶体へ戻すボイラであって、前記缶体からの排ガスは、フィルタを介して前記送風機へ供給され、空気、水もしくは温水、または蒸気を、前記フィルタに逆方向へ流して、前記フィルタの機能を回復可能とされたことを特徴とする排ガス再循環ボイラである。
【0006】
請求項1に記載の発明によれば、フィルタを介して排ガスを送風機へ供給して排ガス再循環を図ることができる。従って、送風機やバーナなどの各機器は、排ガスが通されることによる悪影響を防止される。また、フィルタは、空気などで逆洗可能に構成されているので、フィルタの機能回復を図ることができる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、バーナへの燃焼用空気を送風機から送り込む燃焼用空気路と、缶体からの排ガスの一部を、前記送風機を介して燃焼用空気に混入する排ガス戻し路と、この排ガス戻し路から前記送風機へ戻される排ガス中の腐食生成物および/または煤塵を除去するフィルタと、前記送風機からの空気、下部管寄せへの給水路からの水または温水、下部管寄せからの温水、または上部管寄せからの蒸気を、前記フィルタに逆方向へ流して、前記フィルタを洗浄可能な逆洗機構とを備えることを特徴とする排ガス再循環ボイラである。
【0008】
たとえば、油焚きボイラの場合、排ガスには、硫黄などの腐食成分や、煤塵が含まれやすいが、請求項2に記載の発明によれば、排ガス中の腐食生成物や煤塵をフィルタで除去した後に、送風機へ供給して排ガス再循環を図ることができる。従って、送風機やバーナなどの各機器は、排ガスが通されることによる悪影響を防止される。また、フィルタは、空気などで逆洗可能に構成されているので、腐食生成物や煤塵の除去を安定して図ることができる。しかも、逆洗用の空気、水もしくは温水、または蒸気は、いずれもボイラから供給され、別途用意する必要がない。
【0009】
請求項3に記載の発明は、前記フィルタには、空気、水もしくは温水または蒸気が間欠的に噴射されて、前記フィルタの機能回復または洗浄がなされることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の排ガス再循環ボイラである。
【0010】
請求項3に記載の発明によれば、フィルタの逆洗は、空気などを間欠的に噴射することでなされるので、フィルタの機能回復または洗浄が確実になされる。
【0011】
さらに、請求項4に記載の発明は、前記缶体のバーナへ燃焼用空気を供給する燃焼用空気路には、燃焼用空気の流量を調整する燃焼用空気ダンパが設けられており、この燃焼用空気ダンパを閉じた状態で、前記送風機からの空気を前記フィルタに逆方向へ流して、前記フィルタの機能回復または洗浄がなされることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の排ガス再循環ボイラである。
【0012】
請求項4に記載の発明によれば、燃焼用空気ダンパを閉じた状態で、送風機からの空気をフィルタに逆方向へ流して逆洗することで、簡易な構成および制御で、効果的な逆洗を行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
この発明の排ガス再循環ボイラによれば、排ガスは、腐食生成物や煤塵がフィルタで除去された後、送風機へ供給される。従って、たとえば油焚きボイラにおいて、排ガス中の腐食生成物や煤塵により送風機やバーナなどの各機器に悪影響を与えることなく、排ガス再循環による低NOx化を図ることができる。また、フィルタは、逆洗可能に構成されているので、送風機やバーナなどの各機器の保護を安定して行いつつ、排ガス再循環を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
つぎに、この発明の実施の形態について説明する。
本発明のボイラは、その種類を特に問わないが、典型的には小型貫流ボイラである。ボイラは、周知のとおり、バーナと伝熱管とを有する缶体を備える。バーナには、燃料が供給されると共に、燃焼用空気路を介して送風機から燃焼用空気が供給される。バーナへ供給される燃料は、液体燃料、気体燃料または特殊燃料のいずれでもよい。たとえば、本発明は、液体燃料を燃焼させる油焚きボイラに対して好適に適用される。いずれにしても、バーナから缶体内へ向けて、燃料の燃焼が可能とされる。バーナからの燃焼ガスにより伝熱管の加熱が図られ、伝熱管との熱交換後の排ガスは、排ガス路を介して外部へ排出される。この排ガス路は、煙道および煙突から構成される。
【0015】
本発明のボイラは、排ガス中のNOxを低減するために、排ガスの一部を燃焼用空気に混入して排ガス再循環(EGR)を図ることが可能とされている。そのために、排ガス路と、送風機の吸込口とが、排ガス戻し路により接続される。従って、送風機には、外気に加えて排ガスも供給されることになる。
【0016】
排ガス戻し路の中途には、EGRファンまたはEGRダンパを設けてもよい。EGRファンは、バーナへ燃焼用空気を送り込む前記送風機(メイン送風機)よりも小型の送風機であり、EGRダンパは、駆動モータあるいはソレノイドなどの作動により、それが設けられた排ガス戻し路の開閉または開度を変更する弁体である。
【0017】
このような構成により、排ガスの一部を燃焼用空気に混入して缶体へ戻す排ガス再循環が可能とされる。しかしながら、たとえば油焚きボイラの場合、排ガスには、硫黄などの腐食成分や、煤塵が含まれやすいので、そのような排ガスを送風機へ供給すると、送風機やバーナなどの各機器に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0018】
そこで、本発明のボイラは、フィルタを介して送風機へ排ガスが供給される。フィルタは、典型的には、送風機へ排ガスを送り込む排ガス戻し路、または排ガス戻し路と排ガス路との接続部に設けられる。従って、排ガス路からの排ガスは、フィルタを介して送風機へ供給される。これにより、排ガス中の腐食生成物や煤塵は、フィルタにより除去されるので、送風機の保護を図ることができる。
【0019】
ところで、前述したように、EGRファンまたはEGRダンパを排ガス戻し路の中途に設けた場合、フィルタは、EGRファンまたはEGRダンパよりも上流側に設けるのがよい。この場合、送風機だけでなくEGRファンまたはEGRダンパも保護することができる。
【0020】
このようにして排ガス再循環が行われると、時間経過とともに、排ガス中の腐食生成物や煤塵によりフィルタには目詰まりが生じるおそれがある。このフィルタの目詰まりは、排ガス中に含まれる水分が冷やされて結露水となってフィルタに付着することでも生じ得る。このようなことから、フィルタを通過する排ガス量ひいては燃焼用空気に混入される排ガス量が徐々に減少し、排ガス再循環を安定して行うことができなくなるおそれがある。
【0021】
そこで、本実施形態のボイラでは、フィルタには、排ガスの通過方向とは逆方向へ、逆洗用の媒体を通過させることで、そのフィルタの機能回復または洗浄を行う逆洗機構が設けられる。この逆洗機構は、逆洗用の媒体供給源からの逆洗用媒体を、フィルタの二次側(送風機の側)から一次側(排ガス路の側)へ送り込む逆洗路を備える。この逆洗路は、逆洗用の媒体供給源と、フィルタの二次側とを接続する。但し、逆洗路の一部は、排ガス戻し路と共通であってもよい。この場合、逆洗路は、逆洗用の媒体供給源と、フィルタより下流側の排ガス戻し路とを接続する。そして、逆洗用の媒体は、所望時に逆洗路を介して、フィルタの二次側から一次側へ供給される。これにより、フィルタから腐食生成物などを除去することができる。この際、逆洗機構に設けた電磁弁を複数回瞬時に開閉させて、媒体を間欠的にフィルタへ噴射することで、フィルタの機能回復または洗浄を一層確実に行うことができる。また、ノズルを介してフィルタの二次側から一次側へ媒体供給源からの媒体を加圧して送り込んでもよい。
【0022】
媒体供給源は、ボイラに備えられているものが好ましく、たとえば、送風機、下部管寄せへの給水路、下部管寄せまたは上部管寄せである。従って、逆洗用の媒体は、送風機からの空気、下部管寄せへの給水路からの水または温水、下部管寄せからの温水、または上部管寄せからの蒸気となる。逆洗用の媒体が水または温水であっても、そのような水または温水は、排ガス路内へ放出された後、缶体からの排ガスにより排ガス路内で蒸気化するので問題はない。ところで、下部管寄せから温水を取得するには、下部管寄せ自体から行ってもよいし、気水分離器と下部管寄せとの接続管などから行ってもよい。また、上部管寄せから蒸気を取得するには、上部管寄せ自体から行ってもよいし、上部管寄せと気水分離器との接続管などから行ってもよい。ところで、給水路に温水が通される場合とは、典型的には、エコノマイザで給水が予熱されている場合である。
【0023】
ところで、燃焼用空気路には、その管路を流れる燃焼用空気量を調整するための燃焼用空気ダンパを設けてもよい。燃焼用空気ダンパは、駆動モータあるいはソレノイドなどの作動により、それが設けられた管路の開閉または開度を変更する弁体である。そして、燃焼用空気ダンパは、燃焼用空気路を全閉可能に構成するのがよい。いずれの場合も、燃焼用空気ダンパを閉じた状態で逆洗を行うと、送風機からフィルタへ送り込まれる空気量が増加するので、一層効果的な逆洗を行うことができる。
【0024】
逆洗は、排ガス路からの排ガスがフィルタを通過していない状態において定期的に行うのが好ましい。従って、典型的には、パージ工程(プレパージ工程,ポストパージ工程)において行われる。また、排ガス戻し路内の排ガス流量に基づいて自動で行ってもよい。たとえば、フィルタより下流側の排ガス戻し路内に風圧スイッチを設けておき、風圧が設定圧力よりも低く、排ガス戻し路内に排ガスの流れがないと判断された場合に、フィルタの逆洗を行ってもよい。さらに、フィルタの逆洗は、ボイラの運転経過時間などに基づいて、所定時間運転したら行うようにしてもよい。
【実施例1】
【0025】
以下、この発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の排ガス再循環ボイラの実施例1を示す概略縦断面図である。本実施例のボイラは、液体燃料を燃焼させる油焚きボイラである。
【0026】
本実施例のボイラ1は円筒状の缶体2を備え、この缶体2はその軸線を上下方向へ沿って配置される。缶体2は、上下に離隔して上部管寄せ3と下部管寄せ4とを備える。上部管寄せ3と下部管寄せ4とは、複数の水管(伝熱管)5,5,…によって互いに接続されている。各水管5は、上下方向へ沿って配置されており、上端部が上部管寄せ3に接続する一方、下端部が下部管寄せ4に接続している。また、各水管5は、上部管寄せ3および下部管寄せ4の周方向へ沿って、円筒状に等間隔に配置されている。この際、図示例では、内側水管群6と外側水管群7とで、内外二重の円筒を構成するように、各水管5は配置される。そして、外側水管群7を取り囲むように、缶体2には周側壁8が設けられる。このような構成により、缶体2の中央部には燃焼室9が構成される。
【0027】
缶体2の上部中央には、バーナ10が下方へ向けて設けられる。バーナ10へは、燃料供給路11を介して燃料が供給されると共に、燃焼用空気路12を介して燃焼用空気が供給される。燃焼用空気路12へは、それと接続する送風機13の吸込口14から取り込まれる外気が、燃焼用空気として送風機13の吐出口15から送り出される。そして、ノズルパイプ16の周囲からは、燃焼用空気路12からの燃焼用空気が、ウィンドボックス17や燃焼筒18を介して燃焼室9内へ供給される。また、燃料供給路11からの燃料は、ノズルパイプ16およびノズルチップ19を介して、燃焼室9の上部中央から燃焼室9内へ噴霧される。さらに、バーナ10には点火装置(図示省略)が設けられており、ノズルパイプ16からの燃料は、この点火装置にて着火されて燃焼室9内で燃焼する。
【0028】
下部管寄せ4には、給水路20を介して水が供給可能とされる。給水路20には、上流側から順に、給水ポンプ21、逆止弁22が設けられる。給水ポンプ21の作動が制御されることで、缶体2内の水位が所望に調整される。バーナ10からの燃焼ガスにより、缶体2内の水は加熱され蒸気化される。このようにして生成される蒸気は、気水分離器23を介して蒸気使用設備(図示省略)へ送られる。
【0029】
気水分離器23と上部管寄せ3とは、蒸気導入管24により接続される。これにより、上部管寄せ3の蒸気は蒸気導入管24を通って気水分離器23内に送り込まれ、この気水分離器23により乾き度の一層高い蒸気とされる。一方、気水分離器23と下部管寄せ4とは、分離水排出管25により接続される。これにより、分離された水は、分離水排出管25を介して下部管寄せ4へ戻される。さらに、気水分離器23と蒸気使用設備とは、蒸気排出管26により接続される。これにより、乾き度を高められた蒸気は、主蒸気弁27を介して蒸気使用設備へ供給可能とされる。
【0030】
一方、各水管5と熱交換後の排ガスは、燃焼室9の周側壁8に接続された排ガス路(煙道および煙突)28を介して外部へ排出される。そのような排ガスの一部は、排ガス戻し路29を介して送風機13へ供給可能とされる。排ガス戻し路29は、基端部が排ガス路28と接続される一方、先端部が送風機13の吸込口14と接続される。これにより、送風機13の吸込口14には、外気に加えて、排ガスも導入可能とされる。このようにして、排ガス路28からの排ガスの一部が排ガス戻し路29を介して送風機13へ供給されることで、排ガス再循環(EGR)が可能とされる。この際、排ガス路28からの排ガスは、フィルタ30を介して送風機13へ供給される。フィルタ30は、図示例では、排ガス路28の周側壁に設けられる。すなわち、排ガス戻し路29の基端部と、排ガス路28の周側壁との接続部に、フィルタ30が設けられる。このようにして、送風機13にはその吸込口14から、外気と共にフィルタ30を通過した排ガスが供給され、そのような排ガスを含んだ燃焼用空気が、燃焼用空気路12を介してバーナ10へ供給される。
【0031】
本実施例では、排ガス戻し路29の中途には、EGRファン31が設けられている。EGRファン31は、前述した送風機13よりも十分小型の送風機である。この場合、EGRファン31は、吸込口32が排ガス路28に接続される一方、吐出口33が、送風機13の吸込口14に接続される。
【0032】
また、本実施例のボイラ1には、送風機13からの空気をフィルタ30へ逆に送り込むための逆洗機構が設けられている。逆洗機構は、送風機13からの空気をフィルタ30の二次側(EGRファン31の側)から一次側(排ガス路28の側)へ送り込む空気逆洗路34を備える。空気逆洗路34は、基端部が燃焼用空気路12と接続される一方、先端部がフィルタ30を介して排ガス路28と接続されている。また、空気逆洗路34には、その管路を開閉する電磁弁35が設けられている。
【0033】
空気逆洗路34の電磁弁35は通常は閉じられており、空気をフィルタ30へ送り込む際に開かれる。電磁弁35が開くと、送風機13からの空気は、空気逆洗路34を介してフィルタ30の二次側から一次側へ送り込まれる。そして、そのような空気は、フィルタ30を通過した後に排ガス路28内へ放出される。この際、電磁弁35を複数回瞬時に開閉させることで、空気をフィルタ30に間欠的に噴射できる。さらに、送風機13からの空気を加圧してフィルタ30へ送り込むために、空気逆洗路34の先端部をノズル状としてもよい。
【0034】
ところで、燃焼用空気路12には、燃焼用空気の流量を調整するための燃焼用空気ダンパ36が設けられている。この燃焼用空気ダンパ36は、燃焼用空気路12を構成する管路と直交する方向に配置した軸まわりに回転可能な板材からなり、空気逆洗路34との接続箇所よりも下流側の燃焼用空気路12内に設けられる。従って、この燃焼用空気ダンパ36の回転停止位置を調整し、燃焼用空気路12の管路を閉鎖することで、送風機13から空気逆洗路34内へ流す空気量を増やすことができる。
【0035】
フィルタ30の逆洗,すなわち送風機13からフィルタ30への空気の送り込みは、排ガス再循環が行われていない状態であるパージ工程(プレパージ工程,ポストパージ工程)において行われる。パージ工程では、バーナ10を停止した状態において、送風機13からの空気を燃焼用空気路12を介して缶体2内へ送り込むことで、燃焼室9内および排ガス路28内のガスを外部へ排出する。燃焼用空気路12には空気逆洗路34を接続しているので、送風機13からの空気は、空気逆洗路34内にも送り込まれる。そして、そのような空気は、電磁弁35を開くと、空気逆洗路34からフィルタ30を通過して排ガス路28内へ放出される。
【0036】
このような制御は、予め設定されたプログラムに基づいて行われる。具体的には、パージ工程が始まってから設定時間経過後、送風機13からの空気をフィルタ30へ送り込む。たとえば、パージ工程が15秒間行われるとすると、その10秒後に電磁弁35が開かれて、送風機13からフィルタ30への空気の送り込みが、残り5秒間行われる。ここで、パージ工程を行っている時間や、送風機13からフィルタ30への空気の送り込みを開始する時間およびそれらを行っている時間は、ボイラ1の運転状況に応じて適宜に設定されるものであり、上記の例に限定されるものではない。
【0037】
また、パージ工程における制御に代えてまたはこれに加えて、排ガス戻し路29内の排ガス流量に基づいて自動で行ってもよい。たとえば、排ガス戻し路29内に風圧スイッチ(図示省略)を設けておき、風圧が設定圧力よりも低く、排ガス戻し路29内に排ガスの流れがないと判断された場合に、空気逆洗路34の電磁弁35を開けばよい。これにより、送風機13からの空気が、空気逆洗路34を介してフィルタ30へ送り込まれる。
【0038】
油焚きボイラの場合、排ガスには、硫黄などの腐食成分や、煤塵が含まれやすいが、本実施例のボイラ1によれば、フィルタ30を通過した排ガスが送風機13へ供給されるので、排ガス中の腐食生成物や煤塵による送風機13への悪影響を簡易に防止することができる。また、排ガス戻し路29の中途にEGRファン31を設けても、このEGRファン31をフィルタ30よりも上流側に設けることで、両送風機13,31への悪影響も簡易に防止することができる。
【0039】
フィルタ30には、排ガス中の腐食生成物などが付着して目詰まりが生じ得るが、本実施例のボイラ1によれば、送風機13からの空気をフィルタ30へ送り込むための逆洗機構が設けられる。逆洗機構は、送風機13からの空気と共にフィルタ30に付着した腐食生成物などを排ガス路28内へ放出するように構成されるので、簡易な構成でフィルタ30の目詰まりを解消できる。従って、本実施例のボイラ1によれば、フィルタ30による送風機13やEGRファン31の保護と共に、排ガス再循環による排ガスの低NOx化を長時間にわたって確実に行うことができる。
【実施例2】
【0040】
図2は、本発明のボイラの実施例2を示す概略縦断面図である。本実施例2のボイラ1も、基本的には前記実施例1のボイラと同様である。そこで、以下においては、両者の異なる点を中心に説明し、対応する箇所には同一の符号を付して説明する。
【0041】
前記実施例1では、送風機13からの空気によってフィルタ30を逆洗する構成としたが、本実施例2では、下部管寄せ4への給水路20からの水または温水によってフィルタ30を逆洗する構成としている。すなわち、前記実施例1では、図2において二点鎖線で示すように、燃焼用空気路12とフィルタ30とを空気逆洗路34で接続したが、それに代えて、本実施例2では、図2において実線で示すように、下部管寄せ4への給水路20とフィルタ30とを第一水逆洗路37で接続している。排ガス路28にエコノマイザ(図示省略)を設けた場合には、給水路20には温水が供給され、この温水が下部管寄せ4および第一水逆洗路37へ供給されることになる。
【0042】
具体的には、第一水逆洗路37は、基端部が逆止弁22より下流側の給水路20と接続する一方、先端部がフィルタ30を介して排ガス路28と接続している。また、第一水逆洗路37には、その管路を開閉する電磁弁35が設けられる。この構成の場合、給水路20からの水または温水は、第一水逆洗路37からフィルタ30へ送り込まれ、このフィルタ30通過後に排ガス路28内へ放出される。本実施例の場合も、電磁弁35を複数回瞬時に開閉させたり、ノズルで水または温水を噴射させたりして逆洗してもよい。そして、排ガス路28内へ放出された逆洗用の水または温水は、燃焼室9からの排ガスにより、排ガス路28内で蒸気化して排ガスと混合される。従って、本実施例2のボイラ1も、前記実施例1のボイラと同様の作用効果を奏する。
【実施例3】
【0043】
同じく図2には、本発明のボイラの実施例3も示されている。本実施例3のボイラ1も、基本的には前記実施例1などのボイラと同様である。そこで、以下においては、両者の異なる点を中心に説明し、対応する箇所には同一の符号を付して説明する。
【0044】
前記実施例1や前記実施例2では、送風機13からの空気や、下部管寄せ4への給水路20からの水または温水によってフィルタ30を逆洗する構成としたが、本実施例3では、下部管寄せ4からの温水によってフィルタ30を逆洗する構成としている。すなわち、図2において二点鎖線で示された空気逆洗路34や、実線で示された第一水逆洗路37に代えて、本実施例3では、破線で示された第二水逆洗路38を設けている。つまり、下部管寄せ4とフィルタ30とが、第二水逆洗路38により接続されている。
【0045】
具体的には、第二水逆洗路38は、基端部が分離水排出管25と接続する一方、先端部がフィルタ30を介して排ガス路28と接続している。また、第二水逆洗路38には、その管路を開閉する電磁弁35が設けられる。この構成の場合、下部管寄せ4からの温水は、第二水逆洗路38からフィルタ30へ送り込まれ、このフィルタ30通過後に排ガス路28内へ放出される。本実施例の場合も、電磁弁35を複数回瞬時に開閉させたり、ノズルで温水を噴射させたりして逆洗してもよい。そして、排ガス路28内へ放出された逆洗用の温水は、燃焼室9からの排ガスにより、排ガス路28内で蒸気化して排ガスと混合される。従って、本実施例3のボイラ1も、前記実施例1のボイラと同様の作用効果を奏する。
【実施例4】
【0046】
同じく図2には、本発明のボイラの実施例4も示されている。本実施例4のボイラ1も、基本的には前記実施例1などのボイラと同様である。そこで、以下においては、両者の異なる点を中心に説明し、対応する箇所には同一の符号を付して説明する。
【0047】
前記各実施例では、送風機13からの空気、給水路20からの水または温水、下部管寄せ4からの温水によってフィルタ30を逆洗する構成としたが、本実施例4では、上部管寄せ3からの蒸気によってフィルタ30を逆洗する構成としている。すなわち、図2において二点鎖線で示された空気逆洗路34、実線で示された第一水逆洗路37や、破線で示された第二水逆洗路38に代えて、本実施例4では、一点鎖線で示された蒸気逆洗路39を設けている。つまり、上部管寄せ3とフィルタ30とが、蒸気逆洗路39により接続されている。
【0048】
具体的には、蒸気逆洗路39は、基端部が上部管寄せ3と接続する一方、先端部がフィルタ30を介して排ガス路28と接続している。また、蒸気逆洗路39には、その管路を開閉する電磁弁35が設けられる。この構成の場合、上部管寄せ3からの蒸気は、蒸気逆洗路39からフィルタ30へ送り込まれ、このフィルタ30通過後に排ガス路28内へ放出される。本実施例の場合も、電磁弁35を複数回瞬時に開閉させたり、ノズルで蒸気を噴射させたりして逆洗してもよい。そして、排ガス路28内へ放出された逆洗用の蒸気は、排ガス路28内で排ガスと混合する。従って、本実施例4のボイラ1も、前記実施例1のボイラと同様の作用効果を奏する。
【0049】
本発明の排ガス再循環ボイラは、前記各実施例の構成に限らず適宜変更可能である。たとえば、前記各実施例では、液体燃料を燃焼させる油焚きボイラに適用した例について説明したが、気体燃料や特殊燃料などを燃焼させるボイラにも同様に適用することができる。
【0050】
また、前記各実施例では、前記各逆洗路34,37,38,39は、先端部がフィルタ30を介して排ガス路28に接続されたが、排ガス戻し路29の中途に接続されてもよい。すなわち、各逆洗路34,37,38,39の先端部が、排ガス戻し路29の一部であってもよい。また、前記各実施例では、送風機13への排ガスが通過するフィルタ30は、排ガス路28の周側壁に設けたが、排ガス戻し路29の中途に設けてもよい。この場合、各逆洗路34,37,38,39からの空気などは、フィルタ30通過後に排ガス戻し路29の一部を介して排ガス路28内へ放出される。
【0051】
また、前記各実施例では、パージ工程における制御に代えたり付加したりしたのは、排ガス戻し路29内の排ガス流量に基づく制御であったが、ボイラの運転経過時間などに基づく制御でもよい。
【0052】
ところで、前記各実施例では、逆洗用の空気などは、ボイラ自体から供給されたが、別途用意してもよい。前記各実施例では、EGRファン31を排ガス戻し路29の中途に設けてもよかったが、EGRファン31に代えて、EGRダンパを排ガス戻し路29内に設けてもよい。このEGRダンパは、排ガス戻し路29を構成する管路と直交する方向に配置した軸まわりに回転可能な板材からなる。このように、前記各実施例では、EGRファン31またはEGRダンパを設けたが、これらを両方共設けない場合もあり得る。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明のボイラの実施例1を示す概略縦断面図である。
【図2】本発明のボイラの他の実施例を示す概略縦断面図である。
【符号の説明】
【0054】
1 ボイラ
2 缶体
3 上部管寄せ
4 下部管寄せ
10 バーナ
12 燃焼用空気路
13 送風機
20 給水路
29 排ガス戻し路
30 フィルタ
34 空気逆洗路
35 電磁弁
36 燃焼用空気ダンパ
37 第一水逆洗路
38 第二水逆洗路
39 蒸気逆洗路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
缶体からの排ガスの一部を、送風機を介して燃焼用空気の一部として、前記缶体へ戻すボイラであって、
前記缶体からの排ガスは、フィルタを介して前記送風機へ供給され、
空気、水もしくは温水、または蒸気を、前記フィルタに逆方向へ流して、前記フィルタの機能を回復可能とされた
ことを特徴とする排ガス再循環ボイラ。
【請求項2】
バーナへの燃焼用空気を送風機から送り込む燃焼用空気路と、
缶体からの排ガスの一部を、前記送風機を介して燃焼用空気に混入する排ガス戻し路と、
この排ガス戻し路から前記送風機へ戻される排ガス中の腐食生成物および/または煤塵を除去するフィルタと、
前記送風機からの空気、下部管寄せへの給水路からの水または温水、下部管寄せからの温水、または上部管寄せからの蒸気を、前記フィルタに逆方向へ流して、前記フィルタを洗浄可能な逆洗機構と
を備えることを特徴とする排ガス再循環ボイラ。
【請求項3】
前記フィルタには、空気、水もしくは温水または蒸気が間欠的に噴射されて、前記フィルタの機能回復または洗浄がなされる
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の排ガス再循環ボイラ。
【請求項4】
前記缶体のバーナへ燃焼用空気を供給する燃焼用空気路には、燃焼用空気の流量を調整する燃焼用空気ダンパが設けられており、
この燃焼用空気ダンパを閉じた状態で、前記送風機からの空気を前記フィルタに逆方向へ流して、前記フィルタの機能回復または洗浄がなされる
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の排ガス再循環ボイラ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2009−30897(P2009−30897A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−196425(P2007−196425)
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)
【Fターム(参考)】