説明

排ガス冷却塔

【課題】排ガス冷却機に設置した破砕機の回転を長期間維持し、何らかの原因で破砕機の回転軸の回転が阻害されて回転が減速し、或いはストップしても動力伝達ベルトを損傷することのない低コストの排ガス冷却塔を提供する。
【解決手段】塔本体1下部の灰排出部6に、凝固灰の破砕機5を設置した排ガス冷却塔10において、破砕機の刃を回転させる回転軸と当該回転軸を回転させる動力源とをタイミングベルトで連結し、前記回転軸またはタイミングベルトに不回転検出器(センサー)を設けてなる。また、排ガス冷却塔は、塔本体下部の灰排出部に、凝固灰の破砕機を設置した排ガス冷却塔において、破砕機本体の壁に破砕機の刃を回転する回転軸を外部に貫通する貫通穴を設け、当該貫通穴と前記回転軸に動力を伝達する動力伝達機構とを気密に接続してなる。破砕機をエアシール装置4の下流側へ設置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼却炉等から排出された燃焼排ガスを水と接触させて冷却する排ガス冷却塔であって、当該塔本体下部の灰排出部に、凝固灰を破砕する破砕機を設置した排ガス冷却塔に関するものである。
【背景技術】
【0002】
廃棄物や下水汚泥の焼却炉、金属精錬炉、ガラス溶解炉などから排出される高温の燃焼排ガス中には、多量の灰やダストが含まれている。この灰やダストを大気中に放出することはできないため、これらの灰やダストは集塵機で除去している。集塵機は多くの場合、バグフィルタによる集塵が行われている。集塵機のバグフィルタは一般に、繊維質のろ布を用いているために可燃性で耐熱性が低く、排ガス温度が250℃を越えると損傷するため、その前段に廃熱ボイラや熱交換器等を設置して冷やされた排ガスを集塵機に送り込むか、バグフィルタの前段に排ガス冷却塔を設置して排ガスを冷却し、冷えた排ガスをバグフィルタに送っている。
【0003】
従来の排ガス冷却塔40は図5に示されるように、塔本体1の内部にノズル3を設置し、塔本体1下部の灰排出部6に、凝固灰を破砕する破砕機5を配置した構成となっている。この排ガス冷却塔40は、塔本体1の塔頂部に設けた排ガス導入管2を通して焼却炉から排出される撚焼排ガス(400℃前後)を導入し、ノズル3から噴霧される冷却水と接触させて排ガスを冷却し、200℃以下にまで冷却した排ガスを、後段の図示しないバグフィルタに送り、当該バグフィルタで集塵する。また噴霧された水は塔本体1の内部で蒸発する。ノズルの磨耗や、一時的に水圧力、空気圧力、空気量が変動して液滴が大きくなることにより未蒸発の水分が灰やダストと反応した凝固灰や、スプレーノズルの周囲にガス流の巻き込みにより形成される凝固灰は塔本体1の下部に落下し、落下した凝固灰は破砕機5で破砕されてエアシール装置4を介して取り出され、図示しない灰ホッパに空気輸送して回収している。
【0004】
【特許文献1】特開2004−117856号広報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記塔本体から灰排出部に落下してくる灰の一部は粒子が細かく、凝固灰は硬い。このため、排ガス冷却塔下部の灰排出部に設置した凝固灰の破砕機(以下破砕機という)の破砕刃は高速回転して凝固灰を細かく破砕し、灰ホッパヘの空気輸送で支障が生じないように設計されている。しかし、破砕機には前述のように粒子の細かい灰、硬い凝固灰が降り注いでくる。破砕機に入り込む粒子の細かい灰は破砕機本体と破砕刃の回転軸との隙間から破砕機の外に漏れて破砕機の回転軸を支持しているベアリングユニットに入り込み、ベアリングの回転を阻害し、ベアリングユニットを破損し、破砕機の運転に支障をきたすことがある。
【0006】
また、電動機(モーター)の動力を破砕機に伝達するVベルトに緩みが発生した場合、破砕機に凝固灰が入ると破砕刃の回転を阻害し、最悪の場合には破砕刃の動きを止めてしまうことがある。回転刃の動きが阻害されると上記Vベルトがスリップし、Vベルトに損傷を与え、切断する事故も発生する。
さらに、排ガス中には硫黄酸化物や塩化水素等の腐食性が含まれているため、塔本体やエアシール装置等の排ガスと接する部分の材質には耐食性の高いステンレスが使用されている。特許文献1では、破砕機がエアシール装置の上流側にあり、排ガスと接するため破砕機もステンレス等を使用する必要があるため、排ガス冷却塔設備としてのコストが高くなる。
【0007】
本発明は、上述した従来技術の問題に鑑みてなされ、排ガス冷却機に設置した破砕機の回転を維持し、何らかの原因で破砕機の回転軸の回転が阻害されて回転が減速、或いはストップしても動力伝達ベルトを損傷することのない、低コストの排ガス冷却塔を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した従来技術の問題点を解決し、上述した目的を達成するために、本発明の排ガス冷却塔は、塔本体下部の灰排出部に、凝固灰の破砕機を設置した排ガス冷却塔であって、前記破砕機の刃を高速回転させる回転軸と当該回転軸を回転させる動力源とを動力伝達ベルトで連結し、前記回転軸に不回転検出器を設けてなる。
何らかの原因で破砕機の回転軸の回転が阻害された場合、回転が減速、或いはストップしたことを前記不回転検出器が検出しモーターの稼動を停止することで、スリップ等によるベルトの損傷を防ぐことができる。
【0009】
好適には、本発明の排ガス冷却塔では、前記破砕機において、破砕機本体の壁に破砕機の刃を回転する回転軸を外部に貫通する貫通穴を設け、当該貫通穴と前記回転軸に動力を伝達する動力伝達機構とを気密に接続する。
これにより、粒子の細かい灰が破砕機本体と破砕刃の回転軸との隙間から破砕機の外に漏れて破砕機の回転軸を支持しているベアリングユニットに入り込み、ベアリングの回転を阻害し、ベアリングユニットを破損し、破砕機の運転を妨げることを防ぐ。
【0010】
好適には、本発明の排ガス冷却塔では、前記破砕機本体に設けた貫通穴と前記動力伝達機構とをダストシールを介して気密に接続する。
【0011】
好適には、本発明の排ガス冷却塔では、前記破砕機本体は、エアシール装置の下流側に設置する。
これにより、破砕機本体が排ガスと接することがなくなるため、破砕機本体に耐食性の高いステンレス等の素材を使用する必要はなくなり、コストを抑えることができる。
【0012】
さらに、好適には、本発明の排ガス冷却塔では、前記不回転検出器が不回転を検出すると、前記動力源による回転を停止する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、排ガス冷却機に設置した破砕機の回転を維持し、何らかの原因で破砕機の回転軸の回転が阻害されて回転が減速し、或いはストップしても動力伝達ベルトを損傷することのない、低コストの排ガス冷却塔を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照し説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る排ガス冷却塔の断面図である。
排ガス冷却塔10は図示しない下水汚泥焼却炉と図示しないバグフィルタとの間に設置されているが、前段の焼却炉の種類は任意である。
【0015】
本実施形態の灰排出部6が本発明の灰排出部の一例であり、破砕機5が本発明の破砕機の一例であり、破砕刃12が本発明の刃の一例であり、回転軸11が本発明の回転軸の一例であり、タイミングベルト24が本発明の動力伝達ベルトの一例であり、センサー29が本発明の不回転検出器の一例であり、モーター23が本発明の動力源の一例である。
【0016】
排ガス冷却塔10は略円筒状の塔本体1からなり、当該塔本体1の頂部直上には排ガス導入管2、塔本体1の下部出口には破砕機5が設けられている。
塔本体1の上部には冷却水を散布するノズル3が複数本設けられ、当該ノズル3から冷却水を噴射して排ガスを冷却する。
塔本体1の下部側方には冷却された燃焼排ガスを取り出して後段のバグフィルタに送る排ガス導出管7が接続されている。
【0017】
図2は塔本体1の下部出口に設置した破砕機5の説明図で、(A)は破砕機5の正面図と断面図、(B)は(A)の矢印Aからみた破砕機5の図である。
この破砕機5は一軸高速回転型の破砕機である。なお、本実施形態では一軸高速回転型の破砕機を採用するが、凝固灰を破砕できる機能を有するものであれば他の破砕機を採用することもできる。
図2に示すように破砕機5は、単一の高速回転軸11に一層からなる破砕刃12を固定した構造であり、エアシール装置4を通過し、上方から開口部13へと落下する凝固灰を回転する破砕刃12により細かく破砕する構造となっている。
空気輸送管8を通して破砕した灰を図示しない灰ホッパに輸送する。灰中に含まれていた凝固灰は破砕機5により細かく破砕されているため、支障なく空気輸送することができる。
【0018】
図3は、破砕機5とモーター23がタイミングベルト24で連結されている状態を示す外観図である。
破砕機5には破砕刃12の回転軸11を貫通する貫通穴が設けられ、当該貫通穴の外側には回転軸11を挿通したベアリングリングユニット20、21が気密に固定されている。貫通穴から外部に出た回転軸11は動力伝達機構22に接続される。
動力伝達機構22はモーター23の回転軸に取り付けられたプーリー25、回転軸11に設けたプーリー27、プーリー25とプーリー27を連結し、モーター23の回転力を前記回転軸11に伝達するタイミングベルト24からなる。
【0019】
図4は、破砕機5の側面からみた断面図である。破砕機5と動力伝達機構22との接続は、破砕機5に設けた貫通穴に回転軸11をセットし、貫通穴と回転軸11の周囲を、おさえ板31にオイルシール30を介在させてボルトで締め付け気密状態にし、プーリー27等の動力伝達機構を接続していく。
【0020】
破砕機5の刃を回転するにはモーター23の電源をオンにする。モーター23が回転するとモーター23の回転軸に設けたプーリー25が回転し、当該プーリー25の回転がタイミングベルト24の回転を通してプーリー27に伝達され、プーリー27の回転が回転軸11に伝達されて破砕機5の破砕刃12が回転し、凝固灰を破砕する。
【0021】
図3において、枠体に当該回転軸11の回転を監視するセンサー(不回転検出器)29が設けられている。回転軸11の回転を監視するセンサーとしては公知のものが使用可能である。例えば回転軸11に標識を設け、この標識をカメラで監視し、標識の回転速度が変化したときはその変化の状況を感知し、回転が止まったときは止まったことを感知して回転軸11の回転が低下し、或いは停止したと判断するセンサー等であり、当該感知した情報をモーター23に送りモーター23の回転を制御する。
【0022】
以上のような状況をセンサー29が感知した場合、例えば、警報ブザーを鳴らしたり、監視用のモニター等にステータスを表示するなどしてもよい。
【0023】
本発明の実施形態においては、破砕機5と動力伝達機構22とをオイルシール30を介して気密に接続したことにより、ベアリングユニット20、21に細かい粒子の灰が入り込んでベアリングユニット20、21を損傷することがなく、破砕機5を長期間にわたりその回転を維持することができる。
【0024】
また、本発明の実施形態においては、枠体にセンサー29を設置し、回転軸11の回転を常時監視し、破砕機の故障、事故等の何らかの原因で回転軸11の回転が停止したときには、センサー29からの信号でモーター23の稼動を停止することができる。これにより、タイミングベルト24がスリップすることなく、ベルト破損を防ぐことができる。
【0025】
また、本発明の実施形態においては、プーリー25とプーリー27とをタイミングベルト24で連結した。タイミングベルト24は内面に凹凸が形成され、当該凹凸と噛み合う凹凸をプーリー25、27に設けることで、タイミングベルト24とプーリー25、27との間でスリップすることがなく、モーター23の動力を破砕機5の刃に効率的に伝えることができると共に、プーリー25、27とベルト24の間でのスリップによる摩擦でベルト24が損傷を受け、ベルト24が短期間で破断するような事故を未然に防止することができる。
【0026】
本発明は上述した実施形態には限定されない。
すなわち、当業者は、本発明の技術的範囲またはその均等の範囲内において、上述した実施形態の構成要素に関し、様々な変更、コンビネーション、サブコンビネーション、並びに代替を行ってもよい。
例えば、上述した実施形態では、破砕機5と動力伝達機構22とをオイルシールにより気密に接続しているが、気密の方法はオイルシールに限定されない。
また、破砕刃12については、刃の数や重ね合わせの数は任意である。
また、センサー29は、回転軸11の回転を監視できればどの位置に設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、凝固灰等を破砕する破砕機等の回転手段を有する排ガス冷却塔に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態を示す排ガス冷却塔の断面図である。
【図2】一軸高速回転型の破砕機を示す図であり、(A)は正面図と縦断面図、(B)は(A)の矢印Aからみた破砕機5の図である。
【図3】一軸高速回転型の破砕機と動力伝達機構との接続関係を示す説明図である。
【図4】破砕機5の側面からみた断面図である。
【図5】従来技術の排ガス冷却塔の断面図である。
【符号の説明】
【0029】
10…排ガス冷却塔、
1…塔本体、
2…排ガス導入管、
3…ノズル、
4…エアシール装置、
5…破砕機、
6…灰排出部、
7…排ガス導出管、
8…空気輸送管、
11…回転軸、
12…破砕刃、
13…開口部、
20、21…ベアリングユニット、
22…動力伝達機構、
23…モーター、
24…タイミングベルト、
25…プーリー、
27…プーリー、
29…センサー、
30…オイルシール、
31…おさえ板、
40…従来の排ガス冷却塔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塔本体下部の灰排出部に、凝固灰の破砕機を設置した排ガス冷却塔であって、前記破砕機の刃を高速回転させる回転軸と当該回転軸を回転させる動力源とを動力伝達ベルトで連結し、前記回転軸に不回転検出器を設けてなる排ガス冷却塔。
【請求項2】
前記破砕機において、破砕機本体の壁に破砕機の刃を回転する回転軸を外部に貫通する貫通穴を設け、当該貫通穴と前記回転軸に動力を伝達する動力伝達機構とを気密に接続してなる請求項1に記載の排ガス冷却塔。
【請求項3】
前記破砕機本体に設けた貫通穴と前記動力伝達機構とをダストシールを介して気密に接続した請求項2に記載の排ガス冷却塔。
【請求項4】
前記塔本体下部の灰排出部に、凝固灰の破砕機をエアシール装置の下流側に設置した請求項1〜3いずれかに記載の排ガス冷却塔。
【請求項5】
前記不回転検出器が不回転を検出すると、前記動力源による回転を停止する
請求項1〜4のいずれかに記載の排ガス冷却塔。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−168380(P2009−168380A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−8548(P2008−8548)
【出願日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(594056074)コットレル工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】